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平成3年度刑事訴訟法第2問

1問題:2003/05/17(土) 22:08 ID:EhdRk.ss
甲は,「乙が,X日,Y宝石店から貴金属を窃取した際,同店前で見張りをして乙の犯行を幇助した。」との事実により起訴された。次の場合において裁判所は訴因変更を許可することができるか。
1 検察官が,本件訴因を,乙との窃盗の共同正犯の訴因に変更請求した場合
2 検察官が,1の共同正犯の訴因に加え,Y宝石店への建造物侵入の訴因を追加請求した場合
3 仮に,1の共同正犯の訴因変更請求が認められたとして,更にその訴因を「同日ころ,乙が窃取した貴金属を買い受けて賍物を故買した。」との訴因に変更請求した場合

21,(1)訴因変更が:2003/05/17(土) 22:12 ID:EhdRk.ss
許されるかについては,312条1項が,「公訴事実の同一性を害しない限度において」訴因変更を認めていることから,公訴事実の同一性の判断基準が問題となる。
 この点,存在するかどうかわからない嫌疑,一定の事実関係(公訴事実)を想定し,その範囲内かどうかということで判断するのは,被告人の無罪が推定されるべきなのにそれに反し,妥当ではない。よって,新旧両訴因を比較することによって公訴事実の同一性があるか否かを判断するしかない。
(2)訴因変更はそもそも,審判の過程において,裁判所が当初の訴因と異なる事実について,心証を持つに至った場合,当初の訴因については無罪として,改めて公訴提起をするのでは手続の無駄であるし,被告人にも不利益だから認められたのである。とすれば,「公訴事実の同一性」(訴因変更が認められる範囲)とは,この訴訟1回で解決すべきか,やり直すべきかという問題によって決めるべきである。
(3)そして,この問題は,訴訟経済と被告人の防御権の調和(1条)をいかに図るかである。訴因の基本的部分(犯罪を構成する主要な要素)が共通していれば同一に訴訟資料を利用することができるから,裁判所の訴訟経済・検察官の便宜・被告人の負担軽減を図ることができ,合理的である。(このように解すると,(一事不再理効は公訴事実の同一性の範囲内で及ぶから,337条1号)一事不再理効の範囲も広くなるが,被告人には利益であり,検察官の攻撃力が優越していることを考えれば,実質的には公平な結果となる。また,準備期間を十分に与えれば,被告人の防御の点で特に不利益になるわけでもない(312条4項)。)
(4)よって,犯罪を構成する主要な要素が同一であれば「公訴事実の同一性」があるといえる。犯罪を構成する主要な要素は行為と結果であるが,両者が同一である必要はなく,行為または結果のいずれかが共通であれば公訴事実が同一であるといえる。

32,小問1について:2003/05/17(土) 22:13 ID:EhdRk.ss
 同一日時,場所における同一被害者の同一物に対する窃盗幇助(刑法235条,62条)から窃盗の共同正犯(刑法235条,60条)への訴因変更であるから,同一物の窃盗という,結果を共通にする。したがって,窃盗幇助の訴因と窃盗の共同正犯の訴因とは公訴事実を同一にしており,裁判所は訴因変更を許可できる。

43,小問2について:2003/05/17(土) 22:14 ID:EhdRk.ss
 窃盗の共同正犯と,同一日時,場所における住居侵入罪(刑法130条)は,それぞれ,目的,手段の関係にあるといえ(牽連犯,刑法54条1項),行為を共通にする。したがって,窃盗の共同正犯と住居侵入罪とは公訴事実を同一にしており,裁判所は訴因変更を許可できる。

54,小問3について:2003/05/17(土) 22:17 ID:EhdRk.ss
(1)小問1で検討したように,窃盗幇助と窃盗の共同正犯の訴因は公訴事実を同一にしている。そして,窃盗の共同正犯と贓物故買罪(盗品有償譲受け罪,刑法256条2項)の訴因の関係は,盗品有償譲受けは窃盗の不可罰的事後行為であるから,行為を共通にしているといえ,両訴因は公訴事実を同一にしている。
 そこで,これらの訴因変更も認められるように思える。
(2)しかし,当初の窃盗幇助と最終的に変更しようとしている盗品有償譲受けとを比較すると,盗品有償譲受けは窃盗幇助の不可罰的事後行為ではなく,同一物に対する犯罪であっても,行為が異なる。結果も,盗品有償譲受けは,窃盗の被害者の,盗品に対する追求回復を困難にすることであるのに対し,窃盗は,被害者の物に対する占有または所有を侵害することであるから,両者は異なっている。よって,窃盗幇助と盗品有償譲受けの訴因は公訴事実を同一にしていない。
 そうだとすると,本問のような訴因変更を認めるならば,中間に適当ないくつかの訴因をはさむことによって,理論上訴因変更をなしうる範囲が無限に広がるおそれがあるが,これでは審判対象を確定し,被告人の防御の範囲を画そうとした312条の規定の趣旨が没却される。
(3)したがって,本問のように2回以上訴因を変更する場合においては,新たに変更しようとする訴因と現訴因の間のみならず,最初の訴因との間にも公訴事実の同一性がなければならない。
(4)よって,本問では,裁判所は,訴因変更を許可できない。
                以  上


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