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2013/1/20リレー小説用スレッド

1師走:2013/01/20(日) 00:47:20
リレー小説はこちらのスレッドで進行して下さい。
投稿し終わったら、チャットルームの方に次の人を呼びに行って下さい。
目安は掲示板で六行です。
お題は「ファンタジー」「レース」「拷問」です。

2師走:2013/01/20(日) 00:51:24
さぁ、ついに本番だ。
余裕ぶったつもりで、僕は唇を軽く舐めて、跨った相棒の首を叩いた。相棒は小さく鳴いて、首を震わせた。
隣の奴が乗っているのは随分気が荒そうで、しきりに地面を足でひっかいている。鼻息もごうごうと音を立てていた。
「位置について」という、係員の声が鋭く上がった。
間もなく、スタートだ。

3風観:2013/01/20(日) 01:00:05
 パァンと空砲の音が響く。皆が一斉にスタートする。もちろん、僕らも。
 スタートはとてもよかった。僕らは先頭に躍り出た。
 頭の上から歓声が聞こえる。このレースに金を賭けている巨人たちのうるさい声だ。気にしてはいけない。たとえどんな声が聞こえてきても動揺するな。負けたくなければ。
 無心で相棒に鞭を打つ。後ろのやつらも、上のやつらも気にするな。
 お前の一番の走りを見せてくれ、相棒。

4有内:2013/01/20(日) 01:10:34
後ろから追い上げるのは六つ脚のスレイプニル。
最高速度だけで言えば、恐らくこのレースに出ている中では断トツ。
しかし、速さだけで勝てるほど、このレースは甘くない。
ドンッ、と後方で何かが響いた。
始まったか。
このレース名物の『妨害』が。

5師走:2013/01/20(日) 01:20:43
ばらばらと降りかかる破片を手で払い、大きい物は相棒に踵で指示をくれてやりながら避ける。
巨人たちは、自分のお気に入りが上手くやらない時は、好き勝手な事をするのが許されている。
さっきのだって、大方どいつかが何か岩でも投げたんだろう。悲鳴がいくつか聞こえた気がするが、当たったのが僕でも相棒でもないから何でも構わない。
競争相手が減るのなら、むしろ好都合だ。
走り続けられなくなった奴らに祈ることもせず、僕は前だけを睨んだ。

6風観:2013/01/20(日) 01:29:59
 結局、生き残った者が勝つのだ。前のレースじゃ、僕らしか生き残らなかった。だから優勝できた。
 生き残るために必要なのは、とにかく走ること。速く、速く。
 鞭を握る手に力がこもる。相棒よ、痛いだろうが我慢してくれ。もう少しの辛抱だ。
 近づいてくるゴール。あのアーチをくぐれば、生存が保障される。急げ、相棒。
 ゴールまであとわずかというところで、僕たちの頭上に影が降ってきた。

7有内:2013/01/20(日) 01:35:43
ゴッ、と何かが僕の頭に当たる。
瞬間、全てが真っ白になった。
体が言うことを聞かない。駄目だ、ここで手綱を放しては。レースに……
いや、逆だ。レースなんて関係無い。ここで手綱を放さないと、相棒が巻き込まれる。
ごめんよ、相棒。お前だけでも生き残ってくれ。
薄れゆく意識の中で、僕はその手を放した。

8寄木:2013/01/20(日) 01:42:10
頭を襲う鈍痛と共に、意識は深淵から回復する
「目が覚めたようだね」
意識から回復した僕の目の前に立っていたのは、艶やかな赤い髪の女だった。
「……レースは、僕の相棒はどうなったんだ?」
「負けたよ」
赤髪の女は即答する。ああ、やはり。目の前が真っ暗になった気がした。

9師走:2013/01/20(日) 01:48:29
「相棒の心配をしている場合? 今は君自身の心配をした方がいいんじゃない」
ぎし、と身体が軋むのを感じた。痛いのは頭だけではなかったらしい。
両手首に枷が嵌められ、腕を上げた状態になっている。足はついているから辛くはないが、歩いて逃げられる状況でないのは確かだ。
僕の視線が自分の状況を確認するために走るのを見て、赤髪の女は含み笑う。
「勿論、レースに負けた奴がどうなるかについては、知っているだろうね?」

10風観:2013/01/20(日) 01:55:49
「レースに負けた者は、そのパトロンにお仕置きを受ける。それは、君も例外じゃない」
 冷静な顔で女が言う。考えるだけで頭痛が増した。
 パトロンは金持ちの巨人だ。「お仕置き」なんてそんな生半可なものではない。拷問といったほうが正しいかもしれない。
「でも、そんなのはいやだろう」
 女が妖しく微笑む。その手には、銀色に輝くものがあった。

11有内:2013/01/20(日) 02:12:02
コイン。この国で使われている硬貨だった。
「ゲームをしよう。ルールは簡単。コインの表か裏を当てるだけだよ」
女の目はあくまで真面目だ。
「君が勝てば、ここの責任者たる私の権限を以て、君にもう一度チャンスを与えるようにパトロンに進言しようじゃないか」
これが噂に聞く『セカンドチャンス』。
ここで負ければ、地獄が待っている。

12師走:2013/01/20(日) 02:19:11
「賭けに乗るかい?」
僕の鼻先に、えぐるようにしてコインをぶつける。
からからの口をなんとか開いて、女に問いを投げた。
「その前に聞きたい事がある」
「何だ」
「タダでそんな賭けやらせてくれる訳ないだろう。条件は何だ?」
女の目の中に、愉快そうな光が躍った。

13風観:2013/01/20(日) 02:24:34
「君の相棒がほしい」
 僕は耳を疑った。動揺する僕に構わず、女は続ける。
「君の相棒は素晴らしい。君がいなくともゴールまでたどり着いた。背中に君がいれば一位だったんだよ」
 ということは、相棒はちゃんと生きている。よかった。安堵のため息が漏れた。
「そんな素晴らしい馬を私にくれたら、チャンスをあげよう」

14有内:2013/01/20(日) 02:31:25
「まあ、案ずることは無いよ。賭けに負ければ君の馬は貰うけど、要は勝てばいいんだから」
「……無理だ」
相棒を賭けになんて出せるわけが無い。それなら、僕が地獄に落ちた方がマシだ。
「まあ、色々言ってるけどね。実を言うと、君に選択肢なんて無いんだよ」
「なに?」
「だって君はレースに負けたんだから。そんなんで次も同じ馬に乗れると?」

15師走:2013/01/20(日) 02:37:30
考えてみれば当たり前だ。僕の相棒は僕がいなくてもゴールにたどり着けたのだ。落ちる僕などが上に乗っている方が非効率というものだ。もっと強靭な乗り手を乗せる方が確実だろう。
けれど、誇り高い僕の相棒が、僕以外の人間を乗せても走るだろうか。
僕だって、相棒に僕以外の人間が乗る事など耐えられはしない。
なら道は一つしかない。
僕と相棒が生き残る為には。
「その賭け、乗った」

16有内:2013/01/20(日) 02:42:33
「いい返事だ」
ピンッ、と勢いよく女の手からコインが真上に弾け飛ぶ。
「国章が刻まれている方が表だよ。さてどちらかな?」
パシッ、と女が空中のコインを左手の甲に当てて隠す。
今まで感じたことの無い緊張。
これで当てないと、僕と相棒は――

17師走:2013/01/20(日) 02:46:47
そう、相棒の速さについてこれるのは僕しかいない。
どの走り手たちも、相棒を負い抜けない。
他のどの乗り手も、相棒に乗れるはずがない。
あの風のように過ぎる景色を見極められるのは、僕の目だけだ。
そしてこの目は、確かに左手に乗る瞬間のコインを捉えていた。僕は力強く答える。
「表」

18有内:2013/01/20(日) 02:53:11
女がゆっくりと、覆っていた右手を外す。
自信はある。表。絶対に、これだけは外せない。
そこにあったのは、この国の国章だった。
「やれやれ、運が良い」
女は笑みを特に崩さない。
「参った。君の勝ちだよ」

19師走:2013/01/20(日) 03:02:21
女はコインをポケットにしまうと、両手の枷を外した。
「おめでとう、君は地獄から逃れた」
僕は手首や身体を動かして確かめる。よく見ると、丁寧な程の手当てがしてあった。
「相棒は、厩舎か? すぐに調整に戻りたい」
「おや。君は勘違いをしているようだね。あれは賭けの参加費だよ」
笑んだまま、女は首を傾げた。「君は良い乗り手だ。もっと速い馬に乗せる」

20有内:2013/01/20(日) 03:22:45
「……そんな」
「おや、そんな悲しい顔をしてどうしたのかな。もっと喜びなよ。今より成績を伸ばせるチャンスなんだから」
「そんなの無理だ! 僕には相棒しか居ない! あいつじゃなきゃ駄目なんだ!」
叫ぶ。声の出る限り。
それは僕が本当にあいつと一緒に居たいから。一緒に、レースで走りたいから。

21師走:2013/01/20(日) 03:31:58
「駄々をこねるんじゃない。自分の立場、分かってる?」
冷然と女が見下した。「厩舎に行きたいなら行けばいい。君が乗る予定のが待っている」
僕ははっとした。立場。そうだ、女はさっき、「良い乗り手」だと言った。だとしたら。
「僕以外で一番上手い乗り手と、僕が乗る予定の馬。それと僕と相棒で、次のレースを。負けたら、従います。証明させて下さい」
女の方を真っ直ぐに見て、頭を下げた。
もう一度相棒に乗りたい。相棒と共に走りたい。僕の心はそれだけだった。

22有内:2013/01/20(日) 03:38:26
「面白い提案だね」
女は不敵に笑う。
「レースが面白くなるなら、それでいいよ。ふふっ、相棒を賭けた騎手が格上のコンビに挑む。盛り上がるだろうね」
一瞬、背筋が寒くなる。
盛り上がる、ということはその分、『妨害』だってより激しいものになる。怪我だって今回ほどのものじゃ済まないかもしれない。
でも、それでも――

23師走:2013/01/20(日) 03:44:39
僕は、いや、僕と相棒は、最初からこのレースに命を賭けている。
一人でないなら、怖い物なんて何もない。
目を閉じて風に立つ相棒の姿を思い浮かべると、背筋の寒さは消えた。代わりに暖かさが身体に満ちて行く。
目を開くと、それを待っていたように女はぱんと手を打った。
「よろしい。厩舎へ行って、相棒と再会するといい」
僕は、頷いて歩き出した。「良いレースを期待しているよ」という声が、背中にかかった。
そして再び、僕と相棒は、土煙と喧騒の場へ戻ってきた。


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