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Tohazugatali Medical Review
4869
:
とはずがたり
:2017/05/14(日) 23:37:06
>>4867-4869
患者は増えるのに、彼らが頼る病院は倒産の瀬戸際にある。
首都圏が抱える問題は、病院の経営難だけではない。経営難はあくまで金の問題だ。診療報酬体系の規制緩和などで、対応できる側面もある。深刻なのは、首都圏で医師が不足していることだ。医師の養成には時間がかかる。早急に対応しないと手遅れになる。
読者の多くは「東京には医者が多いので、埼玉県、千葉県、神奈川県で多少不足しても問題ない」とお考えかもしれないが、この考えは間違っている。首都圏では医師の絶対数が足りないからだ。人口10万人あたりの医師数は230人にすぎない。四国は278人、九州北部は287人だ。実に2割以上の差がある。
さらに、首都圏は医師の偏在が著しい。人口10万人あたりの医師数は東京都314人に対し、埼玉県155人、千葉県179人、神奈川県202人だ。東京だけは医師が多いが、他の3県は南米や中東並みの数字だ。
首都圏は広い。全ての患者が東京の病院を受診できるわけではない。
このため、現在でも首都圏では救急車のたらい回しなどが頻発している。2013年3月には、埼玉県久喜市で救急車を呼んだ75才の男性が、県内外の25病院から合計36回、受け入れを断られ、最終的には県外の病院で死亡した事件があった。これも氷山の一角だ。
今後、状況は益々悪化する。図3は首都圏の75才人口1000人あたりの60歳以下の医師数の推移だ。情報工学を専門とする井元清哉教授(東大医科研)との共同研究である。
団塊世代が亡くなる2035年ころに一時的に状況は改善するが、その後団塊ジュニア世代が高齢化するため、再び医療ニーズは高まる。多くの県で、2050年の高齢者人口当たりの医師数は、現在の3分の2程度になる。そのころの東京の状況は、現在の千葉県や埼玉県とあまり変わらない。
「看護師不足」も発生する
首都圏の問題は医師不足だけではない。看護師も不足しているのだ。
医師と違うのは、東京でも不足していることだ。2014年末現在、東京都の人口10万人あたりの就業看護師数は727人で、埼玉県(569人)、千葉県(625人)、神奈川県(672人)、茨城県(674人)、愛知県(724人)についで少ない。
看護師が多いのは高知県で人口10万人あたり1314人。ついで鹿児島県(1216人)、佐賀県(1200人)、長崎県(1182人)と続く。高知県は東京都の実に1.8倍である。
既に弊害が出ている。2007年7月、東京都保健医療公社荏原病院の産科病棟の一つが閉鎖した。原因は看護師の欠員だった。当時、荏原病院の看護体制は定数316人に対し、欠員が58人もあった。これでは、病院機能は維持できない。
最近、厚労省は在宅診療などを強化した地域包括ケアシステムの確立を目指しているが、その際、重要な役割を果たすのは看護師だ。現状では、首都圏で地域包括ケアシステムを立ち上げるなど、机上の空論と言わざるをえない。
首都圏では医師と看護師が不足し、おまけに病院経営のコストも高い。このまま無策を決め込めば、早晩、首都圏の医療は崩壊する。
患者はどうすればいいのだろう。次回、この点を解説したい。
上 昌広(かみ・まさひろ)
医学博士。1968年兵庫県生まれ。1993年東京大学医学部医学科卒業、1999年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員、東京大学医科学研究所特任教授など歴任。2016年4月より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所を立ち上げ、理事長に就任。医療関係者など約5万人が講読するメールマガジン「MRIC」編集長。
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