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論文刑法平成7年1問
1
:
管理人
:2003/03/01(土) 22:38 ID:otgJsj8E
(問題)
甲は乙から、「強盗に使うのでナイフを貸してくれ」と依頼され、これに応じてナイフを乙に渡した。その後、乙は、丙・丁に対し、「最近、知り合いのAが多額の保険金を手に入れたので、それぞれがナイフを準備してA宅に強盗に押し入ろう。」と持ち掛け、3名で計画を立てた。ところが、乙は、犯行当日の朝になって高熱を発したため、「俺はこの件から手を引く。」と、丙・丁に電話で告げて、両名の承諾を得た。しかし、丙・丁は予定どおり強盗に押し入り現金を奪った。
甲及び乙の罪責を論ぜよ(特別法違反の点は除く)。
2
:
管理人
:2003/03/01(土) 22:40 ID:otgJsj8E
(答案)
1. 乙の罪責について
(1) 乙は丙・丁とA宅への住居侵入及び強盗の共謀を行い、その結果、丙・丁は住居侵入罪(130条)及び強盗罪(236条1項)を実行した。しかし、乙は謀議に参加しただけで、これらの実行行為を行ってはいない。この場合、乙に共同正犯(60条)として、住居侵入罪及び強盗罪の罪責を問うことはできないか。共謀のみを行い実行行為を分担していない者が共同正犯となり得るか問題となる。
この点、自由保障の見地からは、実行行為を分担してない者は共同正犯としないのが望ましい。しかし、これでは背後の大物を正犯として処罰できず、法益保護を果たせない。
思うに、共同正犯の処罰根拠は、関与者が相互に影響を及ぼし合い、法益侵害に因果性を与える点にある。そこで、法益侵害につき強い因果性を及ぼした者に限り、実行行為を分担していなくても共同正犯になり得ると解する。
これを本問についてみると、乙は、計画の立案から、メンバーの勧誘、被害者の選択を行う等、謀議において中心的な役割を演じている。したがって、住居侵入及び強盗の法益侵害について強い因果性を及ぼしたといえる。
よって、乙は住居侵入罪(130条)及び強盗罪(236条1項)の共同正犯(60条)となり得る。
(2) しかしながら、乙はその後離脱の意思を表明している。とすれば、共謀関係からの離脱が認められ、共同正犯としての罪責を免れるのではないか。離脱の基準が問題となる。
思うに、共同正犯の処罰根拠が法益侵害に因果性を与える点にあるのであれば、一部の者が実行に着手したとしても、自己の行為と法益侵害との因果性が切断されたと評価される場合には、共謀関係からの離脱が認められ、共同正犯としての罪責を負わないとすべきである。具体的には、①実行分担者の実行の着手以前に、②離脱の意思を表明し、③他の者がこれを了承した場合には、その因果性が切断されたと評価できるので、離脱が認められると解する。もっとも、乙のように計画を持ちかけた者が離脱する場合には、加えて④当初の計画による犯行を阻止することも必要である。
これを本問についてみると、確かに、①乙は犯行当日、丙・丁が実行に着手する前に、②「俺はこの件から手を引く」と離脱の意思を表明し、③丙・丁の了承を得ている。しかし、④丙・丁は「予定どおり」強盗に押し入り、現金を奪っており、乙は、当初の計画による犯行を阻止したといえない。
したがって、乙には共謀関係からの離脱が認められない。
(3) 以上より、乙には住居侵入罪(130条)の共同正犯(60条)と強盗罪(236条1項)の共同正犯(60条)が成立し、両者は手段・結果の関係にあることから牽連犯(541項後段)となる。
2. 甲の罪責について
甲が乙にナイフを渡し、その乙が強盗罪(236条1項)の正犯となっていることから、甲に強盗罪の幇助犯(62条1項)が成立するように思える。しかし、ナイフは強盗に直接使われていない。そこで、因果関係が否定され、甲に幇助犯は成立しないのではないか。幇助犯における因果関係が問題となる。
思うに、幇助犯の処罰根拠も、法益侵害に因果性を与える点にある。したがって、幇助犯が成立するためには、幇助行為と法益侵害との間に因果関係が必要である。そして、自由保障の見地からは、幇助犯にも正犯と同様に条件関係を要求するのが望ましい。しかしながら、幇助犯は、法益侵害に与える因果性が正犯よりも少ないにもかかわらず、法が法益保護の見地から処罰を拡大したものである。とすれば、幇助犯成立に必要な因果関係は、正犯よりも緩やかに解すべきである。具体的には、幇助行為により法益侵害を促進しまたは容易にしたという関係があれば足りると解する。
これを本問についてみると、確かに、甲のナイフは実際の犯罪には使用されていない。しかしながら、ナイフによって乙らの士気が高まり、乙らの共謀を心理的に促し、強盗による法益侵害を促進したといえる。 したがって、甲の幇助と乙の強盗罪による法益侵害との間に因果関係が認められる。
以上より、甲に強盗罪(236条1項)の幇助犯(62条1項)が成立する。
以上
3
:
ふぁるこ
:2003/03/09(日) 16:19 ID:4o2gC9l6
1(1)「共同正犯の処罰根拠」のところですが、
管理人さんの論証は、「共犯の処罰根拠」になってませんか?
強い因果性を根拠とする説は存在しなくもないですが(平場−行為支配説など)、
通説的な見解は、
共同正犯の処罰根拠は、共同実行の意思のもとに
相互に他の共同者の行為を利用補充しあって
実行行為にいたることを根拠とするものであるから、
犯罪を共同して遂行するという合意に基づき、
相互に他人の行為を利用し補充しあい、
その結果として犯罪を実現した以上、
実行行為を分担する場合であると実行行為を共同する場合であるとを問わず、
すべて正犯とすべき
とします。こちらの方が無難かと思います。
仮に行為支配説に立つのであれば、
乙による行為支配の認定が必要となりますが、
対等型の本問の場合では難しいのではないかと思います。
つぎに1(2)です。
ここは、正しいのかどうかは私には判断できません。
要件丸4(機種依存文字なので敢えてこう書きます)ですが、
これはどなたかの説でしょうか?
凶器などを提供した場合には物理的因果性が残るので、
離脱を認めないというのは知っているのですが、
その様な事情がない着手前の離脱は、共犯者の了承を得ればよいと私は理解していますので。
と、論点的にはこんな感じですか。。。
私の構成だと
1
(1) 共同正犯の成否 肯定
(2) 共犯からの離脱 肯定
(3) よって乙は強盗予備罪
2
(1) 予備罪の幇助は認められるか 肯定
よって、甲は強盗予備罪の幇助
になります(いい加減だけど。書くとよく変わりますし)。
最後に気付いたことですが、問題提起は条文解釈の姿勢を示したほうがよいと思います。
共謀のみで実行行為を行っていない場合も、「共同して犯罪を実行した」(60条)といえるか
といったようにです。
これがないと、問題提起が唐突に見えます。
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