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8木先生のスレ

998凡人:2018/03/13(火) 05:04:09 ID:AaSPFmRQ0
時代の風
文書改ざんに抗議する 国という木船 修理必要=中島京子・作家
毎日新聞2018年3月11日 東京朝刊

 私たちはもう何年も、泥船に乗っているんじゃないかという気がしてくる。財務省の、例の「森友文書改ざん」の報を見ながら。

 私たちはコツコツ働いて税金を納め、代表を国会に送り、国会はそのお金をどう使うかを審議し予算を決め、行政はその予算を有効に使って、国民の生命・財産を守り、ひとりひとりが幸福に生きるための社会を整えるということになっている。国民は「国」というがっしりした船に乗り込み、安心して航海するイメージだ。しかし、私たちがせっせと税金を送ったところまではいいが、「では、お願いしますよ」と乗り込んだ「国家」という船が、なんとも信用できないものであり続けている。

 何年か前に国会で、安倍晋三首相が「税金は国民から吸い上げたもの」と、鼻息荒く答弁していた。この言葉に関しては謝罪も何もなかったような気がするけれど、私たちは税金を主権者たる国民として真摯(しんし)に納めているのであって、幕府やお上に吸い上げられているのではない。

 私たちの税金は当然、国のために働いてくれる政治家や官僚の生活を支えるためにも使われている。税金で雇っているとまで傲慢な言い方をするつもりはないが、「公僕」という言葉を胸に刻んでいただけないだろうかという気はする。

 公文書の改ざんは犯罪だ。私たちはいくつもの約束事を作り、それを信じて守ることによって社会を成り立たせているのだから。誰のために、なんのために? 首相の妻が名誉校長を務める小学校に、国有地をただ同然で払い下げるためなのだろうか。考えれば考えるほど、腹が立つ。

 7日夜、私は国会前に出かけた。この「森友文書改ざん」と、それにかかわる対応に抗議する集会に参加するためだ。

 地下鉄丸ノ内線の国会議事堂前で降り地上に上がると、人もいなければ車もいない、静かな夜の街に、抗議する人の声が響いてくる。出口からワンブロック先を左折すれば、そこは国会正門だ。ところが正門前に行こうとすると男の警察官が2人、歩道を閉鎖して立ちはだかっている。

 「こちらは通行制限をしているので、道を渡って財務省前の信号を左折して向かってください」

 意味を測りかねて彼らの顔を見ていると、

 「閉鎖してますから」

 と、若い警官が威圧的に胸を突き出す。なんのために閉鎖しているのか、なぜ私がそこを通れないのか、明確な説明はない。法的な根拠もないはずだ。しかし、押し問答に時間を費やす気にはなれないし、警棒を持った男性警察官2人と揉(も)めるのは嫌だから、仕方なく300メートルほど回り道をして国会前を目指す。彼ら警察官のその日の使命は、抗議行動に参加する市民を嫌な気持ちにさせることなのだろう。嫌がらせが任務というのも、考えてみれば気の毒な話だ。誰が、なんのために、若い警官たちを夜の街に立たせて、集会に行こうとする市民に嫌がらせさせているのか。

 実は、がっしりした国という船に安心して乗り込み、政治家や官僚にかじ取りを任せきっている国民という、私のイメージはそもそも間違っているのだろう。船は泥製ではないが、木製くらいで、壊れやすい。長く使うと腐食も出る。修理しつつ進むのが、現実のあり方なのに違いない。

 私たち有権者は、公務員に公文書を書き換えさせたりするような政治を許しておいてはいけない。誰かが直接指示したか、誰かの意向を忖度(そんたく)した結果なのかはわからないが、いずれにしても、主権者国民をないがしろにし、権力者の意向を唯々諾々と汲(く)む政治を、続けさせてはいけない。そう思ったからこそ、財務省の心ある官僚の誰かが、文書の存在を国民に知らせたのだろう。権力者の顔色だけを窺(うかが)い、記憶にない、記録は捨てたと嘘(うそ)をつき、公文書を改ざんして、国民に背を向けた官僚だけが出世するような社会は嫌だと、内部から悲鳴を上げた官僚がいたのだろうと想像する。

 安倍長期政権という船からは、あちこちから腐った木材のにおいが漂う。この政権の悲願は「憲法改正」だが、憲法はそもそも権力の暴走を縛るためにある。それを変えたいと言うのには、権力者自身がこの縄を解けと吠(ほ)えたてている怖さがある。=毎週日曜日に掲載




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