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無差別級

126闇夜の鮟鱇★:2013/07/29(月) 12:32:53 ID:???0
  ●●●平家物語で気になった幾つかの問題●●●(7/7)

それから、これは直近の話ですが、祇王の話を詳しく取り上げていましたね。
講師としては『ここに描かれる清盛のような男は顔も見たくない』
とか言ってましたが、男と女の感じ方の差なのか、
私には、それほどの悪人とは思えませんでした。(^^;)
というのも、白拍子というのは基本的に、
その芸と体を売ることを生業(なりわい)にしていた分けですからね。

たとえ一晩で追い出されても文句は言えないわけで、
たまたま清盛が気に入って、三年も囲っていたというのが、
ある意味では異常な例外的状態だった、とも言える分けですよね。
ですから、清盛がたまたま別の白拍子(仏御前)を見初めた結果、
自分が追い出される羽目になったとしても、
全く恨むべき筋合いのものではないように思います。

その点ではむしろ『紫上を正妻格として迎えた後で天皇の娘を娶り、
紫上を隅に追いやった』という光源氏の仕打ちの方が、
はるかに許しがたいし、男としても嫌らしい感じがしますよね。
この祇王の物語では、仏御前が清盛宅に押しかけてきた時に、
清盛が追い払おうとしたのを、同じ白拍子として同情した祇王が、
『とにかく面会だけはしてくれ』と取り次いだことになっています。


『その恩義に反し、仏御前が清盛を奪い取る結果になったのが、たとえ、
仏御前自身の意志によるものではないとしても許せない』というのが、
物語の展開である分けですが……一種の奇譚という感じの話ですね。
これは平家物語の本筋ではなくて、後から付加されたものだろう、
というのが通説のようですが、その場合、当時はやりの仏教説話が、
元になっているという印象を濃厚に受けますね。

つまり『こういう風にすれば女も極楽往生できる』という一つの例として、
どこかの坊主が考え出して広めた話ではないかと思います。
というのも、この話は『女同士が義理を立て合う』という点で、
近松門左衛門の『心中天の網島』の構図と良く似ているからです。
あの場合も『男の愛人である遊女の小春と妻のおさんとが、
互いに義理を立て合って云々』というのが話の主軸になるわけですね。

でも、その展開に、私は何やら違和感を感じざるを得なかった分けです。
というのも私には、いわゆる義理人情というのは、
男の世界に特有の価値観ではないか、と思えるからです。
つまり、男社会が組織として成り立って行く上では、
そうした義理人情の価値観が不可欠だ、ということなんでしょう。


その点からすると、逆に女同士の争いというものは、
もっとずっとドライであるような印象を、私は受ける分けですね。
それは結局、女というものが歴史的には家庭の中だけで生きて来て、
組織というものとは元々、無縁だったからではないかと思います。
ですから、女にとっては自分の家庭と子供を守ることが全てであって、
その為には他人を犠牲にしても、余り意に介さない所がありますよね。

その意味で、心中天の網島にしろ、祇王の物語にしろ、
『これは明らかに男による作り物だ』という印象を受ける分けです。
例えば、仮に仏御前が祇王に受けた恩を裏切るような形で、
祇王のパトロンである清盛を奪う結果になったとしても、
それほど負い目を持つことはないんじゃないか、と思う分けです。
つまり『今までは祇王が清盛の愛人として散々いい目を見て来たのだから、
今度は自分が少しはいい目を見る番だ』と思ってもおかしくないですよね。

その意味では『どうせあんただって、その内、私と同じ目に遇うわよ』と、
捨てぜりふみたいなことを祇王から言われて『確かにそうよね』と納得し、
祇王を追って出家する、なんていう展開はいかにも不自然に映る分けですね。
この辺は、男(坊主)が仏教説話として作り上げた話と見るなら、
なるほど、と納得できるのではないでしょうか。


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