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国際関係・安全保障論
1
:
■とはずがたり
:2003/01/22(水) 12:15
経済畑出身の私の鬼門,外交・安全保障を考える。
適宜,憲法談義・世界経済等もこちらで。
4376
:
とはずがたり
:2017/04/15(土) 20:30:52
>北朝鮮の主な外貨収入源とされる石炭貿易では、闇のルートを使って行う取引量が公式の輸出入統計に表れる規模より大きい。中国の山東半島周辺、あるいは沿岸都市にある中国企業と北朝鮮の業者との間で行われる石炭の密貿易は、公式の統計数値には反映されないからだ。正確な規模については推測するしかないが、正規の貿易規模に匹敵する年間1000万トン規模と見られる。
>また、北朝鮮の戦略物資と言われる原油にも抜け道がある。ロシアのウラジオストクで原油を精製した後に出る「M100」と呼ばれる重油は、北朝鮮北東部の羅先ラソン港に搬入されているとされるが、その規模は首領経済を支えるには十分と見られている。M100からガソリン、航空機のジェット燃料などを抽出できる技術はすでに確立済みだ。
北朝鮮・金正恩体制が制裁にビクともしない理由
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170404-OYT8T50007.html?page_no=1
龍谷大学教授・李相哲
2017年04月05日 09時40分
北朝鮮は5日朝、弾道ミサイル1発を発射した。核開発やミサイル発射など、暴走を続ける北朝鮮に対し、国際社会は厳しい経済制裁を科している。しかし、その効果はなかなか表れてこない。 金正恩 キムジョンウン 朝鮮労働党委員長が率いる現体制は崩壊の兆しを見せるどころか、金委員長の権力掌握が進み、ますます強固になったとの見方まである。金正恩体制の実態はどうなっているのか。朝鮮半島情勢に詳しい龍谷大学教授の李相哲さんに分析してもらった。
闇市場で息を吹き返した経済
経済的な側面からすれば、北朝鮮は一度崩壊したとみるべきだろう。1991年のソ連崩壊後、93年ごろから北朝鮮経済はほぼ麻痺まひ状態に陥った。旧ソ連など社会主義諸国からの支援が途絶えた上に、核開発問題で国際社会の制裁を受けることになったからだ。
それまで北朝鮮の住民は、食糧だけではなく生活に欠かせない塩、砂糖、味噌みそ、醤油しょうゆ、酒にいたるまで配給に頼っていた。当時の政権は住民に支給する物資を調達できる能力を喪失、配給を止めざるをえなかった。その結果、餓死者が続出し、90年代終わりころまでに「200万人以上の住民が餓死した」(97年に韓国に亡命した黄長ファンジャンヨプ(※)元朝鮮労働党書記の証言)とされる。※(ヨプは「火」へんに「華」)
住民の多くは、食べ物を探して国中を彷徨さまよい、生き残りをかけて国から逃げ出す(脱北)ことになった。脱北者数がピークに達した90年代終わりごろには、主な脱出先である中国には40万人もの脱北者がいたという統計もある。
脱北者の一部は、食糧やお金を持って国に戻り、中朝国境を行き来しながら密ひそかに物を売ったり、物々交換を行ったりするようになった。そうして生まれたのが北朝鮮の闇市場だ。
配給責任を放棄せざるを得なかった当局は、生計を維持するために自然発生的に生まれた闇市場を完全に取り締まることはできず、見て見ぬふりをするしかなかった。それまで北朝鮮の一般住民は、隣の町に出向く時でさえ、7つ以上の証明書を持参し、地元当局の許可を得なければならなかったが、食糧調達する住民を当局が無理やり統制することはできなかった。
このように自然発生的に始まった経済活動は、その後も拡大を続け、今では国内の経済活動の8割以上を占める規模となった。北朝鮮経済が外見的に良くなっているように見えるのは、こうした住民による経済活動、すなわち「住民経済」が活発になったからだ。そのおかげで餓死者は減り、脱北者も少なくなった。
闇市場の出現により、北朝鮮では経済システムだけでなく、統治システムにも大きな変化が訪れた。時の政権が体制維持に必要なお金を調達する「首領経済」と、市民が生計を立てるために自発的にお金を稼ぐ「住民経済」が完全に分離されたことで、政権は統治に必要な資金を住民から吸い上げることができなくなり、自ら調達しなければならなくなった。
抜け穴だらけの国際包囲網
これまで金正恩政権の首領経済を支えてきたのは、韓国から流れ込む資金(従来は南北の経済協力でできた開城ケソン工業団地で稼いだ資金や市民団体の支援など)、出稼ぎで海外に行った北朝鮮労働者からの上納金、在外北朝鮮公館から献納されるいわゆる「忠誠資金」、武器取引や密輸などで得た利益に加え、北朝鮮で産出された石炭などの天然資源を売った代金などであった。
金正恩政権はこうして得られた資金を国民の生活向上のためではなく、政権維持に必要な秘密警察や軍などの費用にあて、政権中枢の一部の人間らに利益の一部を配分し、体制を維持した。
上記の資金の多くは国際社会の制裁の影響を受ける。だが、その包囲網に抜け穴を提供し、首領経済を支えているのが中国だ。
4377
:
とはずがたり
:2017/04/15(土) 20:31:07
北朝鮮の主な外貨収入源とされる石炭貿易では、闇のルートを使って行う取引量が公式の輸出入統計に表れる規模より大きい。中国の山東半島周辺、あるいは沿岸都市にある中国企業と北朝鮮の業者との間で行われる石炭の密貿易は、公式の統計数値には反映されないからだ。正確な規模については推測するしかないが、正規の貿易規模に匹敵する年間1000万トン規模と見られる。
また、北朝鮮の戦略物資と言われる原油にも抜け道がある。ロシアのウラジオストクで原油を精製した後に出る「M100」と呼ばれる重油は、北朝鮮北東部の羅先ラソン港に搬入されているとされるが、その規模は首領経済を支えるには十分と見られている。M100からガソリン、航空機のジェット燃料などを抽出できる技術はすでに確立済みだ。
北朝鮮貿易代表部の人間は、「我々は制裁に慣れている」と制裁を嘲笑している。彼らは海外で稼いだドルや人民元を本国に運ぶ必要はない。監視の目が届きにくい中国にプールして必要に応じて引き出し、物資を調達している。
国際社会の北朝鮮に対する制裁が利かないのは、首領経済に的を絞らず、中途半端な制裁を実施したからだ。北朝鮮当局の首領経済は、一般住民らの経済活動に紛れ込ませる形で行われることが多いため、首領経済だけにターゲットを絞って制裁の網をかけるのは至難の業である。海上封鎖や中朝国境の封鎖といった思い切った手を打たない限り、首領経済の息を止めるのは難しい。
制裁で苦しむのは体制を支える人々
それでも、北朝鮮の体制維持のために作られた巨大な統治機構を維持するには、資金はまったく不足しているようだ。120万人とも言われる軍人や在外公館員を維持するだけでも莫大ばくだいな予算が必要だ。
朝鮮人民軍の部隊は自給自足を強いられている。武器などの軍事物資以外で生活に必要な物は自力で調達しなければならない。北朝鮮兵士の約3割が栄養失調状態にあるとの証言もある。
在外公館も涙ぐましい努力をしている。駐モスクワ北朝鮮大使館の例で見られるように、建物を賃貸しすることすらあるようだ。
近年、平壌の主要レストランや闇市場に出回る唐辛子や調味料といった食材や調理道具、生活必需品は、中国にある北朝鮮公館や貿易機関などに駐在する外交官や駐在員らが、手荷物として平壌に持ち込んでいるという。贅沢ぜいたく品も同じだ。
北京の中国人ビジネスマンの証言では、北京に駐在する北朝鮮籍の記者やその他の駐在員も、朝早く起きて北京の朝市で必要な食材などを調達し、中朝を結ぶ国際列車を利用して本国に送るという。
つまり、ここ数年の間、金正恩指導部をターゲットにした制裁は、皮肉なことに金正恩委員長ではなく、体制を支える人々に対して効果を発揮しているのである。
昨年、韓国に亡命した駐英国北朝鮮大使館の太永浩テヨンホ公使によると「北朝鮮幹部たちは皆絶望感を覚えている」という。高級幹部、特に在外公館員らは希望を見いだすこともできず、苦しんでいると証言している。
「普段は強気な北朝鮮の駐在員たちも、最近は苦しい事情を隠そうとしない」と北朝鮮駐在員らと交流のある中国ビジネスマンは証言する。
にもかかわらず、金正恩委員長は、なぜ苦しい経済事情を省みず、一発数百万ドルもするミサイルの発射実験を続けるのか。近年8回も発射実験を行った中距離弾道ミサイル「ムスダン」は国際的な相場で一回あたり3000万ドル(約33億円)もかかるという。加えて、経済破綻を導きかねないほどお金がかかる核実験を続けるのはなぜか。一言で言えば、金正恩体制維持のためである。
「エリート集団」に支えられた金正恩体制
北朝鮮という国家体制の特徴を一言で表現するならば「首領一人のための国家」だ。北朝鮮の統治機構もそうだが、住民一人一人も首領のために存在するというのは国是であり、北朝鮮を建国した金日成主席の時代からの伝統でもある。
金日成時代までは、「首領経済」の恩恵を受けるのは体制を支える約300万人に上る労働党員だった。北朝鮮では労働党の末端組織を「党細胞組織」という。3人以上30人以下の党員を擁する政府機関や各企業所(工場や企業)、農村には必ず、「党細胞」が存在する。このような細胞組織と首領をつなぐ神経系統に相当するのが各級党組織および統治機構である。
4378
:
とはずがたり
:2017/04/15(土) 20:31:23
>>4376-4378
首領経済はこの細胞と神経系統に栄養分を供給する役割を果たしたが、このシステムは経済事情の悪化により崩壊しつつある。党員らも生き残りをかけて闇の経済活動に加わっている。
現在、「首領経済」の恩恵を受けているのは、金正恩委員長と運命共同体の権力中枢部にいる人間と、その周囲を固める数万人の幹部と平壌の一部の市民からなる「エリート集団」である。この「エリート集団」が離反しないかぎり、現体制は維持されるのだ。
首領こそが唯一の存在
普通の民主国家ならば餓死者が出ただけでも人々の不満は高まり、政権交替を要求する声が充満するはずだが、北朝鮮でそのような可能性はほぼない。
金正恩委員長の後見人とされた張成沢チャンソンテク氏(国防委員会副委員長)が2013年に粛清されたのは、まともな経済運営をしようとしたからだ。それは、つまり首領の権威を否定することであり、統治システムに変化をもたらす可能性があった。
張氏が処刑される前に読み上げられた「罪状」の中に、そのヒントがある。大きな罪の一つとして、張氏が金正恩委員長を称たたえる記念の石碑を小さくするように指示したことが挙げられた。張氏は、無駄を省き、経済を立て直そうとしたのだろうが、首領こそが唯一の存在であるという北朝鮮において、首領の権威を否定するいかなる動きも容赦なく排除される。
金委員長が政権の座について以来、実に100人以上の高官が処刑された(韓国情報当局の発表)のは、首領の権威を保つためという理由以外の何物でもない。
北朝鮮では、国が荒廃し、住民が塗炭の苦しみを味わっても、体制維持のためならば、それは応分の犠牲とみなされる。
北朝鮮政府は住民に対し「我々が今苦しい生活を強いられているのは、米国をはじめとする帝国主義の制裁があるからだ。それに立ち向かうために核兵器やミサイルを造っている。それがあれば彼らはわれわれを圧殺することはできない」と主張する。
こうした論理に納得する人が多くいるはずはないが、金委員長に忠誠を誓うエリート集団が健在でありさえすれば、これが国家の論理となり、体制は維持される。
逆に、金委員長にしてみれば、エリート集団から忠誠心を引き出し、結束を図るためにも、核やミサイルを必要としている。核とミサイルがあればこそ、北朝鮮は対外的に存在感を誇示できるし、金委員長の偉大さを見せつけることも可能だからだ。
だから、核とミサイル開発に全てを集中している。このような強硬姿勢をいつまで貫くことができるかは、「首領経済」の台所事情と直接関係するだろう。国際社会が「首領経済」の息の根を止めないかぎり、金正恩体制が崩壊することはない。
プロフィル
李 相哲( り・そうてつ )
龍谷大学社会学部教授。1959年、中国・黒龍江省生まれ。北京中央民族大学卒業後、中国の日刊紙記者を経て87年に来日。95年、上智大学大学院文学研究科新聞学専攻で博士号(新聞学)取得。上智大学国際関係研究所客員研究員などを経て98年、龍谷大学社会学部助教授。2005年より現職。主な著書に『朴槿惠<パク・クネ>の挑戦 ―ムクゲの花が咲くとき』(中央公論新社)、『金正日秘録 なぜ正恩体制は崩壊しないのか』(産経新聞出版)などがある。
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