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生徒会陣営キャラ公開スレ

21サンライトイエローシャワー:2012/10/24(水) 01:35:54
「今日の稽古、どうする?」

「いつもより試合を多めにやりたいな!」

姉弟での登校。これも少し恥ずかしい。姉ちゃんの外見だと兄妹みたいだけど。
今日の降水確率は0%だけど、傘術家たるもの傘は常に持ち歩かねばならない。姉ちゃんは「ウパナンダ」、俺は「クラミツハ」。歩く度に手にした傘が小さく揺れる。ウパナンダは生きた傘で、時々口を挟むこともある。
 
それにしても、今日っていうか最近の姉ちゃんはなんだか変だ。妙にそわそわしてて、やたら俺と学校に行きたがる。姉ちゃんは妹の金雨と一緒に普段学校に行っていて、希望崎学園と金雨の小学校は途中まで同じ道程なんだけど、一家は小学校とは逆方向なのだ。つまり俺を迎えに来るなら金雨とは一緒に行けない。前は金雨が早く学校に行かなきゃ行けないとか、学校を休むとか、そういうときに俺と一緒に行っていた。なのに最近は。金雨の具合が良くないのか、喧嘩でもしたんだろうか。

「じゃ、放課後にまたねー」

ブンブンと元気よく手を振る姉ちゃんと別れる。授業を受けて弁当を食べて友達と喋って、いつも通りだ。そして、放課後。

むわっとした道場内、剣道部の隣で「傘部」は傘術の稽古をしている。竹刀と傘の音が一緒に響く。
ツルツルした道場の床は「蛟」に向いている。剣道のすり足とは真逆の滑らかな動きで姉ちゃんが俺に飛び込んでくる。突き出した姉ちゃんの傘を「雨流」で払いながら突きを出そうとすると、姉ちゃんが体勢を崩した。転んだかのような動きによる回避だ。俺の傘は空を切る。姉ちゃんは床を転げつつ、俺の脛を狙って強引な体勢から打突を繰り出した。軟質ゴムの石突が俺の脛を穿つ直前、俺は足を上げて打突を避け、そして空を切った石突を踏んで抑える。ハッとして視線を上げた姉ちゃんの眉間に、俺は傘を突きつけた。


「しーくん強いねえ」

「俺なんてまだまだだよ。兄貴に比べたら」

「もう。そういうこと負かした相手の前で言わない」

次に順番が回ってくるのを待ちながら、他の部員の試合を見る。俺の言葉にちょっと頬を膨らませて横目で俺を睨んでくる姉ちゃん。いつも通り、なのかな?

「ボク、ちょっとトイレ行ってくる。ウパちゃんお願いね」

「ん」

すっくと立ち上がり、スーッと駆けていく。そわそわしているのか、いつも通りなのか、よくわからない。預けられたウパナンダをクラミツハと一緒に抱いていると、ウパナンダが口(口なんて無いけど)を開く。

「時雨、畢には言うなって言われてるんだけどね」

「な、何?」

傘なのに理知的な印象を与える声が言葉を紡ぐ。部員の掛け声よりもそれに俺の聴覚は向けられた。

「畢は凄く君を心配していたよ。ハルマゲドンに出るのは仕方ないけど、死んだらどうしようって」

「……」

ああ、考えればすぐにわかることだった。
姉ちゃんはあんな性格だけど、この魔人学園で多くの魔人と交わった以上、必然多くの死を経験していることになる。ハルマゲドンでってわけじゃ無いけど2年前、従姉の雨雫姉さんも亡くしている。一家の兄弟達も多くがハルマゲドンに出て、その生命を危険に晒しているのだ。番長グループには、あまり親しくは無いが、従姉妹だったるいもいる。
姉ちゃんが一緒に学校行きたがったのは、なるべく一緒にいようとしたのはきっと、もう会えなくなるかも知れないから。でもそんな気持ちは、姉ちゃんが直接俺に伝えるには湿っぽすぎる。だから悟られまいとしながら。

「ウパナンダ……ありがとう……!」

「うん……」

 それから数十秒して道場に戻ってきた姉ちゃんと、その日は3度試合をした。

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 ハルマゲドンの日の朝――生徒会室へと続く廊下の前で俺と姉ちゃんは別れた。人生の大半を過ごした雨竜院家の人たちにも、新しい家族一家の人たちにも、色々と思いはあったけれど、多分今の俺が一番親しい相手はこの人だから。

「しーくん……武運を祈るよ!」

姉ちゃんが普段言いそうも無い台詞にちょっと噴き出しそうになったけれど、その真剣な様子に俺も精一杯男らしく笑ってみせる。少しはかっこよく見えるだろうか。

姉ちゃんが突き出したウパナンダの石突に、俺も同じようにクラミツハの石突を合わせる。拳を合わせるのが普通だろうけど、これが傘術家の作法なのだ。

目の端に涙を浮かべて微笑む姉ちゃんに、俺は必ず生還すると誓った。


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