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黄泉還りイベント 2020年8月

1 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2020/08/12(水) 23:32:48 1h2IBJ4c
 期間限定イベントです。
 キャラロストしているキャラクターがロールできるスレッドです。
 いわゆるパラレルワールドで、記憶、道具、情報の引き継ぎは一切できません。

 ロール中のキャラクターがキャラロスしていればロールは可能です。
ex.
キャラA【キャラロス】×キャラB【キャラロス】○
キャラA【キャラロス】×キャラB【キャラロスしていない】○
キャラA【キャラロスしていない】×キャラB【キャラロスしていない】これは×、通常戦闘スレッドへ。

 わかりやすく、キャラロスしているキャラクター利用の場合、キャラクターないし能力の後ろんい【亡霊】等表記お願いします。
 死亡してない場合は迷いましたが、今回はありとしますので、死亡の部分は適宜適切な語を入れてください。

 イベント期間:8月13日0:00〜8月15日23:59
 期間を過ぎてのロールは続行可としますが、期間を超えての新規絡み待ちはご遠慮下さい。


2 : 【蒼穹斬悼】[亡霊]遍く切り裂く双剣の達人 :2020/08/14(金) 13:10:20 uJUvwcAY
彼女にとって自身が何者なのか此処が何処なのかなどは関係無く。
どうあれど、その在り様は変わり無く。

今宵も例外無く街の路地裏は紅蓮の色に染まる。
その現場は一言で表現するなら"刃の嵐が去った痕"。
壁や地面、転げている人体の欠片。
どれもが異様な程に"滑らかすぎる"切り口で切断されている。

「きる。きれる。また。この子達と。舞い踊れるのね。
 あは。あははははははははははは。」

渦中にて一人哂い狂えるは銀髪の少女。
髪も肌も真白なワンピースも全てが全て鮮血に染め上げられている。
そしてその両の手には空色を湛えた二振りの剣が握られていた。

いつかの何処か、連続猟奇殺人の元凶。
蒼穹の解体者。狂乱の切人鬼。
────其の亡霊。
南条斬里(ナンジョウ キルリ)、黄泉還りの夜に今一度現界。


/亡霊側がいないと始まらなそうなのでコチラ投げておきますっ


3 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/15(土) 01:19:10 gmjP0bNE
>>2

奇妙な一夜だった。
普段の空気とは何かが違う"ざらついた"ものを感じている。それでいて"ぬめり"を帯びた大気の味は今までに感じたことがなかった。
一言、この世のものとは思えない。それでいて冥府であると言われれば違う、妙な現実味が残っていた。
彼岸と此岸が混じったような。両者を遮る境界が崩れているかのような。壁に穴が空いてしまったかのような。

昨日までの──いいやつい先ほどまでの世界とは何かが劇的に変化していた。
加えてその異様は外界のみにあらず、己が内海にも生じていた。
まじまじと見据えた手を握るその感触に、見つめる眼球に、嚙合わせる歯列になんら違和感なし。
だが違う。何かがおかしい。どこかが決定的に変わっているぞと、魂が叫んでいた。

"この自分はさっきまでの自分ではない"──他の何処にもいないというのに、まるで自分が自分のドッペルゲンガーとなったかのような感覚を覚えていた。
……ならば、自分は偽物か? メルヴィン・カーツワイルの外観と肉体と性能と自我を抜きだされて製造されただけの単なるコピーなのか?
否。否である。それは違うだろう、なぜなら自分はここにいる。
我思うゆえに我在り。たとえ己の自意識のすべてが贋作だったとしても、今ここにいる己という意識だけは本物である。
それだけは絶対。それこそが真実。たとえ目の前に本物を名乗る自分が現れようとも、自分は自分だ。俺はここにいる!

なにより、ああそうだ──。

「────」

己が真であろうが偽であろうが関係ない。
そこに邪悪があるのなら。そこに無辜の人々を害する獣があるのなら。
行く手を遮り立ち塞がり、その一切を滅ぼすことこそ我が役目で、それしかできない塵屑だと深く自覚するからこそ……。

「そこまでだ、欲望の赴くままに狂乱する殺人鬼め。そんなに暴れたいのなら俺が相手になってやろう」

青い双眼に烈々たる意志を漲らせ、いま一人の男が亡霊の前に現れたのだった。


//よろしくお願いしますー!


4 : 【蒼穹斬悼】[亡霊] 遍く切り裂く双剣の達人 :2020/08/15(土) 13:32:10 dc7xI6LY
>>3

────殺人鬼め。

男の言葉に少女は、はてと首を傾げる。

「ふふふ。可笑しな事を言うのね。
 私はただ。この子達の望むままに斬っているだけよ?」

彼女の光を失くした瞳からは、
最早常人とは根本的な価値観から逸脱してしまっている事が窺える。

「そう。きる。キル。切る。斬る。伐る。殺る。」

ゆらりと姿勢が傾き。
一見して流麗な舞いにすら思える軽やかな動きで。
空色の軌跡を幾重にも乱舞させながら少女は男の方へと迫りゆく。

たとえ剣の道を極めずとも、幾多の戦いを乗り越えた者にならば解るだろう。
────その太刀筋には全くの力が篭っていない。
洗練された動きから少女に相当の技量を推し量れるにも関わらず。
只々剣を"素早く振り回す"事のみに其の業の全てを使っている様にすら思える。


5 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/15(土) 23:55:07 gmjP0bNE
>>4

──断ち斬る快楽に呑まれたか。
いや、もしかすると言葉通りその手にある双剣こそは人を狂わす妖刀の類なのかもしれないが。
正気に立ち返らせられるかは不明。仮に剣を砕いたところで効果があるのかは定かでなく。
加えて周囲に散らばる瓦礫の鮮やかすぎる切り口から推察できる力量は少なく見積もっても達人のそれ、加減できるはずもなし。

ならば……いいや、方針など端から決まっているのだ。
ここで葬る。殺傷する。その屍を持って無軌道な動乱を鎮め終わらせる。
それがどういう罪なのかを自覚し背負えば帳消しになるとは無論とうぜん思わないが、もとより自分にできるのはそれしかない。

よって、ここに淀みなく戦いの火蓋が切り落とされた。

踊り子を思わせる軽やかさで接近する敵手は両手に携える剣にて殺戮の舞踏を刻む。
剣に狂い人としての価値観を失った獣でありながら、その技の冴えはやはり一級品のそれ。
甘めに評価して二流の自分とは鋭さが違う。冷たさが違う。大気を風切る刃の声が違いすぎる。
まともにぶつかれば勝ち目は薄い、はずだがしかし──。

(──軽い)

確かに速い。
しかしそこに乗っていて然るべき膂力というものが決定的に欠如している剣だった。
これでは斬る対象に会心の鋭角で刃の進入を果たせなければ簡単に逸れてしまう。逸れて、あらぬ方向へと刃が流れてしまう。
据え物斬りでは己が技量を誇示する芸にもなろうがこれは実戦。こちらとて抵抗する。抵抗するとなれば剣は剣と打ち合い、結果として簡単に弾き飛ばされる結果に終わるが至当。

これほどの腕前を持ちながらそれが分からぬなど否。速さのみならず力も技も、どれ一つとして欠けていてはならぬ。
ならば……侮ったか? 取るに足らぬとせせら笑い、あえて力を抜いて遊んでいるのか。
はたまた新たな剣術の練習台と見て本気を出してはいないのか……。
いずれにせよ、前進しつつまずはこちらも様子見の一合を。

──そんな甘い考えを持ち続けていたなら、剣士は瞬く間に斬り捨てられていたに違いない。

「────ッ!」

──周囲の被害物の滑らかすぎる断面図。
──手を抜いているだけでは説明のつかない、素早く振ることに特化した剣術。
──必殺性よりも命中性、"当たればそれで構わない"とでも言わんばかりの乱舞剣。

悪寒。

背筋に氷柱を突きたてられたような電気信号が走り抜けた。
フラッシュバックにも似た衝撃をもって脳裏を駆け抜けたいくつかの光景は、未だ言語化できるほど噛み砕けてはいない。
だがそれらが何を意味するかを理解する前に、剣士は振り下ろしかけた木剣を捻り直感に従って緊急回避。
手首と足首を痛めつつ刃圏から外れ、そのまま斜め前方へと転がるように逃れた。
──何かが。何かが警鐘を鳴らしていた。"それ"の正体を見極めねば死ぬぞと、確信させる悍ましさを感じたのだ。


6 : 【蒼穹斬悼】[亡霊] 遍く切り裂く双剣の達人 :2020/08/16(日) 14:44:40 eNhuAhog
>>5
何かの異常を察し強引にも回避へ移った剣士。
刃圏から逃れるすれ違い様に見れるだろうか。
彼が元居た場所の背後にあったコンクリート壁、及び電柱に。
膂力の篭められていない蒼穹の軌跡が何を齎したのかを。

其れは"溶けたバターを切る様に"なんて生易しいものでは無かった。
"空を切る"。空振りと一寸の違いも無しに。
その刃の前に"硬度"という概念など存在しないと云わんがばかりに。
堅牢で頑丈な筈の其れらを容易に切断せしめた。

「逃げるだなんて。……無粋。」

それに不機嫌そうに少女は構えを変える。
退避した男を追撃する様に一歩踏み込み。
先の"速さ"に加え、居合の如し"鋭さ"を乗せた一閃が。
右斜め下から上へ、逆袈裟斬りの体で振るわれる。

今度は逃がさない、と。悍ましいまでの必"切"の意志が篭った一太刀。


7 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/16(日) 21:39:12 7zKd5p7I
>>6

避けた先、復帰しつつ振り向いたその視線の先に映る光景に瞠目した。
灰色の石塊が──斬れた。いや、斬れたことそれ自体は問題ではない。離れ業とはいえ一級の剣客であれば実現可能な所業。
だがその斬れ方が問題だった。刃をもって切断したなら、どれだけ上手く斬ったとしても物質の抵抗というものが存在する。
物質の硬度、摩擦係数……物理的な要因を挙げればキリがないが、とにかく物体を斬るということは大気に対するそれと同じとは絶対にいかないのだ。

そう、絶対に。

「────」

なのに何だ……あれは一体何なのだ。
硬いはずの電柱がまさしく空気と同じように。
"硬さ"というものをまるで感じさせない……いやそれどころではない。そこに本当に物体があったのかと疑わせるほど、刃の流れは淀みなく。
いっそその場に投影された幻像(ホログラム)を通り抜けたと言われた方が納得できそうな光景、しかし"ずるり"とずれた石くれが実在を証明する。

……仮にあれが純粋な腕前によって引き起こされた現象ならば、彼の者は達人と呼ぶことさえ侮辱となろう。
それほどの魔技。それほどの剣腕。物理法則すら超越した一太刀の前に能う者などあるはずもなく。

しかし男はそうではないと感じていた。なぜならそれほどの技を持った剣士が、あんな醜態を晒すはずがないと確信していたからだ。
剣の道とはすなわち人の道。ただ上手く刃を振るって極められるなら、それはなんと易しいことか。
所詮刃は人斬り包丁、剣術など他者を上手く殺すための技術にすぎぬ。ああ確かにその側面もあることは否定できぬ事実。
だがそうではない。それだけではないのだ。心技体の合一、無謬の悟り、我を越えた境地。聳える頂は果てしなく、見上げようとも見通せぬ高みに燦然と煌めいている。
断じて、断じて、殺戮の快楽を求めて無様に踊る獣ごときが至れるほど浅いものではないのだ──!

ゆえにあれは剣の側に力があると見て間違いないだろう。
事実として尋常ならざる切断力を有している以上、打ち合いという選択肢は実質潰えた。あの切れ味を前にしてはこの元木とて両断を免れまい。

ならば──と、思考を上回る速度で来襲する逆袈裟の一刀。
防ぐこともままならぬとあれば避ける他なく、上体を逸らし紙切れ一枚の危うさで回避に成功。
切っ先が頬を掠り、どろりと血液を溢す程度に損傷を抑える。反撃の糸口は未だ掴めない。


8 : 【蒼穹斬悼】[亡霊] 遍く切り裂く双剣の達人 :2020/08/17(月) 17:08:00 cH2YWmTo
>>7
この驚異的切断力が彼女の持つ剣の方にこそ秘められた異能である、
という男の推察は正確なものである。

【蒼穹斬悼】。二振りの剣を呼び出す異能。
その双剣は『万物の切断』という余りに強力なチカラを有する魔剣である。

今でこそ世界との衝突(コンクリフト)を避ける為抑止され。
"『不壊』のもののみ切れない"とされているが。
少女が生き、死した世界軸にあっては正しく全てを切り裂き得た。

この"切断力"に関しては魔剣の作用。それは正しい。

しかし彼女が其の上で剣術の達人であるという事が何を意味するか。
そしてその魔剣が"双剣"なれば。

一の太刀は寸で躱され頬を掠めるに終わる。だが。

「斬る。」

勢いに乗せ身を捻る様に二の太刀が間髪を入れずに真一文字に襲来する。
真面に受ければ死。更には手数、技術にあっても半端な回避を許しはしない。
黄泉還りしは切人の剣鬼。
狂える獣にあろうとも、其の力も技にも淀みは無く。


9 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/17(月) 21:17:51 Ys.yaZ/U
>>8

そう。そうなのだ。
遍く斬り捨てる魔剣のみならば。何物もその寸断を止め得ぬ切れ味のみならば。
それだけならば、どれだけ容易い相手だったろうか。その力に酔うばかりの素人であれば、仕留めるは難しくなかっただろう。

だが違う。敵手は血に酔い殺傷に狂い斬り舞うに善がる獣なれど、しかしてその身に蔵した力は正真正銘本物。
常なる得物を手にしてさえ驚嘆に値する剣の冴えを見せる達人が万物断ち切る魔性の刃を所有しているということ。
それが何を意味するか? そんなことは分かりきっている。

敵手──すなわち未熟な双剣使いである己の敗死、ただそれのみ。

「易々と──!」

しかし定められた絶対の末路を覆すべく男は吼える。
彼我の力量差、得物の優劣、それらが指し示す当方の絶対的不利など"いつものこと"だ。
客観的に見て勝率絶無、"ごとき"で一切怯まない。そんなものは乗り越えるべき障害であると猛り奮起する燃料にすぎないと言うかのように。
たったひとつ、己が密かに所有する優位──そこに一筋の勝機を見た剣士は、その先にある勝利を掴むべく前進を開始する。

上方へと流れる一の太刀をそのままに、間髪入れず襲来する横一文字の殺し技。
我が命を断ち切らんと猛然迫る剣閃が来ることは読めていた。なぜなら己もまた双剣士、二刀を用いる戦闘方なれば。
初太刀が回避、ないし防御されたなら二の太刀を。それを避けられれば切り返しを済ませたもう片方を。
一刀のみでは追いつかぬ怒涛の剣戟が双剣の強みである。それを理解していればこそ、よもや一撃で済むはずがないと確信していた。

研ぎ澄ませた集中力をもって一文字の軌道を捕捉。
合わせるように繰り出すのは木剣。斬撃に耐性を持つこの元木ではあるが、これら魔剣を相手にしては分が悪い。
予想通りに刃が食い込む。否、透る。先ほどと同じだ、まるで硬さを感じさせない切り口はこの世のものとは思えない。
が、鉋で深くなぞられたように"剥けて"ゆく元木が斬りきられる前に刃を寝かせ、魔剣の刀身その腹を押し上げるように逸らしてみせた。
いかな絶剣とて刃でなくば斬れはせぬ。そのまま上方へと剣で追いやるようにしてどうにか両断を免れる。

……奇蹟に近い。
読みをほぼ完全に的中させ、絶大な集中力で見切りを成功させ、寸毫の誤謬(ミス)も許されぬ最良の運剣を成し遂げ。
そうしてようやく"脇腹の肉をいくらか持っていかれる"程度にまでダメージ軽減を許されるくらいに、彼と彼女の戦力差は開いていた。

すなわち彼にとって、"これ以下"をやった瞬間に死が訪れる戦闘であるということ。
"奇蹟"を起こし続けねば──勝利どころか渡り合うことすら不可能な、絶望的すぎる戦いということを示していた。


10 : 【蒼穹斬悼】[亡霊] 遍く切り裂く双剣の達人 :2020/08/18(火) 17:29:28 6LNzmeRs
>>9
男は木剣の刀身を削りながらも二の太刀を受け流し、
脇腹を裂かれる程度に往なすに成功する。

「良いわ。もっと。きる。きらせて。」

これは補足であるが。
南条斬里、彼女は"殺人"自体を求めてこれ等の凶行をしていない。
彼女が望むは曰く魔剣の意思のまま"切る"事。其れのみ。
殺す為に斬るでは無く、斬るが為に殺してしまう。
尤も、人はバラバラに切り裂かれれば死ぬ。
そんな当然が通用しない程度には、
彼女の価値観は通常の其れと乖離してしまっているのだ。

【閑話休題】

二刀共に相手の上方。
ならば次なる太刀は当然、振り下ろすままの兜割り。
それも完全な同時ではなく敢えて僅かにずらしたタイミングでの二連撃。
この僅かな時間差が先の様な奇蹟的な受け流しを更に困難なものとする。

少女の望みには未だ遠く、絶死の刃嵐は延々と。


11 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/18(火) 21:35:42 /OgrNZMM
>>10

全霊をもって視る。
剣の起こりをなんとしても掴む。
そこに反撃の暇を見出す余裕などあるはずもないが、そうせねば瞬く間に斬殺されるがゆえ防戦を強いられる。

来る──上段二刀、唐竹割り。
いいやむしろ兜割りと呼ぶが相応しかろう。通常兜割りとは頭頂部より数センチほど斬り込むことを指して呼ぶものだが、これはそんな常識的な威力に留まらない。
まさしく一刀両断、豆腐よりもなお滑らかに寸断する一撃は我が身を容易く二つに分けるだろう。
加えて時間差──これは受け流せない。しからば取るべきは回避。後方への退却。

しかし常人の脚力が生み出す推進力ではこの一瞬に刃圏から脱することは不可能。
ならばと男は常人の軛を突破した。たちまち後方へと流れる視界、逃げそこなった幾許かの前髪がはらりと宙を舞う。

距離が開いた。
この程度の間合いは一呼吸にて詰められるだろうが、その一呼吸こそが値千金の時間なのは相手とて分かっている。
それを得た。活用し、これなる凶敵に対し然るべき全力を行使する。

そう、すなわち彼の偉大なる龍より授かった祝福の開帳。
鈍らを大業物へ、棒切れを破城槌へ──有する性質を最大強化する尋常ならざる異能。
異能に抗し得るものは同等の異能のみ。ゆえ男は今こそ発揮せんと力をこめて──。

「──────」

発揮せんと、力をこめて。
──しかしその両剣に些かの変化も巻き起こらない。
煌びやかに刃を彩るはずの蒼光は影も形もなく、艶やかに研ぎ澄まされるはずの刃は鈍いまま。

不発。
その二文字が、剣士を更なる絶望の底へと叩き落す悪魔の嘲笑めいて戦場に生温い風を吹き渡らせた。

……理屈は至極当然のもの。
彼が龍より与えられた祝福は、世界に散った力を集めるもの。
太古より自然の化身として在り、そして最後に自然そのものへと還った龍を……地母神を、魔力という形で武器に纏わせる力なのだ。

つまりそれは、世界に彼を祝福した地母神が存在しなければ何の意味もなさないということを示している。
そしてこの世界に"彼"はいない。あとに残るものはペンダントに宿った基礎体力向上および治癒力上昇の力のみ。
月の光は宿ることなく……そこから生じる、唯一彼の魔剣士への対抗策となるかもしれなかった遠距離攻撃も、当然ながら発動不能。
剣士はこれで、唯一勝る"射程"すらも失ったのだ──。


12 : 【蒼穹斬悼】[亡霊] 遍く切り裂く双剣の達人 :2020/08/19(水) 16:36:58 8XqXpFiI
>>11
一瞬、常人ならぬ脚力を発揮し刃圏より逃れきる男。
間合いを取った直後、反撃を行おうとする者特有の"兆し"を感じた。
が、其れは一向に結果として現れない。

不発に終わったのか、それとも認識の外から攻める類の異能か。
而して"切る"事のみに全てを奉げた狂人/凶刃は其れを顧みない。

「逃がさない。」

躊躇もなく間合いを詰め、右からの横一閃。
先に倣い受け流しを許さぬ二連撃。

相手が攻撃を"受け止める"という選択肢が無いからには。
これが最も有効な攻撃なのだから当然か。
回避か、切断か。圧倒的に相手方の消耗が激しい以上。
この選択肢を延々繰り返せば孰れは少女の望みは叶うのだから。


13 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/20(木) 01:08:11 kOs.XbI2
>>12

凡庸なる己に授けられた明確に強力な力となる切り札。
それを完全に封じられて取り乱す──という無様は晒さなかった。
なぜならこれは予想できていたこと。最初にここが常なる世界ではないと気付いた瞬間から、"彼"の加護が届かぬ可能性も考慮していた。
最悪の部類に入る未来予想図であったが、考えられる以上はたとえ対策できずとも心構えはしておける。

ゆえに不発に対しても揺るがず動じず、その眼光は鋭く対敵を見据えたまま。
異能の力がなくともこの剣が。たとえ砕けようとも拳が。脚が。それさえ失おうとも歯で。
戦う手段はある。いいやたとえすべてを奪われたとしても屈しはしまい。

健脚にて間合いを詰める双剣士の姿を蒼い双眸が射抜く。
そうだとも、考えてみるがいい。恐れる理由がどこにある?
何物をも斬り捨てる。肉も骨も鋼も鉄も、その進撃を止められない。
当たれば死ぬ──という程度。何のことがある、いつものことではないか。
要は決定的な一撃を貰わず、こちらが致命傷を与えればよい。それ以外の一切合財は単なる修飾子にすぎない!

「ああ、逃げんとも──こちらからも行くぞッ」

迫る二刀を限界まで引き付け、その刃がまさに我が身を裂かんとしたその瞬間に身を沈める。
ここからでは刃を斜めに潜らせたとて斬り縋ることはできず、また即座に切り返すとしても一瞬の遅れが生じる。
それが発生するより早く、男は前方へと己が身を"射出"した。屈んだ体勢から超速で飛び込むその姿はまさに豹か弾丸の如し。

常人では耐えきれない筋肉の酷使に両脚が悲鳴を上げたが頓着しない。
発進の勢いを搭載して繰り出すは木剣──元木。
刃を持たぬその剣は等身大の威力しか有さないが、されど鈍器。檜を主体に鍛冶の神に仕える巫女が丹精込めて造り上げたれっきとした武器である。
木刀を全力で叩きつけられれば人の頭蓋とて割れる。つまりはそういうことで、年若い少女剣士のその脚を砕きにかかっていた。


14 : 【蒼穹斬悼】[亡霊] 遍く切り裂く双剣の達人 :2020/08/20(木) 17:05:21 ekAQ3lFI
>>13
碧眼の男はギリギリに引き付けた二刀を屈み躱し。
返す刀に弾丸めいて突貫。木剣にて此方の脚を砕きにかかる。

その木刀の殴打で頭蓋を割れると云うならば。
其れこそ胸なり頭なり一撃で殺せる部位を狙うべきだった。
────何故ならば。

「……関係ない。斬る。」

砕骨の突撃を其の脚に受けつつも。
眼前の目標を切るという行動原理には一寸の曇りもなく。

別段男の様に限界まで身体を稼働出来るというチカラは無い。
しかし彼女は"亡霊"。
既に死した己の安否を顧みる必要がなければこそ。
玉砕覚悟。骨を折らせて骨を断つ。
狂気のカウンターに打って出る事が出来る。

人間に限らずも、"攻撃に打って出た瞬間"こそが。
最も回避・防御の疎かになる決定的な隙であるならば。

次こそは確実に断つ、と。
全身全霊で以て突進中の男へと二刀を振り下ろす。


15 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/20(木) 20:20:31 kOs.XbI2
>>14
//すみません、まだお返しできなさそうなのですが、ちょっと自分の読解力の問題で分からなかったことがあったのでひとつだけ。
//脚に木剣を食らう→そのまま直進している不撓鋼心に向けて剣を振り下ろす、の流れでよろしいでしょうか?


16 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/20(木) 20:21:06 kOs.XbI2
>>14
//すみません、まだお返しできなさそうなのですが、ちょっと自分の読解力の問題で分からなかったことがあったのでひとつだけ。
//脚に木剣を食らう→そのまま直進している不撓鋼心に向けて剣を振り下ろす、の流れでよろしいでしょうか?


17 : 【蒼穹斬悼】 :2020/08/20(木) 22:16:10 ekAQ3lFI
//はい、そのようになります
//分かり辛かった様でしたら申し訳ないです


18 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/21(金) 03:01:17 u02MKJLc
>>14
//了解です、ありがとうございました!


斬り縋れはしない──果たして本当にそうだろうか。
敵手は達人。切断の快楽に取り憑かれた剣鬼。敵を斬ることと己の生存を比べ、前者の比重が高いと言い切れぬことがあろうか。
そんな保証はどこにもない。そも、我が身を鑑みてみるがいい。
自分ならば──たかが両脚の骨ごとき、砕かれようが敵手を粉砕するためならば躊躇いなく差し出すであろう。

読めていた。可能性はあると踏んでいた。
そしてその可能性は、敵手が脚部への打撃を避けようともしなかったことにより確信へと変わる。
この女もまた己と同じ……敵手撃滅のためならば我が身の一部を差し出せる狂人であるのだと。

ゆえにこその、鋼剣である。
だからこそ二刀をもってその脚を斬り落とさんと目論むのではなく、あえて木剣による打撃のみに留めていた。

鋼鉄の刃を地面へと突き立てる。
大地へ打った楔を基点に更なる力をこめる。その加速力によって刃圏から急速離脱する、のではない。
忘れてはならない。この男もまた、敵を滅ぼすためならば致命傷以外のあらゆる損傷を容認する狂人である。
そんな狂人が手を残しているとあらば、それすなわち自身の安全を見返りに一撃を加え得る奇襲に他ならぬのだ。

男の身体が──跳ね上がる。

「シィッ──!」

剣を基点に前転宙返りを行いつつ、その踵をもって下方より敵の頭部へと強烈な蹴撃を狙う博打めいた大技。
蜻蛉返り(サマーソルトキック)──ある格闘技においてそのように呼称される技術の逆をなぞる技である。
成功すれば後方より迫る敵から距離を取りつつダメージを加え、更には反転の隙すら無にする完全技であるが……。
日頃よりこの技の鍛錬を積んでいるならばともかく、土壇場で編み出したもの。
狙いは甘く、絶大な集中力をもって顎部を見据えたつもりではあるが、頬や頭蓋に命中してもおかしくはない。
加えて避けきれなかった剣閃が片脚の付け根から腹腔に決して浅くない傷を刻んでいた。


19 : 【蒼穹斬悼】[亡霊] 遍く切り裂く双剣の達人 :2020/08/21(金) 17:34:40 vA0SZuKk
>>18
通常、人間は宙空からは姿勢を変える事は出来ない。
しかしながら例えば其れが常軌を逸した膂力を備えていたならば。

両脚の粉砕と引き換えに得たこれ以上を望めぬ程のカウンターは。
地へと剣を突き立てての回転蹴りという更なる反撃の前に崩れ去る。

敵手の狙いは顎部か。しかし練度が甘い。
寸前にて無理矢理に身を捩じる形で命中部位を肩口へとずらす。
生き長らえる為に? 否。"語る口"を残すが為に。
元より先の一撃が決定的な成果を上げなかった時点で己が敗北は決した。

「……っ。」

蹴り上げを食らい仰向けに地へと転げる。
からん、と両手から双剣が落ち。其れらは空に溶ける様に消えていった。

「ここまで。ね。悔しいわ。」

両脚と右肩の骨は砕かれ最早身を起こす事もままならない。
しかし苦悶の声を上げるでもなく。
その虚ろな瞳は何処か遠くを眺めている様にも見えた。

「此処は彼岸と此岸の間(あわい)。
 何処でもない場所。何時でもない時間。
 あなたは生者。わたしは亡霊。本来遭う筈の無いもの。」

今わに語るは何かの妄言だろうか。

「けれど。」

「冥河の堰は破られり。
 次は現世で遭いましょう。
 互いに覚えていないでしょうけど。その時は。私が。」

少女の声に重なる様に。
老いたる者の。幼き者の。男の。女の。亡者達の声が響く。

【『 [「 私達が相手になろう。 」] 』】

そして其の後は静かに目を瞑り、最後の瞬間を待つばかり。


20 : 【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki :2020/08/22(土) 01:30:35 j/5h1Abk
>>19

足裏に確かな手ごたえ。
頭部は外した──だが右肩を砕くことに成功する。
それが決定的な一撃となっていた。勢いのまま反転し着地、空を仰いで倒れる敵手を眼光が射抜く。

「…………」

ゆっくりと歩み接近する足取りにしかし淀みはない。
致命傷こそ避けているとはいえ斬られた箇所は数多く、足元に滴り伝う血液は今も当然止まっていない。
そのダメージをまるで気にしたふうもなく。どれほどの痛みや眩みも、この歩みを遅らせる理由にはならないのだと言うかのように。

油断なく双剣を携えていつでも奇襲を防げるように構えながら、力なく倒れた剣士の言葉に耳を傾ける。
普段であれば理解不能。余人ならば笑い飛ばして然るべき妄言。しかして今の男には何となくその意味が察せられた。
何処でもなく、何時でもない時空の狭間──そうだ、最初から異様な気配は肌をじっとりと覆っていたから。
事の仔細は分からない。しかし自身を亡者と名乗るこの女の言葉に虚偽は感じられなかった。

そして特段、聞き逃すわけにはいかなかったのは──。

「冥河の堰は破られり、か」

この世とあの世の境が既に突破されているという言葉。
彼にはひとつだけ心当たりがあった。あの路地裏で破落戸を仕留めた直後、背後に迫り来るかのような錯覚を覚えたあの悪寒。
二十と生きていない若造の身ではある。が、人並み以上に修羅場を潜ってきた中で、あれほど悍ましい気配は感じたことがない。
もしあれが、曰く冥河の堰が破られた瞬間であったのならば……。

「元より彼岸と此岸の境が曖昧な世界だ。死した魂が別の器を得て転生することや、それ以外どんな形でも現世に舞い戻ってくること自体は何も言わん。
 だがあの世から黄泉返ってまで己が欲望に腐心し、罪なき人々を害するというのならば……いいだろう」
 
今や眼下に横たわる一人の女。
その口を借りて無数に響き渡る、生者の魂を恐怖で侵す亡者たちの声を耳にして──男の心に火が灯る。

「かかってくるがいい、俺が相手になってやる。貴様らまとめてもう一度、いいや何度でも、地獄の底に送り返してやろう。
 明日の笑顔は奪わせん──勝つのは俺だ」
 
義憤に燃えるその魂、悪を許さぬその両眼、日輪のごとく闇を焼き尽くす絶対正義が輝いた。
鋼の剣が煌めく黄金の炎を纏いだす。それはまるでこの男の魂を象徴するかのような光に満ちていて……。

眩く燃える灼熱の刃が断頭台にも似た無情さと冷たさをもって、罪人の首へと落ちていった。


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