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政治思想総合スレ

558とはずがたり:2016/02/17(水) 18:49:44
>>557-558
 ≪「中国世界」からの深刻な挑戦≫

 梅棹は日本と西欧諸国の「近似性」として、中世の封建制を経て近代社会への脱皮を成し遂げた軌跡を指摘している。その「近似性」の故にこそ、日本は西欧諸国と同様に、「自由」「民主主義」「人権」「法の支配」といった西欧由来の「近代の所産」を、自らのものとして奉ずることができている。

 2010年代という現在の時代は、そうした「近代の所産」を永らく奉じてきた日本、西欧諸国、そしてその文明上の後嗣としての米豪両国の流儀が、梅棹の言葉にある「中国世界」「ロシア世界」、さらには「地中海・イスラム世界」から深刻な挑戦を受けている最中であると説明できよう。

 その挑戦によって招かれた国際政治上の緊張が具体的に現れている風景こそ、東にあっては、東シナ海や南シナ海における海洋「紛争」であり、西にあっては、たとえばウクライナ紛争に加え、シリア内戦が促したイスラム国(IS)の擡頭(たいとう)や欧州諸国への難民流入である。そこでは、前に触れた「近代の所産」が明白な脅威にさらされているのである。

 ≪対外関係の基軸となる大義≫

 このように考えれば、南シナ海情勢が日本に問いかけるものの本質が、浮かび上がってこよう。

 先刻の日中韓首脳会談直前、日本の「懸念」を向けられた王毅中国外相は、「日本は南シナ海と何の関係があるのだ」と語ったと報じられているけれども、この王毅外相の発言は「域外国は容喙(ようかい)するな」の変奏であり、自らの「勢力圏」であると想定する海域には中国政府の意志が優越するという「近代以前の論理」を表したものであろう。

 しかし、前に触れたように、米国が展開する「航行の自由」作戦に日豪両国やEUが「支持」を表明しているのは、それが「近代の所産」を護持するものだからである。ちなみに、米国政府は、韓国に対しても南シナ海情勢での共同歩調を迫ったけれども、韓国政府は、それに応じることはなかったようである。韓国は、梅棹の言葉にある「中国世界」に回帰しようとしているのであろう。

 日本が西欧諸国や米豪との提携を対外関係の基軸として位置付けているのは、地勢環境云々(うんぬん)以前にこうした国々と「近代の所産」の擁護という大義で一致しているからである。それは日本にとっては「近代」の価値を、自らのものとすべく奮励した明治以来の足跡の延長線上にあるものである。

 南シナ海情勢が問いかけているのは、日本が永きに渉(わた)って刻んだ足跡に対する「信念」や「確信」といったものである。当節、日本の対外姿勢で最も戒められるべきは、その明治以来の「信念」や「確信」に違背する振る舞いであろう。(さくらだ じゅん)


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