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平成12年度刑事訴訟法第2問

1問題:2003/05/17(土) 22:39 ID:EhdRk.ss
被告人は,「X日,Y町のA方において,同人の高級時計を窃取した。」として起訴されたが,公判では,「その時計は,そのころ,同所付近において,知人から,盗品であるかもしれないと思いながらも5万円で買い受けたものである。」と主張している。証拠調べの結果,裁判所は,被告人の主張どおりの心証を得た。
1 裁判所は窃盗の訴因のままで,盗品の有償による譲受けの罪で被告人を有罪とすることができるか。
2 窃盗の訴因のままでは有罪とすることができないとした場合,裁判所はどうすべきか。

21,小問1について:2003/05/17(土) 22:41 ID:EhdRk.ss
(1)本問では審理の結果,当初の訴因である窃盗とは異なる,盗品の有償による譲受けという事実について認定しようとしている。訴因逸脱認定は絶対的控訴事由とされるが(378条3項),かといって,あまり軽微な事実の変化に対し,いちいち訴因を変更するのは,訴訟を遅延させ,被告人の迅速な裁判を受ける権利(憲法37条1項)を侵害する。では,訴因を変更することなくどこまでその記載と異なる認定をなしうるか。

3(2)訴因は,:2003/05/17(土) 22:42 ID:EhdRk.ss
単なる法的評価ではなく,審判の対象として検察官の主張する事実であるのだから,事実が変化した場合は訴因変更が必要である。そして,起訴状記載の事実と認定事実との間に些細な齟齬がある場合にまで訴因変更を要求することは実際的でない。よって,訴因が,裁判所に対して審判対象を明示して犯罪事実を個別特定化する機能を持つことからすれば,社会的・法律的意味合いを異にするような変化があって初めて訴因変更すればよい(①)。
 また,訴因は,被告人に対して防御の範囲を明示する機能(告知機能)を持つことからすれば,防御範囲が変化して防御に不利益が生じる場合は訴因変更すべきである。そして,防御に不利益が生じるかどうかは個々の具体的事案を離れて類型的・抽象的に判断するべきである(②)。

4(3)本問では,:2003/05/17(土) 22:44 ID:EhdRk.ss
訴因事実が窃盗であるのに対し,認定事実は盗品の有償による譲受けであるから,社会的・法律的意味合いを異にする(①)。また,本問では被告人が盗品の有償による譲受けの事実を認めているから,この事案においては被告人には不利益はないとも考えられるが,類型的・抽象的に判断すれば,被告人に対してあらかじめ示された,防御すべき範囲内における主張でないのに訴因変更せずにこれを認めるのは被告人にとって不利益である(②)。

5(4)よって,:2003/05/17(土) 22:44 ID:EhdRk.ss
本問では盗品の有償による譲受けの罪に訴因変更しなければ被告人を有罪とすることができない。

62,小問2について:2003/05/17(土) 22:46 ID:EhdRk.ss
(1)現行刑事訴訟法は,当事者主義的訴訟構造(298条1項,312条1項)を採用しており,審判対象である訴因は,当事者である検察官が設定するから,これを変更するのも検察官の権限である。裁判所は検察官の設定した訴因についてのみ審理すればよいのが原則である。

7(2)しかし,:2003/05/17(土) 22:47 ID:EhdRk.ss
適切な訴因に変更すれば有罪となるような場合に,不適切な訴因のまま変更されなかったからといって,無罪判決を下したのでは,真実発見の要請(1条)が満たされない。

8(3)そこでもし,:2003/05/17(土) 22:48 ID:EhdRk.ss
検察官が訴因変更しようとしない場合は,まず,検察官に対して釈明を求めたり(刑事訴訟規則208条),変更の勧告をしたりするべきである。検察官がそれにより盗品の有償による譲受けの罪へ訴因変更請求すれば,盗品の有償による譲受けの罪について有罪判決を下せばよい。

9(4)しかしそれでもなお,:2003/05/17(土) 22:51 ID:EhdRk.ss
検察官が訴因変更請求しない場合は,訴因変更命令を下すべきである(312条2項)。
 それでは,命令したにもかかわらず検察官が訴因変更しない場合,裁判所としてはそのまま窃盗につき無罪判決を下すべきか,訴因変更がなされたものとみなして盗品の有償による譲受けの罪で有罪判決を下すべきか,訴因変更命令に形成力があるかが問題となる。
 訴因変更命令に形成力を認めることは,裁判所に審判対象設定権を認めることになり,当事者主義的訴訟構造に正面から抵触する。
 よって,形成力は認められない。

10(5)以上により,:2003/05/17(土) 22:53 ID:EhdRk.ss
本問の場合裁判所は検察官の訴因変更手続きを促し,またはこれを命ずべきであるが,検察官の訴因変更請求がなければ,盗品の有償による譲受けの罪で有罪判決を下すことはできず,窃盗の訴因について無罪判決を下すべきである。
                    以  上

11答案を作成し終わって一言:2003/05/17(土) 22:54 ID:EhdRk.ss
こんな間抜けな検察官がいるはずない。

12ふぁるこ:2003/05/18(日) 18:42 ID:4o2gC9l6
小問1の規範定立ですが、

(2)訴因は,審判の対象として検察官の主張する事実である(256条3項)のだから,事実が変化した場合は原則として訴因変更が必要である。しかし,起訴状記載の事実と認定事実との差異が小さな場合にまで訴因変更を要求することは実際的でない。そこで,訴因が,裁判所に対して審判対象を明示して犯罪事実を個別特定化する機能を持つことからすれば,社会的・法律的意味合いを異にするような変化がある場合には訴因の変更を要すると解する(①)。
 また,訴因は,同時に被告人に対して防御の範囲を明示する機能を持つことから,差異が僅少であっても防御範囲が変化して防御に不利益が生じる場合は訴因変更を要するものと解する。そして,防御に不利益が生じるかどうかは個々の具体的事案を離れて類型的・抽象的に判断するべきである(②)。

くらいですかね。最後の抽象的防御を書きたいのであれば、論証自体を手直ししたほうがよいのですが。(判例百選48番解説参照)
それから、同じことをいうなら、短く、簡単にいうほうが答案作成上有利です。

ここまでは、たいした問題ではないのですが、問題は小問2ですね。
訴因変更命令を下すべきという結論(平野説、田宮説)が(4)にあるのですが、そこにいたる理由が述べられていません。
審判対象の設定が検察官の専権であることを重視すると、勧告までで十分で命令までは要しないという考え方(最高裁昭和58年9月6日)もありえますので、
証拠の明白性と犯罪の重大性の要件を立てた上であてはめをするべきでしょう。形成力はそのあとの問題です。


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