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「夏の終り」

1Morgen:2022/08/31(水) 23:32:31
 毎年この時期になると、伊東静雄の「夏の終」と「夏の終り」が、脳裏に浮かんできます。



 皆様ご存じの通り、「夏の終」は『春のいそぎ』所収、「夏の終り」は『反響』所収でありますが、その初出は(『全集』の「作品年譜」)、「夏の終」は(不明)とされており、「夏の終り」は『文化展望』昭和21年10月号となっております。



 因みに、「書簡」:昭和17年8月7日 池田勉宛(封書)には、以下のように書かれています。(抜粋)

「・・・・・私は三月以来体と頭と双方をこわして閉口しきっていましたが七月半ごろから酷暑の太陽に射られて、いくらか元気を恢復し昨今は大いに快調にて、毎日のように海水浴に大浜に行っています(生徒をつれてではありません)本式に水泳場通いをしたのは生まれて始めてであります。・・・・・」



 このように、大浜海水浴場に通った昭和17年(1942年)夏に「夏の終」が書かれた可能性が高いと思いますが、これは今から丁度80年前のことになります。(静雄35歳、太平洋戦争の開戦直後でもあります。)  

・・・・・ただ(ある)壮大なものが徐かに傾いてゐるのであった・・・・・



 一方の「夏の終り」は、それから4年後の昭和21年、敗戦1年後の夏



夜来の颱風にひとりはぐれた白い雲が

・・・・・水田の面を移り、

ちひさく動く行人をおひ越して

しずかにしずかに村落の屋根屋根や

樹上にかげり

・・・・・さよなら・・・・・さよなら・・・・・

・・・・・さよなら・・・・・さよなら・・・・・

ずっとこの会釈をつづけながら 

やがて優しくわが視野から遠ざかる



 <ただ(ある)壮大なものが徐かに傾いていた>崩壊の危機感が、現実の大悲劇となってしまい、戦時中の人々の苦労が水泡に帰したという空しさ、戦争が終った安堵感。そして、苦しかった思い出のひとつひとつもやがて優しくわが視野から遠ざかる。そんな情景が浮かんでまいります。



 猛烈な台風11号の進路が、大変心配です。

お互いに十分気を付けて、台風準備をしましょう。


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