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三千大千世界『『『 クソデカ羅生門 』』』イベント

41【燼臓丙儺】:2021/08/14(土) 20:48:56 ID:4mstaZWQ
>>40

勝算はあったのだろう。
ゲアハルトは赫翼竜の常識外れの機体制動を確かに目にしていた。
その上で、超高層ビルの範囲ならば。そして今の自分の力ならば、あれなる銀の翼竜を打ち返せる“かもしれない”と考えていた。

言ってみれば一世一代の大博打みたいなものだったのだ。
生きるか死ぬか、己の末路を対価にしたギャンブルに、男は笑いながら身を投じた。
それは今回に限ったことではなく一連の戦闘すべて、いいやある時期を境にした彼の人生そのものが博打じみた凶行だったと言える。
その場の思いつきで行動を起こし、意味不明さゆえに勝ち続け、あらゆるものを巻き込んでは滅ぼし、次の場所へ。
辿り着いた新たな場所で再び気ままに、思うがままに……そんな、一度負ければすべてが破局しかねない博打の連続に。

「──────」

男は今宵、とうとう負けた。
ゆえに賭けた命(もの)を今、取り立てられようとしている。

避けるか? ──否、間に合わない。
手放したビルを蹴りつけて軌道を変え命中させるか? ──否、間に合わない。
ならばビルの一部を毟って礫にするか? ──否、間に合わない。

反撃、回避、あらゆる行動がもはや手遅れだった。
どれだけ防御を固めようが竜の息吹は我が身を焼き尽くすだろう。ならばもはや、すべての状況が詰みを指していて。

──まだだ。
ここで負けたら次がない。この世の楽しみが終わるではないか。
それは嫌だ、御免被る。自分はもっと楽しみたいのだ。ここで死ぬなど断固拒否。

ただ只管に享楽のみを求める獣の性根は健在。
存在のスケールがクソデカ化しても悟りの境地とは程遠かった。男は今も、快楽のみを求めて猛っている。

だが、ふと──。
男の脳裏に、天啓のように、ある閃きが舞い降りた。

すなわち“この後”──死後の世界というやつは、はていったいどのようなところなのだろうかと。
思い至り、そこへ興味を抱いてしまったからこそ、彼の死が確定した。

そうとも自分はこの世の楽しみをまだまだ味わい尽くしてはいない。
いないがしかし、あの世の楽しみというやつは一つとして知らないではないか。
きっとすべてが新鮮で、この世の誰も知らないものに満ちているに違いない。ならば未練などあるものか。

……これは、存在のスケールが巨大化したことによる影響なのだろうか。
等身大の彼ならば……ありのままに生きていた享楽の獣ならばこんな思考に辿り着くことなく、何としてもと覚醒を起こしていたのだろうか?
それはわからない。ひょっとすると元から、このような破滅的な考えを抱く可能性があったのかもしれない。

今となってはすべてが不明だが……ともかく彼という男の真実はたったひとつ。
享楽、それだけが現世を生きる理由だったから。

「ああ、」

──あの世はどんな楽しみがあるんだろうな、と。

言葉を紡ぎ終わることはなく……自身の命すらコンテンツのひとつとして消費したゲアハルト・グラオザームという男は。
最期まであるかどうかも分からない“次”に手を伸ばしたまま、閃光に呑まれて灰も残さず消え去った。


/終了ォーーーッ!
/ありがとうございましたー!思う存分暴れ回れて楽しかったです!!


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