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:
とはずがたり
:2017/03/22(水) 19:19:18
ただし、このような強制的措置もありながらも、近代西洋では「国民」イメージが比較的受け入れられやすい環境にあったことも確かです。ヨーロッパの国境線は非常に複雑ですが、それは数百年に渡って幾度となく戦争を繰り返して確定されたものです。そのため、長い時間をかけて、文化や言語の広がりが、国境線によって相当程度区切られることになりました。
また、政治学者アーネスト・ゲルナーが指摘するように、18世紀に生まれた産業革命も、「国民」イメージの形成を促した条件になりました。産業革命によって資本主義経済が発達したことは、貴族と平民といった封建的身分制を破壊しました。それまで、一つの国であっても貴族と平民は別個の存在としてあり、「国民同士」ではありませんでした。つまり、身分制の崩壊は、それに代わる新たな「我々」イメージの形成を促したといえます。それに加えて、産業化が進んだことで、各国では農村や地方を単位とする自給自足に毛の生えた状態から、一つの国を単位とする国民経済が生まれました。それは、やはり長い時間をかけて、人々の移動範囲や、法律の適用範囲にもおよそ重なって発達したことで、人々に「国家」や「国民」といったイメージを抱かせやすくしたといえます。
つまり、国境線で文化がかなりの程度区切られ、そのなかで人々の生活圏が確立したことで、西洋では「国民」としての自覚をもちやすい環境が醸成されたのです。
これと連動して、アメリカ革命やフランス革命に象徴されるように、18世紀の西洋では民主主義が普及しましたが、これも「国民」イメージの形成と無縁ではありませんでした。専制支配を拒絶した後、国家の主権を引き継ぐ主体が誰なのかという話になった時、一番分かりやすかったのは「総体としての国民」でした。
こうして、例えスイスのように公用語が4つあったとしても「スイス人」がいるように、西洋世界では文化的な違いを超えて、フィクションとしての「国民」が実際に存在するものとして扱われるようになったのです。フィクションとしての「国民」が多少なりともリアリティあるものとして普及したことは、西洋に特有の条件が重なった、極めて特殊なものだったといえるでしょう。
開発途上国の苦悩
このフィクションは、18世紀からの列強による植民地支配と、19-20世紀にかけての独立を通じて、非西洋世界に「移植」されることになりました。しかし、当然というべきか、現在の先進国の多くを占める西洋世界で長期にわたって形作られたこのフィクションが非西洋世界、つまり現在の多くの開発途上国に定着することは困難でした。
開発途上国の多くでは、選挙が行われていたとしても民主主義が必ずしも定着しておらず、個人の権利などが制約されがちです。その一方で、強権的な政府は国民統合の求心力としてナショナリズムを叫ぶことが一般的で、そのなかで支配者個人がカリスマ化されることも稀ではありません。その大きな背景には、「国民」としての意識の薄さがあげられます。
例えば、イラクでは2003年のイラク戦争でフセイン政権が倒され、2005年の選挙で初めて民主的な政府が樹立されました。しかし、その結果として誕生したマリキ政権のもとで、人口の約60パーセントを占めるシーア派が政府の要職を占め、豊富な石油資源からの収入のほとんどは中央政府を通じてシーア派に手厚く配分されました。露骨なシーア派優遇にスンニ派やクルド人が不満を募らせたことは、いわば当然でしたが、米国などがこれに忠告すると、マリキ首相(当時)は「イラク・ナショナリズム」を前面に掲げ、これに反発しました。この状況下で台頭した「イスラーム国」(IS)に、スンニ派住民のなかから自発的に参加する人々が現れたことは、不思議ではありません。すなわち、マリキ首相も、ISを支持したスンニ派住民も、「イラク国民」という、あるのかないのか分からない結びつきより、「シーア派」、「スンニ派」という確固たる結びつきを選んだといえます。
イラクのように激しい戦闘にまで至るケースは稀ですが、多くの開発途上国ではフィクションとしての「国民」が、文字通りのフィクションに過ぎないものになりがちです。そこには、多くの開発途上国に共通する条件があります。現在の国境線の多くは植民地支配の遺物であり、現地の文化や言語の広がりと無縁にひかれたものです。そのため、一つの国のなかに多くの民族や宗派が林立したり、逆に一つの民族や宗派が国境線で分断されたりすることは珍しくありません。
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