低レベル放射性物質の処理は、米国だけで300億ドル(約3.1兆円)の産業となっています。その対象は、急速に老化しつつある原子力発電所から来る放射能汚染された部品や、放射性関連の医療廃棄物といったものです。そしてこの産業は、テキサスにある「Waste Control Specialists」(以下WCS)という会社が独占しています。彼らは放射性レベルによっては、追加料金をチャージしたりもしています。
厚さ1200フィート(約366m)の赤色岩層の土地にあるWaste Control Specialists(WCS)は、この天然の防御と、独自設計の7フィート(約2m)厚の鉄とコンクリートを敷いたシステムを組み合わせ、放射性廃棄物の安全で恒久的な廃棄を推進しています。この種の施設としては世界で最も頑強であり、米国の民間・公共の放射性廃棄物生産者に対する長期的ソリューションとなります。
放射性廃棄物の捨て場所をいち民間企業がコントロールしていて大丈夫なのか、ちょっと気になります。これについては専門家の意見も分かれていて、ある人たちは彼らの技術の方が政府の古い技術よりはるかに進んでいると言います。でも別の人たちは、民間企業がこんな風に危険性の高い物質の置き場所とかその保護方法を決めてしまっているのはきわめて問題だとしています。でも米国内に今ある廃棄方法としては、これがベストとしか言えないようです。
──オークリッジ国立研究所で1960年代に実際に稼働していた「熔融塩炉(MSR:Molten Salt Reactor)」が、ここ10年ほど大きな注目を集めるようになってきました。また、トリウム燃料の可能性も近年盛んに語られていますが、いわゆる「トリウム熔融塩炉」がいまこうして注目される理由は何なのでしょう?