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平成5年度刑事訴訟法第1問

1問題:2003/05/17(土) 13:40 ID:EhdRk.ss
司法警察職員甲は,かねてから覚せい剤密売の疑いがあった乙に対し,「覚せい剤を高く買いたいという客がいるが,入手できないか。」との話をもちかけた。乙は警戒し,幾度か断ったものの,甲の執拗な働き掛けに最後は応じた。乙が約束の場所に赴いたところ,張込中の司法警察職員丙により覚せい剤所持の現行犯人として逮捕され,所持していた覚せい剤は証拠物として押収された。このような捜査方法の適否及びそこから生じ得る問題点を論述せよ。

2添削ありがと〜byLSD:2003/05/17(土) 13:42 ID:EhdRk.ss
1,本問の捜査方法の適否
(1)本問のような捜査方法は,おとり捜査と呼ばれ,それ自体は個人の身体・住居・財産などの重要な権利に制約を加えるものではないし,犯罪実行者も自己の意思で犯罪の実行に出た以上,強制処分にはあたらない。しかし,任意処分であっても,無制限に許されるわけではなく,捜査比例の原則に基づいて,①必要性②相当性の要件を満たすことが必要である。

3Law School's Door:2003/05/17(土) 13:44 ID:EhdRk.ss
 本問では,おとり捜査は覚せい剤事犯の検挙のためになされているが,このような薬物事犯では被害者が存在せず,しかも組織的に秘密裡に行われることが多いので,通常の捜査方法では検挙がむすかしい。その一方で,薬物犯罪は常習的に行われるために,おとり捜査の手法は犯人検挙のうえで極めて有効な手段といえる。かかる点からすると,本問の捜査は必要性の要件は満たす(①)。

4Law School's Door:2003/05/17(土) 13:45 ID:EhdRk.ss
 次に相当性を検討してみる。おとり捜査はの問題点は,犯罪を防止すべき国家が国民を詐術にかけ犯罪を作り出しデュープロセスの要請(憲法31条)に反するおそれがある点である。よって,新たに犯罪を作り出したかどうかで相当性を判断すべきである。新たに犯罪を作り出したかどうかは,わなにかけられる前から犯人に犯意があったか,それともわなにかけられて初めて犯意を生じたかで判断すべきである。本問では,乙はかねてから覚せい剤密売の疑いがあったので,わなにかけられる前から犯意があったといえるようにも思える。しかし,甲は乙が幾度か断ったにもかかわらず,執拗に働き掛け,その結果として乙は覚せい剤所持罪を犯したのであるから,わなにかけられて初めて犯意を生じた場合に等しい。よって,本問の捜査は相当ではない(②)。

5Law School's Door:2003/05/17(土) 13:46 ID:EhdRk.ss
 したがって,本問の捜査は違法である。

6Law School's Door:2003/05/17(土) 13:47 ID:EhdRk.ss
(2)違法な捜査によって惹き起こされた犯罪の現行犯逮捕(213条)は違法である。違法な逮捕に伴う証拠物の押収(220条1項2号)は違法である。よって,乙を覚せい剤所持の現行犯人として逮捕し,所持していた覚せい剤は証拠物として押収したことは違法である。

7Law School's Door:2003/05/17(土) 13:48 ID:EhdRk.ss
2,生じうる問題点
(1)では,この違法捜査・逮捕・押収に対する措置としていかなるものが考えられるか。

8Law School's Door:2003/05/17(土) 13:48 ID:EhdRk.ss
(2)まず,勾留請求の却下(207条),被告人を無罪にする,捜査官に対する責任追及,さらには国家賠償請求(憲法17条)が考えられる。

9Law School's Door:2003/05/17(土) 13:49 ID:EhdRk.ss
(3)また,訴訟法上の救済手段としては,違法な捜査によって得た証拠を違法収集証拠として証拠排除すべきである。

10Law School's Door:2003/05/17(土) 13:50 ID:EhdRk.ss
 しかし,証拠排除のみでは,他の証拠によって有罪とされる危険もある。公訴提起自体を無効とできるか。

11Law School's Door:2003/05/17(土) 13:57 ID:EhdRk.ss
 確かに,捜査と公訴提起は手続的に不可分一体の関係にあるとはいえず,捜査が違法であるからといって公訴提起が当然には無効とならない。しかし,被告人からみればどちらも国家の作用であり,国家が犯罪自体を惹き起こしておきながら,公訴提起するのは公訴権の濫用である。公訴権濫用の効果としては,公訴提起の手続き違反として公訴棄却となる(338条4号)。

12law schooL'S Door:2003/05/17(土) 13:58 ID:EhdRk.ss
 したがって,乙が起訴された場合,裁判所は公訴棄却するべきである。
                      以  上

13ふぁるこ:2003/05/17(土) 14:46 ID:4o2gC9l6
刑訴だけならとことんお付き合いします。
刑訴は私の飯の種ですから。

まず、この問題で必ず論ずべき論点は、1、おとり捜査の適否と2、証拠排除です。
この2つがしっかりかけていれば、他の2つの論点が落ちていても合格水準に達します。

まず、おとり捜査の適否ですが、
出題自体が限界事例なので、結論はどちらでも良い問題です。
前半は、十分に論証できているので、条文の指摘があればこのままでも良いかと思います。
(執拗な働きかけをとらえて「意思の制圧」を認めるという筋の方が実務的には一般のようですが)

問題は後半ですね。
(3)で証拠排除について触れていますが、
その理由も基準も実定法上の根拠も述べられてはいません。
せめて、この3つについて触れた上であてはめをする必要があったかと思います。

「公訴提起自体を無効とできるか」以下の議論ですが、
所持罪で覚せい剤を証拠にできなければ、そもそも有罪にはなりえません。
さらに、排除されない「他の証拠」があるとすれば、
それはおとり捜査と因果性のない証拠ですので、
これをおとり捜査を理由として控訴棄却にする理由がありません。
余計な記述であろうかと思います。


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