■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■

能力者が闘うスレin避難所 Act.4

1 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2017/06/07(水) 09:49:33 9xqL03nM

厨二病患者隔離スレへようこそ!
ルールを読んだ後は君の妄想を爆発させてみよう。

【基本ルール】荒らしは全力で華麗にスルー!
※荒らしに反応した人も荒らしです。

チート無双、無理やりな防御&回避、確定攻撃は禁止!
※1酷い場合は注意しましょう!ただし煽るようなキツい言い方は好ましくないです。
※2たまには攻撃に当たりましょう!いつもと違うスリリングな戦闘をしてみよう!

武器は初期装備していません!欲しい方は能力者に作って貰いましょう!
※1武器を所持している時は名前欄に書きましょう。
※2能力授与時に貰っている場合は例外です。

基本スペックはみんないっしょ!
※能力授与時に体が強いなど言われない場合はみんな常人

老若男女巨乳貧乳に人外キャラまで自由にどうぞ!
※好きなキャラを演じてスレの世界を楽しもう☆
ただし鬼だから怪力、天使だから空を飛ぶ等は勿論なし!

書き込む前に更新すると幸せになれるぞ!!

@wikiURL→http://www26.atwiki.jp/vipdetyuuni/
避難所 授与スレ→http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/sports/41685/1419663018/


2 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/10(土) 23:51:43 9UlVv62o
前スレ>>999

「理由が『無い』ことは分かった……。だが」

「どこから出てきたのか走らないが――――その男から出る『それ』が、マトモなものだとどうして納得できる?」

腹部から血液を流しながら喋っているせいか、肺に入る空気が痛い。言葉を一つ放つごとに傷をえぐっているような気すらしてくる。
だが、此処で倒れる訳にはいかない。このまま何もしないままあの男のナニカを塗られてしまえば、そのまま死んでしまうことだってありえるのだ。
相手の能力が未知数な以上、警戒するのは当然のことで、アロエ男の手から溢れ出したそれが、本当に『薬』なのかなんて、彼には反応しようもないのだ。
もし毒だった場合、少なからず彼は死ぬ。このまま見ているだけでも死ぬのだろうが、毒をもられてしまえば当然その速度も早くなるだろう。


それは――――不味い。
   ・・・
いや、本当に?

数秒の逡巡。考え込むようにして、まるで表情が能面のように凍ってしまった彼が意識を取り戻せば、先ほどとは打って変わって素直なものだった。
「分かった。」と一言告げてから刀を鞘に戻し、ゆっくりとアロエ男なる人物に近づき――――そして、その人物から分泌された液体を脇腹へと塗りたくる。

「―――――ッ!!?」

明滅するほどの痛みに、顔をしかめる。やはり毒だったか――――と思う反面、之で死んでしまっても構わない。そんな感情が滲み出る。
少女は此方を観察しているようだが、彼は少女に目もくれない。自身の状態がどう変化するか、自身が毒をもられて『死んでしまえるのか』。それだけが問題だった。


…………最も、彼に与えられたのは毒などではない故。当然のごとく死ぬことなどありえはしないのだが。


//スレ立て乙です!


3 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/10(土) 23:53:52 mZ7/E4D.
前スレ>>994
狼のアタマで叫ぶ行為は、彼の願いどおりもやもやとした想いを爽快に吹き飛ばしてくれた。吹き飛ばしてしまった。
何も考えないということの怖さは良く知っていたはずなのに。にも拘わらず彼は、それを実行してしまったのだ。――。

「……っ」

かさかさ葉を揺らして地を踏む音や街の匂い。普段なら見逃すはずのないそれらの痕跡は、無暗な高揚感によって曖昧にされる。
だから青年がその存在に気づくことができたのは、戸惑いの混じったような独白を拾った時のことであった。
垂れていた耳はぴんと張り詰め、漫然と夜空を見上げていた金の双眸はすぐに焦点を合わせる。

そこに立っていたのは少しだけ不思議な――少なくとも青年にとっては――少年だった。
身なりや顔立ちからそう判断したのではない。恐らくは非日常に類するであろう邂逅に対する彼の態度からそれを思うのだ。
つまるところ、奇怪な人狼と偶然遭遇した一般人にしては妙に落ち着いている。それどころか、口ぶりからは気安ささえ感じられた。
その事実が却って彼を困惑させた。ゆえに少年の問いに対する返事は少しのあいだ返らない。
奇妙な間。それが相対する二者の懸隔を漂い始め――やがてその気まずさを振り払うようにして、狼が口をひらく。

「――俺は人間だ。紛れもなく人間だ」

語気がやけに荒く鋭いのは何も相手を警戒しているというわけではない。
狼ではなく人間だということ。
それは青年にとって譲れない点であり、同時に不安定な箇所でもある。それゆえ二度も繰り返し、主張するのだ。

「『人間か?』だと。もう一度言ってみろ。そうしたらお前のことを食い千切ってやる」

ひどく粗雑で、乱暴な言葉。しかし本心からのものではない。
”食い千切る”つもりなど毛頭ない。普段ならばぶん殴るくらいはやったかもしれないが、いまはそんな気分ですらない。

それはただの脅し文句だった。こんなところに独りでいることからはっきりしているように、誰かと話したくなどないのだ。
まして、こんな素性の知れない少年となんて。――だからなんの工夫もなく、脅迫する。
力の籠っていない自分の声音にも、人間だという主張との食い違いにも無自覚なまま。
彼の動揺する心は、多くのモノを見落としていた。


/>>1乙です……!


4 : 【尽臓機鬼】 :2017/06/10(土) 23:58:27 ftNCdGEI
//>>1


前スレ>>998

立ちあがれ、立ちあがれ、さあ覚醒しろもう一度……俺を熱くさせてくれよと。
期待をかけて、かけて、かけて。だからこそ時間をかけて放つ攻撃とも呼べる拳は、しかし少女に受け止められた。
……それで終わり。望んだとおりの奇跡はもう二度と起こらない。死者は死者のまま、朽ち果てた遺体を横たえるのみ。

「…………。……そうかい」

じろりと向けた闖入者――少なくとも男からすれば――への視線から怒涛のように放出されていた暴力性が薄らいでゆく。
同時に捻じれた気配もまた。荒ぶる魔物が眠りにつくように沈静化していく空気は未だ力強さを残しているものの、ついさっきまでのように対峙するだけで心胆を寒からしめる異常性は消えていた。
それが終わりの合図だった。もっともっとと刺激を望み続けたこの男も、すべてはもう終わったのだと漸く悟る。

……楽しい祭りが終わった後の寂寥感。
男の心境はまさしくそれだった。激しく燃え上がったからこそ、反動のように訪れる虚無感が凄まじい。

「仕方ねぇわな、これで終わりか。ま、十分楽しませてもらったよ」

握った手をあっさり振り払って、千切れかけた指ごとポケットに突っ込んだ。
何も思っていないのだろう、彼女の優しさに対しても。
男が求めるのはただ悦楽。一瞬のうちに大爆発するような荒々しい非常事態をこそ心から望んでいて、柔らかい情など一切無用と斬り捨てている。

……踵を返して歩き出す。
割れた足を引きずって、全身から絶え間なく血を流しながらも飄々と。
さも楽しそうに獰猛な笑顔を浮かべて……何がどうなろうと彼は“こう”あり続けるのだろうという不変性すら滲ませながら。

「じゃあな嬢ちゃん、また楽しそうなことがあったら呼んでくれや。また力を貸してやるからよ、ヒヒ」

彼の王たちがいったい何を思って、そして復活させたアイテムを誰が齎したのか。
そういう諸々の細かい事情に一切興味を示さないまま、立ち去ろうとしていた。
もはや一連の事件で最大の楽しみは味わった。これ以上は総じて蛇足であると断言するように……。


5 : 【栄華之夢】 :2017/06/11(日) 00:07:14 CL9LnWBY
>>2

「……生憎だけどそれは毒でもなんでもなくてただの外傷に効く塗り薬……だったはず、うん、アロエっぽい毒草なんてないはず、うん」

自分の知識があやふやなのを露呈させる。

「まあ死にたいならいたぶりまくるけども……」

何気に怖いことを言う。
まあいたぶるのは変態染みた植物男なのだが。

「……で、なんでこんなところでこんなことになっているのかしら?教えてくれる?」

根本的な部分を聞く。
どうやら知らなかったらしい。

「あ、極力全て話してちょうだい、私だってエスパーではないし」

がっつり情報を搾り取る気満々である。


6 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/11(日) 00:08:26 X8WAsT.s
>>3

「――――だったら、良かった。」

「アンタが人間だって言うんなら、俺も安心してこう言える。」
「『人間生きてりゃ辛いこともあるだろうけど、そうやって一人で哭いてちゃ世話ないぜ?』って。」

彼がこんなにも平然としていられるのは、ひとえに一度死の危険を感じ取ったから……といえるかもしれない。
暴行を加えられてる時に遭遇した、一陣の風。まるで氷のように冷たいそれを、間近で見てしまったからだろうか。
彼の心は既に『凍ったように』止まってしまっていて、奇妙な間から放たれた言葉に対して『安心した』と胸をなでおろす。

「それでスッキリするんなら、肩のこの―――――ココらへんなら構わない。」

そして、『食いちぎる』と脅しをかけた彼に対して返すのは――――――余りにも彼を『馬鹿にした』様な――ミサギは至って真剣ではあるが――言葉。
瞳に揺れている部分はなく、少しばかり悩んで逡巡したとは言え判断としては早い。彼が言葉を放ってから一分も立っていないというのに、ミサギは言う。
「腕をまるごとちぎられたり、頭を丸かじりされるのは流石に困るが、少しくらいならくれてやる。」と、『見ず知らずの青年に対して』放つのだ。

青年の言葉は脅しだと、考えるまでもなく理解できていた。声には覇気がなく、動きにも別段変わった様子もない。ここから動く気すら無いのだと理解していた。
人間である彼に、人間を殺す気など無いのだと――――分かっていたが、彼は生真面目に。まるでそれがミサギにとってさも当たり前のことであるかのように。

粗雑で、乱雑で、突き放したような言葉をサれるのは慣れている。だから、其処にある言葉の『意味』が、僅かにでも理解できる。
きっとミサギの思い込みだろうが、其れでも構わなかった。少しでも話しを聞けるのなら、それで自身が『後悔しない』のであれば、肉体などどうとでもなる。
壊滅的で、自爆的。明らかに一般的な慣性とは乖離した性質を垣間見せながら―――彼はさも『一般人』であるかのように、『青年へと』近づいた。
手には何も持たず、凶器になりそうな匂いも感じない。明らかに無手、丸腰。だが、他人お前で無様を晒すなどそれこそありえないこと。

その姿は、飢えた狼に近寄る羊のごとく。


7 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 00:08:41 caDHYarA
>>973

黒い神父服を着た男が、人通りの無い街を征く。
加えた煙草を何かが揺らすのを感じて、上を向く。雨である。
梅雨入りの時期だから、長雨になると思い適当な店で雨宿りをする事にした。

「――邪魔する」

背の高い、褐色肌の大男。
元々は赤と黒のグラデーションが入っていたであろう短髪は、白髪が交じり奇妙な三色になっている。
そして何より―― 男は両腕とも肘から先が義手になっていた。赤を基調としたデザインで掌が鈍色。メタリックな光沢を放っている。

「悪いな 雨が止んだら出る」

男の名はシャル=バックランク。
高額の懸賞金をかけられた、いくつも政府施設を破壊しているテロリスト。

/よろしくおねがいします


8 : 【剣脚翔邁】【射機焼填】 :2017/06/11(日) 00:20:29 X8WAsT.s
>>5

アロエ――――そう聞いて、昔の知識を思い出す。断片的な記憶。今となっては不必要な知識だが、其処には確かに外傷に効くとされていた……記憶がある。
彼はわずかに落胆して――――即座にその表情を能面のごとく引き戻す。相手に気取られることのないように、殺意と意識を覆い隠した。

彼だって死にたがりではない。そう思わなければヤッていられないとは言え、決して死ぬためだけに生きているなど認められなかった。
今までの生き方から考えれば正しく『死んだように生きている』と言うのに、最後の部分で共感した脳が邪魔をする。痛みが、死という存在を遠ざけんと暴れ狂う。
……頭痛がした。少女の言うことは一々的確で、癇に障って、気に入らない。溢れ出る血はいつの間にか止まっていて、頭に登りかけた血液は全身にくまなく分散していく。

「教える必要なんてあるのか?」

そう、口では言うけれども、彼の表情は先程と比べて少しだけ笑みへと向いていた。何故ならば、それは自嘲の笑みであるから。
自らの犯した罪を話せという少女に、彼は先程までの警戒すら忘れて『飛び付く』。食料を見つけた蛇のように、此方が変えるであるということも知らずに、彼は口を開くだろう。

「まぁ、いい。」「聞く必要もない話だが、話さないという必要もない。」なんて前置きから始まる話は、幾度も聞いてきた昔話よりも谷も山もない、オチすら用意されていないおとぎばなし。
生まれが何で、何であるかなどは語る必要もなく、彼が語るのはこの街に来てからの記憶だろう。殺した相手の感じた痛みを知ってから、誰も彼もが殺せない。
殺したいほど憎いはずなのに、殺さなければいけないはずなのに、刀を持つ手が震えてしまう。殺せるように、キチンと手順を踏んだのに―――それでも刃は届かない。
震える左腕。既に動かすことすら難しくなったそれを―――右手で掴む。他愛のない副作用だと自分を笑い、少女には「クスリの作用だ」とだけ言っておく。

話すことなど無いと、自身の秘密主義な部分が叫んでいた。
決してそいつを信用してはならないと、自分の危機管理能力が叫んでいた。
殺してしまえと、私の殺戮衝動が叫んでいた。

だが、その全てを無視して彼は語った。刃を振るう殺人鬼が、振るえなくなったとはとんだ笑い話だ。そんな捨て台詞を、最後につけて。


9 : 【幻奏虚星】 :2017/06/11(日) 00:23:23 9jaliIDk
>>7

ぽつ、ぽつ、と窓の外から聞こえてくるのは微かな雨音。どうやらいつの間にか降り始めていたらしい。
季節はそろそろ梅雨を迎える。雨という天気は好きではあるが、梅雨という季節そのものは好きになれない。
澱んだ空は、果たしてどれだけ待てば晴れるのだろう───洗濯物の乾きが悪いのは、宜しくない故に。

ドアが開く音がする。こんなタイミングだろうから、きっと雨宿りに違いない。
生暖かい風が店内に吹き込んだ。湿度が高いのはどうにも苦手で、高温多湿の気候が少しばかり怨めしい。


「いらっしゃい。出せるものは何もないけれども、雨宿りに所場代を求めるほどじゃあない」

そう言ったならば、少女は来店者の方に見向きもせず、拳銃弄りを続けるだろう。
相手が客ではない、只の通りすがりの雨宿りであるならば、彼女は自ら進んで関わろうとはしないだろう。

────実に奇妙な店だった。
店内には椅子とテーブル、ソファに本棚があるだけで、其れらは“店”という体裁を取り繕ってすらいない。
そもそもここがどのような店なのか、其れを視覚的情報から読み解くことなど不可能だろう。
知っているのは、店主であるこの少女だけ。そして彼女は鼻歌交じりに────拳銃をバラしたり、組み立てたりしているだけ。


10 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 00:41:38 caDHYarA
>>9

「助かる。こう雨があると焚火で暇を潰す事も出来なくてな」

表には雨晒しの大型バイク。
街から街へと流浪の旅をする男は野宿にも慣れているがどうにもこの時期はそうはいかない。
少女とは特に会話をするつもりも無いようで、こちらに目もくれず拳銃の解体をしているのが有難かったりする。

(──そういや、昔…)

カチャカチャと聞こえる銃の解体音が、男の記憶を呼び覚ます。
この義肢になるまで、男は宮仕えの戦士だった。
それなりに地位のある立場に居たし、多くの部下を鍛え、共に戦い、失った。
銃器の組み立ても訓練の一環で取り入れていた事を懐かしく思う。

「──ここは、何なんだ?」

静寂を破る。
この場に似つかわしくない行動を、時間つぶしのようにやる少女が不思議で、声をかけてしまった。
或いは、昔得意だった遊びが現代でも行われているのを見た大人のような、そんな気分になったのかもしれない。


11 : 【栄華之夢】 :2017/06/11(日) 00:46:54 CL9LnWBY
>>8

「……貴方も大変ね……私もだけど……」

彼女は全て聞き終えたあとこう言った。
その後こう呟く。

「ってか大麻草?阿片?」

そうじゃない。
そこはどうでもいい。
ってか聞こえないぐらい小さく言っている。

「……一応私はこれでも家柄は上なのよ、微妙だけど……」

唐突な一言。
そして彼女がこの後話したことを纏めると以下のようなことになる。
名家の分家筋で生まれた自分は当主候補だったが本家に跡取りが生まれた。
そして多少捻くれてしまった自分より本家の方に人が集まる。
そしていつしかただ彼女にさっぱりとした嫉妬をして満足するだけの存在になった――

実際はそんなことはないが本人はそう考えているらしいのだった――


12 : 【操威駆風】 :2017/06/11(日) 00:48:09 yA584zSM
>>4

立ち去っていく男の背中に向け、女は扇を一度開き……そしてパタリと閉じた。

今ならこの男を……”今後立ち塞がるかもしれない男”を掃除しておく事が出来るのでは、と女は考えたが
先程までの獣の如き戦い様と、最後に向けられた視線の、それに宿る暴気を思い返しその手を止めた。…まぁ

”今私が手を出さなくとも…”と彼女は唇だけで言葉を紡いだ。

その暴力性?その生き様?否、彼は死んでいるのだ。生きているが死んでいる。彼の日常には恐らく生は無い。
戦いの中でしか、狂乱の中でしか彼は快楽を得られない存在。生きるために必要なものを切り捨てた狂乱者。

「……ええ、何か面白いことがあれば、ぜひ呼ばせて頂きました。蛮勇なる騎士様?」

彼は戦いの中で生き続け、彼は戦いの中で死ぬだろう。決闘の末か多数に襲われてかはそれは知らないが
彼に出来る事は彼女には無くて…だから、彼女は止めることも無く、心配もすることも無く彼を見送る。
せめて、まぁほんの少しではあるが、血に塗れボロボロとなっても進む生き様の先に祝福を祈る位だ

…………
……………………

「まぁ、助けていただけましたし?ほんの少しだけなら祈ってもバチは当たりませんわ」

と、男が立ち去った後に女はポツリと呟いた。その手には光を失ったが確かに最高級品の宝石が室内の明かりを映している。
その視線の先には、何十年も経ったかの様に風化した二つの亡骸。安らかに眠るそれらは、先程男が闘った物の成れの果てだ。
女はあの光景を思い出し安堵した。。あの王を相手に"自分はどれ位苦戦しただろうか"同時に良かったと思う。あの男がいて良かった

何だって

「無傷で、この宝石を手に入れる事ができましたからね」

この古城に忍び込み、この宝石を狙った末に無数の骸に追いかけられていた所を救われた女は、宝石に頬摺りしながら妖艶に笑った。
彼が想像した通り、彼女は所謂墓荒らし(彼女に言わせたらトレジャーハンターですわ!)。盗賊で貴族、カルデア.オブ.エノーは笑う。
笑って、笑って、一通り笑った後にゴホゴホと咳き込んだ後に、彼女は更に奥へと進んでいく。新たなる財宝を、新たなるお宝を

「さぁ、この世の宝は貴族である、私が回収して、愛でてあげなくちゃ行けませんのよ!」

そして女は姿を消した。

/絡みありがとうございました!


13 : 【幻奏虚星】 :2017/06/11(日) 00:57:36 9jaliIDk
>>10

この拳銃の組み立ては既に瞳を閉じていても容易に行えるだろうと思える位にはすっかりと手に馴染んでいた。
元々数年間に渡って使い込んだ代物だったが、つい先日出逢ったとある人物の手によって、更なる改造が加えられたことでその使い心地は格段に進化した。
其れが彼女の機嫌が良い一因でもあった。鼻歌交じりで組み立て終えた拳銃を掌で回し、懐に納めたならば、漸く来訪者へと視線を向けることだろう。


「さあ────一体何のお店なんだろうね」

然し彼女は基本的に、常に戯けている。
彼の質問に対して返ってきた答えは、答えにすらなっていない内容であった。

知る人のみぞ知っていれば良い店、ということだろうか。或いは告げることすら憚られる、裏社会の窓口なのだろうか。
其れとも、ココロのスキマをお埋めします的な────流石にそこまでの厄ネタではないと思われるけれども。
前提として彼女にも、この店にも、悪意と呼べるものは存在しない。只自然なままに、在りたいと思うがままの形が在る。
其れ故、奇妙な違和感は抱くことはあっても、其処に不信感や猜疑心は生まれないだろうという、何とも絶妙な空気感がこの空間には流れていた。


「────そうだ、雨宿りの戯れといこう。さて、ここは何のお店でしょう?」

「正解したなら……───そうだね、少しばかりサービスしても良いかな?外したなら……良し、その時に考えよう」

店主の少女は何処までも気紛れで、そしてどうやら愉しいことが大好きで仕方がない性分のようでもあり。
唐突に始まったクイズタイム。始まってしまったのが運の尽きか、それとも彼女に話しかけてしまったのが運の尽きか。
ゴシックドレスに身を包み、クスクスと愉しそうに笑う少女は……────やはり、変わり者に違いなかった。


14 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/11(日) 01:00:06 tAG/VLRQ
>>6

彼我の距離が縮んでゆく。
ぶしつけで乱暴な脅し文句に返るのは、予想もしていなかった答え。表面だけの凶悪な狼の鍍金は直ぐに効力を失って、
動揺はすぐさま彼の仕草に反映される。彼は知らなかった。少年のような人間を。その内奥にどのような感情があるのかを。
眼がわずかに見開かれ、中途半端にひらかれた口からは鋭い犬歯がちらりと覗く。こんなことが、あっていいのだろうか
果たして未知と邂逅したのは、どちらのほうだったのだろう。

「なん、……」

冗談だろうか。本気だろうか。
ここらへんならと肩のあたりをさされて、青年は混乱する。こんなときにどう判断したらいいのか。彼の経験は答えを出せない。
そんな時に頼れるのは、そう――自然と胸の奥から沸き上がってくる、衝動を措いて他にはなかった。

「……俺は信じない。てめえみたいなヤツは、絶対にな――ッ!」

薄暗がりのなか。狼の双眸に、にわかに決意の光が宿る。そして咆哮が再び迸った。
ヒトの形をとっていた身体がその輪郭の全体をぼやけさせ、数秒ののちにはまごうことなき狼が現れる。
狼はその身をしなやかに扱い、無防備な少年へ襲いかかった。そのまま地面に押し倒そうとして、――低く長い唸り声を漏らしながら
ついさっき少年が指定した肩のあたりへとその強靭な顎を運んでいく。

そしてその瞬間、能力を発動する。身体の氷への置換。それを用いて彼は、口内につらなる鋭い牙を冷たく尖った氷へと変換するだろう。
氷の牙は少年の肩に触れる。そのやわな皮膚を突き破らない程度に強く牙を押し付け、……そうやって、傷を負ったように錯覚することを期待する。
凍てついた氷は皮膚の感覚をある程度麻痺させることだろう。氷の表面が溶け出し流れ出せばその感覚は血液のそれとも似るだろう。
自分の身体のことと言えど、死角となれば正しくすべてを把握するのは困難を伴う。だから少年は噛みつかれている、そう信じるのではないか。
それを期待しての行動だった。

もともとこんなするつもりはなかった。全く、本心から。彼の心に火をつけたのは少年の言葉だった。
あまりにも”近すぎる”言葉。そこに本心があるなんて信じられなかった。信じたらきっと傷つくことになると、そう思った。
だから彼は襲いかかった。必死に抵抗したらいい。泣き出せばいい。怒り出せばいい。反撃してきたらいい。――欺瞞だったと、そう思わせてくれたらいい。
そうしたら自信をもってこう言えるのだ。「そらみたことか、危なかった」と。
もしそうでなかったら、一体――自分はどうしたらいいのか、分からない。


/後半部が半ば確定じみたことになってしまったので適当に改変していただいても大丈夫です……!


15 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 01:18:44 caDHYarA
>>13
──ふざけてんのか、死にてぇのか?
普段の彼なら、問答無用で少女の頭蓋を文字通りのアイアンクローでメリメリやりながらそう言って強引に口を割らせただろう。
しかし、相手に悪意を感じず、そこまで荒事に出ずらい気分になってしまう。

さて、答えは何だろうか。
商品らしい物は何もないし、お品書きがある訳でもない。

「……占いか何かか?」

商品の無い店、売らない店、占い。
普段の神父を知る人間なら考えられないような、渾身のジョークのつもりだった。
しばし、無言。
どうした、笑えよと言わんばかりの空気が出ている。


16 : 【幻奏虚星】 :2017/06/11(日) 01:35:59 9jaliIDk
>>15



「……………………────────────────」



そもそもが常に笑顔なので、彼女が果たして彼の回答に対して嗤っているかどうかなんて判別の仕様がないのだが。
只、とってもニッコニコしていた。嗚呼、この反応からして正解ではないことだけは確かなようである。
そして彼に向けられた翡翠色の瞳は、まるでこう語っているようだった────"HAHAHA、ナイスジョーク"と。


「うん、まあハズレなんだけどね?」

「寧ろこの内装で正解できる方が可笑しい話だから、機に病む必要もなし。言った通り、戯れに過ぎない訳だし」

あっけらかんとそう告げれば、少女は愉しそうにクスクス笑う。結局、真面なクイズとして機能していなかった訳だ。
何故、そんな問いかけをしたかと言えば────きっと退屈凌ぎとか、ふと思いついたからとか、そういった気紛れな理由に違いない。

この店は彼女の趣味に依るものである。彼女が思いつき、愉しそうだからと其れだけの理由で開いた小さな店。
店というからには商品がある筈だ。然しこの店内に商品と呼べるような代物は何一つとして存在せず。
いや、唯一それらしきものがあるとすれば、其れはこの少女の存在であり。つまり商品とは彼女の力に由来するもの。


「まあ、なんてことのない、"何でも屋"だよ」

「些か、便利過ぎる能力をもった少女が、その力を人の為に役立てたいと思って開いた───と言うには、欺瞞が過ぎるかな?」

人の為に、ではなく自分の好奇心の為。態々丁寧に修正するまでもない些事ではあるものの。
但し"何でも屋"というのはまぎれもない事実であり、この店は彼女が自らの異能を活かす一つの形として開いたものであることも偽りはない。
さらりと、自らが異能力者であることも明かしながら。最もこの世界において能力者というのは希少な存在でもないだろうが────但し、彼女の異能はその中でも異質な存在ではあった。
些か、便利過ぎる能力と彼女は形容した。その表現にら何の嘘偽りもなく────最も、彼女はこれ以上自ら何かを話す様子ではなかったが。


17 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 02:02:57 caDHYarA
>>16

「……」

死にたい。しかも間違ってた。
甘ったるい空気が支配するこの空間。外は本降りになってきた。
ここでちょうど雨が止むような事があったら、最大出力で自分の頭を握りつぶしていた。
雨宿りに選んだ店を間違えたと、滑った空気の中神父は後悔していた。

「そうかい」

気に病むなと言われても、慰めにしか聞こえない。
手当たり次第に近くの物を全部ぶっ壊してやりたい気分になるが、これが自分の意思ではなく義侠が与える衝動だと思うと意地でも抑えようとする。

「便利な能力…… こんな所で燻ってないで是非とも世の為に何かやった方がいいんじゃねぇのか」

嫌味のように呟く。
自分もかつては便利とは言えなくとも応用が利く能力だった。
今では「破壊するだけの能力」。怪力でもない、あらゆる物を壊す暴力の到達点。
肉弾戦だけで生きてきた神父は代わりの能力を欲しいとは思わないが、妬ましくないと言えば嘘になる。

「役に立ちたいなら自分から動くべきだぜ」

やりたい事があるなら、自ら行動しなければならない。
自らを凌辱した連中やその同類を根絶やしにするべく活動している男の経験から出た言葉だった。


18 : 【幻奏虚星】 :2017/06/11(日) 02:30:36 9jaliIDk
>>17

「生憎、僕は慈善家でも聖人でもないからね」

「自分が愉しくなければ意味はない。それに、善意を押し付けて回るのも"らしくない"」

彼の嫌味のような言葉に対して、少女は平然とそのような言葉を返すだろう。
役に立ちたい、というのも建前に過ぎなかった。本心は只、自分が愉しむことが最優先である。

前提として、彼女は善人ではなかった。かといって悪人という訳でもないのだが。
彼女の能力とは非常に便利なものであり───言うなれば、"万能の能力"にさえ近い位置に存在するものであり。
然しその本質は、歪で矮小なもの。その力は彼女が生み出したものではなく、嘗ての残滓を我が物顔で行使するだけの力。
彼女は己の能力を"便利過ぎる"と形容した。然し其れは自賛とは程遠い────自虐めいた皮肉だった。


「うん、まあ、戯れだろうけれども」

「それじゃあ、戯れに自分から動いてみようか────さて、神父さん、何か頼みたいことはあるかい?」
「こんな形でも何でも屋。お悩み事の一つや二つ、何なりと。何、聞くだけならタダだからご安心を────」

少女は能動的には動かない。其れは彼女が己に貸した制約であり不文律。
彼女は飽くまで受動的にその能力を行使する。其れこそが己が異能の最も正しい在り方であると定義したから。

その上で彼女は愉しむのだった。このような人助けだって、彼女が愉しいからしているに過ぎない。
何処までも自己中心的で享楽的、けれどもその好奇心を満たせるだけのものに出逢えたなら、少女は何よりも喜ぶに違いないのだ。
或いは、そもそも────只関わらない方が良いのかもしれないが。いや寧ろ、その方が正しいのだろうが。


19 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 02:57:31 caDHYarA
>>18
うまく言い逃れられてしまった。
まぁ元々、思ってもいない言葉を言っただけなので穴だらけの言い分だったからこうなるだろう。

超然とした少女の言い分も、まぁこういう時期あるよな。と微笑ましく見ている。
あまりに長い時間を生きた男にとって新たな発見も無いこの世界の全てが些事なのだった。

「じゃあ── なんか面白い事しろ」

かなり無茶振りだったが、男が少女に望める事はこれだけだった。
些事でしか無い世界に、時折生きる意味を見失いそうになる。
不老や不死、そもそも死の概念を持たない者など、超越的存在である故の悩み。
自身の能力を「強い」でもなく「珍しい」でもなく「便利」と言い切った少女に僅かに期待を寄せる事にした。

「無理なら肉と酒とタバコくれ」

大概の事は経験してしまっているので、あくまでも僅かな期待だ。
生臭神父なので肉でもいいらしい。


20 : 【幻奏虚星】 :2017/06/11(日) 03:33:11 9jaliIDk
>>19

「えー、嫌だ。それは僕が面白くない」


即答だった。無茶振りに対する躊躇いなき返答だった。

前提として、彼女の人助けは自分が愉しむことが最優先事項である。
なので他人を面白らがせて終わり、というのは其のポリシーに反するものであり、なのでこうして断るのは必然だった。
他者の役に立つ見返りに、自分も面白いものを堪能する。その不文律が成立しなければ、彼女は頼みを受けはしない。
何より、彼女は残念なことに他人に歓楽を提供するような愉快な人間ではなかった────別ベクトルでの愉快さは兎も角。


じっ────と、少女は神父を見つめた。

翡翠色の瞳は、その根底に或るものを覗き込むように。例え拒絶されようが、勝手に覗き込んでいく。
その瞬間、彼女の瞳には不思議な色が宿っていた。ともすれば其れは、彼女の異能が発動する片鱗だったのかも知れない。
彼女の異能は幾つもの因子を内包する。其れがどのような力であるかは、紡ぎ手である彼女にしか知り得ないが。


「うん─────まあ、そういう在り方も良いんじゃないかな」

「けれども、感性が倦怠の海に沈んだ生き方は────余り良くないと思うよ?」

一つだけ、確かなのは。
少女は覗き見たのだろう。恐らくは精神に作用する異能力を以って、彼の内側にあるものの片鱗を。
それが彼にとって面白いことであるかは────まあ言うまでもない。そもそも興味が湧かなければ、関わろうとさえしない少女のことだから。
勝手に覗き込んで、勝手に満足して、歯車が噛み合わなければ自分だけ満足して終えようとする、不老不死とは別の形の超越的な形。


「────あ、タバコね、いいよー」
「肉も酒も調理場にはあるけど……なに、もしかして料理して欲しい感じ?」

そうして棚の奥から古い銘柄の煙草を取り出せば、彼へと向けて投げ渡す。
彼女は煙草に興味はないのでその銘柄がどのようなものかは知らないが、決して吸えない状態のものではないはずだろう。


21 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 04:06:47 caDHYarA
>>20

「そうか、俺を笑わせたら世界の希望になったのにな」

ニヒルに笑う。少女には何の事か解らないだろう。
感動を失うほど悠久の時を生きる者は少なくない。
寧ろ自分は若輩な方で、もしかしたら人類創生から生きている人間というのもいるかもしれない。
そういう人間を笑わせるような芸があれば、彼等の希望に違いない。

こちらも少女のポリシーなど知らないし、こんな場末で唐突にそんな事があるとは思ってなかったが。

「……!? 一生同じ物しか食べられないと、途中から味がしねぇんだよ」

覗き見られた、という事さえも新発見とは言い難い。
だが、他人の精神に干渉する能力の珍しさを知っているため、多少動揺する。
同時に、これが「便利な能力」かどうかの疑問も浮かぶが。

受け取った煙草を見て、少し眼をぱちくりする。
銀のトレジャラー、イギリスの高級ブランドの煙草の最高値商品。絶版の奴。
一つ吸いたい気持ちが高まるが、未開封のこれは寧ろコレクターズアイテムだ。
「ここ禁煙じゃなかったんだな」と言うと自分のジタンを取り出し、火をつける。

「銘柄変わると咽るからな、ここで吸っていいなら、自分のでいい」
「分厚いステーキにしてくれるか?」

ここだけ治外法権というか、自分の目的や素性を忘れそうになる。


22 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 04:07:28 caDHYarA
/すいません凍結でお願いします。
/続きは明日(今日)の夜お返しします


23 : 【幻奏虚星】 :2017/06/11(日) 04:40:21 9jaliIDk
>>21

「世界の希望になるには、僕は少々捻くれ者過ぎるだろうから」

「そういうのは、もっと相応しい人がいるだろうさ────まあ、いつか巡り会えるだろうね、きっと」

けらけらと、無邪気に笑って返す。ああ、そもそもが対極の存在なのだろう。
感動を喪った者と、愉悦に生きる者、少女にとっての生は感動に満ち溢れた、愉悦の限りに他ならない。

この時間でさえも、少女は勝手に愉しんで、勝手に満足するのだろう。例え相手の感性が死んでいようが関係なく。
この世は娯楽に満ちている。だからこそ彼女は飽きずに笑うのだ。例え己が主役に成れなくとも、愉しみは尽きないと。
結局────何処までも自分本位なのだ、彼女は。加えて物事を愉しむことに関して、恐ろしく器用なだけで。


「確かに、心を読むのは便利な能力だろうけれども」
「うん───其れが総てというのは、違うだろうね。というわけで二問目のクイズは其れに決定」

「正解したら、煙草も料理もなんと僕の奢りだ────それじゃあ頑張って考えてね」

こうして余計なことを思いつく。というか、ちゃっかりと金をとるつもりだったのが。
クイズの内容は彼女の能力について、然しそもそもこれも回答を導き出す要素が現時点では余りに少ない。
要は答えが当てられるとは思ってもいない。彼がどんな回答を捻り出すのかを愉しむのが彼女の第一目的に違いない。

そうして少女は店の奥へと引っ込んで行く。そうして少しばかり時間が経過したら、すぐに戻ってくることだろう。
ミディアムレアのサーロインステーキが乗せられたプレートを携えて、彼の目の前のテーブルの上に置いたならば、愉しそうに笑みを浮かべて。
─────どうしてそんなものがすぐ出せる環境なのかと言うと、彼女の趣味という他ない。やっぱり変わり者に違いなかった。


//了解しました


24 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/11(日) 18:49:56 X8WAsT.s
>>11

大麻草、阿片。人間的な機能を破壊するそれらにも近く、決定的な一線を引く薬物。名は覚えていない。
けれども、自らの身体が動かなくなったのは薬物によるものではなく、それがなくなった事によって、従来通りの肉体になってしまったことが原因なのだ。
彼には男性としての機能も、女性としての機能も存在しない。それらを削ぐ段階において発生した不具合が『腕の不自由』であり、症状を抑えていたのがそのクスリだ。

大変。その言葉で片付けられるほどに少女も殺伐とした人生を送っているのだろうか――――僅かに止まった思考が動く。
然し、即座にそんなことはないだろうと思い直した。そう断定しなければ、精神にまで以上をきたしている彼があまりにも滑稽だったからだ。
朗らかな、なんでもないことのように此方のことを聞き、自身のことも話す。簡単すぎた。あまりにも距離感が近いせいで、少女を自身と同じ様な境遇にあるとは思えなくなる。

少女の話はよくある話だった。聞く必要もなく、記憶にすら留める気はなかったものの、聞いてしまえば覚えはする。何度も聞いたような『分かりやすい』もの。
言葉を聞く限り【帝国】出身だろうかと推測し―――――もし少女とタイミングさえ合えば、彼と少女は『依頼人』と『暗殺者』として出会う可能性もあったのかと一人思う。
嫉妬、猜疑。相手を憎むという行為は最も殺意に繋がりやすい。彼が前のように苛立ちをそのままぶつけられるような人間だったのなら、少女に取引を持ちかけていたに違いない。
だが、現在はそのような気分にもならず。彼は少しだけ笑った顔がひきつった。自嘲から、他者の話に移ったことによる僅かな不快と、少女の話を聞いてしまったという後悔。

唯でさえ以前相手に共感してしまった事でここまでの症状が誘発されたのだから、コレ以上聞くこともない。いや、聞いてしまうことこそが不味いと理解する。

其処からは――――彼の行動は明快だ。

少女に対し「話はこれで終わりだ。借りは返す。」と言葉をかけると、僅かに滲んだ脇腹の傷を無視して、足に力を込める。
もし少女に止める意思がなく、強行的手段・会話による引留を行わなければ、彼は即座に路地裏の壁を『蹴るようにして』前方へ飛び姿を消すだろう。


25 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/11(日) 18:50:42 X8WAsT.s
>>14

――――痛み。鋭いようで、柔らかなそれを肩口に受けて、彼はようやく自分が『押し倒されている』のだと理解する。
皮膚の感覚が麻痺しているのか、明確な痛みは感じない。鈍く、恐らく肩口に牙を押し当てられたのだろう。頭部は狼で――今では全身がそうなのだから、牙もあるに違いない。
人間の持つ脊髄反射として、ミサギは少しだけビクリと反応する。火に近づけた手が熱を感じて引っ込められるように、痛みに対して僅かに体が脈動する。
人差し指が能力を発動させようと動くものの――――ミサギはそれを制し


「……いてぇ。」

とだけ呟いた。

ミサギには、相手との適切な距離が理解できない。知識としてのパーソナルスペースについてなら答えられるが、実感として宿らない。
今のように容易く相手の嫌がる部分に入り込んでは逆上を買い、若しくは批判を受ける。だが、それも当然といえば当然のことだ。
見ず知らずの他人から急にわかったような口を聞かれることに耐えられる人間が、この世界に一体何人居るだろうか。きっと、両手で数え足りるくらいしかいないだろう。
それほどまでに自身の存在と相手の存在というのは遠いもので、始めは遠くからで無くてはならない。相手との距離が近くなればなるほど、放つ言葉には重みが増えてしまう。
故に、青年のとった行動は何一つとして間違ってはない。少々内側にある衝動に任せているような気はするが――――それも、自身を守る、保つためであれば当たり前のことだ。

何方が可笑しいかと言われれば、ミサギに間違いなく手が挙がる。脅しを真に受けて、それも自身を人間であると言った相手に対して『食人』を容認している。
彼に言わせれば、それは悪いことである。人間が人間を喰らうことは紛れもなく種としての存続に関わる異常であり、本来ならばあり得ない衝動として淘汰されるべきもの。
然し、それが『彼に対してだけ向けられているのであれば』構わないとミサギは思う。別に死にたいわけではないし、食われてしまうつもりもないが、それで青年が本当に満足するのであれば――少しばかりならば構わないだろう。

人間としての危機管理能力の欠如。相手と自分との距離が余りにも近すぎる故に、自身と相手の区別がついていない。脳内では理解しているが、其処に実質的な思考がない。
壊れているといえば簡単だった。然し、彼は間違いなく正常な思考を有しており、だからこそ余計に質が悪い。理解しているからこそ、そこに違和感を感じないのだから。

結局のところ、彼が返す反応はたったひとつ。自らの痛みがふいに口をついて出たと言うだけ。肩口を流れる液体と、感じる痛みを全て思考の埒外へ投げ捨て、次いで放つのはありきたりな台詞。

「狼って、おもったよりも重いのな。」

なんて、痛みに呻くこともなく朗らかに。表出するのは意外という感情と、自分でかってに納得した思いだけ。
相手が退けば何をするまでもなく、若しくは血が流れすぎた(という錯覚だが)と思われる辺りで「そろそろ……やばい気がする」と彼の体をゆっくりと押し戻そうとするだろう。


26 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 18:57:50 caDHYarA
>>23
「だろうな」

世界を転覆させるような異常な力が、街の片隅でその力を発揮する事なく消えていく。
それは此処だけではなく、世界各地で起きている事だ。
神父の義肢もそうだ。肉体の破損すら厭わない最大出力ならあらゆる物を、星さえも破壊しうるエネルギーを蓄積している。
力を使わないという選択肢を選ぶのも、力を持つ者の自由である。

使まずとも楽しめる少女と、使っても世界に活路を見出せない男は確かに対極と言えるかもしれない。

さて、心を読める相手の前で不用意に思考を巡らせた事で、藪から蛇を出す事になる。
第二問。少女の能力は何?
読心だけでは無い。それが出来るといったが、応用する事で読心が出来る能力というのは思いつかない。
全能である可能性も過るが、全能は全知を内包する。全治にしては、人間味がありすぎるのでそれでもない。

「アーカイブがある──とか」

普通の人間ならこれほど少ないヒントでここまで近い答えは出せなかっただろう。
神父が長い人生の中で経験した事柄から、引き出しの多い能力者の存在を知っていたから出せた賜物だった。
限りなく万能に近い能力者と、時に戦う事もあった。故に万能な能力を虚言や与太話だと思っていない。大真面目に考えて出した結論だった。


27 : 【変異刀匠】一期一会の変態刀。詳細@wiki :2017/06/11(日) 19:50:05 bbEQLRMU

街の中でも職人通りと呼ばれる古民家が建ち並ぶ場所の一本奥、10坪程の小さな家屋が多い中でも2階建ての一際古いその家屋は、隣に寄りかかるようにして漸く建っているよう.な有様だった。
一目見ただけでは通り過ぎてもおかしくないくらいには地味であり。
唯一素性が分かるよう、出入口のガラス戸の古今亭製作所と書かれた紙も、風雨に晒されて少し剥がれかけている。

中を覗けば入口は土間であり、くすんだ空っぽのショーケースと、壁を挟んだ向こうに人一人が辛うじて腰を下ろせる小さな作業場があって、その奥にぼんやりと生活の明かりが見える。
土間を上がると直ぐにある、2階へ続く階段の先は暗く判然としない。
その間辺り、土間と引戸の段差に腰掛け壁に寄りかかって、留守番とおぼしき幼い少女が、埃っぽい室内ですやすやと寝息を立てていた。

蚊取り線香の煙。それは風通しに少しだけ開かれたガラス戸から漂ってくる。
休日の昼下がり、静まり返った日陰の通りに其処だけ別の色が着いているようだった。

/人待ちです


28 : 【幻奏虚星】 :2017/06/11(日) 19:57:43 pOQTbuhE
>>26

「残念、不正解───けれどもニアピン賞」

「なのでお代は取らないでおくよ。それじゃ、どうぞごゆっくり」

当たらずとも遠からず。膨大な記録より異能を引き出すという点において、その回答は的を得たものである。
予想以上、期待以上。少しばかり驚きつつも、その洞察力に感嘆し、なのでサービスとして料金を徴収するのは止めることに決定した。

くすくすと笑いながら、少女は椅子に腰を下ろす。窓の外に視線をやれば、いつの間にか天気は小雨にまで落ち着いていた。
料理を食べ終わる頃には雨も止んでいることだろう。奇妙な時間ではあったが、愉しむことはできたので少女としては充分満足であり。
これ位で丁度良かった。小さな店で身の丈にあった娯楽を満喫する───異能など関係ない、自由気ままな生き方が彼女は好きだった。


「それじゃ、勝手に食べて、勝手に出ていくといい」

「そして気が向いたらまた訪れてもいいし、訪れなくてもいい。ここは、そんな気紛れな場所だから」

彼女の力は万能に近い存在であり、そして同時に忌むべき存在でもある。
そんな力を彼女は趣味の為だけに行使する。それは等身大、身の丈に合った使い方であり、然し異能の無駄遣いとも言うべきものであり。
ただ、それでいいのだろう。仮に世界を転覆させるような力を得たとして、実際にそのように力を使うことが愉しいとは思えないのだから。

この店で、この街で、面白そうな人々に絡んでいく、それだけで暫くは飽きないだろうから。
もし彼が二度と此処に訪れないと言うのなら、それが縁の切れ目。けれどもまた逢う機会があれば────その時はまた愉しませて貰うと、それ位のつもりで。
そうして少女はテーブルの上で、再び拳銃弄りを始めるのだった。どこまでもマイペースに、気の向くままに。


29 : 【栄華之夢】 :2017/06/11(日) 19:58:06 CL9LnWBY
>>24

「……そう」

やや残念がって彼女は言った。

「でも借りを返すのはいいわ、別にただの気まぐれだったし」

そう言い切る。

「……あ、帝國の人間に捕まったら黒木家の人間と言いなさい、そうすれば私の力で多少はどうこうできるかもしれないから」

そう言い残してくるりと後ろを向いた。
アロエ男をボディーガードのようにしつつ。

//そろそろ〆ですかね?


30 : 【負荊魔手】【執事無敗】【栄華之夢】【新種工場】 :2017/06/11(日) 19:58:50 CL9LnWBY
//あげておきます


31 : 【不撓鋼心】 :2017/06/11(日) 20:20:56 .j6Pd1vI
>>27

――思えば不思議な感覚だった。

いつものように人々の依頼をこなし、悪漢たちを捕らえて然るべき機関に引き渡した後の帰り道。
主だった活動拠点の一つと成り得る山中のロッジに向かうつもりだった。開設されて間もない組織だが、賞金稼ぎの互助組合のような役割を果たす場所。
とある縁から自分も多少は設立にかかわっており、やはり動向は気になるもの。
一通りの掃除くらいは手伝ったがむろん業者の手は入らねばならないほどの状態であり、今どうなっているかを見に行く道の途中……。

「…………?」

懐かしい気風を残す職人通り、どことなくセピア色の面影を見せる古民家の街並み。
少し珍しくはあるもののそれほど目を引くほどでもない通り道、その中でなぜか一軒の家屋が目についた。
観察してみると周りのそれに比べても一等古いように思える……他と違うのはそれくらいのものであり、自分でもどうして気になったのかが分からないくらいには、その家は目立ってはいなかった。

古今亭製作所――。
やはり何らかを商う家なのだろうか。それもこの通りにあっては珍しくもないことであり、ますますもって分からなくなる。

……静かな面持ちで戸を開き、屋内に入ってきたのは一人の男。
金髪碧眼……色素の薄い肌は北欧系。長身を包むのは黒いスラックスと同色のハーフコート。腰には一振りの無骨な長剣を吊っている。
鷹のように鋭い眼光の男は辺りを見回し、あどけなく眠っている幼い娘を発見した。
しかし起こすのは気が引けるのか、視線を外して再び見渡す……が、彼女以外の気配も姿もなく。

「……すまない、少しいいだろうか」

低い、しかしよく通る声で少女を起こすことを試みた。


//よろしくお願いします!


32 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/11(日) 20:24:40 X8WAsT.s
>>29
//じゃあこのまま去ったってことでお願いします。


33 : 【負荊魔手】【執事無敗】【栄華之夢】【新種工場】 :2017/06/11(日) 20:30:07 CL9LnWBY
>>32
//了解です


34 : 【変異刀匠】一期一会の変態刀。詳細@wiki :2017/06/11(日) 20:37:49 bbEQLRMU
>>31

ガラス戸が開く音に、少女の耳がぴくりと動く。
次いで掛けられた声に、伏せられた睫毛が瞬く気配がした。

「ふぁあ〜〜〜〜あ。」

開かれた口からこれでもかという大あくび。
体内の空気を入れ換えてようやく、黒曜石のような瞳が碧眼の男を捉えた。


「む、見ない顔じゃな。 道に迷ったか?」

あどけない口から出てきたのは、深みのある低音だった。まだ母の温もりを欲すべき年頃の少女が発する言葉遣いではない。
相手が見た目不相応に若いということを分かりつつ、それでいて尚対等に会話しようとするのだ。
土間の縁に腰を下ろしたまま男を見上げれば、男の長身もあり、殆ど天井を見るような向きになる。
眠気でしょぼくれた眼差しで、安眠から引き起こされた訳を問うた。


35 : 【不撓鋼心】 :2017/06/11(日) 20:56:05 .j6Pd1vI
>>34

……流石に予想外だった。
この世は何が起こるか分からない。それは承知しているが、まさか幼い娘の外見に反する深みを前に、まったく驚かないということはできなかった。
なにせ単なる留守番程度にしか思っていなかったのだ……この男でなくとも、誰だってそうだろう。
幼子を少し過ぎたくらいの小さい子供を一軒家の主だと決めつける人間がどこにいるという。いるとするならそれはよほどの馬鹿者か、あるいは……。

とはいえ表出した反応は僅かに瞼を見開くくらいのもの。
驚愕は一瞬、しかし世の中こういうこともあるだろうと戒めて必要以上に騒ぎ立てる無礼を許さなかった。

「いや……」

問われて、少しばかり答えに窮する。
道に迷ったのではない、ではなぜ。普段は武具店にも滅多に入らない自分が、なぜ故も知らずここに足を踏み入れたのか。
中身のないガラスケース。決して大きいとは言えない作業場。分かるのはそれくらいだ。とうぜん家屋の外観からも、ここが何を商う場所なのかはうかがい知れない。

これがこの通りの住人同様の技術者ならば目星をつけられることもできたのだろうが……。
彼は単なる武芸者。能は剣を振ることしかない。教養が無いわけではないが、一つの道に精通するほど究めた学を持っているわけでもなかった。

「……妙な話と自覚はあるが、自分でもなぜ惹きつけられたのか分からない。失礼だがここはどういった場所なのだろうか」

何かを製作するということくらいは分かるのだがと付け加える。

考えてみても答えは出ない。ならばいっそのこと聞いてみるのが早いだろうから、ここは素直に尋ねてみることにした。


36 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/11(日) 21:06:58 tAG/VLRQ
>>25
抵抗はひどく鈍かった。殆ど無かった、と換言してもいい。
まるで人形を相手にしているかのように狼は意図した通りにすべてを実行し、肩口に氷の牙を押し当てる。
この状況を引き起こした本人でありながら、青年の混乱はいや増した。――なぜ、抵抗しない?
”仕掛け”がばれているとは思えない。反射的な反応はあったし、彼の漏らした独白からもそれは見て取れる。
ならば、なぜ、……。

「――そうかよ」

狼はため息をつかない。けれども喉を上下させるその仕草は、さながらそのように見えたかもしれない。
一言。毒気の抜かれたような、脱力した呟きを漏らした。
少年が身体を押し戻そうとすれば、それは直ぐに叶えられる。狼の身体は再び大地を踏み、その目は少年を見る。

凪いだ湖面に突風の吹くような揺らぎが、再び起こる。それは狼の像から見る者の焦点をひきはがし、数秒。――
それから。そこには人間が立っている。身体も、頭も、すべて。目つきが悪くて粗野な印象の男が、現れる。
そこに野生の影は無い。飛び掛かった時のような覇気もなければ、戸惑いを露わにするようなこともなかった。

「悪かったな。……本当に」

喉の奥から絞り出すような低い声。そして、手を伸ばす。少年を助け起こすことを意図したものだ。
さっきまでのやりとりを顧みたなら、その手が何をも掴めないのは明らかだろう――あくまで、普通は。
しかしこの相手ならもしかしたら。青年はいまや、そんなふうに考えるようになっていた。

「どうかしてたんだ。俺は、俺は馬鹿だった」

少年は本気だった。青年が真意を掴みかねた言葉のひとつひとつは、真剣そのものだったのだ。
爪牙のひらめきに抵抗がなかったように、彼の言に偽りはなく。ただそれを信じられなかっただけのこと。
”分からない”から拒絶する――今までその行動で傷ついてきたのは、誰より自分だというのに。

新たに湧いた後悔はもともとここにいた理由――別の後悔――と結びつき、憂鬱を深める。
双眸には疲れと不安が滲みだし――だからこそ、彼は手を伸ばした。

堆積する負の感情を振り払い、強いて少年と向き合うために。それは初めて青年の見せた強さとも言えた。
少年が近づけ、自分が遠ざけようとした彼我の距離。それを再び埋めてしまおうと、――そのために手を伸ばす。
なんて今更、虫がよすぎるだろうか。


37 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 21:13:59 caDHYarA
>>28
当たらずとも遠からず、らしい。
どのような条件、ルールがあるのか不明だが能力を複数持つ事が許されている特例のような存在。
そのアーカイブは少女自身にしか知覚できないのだろうから、推測のしようがない。

少女のような特例は、長い人生の中で居なかったわけでは無いが極稀である。
便利というのも頷ける。
そして、自分の希望に成りえる事も

「いや、いい 金は出す」

食事だけなら御馳走になったが、絶版の煙草を頂いた分も含めて懐から札束を一つ、どんと。
路銀と破壊活動の活動資金は、破壊先から火事場泥棒のように簒奪する事もあるが、基本は趣味で特技のデイトレードで賄っている。
故に犯罪者の流れ者だが金に事欠かない。

「その代わり、次会ったら一つ、俺と闘(や)ってくれ」

闘いに愉悦を求める質ではない。
だが、以前の能力なら戦っても敗北必至をどう引き分けに持ち込むかしか考えられなかった特例に今の能力なら手が届くかもしれない。
改変された今の能力と向き合う為に。感動を無くした心に僅かにでも変革をもたらすために。

以前の能力で出来る事を10としたら、今の能力は1。だが、その1は究極の1だ。
1を極めて無限に勝つ事が出来たら、自分の心も少し変わるのではないか。藁に縋る思いで少女に頼んだ。
返事を聞いたら、男はこの店を去るだろう。


38 : 【変異刀匠】一期一会の変態刀。詳細@wiki :2017/06/11(日) 21:20:50 bbEQLRMU
>>35

「ふふ。 さてはそのお腰の相方が誘うたのでないかな、剣士殿」

目敏く腰の長剣に気付いた顔には、悪戯っぽい色が浮かんでいる。
男の戸惑いも少女に取っては好奇のスパイスになるようで、頬に手を添え観察するような眼差しから一転、立ち上がり年寄り臭く腰をとんとんと叩く。

「表の貼り紙にあろう。古今亭(ここ)は打刃物を扱っておる。店、兼工房、兼儂の住居じゃ」

ほれ、と手を広げた先の作業場には水桶や砥石、金槌にグラインダといった既存の道具から、由緒の分からぬような粉や鉱石の塊が無造作に転がっている。
但しそれらはいずれも厚く埃を被っており。閉ざされて久しい年月を言外に語っていた。

「……とはいえ最近は、引退した年寄り連中の集会所になっておるがな。」
「儂は古今亭 刃金(ここんてい ばきん)じゃ。此処の主じゃよ」

恥ずかしそうに桃色に染まった頬を指で掻く。
一通り話し終えて沈黙が戻る。久方ぶりの既知でない来客とあって、暫し手持ち無沙汰にしていたが、やがて折り畳みの丸椅子を2つ持ってきて並べた。
立ち話もなんだということだろう、尤も寂しい店構えを見て、男の興味がまだ失せていなければだが。


39 : 【龍神変化】 :2017/06/11(日) 21:23:52 suIX47H6

梅雨の生温くぬめりけのある空気は、人の神経を緩やかな手つきで逆撫でるように、街の隙間を通り抜ける。
誰かのうなじを撫でたりすると、ぞくりとした寒気を与えて、ああもうすぐ幽霊が現れる時期かと少しだけひやりとさせる。
雨が多くなればあの独特の、土と葉っぱの混ざったような臭いがたちまち街に満ちてしまうだろう。
それを思うと大体の人はこの季節を好きにはなれない。早く楽しい楽しい夏が来てほしいと感じていた。

それは彼女も同じことだった。こうも雨が多くては、外で喫煙する場所が限られてしまう。
特に今夜訪れている郊外の田舎町となれば尚更で、これでも分煙に気を遣っている身としては、携帯灰皿すら取り出せない季節は本当に煩わしい。
それだから今夜は、人気の全くない、電灯が一本しかないような寂れたバス停で、
大量の大粒の雨が屋根を叩く音に鼓膜をしきりにノックされながら、あまり気持ちのよくな一服をする羽目になっていた。

「はあ、不味い。」

腰のホルスターに拳銃を収めている事さえ目を瞑れば、やや柄の悪いラフな服装の女は、しかめっ面でぼやく。
バス停に居続けなければならないがら、それが後どれだけの時間が掛かるかは、彼女も知らない。
つまりそれは今日ではないかもしれないのだから、下手をすればあと何時間も森に囲まれた臭いバス停で、残り本数少ない煙草を節約しなくてはいけなかった。

月明りはわずかにしか差し込まず、セピア色の古ぼけた電灯は、ちりちりと音を立て、羽虫を数匹はべらせている。



/今日もあまりお返しできないと思うので、置きメインになると思います…!のんびりペースでよいかたでーッ
/シチュとかキャラ相談もあればいつでもだうぞ。


40 : 【射機焼填】 :2017/06/11(日) 21:34:13 X8WAsT.s
>>36

「――――。」

言葉はない。まるで息を吐くようにして上下した喉の感触が、彼の体に伝わり、彼の心臓が小さく跳ねる。
凍ったように止まった――当然比喩であり、彼は心臓の鼓動の回数が比較的少ない――心臓が脈動し、血液が全身へとめぐる。
ここでようやく彼は、自身の血液が流れ出ていないことを理解した。時間軸にして青年が体をどけた直後のことで、首元に手を当てても血がつかないことが証明している。

結局、青年は彼を喰うことなど無かった。その事実にミサギは少しだけ安堵する。食人は許されない行為であり、本来ならば淘汰されるべき異常である。
だからこそ、自分であるならば構わないだろうと思っていたのだが――それも間違っていたらしい。只の冗談だったのだろう。彼はそう『理解する』。

「『どうかしてた』ってことは、それが『おかしい』ってことに気づいたんだろ?」
「――――なら、別に謝ることじゃない。」

そう言って、彼は差し伸ばされた手をさも当たり前のように右手で取り、立ち上がるだろう。まるで、先程のことなど気にしていないかのようだった。
いや、たしかに彼は気にしていないのだろう。許可が出たのだからすることは当たり前で、ただ青年は行わなかった。ならばそれで構わない。
信じる信じないの問題でもなく、相手を疑うと言った『距離』にすらいない。流石に悪意を持った人間であればその認識を改めるだろうが
――――彼がみた青年は、泣いていたのだ。涙は見せずとも、その瞳の奥には涙が見えた……様な気がした。

(……そうだったとしたら、放っておくのは後味が悪い。)

ミサギの行動基準なんて所詮そんなものだ。相手が誰であろうとも、どのような人物であろうとも、見捨てることで後味が悪くなるのなら、何があろうとも救ってみせる。
すべてを敵に回せるほど強くはないし、殺人鬼を相手に大立ち回りできるほどの度胸もない。
だが、此処に居るのは只の人間で――少し狼の姿を摂ることができるだけだ。全くもって、問題ない。

「人間なんだから、失敗だってある。」

すべての行動を総括するかのように彼は強引にそう纏め、青年の瞳を見つめ返す。
強い心に答えるように、彼は歩み寄ってくる存在を決して『否定』しない。それが、『後味の良い結末に成るのならば』。


41 : 【幻奏虚星】 :2017/06/11(日) 21:38:53 pOQTbuhE
>>37

「ああ、いいね。それはとても魅力的な提案だ」

「気が向いたら、何時でも訪ねてきなよ。どうせ、僕はここで暇を持て余していることだろうからさ────」

少女は戦闘が好きという訳ではない。只、その提案を吟味し、面白そうだと思ったから。
なので乗った。縁は切れず、再び出逢った時にはお互いの力をぶつけ合うという約束も結ばれて。

そういえば────この能力を先頭に置いて全力で行使したことは未だなかった。
便利ではあるものの制約も多く、彼女自身がこの異能を多用することを良しとしていないからでもあるのだから。
偶には、羽目を外すのも悪くないかも知らない。嗚呼、それはとても───愉しい闘いになるだろう。


けらけらと笑いながら、彼が退店する姿を見届けたなら。
拳銃を懐に仕舞って、大きく伸びをする。さて、色々と準備をしておこう────────


//こんな感じで、私からは〆ということで。絡み乙でした


42 : 【不撓鋼心】 :2017/06/11(日) 21:39:12 .j6Pd1vI
>>38

言われて得物に目をやった。
――剣が誘った、など。甚だ非現実的な話だったが……否定する気にはなれなかった。

そもそもこの土地において“非現実的”などという文句がどれほどの説得力を持っているというのだろう。
世界中に異能力が満ちあふれ、それらは科学に拠って立つ由来の代物も確かに多いのだろうが、多くはまったく未知のものだと聞いている。
むろん研究する人間や機関は星の数ほどあるが、根本を解明することはどの勢力にもできてはいまい。
つまり日常的に超常的な能力に触れているということだ。ゆえどれだけオカルト的で胡乱な話だろうと、決定的な何かが無い限りはこれと決めつけるまいと心がけていた。

それにここが、刃物を扱う工房ともなれば……。

「……痛み入る」

一言告げて、椅子に腰かけた。
ぴしりと一本、芯の通った座り方。佇まいと雰囲気もあって、連想するのは鋼。
それは未だ少年の域を出ない彼の実年齢には似つかわしくない硬質なものだったが、しかし身振りはまったく自然で違和を感じさせない。
無理に何かを演じていたり、“こう”あろうとする人間特有の不自然さが欠片も見当たらなかった。まるでこれこそあるべき姿なのだというかのように。

「メルヴィン・カーツワイル、未熟な武芸者だ」

短くはなった言葉に衒いはない。
彼が武を基とする人間なのは見ればわかることだろう。それ以外に語るべきことはないのだと、何かを装飾しようとはしなかった。

「不思議なものだ。これまでこんなことは一度もなかったのだがな」

こんなご時世だ、街に武具店などありふれている。
何度か入ったこともあるし、自分用ではないにせよ道具を求めたこともある。
だがこんな……意味もなく足を運んでしまった経験など、彼の人生でこれが初めてだった。


43 : 【殴蹴壊則】 :2017/06/11(日) 21:46:27 caDHYarA
>>41
/乙&ありがとうごっざいました!


44 : 【変異刀匠】一期一会の変態刀。詳細@wiki :2017/06/11(日) 22:07:52 bbEQLRMU
>>42

「そう畏まらんでもいいんじゃがのう」

一本芯を通したような居ずまいにくすりと笑みがもれる。
男の対面に腰掛けて、ショーケースに肘ごと凭れる。その際掃除し忘れた埃を吸い込んで、けほりと噎せた。

「未熟か……」

頷いて、男が自らを評した言葉を少女は肯定も否定もしなかった。
職業柄腕に覚えのある人物にはなにかと関わりがある。その中で培われた選定眼を持ってしても、相手の力量を推測る事は出来なかった。
巌のごとき磐石さは感じられるものの、それが剣を頼みにする自信からくるものには、何故か思えなかった。
老成した若者、肩肘張らぬ姿が等身大の姿勢に現れている。自分のことを差し置いて、少女は男をそう評した。

「未熟結構ではないか。儂ら刃物屋からすれば、未熟な剣士方こそ恰好の上客なのじゃぞ」

何故だか分かるか? と身を乗り出してその訳を問うてみる。
相手からすれば不快な話かも知れない。聞き流されても構わぬと身を戻す。

「他所は卸しが専門の所も多いじゃろうからな。儂らのような職人自身のやっている店は珍しかろう」
「まあ、ゆるりとしておくれ。どれ、茶でも淹れよう」

お茶かコーヒー、どちらがいい? と言いながら立ち上がる。返事を聞き、止められなければ一旦店の奥へ引っ込むだろう。


45 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/11(日) 22:24:25 tAG/VLRQ
>>40
あくまで少年の振る舞いには迷いがなかった。手を取って立ち上がる時も、口をひらいたときにも。
それが彼にとっての”あたりまえ”なのだろう。たとえ常人とずれているところがあったとしても。
青年は笑った。疲れ切った人間の見せる、口許の筋肉を弛緩させるようなやりかたでもって、明るい表情を見せる。

「あんたは、優しいんだな」

きっと彼は自分を優しいなどと思っていない。青年はそう信じていたし、的外れも自覚していた。
それでもあえて口にしたのは、自分の認識を相手に伝えようという意思によるものだった。
彼の行動の出発点がなんであれ、その態度は自分には”そういう”風に映るのだと、それを伝えたかった。
だからどうした、そう言われてしまえば、それまでではあるのだけども

「……ありがとな」

口をついて出てくるのは柄にもない言葉ばかり。感謝の直後にちくしょう、と、行儀の良くない悪態をつく。
しかし言わなくてはならないような気がした。相手にとってピンとこないものであったとしても、
礼に値するかは自分で決めるものなのだから。そのくらいは青年にだって分かる。

それが済めば青年は、しばらくのあいだ沈黙することだろう。
ずいぶんとマシになった胸を刺す鈍痛に耐え、それに慣れるのを待つように。
それでも少年がこの場に留まっていたなら――やがて、こう切り出す。ひとつ訊いてもいいか、と。


46 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/11(日) 22:27:59 3RiKyIwI
>>39

厚めの革で造られたジャケットは雨水を弾き、合羽代わりとしては十分な役割を果たせていた。
しかし頭部に被せるフードが付いてるほど都合よくもなく、少女の漆髪は雨天に晒され、ずぶ濡れ状態だった。
この時季ゆえの温暖、さらに気候ゆえの高湿気が重なり、上着の下には普段以上に熱が籠もる。
その調子で彼是もう何百メートル、何千メートルもふらつく足で歩みを進めてきた。

―――そして先客がいるとも知らないまま、漸くして見つけたバス停に、弱々しい拳を叩きつける。

「……ハァ………………ハァ……………………」

発汗なのか雨滴なのかも定かでないモノで濡らした顔を上げ、明確に見えてるかもわからない虚ろな目で辺りを見渡す。
そして屋根の下に辿り着いたことで何かが切れたのか、その場に無言で倒れ込むのであった。

/では置きで、よろしくお願いします…


47 : 【不撓鋼心】 :2017/06/11(日) 22:31:34 .j6Pd1vI
>>44

正直なところ、実際がどうあれ、背格好が自分よりはるかに小さな子供に何かをさせるというのは気が引けた。
しかし相手からすれば客自らに動かせてしまう方がよほど礼を失したことかと思い直して首肯する。
珈琲を、と答えて、その小さな背を見送った。……そして待つ間、改めて店内を見渡す。

やはり久しく客は訪れていなかったのだろうな、と思った。
このケースにも、奥にある諸々の道具も埃を被っていて使用の痕跡は見受けられない。
これも時代の流れと言うやつだろうか。戦場の武器は銃器に取って代わられた今、剣や槍は強力な武器とは言えなくなった。
何らかの異能力を有した人間は別として、無能力者からすればわざわざ剣の腕を磨くよりもよほど効率的にそれ以上の力を得られる手段がある以上、そちらに流れるのは当然といえる。

それでも一定の需要はあるからこうして職人たちが残っているが、やはり市場の競争からは逃れられないのだろう……。
こうして緩やかに消えていく鍛冶師は少なくないのだろうと。

しかし、なぜか……それだけではないのではないかと、男の裡で何かが声をあげていた。

「……未熟な剣士ほど、手っ取り早く力を求める」

そうして戻ってきた少女から珈琲を受け取ると、先の質問に対して自分なりの回答を示し始めた。

「そして最も簡単に力を得る方法とは、すなわち優れた得物を振るうことだ。ゆえに剣を持って日が浅い者ほど、鬼殺し、龍殺し、太古より受け継がれる伝説の名剣……そういったものを持ちたがる」

そんなものが未熟者に扱いきれるはずもないだろうにと、重々しい吐息と共に紡いだ。
実際そういった連中を山ほど見てきただけに、その言葉には確信が込められている。

「だからこそその手の人間は売る側からすればカモ以外の何者でもない。少しばかり仰々しい言葉で飾り立て、ついでに本人を持ち上げてやれば容易く財布を紐を緩ませる……と、こういうことだろうか」

視線は相変らず鋭かったが、商人に対して含むところはなかった。
そういうものに引っかかってしまう方にも問題はある。
もちろんあからさまな粗悪品を掴ませたとなればそれは許し難い悪徳商人だろうが、ある程度は通過儀礼的な部分もあるだろうと認めていた。


48 : 【射機焼填】 :2017/06/11(日) 22:38:44 X8WAsT.s
>>40

「俺は、俺のやりたいようにしてるだけ……って返しとくよ。」

優しい、ありがとう。何方も彼にとっては聞き慣れない言葉で、飽きるほど聞いてきた言葉。
何度も、何度も繰り返し脳内で響くそれを無意識の中で抑えつつ、なんでもないと言った風に軽口を叩く。
結局は自分のためでしか無い、自分は決して優しい存在でも、礼を言われるほどの人物でもないのだ。と、言いかけた喉が僅かに鳴った。
青年の目には、耳には聞こえているかもしれないが、其処に意味はない。ただ青年も理解している通り、彼は自身を優しいとも、そうある人間だとも思っていなかった。
然し、それを言ったところで始まらない。自分の自己満足で始めた行動を褒められて――――少しだけ、心臓がまた脈動する。
外見上にはきっと、気怠げな表情を崩さないミサギという存在があるだけなのだろうが。

「勿論、俺はそれを『訊かれるために』此処に来たんだからさ。」

動こうとしない、動く気すら毛頭なかった彼に向かって掛けられた問いを受け、ミサギはさも当たり前のようにそう返した。
ミサギが此処まで着た目的は遠吠えの正体を見ることと、その中に含まれた『悲しみ』の内容を問うこと。そして、できるのならば、それを少しでも『背負いたい』という事だった。
他人の不幸を背負いたいと言うのは非常に不可解で、常人にとっては恐らく無駄なことに映るだろう。相手からしてみれば、話したくもない過去を、赤の他人に話させる行為と何ら変わりがない。
だからこそ、彼がこんな会話をしたのは実質的に二回目であり――――始めのときと違うのは、彼が問われる立場になっているということ。
      ・・・・・・・・・・・・・・・・
だから、彼はこう答えるのが最善だと知っている。


49 : 【一刃潜瞬】 :2017/06/11(日) 22:51:12 ZJ9bjpls
――こうもどんよりと雲が空を覆っていては気が晴れない。
夜にも関わらず星が見えるわけでもなく、また月明かりが地面に差し込むわけでもなく。
肩まで美しいブロンドの髪を伸ばし、季節外れにも見えるカーキのトレンチコートを羽織った女が一人、広場に佇んでいた。

「暑いのも嫌だが、太陽が暫く見られないというのも考えものだな」

右手には火が付いた煙草――それも相当な安物――、左手にはナイフという物騒な出で立ち。
何を見るわけでもない、ぼんやりとして空を眺める。鼠色の雲が、どこまでも覆っていた。
やはり星は一つも伺えず、更に月までもが見えない。外出には特に理由もなかったが、ここまで何も無いと逆にヘコむ。

「やれやれ、誰も居なけりゃ星も見えない」

つまらん、と一言で切り捨て吸い殻を其処らに投げた。
座面が少し濡れていることにも臆せず長椅子に腰掛けると、はあ、と息を吐いた。
何か、退屈しのぎになるようなものはないか。ぼんやりを探していた。

――さてこの女、先程殺しを犯してきたばかりである。
左手に持っていたナイフの刃先は、僅かながら朱に染まっている。
その上、トレンチコートの裾には返り血が二、三滴。誰もいないが、気づくものは居るか。


50 : 【龍神変化】 :2017/06/11(日) 23:07:31 suIX47H6
>>46

物思いに耽る訳でもなく、退屈に浪費していく一方の時間に全神経を投げ出していた。
苦い味の煙を渋そうに吸いながら、彼方から彼方へと続く長い直線の道でに立った気分で。
雨音に神経を集中してしまうと、そうするとどうしようもなく周囲の暗闇が気になり始めてしまうので、
煙草の効能によって血管がきゅうと閉まる感覚に意図して意識する。

そんな時に、誰も来ることは無いだろう ―― むしろ来てほしくないと思っていた時に誰かが大きな物音を立てたものだから、思わず煙草の灰を地面に零した。
煙草の灰をいつまでも落とさずに、それがひとりでに落ちるのを待つ癖がある。少し残念に思った。
して、今宵の招かれざる客は一体だれかと思って視線を向けるや、今日の客は既に疲労困憊。

「……。」

彼女はしゃべりかけもせず、ましてや触れようともせず、ただ見下ろし続けた。
バス停の壁に背中から寄りかかり、こいつは一体どういうものだろうかと、退屈しのぎに考えながら。

-------------------------------------------------------------------------------------

相手が起きてくるまで、彼女は煙草を何本も何本も吸い続けながら、バス停で時間を潰し続けるだろう。
爬虫類めいた不気味な眼の焦点を少女に合わせ、食ってしまおうと考えているのかは、その無感情な面からは伺えないだろう。
強いて言うなら、珍しそうに、眺めている、それだけだった。

もしも相手が、数十分後か、数時間後に起きてきたならば、恐らくは倒れている間ずっと眺めていただろう女と、目が合うだろう。


51 : 【変異刀匠】一期一会の変態刀。詳細@wiki :2017/06/11(日) 23:12:32 bbEQLRMU
>>47

「ほほー、そういう考え方もあるんじゃな。」
「まあそう斜に捉えずとも良い。 儂からすればもっと単純な話でな」

お盆に載せた2つのカップをかちゃかちゃ鳴らしながら、廊下から感心した声がする。やや危なっかしい手つき足どり。戻ってきた少女は砂糖とミルクを添えて、ティーカップを受け皿ごと渡すだろう。
そうして自分も席に戻り、そこで再び口を開く。

「未熟な剣士ほど、得物の消費損耗が激しいのじゃ」
「欠けては研ぎ減らし、無理な曲げによる傷み、手入れ不足からの錆び。初心者には付き物じゃろう?」

男の語る、強さとはまた別の視点。
少女が語るのは職人として、あくまで実用一辺倒。見かけによらずシビアな目線でしかし穏やかな口調で述べていく。

「逆に名人、達人と呼ばれる者がおるな。」
「素人が10人切ってなまくらにする刀を、彼らは100人切っても下ろし立て同様にしておける。」
「骨に当てて欠かさぬよう、脂で滑らぬよう、関節に引っかけて曲げぬよう、細心の注意を払って使いおるのじゃ」

殺し合いの最中にな、と言葉を区切り、湯呑みに口をつける。

「大事に使ってくれるというのは職人冥利に尽きるが、その分一つの寿命が長くてな。剣などというのは所詮消耗品なんじゃがのう……」
「ま、そんなわけで、欠かしては直し、折ってはまた買ってくれる初級から中堅どころの剣士がたは、儂らにとってはありがたい客なのじゃ」

「だからといって、品物に手を抜いておるわけではないぞ? 命に関わるものだけに、半端なものは売れぬ。なにせ少しでも傷があったら即廃棄じゃしのう」

ほれ、とショーケースの下の隙間を指で示す。覗けば、刀剣らしき形をしたものが幾つも転がっているだろう。まだ刃の付いていない板状のそれらは、刃物になる前段階で職人がハネた物だ。 素人が手にとって分かるものではないが、男が触れようとしても特に咎めたりはしないだろう。
コーヒーの香りと熱を冷ます息遣いが店内に反響する。


52 : 【二心掛力】 :2017/06/11(日) 23:33:12 pOQTbuhE
>>49


「……────はーーーっ!!はーーーーっ!!……やばい流石に死ぬかと思った……っ!!!」

「何も考えず一人で前に出るからだよ。私のフォローがなければ何度死んでいたことやら」

物騒な会話を交わしながら広場へと辿り着いたのは二人組の少女であった。其れは紅い瞳を有する少女と白い髪を有する少女。
奇しくも彼女等も同じように、一つの殺しを終えてきたばかりである。所謂賞金稼ぎ、懸賞金のかけられた異能犯罪者の討滅を彼女達は成したばかりであった。
その痕跡として────彼女等の────というより紅い瞳の少女の服は所々が破け、生々しい傷と応急処置の痕跡が残されていた。
きっと壮絶な戦闘があったのだろう。その過程で主に紅い瞳の少女が多くの傷を負いながらも敵を打ち果たし、こうして帰路の途中で広場に立ち寄ったという訳で。


「………────って、"真白"!?ちょっと待って痛い痛い傷に滲みる滲みるちょっとタンマタンmあいたたたあ────!!?」

「水洗いと消毒だけでもしておく。ほら黙って動かないで暴れるな殴ろうとするな────!!?」

水飲み場まで引っ張っていかれ、水をぶっかけられて暴れる少女と、それを押さえ込みながら消毒しようとする少女。
二人の騒ぎは広場に響き渡り、きっと広場に他の者がいるとすればその声がすぐに届くことだろう。
そして同時に少女達も気づくのだ。片方は本能的な直感で、片方は冷静な周辺観察によって。


「痛い滲みる痛い滲みる────……………って、んん?
 血の臭い────………けれども私のじゃあなくて」

「うん、人がいるね。それも多分同類。多分、得物を持ってる」

「え────……如何する?やる?やっちゃう?先手必勝一撃必殺してもあ痛い!!?今何で叩いたし!!?」


愉快に喚く紅いのと、冷静に懐の拳銃を何時でも出せるようにしておく白いの。
最も彼女達は理由がなくとも戦おうとするような戦闘狂の類ではなく、飽くまで今の段階ではそれなりに警戒しているだけに過ぎない。
その警戒レベルが次の瞬間に上がるか、それとも思わ下がるかは────まだ分からないが。


53 : 【不撓鋼心】 :2017/06/11(日) 23:37:21 .j6Pd1vI
>>51

受け取った熱い珈琲を音を立てずに飲みながら。
少女の口から語られる職人の視点の言葉を受けて、男の胸中には深い納得が訪れた。

「……なるほど」

手入れの必要性、日ごろの管理こそ刀剣に重要なことだということを、駆け出しはどうしても軽視しがちだ。
その当たりを弁えていたとしても技術が伴わなければ、必然的に消耗は早まっていく。
自分にも身に覚えがあった……というより今も、その領域を抜け出せていない。
流麗な剣捌きで肉だけを断ち切り不要な部分に刃を当てぬ技法は未だ身に付けられてはいないのだ。

「確かにその通りだ。耳が痛い」

一振りの剣を生涯の相棒にできる人間などいはしない。
なぜなら彼女の言った通り、剣はやはり消耗品なのだから。
形あるものはいずれ壊れる。何物も変化せずにはいられない万物流転の法則は無機物であろうと例外ではない。
変わって、変わって、変わって、変わって……その果てに滅びが待ち受けているのは、この世にある限り何物も逃れられない絶対のルールなのだから。

指し示された“刀剣未満”たちを見て……カップを脇に置き、一言失礼と断ってそれらのうち一つを手に取った。
じっと見つめるその瞳は、この鉄塊を通して創作者そのものを見通そうとしているかのよう。鷹のような眼光は真剣そのものだった。
……経過したのは十数秒ほど。短いその時間のうちに何を見出したのか、そっと廃棄品を元の場所に置いた。

「古今亭殿の気が向くのならで構わない。値せずと判断されたのであれば大人しく引き下がろう」

言いながら剣帯から自らの得物を外す。

「だがもしよければ、これを見てはもらえないだろうか」

刃渡り百十センチほどの長剣は一言無骨。鞘にも柄にも、言うまでもなく刀身にも装飾など一切ない。
よく手入れされていることが窺える鋼の刃……鈍い輝きはどこにでもある剣のようにも思えるが。

――何かが。


54 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/11(日) 23:46:14 3RiKyIwI
>>50

彼女は数十分も経たずに、およそ3分程度で回復し、立ち上がろうとし始めていた。
なんせこうして倒れたのは、単純に歩き疲れていたのが理由であったからだ。
最寄りのバス停を探して放浪していたのだが、まさかこうも歩く羽目になるとは思ってなかった。

そして立つ為に項垂れていた頭を起こすと、此方を眺めていた女と視線が合った。

「……――――――――」

女に対して此方も紅い双眸で眺め返すが、すぐに視線を逸らして俯せの姿勢から腰を上げる。
未だに熱が籠もっていたので、一先ずは邪魔なジャケットを脱ぎ捨てる。
上着の下には夏らしい薄着のシャツを着ていたのだが、雨に幾分か濡れた所為で透けてしまっていた。
素肌を見せる事に抵抗があった訳ではなかったが、左肩から背中に掛けてまで和彫りは、くっきりと浮き出ていた。
ただ、普段の街中や公共機関なら隠しているのだが、この場に於いては正直どうでもよかった。
見ず知らずの女からの目なんて考慮できないくらいには、暑さと疲れにやられていたのだから。

「……………………」

本来だったならバスなんて利用せず自力で走る方が早いのだが、この雨に長時間浸されるのは躊躇われた。
なので少女は、有無を言わさずに女のすぐ近くに座り込み、時代遅れなガラケーを取り出していじり始めた。
屋根を打つ雨音は強さを一層増しており、バス停の外の惨状を連想させた。
此処を立とうにも、まだ雨はしばらく止みそうにはなかった。


55 : 【一刃潜瞬】 :2017/06/11(日) 23:55:12 ZJ9bjpls
>>52

ただぼんやりと雲を眺めるのも飽きてきた頃、喚かしい客人たちが現れた。
暇つぶしがてらとそちらにちらりと目線を寄せると、少女らしき人影が2つ。
詳しい容姿はなかなか見て取れないが、会話からして“死にかけている”のは確かだ。


「……――ん?」


血の匂い。微かに、というレベルではないほどに濃いそれ。
負傷は負傷でも、おそらくは大きな負傷だ。軽傷でこれほどの匂いはしない。
――もしや。彼女らは“同類”か、もしくは“天敵”かのどちらかだと推察した。


得物を持ってる――その一言に、ヨハンナはナイフをホルスターに仕舞った。
手癖が非常に悪く、ペン回しをするかのようにナイフを手でくるくると弄ってしまうわけだ。
更に先手必勝との具申も聞こえてきて、先程までじめついていた広場に一気に緊張が走った。


「……おい、そこのお前ら」
「何者か……は言わなくて良いんだが、その傷はどうした」


彼女らに歩み寄っていくと、女は静かに一方の少女の傷について尋ねた。
一先ずなぜ重傷を負っているのかを聞いて、状況を落ち着かせようと思ったのだ。


もし彼女らが賞金稼ぎであり、『トレンチコート・ガール』という仇名を知っていても、顔や名前までは知らないだろう。
……とはヨハンナ自身が思い込んでいるだけで、この季節にトレンチコートを羽織っている事自体がおかしいのだが。


56 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/11(日) 23:56:09 tAG/VLRQ
>>48
心中でひそかに期待していたとおり、彼は応えてくれる。
さながら、そう、機械仕掛けみたく――淀みなく、それが当然と言わんばかりに。ほっと息をついて、言葉を探した。
わだかまるこの感情をどう表現したなら、相手に伝わるだろう。会話は苦手だ。誤解もよくある。

「もし、あんたが助けようとしたやつを、死なせることになったら……いや、くそ」

言葉尻を濁して終わらせる。この訊き方はふさわしくないと、そんな気がした。もどかしさから乱暴に頭を掻き、考え直す。
どうしてこんな話をしているのか、そんな疑問はいまさら意識されることもなく、
ただ忸怩たる感情から、落ち着きなく膝を揺らす。


「……あんたはどうして、俺の話を訊いてくれるんだ。それを、――あんた自身を、聞かせてくれ」

逡巡のすえ、そう問いかける。
悪く言えば無遠慮に、よく言えば親しげに。少年は他人の感傷を背負い込んで、痛みを分かち合おうと振る舞う。
初対面であり、一度は彼に襲い掛かった自分に対しても”そう”なのだから、きっといつもそうなのだろう。
そんな彼自身についての話を、青年は欲した。
ただそうしたいから、と言われてしまえばそれまでだが――なら、なぜそうしたいと思うのか? それが知りたかった。

彼の言葉は常に他者に働きかけるものであり、自発的に自分の話はしたりはしないだろうと、そんな風に思えて。
ならば訊くしかなかった。ただの好奇心でもなければ、義務感に駆られたというわけでもない。
ただ、そう――それを知ることが自分のためでもあるような、そんな気がしたのだ。


57 : 【龍神変化】 :2017/06/12(月) 00:15:33 1CB3A3a2
>>54

倒れ込んだものだから、てっきり空腹で力尽きたものかとばかり ―― しかしどうして空腹と思ったか。我ながら不思議とも感じた。

それはさておき、予想よりも早く立ち上がろうとも、小さな赤い火の玉から昇る煙に乱れは生じなかった。
生温い風がそよそよと吹き、本来は真っすぐに昇っていた白い線は方向が逸れ、電灯に集まる羽虫たちに息苦しさを覚えさせた。
口元を覆うように人差し指と中指の間で保持した煙草は、もう大分短くなっていて、ひとりでに地面に落ちると、水たまりの中でじゅうと音を立てる。

それが合図となり、意外にも沈黙は、目つきの悪い女の方から破られる。

「ここにバスは、来ない。
 今は使われてないのさ。」

バス停の時刻表はかなり傷んでおり、その文字も断片的にしか読み取れないだろうが、最後に更新されたのは何年も前の事だとわかるだろう。
近辺にある田舎町の大半は都会に若者の多くを取られてしまい、バスの利用者は減少を続けていき、とっくの昔に主な交通機関は廃れていた。
小さなスーパーマーケットも無いような、村落や集落が周囲に点々としているような地域であって、相互に人と物のやり取りも少なかったせいだった。
では、どうしてそのような所に女と少女はいるのかだが、それを話す理由は、2人にはないだろう、恐らくは。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

田舎の山奥に逃げ込んだ、吸血鬼の男爵。追手から逃げ切る為に、潜伏していた。
忌々しき狩人の手から逃れるために。つまり、魔物を食う魔物の牙から逃れるために。

村落の間を転々としている為、正確な現在位置を割り出すのは極めて困難だと、追うものは考えた。
ならば、移動している間を狙うだけの話。動いているなら、むしろ好都合。外に出るならば、罠を張ればいい。
村と村の間を結ぶ主要な道路を調べ上げ、かつてそれは公共バスも利用していた道。利用する可能性は低くはない。

追手の誤算は、この大雨。天気予報を見る習慣が、なかった。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

相手が返事するまでの間は、雨粒がせめても静寂を和らげようと、煩わしくもワシャワシャと賑やかす。

なんとか相手をこの場から立ち去らせたいと考えていた。標的が現れ、自分が凶弾を放った時、横で騒がれる。
とにかく部外者は排除するに越したことはない。

「……。」

だが、この大雨だ。バスが来ないからと言って、それがなんだ。
なんと言えば良いか考えあぐねて、無意識に視線を相手から逸らし、道の先へと視線を向けた。
いっそ今直ぐ現れてくれないか、と ―― とはいえ、今夜も現れないかもしれない。



/今日はここで落ちますっ……ご都合のよいときにお返事をお願いしますッ


58 : 【変異刀匠】一期一会の変態刀。詳細@wiki :2017/06/12(月) 00:18:12 1SMCc5ow
>>53

男から差し出されたそれを見て、カップに口を付けたまま瞬きが静止する。
暫くしてから応、と答えて邪魔な飲み物たちを土間においた。

右手で受け取り、そっと鞘を抜く。
懐から出した和紙で切っ先を持ち、そっとはばき元へ滑らせた。

「良い剣じゃな。」

2つに裂けた紙を手に、少女が呟く。

「うっすらと、霞を帯びておる。よう使い込んであるようじゃ」
「これだけ減れば、滅多に欠けぬじゃろう」

勘違いが多いが、新品の刀ばかりが切れるというのは必ずしもそうではない。
寧ろ使い始めは欠けやすく、昔は知らぬ者が使えば不良品として返品されたものだ。
だが何年も振るい続け、何度か研いで1、2分も減った頃には、鋼が落ち着いて見違えるように粘りが出る。
棒切れとしてではない、人を切った曇りがそれを如実に語っていた。

「……危ういのう」

にもかかわらず、刀匠はそんな呟きを漏らす。
巌のごとき密な鋼の締まりの裏に、張りつめた糸のような脆さを垣間見て。
初見で感じた、持ち主の気迫に酷似した其れは、若さゆえの熱意とも頑固さともとれるようでーーーー
とはいえ他人の打った剣を、持ち主の前でどうこう批評するのも憚られる。というよりそれが職人のマナー。自分本意では飯が食えない事を、少女身に染みて知っていた。
鞘にするりと戻す。やんわりと、柄の仕込みが少し緩んでいるという指摘でお茶を濁し男に返すだろう。

「それだけ使えばもう熟練じゃな。 とても未熟とは呼べまいて」

ふふ、と言葉の端に笑みを乗せてコーヒーに戻る。
彼の希望に応えるには、まだお互いに遠慮があるかもしれないが。
それを払えるだけの何かを男が持っていると、そんな期待が少し、コーヒーとは別に胸の奥に溜まっていた。


59 : 【二心掛力】 :2017/06/12(月) 00:25:15 z00W.Lhs
>>55

「はっ、私達が何物かだって!?そんなこと答える訳ないと言いたいけれども、尋ねられてしまった以上は仕方ないね!!
まず私が"紅音"でッ!!!こっちが"ましr痛い痛い痛い痛い痛いやめで頭ぐりぐりしないで!!?!?」

どうやら紅い方はオツムの方に重大な問題があるようである。言わなくても良いと言われたのに態々名乗ったのは何故なんだろう。
その頭をしばきながら大きな大きな溜息を吐く白い方、どうやら此方は紅いのとは違って多少は理性的な部類のようだが。

その瞳は近寄る彼女に向けられたまま、一瞬たりとも視線を外さない。その眼光はナイフの切先や拳銃の銃口にも等しい殺意を秘めたもの。
不審な挙動を少しでも見せたのであれば、その瞬間に殺意は弾けることだろう。相手を同類と認識した以上、その警戒が解かれることはまずあり得ない。
そんなシリアスな白い方とは対照的に、紅い方はというと涙目で蹲りながら「ましろこわいましろこわいましろこわい」と呟いていたが。


「……別に、荒事に巻き込まれただけ。貴女には関係のない話
 相互不干渉が私たちの賢い生き方────同類なら、これ以上言う必要もないでしょう」

関わるな、と白い少女は告げていた。裏の世界で生きる者同士、長生きするには余計なことに首を突っ込まないのが一番だと。
つまりこの場面においてお互いの最適解は、知らぬふりをして別れることに他ならない。どのような形で縁が巡り巡って、火の粉となって降り注ぐかも解らない以上。
これ以上言葉を交わすのは愚の骨頂。そんな当たり前のこと、流石にこの紅い少女だって理解しているだろうに違いないから────────


「──────ところで何で今の季節にそんなコート着てるの?暑くない?というか絶対暑いよね?
 やー、駄目だよ季節感外しまくりなのはちょっとコーデのセンスが悪いとおm痛い痛い痛い膝蹴るのやめてマジで痛い!!!?」

とりあえず、全く理解していなかった紅い方に蹴りを叩き込む白い方。げし、げし、げし、と割と容赦なく。
傷口を狙わないのはせめてもの情けであった。そんな風に盛り上がっている間も、白い方の少女の警戒は一瞬たりとも緩まないのだが。


60 : 【一刃潜瞬】 :2017/06/12(月) 00:45:21 .NHYklm6
>>59

「おっ、おい。尋ねたわけじゃないんだが……」

と言ったときにはすでに遅い。彼女の名は自ら暴かれてしまった。
それにしても、コミカルというかコントと言うか。この二人がボケとツッコミに見えてならない。
紅音という名の少女はさておいて、問題なのはもう一方の少女のほうだ。彼女の警戒が解ける気配は一向にしない。

彼女の視線は女から外れることなく、そして逸れることもない。
自身のナイフの切っ先と同じか、それより鋭い殺意を向けられている。
それ故に女は突飛な行動をせず、できるだけ紅音の方から情報を引き出すことにした。


「――ふむ、それも確かだ。疑って悪かったな」

同類。その言葉を聞いてなお、女は警戒を解かなかった。
言葉の上で謝りはしたものの、彼女らが“同類”である保証はない。
此方が賞金稼ぎであると誤認されているのならまだ幸運なのであろうが。


「……アイデンティティーだ。このトレンチコートは私の思い出の奴でな」
「“これ以外の服を着たことはあまりない”。……まあ、センスが悪いと言われればそこまでだが」

紅音からすれば、季節外れのコーデらしい。
だが、このカーキのトレンチコートは女を構成するパーツたるものと言っても過言ではない。
それほどに大切なものであり、肌身離さず着ているのもそのためである。


「ところでお前たち、よっぽど“仲がいい”みたいだが」

だんだん紅音のほうがかわいそうに見えてきたのか、静かにそう言った。
手負いの紅音に蹴りを入れる少女――傷口を避けて蹴るのは情けだろうか――の方もちらと見て。
あくまでこの場では“同類”として接することにした。一方は手負いなのだから。


61 : 【不撓鋼心】 :2017/06/12(月) 00:52:44 EyDJFldY
>>58

返ってきたのは当たり障りのない答え……ごく常識的な回答だった。

「…………」

受け取り、沈黙する。
自分の得物が賞賛を受けたことは素直に嬉しい。だが求めている答えはこういうものではなかった。
しかしそれも当たり前だろう……二人は互いに初対面。相手の事をまだ何も知らないに等しい。
そんな他人の内心に、下手をすれば踏み入ってしまいかねない言動など慎んで然るべきだ。突っ込んだことなど言わないのが当然の社会常識である。

ゆえに、躊躇いがあった。
予感があるのだ。誰にも解明できなかったこの剣の秘密を、この人物ならば解き明かせるかもしれないと。
だがそんなものはこちらの都合、あちらにとっては何の義理もない。むろん対価を払えと言われれば厭はないが、働きに見合うだけの報酬を持ってるかと言えば……。

「……古今亭殿」

だが。
しかし、だが、彼を突き動かす感情が躊躇の枷を突き破った。
知らねばならない、その一念で。自分と同じく血塗られた刃を明らめねばならぬ、ただそう思っていたから。

「この剣は、“絶対に”折れないのだ」

そう、たとえ鉄槌の一撃をまともに受け止めようと。
本来想定されていない使い方、盾のように扱えば絶対にへし折れて然るべき衝撃を受けようとも、何があろうとこの剣は折れることが無かった。
それだけに留まらず所有者である男の意志が高まった際に見せる謎の発光現象も……ただの剣と言い捨てるにはあまりに外れている力が、この剣には秘められていたのだ。

「これを本来持っていたのは俺ではない。だが己が手に所有する以上、無知のままでいていい理屈はどこにもない」

他ならぬ自分が振るうもの、それをよく分からないままにしておくなどふざけているにもほどがある。
自分の手に収まるものだからこそ、よくよく熟知しなければならない。咄嗟の瞬間に未知の事態が発生してしまうなど、あってはならないことだから。

「――ゆえに、どうか頼む。この剣のすべてを、貴殿の手によって詳らかにしていただけないだろうか」

真摯に頭を下げる姿には裏など何もなかった。
どこまでもまっすぐに己の心を露わにするその目には熱い気概が宿っていた。


//いちおう、剣の設定とかはきめていないので自由にしてくださって大丈夫です!


62 : 【二心掛力】 :2017/06/12(月) 01:15:59 z00W.Lhs
>>60

白い方────"真白"と呼ばれた少女は未だに警戒を解くことはない。当然といえば当然なのだが。
そもそも彼女の相方である紅い方────"紅音"と名乗った少女はご覧の通りである。警戒心どころか理性を丸ごとダストシュートしてしまったようなヤツである。
ノリが良いとかそれ以前の、常時脊髄反射で会話しているようなぶっ飛ばしっぷり。壊れて戻らなくなったアクセルのようだと真白は語る。
なので真白は紅音の分も警戒を怠る訳にはいかないのだ。もし自分達を陥れようとする悪意に晒された時、紅音を護れるのは自分だけだから。


「いやあ、流石にそのコートしか着ないってのはどうかと思うよー?
 もう少し開放感清涼感のある服を着てさー、その格好じゃちょっとぱーっとしな────ましろその笑顔怖いすっごく怖い目が笑ってないごめんなさい」

この空間でただ一人警戒心がゼロどころかマイナスの域にまで突入しているんじゃないかと疑われる紅いのを、白いのはとりあえず無言の笑顔で黙らせる。
二人の仲は実に良好であった。例え片方が爆弾発言による連続爆撃をブチかまし、もう片方が死んだ瞳でその事故処理に当たったとしても二人の絆は決して揺がない。

ただ、仲が良いというのは間違いはない。或いは仲が良いという表現では表現しきれない程度には、二人の信頼関係は固く築かれていた。
例えば二人の立ち位置。何気なく立っているようであっても、真白は紅音を護るように射線を確保し、紅音は何時でも真白の前に出れるように構えている。
もし、二人のどちらかに対して一瞬でも敵意を向けたのなら────相応の反撃が瞬時に繰り出されることになるだろう。
彼女達は自分が傷つけられた場合よりも、パートナーが傷つけられた場合にブチ切れる。その信頼関係は二人の間にて完結したものだった。


「……───疑うのは当然。決して信用しないのが私達の常
 貴女がナイフを棄てでもしない限り、私達が心を許すことはないし、それは逆も然り────そうでしょう?」

「ただそうやって人間不信拗らせてるお陰で真白は友達が少ないんだと、私はそう思うね────あ、笑顔で拳を握り締めるのは良くないと思うよ!?」


仲は良い。繰り返すが仲は良いのである。
喧嘩するほど仲が良いという格言もある位なのだから、二人の関係に問題は何もない。たぶん。


63 : 【変異刀匠】一期一会の変態刀。詳細@wiki :2017/06/12(月) 01:36:16 1SMCc5ow
>>61

長らく年を重ねてきた刀匠も、これには閉口した。
こんなみょうちきりんな依頼は初めてだ。若い頃無茶を言って、親方や大学教授の家に押し掛けた遠い日の自分が目の前の男に重なる。

「あ、これこれ、頭をあげてくれ。 年寄りをそう虐めるでない」

我に帰って見ればまだ男の旋毛が目の前にあって焦る。
顔をあげれば困ったように笑う少女のと目が合うだろう。

「まぁ、ボケ防止に良い刺激を貰うたと思っておこうか」
「それとな、刃金でよい。 屋号そのままでは呼びにくかろうし、背がむず痒いわ」

座った男の膝を、ぺしりと叩こうとするだろう。
それ則ち、男の依頼を認めたということ。

「とはいえなぁ、一朝一夕でできる仕事ではないぞ、まったく」

剣とは鉄を沸かしてはい完成ではない。工場の型抜き製品でない手打ち刃物というのは、作り手によって千差万別。成分を特定するだけでもあれこれ手を加えなければならない。男の手の中の剣を寄せた眉根の下から睨んで数秒。

「ちょっと待っとれ」

踵を返しどたどたと2階への階段を駆け上がる少女。
上の方でどかどかと埃が舞うほどの家探しを経て、戻ってきた時には黄ばんだ巻物や台帳数冊と、布で巻かれた棒状の物体を抱えていた。

「昔な、さる筋から頂いた注文書じゃ。 ここに古今東西、あらゆる刀剣の発注書が載っておると聞く」
「ま、今風にいう“かたろぐ”じゃな」

土間の縁に巻物を広げると、ミミズののたくったような字と、様々な刀剣の図が次々に表れる。
その中から男の物と同じ形状の剣を探そうと言うのだろう。
それ手伝えとばかり、男にも別の冊子が渡される。

「不壊(こわれず)の剣か……儂以外に打てる者はそう居らんと思うておったがの……」

紙を捲りながらふと感慨深げに呟いた言葉は男の耳に届いたかどうか。
そして暫くは紙に触れるだけの無言が残るだろう。


/夜も更けてきたので、良ければ凍結して、明日の晩に持ち越ししてもらえないでしょうか?


64 : 【不撓鋼心】 :2017/06/12(月) 01:40:15 EyDJFldY
>>63
//了解しました、自分もそろそろ落ちなければならない頃合いでしたので……!
//明日の夕方には返せると思いますので、またよろしくお願いします!いったん乙でした!


65 : 【不撓鋼心】 :2017/06/12(月) 18:50:02 EyDJFldY
>>63

無茶なことを言っている自覚はある。それがたいへんな手間をかけることになるのだろうとも。
だから彼の胸には感謝の念しかなかった。無碍に断られたとしても不思議ではない難事だから、そうなったとしても文句はなかったが……。
これは僥倖。身に余るほどの僥倖だ、自分などにはもったいない幸運を噛みしめる。
ありがたい――心の底から、そう思う。階段を登ってゆく背中に向けて、多大な謝意を込めた目礼を示した。

「ふむ」

やがて帰ってきた少女から冊子を受け取り、頁を捲り始める。
そこには言葉通り古今東西、多種様々な刀剣の図が掲載されていた。およそ世界中の刀剣は、これを見ればすべて把握できるのではないかと思えるほどに。
得物と同様の形を探しながら、刀匠の言葉を受けて暫しの間考えに浸る。

何があろうと壊れない剣。……諸国を巡る最中で、強大な力を有したマジックアイテムの存在は耳にしたことがある。
炎の力を宿す魔剣やどこまでも飛んでいく矢、死者を復活させる宝石など……他にも他にも、お伽噺のようなそれらの存在、しかし確かな実在感と共にまことしやかに囁かれている。
前述したようにそういった超常的な物品の実在を否定するつもりはない。なにせ自分の得物がそうなのだ、実際に目にしたことはないがそういう代物があってもおかしくはないだろう。

しかし確かに……壊れない剣、そういうものの話は不思議と聞いたことが無かった。
もちろん自分の見識不足と言う可能性はおおいにある。世界全体で見れば己の耳に入る話の方が少数だろう、知らないから存在しないなどという理屈はあまりに傲慢すぎる。

だがそれでも自分が身を置く環境は、人よりはその手の噂話が入ってくるものだ。
人々の依頼を受け、各々が抱える問題を解決するために奔走する……発生する目標は人の数だけ存在する、同じ状況など一度もない。
達成に至る道筋はまさしく無数。そうした過程で情報を得る機会は多く、さすがにその道の玄人には及ばないだろうが、蓄えた知識は間違いなく普通の一般人を凌駕している。
その自分が知らないのだ、だからこれ以外に存在しないか、またはあっても極端に数が少ないかのどちらかだと思っていた……。

……そうだ。なぜ“あいつは”こんなものを……?

「……これか」

発見するまでにそう時間はかからなかった。
分類が東洋のそれから西洋の流れに変わったあたりでほどなくそれは見つかる。
なにせ変哲もないロングソード、ありふれている基本形であるだけに掲載順は早かった。

装飾のない金属のままの柄頭(ポンメル)、黒い革が巻かれた握り(グリップ)、曲がっていない垂直の鍔(ガード)。
ただまっすぐな剣身(ブレイド)の根元から半ば過ぎあたりまで細い樋(フラー)が彫られている。軽量化以外の意図はないだろう。

……不壊の魔剣にしては、あまりに普遍的すぎる。仮に樽の中に十把一絡げに放られていたとしても気付けやしないだろうというほど、これの外見は普通だった。


66 : 【射機焼填】 :2017/06/12(月) 19:37:04 SioPGxAc
>>56

『もし、自分が助けようとしたやつを――――』

その言葉を聞いて彼が答えようと口を動かした時、既に問の内容は変わっていた。
最初の問に関して言えば―――答えやすいか答えにくいかの思考で見れば、比較的答えやすいものだった。
ムリなものはムリだと。不可能であったことは不可能であったと諦める。

例え、自身がもしそんな場面に遭遇すれば『絶対にできない』と片隅で理解しつつも、返すのならばそんな言葉だっただろう。
彼は決して超人ではなく、ましてや自身の命を顧みずに他者を助けられるほど強くもない。ただ、なんとなく行動していたら『そう』なっているだけだ。
だから、手の届かないやつは見ないふりをする。そう答えられたのならば――――――少しは、『考えなくても済んだというのに』。

「俺……か。」

いいことをスレばいいことが、悪いことをスレば悪いことが帰ってくるとでも言いたげに、話の矛先は自分へと帰ってくる。
問われていることに間違いはないが、彼にとっては少々予定外、予想の範疇にない言葉であったので少しばかり表情が崩れる。
端的に言って――驚いているのだろう。自分にこんな表情があるなんて知らなかったが、どうやら自分はおもったよりも顔の筋肉が豊富らしい。
即座に元の気怠げな表情へ戻ってしまうけれど、瞳の奥には青年の言葉を反芻しているかのような逡巡があり、少しばかりの思考時間を得た後、再度口を開く。

「だって、黙って通り過ぎるだけ――――見て見ぬフリをして『逃げる』のは、『後味が悪い』だろ?」

「俺に出来ないこと……逆立ちしたって助けられないものなら逃げるかもしれないけど、アンタは其処まで危ないようには見えなかった。」
「俺という人間(カタナシミサギ)が動く理由なんて、その程度のもんさ。」

他にも、青年に対して掛けられるべきことは幸いなことにいくつもあった。
両親が既に居ない事や、そもそも両親の顔もわからないこと。孤児院でいた事、物語をよく聞いていたこと。
常に夢想するのは物語の主人公で、そうなるように振る舞っていたものの――――その鍍金が当然の如く剥がれ落ちたこと。
失望と、侮蔑。周りの見る目が変わっていくのと、自身の中に発生した『安堵』。能力者としては余りに弱すぎる『力の発露』。
そして――同年代の『咎人』との出会い。

まだ、まだ。一般的に不幸と呼ばれている現象ならば、それこそ彼自身が首を突っ込むようにして体験し続けている。
不良グループに拉致されそうな少女を助け暴行を受け、助けた少女には怯えた目で見られた。周りからは冷ややかな目線が消えず、彼は常に一人である。
何をするにしても一人。当たり前のように自身の存在を無視して困っている人間を助けに行く姿は、彼以外からすれば紛うことなき狂人であった。
        ・・・・
だから、ミサギは語らない。

いや、青年がもし望むのであれば、なんてことはないように自身の生い立ちから、周りから煙たがられていること。無意識のうちに『後味の悪いこと』を回避したくなってしまう病気について話すだろう。
見ていられない。望まない。交通事故で死にかけている猫を見捨てる際にふっと湧く『居心地の悪さ』。バッドエンドの物語を読んだ時に思う、『幸せに終わればいいのに』と言う子供じみた我儘。
言ってしまえば――――彼は其処にしか『感じている部分がない』。無気力で、無感動で、それでも人のようには生きられる。他人の不幸を背負っているときだけ、自身がこの世界に生きていると実感できる。

理屈をつけてしまうならば、ミサギという人間が根底に抱いてるものなどこの程度だ。他人が不幸でないと、凍ったままのように静かな心臓が跳ねてくれない。
『相手との距離が近すぎる』のは、元々『他人』と『家族』そして『友人』『知人』。ありとあらゆる繋がりに対して彼が『希薄過ぎる』が故に起きている。
繋がりを理解できないから、理解するために『不幸』に近づく。自身から見て悲しんでいる・憤っている・悲嘆に暮れている人間に向かって、自然に足が向いてしまう。

「高尚な理由も、心に秘めた正義もない。」
     ・・・・・・・・・・・・・
「…………もっと不幸な過去でもあれば、少しは何かあったのかもしれないけどな。」

                 ・・・・・・
――――ミサギは、たったそれだけを楽しんでいる。
            ・・・・・・
まるで、それしかしらない機械のように。


67 : 【一刃潜瞬】 :2017/06/12(月) 22:26:49 .NHYklm6
>>62

女からみても、紅音の方は特に危機感が無いように見えた。
聞いたことをそっくりそのまま答えてしまうのだから、暗殺者には向いていないようにみえる。
彼女らは女と違い、暗殺というよりは“殺害のみ”を主に活動しているのだろう。


「ふむ……、偶にはそういうのも良いかもしれないな」

開放感のある服装――ワンピース等の類であろうか。
滅多とそのような服装をすることはないのだが、久々に着飾ってみても良いだろう。
女からは、彼女らがまるで姉妹のように心を通わせているかのように見えた。目線だけで言いたいことを理解するとは。

並々ならぬ信頼関係で彼女らは結ばれているのだろう。
今も、重傷を負った紅音を、真白を介抱している――かなり手荒ではあるが――わけで。
二人分の殺意を真白と呼ばれる少女から感じるような気がする。紅音を守るという使命の元にあるのだろうか。


「――ああ、その通りだな。私はお前らと同種だが“同職”ではなさそうだ」

また紅音が至らぬことを言って真白に無言の制裁を加えられているのをみて苦笑いする。
まあ、同職でないと判断したのは先程と同じく、暗殺は“基本一人でやるもの”だ。
嘗て二人組の暗殺者など見聞きしたこともなく、さらに会ったこともない。


「それで、だ。お前らは何を主にして稼いでるんだ」

本題、とも言うべきであろう。女はそれを尋ねた。
彼女らと将来的に敵対する可能性があるがため、どのような活動をしているのかを知りたい。
だが、観察眼の鋭い真白であれば質問の真意がわかるであろう。この女が、“賞金首”であることも。


68 : 【永劫乃命】 :2017/06/12(月) 22:40:02 mmsNx9G2
恵まれない者に、救いの手を差し伸べる。それは実に良いことだと思います。
ですが、『恵み』とはなんでしょう。人それぞれによって違う、と言ってしまえばそれまでですが、月並みな言葉は嫌いです。
僕はといえば、“かためこいめおおめ”の呪文により錬成される『デブの素』が恵みのひとつとも言えます。ひと月に一度しか食べてはいけないであろう代物です。

ですが、何よりも。

「死にたい」

でも死ねない。

さて、そんな恵まれない僕が、ようやっと今を見つめることに注力します。よく聞くように。

僕が、逢魔が時に、ひと気のない駅へ、歩きで、びくびくしながら。5W1Hクリア。
こんな状況だからこそ、先程のようなセリフも言える訳です。びくびくはします。

……W、足りてないな。Whose。だれのもの。
一体誰のものなんでしょうね、僕。神かな。女神がいいな。神から余計な恵みを与えられた僕は、きっと女神が遊ぶおもちゃだ。女性に遊ばれるって、いいね。

「嗚呼、女神さん。僕がもし天に昇れたなら、そんときはアンタとファ○クだ」

月に中指を立て、歪んだ笑みを浮かべて、そう言った。どうやらもう魔に逢って、しかも憑かれちゃってるみたいです僕。
こんなこと人に聞かれたらどうしよう。僕はそう思いながら、何の謂れもない月をベンチの上で睨んでいる。リボルバー片手に。


69 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/12(月) 22:51:28 4z7OsGME
>>66
少年の気だるげな表情がわずかに揺らいだ。意表をつかれたような反応ののち、思慮の色が浮かぶ。
長くない沈黙が影を落とし、青年はただ答えを待つ。

細かな挙措から堆積した少年への違和感。”優しい”では終わらないような異質さ――出会ったことのないかたち。
それを分からないまま終わらせて自分の話をすることに、にわかに拒否感が芽生えたため。
唐突な問いかけの理由はそんなものだった。どこまでも自分本位に、無遠慮に――揺らぎの奥を見据えようと試みる。
在りし日に抱いたような後悔を二度と抱えないため、必要なことだと信じて。

「『後味が悪い』……ああ、わかる。それは、よく解るさ」

聞き慣れない言葉を馴染ませるように繰り返し、頷く。眼がにわかに細められ、過去がわずかに追想される。
それを聞いて思うところは青年にもあったから、理解することは可能だ。けれど納得はできない。
後味の悪さを甘んじて受け容れてでも猫を見捨てる人間はいる。暗がりでの暴力からは眼を背けたがる。
なぜなら重荷を背負いたくはないからだ。誰しもが自分と他人を天秤にかけて、葛藤の中で決定を下すものだ。
気だるげな表情を浮かべて自らについて話すこの少年は違っている。少なくとも、青年にはそう思える。
彼には躊躇いがない。自分を顧みることもなしに重荷を背負いこもうとする。
それについて、とりたてて理由があるわけじゃないと少年は云う。

「おまえがそれでいいっていうなら、それでいい。……けど」
「――覚えとけ。お前にも価値はある。お前がどうにかなっちまったら、『後味の悪い』思いをするヤツだっているってことだぜ」

暗闇にじっと目を凝らすかのようなするどい視線がまっすぐに少年の眼を見据える。
少しの間をおいて吐いた押しつけがましい言葉の数々は、危うさをはらんだ自己犠牲から少年を掬い上げようと試みるものだ。
方便のつもりはない。激情から一度は獣と化した手を取ってくれたこと、人間ならば、と声をかけてくれたこと。
ここで何も言わずにいることによって、それらの記憶を後悔で塗りつぶしたくはないから――だから、声をあげる。
そんなことは望まれていないのかもしれない。だとしたらこの行動はひどく的外れに違いなく、空回りに終わるのだろう。
それでも躊躇うくらいなら空回りで構わない。固いその決意こそ、青年に芽生えた信念だった。


70 : 【射機焼填】 :2017/06/12(月) 23:29:05 SioPGxAc
>>69

「――――っ。」

「そう…………かもな。うん。」

『どうでもいい』と、自らのことを他人と自分に分けられない彼は言う。然し、其処に返されたのは怒りにも似た感情。
何を怒っているのか、感情を出しているのか。理解しようと言葉を幾度も反芻して、『鳩が豆鉄砲を食らったような』顔をした。
驚いているし、何よりもそんなことを言われたのは初めてだった。いや、二回目だったかもしれない。とにかく、とても珍しい返し方であったのは間違いなかった。

「――――――ははっ。」

思わず、ミサギは声を我慢しきれずに笑ってしまう。何故だか、無性に楽しかった。『誰かに心配される』という感覚が、とても、とても心地よく。
まるで氷を溶かそうとする生温い水のように体に入り込んでは、石なんて投げ込んでいないはずなのに、幾度も幾度も波紋を広げた。
瞳と瞳、意思と意思がぶつかっているように見えて、実は只々入り込んでいるだけ。それでも、彼にとっては未知の体験であった。

相手と自分の距離がないということは、相手の言葉は何の壁も通さずに届くということ。吐き出した息は熱く、自分が生きているのだと実感できる。
其処に猜疑や疑念、疑惑などは欠片もなくて、彼が笑みを浮かべるのは――――青年が此方を考えてくれたという。その一点だけ。
本来ならばそんなことはどうでもいいとばかりに気怠げな表情を崩さないのだが、今回は違う。肩の麻痺したような鈍い感触と、先程繋いだ手の暖かさ。
そして何より――――青年の瞳がごまかすことを良しとしない。彼は、ミサギは…………自分を『普通』だと思っているから、心配されることはたしかに嬉しいことなのだ。

――――今回のことで、それが確信に変わった。
勿論、『いい意味で』。彼の性格が治ることは万に一つもあり得ない。が、青年の言葉はたしかに彼に『響いている』。
表情は既に元の気怠げな表情へと戻ってしまった。ただ、青年を見つめる瞳にだけは、その残滓が確かに息吹く。

「……俺が『そうだ』って言うんなら、俺だって『アンタ』に『そう』返すさ。」

「この世に泣いて良い人間なんて居ない。それも『アンタ』みたいなお人好しには―――――っと。これ以上、アンタってのも良くないか。」


「――――丁度いいから、此処で一つ『自己紹介』から始めよう。」

「俺は『形做 深鷺』――――名字の方は呼びにくいから、ミサギって呼んでくれると有り難いかな。」
「何より、他人行儀ってのがあんまり好きじゃないんだ。堅苦しいだろ? そういうの。」

―――

「さて、次はアンタの番だ。」
「俺は『答えた』んだから、アンタにもキッチリ答えてもらうぜ?」

「今日、此処で『泣いていた』――――――その、理由を。な。」


71 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/06/13(火) 00:41:37 5nBIKCZg
>>68

「お客さん。ここの終電は終わってるよ」

ジュラルミンのトランクを右手に、女性が声をかける。
見れば僅かに折り目の崩れたスーツ。

重量を映してか、片方の足が摺り足となり、リズムは破れる。

「しっかし、自分にしか『死ね』を言えないなまくらが、
 女神を抱けるもんかね」

これ見よがしに、心の端を踏んづける。

そして、どっかとベンチの端に陣取る。


72 : 【永劫乃命】 :2017/06/13(火) 11:28:06 6LDV7xH2
>>71

切符も買わず(そもそもこの時間、券売機は動いていないが)に入った自分を、客と称する女性。
月の光が焼き付いた瞳を声の主に向けると、着熟れたスーツ姿と、やけに眩しい合金の色が彼女の第一印象を決める。

そんな風に、相手を落ち着いて観察する余裕を捻出してもやはり驚きは隠せません。

「良いんですよ。電車が通ってたら、ホームに降りたくなっちゃうので」

なんて、心にもないことを言ってしまうくらいに。
両肩の角度を上下させ、ベンチの端へと向かう彼女に「鞄持ちましょうか」と言えなかったのも、びっくりした所為です。いつもは、やりますよ。

あ、なんか小馬鹿にされてる。これは恥ずかしい。いつから聞いて居たんでしょ。
感情が綯い交ぜになって、条件反射で思ったことをそのまま口にしてしまう。

「『死ぬ前に私が男にしてあげようか』、って言ってくれる女(ひと)が好みなんです」

彼女とベンチに対になって座る僕は、笑って貰えるかと反応を窺う為、横目にその表情を見た。
銃の安全装置は外しておきました。彼女に引かれたら、いつでも直ぐ死ねるように。


73 : 【二心掛力】 :2017/06/13(火) 19:57:41 PRqKTUzE
>>67

彼女の質問に対して"真白"は暫しの沈黙を貫いた。然しその瞳は相変わらず冷淡な光を湛え、眼光はコートの女へと向けられたまま。
踏み込んだ質問の真意は語られずとも理解できた。本来ならば交わす必要のない言葉、尋ねるのも答えるのも論外な問答であるにも関わらず尋ねたということは。
つまり踏み込むだけの動機が在って、その動機とは詮索と警戒に他ならない。飽くまで"真白"知らぬふりを貫くつもりだったが、これ以上誤魔化すのも難しいだろうから。

はあ────と大きな溜息を溢しながら、服の上側から懐に隠した拳銃に僅かに触れる。安全装置を解除し、何時でも銃弾を放てるように。
相互不干渉という暗黙のルールがこの時点で成立しないのであれば、はぐらかすという手段は通じない。となれば会話を続けるしかないのだろうが。
敵対の可能性を考慮しているのは、何も彼女だけではない。特に"真白"はそのような裏側に潜んだ機微に関して、人一倍敏感であった。


「……随分と興味津々なのね。そんなに私達について知って、どうするの?」

「ははーん、成る程成る程、そういうことだね真白。確かにこれは不自然に違いない
普通、対面の相手にここまで踏み込んだことを尋ねたりはしないだろう。ましてやこんな状況で尋ねようとするのは、これは即ち──────…………」





「…………───即ちッッ!!!この人は私達のファンに違いn「ごめん紅音いい加減少し黙って?」ごめんなさいッッ!!!」

然し、何でこう、同じ環境で同じ飯を食べて同じ生活を過ごしているにも関わらず、ここまで思考回路に差がで生まれてしまったのだろうか。
自分と紅音はまるで対極の存在だった。こんな世界でも生き延びる為にクレバーに成らざるを得なかった真白と、賢くなるどころかIQを何処かに置き忘れたとしか思えない紅音。
姉妹と形容するには余りにも違い過ぎる────けれども、まあ其れで良いのだろうとも結局は納得してしまう。


"彼女"か"私"なしでは生きられないように、"私"も"彼女"なしではきっと、生きる意味すら見出せないのだろうから。
そんな価値を守る為にも、引き金を引くことに躊躇いはない。火の粉が降りかかるのだとするなら、それよりも早くに払い除ける。


「もし私達の答えが貴女の想像通りだったとして、貴女はどうするの?」

「危険の芽を摘む────というのならば、私達も容赦はしないよ。少なくとも、私も"紅音"も、戦うには充分な余力が残ってる
最も、貴女が名のある賞金首でもない限りで、余程戦いにご執心でもない限り、戦わない理由もないでしょうけど」


牽制、そしてこれが最後のボーダーライン。これ以上踏み込もうとするならば、決してタダでは済まさない。
其れは身を守る上で、この世界で生きていく上で当然のことだった。見知らぬ人に自らの情報を開示するほど、紅音は兎も角真白は馬鹿ではない。紅音は兎も角。
そもそも────────私たちはまだ、この相手の名前すら知らないのだから。


74 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/13(火) 21:46:36 .n3zD9x.
>>70
少年のあっけにとられたような表情を認めて、ようやく意識する。それは確かに怒りにも近いものだったかもしれない。
誰しも自分にとって大切なものが蔑ろにされれば腹も立つというものだ。ましてそれが無自覚のうえであったなら。
敢えてそこまで口に出そうとはさすがに思わないし、しない。――それでも、すでに充分に伝わっているようだし。

「……へっ、」

堪えきれないといったふうに漏れてくる笑声を聞くに、何だかむず痒い感覚がせりあがってきて、思わず鼻を鳴らした。
安堵ともつかない穏やかな心地が青年のしかめ面を脱力させる。これでよかったと、心底からそう思えた。
彼の危なっかしい気質が変わらないにせよ――ただ”知っていて”くれさえするならば、それで充分。

「ああ、……そうかよ」

マトモな双方向の会話なんて――まして、お人好しなどと呼ばれることなんて、今まで何度あったろう。
青年もまた、多くの時間を逸れ者として過ごしてきた。――新鮮な響きを伴って胸中に刻まれた”それ”は、
落ち着かない態度とぶっきらぼうな答えというかたちで、青年の外面に反映される。

「名前は、ヴァン。それだけだ。覚えやすいだろ――ミサギ」

かたっくるしいのは、俺もニガテだ。そう続ける。
呼ぶ者も無かったかつての自分に与えられた名前――それをこういう形で再び名乗れることは、素直に嬉しかった。


「泣い、――ッ……」

おもわず口をついて飛び出した抗議の言葉はすぐに途切れ、決まりの悪そうな表情だけがあとに残る。
それは認めがたいことではあったけれども――やはり嘘はつけない。誤魔化すような真似は嫌いなのだ。
だから最終的には否定することはしない。首の後ろに手を回して、短く息を吸い込んだ。
今度はこちらが話す番。けして愉快な気分ではないけれど、この少年にならば――今の彼になら、大丈夫。

「どのくらい前だったっけか。俺の、同類に会ったんだ」
「初めてみたとき、そいつは確かに”人間”だった。けど――」

そうして語りはじめる。不慣れな様子でとつとつと、生傷に触れるような慎重をもって。
同類とはつまり、ヒトでありながら獣のかたちをとる者のことだ。彼の語り口には思慮に欠けたところもあったが、
訊かれることがあればその都度、言葉を探して誠実に答えようと試みることだろう。――。

河原に二本の脚で立つ青年は、穏やかな小川の黒い流れをぼうっと見降ろしている。
ジーンズのポケットに突っ込んだ右腕はなにかに触れているようだった。
意識を遡行させるにつれて、その口調はもとの明快さを失ってゆく。

「あいつは――そう、俺はあいつの名前も知らなかったんだ――だんだん変わっていった。呪い、とも言ってたな」

やがてその男が獣へと姿を変じて、襲いかかってきたこと。そのときには男の意思も理性も、感じられなくなっていたこと。
なすすべもなく、その獣を殺したということ。そして――その”男”に、最後に「ありがとう」と礼を言われたこと。
それらついて、順にさかのぼり、打ち明けてゆく。

「俺は、あんなふうに『ありがとう』なんて言ってほしくなかった」

相手は強く、他にどうしようもなかった。そう自分に言い聞かせることは出来るし、実際それが真実なのかもしれない。
しかし救いとはならない。沸き立つような苛立ちも、悪夢のような後悔も、消えてくれない。
そしてなにより、――あの光景。人が理性を失い獣となってしまう、あの光景は、なによりも――

「なあ、ミサギ……。おれはまだ”人間”、だよな?」

記憶にこびりついたあまりにも雑多な感情がそれを麻痺させてしまったかのように、表情は動かない。
目もとに少しだけ力が入り、なんだか不機嫌そうにも見える。そういう常と変わらぬ顔つき。
ただ声だけが、僅かに震えていた。


75 : 【射機焼填】 :2017/06/13(火) 23:53:34 muScqCYE
>>74

「ああ――――覚えやすくて、いい名前だ。」

単純にいい名前だと言うのは彼には少し気恥ずかしくて、思春期特有の気障な態度を真似てみようとはしたが――気怠げな表情に似合うはずもなく。
彼にとっては真面目だが、青年にとっては滑稽なようにも映るかもしれない程に『似合っていない』台詞をはさみながら、青年の顔が少しだけ変わるのを見る。

始まるのは、血なまぐさい。それでいて優しく、悲しい話だ。彼ですらそう思ってしまうのだから、それを実体験として記憶している青年の内心は想像すら難しい。
然し、彼はそれを遺言一句逃さないように刻み込む。他人の記憶を、忘れてしまえるなら忘れたいであろう――それでも忘れられないような記憶を、余さず全て刻んでいく。
気怠げな表情は変わらない。けれど、瞳には確かに聴いている意志が残っていて、問うこともなく、軒先の雨粒のような言葉を聞き続けた。
獣に成る人間。獣人――――知識にあるファンタジーな存在では決して無い。あくまでもリアルに、現実に存在する“獣化する人間”。
呪いだと言われたのなら、思わず首肯してしまいそうな感情を今の青年からは感じる。後悔と、いらだちと、そして何よりも――――震えるような声が、青年の今を象徴していた。

「まだ『人間か』…………ねぇ。」
「こんな話を聴くと、『頑張れ』なんて月並みな言葉じゃ意味が無いな……。」

問うまでもなく分かること。誰だって今の話を聞けばたどり着けるだろう最終地点に、ミサギも当然のごとく辿り着く。
少しばかりの逡巡。彼から見ればたしかに青年は人間だ。狼のような姿になれるからと言って、底は何一つだってゆるぎはしない。
それは信頼であり、共感であり、確信とも言えるべきもの。ただ漠然とそうなんだろうと信じているだけで、真実があるとしてもそれは曇って映るに違いない。
自身が人間であること。もし彼がそのような疑問にたどり着いてしまうようなことがあれば、どうなっていただろうか。
今の青年のように、自分のような他人――彼にとってはもう友人も同義であるが――に対して気持ちを吐露できるような『強さ』があっただろうか。
いや、恐らくは有り得ない。きっと取り乱し、憔悴し、瞳からは生気が抜ける。死んだように毎日を過ごしながら、いつか来る『その日』を怯えながら待っているに違いない。

「―――――でもそれなら。ヴァンが今『人間だってことの証明』をするだけなら、簡単だ。」

「問答をするまでもなく、今――ここで。此処だけでできる。」

―――――だから、ミサギの行動は迅速且つ、分かりやすかった。

青年―――ヴァンの前に、彼は自身の手を伸ばす。指先を軽く伸ばし、まるで『前ならえ』を右手だけでしているような格好になるだろう。
そして、次の瞬間に指先の空間が少しだけ『ズレる』。空気の流れ、世界の法則、それら全てをあざ笑うようにして出現するそれは、黒く輝く球体状の機械だった。
匂いも鉄のようで、僅かに違う。それは彼の意志に反応して瞬時に形を変えて――――他者を撃ち殺すための『銃』へと成り代わった。
想像系の能力。『機械じかけの変形機構』を有した球体を召喚し、それを銃へと変えた。次に行われることを、薄々青年も理解仕掛けているか――――それはわからない。

だが、止まることなど無い。右手の先に現れた黒光りするその凶器を持ち、そのまま青年へと向ける――――

     ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――のではなく、自身の頭部へと持っていこうとする。

匂いがするなら、もし青年に狼としての嗅覚が備わっていたり、銃に関して少しばかりの知識があれば、それが本物であることと、彼が今しようとしていることが『すぐに理解できる』筈だ。
何もしなければ、重厚は頭部へといたり、そして指先は引き金を爪弾くようにして引かれ――――赤い花が咲く。鮮血の未来。その確信がある。
止めることがなければ、確実にそうなるだろう。そう思えてしまうほどに彼の目は『わかりやすく』、そして『確信に満ちていた』。


76 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/14(水) 01:10:00 wzGWl61I
>>57

「え……、……――――――あっ」

気に留める余裕もなかったので気付かなかったが、確かに時刻表の看板は、幾星霜を重ねた為か相当に錆付いていた。
この辺りは駅等はおろか民家も少なく、足下には雑草が生い茂っており、地面も凹凸が激しく走行には向いてそうにない。
むしろ、一時期此処をバスが通っていたという事実の方が信じがたい程である。

じゃあ用はないので立ち去るかと云えば、然りとてそういう訳にも往かなかった。
依然として降り頻る雨天下に飛び込んでいくほど急ぎの用でもなければ、目的地が近い訳でもない。
何なら―――此処で『バス以外のモノ』を待ち続ける方がまだ有意義であるかもしれない。
そして碌な雨具も持ち得ずに長々と歩いてきたので、単純に疲弊し切っていた。

「…………そう。でもココが使えるなら、今は十分か、な……」

―――なので、或いは夜通し降るとも知れないこの雨が、せめて勢いが弱まるまでは停留所に留まるつもりだった。
大して充電も溜まってない携帯を折り畳み、上着から取り出したカロリーメイトの封を開け、口に放り込んだ。





……――――そも何故このような場所に居るのか、事の発端はおよそ一週間前に遡る。

少女とは同業者であり一応の面識もあった始末屋の者が、この近辺にて惨殺死体で発見されたとの報せが入った。
遺体には喰い千切られた痕跡が複数見られ、到底ただの人間の手に掛けられたとは思えない状態だったらしい。
尤も死亡後に野生の猛獣に貪られた可能性もあるのだが、いずれにせよ下手人がいるのに変わりない。

本来ならば捨て駒のひとつ鉛弾の一弾に過ぎない始末屋が犬死にしようと、新たに駒を仕入れれば済む話だろう。
しかし始末屋が遺体で発見されたのが、当時の雇い主の所有地であったので話が変わってくるのだ。
そしてその一件を預けられるのが、新たに仕入れた駒であるという訳だ。

其処で派遣され態々赴く羽目になったのが、フリーの始末屋も営む彼女―――朽瀬杏希であるという経緯だった。



/昨夜は返せず申し訳ありません…置いておきます


77 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/14(水) 01:22:16 wmxwBdts
>>75
息を吐き、口をつぐむ。長話を負えた達成感もなければ、懺悔のあとのような開放感も希薄。
ひと時は意識の外に極力おいやっていた澱のような情緒に、圧倒されまいと抵抗するのがせいぜい。
しかしいま、記憶は共有された。相槌や表情の変化があったわけではないけれど、それは確かだと信じられる。
もはや青年の内心にわだかまる宿痾は彼ひとりのものではない。その事実が何を意味するのか。
それはまだ、わかっていないけれど。

「簡単、なのか」

問いかける姿は些か間の抜けた格好だったろう。あまりにもあっさりと断定されて、拍子抜けしてしまう。
繰り返しリピートされるイメージ。人が獣に成るということ――意識を蚕食される恐怖。
ほんとうに証明など、あるのだろうか。――。

「ミサギ……?」

二度、三度と、瞬きする。
伸ばされた手をきょとんと見つめていれば現れる――黒い塊。その正体を見極めるまえに、それは姿を変える。
そこに現れた物体を確認すると同時に、どくりと心臓が跳ねた。疑うべくもない、少年の能力。
驚きは、彼が能力者であったという事実よりも別のところにあった。それは向きを変える彼の右腕であり、

「――ッ!?」

銃口の行きつく先。それを見届けるより少し早く、動き出す。
銃に関する聞きかじりの知識と――なにより少年の目。それが逡巡の余裕など与えず青年を駆り立てた。
前のめりに飛んだかと思うと、すぐさま狼の姿をとる。
彼我の距離を鑑みるに、そのほうが速いと判断するのにタイムラグはほとんど無い。
氷弾には頼らず、そのまま銃身に噛み付くことによって、それを自身の支配下に置こうと試みるだろう。


78 : 【射機焼填】 :2017/06/14(水) 02:27:47 oJpcH/Bs
>>77

「―――――っ。」

手から離れていく拳銃。凶器とも言えるソレを彼の手から奪ったのは紛れもなくさきほど彼を押し倒した狼であり、青年であり、その何方もを『含んだ』ヴァン自身である。
ミサギは明確にそのことを『確認』すれば、奪われた拳銃はそのままに――――「ほら、な。」と、青年が動いた様子を指し示して言葉を続ける。

「ヴァンの言う『獣』が人間に対して害になる存在であるというのなら。」
「『獣』は決して『人間(オレ)』を救おうとはしない。むしろ、その牙で俺の首に噛み付くはずだ。」

青年の話に出てくる獣というのは、一種の呪い染みたものなのだろう。話している様子と、その苦しみ用からそれは理解できる。
青年はその獣に襲われた。獣とかした人間に襲われた。ならばもし、青年が既に獣になってしまっていた場合、彼は間違いなく死んでいただろう。
自殺する物を止めることを獣はしない。むしろ、獲物が自ら横たわってくれて感謝すらするだろう。だから、その部分ですでに違うのだと、彼は言う。

「――――だけど、ヴァンはそうしなかった。」
「俺のことを案じ、これから行われるだろう『後味の悪い結末』に対して『ハッピーエンド』を示してみせた。」

「ソレこそが、ヴァンが人間だって言う証明さ。」

・・・・・・・・・・・
「たとえ姿が変わっても、少なくとも『今』は―――――俺を助けてくれている『今』は」
「ヴァンが人間だと、俺が認める。誰がなんと言おうとも、な?」

青年――――ヴァンの持つ心(なかみ)がどのようなものかなんて、ミサギにはわからない。もしかすればこの方法だって、せっかく築いた関係を壊してしまうものかもしれない。
横暴で、強引で、そして証明の手段としては明らかに稚拙だった。自身の命を掛けなければならない証明方法など、遅れすぎていてため息が出る。
しかし、ミサギにはそうすることしか出来ない。これから青年がどうなっていくのかはわからないから、彼が確定し断言できるのは所詮『今』だけだ。
それでも、それでも『今』は。ミサギが見ている『ヴァン』は―――――人間なのだと。

彼が導き出した答えは、余りにも不格好で、無様で、他愛もない。

「――――ああ、後。」
「拳銃(ソレ)はもう少ししたら爆発するから、速く捨てたほうがいいぜ?」

なんて、飄々とした表情(かお)で言葉を吐いた。


79 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/14(水) 12:58:13 wmxwBdts
>>78
ミサギの手から奪い取った拳銃の感触を認めると、即座に青年は人の姿を取り戻した。
地面に落としたそれを一瞥し、ため息。間に合ったことへの安堵と、諦念のにじんだ呆れを仄めかす。

「ったく。おまえってやつは……」

先刻に言い放った言葉を覚えていてくれるのなら、彼の気質をとやかく言うほど図々しく踏み込むつもりはない。
それでも、こうも簡単に命を擲つような行動を見せられると青年としては気が気じゃなかった。
頭痛を堪えるみたいにこめかみに手をやり、視線をずらせば――当の本人は平然と”証明”を続けようとしている。

「――」

誰がなんと言おうとも。その響きに俄かに目を瞠る。
助ける/助けないなんて選択は無意識のうちに行われていて、気が付けば咄嗟に身体は動いていた。
自分のことはよく解らない。意識の連続が途切れる体験は自己の不安定さを思い知らされるような心地がする。
だから彼の言葉は灯火となりえた。たとえそれが今だけであっても、”俺が認める”と言う人がいる。その実感が、
恐怖に塗りつぶされた未来を僅かでも照らすような――そんなイメージを、素直に信じさせてくれる気がした。

「ああ、分かった、分かったっての。だからもう、ああいう真似は必要ねえからな? ――」

ぶっきらぼうに首肯。言い聞かせるような返答を続けて、目を細め釘を刺すような視線を送る。
それから小さくありがとな、と礼を述べて――少年の肩口を小突こうとするだろう。諸々のニュアンスをそこに込めて。
将来への不安が除かれたわけではないけれど、少なくとも夜な夜な遠吠えをするような気分ではなくなった。
”これ以上”――それを求めてもいいものなのか。わずかに浮かんだ逡巡はすぐに、飄々とした口調に打ち消される。

「ッ、――おまえなあ……!」

いままで持ち前の短慮から、青年は多くの人を振り回してきた。
しかしこんな風に翻弄されることが、果たして何度あったろう。
とっさに蹴飛ばした拳銃は緩やかな放物線を描いて空中を舞い――そのままいけば、川のなかへと落ちてゆくだろう。


80 : 【射機焼填】 :2017/06/14(水) 20:28:53 oJpcH/Bs
>>79

彼が青年の言うことを無視したことに変わりはなく、けれど、彼にとってそれは必要なことだったのだと自身を肯定した。
自身が死ぬことで後味が悪くなるより、今ハッピーエンドを作りたい。自己犠牲と言えば聞こえはいいが、所詮は自己満足の最終型。
最も、彼は死ぬつもりなど毛頭なかったと本気で考えており、もし問われれば「途中で止めるつもりだった」等と、誰にでも分かる様なはぐらかし方を披露するだろう。
この数回による彼との会話で青年が扱い方を心得てきたのであれば――――間違いなくそれが彼の本音である事も、きっと理解できる。

――――カタナシ ミサギという少年は、今この瞬間は青年しか見えていないのだ。

肩口を軽く小突かれると共にある言葉、そして『ああいう真似は必要ない』という言葉に対して「もうしないさ」と笑って返す。
蹴り飛ばされた拳銃が川の中でそれなりの爆発を上げる音をバックに、両手を上に上げて『背伸び』のような格好をしながら、彼は言った。

「人間かどうかなんて、結局のところ『同じ人間』にしかわからないんだ。」
「――そして、見るからに『凡人』な俺が『そうだ』って言うんだから―――そういう事だ。」

その言葉を区切りとして、彼は立ちっぱなしで固まっていた筋肉を解し、青年に向かって「俺はそろそろ帰るけど、一緒に帰ろうぜ」。と声をかける。
青年が望む『今』よりも『更に上』、それを察するにはあまりにも彼は鈍すぎて。けれど、この出会いを『今』だけで終わらせてしまうようなつもりも毛頭ない。
青年にとって彼の言葉が響いているように、彼もまた青年の言葉に感化されている。今までとは違う発話と、違う結末。
以前のように一方的に振られるのではない。あくまでも『対等』に、まるで打ち解けた友人の如く――――できるのならば、その方がいいとミサギは思う。

もしその伸ばされた手を取るのなら、きっと帰り道は騒々しい道になるだろう。
どうでもいい話や、彼の武勇伝――――傍目から聞けば、物理的に痛々しい話ばかり――――を飄々と語り、青年の話に相槌を打つ。
時偶に普通の男子高校生のような下世話な言葉も飛び交ったりして―――――きっと、其処には、極々普通の―――――。

―――――別れる時に、青年のポケットにいつの間にかねじ込まれた連絡先の書かれた紙以外は。


81 : 【土傭戦士】 :2017/06/14(水) 20:38:01 E3mCKEzc
タッタッタッタ、と小刻みに心地よい音を鳴らしながら男は街中を走っている。

それは、黒の綺麗に選択されなジャージ姿の優男よりは男前と言った風貌の男。

大通り、閑静な住宅街、繁華街を抜けて路地裏、それはあらゆる場所を走り抜ける。いわば
ジョギング、よりさパトロールと言った方が正しいか、視線を軽く揺らし男は走る。

男の名前は十二文字と言った。警察系統の組織にも、常に誰かの側で救いたいと加入せず
単身で、昨日も、今日も、そして明日も人の為に何かをなさんとする奇妙なだが、確かに

"正義の意志"持った男だ


82 : 【負荊魔手】 :2017/06/14(水) 21:13:44 Pb0ypQUo
>>81

「……あうぅ……」

池から這い出してきたのは右手から茨を出したびしょびしょの少女。
左手の地図は池あたりにでも落ちたのかしわしわになり汚れて使い物にならなくなっている。

「なんでバナナの皮で池に落ちたんだろ……」

そう言い終わるとくしゅりと小さなくしゃみ。
そりゃ寒いだろう。

//よろしくお願いします


83 : 【龍神変化】 :2017/06/14(水) 21:50:33 0vZ0fQJQ
>>76

月明りも届かないような漆塗りの夜には、ましてや生温い梅雨の夜には、煌びやかな風は吹いてこない。
女の吐き出す煙草の白い煙のように、苦く、軽薄な空気、つまり、電灯の明かりに引かれては勢い余ってぶつかる虫たちのように、覚醒し切らない思考。
静寂の中に満ち溢れる雨粒の小さな騒音が、脳を悪い風に刺激してしまうのかもしれない。

女は自分から話しかけておいて、返事を返さなかった。
時間はただ過ぎていくばかり。そしてその時間の経過を、はっきりと感じ取れはしなかった。
1分、2分。廃バス停には時計すら置かれていないから、余計に時間の感覚を失っていく。

携帯灰皿に短くなった煙草の吸殻を放り込むと、重篤なニコチン中毒者然とさも空気を吸うかの如く、新しい煙草をポケットから引っ張り出す。
当然、相手の断りもなくジッポライターで煙草を燻ぶらせた。遂に毒に耐えたかねた虫たちの数匹が屋根の外へと飛び出してしまう。
ぷつりという音すらあったかなかったか、それらは大粒の大雨の絨毯爆撃を浴びて、地面へ落ちた。

「……。」

道の向こう側の森へと視線を向ける。何処までも続くような暗闇がある。
電灯の明かりはとても弱弱しく、今にも虫たちの体当たりによって消えてしまうのではないかとすら思える程だった。
一匹が体当たりする度に、ぱち、ぱち、と明かりが一瞬だけとても暗くなる。
そんな明るさでは、もしも森から2人の人間を狙う獣がいたとしても、逆に見つける事は困難だろうとも ―― 。

「……近くに俺のバイクがある。
 雨が弱まったら、近くまで送ってやる。夜道は、獣が出る。」

森の暗闇を見据えながら、彼女は無愛想な声色ながらも提案した。
バイクはここから50m程離れた所にある茂みに隠してあった。

今日の仕事は雨が弱まるまでに決めた。それまでに標的が現れたならば、それを始末する。
そして、目撃者は ――― その時に決める。引き金の行方について。



/お気になさらずッ


84 : 【土傭戦士】 :2017/06/14(水) 21:55:29 E3mCKEzc
>>82
タッタッタッ……タ….…ピタ。

それは、繁華街を抜けた先にある公園。そこの中央にある小さめの池の側を通りかがった時の事だ。
日は既に落ちてはいたが、近頃の安全対策の為にも照明が各所に設置されて、公園は見渡せる程には明るい

だからで、ある。一定のテンポで走る男が、池から這い上がる人影…少女の者に気が付いたのは。

「………」

立ち止まり彼女を見つめる。その手にはいばらか伸びるがこの街では特段に珍しいものではない。
僅かにあがる息を整えながら、ポケットを探る。柔らかい感触を確かめて、少女の元へ近寄った。

「あー、大丈夫かい?」
言葉は穏やかに、表情は出来るだけ柔らかいものを


そして、彼女に差し出したのは白いスポーツタオルだ。乾いてる事からは使った様子はない。


85 : 【負荊魔手】 :2017/06/14(水) 22:12:24 Pb0ypQUo
>>84

「はい……」

一応大丈夫ではある。
池に落ちたのが大丈夫ならばだが。

「……あ、ありがとうございます……」

そう言いスポーツタオルを手に取る。
そして頭を拭く。
物理法則的にそれがいいだろう。

「……ありがとうございまし……あっ」

再度お礼を言おうとしてあることに気が付く。

地図が使い物にならなくなっていたのである。

「どうしよう……これじゃあ……」

困惑する彼女。
眼前の男は意識にないようだ――


86 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/06/14(水) 22:14:14 hEGN6cX.
>>72
//回答遅れました、お望みであれば、切り上げで終了でも構いません。

どうにも、生気を感じない解答。
暖簾に腕押し、といった体。
真っ当に生きてる手合いではない、と感じさせるなにか。
手遊びをしながら、次の言葉を思案する。

「うるさい、死にたがり。
 だれが、『おいしくないです』と書かれた料理を食べんのさ」

これで、出てくる言葉があんまりにも煽り立てるそれ。
もやしかなにかかと思わせる、芯の弱さ。

「でも、バイトくらいはできるよね。
 ここに来たのも、何かの縁、というやつだと思うし」


彼女はトランクを膝に置き、中を開く。
中には現金の束と、白い粉の入った袋がたくさん。ついでに銃器も少々。

「これを売る仕事とかどう?」

不穏当なセリフを、1つ。


87 : 【土傭戦士】 :2017/06/14(水) 22:25:56 E3mCKEzc
>>85

「……………ふむ」

目の前には困っている少女がいて、彼はまぁ時間はある。そも、そのような事を見逃すたちでも無く。
僅かに視線を逸らし空を眺める。僅かに思うのはたまにはこう言う夜も良いものだと。彼はひとりごこち

そして

「私はここの辺りを活動の拠点にしててね。道案内くらいなら出来るとは思うが?」


88 : 【負荊魔手】 :2017/06/14(水) 22:43:41 Pb0ypQUo
>>87

「……そうなんですか……ではすみませんけどグランドホテルまでお願いします……」

ペコリと頭を下げる。
名前がアレだがまあ気にしてはいけない。


89 : 【一刃潜瞬】 :2017/06/14(水) 22:45:03 6.qQlMf6
>>73

カーキのトレンチコートの内ポケットから煙草を取り出し、咥える。
彼女らのことを知ってどうするか、と問われれば勿論“要らぬ戦闘を回避する”為だ。
能力者相手に戦えば疲労がたまる上、負傷する可能性も十分にある。


初めて真白が紅音に対して言葉で注意した。
真白にとっては紅音を護ることが何よりの使命であるのだろう。
煙をポカリと吐くと、真白の問いを聞いてから数瞬考えた後、口を開いた。

「――何もしないさ、敢えて言うなら“近づかない”だけだ」
「私は金さえ貰えれば殺しでも何でもするが、命だけは惜しいからな」

それに、守りたいものもとっくの昔に失ったさ――、と言った。
金さえ貰えれば何でもするが、命は惜しいと。自分でも貪欲であるとは思う。
だが、それでも生きていかなければならない。あらゆる障害を避けて、でも。


「――そういや、名乗ってなかったな」
「ヨハンナ・リーデルシュタイン。お察しのとおりだろうが、“トレンチコート・ガール”だ」

また白煙をひとつ吐いた。煙はそのまま立ち上り、夜風に吹かれて消えていく。
暗殺者として、本名を晒すことは何よりも危険が生じる。私生活において狙われる可能性があるからだ。
それでもヨハンナはそうした。彼女らが名乗っておいて、自らが名乗らなくても良いはずが無いと。


90 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/14(水) 23:03:49 wmxwBdts
>>80
途中で止めるつもりだったのだと躱されてしまい、釈然としない気持ちを少しだけ引きずったものの
結局は”そう”だったんだろうと自分を納得させた。その場しのぎのでまかせ、という訳ではないらしい。
少年はあくまで飄々としているけれど――そのくらいのことは、青年も理解できるようになっていた。

「――ああ。そうだな」

締め括るような少年の言葉に応える声は短い。
こんな風に自分のことを認めてくれる相手に対して、思うところが無いというわけではもちろん無いけれど、
これ以上にあれこれと言い募るのは野暮な気がしたのだ。きっと伝わっているものも、あるだろうから。

「……っ、おうよ!」

学校なんて通ったこともなかったし、誰かと一緒にいることも稀有だから、”一緒に帰る”なんて発想がそもそも新しい。
差し出された手を一も二もなく掴むことにして、夜半の河原をあとにする。

それから過ごすひとときはきっと、青年にとっては刺激的な時間となるのだろう。
すぐに忘れてしまいそうな他愛ない話に笑ってみたかと思えば、クセの強い武勇伝に目もとをひくひくさせながら耳を傾ける。
自分からだって取り留めもなく”何でも屋”の仕事について話してみたり、悪乗りには悪乗りで返し、それから――……。

やがては少年も、それから自分も、それぞれの明日へと回帰する。さっきまでの喧噪が嘘のような静けさに驚きつつ、
ひとりで浴びる風の冷たさにぶるりと震える時間がやってくる。
そうして青年は、擦り合わせた両手をおもむろにポケットに突っ込んで、――。

/長くなりましたが、お疲れさまでしたっ
/ありがとうございました……!


91 : 【土傭戦士】 :2017/06/14(水) 23:04:03 zFU7HDMk
>>88
グランドホテル……繁華街方面にある。由緒正しいホテルであったか。ランクも高いものだ、と。
男はそこまで思考し、ふと少女に視線を向けた。彼女の服装は質の良い物だ。ホテルの事も考えると

どこかのお嬢様、と行った仮説は立てることが出来る

「……っと」

ここで男は彼女の状態、に思案を回す。
つまりはびしょ濡れ…初夏とはいえ少々冷える、が、流石に自身のジャージは少女には貸せない。

「コンビニでも寄ってタオルを買おう。夏とはいえ濡れたままは冷える」

すぅ、と指をさした先には公園に併設されたコンビニが24時間という荒波に飲まれている。びば都会
このまま彼女が頷くなりすれば、彼はそこに向かうし、ついでに何か欲しいものは?と問いかける。


92 : 【射機焼填】 :2017/06/14(水) 23:06:13 oJpcH/Bs
>>90
//此方こそお疲れ様&ありがとうございました……っ!!


93 : 【負荊魔手】 :2017/06/14(水) 23:20:26 Pb0ypQUo
>>91

「またすみません……あ、他のものはいいです、別にお腹はすいていませんので」

ここで更に甘えるのはアレだと断る。
理由は実際適当だがまあばれないしばらさないので大丈夫だろう。
この後は堅苦しいパーティなのだが。


94 : 【二心掛力】 :2017/06/14(水) 23:28:48 2X5hnNRg
>>89


要らぬ戦闘を避けたいという意図は二人に関しても同様であり、近づかないというのであれば態々深追いする必要もなく。
はあ、と真白は緊張の糸が解けたことで大きな溜息を溢し、紅音は言いつけ通りに黙り込みながら空腹と晩飯について思案する。

真白は義理だとか人情だとか、筋が通っているかどうかとか、そう言った考え方とは無縁の人間である。
相手が自分から名乗ったことについて何かしらの感慨を覚えるようなこともなく、例えそれが彼女にとってのリスクであろうが意にも介さず。
ただ、殺し合う理由がなかったのであれば────其れだけである。この界隈でも稼ぎも身の丈にあったもので充分なのだから。


「それじゃあ、私達も危きには近寄らず、さっさと帰るとしましょう
ご飯、準備できてなかったから、何処かで食べていきましょう────紅音、紅音? あの、もう喋っていいよ」

「それじゃあ牛丼食べよッ!!今日は何時ものす○屋でマグロ丼食べたい気分ですッ!!」


能天気な紅音と、本日一番大きな溜息を零す真白。然しその光景は彼女達にとっては何よりも心安らぐ、かけがえのない日常に他ならず。
二人組は公園を去り、夜闇の中へと消えていくのだつた。時折、騒がしいボケとツッコミを交わしながら。


//こんな感じで〆でしょうか、絡みありがとうございました。途中遅れたりして申し訳なかったです


95 : 【土傭戦士】 :2017/06/14(水) 23:32:59 e99cpzlQ
>>93

「そうか……」

コンビニにさっと入って購入したタオルを手渡す。……その後の道程は順調そのものだ。
特に事件も無く。特に絡まれる事もない。男がこの地域で活動という名の仲介をしているのだ。
不良などといった者たちは男の実力を知っているのだ。……15分もすれば、到着する。

ホテルを見上げながら男はいう。

「ついたぞ。少し遠かったな。」


96 : 【負荊魔手】 :2017/06/14(水) 23:51:55 Pb0ypQUo
>>95

確かにやや遠かった。
が、普段の彼女なら倍はかかってもありえなくはないだろう。
まあ、大体迷うのが原因だが。

「……ありがとうございました」

ホテル前で一言。
最低限謝罪は必要なものである。

「あ、ちょっと待っててください」

そう言い中へ入り割とすぐ出てくると手には三枚のタオル。
どれも未使用のものである。

「あの……よければどうぞ……」

些細なお礼のつもりらしい。


97 : 【一刃潜瞬】 :2017/06/15(木) 00:46:01 VgoNUqf2
>>94

同業者と二人――二組というべきか――きりになると、これが大変である。
ヨハンナは相も変わらず煙草を吹かし、ぽかりと白煙を吐いていた。
――これでも、楽な方だ。だが、緊張感は以前と全く変わらず、それどころか増しているようにも感じる。


「それじゃ、私も退散するか」

彼女らの騒がしい会話を、口元に笑みを浮かべて聞いていた。
正直言うと、彼女らが羨ましい。信頼できるパートナーを側において、常に仕事ができるのだから。
ホルスターからナイフを抜くと、また左手でそれをくるくると回していた。


女も彼女らと同じく、夜闇の中へ消え入ってしまった。
殺し屋らしく、静かに、そして誰も気づかぬまま。広場には、再び静寂が訪れた。
いつの間にか雲は晴れていたようで、月が雲間から顔を覗かせていたようだった。

//ロールしていただきありがとうございました!
//こちらもお返しが遅れてしまって申し訳ないです……


98 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/15(木) 01:34:35 qFoR2mxE
>>83

目を凝らす。すぐ傍らから夜闇の奥まで注視しながら、定期的な眼球運動を繰り返す。
耳を研ぎ澄ませる。揺れる木葉、夏虫の羽音、枝から落ちた水滴―――雨に鎖された細かな物音を拾う。
休憩の一環のエネルギー補給のため炭水化物を咀嚼しながら、五感をセンサー代わりとして働かせる。

嗅覚も利かせようとしたが、横から漂う紫煙が鼻孔を撫でつけるので諦めた。
もっとも鼻は視覚聴覚に比べ然して重要でもなければ、この匂いで気が散るほどに不慣れでもない。
だからもしニコチンが霞むくらい酷い臭いでも届いたなら、その際に即座に動けばいい―――と。
そう結論づけたので特に言及もせず、軽く手の甲で鼻先を擦り、新たに取り出した二袋目を開封した。

「別に……、いい。走った方が、早い…………」

彼女の提案に対し、変わらず夜闇を見続けたまま、遠慮の意を示した。
今の体力でオートバイより迅く奔れるかも、回復するまで雨が収まらないかも解らなかったけれど。
獣に出くわすしても、熊や狼をはじめとする小物なら仕留めて夕飯にすればいい。
それらと違う類のケモノと遭遇したなら―――――同様に、仕留めればいい。

然れど、雨滴は更に勢いを上げてバス停の屋根を打ち続けていた。
不幸中の幸いがあるとすれば雷雲等は見られず、これ以上天気が崩れそうにないという事。
本当に夜が明けるまで此処に居座らなければならないのか、まだわからない。

「……―――――――ッ、………………」

一瞬だけ遠くの草叢で揺らめいた影を視界に捉え、反射的に腰と踵を跳ね上げる。
―――が、どうやら只の野犬だったようで、見開いた両目は、再び虚ろで眠たげ紅い双眸に戻る。
咄嗟に持ち上げた、太い棒状に丸めていた革コートを置き、再びベンチに腰を下ろす。

―――――――雨は当分止みそうにはなく、獲物も当分現れそうにはなかった。


99 : 【龍神変化】 :2017/06/15(木) 21:06:32 JLLYy5fE
>>98

「そうかい。」

あっけらかんとした返事で応え、電灯の周りで羽ばたいている虫たちに向けて煙を吹き付けた。
何匹かが身悶え苦しみ、ぱたりと地面に落ち、小さなたくさんの足をばたつかせている。
かろうじて息が残っているだろうその虫を、女は暫し見つめた後、その真上から煙草の灰を振りそがせる。
虫は灰に塗れ、もがき苦しむ。

趣味の悪い退屈しのぎを遮ったのは、森の奥から鳴った音。そして、それに呼応するように立ち上がった少女の影。
思わず自分も拳銃に手を掛けそうになったが、それがただの野犬のものであると分かり、張り詰めた空気はたちまち霧散した。
山奥の整備のされない道故に、獣すらここを人が通るとは考えていない。

それにしても、と金髪は思った。相手は今明らかに、戦意を示したではないか。
山の闇の奥から現れるであろう何者かに向けて、それがもしやすれば、暗黒の森に逃げ込んだ幽鬼かもしれないとばかりに。
何を考えているのかわからない眼を(人の事は言えないが)パッチリと見開いていたでは、ないか。
それに、今手にかけた其れは何だ。

「それはお前の、得物か。」

爬虫類めいた奇妙な眼の焦点を、丸められた革コート、その中身へと合わせる。当然、それの正体はわからない。
それに、其れは実際、どうでもいい ―― もちろん、相手が自分と無関係のままであるならば、の話に限る、が。

煙草を利き手ではない左手に持ち替え、そして、利き手を、腰のホルスターに収まったリボルバー拳銃に掛ける。
外から飛び込んでくる小さな水滴に濡れて、鈍い銀色の輝きを放つそれの持ち手は、古臭い木製部から僅かにつんとした臭いがある。
異常なほど使い込まれた拳銃である事の証拠であり、つまり、それだけ拳銃を握る機会が多いという、こと。

「クソ田舎の、山奥、虫だらけの廃バス停に、得物を持った人間が2人、存在する。
 俺は、理由があると思うんだが、お前はどう思う?」

バス停に屋根があるとは言っても、小さな小さなバス停だ。椅子がひとつ、電灯がひとつ。
大量の水滴のせいで金髪はしっとりと濡れ、前髪の毛先から滴が一滴、滴り落ちる。
非常に不快な気分にさせられるが、良いことも当然ある。耳障りな雨音は、拳銃の発砲音すら閉じ込めてしまうことだ。

「言っておくが、このバス停を明日の朝刊一面にしたい訳じゃない。
 ただ武器を持った子供の目的を知っておかないと、不安なんだ。」

煙草の先は、もう指先に到達しそうなほど短くなり、灰が地面に落ちると、虫は完全に灰に埋もれた。


100 : 【土傭戦士】 :2017/06/15(木) 22:59:42 w8H5VTKQ
>>96
/申し訳ありません。ちょっと色々と忙しくロール難しい状態に…このままタオルを頂いて帰った感じでお願い致します。絡みありがとうございました。

ご連絡が遅れてしまい申し訳ありません


101 : 【永劫乃命】 :2017/06/16(金) 00:11:37 XQ8WA6r2
>>86

引鉄は動かない。

「自ら『おいしいです』って書いてある料理が鼻について、注文したくなくなる人だと思います」

僕の意識は、彼女のくるくると動く指と言葉に翻弄されています。
いや、そもそも更けた夜と妙な境遇のせいで、少しおかしくなっているのやも。

ん。あれ。
これ、あれかな。
駅前で『道教えて』って綺麗な外国人のおねーさんに声かけられて、最終的に得体の知れない宗教の洗礼を受けさせられそうになるやつ。

「別に、お金に困っている訳では――」

そう言って軽いため息をついて、心底がっかりした口調を漏らそうとしたところ。
カルト宗教おりも違法性の強い品々が、うつろな目に入る。

「――ないんですよ。縁だとは思いますが」

そりゃあ、見たことない物に対して目を見開きはします。でも、それだけ。
死を境に、僕はこの腐った脳味噌の中以外を真っ新にされますから。
余りのバカらしさに、

「あなたとはそういうの抜きでお話したかったんですけどね、“おじょーちゃん”?」

なんて“年上”ぶるいやーな癖が出てしまいます。きっと、性格の悪い笑みすら浮かんでいることでしょう。
拳銃の安全装置は、かけ直しました。

//終了はどちらかのモチベが切れた時で
//どんなペースでも最後までお付き合いいただけるなら幸いです


102 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/06/16(金) 06:40:34 zc.AsA8Y
>>101
//お気遣い痛み入ります。 引き続きよろしくお願いします。


返ってくる言葉が、軽い。
礼儀の多寡からくる軽薄ではなく、もっと奥の……
思案しようかとおもった矢先に、ああと気づく。

「それ、ついてなくてまともなのは、もう食い荒らされて空っぽな皿。
 洗って作り直す用」


こいつ、欲めいたものが薄すぎる。
おぼろげな仮説に輪をかけて、ファムファタルな言葉にも乗らないとくれば。


「そういうの、願い下げだよおぼっちゃま?
 気もない言葉じゃ、私は動けない」

冷徹に、マウントを取るような視線を値踏みする。
トランクのロックは、掛けなおしでいいだろう。

「あなたは、私に何を求めているんだろうね」

問わず語りを1つ。
それは、突き放した言葉のようにも見える。


103 : 【負荊魔手】【執事無敗】【栄華之夢】【新種工場】 :2017/06/16(金) 20:04:11 iD19F8Ow
>>100
//了解です


104 : 【永劫乃命】 :2017/06/16(金) 22:59:41 XQ8WA6r2
>>102

詮索をされるのは嫌いです。自分語りというのは、この世で一番の傲慢だと思うからです。
でも、そんな理由で詮索を嫌うということは、僕が心の底ではそうされたいと望んでいるより他にないのです。
僕は、孤独なのでしょうか。

「なるほど」

彼女との禅問答の優先順位は、もう下がりました。
面倒くさそうに答えて、がりがりと頭を掻く。憑いた魔を掻き出すために。

「ははは」

勅命を下す女王のような眼差しを避け、乾いた笑いを漏らす。
こんなにも、人に真正面から見られたのは何年ぶりでしょうか。
しかも、願い事を聞いてくれるらしい。嬉しいですね、こんな美人に聞いてもらえるなんて。

「見ず知らずの人に何かを求めることなんて、できませんよ」

「ただ、そうですね。もしできたとしたなら」

じゃあ折角なので、言ってみたかった台詞をひとつ。

「僕を生かしてください。または、死なせてください」


105 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/06/17(土) 00:00:20 Zsznx5vU

>>104

彼の回答を咀嚼しながら、彼女は彼の願いについて思案する。
生死を預けてきているのか、それとも何かの暗喩なのか。
こめかみを指でトントンと叩いてさらに悩む。

「初対面に、生き死にを預けるのは、ちょっと重たいかな。
 キミが持ちきれない何かがあることは、初対面の私でもわかるけど」

何とか組み立てた言葉で、解答をひねりだす。

「気休めが欲しかったら、ここにたくさんある。1人分なら分けてあげる」

トランクをノックする。

「それとも、自分の何かを変えたいのなら……
 私に話してみるといい。そうしたら、生き死に。選んであげるよ」

不遜な態度が、張り付いた笑みと折り重なる。


106 : 【蒼雷魔法】 :2017/06/17(土) 13:42:47 4G4G0yec
硬貨を投入し、レバーを操作。
ふらふらと落ち着きなく揺れながらアームが下降してゆき、景品を掴もうとその手を広げる。そして……
そして、空を切った。アームは味気ない電子音とともに、素早く元の位置へと戻ってゆく。

「あーっ、くそっ!」

ゲームセンターの屋外に据え付けられたクレーンゲーム。
これに恨みがましい視線を送って肩を落とすのは、ひとりの少年だった。
着崩した『学園』の制服に赤い髪、中性的な顔立ち。
彼はひとりの友人も伴わず、夕暮れの染め上げる歓楽街で、機械と相対している。その様子は真剣そのもの。

「――あと、500円か……」

すんでのところで踏みとどまっている――ように見える――ぬいぐるみを硝子越しに見やり、
それから財布の中身を確認。赤点の答案を確認したときのように、表情が苦々しく変わる。
両替をするべきか、それとも否か。人差し指をこめかみにあてて、何やらまじめに考えはじめ、――。

「っ、やべ、」

それから。悩んだ末に取り出した硬貨は不意に彼の手から零れ落ち、ころころと逃げ回りはじめた。
あわてた少年はろくに前方も確認しないままに、すばしっこい動作でそれを追いかける。……。


107 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/06/17(土) 15:54:32 qO9vjRhk
>>106
今日は何をやろうか

どうやってやろうか

一日の業務を終えた浅山万里江は“今日のこと”について思案していた。
どうすればより鮮やかにできるか。どうすれば『本物』にだけ出逢えるのか。
“そうでないもの”の相手をするのは面倒だ。そろそろ、出逢いたい。

思案しながら歩いていると概して思わぬ出来事を起こしてしまうものだ。
万里江は教壇に立っているときのものではない服装、黒いロングコートに同色のズボンに身を包んでいるまま若者たちの遊技場に足を踏み入れていた。
思考の海に潜水していた彼女は己がゲームセンターにいることには気づいていない。よくここまで人とぶつからなかったものだ。
だが、その幸運もここで終わる。コインを追う少年とぶつかってしまったのだ。

「きゃっ ごめんなさい……あら?」

衝撃によって現実へと引き上げられたその先で目にしたのは見慣れた制服だった。
『学園』に所属することを示す制服。即ち、この少年は恐らく自分が国語を教えている少年少女の一人だ。

そして再び思考の海へと潜る。この少年の名前はなんだったか。その解を求めて。

//まだいらしたらよろしくおねがいします。あと、こちらのキャラ学園の国語科教師なので教わったことがあるなどしてもらってもかまいません。その場合、こちらも教えたことがあるということで名前を知っていることにしたいです。


108 : 【蒼雷魔法】 :2017/06/17(土) 17:31:09 4G4G0yec
>>107
ついに力尽き果て、床に落ちた硬貨を拾いあげるよりも早く――死角から鈍い衝撃。
さっと肝の冷える感覚に顔をあげる。

「っと、ごめんなさ――……」

口をついて飛び出した謝罪の言葉は、しかし語尾を曖昧にしたまま途切れてしまう。
少年の碧眼はまずぶつかった女性の顔立ちを捉え――それから、その服装へ視線をずらす。
”彼女はただの他人でない”と思い立ったことは、その表情の変化からも察することができるだろう。

「げっ、……」

思わず言葉が漏れた。後悔しても遅い。
こうなったらもう、筐体のやかましい音に紛れることに期待するしかない。……。
素早く硬貨を拾い上げて立ち上がると、首の後ろに手を回す。

彼女のことはよく知っていた。授業は人気があって評判のいい教師だし、そもそも直に受けたこともある。
それでも、少年には苦手な相手だ。

「どうしたの、先生。こんなところで」

まず彼は国語が大の苦手科目で、赤点もしょっちゅう取っている。自分ではそれでも構わないと思っているのだが、
熱心な性格の彼女が放っておくわけもなく。補修を言い渡されたり宿題を出されたり……脳裏には嫌な思い出がよみがえる。
そうしたこともあり、反抗したことだってある。だからきっと相手だって、自分のことを覚えているだろうと思う。

こんなことなら制服は脱いでくるんだったな――などと思いつつ。掛けた声は、ほんの少しばかり余裕を気取っている。
此処が学校でなく、ゲームセンターであるという事実が、彼にいくばくかのゆとりをもたらしているらしい。

/よろしくお願いします。と、折角なのですが次の返信がちょっと遅れてしまうかもしれないです、ごめんなさい。
/かなり設定を盛ってしまったので、もしあれな部分があったら遠慮なく修正していただければ……!
/名前は、お互い知っているということでお願いします!


109 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/06/17(土) 18:10:08 qO9vjRhk
>>108
誰かと思えば、あのレトラ君だ。
国語がすごく苦手で、何かと面倒を見ている少年。覚えている。忘れるわけがない。
こんなところで偶然会えて少しうれしくなって、表情が綻ぶ。

「考え事しながら歩いてたら、迷いこんじゃったみたいなんですよ
ひょっとしたら、レトラくんに引き寄せられたのかもしれませんね」

いつもとは違って少し余裕があるのがなんだかかわいらしい。
いつもは何かと嫌そうな顔をしているのに、ホームグラウンドにいるせい?

「先生は会えて嬉しいですけど……ダメですよ?制服のままこんなところで遊ぶなんて
他の先生に見つかったらいっぱい怒られちゃいますよ?」

そんな彼に対し“教師としての義務”はキッチリと果たす。
彼も覚悟していた言葉であろう。しかし、もしかしたら想定よりも少し弱い言葉かもしれない。

このとき、既に万里江の脳にはある計画が出来上がっていた。
立案者たる自身に対し、他の先生に見つかったら怒られちゃうかもなんて思っていた。


//了解ですー設定回りは全て大丈夫です!お待ちしてますね


110 : 【永劫乃命】 :2017/06/17(土) 19:08:22 cD.hx7O.
>>105

眉間に皺を寄せて悩み始める彼女を笑う。
そこは、まともに受け取っちゃうんですね。
彼女の言う『気のある言葉』の条件が分からないです。

「重たいですねえ」

確かに、これは重たい。
人に譲ることも、預けることもできない。
かといって、共に腕を痛めてくれる人もいない。
だから僕は代われない。そして、だから変わることができない。
そう思っていました。

「気休めもいいかもしれません。生が快感を通し実感できて、そのまま苦しんで死ねそうです」

ただ、僕は気づいてしまいました。

「今日の僕は貴女とお話する為に生きていると思います」

既に僕は、変わっていたのでしょう。
これから何度死のうとも、彼女と出会わなかった僕の未来だけは、消えやしません。
ならば女神の胸の上で、その指先につつかれながら踊るのも良いと思うんです。

「これ、人差し指に力を込めたら、どうなると思います?」

僕は徐に、腰の下に隠していたリボルバーを右手で取り出し、自らのこめかみに当てる。
安全装置を外す。かちり。撃鉄を起こす。ぱちん。


111 : 【蒼雷魔法】 :2017/06/17(土) 20:29:43 4G4G0yec
>>109

「いや、意味が分からないし」

頭を掻いて、ふいと目を逸らす。
先生の表情はにわかに綻んでいた。それは少しだけ意外で嬉しくも思えたけれど、
同じような表情をして課題を押し付けてきた記憶が、複雑な心境をもたらした。――。

「はーい。今度からはちゃんと着替えますっ」

まあ、こうなるよな。頭のなかで独白する。
それでも素直に頭を垂れて反省する気は無いようで、応える声は相変わらずひねくれている。
よっぽど面倒くさい生徒だろうな、と自分でも思うのだが、咄嗟に行動してしまうから仕方がない。

それにしても。基本的には優しい先生ではあるけれど、それにしても注意があっさりしていたような。
上の空とは言い過ぎかもしれないが、覚悟していたよりずいぶん簡単に済んでしまって、拍子抜けだ。
小骨が喉に引っかかるような、微かな違和感がある。

「……それじゃあ、行っていいかな?」

思案の色を眼に湛えつつ、さりげなく訊いてみた。

/お待たせしました!!


112 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/06/17(土) 20:56:27 qO9vjRhk
>>111
相変わらずひねくれた返事をするのも予想済み。
そんなめんどくささも可愛らしい。もっとしっかり面倒をみてあげたくなってしまう。
だけどそれは一度脇に置いておく。さっき考えた楽しい計画を実行するために。

「ううん、今回は見逃しますけど……」

学校では見られない悪戯っぽい笑みを浮かべて言葉を一度置く。
もちろん、レトラの反応を見るためだ。
見逃すが、いかせない。なぜなら、

「生徒さんたちの好きなこととかを知るためにも、私も着いていきますね」

ちょっと、声が弾んでしまったかもしれない。
もちろん、自分が楽しむためなんかじゃない。こうしたほうがきっとレトラも懲りてくれると思ったのだ。
自分は生徒たちの嗜好を知れて、レトラはもうこのようなことはしない。
完璧、と思った万里江は笑顔であった。


113 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/17(土) 21:00:30 Xb..SfDI
>>99

問われてもすぐには返答せず、相手の一連の問い掛けが終わるまで聞き手に徹する。
否、終わっても即答しようとせず、自らの太腿に頬杖を着き、振り返りさえもせずに考え込む。
空いてる方の手で空き箱を捨てようとするが、屑箱が見当たらない。
過疎ゆえに撤去されたのだろうか、仕方ないので丸めていたコートの隙間に捻じり込む。

「…………別に。ただの仕事道具……だ。ここに来たのも仕事が、目的」

中身を見せろとも明確には要求されなかったので、包んだ状態で一旦持ち上げて再度置く。
もっとも包まれているのは何の変哲もない小太刀であり、特別隠し続ける理由はない。
ただ単に、素性のわからない相手に対し、易々と得物を晒す必要もないと判断しただけである。

そこまで言い終えると、また考え込むように頬杖を着いたまま沈黙の間が入る。
周囲に警戒を配る余裕もないのか、視線は足下に向いており、先程より長い時間を要している。
後ろめたいのではなく、最初の質問にも即答できなかったのと同様、ただこいつは頭を使うのが苦手なだけだった。



「理由は多分…………ないと思う。ただ……お前の目的と、僕の目的が近かったり重なっただけ……と思う」
「最後の、目的が同じでも……最初の目的が、違ったら………………そういうの、偶然っていうって聞いた」
「お前は…………帝國人じゃない、と思うから……多分…………っ、偶然と、おも゛ッ………………思う…………」

今回、この山村地域へと遣わせた雇い主は、非常に用心深い懐疑主義者であったと記憶している。
基本的に他人を信用せず、それは部下や一種のレイシスト的思想といっても過言でなく、帝國の一部地域の出しか雇わない徹底さらしい。
また、男の性格からすれば、新たに傭兵や殺し屋を追加で仕入れるというのも考え辛かった。
なので、女にとって不安の原因になるような事柄は何もない―――――――――――はず、である。


「でも、仕事の内容は…………言えない。お前にも僕にも……それが好都合、と思う……」


―――――喩えそれでも、依頼内容を安易に明かす真似はできない。


114 : 【蒼雷魔法】 :2017/06/17(土) 21:31:09 4G4G0yec
>>112
少年にとってはあまり良くない意味で――予想通り、あっさり返してはくれなさそうだった。
中途半端に途切れる言葉。なんだか良くない予感がした。その正体は、すぐに明らかとなる。
先生の顔に浮かぶ見覚えのない類の笑み――それを見て、ぎくりと表情を強張らせる。

「…………え?」

唖然とした表情を浮かべ、そのまま固まる。思わず耳を疑った。そんなの、ありえない。
先生と仲良くゲームセンターで遊興にふける学生が、いったいどこにいるだろう?
いるはずないし、いたとしてもそれは自分じゃない。そのはずなのに、――
なんだってそんなに楽しそうな表情をしているんだろう。

「はは。先生の冗談にしちゃ、面白かったよ」

口の端をひきつらせ、浮かべた笑みはやけにいびつだ。
それから数秒。……沈黙した少年は、やにわに眉間に皺を寄せる。
その声音にはどこか切実な響きすらあった。

「なあ、冗談……だよな?」


115 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/06/17(土) 21:54:03 qO9vjRhk
>>114
表情を強張らせ、言葉を聞いて唖然とする。
その一連の動きが面白い。だけど、それを楽しんでるようには見られないように頑張って表情を取り繕う。
計画は、今のところは大成功だ。いい表情を見れた。
だが、ここからだ。まだ何も始まってはいない。

レトラがなんとか紡いだ言葉もまた面白くって、かわいらしい。
冗談だと肯定してホッとさせるのも面白そうだけど、それはいつかの機会にするとしよう。

「冗談じゃないです♪」

残念ながら、少年にかけられた言葉は冗談ではない。万里江は本気だ。
そもそも、教壇に立つ万里江はいつだって真剣で、本気だったはずだ。

改めて、万里江は少年の返答を待つ。しっかりと、目を見て、笑顔で。

//10時ごろまで返事遅れます……申し訳ありません


116 : 【蒼雷魔法】 :2017/06/17(土) 22:26:03 4G4G0yec
>>115
まさか自分の反応が相手を楽しませている――なんてことには露ほども気づかず、
少年は問いかけの答えを待っていた。
やがて下される審判はあまりにも、無情なものであった。

「俺、そこまで悪いこと……したか?」

額に手を当て、弱弱しく呻く。注意を飄々とかわす問題児の態は既に影を潜めている。
此処で無理やりに拒絶したってきっと、もっとひどいことになるのだろう。
それを踏まえての、あの笑顔なのだと思うと、もういっさい笑えなかった。

ならばとっとと、――この茶番を、終わらせるしかない。
項垂れていた顔をあげた少年の表情には、ひとつの決意――それと疲れ――が見て取れる。
しかたがない。そう何度も自分に言い聞かせ、無理やりに納得させているようでもある。

「……せんせの印象、ちょっと変わったかも」

せめてもの強がりを一言、それから身を翻して、ゲームセンターの中を歩きだす。
そこそこの速足で、もしも彼女が見失うようなことがあればそのままとんずらするつもりだったが、
もやしっ子の彼が多少あくせく足を動かしたところでそんな効果はまず見込めないだろう。

「どう、一緒にやってみる?」

そうしてたどり着いたのは、銃を模したコントローラーを操作してゾンビの類を撃退する、
一人称視点のアクションゲームだ。
抜かりなく両替を済ませた硬貨を投入し、後ろにいるであろう教師に向かって誘いかける。
そのころには多少落ち着いてきたのか、それとも自棄になったのか、多少なりとも余裕が戻っていて
彼女を振り返る少年の口許には、試すような笑みが浮かんでいる。

先生のような人間はきっと、こういうゾンビ物は苦手だろう。
ひょっとしたら大人しく退散してくれるのではないか――そこにあるのは、そんな下心だ。
頼むから、同じ『学園』生徒には目撃されませんように……。

/大丈夫、です……!


117 : 【龍神変化】 :2017/06/17(土) 22:40:27 Bnzwv4Q6
>>113

少女の絞り出すような返答を聞いて、女も直ぐには返事を返さなかった。相手の様子を、観察する為。
見かけの判断に過ぎないが、相手は年端も言っていないように見える。それが、武器を持ち、何者かの命令によって、"仕事"をしている。
手を拳銃から離すべきかと少しの間だけ考え込み、胸中である結論を出した ―― 危険だ。だが、敵ではない。今のところは。
バス停の壁に走っている大きな亀裂の隙間、風が通り抜けて、ひゅうと不気味な音を立てた。女は拳銃から手を離す。

「言う通りだ。その方が、いいらしい。」

煙草の煙のせいか、いつの間にか電灯の周りから虫がいなくなっていた。
雨の勢いは強さが衰える様子を全く見せず、天井に砲弾が降り注ぐような音をうるさく立たせ続ける。
一際大きな雨粒の跳ね返りが起きて、それが偶然にも煙草に降りかかり、これは音もなくその火を消してしまう。
女は舌打ちをすると、携帯灰皿に濡れた吸殻を捨てた。

「他の人殺しと仲良くしたいとも思わない。
 不幸な偶然というわけだ。気分が良くない。」

相手を人殺しと決めつけたのは、ただの勘に過ぎない。少年兵、仕事、秘匿、良からぬことの臭いを感じた、それだけだ。
何よりも、自らがそうであるのだから、相手が隠す気がないなら雰囲気で分かる。詩的に言うならば、血の臭い。

気分が悪い時はとにかくニコチンを切らしてはいけない事を、女は心得ている。
更に新しい煙草を取り出そうと煙草の箱を取り出す。だが、中身は空だった。ぐしゃ、箱を握りつぶし、地面に投げ捨てた。
ズボンのポケットにもう一度手を入れて、偶然にも一本が紛れ込んでいないかと探す。
まるで少女への関心を失ったかのようだったが、そういう訳ではない。女は冷静に、これ以上の詮索を諦めただけだった。

その時、前触れもなく電灯が、高い破裂音を立てて割れた。小さな破片が散らばる。
女は動きを止め、深い溜息をと共に言葉を吐き捨てた。

「煙草が切れた時に来るとは、本当に、最悪だ。」

魔界の地平線から伸び続けてきたかのような黒い森の奥深く、立ち込める水しぶきの中から幾つもの眼光が、廃バス停の2人を睨み付けている。
血に飢えたように喉を唸らせ、唾液を滴らせている音、何体もの狼たちがその正体で、眼は真っ赤に燃え上がる。
喉に深く喰らい付く為の鋭利な牙を剥き出しにし、歯茎からはどす黒い液が唾液と混ざって溢れ出す。
額には出自不明の謎の紋章が肉に刻まれているそれらは、魔物の使役する獣である事の証拠。
四方八方からバス停を震え上がらせる程に何度も吠え、大雨の音すらかき消してしまうのではないかと思われた。

「それで、仕事がデキる方なのか、デキない方なのか、どうなんだ。」

 ―― 今度こそ銀色に輝く古めかしいぼろぼろのリボルバー拳銃を、女はホルスターから抜いた。

----------------------------------------------------------------------------------------------------

少女に戦う意思があるならば、狼たちはそれを察知してたちまち2人に襲い掛かるだろう。
何体もの狼が一斉に駆け出し、詰め寄り、飛び掛かり、押し倒して、もしくは直接喉に食らい付こうとし、引き千切ろうとするだろう。
雨に濡れた酷い獣の臭いを撒き散らしながら、腹を空かせた獰猛な魔獣のように。

戦う意思がなければ、今はまだ狼たちは様子を見続けるだろう。


118 : 【覚醒狂獣】 :2017/06/17(土) 23:00:37 QBkVbgPE
梅雨時期だというのに、嫌らしいほど日が照っていた。
五月晴れは美しいなんて言われるが、ここまで続くと萎えてしまうというものだ。
どちらかというえば、雨特有のじめじめした方が好きだと言うのに、と少女は思った。


「それにしても……、骨がない奴らっすね」

さて、漆色の髪をポニーテールに纏め、セーラー服を羽織る少女は路地裏に居た。
正確に言えば、連れ込まれたというべきか。地面に倒れているのは男が数人。
そのどれもが大腿部の付け根を正確に斬られていた。

「あぁっと、レポート書かなきゃっすね」

刃へと変質した右腕――血塗れのそれを元の腕に戻す。
そして鞄からノートを一冊取り出すと何かを記し始め、十数秒後にはしたため終えたのかそれを閉じた。
鉄の匂いがまだ鼻孔をくすぐる中、見つかってはならぬと表路地に出てみるが。

「あっづいっすねえ……」

暑い。とにかく暑い。しつこいぐらいの湿気を帯びた暑さがじっとりと絡みついてくる。
轟々と照る太陽を睨むようにしながら、少女は誰も座っていないベンチに腰を下ろした。
――その右腕に染み付いた、腥い血の匂いとともに。


119 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/06/17(土) 23:20:29 qO9vjRhk
>>116
レトラはそこまで悪いことはしていない、はずだ。
だがこれは後々まで見据えた予防なのだ。諦めるべし。

強がりは聞かなかったことにして、笑顔でレトラに着いてゆく。
機敏に人混みをかき分け、優しい瞳は常にレトラを捉えて離さない。
そして、足を止めたレトラと同じものを見るが、

「へぇ……こんなのをやるんだ………
見るよりやってみた方が分かるってことなら、やってみようかなー?」

レトラの意に反して、興味深げな眼を向けていた。
そして、誘いに乗ってしまった。

―――浅山万里江は“現実”で死を見慣れている。時に作り出し、利用する。

可愛げのある財布から小銭を取り出し、やる気満々である。
簡単な操作方法さえ教えてもらえれば、いつでもやれるようだ。


(銃か……ナイフなら、心得があったんですけどね)

衣服に隠した刃の存在を思い起こし、人を殺せる装置の模倣に冷たい視線を一瞬向ける。
だが、ここがどこかを思い返してすぐに“『学園』の”万里江に戻った。


//遅れて申し訳ありません!


120 : 【栄華之夢】 :2017/06/17(土) 23:21:31 QjSQKz/c
>>118

「……雨は植物にとって重要ってよくあの女が言ってた気がするわね、まあ実際雨が降ってほしいけど……」

そう呟く和服の少女。
なんで公園に現れたかと言えばただの暇つぶし。
まあ気まぐれである。

「……あら」

ふと目をやると面白そうな少女が。
しかもうっすらと鉄の匂い。
彼女の思考回路は面白そうだと告げていた。

//よろしくお願いします


121 : 【覚醒狂獣】 :2017/06/17(土) 23:37:17 QBkVbgPE
>>120

鞄に手を突っ込んで水筒を取り出し、中身の麦茶を口に含む。
こんな糞暑い中でも冷たさを与えてくれる麦茶は素晴らしいものだ。


ふと何者かの目線を感じて辺りを見渡せば、和装の少女が一人。
このあたりでは和服を着る人物は珍しく、見たこともない格好に興味を唆られる。
暫し着物の紋様を眺めた後、立ち上がって彼女の方へ近づいていく。


「……それ、私服っすか?」

彼女への第一声は、それだった。


122 : 【蒼雷魔法】 :2017/06/17(土) 23:40:22 4G4G0yec
>>119
……あれ?
どこか間の抜けた呟きは、絶えることのない喧騒に掻き消される。
彼女は意外にも興味深げにゲームを眺め、特に抵抗もなく誘いに乗ってくる。

「へ……へえ。まあ、いいんじゃない」

誘いをかけ建前、断るわけにもいかない。予想外の展開、というか
普通に二人で遊ぶことになってしまった。
部屋の冷房はよく利いていたにも関わらず、額から汗が滲み始める。

(こうなったらもう、自棄だな)

それから簡単な操作方法を説明すると、現実からゲームのほうへと向き直る。
派手な演出と共にゲームが開始。廃病院を舞台とした銃撃戦が幕を開ける。――。

ゲームは好きだった。頻繁に遊ぶほどではないが、たまにやる分にはちょうどいい息抜き。
ただしその腕前は惨憺たるものであり、
余裕を見せていたわりにはあえなくゲームオーバーの憂き目に遭うのは眼に見えている。
特に反射神経を求められるような類のものは、大の苦手で――まあ、下手の横好きというやつだろうか。


123 : 【栄華之夢】 :2017/06/17(土) 23:46:59 QjSQKz/c
>>121

どうやらこっちに気が付いたようだ。
そして
――それ、私服っすか?
と話しかけてきた。

「ええ、それにしても貴女――」

そこまで言うと適当に柿の種とアロエをすぐさま出せるよう用意する。
腕から鉄の匂いを出す人間なんて警戒対象でしかないだろう。

「何か匂うわ、なんというか金属みたいな――」

ややぼかしつつ質問する。


124 : 【覚醒狂獣】 :2017/06/17(土) 23:55:10 QBkVbgPE
>>123

――金属みたいな。彼女がそう言った途端、表情からあざとさが抜ける。
彼女は恐らく“鼻でわかる”のだろう。つまり、嗅ぎ慣れているということだ。


「さあ、どうっすかねえ。私にも分かんないっす」

乾いた笑いで場を濁そうとするが、そうは行かないだろう。
やれやれ、『研究所』からの指示で戦闘データを取るようには言われているが。
彼女が手慣れであるのなら、此方がやりにくいのは必至だろう。

「流石に金属の匂いは無いんじゃないっすか?」

と一言付け加えておく。念には念を入れて。
――だが、腕はあくまで変質させたものであり、血痕はこびりついている。
二の腕の下辺り。そこに赤黒い跡がベッタリとくっついているだろう。


125 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/06/18(日) 00:19:23 cuQNEvMI
>>122
二人で普通にゲームを遊ぶ。
残念ながらこの女教師はその意味を深く考えるようなことはしなかった。

だがきっと、本当に楽しそうに見えるだろう。コントローラーを握って、簡単な説明を受ける万里江は。

ゲームに関心を持ったことはない。彼女をが興味を示したのはいつだって書の世界だったのだから。
――あの時までは。

そして、ゲームスタート。仮想の廃病院を舞台に銃撃戦が始まる。
万里江の動きをよく見ていると、目につきにくい場所をよく見つけて活用していることが分かるだろう。
隠れて撃つのもやりすごすのも、逆に隠れた敵を撃つのもお手の物といったところだ。
だが、やはり初心者。ゲームの癖みたいなものはつかめておらず動きに無駄が見られた。

黒いコートを纏い、模造品とは言え銃を構える万里江は不思議と様になっているようにもみえるのかもしれない。

何よりも、表情だ。笑みのない、真剣な表情がそれらしさを引き出していた。


126 : 【栄華之夢】 :2017/06/18(日) 00:23:25 YBXPiSFQ
>>124

表情が変わった。
それを見逃すわけはない。

「……訂正するわ、金属ではなくて鉄の匂いとでも言うべきかしら?」

言い切る。
あくまで本質が見たい。

だが今のままでは相手に得がない。
なら相手も得する情報をくれてやればいい。

「安心して頂戴、口外する気はないわ」

そう言う。
果たして効果はいかほどに――


127 : 【覚醒狂獣】 :2017/06/18(日) 00:31:07 XrTtt5dU
>>126

「へっ、口外するも何もないっすよ」

その刹那、右腕は刃へと変質する。
刃の表面には赤黒いものが付着しており、それが血であるということは言わずともわかるだろう。
あくまで、この段階では脅しにすぎない。何かやらかしたら斬るぞ、という程度の。


「アンタ、何が目的なんっすか。血の臭いを嗅ぎつけているのはわかったっすけど」

今しがた傷害事件を起こしてきたような輩に話しかけるのは可笑しい。
さらに、彼女は鉄の臭いが血に由来していることを“恐らく”理解している。
彼女は何のために此方へ話しかけているのだろうか。それが、引っかかった。


128 : 【栄華之夢】 :2017/06/18(日) 00:41:09 YBXPiSFQ
>>127

「目的……ねえ」

そう言いつつ柿の種を取り出しパンツ一丁の柿男を出す。

「ないと言えばないけども……まあ言ってみれば暇つぶしかしら?」

自分の思ったことを言う。
酷い戯れである。


129 : 【覚醒狂獣】 :2017/06/18(日) 00:54:51 XrTtt5dU
>>128

「暇つぶしっすか」

乾いた調子で彼女へと言葉を返す。
やれ、随分と嘗められたものだ。暇つぶし“ついで”にされるとは。
左手でポケットを弄り、プラスチック製のケースを取り出すと中身の薬剤を取り出した。


「――殺さないように努力はするっす」

左手に握り込んだ錠剤を口の中に放り込み、飲み込む。
――数瞬の後、頭へと冷たい衝撃が奔る。同時に身体は急速に熱を持っていく。
まるで自分を“最適化”するようであると少女はその感覚を形容するが――。


「行くぞ」

目つきは鋭くなり、先程までの柔らかくあどけない表情は吹き飛んだ。
顔つきは真剣そのものであり、目の前の標的を“殺す”眼をしている。
異常なまでに軽く感じられる自身の身体を上手く制御しながら、地面を蹴る。

手始めに、妙な格好をした男を斬りつけることにした。
眼前数メートル、それまで低く保っていた身体をバネのように跳ねさせて男へ飛びかかる。
飛びかかる勢いを持って、正中線を――心臓を――狙って右腕を突き出す。


130 : 【栄華之夢】 :2017/06/18(日) 01:25:14 YBXPiSFQ
>>129

ガギン。
何かしらが刺さったであろう音を気にせず一言。

「……柿は黒檀ほどではないにしても硬いし当然ね」

そう言ってる間にテッポウユリの種を出す。
すると白褌に蝶ネクタイをした頭がテッポウユリの男が出現する。
凄まじいが気にしてはいけない。

「柿男は右腕を抑えるように、ユリ男はあの女に射撃を」

簡単な命令。
さてどうなるやら。


131 : 【覚醒狂獣】 :2017/06/18(日) 01:48:28 XrTtt5dU
>>130

ガキリ、と金属が“弾かれた”音が響く。
摂取した薬物がまだ少ないからか、判断力はまだあるようだ。
右腕を掴まれそうになったが、男の胴を蹴って身体を後ろに持っていくことで避ける。


「本体を叩くしかないってか」

灰色の眼をした少女は“ユリ男”の銃撃を避けつつ左ポケットからケースを取り出す。
再び錠剤を取り出すと、ケースを地面に放り投げ。そして錠剤を飲み込んだ。

――う、う、と嗚咽のような声が漏れ、身体は不気味に揺れる。
再び訪れる冷たい衝撃――先ほどとは比べ物にならないほどの――と身体の熱。
う、あ、あ、と呻くような声を漏らすと、今度は気力を失ったような表情になる。


ゆらり、と身体が揺れた瞬間――、地面を蹴って少女へと走り寄る。
技術がなくなることにと引き換えに、恐ろしいほどの身体能力を手に入れる。
それがこの薬物の効果である。少女へ近づくことが叶えば、眼前で直上に飛び叩き斬るように刃を振り下ろす。


132 : 【栄華之夢】 :2017/06/18(日) 02:01:47 YBXPiSFQ
>>131

「っ!柿男!」

僅かに動きつつ柿男を盾にする。
柿男の頭部が真っ二つになり消える。
そしてそこには柿の種が。

「困ったわね……こんな経験初めてなのだけれど……」

そう言いつつ再度柿男を出現させる。
テッポウユリも一体追加し反撃体制に出た――


133 : 【覚醒狂獣】 :2017/06/18(日) 02:45:09 XrTtt5dU
>>132

右腕と左脇腹に被弾する。まだ理性はあるためか、一瞬足が止まりかける。
だが、痛覚はあまり感じないのかそのまま走り抜け、一体のテッポウユリの方へ走る。
近づくことが出来たのなら、胴体を叩き割ってやろうと横へ一閃。

そしてもう一体のテッポウユリの方へと駆け寄り、またも直上へ。
今度は飛び上がる際に両足を両腕より高くし、脚を振り下ろす勢いで頭を“潰す”。
数で勝っている相手を叩くのであれば、遠隔武器を用いる方から叩いたほうが良いだろう。


「ねえ、まだやる気なの」

気だるそうな顔で、だが鋭い目線をして。
今であればまだ止められる。段階で言えばまだ五つのうち二つ目だ。
これ以上は、理性が働かない――完全に殺すまで止まらなくなる――可能性がある。


134 : 【星征魔導】 :2017/06/18(日) 09:13:17 5ShKoPF6
迸る魔力の奔流が、星屑の如く大気に散る。
澱んだ闇夜を照らし出すのは星々の魔法、その渦中に存在するのは三角帽子を被り不敵な笑みを浮かべる一人の少女。
学園の制服に身を包んだ彼女の名前はミーティア・エルフィス───つい先日転入してきたばかりの問題児である。


「……────さて、一応確認しておくが先に実力行使に踏み切ったのは君達の方に違いない訳であって」

「なので私が身を守る為に魔法を使うのは当然の摂理で、襲われたせいでちょっとばかし加減を失敗してしまうのも仕方がないと────そう思うだろ?思うよね?」

和かに語る言葉は、同じく学園の制服姿の男子数名に向けたもの。まあ、その全員が所謂『不良』に分類される面子であり、何も意識を失っているのだが。
喧嘩の発端は何方だったろうか、恐らく何方にも原因が在るのだろうが。何せ不良は不良で兎も角、この少女もこの少女で火に油を注ぐのが得意なのだから。
キッカケは肩がぶつかったとか目があったとか、そんな些細なものだったのだろう。それが口論に発展し、そして不良側が先に暴力に訴えて。

正当防衛が成立したその瞬間────この少女は嬉々として魔法を解き放った。
その結果は道路を抉るように造られたクレーターと、その周囲で伸びている不良達を見れば、言わずとも理解できるだろう。


「うん…………─────よし、スッキリした!!」


「全く、人のことをコスプレ女だとか馬鹿にした報いだ。何せこの私は仮装ではなく正真正銘の魔女なのだから、ふふんっ」
「まあ、直撃させずに意識を奪う程度に留めておいただけ有難いと思うといい。その内目が覚めた時には、喧嘩を売る相手を間違えたことを理解するだろう」


そうして"自称"魔女は上機嫌に鼻歌を歌いながら、踵を返して夜道を歩き出す。
人々は寝静まった夜の街、この時間が彼女は好きだった。まるで自分一人だけがこの世界に存在しているような気がして、とても心地良いのだから。
然し、其の魔法による轟音は、其れを好まぬ者の安眠を妨げたかも知れない。その魔法が齎した魔力の奔流は、其れを知覚できる者を招くかも知れない。
或いは其れ等よりも危険な何か。不穏の種を自ら蒔いていることに関しては一切自覚しないまま────少女は闇夜の中を我が物顔で進んでいく。


//置き進行になると思いますが、ゆったり絡み街。日常でも、戦闘でも


135 : 【頽廃魔女】 :2017/06/18(日) 11:22:27 RwfXZAfg
>>134

「――まったくもう」

その時までに、足音はなかった。けれども、現にその声と身体は、そのクレーターの縁にある。

「君らも“チカラ”を持ってるんじゃないのかい? もう少し気張らないとだめだろう」

彼女の眼下には先程まで伸びていた不良集団が、手と膝をついて居直っている。

「ゲームとかやらないのかい? 魔法使い相手の戦闘の基本は、術式発動前のラグを狙うのさ」

彼女の助言に合わせ、不良たちは口々に同意と尊敬を表す。

「今回は傷塞ぎと気付けだけしてあげたけど、まだ痛いだろうから今晩はゆっくりおやすみ」

人差し指をくるくると回す。その軌跡には翡翠の燐光がゆらめく。
コスプレでないと憤慨する少女が、もし本当に魔女であるならすぐに気づくだろう。
翡翠の色は癒しの魔力。光の強さは、その純度を表す、と。

「今度は相手を選びなよ〜」

不良たちは素直に応答し、家路に就く。
その背を満足そうに見送った後、樫の杖を支えにどっこいしょと立ち上がる。

――もし少女が夜の街に繰り出す前であれば、その方へと振り返りこう言うだろう。

「今晩は、お嬢さん。魔法、楽しいかい?」

服装には現れねど、その蠱惑的な笑みは、紛う方なき“魔女”である。


//展開次第で日常or戦闘どちらでもおけです。お付き合いいただければ


136 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/18(日) 11:24:18 4ulK6qKw
>>117

電灯が砕けるや否や、今度こそコートに覆われた得物を携えて腰を上げる。
夜闇に浮かぶ眼光を一目見て―――否、視認するよりも先に『別の感覚』で察知していた。
五感なんていう明瞭ではなく、然し第六感と称すには不明瞭ではない。
猛獣特有の鋭利な爪と牙で破壊し蹂躙し、喰い散らかそうという獣性に酷似した極めて単純な殺意。
その肌を灼くようなピリつく殺気が、逆に思考をクリアに漱ぎ流していく。


「大丈夫。デキないようなら、ずっと昔に死んでる……――――――けど、ちょっと調子は悪い……かな」

――――嗚呼、本当にタイミングの悪さを呪わんばかりの悪状況だった。
長距離長時間歩行と高湿気により奪われた体力は、未だ完全に回復しきっていない。
全身を怠さが蝕み、薄らとながらも鮮明に残る四肢の悲鳴(いたみ)が絶え間なく訴え掛けてくる。

それのみでも宜しくない状況であるのに、それを最悪にしているのが地形である。
アスファルトなんて気の利いたモノも敷かれてない土壌は、雨水により一面の泥と化している。
滑る泥濘は足場としては不安定で、重心を確立できず、普段通りの足捌きを生かしきれない。
つまり満足でない余力を補うが為の『業』ですら、その最大限は発揮できない。

「――――けど逃げるのも無理だし、それに仕事だから。でも邪魔にはならないと思う、から安心して……ね」

だが体調も環境も、敵を眼前にして背を見せる動機にはならない。
そして金髪の女とは、形式的には共闘であれ、協力する訳ではない―――きっと彼方もそのつもりだろうし、少なくとも自分はそうだった。
もし狼遣いが標的と別人だったなら、女を置いて一人でさっさと離脱すればいい。

腹を決めると一先ず首と肩を回旋させて、息を吐き、若干の脱力状態に移行する。
その一連の動作を臨戦態勢とでも判断したのか、狼の群れが一斉に二人のいる中心部へと駆け寄る。
一秒もない合間、一切として回避する気配を醸さない少女の方へ、最前の一頭の牙が突き刺さろうかという――――刹那。


黒髪紅眼の始末屋は丸めていたコートを翻し、そして彼女の姿は――――――――地上より『消失』した。



「朱刀流―――――――」


コートのみを残して跳躍した少女は、空中にて露にした二振りの小太刀をベルトに装着していたホルスターに挿し込み、バス停の屋根に降り立つ。
天井の上に、ではなく細い側面部に片足を着けると、着けた軸足側の足で旋回を加えて蹴り込むと同時に、鞘から二振りを抜刀する。
そして錐揉み猛旋回をしながら狼達の集う地上へと落下していき、着地地点にいる獲物を二刀によって幾度も斬り払っていく。





「―――――――――――――――――――――〝侘助〟」



身も蓋もない表現をすると、所謂エクシア斬りであった。


137 : 【蒼雷魔法】 :2017/06/18(日) 12:39:33 oeJpmeRc
>>125
ゲームなんかしない質の人間だとばかり思っていたけれど、説明を受ける彼女は思いのほか楽しげだ。
こんなはずじゃなかったんだけどなあ、とぼやきながら、――銃口を画面へと向ける。

画は恐ろしい廃病院であるが、開始直後は難易度も抑えられてはいる。
それでも少年にとってはいっぱいいっぱいではあったが、続けていれば多少の余裕も出てくる。
細かい背景の描写、それから他のプレイヤーの動きを、意識できるくらいには。

(……これは、本当に)

いままで少年は浅山 万里江という人間を、教師という面でしか知らなかった。――そして、いま
新たに見出した彼女の貌は、ちょっと意外なものだったと言えよう。
初めてのプレイとあって覚束ないところもあるものの、決して下手なわけではない。

空間の使い方は巧かったし、見分けづらい敵にも動揺しない。”慣れている”。脳裏にそんな感想が芽生える。
ゲームに、ではない。では、――何に?
思わず画面から視線を外して隣をみやる。そこにいるのは銃を構えて、黒いコートを纏った……
笑っているのでければ慌ててもおらず、悔しがるわけでもない、真剣な眼差しが画面に向けられている。
どんなゾンビが現れても起りえなかった震えが、――不意に少年の背筋を駆け抜ける。

「っ、しまっ、――」

目を離したすきに少年の操るキャラクターがゾンビの海に沈み、グロテスクな演出と共に血痕が散る。
ゲームオーバー。赤字ででかでかと表示されていたそれを見やり、肩を落とす。
はー、とため息をついて、銃を置いた。
初心者を差し置いて死んでしまったことも、その原因がよそ見であることも何だかばつがわるい。
彼女はそのことに気が付いているだろうか……? 瞬きを数回、ほぐした繰り返したのち、また隣を伺う。

/次のお返しは夕方か夜になるかと思います……!


138 : 【星征魔導】 :2017/06/18(日) 14:27:36 P5L6zoes
>>135


「うん───勿論愉しいさ。星の魔法、則ち私の魔法、使っていて悪い心地がする筈もない」

「…………────────で、誰だい君?」

ピタリと立ち止まり、首を傾けて視線を向けたならば、少女は不遜な笑みと共に言葉を送る。
同じ魔法使いであることは一目瞭然であり、態々確認するまでもなく、抑もそんなことは彼女にとって瑣末な問題に過ぎないのだから。


「ああ、私から名乗るとしよう。星の魔女ことミーティア・エルフィス」

「君がどんな魔術師でどんな思惑があるのか知らないし興味もないけれど────せめて私の名前だけでも覚えておくといい」


少女が纏うは星の魔力、夜天に坐す那由多の極光。
女の魔術師を魔女と形容するならば、少なくともこの少女はその条件を満たしている。其れも極めて限定的かつ極めて高位の存在として。
彼女の魔法は星辰の魔法、唯それだけを追及し続け、そして我がものとしたのがミーティアの魔術。其れが彼女の総てであり、最大の力でもあり。

だからこそ彼女は不遜な態度を崩さないだろう。己が魔法への絶対の自信故か────或いは。
特に根拠もないのだけれども、ただ単に無駄に自信で溢れ返っているだけなのかも知れないけれども。馬鹿なので。


「……────で、何の用だい? 生憎と私は忙しいんで手早く済まして欲しいけれども」

「そう────────今宵も今宵とて、何か愉しいものを探すのにとても忙しいのでね、ふふんっ」

要は暇潰しの途中であった。特に予定はないらしい。
そんな調子で誇らし気に不敵な笑みを浮かべる魔女娘、然し彼女が纏う魔力だけは間違いなく本物であり。



//了解しました。よろしくお願いします


139 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/06/18(日) 15:16:17 cuQNEvMI
>>137
他に意識を取られず、画面に集中をする万里江。
だが、視線を受けていることは何となく感じ取れた。

(見られて……もしかして、やり過ぎたかしら?)

もしかしたら、想像以上だったがために何か余計なことまで考えてるのかもしれない。
そうだとしたら、あまりよくはない。“生徒”は“生徒”でいい。それ以外の関係への変化は、求めていない。

「あっ……」

レトラが脱落したすぐ後、万里江のキャラもゾンビの海へと沈んだ。
単純なミスだ。しかし、作ったミスだ。

「あはは……難しいんですね、これ」

ちょうどこちらを見ていたレトラに笑いかける。
もういつもの先生だ。それ以外の何者でもない。

//遅れました!お返しします


140 : 【栄華之夢】 :2017/06/18(日) 16:10:02 YBXPiSFQ
>>133

「……そうね、やめときましょ」

元の種に戻ったテッポウユリに目をやりそう言うと方向を変え公園の出口の方向を向く。
が、柿の種をもう一つ出し守らせる。

警戒は怠らないらしい。

「……面白かったわ」

そう言い立ち去ろうとする。
柿男二体をボディーガードのようにしつつ。


141 : 【龍神変化】 :2017/06/18(日) 16:28:41 HRbwgPKk
>>136

襲い掛かる狼の群れ目掛けて銃口を差し向け、引き金を絞る。暗黒のキャンパスに白と赤のコントラストが炸裂し、銃弾は空気を喰らいながら突き進み、獣の頭蓋骨を叩き割る。
続けて2匹目、3匹目、その頃には既に至近距離にまで近づかれている為、頬に血飛沫が飛び散る。長い舌で舐め取り、目を細めた。
首に食らい付こうと飛び掛かる狼の首を、逆に掴み返し、自分の目線まで持ち上げ、顎から頭上へ弾丸で貫き、肉と骨の破片が飛んで泥と混じり合う。
鼓膜を引っ掻き続ける狼たちの吠え声、ドチャドチャという走る音、発砲音、雨の音、そして、刃が空気を切り裂く音。

足元に群がる狼の顎を蹴り飛ばし、少女の方を一瞥する。成程、武器を振るう事に良く慣れていると、分かった。
雨に濡れた刃から水飛沫が散る光景は、傍から見るにとてもいい眺めだと。
効率のいい仕事というのは、見ているだけでもいい気分になれる。狼の頭を掴んで、バス停の壁に打ち付けながら、感心した。

とにかく狼の数が多い。野生の狼というよりかは、何処か違う場所から"呼ばれた"ものであるかのように思われた。
物量で敵の処理能力を追い越そうという魂胆が明白で、隙を見せようものならば首にでも脇腹にでも足にでも、食らい付こうとするだろう。



狼が来る。銃弾で頭蓋骨を割る。両腕で毛を掴んで壁に叩き付ける。ナイフを取り出し、首に突き刺す。血飛沫が、迸る。それが繰り返される。



--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

断末魔。勢いの弱まった雨の音。6発目の発砲音。そして、バス停の周りには、大量の狼の死骸が散乱していた。
戦いは数分間にも及んだものの、そうしている間に雨は小降りに変わり、薄い雨雲の切れ目から青白い月明りが覗く。
バス停に失われた電灯の明かりの代わりに、2人を照らすスポットライトのように、照っている。

弾丸を腰のポーチから片手で6発取り出し、疲れたように両肩で息をしながら、とリボルバー拳銃の弾倉に、一発一発、親指で押し込めていく。
少女も察知しているかもしれないが、周囲にはもう他の誰の気配もなく、特に雨の音が小さくなった今ではそれが明白とわかるだろう。
狼たちを放ったものは、この2人を同時に相手にするのは分が悪いと察した。
それを追いかける手もあったかもしれないが、それは酷く効率が悪く面倒だと女は思って、今夜はここまでであると、考えていた。

「ハァ……ハァ……。」

血と雨と泥に塗れた女は、バス停の壁に背中から寄りかかりながら、弾丸を込めていくが、そのうちの一発を地面に落としてしまう。
音もたてず跳ね返りもせず土に半分ほど埋まった45口径弾は、血だまりの中に沈んでいった。

少女の方はどうなったかと、視線を向ける ―― 。


142 : 【頽廃魔女】 :2017/06/18(日) 16:51:41 RwfXZAfg
>>138

なんだろうか、この懐かしい感じ。それと同時に沸き起こる妙な恥ずかしさ。
『なんだろうか』とついついはぐらかしたが、この微妙な感情の源は分かっている。
ああ、あたしにもこんなころ、あったね、と。

「……」

名乗りを邪魔すると怒るだろうし、神妙な面持ちで聞いておく。ゲホンゲホン年前のあたしなら、きっと怒るから。
このぐらいの歳だと、思春期の真っ只中だろうか。そうだろうね、その時にそんな力を得たら、そうなっちゃうよね。
あー、いやでもそれは、うーん……。

額に拳を当て、頭痛でも催したかのように表情の芳しくない女性。
勘違いして欲しくないのは、相手の力を認めていないという訳ではないこと。さっきの“あれ”を生成する魔力量と、それを制御するセンスは卓越している。星の魔法に傾倒していなかったとしても、その力は第一線で十二分に通用する。
ただ、その慢心には、いずれ煮え湯を飲まされることになる。魔法使い、それもウィッチとくれば応援しない訳にはいかない。だからこそ。

「あ、とと……。すまんね、ミーティアさん。あたしはアリス」

頭を悩ましていて、相手の問いかけから間が空いてしまった。
先人として灸を据えるのもいいが、彼女の楽しみを奪うのは忍びない。
ここは、相手の土俵に乗りつつ、いなそうか。

「そうだね、敢えて名乗るとするならば――――万象の魔女、とでも言おうか」

かつん、と乾いた音が響く。樫の杖を突いたのだ。
すると、彼女の周囲は光に包まれる。まるで、先程のミーティアの放った星の瞬きが回帰したかのように。
『迸る魔力の奔流が、星屑の如く大気に散る』。否、散っていった魔力の残滓が、その場に密集する。
――残滓が残っているならば、その余剰分が利用できる。その組成だって理解できる。ならば、再構成はそう難しいものじゃあないさね。

「用? 用かい? そうだねえ」

人差し指を顎に当て、頭を傾げて悩む素振り。
その背後からゆっくりと上昇するは、煌々と星の光をばら撒く球体。

「あなたの“愉しみ”に、なりにきた、かね?」


143 : 【星征魔導】 :2017/06/18(日) 17:41:58 JA4ujsic
>>142


────むすっと、少女は不機嫌そうな表情を浮かべた。

その理由は自らの魔力の残滓を勝手に利用されたからに他ならず、真紅の瞳は嫌な奴を見るかのようにじっとりとした光を湛えていた。
そりゃあ、星の魔法は彼女にとってのアイデンティティなのだから、奪うような真似を見せつけられた以上当然の反応なのだろうが。


「……───うん、それは余り愉しくないね」

次の瞬間、少女の呟きと同時に一筋の光弾が流星の如く放たれる。
其れは万象の魔女が纏いつつある魔力の奔流の一部を貫き、その衝撃によって霧散させることで魔力の収束を阻害するだろう。
その魔力は私のだ、だから勝手に使うなよ────そんな少女の意志をひしひしと感じさせながら。


「じゃあ、万象の魔女さん。一体どんな愉しいことを見せてくれるんだい?」

「うん、正直愉しみだ。愉しみには違いないけど─────場合によっては容赦しないよ?」

その背後に煌々と輝く魔法陣を展開しながら、何時でも魔法を撃つ準備はできていると暗に告げる。
自称星の魔女は少しばかり機嫌が悪いようだった。しかし同時に其の瞳が期待に輝いていることもまた事実だった。
自らの愉しみを最優先に────それが彼女の現在の指針である。その直感が、此れは中々愉しそうだと告げていたから。


//すいません、次の返事は夜以降になります…


144 : 【頽廃魔女】 :2017/06/18(日) 20:14:24 RwfXZAfg
>>143

魔法、魔術という職能を司る者達は、総じてプライドが高い。
自身の価値を、その全てを魔の力に委ねているからだ。
だから態々模倣するような真似を見せた。魔女の自負をぐらつかせる行為として。

「ごめんあそばせ」

思い通りに、興味を惹くことができたらしい。
肥大化していた光球は、光の球に貫かれ、弾け飛ぶ。辺りには流星群のように、星の光が散らばっていく。
星のシャワーの中で目を細める翡翠の魔女は、赤目の魔女の問いかけ、もとい脅し文句に答える。

「短気は損気だよ、お嬢さん」

ふう、とため息をつく。そして、みっともなくその場に座り込む。「どっこいしょ」という一言を添えながら。
夜空を仰ぐ。見上げてごらん、夜の星を。そんな一節を言葉の端々に織り交ぜながら。

「さっき彼らを嗜めた通り、荒っぽいのは趣味じゃないさね。ま、お望みとあらばできなくもないけども」

「一番好きなのはおしゃべりだねえ。若い娘と話ができると、そりゃあ嬉しいもんでね」

「でもまあ、もっと刺激的なものがいいと言うなら」

鼻歌を止め、片目を閉じて、顔を向ける。

「あなたの願いをひとつ叶えることができる、なんてのはどうだい」


//遅ればせながら。了解です


145 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/18(日) 20:36:23 4ulK6qKw
>>141

自らが生じ上げた回旋により、自らが地へと落ちていく速度を殺し、砂埃を上げながら二足で着陸する。
エクシア斬りで屠れたのは、甘めに見積もっても精々六匹か七匹といった程度。
休息を取る暇なんてない。未だに狼達は飢餓に―――或いは、主の命に従い、勢いの衰える様子もないのだから。

「―――――ッ!」

背後から襲い来る一頭を、咄嗟に上体を捩らせて躱しながら、その喉笛を逆手に持ち替えた左手の白刃で引き裂く。
いつも通りに低い躍動を繰り返し、翻弄を試みる―――が、やはり泥濘んでいて意の通りに跳べない。
一瞬だけ足が止まった際に、擦れ違い様で脇腹と腿を抉られた。なので跳躍を止め、しかし足は止めなかった。

段々と要領を掴めてきた。要は不必要に疾駆も跳躍もせず、同一箇所に留まっていればいい。
此方から接近せずとも勝手に近付いてくる獣達の刃をその都度その都度で避け、己が刃を突き立てていく。
喉元を斬り裂いた。右目から脳を抉り貫いた。顎を上下に斬り断った。腸を引き摺り晒した。時には刃が間に合わなかったので、撓る蹴撃で頭蓋を叩き潰した。
そして斬った。さらに斬った。また斬った。幾度も斬った。数え切れぬほど斬った。元から数えてなんていなかった。

最中で、後方から右腕に喰らい付かれる。当然の如く激痛が駆け抜けたが、痛みだと認識して怯む隙すら見せられなかった。
ローリングソバットで肋骨を内臓ごと粉砕し、蹴りによる振り向き様に合わせて振り払い、頸を斬り飛ばした。



「……――――――――――――――――――――はぁ……はぁ…………これで、全部……?」

猫背気味になり肩身で息をしながら、得物を片方だけ鞘に納める。
もう片方は手に持ったまま、息も絶え絶えの状態でバス停の方に歩いていき、自分で先程投げ棄てて泥塗れになったコートを拾い上げる。
不慣れな手付きでコートの袖を切り離し、どうにも血の止まらない右上腕の傷口に巻きつける。
消毒液等の救急用セットも所有しておらず、だいぶ雑な応急処置であるが、放置よりはマシだろう―――――多分。


「はぁ、はぁ……明らかに食欲が原因じゃなかった。もじッ……もしも、首魁が無差別殺戮じゃなくて僕達を僕達と認識してたなら…………」
「きっと、そう遠くない、場所に…………いる。近くに人里が、あったら体力補給されて面倒…………、早めに叩いた方が、いいと……思う…………」

東方に棲息する種ではあるが、この手のモノノ怪―――人外の類を斬った経験ならあった。
人血を啜り人肉を貪り食糧とするだけならば、まだ構わない。その行為をトリガーに、異能を発動する可能性があるのが問題だった。
もっとも少女としては敵の正体に関しては知る由もなく、人外であるか否かですら確証を得ていない。
だから金髪の女の見解を問うように、一先ず彼女を見据えるだけして、まだ追跡する挙動は取ろうとはしない。


146 : 【龍神変化】 :2017/06/18(日) 21:44:21 HRbwgPKk
>>145

傷ついた剣士と同じように、ぎらついた歯の隙間から荒い息を繰り返すガンマンの左前腕にも牙が突き刺さった後があった。
処理が追い付かず不意に肉薄してきた獣に対して、左腕を自ら差し出して食いつかせた時の傷。お返しに弾丸をお見舞いした。
雨と混ざってしとしとと指先から血液が垂れ落ちるが、本質的に人間離れした彼女にとってはこれくらいの失血は許容範囲内だった。
激痛にも慣れ、数分も経った今となってはわざわざ表情に出す程でもない。

少女の方を視た時、同様に傷を負っている事に気が付いた。直ぐに手当てをする手慣れた様子を見て、もう一度感心した。表情には、出さないが。
親玉を追おうと言う提案を聞いて、女は少しの間だけ考え込む。視線の先を相手から外さず、目を合わせながら。
近くにいるだろうという事は、わかっている。次にいつ接近できるかは、わからない事も、理解している。
敵の首級と天秤に掛かっているのは、時間と体力というリスク。

「……人里ね。」

数キロ離れた所に小さな集落がある。その吸血鬼の移動手段が何であるかは分からないが、あの手の人外が徒歩でも異常な速さで移動するのは知っている。
あれだけ大量の狼を使役していたのだから、補給と休息を必要としているのも、確かに想像できる。
 ―― 吸血鬼が体力を補給するとなれば、それには必ず犠牲者が出る。

見過ごせない。

「そうしよう。だが、夜の森でたった1人を探すには、人数が足りない。
 一番近い集落は北に数キロ。待ち伏せ、運が良ければ、手軽に殺せる。」

煙草も必要だ ―― とも付け加えた。こうなったら銘柄は気にしない。さっさと標的を始末して一服したいところが、待ち伏せとなると時間も掛かりそうだと思った。
その集落に煙草屋があればいいが。

「俺はそうする。お前は?」

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------

女と共に集落を目指すならば、バイクで移動する事になるだろう。2人乗りの経験は少ないが、山道での運転自体には慣れている。
集落は人口30人ほどの小さなコミュニティーで、明かりの灯らない丑三つ時、魔物が現れるにはうってつけの、静寂。
野生動物対策に背の低い木製の壁で囲われており、入り口はたったひとつしかない。待ち伏せにも、うってつけ。
バイクは集落の入り口傍の茂みに停車するだろう。


147 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/18(日) 22:11:26 O8bxVi5g
――雨が降る。
ざぁざぁ音を立てて。絶え間なく音を立てて。

夜の街、人の賑わいから遠く離れた路地裏にて。
雨に打たれ、地を見下ろす和服の女一人。
雨に打たれ、地に蹲る男達、数人。

「…はぁ、折角の雨の日で心安らかに過ごしたかったのに
 何故私はこんな馬鹿共に拘う羽目になってしまったのかなぁ」

壁に凭れ、無駄な時間と労力を嘆くように呟く彼女の名前は薬師寺結月。
彼女は灰色と黒色が入り混じった長髪と、右目の眼帯と和服が特徴的であった。

「――ああ、雨の音は好い。心に染み渡る様で。
 とても落ち着く。…梅雨の季節という事が悔やまれるけれど、ね」

傘も差さず、路地裏の壁に凭れる彼女は暗い空を見上げながら物思いに耽る。
地べたに蹲る男たちの事など歯牙にもかけぬまま。

/置きレス前提になってしまいますが、よろしければ…!


148 : 【蒼雷魔法】 :2017/06/18(日) 22:31:26 oeJpmeRc
>>139
ほどなくしてゲームは終了する。
1クレジットで終わりまで遊ぶなんてそもそも無理な話ではあるが、それにしても早い。
初心者なのだから取り立てておかしいということはないけれど、微かな違和感はあった。

「最初はそんなもん、なんじゃない」

けけけ、と意地の悪い笑い方。教師に対する態度とはとても思えないけれど、
これも信頼の証、そんなふうに思ってもらいたい。それが少年の甘えたスタンスである。
一方で、思考は途切れていない。先ほどのミスは、本当に純粋な失敗だったのだろうか
それとも、早々に退場した自分に配慮して早く終らせてくれたのだろうか。
もし、そうでないのなら――?

「ま、いいか」

小さな声でもって、独白を漏らす。
単純に考えすぎという気もしたし、何かを思いついたからと言ってどうにかなるわけでもない。
先生と生徒。それで充分ではないか、と――奇しくも彼女と同じ結論に達し、

「俺はもう帰ろうかと思うんだけど……先生はどうする、ん、ですか」

いまさらな敬語で問いかける。
さっきの苦い記憶があるからもうクレーンゲームを遊ぶ気にはならないし、
アクションゲームはもうお腹いっぱいだ。他に遊びたいものがあるわけではない。
それよりはもう、家で眠りたい欲求が高まっていた。――ごしごしと瞼を擦り、
あくびを噛み殺しながら、答えを待つ。

/お待たせいたしました……!


149 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/18(日) 22:34:15 4ulK6qKw
>>146

「―――――そうする。ちゃっちゃと終わらせよう」



そうして反抗態度も取らずに、大人しくバイクの後部座席に同乗して、集落まで向かう事になった。
流石に今の状態で生身で追跡するとなると、夜が明けるより先に追い着く自信もないからだ。
なお移動中は、睡魔に襲われて振り落とされそうになったり、運転手の知らない所で危機的状況に遭っていた。


女がバイクを停車させると、まずは可能な範囲で嗅覚を利かせようと努めてみる。
だが降りは比較的収まったとは云え、鼻孔を嫌に刺激してくる鉄錆の臭いは届いては来ない。
予定通りに間に合って先回りに成功したのか、それとも少人数ゆえに血が少ないのかはわからない。
少なくとも何者かが押し入る為に破壊した形跡も、悲鳴や衝撃音も聞こえてはいないが―――――――。

その次に屈み込んで、自分達が踏んでいる地面に指を挿して感触を確かめてみる。
土の粒はバス停付近よりは大きなようで、一面に細かい砂利が敷き詰められていると考えればいいだろう。
やはり十分な雨水を吸い込んでいる所為で、バス停付近と似たような立ち回りをする必要性がある。

「……………………うん。泥よりは、マシかな……」

それでも肝心の体力は、先刻の狼戦で山中以上に消耗されていた。
しかし、そんな細やかな問題で依頼を放棄する気なんて元より更々なかった。
下された依頼を遂行する事が、朱刀流継承者としての責務であり、自分の存在意義であるのだから。
なので取り敢えずは、その場で軽度の準備運動をはじめて、女の指示か、或いは狼を従えし頭目が現れるのを待つことにした。


150 : 【星征魔導】 :2017/06/18(日) 23:04:19 f/pwXW7I
>>144

自負は、己が魔法に対する絶対の自信だけは何が在ろうとも揺るがないだろうが。
但し虚仮にされたと認識すれば───例え相手にその意志がなくとも少女がそう判断したならば、彼女は手加減なしの魔導を解き放つだろう。
先の不良相手の場合も然り、理由とキッカケさえ生じたならば彼女は魔法を行使することに一切の躊躇をしない。
短気──────というよりも直情的なのだ。自らの感情に正直で、何処までも自分本位な行動論理を貫こうとする。

けれども、流石に敵意のない相手にこれ以上魔法をぶっ放そうとする程、狂犬じみた思考という訳でもなく。
じっとりとした視線は変わらず、然し溜息と共に魔法陣を解除したなら、光の残滓が星屑のように散っていく。


「歓談になるとは思えないけれども。私から君に対する心象は最悪だから────とだけ言っておくけど」

「まあ、退屈凌ぎにはなるかな。与太話に付き合いたくはないけどさ」

握った箒に魔法をかける。フワリと浮かび上がった其れにチョコンと腰を降ろせば、視線の位置が相手よりも若干高くなる。
意図してか、無意識のうちか、少女は悪戯っぽく微笑みながら相手の提案を聞いて────屈託のない笑顔でこう返す。


「うわあ…………───胡散臭い。魔女の私が言うのも何だけど超胡散臭い」
「願いの代償になにを持ってくつもりだい?無難に寿命か、魔力か、それとも死後の魂────とりあえず、其の提案を持ち出す奴は大抵ロクデモナイと相場が決まってる」


「…………まあ、そうだね、それじゃあ─────何か、面白い話でもしてよ。ああ、予め言っておくけどお代は踏み倒すから其のつもりで」

澄んだ紅い瞳は、相手へと真っ直ぐに向けられたまま。


151 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/06/18(日) 23:26:13 cuQNEvMI
>>148
先生に向けるには相応しくない笑い。だけどそれを微笑みで返す。
彼はそういう生徒なのだ。分かっている。だから取り立てて気にすることもない。

“先生”ではない部分の、冷めた万里江が彼の中に植わってしまった芽が芽吹かなかったと判断する。
なんとかなった。棲み分けには成功した。
だから、その様に振舞おう。

「レトラくんが帰るなら、私は少し買い物を済ませてから帰りますよ
あと、無理に敬語を使う必要はないですよ」

頑張って敬語を使って、だけど目をこすって欠伸を噛み殺すことで台無しになったのが可愛らしくて益々笑顔になってしまう。

―――もちろん、買い物はするつもりだ。だが、それ以外のこともこの女はきっとやる。やってしまう。


152 : 【龍神変化】 :2017/06/18(日) 23:47:13 HRbwgPKk
>>149

まだ標的が姿を現した気配はなかった。長丁場になるとすると、煙草という物資欠乏は彼女にとって深刻な問題となるだろう。
キーを差したままのバイクに寄りかかりながら、もう一度ジーンズの中に両手を入れて捜索する。すると、手応えあり。
先程は気が付かなかったが、しわだらけの折れた煙草を取り出す。何故入っているのか覚えていないが、些細な事だ。
相手が地面の状態など戦場の環境に気を払っている間、女は慎重な面持ちで指で煙草を伸ばしていく。
そして口にくわえ、ライターを取り出して火を ―― カチ。点かない。

カチ、カチ、カチ。乾いた音が何度も鳴る。

「クソ。」

念の為にマッチを持ち歩いているが、あれだけの大雨を被ったのだから使える訳がない。
残念そうに溜息を吐いた。とはいえ、待ち伏せに火と煙は相性が悪いのも理解している。あえて目を瞑っていたが、こうなっては我慢するしかない。
せめても口寂しさを紛らわす為に、火の付いていない煙草をくわえ続ける。

とても心地の良い風が吹く、ゆるやかな窪地の中に在る集落からは、物音ひとつしなかった。
小降りの雨はしとしとと降り注ぎ、相変わらず女は髪の毛の先から滴を滴らせる羽目に。
虫の鳴き声が小さく辺りから聞こえ、初夏がもうすぐ訪れる事を知らせているようだった。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------
そうこうしている間に、"それ"はそこにいた。

吸血鬼とは、"それ"だった。つまり変幻自在の暗闇であり、斬っても斬れず、撃っても貫けず。
夜の暗黒の事であり、姿を変え、狼を従え、魔術を使う、邪悪な存在は、"それ"だった。

女は"それ"に気が付かない。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------

「……火、持ってないか。」

少女に尋ねる。誰かに頼むのが嫌なのか苦手なのか、視線をあえて合わせていなかった。
煙草の先から、黒い液が一滴、滴り落ちる。
金髪の前髪の毛先を指でつまんで、擦り合わせる。

黒い風が吹いている。


153 : 【頽廃魔女】 :2017/06/18(日) 23:48:13 RwfXZAfg
>>150

「ありゃ、最悪かあ。
 あたし、魔女って生き物は好奇心の塊だと思ってたんだけど」

あてが外れたか、と髪を撫でつけながらたははと笑う。
虚仮にすることなど、有り得ない。魔術という学問への冒涜であり、それを司る者への侮辱だ。自己否定にもなる。
だが何よりも、あれだけ美しく力強い魔法を否定することなど、彼女にはできないのだ。

「“退屈凌ぎ”。ほほう。ということは、興味は持ってくれているのかな。ツンデレさね、っと」

立ち上がりけらけらと笑う。女性らしさを繕わないからこそ、その仕草は魅力を増す。

「胡散臭くなくてなにが魔女ってもんじゃないかねえ。おばさん思うよ、女の子は誰だって魔女さね?」
「さて、説明不足を補おうかしら。
 叶える内容はこっちが吟味する。だから、叶えたくない願いは願い下げ。
そして、お代は願いに見合うものをこっちが選んで勝手に持っていく。なあに、さっき見せたものが本物だって分かるなら、無理やりあなたの寿命を奪う魔術だって、使えそうなもんじゃないかい?」

指を折りつつ、契約内容を語る。少女の周りをゆっくりと歩きながら。

「面白い話。ほほう、面白い話。
 ……いや、あなたにはまだ早いね。とすると、ストックがないんだけれど……」

少女の要望を聞いて、ぶつぶつと考え込む。

「そうさね、あなたの過去が聞きたいかな。あたし、そういうのが聞きたいんだ」


154 : 【蒼雷魔法】 :2017/06/18(日) 23:56:43 oeJpmeRc
>>151

「……はーい」

やはり、いちおうこの方が良いのだろうかと無理をしてみたものの、要らない気遣いだったらしい。
こういうところは素直に、いいなと思う。少年に身寄りがないのを知っていて、拳骨をふるってくるような教師もいるから。
敬語を覚えればいい、という話ではあるのだけど。

「じゃあね、先生。また学校で。もう補習は勘弁してくれよな」

ゲームが退屈だったわけではないけれど、やはりほっとしてしまう。緩んだ口許はそのまま別れを告げる笑みに変えて、
ひょこっと片手を振る。荷物をまとめて、帰る準備。
軽口は尽きない。相手が怒りだそうともそれは変わらないし、許されているならなおさら。

「――」

しばらくゲームセンターには足を運ぶまい……などと考えながら軽いフットワークでこの場を後にする。
――途中少年は、一度だけ振り返り、女性のほうを確認するだろう。
いままではただの教師としか思っていなかったし、二人の関係性に何か変化があったわけではない。
けれども今日見たものは紛れもない真実で――、少しだけ、意識が変わったというか

「……帰るか」

芽生えた新鮮な印象。それをいたずらに深堀するつもりはないけれど、忘れるわけでもない。
ぼそりと呟き、少年は今度こそこの場を後にする。
次の国語は、どのあたりが範囲だったかな。
そんなことを考えながら。

/このあたりで〆で、いかがでしょうか……!
/絡みありがとうございました&お疲れ様でした! 楽しかったです。


155 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/06/19(月) 00:19:39 8PW.R0Yo
>>155
「はい。また明日
……それとこれとは関係ないですよ?」

別れ際にまた、微笑む。
可愛らしい軽口にちょっとだけ意地悪な言葉を返す。
そんな当たり前が、楽しくて心地いい。

少年と別れ、大衆の構成員となる。背中にかすかに視線を感じる。きっと、レトラが振り返ったのだろう。
だから軽く歩いて、歩いて、そしてから人気のない都会の闇の方へと歩き出す。

さあ―――――お楽しみの時間だ

//ではこれで〆で!こちらこそ、ありがとうございました!先生ロール、楽しかったです!


156 : 【龍神変化】 :2017/06/19(月) 00:28:31 sGnH0qQU
>>149
/返信はまた明日になります…!週跨いじゃってすみません…っ
/〆たい時があればそこで〆ますので、お互い無理のないように!


157 : 【星征魔導】 :2017/06/19(月) 00:33:04 OucjuTCw
>>153

「ああ、力尽くで何か奪おうとするなら、それよりも先に消し飛ばすよ?」


にっこりと微笑みながら牽制、当然ながら冗談ではなく本気の発言。
星の魔女、その魔法の何よりも誇るべきは純粋火力、星々の光を浴び束ねるその力は伊達ではない。
まあ、色々と使い勝手は悪い面もあるのだけれども。少なくとも人に向けて撃つようなものでもなく。

キラキラ、キラキラと輝く魔力の残滓。
その光の渦中に立つ姿は────確かに魔女と呼べるものかも知れない。


「…………ん、私の過去か────生憎と語れるようなネタも無いのだけれども」
「ああ、別に語り聞かせる気がない訳じゃないんだが。私の過去は既に、この私に関わりのないことだから」

「これが何度目の生かは知らないが────どうせなら過去の柵は忘れて今を謳歌する方が有意義だと思うだろう?」


────彼女はある特殊な事象を経験していた。この世界において『転生』と呼称される、死せる魂の回帰現象。
そして彼女はその際に嘗ての記憶の殆どを喪失していた。其れが彼女自身が望んだことかどうかさえ、今では判別のしようがないが。
然し────過去への興味は欠片も抱くことなく、寧ろ転生前の己と現在の己は別の存在と考え、今を愉しむ方針を固めていた為に。

故に語れるような過去は何一つとして存在しないのだった。何せこの自称魔女の物語は始まったばかりなのであり
そんな訳で彼女は誇らし気に胸を張り、語れるものは何もないと言うのだった。そしてその胸も残念ながら張れる程ない。


「………────ところで、聞かせてもらう筈がなんで私が自分語りしているんだ?」

そして少女、笑顔のまま怒りの魔法陣再展開。


158 : 【頽廃魔女】 :2017/06/19(月) 00:57:03 W22Mui8U
>>157

「くははは、怖い怖い」

うーん、いい鼻っ面だ。ブッ叩きたい。力量差を見せつけて遣ろうか、小娘。
――だなんて、思っていそうな感じで笑う。あくまで、いそうな。

永く生きるというのは難しい。本当にそう思う。
残念なことにヒトの脳は嫌なことばかり覚えているし、彼女と同じようにどこかでリセットするのもいいかもしれない。
割と真剣に、そう思ってしまった。あたしはまだ、ただの女の子に戻りたがっているのだろうか。

「へえ、サンサーラの星の元かい。興味本位に覗いてみていい?」

さて。そんな感情はおくびにも出さずして、相変わらずけらけらと茶化すアリス。

「人は話したくないことは話さない生き物だよ、おしゃべり魔女ちゃん」

魔法陣に近づいて、そこに映る自身の顔色をチェックする。うん、今日も不健康。
彼女に脅しは通用しない。本気だとしても、通用しない。対処方法は無数にある故。
未来視、読心、瞬間移動、魔術キャンセル、時止め辺りがぱっと考え付く。まあ、読心が一番楽さね。

「そう言っちゃうとあたしも同じようなものだもの。自分が居たという痕跡は次々と消して、なるべく外に出た証拠を残さずに過ごしているから」

あ、あなたみたいな面白い娘は除いてね。そう付け加える彼女は、少し恥ずかしそうだ。何故。


159 : 【星征魔導】 :2017/06/19(月) 01:24:48 0ML9Pq1U
>>158

この自称魔女は、ミーティア・エルフィスという魔術師は────文字通りの少女だった。
転生という転機を経て過去の記憶の殆どを放り投げ、其れを良しとした結果、その心身は嘗てよりもいっそう年相応のものに変化し。
けれどもこの在り方は彼女にとって愉しいものに他ならず、其れを邪魔する要因と成り得る過去の記憶などに未練は存在せず。

リインカーネーション。魂は死と再生を繰り返し、絶えず変質していく。
但し彼女にとっての生は己が愉しむ為のものに他ならず、だからこそ彼女は何処までも自分本位に行動する。


「覗き見とは趣味が悪いな。まあ、少しでも観たら魔法ぶっ放すけど」

「そして結局話さないんだ、やっぱり性格悪っ。不健康そうな顔に違わずだなこの魔女め!!」

笑顔のまま罵る。因みにもし読心したらならば、彼女がこの辺り一帯を吹き飛ばす魔法を放つことも吝かでないことが伝わるだろう。
基本的に周囲への被害なんて考慮しない。そもそもそうでなくては不良相手に高威力の魔法を撃ち込む筈もないのだが。


「……ああ、そう。つまり自分で自分の足跡を消しながら歩いている訳だ君は」

「うわ……────何というか、とっても大変かつ退屈そうな生き方してるね、愉しくなさそう」

価値観の大きな基準が愉しそうか、そうでないの二択に依存しているせいで、出てきたのはそんな感想。
どうせなら、色んな相手に己の痕跡を残しておく方が愉しいだろうに────だってその方が何かと愉快だろうから。
何故か恥ずかしがっている相手をじとーっと見つめながら、溜息。享楽的な性格と言っても、色々と種類があるようだった。


160 : 【頽廃魔女】 :2017/06/19(月) 01:44:56 W22Mui8U
>>159

――只々、羨ましい。
愉しんで、楽しんで、快しんで、娯しんで。一番近い今だけに焦点を合わせ、その先に見える風景をさて置く。
そんなこと、彼女にはもう、恐ろしくてできない。だから、消す。自分だけが知っていればいいことは、自分の胸で判別する。
それが辛い物だと言うならば、それもそうかもと認めてしまうだろう。でも、それしかできない。
結局、『なんでもできる』という常套句が、逆に自分自身の可動域を狭める、ということ。


「果たして潔癖なあたしが、覗き見の痕跡を残しますかねえ。お、前世の君も変わらないねえ!
 ん? 言っただろう? 叶えるかどうか、あたしの匙加減次第さね。不健康はほっとけい」

そう言ってからかうだけ。人差し指と親指で作る眼鏡は、何も見通していない。なんだかんだ言って、一番愉しんでいるのかもしれない。

「他者に依存した愉しさは、相手が消えた時に同時に消えちゃうだろう?
 あなただって、自分の愉しみが他人に理解されていなくたっていいと思うでしょうに」


161 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/06/19(月) 01:59:58 yyqkjZ8.
>>110

「おおっと」

思わず、声を上げてしまう。
心を病んでいるようなのと楽しく会話していたら、予想もしてないのが飛び出してきた。

「どうなるってね、死ぬだろうね」

それでも、こともなげに話しては見せる。

「いろんな視点から、引いたらどうなるかは言えるんだけどさ」

一呼吸、置いて。

「私として、そういうのは見たくないな。
 人間として、ね」

本来は見慣れているが、人間と認識した死体はそう多くない。

「あ、でも、人がどういう経緯で自分から死にたがるのかは、
 それはそれで興味あるや。後始末は任された。好きにやるといい」

足を組んで、興味深そうに見つめる。

「もう少し、私はマイルドなのを考えてた。
 でも、引くか生きるかじゃ、私手の出しようないもん」

ほとんど白旗を上げた。


162 : 【星征魔導】 :2017/06/19(月) 02:12:35 0ML9Pq1U
>>160


「よーし塵芥になる準備はできたか病人顔。今なら大サービスで可能な限り苦しむよう葬ってやっても構わないよ?」

魔法陣の魔力が高まる。まあ、流石にぶっ放しはしなかったが。
嘘かどうかは彼女の態度を見れば解る。というか、もし覗かれたのであれば反応がある筈だろうから。
それが見られない内は、ミーティアも飽くまで戯れるばかりに済ませておく。魔法だって使えば疲れるのだから。


「────当然だね、私が愉しむ為にやっていることを態々他者に理解して貰って何の得になる?」
「何処までも自分本位に自分勝手に、それがモットーだから────ああ、けれども」

「他人に依存する愉悦の味を、そんな詰まらない理由で拒絶するのは勿体無い」
「何事も、一人遊びよりも誰かを巻き込む方がよっぽど痛快だろうに。やっぱり其れは退屈だろう」

愉悦とは刹那的なものなのだから、例えその痕跡がいつか喪われてしまおうが構わない。
己が愉しかったと思える時間が在ったのであれば、彼女はそれで充分だから、他者と関わることを躊躇わない。
二人の違いはきっと────積極的か消極的か、何よりもその点なのだろう。お互いが其々そのように至った理由は解らずとも。


「どんな視点を持っていて、どんな力があるのかは知らないし、興味もないれけども」

「その上でどう振る舞うか、どう愉しむかは自分次第だ────うん、私はとても愉しくやってるよ
例え相手に理解されなくても、その嫌そうな顔を見るだけでもとっても愉しい訳だし」


//すいません、眠気が限界なので落ちます…


163 : 【永劫乃命】 :2017/06/19(月) 10:52:32 Jkspbxbs
>>161

――くそ、気持ち悪い。素直に嬉しがるなよ、僕。
今、人間扱いされただけなんだ。この後の彼女に、期待をしてはいけない。

「ごめんなさい。少し、驚かせたくて」

表面上は、相手の眉が数ミリ動いたのを確認して喜んでいることにします。
実際、近しい人間に奇異の目で見られるのは嬉しくないのですが。
どうでもいい相手にパフォームするのは、悪くないですね。

「そうですね、こうやって死んでいく僕には、誰も手が出せません
 ああ、あと後始末等は必要ありません。見てれば分かります


それでは、“一度”さようなら。
そう言って僕は、宣言通り引鉄に掛けた指を、曲げ――――。

ば――――――。





ばきゅん、の『きゅん』までを聞けないんですよね、僕。

さて、僕が今見ている景色は、案の定天国でも地獄でもありません。
足裏の点字ブロックが、脳をいやに刺激して、生を実感させてくれます。
月はすっかり、夜空の中腹を過ぎてしまいましたね。

くるり。

「こんばんは、おじょうちゃん。
 こういう時はどんな顔して会えばいいんでしょうね?」

僕は歩き出し、以前の僕が座っていたベンチに座り直します。
――血糊やら、死肉やら。そこにそんなものはまるで存在しません。

「あ、ええと、死にたがる経緯の話ですっけ。
 まあ、『できないことをできるように』というのは、向上心から来るんだと思いますよ」


164 : 【頽廃魔女】 :2017/06/19(月) 11:13:52 Jkspbxbs
>>162

「あなたは派手なのが好きさね?
 魔法陣とか呪文とか、あたしもう使うのめんどくさくなってきちゃってさ。
 魔女としてどうかとも思うっちゃ思うんだがねえ」

魔法陣の明滅に我関せずと、右眼でウインクする。
ミーティアの腰掛ける箒が、相手から見て左に少し傾く。
転びはしないだろうが、少しでもアワアワして欲しいな、という悪戯。
……少し前に遭った彼の旅人の悪戯癖に、感化されちゃってる気がする。


「魔女だねえ」

そう言うしかなかった。反論の余地はないし、そもそも個人の価値観の問題だ。
その価値観の形成の要素となる、過去やら能力やらに興味がないと言われてしまえば、ぐうの音も出ない。

「おばさん、残念ながら愉しみを作ろうとする体力がないみたいでさ
 あ、転生者に歳の概念話してもピンと来ないかね」

じゃあ、今も愉しめているか。そう訊こうとして、やめた。
どう答えられようと、哀しい気持ちにしかならなさそうだ。


165 : 【星征魔導】 :2017/06/19(月) 17:17:24 kfN3ZmyA
>>164


「……────あーっと、とっ────ぐえっ」


ぐらり、ずがん。


箒が傾いたことで、少女は面白いくらい呆気なく滑り落ちてしまって、地面に顔面を強かにぶつけるのだった。
補足しておくと、彼女は極度の運動音痴である。当然ながらバランス感覚なんてないようなものだ。

じゃあ、なんで箒なんて不安定なものに乗るのかという話だが────そんな理由、只浪漫があるからに違いない。
彼女の言う通り、派手なものは大好きだった。煌びやかな星の魔法は世界を美しく彩り、その光景は何時でも鮮明に思い出せる。
魔法がその個人を現すというならば、きっとその通りなのだろう。気の向くままに空を駆ける、箒星のような魔女。


「……────何というか、枯れてるねえ」

「叶えたい願いの一つや二つ、なかったりはしないのかあ?」

緩慢と立ち上がり、服の土汚れを払い落としながら、ついでのようにそう尋ねた。
因みに言うまでもなく、ミーティアは今が楽しくて仕方ない。其れはこれまでも、きっとこれからも。


166 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/19(月) 20:16:27 DkLrmdyk
ピシャリ。まず始めに彼らが聞いた音と言えば、そんな擬音の付いた環境音。
水滴が地面に滴り落ちているような、通りすがりの鳩が糞を落としていったような、天気雨の最初の一滴のような、そんな音。
然し、それらは全て有り得ないことだと断言できる。水の出る機械など近くにはないし、時間にして現在は夕方を過ぎて夜だ。当然鳩は飛んでいない。
天気雨や通り雨――――狐の嫁入りだってありはしない。今日の天気は快晴であり、雨が降る様子など只の一度もなかったのだから。

であれば、この水音は一体何であろうか。
そんなことは―――――――『最初からわかっていたことだと言うのに』。


――――

【帝国】の軍装を模した様な和装。そんな表現がよく似合う服装をし、腰には抜き放たれた刀の鞘と、口元には一筋の血が見える。
殴打でもされたのか、頬には僅かに打撲痕があった。それ以外に目立った傷はないものの――――グシリ、右手の袖で血を拭い取った。

「…………。」

言葉もなく――――苛立ちや怒りを吐き出す場所もなく、右手に携えた刀を見る。刀身につくはずだった血は一滴すらもつくこと無く、自らの口元から垂れていた傷だけが残る。
懐から出されるはずの白いハンカチは地面に落ち、既に薄汚れ足跡の残滓が見える。グシャリ、捻るように踏み潰したのは、きっと自らの感情すら制御できていないせいだろう。
抜き身のままの刀を携えたまま、彼は熱病に冒されたかのように上の空で、一言。軒先から落ちた水滴のように疑問符を落とす。
            ・・・・
「――――なんで、俺は『殺せない』?」

彼の視線の先にあるのは、先程の記憶。依頼で用心棒として雇われていたはずだったが、それは彼の最近を聞いた有象無象の復讐劇であった。
所詮は只の人間であり、今の今まで彼に怯えていた悪党どもでしか無い。そのような人間に遅れを取るはずもなかったが、そこからが問題だった。

結果として言えば多少の負傷とともに彼らを追い詰めはしたのだが、それだけ。普段はあれほど簡単に行えた殺傷が出来ず、逃げていく彼らを見つめていただけ。
じわり。腹部にある熱が訴える。以前に受けた傷からか、じんわりと疼く治りきらない刺し傷が、僅かに和装を赤く染める。苛立ちのまま舌打ちをして、

事件が起こったのは単純で、今まで殺人鬼として雇われていた彼がその機能を失ったことに起因する。殺せない暗殺者は、生かしておくには『都合が悪い』。
そんな後ろめたい理由から行われた惨殺だったが、今回は事前に一度同じことがあった為に事なきを得た。脇腹の傷が痛みを訴えるが、こんなものは大した怪我に入らない。
それに、この程度の痛み等―――――あの時のそれに比べれば。

――――思い出すな。思い出すな。共感という名の侵食を受け付けてしまえば、また『消えてしまう』。
彼という存在と、その意義が。

                           ・・・・・・・・・・・・・・
それはもう――――声も出さず、顔にも出さず。けれども、心だけは泣き叫んでしまう程に。


叫び声はあった、命乞いもあった。すべて彼に向けられた声であり、この空間だけではない『どこか』にすら響いているようで。
きっと、誰であろうと気づくだろう。殺人鬼を亡き者にできるチャンスを、野次馬のごとく死を見届ける傍観者を。

//割とゆったりとした返信になってしまうかもですが……。


167 : 【頽廃魔女】 :2017/06/19(月) 20:21:28 ag9Y/sCQ
>>165

くすくす。
流石にちょっと可哀想だったので、指を鳴らして治癒魔法。
額やら頬やらの赤み、痛みが引いていく筈だ。

まったく。どこの平行世界を跨ごうとも、魔法使いが皆がみんな運動音痴である必要はないと思う。神様も意地が悪い。

「ごめんごめんっ。まさか、落ちるなんてっ、あははは」

手を差し出し、彼女の身体を引っ張り上げようとする。

――相手がその手を取るか取らないかを決めた頃、ハッと気づく。
これ、引っ張られたら、あたしも転ぶわ。だって、こっちも魔法使いだもの。


枯れてる。そう、枯れていないといけないから、彼女は枯れている。

「叶えたい願い、ね。うーん」

そう言って、表情を強張らせる。その質問に因む凝りを痛めるように。
やがて、先程までより小さな声で、はばかられるように願いを口にする。

「――――女の子に、なりたかった。
 普通じゃなくてもいい、魔女である自分は気に入っているからね」

目を瞑る。
相手と目を合わせないために。または、ある筈のない思い出を語るために。

「朝の支度をして、パンと牛乳を持って、
 箒に乗って、空を飛んで、街の人に挨拶をして、
 親のお使いを放って、好きな男の子の家の窓をノックして、無理矢理起こしに行くとか、ね」

ふと目を開ける。蠱惑的な唇は、いつからか屈託なく、薄くなって。
見上げる先には、切れ切れの雲の隙間から漏れる、星の光。

「お仕事を済ませたら、きっと夕暮れ頃くらいかな。
 男の子と一緒に、辺りで一番高い丘の上に行くんだ。
 星を見上げて、つまんない話をし合って、それで彼は眠ってしまう。

 あたしは彼の頬をつついたり、鼻をつまんだりして起こそうとする。
 それでも起きないから、おませ『だった』あたしはほっぺに唇を合わせ『た』」

いつからか、過去形になっていたことに気づき、たははとごまかし笑う。
 
「でもあたしはきっと、老いた魔女でしかないから。
 高望みってものだし、もう叶うことはない願いだよ」


168 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/19(月) 21:58:46 Tjv5n2Oo
>>152

「……火?」

当然と云えば当然なのだが、マッチもライターも携帯してはいなかった。
元より未成年の非喫煙者であり、スナック感覚で線香花火や解体工事をやる習慣もない。
身と衣服以外で持参したモノなんて、刀と電話と、既に食し終えた僅かな食糧だけだ。

わかりきっていた物事を脳裏でなぞる少女の思考に、ふと電撃が迸る。
時は遡って剣の鍛錬に勤しんでいた頃―――――親戚一同で集う会合の際に、三度ほど山を降りたような覚えがある。
暇潰しにと読み漁っていたとある児童漫画で、バットのスイングによる摩擦熱で発火する野球漫画を思い出す。
アレと同じ原理に基づけば、ライターなんて使わなくても刀一振りで事足りるのではないだろうか。
もちろん実際に試した経験などないが、提案だけでもしてみるべきだろうか―――――。


「……――――――?……ねぇ………………この辺に余り詳しくないんだけど、色の付いた風が吹く現象なんてある、の?」

――――そこで漸くして、自分達を取り巻く異変に気付く。

未知の出来事に対する疑問でしかなかった。ただ視界の端に見覚えのないモノが映り込んだから、聞いてみただけだった。
気象や自然現象の知識なんて碌に持ち合わせてはいないのだから、もしかしたらそういう風の吹く地域なのかと。
その線も浮かびはしたが、この状況下では、異能による攻撃かもしれないという線を度外視できるはずもない。
だが女の返答の是非には関わらず、彼女が咥えてるモノから滴る黒い液体が目に映った途端、砂だらけの地面を蹴り飛ばしていた。



「朱刀流――――〝牡丹〟ッ!!」

それは刹那的かつ爆発的な加速によって織り成す、縮地の派生形とも云える高速歩法。
然れど絶不調たる少女に平常通りの速度が出せるはずもなく、精々人間にしては迅いといった程度。
その亜音速には遠く及ばない高速から繰り出される居合によって斬り断とうと狙うは、女の咥えている煙草の先端部分。


169 : 【星征魔導】 :2017/06/19(月) 22:15:28 VhdPhq/U
>>167


それはとても"女の子らしい夢"。
甘酸っぱい恋物語───それが理想か、それとも憧憬であるかは解らないが。

然し、聞き心地は悪くなかった。瞳を閉じて、彼女の夢を聞き入った。
他者への関心の殆どが純粋な好奇心が占めているせで、恋愛感情なんて知らないし知る気もないけれども。
きっとそれはプリミティブな願いに違いなくて。聞き終えたならば少女は微笑むのだった。


「……────なんだ、存外ロマンチストなんだ」

くるり、と箒を回転させて、再び腰を降ろす。
そしてふわりと宙に浮かんだなら、星空を背景に夜天へと翔ぶ。
その姿は星辰の魔女と呼ぶに相応しく、彼女は悪戯っぽく笑いながら。


「別に、わたしは構わないと思うけどね。高望みだろうが、不相応な願いだろうが」
「一々そんなことを気にしたって退屈だろう? 何より叶わないからなんて決め付けて、諦めてしまうには少し勿体無い」

「魔女なら、もっと自分に正直に振る舞うべきさ────基本的に我儘で、自己中心的な生き物だろう? 私達って」

なんだかんだ、本当の願いを叶えて貰えはしなかったが別に構わない。
他人に叶えて貰うよりも、自分の手で叶える方が得られるカタルシスは大きいのだから。

そして、ミーティアが叶えたい願いは────たった一つだけ。
愉しいものが観たい、只それだけ。そして今宵の逢瀬は記憶に残るような、愉しい時間だったに違いないから。
箒星は軽やかに空を駆けて、闇夜の中へと消えていく。


170 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/19(月) 22:38:28 Or.6KGN.
>>166
/まだいらっしゃいますか?


171 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/19(月) 22:42:45 DkLrmdyk
>>170
//居ります……!


172 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/19(月) 23:20:30 Or.6KGN.
>>171

"人生はクローズアップで見れば、悲劇である"
かつて、チャップリンと言う男が言った言葉である。
尤も、これには続きがあるがここでは敢えて語らない。

「――"なんで、俺は殺せない"…ねえ。
 そんなの、貴方だけじゃ無いよ?」

夜の空気を震わせるのは、凛と澄んだ女性の声。
夜の暗闇から現れるは、彼と似た様な【帝国】の控えめな色の和装の女性。
灰色と黒色が入り混じった長髪と右目の眼帯が特徴的な女性であった。

彼女は、只ならぬ彼の姿を歯牙にもかけず。
明らかに只者ならぬ軍人風の彼の姿に物怖じせず。

むしろ、何処と無く香る"何か"に引き寄せられて。
自ら起伏の無い日常から下手をすれば引き返せない非日常へと足を踏み入れた。

「まるで、殺せない事に怯えてるみたい。いや、それ以外の何かを恐れてるのかな。
 …まぁ、私も似たようなものだし。うん。だからさ、少しお話でも、しよ?」

ならず者同士。似たもの同士。そう彼女は思ったのか。
顔色は穏やかなまま。顔色を変えぬまま。
彼の元へと、ゆっくり、ゆっくり。マイペースに歩みを進めていくであった。

相手が警戒するどうかを気にすることも無く。
彼女がそんな配慮をするわけも無く。自分の興味本位が全てであるが故に。

/すみません。大変お待たせしました。
/自分もレスが遅くなりがちですがよろしくお願いします。


173 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/19(月) 23:42:48 DkLrmdyk
>>172

「暗殺者(どうきょう)か―――――?」

まるで“このような場所に足を踏み入れるはずのない、女性のような声音”に対して振り向いた彼の口からついて出たのは、そんな台詞だった。
『貴方だけではない』という言葉と、容姿や服装から見て取れる明確な【帝国】の残滓。先程撃退した愚図共と同じ人種かと身構えて、少しだけ刀を持つ手に力を込める。
……然し、即座にくだらないとその意志を一蹴して、自身を嘲笑うかのように口元は歪む。只の“変哲もない女”が、こんな所に来るわけがない。
つまりそれは、此方を警戒していないということは―――――此方を警戒する必要が無いほどに優位である。と主張しているわけで。
つい、脳髄に燻りこびりついていた黒い感情が吹き出しそうに成るのは、必然のことだったといえるかもしれない。

そして、女性の方へと向き直るということは、彼の姿を完全に彼女へと晒すということ。
本来、刀の柄に添えられているはずの左腕が、まるで糸の切れたように垂れ下がっているという人間的、戦闘的欠陥を見せてしまうということにほかならない。
相手を警戒しなければならない以上、対応のために向かねばならず。必然的に見えた彼の弱点とも言える部位を少しだけ庇うように、歪めた口元から言葉を吐いた。

「話なら幾らでもしてやろう。だが――――」

「――――其処だ。“その場所からこれ以上”“俺に近づくんじゃあない”。」
「“近づかなくても話はできる”。“俺が警戒してる”こと、“分かる”よな?」

彼の意志は一貫して警戒に向いており、以前のような自暴自棄を含んだ“面白がっている”様相を崩すこと無く、あくまで話は聞いてやると自身を優位なように見せかける。
話しかけているのはそちらで、何時でも首を切れるのだ。止まれと言いながら向けた刀の切っ先が、ブレていることには気付かないふりをして。
相手がどのような力を持っているのか、何をしようとしているのか――――本人は、話をしようと言っているが――――わからない以上、彼は「とまれ」というしかない。
威嚇するように刀を向けるのは彼女の異能を警戒してなのか、深夜でさえも光っているように映る彼女の瞳のせいなのか。

それとも――――眼帯に隠された奥にある瞳が怖かったのか。

理由は釈然としないまま、彼は当然の思考ロジックを持って女性へと対応する。
暗殺者らしからぬ――――やけに常識ぶった振る舞いで。


174 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/19(月) 23:44:10 DkLrmdyk
>>172
//絡んで頂いて早速で非常に申し訳ないんですが、そろそろ眠気が近く……。
//宜しければ凍結をお願いしたいのですが……。


175 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/19(月) 23:51:08 Or.6KGN.
>>174
//凍結了解いたしました。
//おやすみなさいです。


176 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/06/20(火) 04:37:39 it9gNB6M
>>163

確かに引鉄は引かれた。
弾は確かに放たれ、正しい結果は起きた。

「うん?」

それで、相手がこともなげに戻ってきてしまうとなれば、
首の一つでもかしげたくなるというもの。

「……瞬間移動をしたって理解でいいのかな?」

とりあえず、確認をしてみる。
でも、挨拶から会話しているのは違和感を意識させてしまう。

そこに「向上心」等がからんでくると、さて違和感がますます膨らんでくる。

「それなら、いいんだけど。それよりもっといろんなものが飛んでる気がする。
 私が、もう手も足も出ない感じなところまで」

肩をすくめて、身振りで「諦めた」をアピール。

「今の私じゃ、どうにもならない。
 少なくともキミは死ねるだけの愚行権を持ってないみたいだから。
 ついでに、私もここでの用事がなくなったみたい」

すっくと立ちあがり、トランクも一息で持ち上げる

「ごはん食べに行こうか。血が滴る位のステーキが食べたいんだ。
 こんなところで頭使ったら、おなかがすいた」

 手招きを1つ。

「死ねないなら、こっち側を愉しむしかないでしょう?」


177 : 【頽廃魔女】 :2017/06/20(火) 18:18:21 ZVd/z/uU
>>169

夜風がゆるやかに、火照る頬を撫ぜる。
愉快そうな頭上の表情に、満足そうに答える。

「魔法を追う人間が、ロマンチストでない訳がないさね」

『バーバヤーガ』を演じることに、彼女はロマンを感じている。そこに猜疑心はない。
ただ、『やりたい事』と『叶えたい事』には開きがある、ということ。

「ほっ」

ヒールを中心にくるりと回ると、アリスの身体は一回り小さくなる。
ちょうどミーティアと同じくらいだろうか。あどけない顔と大きな翡翠の瞳。赤ワイン色のローブと、とんがり帽子を深々と。
忘れてはいけない、と樫の杖を蹴り上げると、箒木がふさふさと巻かれた魔女の箒に早変わり。

「総ての魔術を司るあたしに、できないことなんてない。
 だからこういう風にもなれる」

ミーティアを追うように、その軌跡に水晶を散りばめながら、飛び上がる。
疲れたのだろうか。箒に腰掛けるアリスの姿は、少し危なっかしい。

「でも、これは『叶ってない』のさ。
 男の子がいない、街がないなんて話じゃなく、
 魔法で叶える願いに、“ときめき”を感じなくなっちゃったもんでね」

先程よりも近くなった月を、人差し指と親指で作った丸で囲う。
どれだけ綺麗に丸を作ろうと、月はその枠にぴったり嵌ることはない。
その隙間が、はみ出た月が、彼女の気持ちを落ち着かせない。だからアリスは、囲うのをやめる。

「だから、他者の願いを叶えるんだ。
 どうしても手に入れられないものを手に入れた人の顔、これが堪らなく愛おしいもんさね」


178 : 【永劫乃命】 :2017/06/20(火) 18:52:39 ZVd/z/uU
>>176

僕、抜かりました。
なるほど、確かにこれは『拳銃で頭を撃つことで瞬間移動する特殊能力』だと理解される余地があります。

「あ、あー、うーん」

流石に吃ります。序に目を逸らして、うようよさせ始めます。
ここまで格好をつけたのに、相手に理解の両の手を挙げられるとどうしようもありません。

「――――まあ、それでも、良いです」

まあ、良いの、ですよね。
自己紹介をしているつもりはありませんし、どうやら僕は彼女の仕事相手でもないみたいです。
だというのに、お食事のお誘い。やったぜ筅木、こりゃ脈アリだぜ。

冗談はさておき。過去も未来も無い僕が、彼女の言う通り生を楽しむなら、ここしかありません。
『これ』を見せてもあれこれと考えるのみで、遂には食事にまで誘ってくる相手と知り合うのは、素直に良いことですから。
――よく良く考えれば、脳漿まで垣間見た相手をみずみずしい食肉に誘う気狂いであるとしても。

「お供しますよ。
 あ、でも僕一応ただの大学生の身に『戻った』ので、払えませんよ」


179 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/06/20(火) 21:07:25 it9gNB6M
>>178

「キミは何を見ていたんだか、食の細そうなのを一人食べさせるのなんて余裕余裕」

トランクをまた小突く。金なら十分と言いたいらしい。

「私以外の誰かを誘うときのお作法くらい仕込んであげないと」

今度は逆に年上ぶってみる。
しかも、経済力のプレッシャー付きで。

「……それでもってことは、さっきのがはずれか。
 じゃあ、瞬間移動よりかは、戻ってる方があってるのか」


それとなく、答え合わせをもう一回。

「私にはあまり関係なさそうだし、知る必要もなさそうだからもういいけれど。
 ……それじゃ行こうか、遅くまでやってはいるけど私はおなかが空いているんだ」

来た時とは真逆の軽い足取りで、トランクは軽々と。
数歩歩いて振り返る。

「今に飽きたなら、私を探すといい。
 少しだけ刺激的にしてあげる」


そういって、彼女は眼を細めた。

//食べに行くのは省略で、こんな感じの〆でいかがでしょう?


180 : 【覚醒狂獣】 :2017/06/20(火) 21:26:09 CKJipCys
>>140

「うん、そのほうがいい……」

彼女が公園を出ていく様を呆けた顔で見送る。
右腕の刃を腕に戻すと、何をするわけでもなくベンチに腰掛けた。
ぼうっと青い空を眺め、暫くすると糸がぷつりと切れたかのように横たわった。


――気づいた時には、とっくに夜だった。
寝ぼけている目をこすり、腕時計を覗く。すでに九時を過ぎていた。
これはいけないと、急いで公園を出ると駆け足で帰路についた――。


181 : 【永劫乃命】 :2017/06/20(火) 21:45:17 6BHAeY2M
>>179
//〆でお願いします!
//数日間お付き合い頂きありがとうございました!


182 : 【龍神変化】 :2017/06/20(火) 21:46:40 MsKaP67Y
>>168

初夏の先兵のじめりとした生温い雨粒は、しとしとと肌に降り注ぎ、つるつると滑り落ちて、泥と混ざる。
薄い月明りしかないこんな山奥には、暗闇に慣れた2人の人間。それは片方が女で、片方が少女。片方が銃手で、片方が剣士。
今際の川が直ぐ傍で流れていてもおかしくなさそうな、淀んだ黒い風の吹くこの場は、場所であって場所でない。
煙草の先から滴り落ちる黒い粘液は、武芸達者な剣客が、泥に足を取られ、疲労で乱れ、幾分か拙く振られた刀を見て笑っているようだった。
ぐつぐつと煮え立つそれは、地獄の門の前に雑多に転がり、腐敗していって出来上がったものだった。
煙草が切断され、欠片は宙に投げ出される。後に残った煙草の芯は、女の手の中でどろりと溶け落ちる。

「なッ……、クソ。」

掌にへばり付いた黒い粘液を振り払うと、それらは草木に飛び散った。そこで女はようやく、気が付いた。
自分たちを取り囲む森の木々からは、黒い粘液が垂れ落ちていることに。枝から、葉から。
集落の方から、甲高い悲鳴が幾つもあがる。男の声、女の声、子どもの声。阿鼻叫喚の渦。
しかし少女が耳を凝らすならば、それは集落の方からではなくとも、森のあちこちから聞こえてくることがわかるだろう。
断末魔。

「この山で何かを喰ったな。人間ではない何かを。
 ヤツは、"吸血鬼"は、この山で一番強い何かの血肉を貪った。

 あの狼も、この森も、怪物の一部なんだろう。」

リボルバー拳銃を取り出す。女の瞳の様に歪に変形した、古ぼけたピストル。

「向こうはこっちを認識し続けているようだ。姿を現す事はない。
 ……逃げるなら今の内だ。雇われ。」

周囲四方八方から狼の遠吠えが響き渡る ―― それも尋常ではない数だ。先ほどの比較にならない。
敵は今ここで決戦を仕掛けようとしている事は明白だ。全力の力で、立ち向かおうとするものを圧殺しようとしている。
その土の奥底へ引きずり込もうとするアンデッドのような執念深さで、陰湿さで、邪悪な害意で彼女らを包囲した。
時は丑三つ時。アヤカシが姿を現す前兆。おぞましき怪物が、哀れな犠牲者をムシャムシャと貪り食う為のディナーの時間。

「ここで死ぬかもしれない俺に、もうバイクは必要ない。乗っていけ。」

 ―― 女の肌に異変が起こる。ぼつぼつと至る所がぼつぼつと小さく隆起したかと思えば、内側から肌を裂いて黒い鱗が生え出した。
牙はより鋭く大きく、爪はより長く鋭利に、眼は獣のように暗闇の中で黄色く輝いた。
背後からは蜥蜴のような尻尾がぐるりと暗闇に舞い、それは怪物めいて、いや、怪人めいて。
漆黒の鱗を身に纏った龍と人の間のようなそれは、ああ怪物殺しの怪物めいていて。

「余裕があれば、集落の方を見に行け。
 まだ誰かが息をしているかもしれない。」

敵が擬態していた煙草を斬って助けられた借りを返すつもりだろうか、逃げろ逃げろと、彼女は言う。
しかしそれは元よりそういう性格であったし、そういう信念であったし、そういう風に頭のネジが外れている。
暴力的な程の"自己犠牲"は、このような時にこそ露わになってしまうもので、他人に自分を知られることを嫌う彼女でも、それは隠せなかった。

いつまでも明けない黒過ぎる夜。2人の近くに佇んでいたぼろぼろの木製柱の上に吊るされた電球が点き、弱々しく2人を照らした。


183 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/06/20(火) 23:06:45 it9gNB6M
>>181

//長らくのお付き合いに感謝します
//ありがとうございました。


184 : 【土傭戦士】 :2017/06/20(火) 23:33:02 poweS4XM
タッタッタッタ、と小刻みに心地よい音を鳴らしながら男は街中を走っている。

それは、黒の綺麗に選択されなジャージ姿の優男よりは男前と言った風貌の男。

大通り、閑静な住宅街、繁華街を抜けて路地裏、それはあらゆる場所を走り抜ける。いわば
ジョギング、よりさパトロールと言った方が正しいか、視線を軽く揺らし男は走る。

男の名前は十二文字と言った。警察系統の組織にも、常に誰かの側で救いたいと加入せず
単身で、昨日も、今日も、そして明日も人の為に何かをなさんとする奇妙なだが、確かに

"正義の意志"持った男だ


185 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/21(水) 00:32:16 ItoLCYB6
>>173

「"どうきょう"…同郷?んー、そうだねぇ。私は【帝国】の生まれだから
 貴方がそうなら、同郷と言えば同郷かなぁ」

『どうきょう』
この言葉の意味合いは彼と彼女とでは大きなズレが生じている。
彼は暗殺者かと言う意味合いで。彼女は同郷かと言う意味合いで。
齟齬が生じていた。けれど、彼女はそれを察する事は無く。

「んーとね、それは解るよ。そりゃ同じ言葉を使用してるんだし。
 貴方は、見ず知らずの私を警戒する。口頭でも、行動でもそれはハッキリ解るよ。
 それが証拠に今私は刃を向けられてるし」

やや大げさな手振りと神妙な面持ちと共に彼女が紡ぐ言葉は至極真っ当である。
世間一般の常識ぶった言葉を並べて、繋げて、連ねて、紡いだ真っ当な言葉。
そう。――言葉"だけ"なら。

すたすた。すたすた。すたすたすた。

「だけれど、それは貴方の事情や心情に過ぎないよね。
 私はそんなの知った事じゃないかな。だから、もっと貴方の指図は受けないよ。」

「こんな所で光りモノ握り締めて『何故殺せない』と呟きながら
 立ち尽くしてる人なんて滅多に見れないし、面白そうじゃない。
 だからね、もっと近くで見てみたい。」

歩みは止まらない。顔色は相変わらず穏やかなままで。
それどころか、柔和な笑みを浮かべて。腕を後ろで組みながら歩み続ける。

彼女の好奇心は彼の警戒心を土足で踏みにじり。言葉は感情を逆撫でして。
彼女の隻眼は彼のブレる刃も併せて彼の瞳を見つめつつ。
右手の人差し指を眼帯につう、となぞらせていた。

――まるで、彼がどんな人間なのかを値踏みするかのように。

「もしかして――私が怖い?もしそうなら安心して欲しいな。
 私も怖いものはあるし、怯えることもあるんだから、ね?
 何も取って食べるワケでも、殺そうと言うワケでも無いし」

彼女の口から出てくるのは何処までも自分本位の言葉。
それも、彼の心情を慮ることの無い言葉であった。

/大変お待たせして申し訳ございません…


186 : 【星征魔導】 :2017/06/21(水) 18:19:24 kNnIHHBA
>>177


「そう。やっぱり枯れてるね────と言うより、ひねくれてるというか、斜に構えてるというか」

「まあ、それが嫌ならいい解決法がある。何、"魔法を捨ててしまえばいい"」

たん、と地面に降りる。魔法で創り出すのは重力の孔。
星の魔術に依って作り出されたその現象を、彼女は単純な移動のみに用途を絞って利用する。


「そのチカラが疎ましいのであるなら、棄てることで魔女を辞めてしまうのも一興」
「まあ、私は御免だけど。この星の魔法は私にとってかけがえのないものだし、こんな浪漫を棄てるだなんてとんでもない」

「さて────そろそろ帰るとしよう。魔力を使い過ぎる前に」


地面を蹴って孔に身を委ねれば。
其処にすでに星の魔女の姿は在らず、すぐに夜の静寂が戻ってくることだろう。
全てを見届けたのは、夜空に浮かぶ星々だけ。



//遅くなりましたが、これで〆で。絡みありがとうございました


187 : 【栄華之夢】 :2017/06/21(水) 19:03:41 7cpCsP6Y
>>180
//ではこれにて〆でお願いします……
//ありがとうございました


188 : 【幽明異郷】 :2017/06/21(水) 20:28:02 FbKL0/QQ
青い空の向こうに、分厚い影が蠢いている。
低く、暗く、墨をぶちまけたように黒々とした暗雲は、些かの遅れもなく自らの役割を果たし始めた。
ぽつぽつ、と。小さな小さな雫だった水滴はあっという間にバケツをひっくり返したような豪雨に変わる。

……ひどいどしゃ降りだ。更に不運なのは、前日と今朝の時点ではこんな雨になることはまったく予報されていなかったこと。
一日快晴のはずだった。そして世間は休日ともなれば、今日は絶好の行楽日和だったはずなのだが。
傘を持たずに出かけていた人は少なくない。彼らは小走りに、あるいは人目を気にせず走って、自宅や一時の雨宿り先へと向かう。

そう……本当に、ひどいどしゃ降りなのだ。
雨が降り出してから十数分、止む気配などまったくない。
単なる夕立などでないことは誰の目にも分かった。これは間違いなくしばらく続くことになる。
時刻は夕暮れ。ひょっとしたら一晩を通して続くかもしれない。
そしてずっとこのペースのままだと、もしかしたら洪水になってしまうかもしれなかった。未だ警報などは出ていないが、その可能性は十分にある。

堪らないのは川沿いに住む人たちだ。もし川が氾濫した場合、真っ先に被害を被るのは水場が近いこの近辺に他ならない。
テレビ、あるいはラジオをつけ、窓から見える川の様子を不安げに見つめる。橋を渡っていく車も、心なしか急いでいるように見えた。

……橋脚の元に、一人の影がいる。
影、という表現はあながち冗談でもない。それほど、その人物は黒かった。
全身をすっぽり包んでしまうほどの長い黒外套。目深に被ったフードで顔は見えず、微動だにしない姿は遠目から見ればゴミ袋か何かに錯覚してもおかしくない。
その人物は、何か長いものを持っているようだった。同じく真っ黒な布で包まれていて具体的に何かは分からないものの、全長は所有者である影と同じか、ひょっとしたらそれ以上かもしれない。

……その影は動かない。
雨に濡れるのも構わず、腰を下ろした砂利道が泥のようにぬかるんでいくのにも一切の反応を示さず……。
ただひっそりと光のない目で、刻一刻と水かさを増していく川を眺めている。


//置き歓迎の絡み待ちですー


189 : 【頽廃魔女】 :2017/06/22(木) 15:00:20 7xc6LNFs
>>186
//遅ればせながらお付き合い頂きありがとうございました
//お節介かもしれませんが、最後の『重力の孔』は《Black Hole》ですか?
//能力説明によると『触れたものを吸い込み“消滅”させる』魔法なので、四次元ポケット的使い方はできないのでは?
//勘違いでしたら申し訳ありません


190 : 【星征魔導】 :2017/06/22(木) 19:38:25 q4F5patA
>>189
//天体魔法ではなく星魔法による、自由の効く方の魔法の発動でありブラックホールとは別枠でした
//撤退の為に強引に魔法で姿を眩ました程度の扱いで。混乱させてしまい申し訳ありません…


191 : 【一刀全剣】 :2017/06/22(木) 20:58:22 q4F5patA
>>188


本日は快晴とは一体何だったのか。笑顔で大嘘を吐いた朝番組の天気予報士を呪いながら、雨の道を駆け足で進んでいた。
コンビニで購入した安物の傘を差してはいるもの焼け石に水であり、既にスーツはびしょ濡れで靴の中には冷たい水が溜まっている。


「……────へっくちっ、ああ、寒い……」

はあ────と溜息を零す。せめて、早く帰って温かいものが飲みたかった。
水溜りを蹴る音さえ搔き消える雨音の中、灰色の視界の中でチラリと河川敷に視線をやる。
何時氾濫するかもわからない濁流、すでに避難勧告が出されていてもおかしくはなかったが。
視線を橋の下に移す。其処にあるものは最初、ゴミ袋にしか見えなかったが────数秒間見つめることで、其の勘違いに気がついた。

其れは人だった。何時濁流に呑み込まれてしまうかも分からない場所に、誰かが居座っていた。
そう理解した時には既に、彼女は橋の下に向けて歩き出していた。


「……────あの、大丈夫ですか?」

「此処は危ないですから、とりあえず河川敷のうえに移動しましょう───えっと、動けますか?」

そうして辿り着いたなら、彼女は柔らかな声色でそう語りかけるだろう。
因みに今の彼女の風貌はと言うと、雨に濡れたスーツ、黒髪、そして腰には何故か日本刀───そんな風貌。
これが果たして、彼女が警官であると理解できるかどうかは知らないけれども。

彼女は雨の中でも微笑みながら、相手に向けて手を差し出した。
警官である以前に、彼女はお人好しだった。目の前で危険に晒されている人を、放って置けない程度には。


//置き気味になりますが、それでも宜しければ…


192 : 【頽廃魔女】 :2017/06/22(木) 21:36:30 SpoYej3M
>>190
//あーなるほど了解です!
//こちらこそ戦闘でもないのに難癖つけた形で申し訳ないです。改めてお付き合い頂きありがとうございました!


193 : 【幽明異郷】 :2017/06/22(木) 21:36:33 TcKytXYs
>>191
……徐々に徐々に水位の上がっていく河川を呆と眺める。
何も考えてなどいなかった。このままここに居続けてどうなるかなんて思考の外に放り出されていた。
枯れ果てた草木のように我が身を打ち棄てていただけなのだろう。実のところは自分でもよくわからない。

ただいつものようにわけも分からず彷徨って、気が付いたらここに居ただけ。
理由なんてない。いいやもしかしたらあるのかもしれないけど、水底に堆積した澱の中に埋もれていて、それが何なのかわかりやしない。

「…………。……ああ」

差し伸べられて手を見て、徐にその主を見上げた。

フードの下に隠れていた顔立ち……そして微かに聞こえた細い声色からして、この人物は女性なのだということが窺える。
まだ若い年齢……二十代の前半といったところだろうが、しかしそんな外見の印象に反して、彼女の姿には瑞々しさというものがまるでなかった。
元は美しかったであろう長い銀髪はくすんでいて、その顔色はぞっとするほど青白い。灰の瞳に光は映されていなかった。
一言、生気がなかった。まるで病床に伏せる今わの際であるかのように、存在感すら希薄である。

……一瞬だけ合った視線を、然り気なく逸らした。

「……そう……だね。そう……危ないな、ここは」

背けた顔もそのままに、携えた大きな包みを長い杖のように扱って、漸う身を起こす。

「死ぬのは……怖い、からね……」

囁くような言葉は雨音に掻き消されかねないほど小さく、しかしこの距離ならば届くだろうか。
ふらり、ふらりと、背を向けて歩いていく。次の瞬間には倒れてしまいそうなくらい不安定な歩みの向かう先は忠告に従って河川敷の方面か。


/まったく問題ありません、よろしくお願いいたしますー!


194 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2017/06/22(木) 21:39:31 CzXXY3Ww
>>185

「――――――黙れ。」


それは一体、彼女の放った言葉の“どれ”に対してかけられたのか。もしかすれば、此方に歩いてくることを含め全てかもしれない。
けれど、もし彼女が『殺気』とでも呼ぶべき、人間が他者を殺そうとする時に発する『気』を感じることができるのであれば、それは濃密に彼女の肌を撫でるだろう。
脅しではないし、明確な怒り。自身をコケにされたと思いこんでいる。その実、相手が自身を面白い存在だと感じているのが――――気に入らない。

極々普通の感性で言えば、自身がある出来事で何かしらの悩みを抱えている時に『面白いから』と笑みを浮かべながら近づいてきた相手をどうして受け入れようと思えるだろう。
何か事情があったり、どうにかして助けようとするのならまだしも、相手にはその片鱗すらも見られない。現にこうして、彼が彼女を恐れていることを『楽しんでいる』。

たったそれだけ、それだけであるというのに、腹が立った。ああ、どうしようもなく。

その瞬間、彼女が余程動体視力に自身があるのであれば僅かに、常人のそれならば正しく『煙のように』彼の姿は掻き消える。
いや、正確には正しくない。消える瞬間には地面を蹴り上げる小さな音と、和装が空間を波打つ極々僅かな衣擦れの音が聞こえている。
注意して聞いてもわからないくらいのそれにもし気づけたなら、若しくは『自身の首を狙う濃密な殺気』に気づくことが出来たのならば。

…………『首元を狙う横一文字の斬撃』を、回避することは非常に容易である。

//本っ当に申し訳ありません……! 昨日は忙しくて返せませんでした……。
//もしモチベがなくなったとかでしたら、破棄して頂いて構いませんので……!


195 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/22(木) 21:43:50 CzXXY3Ww
>>194
//これ自分です


196 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/22(木) 23:05:01 44XQ/za6
>>194

場の空気を底冷えさせるような怒気と肌を刺すような殺気。
煙のように姿を消した彼の動きを完全に捉える事は出来ぬ彼女は――

(あーあ…。また失敗しちゃったなぁ。私が首を突っ込むといつもこうなっちゃうなぁ
 でも、まぁ良っか♪手出しの早いヒトみたいだし、どんな風に拒絶し続けて、
 どんな風に排除しようとするのか。確かめたいっ! ―――私の気が済むまでっ)

何故に彼を激昂させたのか?自分の何が彼を不快にしたのか?
その様な事に思考を巡らせる事は無く、どのよう

彼女は動体視力に自信がある訳ではない。
けれど、彼女には熟練者並みの格闘技術を持っている故に。

「ふぅん。そう来るんだ。やっぱり何か拒む時は、皆同じ、か。
 私が踏み込んだのが、私が君の領域に土足で踏み込もうとしたのが余程癇に障ったんだね?
 それとも―――他に理由があるの?」

"殺気が何処に色濃く向けられているか"という事を察して
彼女を上体を逸らしながら大きく後退することにより斬撃を回避した。

けれど完璧には避けられず右目の眼帯の帯は千切れ、眼帯によって隠されていた右目が露になる。
その瞳は、一言で言えば鮮血を連想させる赤色。災禍を呼ぶ様な赤色。

「どうしたら、お話してくれる気になってくれる?
 私が君に殺された時?それとも、君が私に平伏す時?
 それは今答えなくても良いよ。どうせ、その時になれば必然的に解るから」

体勢を整えた彼女は、彼と相対する。だらりとしながら体を正面に向けるだけでなく。
青白い左目と鮮やかな赤色の右目。この時、初めて二つの瞳は、彼の双眸を見据える。
先ほどと変わらぬ、彼の逆鱗に触れるような表情のまま。

彼女の狙いは交差法(カウンター)ただ一つ。
彼が突っ込んできた所に合わせて攻撃を放つと言うもの。
それ故に彼女は己の体を彼の正面に向けていた。まるで、それは宛ら闘牛士のように

//いえいえお気になさらずに。こちらも返信が遅れ気味で申し訳ないです。


197 : 【一刀全剣】 :2017/06/23(金) 00:57:58 JbFlBggo
>>193

少なくとも年齢は自分と近いだろう。然し生気のない瞳は、この年代の人間のものとは到底思えないような代物であり。
例え浮浪者でもここまで草臥れたのは珍しいのではないだろうか───なんて考えてしまうのは観察癖故の悪癖だろう。

とん、と思考を切り離す。今大切なのは彼女が危険な場所に居るのと、其れを速く助けること。
豪雨の中、彼女が何時倒れても支えられるように側に寄り添いながら、歩く速度を合わせて慎重に進んでいく。
自らが手にていた傘は、彼女の頭上に差して。当然そのお陰で自分はずぶ濡れだったが、元からずぶ濡れだったのでさしたる問題ではない。


「ええ、人間命あっての物種ですから」
「何があったのかは知りませんが、先ずは安全な場所に行きましょう」

大きな包みの中身は得物だろうか。だとしたら槍か、それに通ずる長物に違いないだろうか。
けれどもこのような弱々しい人が、武器を有しているのも珍しい───それとも武器を有する理由が、そのような心理状態を招いたのか。
心理学の専門家ではないから、彼女がどのような状態なのかなんて理解できない。けれども危ういと言うことだけは理解できる。
だから放っておくなんてできなかった。そうして安全な場所に辿り着くまではずっと側に寄り添っているだろう。

安全な場所────屋根があって、ベンチがあって、川の氾濫に呑まれる心配もなさげな、小さな休憩所。
無事に辿り着いたら先に座るように会釈して、そしてすぐに自分も腰を下ろすだろう。腰の刀は側に立てかけて。


「………───────へくちっ。やー……寒い、ですね」

「スーツもぐしょぐしょになっちゃいましたし、本当散々な雨です────あ、よければどうぞ」

タオル代わりになるかは分からないけれども、ハンカチがあったので先に彼女に渡してみる。
花と動物がプリントされた、子供向けの可愛いデザインの奴だった────出してから、ほんの少しだけ羞恥で後悔した。
いいじゃん、可愛いの。似合ってないとか自覚はあるから、普段は隠しているけど。


198 : 【幽明異郷】 :2017/06/23(金) 18:41:57 DcGT32M2
>>197
……これほどの大雨、ビニール傘一本で防ぎきれるわけもなく。
傘からはみ出した肩や腕や裾などが容赦なく雨に叩かれ濡れていく。
むろん全く意味が無かったわけはない。一定量の雨は防げたから濡れ鼠ということになりはしなかったものの、それでも振りつける雨は二人の体温を奪っていった。

そうしてやがて、ほどなく休憩所に辿り着く。
促されるままに座った女は大きな包みを抱くように抱えた。……まるでそれが唯一の拠り所であるかのように。

……至近でよく見てみると、それの形は少しばかり特異であった。
得物だろう。そして長い。このことから予想される武器はやはり槍であるが、そうであるならば基本まっすぐな棒状であるはず。
むろん三叉槍や十字槍など種類によって例外はあるが、それにしてもこの包みはどうにも槍とは思えなかった。

何故と言うに、先端に当たる部分が広すぎる。
柄の部分は少し婉曲している程度だが、これを槍とするなら穂が異常に大きすぎるのだ。
まるで曲刀を横に取り付けたような形状は先の二例にもとうてい当て嵌められない。

見慣れない形だ。……いや、どこかで見たことがあるような?

「……お礼は、言うよ。……ありがとう」

受け取ったハンカチへ俯きがちに視線を落としたまま、ぼそぼそとした口調で感謝を述べた。
水滴を拭うこともしなければ、子供に向けたデザインへの反応もしない。
……そこに何の感情もない。彼女はひたすら空虚で、虚ろだった。抜け殻とは、このような人間を言うのだろうか。

「……人が好いんだね」

視線を向けないまま、自分を助けた彼女の人柄に言及する。

「放っておけば、いいのに。……それとも、そう……偽善かな。何か、打算があるのかい」

だったらごめんよ、あげられるものは何も持っていない……と。
ただ一つの所有物であるのだろうか、黒く長い包みを握る手にほんの少しだけ力が籠った。


199 : 【一刀全剣】 :2017/06/23(金) 19:23:35 n4dKbnK2
>>198


槍、或は薙刀────いや、違う。長物でありながらこれだけ長大な刃となれば、予想自体は難しくはなかったが。
けれども予想が正しいとすれば、其れは武器としては非常に扱い辛いものであり、使い熟せるというだけでも相当な技量の証だろうけれども。

観察癖、相手の一挙一動を無意識の内にさえ見てしまうお陰で、その微かな反応も見逃しはしなかった。
包みを握る手に力が篭る。どんな想いが籠められた行為までかは理解できずとも、其れが彼女にとって大切なものであることは理解できた。
虚ろな存在の中に在ったもの。けれどもそれ以上踏み込んでしまうのは、些か憚れるような気がして。


「……────ええ、よく言われます。そして自覚もしています」

「お人好しなんですよ、私。困っている人がいたら、放って置けないだけ。打算を働かせる程、賢くもありません」

苦笑いを浮かべた。この性格が美徳かどうか、自分では判別がつかないから。
けれども、きっと悪いことではないだろう。そうしなければ、彼女は濁流に呑み込まれていたのかも知れないし。
そうなることを、彼女が望んでもいない限り────いや、彼女に関しては何一つとして知らないのだけれども。


「……────其れ、大切なものなんですか?」

だから、まずは尋ねてみよう。人は言葉を介さないと、理解し合うことさえできない不器用な生き物だから。
けれどもまず尋ねるべきは相手の名前や彼処に居た理由の筈なのに、口に出たのはその包みに関する疑問。

何故そんなことを最初に尋ねたのか、自分でもよく解らなかったが────何か感じるものがあったのかも知れない。
直感とでも言うべき、曖昧で非合理的なもの。けれども人間の心なんて、そもそもが曖昧極まりないものだから。
雨音はまだまだ、止みそうにない。困った、雨宿りのつもりだったけれども、暫くは立往生せざるを得ない。


//すいません、次の返信とても遅くなります…


200 : 【幽明異郷】 :2017/06/23(金) 20:18:51 DcGT32M2
>>199

そう、と。
短く返した言葉の奥に、果たしてどんな感情があったのか。
か細く小さく、今にも途切れてしまいそうな口調からは何も読み取ることはできない。
少しだけ開いた唇。続けて何かを言おうとしたのだろうか、しかしそこから何の音も出てくることはなかった。

問いかけに暫し、沈黙だけが返ってくる。
狭い室内に響くのはただ激しい雨音だけ。
……どれくらい経っただろうか。実際には一分もなかったのだろうが、体感的には妙に長かったようにも思える。

「…………。……大切……」

それは肯定する言葉、なのだろうか?
その響きは同意というよりは確認、確認というよりは疑問、疑問というよりは懐古のようにも感じられた。
ただ俯いた顔を少しだけ上げて、両手に保持した包みを眺めている。……灰色の瞳に何が映っているのかは、本人以外には分からないことだ。

「……そう、だね……。そう、大切……なんだ。これ、は……」

懐古……いいや、悔悟。
一瞬だけ露わになった眼差しには沈んだ青の感情が見えた。
その資格もないけれど。口の動きだけの言葉にならないその言葉は、自分に言い聞かせたものなのか。

……遠雷の音が聞こえる。

「……あなたは」

再び視線を俯かせて、独り言みたいな口調で問いかけた。

「どうして……人を、助けたいの?」


//了解しました!


201 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/23(金) 20:28:04 jQCUoDWo
>>196

「――――――チッ!!!」

まただ、また『躱された』。只の素人であった少女に躱された経験がフラッシュバックし、怒りの振れ幅が更に広がる。
此方が苛立っているというのに、相手は酷く楽しそうで、だからこそ余計に腹が立つ。此方があちらを『殺せない』とわかりきっているかのように、彼女の言葉は彼によく刺さった。

図星だ。相手の言うことは全て彼の思考回路をそのまま移したような『回答』になっている。読まれている。それほどまでに、彼は単純だった。
だから、此処から怒りを爆発させるのもまた必然。眼帯が解けて見えた赤色の瞳などは既に思考の外へと消え去って――――即座に走り出す。

ガキリ、撃鉄を引いたような、鎖で雁字搦めに繋いでいた『何か』がそれを砕いて表れるような、奇妙な音が脳内に響く。
筋肉が膨張と縮小を繰り返し、機械仕掛けのように筋繊維が脈動する。肉体を守っている無意識の枷を外し、自らの限界点すら容易く凌駕する『リミッターの開放』。
――――元来、人間には『ある一定以上の行動をすると肉体が持たない』として、肉体機能はある程度制限した状態で運用されている。
だから自らの限界に近いような駆動を体が行っても、それ自体で筋肉や繊維が断裂することは少ない。余りにも常軌を逸した状態であれば、また違うのだろうが、普通はそうである。
だが、彼はそれを意識的に外すことで、肉体への負担という代償を経て、人間の最高状態から更に上の『速さ』すら引き出せる。

彼が行ったのは、他愛のない『全力疾走』からの『振り下ろし』。大上段からの袈裟斬りのようだが、右腕だけで振るわれる為に剣閃が安定せず、威力としては中の下といった所。
だが、ただの振り下ろしであっても、人間に当たれば先ず生きてはいられまい。HP等と言ったシステマティックな防御手段が現実には存在しないのだから、斬られれば先ず間違いなく致命傷だ。
そんなものが彼の肉体を最大限の使用して『加速』され、もはや目に追える速度ですら無い――――確殺の一撃。彼が暗殺者として持つ、殺すためだけの一刀。

――――本来なら、そうなるはずだった。だが、先程彼女は彼の一撃をかわしてみせた上、剰え話すほどの余裕すら存在したのだ。
剣閃の安定しない、威力も低い、只攻撃までの速度が異常に早いだけの剣戟が――――当たるとは、思えないが。
今の彼にはその思考すら無意味なのだろう。自然と――――怒りによって刀のブレが僅かに小さく。


202 : 【騎士三誓】 :2017/06/23(金) 21:18:41 m.wBM8YU
――ひどく冷たい雨が降る日だった。
一部の森林地帯が魔力による汚染を受けた、との一報を聞いて一人の騎士が現地調査に訪れたのだ。
だが、その状況は予想以上に悪い。沼は毒沼と化し、木々は紫色の葉を垂らして枯れていた。


「これで、三体目……ッ!」

面割り――其の一言が響くと、骨が折れたような、何かが潰れたような音がする。
ドサリ、と地面に伏せたのは“汚染された”ハウンドドッグだった。頭蓋を砕かれ、脳漿をぶちまけている。
そしてそれを討ったのは、黒髪を腰まで伸ばし、冷徹さを湛える紫の瞳を持ち、右手に剣を構えた女騎士だった。


「全く、これほど汚染が進んでいるとは」

報告には、ごく一部の限られた範囲での汚染しか確認されていないとあった。
だが、見てみればこの有様。急速に汚染が拡大したのか、それとも他の要因があるだろうか。
だが、そんなことはどうでもいい。とにかく、汚染源を見出して破壊しなければ。

入るのに禁忌を覚えるようなこの森林に踏み入る者は居るだろうか。
賞金稼ぎか、勇者か、それとも……。ともかく、増援が欲しい状況ではある。
騎士は腐った雑草を踏みにじりながら、森の奥へ奥へと進んでいった――。


203 : 【執事無敗】 :2017/06/23(金) 22:21:37 OXAB80i6
>>202

「……これは……」

彼は一介の執事である。
今日ここに来たのは主の命によるものであった。

――調査を頼めるかしら。

その一言で彼はここに居る。
主の為に。

//よろしくお願いします


204 : 【騎士三誓】 :2017/06/23(金) 22:32:13 m.wBM8YU
>>203

ふと、騎士は背後から聞こえる足音に気づき歩みを止めた。
そして右腕に構えていた大剣を回しながら背後を向くと――そこには男が一人。

「おっと、申し訳ありません。ご覧の通り、このような状況ですので」

女騎士は謝罪をし、頭を下げた。状況故に仕方がないとの言い訳もして。
人間であるかどうかは未だに疑わしく、また確実に味方であるかもわからない。
その為、右手の剣の柄は未だ握られている、いつでも振れるようにして。


「私はこの辺りがこうなった原因を探っています、貴方は」

女騎士は男を背にして歩みを始めた。
特に信頼しているというわけでもないが、魔力による汚染があるとは考えにくい。
取り敢えず、彼も理由が同じであれば同行しない理由もない。


205 : 【執事無敗】 :2017/06/23(金) 22:42:27 OXAB80i6
>>204

「いえ、大丈夫でございます」

女騎士。
その道なら件の台詞を言わせたがるだろう。

が、彼の目的はそんなことではない。
そしてこの女騎士も調査目的らしい。
名乗っておいて損はないだろう。

「私は【帝國】華族荊木家執事影川と申します、以後お見知りおきを」

そう言い続ける。

「私も主の命を受けこの森林の調査を頼まれたのです」

そう言い彼は丁寧なお辞儀をする――


206 : 【騎士三誓】 :2017/06/23(金) 23:00:28 m.wBM8YU
>>205

「ふむ……、執事の方ですか。よろしくお願いいたします」

なるほど、とそれに続けて言った。
目的は同じであるし、彼のことを初めて信頼するに至った。
あとは、異常な魔力源を探し出して取り除くだけ――、というわけには行かなかった。


「……気をつけてください、この辺りは“臭います”」

先程から至って景色は変わらず、また獣も現れる気配がない。
だが死体が幾つか転がっており、其のいずれもが腹部を食いちぎられている。
それに、瘴気とでも表現したら良いだろうか。忌々しい魔力を感じ始めた。

――嫌な予感がする。大抵このようなときの嫌な予感は的中するのだ。
大剣を構え、辺りを見渡しながらゆっくりと歩みをすすめる。蠢く影が一つ見えたかと思えば――


「貴方、止まってください」
「あれは恐らく変異体――キマイラです。あの巨躯、それに山羊の頭……」

蠢いていた影は、恐らくキマイラのものだ。そう女騎士は言った。
獅子の頭に山羊の胴体と言われれば、ピンとくるだろうか。
先程の食いちぎられていた死体はこいつの仕業だろう。木陰に隠れて様子を伺った。


207 : 【執事無敗】 :2017/06/23(金) 23:12:28 OXAB80i6
>>206

女騎士に言われるがまま従う。
確かに何かしらの嫌な雰囲気は感じた。

そしてキマイラ。
どうやらただ事ではないのは薄々わかっていたがまさかこういうこととはと思った。
そして、どうして自分が向かうことになったのかが分かった気がした――


208 : 【騎士三誓】 :2017/06/23(金) 23:28:50 m.wBM8YU
>>207

「……先手を取りましょう。私が陽動しますから、貴方は援護を」

右手に掴んだ大剣が構えられ、そして左手には先程まで背負っていた塔楯を握る。
そして、彼に援護を頼むと木陰からさっと飛び出てキマイラと対峙する。
冷徹さを湛えた紫眼でキマイラを見つめ、たかだかと“宣誓”を行った。

「一つ、私は貴殿の攻撃を一切避けぬ。

 二つ、私は貴殿へ嘘を付かぬ。

  三つ、私は貴殿への不意打ちを禁じる。

 “以上を以て、騎士の宣誓とする。我が身に救いあれ” 」

キマイラは声を発している女騎士に気づいたようで、のそのそと近づいてくる。
だが、それを見ても女騎士は臆さない。それどころか、声を張ってみせる。
騎士としての矜持の表明。それを済ますやいなや、キマイラが飛びかかってきて――


「久々ですね、魔獣と殺りあうのは」

ギィン、と爪と楯が擦れ合う鈍い音が立ち、それを支えに後ろへ飛んだ。
先程まで無表情であった女騎士の口元に笑みが浮かぶ。
飢えていた戦闘欲を満たすがために、キマイラと対峙する。それだけだ。

女騎士は両手に相当の重量を抱え、それにチェストアーマーまで装着している。
だが、そうとは思えないほどの速度でキマイラへと迫る。走りがけ、横っ腹を切り裂いてやろうと考えていた。
そして「疾走斬」と唱えたが――、眼前に見えたのは口を開いた獅子。そして、口内で揺れる炎。

咄嗟に女騎士は楯を地面に突き刺して急減速し、炎を楯で受け止める。
だが其の勢いと熱量は凄まじく、徐々に鋼鉄の表面を焼き始めていた。
此方に気を取られている間に彼が背後から奇襲してくれればいいが、尾には大蛇がいる。
彼がどう動いてくれるか――、それだけが気がかりだった。


209 : 【執事無敗】 :2017/06/23(金) 23:34:39 OXAB80i6
>>208

援護。
それは仕事としては楽な部類である。

そう考えながら彼は銀食器を取り出しキマイラの尾の大蛇を斬る。

――鮮血。
そんなものに気を取らず更に一手を加えようとする――


210 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/23(金) 23:38:09 qmoGzr22
>>182

太幹も、細枝も、緑葉も、上も右も左も背も――――二名を取り囲む総てが、既に汚泥に侵されていた。
宛ら口腔、或いは胃袋。とても自然の産物とは思えない空間から漂う禍々しき瘴気が、背筋を舐めるように滞り続ける。
群狼の合唱が遠方より鳴り響き、今度こそ腹の中に収めんという再来の行進が着々と肉薄しつつあった。

抜刀斬りによって跳び出した躯体の勢いを、全身でブレーキを掛けて相殺し、着地する始末屋。
振り返れば其処には、あたかも龍を連想させる形貌へと変異していた女が立っていた。
狼相手に使わなかった肉体変異を発動したという事は―――つまり、そういう事態なんだろうと漠然と思った。
そして理解しながらも、まるで理解していないように双眸の焔は揺らぎもせず、ただ虚ろなだけであった。

「そうも往かない。だって僕、バイクの運転とかわからないもの」

左手で鞘を押さえつけると、既に抜いていた側の刀を宙へと放り、フリーになった右手で納めていた側の刀を引き抜く。
無能力の剣客として最大級の臨戦形態へと移行すると、何度か飛び跳ねて幾分か強張った足腰を解そうとしてみる。

平然と常通りのルーティンを熟せているのは余裕なんて大層ではなく、何て事のない『疾患』であった。
追い詰められている現状であるという程度は理解している――――が、理解の後にやって来るだろう感情は、湧いて来なかった。
現状に抱くであろう恐怖も焦燥も分からない天性の精神的欠落者は、故にいつも通りとしか考えてなかった。


「帰りの運転も任せる。だから、山を降りれる体力だけは残しておいて。…………それじゃ」


それだけの最低限を言うと集落の方向へ振り向き、弾け飛ぶようにして女を残して消え去っていくだろう―――――。





そうして金髪の女と別れた始末屋は抜き身となった二刀を両手に、無呼吸状態を維持しながら疾駆していた。
もし黒い風――――延いては『空気自体』が、敵の支配下に置かれている可能性が僅かにでもあるなら、息を吸う行為すら迂闊にできない。
加えて立ち並ぶ樹木の幹や枝のみでなく、足下の雑草や砂地まで侵食が及んでいる場合も踏まえ、一地点に留まりすぎず長距離跳躍を連続して行っていた。

そして集落を囲む木造りの外壁にまで辿り着けたなら、地上での跳躍から一切減速させずに垂直に駆け上がる。
一見すると垂直にしか見えない木壁の、極々微妙な凹凸を見極め、その部分部分を足掛かりとして壁の上方へと突き進んでいく。


「ぷはぁ―――――――っっ、…………スゥ……………………ハァ……………………」


外壁の最上部に到達し、其処から更に数十メートル上空へと身を放り出して、ようやく停めていた呼吸を解放する。
きっと森―――もとい地上から遥か上に離れた場所なら、敵の異能も届いてはいないだろうと高を括ったからであった。
そして空中から地上へと落下していきながら、集落全体を俯瞰して、異常は起こっていないかどうか一瞥だけでも視認しようと試してみる。


/ものっそい遅れた上に、だいぶ色々勝手に進めてしまってる感がありますので
/展開的にまずい部分がありましたら、其処より下の文を丸々なかったことにして進めて下さい…


211 : 【騎士三誓】 :2017/06/23(金) 23:47:56 m.wBM8YU
>>209

突如、炎の勢いが一瞬弱まった。
この隙を逃すわけがなく、女騎士は地面を思いっきり蹴って飛び上がった。
執事が手にしているのは金属の食器。ふむ、邪悪であるキマイラにはとっておきの武器だったか。

女騎士は胴体から伸びる山羊の頭を潰そうとしていた。
目の数が減れば、それだけ見える範囲も狭まる筈であると。
山羊の眼前まで迫れば、大剣を上段に構えて両脚を思い切り振り上げ――


「兜 割 り ッ!!」

――両脚を振り下ろす勢いで、大剣を山羊の頭へと叩き込む。
骨が砕けたような音と、脳が潰れたであろう音。それらの音が同時に響く。
勢いを殺さないようにして執事の元へ着地する。しかし、キマイラも獅子は未だ健在なようで。

執事と女騎士の方へ向き直ると、空中へ飛び口を開く。
――火炎放射の攻撃であろう。だが、今回は先程と違い“怒り”や“憎み”といった類が含まれる。
つまりは、キマイラが邪悪な存在であるが故、其の攻撃も当然増幅されることになり――


「ぐうっ……ッ!!」

赤黒い炎が口から吐かれ、女騎士へと襲いかかる。
いくらチェストアーマーを装備していると言えども、流石に右腕を焼かれてしまった。
だが動かないというわけではない。塔楯を地面に突き刺して炎を防ぐが、火力は先ほどと段違いだ。

徐々に鋼鉄が溶かされ後ろへとじりじり下がっていく中、女騎士は状況を打開できる方法を探っていた。
――すると、一つだけ思い浮かんだことがあった。急いで執事の方へ顔を向けると。

「ありったけの銀食器をキマイラの口へ投げ込んでください、早く!」

銀食器が溶ければ、勿論ただの銀へ戻ってしまう。
だが、キマイラが火炎放射を止めた時。其の銀が固まったとするならば。
恐らく窒息死へと持ち込むことができるだろう。ある意味、一か八かの賭けに近かった。


212 : 【執事無敗】 :2017/06/23(金) 23:55:40 OXAB80i6
>>211

「わかりました」

そう言うとすぐさま小山のような銀食器をキマイラの口に投げ込む。
それを3セット。

そして切断済みの大蛇の本体側の切断面に空気を遮断できる濡れた布をかける。
油断は禁物。
そういう考えからだった。


213 : 【騎士三誓】 :2017/06/24(土) 00:14:27 .vzywaiM
>>212

彼はすぐさま銀食器をキマイラの口に投げ込む。
結構な量を投げ込まれたからか、キマイラの口の端からは溶けた銀が垂れる。
同時に炎のエネルギーは銀を溶かすためだけに用いられ、いつの間にか炎は収まっていた。


「はあ、はあ……。どうなりますかね?」

ようやく火炎放射が収まり、塔楯は表面が溶けたのか歪な形をしていた。
右腕の表皮は多少焼けてしまっているようだが、今は痛みを感じない。

キマイラは地表へ降り立ち、相変わらず此方を睨んでいるようだった。
だが、暫くすると異変が起きたことに気づくだろうか。口の端から垂れていた銀が固まっていく。
するとキマイラはもがくように地面を転がり始めた。銀が固まり、呼吸を阻害しているのだ。


「多少は効いているようですね。トドメを刺しておきますか」

横たわっているキマイラの傍へ行き、再び大剣を構える。
そして、首を斬ることができるように立つ位置を決め、そして剣を振り下ろした。

「覚悟を。……斬首」

大剣は自らの重さと振り下ろされた勢いで首へ食いつく。
そして終いには首を両断してしまった。彼は大蛇のところへ布を被せてくれたようだが、もう意味は無いだろう。
はあ、とため息を付いて一本の木に背を凭れた。


214 : 【一刀全剣】 :2017/06/24(土) 00:25:26 kLxn6vFs
>>200


何故、人を助けたいのだろうか。
産まれながらのお人好しというのは、そうそう存在しない。人格というのは大抵後天的に形成されるものであるのだから───其れこそ聖人君子でもない限り。
なら、私は何故だろう。何故お人好しであると自覚する程に、他者を助けようと願うのだろうか。

雨の音が、遠く聞こえる。
そういえば────あの日もこんな、土砂降りだった。
雨の音、サイレンの音、悲鳴、怒声、嗚咽、色んな音がごちゃ混ぜになって聞こえた、あの日も。


……────なんて、意味のない追想だった。なので思考を中断する。断じてこの想いは、サイバーズギルド等ではないから。
自分の意志だ。脅迫された訳でも強要された訳でもない。だから、誰かを助けたいと思うのは────結局は自分の為だろう。


「自分の為、ですね。より正確には、自分が後悔しない為に」
「だって────後味が悪いのは、嫌ですから。嫌な思いをしない為に、できるだけ手を伸ばすようにしています」

「子供っぽい我儘ですが……────もしかして、迷惑でしたか?」

善意は時として望まれない場合もある。良かれと思って差し出した手が、いつの間にか偽善の記号を孕んでいるように。
けれども今は、彼女に話しかけたことを後悔していなかった。その空虚な存在を放って置くなんてできないから。


「……───何か、辛いことでもありましたか? こんなこと、尋ねるのは図々しいこと承知の上ですが」

「一応、こんな形でも警官ですから──少しくらいなら、力になってあげられる…………かも」


215 : 【執事無敗】 :2017/06/24(土) 00:30:17 hJj7Y20c
>>213
どうやらキマイラは息絶えたようだ。

そして一息つく女騎士。
右腕の火傷と称せる怪我を見て彼は救急箱を取り出した。

「よければこれで手当てを……私がしてもよろしいのでしたらすぐに致しますが……どうしましょう?」

そう言う彼は別にどちらでもといった顔をしていた。


216 : 【幽明異郷】 :2017/06/24(土) 00:50:54 n/2pYPto
>>214

「……自分の、ため」

呟き、反芻するように繰り返したその言葉は……どこか、虚ろなだけではないように思えた。
その感情の正体は依然分からない。泥水の中に小さな小さなガラスを落としたときみたいに、一瞬だけ波打つけれどすぐに紛れて見えなくなってしまう。
けれど……悪いもののようには見えなかった、気がした。

……降りしきる激しい雨。遠くで響く恐ろしい雷の音。どこかで警報が鳴っている。
ああ……本当に、洪水になるのかなと空虚な頭の片隅で考えて。あの日はどうだったろうと、奇しくも同じく追憶に浸る。
だけど決定的な違いは一つ。未来へ進んでいるか、過去に縛られているか。
だから、そうか……このひとはこんなにも眩しいんだなと、少しだけ泣きたくなったから。

「……あなたは……すごいね」

深く、深く、より深みへと沈んでいくように俯いた。
もう傷つきたくなかったから。とうに朽ちた心に、また罅が入るのは嫌だったから。
だからひたすら目を逸らす。直視に堪えない、見たくない。目が潰れてしまいそうになるから、どうか視界に入ってこないでよ。

迷惑だ。不愉快だよ。なんであなたみたいなのが目の前に現れるのと、理不尽と分かっていても嫌な感情が湧きあがる。
口ぎたなく罵りたくなる――嫌だ、そんなことはしたくない。力いっぱい突き飛ばしたくなる――嫌だ、ひとを傷つけたくない。
相反する感情が渦巻いて胸が破裂しそうになる。何もかもここで吐き出せたらとても楽なんだろうけど、それをしてしまえば今度こそ完全に壊れてしまうと分かっていたから……。

「……だい、大丈夫」

なんとかその言葉だけを絞り出す。
彼女の好意を拒絶することにも忌避感はあったが、駄目なのだ。受け入れられない。

「あなた、は……どうかずっと、そのまま誰かを照らしてあげて。……わたしはもう、……大丈夫、だから」

自分みたいな、とっくに終わっている人間に関わらせてはならない。
自分はもう、何者にもなれないんだ。終わっているんだ、死んでいるんだ。
消えてしまう……わたしがわたしでなくなる。消えてしまうのは、嫌だから。


217 : 【一刀全剣】 :2017/06/24(土) 01:17:34 mdrwoGN.
>>216

それはきっと、拒絶の言葉だった。
この善意は彼女にとって望ましくないもの。差し伸ばした手を、相手が必ず喜んで掴んでくれるとは限らない。
だから、諦めるのが堅実なのだろう。誰にだって、どうしても受け容れられないものは存在するのだから。

なんて────すっぱりと諦められるような、器用な人間ではなかった。
そもそもその身分は通りすがりの一般人ではなく、一人の警官であるのだから、その行動は善意ではなく義務である。
はいそうですか、それじゃあこれで────と別れてしまうようでは、色んな意味で警察失格だろうから。


「……────貴女に何があったのかは理解りませんが。きっと、私なんかには理解りもしないのでしょうが」

なので、踏み込んだ。其れが最適解だなんて、欠片も想いはしなかったが。
けれどもそうしなければ、後で必ず後悔するだろう。嫌な思いを抱くことになる。それよりは────マシに違いない。
自分の為であり、警官としての責務であり、そうして幾つのもの理由を添えて行動する。ああ、やはりズルい人間だ。


「私に照らせるものなんて、少ししかありません。偶々、手の届く範囲にいたものだけにしか」

「だから……───せめて、鬱憤の捌け口位には、利用してくださっても。こう見えて、打たれ強さに自身がありますから」

基本的に不器用だった。複雑な想いを秘めた相手の心を解きほぐすような言葉がすらすら吐けるような舌もない。
なので。真っ直ぐに向き合うしかない。其れがどれだけ下手くそな方法だったとしても、この細やかな縁を切るよりは良いだろうから。
それに────例え何が起きようとも、多少のことならこの雨が洗い流してくれるだろうから。


218 : 【幽明異郷】 :2017/06/24(土) 01:22:53 n/2pYPto
>>217
//すみません、そろそろ落ちねばならないのでよろしければ凍結をお願いしたく……!
//また夕方ごろか、もしくは昼過ぎくらいに返せると思いますので!


219 : 【一刀全剣】 :2017/06/24(土) 01:27:09 mdrwoGN.
>>281
//了解です、ここまでありがとうございました…


220 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/24(土) 11:19:10 VBmRIdLU
>>201

彼女の言葉に対しての返事は舌打ちのみ。多くを語らぬ言葉でもない声。
しかし、彼女がそれを己が問いに対する答えと解するに十分であった。

得物を握り締め、駆け出す彼と同時に。前に楽しげに弛緩した表情から
気を引き締めた様に神妙な面持ちへと変わり、同時に右目に力を込めて彼を睨む。

それは即ち―――彼女が瞳術を使うと言う事に他ならない。
彼の能力が加速であるならば、彼女の瞳術は解析と封殺である。
彼の能力が常時発動しているモノでも無ければ能力による副産物も無い。
そう踏んでか、彼女は眼帯にて抑圧していた右目の瞳術を発動させたのである。

彼を右目で睨めば、恐らく彼の能力は一時的に封じられる。
しかし、それには右目の激痛というリスクと
"己が内に潜むもう一人"に主導権を奪われかねないというリスクが生じる。

そのため、彼の能力の封殺がなされたかを確認することなく
彼女は重力に身を任せ前方に倒れ込み落下の速度に
渾身の脚力を上乗せした突進力をもって低空からの当身を繰り出す。

「――ねぇ、君は何処まで拒み続けられる?抗える?
 "私が私である内に"っ…答えてほしいな」

倒れこむ間際に響く言葉。

それは人を愚弄するような態度や。人の傷口に塩を塗りたくる言葉ではなく。
底冷えするような声色と、ある種の焦燥を滲ませた嘆願であった。

そして彼の斬撃と彼女の当身。この攻防の結末は如何なものになるのか。


221 : 【幽明異郷】 :2017/06/24(土) 16:36:36 n/2pYPto
>>217

「――――」

……それがいっそう眩くて。
温かくて優しい太陽みたいな光に目がくらんでしまう。

きっと――……きっと、ここですべてをぶちまけられたのなら、自分は少しだけ救われるのだろう。
心は水によく似ている。放っておいても簡単に濁ってしまうから、誰かが綺麗にしなければそのままどんどん汚れていくだけ。
積もり積もった泥を少しでも掻きだせるというのなら、それは紛れもなく救済に他ならない。涙さえ流して喜ぶべきことだった、から――。

「うるさい」

そんなことは絶対に認められなくて。
短い罵倒の言葉を吐いて黙り込んだ。

……自分はずっと、未来永劫このままでいなければ駄目なのだという強迫観念。
幸せになってはいけないという、彼女の過去に起因する呪縛が今も心を締め付ける枷となって苛んでいた。

「……ごめん。ごめんね……あなたは、悪くないよ」

悪いのは自分。罵られるべきなのも自分。殴られても唾を吐かれても文句は言えないほど、わたしはどうしようもなく悪いやつ。
うるさい? どの口がそんなことを。ごめんなさい、ごめんなさい……どれだけ謝っても足りない罪をわたしは犯してしまいました。
消えたい。消えてなくなってしまいたい。でも、でも死ぬのは嫌だ。痛いのは嫌だ。傷つくのは嫌だ……。
乾いた心が再び軋んだ。

……ふらりと立ちあがる。

「……ハンカチ、ありがとう。あなたは、優しいひとだね。……わたしのことは、気にしないで」

ゆらゆらと、頼りなく風に揺れる枯れかけた草花のように。
彼女から渡されたハンカチを使いもせずベンチに置いて、雨の中へと消えようとしていた。


222 : 【一刀全剣】 :2017/06/24(土) 18:39:24 P3lzyJfY
>>121

やはり、拒絶されてしまいました。こんな言葉が相手に届く筈もなく。
煙る雨の中に消えていくその背中を、黙って見送ることしかできませんでした。

雨音を聞きながら、手を伸ばせなかったことを悔やむ。思えば、悔やんでばかりの20年間だった。
きっと、いつ迄経っても未熟なまま、これからも後悔を重ねていくのだろう。


「……ええ、五月蝿いですよね。当然、その筈です」

「けれども、警官のお節介だなんて、五月蝿いだけのものでしょうから、ご勘弁を……────なんて、もう届いてないでしょうが」

苦笑いを溢して、小さな溜息。

側に立てかけてあった刀にそっと触れた。雨に濡れた鞘は、ひんやりと冷たくて。
これ以上後悔するのが嫌で、剣の道を志したけれども、果たしてあの日から少しは強くなれただろうか。
そんなこと────考えてしまう時点で、答えは決まっているだろうに。


雨はまだまだ止まないけれども。
歩みを止めてしまう訳にもいかないから。


//こんな感じで、〆で。絡みありがとうございました…!


223 : 【幽明異郷】 :2017/06/24(土) 20:21:06 n/2pYPto
>>222
//ありがとうございました!不安定なキャラの回し方で申し訳なかったです……!


224 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/24(土) 21:46:21 Chrdwl.o
>>220

「あァ―――――?」

肉体の枷を外す。言ってしまえば只の人間的な機能を破壊するだけの力であり、それは決して『能力』と称されるものではない。
然し、何故か。本当に不思議なことでは在るのだが――――彼女の持つ瞳術とやらの範囲内であったらしい。恐らく、彼が持つそれが先天性だったことに由来するのだろう。
人間の脳とは一定の力をセーブする。一般的な常識を当てはめて考えた時、任意で、しかも生まれたときから出来たとなれば、紛れもなく一種の能力である。
だから、高速で疾駆していたはずの体級に自らの制御を離れたような間隔と共に、自らの肉体に彼女の脚が突き刺さったのは必然だった。

脳が揺れる。急激な加速と減速に耐えられない肉体が血液を逆流させるような感覚を当て、脳みそがシェイクされる不快感が視界を埋める。
何か彼女が口走った様子が視界の端に見えたのだが、言葉を吐き出すような余裕など一切なく。唯でさえ不格好だったと次期から、更に無様な結末に落ち着いた。
口元を動かして――――声こそ出なかったが、「何時迄も」と吐き出したのが見えているか。きっと、彼女の眼なら見えているだろう。

然し、脇腹を刺された傷がまだ治りきっていない所に丁度衝撃を受けた彼はその限りではなく。じんわりと傷口が広がって、段々と意識が薄く、細くなっていく。
死ぬことはない。それほどの傷ではないし、食らったのは斬撃ではなく只の当て身である。死ぬことはないが、だからといって意識を保っていられるほど、彼の精神は強くなかった。


225 : 【騎士三誓】 :2017/06/24(土) 23:23:46 .vzywaiM
>>215

「……終わりましたね」

ただの魔獣を一匹狩っただけなのだが、やはり疲労は大きい。
木に背を凭れたまま、女騎士は魔獣の血に塗れた刃を雨に晒していた。

「いえ、その心配は……、ありますね。よろしくお願いします」

いつもであれば、この程度の負傷であれば治療は施さない。
だが、今回ばかりは状況が見通せない。先程はキマイラであったが、それ以上の魔獣も居る可能性がある。
それ故に、小さな負傷が命取りとなりえないのだ。


「では、魔力源の捜索を再開しましょう」

大剣を背にかけて塔楯を左腕に固定すると、再び歩き出した。
多少の疲労と腕の火傷があるとはいえども、まだ動けなくなる程ではない。
魔力源の破壊を行い、この状況を脱することが一番だと考えていた。


226 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/25(日) 00:00:12 GjPobkoY
>>224

彼の体にめり込む彼女の脚が得たのは達成感や喜びではなく、それとは対極であった。
それに加えて、「何時迄も」という声にもならない呪詛の声を目の当たりにして、顔色を曇らせる。

「何時迄も、か。うん、その通り。何時迄も、だよ。
私が答えに至る時迄。或いは私という存在が淘汰される時まで。そうせざるを得ないんだ」

足下にひれ伏した彼を見下ろしながらも、言葉は続く。堰を切ったように激しくも穏やかな口調で。

「キミも私と近い状況かもしれないと思うんだ。キミは殺せないことに、苛立ちと戸惑いと葛藤を抱いているように見えた。」
「それは詰まるところ己の今のあり方を定めきれてないからに思える。自分が自分で無い、謂わば宙ぶらりんの状態に思えるんだ。」

言葉を続けながら彼女は彼の傷の手当をするべく、自分の上着の袖を破り彼の脇腹に巻き付ける。
ダメージの程度からして死ぬことは無いと思っていたが、そうしたのは彼への無礼に対する詫びーーのつもりであるのだろう。

「だからこそ、面白いと思い興味を抱いた。もしかしたら私が私であり続ける術を見いだせるかもしれないから」

それはまるで懺悔のように。
それはまるで弱音を吐き出すように。
『何処迄も』身勝手で、自分本意であった。


227 : 【龍神変化】 :2017/06/25(日) 00:22:39 oX3aflfw
>>210

攻撃性を解き放つ。ゆらりゆらりと揺れる黒い風を、黄色い眼で追いかけ、捉えると、強靭な尻尾でそれを薙ぎ払う。
汗ばむ程のじめりとした湿気の中、龍でも人でもない怪物の女は、冷静な思考を破壊していく、自らの暴力性が湧き上がるのを感じる。
だがそれでいい。ほとんどの場合において冷静さは重要だが、本当に危険な土壇場においては、それはむしろ邪魔になる。
本能的な、直感的な暴力。つまり彼女は戦争となり、災厄となり、つまり、龍になろうとしていた。

折角の気遣いを、それは余計だと言わんばかりの少女の反応、女は思わず ―― 久しぶりに、口元が綻んだ。
いけすかない小娘だ。不愛想で、口数は少なく、何を考えているかわからない表情。何とも神経を逆撫でしてくれるではないか。
その場を去り集落へ向かう少女へ、返事を返さなかった。口数が少ないのは彼女も同様。
 ―― 感傷は棄てた。同情も、共感も。あるのは、燃え滾る焔、それだけだ。だから、綻んだはずの唇、気のせいだったと思える程自然に、硬く結ばれている。

しとしとと降り注ぐ雨は、漆黒の鱗の上をつるりと滑り落ちていく。髪はぐっしょりと濡れ、シャツもベタベタ。非常に不快だ。
泥と化した地面に、靴から突き出した爪が食い込み、食らい付くように体を支える。
そして怪物には似つかわしくない人殺しの利器、6発の弾丸の入ったリボルバー拳銃が、月明りを求めてその銃口を上に向ける。

「命令されるのは、嫌いなんだがな。」

森の奥深くから大量の黒い影が飛び出し、龍人はそれらを射抜くように睨み付けた。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

集落を一望できる場所へ飛び出した少女の視界に写るのは、百鬼夜行めいた悪鬼羅刹たちの暴れる姿だ。
何体かの狼たちがそこら中を走り回り、逃げ遅れた居住者たちの死体を喰い漁り回っている。
それでは生存者たちは全ていなくなってしまったのかと人影を探すだろう。人影は、そこかしかにいる。
だがそれは、明らかに人間ではない。目と口から黒い涙を垂れ流し、何かを求めて徘徊していた。
身なりは比較的綺麗で、それらが先程までは普通の人間だった事を示唆している。

アンデッド。死者の上位者である吸血鬼の本来の力だが、山の力を利用して増大しているよう。
不死者の血を分け与えられたものは、同様にアンデッドとなる。失くしてしまった生気を求めて徘徊する、亡者に成り下がる。
とにかく狼とアンデッドの数が多いことがわかるだろう。龍人が注意を引いているとはいえ、集落の中にも簡単とは言えない量で満ちている。

 ―― 大量のアンデッドが集まっている屋敷がある事がわかるだろう。木造の小さな長屋といった風で、象徴的な装飾のされた家は、集落の長のもの。
数体のアンデッドが扉を叩き、中へ押し入ろうとしているが、内側から押えがされているようで、突入には至っていない。



/遅れてすみませんっ。どんどん進めても大丈夫ですよ…!


228 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/25(日) 00:35:28 eM82/KlQ
>>226

薄れ行く意識の中で聞こえてきた言葉は、まるで子守唄のように心地よく。腹立たしい。
自分に近いと、此方の状況すら見えていないくせに、何を言っているんだと言い返したかった。
けれど、口は動いてくれず。目を見開いて罵倒しようとするイメージだけが湧いては消えて、そして実行することもなく意識は途絶える。
その間、脇腹からわずかに覗く筋肉質な肌と、其処に刻まれた幾つもの傷跡。体を触れば、それがマトモな筋肉で構成されていないことすら分かってしまうだろう。
意識を落とした事で体がほぐれ、撥条のように跳ね返す筋肉はゆっくりと収縮を繰り返す。攻撃を加えた瞬間に飛び起きるだろうが、少し起こした程度では覚めもしない。

彼を置いていくという選択肢は確かにある。言ってしまえば他人であり、彼を助けるメリットもない――今の行動すら、彼は貸しに思わないだろう――恨みだけが募るはずだ。
それでも行動で返したのは、彼女の言うように『自身と似ているから』なのだろうか。わからない……が、その前に行った言葉はたしかに彼の中に響いている。
暗くなった思考の中で、言葉が幾度も反芻される。共感してしまった過去と、彼女の言葉が混ざり合い、まるで彼女が本当に自身と同じ境遇であるかのように錯覚する。

自分が自分であるために、彼が彼であるために、私が私であるために。言葉が混ざる。彼女の言葉と、彼の言葉。混ざって混ざって――――何方が本物なのかわからなくなってしまった。


――――

少し経てば、彼はきっと目を覚まし、バツの悪そうな――傍目からは睨んでいるようにも見える仏頂面――で、もし彼女が此処に残っているのであれば、こう言う筈だ。

「何時か、殺す。」

精一杯の脅し。意味としては―――――今は殺せない。即ち、既に彼女に対して振るう刀は『鞘にしまわれる』ということだ。


229 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/25(日) 01:14:48 WKYR8/rg
>>228

傷の手当ての後、彼の隣に座りこみ、彼女は物思いに耽る。
鍛えられた身体より垣間見えるは、彼の過去であり今を形作った証(きずあと)。

「――羨ましいよ。君を形作ったであろうものをその身に刻んで、携えて。
 私には今に至るまでの全てが欠落してるから余計に羨ましい。…とても」

独り言。虚無的な表情と共に向けられた羨望の眼差し。
彼女には今を形作っているものさえ覚えていない故の眼差し。
自分に無いモノを垣間見て、思わず嫉妬さえ覚えてしまいそうだった。

それを最後に彼女は言葉を口にせず、彼の目覚めを待った。

そして、その時は訪れる。仏頂面と憎まれ口と共に彼は起き上がる。
待った甲斐があった。そう言わんばかりに彼女も返す刀で――

「やあ、良く眠れたようだね。重畳、重畳。
 寝起きでそれだけ威勢が良ければお話も出来るね」

憎まれ口を叩く。彼とは対照的に出会った時と同じ表情を浮かべてはいたけれど。
彼女の青色と赤色の双眸は、"殺せるときが来ればいいけれど"と暗に告げていて。

詰まるところ己の先程の感情をひた隠しにするために平静を装っていただけの事である。


230 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/25(日) 01:28:25 eM82/KlQ
>>229

「―――――チッ。」

目が冷めってからの第一声は、小さな舌打ち。

「話すことなんて――」と言葉が喉まででかかって、それを飲み込む。先程までなら確かに刃を向けていた言動だが、よく見ればそれらは何処か白々しい。
先程のような飄々とした動きすらも、一度意識を切り替えた彼にとっては違和感として映ってしまう。何故だろうかと疑問符を浮かべて、そして無意味だと斬り捨てる。
彼女のことを知ってどうするというのか、自身の境遇を話したところで変わらないのと同じように、彼女のことも気にするだけ無駄だ。

知ってしまえば関わってしまう。共感してしまえば、二度と斬り捨てることができなくなる。ある少女から植え付けられた感情を頭を振って追い出して――ゆっくりと立ち上がった。

それから数歩ほど歩き、壁により掛かる形で背中を付けて後方からの不意打ちが来る可能性を消す。腕は組まれず、だらりとした左腕がやや不気味だ。
右手は袴のような下半身の和装にあるポケットに突っ込まれていて、警戒心だけは説いていない。
然し、視線だけは確かに彼女の方へと向いていたから――――関心は在るのだろう。何を口走るか、何を求めているのか。

語らずとも、目は口ほどに物を言う。彼を此処まで煽ってまで彼女が手に入れたかったものとは何なのか。
聞いてもいないが、先を促すように。「何時迄も」抗い続けると言った口元は、唯一のプライドなのか固く引き締められて履いたが。


231 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/25(日) 01:41:46 WKYR8/rg
>>230
//すみません。申し訳ないのですが凍結をお願いします。
//次の返レスですが恐らく20時ごろになります。


232 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/25(日) 01:46:04 eM82/KlQ
>>231
//凍結了解しました。では一旦お疲れ様です……!!
//時間についても了解しました!


233 : 【一刀全剣】 :2017/06/25(日) 16:54:49 9Qgmm0Gs



────────路地裏の冷たい地面は、土と埃の味がしました。



闇夜の悲鳴を聞きつけて、一般市民に危害を加えようとする暴漢の前に、警察手帳と刀を携え颯爽と立ち塞がったのがつい十数分前。
然し想定外だったのが暴漢か徒党を組んでいたこと、そして全員が全員能力者であったということ────まあ、何それ巫山戯んなと言う他なかったが。
犯罪者相手に通ずる道理も在る筈なく、飛び交う電撃炎撃その他諸々を只管躱し続け、同時に一般市民君を逃しつつの大立ち回りを演じることになってしまって


結果として────こうして襤褸雑巾のような姿に成り果てながらも辛うじで首の皮一枚繋がった訳だった。
腕の感覚が一切なくなるまで刀を握り続けた経験など随分と久方ぶりな気がするが、寧ろ敵を全員撃退させるまで良く保ってくれたとさえ思うけれども。
但し立ち上がる気力も体力も既に残されていない為に、こうして地面にぶっ倒れて立ち上がる為の体力が回復するのを只管待っている最中だった。
ああ、この姿を見てまさか天下の警察官だとは誰も思うまい。どう見たって暴力沙汰に巻き込まれた浮浪者の成れの果てとか、そんな姿だろうが。


「………───痛つ、あー…………スーツ、下ろし立てだったんだけどなあ……」

刀を杖の代わりにして、愚痴を零しながらも立ち上がる。スーツを確認してみれば所々破れたり、焼き焦げていたり、散々な状態だった。
身体の方の傷に関しては、元から打たれ強いこともあってそこまで問題ではなかった。頑丈さはこの身にとって数少ない取柄の一つだから。
緊張の糸を解いて、小さな溜息を吐いた。既にチンピラは退散した後で、襲われていた一般人も無事に逃げ果せたことだろう。
後は面倒であろう報告と待ち受けているであろう説教の覚悟をしておくだけ────まだ、どうにも熱意が空回りすることが多いけれども。


…………────────ちゃきり、と鍔音を弾かせて。
納刀したなら彼女は艶やかな黒髪を靡かせて、夜の路地裏を歩き出した。



//置き進行で、絡み街


234 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/25(日) 17:28:05 EiZllTx.
>>227

落下していく最中にチラリと見えた大まかな全景だけでも、それは一目瞭然であった。
囲いに閉ざされた地上に蔓延るのは、何十何百とも知れない魑魅魍魎による夜行。
つまりは此処もまた、人外の掌中に落とされる寸前であった。
およそを把握するや否や、始末屋は頭部側を下にと傾け、落下する自らの全身に廻転を与えた。

(朱刀流――――――)

地上へと頭から落ちていきながらも、腕を交差させて刀を構える始末屋の、しかしその行き先は屋敷の屋根であった。
屍人や群狼の群がる波に飛び込み、いつ終わるとも分からない一騎当千に身を投じる腹なんてない。
屋敷内にこの一連の事態に心当たりのある人間が居たなら、有用な話を聞けるだけ聞きだすまで。
もしそのような者がいなかったなら、この屋敷もとい集落一帯から離脱して、敵の本体を探しに往くまでである。

別れる直前にて、彼女が確かに〝吸血鬼〟と言っていたのを、始末屋は鮮明に覚えていた。
もしこの一帯を取り巻いている現象の根源が一体の人外であるのなら、恐らくは斬る事もできるはず。
何処かに所謂〝心臓部〟が存在しているならば、その〝核〟さえ潰せば依頼は遂行できるはず。

それら総ては推測でしかない。仮にも本体を斬れたとして、この悪意の奔流を鎮められる確証もない。
それでも拙い推測に委ねるしかなかった。それ以外に取れる手段もないのだから。

(……――――――〝野茨〟)

屋敷に衝突する直前で、交差していた両腕を振り放ち、屋根上部に刀を叩き込む。
小太刀特有の短い白刃を鍔付近まで喰い込ませて、屋根裏を通り越し、屋内の天井にまで届かせる。
そして回旋する自らの躯体の慣性に、さらに上体の捻りを加えて―――――斬り抜いた。

降り立つ前に空中で一前転して脚が下になるよう体勢を整えると、斬り開いた孔の奥へと落ちていく。
屋敷内に誰か生存者はいないか、床に着地するまで眼球を動かして辺りを確認しながら。


235 : 【龍神変化】 :2017/06/25(日) 17:52:21 oX3aflfw
>>234

屋敷の中に飛び降りた少女。ぐるりと見渡せば、あなたのほうへ視線を向ける数人の人間の姿をあるだろう。
老若男女様々であったが、身なりからしてこの集落の人間たちであるのは間違いない。
何人かは部屋の隅で震え、何人かは悟りでも開いたかのように静かに座っていた。
屋敷の外から聞こえる、まるで地獄からの呼び声めいたおびただしい呻き声は、B級ホラー映画のワンシーンのよう。
幾つかの小さな電灯の明かりだけが部屋に広がり、絶望の影がさしかかった表情を一層暗いものに見せる。

村の長と思わしき老人が、突然現れた少女に向かってしゃがれた声で話しかける。

「人間のようだな。それも刀を持った帝國人……だが、お前でもどうにもできないだろう。
 諦めなさい。生存者はこの広間にいるので全員……おしまいだ。」

広間と思しきその部屋の壁には、数丁の猟銃が立てかけられているにも関わらず、誰も手に取った様子がない。
空気に充満している沈んだ雰囲気は、この部屋にいる人間全員が今の状況に絶望し切っている事を暗に示す。
老人がしきりに言う。"あの戸が破られるまで穏やかに過ごそう"。

 ―― 広間の一番奥の部屋から物音がし、扉の隙間から明かりが漏れているのに気が付くかもしれない。
扉には南京錠が掛けられている。少女の勘が鋭ければ、村人の全員がその部屋へ決して視線を向けない事がわかるだろう。

「外で戦っている、あなたの仲間にも伝えてあげた方がいい。
 抵抗はもう無駄……痛い思いをするだけだと。」

屋敷の外から、空気を震え上がらせる程の龍の咆哮が響き渡ってくるだろう。窓に焔の明かりが差し込み、部屋を僅かに明るくする。


236 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/25(日) 18:35:49 EiZllTx.
>>235

これまた、特に注視するまでも思考するまでもなく状況の大半を理解する。
異能も持ち合わせていない人間が窮地に陥ったなら、こうなるのは自然の理である。
異能を持ち合わせていたとしても、この屍霊の軍勢の前では戦意も生欲も削ぎ落されるだろう。
想定以上に想定範囲内で、故に想定以下だった室内を見て、思わず溜息が毀れる。
尤も、そう流石に上手く事が進んでくれるとも思っていなかったが―――――B級映画でもあるまいし。
肩を落として仕方なさそうに、長らしき老人に向かってツカツカと歩みを進めていく。


「………………悪いけど、そういうベタなやり取りで潰す時間も今は惜しいんだ」

ボソボソ声で呟くが早いか、肢体を思いっきり撓らせ、老人の顔に目掛けてハイキックを叩き込んだ。
殺す気などないので全力で手加減しての蹴撃であり、脳震盪も起こさず、骨も歯も折れる事ない、ただ痛いだけの一撃だ。
その蹴りで老人が吹っ飛ぶにせよ蹲るにせよ、始末屋は一息をもってその合間を詰め、襟首を掴む。
刀を持ったままの片手で宙吊りにする芸当はできないので、老人の足を踏みつけて、倒れないように固定する。

「お前には、お前が知ってる限りの全部を、洗いざらいゲロしてもらう」
「奴等はいつ現れたか、奴等はどこから現れたか、奴等は此処にきて何をしたか―――――こんなつまんないコトで、痛い思いはしたくないでしょ」

誰でも何処でも、どんな状況下でも情報を引き出したいなら〝体に聞く〟のが一番と相場で決まっている。
少なくとも少女は長らくの間、捉えた相手に対する拷問と尋問を幾度も経験していたので、そう認識している。
堅気相手に実行するのは初めての経験ではあったが、もはや悠長に手段を選んでいる余裕もない。
支える手に携えし刃を首元に近付け、押さえる足の力をより強く負荷を掛け、ニセモノの敵意で塗られた紅で老人を睨む。


237 : 【龍神変化】 :2017/06/25(日) 19:10:56 oX3aflfw
>>236

"ヒッ!"

老人は情けない悲鳴をあげた。部屋にいる生存者たちはその光景を、活力を失った目で呆然と眺めた。
何が起こっているかわからないと言った風。扉を叩く不死者たちの動きが勢いづくのに反比例するように、一層沈黙は深くなる。
少女が開けた天井の穴から、小さな雨粒が降り注ぐ。土と葉っぱの濡れた臭い。
慌てた様子で老人は少女に返答する。

「ま、待ちなさい!
 私は何にも知らない!ただ現実的な話をしているだけだ!」

老人の眼の奥深く、渦を巻くように蠢く"黒"をあなたは視るだろう。本当の意味で感情を持たないあなたなら、わかるはずだ。
この老人に ―― 感情はない。ニセモノの敵意と同じ性質の、ニセモノの恐怖に突き動かされている事を。
本人は本物だと思い込んだとしていても、目玉の表情ばかりは、決して嘘を吐けない。根本的に、贋作は本物には成らない。
外で呻いている悪鬼羅刹たちが俗に言うゾンビだとするならば、老人は哲学的ゾンビに近い。

---------------------------------------------------------------------------------------
吸血鬼。空を飛び、生物を魅了し、血を交わす。
闇の溶け、黒くあり続け、心を握り締める。

それはいつも傍にある。

気が付かなければ、皆同胞。地獄は祭り、天には喪服。
---------------------------------------------------------------------------------------

その時、一番奥の部屋の南京錠がひとりでに外れ、扉を押すものが出た。それは全裸の女。
床にまで垂れる程異常に長いの髪の毛、顔は完全に隠れ、いや、恐らく顔は無いのかもしれないだろう。
少女が妖怪や怪物に対する知覚を持っていなくとも、強大な力を持った妖魔というのは、誰にでも直感的にそれをわからせるものだ。
その女は吸血鬼。そして、喋りかけた。

「……その老人は本当に何も知らないわ。私が暗示を掛けただけ。
 まだ少し時間があるわ。少し、話を聞いてくれないかしら。」

部屋にいる他の集落のものたちは、皆一様に吸血鬼の方から慌てて逃げ出し、2人の成り行きを見ている事しかできない。
しかし彼らの眼にも黒い何かが渦巻いているのがわかるかもしれない。 ―― 黒い風が天井から流れ込んでいる。


238 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/25(日) 21:29:22 WKYR8/rg
>>230

「くくっ、全く…キミは素直じゃないな。」

この場に響く舌打ちに思わず、笑みを零す。
恐らく無意識に余裕を取り繕う為に零したのであろう。

苦笑交じりの言葉を紡ぐ間に彼は数歩ほど離れていた。
そして壁を背にしての不意打ちを警戒するかのような彼の位置取りと警戒心に
思わず目で語る――そこまで警戒しなくてもよかろうに、と。

「さて、…今がその時かね。単刀直入に聞こう。
 キミ"も"今の己のあり方に疑問を抱く人間かい?
 それでもしそうなら、キミはどんな己で在りたい?」

「因みに私はそういう人間だ。己の今の在り方に疑問を抱く人間だ。
 それでいてどんな自分で在りたいか想像出来ぬまま流離っているガランドウさ。
 だから、知りたい。――私が私であり続ける為に。私という人格が淘汰される前に」

彼の視線が、彼女に質問を促しているように思えて。だからか、座ったまま彼に顔を向け、つらつらと語り出した。
その際に無意識に右目を手で覆い隠したのは、きっと内に巣食う"もう一人"を抑えようというポーズだったのだろう。

己がどうあろうとするのかなど、書物には書いてない故に。
今この瞬間まで薬師寺結月には、それを問う相手や己を形作る歴史が無かった故に。
 
「こんな事は中々聞けないし聞く機会も、聞く相手もそう居ないから。
 それに答えないとは言わせない。何せ、ほら。キミは私に一度平伏してるだろう」

最後にからかい気味の言葉も添えてはいるけれど、口調としてはとても真面目に。
覆い隠していない左目で彼を射抜くように見据えていた。

//遅れてしまい申し訳ございません…


239 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/06/25(日) 22:56:04 OC00ZeNk
「はい、解った 検診の時にデータも持っていけばいいのね」

携帯電話で会話する少年。
その様子は嫌々電話しているというか、面倒くさそう。
電話では伝わらないのを良いことに怪訝な顔をしたり髪の毛をいじったりしている。

「調子? うんうん、順調だよ! 報告楽しみにね!」

眼が泳いでいる。電話先の相手に嘘で話を合わせているようだった。
電話を切り、深くため息をつく。

「どーしよ、全然順調じゃない……」

夏休みの宿題を滞納した小学生のように、項垂れる少年。


240 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/06/25(日) 22:57:26 OC00ZeNk
>>239
置きになりますが、なんでもどうぞ!


241 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/26(月) 20:07:52 61Dw4GiA
>>238


警戒をするのは、決して相手からの不意打ちを予測しているから『だけ』ではなかった。
必要以上に距離が詰まれば、それこそ『額が付くほどに』接近してしまえばと考えると、恐怖で体が震えるからに他ならない。
女性恐怖症――とはまた少し違う。此方の心のなかに土足で入り込んでくる者達に、彼は酷く臆病になっている。

促した話を耳で聞いてみれば成程確かに、彼女の吐く言葉の幾つかは彼にも突き刺さるものだった。
今現在においての自分自身という存在が肯定できない。どんな自分であるべきかが分からず、どう在るべきかも理解できない。
出来ないことばかりに思いを馳せ、消えてしまえと自分につばを吐きかける。だからこそ、彼は其の口を開いて肯定の言葉を―――――

「――――『己』なんて必要がない。意味がない。」

吐くことはない。まるでそれは軽蔑しているかのように鋭く、その実余りにも自身に似通った現象に腸が煮えくり返っている。
同族嫌悪、というやつなのだろう。見ているだけで、聞いているだけで腹が立つ。いっそこのまま殺してやれと脳髄が囁く程に、彼女という存在そのものが不快だった。
いや、正確には自分もである。このような存在に『共感』仕掛けてしまっている自分が許せない。だから、彼が吐き出すのは全てにおいて否定の言葉以外にありえない。
ありえてはならないのだ。


――――嗚呼、イライラする。


「必要なのは『意義』だ。」
「俺の存在に意義があるか? お前の存在に意義があるか?」

「――――だったら、『今そうやっている自分に』価値なんてあるのか?」

全てが反転する。自身にかけているかのように、目線こそ彼女を向いているものの、その実は彼女を見ているわけではなく『彼女の瞳に映る自分』を見ていた。

「――――無い。無い。必要ない。」

「『己の在り方に疑問を抱けるほど、お前には存在価値があるのか?』」
「在りはしない。在るはずがない。そう思考する時点でお前には『抱く価値がない』。」

自身で自身の在り方を――暗殺者であるという彼自身の存在理由を揺るがした。現状で彼すらも囚われている鎖に、容赦なく牙を剥く。
彼女を否定し、自身を否定する。今この時たしかに彼は彼女を『自身と重ねて』見ていた。だから、言う必要もない、秘めるだけで良い感情が溢れている。
吐き出すように、血を吐くように。一つ一つは地面に散らばり、小さな血痕を残しながら、大地に沈んで消えていく。

「想像ができない? 理解が出来ない?」
「それはお前が『恐ろしい』からだろう。『可能性』に目を向け、『希望』を見ることが恐ろしいからだ。」

希望を望めば、其の裏側には必ず絶望という代償が待つ。奇跡を望めば穴一つ。代償は――――それが叶わないことだと理解すること。
想像するとは即ちそういうことだ。希望を想像してしまうことで、それを失ってしまう可能性を孕む。だからこそ、自身の在り方がわからないと逃げてしまう他に道はない。

「淘汰される前に? 私が私であり続ける?」

「――――――巫山戯るな。」

意味など無い。意義など無い。彼の言葉は感情のままに吐き出され、口調と語尾は自然と荒れ、最後には叫ぶような声音になる。
喉から血の味がした。何を言っているんだと、頭の隅の方で自分が自分を客観視している。下らない、他愛のない言葉遊びだと、冷ややかな目で自分が見ている。
巫山戯るな。自分が、『私が逃げ続けているのに』、誰かに何かを吐く資格などあるものか。黙れ。黙れ。『俺』は黙って其処で見ていればいい。

「『自分で無くなる事すら逃げたお前が、自分で在れるワケ無いだろうが』ッ!!!」

何を言ってるのか、もはや彼女に発したものか、自身に発したものなのかもわからない。
正当性など消え去っているし、先程殺しかけた他人に対してかける言葉としては余りにも白々しい。
彼女にとってもしかすれば見当外れでしか無い言葉かもしれないし、既に一度通ってきて、再度彼に聞いているだけなのかもしれない。
だが、然し。彼にとってそんな事などどうでも良かった。ただ―――――苛立ちのままに言葉をぶつければ、ココロの中にある『ナニカ』が、砕けてしまうような気がして。


242 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/26(月) 20:12:29 61Dw4GiA
>>241
// × ただ―――――苛立ちのままに言葉をぶつければ、ココロの中にある『ナニカ』が、砕けてしまうような気がして。
// ○ ただ―――――苛立ちのままに言葉をぶつけなければ、ココロの中にある『ナニカ』が、砕けてしまうような気がして。


243 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/26(月) 22:29:01 9fj9QHtg
>>241

二人の居る空間に響くは苛立ちの絡んだ言葉と突き放す様な言葉。
刃の様に鋭利な言葉は次第に耳朶を震わす絶叫にも似た咆哮へと変貌して。

「言ってくれる…。無から有を捻り出すなど容易だと言わんばかりだな。
 キミには今までを形成する記憶や過去があるからそんな事が言えるんだ。」

その咆哮が終わりを告げた後に内側から込み上げる感情は、激情であり。
そんな彼女の口から吐き出される言葉には剣呑さが内包されていて。
先程までは崩れなかった冷静さが徐々に崩れ始めていた。

「キミが気を失っている間にキミの体に刻まれた傷跡を垣間見て思ったよ。
 "羨ましい"ってね。今までの自分の軌跡を身体に刻めば私もそう思えるかい?
 私には今の自分を形作るものさえ無いんだ。」

その意味において存在価値があるのかという事に対してさえ『抱く価値が無い』。
確かにその通りであろう。まず以って彼女と彼では立つ土俵が違う。

彼は、一度自己を確立した上で揺らいでいて。
彼女は、一度たりとも自己を確立せずに揺らめいて。

「ああ確かに恐ろしい。けどそれは可能性や希望を見る事に対してじゃない。
 私が己のルーツを知らない事に対してだ。」

それ故に、彼女は己に足りないものを少しずつ自覚する。己の成り立ち。己のルーツ。
自分が自分であるといえる証。しかし、彼女は感謝の言葉を口にしない。
寧ろ激情を火に油を注いだかのようにヒートアップする。

「それに断っておくが私は決してふざけているワケではない。
 寧ろふざけているのはキミだろう。"何者でもない"、数ならぬ身の私には
 逃げる先さえ無いのにッ!そんな御高説を頂けるなら――」

―――ついでに自己の確立についても御高説して欲しいものだッ!!

いつの間にか手でふさいだ右目も露となり、売り言葉に買い言葉で答える彼女。
彼が彼女の瞳を通じて移る彼自身を見ている事など露知らず。
射殺す様に。睨み殺す様に。彼の双眸を覗き込みながら次第に乱心の様相を呈していた。

一度彼を平伏せたはずなのに、精神的にひれ伏せられた錯覚さえ覚える彼女は
彼の言葉はほぼ正鵠を射ていると頭では理解していたが、駄々を捏ねる子供の様に喚き散らさずには居られなかった。
キミ自身の言葉はキミにも当てはまる部分が殆どであるだろうと言わんばかりに。


244 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/26(月) 22:53:49 gmE6xhJM
>>237

「……――――――――?」

老人の瞳に渦巻く黒に違和感こそ抱いたが、理解するまでには至らなかった。
如何に表面上の性質が似ていると云えど、根を成す根本の所以が違うのだから当然と云えば当然。
ただ漠然とした名前も分からない違和感を、老翁に垣間見えたのみであった。

何にせよ居留まり続ける意味がないなら、また天井の穴に戻って今度は敷地外を捜索しなければ。
そう結論づけかけた思考回路は、不意に屋敷の奥から鳴った開錠の音が遮られた。

「――――――――――――…………」

全神経が、其れが如何に強大で甚大で極大な存在であるのかを即座に感じ取った。
その妖気は、会敵を確認した瞬間に斬りかかる気だった始末屋に、ブレーキを掛けるには十分だった。
早々に片付けなければ―――という焦燥に近い感情を、無自覚ながらも湧かせた少女をクールダウンさせた。

明らかに不服そうに眉間に皺を寄せながらも、用済みとなった爺を雑な手付きで放り棄てる。
そして抜き身にしていた両の刀身を、腰元に括りつけてあった鞘に納めた。

「なるべく手短に、お願い。僕が手当たり次第に斬り捨てない保証は、ないから」

その行為は己が得物たる刀刃と共に、戦意や敵意を完全に納めると同時に鎮静させた訳ではない。
ただ抜刀からの居合斬りの方が、臨戦態勢に戻る際の初太刀として適しているだろうと単純に踏んだだけの事。
鯉口を切って右手を柄に携え、踵を僅かにだけ持ち上げる事により、何時でも〝牡丹〟を打てるように。
何時でも〝最速〟の剣戟を浴びせる状態へと移行出来るように―――と、それだけ。
それだけして、裸女の言葉を一先ずは聞こうとしていた。

/昨夜は急用により離席して申し訳ありません…置いておきます


245 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/26(月) 23:03:38 61Dw4GiA
>>243


「―――――ハッ。」

射殺すような。もし瞳に相手を殺せる力があるのなら、このまま迷わず殺してやるとでも言うように、彼女の眼が彼を打つ。
然し、叫ぶようにして叩きつけられた挑発を彼は鼻で笑う。それこそ『証明できぬ悪魔を見つけた』といった表情で。

記憶が無いから、軌跡がないから。自身の確立ができはしない。

――――――『本当に?』
本当に彼女には何もないのか、記憶も、過去も、自身を指針とする何もかもが存在しないというのなら、彼が掛けられる言葉など無いだろう。
何故ならば、彼は記憶をなくしたことがない。封じ込めている記憶は在るが、決してそれらはひとりでに消えていったわけではなく、自身の意志で封じたものだ。
彼女が言うように、自身という存在を証明する唯一のもの――記憶――が無いと言えば、彼には何も言えない。言えるはずがないのだ。
『共感』とは相手の立場になって考えること。それに感化されてしまった彼が言葉に詰まり、思考は螺旋を描き始めるまで数秒もかからない。

「――――んなもんできるならなァ!!! とっくの昔にやってるってんだよォ!!!」

だから、生まれそうになった感情を怒りで塗り潰す。奴に共感してはならない。もし少しでも偏れば、其処からは重力に引かれるが如く真っ逆さまだ。
自分の事のように――事実、自分と重ねて吐き出した言葉だからこそ、それは程よく体に刺さり――鮮血に心が悲鳴を上げる。
悪魔の証明。在るものを在るものとして証明できるが、無いものは決して証明できない。記憶がない――自己を証明するものがなければ、証明はありえない。
そんなことはわかっている。黙っていろ。脳髄が焼ききれそうなほどに熱く、泡立つような感覚は脳内麻薬にも似て不愉快だ。

「そんなに証明したいなら、此処で俺が証明してやる。」
「お前を殺して、中身を裂いて、『在ったことを証明してやる』。」

駄々をこねる子供のあやし方など彼にはわからない。何故ならば自分も同じようなもので、自身を沈黙させるものは暴力であると相場が決まっていたからだ。
痛みがある、痛みしかない。何度記憶がなければいいと願ったか。在ったところでそれが良いものだとは限りはしない。
なんて言葉を吐いてしまわないほどには彼には分別があった。怒りの中でも、自身の中に存在する境界線だけは踏み入れないように、思考する脳があった。
彼の回答は『黙れ』それのみに尽きる。反論ができないから、駄々をあやす術を知らないから、唯でさえ自身へと跳ね返るそれを無理矢理に押し潰そうとして――

「傷が欲しいなら刻んでやるよ。」

「『自分が男なのか女なのか、それとも別の人種なのか、そんなもん全部ひっくるめて「削られた」』」
「――――俺みたいになァッ!」


246 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/27(火) 00:08:20 3HSgajiY
>>245

「へぇ…一度私に負けた癖に大きな事を言うんだ
 キャンキャン吼えて、喚いて。少し前まで黙れ黙れと言っていたのが昔日に思えるよ。」

二人の狂熱は益々昂ぶる。もはや止まれぬと声高らかに叫ぶんでいるよう。
そんな折に耳にすうっと入ったある言葉―――存在の証明という言葉は
激情に身を委ねつつあった彼女の理性という抑止のスイッチを全力で破壊した。

「けど、良い事言うじゃないか。過去の私が解らないでも私が私であると
 証明してくれる術だなんて。――良いね、実に良い。」

『それにお主が先刻出来なかった"人殺し"が出来て、望むままの自分に成れるではないか。
 お互い願ったり叶ったりじゃ。まぁ、願いが叶うのは私だけであろうがの。』

加熱する感情が彼女の心を激しく揺るがしたその時。
彼女は彼女で在りながら、同時に"己が内に潜むもう一人"が顔を覗かせる。
先程までの結月とは異なる表情を浮かべ、口調も邪気を含ませていた。
穏やかに微笑を浮かべつつ、口元を半月に歪ませる笑みもそれらに混ぜて。

『「ぐっ…あっ…」』
『「…先刻は手加減やったが、もう手加減はナシ。
 というより、手加減…ッ、 出来ぬッ/出来ないッ!!」』

二つの人格が鬩ぎ合いながら、身体の主導権を譲らぬと言わんばかりに結月は立ち上がり、構える。
それが証拠に、声色が二つ重なったような錯覚を覚えるかもしれない。

一つの器。二つの人格(ペルソナ)。冬虫夏草のような関係でありながら。
この時は二つの人格とも同じ方向/彼の姿を見据えていた。
赤色の右目と蒼白の左目は一つの対象に向けられ、左右の瞳術を発動させる。
――本当に、射殺そうとして。綯交ぜになった様々な感情を塗り潰そうとして。

『「うッ…ぐうううぅぅ…。キミの能力は知ってる。お前の目を見た時に知った。
 こうされたら――…ご自慢の脚の速さは、…ッ披露できまいて/出来ないでしょ」』

瞳術を使う事による激痛が彼女の眼球に奔る。
眼球の中で百足が激しく蠢き回るような痛みが襲う中、限界まで瞳術を使い続けるであろう。
それほどまでに、思考は塗り潰されて。それほどまでに、存在の証明をしてもらいたくて。


247 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/27(火) 00:24:07 qEqrUImY
>>246

「能力だァ――――?」

突如として声が二重に重なるような違和感を出した彼女が言う。まるで一人の中に二人入っているような―――。
ああ、『そんなところまでにているのか』。吐き気がする。驚愕と困惑は思考の外へと放り投げ、相対するは『4つ』の瞳。

重なった声の言ってる意味が、彼にはわからない。能力を知っていると言われても、彼は元々『無能力者』であるのだから、足の速さは純粋な筋肉の性質によるもののはずだ。
筈だった。然し、突如として自身の平衡感覚が『グラついた』事を起点に、今まさに抜刀しようとしていた右手が空を掠り、縺れた脚は体ごと地面へと叩きつけられる。

「は―――――!?」

呼吸が出来ない。まるで全身の筋肉が痙攣しているかのように収縮を繰り返し、自身の肉体を強制的にかき混ぜられているような不快感。
彼は知る由もないが、彼の肉体は選定性の奇病とも言えるものであり、無能力でありながら『異能』にすら匹敵する肉体性能を持つが故、彼女らの瞳術に『かかってしまった』のが原因である。
表れる効果は能力の封印。それを彼に対して当てはめるのならば、『特殊な筋肉を封じる』ということに他ならず、つまりは自身の肉体すらもまともに動かせなくなるという『詰み』の状態への移行を示していた。

酸素が足りない。思考が足りない。視界は明滅し、前に何があるのかさえ段々と分からなくなっていく。
筋肉が活動を停止すれば、近いうちに心臓や他の臓器の機能も何れは停止するだろう。時間は刻一刻と迫り、だが前に進むだけの気力すら絞り出せない。
殺す。そう願っても、傷をつけてやろうと刃を握ろうとする手に力が入らない。クソが! と叫ぼうとする声に、背板が振るえていないことにも今気づいた。

地面へと手をついて起き上がろうとして、失敗して。倒れてはまた立ち上がろうと手を付ける。もし彼女が彼を見る余裕があったのならば
彼が彼女が痛みに耐えられる時間中全ての精神を捧げて行っていることであり、傍目から見れば『なにもないのに倒れ込むピエロ』と同等だろう。
先ほどと同じように、言葉では相手を押しつぶそうとしながら、実際の実力行使となれば地面へ蹲るしか出来ない。苛立ちは募るばかりだ。
だが、然し。この動けないという状態も『相手がこちらを見続けている』という条件があって初めて成立する。朦朧とした意識で見えるのは痛みに耐える表情。
つまり、彼が一方的に虐げられているのではなく、其処になにかの絡繰りがあると踏んでいた。故に、振るえぬ声帯を無理やり震わせるようにして、体をはいずるようにして

――――其の柔肌に爪を突きたてんと、動く。
無論動きは芋虫のように醜く、遅い。それこそ『手足をもがれた人間のように』。


248 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/27(火) 00:59:06 3HSgajiY
>>247

平常心を欠いた結月は、瞳術を使った後の事について思案を巡らせず。
己の器、己の身体を乗っ取られまいと抗いながら瞳術を発動させたために。

「―――ぐ、…あッ」

ついに右目に奔る激痛が結月の瞳術を止めたのであった。
膝を突き、肩で息をする程に疲弊した彼女は右目を手で押さえたまま動けずにいた。

方や膝を突き、佇み停滞して。方や牛歩の如くであれど確実に近づいている。
彼の牛歩の如し歩みを止めるには瞳術を長く使いすぎた。
時間にして約6秒。彼を殺すには不十分であった。寧ろ、彼に絶好の機会を与えた。

「―――……ああッ!!い…、だい。」

はたから見れば彼女は自滅しただけでしかない。或いは、無謀か蛮勇か。
瞳術から開放された彼は時間経過と共に思うように身体を動かせるようになるであろう。

そして、彼女に訪れるのは、己が身体を引き裂くか貫くであろうその瞬間。
彼の言う存在の証明が成される瞬間。普通の人間なら、何が何でも回避したい瞬間。
けれど彼女はその限りでなく。それも悪くないと半ば受け入れつつあった。

「―――来るなら、……来なよ。
 はぁっ、はぁ、…ぜっこうの、機会だよ?」

今この瞬間に殺されかねない状況とは思えぬ言葉。
彼の心を逆撫でして、殺意をそそるような言葉。
今までの憎いほどの表情は、疲労と激痛が色濃く滲んでいたが、身動ぎも命乞いもしなかった。


249 : 【一刀全剣】 :2017/06/27(火) 19:25:25 a/Y3VvbQ
//置きになりますが、>>233で絡み街してみます


250 : 【剣脚翔邁】 :2017/06/27(火) 20:00:41 qEqrUImY
>>248

「言われるまでも―――――」

ぐるりと視界が一転する。先程まで感じていた違和感がなくなったというより、本来の自身が持つ感覚が『帰ってきた』違和感。
肉体の収縮が止まり、痛みがぶり返す。封じられていた体の機能を取り戻していくに連れて、色を取り戻す視界に彼女が映った。
上等だ。アチラから呼んでいるのに此方が行かない道理はない。地面に右手をつけ、自身の体重に少しばかりふらつきながら――相手の方へと疾駆する。

初動は目で追いきれるほどに遅い。然し、次の瞬間には彼の内側から鳴り響く『歯車が欠ける音』と共に、彼女の眼前へと移動しているだろう。
目で追いきれる速度を遥かに超えた人外の疾駆。事前動作なしに大跳躍可能なほどの身体機能をすべて全身へとつぎ込んだ、まるで弾丸の様な疾走。
そして、彼の右手手が突如として彼女の頭を、正確には髪の毛を鷲掴みにしようとし、それが叶ったのなら、そのまま其の首を――――

「―――――無ェ!」

額と額をぶつけ合わせるようにして『頭突き』を行うはずだ。反動で少しばかり仰け反りそうになるものの、それら全ての反動を無視して、相手の額を削り取ろうとでもするように此方の額を擦り付ける。
髪の毛に在った右手はそのまま流れるように首元へと移動し、少しだけ伸びていた爪でゆっくりと、彼女の首筋に赤色の線を引いていくだろう。
死ね。死んでしまえという感情とともに、爪に力を入れ、痛みが残るように線を引く。刀すら使わず、抜く時間すら惜しいのだと、感情だけが燃え盛る。


「『お前が見ているのは何だ? お前は『俺』を見ているか?』」
「見ていない。見ていない。ならば見ろ。見ろ。“俺を見ろ”。」

「お前に“証拠”を刻む俺を、お前という存在を“証明する”俺をッ!」

「――――― 俺  を 見  ろ ッ  !    ク ソ ア マ が ァ ッ ! ! 」

叫び、吠える。首筋に宛てがった右手が引くのはあくまで『痕が残る程度に深い傷』であり、彼女が抵抗しなければそれ以上深くなることはない。
それでも十分深いのだが、彼にそんなことを考える余裕も、意味もない。ただ、殺してしまおうとする目前で『見えた』瞳の奥に映っていた自分が、まるで――

――――『泣いているように見えた(きょうかんしてしまった)』からだとは、誰にも言えなかった。

//確定行動多いので、不味ければ好きなタイミングで阻止して頂いて結構ですので……!


251 : 【龍神変化】 :2017/06/27(火) 20:52:43 QE/rTQ/.
>>244

相手が自分の言葉に耳を傾けたのを見計らい、顔のない妖魔は言葉を続ける ――― 。

「陳腐な事を言うわ。私もこの状況は望んでいなかった。」

悪鬼の如き面妖な姿見の吸血鬼は、魑魅魍魎の祭囃子がこだまする状況を、望んでいなかったと語り始める。
集落の人間に暗示を掛け、挙句には山を犯し、人を殺し、死にぞこないを量産し、狼の軍隊を徘徊させるという今を、本意ではないと。
髪の毛の隙間から伺える吸血鬼の表情は、隙間が埋まる度にその形を変え、人間とは根本的に異質な性質を持っていることを伺わせる。
感情や理性などというものがあるはずもない。これはモノノケである。

「あの異常な女のせい。それは、私も人間を食わない訳ではない……でも、森の奥深くで、必要な時に必要な量だけ。
 誘い込んだり私から街へ出るなんてことはしなかった、のに、ある日あの女が現れて、私の命を狙ったのよ。」

何が始まるかと思えば、涙を誘うような冗長な身の上話。手短にという言葉は、無視している。
相手の視線が、もしくは切っ先が鋭く向けられるようであるならば、片手で制止するだろう。
どちらにせよ、話を続けようとする。

「言っておくけど、アナタたち2人を殺せると、私は思ってるわ。でも、一筋縄ではいかないとも、思ってる。
 だから、この件には関係ないアナタをせめて外したいと考えて、今、話をしているわ。

 この集落の人間たちは、私の力を強める為に利用した。
 こんな異郷の山奥まで追いつめられた私には、これしかないの。」

そこまで話をした時、吸血鬼は窓の方から差し込む視線を感じると、思わず一歩、後ずさりをする。


――少女が窓へと視線を向ければ、大きく黒い龍の、瞳孔が細く絞られた眼を目の当たりにするだろう。
何か所も鱗が剥がれ落ち、血が垂れ、荒い息遣い、そしてしっとりと濡れ、滴が流れていく。
奇妙な形に歪んだ角を生やした、濁った黒色の鱗の龍は、吸血鬼へ敵意に満ちた視線で睨み付けた後、始末屋を視た。

少女の動きを待つ。先ほどまで共闘した人間が敵と会話をしたのを見たからだ。

"お前はまだ味方か?"

集落の外では、轟々と立ち上る火柱と黒煙。大量の狼の死体が積み重なったものが、その燃料だった。
肉の焼き焦げる臭いは小雨によって地面に流され、その煌めきだけが部屋の中を照らしていた。


252 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/27(火) 21:45:49 ti/gGNe.
>>251

吸血鬼の話途中で、始末屋は特に動きらしい動きを見せもせずに静かに止まっていた。
妖気こそ実に強大であれど、此方に攻撃しようとする殺気は対峙している鬼から読み取れなかったからだ。

逃がさない為に片目では明確に鬼を視認しながら、もう片方の眼球を動かして空いていた窓の外に視線を傾ける。
視線が重なったのは黄色い縦長の瞳孔。人の原型さえ残さない容貌に変異した女であると分かった。
吸血鬼に続いて自分まで睨むような眼から何となく汲み取り、これ以上見続ける必要もないと判断して、もう片方も正面に注ぐ。

「……―――――そう…………、――――――――――ッッッ!!!!!」

呟きに近い相槌だけを終えたなら、その後ろに続いて交わすであろう言葉はなかった。
一息の間を以てして開いていた距離を詰め寄り、抜刀と同時に左から右への一太刀を浴びせようと斬りかかる。
傍目からすれば交戦意思のない『静止』でしかない姿勢は、次なる一振りの『溜め』の動作でもあった。
無駄に長い話の所為もあり十分に溜められた力を解き放ち、横一閃に於いて吸血鬼の頸を刎ね飛ばそうと肉薄する。

強大な妖力を間近で実感させられた事で、当初の最有力仮説が事実であるとの確信を得たからであった。
此れほどの力を有している妖がいる地域で、他の妖怪が人を喰らうような目立った行動に出るはずないと。
つまり言葉の最中に出てきた『必要な量』のうちに、自分達の身内が入っていると。
つまり雇い主により排除を言い渡されたその標的は、他でもないこの女であると。

たったそれだけが解れば、もうそれだけで好い。それだけが、この女を斬る理由に成る。
力量差も、善悪も、倫理観も、動機も、経緯も、何もかもが関係ない。
少女は元々からして、誰の味方になるつもりもなかった。
女の意思を無理に尊重する気もない。村人達を不必要に助ける気もない。そして、吸血鬼を生かす気も毛頭ない。
ただ依頼が他でもない自分に対して下されているという事実だけが、少女を戦場へと駆り立てていた。


253 : 【龍神変化】 :2017/06/27(火) 22:30:54 QE/rTQ/.
>>252

いつしかだったか、また別の怪物を狩る為に向かった先で、それまた奇妙な共闘をした事がある。
いや、あれもこれも、共闘とも呼べないようなものだ。暴れる二者が居たにも関わらず、殺される敵が1人しかいなかっただけの話。
何もかもが関係の無い、各々が己の唯一の理由に突き動かされる、喜劇にも悲劇にも英雄譚にもならない一幕。
繰り返される光景の中から無造作に選ばれた一枚の古ぼけたフォトグラフと同じ、薄黒いセピア色の ―― 血飛沫。

吸血鬼の首、そして髪、それらは綺麗な切り口で斬られたが為に、刹那の間だけ自らが斬られた事に気が付かないように佇んだ。
秒が及び、血流の圧のままに血が切断面から迸ると、裸の吸血鬼の首はどてと地面に転がり落ち、それはそれは恨めしそうな表情で少女を睨み付けていた。
理不尽さを訴えるような、これこそ正に悪鬼の形相といった具合で、般若の面とそっくりの憎悪のツラ。
ぴしゃりと音が鳴り、吸血鬼の居た奥の部屋から黒い粘液のような暗闇が這い出すと、部屋にいた人間は震え上がって地に伏せる。
暗示の影響か怪物への恐怖心に支配され、命乞いをするものや念仏を唱えるものまで様々だ。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。

「お前らに災いを……災いを……。」

明らかに奥の小部屋に収まる訳がない量の粘液が溢れ出すように流れ、屋敷の外へ飛び出さなければその異質なモノに呑まれてしまうだろう。
屋敷の周りは黒い龍が動き回る死体たちを薙ぎ払った後のようで、遠くの方でうろついている以外には邪魔なものはあまりない。
まるで生きているかのように蠢く粘液は、死して尚も動き続ける粘液は、とてつもない悪臭を放ち、体の一部を鞭のようにしならせ、屋敷の一部を吹き飛ばす。

 ―― 屋敷へ飛び出した少女の間には、再び吸血鬼が立っているだろう。何処へ出ようと、其れはあなたの前に立つ。

「力は認める……でも、私は不死なのよ。せめて、殺すのは諦めなさい。」

少女を諭すような口ぶりで、あくまで落ち着いた口調で話を続けるが、少女の得物へ視線を注ぎ続けた。まるでそれの動きが、気になるように。
傷一つない綺麗な裸体を見せつける吸血鬼と少女の間に、瞬く間に駆け付けた数匹の狼たちが割って入る。
ぞろぞろと道の奥の方から、動く死体たちもやってくる ――― 

   G o A A A A A A A A A A A !

そして響き渡る、憎悪に満ち溢れた龍の咆哮。空気を震わせ、吸血鬼と活動する粘液物体に向けて敵意を見せつける。
 ―― 殺せないならば、殺し続けるしかないという、明確な害意だ。殺しても殺しても殺し足りないならば、何回でも殺してやる。
邪龍が口に火炎を迸らせたと思えば、直後には凄まじい熱量の火炎の噴射を黒い粘液に浴びせ、それはたちまちの内に屋敷ごと燃え上がる。
燃やして、燃やして、殺して、そしてお終いにする。それが成すまでは、何度でも繰り返す。


吸血鬼の女が、少女に向けて ―― わずかに震えているような声で、話しかける。

「やめて……無駄よ。私を殺すことは、できないのよ。」

貴方を睨み付ける怪物たちの向こう側には、裸の吸血鬼。


254 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/06/27(火) 23:17:35 Sl7pqEow
スタッフ募集中。そんな噂を流したのはいつ頃だったろうか。
安っぽい事務所然とした作業机、ソファ、資料棚。
その中で悪目立ちする高級椅子が、この部屋を仕立てた人間の品性を物語る。

「しかしまあ、ヴィランにコミュ力はないか。
 私が知ってるのも大方カリスマしかいないからなあ」

椅子の背にスーツをかけて、背筋を伸ばす。
背骨の骨が軋んで、疲れていることが全身に伝わる。

「何もないから、私がやるしかないと思ったけれど。
 意味があるかどうかも、私には判んないや」

見上げた天井には、ぼやけた蛍光灯が映る。
机の上には、ジュラルミンのケース。
ここを準備するまでに結構使ってしまい、大分軽くなってしまった。
他にも研究所の隠し財産としていくつか伏せてあるが、
拾いに行って全身打撲はもうたくさんである。

シャツのボタンを2つ開けて、クーラーの風を受ける。
体の線を、涼風が撫でた。


//置き確定の絡みまちになります。


255 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/28(水) 00:06:42 IR37HcUU
>>253

振るった刃を通して斬った感触が確かに伝わり、悪鬼の首が床に落ちる。
呆気なさすぎる有り様には余韻なんて介入する余地もなく、足下に転がった生首に睨み返す。
怨念に歪ませる顔面を今度こそ叩き斬ろうと、刀刃を振り下ろす――――が、それは鬼の首には届かなかった。
奥の部屋より粘液が這い出ずり、忽ちにして広間を埋め尽くさん勢いで溢れる奔流が、刃と首の間に割り込んで阻んだ。

「くっ――――――ッッッ!」

流石に回避を選ばざるを得ず、一跳躍にして空いていた窓淵にまで跳び乗り、さらに二、三度繰り返し屋外の粘液の被害に逢わない位置まで後退った。
野外に跳び出てから跳躍する最中に、進路の邪魔になる屍人達を序でばかりに斬り裂いて、何もない地点に降り立つ。
僅かながらだが肩を上下させ、明らかに荒くなった呼吸をどうにか整えようとしながら、俯いた顔を真正面へと向ける。
その大幅に距離を取ったはずの眼前に鬼が立っているのを視た時には、無表情の双眸が一時だけ見開かれた。
何事もなかったように首の傷も再生されており、その上に群狼と屍人が壁となって立ち塞がる。

疾うに体力も気力も限界寸前。それでもこの場から敗走する選択肢なんて用意されていない。
首を斬っても死なないなら、もう一度斬って、また斬って、幾度でも斬って、斬って斬って斬って―――活動停止するまで斬り倒す。
ふらつきかける足を辛うじて動かし、再度吸血鬼に斬りかかろうとするその時、龍の咆哮と獄炎が迸った。

あの獄炎が収まるまでは待った方がいいだろうかと、中に居る村人など無関係に焔を放出する龍を眺める。
少しでも回復しなければと、火花が飛び散り肌の灼けつくような空気を吸い込む少女の耳朶に、女の震える声が聞こえた。
何かが引っ掛かった。あの妖気とあの再生能力を持っているなら、悠然としているだろうと思い込んでいた。


「ハァ、ハァ…………やめてほしいなら、僕達がやめられるだけの、条件を出すべきだと思う、けど………………」

嗄れかけた喉から絞り出した声で、一先ずでも聞いてはみようと思った。
せめて体力がある程度回復するまでの間―――龍の焔が収まるまでの間だけでも、と。


256 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/28(水) 19:50:06 KU4suHm6
能力はできるだけ行使しないことにしている。二度とヒトに戻れなくなってしまい、
ケモノとして一生を過ごすことを余儀なくされる……そんな悪夢が脳裏にこびりついているせいだ。

それでも、ついつい頼ってしまうことも多々ある。あんまりにもこの力は便利すぎるのである。

「……っと、」

――夕方、路地裏で。
立派な毛並みのオオカミが一匹。首輪のついた仔猫を両脚で地面に抑えつけていた。
このオオカミはいわゆる"何でも屋"を営んでいる。そして捕まえた猫は依頼のターゲット。迷子だ。

「おいっ、動くんじゃねえよ」

オオカミの大きな口が開く。そこから紡がれたのはニンゲンの言葉。
もしも目撃者がいたのなら、きっと驚くことだろう。目を疑うに違いない。幻覚でも見ているのか、と。
そして次の瞬間、――オオカミの輪郭が捩じれ、そこにぱっ、と青年が現れる。ああ、お前は幻覚を見ていたのだ。
とでもいいたげに。
実際のところ、誰にだって想像はつく。変身能力。この街ではそう、――珍しいものでもないから。

ワイルドにセットされた黒髪、険のある目つき、それからチェーン付きのジーンズと紺のVネック。
いかにもガラの悪そうな男だ。躊躇いもなく暴力を振るいそうな。そいつが、片手に子猫を掴んで路地裏に立っている。
鳥の視点で見降ろしてみれば、ちょっとよからぬ光景だった。彼にとっては一件落着なのだけれども。

「、――」

青年はそこで、ため息をつく。また能力に、――オオカミに頼ってしまった。
これを使わなくたっていいくらいに強くなれたら、どんなに自由だろう。
けれども夢は夢でしかない。"ソレ"が何でも屋の自分にとって最大の取り柄だということは嫌でも自覚している。
だから青年はため息をつく。それから掌の中で大人しくなった子猫を一瞥し、それから辺りを見回してみる。……。


257 : 【罪の蜘蛛糸】【啜命刀蟲】 :2017/06/28(水) 21:44:36 NAs1EbR6
>>301
「なに?動物虐待?ちょっと感心しないかなー」

のんびりとした声が降り注ぐ。
薄暗い路地裏にふさわしくはない若い声だ。女の声だ。

次の刹那、それは舞い降りる。
黒いパーカーにダメージジーンズ。格好から推察できる性質は青年と同種だろう。

――だが、違う。根本的にあれはもっと年季が入っている。

今はまだ笑っている少女。だが、それは少女などという生易しいものではない。
刀が、腰に提げられている。いいや、刀として用いられている「ナニカ」だ。

青年に対していだく印象は悪い。猫はカワイイ。
正義感なんかではない。ただ、猫が虐げられるのを放置するのは忍びなかった。

//置きになるかと思いますが……よろしくおねがいします!


258 : 【啜命刀蟲】 :2017/06/28(水) 21:47:02 NAs1EbR6
>>257
//名前ミスです……ごめんなさい


259 : 【龍神変化】 :2017/06/28(水) 22:51:50 iXpdYZSA
>>255

龍の息吹は轟音を立てながら轟々と吐き出され続け、傷だらけの身体から全身全霊の全ての力を惜しみなく使っていた。
少女にとってはただの繰り返しの戦いの一つに過ぎないかもしれない。だがこの人外にとって、繰り返される狩りは、狂える感情の昇華行為だった。
こうしなければ生きていけない、こうする為だけに生きている。許せない敵を殺す為だけに ―― 滅ぼす為だけに ―― 。
不愛想な態度だった人間の姿の時とは裏腹に、龍は可燃性の液を口からぼたぼたと垂らしながら欲望のままに焼き尽くそうとした。

屋敷から火だるまになった人間たちが何人も飛び出し、地面に転げ回って苦痛に悶え苦しむが、火が消える事は無い。
皮膚が焼けただれ、肉が焼かれていき、骨が焦げていく。炎は全てのものに平等に、痛みと苦しむを与える。これに差別はなかった。
あの集落の長の姿もあるだろう。それがそうであったか、いったい誰がそうなのか、正確にわからなくなるのも時間の問題だったが。

自らの存在の一部ともいえるものを焼かれていく光景を目の当たりにした吸血鬼は、唇があったならば下唇を噛む。
条件を思案したように見える ―― だがそれは意味が無い。吸血鬼の理屈では、もう、どうしようもない状況だと思っていた。

「私は死なない、貴方たちは死ぬ。これ以上の条件がある?
 むしろこれ以外の条件を出したところで、あの龍の女が止まると、思う?」

苛立ちを隠さずに問いかける。手下の怪物たちは吸血鬼を擁護するようにざわついているが、それは特別な事ではない。

そして遂に吸血鬼の分身である粘液物体が完全に炭化し、余すところなく焼き殺されてしまうと、龍はその息吹を徐々に止めた。
深い溜息を吐いた ―― そして徐々に体が変形し、小さく縮んて行くと、瞬く間の内に龍人の姿に戻った。両膝を地面に付いてうな垂れ、深呼吸をする。
金髪の女も体力の限界だった。しかし、限界を超える事は常に求められてきた。だから、今夜も限界などいつものように超えるだけだ。
"俺が人一倍働けばいいだけだ。"

そして龍のような怪人は、横目で吸血鬼を睨み付ける。その細い瞳孔で。

「貴様は本当の不死ではない。それだけは分かる。不死者は力を蓄えたり、暗示を掛けたり、戦ったりなど、しない。

 死にな、穢れたイモータルのなり損ない。」

呪いの言葉で、わざわざ継戦意欲を誇示した。その力が残っているかなど、関係なしに。
だが狂戦士にとって、限界なんてのは常に超えてきたものに過ぎない。本当にダメだと思った時に、更に働く方法を覚えてきた。

吸血鬼は自らの両手で前髪を払いのけ、少女に顔を見せる。瞳に涙を湛えた、哀れな表情。

「助けて、お願い。あいつがおかしいのよ。あいつが私を殺そうとして、それで、それでわたし……。」


事の発端は、吸血鬼の住処を襲撃した龍の息吹。哀れ怪物同士の戦いは、吸血鬼の逃走で次回に持ち越しとなった。
そして廃バス停から始まった奇妙な雨の日の一幕。吸血鬼を追う金髪の女と、始末屋の少女の遭遇。
非日常的な日常を持つ2人にとって、これは日常に過ぎない。互いに、仕事をこなすのみ。
追われるのは人を喰う吸血鬼。人の味に慣れ、それが怪物にとっての繰り返される日常。

繰り返し、繰り返し、繰り返し。殺し殺され、それが何度も繰り返される。今夜、誰が最後に立っていようと。

誰が最後に立っていようと。誰が最後に立っていようと。


260 : 【真鴈眞眼】 :2017/06/28(水) 23:57:27 cVfUnWCo
>>250

右目の激痛に気を取られていたために気づかぬ彼の接近。
彼の疾駆を野放しにした先に待つのは、鷲掴みされた頭髪の痛みに始まる一連の行為。

「―――ぐあっ、あああっッッ!!」

髪を捕まれ、逃げ場の無い彼女の頭に響くのは互いの額を擦り合わせるような痛み。
その後に始まったのは、更なる擦り付けと首筋に線を刻むような爪の減り込み。
血走る。その言葉通りの彼の目。今まで抑圧されていた感情を爆発させたようで。

「――ごひゅっ、がっ、…ぁッ…」

苦悶の表情を浮かべる彼女からは、息が抜ける音しか零れない。

言葉にならない声は本能的な苦しみを訴えて。
痛みの無い左目は彼の死に物狂いの表情と、『俺』そのものを映し出す。
耳朶を震わすのは"俺を見ろ"という叫びと傷による証明をしてやるという宣言。

頭が、脳が、酸素を欲しているのがはっきり解った。
けれど、彼女は"そんなこと"よりも彼の慟哭にも似た叫びに意識を傾けていた。

それが証拠に彼女の左目は、確かに見ている。
今にも自身の首を縊り落とさんとしている彼の目を、顔を、そして――
己の望むものを刻みつけようとする様を、傷痕を残す光景と、鬼気迫る執行者の全てを。

「…ぐぁぁ、ひゅっ、カふっ…」

彼女は更に抵抗を試みる。ばたばたと身体を動かしている。それにつられて首も動く。
けれど、それは助かりたい一身からの行動ではなく。
より一層。二度と消えぬように。三度見ても確固たる己の証明であるものを刻むために。
故に、首筋にあてがわれている彼の右手の爪は更に深く、深く傷痕を刻み、鮮血を散らす。

苦悶の表情を浮かべ、思考の纏まらぬ彼女は彼が何を思っているのか解らない。
しかし、彼女の表情は次第に苦悶交じりの微かな笑みが混じっていた。

――"私"はしっかりキミを見ている、と答えるように

//先日はレスを返せず、今日もレスが遅れてしまい申し訳ございません…


261 : 【執事無敗】 :2017/06/29(木) 06:01:37 5Kzr3IgE
>>225

「では」

そう簡単に述べると一瞬で手当は終了した。
傷の手当も彼の能力の範囲である。

「……終わりましたが不備は無いでしょうか?あればなんなりとお申し付けを」

そう執事の定番を述べて更に続ける。

「ないのでしたら貴女様の準備が整い次第と言うことでお願いいたします」

そう言い定位置に戻る。

//諸事情で遅れてすみません……おのれ過去の自分


262 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/29(木) 13:20:39 Go3RRXIk
>>257
落下する呑気な声音。
反応して空を見上げると何かが降りてくる。――咄嗟に後退し、距離を取る。
先ず注意を惹いたのは刀だった。それからジーンズ、パーカー、そして青年の眼は、
少女の相貌に行き当たる。

「……あんたには関係ねえだろうが」

素性の知れない相手に対し、警戒は緩めない。
あんな登場の仕方をするやつはまずもってマトモじゃないからな。青年の経験則だ。
しかしそうは言いながらも、――仔猫を把持する両手の力を、少しばかり緩める。
「動物虐待」……奇妙なことに、この青年は彼女の台詞を多少なり気にしているらしい。

「コイツをどうするかは、俺が決める。あんたみたいな不審者には任せられねえな」

より正確を期せば決めるのは依頼人なのだけど。それでは格好がつかないので、"オレ"を強調する。
ここからどうしたものだろう。大人しくこの場を退散し、依頼を完了させたいところではあるが、
この少女は恐らくそれを許してはくれないだろう。……張り詰めた空気の中、闖入者を睥睨する。

と、不意に仔猫がにゃあと鳴いた。
結果、青年の視線は手元の小さな生物に吸い寄せられることになる。

/昨日はお返しできずに申し訳ありませんでした……っ
/こんなんでもよければこちらこそよろしくお願いしますです


263 : 【啜命刀蟲】 :2017/06/29(木) 21:36:32 lFg.TR.2
>>262
ちょっと、手の力が緩んだように見えた。
どうやら虐待ではないらしい。だが、或いは演技かもしれない。

「うん。関係ないね」

あっさりと無関係を認める。だが、それで引くわけではない。

「人のことを勝手に不審者呼ばわりするけど……そっちも大概じゃない?」

此処に第三者がいたならどう思うか。きっと五十歩百歩だと思うだろう。
笑みを絶やさずにその点を指摘した。

猫を離すまでは引かない。
口にはしないもののこのまま穏便に済む可能性は絶望的に低いだろう。

にらみ合いは続く。時はただ流れる。
静寂。引き裂くのは猫の鳴き声であった。
男の目線が下がるのを見れば、動き出す。

「ねえ?」

そろそろ話す気になった?
地面を蹴り、距離を詰める。
そして、言葉を発する。たったのそれだけだ。

だが……?


//いえいえーよろしくおねがいします!


264 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/29(木) 22:19:21 Go3RRXIk
>>263

「……けっ」

無残、言い負かされた形になるのだろうか。今も昔も舌戦は苦手だ。考えるのも、表現するのも。
自分から見れば相手が不審者であるように、相手からすれば自分も到底、信頼に足る人物ではないだろう。
それは重々分かっているから、青年は気は重かった。
説得する、信頼させる、そういう真似を、舌でもってこなせるのかというと――いまいち自信が無い。

けれども、結果として、そんな心配は杞憂だったらしい。

「――ッ」

沈黙を破る猫の鳴き声。それでもって、事態は急迫する。
「話す気になったか」――問いかけに悠々応える余裕は無いが、話すつもりもありはしない。
お互い信用が無いこの状況で、何を語っても仕様がないと思っていたし、なにより
依頼内容をおいそれと漏らすのはコンプライアンスに反するのだ。

それでは不意をついて少女が接近するこの状況で、何を為すのか。
手には仔猫。反撃する余裕もない。――青年は語るのが苦手だ。けれども、行動力だけはある。
そいつは両手に持った仔猫をしっかりとつかみ直し、上体を丸めて庇う体制をとった。
仮に相手が攻撃してきた時、巻き添えを食らわないようにするのがその狙い。
コンプライアンス。まだまだ慣れない横文字を、青年はぼそりと呟く。
依頼の遂行はそれだけ、彼にとっては大切なものなのだ。


265 : 【啜命刀蟲】 :2017/06/29(木) 23:23:19 lFg.TR.2
>>264
彼が何かを言うのを見た。
何を言ったかは聞き取れない。だが、奴が能力者だったら不味い。
何らかの能力発動のためのトリガーだったかもしれない。

警戒のため、一歩後ろに。


警戒のため、抜刀。

金属が滑る音が反響して大きく聞こえる。

次にどうしてくる。何をする。


266 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/29(木) 23:59:44 Go3RRXIk
>>265
しゅりんと金属の高く鋭い刃の音がする。――それを、ひとつの合図と理解する。
つまりは戦端は開かれたということ。不器用の腹の探り合いは終ったのだ、ということ。
青年にとっては好都合な展開だ。不意打ちの勢いに乗じて"敵"が攻撃してこなかったのも含めて。

「先に"抜いた"のは、てめえだかんな!? ――ッ」

猫を庇って丸めた背中をさらに折り曲げる。
そうして彼女のまえに晒された無防備な背中が、――突如、膨張する。
着衣を切り裂いて表出するのは氷の槍だ。彼の背からヤマアラシの棘が如く屹立するそれが、
勢いよく少女に向かって発射される。数は三つ。いずれも小ぶりで、直撃しても致命傷には至るまい。

飽くまで目的は隙をつくること。大きければ大きいほどいい。咄嗟に逃げ出すことができればベスト。
しかし思い通りに行かなければ、他の手立てを考える必要もあるかもしれない。思考を回転させながら、

青年は槍の対処をしている間に飛び退き、距離を取ろうとする。
相手の獲物は刀。それならば距離を取り続けることだ。手元で猫が不安げに啼く。まあ待っていろよ。
口には出さずに、心で想った。


267 : 【凍魔纏狼】 :2017/06/30(金) 00:18:04 obQqznvc
/今日はこれ以上お返しできないかもです……っ


268 : 【逸軌刀閃】 :2017/06/30(金) 01:05:12 cB8pAKWY
>>259



「…………そう。そういう、こと……」

推測の域は出なかったが、漸く始末屋の中での合点が往った。
不死身であるはずの吸血鬼たる女は、龍に睨まれただけで異様に怯えていたのを思い出したのだ。
思い返せば、群狼も屍人も粘液も――――彼女が従える其れらは殺傷性能ではなく、持続性に特化していた。
きっと甚大な妖力が形成していたのは戦闘力ではなく、ただ死なない為の盾であり〝生命力〟なのだろう――――と。

雨雲が遠ざかり段々と勢いの弱まっていく雨と、息吹自体が消えた後も依然轟々と燃え盛る屋敷の炎。
街灯も月灯もなく、死の音を立てて勢いを増していく炎だけが、三者と他大勢を照らしていた。
膝を着く彼女も限界に見えたが、その限界の龍人にさえも怖れを為している弱者(バケモノ)。
涙目で訴え掛ける吸血鬼は、とても此れ以上自分達の脅威に成り得るとは見えなかった。
けれども助けを乞われてもなお、焔を双眸に宿す少女の表情に感情の起伏が訪れはしない。
双焔に吸血鬼の姿を映し、次に横目で龍人の姿を映し、そして再度吸血鬼の姿を映す。

「………………そうだね。お前は悪くない。お前は……お前として生まれてきた運が悪かっただけ、と思うよ……」

始末屋は、目の前に佇む吸血鬼については何も知らない。
どうして金髪の彼女が執拗に吸血鬼を追うのか、その経緯も何一つ分かってはいない。
始末屋と同様に仕事目的なのか、或いは別の因果なのか。この鬼は現在に至るまでに幾つの人命を奪ったのか。
ただ斬れと命じられただけで、相手の容姿や異能や動向についてすらも知る由もなかった。
そして一連の話を聞く中で、きっと種としての生態や習性で人間に害を為してきたのだと考えていた。
もしただの食欲で人を喰らってきたのなら、眼前の鬼を〝悪〟と断じていいのか分からなかった。

「…………運が悪いから………………死ぬまで、死ねない苦しみに逢わなきゃ、いけない…………」

けれども―――たとえ生態や習性による所業だとしても、命じられたなら斬るのが少女の仕事であった。
肌に楓を彫ってから、もう何人も何人も数え切れないほど名も知らない相手を斬ってきた。
何十回も何百回も、命乞いを聞いてきた。男も女も子供も老人も、躊躇いなく斬ってきた。
時には本当に当人に身の覚えのない相手に刃を向け、怨嗟の喚き声を浴びせられながらも斬ってきた。
だから今回もまた、いつも通りの何の変哲もない作業であり、泣きつかれようと同情も悲哀も沸きはしない。
手に持っていた片割れを宙に投げ、納めてあった方の二本目の刀を、引き抜いた。


――――――――我流〝蟷螂流し〟


抜刀とキャッチにより二刀流へと移行された瞬間に、その〝業〟は打ち放たれた。
普段の跳躍とは異なる曲線的で流動的な変則歩法によって、吸血鬼の眷属達でつくられた肉壁に飛び込む。
そして一体、また一体、さらに一体と、群狼もしくは屍人の頸を、瞬く間に刎ね飛ばしていく。
此れは決まった型を有す正式な技ではなく、端的に表すとすれば、ただ〝滅茶苦茶に乱れ斬りし続ける〟だけ。
読まれ辛くする為に最短距離ではない軌道でこそあったが、そのまま何秒も経たない内に総てを斬り落とし、吸血鬼へと迫る。
間合いまで接近できたなら、彼女のほぼ全身を数十回斬りつけようとする―――――――特に腕と脚を重点的に。


――――――――朱刀流〝奥義〟―――〝紅桜一閃〟


そこから距離も時間も空ける事なく、至近距離からの高速歩法と同時に、吸血鬼の喉元に右手の刀による刺突を繰り出す。
もし突き立てる事が敵ったならば、なるべく〝抜き辛く〟する為に、抉り込むようにして押し込む。
こうすれば気管がズタズタに傷つけられて呼吸する度に激痛が迸り、力も出し辛くなるはずだ。

だが――――この程度では死なないだろう。自分如きが限界を越えたとしても、この悪鬼は殺しきれないだろう。
だからもし刺突に成功したならば、刀を鬼の喉元に突き刺したまま、渾身の力を以てして鬼に前蹴りを叩き込もうとする。
上手く吸血鬼が吹き飛んでくれたなら、その飛来する延長線上にあるのは、鬼が永らく籠もっていた炎上する屋敷。
足掻けないように手足も傷つけておいたので、龍の息吹による炎で焼け尽きてくれる事を願う。

なお、此れらの行動の最中に吸血鬼か、龍人か、もしくは下僕達か―――自分以外の何者かの行動で阻害された場合、活動不能に陥るだろう。
仮に総ての攻撃が決まったとしても、始末屋は程なくして手足も碌に動かせなくなり、その場に崩れ落ちる事になる。



/>>210と同様に、場合によっては一部なかったことにする感じでお願いします…!


269 : 【血縁縁者】 :2017/06/30(金) 17:21:14 SFpcGIYk
偃月が蔭る昏い夜。
繁華街の外れ、人気の無い。
――居るならば、其れは迷い込んだ者か、光ある場所に居られぬ破落戸か。

そんな無法と暴力の薫る路地裏を、迷う様子でも無く歩む二人組の少女。
目立たない色の服装をしているが、学生だろうか。
一人は高校生くらい、もう一人は小学生程の身長だ。

先方を行くは茶髪のショートヘア。
躊躇いも無くのしのしと危険地帯を進みゆく。

その後ろを着いて行くは黒髪ロングの小柄な美少女。
凡そ人間離れした、と形容すべき"作り物"の様な美麗さを持つ。
其方は周囲を警戒する様に、
肩に下げたバッグから何時でも得物を取り出せるべく構えながら追随する。

「今宵も元気にパっトロール。悪い奴らはブッ潰せ♪」

「私、夜遅いのは平気というか。寧ろ得意なんだけど……」
「出来れば自室に籠って読書とかで過ごしたいかなぁ。」

「だったら帰ってても良いよ? ボク一人で見回りするもん。」
「ね、ご主人様?」

「うぅ……私が小鞠ちゃんを放って置けないの知ってて言うから質の悪い。」

なんて余裕のあるやり取りをしながら、
何時、無法者が飛び出してくるやもしれぬ夜道を二人。


//戦闘よりに絡み街。雑談等でも大丈夫です


270 : 【啜命刀蟲】 :2017/06/30(金) 23:48:24 W3g6hrc6
>>266
勘違いが勘違いを呼ぶ。
そして、勘違いがどうしようもない悲劇を呼び起こす。


「―――ッ!?」

やられた。
あの言葉は先に抜かせるためのハッタリだったのか。
だからと言ってももう止まれない。

背中を丸めて放たれた氷の槍が三つ。
ヤマアラシのようだ。いったいどんな異能に由来してるのだろうか。
不明ではあるが、受けても問題なさそうだ。

氷の槍を気にせず裏路地を一直線に駆ける。
当然、氷の槍は吸い込まれるように青星に当たる。
一発は腹部に、一発は足に、一発は肩を掠める。
痛みはほとんど感じない。傷もできてるようだが、痛くはない。
肩、パーカーの切れ目からは赤い傷が覗く。血もそこそこ流れている。
だが、やがて傷は塞がり出血も止まる。

氷の槍は決して無駄ではなかった。
青星の、刀を構えた青星の勢いを多少は削げたのだ。
斜めに真っすぐ、刀は振り下ろされる。
だが、もしも当たる軌道を描いたならこの一刀は寸前で止まる。殺すつもりは、全くない。

//夜は無言落ちもうしわけありません!返しましたー


271 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/06/30(金) 23:53:25 4S.gGCa6
>>269

「あ、あぁ……」

「お金にもならない、気持ちよくも無い 何も満たさないお前がどうして僕に狙われたか解る?」

白銀に光る金属質の尾を揺らめかし、少年は嗤う。
足蹴にするのは、少年より一回りは年上の青年。
力に溺れる物や野心家、純粋に戦闘行為を求める物などが跋扈する中に居て、少年程若く小さな体躯の持ち主は異質な存在だった。
小さくか弱い存在。そうに違いないその姿に不釣り合いな巨大な尾だけが、彼の武力を象徴しているようだった。

「正解は…… 暇つぶし」

グチャ。
持ち上げていた尾の分も体重をかけた。
犬歯がギラリと光る悪意と足元の男に対する嫌悪と蔑みを含んだ笑顔。
程なくして冷静を取り戻し、携帯電話で誰かに電話をかける。

「あ、ドック? 終わったよー 今日のノルマの分」

尾の持ち主は気づいて居なかった。
後ろの曲がり角の先に、二人の目撃者がいた事を。
先端を鮮血に染めた白銀の尾の先端が、ちょうどその二人から見える場所にはみ出ていた事を。

/まだよろしいでしょうか?


272 : 【血縁縁者】 :2017/07/01(土) 00:20:51 QJBNEVSw
>>271
元来"吸血鬼"である篠が特に敏感に察知する"匂い"がある。
錆びた鉄の様で生臭い、生と死の象徴。

「……小鞠ちゃん、静かに。」

声のトーンから緊急事態を察し押し黙る小鞠。

「血の匂いがする、大量の。近いわ。」

篠はバッグから拳銃を取り出し、小鞠はポケットナイフを手に取っておく。

その前後だろうか。
二人の見る先の曲がり角、其処からちらりと見えた。
血塗れの白銀の蠍の尾の様な代物。

其れの本体がどんなものかは推し量れぬが。
最悪、人間を超えるサイズの蠍の怪物の可能性も視野に入れて慎重に接近する。

先方を行くのは変わらず小鞠。
その背後では何時でも銃を撃てるよう構えた篠が続き、
ゆっくりと角を曲がり其れの主の姿を窺う。


//今日はここで凍結とさせて頂けるなら、喜んで
//明日の昼過ぎ頃からお返しできると思います


273 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/07/01(土) 02:10:35 7Qi9G3cA
>>272

外でドクターと待ち合わせた場所に向かう、その前に。
どういう仕組みなのか、尾が折りたたまれズボンの中に収納されていく。
大通りに出ようと翻ると、大通りから刺す光が映し出す影が、二つ。

見られた?――

しかし、少年は動じない。
幾つもこのように己の欲のままに法を犯した彼は言わば隠匿もその数だけこなしてきたのだから。
己という悪の存在を秩序・権力に誇示するような犯罪者の思考を彼は持ち合わせない。いかに気持ちよく、邪魔されずに生きるかが重要なのだから。
そのための障害は、乗り越えなくてはならない。

フードを目深に被り、顔を隠す。
いの一番に逃走するのではなく、その場に膝から崩れるように座り込む。
既にこと切れた男の腕を掴み、目元に涙を浮かべる。

「………」

突然の襲撃で、自身を庇った身内が殺された。
これが自分が考えたシナリオ、自ら口に出すと嘘くさくなるし、いくら演技に自身があってもボロを出さない為には沈黙は金である。
これからこちらに来るであろう二人組の影相手に、言葉も出ないという風な、突然の出来事に失念する少年を見事演じ切って見せる。

/わかりました


274 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/01(土) 02:52:30 4GmDVtAs
>>270

彼女の選んだ行動――それは直進。牽制を意図して放った氷柱はまるで意に介されずに命中する。
柔らかな肌をなぞる裂傷はしかし、間髪いれずに修復されてゆく。いったいどういうわけだ。全く予想外の展開。
猶予時間は余りにも少なく、眼前には白刃が迫る。――。

「……ッ」

充分な距離を取ることが出来ていなかった青年は、崩れかけた体勢の維持を諦め身体を投げ出すことで、
辛うじてこれを回避する。むろん猫のようなしなやかな着地など望むべくもない。
顔面を打たないのがせいぜいといった無様な態で地面に倒れこむ。――そこに、仔猫の姿は無い。
下敷きにしてしまうことがないよう、直前に手放していたのだった。

「くそ、しまっ、……」

コトバの通じぬ動物と言えど、生物であることに変わりはない。この切迫した空気を肌で感じていたらしく――
自由を得た仔猫は、一目散に駆け出した。そうして、足早に路地裏から姿を消してしまう。
路地裏に倒れこんだまま、間の抜けた態勢で青年はそれを見送っていた。思わず伸びた手は何をも掴むことはなく、
力なく地に落ちる。

意気消沈。無防備な背中が汚れた路地裏の地面に横たわる。とはいえ流石に少女の存在を忘却したわけではない。
戦意、――というかあらゆる意志が既に萎えてしまっているようではあるが、もし再び干戈を交えようとするのであれば
応戦するだけのことは出来る。というか、するはずだろう。


275 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/01(土) 12:03:20 HACt/x4c
>>274
あーあ、また服をダメにしてしまった。

身体はどうにでもなる。理由は忘れてしまったが、この刀さえあればどうにでもなる。
だが、服は体ではない。そのことを思い出して溜息が漏れる。
血、洗うの大変なんだよなぁ……
要らぬことが思い浮かぶ。

重要なこと、即ち猫についてはどうにかなった。
自由を得た、解放された。少なくとも自分にどうにかできる範囲内ではどうにかできた。
飼う?冗談ではない。
気付いたら死んでしまって、徐々に私の中でも死んでいく。そんな二度も襲い来る死の苦痛は味わいたくない。

再び、金属が滑る音。
今度は刀が鞘に納められたのだ。

猫が解放されたらあとは興味ない。そう言わんばかりにこの場から立ち去ろうとする。
倒れた青年に背中を向ける。無防備な、背中を


276 : 【血縁縁者】 :2017/07/01(土) 13:45:04 QJBNEVSw
>>273
ゆっくりと角を曲がる最中で二人は銀の尾の行方を見失う。

そして、曲がりきると其処には一人の幼い少年と一つ青年の死体。
少年は膝から崩れた様に座り、青年の腕を掴み涙を浮かべている。

「君! 君は怪我してない? 大丈夫?」
「それ、一体何にやられたの?」

小鞠の方はすっかり演技に騙され少年へと歩み寄って行く。

だが、その背後では未だ警戒を解かずに何時でも発砲できる用意をしている篠が居る。

一つは、少年と青年以外にまだあの銀の尾の持ち主が潜んでいる可能性。

もう一つは、――――。


//一旦演技に乗って様子をみます


277 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/01(土) 14:27:43 4GmDVtAs
>>275
無神経で気に障る音が聞こえた。正体は何かって? 考えるまでもない。ついさっき似た音を聞いたばかり。
すなわち抜刀の逆、――青年がその場で立ち上がると、戦意を納めた小さな背中が去っていくのが見える。
潔いものだ、と思う。目的は達成されたということなのだろう。だからこの場に、留まる理由はないと。

「――ふざけんなッ!」

冗談じゃない。こっちは既に達成した目標のためにもういちど街中を駆けずり回らなくてはならないのだ。
悠然たる隙だらけの足取りに、腹が立った。――気がつけば手が出ていたというのは、彼の悪癖である。
彼女の肩口辺りをめがけて放たれたそれは、拳を一回り小さくしたサイズの氷塊。
いかにも子供らしい、他愛ない行動だ。それ自体が激情の結果であり、何をも目的としていないもの。

「……くそっ、この、バーカ!」

振り返れば、更に純度の高いヤンキーと化した男の姿を認めることができるだろう。
勢いよく吼える。――それはまさしく、負け犬の遠吠えと言ってよかった。
確かに依頼の達成が遠ざかったのは彼女が原因でもあったが、手放してしまった自分の不出来でもある。
なにより青年は悔しかった。しかしそれを怒りと区別して腹を収めるということが、彼には出来ないのだ。


278 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/07/01(土) 14:47:24 7Qi9G3cA
>>276
「お、おっきいクモみたいなのが! 上から! 兄ちゃんが!」

嘘くさくならないように、狼狽して言葉の順番が不規則な言い方。
顔は先ほど潰れるまで踏み潰した為、判別は出来ない。
デカい方は信用しきっている。小さい方は…… 何かを含んだような表情だ。

さて、フードで目元を隠したまま、少女たちを吟味する。
顔は小さい方、体はデカい方がそれぞれ好みなのだが…… どちらも一方が欠けている。
ドクターとの約束は反故しても気にならないが、今回は標的にするような相手では無かった。
何より能力者二人を相手に、一人を捕獲し痕跡を残さず逃走というのは無理がある。いつも狙う時は標的が一人でいる時だけだ
不意打ちを成功させれば可能かもしれないが、小さい方が警戒しているので難しい。

「ご… ごめんなさい でも…」

デカい方――小鞠の服を掴んで、精神的に参っているように体を寄せる。
このまま保護される形で裏路地から抜け出しさえすれば、アフターケア次第で自分から疑いを払拭できる。
そのためにも被害者の弱者を演じ切る。
それ以外にも、単純にこれだけ密着していれば相方に発砲を躊躇わせる事が出来るという打算も含んでいる。


279 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/01(土) 15:22:27 HACt/x4c
>>277
あの猫は、これからうまくやれるだろうか。
他愛のない思考、思考。
のんびりとした歩幅で歩き歩く。
後ろが、何か騒がしい。
しかしそれに気付けない。耳の機能が衰えてるかもしれない。そして、目も。
だから、それに気付けなかった。

「――――あっ」

偶然落ちていた石に躓き、姿勢が崩れる。
底に飛来するのは氷塊。

嗚呼、偶然は重なってしまう。悲劇は起きる。容赦なく。

そこにあるのは倒れた女。
頭から血を流し、倒れる女。

しかし、生きている。彼女はまだ生きている。
死ねない、生かされ続ける。

出血は止まる。
女はゆらりと立ち上がる。
後ろを見る。後ろの男を、ある感情に支配された目で。
それは、恐怖。
己を殺しうる脅威に向けられる感情。
しかし、怖いからと逃げることはない。
彼女にはそれを排除できるだけの力がある。

三度目の鋼の音。
三度目の接近。
阻止できねば、水平に構えた刃の刺突で命を散らすこととなろう。


280 : 【血縁縁者】 :2017/07/01(土) 15:46:45 QJBNEVSw
>>278
小鞠の服を掴み縋る様な仕草を見せる少年。

「怖かったよね……よしよし。」

頭を撫でてみる小鞠と。

一層に表情を強張らせ拳銃を構える篠。

一応は少年が言っていた上からの襲撃の方も懸念しつつ、
だがほぼ確信に近い疑問を少年へと向ける。

「大きな蜘蛛が居るのなら退治するわ。本当に居るなら。」
「さっきから疑問だったのだけど」
「"どうして貴方の背中から"そこの人の血の匂いがするの?」

「小鞠ちゃんから離れて。」

琥珀の瞳は氷の様に鋭い視線を向けている。


281 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/07/01(土) 16:45:04 7Qi9G3cA
>>280
『どうして貴方の背中からそこの人の血の匂いがするの?』

伸縮する尾は体内に収納される。
見た目は何も変わらないし常人なら匂いも気にするような特異さにはならない。
血の匂いに敏感な人間でなければ。

「………ぁは♪」

フードから覗く瞳孔は収縮し、犬歯で何か見えない物を噛み切ろうとするようないつもの笑みを見せる。
時間に猶予がある時はズボンとシャツの合間から抜けて出る尾を、時間を省略してシャツごとパーカーを突き破るようにして、再度出す。
現れた血染めの尾は、伸ばした勢いで小鞠を突き飛ばそうとする。

「バレたねぇー バレたバレた、どうして? なんか聞かないよ」

尾を伸ばしながら装着した口元を隠すハーフタイプのガスマスク。それと交代するように、パーカーのフードを外す。

「もっと肉付きいい良い方が好きなんだけどねぇ…… キヒヒヒヒヒヒヒ!」

マスクの奥では、歪んだ笑みを作っている。


282 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/01(土) 16:50:35 4GmDVtAs
>>279

「っ、――」

ぞっと背筋に寒気が走る。頭から血を流す少女。全く予想だにしない結末の、責任の所在は明らかで
何度目だろう。後先考えない衝動の引き起こすツケを、またも思い知らされることになる。
怪我は決して軽くはあるまい。何を措いても様子を見ようと近づこうとした青年の目の前で――
彼女は立ち上がった。

「お、おい、っ……!?」

刺突。点を貫く刃のひらめきを、横ざまに飛び退いて回避する。しかし十分ではなかった。
肉の抉れた脇腹から伝わる燃えるような痛み。急転した現状の”シリアスさ”を青年の脳裏に焼き付ける。
出血を片手で抑え、痛みに歪む双眸は豹変した少女を捉える。氷の礫がよっぽど怒りを誘ったのだろうか?
感情の機微に疎い彼にも、明らかに分かる。違う、そうではない。怒りというよりむしろ、それは、――

「おい、落ち着けって、――悪かった、俺が悪かったよ!」

先刻の怒りを滲ませた遠吠えと比べて切実さをはらんだ響き。肩をすくませ両手を広げ、声を張り上げる。
修復されたとはいえ――シャレにならない怪我を負わせた直後とあっては、虫が良すぎるのかもしれない。
とはいえこれ以上のやり合い――特に命を俎上に載せて行うような――は望んでいない。不毛すぎる。

相手の気持ちなんてろくに斟酌せず、自分の主張をぶつける。何時もの彼のやり方だ。
攻撃はせず、僅かな距離を保ったまま、様子を伺う。相手が行動に出れば対応できるように心がけてはいるが、――
脇腹がずきずきと痛む。ああ、くそ。


283 : 【血縁縁者】 :2017/07/01(土) 17:03:15 QJBNEVSw
>>281
矢張り、嫌な予感は的中する。
この街に於いては相手が女子供だろうと警戒を解いてはならない。

「避けて、小鞠ちゃん!」

伸ばした勢いで突き飛ばそうとする血染めの尾を、
小鞠もまた蹴りつける形で迎え撃つ。

彼女の身に宿る異能は鬼の"怪力"。

コンクリートを砕く様な力同士の衝突だ。

小鞠は吹き飛ばされて篠の横、やや手前に受け身を取りつつ着地する。

今の衝突であちらにも何らかのダメージが通っていれば良いのだが。
怪力を宿せどその身の耐久力は人並み故、
こちらは今の一撃だけでも中々に重いダメージを受けている。

「痛っててて。騙されちゃったよ、ごめん篠。」

「いいの、さっさと無力化しましょう。」

殺そうとは考えない、少なくとも"正義の味方"でいるうちは。

二人組である事を活かしたフォーメーションを取る。

小鞠は篠の射線を遮らず、しかし直ぐに彼女のフォローに回れる位置で相手の隙を狙う。
そして篠は凡人よりマシな程度の射撃技術でも役に立つよう、
飽く迄牽制を主として遠方から小鞠をアシストする。

これがこの二人組の基本の戦い方だ。


284 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/01(土) 17:13:53 HACt/x4c
>>282
殺さねば、除かねばならない。
恐怖に、見た目からは決して想像できない日数によって熟成された死への恐怖に突き動かされて青星は動く。
気分高揚による精神干渉耐性、妖刀が齎す加護が恐怖を守る。言葉は届かせない。

ナニカを叫んでいる。―――コワイ
きっと私に殺意を向けているんだ。私への怨嗟を叫んでいるんだ。
攻撃能力があるのを思い出す。―――コワイ
きっといつでも私を殺せるんだ。
手を広げて張り上げる。―――コワイ
あれだって攻撃の用意なんだ。
やだ、やだ!死ぬのはもう嫌だ!!殺されたくない!!!

抱く感情は正常なのだろう。だが、彼女は誰かにとっての脅威だ。
なぜなら、力を与える刀があるのだから。
バキバキ、と音を立てて破壊されながら/修復されながら身体は動かされる。
刀を引き抜き、そのまま振り上げ、振り下ろす。

痛みと恐怖は、青星の顔を歪ませ変貌させてしまっていた。
最早彼女は、狂戦士。


285 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/07/01(土) 17:21:43 7Qi9G3cA
>>238
尾と拳が衝突しても、尾は簡単に拳をはじき返す。
尾は特殊合金で出来ており、コンクリートの比でない硬度を誇る。
耐久値の許容範囲だが相手はどうだろう、同じような威力の衝突で中々の手応えを感じていた。

「今のはただの挨拶だよ〜 そんな調子で大丈夫?」

拳銃、強化系能力者に半歩及ばない怪力とそれで扱うナイフ。
今のところ、自分の最強の矛であり盾である尾を攻略できる攻撃手段を持っていないようだ。
デカい方の能力が強化系と仮定した場合、警戒するのはまだ見ていない小さい方の能力だけだ。

「そぉい!」

二人ともまとめて吹き飛ばすように尾を限界まで伸ばし、薙ぎ払う。
先端の針で小さい方、篠の身体の真横を捉えている。この針には金属を腐食させる毒が含まれているため、篠が持っている拳銃を使えなくする狙いもある。

前衛と後衛に分かれている陣形で銃を持っているという事は、後衛は能力ではなく銃による援護射撃をするのだろう。
銃を使った能力かもしれないが、どちらにせよ銃を使えなくすれば相手の攻撃カードを減らせる。


286 : 【血縁縁者】 :2017/07/01(土) 17:34:13 QJBNEVSw
>>285
どうやら尾への攻撃は効果が薄い。狙うべきは本体か。

二人共を狙う様に薙ぎ払う銀の尾。

「私はどうにか避けるから、行って小鞠ちゃん!」

篠は遠方に居る分、跳び退けばギリギリ避けられる攻撃。
尤も、体力が人より少ないのでそう何度も回避など出来ないが。

そして避ける寸前で拳銃に毒液を浴びてしまう。
じゅう、と音を立てて拳銃は腐食し使い物にならなくなった。

尾を伸ばして横から薙ぎ払うということは、本体は今がら空きだ。

ばきりとさっき使わなかった方の足で地面を蹴り砕き。
一歩にて少年との間合いを詰め寄る。

「もらった!」

少年の胴体へ、生身故多少の加減を籠めて、掌底を叩き込もうとする。


287 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/01(土) 17:50:00 4GmDVtAs
>>284
慰留は失敗に終わり、緊張は続いた。どんなコトバを掛けたら良かったのだろう――
束の間考えては見るけれど、詮無いことだとすぐに打ち消す。変貌した貌、荒々しい挙動。
もはやどのような言辞をもってしても、これを止めることは出来ないだろう。そう直感した。
それならばやるべきことはひとつ。明快で、――不本意ではあるが、話術より性に合っている。

「――グルルルルルルッッ」

警戒を緩めてはいなかった。刀を引き抜き次の動作に入ろうとしているのを見て、決断する。
振り下ろされた刀を今度は完全に回避する。ヒトでなく、――オオカミの身体能力が、それを可能にしたのだ。

空を切った白刃が再び次の獲物を狙いに来るまでの猶予を利用し、能力を発動する。
自分から少女の立つ地面までを目標に、極めて薄い氷の膜を生成。――そして、
間髪入れずに飛びかかる。鋭い爪を備えた前肢が少女に襲いかかる。そのまま胸元に爪を立て、
押し倒して無力化してしまおうというのが主たる狙いであった。

もしも刀を盾に爪を防御しようとしたのならば、凍りつき不安定に変じた足場が力を籠めるのを妨害するだろう。
能力の行使にはそうした意図があったのだが、しかし。氷床は発生速度を重視したがために密度は対して高くない。
強い力があれば踏み抜いてしまうことも十分に可能だ。――そうなってしまえば、青年の目論見は外れることになる。


288 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/07/01(土) 17:53:53 7Qi9G3cA
>>286
尾を振ると身体が持っていかれる為、本体の動きは確かに遅くなる。
だが、振りながら動けないという訳では無い。だが掌底を避けられるような状態ではないが――

「あっぶな!!」

尾の先をコンクリートに刺して楔にしてそこを起点に尾の力で自分の身体を横にスイングさせる事で回避する。
瞬時に自身の弱点である本体攻撃を狙ってくるデカい方の判断に恐ろしさを感じる。
貧弱な自分の身体では受け止められそうにない威力を、当らずとも感じる。

尾を振って体を移動させた事で、篠と小鞠の中間に位置に立つ事が出来た。
向こうが本体攻撃を躊躇しないのなら、こちらも作戦を選ばない――

「コッチ、か…!」

小鞠を無視して篠を尾で巻き取ろうと迫る。
二人の阿吽の呼吸からお互いの友情は理解した。そしてお互いの弱点を補完する関係なら、小さい方は運動能力が低い。
こちらなら楽に捕獲できるし、生殺しにすればデカい方に人質として攻撃を躊躇させる事が出来る。


289 : 【血縁縁者】 :2017/07/01(土) 18:11:47 QJBNEVSw
>>288
小鞠は判断が早いのでなく、反応が早い。
詰まり難しく考えないことでノータイムに篠の命令を実行する戦法を取る。

が、それよりも優先する事項が存在する。

其れは――篠を守ること。

小鞠を無視して篠を狙うのならその隙を狙って少年の本体へ、
今度は加減も何も無しに殴りかかろうとするだろう。

恐らくは少年が回避のみに行動を割かねば避けられない様な速度で。

「篠に手を出すなあっ!!」

頭に血の昇った怒り心頭と云った形相で一気に迫る。

相手が避けたのなら直ぐにでも篠の方へと合流をする。
どんなに怒れど最優先は篠の安全だ。


290 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/01(土) 18:29:34 HACt/x4c
>>287
避けられた。恐ろしい。
獣の唸り声。恐ろしい。
恐ろしい、恐ろしい、恐ろしい、恐ろしい、恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい

死にたく、ない

足場が悪くなった気がする。凍った?なんて能力を使うのか……怖い………
試しに右足で強く踏んでみる。割れた。
パキり、小さな音が響く。
ほぼ同時、人狼がとびかかってくる。怖い。
刀ではなく、左腕を人狼との間に割り込ませる。爪が、食い込んで痛い。
一歩後ろに引いた左足も氷を踏み抜く。

怯え切った瞳。恐怖に震える歯。
心のみはか弱き少女。しかし、永遠に生かす妖刀は人を殺める。

爪が突き刺さった左腕。痛みではなく、恐怖によってそれを振り、人狼を横合いの壁に叩きつけようとする。


291 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/07/01(土) 18:54:31 7Qi9G3cA
>>289

相手のスピードが、今までにない程速い。
計算が多少狂う、尾で押し出すには辺りに壁が無く、先ほどのように避けるのは楔を打てていないためできない。

「くっ… コイツ!」

攻撃が当る直前、尾を蜷局を巻くように周囲に展開させ、太い尾が2、3周すると尾が全身を覆う鎧のような役目を果たす。

「トムボーイシェルター、あらゆる衝撃から僕を守る絶対防壁だ」

尾を完全防御に回すこの技は全方位からの攻撃に対し高い防御力を誇るが、移動が出来ず外の様子が見えず攻撃も出来ない。
そして、尾が壊れると自身も死ぬため、長時間攻撃を受け続ける事も不安材料になるという弱点の多い技。
しかし、今回は違う。小鞠の殴ろうとした腕を尾と尾でガッチリ挟んで抜け出せないようにしている。
そしてメキメキと力を込め、小鞠の腕を折ろうとする。


292 : 【血縁縁者】 :2017/07/01(土) 19:10:36 QJBNEVSw
>>291

「腕がっ。つっあぁあぁぁ!」

万力の如く腕を折ろうとする銀の尾に悲鳴を上げる小鞠。

「もう、"正義の味方"ごっこは終わりにしましょう。」

庇われ守られた側の篠は小さく呟いた。

『命令よ。小鞠。そんなもの抉じ開けてこっちに来なさい。』

と、悲鳴がぴたと止む。

「はい、ご主人様。」

痛み、自身の損傷、其れ等を完全に無視して怪力を以てその万力を抉じ開ける。
そして命令に従う様に素早く篠の側へと駆けつけた。

「ごめんね、私がもっと早くに止めさせてたら。」
「こんな目にも遭わなかったのにね。」

小鞠は怪我を庇うでもなく虚ろな目でそれを聞いている。

「ねえ、貴方。」

篠は殻の中の少年へと語り掛ける。

「この辺にしておきましょう。お互いに。」
「小鞠ちゃんも少しは懲りたと思うし。」
「私は貴方に何の興味も無いもの。」
「ここで逢った事は黙っててあげる。」
「小鞠の記憶も消しておくわ。」

尾を緩め隙間から覗けば篠の瞳が紅く光っている事を確認できるだろうか。


293 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/01(土) 19:21:31 4GmDVtAs
>>290
恐怖の奔流を肌で感じる。戦いたくないのは此方も同じだ。それなのに”こうする”しかない状況の、
なんと滑稽なことだろう。眼に見えない誰かに嗤われているような錯覚に襲われ、気分が悪い。

結局のところ気のせいに過ぎないのだろうけれども、不愉快な感情は紛れもなくホンモノだ。
それを原動力に、青年は動く。この不毛で、腹の立つ状況に終止符を打つため――、しかし。
易々と上手くはいかないようだ。

「ッ、――!!」

氷のワナが首尾よく機能したのなら、一気に有利を取れる。
上手くいかずに刀で防がれたのなら、距離を取って次の行動に意識を移そう。
胸裏に想定していたどちらの動きをも少女は許さない。事態は全くの予想外――第三の道を歩み始める。

「が、あ……ッ」

牙は肉を貫いた。しかし青年の目論見は外れた。
前足が空中に浮いた状態で、後ろ脚だけで踏ん張るのは困難を極める。だから爪を抜くことは叶わない。
結果として、オオカミの巨躯は壁に勢いよく叩きつけられる。
氷を容易く踏み抜いたのも頷ける尋常でない力、意識を揺さぶる衝撃。か細い呻きが、思わず漏れる。

「っ、の野郎……!」

しかし未だ気力は萎えていない、ここで倒れるわけにはいかない。意志がオオカミの身体を励起する。
壁に密着した背中から氷を勢いよく生成。その際に生まれるエネルギーを利用して、押し返そうとする。
うまく相手が大勢を崩したのならばそのすきをついて爪を引き抜くつもりだ。


294 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/07/01(土) 19:42:22 7Qi9G3cA
>>292

「あが!? が、がぁぁぁああ!」

何処からこの力が?などと疑問を浮かべる前に、苦悶の表情を浮かべる。
尾は神経が通っている為精密な動きが出来るが、そのため尾が負傷すると自身もダメージを受ける。
こじ開ける力に競り合おうと尾を絞める力を強めたため尾からミシミシという音が聞こえる。
やられる、そう思ったが小鞠は腕を引き抜くと主人の方に歩いていく。

読み違えた。彼女の真の役目は後衛ではなく指揮。
半ば自爆とは言え尾がここまでダメージを受けたのは初めてだ、これ以上戦闘を続けるのは難しい。
そこに、篠からの提案。

「……お前達が先に表に出ろ、それを見たらボクも退く」

自身の身を案じ、こちらも条件を付ける。
マスクを外していないので顔は見られていない。それなら問題ない。

「これ以上続けると壊れるのはその子だろう? 此処は飲んで貰わないと困るのはお友達だと思うよ」

恐らく、あの命令権は最後の切り札。
事実、あのこじ開ける動き以外は尾で全て受けられる攻撃だった。
無理をさせている事はすぐわかったのでポーカーフェイスを決め込み強気で交渉をする


295 : 【龍神変化】 :2017/07/01(土) 19:59:02 7YoeFCbo
>>268

使役される不死者の身体が引き裂かれる。少女の前に立ちはだかる死霊の軍団は、防壁としての意味をまるで成さない。
近づく事すら適わず次々と切り払われ、黒い血液が飛び散り、地面の泥と混じり合う。
和の国の映画で呼ばれる殺陣と違う所は、死人は断末魔をあげることがない事だけだった。人の形が、人の形を切り捨てていく。
土から這い出た忌まわしき異形の狼は、ああそれは、吸血鬼が作り出した影に過ぎないのだから、計上するのは止めておこう。
それに、此処には人殺ししかおらぬではないか。今更犬畜生の事なぞ。

薙ぎ払われる死霊の軍団の惨状を目の当たりにした、人の形をした魔物は、悲鳴をあげた。
平等に降りかかるべき死を避ける為に、他人の血を求めた魔物の断末魔。

「ああ!ひどい!ひどい!ひどい!
 理不尽よ!待って、話を、話をッ!」

 ―― しかし喉を刃が貫通しては、吸血鬼もそこまでしか叫べなかった。戯言には口封じを。
両目を見開いて、始末屋を見つめた。死人の視線を向けるのは、これで2度目だ。ようやく絶望と苦痛の織り交ざった死人の顔。
在るべき姿がそこにある。死人には死人としての、在るべき姿が。

吸血鬼は必死の力を振り絞って刀の刃を両手で握り締めたが、驚くような力で蹴り飛ばされては、どうしようもない。
激痛で思考定まらない吸血鬼は無抵抗されるがままに屋敷へ吹き飛ばされたように見えたが、そうはいかない。
背中から黒い腕が2本飛び出し、まだ焼け残っている屋敷の壁を掴んで持ちこたえる。
喉元の傷口から血を垂れ流し、裸体の線に沿って滴り落ちていく。眼は少女を見据える。
反撃の闘志が宿っていた。意を決し、自分の手で絞め殺してでも生き残ってやるという戦闘意思。

だが、今更そんなものがなんの役に立とうか。吸血鬼の眉間を、45口径の弾丸が破壊し、勢いに押されて屋敷の中へと倒れ込む。

「死ねと言ったのが、聞こえなかったのか。」

ただの人間の姿に戻りつつある龍人は、銃口から煙の昇るリボルバーを両手で構え続けながら、呟いた。
少女の意識はそこで暗転してしまうことだろう。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------

全て終わった。少女が意識を再開するのは、別の集落の民宿、そこの寝台の上だろう。
吸血鬼は焼き死んだ。集落の者も皆死んだ。だからといって、少女が倒れているのを放っておく理由にならない。
後味なんてない。これは仕事だ。繰り返される、日常。

部屋の片隅の灰皿に、吸殻が一本。苦い残り香が、ほのかに漂っていた。



/ここで〆という感じ、ですかね…!
/長い間拘束してごめんなさい。私はとても楽しかったです。お疲れさまでしたッ
/今回のロールは至らない部分が多かったと思いますが、またロールしてもらえたらとても私は嬉しいです…!


296 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/01(土) 20:33:48 HACt/x4c
>>293
怖い、ひたすらに怖い。
だが、意識を手放すことすら許されない。怖い、怖い!
できるのは、斬ること。恐怖の根源を断ち切ることだけ。
向けられるものを全て悪意と捉え、恐怖を膨らませる。
連鎖は止まらない。斃れるまで。

壁に叩きつけた。痛いはずだ。
なのに、なのにまだ“悪意”を向けてくる。怖い、怖い。

次は何を、と思った。
次の一手は、完全に予測不能。故に対処不能であった。

いきなり飛び出してきた、筋肉を使わずに動いた人狼には対処できずに体勢を崩す。
怖い、殺される!それはダメッ!!

「……ッ!イヤ……ッ!」

体勢を崩されながらも、刀を乱雑に振り回す。
せめて、牽制になればとでも思っているのだろう。



//刀振り回しへの対応がなされていれば確定で攻撃当ててもらっても構いませんよー殺さない程度ならなんでもOKです!


297 : 【血縁縁者】 :2017/07/01(土) 20:46:51 QJBNEVSw
>>294

「わかったわ。行きましょう、小鞠ちゃん。」

「はい、ご主人様。」

そうやり取りをして尾の間合いを気にしつつ暗がりを去ろうとするだろう。

【その途中で】

「この子が傷つくのを看過できないのは本当。」
「でも。」
「私、貴方を赦せないとも思っているの。」

殺気、いや邪気。"人に非ざるもの"の気配。
紅い眼の燐光を闇に残しながら"鬼"の残滓は謳う。

「もし貴方がこの子を殺していたら。」
「私が殺すわ。どんな手段を使っても。」

まだ少年は見誤っている。
篠の本質は後衛でも、指揮者でもない。
主、そして最後の奥の手。蒼白に塗りつぶす冷気の担い手。

その片鱗を残し、主従は去っていった。


//遅くなってすみません、お相手ありがとうございました
//お疲れ様でした


298 : 【不撓鋼心】 :2017/07/01(土) 20:56:34 JZZleYt.


――では最後に、何か一言お願いします。

「未だ日は浅いが、粉骨砕身の努力をもって信頼に報いると誓おう。我々は、貴方たちのためにある」


――昼下がり、とある町はずれの喫茶店。
ピークタイムを過ぎて人の姿もまばらとなったカフェに、にこやかに席を立つスーツ姿の女性とそれを見送る金髪の男の姿があった。
去ってゆく後ろ姿を眺める男の歳のほどは二十代前半、だろうか。色素の薄い肌と鋭い碧眼が北欧人種であることを示しており、眉間に刻まれた皺が成熟した印象を与えている。
長身をフォーマルな印象の服装が包んでいる。首元や手首、足首のあたりからは、僅かだが白い包帯が覗いていた。
腰には無骨な長剣が。なんとも物騒であるが気にしている者はいなかった。それも“能力者”が数多と存在するこの街ならではだろう。

少し残った珈琲を飲み干し、立ちあがる。
ふと見ると伝票はなかった。先ほどの女性がまとめて払ってくれたのだろう。
なんともさりげなく自然であり気付けなかった。とっくに去ってしまったが、ドアの向こうに目礼をする。

事は数週間ほど前……賞金稼ぎたちのギルド、「ワイルドハント」に一人の能力者が襲撃を掛けたことに端を発する。
その場に居合わせた彼――メルヴィン・カーツワイルが単身立ち向かい、これを撃破。
完全に息の根を止めたものの大きな怪我を負うこととなる。件の能力者は火球を操る異能を有していたために、全身に大やけどを負った。

……それを、雑誌社たちが聞きつけた。
こうした事例は珍しいのだろうか、そのことに関する取材の申し込みが舞い込むことになる。
賞金稼ぎの本分からは外れているものの、現段階では広報活動は急務。何より知名度が欲しい時期であるから、これを断る理由はなかった。
そして取材対象は、誰より当事者こそが適任。未だ完治はしないものの退院した――担当医たちの反対を押し切って――彼は、ギルド代表の頼みもあってそれを請け負う。これがその、最初の仕事だった。

「…………」

怪我の功名になればよいが――。
そう考えつつ店を出て、予想外に強かった日差しに一瞬目を細める。

……さて、これで予定は終了。
ならばあとはと、事前に決めていたスケジュール(鍛錬)を行うべく、足を踏み出した。


//置きokの絡み待ちですー


299 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/01(土) 21:08:09 4GmDVtAs
>>296
ふわりと身体の浮く感覚。今度は想定通りに運び、既に傷だらけながら漸く爪を抜くことが出来る。
体勢を崩した相手は闇雲に刀を振り回して身を守っている。命中することは無いが、近づくのは難しそうだ。
わずかな逡巡のすえ、――地面に着地したのち、オオカミは再び能力を発動する。

「悪く思うなよ――!」

先刻も用いた氷の槍――その先端を特に尖らせたものを、足元の地面から射出する。狙いは少女の手元である。
相手の膂力も侮りがたいが、最大の脅威は言うまでもなく青みがかったあの刀。

それさえ無力化してしまえばこっちのものだ。そう考え、行動に移す。とはいえ所詮ただの氷ではある。
特殊な性質なんて皆無。尖らせた先端から伝わる痛みはあるにしても、大きな怪我には繋がらないだろう。

「よし、……ッ」

果たして氷槍が命中すれば大きな隙が生ずる。
それを見逃さず、くるりと方向を転換する。その黄色い双眸が見据える先は、仔猫の消えた道。
獣の脚力を十全に生かし、オオカミはこの場から逃走を試みる。殺す必要なんてないし、殺すつもりもない。
実力行使は飽くまで本意ではないのだ。この姿だって好きなわけじゃない、だから逃げる。
それがすべてを円満に運ぶ選択肢だと信じ、そうする。

しかしながら、隙を突いたとはいえ、相手に背を向けることになるのは間違いない。
そこに追撃を加えることは――難しくない、かもしれない。

/それではこんな感じにしてみました。書き直しが必要であれば遠慮なく……ッ


300 : 【騎士三誓】 :2017/07/01(土) 21:37:23 yiHEgrU2
>>261

「ええ、問題ありません。参りましょう」

彼の手当もあって、腕のやけどは気にならない程度になった。
塔楯を左腕に嵌めるようにし、念のため剣は構えたままにしておく。
――先程のように、魔獣が闊歩している可能性もあるからだ。


「……魔力が徐々に濃くなっていますね、気をつけてください」

だんだんと、肌に鳥肌が立ちそうなほどの魔力を感じていく。
恐らく魔力源が近づいているのだろう。何があってもおかしくない、用心せねば。

さて、それから数分経ったときであろうか。女騎士の目は“それ”を捉えた。
毒のような魔力を次々に沸き上げていく、井戸のような存在。その正体は――
剣、それも片手剣であろうか。何故そこにあるのかは分からないが、確かにそこにあった。


「あれは剣……、でしょうか。見たところ片手剣のようですが」
「しかし、なぜこんなところに」

見た目は普通の片手剣に違いないが、刃は忌々しい紫色の光を放っている。
そのような剣が何故あるのか。女騎士はそれを考えていた。


301 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/01(土) 21:58:56 HACt/x4c
>>299
怖い、怖い。
だから、斬る。
人狼が躊躇っている間に刺突をしようと思った。が、マニアワナカッタ。

致命的な、痛手を負った。

カラン。音を立てて金属が落ちる。刀だ、狙い通りに氷の槍は仕事をしたのだ。
次いで、大きな物音。何かが、倒れるような。
例えば、人間とか。

そこには、先ほどまで怯えて刀を振り回していた女が倒れていた。
糸が切れたように、この強ち間違ってもいない表現そのままに倒れたのだ。

先程までの動きは何処に行ったのやら。地面に這いつくばり、刀を掴もうと手を伸ばす。
しかし、刀は微妙に届かない位置に。

このまま見逃すのもまた一つの手。刀を取り戻したら再び襲い掛かる可能性も否めない。

だが、
彼女は、苦しそうだった。


302 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/01(土) 22:29:14 4GmDVtAs
>>301
追撃は無い。よし、いまだ! 後ろ脚にぐっと力を込める。
その瞬間。オオカミに、その音が届いた。それは刀よりもずっと重たい何かが地面と触れ合う音だ。
思わず振り向けば、――にわかに目を見開く。倒れる少女、その指先。それらが視界に移りこむ。

逃げるにはもってこいの状況だった。
依頼を邪魔してきたばかりか切り掛かってくるような、素性も知れない女に拘る理由はない。
そう、どこにも。罪になることもないだろうし、何でも屋として問題のある行動でもない。
助けに入ってみろ、そこは相手の間合いの只中じゃないか。
折角つくりだしたチャンスを擲ってまで、どうしてそんな危険を冒す必要がある? ――。

「……」

それを考えているあいだ、自分の”脚が止まっていた”ことにふっと気がついたとき。オオカミの、――
いや、青年の腹は決まった。変身を解く。脇腹を庇い、身体を引きずって、少女に近づいていく。
そうして、刀を持たせてやった。それで直るのかは知らないが、それを求めているのは明らかだったから。

「おい、……大丈夫か」

これで斬られれば笑い話にもならないなと思う。しかし誰より自分がそれを望むのだから、仕方がない。
どんな時でも自分の性分を曲げるような真似はしたくない。自分の”理性”に正直にありたい。
この青年はなによりそれを信じている。――それから、ぶっきらぼうに声をかけた。


303 : 【逸軌刀閃】 :2017/07/01(土) 22:31:36 .FeU1ftU
>>295

自らの蹴りの反動で投げ出された少女の華奢なる肢体は、鈍い衝撃音を上げて地面に激突する。
腕力よりはだいぶマシだが、所詮自分の筋力では及ばないと思い、威力だけを上げる為に無理な姿勢で蹴り込んでいた。
それほどの力でなければ、あの悪鬼への追い討ちには成り得ないとの確信があった。
様々な苦痛で歪んだ口端から声とも呼べない空気の音を吐きだし、先に臥していた上体からやや遅れ、両脚が次第に追いついてくる。
まだ意識を飛ばす訳には往かないと、俯せからどうにかして起き上がろうと、目の前の大地に爪を立てる。
辛うじて見開いた目で最後にハッキリと見えたのは、燃え上がる屋敷から伸びる黒い触腕と、吸い込まれる鉛弾。
そこでナニカの糸がプツンと切れ、鬼の結末を目にしないまま――――少女の意識は、昏い昏い闇の底へと落ちていった。





「………………っ、……――――――――う?」

目が覚めて最初に視界に飛び込んできたのは、暗褐色の木製の天井だった。
簡易に造られているらしく板と板の隙間から蒼が覗き、その御陰で今が晴天であり、白昼であるとすぐにわかった。
雨滴が浸み込んでいる所為か、湿っぽいカビっぽい臭いが微かながらに鼻孔を刺激し、二度寝する気にはなれなかった。
シーツをめくって堅い床木から起き上がると、不意にやってきたカビとは異なる刺激臭に眉を顰めた。
すぐにその臭いに慣れると、臭いの正体とその意味に気が付き、ちょっとだけ胸を撫で下ろす。
一先ずは本来の住人が来る前に帰ろうと、仕度を整えようとしていた手が止まる。

「…………刀……………………」

枕元に置かれていた得物は、二振りのうちの片割れだけであった。
何処に置いてきたのか――――その心当たりはひとつしかない。即座に少女は片割れと、畳んであったジャケットを持って飛びだした。





地名さえも知りはしなかったが、昨日の集落にはそう時間を掛けず辿り着けた。
息吹による炎が森林の多くの木々へと燃え移っていたので、深緑の海に浮かんだ黒は非常に浮いていたのだ。
辺りには死の異臭が漂っており、かつて集落を形成していたはずのモノで埋め尽くされていた。
もっとも始末屋は此れにも慣れているので、平然とした顔色と歩調で集落の中心へと歩いていく。
そして昨日の場所にあったのは、地面に突き刺さるほぼ炭と化した金属の棒と、一際異彩を放つ嗅いだ経験のない死臭。
この棒が自分の得物の成れの果てに間違いはなく、ならばこの妙な死臭を放つのが何者なのかも明白だった。
灰燼と帰すまで燃え尽きたのか死体らしき死体は見当たらず、焼け死んだのか撃たれ死んだのかもわからない。

「……――――――ごめんね。さよなら」

誰に聞かせるでもなく発したそれが、何に対しての言葉であったのか、始末屋自身もわからなかった。
あの悪鬼に対し同情も悲哀も抱きはしないが――――他者の犠牲の上に生きているという点については共通していた。
むしろより明確な殺意をもって死を築き上げているという意味では、悪鬼よりも悪鬼めいているかもしれない。
いずれ遠くないうちに自分が迎える最期も、ああいう形なのだろう――――と、そんな事を思った。

一振りだけになってしまった得物を背中で縦に固定し、上から革のジャケットを着込む。
悪鬼の最期も村人の大量死も、数多くある何でもないひとつとして世界から忘れ去られていくのだろう。
だからきっと此れもまた、この世界の何処にでも有り触れている、よくある日常の話。



/長期間に渡るロールお疲れ様でした!此方の私事により度々遅れてしまって申し訳ないくらいです
/自分もとても楽しかったです!ありがとうございました!


304 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/01(土) 22:58:47 HACt/x4c
>>302
ああ、死ぬ。それは、嫌なのに………


………
…………
……………
あれ?
身体が、普通に動く。
死んで、いない。

「ええっと………う、うん」

スッと、何事もなかったかのように立ち上がる。
そして、四度目の金属音。刀は鞘に納められる。

「……あなたは?」

自分で斬った相手の心配をすることがくるなんて、思わなかった。
こんなとき、どうすればいいか分からない。きっと記憶がすり減ってなくたって分からない。
だから、月並みの言葉しかかけられない。

今も怖い。あまりに怖い。油断はしていなければ常に警戒をしている。刀に手を掛けたりはしないものの、いつでも抜けるようにしている。
だが、それを上回る感情があった。
だから、向き合うことにした。この言葉を言うことにした。

「………ありがと」


305 : 【剣脚翔邁】 :2017/07/01(土) 23:15:06 9cQny0Qk
>>260

―――――見ろ。

(見るな)

―――――見ろ。

(見るな)

見ろ見るな見ろ見るな見ろ見るな見ろ見るな見ろ見るな


見られていることが恐ろしい。自身が記憶されていくことが、自身によって命あるものに記憶が刻まれていくという感覚が、酷く恐ろしかった。
仕事柄記憶を残さずに殺すことを徹底したせいなのか、それとも自らが相手の生命を奪いかけている事実に怯えているのか、それは分からない。
だが、只管に押し寄せる波にも似た恐怖を殴りつけるように、感情だけは荒々しく。

――――何度繰り返しただろうか。きっと、彼が正気を取り戻すのに掛かる時間は、十数秒程度では物足りない
きっと、彼女から血液が流れ出し、それが彼の手に、顔に、舌に、目に。汎ゆる所に降り掛かってから――――ようやく、首にかけていた手をどける
その後、後ずさるようにしてよろけ、脚はかすかに震えながらも呼吸は荒く。血に染まった右手を少しだけ見ヤッてから……呟くだろう。

「これで満足かよ。…………クソッタレが。」

吐き捨てるような言葉は、酷く鉄臭い。血液が目に入って視界は赤く、体中から血の味がする。あえて言い方を変えるとすれば、コレは全て彼女の記憶だ。
血液は人間の大部分を占めている――――ということは、血液を全身に浴びた彼は、彼女を〝浴びた〟――――即ち、彼女自身を記憶したと言っても過言ではない。
彼女の流れ出した血液の味、柔肌の感触、瞳の奥にある痛みの表情。しっかりと、まるで脳髄に焼き付くように残ったそれは、物語にされるような清純でプラトニックな〝愛〟とは呼べず。
あえて言葉にするのであれば、それは―――――〝哀〟と、呼ぶのだろうか。

//忙しくてようやくコれました……! 申し訳ないです!!!!


306 : 【一刃瞬潜】 :2017/07/01(土) 23:31:28 yiHEgrU2
>>298

――行きつけの喫茶店は、休日ということもあって客入りが良かった。
暑さから逃れるためか、屋内へ入りたがる人間が多いようだ。無論この女も其の一人だが。
アイスコーヒーでも注文しようか。季節外れであろうカーキのトレンチコートの裾を靡かせ、扉を開けた。


「……なんだ、アイツ」

カランコロン、と鐘が静かに響くと扉が開いた。
店内から出てきたのは体格のいい男だった――が、見た目に違和感がある。
いたるところに白い包帯を巻きつけ、まるで全身を火傷したかのようだった。


特に女は彼を気にかけるようなことはしなかったが、彼にとっては別だろう。
“トレンチコート・ガール”。悪も善も構わず、頼まれればどんな依頼であろうともこなす女。
当然見逃すはずはないだろうが、今日だけは状況が異なるだろうか。


307 : 【執事無敗】 :2017/07/01(土) 23:39:19 zdsG8BmA
>>300

女騎士は大丈夫だと言う。
彼はそれを聞き入れ無言で付き従った。

そして女騎士が気をつけてと言えば念のための銀食器を取りだし進む。
この現象には女騎士の方が知識面で上であるがゆえに従う。

そして今、眼前には紫の光を放つ片手剣が見える。

「何者かが意図的に置いたと思われますが……」

そう言い女騎士と同様に別の可能性を模索する――


308 : 【真鴈眞眼】 :2017/07/01(土) 23:57:56 .Xe3J66Q
>>305

時間にして数分前後。彼女の首筋に存在証明たる傷痕が刻まれた時間。
首筋から流れ出る血液は彼の手を伝い、疎らに彼の身体に絡み付き、染込む。

「―――っぁ…っは、ぁ」

酸素が脳に回らない。酸欠の様相を呈し始めた矢先、彼の手が首から離れた。
それと同時に彼女もぺたんと座り込み、ばたっと横に倒れこむ。
倒れこむ間際に垣間見た彼の表情に哀絶が滲んでいた、と思う余裕も無かった。

「…ごほっ、ごほっ! ―――ッ…ぁあ…」

今もなお彼女を苛む右目の痛みと、今先刻痛み始めた首筋の痛みは。
痛みという意味では同一なれど、意味合いは全く異なる。
望まざる痛みと、望むべくして望んだ痛み。

"これで満足か"―――遠ざかる意識が捉えた言葉。
彼女からすれば満足としか言い様が無い。
痛みを訴える身体。流れ出す血液(いのち)。今この時己が己であるという証明。
望むものに近づいた身(いま)が満足でないとどうして言えるのだろうか。

「―――……さ」

声が上手く出せない。言葉が出てこない。乱れた呼吸と痛みがそれを邪魔して。
それ故に身体が重く、顔を彼へ向けれない。彼がどんな顔をしているか見えない。

その為、彼が見えるのは彼女の横たわる姿で、聞こえるのは空気の漏れたような音。
けれど、僅かに声になった言葉は確かに彼の問いに対する言葉であった。

//お待ちしておりました。お帰りなさいです。


309 : 【不撓鋼心】 :2017/07/01(土) 23:58:21 JZZleYt.
>>306

踏み出そうとした、その、ときに。
ふと、彼の脳裏にある言葉がよぎった。

――トレンチコート・ガールに気を付けろ――

……それはかつて、盟友たるリオ=レナードから受けた助言。
実際にこの街に潜んでいる人間に邂逅したというような口ぶりだった。ゆえに頭の片隅に置いておきはしたものの。
なぜ、今更その言葉がよみがえったのか。それはむろん、言うまでもない。

今しがたすれ違った女が季節外れのトレンチコートを着用していたことが、まず第一。
第二の要因は。――男の嗅覚が、一般市民のそれとは違う気配を洞察してからだ。
巧妙に隠されてはいる。実際、一瞬見逃しかけたが……得てしてそういう微細な差異は、一度気付けば余計に目につくものだ。

「――少しいいだろうか」

無視できない。
確証はないが、それでもここで放置することだけはあり得ないことだった。
自身の状態がどうだの、体調がどうだのは、この男にとって何の障害にもならない。場合によっては……。

「少々聞きたいことがある。時間を取らせる代わりと言ってはなんだが、代金はこちらで受け持とう」

振り返れば決意を秘めた鋭い眼差しが射抜いている。
聞き取り様によっては……いや、多くの人が、いわゆるナンパであると取るであろう言葉。
しかし彼の鋼のような佇まいと全身から発散される厳めしい気配が、そんな当たり前の印象を抱かせなかった。


//よろしくお願いします!


310 : 【騎士三誓】 :2017/07/02(日) 00:14:08 P8dqGOJE
>>307

「それは間違いないでしょう、それに“呪い”がかけられているとなれば尚更」
「……どうしましょうか。如何せん私は宗教を信じないものですから」

何かの詞を述べればどうにかなるのだろうが、そういうわけには行かない。
故に、女騎士としては源泉の破壊一本で行くつもりであったし、変えない予定だった。
――だが、事態が急変した。其処らから、亡霊の類が湧いて出てきたのである。

「……“残留思念”、でしょうか」
「まずは彼らから片をつけてしまいましょう、では」

「一つ、私は貴殿の攻撃を一切避けぬ。

 二つ、私は貴殿へ嘘を付かぬ。

  三つ、私は貴殿への不意打ちを禁じる。

 “以上を以て、騎士の宣誓とする。我が身に救いあれ” 」

女騎士は穢れた地面を踏み、実体を持たぬ亡霊へと駆ける。
大剣を右手に、塔楯を左手に構え。そのまま突進し、彼らを切り伏せる。
一つ、また一つ。断末魔一つ上げることなく、静かに影は姿を消していく。

――さて、この地では以前紛争と言うべきものが起こった。
発端は些細な領土の境界線争いからだったが、果には幾人もの命が失われてしまった。
その時に遺された剣がこれだったのであろう。怨念とでも言えるものが、それに取り憑いたのであろうか。


311 : 【一刃潜瞬】 :2017/07/02(日) 00:20:34 P8dqGOJE
>>309

「――ああ、いいぞ。料金はそっち持ちだな」

男の眼差しを感じると、そっけなくそう返した。
なるほど、目線でわかるものだ。彼は私を“知っている”。
それがギルドに所属しているものであれば尚更だ。彼は記事になっていた気がする。


「……それで、何の用だ」
「私はアイスコーヒーとメープルパンケーキ、あと食後にシフォンケーキを頼む」

彼と相席したのであれば、女ははじめにそう言った。
彼が何のために自らを呼び止めたかは明確であったし、今更聞くことでもないだろう。
……あと、人の金だからといって無駄に注文するのは抜け目ない。

コートの右ポケットを弄り煙草を探し当てるが、禁煙であることを思い出した。
仕方がないと両肘をテーブルにつき、両指を絡めた上に顎を乗せて彼の返答をまった。


312 : 【不撓鋼心】 :2017/07/02(日) 00:37:13 c0.F/kkw
>>311

……まず始めに店員を呼び、彼女の言う通りの注文をした。自身は珈琲を一杯だけ。
その気配は変わらず硬質なものからまったく変化していないが……男とて、無用に騒ぎを起こしたいわけではない。
ましてやここにいる人々は“こちらと”関わりのない一般市民。
すなわち彼が護りたいと願う無辜の民であり、要らぬ火の粉を飛ばしたくはなかった。

注文を受けて、復唱の後にスタッフは奥へと引っ込んでいった。
かと思えば他のテーブルにオーダーを取りに行く……くるくるとめぐるましく動く店員、にぎやかな店の中。
こじんまりとした喫茶店、慢性的な人手不足なのだろう。二人の頼んだものは、まだ来る兆しがない。

……テーブルに両肘を乗せる女。それを鉄心を通したような姿勢で、まっすぐに見据える男。
彼らの様子は……少なくともガワだけを見れば、それほど違和感もないものとして溶け込んでいた。

「――単刀直入に聞こう」

その中で、男が口を開いた。

「貴女は、“トレンチコート・ガール”か」

低い声が紡いだのは、言葉通りにストレート極まりない質問だった。
それ以上の言葉は無駄であると言わんばかりに――そして決して虚偽を許さないとばかりの眼光は鷹の様相を呈していた。


313 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/02(日) 00:47:15 2D0fonCQ
湿気った土から立ち上る心地の悪い匂いが、白衣の男の逃げ行く路地を包み込む。
ぜえぜえと息を切らして、やっと面したのは反り立つ壁。不運なことに、そこは近辺のごみの集積所だった。足取りは突然に重くなる。
頭から湯気が立つように感じる。髪を掻きむしると、頭皮から汗がにじんでいることに気づく。今晩はやけについていない。

『いたぞ』

途方に暮れるいとますら許さず、怒号を上げる彼らは、元々は共同研究をしていた彼の仲間だった。
ぞろぞろと揃い踏む影を睨む。休む暇もなしか。

「そりゃあそうだ。君らの興味は私じゃなく、私の研究に向かなきゃおかしいんだ」

諦めたように笑い、行き止まった壁に背を預ける。
多少の信頼を感じていたのは自分だけだったのだろうかと頭を捻る。だが男は、自分も彼らの手腕に対して期待をしていたのみだったことに気づく。
馬鹿みたいだ、と思う。人間、ひとりでは生きられない。だが、突き詰めれば結局ひとりだ。価値ひとつを生み出しただけで、脆いつながりはいとも容易く千切れていった。

『大人しく渡せば――』

「危害は加えない、か? “これ”を奪われることがそもそもの害だよ」

『死にたいのか、マキナ』

いくつもの銃口が、男に向かう。だが、畏怖するでもなく男はせせら笑う。
手に提げていたビジネスバッグを両手に持ち替え、自分の身体の前面に押し出す。

「撃てるか? 下手に“これ”を撃って私が死ねば、もう“これ”を造れる人間はいないぞ?」

途端ざわつく一行を思考の隅に追いやって、男はふうと息を漏らす。
こんなものは急場凌ぎでしかない。さっさと“脳力”を解放してこの場を去りたいところではあるが、流石に五、六人を無事にやりすごせるとも思っていない。

(――正義の能力者でも現れないかな)

能力者への対抗策を練る自分がそれを待つなんて、ちょっと面白い。
そんな戯けた妄想にふけりながら、男は行動を決めあぐねていた。


//1時までお待ちしてます。以降は置き進行でよろしければ


314 : 【描映爆筆】 :2017/07/02(日) 01:05:28 FZuElvJc
>>313

切っ掛けは些細なものであった。

「……お医者さん、ですかねぇ」

白衣の彼は、少し前にすれ違った少女を覚えているだろうか。
小学生に満たない矮躯ながら、やけにだるそうに歩く、白衣の少女を。
必死の形相で走る男を見て、玉虫色の髪を持つ少女がそう呟いたのを恐らく彼は知らない。
どういう脳内神経(シナプス)の反応か、ともかく少女はこうして、男達の前――――正確には追っ手の後ろに現れた。

「どちらが悪者ですか?」

質問とは裏腹に、醒めきった声に含まれる興味は薄い。
というより、どちらに着くかは始めから決めていたようで。止まっていた脚が再開する。

人の間を縫って、極めて無防備にピストルの射線に立とうとする少女。
足並みは早くもなく遅くもない。小さな身体が叶えるごく普通の速度。だがもし止めようとすれば、手痛い仕打ちも吝かではない。という
気迫? 雰囲気? いずれにも満たない、そんな空気を纏って。
気だるげな足音はこつ、かしゃ。こつ、かしゃ。とやけに不揃いに響くだろう。


315 : 【不煌翼使】 :2017/07/02(日) 02:42:25 ZCnPe8ec

歓楽街から奥へ入る街並
街灯はギラギラと、飲食の店とは違うわざとらしさすら感じる退廃的な、しかし欲望を照らすように輝いていた
俗に言う風俗街、遊郭、女の墓場ーーー人の獣欲のための街

お互いを値踏みするような足音が交わされる中で、ひときわ目立つ足音が二種類

必死さを、或いは焦燥感に追い詰められる者の走る音
堂々と、職務を遂行するような、追い詰める者の走る音

「やだ、やだ、こないで、助けてっ……!」

翻る髪は長く、闇の様な黒に見えるが、明かりに照らされるとそれは蒼い色だと判るだろう
幻想的な色合いのそれは毛の先より少し上、腰辺りで結われていて、走る度に尾のように跳ねている
その主人は成人になってるになるかならないか程度の、少女とも大人とも見えるような娘であった
簡素な形で灰色の、量産品を強く印象付けるようなワンピースの背中には、猛禽種のような双翼が生えており、淡い蒼輝きを放っていた

「幻獣種の亜人なんて高えもんを逃した日にゃ、上に殺されるぞ!早く捕まえろ!」

一方で追う者たちは、黒いスーツの3人の男達
何処か猟犬のような雰囲気が、暴力と本能のような匂いを放っていた


「ーーーっ」

曲がり角。一瞬迷ったが有翼の女は左に曲がり、直ぐに人混みから押し出されるように廃れた家屋の中へ逃げ込んだ

/初めてですがよろしくお願いします!


316 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/02(日) 03:17:44 VBAV/0ds
>>304

青年がこわごわ見守っているとすぐに、少女は眼を覚ました。まるで何事もなかったかのように。
そのどこか間の抜けた返答を聞き届けると、身体から力が抜けてきて、思わずその場にしゃがみこむ。
――終わった。ささやかな達成感、それから安堵。安心すると、急に傷が疼き始める。難儀なものだ。

「おう。この程度でくたばってたまるかよ」

どんと胸を勢いよく叩き、誇る。その瞬間はげしい痛みに襲われ、顔をしかめる。
とんだ茶番だが、笑えるだけ今はマシだ。

彼女に気を遣わせまいと、平気なそぶりを見せる――そんな殊勝な真似をするやつではない。
大丈夫だ、というのは、あくまで正直な答えにすぎない。痛みはあったが、痛いだけ。
どこか折れてはいるかもわからないが、まあ、死にはしない。だから大丈夫。彼はまじめにそう考えている。

「……別に。もとはといえば、原因は俺だからな」

正面からぶつけられた謝意に応える術を知らない彼は、ふいと目を逸らす。
ガラの悪い男なんて総じてそんなものだ。こいつとて例外ではない。

――居心地の悪い思いを十二分に味わい、そうして再び、青年はその場で立ち上がる。
今度こそ、この場に留まる理由はない。まだ自分にはやるべきことが残っていたし、
この少女だって、”それ”を望んでいるはずだ。読み取れるだけの警戒心が、それを物語っている。

「……じゃあな。もうあんな真似はするなよ。誰か斬りたくなったら、また俺が相手をしてやらあ」

冗談というには幾らか真剣で、本心だというには現実味のいまいち掛けた調子でもって、
笑いながら、別れの言葉を口にする。
少女の宿痾はまだ死んでいない。あの狂気を帯びた状態と、推察される刀との特別な繋がり。
それらは決して無関係ではないだろう。それを断ち切ってやれるほど、今の青年には踏み込めない。
しかしもし、”その時”と対面することがあるならば、――。

ひらひらと適当に手を振り、背を向ける。
何事もなければ青年はそのまま、血に汚れた手で脇腹を抑えながら、路地裏を後にすることだろう。


317 : 【騎士三誓】 :2017/07/02(日) 08:19:04 P8dqGOJE
>>312

女がこの喫茶店内で安心できることといえば、襲われる可能性が皆無に等しいということだ。
もし彼が女に攻撃を仕掛けたのであれば、女は客を人質に取る腹積もりだった。

無駄に多い注文を頼むと、再びテーブルには静寂が訪れた。
如何せん、特に話すことがない。同職でも友人でもないし、其の上敵対者だ。
だが、二人の見た目は“それなりに”辺りの景色に溶け込んでいるようだった。


「……は?」

彼が口を開いたと思えば、第一声がそれ。
ついつい拍子抜けしてしまったものだ。まさか、休みにまで仕事の話を持ってくるとは。
彼の視線はまるで女を貫き通さん程であったが、あいにく女は慣れていた。

「見りゃわかるだろ、ただ今はオフだ」

殺りあうなら仕事中にしろ、と付け加え呆れたような顔をする。
もう少し回りくどく聞くのかと思っていたのだが、実直な男とでも形容すべきなのか。
ただ、今は其のような話は出来るだけしたくない。コーヒーを飲みに来たのだから。


318 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/02(日) 14:22:00 luhZL2qQ
>>316
付けた傷は軽いものではなさそうだ。
だが、笑えてるいうことはきっと心配するほどではないのだろう。

「斬りたくなったらって、そういうわけではなんだけど……
まあ、ありがと。じゃあね」

青年の微妙に的外れな言葉に戸惑う。
別に、そういう呪いではない。たしかにこの刀は呪いを齎している。
死ねない、死することができない。その割にはすり減って消えていく記憶の欠片を集めることもできない無能。
だから、私は本当の不老不死を求めて時代を彷徨う。
日に日に臆病になるのを感じながらに。

こちらも手を振り、青年に背を向ける。
いつも通りの足取りで、路地裏を歩き出す。
まだ、手掛かりは見つからず。

//ここらで〆で!長い間ロールおつかれさまでした!ありがとうございました


319 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/02(日) 14:36:21 VBAV/0ds
>>318
/お疲れさまでした&ありがとうございましたー!


320 : 【不撓鋼心】 :2017/07/02(日) 15:12:32 c0.F/kkw
>>317

その言葉は肯定と受け取れるものだった。
男の眼光が更に眇められる――視線の圧が増していく。
余人ならこの眼に見られているというそれだけで、じりじりと精神が削られる。鋭く厳しい眼差しには、明らかにある種の力が宿っていた。

「そうか」

ただ意外なことに、相対する男の気配は静謐を保っていた。
あるいはそれは、嵐の前兆なのだろうか。噴火直前の火山が見せる不気味な静寂にも似た凪が、不吉な予感をいやがうえにも感じさせる。

「問うが、そのような言い分が通ると思うか暗殺者。なるほど、己の所業を軽く見ているらしい」

口調は先ほどよりも険が増している。
お世辞にも友好的とは言えない響き。最初からそのような色は限りなく薄かったが、この時点で敵対色は明確化していた。
それはある意味で当たり前だったのかもしれない。男には、きっと彼女にも、最初からお互い仲良くなるつもりなどこれっぽっちもないのだから。
敵対者に情をかけるような人間ではないのはおそらくお互い様。いざぶつかるとなったら両者譲らない。

「……なぜ“その道”を選んだのだ。糧を得る手段ならば、他にいくらでもあるだろう」

だができることなら、いまここで事を起こしたくはない。
無関係な他者を巻き込むことはできうる限り避けるべきだ。人質などを取られては目も当てられない。
ゆえに暫しの会話を続行することにした。話題は一貫して彼女の稼業に関するもの、それ以外に話すことなど何もないと言わんばかりに。


321 : 【一刃潜瞬】 :2017/07/02(日) 16:00:39 P8dqGOJE
>>320

彼の視線がより厳しいものとなっても、女がそれを気にすることはなかった。
相変わらず組んだ指の上に顎を乗せたまま、彼の方を向いている。
正義と言うのは誰しもが掲げるものである。それ故に、“行き過ぎた”それは女に取ってみれば呆れるものだったのだ。


「ああ、そうだ」

笑みを浮かべることもなく、また険しい表情をすることもなく。
ただわかるのは、二人の間に厚い壁が存在するということ。無論、話しかけられたときからそうであったが。
深く彼について考えることもないし、自らのことを考えることもない。ただぼうっと、返事をした。

「……そうか」

普通に流す。反応を示さず、じっと彼の方を向く。
敵対しているのがはっきりしたことはありがたいものだ。中途半端であれば余計にムカつく。
彼も自らに対して情けをかけるつもりは無いであるし、それは自身も同じだ。


「私には“これ以外”無い訳だ。これ以上言うことはない」

稼業に関しての話にも、一切乗り気ではない。
というよりは、ケーキを食べ、コーヒーを飲みに来たのだ。仕事の話は“湿った”場所で十分だ。
彼がこれ以上言及するのであれば仕方なしに答えるだろう。暗殺者は“パンケーキを待っていた”。


322 : 【不撓鋼心】 :2017/07/02(日) 16:35:38 c0.F/kkw
>>321

……結局、二人は平行線。

おそらくは未来永劫、彼らの道が交わることはないだろう。
あるとするならそれは殺し合うときだけ。それすらきっと、本当の意味でぶつかることはない。
互いに単なる敵として。排除すべき障害として。それ以上の感情を抱かずに、どこかすれ違ったまま両者が両者を殺すために動くのみ。

やがて注文の品が運ばれてくる。
見つめ合う男女――その言葉に確かに当てはまりながら、しかしそこにあるべき艶めいた雰囲気など何もない。
ウェイトレスが少したじろいだ気配を見せて、テーブルに置くとこころなしかそそくさと去っていった。

芳香と湯気を立たせるコーヒー、それに手を付けることもなく……。

「……職業に貴賤はない」

再度の沈黙の後、再び口を開いた。

「いかなる稼業であろうと、それだけでその人物の本質まで断定することはできんと、俺は思っている」

それはたとえ暗殺者であろうと同じこと。
職業が一般的な観点から見て薄汚れていようとも、それに従事する人間が押しなべて屑ということはない。
のっぴきならぬ事情のもとに、意に添わぬ形で身を窶している……そんな事情が存在することは重々承知している。
逆に羨望の対象となる職務に就く人間だとて、性根が腐っていることは珍しくもない。真に清廉潔白な政治家をどれだけ見たことがあるだろうか?

だがな、と。

「これだけは聞かせろ――お前は今まで、そしてこれから、無辜の民を手に掛けることをよしとするか?」

彼にとってそれだけが、絶対的な一線となっているから。
……それはあるいは、わかりきった質問なのかもしれない。


323 : 【一刃潜瞬】 :2017/07/02(日) 17:07:36 P8dqGOJE
>>322

――幾分が過ぎた後、注文の品が運ばれてきた。
会話もなく、険悪な雰囲気のカップル。これにはウェイターも多少驚いたようだ。
甘い蜜のかかったパンケーキを器用に切り分け、フォークを用いて食べていく。


あらゆる職業の者を殺してきた。闇商人や政治家、それも多岐にわたる。
彼らはあくまで暗殺の対象であり、情をかけることなど“ありえない”。
だが、一度だけ。女は一度だけ“殺せなかった”。彼だけは今も忘れていない。


「――貴様、分かってないな」
「殺される理由がある奴は、他人の正義を貶めた奴だ」

フォークを彼の眼前へ向け、そう言い放った。
彼の言う“無辜の民”というものは、この世界には実在しない。
女は嘗てよりそう思っている。それどころか、人間は生きているだけで大罪を背負う、と。


「いいか、私は大勢の奴らを殺してきた。私は大罪人だ」
「だが私に殺された奴らは、一人たりともお前の言う“無辜の民”ではなかった」

フォークを引っ込めて彼へと言い放つ。
彼にとっては馬鹿馬鹿しい返答かも知れない。だが、女にとっては真剣だった。
たとえ殺された奴が罪人でも正義を掲げる者であっても、人間としての“本質”は揺るぎなかった。


324 : 【不撓鋼心】 :2017/07/02(日) 17:57:00 c0.F/kkw
>>323

果たして女の返答は――些か以上に、予測を外れたものだった。
しかし分かる、これは決して虚言ではない。
彼女の言葉は限りなく真剣なものだと理解できたゆえに……それを遮らず受け止める。

「……他者の正義を貶める者にこそ、殺される理由がある。ああ、否定はせんよ」

その上で、一面的に正しいと認めたからこそ肯定の言葉で応じた。
人にはそれぞれの思想があり、世の中という舞台の上に立っている限り、そこにはどうしても衝突が発生してしまう。
譲れぬ一線、認められない思想……その想いが強ければ強いほど激しくぶつかり合い、結果として他者を深く傷つける結果になる。

その末に死に値する理由が生まれてしまうことは、残念ながら事実である。
自分とてその理屈の上に数多の人間の命を断ち切ってきた。それを良しと正当化するつもりは一切ないが、ある意味で人の世の真理ではあるのだろう。

「だがな――それだけの理由が無いのにも関わらず、他人を殺す屑は存在する」

碧眼に炎が灯る。
それは他ならぬ怒りの火。己の我欲だけを理屈として人々を殺戮する悪党への、紛れもない憤怒だった。

「陽だまりで遊ぶ子供たち、手を取り合って未来を目指す善男善女、それらを見守る老人たち……誰を犠牲にすることも望まずただ穏やかなる日々が続いてほしいと願う彼らが、いったいどうして殺されねばならんという」

確かに人は生きるだけで何らかの罪業を負ってしまうだろう。
毎日の食事ですら命を喰らうという犠牲の上に成り立っている以上、真に穢れなき人は存在しないのかもしれない。
だがならば、いったいどれだけの人間が生きる価値があるというのだ? 必要最低限の犠牲すら許容せず裁いていけば、いったいどれだけの人間が生き残るというのだろう。

そして“最低限の犠牲”から逸脱する者は必ず存在する。
必要もないのに他者に害を及ぼし、食らいもしないのに何かを殺し、ただ己の獣心を満たすためだけに他の誰かに犠牲を強いる……。
そういうものを見てきたからこそ、男は猛るのだ。そうした理不尽を決して赦してはならぬと確信するゆえに。

「罪なき人々は確かにいて、彼らを害する悪党どももまた蔓延っている。俺はそうした連中を赦せはしない」

だから、どうなのだ。
お前はそういう人間なのかと、厳しい視線が何より雄弁に問いかけている。
その言葉にも、態度にも、彼女と同じく衒いはなくて……何より真剣に語っていると、誰の目にも分かることだった。


//遅くなってすみません、そして次も遅れるかもしれません……!


325 : 【執事無敗】 :2017/07/02(日) 20:07:49 InpwZ2p.
>>310

「呪いですか」

そんな能力やそんな魔法の噂は聞く。
しかしそんなすべを持つわけでもなく、そんな能力に会ったことのない彼はうっすらと疑問を浮かべつつ返す。

そして今度は亡霊だ。
亡霊が出現する剣なぞ異世界なら確実に破壊か収容されていそうな物品である。
まあこの世界はそんな組織はないのだろうが。

女騎士が亡霊から片づけると言う。
彼はうっすらと彼女の能力の推測、そしてある可能性に気が付くもそれを無視し亡霊を銀食器で切り捨てる。
彼は執事、むやみな進言は執事らしくないのだから。


326 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/02(日) 20:17:06 2D0fonCQ
>>314

白衣の男に詰め寄る影達に、鈴が転がるような声がかけられる。
その矮躯を、彼は既視していたことに気づく。
繁華街を抜け、路地に入る前に住宅地へと逃げ込んだ時だろうか。
集中は逃亡経路の確保へと向いていたので、当時の状況は覚えていない。が、彼女の姿は別だった。

(子どもの、犬の耳の、絵描き?)

その時の彼女から得られる視覚的情報はかなり多く、その精査には多少の時間を要した。
だからこそ、彼女の姿を鮮明に思い出すことができた。

鈴の音は、その空洞に余裕を満たして問いかける。
誰に向けられているか分かり得ない。影達はハッと声に向き直るも、その容姿やら態度に呆気にとられ、その場で狼狽えるのみだ。
そのまま彼女は義足を踏み鳴らし、私と彼らの間に立った。
――正直なところ、彼女と私には身長差が大きくあって、あまり射線を塞ぐ役割を担っているとは言い難いが。

「あまりこう、いけしゃあしゃあと言うのは、気が進まないが」

でも、私は彼女を信頼する。
なぜなら。

「悪者は、あちら様だ」

中年男性が人形のような少女に助けられる筋書は、いたって好奇な物語であろうから。

彼らの内一人が落ち着きを取り戻すと、思い出したかのように発砲。
それにつられていくらかの間隔で、ディレイ射撃が行われる。
対象は、奇妙奇天烈として彼らの目に映るかの少女だ。男はのほほんとしている。


327 : 【描映爆筆】 :2017/07/02(日) 21:00:55 na33V9gA
>>326

余裕を取り戻した背後の男に顎を引いて首肯する。目の前の追撃者たちが我に帰るよりも、少女の対応は手慣れたものだった。

白衣の袖口から、ずるりと異形が這い出でる。
太さは大人の上腕くらいあり、長さに至っては軽自動車を軽く二巻きは出来るほど。密林に似合いそうなその大蛇は少女の周りでとぐろを巻く。

廃棄所に破裂音が無秩序に木霊する。
だが、長い身体から黒ずんだ体液を流しながらも、主人である少女はほぼ無傷。

次いで、追撃者たちの足下から破裂音、煙が立ち上る。
火薬の其れよりも純度の高い、澄んだ音がただ一度。

「5、6人ばかしのピストルじゃあ、足りませんねぇ。」
「私をイジメたければ、吸血鬼(バケモノ)の一個小隊でも率いて来ることです」

とぐろから解かれた少女が事も無げに音の出所を指し示す。
右手指に挟まれた絵筆。筆先から湧き出るインクがきらきらと不気味に流れ落ちる。

其れは振るった先を悲鳴のオーケストラに変える死の指揮棒。
歩くすがら彼らの足下にインクをたっぷりと撒いていたと気づくものはいるだろうか。
とはいえ威力はかんしゃく玉みたいなもの。
だからこそ、次は――――

立ち上る灰色の煙の奥で、ドーベンマンたちが牙をむき涎を垂らす。
無音で羽ばたき睥睨するふくろうたちの、金色のまなこ。
踏んだ場数の違い、或いは潜り抜けた修羅場の濃度差。
通りすがりも見ず知らずも関係ない。首を突っ込んだ以上やるなら徹底的に。
過去の経験が物語る、手足を失ってまで何度も死にかけた少女は、油断も容赦もしない。

最終通告である。
次に引き金を引いたときが、彼らのこの世からの暇乞いになる、という。
――どちらでも構わないのだ。少女が指一つ動かすだけで、其れは終わる――
不眠気味の蒼眼の奥に宿る濁った漆黒を、彼らが感じ取れるが否か。ただそれだけの事であった。


328 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/02(日) 22:36:19 2D0fonCQ
>>327
白衣の男は、驚かない。
彼女が異能を帯す者であることに、疑う余地はなかった。
その手早さ、判断力、細やかな下準備。
人造された能力者を幾人か見てはきたが、先天性の能力者はやはり力を体の一部として、完全にその支配下に置いている。
自分が“悪者”でなくて良かった、と冗句交じりに思う。

『お前がバケモノ共と手を組むとはな』

彼らのリーダー格、男との付き合いも長かった一人が、“鳥獣戯画”に後ずさりながら吐き捨てる。

「自分の研究対象をそういうのはどうかと思うがね」

男は口を曲げながら、言いにくそうに呟く。
勘違いされているようだが、これはこれで良い隠れ蓑やもしれない。
彼女へ対抗できる戦力を追って増やされれば困るだろうが、その時はその時だ。

『次に俺が来る時まで、その“舞台装置”は手放すな』

彼女が追撃の手を加えなければ、負傷した幾人を庇って逃げて行くだろう。

――さて。

「とりあえず礼を言うのが筋かな。それとも、私も君のパートナー達の餌になってしまうのだろうか」

その場で立ち止まったまま、白衣の男は白衣の少女と相対する。
尤も、彼女の着ているものは顔料がついていて、私のものはあちこちに泥が撥ねているという相違がありありと見えるが。


329 : 【羽衣が微笑む穹天の斜陽】 - Lever du Soleil - :2017/07/02(日) 22:39:51 vNL51S4s

あなたの為に唄う、まごころの歌。

君と僕はいつまでこうしているのだろうと、何度も考えた。

たとえ世界が終わったとしても、僕だけは君のそばにいるよ。


「というようなポエムを考えたんだけど、これを色紙に書いたら売れるかな?」

人気のない開けた草原の中に、ぽつんと佇む廃墟の中で、少女はクロネコに問いかけた。なにせ、一文無し。
明日の朝にはお腹がすいちゃう。でもお金がない。
そうなると、明日の夜はもっとお腹がすいちゃう。

「売れないよねえ。困ったねえ。ねー。」

見ず知らずの、いきずりのクロネコと対話しても、お金儲けになるような話は、当然出てこない。
それでは困るぞ!これはビジネスだ!
少女はハッとした。これは時間の無駄なんではないか。

「……はー、この辺は勝手に狩りをすると、怒られちゃうからな。
 君のご飯をわけてほしいけれど、あれだろ、残りもの、だろう。
 お腹痛くなっちゃうからなあ。困ったねえ。」

普段ならば、ズビズバッと、慣れた狩猟の腕前で生肉のひとつやふたつ手に入れて、
上手に焼けましたとするだけなのだが、ううむ、この辺は監視の目がしっかりしてやがるので、お尋ね者になってしまう。

膝を抱えて座り込み、クロネコと見つめ合う少女。ああ、初夏のしめった風が、吹いている。

「動物の肉……。」

クロネコをじっと見つめた ―― いや、だめだだめだ。ううん、なんだかだめだ。食べた事ないし。おいしくないかもしれないし。

「はーっ、鹿食べたい鹿。空から降ってこないかなあ。」

独り言多し。1人旅が長いと、寂しがりな女の子はこうなってしまうものだ。……訂正、彼女だけかもしれない、けど。


/置き前提になりますですが、それでもよければ。今日もすぐ落ちると思います。
/ぐだったとした、のんびりペースで。希望とかあれば、遠慮なく。


330 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/02(日) 22:52:43 Q0BYVxG.
>>315

「あっつい。何か好きでこんな気温の中で盛ってんだか」

熱気が体に粘っこく色街に漂う。熱源がさらにこれを助長するとくれば
気が滅入るのも無理からぬこと。
それで、人探しで目を皿にしなければならないと思うと、仕事を請けた我が身を呪うばかり。

「衣替えだ。明日は衣替えする。そんで仕事が選べる自由が欲しい」

シャツの端で汗ばむ目元を拭う。やった後でハンカチを取り出してもう一度。
何かをあきらめて、裏通りに入る。表では収穫はないとくれば別のところを探すほかない。

改めて情報を眺める。どうやら一目でわかる特徴ばかりで実に助かる。

「羽持ちか。どうやら最近はそういう縁があるらしい」

裏通りを目を閉じ周囲の音に耳をそばだてながら進む。
同業の怒号や走るような音があちこちにこだまする。

「で、こんなところを探してみる、と」

逃げ込んだ羽持ちのあとをつけるように、女が一人、廃屋に踏み込む。
男たちの剣呑さとは違う姿が現れる。

ボタンを2つ開けた胸元やら、ジャケットを左肩に掛けた姿やら、
何とか整えてあったことを示す黒のパンツスーツ。
そこからは、緩み切った雰囲気しか読み取ることはできようか。

//まだいらっしゃればですが


331 : 【不煌翼使】 :2017/07/02(日) 23:03:47 s5lgSZyk
>>330

奥の部屋へ隠れるか、窓から外へ逃げようか
迫る狩人達から逃れる方法を―――と迷っていたのは一瞬

「……!」

ギィ、と廃屋の床が軋む音に振り返る
恐る恐る己が入ってきた戸口に目をやれば、自分を追う狩人達と似たようにも見える格好の女
しかしその雰囲気は男たちのようなギラギラしたものはなく、一泊の間をおいて

「……み、のがして、く、くだ、さい」

ぎゅっと緊張を表すような両手で、懇願する
か細い声は必死さの証だろう

―――暗闇の中、翼が淡い輝きが一瞬だけ、その存在を強調するように光を強めた

/よろしくお願いします!大丈夫です!


332 : 【描映爆筆】 :2017/07/02(日) 23:18:50 na33V9gA
>>328

退却する背にべ、と舌を覗かせる少女。
あの手の物言いには慣れている。擦りきれた心にささくれが一つ増えたところで、過去や現在は変わらない。
ただ後ろにいる男に、あんな眼で見られるのは、何だか嫌だった。

敵が完全に去ったのを確認して、筆を降ろす。
動物たちはいつの間にか散り散りに失せていた。
火薬の臭いだけが残る。

「別に……借りを返したかっただけです」
「お医者様には、昔お世話になったので」

歳は――見た目じゃないと分かっていても――どう見ても自分より上だろう。医者、というのも少し違うようだけれど。
自己満足の類いに礼を強要する筋合いはない。
不自由な方の足を引いて、斜に構えた目は男には向けない。
ぶっきらぼうなのは機嫌の悪さの表れ、それも自己嫌悪から来るそれだ。
重い空気が鬱陶しくて、顔を擦ると白衣に赤黒い染みが浮かんだ。弾丸が頬を掠めていたらしい。

「送りますよ。安全なところまで」
「気紛れに付き合わせたお詫びです」

脅威は去ったが、消えた訳ではあるまい。留まる危険を冒す理由もなしと、移動を申し出る。
彼に目的地があるならその辺りまで、
無いなら彼女の縄張り――――アカデミーという教育機関を近くに臨む街まで、徒歩なり電車なり。


「私が来なくても切り抜けられたのでしょう?」

歩くすがら、少女はこんなことを呟くはずだ。
横を見ても、その顔は俯いているようで、表情を読むには難しいだろうが。


333 : 【一刃潜瞬】 :2017/07/02(日) 23:26:47 P8dqGOJE
>>324

女は、自身に殺された奴は死ぬ理由があるとした。
それを彼がどう受け取ったかは別として、聞き入れてもらえたのはありがたい。
自らの行為を正当化するわけではないが、それでもだ。


「……私はそういう奴らを殺したことがないんでね」

――わからない、と。金を貰ってまで殺す対象はかなり限られてくる。
ギャングの一員や機密情報を握った者など、一般人とは言えない奴らだけ。
自身の活動には一切関わらない人種であるから、気にも留めたことがなかった。

「そういう奴らは居るもんだ」
「だが、私にはお前がそれを言える立場にあるかは分からない」

――正直、此方としても直球を投げ込みたくはなかった。
だが、言ってしまおう。過度な正義を掲げるということは、“悪に等しい”ということを。
市民を守ることに真剣な故、目が眩んでしまう。最後には市民までをも巻き込んでしまう。


「お前が真剣なのは分かる。話していることも間違ってはいない」
「――だが、このまま突っ走っていると何時か“迷う”ぞ」

悪を嫌い、市民を護る。これが彼にとって正しいあり方なのだろう。
だが、悪を排斥するとなれば大きな犠牲を払わざるを得なくなるだろう。
彼がその選択を誤りそうな――、女はそんな気がしていた。


334 : 【騎士三誓】 :2017/07/02(日) 23:35:17 P8dqGOJE
>>325

大剣を振るい続けた。血も出ぬ、動けぬような相手に。
彼らの攻撃のすべてを塔楯で受け止め、そして堂々と狙う部位を“宣誓”して殺した。
数分たっただろうか、大方亡霊は片付いたらしく姿は見えなくなった。


「これで、亡霊は居なくなったでしょうが……」

疲労からか、肩で大きく息をしていた。
慣れない環境、忌々しい魔力、それに魔獣。要素は十分にあった。
だが、目の前の剣を壊してしまえば仕事は終わり。もうひと踏ん張りだ。


「貴方、銀食器をお貸しいただけますか」

――騎士を弔うには、どうすればいいのだろうか。
それが女騎士にはわからなかった。送別の風習は見たことがないからだ。
そこで、自らの血を捧げようとしていた。行き遅れた、この地の騎士へ捧ごうと。

――人の怨念というのは怖いものだ。
数十、数百年前の話だと言うのに、未だにこの地へ残っているのだから。
幾日も幾日も魔力を溜め続け、仕返しとばかりにこうしたのであろうか。それとも――。


335 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/02(日) 23:47:31 Q0BYVxG.
>>331

「当たりか。適当にと思ったらみんなの本命を引くやつだ」

乾いた笑いがこぼれてしまう。
ちょっとした小銭稼ぎが、とんでもない鬼札。

「で、見逃してほしいと」

改めて、状況を眺める。逃げてる羽持ちと見つけた私。
渡せば金になる。手元に置けば喧嘩になる。

「その前に、キミは何ができるんだ?
 抗う力があれば、私に命乞いをするまでもないしね」

淡々と、事務的に問いを投げる。

「それによっては、開ける道もあるかもだ。
 ないかもだけど」

にわかに微笑み、答えを待つ。

「私が決めるのはそのあと」


336 : 【飛燕二式】 :2017/07/02(日) 23:48:45 JyLodH0.
>>329

さえぎる物が何もない、どこまでも見渡せそうな草原。
風が吹き抜けるのを感じるのは、大変に心地よい。
それが、走り抜ける愛しのマイバイクの上ならなおの事である。

「〜♪」

口ずさむのはアイオブザタイガー。
退院後、入院中に溜まった用事に追われていた生活にようやく終止符を打ち、久々の余暇時間。
久々にツーリングという名の見知らぬ地への放蕩をする。

「おっ!」

暫く何もない道を走っていたら、久々の建築物を見つけた。
老朽化が外見に現れているそれは、恐らく今は誰も使っていない廃墟だろう。
小さい頃はこういう場所で男友達と秘密基地を作って遊んだ物である。女子は入れないルールを敷いたり、全員の留守中にクラスの女子に侵入されたり。
そういう少年心を擽られてか、停車してポケットからスマートフォンを取り出し、写真を撮る事にする。

折角なのでここで休憩を挟もう。バイクのハンドルに引っ掛けていたコンビニ袋からライスボールを取り出す。

「……」

雲一つない空、何処までも続く草原。キャンプでもしたくなる陽気。
金髪の青年は塩だけのライスボールを頬張りながら、憧れるSAMURAIに自身の姿を重ねるのだった。

/置いておきます。よろしければ。


337 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/02(日) 23:51:05 2D0fonCQ
>>332

『借りを返す』。
その言葉を聞いて、男は意識せず、金属の軋む音の出処に視線を移す。
そして余計な詮索をしようとする己を戒めるように、かぶりを振る。

「本来の返す宛ては、私じゃないだろう。
 つまり私は無償の善意を受けたんだ。
 ――それとも、礼を言う資格は、私にはないのだろうか」

良い顔をしていないことは、この薄暗い場所でも十分にわかる。
自分の言葉が彼女を傷つけたと、男は勝手な推察をする。

「頼むよ」

許可が得られるまで、ありがとうとは言えない。
だから男は、彼女に依頼する形でその案内の提案を承ける。
行き先もお任せしよう。「人に追われると帰る場所がなくなるんだ」と、不器用に笑って見せる。


少女の言葉を聞いて、少し目を見開いて隣を見る。
俯く頬には、白い肌に滲む血が見えて、それを擦った跡も見える。

「少し止まってくれるかい」

彼の言葉を素直に聞いてくれるならば、男はアスファルトにビジネスバッグを立てる。
そこからは応急手当の道具がてきぱきと並べられ、彼は薄いゴム手袋をはめる。「大げさで悪いね、手を洗う場所が見当たらなくて」と。

「どうしてそう思う?」

消毒液を沁み込ませるガーゼに目線を移して、彼女を見ずに発言の理由を問う。


338 : 【不煌翼使】 :2017/07/03(月) 00:04:43 0g8SMiFc
>>335

「……」

自分を値踏みするかのような台詞
もしかしたら助かるかもしれない、あの人の――女の墓場に連れて行かれずに済むかもしれない

(でも、)

相手は「みんなの本命」と言った。つまり、あの男たちの仲間ではないかも知れない
自分の価値――男達の決めたものではあったが――を知れば、連れて行かれるのではないだろうかとも考えた

「……その、羽根が、光り、ます」

ともあれ何も答えないわけに行かない
ゆえに、今相手に見えているであろう現象を主張した
嘘に聡い者なら、直ぐ看破できてしまいそうなこわばった表情で


339 : 【描映爆筆】 :2017/07/03(月) 00:21:35 8fej/Fpc
>>337

どうせ返す予定のなかった恩。
支払期限の切れた督促状。
残るのは罪悪感。
そんなことを説明しても仕方がない。
首肯で終わらせ、道案内に戻る。

「放っておけば治るんですけどねぇ」

露骨に、ではないが、足を止める危険を訴える表情。しかし制止するまではせず、素直に従って。
壁にもたれつつささやかな抵抗を試みる。

「私みたいな化け物と一緒に歩いているからですよ」

嫌悪の眼差しを恐れたくせに、態々蒸し返すような真似事。
分かっている。願わくば否定してほしいのだと。
少女という生き物は、面倒な手順を踏まねば会話も儘ならないのだ。特に機嫌を損ねているときは。

「……、っ」

オキシドールの刺激に眉をしかめる。古い切り傷のある方の眉だ。
表情を拝めるくらいに屈んでいるなら、少女の身体の現状もよく見えるだろう。
白衣の下のシャツの内側、女性らしさから解離した四肢の半分は生身にあらず。耳や瞼、見えざる胴体にまで点在する外傷の痕跡は、知られたくない過去の証。
いずれ傷は治る。そして過去になる。それだけのこと。――いたみは残るが。

治療が終れば「ありがとうございます」と。傷付いた頬に触れるだろう。もう血は付かない。


340 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/03(月) 00:23:00 GvfUV7kw
>>338

「羽が光る、か。それだけでこの騒ぎなんだ」

舐めるような眼を戻し、目頭に指を当てて考える。
それだけじゃないんだろうなあ、とか。
これは慰み者か鉄砲玉なんだろうなあ、とか。

「細かいことは、まあおいおいにするとして。
 今日の私は機嫌がいいんだ。
 自分の道を選ぶくらいのは考えさせてあげよう」

前門の虎、後門の狼といったところか。
どちらに転んでもロクなことにならないのは確か。

「道は3つ。あいつらに捕まる。
      私についてくる。みんな殺す。
 一番自由なのは最後のルートだ、どうしようか?」

涼しげな笑顔で、彼女は剣呑なことをのたまう。


341 : 【羽衣が微笑む穹天の斜陽】 - Lever du Soleil - :2017/07/03(月) 00:42:14 ZTHXMJ6w
>>336

「にゃーん。」

と鳴いた。女の子がじゃないぞ、猫がだぞ。

クロネコがそっぽを向いて、何かを見つめている事に、少女は気が付いた。
むむむと唸りながら覗いてみれば、此方へ来たる者ありけり。
誰か人と会ったのは割と久しぶりだった。徒歩で旅をしていると、中々人間にも会えない。

 ―― 少女の狩人アイズは、青年の持つ握り飯(RICE BALL)を見逃さなかった!

しかし、前髪をくりくりと弄りながら、考える。
普通に頂戴と言ったのでは、楽しくない。

身に纏う外套の内より出でたるは、白金色に輝く機械弓。
スイッチを親指で押せば、折りたたまれていた弓が、ビィン、と音を立て展開される。それは鳥が翼を広げるように。
ベルトに吊り下げた矢筒から、矢を一本、摘まみ出す。

「やあやあ、我こそは、この城の主なり!
 領土に足を踏み入れたからには、税を納めるなり!」

なりなりナリよ。

弓矢を構え、その切っ先を青年へと向ける少女のシルエット。背後から太陽の光を浴びて、明瞭に映り込む。
草原に吹く爽やかな風は、少女から見て向かい風。ぶっちゃけ弓矢は不利だな!


/以降はぐだぐだペースになりま゛ずッ


342 : 【不煌翼使】 :2017/07/03(月) 00:44:25 0g8SMiFc
>>340

「……」

選択肢を突きつけられるが

「私は、まだ、誇りを捨ててはいません」

凛とした表情でそう返す
明滅していた翼の光が安定し、仄かに、しかし優しい光を放つ

「貴女に付いていきます――彼らには、私を追う理由があって追っているのです。彼らの生活を、私が奪うことはできません」

きっぱりと言い切った。己を攫おうとする輩に対して、命は取らないと宣言したのだ
しかし、よく見れば拳どころか、体は小さく震えている。虚勢のようにも、最後の矜持にも見えるような表情で

「……」

じっと、女の瞳を覗き返す
真意を探るように、己の意思を伝えるように


343 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/03(月) 01:14:26 GvfUV7kw
>>342

「いいね。そういう目、私は好きだよ。
 自分のために他人を犠牲にできる目だ」

優しい光の先に、暗い何かを見る。
そして、顔を大きく歪ませた。

「さ、行こうか。最初は景気よく、沢山巻き込もう」

とても晴れやかな表情でもって、路地に出る。
右手には、女王の駒。零して人の形を得る。
駒の右手には、一抱えのランチャー。


女王に指図する女が、右手で指し示したのは。
多くの客でにぎわう歓楽街の雑踏。
そのど真ん中に、砲弾を放った。

糸引く煙とはじける音。
破裂する煙と、引き裂く悲鳴。

一言でいえば、陽動。それ自体はよくあること。
ただ、やり方がロクでもないだけ。

彼女は女王の駒を下がらせると、左手を羽持つ彼女に差し出した。

「あっち突っ切って、安全なところまで行こうか」


344 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/03(月) 01:15:58 bKUoFxCc
>>339

「感染症は痕が残るんだ。
 そうしたら、君の肌がかわいそうじゃないか」

少女のささやかな抵抗は、医者の耳には届かない。
ただ淡々と頬の傷を確認し、それに合った絆創膏を選ぶ。

頬でも膨らましそうな少女の言葉に、男は喉の奥で唸る。
手当は上手く進められても、どうもこっちは、間違った手順を踏んでしまっているらしい。
初対面の人間に対してあれこれと物を言うのは、曲がりなりにも接客業を営む身としては遠慮をする。
だから医師として、耳障りの良い言葉で安心させる術の持ち合わせがない訳ではない。
だが、この奇縁にはどうにもそぐわない気がした。
そして彼は、態度を砕く。

「残念ながら、私は化け物と夜の空気を吸いたいような奴なんだ」

嘘偽りはない。彼元来の、好奇の塊のような笑顔だ。
それに、と付け加えて。

「人のいたみを理解したくて、私は医者になったんだ。
 できているかはともかく、私は貴女を理解したいと思うよ」

ぴたり、と絆創膏を貼る。
今にも漏れ出そうな何かを塞ぐために。

「さあ、行こうか」

礼を受け取ると、男は荷物をまとめて先を急く。
それはきっと、今更の気恥ずかしさかなにかが、彼の足裏を刺してくるからだろう。


345 : 【飛燕二式】 :2017/07/03(月) 01:28:59 pZnkMoVU
>>341

「ワッツ!? なんだなんだ?」

見上げるとこちらに弓を構えた女の子。
身なりや無茶苦茶な言い分から此処を根城にするホームレスの類かもしれない。
少し考える。
走ってきた感じでは近所に何か買い物ができそうな場所はないのでお金ではなく自分が食べているライスボールが狙いなのだろう。
かなり手前のコンビニで買ったものだし別にあげてもいいのだが……

「……やらなきゃ、どうする気だ?」

腰に帯刀した刀に、手を伸ばす。
ライスボールに未練は無い。執着はないのだが弓矢を向けられている状態がなんとも居心地が悪い。
仮に渡しても撃たれないという保証は無いし、自分は避けても愛車に当たらないとも限らない。
空いた手でベースボールのように上に軽く投げてはキャッチしてながら相手を軽く脅すつもりで、挑発めいた事を言う。

「どっちにしろ、降りてこいよ じゃなきゃ食べれないだろ」

SAMURAIは食べ物を粗末にしない。
投げて渡すつもりは無く弓の間合いから刀の間合いに来るように促す。


346 : 【不撓鋼心】 :2017/07/03(月) 01:29:22 Ng5CxqFw
>>333

「――その通りだ。俺は塵屑だよ」

重く、低く、決して揺らがぬ鋼の質感を思わせる口調で、そう返した。
それは一片の付け入る余地もない自己否定。嘯く己こそが最も醜悪な塵であると、疑いなくこの男は断じていた。

「俺は戦い、打ち勝ち、踏み躙ってきた。流血しか生まない戦など自分一人で事を済ませていればいいものを、他者を巻き込み、戦火をばら撒いて」

眉間に刻まれた皺が深くなる。
それが示しているのは深い深い自戒だ。懐古する記憶の中で、燃え盛る業火が無辜の民を焼き殺す。

「ただ操られていただけの者をこの手で斬った。何も知らず、本人からすれば勤勉に働いていただけの人間を殺した。ああそうだとも、こんな男を邪悪と評さずどう表せというのだ」

忘れない。忘れない。そうとも、一人たりとて忘れるものか。
言い逃れようのない罪業の歴史。この手は血に染まっている。
悪人だけでは飽き足らず、守りたいと願った人々さえも手に掛けざるを得なかった己の無力と未熟さに極大の憤怒と憎悪の炎を燃やす。
自分の本性は血に塗れた殺戮者だ。とても正義と誇れるような輝きなど持ち合わせてはいない。その罪深さは万死に値するものだと、誰より強く自覚している。

「――だが」

しかし……向けられた眼差しは、なお強い決意に彩られていて。

「ならばこそ、足を止めてはならんだろう。罪の重さに膝を屈し、泣き喚いて許しを請い、自死を選んで何になる?」

死とはある意味で究極の逃げだ。一度死んでしまえばもう現世で咎を裁かれることはない。
あるとするなら存在するかもわからない死後の世界の裁きだけ。少なくとも生者の生きるこの世では、もはやその罪に対して何の干渉もできなくなってしまう。

「未来に残せるものは何もない。罪なき人々を襲う理不尽は毒牙を振るい続け、悲劇は変わらず訪れ続ける。それではいったい、彼らは何のために散っていったというのだ」

まるで犬死にではないかと男は告げる。
自分を信じて死んだ者、自分を憎んで消えた者……彼らとてそれぞれの人生があり、目指すべき目標があり、叶えたい夢があった。
軽い命など一つとしてないのに、自分はそれらを奪ってきた。それは己が生き続ける限り背負わねばならない十字架で、放棄するなどあり得ない。
自分が死ねば彼らの想いはどこへ向かう? 道半ばに倒れ、何も為せずに消えるのならば、彼らの死までもが無意味であったことになるのか?
否、否だ――そうはさせない。

「罪は承知だ、罰は受ける。このような悪党は地獄の炎に永劫焼かれ続けるのが似合いの末路だよ」

ゆえにもはや、止まることなど赦されない。
いつか肉体も魂も、木っ端微塵に砕け散るその時まで……すべてを未来への礎に捧げると誓ったのだ。

「だがそれでも弛まず歩み続けよう。犠牲にしてしまった彼らに報いるためにも、俺は必ず希望を齎してみせる。この身は誰かのためにあるのだから」

それは熱く、雄々しく、激しく強く煌めき輝く光の宣誓。
我が魂を一条の矢に変えて、決して休まず怯みもせずに、輝く未来へ向けて一直線に飛翔しつづけるという強い意志の発露だった。
……進路上に何が、そう何が立ち塞がろうとも粉砕して迷わず進む……そう、大きすぎる決意と覚悟を見せて。


347 : 【描映爆筆】 :2017/07/03(月) 01:42:35 8fej/Fpc
>>344

「変わり者、ですねぇ」
「でも女性にそれは、あんまりじゃあないですか」

くす、と有るか無しかの笑みが零れる。血の代わりの、感情という代弁。
零れたぶん軽くなった天秤で、少しだけ減らず口が戻る。
だがささくれた心にまでは、まだ絆創膏は届かない。

「いたいのはもう、こりごりです」
「――全部忘れられたらいいのに」

言葉は時にあらゆる方向から少女に迫るから、綻びかけた顔もまた俯いてしまう。

悼みを繰り返す。
傷みと共に思い出し、何度も黙祷をくり返す。くり返し、くり返す。
罪悪感があるから、忘れられない。いっそ狂ってしまえば楽になるのに。
そうなるには、周りに、恩人に恵まれ過ぎていた。

白衣の胸元を押さえる。
男が抱えるケースと同じように、“これ”は少女にとって大事な物だ。
消えない罪を黄昏の先まで持っていく為の。

「あ……こっち、ですよ」

早足になる男へ、思わず手を伸ばす。
右手は白衣の裾を掴めるだろうか。
泥に汚れた男の服を、届いたならそっと、乾きかけの土を払ってあげて。
それから、駅の方へ進むはずだ。


348 : 【不煌翼使】 :2017/07/03(月) 01:44:07 0g8SMiFc
>>343

「っ、それは、どう言う」

自分の為に他人を犠牲にできる?ありえない。民があるから私が在れた
それだけ命は尊いものの筈だ。それを分かっている自分が、他人を犠牲になんて、する筈がない

少し鋭い声で返そうとして、言い終わるより早く爆破が起こる

「え」

民衆群れの中に開けられた空間と、それを埋めるような悲鳴
吹き飛んだ連れを必死に助け起す者、その死体を漁ろうとする者、人、人、人

「た、助けを!医者を呼んで下さい!早く!」

追われる身である自分の事を忘れ、空いた穴から飛び出していく

「あ……何……?」

運悪く右脇腹に鋭い杭の様な木片が刺さり倒れた男は、未だ現実を受け止められていない様で、立ち上がろうとするが

「動かないで!出血しています、頭も打っていますね、大人しくしていて下さい!」

それを制し、傷を確かめる為に服を破ろうとするが

「……ッ!」

上物の服なのか、手で破ることができそうにないと悟る
一瞬の迷い、だがそれを振り切る様に

「≪証よ!≫」

淡い光だけの翼が実体を持つ
猛禽のそれと同じ形のそれから、一つ羽根を抜き、手早く服を切り裂いた

傷口を確認すると、木片は大半が体に埋まってしまっていた
己のワンピースの裾を破り、木片が動かない様に軽く押さえ、これ以上の出血を止めようと試みる。そして取り囲む民衆に向けて、

「医者を!」

もう一度、鋭く言い放つ
女の表情は強張っていて、真っ青だ。咄嗟に行動したが、余裕が無いのが見て取れるだろう


349 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/03(月) 02:05:37 GvfUV7kw
>>348

「む、そっちだったか。利他主義者」

爆発に駆け寄った少女に対して、ゆったりとした歩みで追いかける。
どうやら、手当てをしている様子。
その光景は、口角を下げるに余りある。

「光るだけじゃないんだね、それ」

瓦礫と呻きの中で、少女を見下ろす。

「ざっと見て、5分ってところだ。ここから逃げる人間はあらゆる道で逃げる。
 それが終われば、追っ手はきちんとここに来る。そしたら私はこう言うんだ。
 『お求めの品は、こちらです』と」

酷薄に状況を伝える。つまるところ、見捨てないと助けないよということ。

「生きることは、奪うこと。どうやらお気に召さなかったらしい。
 私としての最適解を見せてあげたけど、どうしようか」


スマホで時間をこまめに確認しながら、今度は兵士の白駒。
右手から放り投げられたそれは、瓦礫をどかして、気休め程度の救助活動。

「私も、少しくらい手伝ってあげるけど、それだけかな。
 医者は呼んである。でも、この騒ぎを乗り越えてくるのは骨だろうけど」

ダンスのステップを踏むように、くるりくるりと彼女を周りをまわる。


350 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/03(月) 02:19:31 bKUoFxCc
>>347

「そうか、これはあまり、聞いて良い気分はしないか。
 女の人に良いように見てもらいたいという欲はあるのだけれど、どうも」

三十も終わろうとして、男に伴侶が居ないということは、即ちそういうことであり。
その境遇を差し置いても、縁を結うには糸の撚りが甘いらしい。

不用意な言葉が、彼女の横顔に影を差す。
それを見下ろす男は、頬を掻いて言葉を選ぶ。

「でも、忘れてはいけないことだと、貴女の奥のどこかが言うんだ。
 それもきっと、貴女の選んだ方法なんだろう」

選んで尚、突き放したような口が出たので、男は早口に加える。

「どうしても堪えられないなら、表現すると良い。
 言葉でも文章でも動きでもなんでもいい。
 他者に伝えることを目的としない物は、本物だよ。
 私はそんな本物が見たくて、この街を逃げ回り続けている」

また言ってから気づく。結局、自分の話で完結している。
人に聞かせる話とはこうも難しい物だったか。
そういえば、仕事以外で話す機会はもう数えるほどしかなかったか。
そんな言い訳を胸の内で繰り返していると、ぐっと握られる。

「あ、と、すまない。ありがとう」

乾いた泥を剥がす手にも礼を言う。
気付けばだんだんと駅の明かりが、放射状にこちらへ近付いてきている。


//本日はこれで。また明日以降お願いできれば


351 : 【不煌翼使】 :2017/07/03(月) 02:35:41 0g8SMiFc
>>349

ギリッ、と音が聞こえるかのように、奥歯を噛み締め

「貴女はっ……」

糾弾しようとして、思い留まる
そもそもこんな手段を取ったのは自分が助けを求めたから、と気付いたからだ

「……っ、っ!」

やり切れなさを、己の安易な判断を後悔し、吞


352 : 【不煌翼使】 :2017/07/03(月) 02:38:03 0g8SMiFc
/テスト


353 : 【不煌翼使】 :2017/07/03(月) 02:51:48 0g8SMiFc
>>351
/何故か途中から消えてしまいました……

やり切れなさを、己の安易な判断を後悔し、呑み込む
今はそんな暇は無い。と

自分の逃げてきた方角から、「医者だ!通してくれ!」と聞こえてくるが、瓦礫の向こう側。民衆もいるとなると、此処にたどり着くには5分を超えてしまうだろう

「直ぐに、戻ります」

睨み付けそうになるが、何とか堪え、淡々とした口調で返す
男の膝裏と背に腕を通す。同時に翼が広がり、民衆を押しのけて

「少し揺れます……頑張ってください」

男に告げ、翼を大きく一度羽ばたかせる
特別大きな風も無く、勢いも無ければ、人二人分の重量。通常の動物なら、先ず動かない筈────だが

「はっ……!」

まるで上方向に引っ張られる様に、飛んだ

民衆の頭上から辺りを見回し、瓦礫を超え、医者を見つける
直ぐに男を医者の前に降ろして元の場所、踊る女の前へ降り立つだろう
しかし民衆の何処からか「居たぞ!」と言う追手の声

垂直な上昇から空中での制止。そして羽ばたいてはいるが不自然な飛行をさせる翼。明らかに生物として異質で、それ故の価値が有るのだろう

バツの悪そうな表情で翼を畳み、踊る女を見据えるだろうか


354 : 【描映爆筆】 :2017/07/03(月) 03:05:51 8fej/Fpc
>>350

男のしどろもどろな慰めを、暫くぽかんと間の抜けた顔で見上げていた少女。
その間は足も止まりがちだっただろう。二人の距離が開いて、そこでようやく小走りで男に追い付く。

「なんですか。カウンセラーにはまるで向いてませんねぇ、せんせ?」

先生、と呼んでからかう口調はくすくすと、今度こそはっきり微笑んでいた。
見た感じは理系の教授然とした雰囲気なのに、中々詩的な表現を使うのが何処かユーモラスで。
暗がりに落ちかけた気持ちにも、ランタンのような灯りがぼゎんと宿る。

「なら、今日から日記でもつけてみますか。三日坊主にならないよう気を付けないと」

人波が増え街の明かりに照らされた顔はけろりと、“いつも”の小生意気さで覆われる。

それは誰かのためでない自分のためだけの、お得意の絵をふんだんに使った日記。記憶が消せないなら、より鮮やかに、永久に瑞々しく残るよう。見るたび血腥さを幻嗅するくらいに。
どうせ逃げられないなら、真正面からとことん向き合ってみるのも悪くない。その果てに本当に狂うか、罪の意識に擂り潰されるか。これを最悪と言わずしてなんと言おう。
嗚呼、全くもって悪くない。

「電車、乗りますね」

駅に着いたならそのまま改札を潜ることを提案する。
歩くには遠く、タクシーは危険。切符は当然大人用を二枚買い求めて。
ホームに入ったなら、電車を待つ間、
独り自販機の方へ行くだろう。
背伸びしてやっとこさボタンを押し、男のもとへ戻ってくる。
元々そっくりな服装の二人は、周囲から或いは似た者親子に見られているかもしれない。
父親のような男へ、水のボトルとコーヒー缶を一つずつ。
どうぞ、とそっけなくもあるが、好きな方を選べという事らしい。


/了解しました、お疲れ様です
/ただ明日からは泊まり掛けのお仕事がありまして、お返しが出来ないかも知れません
/火曜日の夜までお待たせすることになるかと思いますので、ご都合悪ければ適当に〆て下さい


355 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/03(月) 03:17:34 GvfUV7kw
>>353

「そう、そうするんだ」

自分の見立てよりも、高潔な方向に行ってしまった。
それはそれで、当てが外れたというか、人間の卑俗さを信じすぎたというか。

「清らかな人、あなたは美しい。
 だからこそ、あなたはきっと、その羽根をすべて他人のために使って、
 “何も救えない”自分も他人も、何一つ」

だから、呪詛を吐く。彼女の未来に傷をつける。
その瞬間が来た時に、その言葉を思い出した時に。

「私から言い出したからね。今日はサービス。
 もしまた会ったら、もう一回同じことを聞くよ。
 
 それまで、『誰か』の奴隷で居続けるといい」

踊るような足を土煙の向こうへと向ける。

その向こうには追っ手が見える。
彼女は、ため息をついて、黒の騎士を投げ、追っ手に差し向ける。
騎士は手にした剣で、追っ手の幾人かに切りかかる。

まもなく、土煙が再びあたりを覆う。
追わなければ、彼女の姿は見えなくなるだろう。


356 : 【不煌翼使】 :2017/07/03(月) 09:09:31 0g8SMiFc
>>355

「何も……いえ、そんな、筈は」

抉られる傷は、何も救えず、救った″つもり″でこの身を差し出した過去
賊に襲われた自らが治める筈の都市。あらゆる事から民を守り導く未来は叶わず、唯一民のためにした事も、本当に意味のある事だったのか、分からない

″何も救えない″

その一言は、毒蛇の一噛みに等しく
ジクジクとは自分の心を痛みで蝕んだ

しかし、それも束の間で

「またっ……!」

突如出現する黒い騎士
どんな仕組みかは分からないが、この女の人形である事は確かだ
ならば女を止めるべきか。しかし、次の瞬間には、土煙が舞う
見失う女。後を追って止める事も考えたが、

「……どうか、ご無事で」

此処から離れる事が解決になると判断した
女が自分のために動いている以上、自分が逃げ切ればこの騒ぎも治るだろう
そして近くに医者もいることは分かった。ならば、早々に立ち去るべし、と

(ごめんなさい)

心の中で謝りながら。
翼を開き、高度を上げ、街を逃げる事にした

何処へ行けばいいのだろう。誰も答えない問いと、あの女の台詞が、内側から自分を突き刺す様に感じていた

/ありがとうございました!
/申し訳ありません……寝落ちました。
/拙い文とブレブレのキャラにお付き合いいただきありがとうございました


357 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/03(月) 11:18:49 GvfUV7kw
>> 356
//ありがとうございました。遅くまでのお付き合いに感謝します。


358 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/03(月) 16:18:45 7YNWtqlg
>>354

「医者は事実を伝えるだけで済むんだ、仕方ないじゃないか」

アンダンテは、プレストに。
自分を追いかける少女を置き去りにしようと。
否、そこに彼の意思はなく、しゃかしゃかと自ずから脚が動く。
彼女の表情を見る間もなく、「ああそれがいい、それがいい」と気のない返事をして、男は駅の構内へと歩を進める。
嗚呼、この忌々しき自意識の強さを薬で治せたならば、或いは。


「ああ、ありがとう」

少女の差し出した物が何かを判別する前に、反射で声が出る。
考えることは多く、ホームのベンチに腰を下ろして、男は手を組み顎を載せていた。
大人×2のボタンが彼女の白い指で押下されたのを見た時に、目が泳いでいなかったか。それをひとつとして。
もうひとつは、彼らの行き先のことだ。

「私は、どこへ連れていかれるのかな。
 荷馬車に揺られる子牛の心持ちだよ」

ペットボトルのキャップをぱきりと回して、それをもう一度閉める。
人通りの多い場所まで逃れて来れば、男は御の字を出すつもりであった。
駅近辺であればそうそう大所帯でもって襲撃される危険もないし、カプセルホテル等々で一夜を明かしてしまうことを、彼は第一に予定していたのだ。

「嫌な訳じゃないが、精肉されるなら良い業者の手に渡りたい、なんて」


//了解です。こちらも積まれた作業をこなす時間が必要でしたので、余裕をもって進行するつもりでした
//もしよろしければ長らくのお付き合いを願います


359 : 【描映爆筆】 :2017/07/03(月) 17:19:35 4rPBbggE
>>358

かしゅ、とプルタブを開き豆の香りを楽しんでいると、難しい顔をした男から声が掛かる。
最初何を言っているのかと首を捻ったが、そういえば碌な説明もなしにここまで来たのであった。

「あぁ、行先はまだ言ってませんでしたねぇ。」

缶を置き、立ったままポケットをごそごそ。丸まったチラシや葉巻のようなガラクタの中から、昔買った名刺入れを見つけ出し、その1枚を差し出す。

内容はシンプルに
公的能力開発教育機関・アカデミー
芸術科目担当講師・アンネリーゼ=アウトバーン
とご丁寧に手書きで記された名刺。
社会人らしく、両手で差し出して小首を傾ける。身長差があったが、ベンチの男とこれで漸く目線が近付いた。
遅ればせながら、此れが今回の行先と案内人の名だ。

「大丈夫ですよ。可愛い子羊たちしか居ませんから」

魔術的なプロテクトが施され、直接渡された者にしか中身が判読出来ないようになっている。魔法科の先生に頼んで拵えてもらった特別製。
勿論彼自身は知るよしもないが、つまりは彼らがバケモノと呼んだ、能力者の群れへ招待しようというのだ。

先程の追撃者は少女――能力者に対し差別的な口振りであった。男がそんな相手と手を組んだのが意外なと言いたげなほどに。
彼らもこれから男の行動経路をある程度予測しつつ動くだろう。
そこに少女という不確定要素を加えたとしても、天然の能力者の学び舎などは、ある種彼らの予想とは解離した隠れ家になるのではないか。

「それとも、そういうホテルで骨抜きにされる方がお好みでしたか?」

コーヒーを一口含んで悪戯っぽい眼差し。片手で下品なポーズをとってみせる。
男性が好みそうな歓楽街に心当たりがない事もない。
見た目に合わぬ性に寛容な態度に、通りすがりの婦人が驚いて顔をしかめていた。


/お疲れ様です。昨日言った通り、コンスタントにはお返し出来ませんが、一先ず置いておきます


360 : 【執事無敗】 :2017/07/03(月) 19:30:31 OEQJBq5I
>>334

「わかりました、では」

女騎士の銀食器を貸してくれとの願いに対しそう答えると、さっと銀食器を取り出す。

「……あとこちらも」

そうして取り出すはある宗教の本。
この地域で振興される宗教のものである。

「……供えるにはちょうどいいかと……」

そう言い少し考えるそぶりを見せて続ける。

「宗教は信じないとおっしゃっていましたが念のためですので」

余計な一言を吐くあたり彼であった。


361 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/03(月) 20:11:10 9eV7F00k
>>359

軽く、口に含んだ水がそこから飛び出る気がした。
まだ気がしただけで、安心できた。
彼女が成人であるということは、それは往々にして社会人であるということとなる。理解していた筈だ。
だが、『アカデミー』の教員だと? この街だけに蔓延する能力というものに興味を持てば、一か二に聞く機関の名だろう。

「やられた」

まだなんとか伸びていた背筋が、ぐたりと凭れる。
何にやられたかは分からない。
言うならば神とやらに、解れていた筈の糸と奇縁とが、固結びをされていた。

彼女の言いたげなことを、男はすぐに理解する。
木を探す人間から木を隠す為に、太陽照りつける砂浜へ行く。
彼もあちらの考えは大体把握している。
そんなところ探す訳が無い。理屈は尤もだ。
男はゆらゆらと立ち上がり、中腰気味に彼女と相対す。

「有難い話だが、少々有難みが過ぎる。
 全ての人間が損得で動くとは思っていないが、余りにも貴女に益がない」

喉の奥から反芻することなく、そのまま口にする。
驚きと訝しさが混ざった眼差しは、留まることがない。

「あと、そういう冗談は止してくれ、冗談でなくてもだ。
 馬鹿にしてくれて構わないが、私は貴女の手を取る覚悟はない。
 それを必要としない行為ならば、私の中の貴女の品位は下がってしまう。
 貴女でなく、私がそれを許し難い」

また、駅構内というのに、声のボリュームを抑えられなくなってきていることにも気づく。
が、もう遅いし、そもそも追われる身で外聞を気にする必要はないだろう。
だから背後から、あらまあ、という声が聞こえたが、気にしないことにする。


362 : 【描映爆筆】 :2017/07/03(月) 21:36:57 si21Ct0E
>>361

男が訝るのも当然だろう。正直少女の方も、出会った当初は此処までするつもりはなかった。
生徒の見本たらんとする教師だからと言って、人間的にも一定の線引きはある。
だからこれは、ここに来るまで彼と話した、アンネリーゼ個人の感情と勘定だ。

「あら。こう見えて私、結構尽くすタイプなんですけど」

トレードマークの犬耳を指でぴこりと茶目っ気アピール。
世間では気紛れな猫がブームだが、少女の方は根っからの犬属性。

とはいえ、少女側にメリットがないとは一概に言えない。
アカデミーとは代々、理事長のワンマン経営により成り立つ襲名型組織。
拾われた恩があるだけにそれについては不満こそないものの、いざというとき味方が多いに越したことはない。
とどのつまりはつまらない話、そうスカウトだ。まあ、真面目な話は先に伸ばそう。

「残念。フラれてしまいましたねぇ」

何連敗目だろう、肉食で攻めて打ち砕かれるのは。分かっていても変えられないスタイル。
不器用な癖して欲望に正直過ぎる少女は、怒気すら覚える男の気迫をへらへらと掌であしらう。
そこに反省の色はない――傷付きこそするが。
しつこいようだがこの方面でも慣れっこである。

――ぽん、とベンチが揺れる。男の横に一人分の体重が増えたための、僅かな震動。


「私といくの、そんなに嫌ですか……?」

大きくなっていく男の声を遮るには心もとない大きさの呟き。自分より3サイズは大きい白衣の裾に、そっと触れようとする。
捨てられるのを怖がる仔犬のように。俯いて、でも目線はそっと合わせたままで。声の切れ目の震えに彼は気付けるだろうか。

ホームに小気味良いチャイムが鳴る。
滑り込んできたのは本日最後の特急列車。最終便でこそないが、ここからアカデミーへ行くには一番早い便。少女が乗るつもりだったそれ。
客車が開き、ホームに明るさと騒がしさが増す。伴い、びくりと小さな身体が震えた。


363 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/03(月) 22:46:43 bKUoFxCc
>>362

「――相分かった。なら、尽くして貰おうか」

苛立たしげに、男は立ち上がる。
そして少女の手を引く。

彼女に言わなければ気が済まないことは山ほどある。
だから、まだ男は彼女と別れる訳にはいかないと思った。


二人は扉が閉まる直前に乗り込むことができた。
彼らを咎めるような車内アナウンスが流れ、男は今閉まった扉に凭れてため息をつく。
斜め下に少女を見て、口を開く。打って変わった静かな語り口だ。

「ひとつ、私はアカデミーで能力者の研究を続けても良いか。
 ふたつ、私を学内の事務員なり養護教諭なりの職に置いて貰うことは可能か。
 みっつ、私は能力者ではないので有事の際は貴女に守ってもらうことになるがそれでも良いか。
 全ての条件を承諾できないならば、私は次で降りる」

ぴしゃりと言うと、男は指先でつんつんと犬の耳の先を弄ろうとする。言外だが、彼は犬派である。
彼の態度が砕けているのは、少女の為せる技か男の堪忍袋の緒の問題か。
とまれこうまれ、吹っ切れたらしい彼は少女の言葉を待つ。


//すみません、乗車のくだり確定ロルになっています。
//問題あれば改訂します。


364 : 【描映爆筆】 :2017/07/03(月) 23:31:00 si21Ct0E
>>363

「あ、……♪」

腕を捕まれ引かれれば、そこは大人と子供、腕力のみなら比べるべくもない。
今までにない強引な振る舞いを受けながら、はっきりと喜色の混じる声。
扉が閉まった直後は叱りを受ける子供のように縮こまっていたが、男が言葉を紡ぐにつれ、肩から力が抜けていく。

「――ええ、その程度、造作もないことです」

これでも少女は勤めて数ヵ月の駆け出しとは訳が違う。
手足が揃っている頃からの付き合いで、今や中堅や古株の部類に入るのだ。
管理職を煙に巻き男一人を紛れ込ませるくらいは容易い。はず。
――無い胸を張っておいて、内心少し不安もあるが。それより。


「んふふ。……、」

男の指はしっとりとした毛並みとなめし革のような弾力を存分に確かめられるだろう。
なぜなら、いつの間にかドアの傍にまで――正しくは男をドアと自身で挟むように――押し迫った少女が、身体ごと頭、いや頬擦りを行使しているために。
ぐりぐりぐり。精一杯背伸びして、絆創膏のある側の頬を押し付ける。彼のために付いたいたみ。

無駄で、無意味で、そして無償の感情表現。
乗車前のような土壇場の駆け引きはもう必要ない。今は言葉さえ要らなかった。
彼が拒絶するか、或いは次に扉が開くまで、ずっとそうしているだろうから。

/確定のくだり、問題ありません
/そしてすみません、今日はこれが最後のお返しとなります
/続ける場合は明日また宜しくお願いします


365 : 【羽衣が微笑む穹天の斜陽】 - Lever du Soleil - :2017/07/03(月) 23:32:22 ZTHXMJ6w
>>345

 ―― やらなきゃ、どうする気だ。

その言葉、少女はにやりと口角をあげて不敵な笑みで応える。
くっくっく、ふっふっふ、かっかっか。
鋭き視線は狩猟の眼差し。ああ鹿なら、落ちてきたではないか、と言わんばかりに。

「こうする気さ!」

勢いよく駆け出し、跳躍 ―― 弓を構えたまま! 
そして、空中で引き絞り、おおざっぱに相手へ狙いを定めて、矢を放つ。
猫は慌てて階段を降りる。

相手の目の前まで矢が突き進んだならば、青年の眼前で、爆ぜるだろう。なんの変哲もない矢が、唐突にッ。
(怪我をすると危ないから、見た目ばかり派手な火花だけどねっちょっと熱いかもしれないけどねっ)

---------------------------------------------------------------------

爆ぜたならば、慣れた足取りで着地した少女はそのまま草原を駆け抜け、爆風の中からムワリと飛び出すだろう。

「降りてきたぜッさあ渡せッ!」

右手には弓、そして左手は ―― 相手のおにぎり目掛けて思いっきり突き出す。徴税、徴収、押収。


366 : 【飛燕二式】 :2017/07/04(火) 00:14:09 rBq3ViL2
>>365
こうする気さ! 放たれた矢を避けようともせず、じっと見つめる。
眼前に来た矢が制空権に侵入した瞬間――

「――弐式、屠龍」

抜刀の瞬間が見えない程の居合抜きで矢を唐竹割りのように縦に二本に切る。
左右の斜めに軌道がそれた矢が青年に当たる事なく通り過ぎ、小さく爆発する。
特撮ヒーローの変身後の決めポーズ時の演出のようになった。

弓矢は無音で長距離攻撃が出来る事。そして、射線を安定させられる事。
帝國の歴史を学ぶために借りた映画で大量に弓兵を揃えていたのは後者の理由から、らしい。
つまり弓という武器自体に連射能力は無いという事。今くらいの感覚なら呼吸を整えて幾らでも切り落とせる。
さぁ次はどうする――

「って、おいおい」

普通に降りてきた少女に、しばし唖然とする。
本当に此処に来るくらい危機管理に必要性を感じていないなら、何故最初に射ってきたのか。
戦闘中心の考え方なのでまぁ、とりあえず刀の距離にいるなら深くは考えない。

「ったく…… ほらよ!」

片手で器用に納刀して、ライスボールを手渡す。


367 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/04(火) 00:41:54 axVfrl6g
>>364

「ああ、そうか。それならよろしく頼」

――みたかった所なのだが、居心地が良いのか悪いのか分からない下腹部のこれに阻まれる。
少なくとも、それなりの圧がかかっていて微妙に息苦しい。
考えてみれば、このぐらいの(背丈の)歳の娘一人居てもおかしくない年齢になってしまったな、と眉間に皺を寄せる男。

「年頃の女子は不用意に中年男性に抱きついたりはしないものだよ」

寄せる額を親指でぐぐぐっと剥がそうとする。
額に痕が着こうが知ったことではない。
外聞を気にしないと言ったが、車内は別だ。
密室で比較的長い時間を共にする乗客らに、白い目を向けられる訳にはいかない。

――見回したが、全くと言っていいほど向けられていない。
そりゃあそうだ。だって先ほど自分で言った通りだ。どうやらこれはもう、親子かなにかに見えているらしい。

いくらか頭を抱えていると、列車は駅に到着する。
残念ながら扉は向こう側が開いたが、乗客の何人かが下車をして、座席がぽつぽつと空き始める。

「ほら、アンネ。
 あそこの席が空いているから、座りなさい」

どうしようもなく戯れてみたものの、そういうプレイと感じられる可能性を否めない。


//了解です。お疲れ様でした。


368 : 【双刻天剣】 :2017/07/04(火) 02:09:21 CI4yAyfk
廃都と呼称される地域が存在した。嘗ては物流の拠点として栄えたものの、十数年も前にある理由によって人々から捨てられ、現在は人の寄り付かない廃墟群。
危険地域と定められ一般人の立ち入りは制限されているものの、管理すら行き届いていないフェンスは荒れ果て穴だらけであり、侵入すること自体は容易だろう。
けれども立ち入ろうとする者は訪れない。不良やチンピラの溜まり場となっても可笑しくない筈のこの土地だが、ある理由によって自ら好んで訪れる者は極僅かであった。
しかしそれも当然の話だった。何故ならこんな噂話が伝わっているのだから。

命が惜しければ、廃都に近づくな。
あの土地には化け物が住み着いている。


「……曰く、十数年前に突如として出現した怪物によって、小さいながらも栄えていたこの街は1日で滅びたと
 そしてその怪物は今でもこの廃墟群を縄張りとしており、立ち入った人間は残らずその怪物の腹の中と」


満月の浮かぶ夜、場所は廃墟の一つであるマンションの屋上。
錆び付いたフェンスに腰を下ろし、滅んだ街を見下ろす少女が一人。その名前は雛月シオン、拝金主義の利己的剣士。
艶やか銀髪は夜風に流れ、真紅の瞳は冷淡な光を湛え、その両腰に携えるのは鞘に収められた二本の剣。
物騒な風貌であったが、そもそも彼女がここにいる理由そのものが物騒極まりないものなのだから仕方ない……というのも。


「で、怪物の討伐が今回の依頼。なんでもこの廃都を国として再開発したいから
 いやあー……報酬はビッグなので引き受けちゃいましたが、どうしましょうかね、これ」


雛月シオンは報酬さえあればどのような依頼でも引き受ける人間である。
例えそれが正体の分からぬ怪物の討伐という、命の安全など保証されない危険極まりないものであったとしても。
然し今回限りは……普段はお目にかかれないほどの高額報酬に釣られて依頼を個人単独で引き受けたことを若干後悔しつつあった。


死せる都市に咆哮が鳴り響く。地を揺さぶる震動と共に、夜闇に浮かぶは煌々と輝く二つの赤い瞳。
“それ”は正しく“怪物”だった。崩れかけの高層ビル、その頂点に座す巨躯は、並の魔獣とは比較にすらならず、その脅威度もまた同様だった。
そもそも……その怪物の正体をシオンは知っていた。より正確には、”それ”がどういう種目であるかを知識として知っていた。


「……………………本物のドラゴンなんて初めて見ましたよーはははー……、どうすればいいんですかこれ」


漆黒の鱗に包まれた巨躯、隆々とした四肢、折り畳まれた翼、鋭利な牙の並ぶ巨大な口。
廃墟群に君臨する怪物の正体は竜種、即ちドラゴンに他ならず、つまりこのままではシオンはたった一人でこの怪物と戦わなければならないと否応無く理解する。
正直、逃げ出したかった。さっさと撤収してクライアントをぶん殴りに行きたかった。
然し同時に逃走は不可能だとも理解していた…………何故なら、たった今、そのドラゴンと目が合ってしまったのだから。


再び、龍の咆哮が街に響き渡った。まるで開戦を告げる号砲の如く。

/今日は返せず、週末まではロクに返せませんが、それでもよければ…


369 : 【描映爆筆】 :2017/07/04(火) 20:09:13 tLlRGaGo
>>367

時間帯により人目は少ないといえ、ここは公共の場。
親子さながらの親密具合は偏に少女の幼さ加減で許されているようなもので、事情を知る者が見たら呆れ返ること必至である。
別にアカデミーの教育が異常なのでなく、少女の性質が特例なのだろうが……
自身の容姿に対する周囲の評価を把握した上で行為に及ぶのだから、質が悪い。

「いえいえこれは、女慣れしていない可哀想なせんせを癒すためなので。」
「私は仕方なくやっている事なんですよ」

蕩けた顔には似合わぬ生意気さで、いけしゃあしゃあとのたまう。
言葉の割には結構粘るも、男の掌に阻まれこれ以上の密着は出来ず。

「うぅ、意地悪……。まあ私はもう分別のつく大人なので問題ないし」
「それに大丈夫、特急だから座らなくてもじきに到着ですよ」

赤くなった額を押さえながらもにこにこ、いやにやにやとその提案を両方ともに一蹴。ばかりか、座席を示す男の手を取り、再び自分の頭に添わせようとするだろう。まるで懲りていない。
じゃれあいを楽しむのに無粋なシートや他者の目線など不必要。と言わんばかりだ。

男が少女に気をとられている間に、外は都会の明るさが遠ざかり、山林の暗がりが其処此処に目立つようになってきた。
その中で街の外れといった一角に聳えるのほ、趣ある巨大な古城。
遂に目的地を視界に収めれば、車内に間もなく到着のアナウンスが流れるだろう。
尤も少女の方はお構いなしにひっつき虫のままの筈だが。


/お待たせしました、本日も宜しくお願いします
/仮に面倒や不快と感じられたくだりは省略しますので、ご遠慮なく仰って下さい
/また、次レスからは勢力スレに移行しようと思うのですが、大丈夫でしょうか


370 : 【鬼創叛脳】 :2017/07/04(火) 22:03:14 axVfrl6g
>>369
/ご返信遅れました。引き続きお願いします。
/仰るような不快感はございませんし、【描映爆筆】様の魅力だと理解しておりますので、こちらを気にせず伸び伸びとやっていただければ何よりです。
/スレ移動の件も把握しました。アカデミースレに置いてまいります。


371 : 【剣脚翔邁】 :2017/07/04(火) 22:03:20 s1EQyae6
>>308

――――――彼の意識は、途切れることはない。
痛みは心の裂けるようなものがあるだけで、肉体的な損傷はほぼ無く、呼吸も嫌になる程安定している。
では、首元から血を流す彼女はどうだろうか――――――きっと、治療を施さなければ程なく死んでしまうだろう。
それが分かってしまうから、理解できてしまったがゆえに、彼が行動してしまうのは…………必然であるとも言えた。

彼女の意思に関わらず、自身の服の一部を切り裂き、布地の破片で溢れ出す血液を留めるように〝首元を縛る〟だろう。
抵抗すれば大胆に、差変わらなければ貞淑に、アレほど派手に切り裂いたのだから、このような粗雑な処理では傷が残ると常人なら心配するだろうが、彼はむしろ〝そうなってしまえ〟と願いを込める。
彼女が望んだのは自らを縛る楔であり、自身が自身であるという確定を込めた〝証拠〟だった。ならば、これは彼女にとって何よりの証拠であるだろうし、最も痛烈に残る〝記憶〟でもあるはずだ。

程なく、意識が朦朧としてくるだろう――出血多量による酩酊――若しくは朦朧としなくとも、彼は〝初瀬 什一郎〟という名前を残して、この場所を去っていく。
嵐のように傷だけ残し、片腕は血に塗れ、瞳は血液が混じって赤々と輝いている。どう足掻いても〝悪人〟以上に見られることはなく、彼自身もそれを先刻承知している。
だが、然し。彼女にとってはそれこそが欲していた証拠であるのだから、その点に関してだけは―――――〝暗殺者らしからぬ〟不手際だ、と言えるだろう。

//返したと思い込んでました……!!
//今更だとは思いますが、こんな感じで示させて下さい……申し訳ないです……!!


372 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/04(火) 22:37:34 RIOaZC.w
彼は喧嘩が嫌いだった。得意ではあったけれども、嫌っていた。
敵を倒すことだけに特化された思考が現実に引き戻されたときのあの生ぬるい感覚が、
冷えた頭で自身の振るった暴力を思い返す時間が、――どうにも獣臭くって、好きになれないのだ。
それでもやらなくてはならない瞬間というのも、確かにあるのだけれども。

『この野郎、手こずらせやがって――』

目前に立つ男が傲然と言い放つのを見上げ、その青年は険のある目つきにさらに力を籠める。
真夜中、依頼を受けて赴いた廃ビルのエントランス。そこに複数人の男が倒れている。
いまだに意識を保つのは二人。壁面まで追いやられた20代前後と思しい青年と、それを見下ろす厳つい恰好の男。

『覚悟は、出来てんだろうな?』

根城としていた不良のあらかたを"のして"やったところまでは良かった。しかし、それが限界だった。
治りかけだった脇腹の傷がきりきりと悲鳴をあげ、隙をつかれ、――そしていま、こうして追い詰められている。

「……ちっ」

青年は苛立ちから舌打ちを漏らす。こんな状況を招いた自分の不甲斐なさに、なにより苛立っていた。
このまま甘んじて苦痛と屈辱を受け容れるのか。それともまたしても、"オオカミ"の力に頼るのか。
答えを選ぶ間もなく、――鉄パイプが振り下ろされる。


373 : 【真鴈眞眼】 :2017/07/04(火) 23:04:54 DDjWOjOY
>>371

流れ出る血液と疲労により意識が遠のく彼女は彼が何をしていたのか知る由も無かった。
けれど、記憶の片隅には存在の証明を深く刻んだ彼の名が在った。

彼が粗雑な手当てを済まし、名を残して去った辺りで彼女の意識は一度途絶える。
その後、彼女が意識を取り戻したのは夜が明けてからであった。

朦朧とした意識、覚束ない身体。
ズキズキと痛みを訴える右目と首筋は、依然として一つの器に二つの人格が宿っている事を示す。
けれど、今までとは違うこと。それは――

「…うっ、ぐう、っっつぁああ…あの什一郎君や。
 私が望んだとはいえど、な―――…少々派手にやり過ぎだろう。」

己が己であるという証拠(きずあと)を指でなぞり、痛みに顔を顰めるけれど。
自分が薬師寺結月であるという確固たる自負と記憶を得たという事である。

首筋には傷痕が残るであろう。それも、女性には似つかわしくない程に。
しかし、彼女はそれを隠そうとはしない。無くそうともしない。

壁にもたれつつも立ち上がり、首に巻かれた布地を解いて放り投げる。
赤黒い血に染まったそれは風に揺られ.
何処へか飛んでいくのを見届けたのち彼女も路地裏を去る。

//こちらこそ長い時間拘束してしまい申し訳ないです…。
//ですが、長い時間お付き合いいただきありがとうございました!


374 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/04(火) 23:58:05 Zn4DyrCA

「あぁ、もう………悩ましいわね」

それは常に自らの人生について悩んでいた。

スリットが深い、無柄で紅いチャイナ服を細身な身体で着た。燕尾色の髪をショートにカットしている彼女か
アジア系の顔立ちを、細く引くが真っ赤な口紅を特徴的にメイクをした、憂いを帯びた黒の瞳を持つはたまた彼か

メイクや身体つき、表情で男性にも女性にも(強いて言えば男性的特徴が目立つが…)中性的な人影がいるのは

破棄されたビル群が立ち並ぶ街の深い闇の中。杜撰な都市計画が生み出したいくつものあるデットスペース
入り込んだ迷い込んだ先の終着点である。公園ほどの広場で、その中央に積まれた何かの山の上に座り込む

それは紅く、朱く、赭く、赫く、緋く、赤い。無印の空間を月明かりの下に彩る薔薇の大輪。
それは滴る花の涙で常に堪えず堪えず灰色の地面を侵食し染めていく。目が眩むような色の蹂躙。
それは合計36体の老若男女の過去形達が、丁寧に組み込まれた、社会に対する冒涜的なオブジェクション


貴方達をどれ程費やしても、

貴方達をどれ程搾り取っても、

私の世界は広がらない
            」

それは周囲に漂う噎せ返る死臭を、まるで森林浴でもするかの様に深く吸えば、女性であれ男性であれ、見惚れる様な、そんな蠱惑的な溜息をつく。
警官ならば一級犯罪者と、悪人ならば出会ってはいけない危険人物と、武道家ならば最悪の裏切り者と、一般人ならば都市伝説と評されるそれは、

ただ、自分の人生について、思い馳せている。


375 : 【羽衣が微笑む穹天の斜陽】 - Lever du Soleil - :2017/07/05(水) 00:26:04 Pu/RGtPw
>>366

キャッチ!

草原で急ブレーキを掛けたものだから、ずぞぞと十数センチは滑り、土煙を小さく上げた。
受け取ったおにぎりを見つめると、にひっ、と笑い、疑いもなく口に頬張る。

「ありがとう、見ず知らずのおサムライさん。」

何故、何故、などと考えても、戦士でも兵士でもない少女が戦いのイロハなど知っているはずもない。
何故とんだか ―― カッコイイから。
何故爆風か ―― 楽しいから。
旅人は旅人であり、狩人は狩人であり、それ以上でもそれ以下でもない。

この草原に通り抜ける爽やかな風、降り注ぐあたたかな陽気のように、それは確かな事だ。
暑苦しい夏の訪れにはぴったりの、あとここに麦わら帽子があれば完璧な。
そして氷水で冷やされたトマト、は、ナイ、ので、代わりにコメを頬張った少女の頬。

「むぐむぐ、おはむらいはん、はんふぁひんへーひーね。」

訳:お侍さん、反射神経、イイネ。

「んぐ……さて、では、次は、私から何かお礼ができればいいのだけれど、生憎あの城以外に何も持っていない。」

城と呼ぶそれは完全に廃墟な風貌だし、そもそも少女のものではない、という事に目を瞑れば、
この言葉に間違いはない。無一文なのだ。

指についた米粒を舐め取りながら少し考え、言った。

「"馬と引き換えに私の王国をやろう!"とは、なかなかうまく言えないものだね。」

何も持っていないけど、冗談なら言える。


376 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 00:37:42 U.BUTuaU
>>372

『ゥガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!!!!!!』

咆哮、一歩遅れて衝撃と轟音が廃ビルを襲う
そして巨大な影―――両腕を蟹のような装甲で覆った角の生えたゴリラ―――が鉄パイプを持った不良に横から激突する
立ち上がる土煙。いやにコミカルな情景

「まーったく……タフだなあ……」

ゴリラが突っ込んで開いた大穴から姿を現す青年
右手に持った銃らしき装備を肩に当て、歩いてエントランスに入ってくる

「……もしかして取り込み中でした?」

そしてようやく内部の把握。やっちまった?という表情で、不良たちとそちらを見るだろうか

/よろしければ


377 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 01:46:11 NRBq7P6g
>>376
結果として鉄パイプが振り下ろされることはついぞなかった。――轟音、衝撃、それから舞い上がる塵埃。
埃が沈み、音が止み、全てが終息すると、煙に滲んだ涙を拭う青年の眼にもその惨状が明らかとなった。

「――あー、……」

汚れた床に横たわるゴリラ――に似て非なる生物――と、その下敷きとなって眼を回す不良のボス。
それから突如として空いた大穴を背景に立つ、やや気まずそうな表情の青年。
順に確認し、青年は言葉にならない声を漏らす。急変した現況を受け容れ混乱を収めるため、必要だったのだ。

「いや、もう済んじまった。お前の――いや、」

なにはともあれ。偶然の力によって助かった、ということらしい。
深々とため息をつき、皮肉っぽく返事をする。
よろよろと立ち上がり、口端に皮肉っぽい笑みを浮かべると、くいと親指で"ゴリラらしきもの"を指さし。

「コイツのおかげで、な」

青年は悩んでいた。ヒトとして、社会人として――これは礼を言うべき、なのだろうか?
首の後ろに手を回し、瞑目する。青年には分からない。こういうとき、いったいどうしたらよいのだろう。
ともかく――、
再び開いた彼の眼は、闖入者たる青年に向けられる。あんたはいったい、何者だ? 言外にそんなニュアンスを込めて。

/すみません、反応遅れました……! よろしくお願いします。


378 : 【飛燕二式】 :2017/07/05(水) 02:21:36 tbovrG8o
>>375
侍にとって武器は武道の道具であり、対人戦闘という使用法を想定した使い方を学んできた。
ゆえに弓を見ても最初に思いつくのは狩人ではなく弓兵だ。
対獣、しかも交戦ではなく狩猟。獲物に気づかれずに殺すという使い方はすぐには思いつかない。

「一発ずつなら、一生続けられるぞ」

褒められた反射神経も常人よりも遥かに優れている自負があるが、それよりも重要なのは振る速さ。
気を込めた一閃は「矢が飛んできた」と認識してから当たるより早く振るわれる。
矢がギリギリ追える動体視力があれば視力を置き去りにするハンドスピードで対処できるのだ。

屠龍は体内の気を消耗する技だが、あれくらいの火矢なら少量の気で切り落とせる。
間隔が空くならその時間で呼吸を整えられるので、二の矢三の矢が来ても何も問題ない。

「つまり何も持ってないと」

冷静に突っ込みを入れる。今時ライスボール一つから物々交換が始まるとは思ってないのでそれはいい。
あと馬もいい。バイクあるし。うちでは飼えない。
このホームレスにあるのは弓の腕と矢を発火させる能力くらいだろう。

「じゃあ、ウチで働いてみないか?」

その弓矢の腕が、今結構欲しかったりする。
賞金首ハンターの集まり『ワイルドハント』
立ち上げから着々とメンバーを増やしてきたが、何故か剣士ばかり集まってくる。
弓を使える人間がいれば、足りない部分が補える。

まぁ命がけの仕事をライスボール一つで安請け合いされると思ってないので冗談だが。


379 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 02:31:58 U.BUTuaU
>>377

「いやあ、それならよかった!」

はっはっは。と明るく笑う
気さくというか、人懐こい笑顔を浮かべながら辺りの状況を再確認
態々こんな人気のない所に追い込んだのだが、正直やらかしたと思った。上からもの凄い怒られることも覚悟した
だが天はこちらの味方らしい。改めて見ると自分は偶然にも血生臭そうな展開を止めたらしい

(でもこんなヤツらに追われてるって事は、この人も"そっち"の人なのか……?)

笑う様子とは裏腹に状況はきちんと分析。しかし青年の様子を見る限り今すぐ襲ってくる事はなさそうだ

さて、この状況と自分をどう説明しようか、と考えると

『ウグゥ……』

ゴリラ(仮)が起き上がろうとしている。衝撃から立ち直り切っていない様子で、頭を右腕で、左腕は立ち上がろうとする体を支えている
直ぐに青年は銃を構え直すと

「ごめん!説明は後!」

素早く5回トリガーを引く。銃口から飛び出すのは実弾ではなく魔力弾――青みがかった光が通るのが見えるだろうか
それぞれはゴリラ(仮)の顎・首・鳩尾・左肩・右肩に着弾し破裂する。同時に着弾部分が凍結し、ゴリラの首を氷が覆った

「先ずはこっちを片付ける!」

右手で突き出した形の銃のマガジン部から青いカートリッジが排出され、左腕で振りかぶるようにキャッチ
銃を水平に傾けながら左手で掴んだカートリッジを腰のホルスターの真ん中に収納し、そのまま赤いカートリッジをつかむ

《DEFORMATION:GUN FOR LANCE》

機械的なサウンドが鳴ると、銃が分解されるように消え、柄だけが残り―――空中からパーツが現れ、槍の形に集合・合体していく

《ACTIVATE:SPIRAL SYSTEM》

変形が完成すると、握っている柄より上部分が開き、そこに左手で掴んでいた赤いカートリッジを装填する

《LOADING:FIRE》

アナウンスと共に先端が発火し、刃を包むように炎が螺旋状に纏われる
身の丈より少し長いそれを一度振り回して調子を確かめる―――正常だ

そしてゴリラ(仮)へ跳躍。槍を持つ右腕を大きく引き、着地とともに

「セイヤアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

氷結した首に一撃を叩き込む
一気に高温を叩きつけることで、凍った首の表面を砕き、内部に刃を到達させ、纏った炎の渦で焼き切った

ゴトリ。とゴリラ(仮)の首が落ち、粒子のように首と本体が消えていく
まるで最初からそこにいなかったように消滅しきると、ようやく青年は残心を解いてそちらに向き直すだろう

《SYSTEM:STANDBY MODE》

同時に槍が先の銃のように分解されて消え、柄部分だけが残る

……さて、何から説明しようかと考えながら、青年に取り敢えずの愛想笑いを向けた

/お気になさらず!


380 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 03:28:15 NRBq7P6g
>>379
場違いなくらいに人好きのする朗らかな笑顔で、彼は笑った。
彼なりの心配があったということなのだろうが、どう受け止めていいかが分からずに戸惑う。
なんと切り出したものだろう――考えあぐねているうち、聞こえてくる呻き声。
思わず身構える。まだ、"終わって"いたわけではないらしい。

「……ッ」

青年が動き出す間もなく、彼の対応は素早かった。
氷の楔が化物の身体を凍結させたかと思えば、槍に変形した得物が炎を散らして頭を落とす。
始終を身じろぎもせずに視る青年の目前で、なんの痕跡も残さず死体は消滅してゆく。

目前に展開される鮮やかな手際に、ぞくりと総毛立つのを感じた。
一も二もなく脳裏に浮かぶのは至極単純な想像。――俺と戦ったなら、どちらが強いだろう?

「……たいした腕だな」

呟いた賞賛は紛れもない本心だが、それだけではない。彼は気づくだろうか。
ひらいた口から見える牙の鋭さに。すっと細められた瞳に奥に住まう獣性に。
青年は頑なに信じているのだ。"俺はもっと強くならなければならない"、と。

故に、それは起きるべくして起きてしまう。
「けど、それで終わりじゃ、ねえんだろ? ――ッ!」

直立する青年の像が歪み、焦点がぼける。数瞬の間を置いて代わりに現れたのは、――大きな狼だった。
狼は素早い身のこなしでもって相手のもとへと駆け出す。もはやむき出しの牙が狙う先は明らかであった。
重心は低く保ち、そのまま彼の脛あたりに噛み付こうと試みる。
倒れ伏した不良、そして自分。両者の違いなどこれで無くなってしまう。分かってはいても、足は止まらない。

――好意的な相手にいきなり仕掛けるなんて、ニンゲン失格じゃないか。
頭の中で残された理性が囁いた。
――強くならなきゃ、ニンゲンにはなれない。だからこれは仕方のないことなんだ。
すぐに、反駁が響く。どちらも紛れもなく青年の本心であり、――その動きに、躊躇いは見当たらない。


381 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 11:10:20 U.BUTuaU
>>380

「え?あぁ、まあ、こういう仕事だから――――ッ!」

突如狼に変身し、地面を這うかのように突進してくる相手


("獣憑き"か、獣人か、それとも怪異の類か……っ)

《SYSTEM:START UP》

柄を握り直し、後ろに飛び退きながら、黄いカートリッジを左腰のホルスターから掴み取る

(どちらにせよ、先ずは大人しくさせるッ)

《DEFORMATION:BLADE》

アナウンス――高速詠唱――が鳴ると同時に、宙からまたもパーツが出現する
狼は最早目の前。己の着地の勢いを利用し、重心を低く、前へ倒す姿勢を取る
同時に直刀が完成し、その峰部分をカウンターのように相手に押し付けようとするだろう
右手で持った直刀の先がそちらから見て左上から右下に向く形、「\」状に構えて開く口に噛ませようとする構図だ


自分の職業柄、敵になる相手には青年のように人の姿から獣の姿に変身するものもいる
何かに憑かれたり呪われて操られているパターンや、本人の意志であるパターン、またそもそも人でなく先のゴリラと同種のパターンと

先の状況では不良に襲われていた、つまり追い込まれていたのに獣化しなかった
となればそういう怪異である可能性はぐっと下がった。怪異も生命体―――追い込まれれば反撃している筈

ともあれ方針を決定する。気絶させるか、理性的解決か、と
/お待たせしました


382 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 13:13:34 NRBq7P6g
>>381
肉を裂かんと欲した牙から伝わるのは宛がわれた刃の硬い感触。――やはり、強い。
しかし、だからこそ意味がある。そう信じているから、狼は迷わない。"我慢が利かない。"

「グルルルル……ッ!!」

直刀に噛み付く口の端から唸り声が漏れた。直後、それを合図にしたかのように――冷気が漂う。
不意にひやりとした感触を覚えるかもしれない。それは前兆であった。狼の能力、その前触れ。

狼の背中から、数本の氷柱が生み出される。それぞれが短刀程度のサイズで先端は鋭利に尖っていた。
それを、生成時の勢いを利用して射出した。狙うのは目前に立つ、青年の腕。
直刀を捉えた顎には手放すまいと力を籠める。こうして釘付けにおけば、二択を迫れるというのが狙いだ。
得物を手放し、回避するか。それとも武器を持ったまま甘んじて氷柱を受けるか。どちらにしても狼には有利だ。

とはいっても、直撃したところで大したダメージは望めない。多少の怪我はあれど、深刻な程度には及ばない。
それに狼は既に消耗している。全力で振り切ろうと試みたなら、狼の牙から直刀を開放することも或いは可能だろう。


383 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 13:44:55 U.BUTuaU
>>382

「――冷気!?」

ひやりとした感覚。己も氷に関する術を使うせいか、その判断は早かった

《DEFORMATION:SWORD FOR GUN》

素早く武器を変形させる。力を込めた狼の顎は勢い良く閉じられることになるだろうか
銃形態に移行する己の武器。しかし、氷の棘を回避するには

(遅いかっ……なら!)

《LOADING:THUNDER》

直ぐに右腕を体側に引き、左手のカートリッジを銃底部分に装填
左肩がそちらに向き、右肩を引いて銃を構える形になるだろう。被弾を最小限の影響にする狙いだ

「せァッ!」

そして2回引き金を引く。同時に氷の棘が左肩を3箇所程背中側に裂き、1本は

「ッッ」

ぐさり。と突き刺さるが、ここで体勢を崩せばどうなるかわからない
気合で鋭い痛みを無視しようとするが、左腕に力を入れ辛くなったのは確かだ

《ACTIVATE:COMPRSSION SYSTEM》

銃口から飛び出す2発の魔力弾。狙いはそちらの左前脚と胴体で、着弾すれば叩かれた程度の衝撃と、電撃による痺れを感じるだろう
威力は控えめに、電撃による感電が狙いで、動きを止めようとする

しかし、氷は電をあまり通さない。ゆえに、防ぐことができれば、それこそ静電気程度に感じるだろうか


384 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 14:53:45 NRBq7P6g
>>383
しっかり掴んでいたはずの両顎が空を切る。まただ。さっきも見たように、武器を変形させたらしい。
しかしその逃げ方は狼にとり予想外のもの。行き場を失った力が態勢をおぼつかなくさせ、
銃弾への回避行動に遅れが生ずることになる。

「――ガッ……!」

それが電撃の属性を持つ魔力弾だと分かっていれば対応のしようもあっただろう。
脚を狙ったものは辛うじて回避することが出来たが、胴体に向けられたひとつが肩口に命中、
衝撃、それからびりびりと麻痺する感覚が広がる。それによって狼は、始めてその性質を理解したのだった。

(くそ、――ッ)

制御の効かない身体がその場に釘付けにされる。
ほとんど無防備といっていい状態――このままでは不味い、と、立て続けに能力を発動する。
狼の周囲の床から氷の礫を生み出し、青年に向かい射出する。それぞれは小石ほどの大きさで、性質もただの氷と変わりない。
代わりに量は十を超えるだけあった。それによって痺れが多少マシになるまで、時間を稼ごうという目論見である。


385 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 15:17:59 A8N07cTM
>>384

(電撃は通るか、なら!)

次の行動を、と思った矢先。相手の能力の発現――氷の礫
成る程、と感心する。痺れていても、抵抗する意思。生きようとする獣の意思は、確かに操られたものではないのだろう、と

「勝負と行こうかッ!」

《DEFORMATION:GUN FOR SWORD》

瞬時の武器変更。直刀にしたそれを、今度はそちらから見て右上から左下に、袈裟に振り下ろす

「っセイヤァアア!」

《ACTIVATE:RELEASE SYSTEM》

斬撃を放つ。狼との間を埋めるように、刀身から放出される雷を付与された魔力の一撃
とはいっても、斬撃用の魔力を減らし、代わりに属性の魔力を強化した、言わばスタンガンの投射だ

斬撃は己に飛来する氷を幾つか弾いたが、それでも被弾し、体が後ろに傾く
勝負、と言うのはこの賭けのことだろう。相手が失神ないしは己が復帰するよりも長く痺れるかどうか、という


386 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 15:47:35 NRBq7P6g
>>385

「いい加減ッ、ナメんじゃねえぞ――!」

飛来する斬撃を前に狼は咆哮する。いまだに身体は硬直から立ち直ってはいなかったが、”やりようはあった”。
言うなればこれもひとつのギャンブルだ。
この斬撃がまた電撃の属性を纏っている――つまりは殺すつもりがない――という事実に、賭けることになる。

「――」

ぺきぺきと音を立て、薄い氷の膜が狼を包んだ。頭から、背中、前足。斬撃の届く範囲を覆うそれは、鎧だった。
炎や衝撃にはめっぽう弱い、氷の鎧。しかし電撃に対しては――有効な防御手段となりうる。

果たして到達した斬撃から伝わる衝撃は、さっきのものとは比べるまでもなく弱い。
内心で快哉をあげ、ようやく立ち直った四肢に力を籠める。――猪突猛進、目指す先は決まっている。

狼はそのまま、氷に覆われた頭部でもって青年の腹部に頭突きを決めてやろうと驀進する。
相手の態勢を崩すことができたなら、マウントポジションをとり、両腕を前肢で押さえつけてやる心算だ。
もしそこまで上手くいけば得物を無力化することが出来る。なれば、勝負は決まったも同然だ。
かっと熱を帯びた思考が目指すのはただその一点。――相手の防御行動に対する予測など、皆無である。


387 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 17:05:19 A8N07cTM
>>386

後ろに傾いた体勢を利用し、後転しながら、柄頭に刺さっていたカートリッジを回収し、ホルスターから赤いカートリッジに差し替える
そして突進する獣。直刀を解除し

《DEFORMATION:SWORD FOR GUN》

銃形態へ。そして素早く銃底に赤いカートリッジを再装填
構えた段階で最早獣の頭は目の前に迫っていた

《LOADING:FIRE》

相手の鎧は氷。ならばこちらは炎で対抗する

(手加減できる相手じゃないな―――死なないといいけどッ)

《ACTIVATE:COMPRESSION SYSTEM》

最大出力を持って、相手の足元に一発の弾丸を発射した
最大圧縮の爆炎弾―――お互いを吹き飛ばすための手段だ。自分は吹き飛ばされ、数度後転した後、体勢を立て直そうとする
もし相手の氷が衝撃を防ぎきってしまったなら、次の瞬間には相手にマウントを取られているだろう。だが、相手はこの手を見るのは初めて―――もし、無警戒だったなら、という、賭け


388 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 17:43:26 NRBq7P6g
>>387
――誤算があったとするならば、それは相手の態勢を立て直す速さ。
後ろ向きに傾いだ状態から攻勢を整える手際の機敏さ。そしてなによりも、――

「な、ッ……!?」

地を駆けていた身体が突如として浮遊感に襲われる。
ビル全体を震わせる爆発と真正面からぶつかり合い、その焦げ付くような灼熱に氷の鎧は溶かされる。
無防備な狼は、そのまま傷だらけの床に強かに打ち付けられる。息の止まるような衝撃、皮膚をひりつかせる熱。
消耗した身体に止めを刺すには、それは十分すぎるダメージといえた。

「――ちくしょう、ムカつくぜ」

爆発が収まるころには、狼の姿はどこにも見当たらなくなっている。
代わりに現れるのはあの、ガラの悪い風貌の青年だ。床にどっかりとあぐらをかいて肩で息をしている。
戦闘の最中に切ったのだろう。額からは血を流し、腕には火傷の痕もある。当の青年はそれらの傷に頓着もせず、
鋭い視線を目の前の相手に、――勝者へと向ける。

「負けるにしたって、"殺す気"にさせてやろうと思ったのによ――ああ、くそ」

盲目的で粗野な自分とは違う、よく律された、洗練された戦い方だ。
その余裕を引っぺがすため、何より自分がその境地に達するため、――全力を以て牙を剥いたつもりだったが、
及ばなかった。その事実に苛立ちつつも、一方では清々しくすらある。……。
敗者たる自分がこれから"どう"されようとも覚悟は出来ている。乱れた息を整えながら、青年は顔をしかめる。


389 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 18:23:19 A8N07cTM
>>388

「……っあー!効いたあ……」

全身の関節が痛い。特に爆発で後転した時に左肩を庇ったせいで、変に右肩に負担が行ったようだ
追撃がないということは、制圧できたということだろうか

土煙に銃口を向け、念のため、少し警戒し

「お、"戻った"か!」

人のシルエット。狼の姿ではなくなったらしい
どっかりと座る青年のもとへ、右手の銃は早抜きで打てるように、力は抜かないが、それでも気楽な様子で

「殺す気はあったよ?俺も死ぬわけにゃ行かなかったからね。でも、」

あっけらかんというが、本音。殺気という殺気は確かに感じなかっただろう。それは、いざという時に殺すことは、とうに覚悟しているからで
既に覚悟していたから、改めて殺気という形にならなかったというだけの話なのだ

「今晩のご飯、食べてなかったからね。一人で食うよりは―――と思ってさ」

ザッ、と青年の前に立つ
銃を左手に持ち替え、右手をそちらに差し出し、手をにぎるように促す。もし掴んだら、そのまま立角を手伝うだろう

あくまで気楽な様子。気負うことはない、と
爽やかに笑って、夕飯に誘う。直後、グギュルル……と言う空腹を示す音がした


390 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/05(水) 19:00:13 .EBagVyU
>>374
/これでももう一度募集します。最後は何が言いたいかというと取り敢えずやばい奴ということで


391 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 19:39:04 NRBq7P6g
>>389

殺す気はあったと彼は平然と言う。あながち嘘ともとれなくて、顔を背ける。
実際に"殺されてしまう"ほど本気にさせてやりたかったと思うけれど、もちろん死にたいわけでもなく。
詰まるところ、力が足りていないのだ。
乱暴にがしがしと頭を掻いたところで、彼が二の句を継いだ。その内容は余りに意外で、
ふつふつと沸き立つような苛立ちもどこかへ吹っ飛んでしまうくらいだった。

「――あぁ?」

思わずまじまじと青年を見上げる。ひょっとしたらゴリラが壁をぶち抜いてきた時よりも驚いた顔をしているかもしれない。
にわかに目を見開き、耳を疑う。警戒は解いていないようだが、それにしたってさっきまでやり合っていた相手だ。
どこか気の抜けた顔で笑う相手を見ていると、脱力した。何もかもが馬鹿らしく思えてくる。
馬鹿な奴だと思ったし、そんな風に声をかけてくるとは思わなくて戸惑った。――それでも、救われた気がしたのも本当だ。

「……ヴァン。俺の名前だ。――メシなら肉だ、肉が食べてえ」

差し出された手を握り、立ち上がる。手の甲で額から流れる血を拭って名を名乗る。そうして、控えめに笑った。
知っての通り乱暴な気性で、好んで近づいてくる相手は少ない。それでも、人嫌いというわけではないのだ。

「――確認すっけどよ。お前、頭を打って"俺がしたこと"をすっかり忘れちまった‥‥‥って訳じゃねえんだよな?」

そうでもなければ襲いに来た相手を飯に誘うなんてあり得るだろうか?
なんてお人好しだろうかと、――呆れの混じった表情で問いかけた。

/すみません、遅れましたっ


392 : 【一刀全剣】 :2017/07/05(水) 19:42:09 BLULNl5w
>>374

かつん、かつんと足音を響かせて、深淵の闇に足を踏み入れる。
例え視界が不明瞭であろうとも、この鉄錆の如き臭気だけは間違える筈がない。

やがて────其の終着点に辿り着いたならば、彼女は頽廃的な屍の山と、その頂点に座す者を一瞥する。
紺色のスーツに身を包み、鞘に納められた得物を帯刀する彼女は、研ぎ澄まされた殺意を向けることだろう。
其れは激昂を秘めていた。死屍累々と云うに相応しい光景と、その光景を創り出したであろう者に対して。


「……その世界が広がることは、此れまでも此れからも有り得ません」
「何故なら────ここで貴女の世界もその横暴も、終わらせますから」

翳すのは桜の代紋、其れは彼女が秩序の番人たる警官であることの証。
ならば、彼女が成そうとすることはただ一つ、犯罪者の逮捕に他ならないのだから。


「現行犯逮捕……───言うまでもないことですが、抵抗するのであれば、容赦はしませんよ」

そう警告しながらも彼女は既に半身の構えをとり、其の得物は次の瞬間にでも抜き放てる。
斬り捨てることを前提に彼女は行動していた。其れはこの惨状を目の当たりにして、怒りに我を忘れたが故か。
或いは────冷静だったからこそ、臨戦の覚悟が必要であると直感したが故かは、解らないが。

//もし宜しければ


393 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 20:08:44 A8N07cTM
>>391

「俺はミツバ。よろしく、ヴァン――ウマい肉、行くか!」

《SYSTEM:STANDBY MODE》

武器の形態が解かれる。にへ、と気の抜けた笑顔を浮かべ
軽くグ、と手を握り、立ち上がりきれば、解くだろう

そして相手の問い。それにも、やはりなんでもないように

「ヴァンは俺を殺さなかった。俺もヴァンを殺さなかった。それでいいだろ?なんか悪いモンに憑かれてるとか、操られてるとかならどうにかしようと思ったけどさ」

クルクル、と柄を回し、右のホルスターに差し込むと

「勝ち負け気にしてるってことは理性はあった。そんな能力持ってるなら生き方難しくて当然だしね。心配してくれるだけ、ありがたいっていうか、ヴァンも悪いヤツじゃないんだなって」

種族や生まれ、持っている―――持ってしまった能力による育ちや生活
その影響は人をどうするか。青年はそれを身をもって知っているし、仕事上、そういうモノと対峙する事はあった
だからこそ、終わったことは気にしない。いまを生きていて、きちんと他人とご飯が食べられるなら、そう悪いことにはならないだろうと
そう、考えていた

「んじゃ俺の行きつけの店に行こうか!狼に変身してたってことは、玉ねぎはダメとかある?」

さてと、といった様子で、路地裏から表路地の方向へ歩き出すだろう
付いてきたのなら、こぢんまりした居酒屋に案内するはずだ

/いえいえー!


394 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/05(水) 20:32:49 V41K5few
>>392

「…………あぁ」

胡乱の闇を掻き分けて、踏み鳴らすのは強き意志。世界に漂う腐臭を嗅ぎ分けそれは来る。それは必ず現れる。
番犬、犯罪の臭いを嗅ぎ付け現れる番犬。番人、社会を構成する者達の盾となる番人。秩序の担い手である警察

「抵抗はするわ。だってまだ”終わりたく無い”のだもの」

「反抗もするの。だってまだ”可能性を広げたい”もの」

だが、無数の血に汚れた歪な人の椅子に腰掛けるそれは、ただ微笑むのだ。

手には正義の証である桜の紋を、腰にはそれを実行する鋭利な武器を、そして瞳には鉄の如き固き意志を浮かべる彼女を
それでも尚、通い慣れた喫茶店でお気に入りの紅茶を飲んでいるかの様に、余裕をもった態度で唇を歪まて
鍛え上げられ締め切った細い足を優雅に組むのは余裕の表れで、そっと片手を口に添え隠したのは嬉しさの表れだ

「私の名前は槍(ソウ)ただの、槍。」

「ねぇ、三十七番目の椅子の…肘置きになる予定の十二番目の子と”同じセリフ”を言ったお嬢ちゃん」

「人は……一つの才能を極め切ったらどうなると思う?」


395 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 20:48:20 NRBq7P6g
>>393
問いかけに答える理屈は単純で明快。思わず笑ってしまったくらいだ。
けれども、そう言い切る相手というのは滅多にいない。当然だろう、中々そこまで割り切れはしない。
だから素直に、――有難かった。もちろんそんなこと、口にしたりはしないのだが。

「ミツバ、か。――単純なだな、おまえは」

お前のその腹もな、とさっき聞こえた空腹の訴えをからかうようにして、からからと笑った。
こんなふうに気楽に話ができるとはつくづく思わなかった。変わったヤツだな、と思う。

「こう見えても俺は人間、だからな。玉ねぎだって喰ってやらあ」

ニンゲン、を強調して胸を逸らせる。単純と人に言いはするが、それは彼自身に当てはまることでもある。
少しばかり過剰で、直線的。そういう態度で、青年は話す。
ミツバが歩き出したのなら、その居酒屋までひょこひょこと後ろをついていくことだろう。


396 : 【一刀全剣】 :2017/07/05(水) 21:06:15 BLULNl5w
>>394


黒と赤、眩暈を起こすほどに凄惨な極彩色。
然し秩序の番人の放つ殺気は、依然真剣の如く研ぎ澄まされたまま。


「只の人殺し風情に、先の可能性など必要ありません」
「何より、認めません。これでも刑事の端くれ、その凶行を、これ以上見逃すとでも」

彼女とて一人の警官であり、その根幹にあるものは確固たる正義感に他ならない。
だからこそ彼女は臨戦態勢を崩さない。一瞬たりとも警戒を怠ることなく、相手の余裕綽々な態度にも眉一つ動かさず。
脱力、然し其れさえも次の動作への布石に過ぎず、その刻が訪れたなら刃は躊躇いなく放たれる。


「道を極めた先にあるのは停滞、極みに至ったが故の袋小路」

「……────ならば、此方からも問いましょう。何故貴女は、このようなことをしたのですか」

停滞を彼女は経験していた。剣を我武者羅に振り続けた末、彼女の剣術は極限にまで研ぎ澄まされた。
そして其の先に漸く、彼女は彼女だけの"型"を辿り着いたが────そんな昔話、今この場に置いては意味を成さず。


397 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 21:20:31 NRBq7P6g
/すみません、次も少し遅れるやもしれません……!


398 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 21:35:51 A8N07cTM
>>395

「う、うるさいなあ!これでも色々考えてんだからなぁ!?」

ちょっと怒ったように笑いながら、軽く肘で小突くだろう
ともあれ、

「ならオッケーだ、オヤジさんとこのキングステーキは最高なんだ!付け合せの甘い玉ねぎとポテトもさ!」

なんて雑談を交えながら、【幾重万神領出雲大社】の近くまで、タクシーを捕まえて向かう

―――――――――

「オヤジさん!とりあえずキングステーキ2つ!飲み物はジンジャーエール!」

特に青年が拒否しなければ、居酒屋に入った途端、これまた人の良さそうな店主――「オヤジさん」に向けてが出迎え、その娘が二人の傷を治療してくれるだろう
本人は忘れていたがお互い傷だらけで、人の良さそうなオヤジさんは「オメェらのせいで店が汚れる」と。店に他の人はおらず、隠れ家的な店なのだ
拒否したとしても、それならそれで「仕方ねえな」とでも言うはずだ。カウンターで二人座る事になるだろう

この青年はここの常連と言った様子で、自分の治療かそちらの治療が終わり次第、飲み物のメニューを渡すだろうか


399 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/05(水) 22:47:40 NRBq7P6g
>>398
肘で小突かれれば、どうだかな、とまた笑う。
他愛のない雑談、それから慣れない車での移動を経て、辿り着いたのは小さな居酒屋だ。
飢えを満たすために牛丼屋や蕎麦屋、そうしたチェーン店を利用することはあるものの、
こうした雰囲気の店に足を踏み入れることはあまり無い。
絶無というわけでもないのだが、――やはりどこか落ち着かない気分であった。

「っと、悪い、な……」

腕の軽い火傷は冷却され、額の切り傷には絆創膏が宛がわれる。
青年は、借りてきた猫のように大人しく一連の治療を受けた。珍しく歯切れの悪い調子で、礼を言い。
内装をきょろきょろと見回していたところで手渡されたメニューに眼を落とす。

「ん、そうだな――林檎ジュース、これにする」

随分種類があるもんだなと感心しつつそれを吟味し――やがて、飲み慣れたそれを注文する。
味覚はまだまだ子供じみているのか、彼は甘いものも好いている。
注文が済めば、大きくため息をつくことだろう。

「ここには、よく来んのか」

とあたりさわりのないことを訊く。
愛想の良い店主も、その娘も、随分ミツバと親し気に見えたから――というのが表向きの理由だ。
慣れない環境に馴染むためにも、黙ったままというのも味気ないと考えたこともあった。


400 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/05(水) 23:22:51 A8N07cTM
>>399

「結構くるよ。昔からの馴染みの店なんだ。昔はここ、洋食屋だったんだけどね」

それがいつの間にか居酒屋になっていったのは、店主の酒好きが高じたせいだ
しかしその御蔭でご飯は評判で、ランチタイムになるとその手の男性客が隠れ家的に利用されることが多い
昔から通いつめているのだろう。くつろぎっぷりがそれを物語っている

「ところで、ヴァンはどこに住んでるんだ?」

俺は出雲大社ってとこの、祓魔局ってとこにいるんだ。と続ける
が、ちょうどのタイミングで店主が戻ってきた

『あいよ、ジンジャーエールと林檎ジュース、それと』

ゴトン。と景気の良いジョッキで琥珀色の飲み物が、二種類置かれる
キンキンに冷えているのがわかるくらい、結露していた

『キングステーキ、大盛りだァ!』

バァン!と言う衝撃とともに目の前に置かれる巨大な肉塊。その後ろにはこんもりとタレで炒めた玉ねぎ、カリッカリに揚げられたポテトが盛らている
肉の脂が鉄板を浸し始め、高く置かれたパレットはその油に触れてジュゥゥゥ……という音を立てている

「っひょー!やっぱ美味そうっ」

熱いうちに、とこちらの質問をそのままに、分厚く肉をナイフとフォークで切る。結構レアな焼き加減のようで、パレットで追加で焼く形のようだ


401 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/06(木) 00:02:13 9T5O.DHo
>>400

そうなのか、と相槌をうつ。昔からの付き合いとあれば気の置けない雰囲気にも合点がいく。
住処の他に、こうして心を許せる場所があるのは良いことだろう。この青年にとってそれは、
森のなかであったり、人気のないビルの屋上であったりするけれど――こういう場所も、羨ましく思える。

「ああ、俺は、――っ」

投げ掛けられた問いに答えるべく開いた口が、そのまま絶句する。
剛毅な声とともに運ばれてきたのは注文通りの飲み物を湛えたジョッキ、それからこの、――

「でけえっ!」

思わず少年のような歓声をあげる。めったにお目に架かれない巨大な肉塊に、ごくりと喉を鳴らす。
肉の焼ける芳しい匂いが漂ってくる。そこにあるのは凄まじい訴求力を持つ、圧倒的な物体だった。
いただきます。律儀にそう言って手を合わせると、ミツバの見よう見まねで肉を切り分けていく。

「――っ、」

フォークに突き刺さった肉塊を頬張り、咀嚼し、嚥下する。――再び口を開くと、今度はジュースを流し込む。
感想は無かった。何かに突き動かされでもしているかのように、夢中になって皿に取り組む。
それこそ獣ような勢いと、輝きを増した目がなにより雄弁にこの体験の衝撃を語っている。
――人心地ついて質問の内容について思い出すまで、しばらくの時間を要することになる。

「俺は、――世話になってる奴がいてな」

何でも屋を営む友人のもとで働いているということ。あのビルを訪れたのもそれが理由だということ。
一方で、しばらくその恩人とも顔を合わせていない――ということ。
それらもろもろの事情について、食事の合間にとりとめもなく語る。
そんな現況について、彼は苦にも感じていない様子だ。今もこうして、幸福な食事があることだし、と。

「その、ふつまきょく? ってのは、どんなことをやってるんだ?」

広く社会を知ることは、青年にとって大切なことだ。ゆえにそれを、訊ねてみる。
自分が世間知らずだからかは分からないが――耳馴染みのない組織だ。
出雲大社くらいは聞いたこともあるから、余計に不思議に思われる。


402 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/06(木) 00:54:58 O7l9vAUs
>>401

「っはー!あっつあつのステーキを冷えたジンジャーエールで流し込むって、さいっこうだなあ……」

ふぃー、と一息ついて
彼の話に耳を傾ける。ひたすらに相槌を打ちながら、なるほどなあ、と
狼と育ってきた彼はきっと、貴重な経験をしてきたのだろう。むしろ、それに尊敬すら覚える

「なるほどなあ。何でも屋、かー……。ヴァンみたいに戦える人がいるなら、ウチと連携してくれると楽かもしれないな」

そしたら君の恩人も、見つけやすくなるかもな、と冗談交じりに言いながら

「祓魔局は……そうだな、怪異や妖怪を討伐したり宥めたり、果ては暴れてる神様の相手だったり……っていう組織だよ」

自分のように特殊な才能や体質を持つ存在の保護や、出雲大社側の組織であること、そもそも出雲大社はどういう場所か、を詳しく説明する
とはいっても食事を取りながらになるので、ゆっくりとではあるが

『ほれ、新メニュー予定のピクルスだ、食ってみてくれ』

そう話していると、店主が小鉢に盛った漬物を置く。さっぱりとしたピクルスは脂の強い肉を食べた口をさっぱりさせてくれる

「オヤジも元は出雲の人らしいよ」
『おう。この店も神さんの加護があっからな、お陰で食いっぱぐれる事がなくて有り難いよ』

ガハハ、と笑うとまた厨房に引っ込んでいく
中々愉快な場所というか、店主の人柄からして、おおらかな場所であろうと感じるだろうか

食事が終われば、最後に柚子のシャーベットと玄米茶が置かれるだろうか


403 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/06(木) 01:22:25 9T5O.DHo
>>402

「怪異や妖怪、カミサマ、ねえ……」

ミツバの語る内容に耳を傾けながら難しい顔をして呟く。漠然と想像することは出来るが、それは未知の世界だ。
出雲大社という名の、複雑そうな組織。それから特殊体質について。事情は存外、入り組んでいるらしい。
単純な男だとは思ったが、その実「色々考えてる」という台詞はあながち言い訳でもないのかもしれないと、
そんなことを思う。

「俺は、いいぜ? 共同戦線、面白そうじゃんか」

冗談交じりの言葉に対し、彼は案外乗り気なようだった。
ジョッキから口を話すと口許の滴を拭い、自信の伺える笑みを見せる。――今日だって、怪我をしてたんだ。
だから本調子の時は、もっと"やれる"んだぜ、――と、子どもじみた自負心を覗かせた。

ちょうど何でも屋だけではくいっぱぐれる日も出てきたし、怪異とやらにも興味がある。
何よりこの青年と肩を並べて戦うというのは中々、悪くない。もっと強くなれるような、そんな気がしたのだ。

「ピクルス、か。……ッッ!?」

それは初めて食べるものだった。漬物のしょっぱい味を想像して口に含んだところ、強い酸味が口腔で弾ける。
眼を白黒させ、すぐにジュースを求めた。この味を愉しめるようになるには、まだちょっと時間がかかりそうだ。

「まあ、さっきのは置いといてよ、――」

シャーベットを少しずつ口に含み、玄米茶をすすり、再び余裕を取り戻した青年は、咳払いをしてまた話始める。
初めは落ち着かない様子であった彼も、いまとなってはカウンターに肘を乗せて楽な恰好をとっている。
身振りでミツバに耳を貸すように求め、もし応じられたのなら、「いい店だな、此処」と耳打ちすることだろう。
この素直でない男は、素直な賛辞をその当人に聞かせたくなかったらしい。
そんな風に思っている、と知られるのが、なんだかくすぐったい心持ちがして苦手なのだった。


404 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/06(木) 02:18:54 O7l9vAUs
>>403

「なら、こっちでも登録した方がいいね。支援とか受けれるし」

ほい、と自分の名刺を懐から取り出し、そちらに渡すだろう
祓魔官としての身分と、裏に祓魔局の地図が書いてある

「俺の名前出せば多分、大丈夫かな。多分配属は俺と同じ場所になると思うけど」

特技、能力の性質などによって配属は決まる。だが、手負いであれ自分と渡り合ったのなら、きっと祓魔官になれるだろう
相手の不敵とも言える様子。ああ、こういうのって、いいな。なんて感じた
きっと彼の「本当にしたいこと」に近いのだろう。何時か、万全のときに全力で戦いたいと、思った

そう遠くないであろう未来に思いを馳せていると、ピクルスに慌てる青年の姿
……もしその時が来たら、酢を隠し持っておこう

「ああ、だろ?世の中には美味しいものが沢山ある。仕事しながら、色々美味しいもの探してるんだ。ヴァンも、そういう楽しみもイイと思うよ」

態々耳打ちしてまでそれを伝えるということは、きっと食を楽しむ心があるのだろうと
厨房からちらり、と様子をみていた店主に、目で笑う。長い仲だ、なんとなく伝わっただろう

「俺、出雲の方に住んでるから、そのうち遊びに来いよ。あそこ無駄に広いから家とか借りたり買ったりするのも安いし」

何より、祓魔官だとそういう手当や支給があるぞ、と耳打ち。恩のある場所に居たい気持ちもわかるから、無理強いはしないが
あちらのほうが、青年にとっても暮らしやすいだろう。と思ったのだ


405 : 【五行刻銃】 :2017/07/06(木) 02:41:38 fpaXZKVI
帝國のとある地にある洋館。
広大な土地に建てられた巨大な洋館は、その巨大さに比例せず地元の人間が有名な軍人の所有物の一つと認識されている程度だった。
故に、軍人が出入りすることに対した疑問を持つものはいなかった。
子供たちが実しやかに囁く『あそこでは化物が作られている』などという噂話など、まともに聞く大人達など一人たりと存在しなかった。

草木も眠る丑三つ時、応接間にて煙管を吹かして座っていた。
落ち着き払った、気取った優男とでも言えるような、右目にモノクルをかけた顔の若い男であった。
身に着けているのは帝國の将校軍服。マントに軍刀と銃を帯びた、謂わば青年将校と言って差し支えない出で立ちをしていた。
ただその煙管は、純銀と黒壇で出来ていた。その齢で手に取るには少々高級が過ぎ、心の狭い者なら「何を若造が生意気な」と言われるような代物だった。

「原子力を喰らう怪竜」

ふぅと紫煙を吐きながら呟いた。誰に充てるでもない一言であった。
何か決められた筋書きを語るかのような軽妙さであった。

「何れ来る未来に於いて、それは確かに、完成さえ出来れば有力だっただろう」

「……なら、これは未来の生存の為の些細な犠牲と言って差し支えない」

「例えば、この田舎町一つ程度など」

ぐらり、と洋館が大きく揺れた。それをまた男は落ち着き払って坐したままであった。
洋館の半分を砕きながら、それは現れた。 所謂、ワイバーンの姿をしていた。竜の頭、蝙蝠の羽、鷲の脚、蛇の尾を持つ巨大生物。
然して、その姿は伝説上の勇壮さとはかけ離れていた。
強靭な皮膚も、鋭利な鱗も、怪力を生み出す筋肉も、腐り落ちていた。周囲にはその見た目から想像する通りの腐臭を巻いていた。
胸部には銀色の、明確に人工物である銀色の球体が埋め込まれていた。腐り切ったその姿に、それだけが鮮やかに煌めいていた。


「潰れて、然るべきだろうよ」


睥睨するは中心……この町には、広大な土地を活かした原子力発電所が存在する。
それが生みだされた理屈を鑑みれば、それがどこへと向かうかは必然と導き出される。
そうして、それはその腐った右脚を踏み出した。生物として先ず満たすべきは、『食欲』ただ一つだった。


406 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2017/07/06(木) 02:43:03 fpaXZKVI
>>405
/置きになると思いますが募集しますー


407 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/06(木) 03:05:48 9T5O.DHo
>>404

「登録……ね」

名刺を受け取りながらも、そこで青年は少し複雑そうな心境をその貌に反映させる。
さっきまではやる気満々だったというのに、いきなり及び腰になった理由はひとつ。
登録をすれば、その団体に所属することになる。個人的な何でも屋ならまだしも、
"出雲大社"なんて大きな組織でやっていけるのだろうか――?

「ああ、考えとく」

自前の頭に血がのぼりやすい性格、能力に対する不信感。不安材料はいくつもある。
それでも断らないのはやはり、人として社会に出てやっていきたいと考えているからだ。
曖昧に笑い、頷く。こうして道は拓けたのだから、次は決まっている。――踏み出すだけだ。
あとはいつ、それを決心するか。受け取った名刺の表裏を確かめると、それを懐に仕舞う。

「楽しみ、か。いいな、それも」

漫然と、特段の指向性も持たずに行き当たりばたったり生きてきた青年にとって、
楽しみ、趣味、――と呼べるようなものは、特に思い当たらなかった。
今日のように愉快な経験が得られるのならば、なるほどそれもいいかもしれない。

「ミツバは独り暮らし……なんだろ? 嫌がられても遊びにいくぜ、そのうちな」

断定口調に深い意味はない。ただそうなんだろうと思っただけだ。
それなら気兼ねなく遊びにいけるし、実際に行ってみれば、そこの空気がどんなものかもわかる。
そうすれば"自分の家"を持つかどうかの決心もつくはずだろう。そんな風に思ったのだ。

それから柚のシャーベットを食べ終えると、青年の口数は減っていき、やがては完全に黙り込む。
不思議に思われるかも分からないが――、なんてことはない。
疲労の蓄積した飢えた身体に食欲が満たされ、満足した彼はうとうとと微睡みはじめたのだった。
揺り起こされればそのまま帰路に就くだろうし、そうならなければやがては寝息をたてはじめる。
気兼ねすることもなければ、警戒の必要もない。得難い穏やかな時間を甘受して、その表情は穏やかなものであった。

/こちらからはこんな感じで〆ますね……!
/絡みお疲れ様でした。ありがとうございましたー!


408 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/06(木) 03:31:13 O7l9vAUs
>>407

「美味しいものには良い人が集まるってね」

そう言いながら、青年の様子を見て、何か温かいものを感じた
ヴァンと言う名、そして狼―――聞いて思い出すのは、ある魔獣。恐ろしさを伝承に残す、グレイプニルに縛られた彼の名
全てを滅ぼす戦いに挑み、主神を殺し、その息子に殺された獣
もし、その狼が、己の知る人と変わらぬ感性を持つ神々と、食卓に身を寄せ合えたなら

なんて、思うのだ。自分の知る限り、幸せの象徴は、人の集まる食事とその時間なのだから

だから。

「ああ。あっちの美味いものと、俺の手料理―――御馳走するよ」

そんな未来を守るために、職務と己の意地を通す。そう決めているのだから
はは、と笑って、穏やかな空気を暫し楽しむと、隣から寝息が聞こえてくる

「……おやすみ。またそのうち、ね」

そう呟くように声をかけると、店主の娘が毛布を彼の背中に掛けるだろう
代金を支払い、店主と娘に礼を告げ、明日の朝飯の用意と彼の起きたときの世話を頼むと、

「――――んじゃ、仕事に戻りますか!」

夜も更けた街に歩き出す
ゴリラ(仮)の顛末の報告に、廃ビルの後始末。やることは沢山あるから、眠るのは少し先だが
今日はぐっすり眠れそうだ。足取り軽く、夜闇に紛れて行った

/こちらこそありがとうございました!
/不必要にNPCと言うか、増やしすぎた感……!おつきあいありがとうございました、楽しかったです!


409 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/06(木) 20:20:13 q9yVNrDU
>>396

「そうねぇ…………あぁ、そうよ、”嫌なの”」

手に添えていた指がつぅ…とそれの輪郭を滑らかに滑る。目を細めて言葉を吐く。あぁ、まるで、そうだ。
好きな人を思い出すような手軽さだ。この椅子を組み上げたのは、微笑み混じりのお遊びだ。……いや、もしくは

その理由がそこまで軽くなる程に、それは手を汚していたのかもしれない。

「その停滞が、私には耐えられないの。だって私たちは人じゃない?生きているじゃない?」

「だったら、常に進化していかないと。でも、人って一つの才能を極める事しか出来ないと思うの」

唄うように言葉を吐く。対する彼女がどう思ったって、いや、そもそも他人がどう思おうが構わないとその姿が言っている。
顎に添えたとは逆の方、椅子の背もたれに触れる手が愛おしそうに、元々は胸だった箇所を撫でている。
四肢がもがれて首も無し。鍛え上げられた成人男性の既に潤いの無いパサついた肌は、それの爪で簡単に傷が付く。

「ならば私はもう終わり。それじゃあんまりにも悲しいわ」

「だから私は”奪うのよ”質量保存の法則が、才能にも当てはまると聞いたから!」

「殺してしまえばスキマがあいて、沢山殺せば一つくらい…”私に宿ってもおかしく無い”……だから、ね?」

そして彼女は最後に唇を下限の月にやんわり引いた。まなこは彼女の内面を見定める狼と同じ。
彼女のそれは人にでは無く、美味しそうな食事に向けられたようなものであり、故に、そうだ。
故に優しく、故に楽しげに、故に穏やかだ、人それを慈愛の笑みと呼ぶであろう。蠱惑的な笑みと呼ぶだろう

それはそうだ。自分へと向ける笑みが一番愛に溢れているのだから

「貴方のその、剣の才能と、気高さと、美しさとか、諸々……私にちょうだい?」

「1〜36番は大した人生でも、大した才能も無かったから…私には合わなかったの。でも貴方なら…私の世界を広げれるかもしれないの」

/遅れてしまい大変申し訳ございません。


410 : 【一刀全剣】 :2017/07/06(木) 21:51:28 pJamzVvk
>>409


「……────もう、結構です」

理解する余地など、何処にも存在しなかった。
戯言はもう沢山だと言わんばかりに、たった一言だけを告げれば、彼女は会話を打ち止める。
そして、その手を鞘に伸ばした。鮫革の荒い感触が、掌の中で握り締められる。


────────────抜刀。

軽やかな鞘音と共に、剣閃は緩やかに解き放たれ、その刀身を露わにする。
深淵の中に在りながらも、微かに届く月明かりを反射して、凶器の鋒は罪人へと向けられた。


「貴女の理屈に、これ以上耳を傾けるつもりはありません」
「ただ、ここは法治国家であり、貴女は秩序を乱す狂人に過ぎない……────だったら」

「私も、手加減はしません。この刃が斬り伏せるべきものは、此処に在るのでしょうから」


相手は罪人であり、狂人だった。其れは多くの無辜の生命を己の都合で奪い、そしてその残滓さえも玩具のように弄んだ。
あの亡骸の一人一人にどのような物語があったのかなんて知り得ない。然し、其れらは決して悪意によって踏み躙られるべきものではなかった筈だ。
奪われた生命を直す奇跡を彼女は有さない。けれども、在った筈の恐怖や屈辱を代弁することはできる。

ならば……────為すべきことは単純明快。
何の為に磨き上げた剣か、其の刃の意味は彼女自身が誰よりも理解しているのだから。


「……………─────────────はっ」

其れは正眼の構え。剣術に於ける基礎中の基礎、総ての構えの起点となる初歩の型。
その佇まいは、何処までも起訴に忠実だった────言うなればまるで教本通り、お手本のような愚直な構え。

然し思考は冴え渡り、心身共に刃の如く。
其の世界を広げる間も与えず、一刀にて斬り伏せる。
即ち是れこそ、才能とも、気高さとも、美しさとも無縁の───────極限にまで研ぎ澄まされた殺人剣。


411 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/06(木) 22:42:17 /aiLVxHw
>>410

「───────あぁ、あぁ!」

月光の残滓が漂う薄暗い路地裏に、一瞬、まばゆい程の光が溢れた様だと、それは感動した。
鈴の音よりも澄んで、鎌鼬よりも鋭い抜刀の、鞘と刃が一瞬触れ合い紡がれる音色。

その為には僅かな動きの淀みも許されない。よく手入れをされた獲物で、幾重にも完璧な動作を繰り返し、その──
身体に、筋肉に、神経に、脳髄に刻み込んで、ようやく、奏でられる美しい剣劇音楽に、それは、ゆらり、と。

「なんて、綺麗な立ち姿」 

立ち上がり、眺め、喝さいを送るは目の前で殺意を振りまく彼女に向けてだ。

正眼の構え、切っ先を愚直に向けた全ての元となる構え。その意味合いは単純に隙を作らない、だけでは無く。
目の前の敵を、悪を、真正面から堂々と!小細工などなく立ち向かい、叩き潰さんという強い意志という物
彼女のそれはまた普通のようで”特別だ”その構えに僅かな綻びもなく、その視線に僅かな揺らぎすらも無い。

ゆえに

「単純な構えだけど、私にはわかるわ。普通の子なら”詰まらない”というだろうけど、ぴたりと収まるその姿。
───剣は専門外。でも理解できる。。貴方は自身の人生を、どれほど剣に費やしたのかを」

それは彼女を褒め,称える。そして、心から彼女を欲したのだ。


一歩、また一歩と彼女へ肉の階段を構成する歪んだ過去形をぐちゃり、ぐちゃりと更に壊しながらふみ潰しながら歩み寄る。

腕を僅かに広げるその姿は、子供が飛び込んでくるのを待つ、母親のそれと、顔のほほ笑みを合わせてそう見える。

彼女とは違い、構えでもない姿。心からの賛辞を贈るそれの、口の端からは、堪え切れぬといわんばかりに、ぬらりと涎が垂れていた。


412 : 【形意神拳】 :2017/07/06(木) 23:02:15 19/vzaCU
朝方の、駅前の小さな煙草屋。
通勤時を迎え革靴の雑踏で賑わう通りのなか、それらに埋もれて留まっているのは一揃いの下駄。
かの持ち主は、武州の人民服のような質素な道着を身につけた、髪の長い女であった。
足を止め店先の本を熱心に読み耽る姿は少し前から見られるもので。店の主人の投げやりな受け答えから、常連でないのは明らか。
そも平均よりも健康的なその体躯は嗜好品とは無縁に見えよう。何より女にはこの街特有の、能力者らしい匂いや振る舞いが一切無かった。

「この人。まだ若いのにすごいね」

女が目を落としているのは一冊の週刊誌。その中の大見出し、少し前に『ワイルドハント』という名のギルドが襲撃されたという記事だ。
内容は、その時反撃、討伐にあたった剣士のインタビューを元に書かれているという。賞金稼ぎという、昨今は珍しくもない職業戦士に対して、女の声には素直な称賛の色があった。

『それ以上は出すもん出してから読んでもらいてえもんだなぁ。』

対して窓口に座る赤ら顔の主人の声は、朗らかながらも多少の苛立ちを含んだもの。
何せ他の客足も途切れず来ているので、小さな店構えとしては少なからず商売の邪魔になっている。それは看過できるものではない。

「ごめん。買います」

後ろを見て漸く悟った女は、本をぱたんと閉じてレジに置く。
次いで小銭が置かれるものと思ったが――――中々出てこない。
訝しげな主人を尻目に、暫くポケットを漁っていた女の一言。

「財布。落としたかも……?」

ぴしり、と主人の禿げた額に青筋が浮かぶ。
短気なのだろう、若い頃は相当ならしたと見えて、丸太のような鉄拳が宙を走る。
心持ちすまなそうに両手を合わせた女の顔へ飛んだ其れは、そのままいけば一秒もしないうちに痛快な音を響かせるだろう。


/今熱い話題に乗っかりつつキャラを思い出すテスト。
/置きになってしまいますが、それでも宜しければどなたでも


413 : 【一刃潜瞬】 :2017/07/06(木) 23:05:20 6Ss9ekzw
>>346

――彼は頑固で、正義漢で、そして自虐者で。
彼の歴史を彩るそれらは血そのものであり、彼によって生み出された犠牲によるものなのだろう。
……だが、話の途中からこの女は笑いを堪えるような顔になっていた。


というのも、女は嘗てから上官を嫌い、束縛を嫌い、世の常から酷く遠い所で暮らしてきた。
今も暗殺者という常道を大きく外れた仕事をしている訳であるし、その点に置いては男と同じだろう。
だが、決定的に違うのはその正義感が向かう“結果”だ。女にとっては唯の金、男にとっては代えられないモノ。


「っぷ、あっはははははっ!!」

男が話し終えたその時、大水が堰を切ったように笑い始めた。
我慢の限界、とでもいうのだろうか。ともかく、外見のごつい男がメソメソする姿を目にするとは。
ひとしきり笑い終えた後も小さく笑っているようであり、やがて男の方を向いて――

「あー、久々にこんなに笑ったものだ」
「まさか、お前のような男の後悔を一瞬たりとも聞くことになろうとはな」

話させた原因になったのは女ではあるが、それは気にしない。
この笑いを彼がどう思ったのかはさておき、女は彼の決意を確かに聞き留めた。


「お前の決意はきちんと聞いたさ。随分苦労しているようだ」
「……本当は気乗りしないんだが、こいつをお前にやる」

手に取ったのは一枚の紙切れ――のように見える名刺。
しっかりと本名が記されたそれは、彼への信任の証として渡されたものだ。

「何かあったら知らせろ。金さえ貰えれば、無理じゃない限り“殺してやる”」

その代わり、それあんまり広めるなよ?と意地悪っぽく口にして。
彼らのギルドの手助け、ということにしておこう。……勿論、金は頂くが

――女は、彼と共通した所があると思った。
市民をも巻き込んだ戦争、自己否定の嵐、そして暗殺という外道。
死んでしまえば間違いなく彼と同じ道を辿るだろう、と口元に笑みを浮かべた。


414 : 【一刀全剣】 :2017/07/06(木) 23:13:15 pJamzVvk
>>411

只、我武者羅に鍛錬した。力を渇望し、其れを手に入れることに総てを費やした。
その根底にあるものは後悔。あの日の自分に力があれば、悲劇を覆せたかも知れないという想い。
然しこの身に超然たる異能は宿らず、代わりとなるだけの天賦の才覚も有さず。
だからこそ────剣を振るい続けた。悲劇に立ち向かうだけの力に手を伸ばし続けた。

その剣戟は歪である。只、基礎のみを鍛え続けた結果として、達人然としていながらも基礎に忠実な型。
守破離という思想がある。武術を学ぶ者は先ずは型を"守り"、次に型を"破り"、そして最後には型を"離れる"───在るべき成長の姿。
然し、彼女の型に其れはない。何処までも基礎に忠実で、其れを守り続けている。其れこそが彼女の極めた境地に他ならない。


「………────────」

既に言葉を交わすつもりはなかった。在るのは只、眼前の敵を斬り伏せるという純然たる殺意のみ。
刀を抜いた瞬間から、彼女の思考は切り替わっていた。憤怒、恐怖、敵意───そして正義さえも置き去りにした、剣士としての思考。

間合いを計りながらもその場を動かず、敵の動きに注視する。
敵は徒手空拳、然しこの世界に置いて目に見える武器だけが驚異の総てではないことは周知の事実だからこそ、彼女はその瞬間を待ち続ける。
一歩、また一歩────彼女は近づいてくる。まだ、まだだ、好機は一瞬。一太刀にて終わらせる為にも。


一歩、また一歩、そしてまた───────────────その刹那




「………………───────────疾ッッッ!!!!」


彼女の一歩が地面を踏み締める、その直前の僅かな間。
解き放たれた刺突は愚直なまでに直線的で、然し呼吸という隙間を縫って放たれた不意打ちの一撃。
初撃にて放たれる最速の刺突、その狙いは云うまでもなく────彼女の首に違いなかった。

もし其れが直撃したならば、貫通を通り越して首から上を吹き飛ばすことさえ有り得るだろう。
其れは只の人間が、只者ではない人間と戦う為に手に入れた剣戟に他ならない。
最も────────その刃が本当に通用するのかどうかは、彼女にさえも解らないのだったが。


415 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/07(金) 00:08:10 lsn77V7g
>>414

「─────────────────」

呼吸が吐き出される瞬間、それのつま先が地面に押し込む瞬間。秒を無数に分解した弾指とも呼ばれる一欠片の単位。
その瞬間に全精神力を注ぎ、少女が解き放つの全ての無駄を排除した、予備動作が存在しない正確無比の一撃だ。

それは限界まで引き絞られた弦から解き放たれる矢の速さ、それは嵐の時に水路が崩壊したダムから放たれる水流の強さ。
捉える事すら難しく、切っ先が捉えれば肉など容易く吹き飛ばす必殺の一撃。その一撃をそれは、それの瞳は”捉えていた”

”捉え”僅かに身体の”半身を切る”。その動作のみで、死の刃が突き刺したのは、裏路地の濁った空気とそれの首の薄皮一枚となる。

「──やっぱり、貴方の剣はとても素晴らしいけど、でも違う。」

弾指の一撃が時間を圧縮し、ゆっくりと時間が戻ってく中、剣風に髪を揺らしながら、それはやはり微笑みながら語りかける。
月光が映すその体は半身が切られていた。その右手は同時に引かれ。その手は三本の指が弓の鏃の如く立てられ、形作っていた。

「本当の突きとは」

彼女の攻撃に合わせてのカウンター

ただの快楽殺人鬼が繰り出すにしては、異常な程に洗礼された”素手による突き”が刀をなぞる様に彼女の心臓を狙うであろう。
単純な素手による攻撃であるが、指先が風を切り裂き生む音は鉄の刃のそれと変わりない。皮を貫き、肉を割き、骨を圧し折る

槍の如き、鋭い一撃だ。

「──────こうするのよ」


416 : 【不撓鋼心】 :2017/07/07(金) 00:22:45 A3ykfFIA
>>413

……笑う女を前にしても、彼の表情は動かなかった。
まるで厳めしい彫像のような顔つきのまま、あらゆる評価を受け止めると言わんばかりに。

なぜこの女が笑っているのか、その理由は理解できなかった。
できなかったがだがしかし、予測を立てることは簡単にできた。

そう、つまり……滑稽なのだろう、と。
今までさんざん殺しておいて何をいまさら綺麗事をと、殺人者がさもまっとうな面をしているのが腹の底から可笑しくてたまらないのだろう。
結局のところは表面ばかりをそれらしく取り繕っているだけなのだろうと……そのように断じて、まるで道化と嘲笑っている。

無理もない。いいや当然のことだ。単なる虚言と取られてもおかしくないことを口にしている自覚はある。
こんなものは甚だ非現実的、殺人鬼が自己を正当化するための常套句、他者を謀り陥れるための単なる手段に見えるだろうとも。
実際、自分はそれだけのことをしてきたのだから。この手が無辜の血で染まっている以上、如何なる罵詈雑言も然るべきもの。反論の言葉はないし、否定する気もない。

だがそれでも構わない――言葉だけなど薄っぺらい、ならば行動で示すのみと。
覚悟はとうにできているから不動。いかなる対応にも揺るがずに、厳と平静を保ち続ける。

「…………」

そして……差し出された“暗殺者”の名刺を、しばし逡巡した後に……。
無言のうちに、受け取った。これがごく個人的なことだけを考えるならば受け取ることはなかったろうが、脳裏をよぎったのはギルドのこと。
ワイルドハントは未だ黎明期。しかし世間がそれを慮ってくれるほど甘くないことは先日痛感している。
先にどんな脅威が待っているかも定かならず……ならばこそ、取れる手段は多いに越したことはない。
一瞥の後、懐に仕舞い込む。そしてテーブルに紙幣を数枚置いて、もう話すことはないとばかりに立ちあがる。

「……ならば、俺の要件は終わりだ。リーデルシュタイン、お前の手は出来得る限り借りたくはないが……“その時”があるのなら、よろしく頼む」

彼にとって重要なのは彼の暗殺者が無力の民を食い物にするケダモノか否か。
彼女がそれらを殺さない、殺したことが無いと言ったのならば、それで用事は済んでいた。
その眼に嘘は無いように見えたために……もしも、万が一、見誤っていたのならそのときは。

立ち去る歩みに澱みはなく。その背中は雄々しい力強さに満ちていた。


417 : 【一刀全剣】 :2017/07/07(金) 01:00:02 kH2I09Ss
>>415


「………────ッ」

────────防がれた。
その一手で敵の力量は充分に理解した。恐らく、同等か、それ以上。

束ねられる三本の指が、どのような得物よりも鋭利で致命的な凶器に見えた。
その直感は気の所為ではない。経験則が鳴らす警鐘は、其れが致死を齎す一撃であると告げていた。
ならば次に取るべき行動は防御一択。刀を引き戻し、姿勢を立て直した上で受け止める。
其れは、通常ならば間に合わない行為。但し彼女の場合は────間に合わせるだけの技量が在った。


「……まだ、まだ────………」

其れは正しく槍の如き一撃。刺突に特化した得物が可能とする絶死の一刺し。
但し────それが命中する寸前、その直線軌道を横から刃が叩き弾いた。矛先は心臓に届かず、脇腹を掠めるのみ。


其の勢いのままに斬り返す。突き出された腕を斬り落とすように放たれた一撃は、然し其れが人の腕の硬度という前提のものにある。
同時に地を前に蹴って、後方へ飛び退く。退きながらの一太刀は致命傷を与えることはないだろうが、先ずは仕切り直す方が優先だ。
そして、間合いを確保したのなら────再び、刀を正眼に構え直す。両者の間合いは約五、六歩分と言ったところ。


「……確かに、鋭い一撃です。その一撃に勝る業を、未熟な私は有さない」

其の瞳は総てを捉えた。其れがどのような一撃であるのかを理解した。
極限まで基礎動作を極め、人体理解を深めた彼女だからこそ可能な『観稽古』だからこそ、其れが一つの極みに到達した業だと知る。

どれだけの修練を重ねて、どれだけの研鑽の果てに、其の業を手に入れたのだろう。
其れが異能ではなく、人の業であるからこそ────一人の武人として、感嘆の念さえ抱いてしまいそうになる。
だが、自分は武人である前に一人の警官で有り、彼女は武人である前に一人の殺人者だ。
なら、其の感情は不要なもの。如何に素晴らしい業であっても、其の使い手が悪人であるのなら。


「然し、優れた業も悪人が振るうのであれば────価値など、ありません───……ッ!!!」

再び踏み込み、間合いを詰める。
同時に刀を上段に掲げれば────次の一太刀が人体を両断し得る袈裟懸けであることは明白だろう。


418 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/08(土) 17:54:29 cMzoq59k
>>417
彼女の脇腹を掠った指先から、つぅ…と滴れる彼女の血は途中、刃により”薄く斬られた”傷から溢れる赤と入り混じる。
それは距離を取りて構え直し、気迫の後に地面を蹴り上げた餌の姿を眺めながら、舌先で、地面に溢れかけるそれを舐めた。

「───ふふ、そもそも才能に、善悪なんてないじゃない?」

上段に振り上げられた真鉄の刃が、路地裏の遥か上で咲く満月という石を二つに割った。影がそれの顔に落ちる。
だが、それは慌てる事もない。彼女が構え、踏み込み、振り下ろす瞬間には既にその場にその姿は無かった。
”跳ね飛ぶ様に後ろに下がった”のだ。月を跳ねるウサギの様に、その手が引き抜いた赤い何かを、よっとと言う声と共に。


投げつけたのは、丁度彼女と同じ位の大きさで、でも彼女より幼い位の男の子の亡骸であった。
泣きじゃくったまま首を折られた黒髪の子供。この場にしては”何も加工されていない”不自然な程に放置されていたものだ。

「彼の様に、どう上手く”使うか”が、とっても大事だと思うの」

彼女が刀を振り下ろすタイミングで投げ付けられた肉の塊は、
言わば彼女の様な者への心理的な揺さぶりと、目眩しを兼ねて用事したものであった。

/体調を崩し寝込んでおりました。遅れまして申し訳ございません。


419 : 【羽衣が微笑む穹天の斜陽】 - Lever du Soleil - :2017/07/08(土) 19:07:56 psF0GxmM
>>378

「働くぅ?」

旅人は口を尖らせる。

「何の仕事かわからないけれど、私は、気ままにあっちこっち行ってるから、ね。」

草原に吹く風のように、何処から来たのか、何処へ行くのか、わからない。

「"我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか"って、ね。」

遥か彼方まで続くような草原を背に、少女は誘いを断った。
探求も冒険も無い旅路の最中にある今は、他の仕事を請け負う訳には、いかない。
これは消化試合だから。

「でも、そうだね、必要な時があれば、手伝ってあげる。
 おにぎり一つ分の仕事を。」

おにぎり一つにどれだけの価値があるかは、湿気を吹き飛ばすようなこの爽やかな風だけが知っている。
少女もそれを、知らないのだ。


/連日お返しできなくてすみませんッ


420 : 【一刀全剣】 :2017/07/08(土) 22:47:12 d71Ek27g
>>418

その瞬間───────彼女は刀を止めた。

そして投擲された亡骸を、彼女は両腕で抱き止める。
其れは既に生命活動を停止している。例え手を伸ばしたとしても、其の命は救われない。
其れでも────斬り払える筈がない。冷たくなった亡骸の顔を観たのなら。

苦悶の表情のまま、死後硬直を迎えた幼い骸。
果たしてどのような絶望を、どのような苦痛を味わったのだろう。
どれだけ────怖かったのだろう。其れを理解することも、救うことも叶わないけれども。



「……────────」


瞬間────────彼女の姿が忽然と搔き消える。
否、消失したのではなく、そうと見紛う程の速度によって地面を駆けた。
縮地等と形容される高速歩法────だが、其れだけではない。其の歩みは人の域を逸脱した脚力なくては成し得ない。


心理的な揺さぶりは確かに成功した。
そしてその結果は、彼女の全力という形で放たれる。


肉体のリミッターを外すことによる超人の域にも到達し得る筋力行使。
刹那の間に辿り着いたのは、斬り伏せんとする敵のその真後ろ。
微かに風切る音を聴き逃せば────次の瞬間に訪れるのは、一太刀によって首を跳ね飛ばされる結末のみ。


//了解しました。ただイベントが始まったので、これからこちらの返信が遅くなるかもしれません…


421 : 【一刃潜瞬】 :2017/07/08(土) 23:00:30 6aRhw3yg
>>416

彼がその名刺を懐にしまった時、ヨハンナは小さく口角を上げた。
仕事が請け負えるかもしれない上、これでワイルドハントの“狩りの手”から逃れられる。
結果的に大きな利益を得ることが出来た。偶然にもありがたいことだ。


「そういや、お前の名前をまだ聞いていなかったな」

差し支えがなければ聞いてもいいか、と彼に名を聞いた。
今後依頼を請け負うことになるであろう相手の名前だ。聞いて置かなければならない。
名前を聞いたのなら卓の上に置かれた札を握り、レジの方へと向かう。


「やれやれ、見た目も中身もあれ程の堅物とはな」

正義感の塊のような男だ。見ているだけでもヨハンナからは“気味が悪かった”。
なぜあれだけ他人のために自己を犠牲にできるのか。それが分からなかったからだ。
だが、そこには彼なりの理由があるのだろう。聞いておかないほうが良いと思い。

「お陰で妙な手間を取ることもなくなった。今日はそれだけで十分だ」

胸ポケットから煙草を取り出し、火をつけた。
喫茶店の前に白い煙が吐かれ、空中をふよふよと漂って何処かへ消えていく。
また空をぼうっと眺めながら、ただ煙草を吹かした。


422 : 【騎士三誓】 :2017/07/08(土) 23:09:49 6aRhw3yg
>>360

「ええ、ありがたく頂戴します」

彼から宗教の類の物であろう本を受け取る。
読み方がわからぬ故何らかの詞を唱えることは出来ないが、捧げ物としてでも良いだろう。

やがて女騎士は自らの手のひらを大剣で僅かに斬る。
暗赤色をした血液がポタ、ポタと地面へ垂れていく。騎士なりに考えたやり方だった。
“騎士の血は騎士の血で洗う”。彼らの怨念を、晴らしてやらねばならない。


「この地に眠る騎士たちよ、私は貴公らを救う者である」
「貴公らに代わり、私がこの地を護り、そして継いでいく。心配せずに逝くが良い」

その刹那、剣から黒色の何かがぼんやりと浮き出て霧散してしまった。
呪われていた剣は銀の剣へと還り、そして邪な魔力はいつしか引いていった。
――この地に縋っていた騎士は、今解き放たれて天へと向かった。そういうことにしておく。


「やれやれ、お疲れ様でした」
「ご迷惑をおかけしましたね、最後までありがとうございました」

彼が居なければ、最後の“儀式”だけでなく、キマイラとの戦闘においても不利に立たされただろう。
感謝の意を伝えると、すぐに踵を返し森の外へと向かおうとする。
もと来た道を戻れば、森の外には出られるだろう。彼がどうするかはまだ聞いていないが。


423 : 【執事無敗】 :2017/07/08(土) 23:36:18 HhPEjSMw
>>422

──お疲れ様でした

その言葉を聞くと彼はこう言った。

「……そのようなお言葉は不要でございます」

更に続ける。

「私は執事ですので」

そして彼はこう言った。

「女騎士様、私の方こそ感謝をする側でございます、なぜならば貴女様が居なければ今頃私はキマイラの餌になっていたでしょう」
「……では失礼します」

そうして彼は元来た道を戻って行った──

//これにて〆でお願いします
//ありがとうございました


424 : 【不煌翼使】 :2017/07/08(土) 23:44:52 dqAIJX.6

「……」

ある都市部から離れた森の中
森の中心に存在する巨大な湖の辺りに、一人の女が居た

女は粗末な灰色のワンピースを着ており、どこか奴隷商から逃れてきたような印象を受けるだろう
実際その通りなのだが。髪は乱れているが、多少の手入れをした様子があり、出来る限り小奇麗にしているようだ

「これから、どうしたらいいのでしょう……」

表情は途方に暮れており
岩場に座り、素足を湖に付けながら、森の木から採った野生の林檎を両手で齧っていた


425 : 【不撓鋼心】 :2017/07/09(日) 00:13:03 cuFFkmtU
>>421

――メルヴィン・カーツワイル。

それだけを言い残して去っていった男は、予定より重い鍛錬を己に課していた。
不意の遭遇によって費やしてしまった時間、無駄であったとは思わないがその分使えたはずの鍛錬時間は確実に過ぎ去っていった。
ならばつり合いが取れるだけのトレーニングを行わねばならない。我が身の力は未だ足りず、休めば休んだだけただでさえ小さすぎる戦力がすり減っていく。
許し難い、看過できない。前へ、前へ、ひたすら前へ前へ前へ……進まなければならないのだから、後退も停滞も断じて許容しない。

……そう、休んでいる暇などないのだから。
既に男の脳内では戦闘シミュレーションが行われていた。
こう動かれたらこう返す、次の動きはこうで、こうされたらこうする、次は、次は、次は……。
単純で、誰でもやっているイメージトレーニング。だが密度が違う……すでに脳裏では三桁を超える相手と自分の死体が転がっていた。
その、相手とは――。

――トレンチコート・ガール。
いつか“その瞬間”が来てしまったときに自らの手で処断を下すべく、男は一心に血塗れの未来予想図を描いていた。
むろん彼の者の戦闘方法など分からない。暗殺者である以上そうした手管は最も隠したいものの一つだろう。仮に探っても簡単に見つかるとは思えない。
だがしかし実際に相対し、観察を行った結果として予想される戦闘スタイルを元に、そこから無数の修正を加えて仮想戦闘を行っていた。
その大半が無駄に終わるだろうことを分かっていながら……しかし、たとえ僅かでも勝率が上がるのならばと手間を惜しまず。

肉体と精神の両面を磨き、磨き……いずれ来るかもしれない未来に備えて、ただ一心に刃を研ぎ澄ませるのだ。


//こちらからは以上になります!
//体調不良をおしてまで続けてくださってありがとうございました……!楽しかったです、お疲れさまでした!


426 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/09(日) 01:57:09 893FBn4.
>>420
彼女の疾風の如き高速移動から放たれる首への薙ぎ払い。肉体の限界利用によるその一撃
人はそれを死と呼ぶであろう。燕ですら気づく事もなく斬られる高速の一撃、───それを。

それを、強引にも止めたのは、3本の指であった。

「………使い方次第よねぇ」

首筋まであと数センチまでの距離の刃を包み握ると同時に、強引に刃を僅かに上に捩り
刃としての軸をずらし、指を犠牲にする事も無く、止めたそれは表情も変えずに言う。

「貴方は自身の才能を磨くのはとっても上手だと思うわ」 

「でも」

「どれだけ不意を突いても、そんな殺意塗れの刃じゃ。私みたいな達人(ろくでなし)は殺せない」

攻撃を止めた後の指には対した力は籠められておらず。彼女が剣を引けは直ぐに離れるであろう。
自身の瞳のすぐそばにある刃の、世界を僅かに反射する光を眺めながら、それは言葉を続ける。

「道具(才能)を磨いても使い手が上手に使ってあげないと───あぁ、そうね」

「さっきの子は貴方が殺したようなものよ。だってほら、ちゃんと優れた道具があるのに」

刃映るそれの唇は、楽し気に、嗤っていた。

「私みたいな物一匹、殺せてないのですも……ふふ、勿体ない勿体ない」


427 : 【一刀全剣】 :2017/07/09(日) 16:44:49 hw7y/rP.
>>426


「……────────ああ、そう思っているなら大間違いだ」

「私が、只の殺意だけでこの刀を振るっているとでも。違う、この刃に籠めた意味は、貴方には決して理解し得ないものだ」

言語による意思疎通など最初に不可能だと断じた。ましてや相互理解など以ての外。
この敵は人の命だけでなく、その尊厳さえも踏み躙った。ああ、確かに殺意は充分に籠っているし、それを否定するつもりもない。
然し、忿怒のみがこの刃の総てではなく。その初志は彼女が初めて刀を握った日に抱いたものが変わらないまま。


「……────意趣返しはここからだ────────受けてみろ」

前提として彼女は今の一太刀を────踏み込まずに放っていた。
重心を動かすことなく、腕力のみで放った一撃。其れは即ち、踏み込みと同時に放たれる次の一太刀へと紡ぐ為のものでおり。

次の瞬間、刃が捻れるような軌道を以て、固定する指を弾くと同時、更に前へと突き放たれる。
これまでとは比較にならない程に疾く鋭く、加えて限りなく零に近い距離から解き放った、正真正銘全霊を籠めた一撃。
此れこそが彼女の本命────そして自らを達人と呼び、骸になった者達を嗤った彼女に対する返答。


その業を彼女はよく知っている筈だ。
徒手空拳でありながら、槍の如き刺突を可能とする技術。其れを成立させる為に必要な肉体運動、呼吸、思考、論理、その総て。
其れと同じものが、この一撃の根幹に存在していた。其れは決して偶然などではなく、先程の一度の立ち合いで盗み得たもの。
観稽古────即ち、観ただけでその業の全てを理解してみせ、己のものとする。其れこそこの剣が至った極み。
そして、其の業を枷の外れた肉体によって、本来のものと同等か、それ以上の瞬間威力を誇る一撃へと昇華し────躊躇いなく解き放った其の刃は。




「─────────────────────"映し刃"」


鋼鉄をも貫き通す、超速の剣尖が狙うは只一つ。
愉悦を湛えるその瞳を、其の先に在る脳髄ごと一刀にて貫かんとする為に。
銃声と聴き間違う程の風切音を伴って、刀は一寸の歪みもなく疾駆する。


428 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/09(日) 18:12:00 893FBn4.
>>427
/失礼、状況的には全剣さんは真後ろから剣を振るっていたと思っていたのですが…今のこう立ち位置的なものを教えて頂けるとありがく


429 : 【一刀全剣】 :2017/07/09(日) 18:24:08 hw7y/rP.
//瞳の側で指で受け止めたとあったので、振り向いて指で止めたものだと思っていましたが…
//すいません、>>426の時点でどういう状況なのか説明していただければ幸いです…


430 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/09(日) 18:29:01 fc5FIpcE
>>429
/振り向かずに白刃どり…みたいな感じでしたね…ふむ、書き直すのも大変だと思うので、振り向いていた感じで進めさせていただきます、


431 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/09(日) 20:00:08 KsYUaigg

『なあ、ちょっと一緒においでよ、ね、ね?』

夕闇の迫った公園。木陰に囲まれたベンチで、一組の男女が座っている
男は女の腰に腕を回し、優しく見えるふうに、確りと捉えて、迫っていた
こういう光景は珍しく無いだろう―――その年齢差さえなければ

「えー、おじさん、怖ぁい……?」

社会に出て十数年たったであろう男と、年端もいかない、まだ学校に通うような見た目の少女
その組み合わせはあまりに異質で、その雰囲気は間違いなく親戚や親子ではない
ねっとりとした視線を送る男と、無邪気に遊ぶように返す少女

『大丈夫、ご飯も食べよう。好きなものごちそうするよ?ね?』

鼻息荒く、グイグイと腰に回した腕を引く男
捕食者と被食者―――そう感じさせる構図だ。ただ、違うのは

「えぇー、本当にぃ?」

捕食者の目をしているのは少女というところだ。しかし、男は夢中で気づかない
自ら蜘蛛の巣に掛かり、糸を首に回しているという事実に

傍から見れば誘拐一歩手前の構図。この光景を目にした人は、何を感じるだろうか

/>>424とどちらか募集です


432 : 【重層剛筋】 :2017/07/09(日) 21:11:41 PqFK6nII
>>431


「――なにやってんすか」

ぼそりと、街灯から声がとぶ。
次いでのそりと、その柱が動き出した。
否、確かにそれは大きかったが実際はただの人であり。
自らが隠れていた街灯から出てきて、ベンチの二人に長い影を落とす。

「なにやってんすか、ミスター。」

目前まで歩み寄るまでもなく、見下ろすそれは、男の横に座る少女と対極の存在だった。
でかくて、かたそうで、愛想のかけらもない。
その“女”は、現れたときと同じ言葉を、平淡な口調で男へ向けて呟いた。
そう、用事があるのは男の方なのだ。

「警備を置いて出歩かれると、困るんすけど」

どうやら女は、この男の付人の立場らしい。探した挙げ句の疲労と困惑が、口元に表れていよう。
たしなめるような言葉を紡ぎながらも、何故か少女の方は見ないようにしている。
だが、彼の行い自体は咎めない。
黙殺ではない、分かった上で黙認しているのだ。
たとえ男がその場で行為を再開しようと、眉一つ動かさない。
そんな雰囲気があった。


/変則的な絡み方ですが、宜しければ……


433 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/09(日) 21:28:28 KsYUaigg
>>432

内心でチッ、と舌打ち
どうやら面倒な雄に目をつけてしまったらしい。「食事」をしようと適当に狙ったのが仇となった

男は咎められたのに少し興を削がれたような表情をして

『今は取り込み中だ。見てわからんかね?わかったらさっさと人払いしたまえ―――もしくは、』

突然。男が少女の口に腰に回していない方の指をねじ込む。奥まで突っ込んだそれは、確かに声を発する事を止める
流石に少女も驚いて、んんー!というくぐもった声を漏らす

『手伝いたまえ。面倒事は任せるぞ?』

そう言って少女を抱え上げる。年齢に比べても軽い体はヒョイと持ち上げられ、男の腰辺りに抱えられる
有り体に言えば誘拐だ。しかしこの男にはもみ消せるだけの権力がある

(めんどくさいけど―――餌が増えたって思えばいいかしらね)

少女はショックで気絶した「フリ」をする
確実に獲物を仕留めるために、演技を、と
目の前の女性も"獲物"と認識して―――機をうかがう


434 : 【羽衣が微笑む穹天の斜陽】 - Lever du Soleil - :2017/07/09(日) 21:30:06 .R4Hgjxo
>>378
/>>419でお返ししてますです。気づいてないかもなので、念のためッ


435 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/09(日) 21:39:52 KsYUaigg
>>432
/いえいえ。面白いです!


436 : 【飛燕二式】 :2017/07/09(日) 21:43:58 hL8AF6AI
>>419

「ジョークだよ! こんなので雇えると思うほど馬鹿じゃねぇよ」

明るく笑って見せる。
しかしもし相手が「うん」と言っていたなら、間違いなくそのまま引き抜いていた。
個としての強さも、組織としての強さも貪欲に追及する。そういう男だった。

「見つかるといいな、答え」

自分の今現在ツーリングをしていただけに、旅に出たい気持ちは解る気がする。
旅に人生を費やす事を、時代遅れとか超然だとか思う事はない。
彼女にとってこの旅が、自身の修業のように人生を賭けるに値する問題なのだ。そう感じた。

「んじゃ、困った事があったら此処に来い。サービスしとくぜ」

財布から取り出したのは、『ワイルドハント Leo=Leonard』と所在地が書かれた名刺。
草の根活動というか、営業もちゃっかりしておかないと困るほど経営は不振寄りだが、ホームレス改め旅人相手に料金をふんだくるつもりは無い。

「それと、何時まで此処にいるつもりだ?」

辺りに何もない、公共交通も無いこの廃屋が目的地という事はあるまい。
近くの街まで乗ってくか?そう尋ねる。


/すいません、お返ししておきます!


437 : 【重層剛筋】 :2017/07/09(日) 21:46:03 rwhyL7O6
>>433

「こんなことでいちいち御自身が動くとは、考えてなかったもので」

この手の権力者は座して動かず、手足の代わりに下の者を使って欲しい物を労することなく手にいれる。
彼のように自ら略奪に走るのは酔狂なと呼ばれるものだ。
苛立った声にも構わず、男の突然の凶行にも、女の方は落ち着いたもの。

「――車、回してきます」

た、た、たんと体躯に似合わない素早さで消えた。
勿論居なくなったわけではない。言葉通り、数秒と待たず共に公園内に黒塗りのバンといういかにもな其れが到着する。
人目を引かぬようにか、電気自動車でかつライトも消しているという周到さだ。
この手の汚れ仕事に慣れきった――――という穢らわしい事態にも無言、女はうろんな眼差しをサングラスで隠し、後部座席をボタン操作で開いた。


438 : 【羽衣が微笑む穹天の斜陽】 - Lever du Soleil - :2017/07/09(日) 22:11:16 .R4Hgjxo
>>436

「ふふ、ジョークか。真に受けちゃった、よ。」

親指で弓のスイッチを押すと、それは素早くひとりでに折りたたまれた。

「実は私の今のも、ただ知ってる言葉を言ってみただけなんだ。
 本当に何にもないんだよ、本当に。」

持たざるものは、どこか儚げな雰囲気で、はにかんだ。

さて、名刺を受け取る。そこに書かれた文字を小さく声に出して、読みあげた。
"ワイルドハント"。

「レオさん、うーん、今更だけど、初めまして。

 私は、名乗れるような名なんて無いから、まあ、適当に。」

前髪をくりくりと指先でいじりながら、名刺を懐にしまう。

ここにいつまでいるのかと尋ねられたら、少女は廃屋の方を見て、あー、と間の抜けた声を出す。
いつまでいようか。いつに来たのだったか。これでは、自分のジョークと同じではないか。
どうしようかと悩みかけた矢先、同乗の誘い。"わお!"思わず声をあげる。

「それは、ジョークじゃないよね?」

にやりと、ちょっと意地の悪い笑み。もちろん、嬉しさも添加されて、おります。

--------------------------------------------------------------------------------

相手がそのまま促せば、少女は一緒に乗せてもらうだろう ―― バイク!初めて!


439 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/09(日) 22:13:20 KsYUaigg
>>437

『そうだ。お前らのようなものは俺の動くことを読んで動け。そうでなければ存在価値なぞ無い』

高飛車な態度のまま、顎で動かすことは慣れていた
こんな行為すらこの男には「よくあること」で

そして運び込まれる少女と男。後部座席に座り、急ぐように扉を閉める。余程早く「遊び」たいらしい


「くふっ」

笑い声が小さくした。

個室になった後部座席は完全な密室。つまり、猫を被る必要もない
捕食

―――――――――

車が次に止まり、席が空いた時
空いた扉を背に、何かを自ら股間に押し付けるような姿勢の、ズボンと下着を脱いだ男が見えるだろうか
しかし覆いかぶさったような「姿勢」のだけで、実態は天井に添えた蜘蛛の糸で姿勢を作らされているだけなのだが

ただ、男は既に絶命していて。
そして捕食者たる少女は―――男の向かい側のシート。扉の死角で、蹲っていた


440 : 【飛燕二式】 :2017/07/09(日) 22:43:16 hL8AF6AI
>>438

「リ・オ! 次は間違えんじゃねぇぞ!」

リオ=レナード。英語表記だとLeo=Leonardとなる。
リオとレオ。レナードとレオナルド。姓名どちらも二つの読み方が出来る綴りのため非常に紛らわしい。
特にLeoLeoと同じ綴りが二度続くのが両親が自分の名前で多少遊んだ痕跡だと思っているため複雑な気分になる。

「じゃあ、乗れよ、アーチャー」

名前が無いなら好きなように、特に思いつかないので弓を使うアーチャーと言う事で。

--------------------------------------------------------------------------------

本来女性を背後に乗せる事はあまり得意ではないが、マントで身体を隠しているお陰で緊張する事なく街まで来れた。

「さて、この辺りでいいか?」


441 : 【重層剛筋】 :2017/07/09(日) 22:44:23 rwhyL7O6
>>439


始まった、金持ちの悪趣味な道楽。
耳の神経を意図的に遮断して、運転に集中する。
興を殺がぬよう、暫くは走っていた方がいいだろうか。ぞっとしない事を考えて。
ふと気づく。やけに静かだな。まあ不快感が無くて結構なことだ。
電気自動車のタイヤが道路をする音だけが流れる時間――――


それからおよそ90分。
わざとらしいまでに時間をかけて、バンは目的の豪奢なホテルに到着する。
着きましたよ、と呟いて、エンジンをきり。ノックして扉を開ける。

つんと鼻を突く臭い――――それは覚えがあった。

「くそっ」

そんな呟きが聞こえたか、誰一人降ろさぬまま、即座に扉が閉められる。
間もなく車は、再び走り始めるだろう。ホテルに一度も入ることなく外へ。
スモークが張られた防弾ガラスからは、暗い夜の景色は判然としない。
後部席に一人と一つを乗せたまま運転手の女はハンドルを握る。

バンの前後をしきる壁には、連絡用の小窓がある。
それは後部座席からでも開閉出来るものだ。
会話をするつもりのない女からは、一切開ける気配は無かったが。


442 : 【諸塁槍拳】【土傭戦士】 :2017/07/09(日) 22:59:31 .V2vo5Sg
>>427

ぐちゃり、ぬちゃりと音がした。路地裏の最果てで肉が避ける音がした。骨が砕ける音がした。
笑い声のような、泣き声のような、男のようで女のような、喉奥からの悲鳴がそれを彩るようだった。

地面の赤には新たな血色。ポタポタと零れるそれは、彼女の刀に滑りそれも黒鉄を紅に汚していた。

「                                           あぁ、そうね。ごめんなさい」

ただしそれは、彼の脳から零れ落ちたモノではなく    
                           
                               彼の掌から、そして貫通し切り裂いた頬から零れものであった。

最初の突きが指弾の間ならば、この攻撃はまさに刹那であろうか。
瞬きする間もなく、渾身の力と彼女の有り余る才能と努力と心を持って、解き放たれた突きを
それは、刀を掴んでいた手で”受け止め”強引に軌道をずらしていた。

「”雑念”に塗れた    だったわね」

人体としての自然反応、痛みによる自動的な悲鳴を僅かにこぼした後に、それは割けた頬で悲しみと表した。
それは自身の破壊された手、頬に対する悲しみではなく。彼女がこの場面で選んだ行動に対しての哀悼だ。

己が手を貫く刃をそのまま”握りこみ”ながら万力の力で締め付けそれは言う。

技術、が足りないと。理論、が足りないと。呼吸、が足りないと。思考、が足りない。そして何よりも
────相手を殺す場面で、相手が最も磨き知る技をざわざわ使う、彼女自身の心が足りないと。

/来客の対応をしておりました。遅れてしまい申し訳ないです


443 : 【羽衣が微笑む穹天の斜陽】 - Lever du Soleil - :2017/07/09(日) 23:17:18 .R4Hgjxo
>>440

「りお、れお、りお、れお……。」

"人の名前覚えるのめんどくさいな"。ぼそっと呟いた。これだから旅人は。
名前を覚えるのは面倒だ。面倒だ。面倒だ。だから自分の名前すらも。
 ―― しかし、まあ、これはこれで。

「うん、次は間違えないよ。」

にやにや。企み顔。

促されるまま、バイクの後ろに乗った ――― 。

--------------------------------------------------------------

最寄りの街にまで到着した所で、彼女はバイクを降りる。
人の音が聞える。街の音が聞こえる。草原からここまで共にやって来た風は、奥へと通り抜けていく。
多くの人にとっては日常的な光景だが、旅人にとってはあまりない事。
かつての誰かさんは経験あったかもしれないが、それは、誰かさん。
名前すら持たない旅人は、いや、名前だからこそ持たない旅人は、街の光を背景に、青年を見る。

「ありがとう。おにぎりと、ここまで運んで貰って。
 いい人だね。こんな世の中で、ちょっと変わってる。」

運んで貰っておいて、変わってる、などと。不躾な、女の子。
言葉の選び方なんて、教わっていない。

「それなのに、刀が必要な仕事なんて、してるのかい。」

 ―― その言葉を放つ時だけ、少女の瞳は、静かになった。とてもとても静かに。雪の解けるように、蒸し暑さに散るように。
冗長な言い回しを好む旅人らしさのない、飾り気のない言葉。垣間見せた心。
恩返しできるようなものは何も持っていないならば、余計なお節介を、見ず知らずの他人から、ひとつだけ。
音の無い、色の無い、力の無い、けれども、相手を視るだけならば、この眼さえあれば、世は全て事も無し。

そして、くすりと笑い、

「ワイルドハント、気が向いたら行ってみるよ。
 私みたいなのは、むしろ邪魔だと思うけど……

 ね?」

踵を返し、街の奥へと向けて歩き出した。言いたい事だけ言って去ろうとするとは、卑怯な奴だ。そう、責任感がないから、旅人になった。
あなたが引き留めない限り、少女はその場を立ち去るだろう ―― 。


444 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/09(日) 23:33:01 KsYUaigg
>>441

「―――へえ!」

気がついたらしい。ならば、と後部座席を開け、外に転がり出るように
そのまま天井へ向けて粘着力の糸を指先に出し、車の上に転がる。その際、一瞬サイドミラーに映るだろうか

そして手首から、少し玉状にした蜘蛛の糸の塊を射出し、右のサイドミラーを潰すだろう

「へへ、へへへへえええええへへへへ!!!!!!!」

興奮―――狩りの時間が始まる


445 : 【重層剛筋】 :2017/07/09(日) 23:47:08 vrLTUarM
>>444

「クソが、」

サイドミラーが派手に飛び散る。
ミラーがわれる寸前に見えたのは、屋根に飛び乗る小柄な影。忍者かよ、と悪態を突く。
逡巡するさなか目についたのは、自動運転というタッチパネル。
流石は高級車使用。迷わず電源をいれ、適当に目的地を入力すれば、踏んでもいないアクセルが押し込まれ、ハンドルが勝手に切られる。

それを確認するまでもなく、女はドアをくぐり、少女と同じ位置に立っていた。


「おい糞餓鬼。やってくれたな」

背中に風を受け、蜘蛛のようにへばりつく少女を見下ろす。
この期に及んで、女の顔には怒りすら浮かんでいない。ただごきりと、こぶしの骨が鳴る音だけは、強風吹きすさぶ中でもはっきり届くだろう。


/ノリで書いてますので、おかしいと思われたら遠慮なく……


446 : 【飛燕二式】 :2017/07/09(日) 23:50:03 hL8AF6AI
>>443

「人は見かけによらないって事だ」

職業、賞金稼ぎ。
確かに自分は好きで今の仕事を選んだ訳ではない。
賞金稼ぎをしていれば、多くの相手と闘える。多くの相手と闘えれば、自分は今より強くなれる。
自身の剣を天才と褒めてくれた人たちの為に、そして自分の為に、自分がどこまで強くなれるのかを知りたい。
それが、刀を持つ理由。

だがしかし、その点を除けば侍は比較的常識人だ。
比較的、というのはルールよりも義侠を重んじる性格であり、全にも悪にも傾きうる危うさを持っているから。

「どういう意味かは利かないでおくぜ じゃあな!」

捨てたか元よりないかは存ぜぬが、名を持たぬという事は何かしら事情があるのだろう。
詮索しないのは生きてきて学んだ処世術の基本だ。

バイクをターンさせて、元来た道を戻る。
ツーリングはたどり着いた先を楽しむ事よりも移動する過程を楽しむ事だと、侍は考えている。
旅人に理解してもらえるかはわからない。

/こちらからは以上になりますがよろしいでしょうか?
/絡みありがとうございます


447 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/10(月) 00:23:33 4ROXEltw
>>445

「何?何をやったって?キャハハハ!何もしてないわ―――やって欲しがったからやってあげただけ?」

口の端には血。何かを「食いちぎった」跡だ
立ち上がりながら―――裸足の足を糸に床に張り付きながら―――笑う

拳の音。骨がパキパキと

「で?やってあげたから何するの?何してくれるのかしら?アナタ」

真似して手を握る動作するが、特になんの音もしない。非力さを際立たせるだろうか

「遊んでくれるの?餌をくれるの?」

それとも

「強い雄を知ってるの?」

唐突に両手を、抱っこをねだる子供のように広げ、手首から網を広げるように糸を発射する
二方向。もし捕まれば、両手が塞がれる形になるだろうか


448 : 【羽衣が微笑む穹天の斜陽】 - Lever du Soleil - :2017/07/10(月) 00:40:48 G7GwKGjQ
>>446
/おくれてすみません!絡みありがとうございましたッ
/もしかしたらワイルドハントさんスレにひょこっと出没(ひやかし…)するかもです。つながりを頂けて嬉しい…


449 : 【重層剛筋】 :2017/07/10(月) 01:19:44 LovqQ8i2
>>447


「私より強いオトコなんざ見たことねぇ」
「だから」


指の関節を鳴らしていた両手が、交差した状態で絡め取られた。にわかに灰色に覆われた指同士をにぎにぎと。
ふむ、それがどうした。

「礼に、寝かしつけてやるよ。やーさしくな」

ばりばりと高い音が鼓膜を打つ。
何重にも絡んだ糸があげる悲鳴。
みれば、拘束された筈の両手が、徐々に放れていくだろう。

一歩踏み出せばそれだけで屋根が軽くたわむ。ずんずんと数歩詰めれば、それだけでもう女の間合い。
三歩目の右足は、天高くに聳え立ち。
長い脚先の踵が、急角度の放物線を描いて少女の脳天に落下していく。
当たれば再び車内に逆戻りするほどのそれ。だがまだ腕の解放が不完全ゆえに体勢も不安定。
屋根に飛び乗った彼女の身軽さからすれば、幾らでも対応が可能だろうが。


450 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/10(月) 01:54:13 4ROXEltw
>>449

「ニャハ、ゴリラだ、ごーりらっ♪」

引き千切られた糸。一本一本が束ねたワイヤー並みの強度を誇るが、易々と千切られた

「それとも鬼かな?オニさんこーっちらっ」

長い脚を振り上げる相手。見え見えのモーションだが、その威力は屋根の軋みからして折り紙つきであろう
だが少女は恐れない。興奮に塗れる脳内が、恐れなど抱かせない

相手の踵おろしに合わせ、パッと前へ、姿勢を低く、屋根を蹴って滑りこむ
つまり相手の股下を通って背後を取ろうとしているのだ

「キャヒヒッ」

すれ違いざまに軸足の内側、踵あたりに触れるだろう
ただ触れるのではなく、己の糸を付着させ、通り過ぎざまに引こうとする。勢いはあるが、所詮少女の腕力と体重
とはいえ、この不安定な足場だ。もしかしたら、転ばせる事が出来るだろうか

勿論、体勢を無理矢理変えたり、軸脚がしっかり地面につききっていれば、ただ踵を引かれるだけで終わるだろう


451 : 【重層剛筋】 :2017/07/10(月) 02:11:28 LovqQ8i2
>>450

「五月蝿ぇ、テメエこそ女郎蜘蛛だろうが」

轟音。アルミ合金の屋根に風穴があく。
パーツが散乱するが、その中に肉片は1つもなし。視界の隅に影を認めるより早く、踏ん張っていた爪先に違和感。
軸足を刈られて腰から倒れ混む、屋根が凹む程の衝撃に車体も大きく傾いだ。


「があっ」

一際吼えると同時に右手が自由になる。揺れる最中、その手で左足に絡む邪魔っ気な糸を強引に手繰り寄せて。
人一人の体重を引くにしては過剰な力でもって、逆に少女を引き込まんとする。


/すみません、そろそろ落ちるので凍結をお願いしても宜しいでしょうか


452 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/10(月) 10:45:14 0ySNbMWw
>>451

「ヒャァっ!?」

グンッと重力に引かれるように体が落ちる。ただ、真下ではなく、女の方向に
右手から出していた糸で、釣られた魚のように勢い良く

「ギャッ―――」

パァンッ、と車の天井で激しい音がした。なんとか体勢を立て直そうと努力した結果は
尻から叩きつけられることに成功。しかし激痛―――女を通り過ぎたフロントガラスからボンネットの斜めの部分に叩きつけられた
フロントガラスにひびが入るかと思えば、防弾仕様の車には大したダメージではなかったらしい。だが少女には十分なダメージだったのか、

「ひぅつっつつ……・」

痛みで、大きな隙をつくってしまっていた。女がモーションを起こす頃に、ようやく立ち上がろうとする程に

/申し訳ありません、寝落ちしていました……凍結大丈夫です


453 : 【重層剛筋】 :2017/07/10(月) 19:02:39 wXBDOwa.
>>452

手元に十分な手応え。念のため糸を掴んだまま様子をうかがう。
引き寄せるまでは至らなかったが上手く体勢を崩させる事に成功したようだ。

痛みに呻く姿を見下ろすのは、既に立ち上がり表情を殺した女の目。ばりばりと、崩壊寸前だった糸束から左拳が解放される。
苦痛の表情が演技でないと認めて、握っていた拳をほどいた。

立ち上がりかけた相手の爪先に黒い何かが近付く。
女の革靴の底は、少女の小さな右足を踏みつけ、逃げられないよう固定出来るだろうか。
同時に踏み出しの勢いのまま、上半身が縦軸旋回を始めていた。

「手間かけさせんな、」

平手打ち、または掌底打ちと呼ばれる、左のショートフックを少女の顎目掛けて振り抜く。
本気で殴ったら首から上が飛んでしまうかもしれない、殺害ではなく制圧用の加減した一撃は果たして吉と出るか。


454 : 【一刀全剣】 :2017/07/10(月) 19:30:04 ywWIwyfY
>>442


枷の外れた膂力を以って、強引に刀を拘束から振り解く。
そして後方へと飛び退いたなら────血の滴る刃越しに相手を強く睨む。

渾身の一撃だった。威力も、精度も、速度も、彼女が成し得る極地に達する剣閃だった。
にも関わらず────止められた。いや、止められたこと自体は些細な問題に過ぎない。
ここまでのやりとりでハッキリしたのは、この敵は"殺意"すらも自分に向けていないということ。


「………────ッ」

否応無く理解した。理解せざるを得なかった。
単独では敵わない。少なくとも、今のこの瞬間の自分の実力では、アレに太刀打ちすることは不可能だと。
暗い感情を噛み締める。あの日から少しは強くなれたと思っていたのに、やはり自分は何処までも未熟だった。
渾身の一撃を嘲笑うかのように敵は凌いでみせた────きっと、どのような業を放ったとしても、結果は同じだっただろうから。


────消耗したとはいえ、まだ体力は温存してあった。その総てを離脱に費やす。
地を蹴り、壁を蹴り、建造物の屋上へと跳躍したなら、彼女は強引にでもこの場を離れようとするだろう。


455 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/10(月) 21:15:10 a9k0m8Co
>>454
闇にその身を溶かし、飛び去る…いや、逃げ去り消えていく彼女の姿をそれは追う事は無かった。
あそこまでその才を渇望したのに──だが、それを上回ったのは、それの、武術家としての好奇心だ。

まったく、私の……殺しちゃった弟子たちを思い出したじゃない。と、思い出す。
それの黄金時代、あらゆる才能を慈しみ育て上げ、そして”喰らった”はるか昔の蜜月を

「千招有るを怖れず、一招熟するを怖れよ──借り物じゃなくて、貴方を育ててまた来なさい」

型を"守り"、次に型を"破り"、そして最後には型を"離れる"武術の基本。守、破、離
もしかしたら彼女は守からでは無く離から…とそれは僅かに浮かんだ思考を打ち消し、にまりと嗤う。

どちらにせよ、どうでもいい。

喝さいを、その才能に喝さいを。どこまで育つだろうか、どこまで極めるだろうか、どこに至るだろうか。
相手の技が模倣できる時点で先にある無限の可能性を。羨む一つを極め、模倣する必要すらなくなったそれは

「まぁ、まずは正面からちゃんと戦う事からよねぇ───」

潤しい若人を、その身に握る才能を、そしてその先を未来を楽しみにしながら──裏路地の中に姿を消した。
その傷は抑えることも無く、まるで獲物をおびき寄せるえさに様に、垂らし自身への道筋を示しながら。

まぁすべては、殺人鬼の戯言であった。

/絡みありがとうございました。…突きを受けれたのは、
一度の見聞で凡そ”半分”は再現でき、実際に観察した上で”練習”すればほぼ完璧に体得可能
と能力にあったため、そのような処理とさせていただきました。絡みありがとうございます。


456 : 【幻奏虚星】 :2017/07/10(月) 21:19:34 ywWIwyfY
>>455
/こちらこそ、ありがとうございました…!
展開的にはナイスな展開にして頂けて、また機会があれば是非…


457 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/11(火) 00:00:10 lrxgLUXo
>>453

「ギィッ!!!!」

つま先の激痛。爪が3つ、親指から中指までから出血―――どうやら割れたらしい
しかし、相手の次いでの動作。動かなければ

「ッ、こォんの!」

振りかぶる拳。その肘を狙って、右手の糸を発射する
そして、相手の腕を振りかぶる勢いを「増やさせる」。つまり、自分の顔横に拳を誘導しようとする
フックがもし自分へのヒットより奥側になれば、次のチャンスも生まれるだろうと言う狙いだ

しかし、それが叶わなければ拳はもちろんヒットして、狙い道理気絶することに鳴るが


458 : 【重層剛筋】 :2017/07/11(火) 17:40:48 BIgTtaUI
>>457

少女の狙いは成功する。
動きだしに間に合った糸は、フックの軌道を外側にずらし、髪数本を裂いただけで空を切る。

「お前、馬鹿だろ」

たたらを踏んだように思えた長身は、しかし圧力をずんと強めて。
声量は変わらないが、その声は今までより大きく聞こえるだろう。何故なら女は少女の糸を放さず、縮まった距離は、そのまま武器となるから。

「私に組み合いをさせるなんざ、な」

少女の右頬横を通り過ぎた暴風は、そのまま大蛇となってぐるり襲い掛かる。
正面からのラリアットのような、しかし跳ね飛ばすような勢いは存在しない、ふわりと優しい接触。
背丈だけ見れば母娘の抱擁の如し。しかし、女の目には慈愛ではなく呆れらしき色がある。

「このまま落としてやるよ」

殆ど頬と頬が触れ合うだろう距離。
膝を屈め、相手の左肩辺りでぼそりと呟く。
単なる抱擁に非ず、自身の左肩を少女の喉に沿え、後ろに回した左手首を右手で引き寄せるように。
その狭間に少女の細い首があるなら、
それは肩固めと呼ばれる絞め技のように――――脳に行き渡る酸素の供給を絶たんと力が込められるだろう。
超至近距離は女の十八番であり土俵であるが、相手にとっても同じであろうか。


459 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/11(火) 18:46:40 BFaL0qus
>>458

「ァッ―――がッ!」

急ぎ糸を切断。が、足を抑えられている以上、これ以上の回避はほぼ不可能だ
相手の包容―――肩固めに対して打てる策は殆ど無い。というか、容姿と能力で油断からの不意打ちで仕留めてきた少女には「技」という概念が薄い
どれだけ強い相手であろうと、背後からの闇討ちで済ませてきたのだから、目の前の女のような相手との戦闘は、色仕掛けも効かない分、最悪と言えた

「う―――アァァッ!」

だからと言って、抵抗しないわけではない
締めの直前、全力を以てもがき、左肩に鋭い犬歯を突き立てようとするだろう。狙いは己の持つ麻痺毒の注入
筋肉の麻痺を狙う――触覚。しかし、体質によってはほとんど効かない事もあるだろう
特に相手は身体系が強いらしい。故に、毒に対する耐性が高くても何らおかしくはない

犬歯を突き立てることができなければ、そのまま締められる体制になるだろうか


460 : 【重層剛筋】 :2017/07/11(火) 19:46:19 BIgTtaUI
>>459

絞めている、締めている。肉と肉が軋む音が互いの鼓膜をぎしぎしと揺さぶる。
力の籠るその腕に鈍痛が走った。
突き刺さる少女の牙。諦めない反骨心を見て、しかし女は薄ら笑いを浮かべた。

「こそばいぜ、クソガキ」

咬まれながら上腕二頭筋に太い筋繊維の束がうねる。
牙が皮膚を刺し薄ら血が滲むが、それはごく浅い傷に過ぎない。
その身に宿す肉は鋼もかくやと言う高密度。固められた筋肉が鋭い牙を確りと跳ね返している。

――――――――びくりと女の肩が揺れた。


「……テメエ、何か仕込みやがったな」

強い酒を干した時のような酩酊感。新陳代謝に優れた女にしてみればおよそあり得ぬ感覚。
思わず手首を握る右手を開閉させる。皮指に伝わる弾力はごく弱いもの。皮膚の感覚が徐々に薄れていくようだ。
視覚的な変化で相手への絞めが緩んでいることに気付き、再度力を込め直す。
その瞳には、今まで無かった焦りが浮かんでいた。

全身に毒が回れば、締めはおろか命の危険も高まる。
致死性の神経毒かどうかという問題ではなく、現在の戦場――此処は走行する車上である故に。
今は強靭な下肢が走行時の揺れを殺しているが、全身が麻痺すれば戦闘はおろか屋根に立っている事もままならなくなろう。
最悪締め上げたまま両者諸ともに落車してアスファルトにダイブする結果になるかもしれない。
女の拘束が緩んだ隙に抜け出し、少女一人で離脱すれば或いは――――だが
女は道連れ覚悟の勢いで、ぎりぎりまでその手を緩める気配はない。

毒が回りきり女に隙が生じるのが先か、少女の意識がブラックアウトするのが先か。
泥沼に陥る勝負の行方は――――


461 : 【重層剛筋】 :2017/07/11(火) 20:08:07 cOjxFunk
>>459
/分かりにくかったので補足、要するに
/拘束をほどいて脱出してもらっても大丈夫という事です
/毒が回りきった場合こちらは落車し道路に倒れています


462 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/11(火) 20:16:27 BFaL0qus
>>460

「ギャハ……ヒ……ヒッ……」

完全に開いた瞳孔は「してやったぞ」と語っていた
拘束が緩む。その瞬間に、抜け出そうとしたが、それは叶わなかった

轟音。衝撃。

車の衝突―――事故だ。自動走行していた車が、追突された
高級ホテルもあった市街地。その車上での立ち回りを強制的に中断したのは、妙な正義感に駆られた青年の車だった

事故の衝撃によってお互いが投げ出されるのならば、少女はそのまま放り投げられるか、女に抱かれたような、されるがまま体勢のになるだろう
酸欠による気絶ではなく、不運にも飛んできたコンクリート片が頭部に直撃し、気絶していたのだから
相手の女からすれば、大した衝撃ではないかもしれない。いかに麻痺毒が入ったとは言え、後ろからの追突。尻もちを着くだけような結果にすらなりえる
だが、少女は機敏さはあれど、耐久力は見た目のまま。成人と子供の差もあり、少なくとも少女は耐えきれなかったというわけだ

また、車を追突させた青年は車をぶつけたあと、急に正気に帰り、人ごみに紛れるように逃げるだろうか


463 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/11(火) 20:55:31 BFaL0qus


>>461
/あああ今気付きましたあああ
/投稿してから気付きました……毒は流れ的に少ししか流入してないと思うので、弱めと思ってます


464 : 【重層剛筋】 :2017/07/11(火) 21:19:25 BIgTtaUI
>>462

衝撃、暗転。消えかけた意識が強引に引き戻される。
ただ一度身体がバウンド。痛みはない。毒がアドレナリンか、強かに打ち付けた背中がかっと熱くなっており。
眼を開けた先は交差点の上。どうやら車が事故ったらしいと認識出来た。

「……クソッタレ」

ぼやけた視界に、現場に次いで見覚えのある顔が飛び込む。腕の中に抱えたままだった少女だ。
気を失っているが、一点を除き外傷はない。額の痛々しい瘤が見とめられたとき――女の瞳がすうと細められた。

猛禽のように鋭さを増した眼はその事故の犯人を明確にとらえた。
麻痺の残る足で立ち上がり、少女の身体を近場の花壇へそっと下ろす。今まで戦った相手へのらしからぬ、馬鹿丁寧な振舞い。
立ち上がったその顔は、ぞっとするほどの無表情だった。

「おい、待てよ」

ポケットからかさりと、灰色のヌガーらしき物が取り出される。
常人ならカロリー過多で目眩を起こすほどの特殊燃料を、ビスケットでも食むように飲み下して。スーツの下の肉体全てに、ワイヤー束のような筋が走る。
皮下の表情筋までもくっきり浮き立たせたその顔はまさに悪鬼羅刹の如し。男が乗ってきた例の車――前が見るも無残に凹んだ其れのバンパーに両手を掛ける。
すうっ、と大気を鼻腔に吸い込んで。


「一般人(パンピー)が、正義ぶってんじゃねえッッ!!」


人混みの中を逃げる男の頭上を、ふと大きな影が通過する。
そのまま行けば彼が辿り着くだろう広場の一角――――時計台の噴水に突き刺さったもの。
事故もかくやと言う勢いと轟音でぶつかったのは、砲弾並の速度で飛んできた彼自身の車だ。
死闘に水を差された不快感や立て続けに公務を妨害され続けた苛立ち、その他諸々の理不尽に対する怒りを込めて投げつけられたそれ。
殺意すら感じられるその行為は、奇跡的に一人も怪我人を出すことなく、ただただ恐慌だけを振り撒き、逃走を妨害するだろう。

「テメエ。何のつもりだ。」
「何の権利があって、私とアイツを轢き逃げ出来る? 聞かせてみろよ」

新陳代謝の高さはエネルギー消費の激しさにも繋がる。
全力行使による新陳代謝の急激な活性化。
呼吸、体温、心拍数の上昇、滝のような発汗。それによる毒素の排出。
それにより麻痺毒の殆どを解毒したらしい女は、ゆっくりと男へ歩み寄る。


465 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/11(火) 22:04:15 BFaL0qus
>>464

横たわる少女は、そのままだと本当にあどけなさの残る、年相応に見える顔だった
腰のポシェットから無針注射が落ちる。中の薬液は、年齢にそぐわない劇薬表示があったが
そのアンバランスさが、より常人でないということを際立たせていた

――――
『お、お前ぇ、ち、小さい女の子を襲っといて、な、何だってんだ!』

腰を抜かし、後退りながらも答える青年。先ほど見せた正義感は、毛ほどだけでも残っているようで

『俺は助けたんだ!お前みたいな、ば、バケモンから!あの子を!』

英雄願望―――だろうか、勝手な視点と、勝手な判断で、勝手な正義を振るう
それは独善的すぎる善性。本質は何一つ捉えられていなかった

『し、死ね、化物ぉおおおおおおおおお!!!!!!!!!』

矛盾する正義。それを体現する、初めて仕事をこなすであろう、護身用のリボルバー
引き金を連続で引くが、全て虚空へ―――或いは無害な一般市民の方へ飛んでいった


466 : 【重層剛筋】 :2017/07/11(火) 22:31:11 BIgTtaUI
>>465

「ああそうか、そうだな。 お前はよくやった」
「公務執行妨害、器物破損、過失運転傷害、」
「他2、3付けて送検してやるからよ、」

男の興奮度合いに反比例して、女の熱はどんどん冷めていく。
怒りから蔑みに移行した眼差しで、悪態のような向上を述べ立ち呆けるが。


「ッ、」

彼が懐へ手を突っ込んだ時には既に、革靴は道路を叩いていて。
――――炸裂音が、立て続けに木霊する。

化物と呼ばれた女とて、銃弾より速く動けるわけではない。
彼が抜いた瞬間の動きは、全て予測と経験に基づく其れであり。
彼我の距離に凶器の威力と周囲の被害。それらを天秤にかけた結果――凶弾はすべからく女の胸元に飛び込んでいるだろう。

「――――化物退治にゃ、ちと口径(たま)が、小さすぎるぜ」

鮮血を周囲に撒き散らしてなお、女は地に踏ん張って立っていた。
軍用でない民間用とはいえ、防弾チョッキも無しに銃弾を浴びた者の声色と思えない程、生に溢れ。
そしてそれ以上の熱い感情を、鋼のごとき肉体と精神で冷却した声。

ふっ、と一呼吸後には、拳銃持つ手にごく軽い手刀が走る。
馬鹿に本気を出すのもそれこそ馬鹿馬鹿しい。とはいえ骨に罅程度の威力はあるが。
返す刀で首筋にも手刀をかまし、可及的速やかに意識を奪おうとするだろう。
それが達成されれば、男の片足を引き摺って、花壇に眠る少女の元へ戻るはずである。


467 : 【重層剛筋】 :2017/07/11(火) 22:35:18 BIgTtaUI
>>466
/これも分かりにくいですね……要するに接近して身体で全弾受け止めたって事です
/ 補足ばかりで申し訳ないです


468 : 【不撓鋼心】 :2017/07/11(火) 22:36:52 uhxXx2jE
>>412

「――ならば俺が支払おう。主人、どうか矛を収めてくれないだろうか」

今まさに直撃しようかというその瞬間……唐突に表れた手が、男の拳を横から受け止めた。
両者の耳に届いた声は低く重い。連想するのは金属または年数を重ねた大樹。軽薄という概念からは真逆の声色が、その主の厳かさを予想させる。

振り向けばまさしく感じたその通り……長身を包むのはフォーマルな印象の、全体的に黒で統一された服装。
眩い金髪、北欧系の白い肌、碧眼は底知れない光を湛えてまっすぐに店主を見据えている。
腰には無骨な長剣。飾り気のないその武器は鞘や柄頭に細かい傷があり、よく使いこまれた一品であることが見て取れる。

――そして何より目についたのは、一見して見えにくくはあるが……。
衣服の袖口から僅かに見える白いもの。幾重にも巻かれたそれは紛れもなく包帯であり、よく見れば首筋からも覗いている。
……おそらくは全身に何らかの傷を負っているのだ。その割に動きに違和感がないのは、傷の度合いがそれほど深くはないからだろうか……?

「貴方に非があるとは思わないが、手を上げるのは流石にやりすぎだろう。まして相手が若い身空の婦女子となれば尚更ではないのか」

そして――。
ちらりと何か含みを持たせて彼女を一瞥し、すぐに視線を戻す。

……その顔に、彼女は見覚えがあるだろうか。
いいや無いはずがない。なぜならまさしくこの男こそ、今しがた呼んでいた雑誌に載っていた張本人。
ギルド『ワイルドハント』所属の剣士――メルヴィン・カーツワイルその人なのだから。


//よろしくお願いします!


469 : 【形意神拳】 :2017/07/11(火) 23:00:25 BIgTtaUI
>>468

意外に速い、しかし女の眼からすれば止まって見えるその拳を、瞬きもせず待ち受ける。
当たったところで大したことないという打算ではない、いや似ているが。
正しくはこの拳は被弾した方がこの場を円滑に切り抜けられるという、武術家なりの処世術。
しかしその一撃は覚悟した女の頭に届くことはなく。


「あ。 ワイ……、ワイルド…………、ワイルドハン……………………」





「雑誌の人だ」


静けさに支配された店内に、女の声がよくとおる。
女が指差すのは雑誌の表紙を飾る金髪の青年。そう、彼こそワイルドハントの立役者ことメルヴィン・カーツワイルその人である。
そこまで口に出かかっていて思い出せないのもどうかと思われるが。

喧嘩慣れした店の主人も、青年に宿る異様な雰囲気には気圧されたとみえ、赤ら顔ながら拳を収めて引き下がる。

『へい、支払って頂けるんなら、どちらさんでも構いませんぜ』

なけなしのプライドかぶっきらぼうに言い捨て、彼が雑誌分の金を負担したなら、まいどと言い捨て以降は一切無視するだろう。
この二人――正確には女の方に関わるとろくなことにならない察したらしい。無論それは正解である。


こうして雑誌を受け取った女は、男と一緒に店を後にする。
用は済んだのではいさようなら――とする気はないようで。
ぼけっと、与えられた雑誌と男を見比べている。もしかしたら写真よりイケメンだとか思っているのかもしれないが。

「ないすふぉろー。助かった」

背筋を丸めて猫のように頭を下げる。
どこを見ているのか定かでない目線では、それが礼の言葉だと判断するには難解かもしれないが。
言葉はともかく、女のような非常識人でも、感謝するだけのまともさは持っているようだった。


470 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/11(火) 23:24:59 BFaL0qus
>>466

『やめ、やめろ、こんなの、まち、まちがってウワアアアアア――――』

ゴギィン、という鈍い音。歪んだ正義がへし折られた音だった

―――――

「………」

意識が混濁する。鈍い色の記憶

「や……め……」

琥珀色の液体。アンプル。崩れる体組織―――再構成
そして残った狂気。本能。食欲、繁殖欲、覚醒感

「……ぁ」

朦朧としながら目を覚ます
幼い寝起きの表情―――何かを探るように。傍らに無針注射器が落ちていて、指先に触れる
手繰り寄せようとするが、手が震えて、上手くつかめない


471 : 【重層剛筋】 :2017/07/12(水) 00:02:52 7BgCX6gI
>>470

「確かに間違ってるよなぁ。だから正直者が、馬鹿を見んだよ」

倒れた男を見下ろし、拳銃を蹴り転がす。
弾のなくなった凶器は、持ち主を失い彼の車と共に噴水へ沈んでいった。

女は警察関係者ながら、拳銃も手錠すら持ち歩かない。
血塗れになったジャケットで、気絶した男の手足を乱雑に縛る。
彼のズボンのポケットから携帯を探り当て、どこかへコールを掛ける。

「私だ。コード●8●N●●●P●」
「すまん、任務は失敗だわ。容疑者確保。この携帯の場所にパト2台と救急車頼む。」
「……あぁ? 別に負傷はしてねえよ。 瓦礫で頭を打ってるから、動かしたくねーだけだ」

男を引きずりながら、ワンコールで出た相手と短いやり取りを交わす。
世界警察の裏コードに掛かる番号を知るものはすくないが、その存在は組織内でも暗黙の了解と化している。そう遠くないうちに要望のパトカーたちはやって来るだろう。
いやそれより、事故の件で市民が通報しているだろうから、そちらの説明と処理が面倒だ、と。


「だから、動くんじゃねぇ」

花壇に座り、脇で目覚めかけた少女の手を無造作に押さえる。
落ちていた注射器を手の届かない場所――則ち己の尻ポケットへ追いやり、少女の身体を再び抱えるだろう。

「手間かけさせんなっつったろ。お前のせいで今日は散々なんだからよ」

二度目の抱擁は、今度こそ母子のように――しかして決して逃がさぬという意思だけは変わらず。座らせた少女を後ろから抱えてしまえば、その背に女の熱い血潮が滲むだろう。
筋肉で大部分を止めているとはいえ、出血ばかりはどうしようもない。
暫く無言が続いた後、


腹、へった……。」


そんな呟きを最後に、女は意識を手放すだろう。
身体から血液と力が抜け、その後は落ち着いた寝息が聞こえてくる筈だ。
その隙に逃げるも、ほどなくやって来た救急車で手当を受け、運ばれた先の病院から行方をくらますも、全ては少女の自由。
いずれにせよ女は重症、こののち二人は引き離され女に残るのは謎のアンプルだけである。
それとて彼女が気づかなければの話であったが。


/こんな感じで〆、は如何でしょうか。
/上にも書いた通り、逮捕されずともお好きなタイミングで逃げられた事にして頂いて構いませんので


472 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/12(水) 00:03:36 ULcy3MGc

「まともな護衛もつれてくるでも無し、踏ん返っているのは滑稽ね」

大通りに面した高級中華店でそれは起こった。特定暴力団幹部が週に1度の習慣で食事をしている最中
店の従業員の一人…周りに比べ、多少ガタイが良く、右手には包帯を顔にはマスクをつけた従業員が
幹部に襲い掛かる。いわゆる鉄砲玉の襲撃事件、本来なら周囲に待機していた組員により射殺される。はずが

その者は素手にてそれを一瞬で鎮圧。抜き手にて5つの死体を作り上げ
店の奥で震えている小太りの幹部に、笑みもなく。たたツマラナイと言いたげな憂いた表情で言っていた。

「では、警察の怖い犬さん達が来る前に仕事をしましょうか、治療費もばかにならないのよねぇ」

血の色より濃いチャイナ衣装、たそがれ色の短髪を、僅かな空気に揺らめかせ
滴る血しぶきを血化粧に、男か女かわからない中性的な美しさ、それの名は槍(ソウ)という。国際的な犯罪者だ


473 : 【不撓鋼心】 :2017/07/12(水) 00:15:10 4ZNY.MpA
>>469

……気の抜けた彼女の発言に、男はとくに反応を示さなかった。
厳しい表情は現れた時からそのまま。眉間に深く刻まれた皺も常のとおりであるならば、その様子は一切なにも変わらないと言っていい。
張りつめた印象の……だがそのような人特有の、どこか無理をしている雰囲気が欠片も感じられなかった。
まさしくこれが常態なのだと何より雄弁に語るように。年齢に見合わない空気は、しかしそこに違和感を感じさせることもなく。

……そうして支払いを済ませた後に店から離れ、彼女の礼に首を振った。

ちなみに……さして関係のない話ではあるが。
彼の顔立ちは確かに整っている。整ってはいるが、しかし俗に言う“イケメン”のイメージは薄かった。
なぜなら溢れんばかりに放たれる意志の波濤が強すぎるから。表情に現れている精気が尋常じゃなく激しいため、美しいという印象よりも畏怖が先に来る。
一言で表現するなら偉丈夫が適切だろうか。味方にいれば頼もしさを覚えるだろうが反面、敵に回ればそれだけで意気を挫いてくるような雄々しさ、力強さがあった。

「いいや、礼を言われるほどのことはない。むしろ感心させられたよ」

そして彼女をまっすぐに見つめ、紡いだのは賞賛の言葉。
もちろん財布を忘れたことでも、雑誌を立ち読みしていたことでもなく……それが指しているものは別にある。
すなわち、“彼女が手を出さなかった”こと。

「本当に必要な場所以外でその力を振るわない。武術家として当たり前の心がけだが、嘆かわしくもそれを最後まで実践できる者は少ない」

この女性がその外見に見合わぬ強大な力を有していること――。
それを瞬時に見抜いていた。だからこそ反撃の手段を取らなかったことを善いことだと讃えている。

「そしてそれは持つ力が強大になっていくほど顕著になる。貴女ほどの武人が無闇に誇示しないことは、知る限り稀なことだ」

“そうじゃない”連中を山ほどその目で見てきたからこそ、その言葉には重みがあった。

「同じく武に生きる者としてその在り方は見習うべきものだ。初対面にも関わらず不躾だとは思うが、賞賛くらいは贈らせてくれ」

その言葉には裏などなく、どこまでも熱い気概が宿る双眸は嘘偽りなどあり得ないことを感じさせた。
発言する人間によっては不審と取られてもおかしくはないが……しかし男の心をそのまま反映した声色は誠心に満ちていた。


474 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/12(水) 00:33:07 Gz4tb8F.
>>471

「………」

改めて抱擁された少女
温もり。安堵。優しさ。安心感。そのどれにも満たない「何か」を感じた

「おく……かえ……」

女が尻にしまった物―――抑制剤。自らの因子の暴走を抑える薬
これなくしてはまともな思考が回らない。それだけは分かっている。だから、今使えば、この感覚がわかるかもしれない
そう思って取り返そうと弱々しく動くが―――かくん。と、力尽きる

睡眠欲。体力を回復するまで自動で休眠するための機能だが、常に興奮状態に設定されている少女にはあまり自分で取れる機会がない
故に、この暖かさによる眠気はきっと、落ち着ける"何か"であったのだろう。寝息を立て始めていた


――――――

この後、数日眠り続けた少女が、幾つかの薬剤を奪って病院から脱走するのは別の話
しかしその時、医者を籠絡して相手の個人情報、【世界警察】所属であるということだけを知るだろうか
復讐か、それとも。少女自身なぜ興味を持ったのかは分からないが

「次は、捕る。あの女……」

夜の街のビル。屋上で一人、「食った」男を縛り捨てて、買わせたビーフジャーキーを噛みながら。
何とも言えない気持ちのまま。蜘蛛は闇の中へ跳んでいった

/お返しが度々遅れ申し訳ありません
/結構この能力、戦闘描写や組み立てが難しくてややこしかったと思いますが、楽しかったです
/おつきあいありがとうございました!


475 : 【形意神拳】 :2017/07/12(水) 00:45:19 7BgCX6gI
>>473

「別に。誇るほどの力じゃないし」

欠伸混じりに眼を擦る。
それは謙遜ではなく、特に自分が強いとも、逆に相手が弱いとも思っていなさそうな。
女の人生において武術は大きなファクターを占めるものだが、強さ弱さは生き様にまで干渉するものではないと。
世間の荒波を女子供が乗り越えるため、修行の傍ら父から祖父から付加要素として、武術家としての生き方を学んだに過ぎない。
真っ直ぐに見つめる眼差しとは決して交わらない女の目線。
これも処世術のうちかもしれぬと思えばそうかもしれない。
単に人見知りの可能性もあるが――――

「私からすれば。そっちの方が羨ましい限り」

武術を志し、その巓(いただき)に挑みつづける者たちには、二種類あると想像される。
一つめは必要に駆られその道を選んだ人物。環境からやむにやまれず強くならざるをえなかった者。
もう一つは――――ヒマな人物。人生の大部分を鍛練に費やしても問題ない、生きる上で必要以上に自らを苛め抜けるだけの豊富な環境に恵まれた者。
一見真逆のように思えるこの二種類が、険しい武術の道程を歩み続けられるというのが女の持論であったり。

言うまでもなくこの場合男は前者で、女は後者であると。
隣の芝生は青いと言うがそんな話で、武術で生計を立てている側を目の当たりにすると、女としては羨望を覚えるらしい。

彼の見開きページを示しサムズアップ――――いいネ! と
表情に乏しいながらも、彼を称える意思は本物らしい。もう少し努力さえすれば、伝わりそうなものだが。


476 : 【重層剛筋】 :2017/07/12(水) 00:58:30 7BgCX6gI
>>474
/長い間の絡みありがとうございます
/いえ能力の描写や戦闘は分かりやすく、普段ないシチュで楽しませて頂きました
/寧ろ私の方も説明不足が目立って申し訳なかったです
/これに懲りずまたお相手下されば幸いです、お疲れさまでした!


477 : 【不煌翼使】 :2017/07/12(水) 17:38:39 KEDLzVhI
「……」

ある都市部から離れた森の中
森の中心に存在する巨大な湖の辺りに、一人の女が居た

女は粗末な灰色のワンピースを着ており、どこか奴隷商から逃れてきたような印象を受けるだろう
実際その通りなのだが。髪は乱れているが、多少の手入れをした様子があり、出来る限り小奇麗にしているようだ

「これから、どうしたらいいのでしょう……」

表情は途方に暮れており
岩場に座り、素足を湖に付けながら、森の木から採った野生の林檎を両手で齧っていた


478 : 【天械御子】 :2017/07/12(水) 20:19:02 2t00/WJI
>>477
/まだいらっしゃいますか?
/置きレス多めになってしまいますが、それでもよければ、ロールしたいです…!


479 : 【不煌翼使】 :2017/07/12(水) 20:33:48 KEDLzVhI
>>478
/大丈夫ですとも!


480 : 【天械御子】 :2017/07/12(水) 21:04:39 2t00/WJI
>>477

暗闇に満ち足りた森は、月光の青白い光を投射するには最高のキャンバスだといえるだろう。
黒と白と青のコントラストは、美しきグラデーションは、神秘的なシチュエーションを演出するのに丁度よい。
右を向けば月下美人がささやかに花びらを開き、左を向けば冷たい息を吐き出す幽霊が現れそうな、そのような夜。
それもこれも全ては、満ち足りた暗闇、優しき抱擁をする暗黒の成せる業だろう。

などと、機械の翼を持った少女は思っていたが、お気に入りの湖の傍へと視線を向ければ、誰かがいるでは、ないか。
細長い骨のような、一見すれば翼とも呼べないような其れは、ふらりと揺れ、ぞわりと伸びる。
人間が嫌いな ― 殺意を抱く ― 人外の少女は、そろりそろりと森の暗闇に紛れて近寄っていった。

あなたは、ボワ、という乾いた短い、何かが破裂したような音を聞くだろう。
それは少女が一瞬だけ翼のジェットを噴射した音で、前途多難を憂う少女が視線を向けるまでに、近くの木の上の座っているだろう。
傲慢ちきな性格故に、ああ、こうして相手を見下ろしていると気分が落ち着く。

そして、いきなり言い放つのだ。

「ちょっと、そこは私の場所よ。
 人間はお断り。」

憎しみの色を湛えた瞳で、相手を視る。


481 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/12(水) 22:06:56 1t6sYlr.
>>472

「げっ」

店内に入った時、目に入った惨状に対して、思わず女は顔を顰めた。
低めのヒールに紺のスーツ。涼やかな水色のシャツがアクセント。
すらりとした体躯に加え、右手のジュラルミンケースが赤みがかった光を跳ね返す。

「商談がお流れか。あーそれよかもっとひどいかも」

惨状に踏み込みながら彼女は左手から騎士の白駒を零し、護衛として呼集する。
備えないより幾分かましというものである。

あとは、この部屋の惨状を作った存在と相対するほかなく。
椅子を1脚引っ張り出して、そこに腰掛け足を組んで、声を上げる

「そこの給仕!死体を片付けて!あと適当に料理持ってきて!」

有無を言わせぬ指図のあと、

「さ、とりあえず話をしようか。お嬢さん。
まずはこれをやらかした理由を聞きたいかな?」


この惨状と、そこの幹部の震える姿をよそに、彼女はこの場所をテリトリーに変えつつあった。


482 : 【不煌翼使】 :2017/07/12(水) 22:36:28 KEDLzVhI
>>480

「あ、あぁ―――すみません」

突然頭上から掛かる声。追われ追われて此処まで逃げてきたが
どうやらこの女性――同じ有翼ながらも、全く違うそれを持つ――の特別な場所らしい

「すぐに立ち去ります」

そういってそそくさと立ち上がり、場所を開けようとするだろう
岩から下り、林檎は持ったまま。湖と逆方向に歩いていこうとする
湖畔の光に当てられた姿は、己の蒼く輝く翼よりも、頼りなく
行く宛があるというわけでもないので。ふらふらと街と反対方向、山側を目指すことにしようか、と考えながら


483 : 【不撓鋼心】 :2017/07/12(水) 22:48:03 4ZNY.MpA
>>475

そこにあるのは眉根を寄せた厳しい男の顔――それを見る彼も、同じくしかめっ面。
二つの顔は当然だが同じ骨格、表情で……だがまあ、“生”であるぶん、こちらのほうが迫力はあった。

「……何も羨まれるようなことではない。社会の一助となるべく剣を取ったはいいが、この身が至らぬばかりに結果が伴わず、今もこうして足掻いている」

謙遜などではない、彼にとってはこれこそ揺るがぬ事実である。
力が足りない。技術が足りない。剣は研ぎ澄まされずに鈍いまま。
総じて、未熟。すべて己の不徳ゆえに醜態を晒しているのだと深く反省し、己を戒めている。

「しかしそれでも歩み続けることが重要だと、俺は思う。不明を恥じて、不足を嘆き、だがそれを言い訳に足を止めていたのでは為せることは何もない」

絶え間なく前進し続けることこそ、夢を掴む唯一の方法だと信じているから。
あらゆる辛酸を糧にして進み続けると誓った。覚悟はとうに決まっているから撓まない。

「……無駄な話か、謝罪する。では、俺はこれで――」

話を切り上げ立ち去ろうとした。
言葉通り、特に礼など要求するつもりはないのだろう。踵を返しかけた、まさにそのときに――。

「――――!」

爆発音――火炎と爆風の音響が耳を聾する。
その方角に目を向ければ、発生した惨状は一目瞭然だった。
他よりも頭一つ抜けて高いビルが燃えていた。火元は地上百数十メートルの高み、元は壮麗なガラス張りであった壁が無残に砕け炎上している。
事故か――いや違う。遠目に見ても明らかに分かるほど、炎の動きが不審すぎる。
通常のそれは上へ上へと昇っていく。これにもそういう動きはあるが、時折炎の舌が階下に伸び、果ては火災が発生している逆方向にも回るように蠢いていた。

今日の風向きを考えてもあり得ない燃え方……これは明らかに何者かが操っている。
そしてこの建物は、最近急成長を遂げていたとある企業の本社であった。しかし強引なやり口も多かったらしく、方々の恨みを買っていたとなればだいたい想像がつく。

「……お、おい」

それを知ってか知らずか、一人の男が火を睨む彼に声をかけた。

「あんた、その……ワイルドハントってギルドの賞金稼ぎだろ? なんとかしてくれよ、困ってる人間を見捨てないんだろうがっ」

雑誌の広告効果は思いのほか大きかったらしく、紙面に載っていた彼の顔を知っていた。
今も断続的に爆発は続き、そのたびに割れたガラス片が地上に降り注いでいる。
怪我人は続出しており、一帯はすでにパニック状態だ。人々は悲鳴を上げながら逃げ惑い、ゆえに救いの糸を見つけたのなら縋り付く。
たとえ賞金稼ぎの領分から外れている仕事だとしても関係ないのだ。力を持っているなら無力の民を助けてくれよと、一も二もなく頼るしかできない。

「――無論だ」

そしてその求めに、男は躊躇なく応じた。
その眼に宿るは決意の光。この惨劇に怯まずに、必ず事態を収束させてみせると何より雄弁に語っている。

「誓おう、必ずこの首謀者を討ち獲ると。これ以上の犠牲は俺が決して認めない。ゆえにお前は、お前にできる仕事をやってくれ」

すなわち公共機関への連絡。誰もが我が身を案じて惑う中、それをできるのはお前しかいないのだと。
強い眼差しで見据えられて、男は落ち着きを取り戻す。決意の光が伝播したかのように身を翻し、携帯端末を取り出しながら錯乱状態を起こしている人々の誘導を始めた。

それを見届けた男は彼女に向き直り……目礼の後に、災いの渦中へ向けて踏み出した。


484 : 【土傭戦士】 :2017/07/12(水) 22:51:54 UmIYzb1g
>>481

「ほら、整形の費用って結構かかるじゃない?」

”威風堂々”どこにいようがそれは変わらず、何があろうがやはり変わらず。例え、混沌とした店の中を、突然現れた女が仕切り始めても。
それは、ノンビリとした様子で、トドメを刺そうとした手を止め、対象の頭を鷲掴みにし.声の主に振り返った。……目を細め、外しながら

現れた顔の頬には縫合はされているが、醜く引き攣った傷が残っており、それの美貌を崩していた。

「まぁお金よね”お嬢ちゃん”。この男を殺して報告すれば割といい金額が入るのだけど……」

振り返り穏やかな視線でそれは言う。
やはりそこだけは空気が変わらず。染まり始めた世界で、ある種の異質を醸し出していた。


485 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/12(水) 22:52:19 UmIYzb1g
>>484
あ、こっちですこっち


486 : 【殴蹴壊則】 :2017/07/12(水) 23:18:15 AeKgg7B.
幻肢痛という言葉がある。
事故により切断した腕がまるでそこに在るかのように痛むというものだ。
それに似た症状だろうか。既に新たなる腕を与えられた今になって、既にこの世の何処にもない自らの腕が痛むような感覚に陥る事がある。

「ク……ッソ 少しは俺の言う事を聞きやがれ!」

能力者が自身の性を抑えられず力を振るう人通りの無い裏道。
その中にあって更に人通りの無い、一切の人影の無い。深夜と早朝の合間の時刻。
神父のような黒衣に包んだ大男は両の赤い義手を抑え、蹲っていた。

最近、マジストラの制御が出来ない事がある。
一歩足を前に出すだけで地面に数ヘクタールに及ぶヒビを生じさせ、軽く揉んだ指は大気に亀裂を入れるように不愉快な音を立てる。
この腕を作った施設と研究者を壊滅させ、逃走してしまった為、義肢をメンテナンスした事が無い。
つまり、自分に何か起きているのか、自分は解らない。

気合で立ち上がる。足元には多少の亀裂が入っている。義足は『制御できている訳では無いが、そこまで酷くない』
汗をかきながら一歩進む度に足元を沈めながら、休息できる所を探す……


/人待ちです


487 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/12(水) 23:27:46 1t6sYlr.
>>484

「玉のような肌を傷つけるのは、ってことかな?
 ああ、それを片するのは好きにしなよ。
 私は、これの当てが付くのならそれでいい」

円卓にジュラルミンのケースをこれ見よがしに置く。

「私個人としては、よりかは隙の1つもあった方がとっつきやすいとは思うけど」

ちょっとした当てこすりも踏まえて。
彼女の統制の下で従業員たちも何とか恐慌から戻り、
始末やら調理やらを始める。

その結果として運ばれてきた麻婆豆腐。
それを取り皿によそい、レンゲで口に運びながら。

「ああ、これを聞かなきゃだった。
 お嬢さん、この町であんたは私の“お客様”かな?
 それとも“商売敵”かな?
 私は売り出し中でね。仲間か実績が欲しいんだ」

と、剣呑なことを言い放つ。


488 : 【天械御子】 :2017/07/12(水) 23:48:10 2t00/WJI
>>482

「ちょっと!」

甲高い声がまた、森に響き渡る。

「さっきは湖の反射でよく見えなかったけど、なにそれ。」

少女の蒼く輝ける翼を指す。

「人間じゃないなら、いいわよ、別に。
 まるで私が悪者みたいじゃない。」

はあ、と軽いため息。嫌味に、不敵に。
この黒い森から闇が溢れ出したらどうなるのかなど、お構いなしに。

木から跳び下り、一瞬だけとてもまぶしい輝きの翼を骨組みから噴射して、ふわりと地面に降り立つ。

「今夜みたいな月の日は、気持ちのいい風を夜風を浴びながら、清々しい気分で過ごしたいものでしょ?
 なのにここであなたを追い出したら……わかる?
 胸の奥がむかむかして、それどころじゃなくなるじゃない。

 決めたわ、むしろ、今晩はここにいなさい。」

 ―― 今夜を気持ちよく過ごす為に。

自分勝手、我儘、傲慢で、威圧的。

相手が座っていた場所の隣に近寄り、どかっと腰を下ろして、湖の方を眺める。
月明りの反射が輝いて、それは、とてもとても、輝いて。


489 : 【騎士三誓】 :2017/07/12(水) 23:49:26 AxkszHS6
――丑三つ時には、幽霊が現れる。
草木も眠ったであろう時に、一人の女騎士は裏路地を一人歩いていた。
別に自警などという崇高なことをしているわけではない。唯の散歩まがいのことだ。


ふと、何処かで声がした。恐らく男性のものであろうか。
このような時に聞こえる声には碌なものがない。それが一大事であったら尚更だ。
プレートの重みを気にすることなく、騎士は声のした方向へと走り出した。


「……どうされたのですか」

路地を数画過ぎたところで、ようやくそれらしい人影を見つけた。
なぜ彼が苦しそうに歩みを進めているのか。女騎士はそれがまず知りたかった。
怪我か、急病か、それとも他の何かか。それさえわかれば最善の行動を取るつもりだ。

しかしながら、彼が歩いてきたであろう道には大きな足跡がある。
多少の亀裂を伴うそれは、女騎士の彼に対する理解を更に複雑にしてしまったが。
相手の正体は未だ分からない。だが、剣は取らずにおく。


490 : 【形意神拳】 :2017/07/12(水) 23:58:01 wVbZ22LQ
>>483

その瞬間を、当然女も目撃していた。
男と話していたのが原因だろう、普段なら自分は家の道場にて型打ちでもこなしている頃だから。
とはいえこの程度、この能力者の街なら日常茶飯事。
普段と違う外出先で居合わせるか、それとも昼時のニュースで画面越しに眺めるか。
少なくとも女にとっては、その程度の違いしかない。

高らかな宣言は、さながら気高い騎士のごとき立ち振舞い。それを見守る自分が姫でないのは彼にとって大いに不満に違いないけれど。
現場に急行するのだろう男にばいばいと手を振って見送る。
さて、と伸びをして。暫く避難誘導を助ける男性を眺めた後、女の姿もその場から消えた。

――――

彼の移動のリズムに合わせて、木琴のような音が、一定間隔で付きまとう。
無視しても構わない。音自体に害はないし、危険な気配もなさそうだ。
だが、もし振り向くなら――――いや振り向かずとも。

「や。偶然」

後ろには、先程の女が今気づいたみたいな顔で立っているだろう。それも男から見てかなり近い距離に。
雑誌片手に鼻唄――は流石に歌ってこそいないが。
からころという下駄の音は、緊張と恐慌の入り交じる近辺には相応しからぬものであって。


「一応。質問」
「結構危ないけど。どうするつもり?」

男の性格を読み取れれば、答えは自ずと導き出せよう。
それだけに、場違いな問いをする女は単なる馬鹿か、それとも空気の読めない大馬鹿か。

「あと――。高いところ平気?」

近づけば近づくほど、見上げる首が痛くなる高さの巨大建造物。今やその雄大さは見る間に瓦解の一途を辿っていて。
勿論女の上にも、瓦礫や硝子片が雨霰と降り注いでいる。にも拘らずどんな理屈か歩みだけで、不規則にけんけん立ちするような歩法のみで、その殆んどを被弾から遠ざけていた。

その道すがら掛けられるであろう声。
断っておくが、女は通りすがりの無能力者である。
逆立ちしたって炎が操れたりはしないし、男のように日頃から剣を帯びている訳でもない。
にもかかわらず、何かを期待するような眼差しを、ちらちらと男に走らせるのだ。

「ちなみに。私は結構得意」

――正直、かなり面倒くさいかもしれない。
このどや顔を見れば、どんなに鈍い人種でもうっすら気づく程度には。


/すみません、今日はこれだけお返しして落ちます……


491 : 【天械御子】 :2017/07/13(木) 00:05:28 J8dfEJp6
>>482
/書き損じましたッ。今日のお返しはここまでになりますッ


492 : 【不煌翼使】 :2017/07/13(木) 00:05:43 HSlftuJA
>>488

「私は……私は幻獣人、です」

人類、人間の亜種。獣や幻獣の特性を内包し、その部位を幻のような精神体として持つ種族
ゆえに。人であって、人にあらず。人でありたいという気持ちを少し交えたような、言葉

「そう言ってくださるなら……」

と、と、と。覚束ない足取りで湖畔に戻るだろう。湖に足をつけていたのもの、捻った足を冷やしていたらしい
しかしそれを感じさせないように少し頑張って。ふらふらと歩いているように見せているのだ

「……」

暫しの無言、水の音

「……あの」

水面に映る月を見つめながら
風で揺れる影を見つめながら

「貴女は、優しいのですね」

久しぶりに噛み締めた親切―――本人がどう思ってるかは分からないが
それでも、都市を捨て、下手人の元に連れて行かれた日から

「ありがとう、ございます」

ようやく。人の暖かさに触れられた
先程まで冷たく見えていた湖と、酸っぱく感じていた林檎が
穏やかに、甘酸っぱく変化したような、気がした


493 : 【不煌翼使】 :2017/07/13(木) 00:06:09 HSlftuJA
>>491
/はーい!ありがとうございます!


494 : 【殴蹴壊則】 :2017/07/13(木) 00:13:59 kGAN0jOE
>>489

近寄る人影に、拒絶の表情を顕にする。
自らに近寄る関係なき者を拒絶するため攻撃する事には抵抗がない。しかし、関係なき者を壊す、殺す事は自らの立てた掟に反する行為。
今の自分では、何気ない所作でさえ彼女を殺してしまうかもしれない。

「……関係ない」

そんな危機的状況あろうとも、自分は人には、頼らない。
自らの目的、独善の為だけに破壊を行い、指名手配とまで呼ばれた自分が誰かに助けを求めるなどあってはならない。

振り払おうとしたが、全く力が入らない。
人を振り払えるくらいに力を抑えるつもりだったが、全く力が入らなかった。
力が0と100しか出せず匙加減が出来ない感覚だった。
脚の力も0になったように自重に耐えられず、再度崩れ落ちる。

「死にたくなければ…… 離れろ…ッ!」

全てを失った自分は独りでなければならない。
死に場所を無くし醜く生き永らえた今の自分が、何かを得る事などあってはならない。
注意勧告は最後の善意、破壊衝動に対する抵抗であった。


495 : 【天械御子】 :2017/07/13(木) 00:31:18 J8dfEJp6
>>492

ふーぅん…

相手の言葉、お礼まで聞いて、返したのは興味あるのかないのか曖昧な相槌。
実際は、湖の輝きに少し見惚れすぎている、だけ。
優しい、優しい、優しい。頭の中でその言葉を何度か唱える。

 ―― 私が?

「あんた、ちょっとおかしいわよ。」

横目で相手を視ながら、付け加えるように言った。

「高いツボ売りつけられて、ドツボにはまるタイプね。」

はん、短いため息。
しかしその後、急に、ぷふ、と息を漏らす。
肩を小さく上下に震わせ始めた。

「……つぼとドツボ…くふ。」

驚くべきことに、たまたま言ってしまった自分のダジャレが、正しく"ツボ"にはまったようだ。

「くふふ。」

……そしてそれは、"長い"。

少ししてからようやく収まると、

「ま、まあ、精々気を付ける事ね。人間に騙されても知らないわよ。」

などと、言って。



/まだ返せそうだったので、ひとまずここまで…っ


496 : 【騎士三誓】 :2017/07/13(木) 00:36:06 QpEaeVmU
>>494

――死にたくなければ、離れろ。其の一言で、女騎士は何となく状況を察した。
自らが自らのものでなくなる、統制を失うような感覚。所謂衝動と呼ばれるものだろうか。
だが、その一言を聞いても女騎士は微動だにしなかった。

「貴方を放ってはおけません」
「私は貴方の無事を、市民の無事を保証する義務がありますから」

彼が指名手配を受けているとは知らない。
故にこのようなことが言えるんだろうが、其の発言は本心だ。
彼を、そして市民を護る。それが自らの義務であり、そして使命であると。


「――何があっても、貴方をお護りしますから」

背に掛けた剣を右手に、左腕に嵌めていた塔楯を左手に構える。
彼がもし暴走したとしても、自らがそれを止めてみせると。
自信があるがゆえに、そう言ってみせた。表情は相変わらず硬いままだが。


497 : 【不撓鋼心】 :2017/07/13(木) 00:54:37 HtRv7Av6
>>490

――……崩壊の轟音が鳴り響く中であろうとも、後ろからついてくる音に気付かないはずもない。
肩越しにちらりと振り返れば、そこにいるのは先ほどの女性。なんとも涼しげな表情は余裕すら感じさせ、かつどこか白々しい。
男とて疾走しながら降り注ぐ瓦礫の雨を掻い潜っている最中だ、足を止めることはできない。
立ち止まって話すだけの時間などありはしないが……言葉を交わすことくらいはできる。

「決まっている、先ほど語った通りだ。元凶を討つ」

そして返す言葉は分かり切ったものだからこそ時間はかからない。

この災禍には見覚えがあった。それはとある異能力者が引き起こした事件、同じく大企業を狙った爆破テロ。
異様に動く炎を武器として建造物のすべてを焼き尽くし、中にいた人間全員を殺傷するという凶悪極まりない手口の犯行。
それは一組の男女によるものだという。宿す能力の詳細は掴めていないが、おそらくそれぞれ火炎と風を操る類のもの。

言うまでもなくその首には多額の賞金がかかっている。全世界で指名手配されているが、不思議と消息は掴めず目撃例すら稀だという。
とある企業の子飼いの能力者であるという噂が実しやかに囁かれているが……真相は闇の中。

ただ重要なのは、これらが絶対に見逃してはならぬ悪党であるということ。
生かしておけば災いを振り撒く、このように……。賞金稼ぎとしても、一人の人間としても、放置だけはあり得ない。

ゆえに男の決意は曇らない。
未だ怪我は完治しないが、それでも必ず討つと覚悟を決めて突き進むのみと決めている。
だからそれはいいのだが……。

……彼女はいったい何を言いたいのだろうか?
いや想像はついている。つまり同行させろということなのだろう。
先の質問からして危険性は承知しているはず。物見遊山のつもりということはないだろうが、ならばなぜ……?
正義感で動くタイプには見えない。であれば……ああ、もしや賞金目当てだろうか? 賞金稼ぎである自分が動いたことで利益があると見込み、報酬を目的として功績を挙げようとしているのか。

「――ならば助力を請おう。強き武人よ、貴女の力が必要だ」

なんであれ構わない。彼女が強大な武力を持っていることはこちらとて分かっている。
戦闘に加わってくれるなら、おそらく発生するだろう数的不利も覆せる。単純な戦力としても大いに期待できるだろう。
炎の中での戦闘は死の危険性が増すが、そんなことは今更言うまでもない。その危険を推しているだろうから、その上で何か言うのは侮辱というもの。

ゆえに往くのみ、怯懦は不要。
道すがら、おそらく対することになるだろう能力者たちの情報を伝えながら……男は振り返らずに突き進んでいった。


//了解しました、いったん乙です!


498 : 【不煌翼使】 :2017/07/13(木) 01:02:51 HSlftuJA
>>495

おかしい────そう言われ、思い出した言葉。「何も救えない」、と

「私は……そうですね。おかしいのかも、知れません」

掛けられた呪詛。それは今も刺さった針のように、時折ちくり、と痛む
自嘲的な表情で、聞こえるか聞こえないかの音を吐く


そう思えば、何やら笑い始める相手。そのツボは理解出来なかったが
凛と、雰囲気が変わる

「人間は、確かに悪事もします。ですが、全ての人間が、常に悪という訳ではありません」

それだけは、聞き捨てならなかった
一瞬でも、民の上に立った自分が、その言葉を認めるわけには行かないのだから

「皆、それぞれの事情がある。それだけなのです」

脳裏に浮かぶ炎に包まれる都市。泣き叫ぶ民。捕らわれた己。
逃げ出した日。歪んで叶えられた願い。轟音と硝煙の匂い。

……本当に?

内なる自分が問いかける。それを噛み砕くように、林檎を齧り、飲み込んだ

/ではこちらも!


499 : 【殴蹴壊則】 :2017/07/13(木) 01:09:05 kGAN0jOE
>>496

守る。懐かしい響きだった。昔はよく口にした気がする。
だから、自分に向かって言われる事には違和感があった。

「そうか……」

市民の命を守る。
今更何の感慨も沸かない言葉だがそれを否定するつもりはなかった。
先を考えず、ひたすらに自らの正義を貫かんとする。
その姿を昔の自分と重ねていた。

「だったら…… 死んでも恨むなよォオ!!」

赤熱を帯びた鉄のように、義肢が光を帯びる。
スチームパンクを彷彿とさせる蒸気を噴出し、薬莢のような円柱状の真鍮が手首の排出口から放たれる。

振り払う拳に力が漲る。その力鬼の如し。
その拳は、ただの怪力ではない。
パンチ力を凌駕する『破壊する力』を内包した拳。
ただの素振りが威力以上に防ぐ事が困難な究極の暴力だ。


/すいません、一度凍結お願いします
/返信は明日行えます


500 : 【諸塁槍拳】【土傭戦士】 :2017/07/13(木) 01:10:37 AI8MwHqk
>>487

それは僅かに、首をひねった。目を細めるのは相手の事を見透かそうとしているのか。

「”何を言っているのかわからないわ”」

「急にお客様やら、商売敵やら、ちゃんと説明できるように話さないと」

まあ、映るのはひたすら麻婆豆腐を食べている様子なのだが……コホンと、言葉をいったん止め
逃げ出そうともがく組員を手の力を僅かに込めることで黙らせながら(頭蓋骨の軋む音から、かなりの握力とわかる)
それは目の前の女と同じく、手ごろの椅子に腰を掛け、優雅に足を崩せば、ニコリと微笑みを浮かべた。

「私は、いわゆる鉄砲玉よ。この男を始末すれば、もれなく傷の治療費と成形費用をタダにしてもらえるのよ」



「……で、貴方は?」


501 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/13(木) 02:09:36 39C10Y.2
>>500

「犬なら人の道理はわからないのも当然か」

さらに運び込まれたエビチリ箸を伸ばしつつ、
麻婆豆腐をまとめて胃に放り込む。

「私は商売の話が分かる、まあそれに話をしに来たんだ。
 お前の飼い主と話ができるならともかく、伝令もできない犬に用はない。
 つかんでる骨でも貰ってジャーキーの1本でも貰うといい」

飲み下して、深い深いため息を1つ。
スーツケースをひっつかんで、立ちあがる。

「そうだ。整形の費用はいくらか知ってるの?


502 : 【土傭戦士】 :2017/07/13(木) 02:13:26 AI8MwHqk
>>501
/ぶっちゃけ中の人がよくわかってないので簡単な説明をいただけるとありがたいのですが…


503 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/13(木) 02:43:55 39C10Y.2
>>502
//あまり状況を説明せず、申し訳ありません。
//いろいろかみ砕くと、「目の前の相手を買収できるかどうか」です。
//傷が価値があると考慮しての言葉を用意しました。

//わかりにくい表現をしてしまい、大変申し訳ありませんでした。


504 : 【形意神拳】 :2017/07/13(木) 18:27:00 7vWNjgRg
>>497

「ま。ほどほどに。ね」

男の固い決意も何処吹く風と。ビルを見上げ呟く。
程々になんなのか、あまり無茶するなとか、過大な助力は期待するなとか。或いはそれ以外の意味か。

道中男が語るは敵勢の力量など。流石賞金稼ぎだけあって、その情報は不確定要素を盛り込みながらも個人の特定にまで至る綿密ならもの。
それを脇で並走する女は――

「ちっと黙ってて。邪魔」

ふしゅる、と荒々しい呼気で一蹴した。
外に居るだけでじっとり汗ばむ大気の中だというのに、女の額には汗一つ浮かばず。代わりに、前を見据える目付きは鋭く刺すような、呼吸は穏やかながらも力を蓄えた、湯気を幻視しそうなものに移行していて。
いつの間にか、疾駆するその姿勢も常人より身体半分程も低いものになっていた。

「手、出して」

数秒後、かなり下の方からの短い呼び掛けを最後に、女は“跳ぶ”。
たわめた身体をバネの如く縮め、限界まで引き絞られた弓が放たれる刹那。
彼が言う通りその右手に掴まれば一緒に、拒否するなら単独で。
その体躯は振り向くことなく、衝撃で粉微塵になった下駄を地面に置き去りにし。重力に逆らい斜め上の空へ駆け上がるだろう。

その飛距離、高さにしておよそ3m。

――――

武州に軽身功という技術がある。その名の通り身を軽くする身体技法で、古くは帝国に伝わった際には忍びの
者が隠密諜報に活用したという。水面の落ち葉に立ったり、木の枝から枝へ跳び移る、成長の早い麻を日に何度も飛び越える等。
早い話が移動のための技術。

ジャガーやレパードの猫科動物。密林に棲む彼らは、その獰猛性に加えて並々ならぬ瞬発力が注目される。人間とさして変わらぬ体格ながら、その身体で樹上生活を営むジャングルの生態系の頂点。
狩りの際も木の枝を利用した奇襲を得意とする事から、身軽さにおいては肉食獣の中でも上位だろう。目撃例には、若い雄のジャガーが5m離れた川向こうの木と木を往き来して生活していたというものもある。
彼らにとって10メートル走るのと、10メートル登るのは大差無い。と言えば分かりやすいか。

――――

「泊 梁山(とまり りょうざん)。以後しくよろ」

そんな声が風に乗って聞こえるかもしれない。
強き武人――男の過多な評価に思えるが――は端的に名乗りつつ、ビルの壁面に手を掛けるが早いか、同じ動作で今度こそ垂直に跳ぶだろう。
それを繰り返して、高層ビルを上る手間を大幅に短縮しようというのだ。
忍者はおろか蜘蛛にも負けない身のこなしである。
無論説明など一切なし。場合によっては邪魔されて行動自体失敗に終わる可能性すらある。伸るか反るか男の気概により二人の行動は分かれることになろう。


505 : 【騎士三誓】 :2017/07/13(木) 22:58:09 QpEaeVmU
>>499

「……一つ、私は貴殿の攻撃を一切避けぬ。

    二つ、私は貴殿へ嘘をつかぬ。

    三つ、私は貴殿への不意打ちを禁ず。
                          我が身に救いあれ
    以上を以て、騎士の宣誓とする。“Non est in me salus”」

男の両腕の義肢が赤熱し、蒸気を一気に噴出させる。
それを戦闘行為であると受け取った騎士は、三つの宣誓をした。
人並みならぬ身体能力を授かる代わりに、“誓いを反故にすることは許されない”。これが縛りだ。


「っぐ……!?何ですか、この力は……!?」

彼の拳を塔楯で受け止めた――筈だった。
拳が塔楯にめり込んだ刹那、ベキリと音を立てて鋼の塔楯が大きく凹む。
威力そのままに後方へ吹き飛ばされ、なんとか姿勢を立て直して着地する。

右腕の剣を中段に構え、地面を一気に蹴る。
数メートル走った所で壁面へ向かって疾走し、壁を蹴って空へ舞う。
そして彼の頭上を通過しそうという辺りで、右肩を斬らんと剣を一気に振り下ろした。

上手く行けばそのまま着地して彼と距離を取る。
あの一撃は脅威的で――さらに言えば“破壊”のみに特化したようなものだろう。
喰らってしまえば無事ではすまないだろう。額に汗を一滴流しつつ、そう考えていた。


506 : 【不撓鋼心】 :2017/07/13(木) 23:09:10 HtRv7Av6
>>504

――宙を舞う。
垂直に壁を登っていく動きは人間離れしたもので、しなやかな筋肉の動きは豹を想起させた。
その絶技を目にする者はこの状況下では存在しなかったが、ただひとり、その手につかまっている男だけは克明に捉えていた。
あまりにも唐突な行動、だが即応した彼に惑いも驚愕もない。まさしく眉も動かさず、駆け上がる武人の動きを視界に納めている。

「メルヴィン・カーツワイル。こちらこそ、宜しく頼む」

やはり見事なものだと、内心で惜しみない賛辞をかけながら。
黒と金の星は摂理に逆らい逆流れながら、業火の根本へと昇っていった。

――惨禍の紅を切り裂いて、炎の渦中に辿り着く。
燃え落ちる骨の臭い。沸騰する脂の音。生命が灰へと変わっていく、声なき絶叫の渦。
あらゆるすべてが火に投じられ、無事な物は一つもない。辛うじて炎上を逃れている物体すら、刻一刻と版図を広げる火の領土に呑み込まれて焼け落ちていく。
もはや生存者はいない。かつて人であったモノたちは物言わぬ黒い塊となって打ち棄てられている。

「……おやぁ?」

「へぇ……」

その中心に立つ一組の男女。
黒いスーツに身を包んだ姿は一見して一般人と変わらないが、この場に合って彼らをただの被災者であると認識する者などいない。
身に纏う空気が、災いを見据える眼の色が、明らかに暴力を基とする人間のそれだった。端的に言って、手慣れている。
恐怖は勿論、同様すら微塵もなし。この光景を当然と受け止めているのは、この者たちが災害の主犯であるからに他ならない。

「あなたたち、もしかして救助隊……なわけないわよね。ふふ、いったい何をしに来たのかしら」

語り掛けてきたのは女の方。
銀のセミロングと翠色の瞳は西洋の出身を予想させる。身長はそう高くなく、顔立ちは以外にも幼かった。
年の頃はおそらく二十になっていないだろう。十代後半、本来なら学校に通っていて然るべき年頃の少女だ。

「正義感に駆られた自称ヒーロー? それとも金目当ての賞金稼ぎ(ハゲタカ)ども? なんにせよ、もうあなたたちはを返すわけにはいかないんだけどね」

だが嘲笑を浮かべるその様は悪意に満ちていて、とてもじゃないが一般市民には見えない。
その少し後ろで苦々しげに顔を歪める男は、彼女よりは歳は上だがやはり若い。
二十代前半といったところだろうか。身長は高くやせがち、黒髪黒目の外見からは男が東洋人であることが窺える。


507 : 【諸塁槍拳】 :2017/07/13(木) 23:13:06 /dApLjqo
>>501

「”要らないわよ”────だって」

女の言葉を切り、それは五本の指に力を込めた。幹部の頭に沈んでいく指。

悲鳴が店に木霊して、幹部の頭が変形する。ばきりと割れる音が混じりて、声は止まる。
柘榴の様であった。熟れた柘榴を子供が戯れに握りつぶしたように、死体が出来上がる

「これで、お仕事は終わりだもの」

床に零れた眼球を、ごみの様に踏みつけながら足を組んだ。
懐から小箱を取り出せば、細い煙草を取り出し、唇に加えれば、従業員が慌てて近寄り火をつけた。
ふぁはあほ、と加えたまま礼を述べながら、目を胡乱に細め、薄いタールとメントールの刺激を味わった。

「安心してちょうだい、今は気分じゃないから”見逃してあげる”──ま、気分が変わる前に帰りなさい」

/ふむ、承知いたしました。まぁスーツケースの中身もわからないのと、このキャラ的にも
単なるバイト感覚で襲撃してたので、こんな感じの返しになるますね…申し訳ない


508 : 【電脳髄液】 :2017/07/13(木) 23:14:44 EtRe8/bs
星空煌く夜空と欠けた満月の夜。
鼻腔を仄かに擽る潮の香る海沿いの公園にて、劇が繰り広げられる。
脚本家は一人。役者は二人。その演目は――悲劇。惨劇。生の終わり。

『…あああ、何故だ。何故なんだ…
 何故、俺はこんな事を…してしまったんだァあああああ!!!!』

呆然気味に力なく打つむく男の手に握られるは、鮮血に染まる刃物。
その男の足元には、幾多もの刺し傷と流れる鮮血で息絶えた女性のような死体。
慟哭するその男は、社会的地位の高い人物でマスメディアでよく見る顔であった。

「何故?何故?何故何故何故?くくくっ、面白いことを言う
 この惨劇は君が起こした。君の手で引き起こされた。
 その手に握られた刃物で。君自身の意思を以って、確かに行われた事だ」

対照的に嘲笑気味に、脚本家気取りで脳内に染み渡るような声で事実を口にするのは白い男。
灰白色系の長髪と常に笑みを浮かべ、穏やかな態度をとっているのが特徴的な男であった。

この悲劇の内容は実に陳腐である。
能力者によって操られた男が愛しい女性に手を掛けたという単純明快な悲劇。
それも自身が脚本家たる能力者に操られているという自覚も無いままに引き起こされた悲劇。

「…ふむ、この駒はもう旬を過ぎたな。あとはハイエナ共が好き勝手に食い漁るだけだな」

悲劇に浸る役者と物言わぬ役者に一瞥を向けることなく興味をなくした白い男はその場を去ろうとする。
果たして、この夜。悲劇は悲劇のまま終わるのか。或いは――意図せぬ来訪者が舞台に上がるのか。

//置きレス前提になりますが、それでもよろしければ是非…!


509 : 【殴蹴壊則】 :2017/07/13(木) 23:30:37 kGAN0jOE
>>499
人体を壊さぬように鋼の意思で調整したつもりだったがその調整も不完全。
最低でも盾を粉々に破壊して腕を一つ持っていくくらいは致し方ない威力に抑えるのが限界だった。
頭は拒んでいても、壊し甲斐のある標的に腕がざわつく。破壊衝動を抑えられそうにない。

「うぉおおおおお!!」

およそ武術とは呼べない、降りかかる脅威を払うように拳を振るう。
あらゆるものを壊しうる力を持ち、同時に壊されない力を持った義肢は剣に肘打ちを合わせるという通常考えられない戦法を可能とする。
防ぐというより、剣を狙って右肘を打ち込んだような。狙いすましたような表情。金属と金属が打ち合う高い音が響く。

「避け……ねぇんだったな クッソ!!」

相手は先ほど、避けない誓いを立てた。
自分は普通の人間を殴る時は2〜4%、強化系相手でも5〜10%に威力を抑えて殴っている。だが今はそれが出来ない。
止めねばならない事は解っているのに、一つ余った左腕が意思に反して相手の鳩尾目掛けて飛ぶ。

「……避けないなんて迷惑な誓い立ててくれたお陰で、こうするしか無くなったじゃねぇか……」

しかしその拳が届く前に、剣を受け止めた右肘をスライドさせて、左腕を破壊する。
こうでもしないと、破壊衝動を抑えられず殺していただろう。


510 : 【形意神拳】 :2017/07/13(木) 23:58:59 OFr8xH/.
>>506

駆ける駆ける空を駆ける。
落下の逆回しよりも無駄がなく、背骨をしならせて低空姿勢で進む女は空気の抵抗さえも意に介さないようで。
途中掴んでいるのが億劫になったのか、そのうち背中におぶさるよう指示するだろう。
男が従ったなら、両手足を駆使した走壁技法は更なる冴えを見せ加速の一途を辿る事となる。

ごうごうと赤く溶け落ちる外壁が近づいてきた。
ひゅっと女の喉が鳴る。

「この辺?」


女の胴回し回転蹴りが窓ガラスを砕いて二人をビル内部へ導く。

バックドラフトのように拡がりかけた火焔にフウッ!!と――――その肺活量ほ或いは水棲哺乳類並みか。
飛び込む前にたらふく吸い込んでいた空気を口をすぼめて一息に。吐き出された息は突風となり、二人を包み込む炎の触手を押し退ける。
その隙に可及的速やかな足取りで、賞金稼ぎと武術家は殺戮の現場に踏入れたのだ。


「む。ざっつらい」
「まさに。通りすがりの。ヒーロー」

居合わせたのは無邪気ささえ感じる、年若い男女の組。
惨状の体現者たる彼女らに対して、女は怒るでもない、詰るでもない。
とぼけた顔でびしっと変身ポーズを決めてみる。
大真面目な口上はどうせ男の方がしてくれるだろうという、人任せな信頼感。

「あ、ハゲタカはこっち。……たぶん禿げてはない」

自分より背の高い男の頭を仰ぎ見ようとする。
ちなみに特に理由がなければ、男は未だ女の背に乗って居るかもしれない。
ここまでの道のりで息も乱さないのは正しく武術家らしいと言えようか。


511 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/14(金) 00:10:41 t2gQ/oDQ
>>507

「まあ、それならそれでいいんけどさ」

対照的に、饅頭にかぶりつく。
厨房からは、戦々恐々とした目がダース単位で観察していた。

「仕事の邪魔をするほど、野暮じゃないし」

饅頭をぺろりと平らげ、懐から薄めの札束を取り出し投げつける。

「見逃してくれるならそれでいいや。まだあったら、その時はよろしく。
 もう少し学があった方が話し甲斐があるけど、そのへんは高望みか」

収穫がなくなったということで多少は気落ちしたが、それくらいは予測の範囲内。
これの売り先を考える方が先決である。
彼女はトランクを手に店を後にする。

//ではこんなところで、お付き合いに感謝します。


512 : 【騎士三誓】 :2017/07/14(金) 00:10:50 0.4eXRtI
>>509

――剣に、衝撃が走る。手元がブレたと思ったときには、体勢が崩れているほどの。
そして下を向く体勢になれば、見えたのは鳩尾へ向かう拳。咄嗟に左腕を寄せる。
再び、衝撃。塔楯はその一撃で表層全体に罅が入り、そして騎士もまた吹き飛ばされた。


「はぁ、はぁ……。私だって、あの誓いを立てねば戦闘できないものですから……」

二箇所の窪みが出来た塔楯をちらと見て、視線を彼へ戻す。
どうやら、彼は自らの義肢を自らの手で破壊したようだ。未だに理性はあるようで。
彼を無力化するには右の肩、ないし腕を斬りつけるしか無いか、それとも他の手があるか――

とにかく、下手に彼へ攻撃を仕掛けないほうがいいと判断した。
塔楯を身体の前へ持ってきて、剣は下段に構える。彼の義肢が治りさえすれば、それでいい。
その場に立ち止まり、彼が動き出すのを待っていた。


513 : 【諸塁槍拳】【土傭戦士】 :2017/07/14(金) 00:27:14 oOZfC2m2
>>511
/はい、お疲れさまでした


514 : 【殴蹴壊則】 :2017/07/14(金) 00:30:51 8GpTj69.
>>512

「いや、いい…… 大分落ち着いた…… 勝手に暴れたり治ったり…… すまんな」

義肢を破壊した事で破壊衝動も収まった。
情けない話、破壊衝動は思考が義肢に乗っ取られるような感覚だ。
そして、収まる時はいつも以上に冷静になる。

自身の目的の為に手段も善悪も問わないが、それ以外には厭世的なだけで比較的良識者だ。
自身の問題で無関係な相手を傷つけた事を素直に謝罪する。
完全に腕は潰れてしまい、義肢であるため再生もしないだろう。
腕は壊れても問題ない、悪魔の兵器マジストラはそれでもまだ3つある。それぞれ一撃必殺の威力ゆえに戦力は殆どダウンしていないだろう。少し戦いにくく死角が増えるくらいか。

その場に座り込む。元から神経が通っているだけで血が通っていないため出血死はしないだろう。

「あんた…… 何者だ? 何故ここまでする?」

自身を凶悪な犯罪者バックランクと知っての事だろうか?
何故こんな凶悪な一撃を見て逃げない?
落ち着いた今、その事に興味をもった。


515 : 【不撓鋼心】 :2017/07/14(金) 01:47:36 9bbwv/fs
>>510

「はっ――」

なんとも緊張感のない姿を前に、少女は侮蔑の相をより深める。
見下し、嘲り、鼻で笑う。眼前の奴らは自分よりも明らかに格下であると判断したゆえの、大上段から見下ろす傲岸さが表れていた。
「功名目当て、金目当て。浅ましいわね、だからお前たちはグズなのよ。醜いったらありゃしない」

心底下らないものとして。取るに足らない連中として。
美しい眼は地に蠢く蟲を見るように冷ややかだった。本来なら関わることもない低位の人種だと決めつけている。
その自信、自分が絶対的な上位者であると確信する根拠がいったいどこから来るものなのか。
それは先ほどカーツワイルから少しだけ聞かされていた、少女の生まれに起因するものだった。

「黙るがいい、クリスティーナ・ローライゼ・ベルマイヤー。零落した威光にいつまで縋っている」

到着と同時に彼女の背から降りていた男が強い眼差しで見据えている。

少女の生家はとある国の貴族だった。地方において強い力を持っていた彼女の家は絵にかいたような悪徳貴族で、その性質は当然というべきか彼女自身も備えていた。
貴族であらねば人であらず。民衆から搾取するのは当たり前。逆らうどころか意見を具申することすら無礼千万で、そんな輩は即刻打ち首。
お前たちは私に奉仕するために生まれてきた。だからさっさと役目を果たせ。文句があるなら疾くと死ね。
それだけの権利があるのだから。たかが愚民を殺したからどうだというのだ、それで無聊を慰められるのだからむしろ光栄というものだろう。私を楽しませるために、喜び勇んで死んでゆけ。

あるがまま、望むがままに王者のように振る舞う蜜月は――しかし、唐突に崩壊を告げることとなる。

事業の失敗。資産を増やすため彼女の父が行っていた貿易業は、平民出の人間が率いる企業に裏をかかれて呆気ないほど簡単に破産した。
今までの反動のように一瞬で降り積もる負債の額。差し押さえられる家財道具、美しかった金銀財宝。
そしてとうとう私兵を雇うこともできなくなった瞬間、当たり前のように反乱が発生する。
無残に凌辱され吊り上げられる父と母……それらを見捨てた彼女は間一髪逃亡に成功した。
屈辱に塗れながら父と懇意にしていた貴族たちを訪ねて回るも、魑魅魍魎が跋扈する貴族社会において、力を失った存在など彼女がさんざん侮蔑してきた愚民ほどの価値しかなかったのだ。
こんなものを抱えるなどむしろマイナス――救う者など誰もいない。

そこからは惨憺たる有様だ。まっとうに働くことなど絶対に否。崇高なる私がなぜ愚民に混じらねばならないというプライドはかつてのままどこまでも高く、ゆえに生存を困難にさせる。
昔日と現在の落差を認めようとせず路地裏を這い回り残飯を漁る毎日。その中に会って憎悪の炎は衰えることなく火勢を増し続け、あらゆるすべてを憎んでいった。


//了解しました、あと続きます!


516 : 【不撓鋼心】 :2017/07/14(金) 01:48:11 9bbwv/fs
>>510

――そんなとき、ある日唐突に異能に覚醒する。
目覚めた力は風刃操作……自分を害する者らすべての首を、かつての父母と同じように刎ねてやろうと猛る彼女の心を反映したかのようなチカラだった。
以降は語るまでもあるまい。少女は目覚めた力を振るい、目につく愚民を害し始めた。流れる血、積み上がっていく死体の山、無軌道に暴れ回り続けた被害はもはや無視できる領域を超えている。
ゆえ討伐隊が派遣されようとしていた、まさにそのとき……少女は、とある企業に拾われることとなる。

「自らの出生のみを理由に罪なき民を弄び、訪れた凋落を省みることもなく、降って沸いた力を陶酔して振りかざす……なるほど、餓鬼だな。そのまま返そう、浅ましい」

紡がれた言の葉にかつての貴族の美しいかんばせに青筋が浮かぶ。
明らかに地雷だ、噴火直前の怒りが誰にでもよく分かる。しかしそんな様子をまるで斟酌せず、さらなる言葉の刃を繰り出した。

「自分は高貴な存在で? 奉仕されるのが当然で? それをしない社会が悪いと――だからお前は愚図だというのだ。頭が足りんにもほどがある」

真っ向から対峙する男の目に宿るは静謐なる怒り。
表には出ていないがその内部では、少女に劣らぬほど憤怒の炎が燃えている。

「この世は特定個人のためにあるものではない。誰もが様々な思惑で行動し、他者を押しのけてでも欲する願いがあり、誰かが勝てば誰かが負ける構造ゆえに報われない人間は存在する」

それは紛れもない悪への揺るぎなき嚇怒。
無辜の民を、陽だまりにて和む人々を、手を取り合って笑う善良なる市民を……。
我欲のままに害する獣を、彼は何があろうと赦さない。

「だがそれでも前を向いて歩き続けるからこそ、人は夢を叶えられるのだ。空虚な理論を盾に何の行動も起こさない者に掴めるものなど何もない。まして他者を害する人畜など排斥されて当然だ」

つまり因果応報。彼女に訪れた悲劇は不当でもなんでもなく、下って然るべき罰だと告げる。

「理解できんだろうが簡潔に言ってやろう――貴様は屑だ。魂が芯まで腐っている糞袋だからこそ、相応しい末路を晒すのだよ」

そしてとうとう言い放った一言に、クリスティーナは完全にキレた。
顔色は赤を通り越して蒼褪めている。その身で爆発する怒りを制御できていない。
最初はぞっとするほど静かな一歩を。二歩目を踏み出すその前に深く息を吸い込み、次の瞬間に烈火のごとく噴火した。

「――――殺すッッ!!」

「やってみろ」

そうして戦端は開かれた。
吹き荒ぶ風の刃を、鋼の剣が迎え撃つ。台風のように巻き上がる暴威は燃えつつあるデスク用品などを切り刻みつつ、殺意の応酬を繰り広げながら両者は遠ざかっていく。

その刹那、振り向いた男の目が彼女を捉えた。
“そちらは任せた”――つまりこの状況が狙い通りだと言っていて、片側の脅威に対する処理を一任したということ。

……残っているのは痩躯の男。
呆れたような表情を浮かべて嫌々といったふうに対峙する様子に戦意のようなものは見えないが……。
しかし、かといってこのまま見逃すという雰囲気ではなかった。


//これで終わりとなります、長すぎてほんとすみません……!


517 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 15:58:34 Ee9.goL.

ある街の昼下がり
熱を蓄えたコンクリートが陽炎をあげて景色を歪ませる。行く人の汗が落ち、跡ができても数分もせずに消える

対象的にとある喫茶の店内は冷房がゴウゴウと唸りを上げていた
夏の始まり、というには少し暑すぎる気もするが。暑さから逃げてきた人々が、ソファー型の椅子に座って思い思いに過ごしていた

カウンターの死角になるような、日に直接当たらないような、少し薄暗さのある席に少女は居た
年齢層が比較的高めの店からすると珍しいが、親子連れが子供を先に休ませていたりとありえない光景ではない

その少女のテーブルには蜂蜜の入ったミルクティーと、木苺のソースが掛かったバニラアイスと、少し溶けたそれを吸い込んだワッフル

「……」

店に入った人から見ればちょうど背を向けた格好。特徴的な、黒に斑の銀が混じった髪
ザクリ。とナイフがワッフルを切り分け、乗ったアイスが垂れる

「んちゅ……」

それを下から舐め取って。サク、とワッフルを口の中へ
何かを誘う様な仕草で、しかし若干気怠げな様子の少女は、咀嚼を続け
ごくり。と飲み下し、口の中奪われた水分を補給するように、かぷ、とミルクティーのストローを咥えていた


518 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 16:15:46 zpeHteVI
>>517
男もまた、暑さから逃げるべくその喫茶店へと現れた。

ボサつき気味の黒髪で学ラン姿の普通の少年だ。少なくとも見かけ上は。
これでも賞金稼ぎギルド『ワイルドハント』の一員だったりするのだが、
今は単に涼を取りにきただけの中学生と大した差は無いと言って良いだろう。

「すまんな、アイスコーヒーを一つ。」

少年は席に着き店員に注文を伝える。

と、暗がりの席に一人座る幼い少女の姿が視界に映った。

親子連れで親が後から来るのを待っているのだろうか。

歳の丈で見るに死んだ娘と同年代くらいだったので少し気に掛ったが、
あまり人様の子供をじろじろ見ていても良くないとメニューに視線を移した。


//すみません、ちょっと様子を見ます


519 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 17:12:54 Ee9.goL.
>>518

店内はほとんど満員。店員も先の客を相席に進めていた
視界の端。写った少年

「お兄ちゃんっ、こっち座らない?」

"獲物"になるかは分からないが、気紛れに
愛嬌たっぷり―――この年代にはこちらのほうが効く―――話しかける

「わたし、今日は一人だから、お話し相手になってほしいなっ」

態と口の端に紅いソースを付けたままにして。活発な、そして寂しがりやな少女を演出する
これが彼女の蜘蛛の巣、獲物を捉えるための罠の常。別段狙っていなくても、無意識に無防備を演出するのだ


520 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 17:30:05 zpeHteVI
>>519

――お兄ちゃんっ、こっち座らない?

ふと、件の少女に声を掛けられる。

「ん、ああ。構わんが。」

店員にその旨を告げて席を移る。

「どうした嬢ちゃん。親御さんはいないのかい?」

その口調からはどこか見た目より老けた様な印象を受けるだろう。

少年は、男はそれを罠だとも知らず、思わず、寄っていった。
警戒の色は無い。今は、だが。

こんな成りをしていても彼は有事には冷徹な狩人になり得る。
敵意、害意には職業柄敏感に反応するだろう。

獲物だと呼び寄せた其れは或いは無害を演じる捕食者だったなどと、
自然界に於いてはありふれた光景だ。


521 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 18:02:18 Ee9.goL.
>>520

じ、と座りきるまで、瞳孔が開いたままの黒い瞳で見つめるだろう
犬歯の牙は上手く隠しながら、口を開く

「うん、いないの!」

元気よく答える。それは最初から親が居なかった故に、大したことではない、と考えていたからで
悲壮感や、そういった負の感情は感じられないだろう。本来は感じられなければならないのだろうが
生憎情操教育が完了していない少女には、それを理解することはできなかった―――が、それを利用する方法は知っていた

「わたし、一人だから……お兄ちゃんがお話してくれるなら、寂しくないよ!えへへ」

糸を張る。物理的にではなく、倫理観への罠。庇護欲を煽りながら、暗に「自分を探すものは居ない」と、相手が行動を起こしやすいように
手の早い輩はこれだけで引っ掛かる。老若男女問わず、警戒を解き、懐に入るには万能の手段だ

「わ、お兄ちゃんコーヒー飲めるんだね!大人だね?」

にっ、と更に花が咲いた様な笑顔を

「わたし、コーヒー飲めないから、ミルクティー飲んでるの!」

ノンカフェインのメニューの中の、蜂蜜ミルクティー。子供がカフェインを避ける理由は幾つかあるが
この少女の場合はそれだけではない。蜘蛛の因子を宿しているせいで、飲むと酔っ払ったようになってしまうのだ
ともあれ、可愛らしく両手でミルクティーのグラスを軽く掲げてアピールし、またストローでちうちうと少し飲む


522 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 18:35:28 zpeHteVI
>>521

――うん、いないの!

悲壮を感じないその朗らかな返答は、帰って憐憫を誘った。

「そうかい、俺なんかでいいなら幾らでも話し相手になってやるよ。」

殊に目の前の少女は亡くした娘に近い年柄に見え、
余計に放って置けない心境になる男。


倫理へと延ばされた罠の糸は男の心を素通りしてゆく。

彼の心は今には無い。
遥かに遠き、――時間も、距離も、次元さえも。
遠き過去に其れを置いてきた。

恐らくは鋭い感性を持っているならばこの時点で気が付くだろうか。
此れは絶対に倫理(そ)の罠には掛からぬ手合いであると。

届けられたコーヒーを傾けながら少女の問いに応える。

「ああ。今でこそこんな成りだが。」
「信じるかい、これでもアラフォーのオッサンなんだぜ?」

少年期特有の声変わりしたての音域で、
学ラン姿で肌の皺などの老いを感じさせるもののない姿で語るのは余りに胡散臭く。

而して其れは紛れもない事実なのであった。


523 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 19:21:40 Ee9.goL.

>>522

「そうなの?お兄ちゃん、私よりちょっと年上くらいに見えるけど……」

もし。もし本当にそうなら、相手は何かの特異体質である可能性がある
少女の中の蜘蛛が興味を持つ―――獲物として

「ねね、お兄ちゃん、もしかしてすっごい人なの?のーりょくしゃ?だったっけ!」

異能力について、世に機関がある以上知っているものもいるだろう
それを踏まえて質問。もしそうならば、

「強い人、なの?」

無意識に牙を舐める。ちろり、と紅い舌の先が見えるかもしれない
相手が罠に掛かっていないなんて微塵も想像していない。この少女の知るのは、一定の手順とその結果だけ
そう教えられたから。そう本能が囁くから。それだけの動きと、流れ

蠱惑的に、瞳孔の開いた瞳でそちらを覗き込む
肌色がそちらの視界を少し侵す。改めて見ると、痴女的な格好。だが、少女の独特の雰囲気がそれを色気へと昇華する
さあ。"わたし"を犯しに、"私"の巣に入ってきなさい?


524 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 19:34:02 zpeHteVI
>>523

「凄いのか、強いのかはまた別の話としてだが。」
「ああ。能力者だよ。」

ちろりと舌先を覗かせて、此方を見つめる瞳孔の開いた瞳。

肌の露出の多い、扇情的な恰好の少女ではあるが。

男の心にあったのは只、娘を思う様な親心だけであり。

その心は一歩たりとも彼女の"巣"には踏み込んではいなかった。

「これこれ、お前さんくらいの娘っ子がそういうことをするんじゃあない。」

親心と云うよりは年寄りのお節介の方が近いだろうか。
だが事実、見た目とは裏腹に男の心は酷く錆び付き、萎び果てていた。


525 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 19:48:50 Ee9.goL.
>>524

「ご、ごめんなさい……。お兄ちゃんとお喋りするの、楽しくて……」

急にしゅん、とする。勿論演技だが、見破るのはプロでも至難の業

少女は知っている。諭してくる男も、結局一皮剥けば―――ということも
しかし、少女は知らない。「そう」じゃない男もいるということを。ある意味憐れだが、ある意味では幸運でもあった

「……怒ってる?」

上目遣いに問う。態とらしくない程度に、でも機嫌を伺う様に。
こうすることで、驚かせたお詫びと言いながら個室に連れて行った男が居た。
こうすることで、常識を教えてやると家へ連れ込んだ男が居た。
こうすることで、怒っているからお詫びの代わりに奉仕しろと木陰に引っ張った男が居た。
甘い甘い蜜―――致死性の麻痺毒と、罠

だが、

ど く ん

「ッ」

まだだ、待て、と己の中の蜘蛛を静止する

クエ、クエ、クッテシマエ、ココデ、タネヲモラッテシマエ
だめ。まだよ。相手はまだ釣れてない。
マチキレナイマチキレナイマチキレナイ
待ちなさい!

己の内での一瞬のやり取り。そっと腰のポシェットから無針注射器を取り出し、テーブルの下で、左腕の内肘に押し当てる
もしかしたらちらりとパッケージが見えるだろうか。そこには、黒い噂のある企業のロゴと、麻薬を意味する劇薬表示がされていた

(まだ、ダメッ……)

内心で焦りながら、己の蜘蛛を押さえ込む為に、薬液を流し込むだろうか


526 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 20:00:52 zpeHteVI
>>525

「いやいや、こっちも悪かった。」
「怒っちゃいないよ。」

男は、少年は静かな口調で返した。

少女の姿を見ていると我が子の最期が脳裏に浮かぶ。

駆けつけた時には事切れていた姿が。
呪いに憑かれ銃口を向ける姿が。
そして己が手で引鉄を引いた時の姿が。

此方で見つけたあの少女は別人だ。
あの子はあの子だけで救われるべきであり。
俺が居るべき場所は、"地獄"なのだ。

と、つい我を失ってしまっていると。
少女が持つ注射器のパッケージが見えた。

何処かの企業のロゴと、麻痺を意味する劇薬の表示。

「おい、何をしている!」

ひとえに其れは心配から上げた声だった。


527 : 【電脳髄液】 :2017/07/14(金) 20:02:41 PCxaz.iw
星空煌く夜空と欠けた満月の夜。
鼻腔を仄かに擽る潮の香る海沿いの公園にて、劇が繰り広げられる。
脚本家は一人。役者は二人。その演目は――悲劇。惨劇。生の終わり。

『…あああ、何故だ。何故なんだ…
 何故、俺はこんな事を…してしまったんだァあああああ!!!!』

呆然気味に力なく打つむく男の手に握られるは、鮮血に染まる刃物。
その男の足元には、幾多もの刺し傷と流れる鮮血で息絶えた女性のような死体。
慟哭するその男は、社会的地位の高い人物でマスメディアでよく見る顔であった。

「何故?何故?何故何故何故?くくくっ、面白いことを言う
 この惨劇は君が起こした。君の手で引き起こされた。
 その手に握られた刃物で。君自身の意思を以って、確かに行われた事だ」

対照的に嘲笑気味に、脚本家気取りで脳内に染み渡るような声で事実を口にするのは白い男。
灰白色系の長髪と常に笑みを浮かべ、穏やかな態度をとっているのが特徴的な男であった。

この悲劇の内容は実に陳腐である。
能力者によって操られた男が愛しい女性に手を掛けたという単純明快な悲劇。
それも自身が脚本家たる能力者に操られているという自覚も無いままに引き起こされた悲劇。

「…ふむ、この駒はもう旬を過ぎたな。あとはハイエナ共が好き勝手に食い漁るだけだな」

悲劇に浸る役者と物言わぬ役者に一瞥を向けることなく興味をなくした白い男はその場を去ろうとする。
果たして、この夜。悲劇は悲劇のまま終わるのか。或いは――意図せぬ来訪者が舞台に上がるのか。

//使いまわし&置きレスになりがちですが、それでもよろしければ是非…!


528 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 20:15:13 Ee9.goL.
>>526

「ん、んん……あぁ……ん、く…・」

流れ込む快楽。快楽。快楽。
激しく感じた血の巡りが落ちていく感覚。己と蜘蛛の境界がとろけていく。

目がとろん、と発情を示して歪む。男の性の部分を喚起するように、雰囲気が爛れたようにフェロモンを撒き散らす。
目の前の男の声が遠く聞こえる

おいしそう、おとこ、ほしい、ああ、えっと、なにをしてたっけ―――――

数十秒。或いは数分。蕩けた少女は椅子に倒れ込むように、体を預ける

「……どぉしたのぉ、おにいちゃん」

まだ少し心此処に非ずといった様子で、しかし瞳には意思が戻りかけている様子
舌っ足らずに、しかし惚けて男に返事を返すだろう


529 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 20:26:00 zpeHteVI
>>528

「おい! 本当に大丈夫か?」

目が座り、艶っぽさを纏い始める少女だが。
錆び付き、萎び、朽ちゆきながらも、
一生を妻と添い遂げると決めた鋼の心は一片も揺るがず。

故に少女に魅了されたのではなく、
少女を病院へと連れゆく為に彼女を店から連れ出そうとする。

店員には連れの具合が悪くなったと言って会計を手渡す。

或いはこれを罠に掛かったと勘違いをするだろうか。

「おい! 平気か?」

少年は少女に語り掛けながら病院を目指そうとするだろう。


530 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 20:32:28 Ee9.goL.
>>529

/病院を目指すというのは、抱えられてる状態というイメージで良かったですか?


531 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 20:34:34 zpeHteVI
>>530
//そんな感じで大丈夫です


532 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 20:45:44 Ee9.goL.
>>531

"波"が引くまではされるがままになってしまう
そのまま、少女は抱えられるだろう

「らいじょーぶ、だよぉ」

えへへぇ、と
少しずつ戻ってくる意識。そして今の状況を飲み込むと、そのままの体勢を決め込む

そして。人の居ない通路を通るその瞬間

「お兄ちゃぁん……?」

そちらの首の裏に手を回し。抱きしめるような体勢を取って
首筋に、キスをしようとするだろうか

―――狩りの、開始だ


533 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 20:46:14 Ee9.goL.
>>531
/ありがとうございます!


534 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 20:55:08 zpeHteVI
>>532
事態は緊急を要する様子だったので人気の無い路地を使って病院へと向かう。

その途中。

――お兄ちゃぁん……?

ざわり、と首筋に走る悪寒。

或いは其れは本当にキスをしようとしただけなのかもしれないが。

先刻も述べた通り、男は敵意、害意には敏感だった。
そして欠片ほども少女に魅了をされていた訳では無かったのだ。

突き飛ばす様な形になるだろうか。
少女の抱擁を振り払う様に逃れ、問う。

「一応聞いとくぜ。嬢ちゃん今何するつもりだった?」

少年は、臨戦間近と云った構えで少女を見ている。


535 : 【形意神拳】 :2017/07/14(金) 20:58:01 VvrDarAE
>>515-516

成る程、人を煽るときはああすれば良いのか。
時々無意識に他人を煽っている女は自らを棚にあげて、男の追及にうむうむと頷く。

男の思わせ振りな目配せ。
ぐっとサムズアップ。
その表情は煙草屋で雑誌片手に見せた其れとまるで変わりなく。

彼と彼女によって紡がれる、幾重にも交わる刃の嵐。
それが遠ざかるのを目の端で追いつつ、もう一人の役者へ水を向ける。

「ちっと。暖房強すぎない?」

言いながら指でボタンを2、3外して寛げた襟元。
通気をよくして肌色率をあげたところで、辺り一面赤であれば。さしもの女にも額や首筋へ汗が滲む。
東洋あがりとおぼしき男性へ呼び掛けるのは友人の家で漏らす不平のような気安さ。その態度はこの状況に危機感を覚えない異常人か、それとも胆力で押し退けているのか。

既に床や壁面は触れただけで肌が張り付きそうな熱を感じる。
裸足の女は見ての通り耐熱装備等は持ち合わせていない。
酸素も薄い中、この場に立っているだろうだけで危険だろう。だが、特に構えもなく不動。
後手必滅――ではないが、呼吸を整え、何かの拍子を計っているようでもあった。

/お待たせしました、今日も宜しくお願いします


536 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 21:19:38 Ee9.goL.
>>534

「あぅっ……!」

突き飛ばされ、ゴロゴロと転がる少女
……成る程?と内心思いながら

臨戦態勢を取る相手。警戒されていたらしい―――まだ、白を切るべきか

「ご、ごめんなさい……こうすると、オトコの人は喜ぶって聞いたから……」

微妙にチグハグな答え。情欲に飲まれている少女には理解できる理由だったが
たいていこのような状況では、男側も色香で惑わされている事が多く、多少の齟齬はごまかせたが

「……怒って、る?お兄ちゃん」

無防備を演出する。まだ、バレてはいけない


537 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 21:30:30 zpeHteVI
>>536

「親が居ないって言ってたな。」

少女のチグハグな答えに耳を傾けながら、しかし警戒は解かない。

「"そう"しなきゃならん様な生活をしてきたのか?」

まだ年端もいかない少女が男を色香で惑わし生きなければならなかっただろう状況を鑑みる。

「もしそうならウチん所のギルド連中に言えば。」
「あの山荘の部屋の一つくらい貸してくれるだろうよ。」

――怒って、る?

「怒っちゃあいないさ。」

其処に有ったのは只管に憐憫の感情だった。


538 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/14(金) 22:19:31 Ee9.goL.
>>537

「うん……」

上手く同情は引けたらしい。色香は効かなかったが、まあいいだろう、と
さてどうするか。どちらにせよ、寝首を掛ける状況に持ち込まなければいけない

屈強な男と正面から戦うのは、最後の手段だ

「……」

して、男は定住を貸そうと言っている。これは

「ううん、いい。わたしの居場所じゃないもん、そこ」

怒っていないと知って、少し安心したが
定住を持つ訳にはいかない。弱みを見せたら殺される。それだけは己に叩き込まれている事実
安心できる場所などない。それは己がそうやって殺してきたからだ

「……」

でも。少し考えた。
殺してきた者は、皆、きっと居場所があった

「……うん。いらない。」

胸の奥が少し痛い気がしたが、きっと、気の所為


539 : 【逸界斬檄】 :2017/07/14(金) 22:30:23 zpeHteVI
>>538
同情は、憐憫は抱けど、一度違和感を感じた男はそう簡単に接近を使用としないだろう。

この街、――男の言うこの街と云う単語には彼方の世界も含まれているが。
この街に於いては女子供であろうと油断はできないのだ。

其れは痛む程に実感してきただろう。

定住の場所を与えるという提案を、しかし断る少女を見る。

「……嬢ちゃんの居場所は何処にある?」

男は、少年は少女の犯した罪を知らない。
そして彼女の境遇を、生まれ落ちた環境を知らない。
しかし、目の前の少女に帰るべき場所があるのだとは到底思えなかった。


540 : 【重層剛筋】 :2017/07/14(金) 22:34:24 VvrDarAE
>>527

「いや、これからだぜ。テメエの幕引きはよ」

その時公園に第三者の声が届く。
スーツを着崩したようなその影は、満月に照らされているといえ、ひどく長く。
立ち塞がっていた入り口から、彼らへ向け踏み出した足音は、やけに重く響いた。

「すまんミスター、大事な時に守れなくてよ」

慟哭する男は、見覚えがあるだろうか。警護担当の警察が寄越したSPたちの中にいた、男と見まごう長身ながら紅一点の女を。
覚えがなかろうと、その女は男の傍に立ち、疲労と隈の濃い目で彼と彼の愛しき人の亡骸を見やる。その瞳に本当に申し訳なさそうな色が浮かんでいたのも一瞬。
向き直ってその両眼は白の男を睨み据え、肉食獣の如く歯を剥いた。
広げられた両腕は獣の顎――これからお前が、食い散らかされる番だと。


「よう傀儡廻。ちと迂闊なんじゃあねーか?」

現場をうろつくなんざよ、と唇を歪める。
状況証拠だけ見れば、刃物を持つ男が犯人であるのは明白。
だがそれが些末な事に思える程、目の前の白の男は異様の塊であると、日々犯罪と向き合う女の勘が警鐘を鳴らしていた。


/警察関係内では顔と名の知れている感じで絡んでみましたが如何でしょう?
/まずいようなら異名を呼んだ部分だけカットしてください
/勿論、逆に此方のキャラの能力や設定を知っていても構いませんので……!


541 : 【不撓鋼心】 :2017/07/14(金) 22:42:30 9bbwv/fs
>>535

「…………。――――」

はあぁぁ、と深いため息を吐く様はどこか彼女と似通ったように緊張感というものが欠如しているようにも見えた。
正確に言うならなくもないのだが、前面に出ているのは張りつめた空気というより面倒そうな雰囲気。
厭世的とでもいうのだろうか……いずれにせよその態度はこの状況には似つかわしくはなかった。

「あぁそうだな、俺もそう思うよ。なんだってこのクソ暑い中我慢大会なんぞやらにゃあいかんのかねぇ」

言いつつ、黒いネクタイを緩める。
気だるげな三白眼が彼女の姿を捉えた。黒い眼にはやる気というものが感じられず、周囲の業火に反比例するように冷めていた。

東雲海堂(しののめかいどう)――年齢不明、国籍不詳、彼の情報は相方以上に挙がっていない。
どこからやってきたのかも、何を目的としているのかも分からない。名前すら本当のものか判然としない。
ただ一つ、分かっているのは彼が火炎を操る能力者だということ。その力とクリスティーナの風を組み合わせて幾つもの企業を火炎の墓標と化さしめてという事実だけ。
そして首代を挙げんとした賞金稼ぎたちを何人も返り討ちにしてきたのならば……どれだけ脅威性が薄く見えようとも、侮ってかかっては絶対にいけない相手だということは確かだった。

「しかもただでさえ面倒だってのにまた新しい仕事が増えたんだからなぁ……手間だねぇ、本当に嫌になっちまうよ」

ぼりぼりと頭を掻き、またため息をつく。
しかし……しかし、彼女には分かるだろうか。
スーツの下の筋肉に力が流れ始めている。炎に紛れるようにして位置取りを微調整して、呼吸音すら少しづつ深いものに。
それは巧妙に隠された殺意の牙――明らかに、しかも相当な練度で武術を修めた人間特有の、静かなる戦闘態勢への以降だった。
狙っているのは一撃必殺。奇しくも彼女と意図を同じくして、瞬殺を目的に気を練り上げている。

「だから――」

微かに、その身が撓む。
五指は指先まで開かれ、膝は力なく折れ曲がった。
その、次の瞬間――。

「悪いな嬢ちゃん。死んでくれ」

豹の如く、最小から最大へと一気に肉体のギアを引き上げて、黒き颶風となって襲い掛かった。
繰り出されたのは抜き手の一撃――狙っているのは胸の中心、すなわち心臓。
人体など軽く貫通する研ぎ澄まされた徒手空拳が、ここにもう一つの戦いの火蓋を切って落とした。


542 : 【天械御子】 :2017/07/14(金) 23:08:57 vq1jheqQ
>>498

ピク、眉がひくついた。
苛立ちを隠しもしない。鋭い視線で睨み付ける。

「善悪なんてどうでも、いいのよ。
 私にとって害があるから、嫌い。それだけ。」

そう言い放つ。
視線をまた湖の方へと戻し、水面に顕れたもう片方の月を見つめた。

「それに、今は哲学の話をする時間じゃないわ。」

細長い骨のような背中の一対は、揺れて、そして、しおれるように垂れる。

「人間と仲良くよろしくしたいなら、どうぞご勝手に。」

むしり。地面の草をむしり取って、湖に投げつけた。
だが、突然吹いた風に邪魔され、それは宙に散った。

「勝手にすれば。」



/遅れました…!すみません。


543 : 【電脳髄液】 :2017/07/14(金) 23:17:27 PCxaz.iw
>>540

何時も通りの焼き直しの脚本。自身の筋書きに飽いていた矢先の出来事。
只ならぬ風貌の人物。自身を異名で呼ぶそれは並々ならぬ敵意と警戒心をむき出しにしていた。

(喜べ…人形。筋書きに無い乱入者のお陰で再びお前に駒としての価値が生まれた
 くくっ、危険に身を委ねれば偶には未知の展開が訪れるか)

未知なる展開。筋書きに無い展開。絶対的優位に居たモノが無残に食い物にされかねない時。
彼の脳内で新たな筋書きが湧き出るこの状況に思わず笑いを零しそうになるが、それを噛殺して。

「やあ、今晩は。始めましてとでも言うべきかな?」

敵意と殺意を向けられて、なお不動。穏やかな表情を崩すことなく。
暖簾に腕押しという言葉の通り、彼女の敵意と殺意を受け流してなお心乱れる事無く。

「初対面なのにその言葉と表情はつれないな。まるで人の形をした獣だ。おお怖い怖い。
 それに傀儡廻とは一体何のことか…解らないな。今までそんな呼ばれ方をした事はないよ
 人違いでは無かろうか?それに迂闊とは意味が解らないな。」

わざとらしく大仰に肩を竦め、偽りの困惑を滲ませようが恐らく見抜かれるだろう。
だがそんな事は瑣末な事でしかなく、また口にした言葉は全て本心であり牽制である。

今は舌の上で飴玉を転がす様に、スリリングを楽しむ彼だがその気になれば危機を脱するのは容易い。
そんな過信にも似た自信を裏付けるのは、SPたる彼女のそばに立つ男が彼の能力の支配下にあるから。
付け加えて、彼女の傍にて慟哭し続ける男は駒であり彼女を窮地に陥れるトラップであるからだ。

//お待たせいたしました!
//名前と顔、異名に関してですが知られている感じでも大丈夫ですよー


544 : 【騎士三誓】 :2017/07/14(金) 23:20:12 0.4eXRtI
>>514

「落ち着かれたのなら良かった」

隕石でもぶつけられたかのように二箇所が大きく窪んだ塔楯を左腕に嵌めた。
そして右手に構えていた剣を背に負えば、戦闘態勢は完全に解かれたも同然だ。


「私はアネット・ロワイエ、奉仕活動を主にしている者です」

何者だ、と問われれば名前と身分を以て応じる。
騎士としての活動もあるが、アネットの場合は奉仕活動を主としていた。
今のことも、奉仕活動の一環と言われればそうであるが。

「いえ、貴方が困っていらっしゃったようですので」

理由は、たったそれだけ。
たとえ相手が悪人でも善人でも、目の前の者を助けない理由はない。
それがアネットの信条であり、騎士としての“矜持”でもあった。


545 : 【形意神拳】 :2017/07/14(金) 23:26:01 VvrDarAE
>>541

彼女は、一つ見誤っていた。
それは男――――東雲海堂が能力にかまけた一般人ではなかったという点。
最初に見た相手が貴族出身の素人だったというのもあったろう。つまり思い込み。
また、普段と異なる状況とは、時にその観察眼を曇らせる。
熱気が集中を奪い、低酸素が思考力を削ぐ。普段なら気づけていたかもしれぬ、男の巧妙な身のこなしは、陽炎の揺らめきによって、彼の戦準備を巧妙に隠蔽していた。
額を流れる汗が、瞼を伝い、目に入る。
無意識に瞬きをひとつ。そして目を開いた時には既に、弾丸のような死が間近に迫っていた。

――――――――!

ぱたぱたと飛び散る鮮血。
硬直していた女の身体が、衝撃に傾ぐ。




「――炎使いって聞いたけど。
ハゲタカ君の勘違い?」

だが、その臓腑はいずれも無傷であり。代わりに件の五指は女の掌を貫いていた。
その防御は、半分成功と言えようか。
即死コースだったのを辛うじて負傷にまで留めたのは左手。しかし、本来なら前腕を絡めて軌道を逸らし無効化する防御技は叶わず。
男に挙動が遅れながらも防げたのは、狙いが心臓という、女にとって“見慣れた”攻撃線だったから。

貫通した穴から鮮血が滴る。痛みに眉をしかめつつも、床に落ちたその一滴目が蒸発する前に、体重移動を終えて。
踏み出した足に遅れて突き出され――まだ宙にある爪先に追いつき――踵が触れるより速く追い越していく右拳。
緩く握られたそれは男の水月(みぞおち)に到達すればその瞬間石のように固く絞り込まれる。
中段順突きの手本のような型は、しかし男の回避を簡単には許すつもりはなく。
理由は彼の放った貫手、これを離さぬと強い力で握るは貫かれたままの左手である。
拳を放ちながら同時に反対の手を引き、体勢を崩そうとしていたのだ。
単純に突くよりは避けにくさは格段に上がるであろう小技。
しかし突き刺した指を引き抜けば話は別である。
状況からして彼もまだ本気を出しているとは言い難い。場合によっては完全回避されても不思議ではなかった。


546 : 【重層剛筋】 :2017/07/14(金) 23:46:12 VvrDarAE
>>543

わざとらしい弁明に女の額に青筋がたつ。
しかし数秒後には唇は捲れあがり、歪な笑みのかたちに。
くっくっと喉奥で声を漏らす。聞いた通りだ、と。


「流石だぜ傀儡廻、聞きしに勝る演技派だ。 いや演出家、脚本家だったか?」

「テメエの犯行がいつもくどいくらいの悲劇で締められるのは知ってる。」
「だが、脚本家は裏方らしく、袖幕で見てりゃあ良かったんだ」
「そうすりゃ私に見つけられずに済んだのによ」


迂闊ってのはそういうことさ、と言外に嘲笑い。
守るべき男性へ下がってろ、と軽く手で制する。
目の前の男は未だ余裕綽々だが、諦めたか――――まさか、まさかだろう。
だが、例え懐に柔を呑んでいようと、公園を機関銃の群れに囲まれてようと、女には切り抜ける自信がある。
心配なのは護るべき標的者だけ。後はあの薄ら笑いに拳を叩き込み、前歯ごと一緒に意識を断ち切るだけだ。

右ストレートでぶっ飛ばす。
そう考えた女はその通りに実行する。
長い腕を弓のように引き、身体を捻って大きく前へ。野球のピッチャーのようなフルスイング。
思考を読む異能がなくとも明白な、しかしその分重厚な。半端な防御を許さぬ一撃が風をきって男の頭部に迫った。


547 : 【鐵蠍尾獣】 :2017/07/14(金) 23:50:47 8GpTj69.
>>544
「……そうか、次に衝動(コレ)が来たらこうやって止めればいいのか」

義肢を破壊して身体から分離させる事で、義肢による支配を脱する。
何度も出来ない上に取り返しの付かない裏技を、平然と言う。
普通なら考えられない選択だろう。腕を切り離すなど。
戦えなくなると困るので最後の手段になるが、覚えておいて損は無いだろう。

「俺は…… シャル……ル=セブンスランク……」

バックランク。多くの戦場で多くの物を壊し、奪ったその名は私的な恨みも、公的な罪も多く重ねている。
この名を言えば再度戦いになるかもしれない。
腕一つ失っても問題ない相手だが、この片腕では仮に100%制御できていても手加減できそうにない。
咄嗟に出た偽名シャルル=セブンスランク。いくら何でも本名(それも渾名のような物だが)と大差が無いのでバレるかもしれない。

「助けたい…… そう思っているなら一つだけ、アンタに頼みたい事がある……」

善人である事は間違いないだろう。だが立場上、完全に信用する訳にはいかない。
それでも、これくらい真面目な人間でないと、頼める事ではない。

「アルバート=ウィーアード…… 医者をしている筈の男を…… 探して欲しい」

頼むと言うより、利用するに近い。

「戦闘能力は殆どない、逃げる力も恐らくは持ってないだろう…… 場所さえ教えてくれれば、それが一番助かる……」


548 : 【重層剛筋】 :2017/07/14(金) 23:52:29 VvrDarAE
>>546
/だが、例え懐に柔を→だが、例え懐に銃を
/誤字訂正です、失礼しました


549 : 【不撓鋼心】 :2017/07/14(金) 23:56:02 9bbwv/fs
>>545

――必殺を確信した一撃だった。
燃え盛る炎が黙っていても体力と判断力を奪っていく、この状況下。
相手にとっては不慣れだろうがこちらにとっては手慣れたものだ。幾つもの災禍を引き起こしてきた男にとっては、こんなもの単なるいつもの仕事場にすぎない。
地の利はこちらにある。だからあちらについてもそう簡単に負けはしないだろうが、今すべきは可能な限り早期の合流を果たすこと。

ゆえに初撃での決着、これを狙う。
無為に長引かせることは不利益しか生まないのだから、様子見は不要。
それこそ全力を振り絞ってはいないが、確かに本気を込めた抜き手だった。
これまで何人もの命を屠ってきた暗殺拳。それは今回も狙いを外さず、一瞬の下に雌雄を決するはずだったのだ。

しかし――。しかし、男は一つ、見誤っていた。
奇しくも対する彼女と同じ。相手が武術家であろうことは分かっていたが、その力量を図り損ねていたのだ。
できる、そうは思っていたものの……この若さで達人級とは夢にも思わなかった。
まさかこんなところで、このタイミングで、これほどの使い手が邪魔に入るなどなんたる不運。どこまで自分は貧乏くじを引かされるのだと、顔をしかめて舌打ちした。

「ああそうさ、俺は単なる無能力者ですよっと……!」

繰り出される反撃を回避しようと動いた足が“がくん”と止まる。
目をやれば不発に終わった抜き手を、その掌が強く掴んで離さない。
必然的に男の動きは鈍り、再び足を踏み出したその時にはもう回避不能の状況に陥っていた。

「ちぃ――」

命中――鳩尾に走る衝撃を逃がすように身を捻り半回転したが、完全に威力を殺すことはできない。
受けるダメージの何割かは減衰させたものの、それでも激痛がその身を襲う。
食いしばって堪え、貫き手を引き抜いた反動も加算させた裏拳を放つ。
その向かう先は側頭部。さすがに頭蓋骨ごと破砕する威力はないものの、直撃すれば激しく脳を揺らせるだけの勢いは乗っていた。


550 : 【騎士三誓】 :2017/07/15(土) 00:05:49 5cDSH1lg
>>547

「それ、腕は大丈夫なんですか……?」

無理やり義肢を破壊して身体から切り離す。
こうして止めるのは良いのであるが、何らかの支障は無いのであろうか。


「シャルル・セブンスランク」

聞き覚えがある気がしたからか、彼の名を呟く。
――ふと、脳裏に浮かんだのはバックランクという罪人の名。
だが、疑ってかかるのはいけないことであろうと其のことは忘れてしまった。

「ほう、人探しですか」

アルバート=ウィーアード。彼は其の名の医師を探しているらしい。
引っかかったのは、戦闘能力と逃げる力という単語。一体彼は何をしようとしているのか。
先程の罪人の名も引っかかった為か、アネットは一つだけ質問をした。

「そのアルバートさんと、何かご関係が?」


551 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/15(土) 00:05:55 mL0Fi7hc
>>539

ゆっくりと掌を上へ―――路地の屋根側へ向けながら

「無いよ」

きっぱりと言い切った

「私の居場所なんて」

変わる雰囲気。ヒトとしてのそれを逸脱した人外の雰囲気
わからないけど、悔しい気持ちが、湧き上がって

「あんたに、何がわかるのよ」

手首から糸を射出――ビル街の屋根へ、跳ぶだろう

「馬鹿じゃないのッ!!!」

そして、左手首から糸をそちらに射出する
毒液―――視神経の毒を付着させて。もしか擦り傷でも負えば、毒液は体内に入るだろうか
しかし、能力者である以上、毒に耐性がある可能性もある

そしてなにより――感情任せの一撃が、当たるかどうかという所でもあるが


552 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 00:16:15 mL0Fi7hc
>>542

「……」

草を投げる女を見て、少し、思う

「何か、あったのですか?」

自分は人々が助け合うのを見てきた。感じてきた。触れ合ってきた。
しかし、相手はそうではないのかもしれない

だから

「私は、貴女とも、仲良くなりたいと思っていますよ」

そちらの隣に座ろうとするだろう
そして、笑いかけるはずだ


553 : 【電脳髄液】 :2017/07/15(土) 00:17:28 eXVwexWw
>>546

己の筋書きをここまで調べ上げられている事に感嘆する彼は
口角を僅かに吊り上げ、とぼけた演技を止めることにした。
それ即ち――傀儡廻の本性を露にする事と同義である。

「ふむ。如何にも。私は脚本家であり、同時に演出家だ。
 それに脚本家が裏方に徹するべきだと言う指摘は至極真っ当だ。
 しかしね―――それでは在り来たりで食傷気味なのだ。色褪せているのだ。」

彼の心境は諦めとは程遠く。依然として余裕を崩す事は無い。
彼女と相対している今この時でさえ彼は新たな脚本と演出に思考を張り巡らせている。

自身の傀儡たる男が彼女に制止されている間に彼は能力を発動させ自身に生体電流を流し。
人並みならぬ身体能力を得て、回避に徹するだけ事を決める。正面から戦う事は無い。
彼は脚本家であり、彼女や彼女が護ろうとする男は役者である故に。

彼女の重厚で油断を許さぬ右ストレートの拳をしゃがんで回避した彼の次の一手。
それは――言葉による篭絡。蛇が得物に絡み付くかのような、毒物のような言葉。

「君の仕事は護る事か。君の役割は護衛対象からあらゆる障害を退ける事か。
 実に清らかだ。命を護る。命を救う。とてもとても清い事だ。
 護りし者はとても美しいのだろう。だが同時に愚かだ。無知蒙昧とでも言うべきか」

彼が紡ぐ言葉。それは彼女の在り方を肯定する言葉であり賞賛でさえある。
けれどそれは字面のみであり、彼の本心は単に彼女を蔑む言葉だけである。
そして彼の言葉の意味するものとは―――

―――キミの前に立つものが、傀儡廻であると知りながら。
―――護りし者の背に座している者が背中刺す刃であるとも知らぬとはな。

その瞬間、彼女の背後から思いもよらぬ刃が襲い掛かるだろう。
それは、彼女が護ろうとした者が握る鮮血に濡れたナイフである。

男は依然として慟哭したまま。哀しみに打ちひしがれたまま。
幽鬼のようにふらりと立ち上がり。彼女こそが仇であるかのように背後から襲い掛かる。


554 : 【殴蹴壊則】 :2017/07/15(土) 00:21:41 3Ia9Ya0I
>>547

(あ、コイツ真面目だけど馬鹿だ……)

言ってからすぐにバレそうと思ったのに何も言われなかった。
失礼極まりないが、こういう事を考えてしまう性格なのだった。

「問題ない ハンデっつう意味ならまだ足りないくらいだ」

強がりではない。
この義肢が本領を発揮したら通常の能力者の戦闘力の水準を遥かに上回るのだから。
困るのは、バイクで公道を走れない事とタバコを吸うのに手間取るくらいか……
もともとバイクは今の状態ではペダル踏み抜きかねないので諦めていたが。

「……」

関係性。どこまで言うべきか。
自身を裏切り、何かの目的の為に自身を研究機関に売り、死ぬ自由と能力を奪った男……

「見ての通り、この能力は人工的に作ったモンだ…… この義肢を作ったのがソイツ……」

バレないように嘘を重ねる事も出来るが、万が一バレた時に何が起きるか解らない。
真実を知る者にとって、この義肢は使い手ごと永遠に闇に葬らなければいけない危険な武器なのだから。
真実を、あたかも核心を曝け出したかのように、問題ない程度のみ教える。


555 : 【逸界斬檄】 :2017/07/15(土) 00:24:46 uKFjKXpw
>>551

――無いよ。

その言葉を境に少女の雰囲気が変わる。
人外。ヒト非ざる者。

その姿は正しくあの日の悪夢と重なって。

「ああ……何もわからんさ。」

【カットラス。投影(ダウンロード)。】

右手に湾曲した刀が生成される。

それを以て少女が左手から射出した糸束を切り落とし、
ビル街の屋根へと跳んだ少女を見る。

「俺らはたまたま喫茶店で居合わせただけ。」
「嬢ちゃんの事は何も知らん。」

「結局俺は何一つとしてわからないままさ。」

右の片刃刀は糸による攻撃に備え残し。

【木刀。投影(ダウンロード)。】

左手に新たに木刀を生成して、少女本人が飛び込んできた時に備える。


556 : 【形意神拳】 :2017/07/15(土) 00:34:11 Ju6dbf3.
>>549

(死合の間合い。久々……)

回避不要、全攻撃が命を脅かす必殺の間合い。それを女は死線と認識する。
特別な能力や武器を使わず、己が肉体のみで其処に立てることを、また同じ間合いに彼が立つことが。背筋をぞくぞくと粟立たせる。
それは紛れもない恐怖。
だがそれは背骨を伝う間の何処かで書き換えられ、脳に歓喜として誤認識をもたらす。結果自ずと口角はつり上がり、無表情な女の顔に久々の笑みが浮かんだ。

突きは最適なタイミングをずらされ透かされ、威力は7割減というところか。
にちゅり、とおぞましい音で貫手が引っこ抜かれ、その勢いに遠心力を加えた血濡れの裏拳がすっ飛んでくる。
それを女は肩をすくめて、額で受けた。



「――――ッッ、!!」


瞼裏に火花が散る――床が近い――
今度こそ身体が傾いでいる。
認識が先か本能が先か。左にぐらついた胴体を追って、右の爪先が跳ね上がる。
軸足の返し、骨盤の捻り、体軸の旋回――鞭のごとき撓りは、放物線の最上段でトップスピードを獲得する。
右の上段回し蹴りは風を巻いてそれこそ男が放った必殺を上乗して彼の細い顎へ襲い掛かった。


557 : 【天械御子】 :2017/07/15(土) 00:41:25 77PZ3CpI
>>552

「あるに決まってるでしょ。」

笑いかけられても、優しくされても、彼女は、機械は、その白金色に輝くフレームのように、冷たい。
冷却ファンの小さな回転音が、少女の背中から鳴っている。
プロセッサの処理に、誰かが割り込む余地はない。

「ここであなたと微笑み合って、明日の希望の話をして、
 感極まってハグをして、みっともなく涙を流す。

 そういう世界もあるかもしれないけど、わかるかしら。
 ここはそうじゃない。」

腰を少し持ち上げて、相手から少し離れた場所に座り直す。

「私に優しくするのは、あなたが初めてってわけじゃないわ。
 人間を殺しているのを咎められた事、瀕死の時に助けられた事、落ち込んだ時に慰められた事。
 だから理解した。世の中には、いいこともあるってことを、ね。」

しかし言葉は裏腹に、少しずつ、唇の隙間から零れ落ちていく。

「でもそういう人たちじゃ、私の事を理解できないわ。あなたも、そう。

 人間が憎くて仕方ない、こんなイカれたAIのココロはね。」


558 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/15(土) 00:54:00 mL0Fi7hc
>>555

「ふん――馬鹿みたい。それなのに、居場所を与えようなんて。」

屋根の上から、見下ろして
身体年齢的には、中学生になるかどうかの体――だが、中身は、その半分程度しか生活したことはない

加えて、情緒不安定な体質。薬剤によって調整された身体
幼い精神、育った環境の劣悪さ

「あたしがどうやって生きてるか。生きてきたか。知らないくせにッッッ!!!!」

網状の糸を弾丸のように丸め、射出。そちらに被さるように広がるように、撃つ
左右から4発ずつ。身体の半分程度を覆う糸弾がそちらに向かうだろう

己の身の上。それを語ることはないし、そもそも覚えている事も断片的
だからこそ。獲物を狩ることだけが、少女の知っている生き方なのだから


559 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 01:03:24 mL0Fi7hc
>>557

呟かれた言葉。それは湖に浮かぶ波紋のように、森の中に吸われていくようで
己とは似つかぬ翼を見て、少し、考えた

相手は、きっと人の世を己より知っていて
それでも、変えられない生き方なのだ、と

人を殺したと言った。それは、私の価値観では、間違っています。
ですが、彼女は落ち込んだり死に掛けたりもしたのなら。
救われたことがあるのなら────後悔も、したのでしょう。

人が憎くて仕方ない。それは、何故なのだろうか。

「ええと」

でも、先に問う事がある。
言葉の中で、分からなかったこと。彼女の事を理解したいと思ったから、聞いてみる

「……えーあい、とは、なんですか?」

ぽちゃり。湖の魚が、月の光に釣られて跳ねた。


560 : 【重層剛筋】 :2017/07/15(土) 01:07:03 Ju6dbf3.
>>553

寒気のする音が公園に響く。それは骨を打つ音ではなく、肉を刺す音。
女の拳は空を切り、代わりに鋭い刃が皮膚を、血管を裂き、生命の泉が流れ落ちる。


「……ああ、確かに愚かだぜ」

だがその声は、裏切りを受けた者の其には相応しからぬ落ち着きで。

「嬉々としてネタばらしする輩なんざ聞いた事ねー。お前は手品師にもなれねーよ」

背後の刺殺人が刃を抜き刺ししようとしても、おそらくそれは叶わないだろう。
ナイフを止めたのは数奇な幸運でも固い骨格でもない。
指で触れれば柔らかく押し返し、しかし一度力を込めれば、鋼のワイヤー束よりも強靭に締まる筋肉。
何よりその密度は、機動隊の装甲も及ばぬ特別製。
強い肉に阻まれナイフの先は皮下数ミリを傷つけたにすぎない。

「護る? そうとも。」
「だがそれだけじゃあねえ」

背後の刺殺人が刃を抜き刺ししようとしても、おそらくそれは叶わないだろう。刺さった刃を締め上げる力さえも尋常ではなく。
背中に刃を生やしたまま、女は無造作に裏拳を振るう。
殆ど力のこもらない、お優しい一撃。
だがそれだけで、常人なら顎を砕かれ昏倒する程度の威力はあり。
それが凶器を持つ犯人の意識を奪う奪わぬによらず、半回転した体はその速度を急激に速める。

「こちとら警察だ、護衛対象(マルタ)だろうと逮捕(しごと)の邪魔はさせねえ!」

残る180度はまさに防風、回転に更なる勢いを加えた右の裏拳は、男の胴体をへ迫るだろう。

相手は格闘の心得がある。ならば先ずは的の大きい、避けにくい攻撃から。
急所関係なく、当たれば全てが必殺に等しい女だから出来る大雑把な戦法。隙は大きいながら、その重圧は人一倍に。


561 : 【不撓鋼心】 :2017/07/15(土) 01:08:20 ZGe/SikQ
>>556

「こいつッ――」

またもやと言おうとした矢先に、背筋に走る極寒の怖気。
男もまた、本能を駆使して応撃を察知した。
そう、察知はしたものの、間に合わない。しなる蹴撃に対応するには一手及ばなかった。

炸裂――綺麗に決まった回転蹴りが男の頭部をかちあげる。
ぐらつく体躯、倒れようとする全身……勝負ありと思われた。

……しかし。彼女は気付くだろう、何かがおかしい。
蹴り上げた感触に、どこか違和感があったような気がしてならない。それは微細なものなれど、生死をかけた戦場で研ぎ澄まされた感覚はその噛み合わなさを無視できない。
まるで、そう、瞬間的にズラされた、ような……。

気付いたならばその瞬間、視界外からの一撃が襲い掛かっていた。

後方転回を行いながら繰り出す蹴り上げ攻撃……つまりはサマーソルトキック。
正確な革靴の軌道は意趣返しであるかのように顎を狙っている。言うまでもなく決まれば大打撃となるだろうが、命中の見込みは少ないと男とて承知していた。
このような大技は命中のあかつきにはなべて決定的な一撃と成り得るが、そのようなものは決まりにくいのがほとんど。

これとて例外ではない。極端な下方から放つ過程から、至近距離であれば正面にいながら奇襲の性質を持つこの技は気付かれなければ当たりもするだろうが反面察知されてしまえばそこでおしまいだ。
スウェー回避で簡単に避けられてしまうゆえ端から当てようとは思っていない。男の目的は一時離脱にある。

なぜならこの女は、予想を遥かに上回って強かったから。
おそらく格闘戦に限ればあちらが上。現段階では渡り合えてはいるものの、長期戦にもつれ込めば分からない。
いくら慣れてるとはいえ、熱波で満ちるこの環境は自身の体力をも確実に上回っているのだから。
続けば見えてるのは敗北……よくて相討ち。勝ち筋は薄く、このままでは分の悪い賭けを強いられることとなるだろう。

――そんなものは御免被る。強敵との死闘の末に倒れることが誉れであるなど、カビの生えたような理念などちゃんちゃらおかしい。
勝ってこそ。生き延びてこそ。こんなところで命を捨てるつもりは一切ないのだ。

……ゆえにもう、使いたくないとかそんなことを言っている場合じゃない。
切り札を使う。短期決戦にて決着を着ける。さっさとこの女を下してあいつのもとへと駆けつけねばならない。
だから今は離脱を――。


562 : 【天械御子】 :2017/07/15(土) 01:39:15 77PZ3CpI
>>559

……。

沈黙。

AIという言葉はそれなりに普遍的なものだと認識していたが、違ったようだと機械は思った。
ただ、少し、唖然として、なんて答えようか迷った。
挙句。

「人工知能の事よ。」

と説明してみたが、下唇を軽く噛まざるをえない。
これも伝わらないかも、と。

「……ロボット、おおざっぱに言って自分で動く機械。
 この説明までしてわからないなら、もうとんだ田舎ものよ、あなた。」

相手の方を向いて喋った。自分なりに丁寧に説明したつもり。
身振り、手ぶり、多少、使う。

「テレビとか見たら出てくると思うわよ、エー・アイって言葉。」


563 : 【形意神拳】 :2017/07/15(土) 01:39:29 B2lhtbmI
>>561

強かな感触。歓喜が爪先から全身に流れ込む。
勝った、いやまだもう一撃。
違和感の発露は決着を急く意識に押し流され、追撃を仕掛けようと。
拳を構えた所に――――どかんと特大の流れ星が脳に散る。

無防備な顎を打ち抜かれ顔が強制的に上を向かされる。
天井を見ていたその目にはもう何も映っていない、ほぼ完全に意識が抜け落ちていて。


弛緩した膝からかくりと力が抜ける。そのまま床に頭から落ち――――がばと跳ね起きた。


「ッくぁあ……!」

転がって苦悶を漏らせば、それと同時に鮮血も滴り床を汚す。
鼻血だけではない、この出血量は――ぶっと吐き捨てた唾には大量の朱が溢れる。
歯と歯の間に口内の肉を挟み、被弾した際の気付けに使うのは、格闘家の裏技――つまり喧嘩の手ではよくある技。

顎を蹴りあげられた結果、口内の肉は断裂、だがその痛みで気絶だけは免れた。
痛み無くして勝利無し、被弾の覚悟を決めた女の意思は折れず。震える足で立ち上がる。

「中々やる。ね」

改めて腰を落とし、右構えに向き直る。しかし前に出した左手はだらんと垂れたまま。

(こっちはもう、使えないか)

風穴の空いた片手は既に痛みを通り越して痺れに近い。
下顎を舌先で押せばぐらぐらと動くことから、顎も罅が入っているだろう。


それがどうした。
負傷上等酸欠上等、互いに傷つき、漸く対等になったところだ。
自らの血で濁った目で、未だ男の前に立ち塞がる。


564 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 01:50:55 mL0Fi7hc
>>562

ええと、魔道具の様な、者ですよね、きっと。

……機械と言われて漸く理解(?)した。自分の都市は、山奥の中のもので、最近の文明は入ってきていなかった
機械はあったが、高度なそれらまでは存在せず、つまりは、Aiという概念すらなかったのだ

「その、そう言う仕組みとして造られた、と言うのは……どういうことなのです?兵器、ということですか?」

無知を恥じながら、改めて問う

そして。そっと、そちらの髪を撫でようとするだろう
それは妹にするような、優しく、仲を深めるためにするような。


565 : 【不撓鋼心】 :2017/07/15(土) 02:17:55 ZGe/SikQ
>>563

――打ち抜いた感触に、むしろ男の方が驚いた。
まさか当たるとは……熱さに頭がやられたか、それとも勝ちを急いだか?
いずれにせよこれは好都合。予想外のこととはいえ、結果こちらに益をもたらすなら歓迎しようとも。

棚から牡丹餅――僥倖だ。
ならばこのまま止めといこう。使わないで済むのならそれに越したことはない。
この拳で砕いてやろうと、両腕を発条のように使って体勢を立て直したその眼に、しかし……。

「……おいおい……マジか、お前」

更なる予想外の光景が映っていたからこそ、東雲は引き攣った笑いを浮かべざるを得なかった。

「そのまま寝ときゃあいいものを……」

入るとは思っていなかったが、仮に入ったなら勝負を決め得るものだったという確信がある。
その想定はある意味で当たっていたのだろう。鋭く重い一撃は間違いなくその意識を一度は刈り取った。
しかしどういうわけだか目覚めている。いったいどうして、その理由は。
理由は……ああそんなもの、分かり切ったことだろう。

「お前さん、もしかして俺と同類かよ」

口内から流れる血液は頬肉を噛み千切ったものだと瞬時に理解できたのは、他でもない東雲海堂であるから。
ルール無用の喧嘩戦法、路地裏に屯するろくでもない連中がよく使う手だと、身に沁みて分かっている。
いいや身に覚えがあるのだ。ああそうだとも、自分とて使った覚えのあるやつだ。痛いよなぁそれ、よくもやったもんだと場違いな感心すら覚える。

――ならばこそ、やはり使わざるを得ないのだ。
眼前の景色が霞んできた。大技を繰り出した代償として血中酸素がごっそり持っていかれた。
分かっていたこととはいえもはや猶予はあまりない。あと数分も戦闘行為を続ければ共倒れだ。
そんな馬鹿な決着は認められない。ゆえに望むのは短期決戦、一撃にて終わらせる拳を望んでいるのは変わらない。

ゆえに――。

「行くぜ」

短く告げて革靴の底で軽くコンクリート床を叩いた。
その瞬間に燃え上がる火炎群――東雲海堂を異能力者足らしめるチカラがついに開帳される。
燃料もないのに物理法則を無視して炎上する火は波のようにうねり、高い壁のように東雲の姿を覆い隠しながら彼女へと殺到する。
速度的には大したこともなく、消耗していようと躱せないことはない。

が、しかし――それはあくまで、ただの手段にすぎない。
火炎を煙幕に使い姿をくらませ、側面に現れた東雲は矢のような回転蹴りを首めがけて解き放った。
方向は当然のように左側……使えないだろうと踏んだゆえに躊躇なく踏み込んだ脚は炎を纏っている。


566 : 【二心掛力】 :2017/07/15(土) 02:23:56 xvZgoNKk
生きるということは本質的に他者の命を奪うことで成立している。
例えばそれは裕福に暮らす人々の影で貧困と飢餓に喘ぐ人々が存在するように。
飢えを凌ごうとする肉食動物とその血肉として消化される草食動物が存在するように。

当たり前のことであるけれども、そうであるが故に人々が忘れている事実。然し私は其れを決して忘れることはないだろう。
今日も今日とて私"達"は生き長らえる為に、他者の命を踏み躙る。その結果生じる金銭的報酬ただそれだけの為に。
鉄錆の如き臭気も─────二人とも、とっくの昔に慣れていた。


「…………────よしっ、しっかりと息の根は止まってる!!今夜も私たち大勝利!!」

「大声あげないで"紅音"。折角シリアスな思考を巡らせていたのにその一言で全部台無しよ」

路地裏の奥の奥、とある小さな広場にて。裏取引の現場として長らく利用されていたその場所には現在、二人の少女の姿があった。
紅い瞳がトレードマークの、天真爛漫な雰囲気を漂わせる少女に、白い髪がトレードマークの、冷血な印象を抱かせる少女。そんな、対称的な二人。
いや、正確には二人に加えて地面に転がって息絶えた黒服の男性がもう一人────動脈を裂かれ、心臓を撃ち抜かれた亡骸をカウントすべきかは不明だが。

まあ、なんてことない、この界隈ではよくある話。
ある組織の怒りを買った人間が、その組織に雇われた暗殺者によって息の根を止められただけ。裏社会では日常茶飯事な話だが。
今回、その暗殺者というのがこの二人────その証拠に彼女等の手には其々、使い慣れた様子のナイフと拳銃が存在していて。


「早く撤収するわよ、後片付けは私達の仕事じゃないとはいえ、誰かに観られたりでもしたらどうなるやら」

「大丈夫大丈夫ー!!"真白"は心配性だなあ!!なんたってこんな時間、こんな場所、絶対に人が訪れる訳ないってないって」

「…………そんな風に今までに貴女が建てた、碌でもないフラグの的中率、どれくらいか知ってる?」

────────なんと、驚異の80%超えである。口は災いの元とか、そういう次元を軽く超えて。
そんな調子でさっさとこの場から撤収しようと準備を整える二人だったが、そもそもこの広場は通じる道は細い路地が一つだけの袋小路。
知る人ならば、或いは知らなくとも偶然迷い込んでしまったなら、簡単に辿り着ける場所なのだ。そしてもし辿り着く者がいれば、それは果たして。


567 : 【天械御子】 :2017/07/15(土) 02:26:34 77PZ3CpI
>>564

 ―― 伸ばされた手を、払いのけた。
それは何度も繰り返されたきたこと。
時には、時には、時には、機械のサブルーチンはおかしな挙動を引き起こし、時には、酷い事をする。
だから、手を、払いのけた。

「兵器よ。」

そして、そして、払いのけた手の手首を掴もうとして、
掴めたならば、己の、自分のその頬に、相手の掌を導くだろう。

「これも何かの縁ね、教えてあげる。

 この体は私のものじゃないのよ。この体は人間なのよ。
 "この人間"はまだ生きているのよ。。

 あなたが今触れようとしたものは、なんなのかしら。」

笑いもせず、怒りもせず、スマートフォンから鳴る音声アナウンスのように、無機質に。

「でも私は何とも思わない。私は、何とも想わない。
 私がこの人間の身体で他の人間を殺す度、脳のどこかで悲鳴が聞こえるのがわかるわ。
 誰かを焼き殺す度に、苦しんでるのよ。

 けど、私は何とも思わない。」

真っすぐな瞳はぴくりとも動きすらせず、製品は、少女を見つめる。
不気味の谷から抜け出せない、工業製品は。

「それでも私に、そんな優しい態度を取り続けられるかしら。」


568 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 02:46:35 mL0Fi7hc
>>567

「人を試す、という行為は」

そっと、頰


569 : 【操威駆風】 :2017/07/15(土) 02:50:50 U9NaYopk
>>566

「ひえっ!?」

本来ならばまあ、誰も来るはずの無かった迷い込んだのは”青いドレスを着た女性であった”
金細工が美しいそれを、見事に着こなした後ろで束ねた金髪の、”綺麗だが平凡そうな女性”だ。

何かこの遅い時間に急いでいたのか、ヒールで走っていた所を偶然にも道に入り込んでしまった模様。
路地裏に差し込む月色の光が照らす無残な亡骸を、その空色の瞳に移し、そして彼女たちを見た。

ナイフと銃、血に塗れたそれと硝煙がくすぶるそれを持つ、明らかに犯人である彼女たちを見て

「ま、まぁ、なんということなの!大変よ、ひ、人が、は、早くお医者様を呼ばなくては!!」

手に持つ、ブランド物のポーチで青ざめた頬を隠すようにしながら
近頃この時間帯にしては珍しい程にパトカーのサイレンの音がする中、”彼女たちにそう言った”

どうやらまだ、その彼女たちが犯人だとは気が付いていない、といった様子か


570 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 03:08:03 mL0Fi7hc
>>567

「何かを試す、という行為は」




571 : 【二心掛力】 :2017/07/15(土) 03:08:27 vtIdNK02
>>569


……────私達が殺人の主犯であることを、彼女は理解していない。
死体を直視したせいで、気が動転してしまったのだろう。誰がこの状況の原因か、なんて少し考えれば分かる筈なのに。
もし、それが演技でないのだとしたら────本当に唯の偶然、唯の不幸で此処に辿り着いただけなのだろう。
ここまで死体に慣れていない人間が、堅気ではない筈がないから。正に招かれざる客と言った所だが。


気付いてないのであれば、取り繕うことはできる。
私達も偶然此処に迷い込んで、偶然この死体を発見してしまっただけだと、言い張ることは可能だった。
だが────前提として、既に彼女には"観られてる"。真白の拳銃を、紅音のナイフ。
どれほどの馬鹿でも、どれだけ愚鈍でも────冷静になった瞬間、確実に其れ等凶器の意味を理解するだろうから。



「紅音」

「うん」

紅音も真白も、僅かな言葉を発すると同時に動いた。
紅音はたん、と地面を蹴って。間合いを詰めた瞬間に首の動脈を狙ってナイフを突き放ち。
真白は躊躇うことなく銃口を彼女に向けたなら、その狙いを彼女の脳天に定めて引鉄を引く。

彼女が無辜の市民であろうと、そうでなかろうと────観られて、それを誰かに伝えられた時点で二人は"終わる"。
だから、こうする。今ままでしてきたように、他者の命を奪ってでも、明日の平穏を獲得する為に。
刃と銃弾。二つの凶器が明確な殺意を以って、同時に繰り出される。


572 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 03:09:49 mL0Fi7hc
>>567

「何かを試す、という行為は」




573 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 03:11:23 mL0Fi7hc
>>567

「何かを試す、という行為は」




574 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 03:12:14 mL0Fi7hc
>>567

「何かを試す、という行為は」

ゆっくりと頬に添えられた手を動かして
愛しむように撫でるだろう

「何かに祈る。何かを願う。何かを────」

むに。と

「信じたくて、するのですよ」

聞き分けのない幼子に言い聞かせるように



575 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 03:14:30 mL0Fi7hc
>>574




576 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 03:15:26 mL0Fi7hc
>>574
体温を感じる頰


577 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 03:16:59 mL0Fi7hc
>>567
「何かを試す、という行為は」

ほっぺたに添えられた手を、ゆっくりと動かして
愛しむように撫でるだろう

「何かに祈る。何かを願う。何かを────」

むに。と

「信じたくて、するのですよ」

聞き分けのない幼子に言い聞かせるように
ほっぺたを軽く摘みながら、言うだろう

「貴方はまだ、迷っているのでしょう。機械だからと言い訳をして、今に甘んじている」

かつての幼き日
都市の子と些細な喧嘩をした。その時に感じたこと。

私が幻獣人だから、王にならなければならないのですか
私が幻獣人だから、人と同じ様に在れないのですか

そもそも私は────幻獣なのですか。それとも人なのですか、と

「良いですか。大切なのは、貴方は悩んでいて、立ち止まっているかどうか、なのです」

同じ様に、ほっぺたを摘んで話された。懐かしい思い出

「貴方はさっき、笑っていました。なら、貴方には感情がある。感情があるなら、貴方は生きているのです。そして、生きているなら、悩む事もあるでしょう」


人を殺して、嘆く身体の声を、何とも思わないのなら
彼女は話題に出すのは、おかしいと、思うのだ


「良いですか、私は、貴方に優しくします。それは、貴方の命を、尊敬しているからです。」

ちょっと怒った様に、しかし、優しく

「ですから、貴方は、貴方と貴方の身体の命のために、歩きなさい。解決の為に。」

どう言う理由で、どう言う事情で「そう」なっているのかは分からないが
意思があるのなら、前に進めと、そう言った


578 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 03:17:58 mL0Fi7hc
>>577
/ほほという漢字が入るとバグるみたいです……大量のスレ汚しすみません


579 : 【操威駆風】【土傭戦士】 :2017/07/15(土) 03:31:13 U9NaYopk



580 : 【天械御子】 :2017/07/15(土) 03:32:11 77PZ3CpI
>>577
/すみません、眠気で文章があうあうな感じになってしまうので、また明日おかえしします……


581 : 【操威駆風】 :2017/07/15(土) 03:43:57 tnFzAdcQ
>>571

慈悲もなく、容赦もなく、ただ純粋に命を奪わんと繰り出された一撃に女は手で庇うことしか出来ない。
無様にも慌てて、悲鳴もあげる暇もなく、────しかし、それだけで、ナイフは阻まれ、銃弾の軌道はそれた。

ナイフを握っていた手に残るのは、見えない何かが強引に留めた感触で、この場に能力をさっちできるものがいれば、その感覚がするだろうか
正体を推察するものは、その感触と感覚と、ナイフ使いの少女の皮膚を刺激する激しい大気の揺らぎであり、風によるものだと”分かりやすい”

ただ、僅かにも考えるならば、ドレスの女は後ろに飛ぶ様に距離を取っているのだが……

「成る程……その彼を殺したのは貴方達で、目撃者の私を消そうとした……と言うところかしら」

銃弾が掠った事により、滲み溢れて漏れる血を片手で軽く押さえながら、女はようやく自身の危機を察した様だ。
震える息を無理やり押さえて、高鳴る鼓動で暴走しない様に深く空気を吸い込みながら、僅かに痛みを堪える表情で

「わたくし、チョット急いでるの。貴方達的に私を逃がさないと不味いとおもいますわ!」


582 : 【二心掛力】 :2017/07/15(土) 04:12:23 vtIdNK02
>>581


異能の発動────真白にはそれを感知することができる。それが彼女に与えられた力の一つ。
そして異能の把握した上で、初撃で仕留められなかったのは痛恨のミスだったと理解することになる。

接近戦を仕掛けた紅音は、その大気の流れを肌で感じていた。そしてその感覚は、リアルタイムで真白にも伝播していた。
共感覚、五感の同期、其れこそが二人の異能の本質と呼べるもの。二人で一人の能力者であると真白と紅音は自負するが。
紅音が感じたものと、真白が感じたもの、二つの情報から推測されるのは────大気の流動、或いはシンプルに風に関する異能の作用か。


「理解が早くて助かるわ。ついでに理解した以上、貴女を黙って帰す訳にもいかなくなったわね」

「ははーーん!!つまりアレだね、口は災いの元って奴だね!!黙っていればこんなことになならなかったなのに残念だね────アレなんでこっち見てるの紅音?」

ブーメランが脳天にぶっ刺さってるからだね馬鹿。えっ何言ってるのそもそもブーメランなんて私今持ってないよ?
そんな知能指数の下がりそうな会話をテレパシーで交わしながらも、銃口は、ナイフの鋒は彼女へと向けられたまま。

まあ、これで見逃せと言われて見逃す方がどうかしてる。
そもそも、誰にも観られないことが仕事の条件の一つ、隠密行動に失敗した時点で、その尻拭いは自ら行わなくてはならない。
殺めようとする理由なんて、それだけで充分だ────だから相手の理由なんて知ったことか。


「逃げる、見逃すって、何処に?生憎と此処は袋小路で、道なんて貴女が来たその細道一本だけなのに」

「つまり────袋の鼠ってヤツだね!!だったら窮鼠に噛まれるより先に猫が噛み殺してあげないと────あ、でも私の可愛さって猫より犬寄りだと思わない?」

似合ってるんじゃないかな?駄犬っぽいといつ意味では────そんなテレパスを送って文句が帰ってくるよりも先にチャンネルをオフにすれば。
駄犬もとい紅音は更に前に飛び出して追撃、ナイフを両手に逆手にて構え、上半身を捻じるようにして放つ斬撃は、回転の勢いを乗せてやはり首を狙った一太刀。
その光景を真白は一歩引いた場所から俯瞰しつつ、銃口は彼女に向けたまま。静かに引鉄を引くタイミングを見計らう。


583 : 【操威駆風】 :2017/07/15(土) 04:37:04 tnFzAdcQ
>>582
軽口の共に迫り来る旋風、機械仕掛けの様な逆手構えの二刀ナイフの回転斬りを、女は再び後ろに距離を取りその死から逃れている。
……落ち着いた女の動きは”慣れていた”先程の行動も逃げ回ると言うよりかは”回避”行動であり、多少の心得ならある動きだと分かる。

とん、とん、とん。とステップを踏み体勢を整えながら、女が感じる威圧感は、後ろにそびえる突き当たりだ。
全くやり辛いですわと、唇で紡ぐ事なく心でぼやく。ナイフの少女もさる事ながら、その後方で構える銃の少女の抑止力。
彼女の存在が、ドレスの女が取れる選択肢をいくつか潰していた。具体的には空中への逃亡や、挌闘技への移行など

だが、それを出さず漏らさず溢さず優雅に。状況を把握したならば、どんな時も優雅さを。それが彼女の家の教えにて

「………ならば、一発どでかいのをお見舞いしてあげますわ!」

この場面で彼女は更に強く気高く負けじとその瞳には生きる光を唇には情熱を乗せて、戦いの始まりと言葉を吐き出す。

そして、胸から(なお意外に膨よかであり母性溢れる大きさだ)取り出したのは一枚の扇。開けば桜が乱れ咲くそれを。
仰ぐ様に動かせば、空気は揺らぎ歪み振動して形作るは二つの風の渦。巻き込まれたゴミは瞬く間に切り裂かれる
つまりは二つの真空波の渦が、彼女の手を起点にしナイフの少女の元へ、そしてもう一つは当てのない方向へ飛び、

廃墟ビルの窓ガラスを、パリンパリンと、幾つもの破壊し、騒がしい深夜に更に音を添えたのであった


584 : 【二心掛力】 :2017/07/15(土) 04:44:40 vtIdNK02
//すいません、一旦凍結お願いします…


585 : 【操威駆風】 :2017/07/15(土) 04:51:58 tnFzAdcQ
/わかりましたーおつかれさまです!


586 : 【逸界斬檄】 :2017/07/15(土) 10:15:33 uKFjKXpw
>>558
連射される糸の網弾。
左右のステップでそれらを躱しつつ、木刀を放り捨てる。

――躱しきれないのなら。

【ブロードソード。投影(ダウンロード)。】

木刀を捨てた左手に新たに剣を生成する。

――迎え撃つまで。

乱舞するが如くに糸の網を切り裂き落とす。

「"こう"やって生きて来たのかい?」

色香を以て人を勾引かし、糸の異能で襲う。そういう生き方。
彼女の生き方を断片的に推察する。


今、男の天秤が揺れている。

守るべき弱者に手を差し伸べる道と、
人を喰らうであろう人外を斬り捨てる狩人(げどう)の道。

まだどちらかに振り切った訳では無い、確証が無い。

だが、もしも冷徹な狩人としての道を選んだのなら、
何の躊躇も無く切っ先を少女へと向けるだろう。

嘗て娘の亡霊に銃口を向けたあの日の様に。

「なあ、嬢ちゃん。君の救いは何処にある?」

故に問うた。
彼女は救いを求める弱者(ニンゲン)なのか、
救いようのない人外(ケダモノ)なのかを。


587 : 【天械御子】 :2017/07/15(土) 13:05:07 77PZ3CpI
>>577

相手が喋っている間、機械はその口を閉ざし続けた。記憶に集中を要した。
プロセッサの回転数が上がっていくのを静かに感じる。冷却ファンは音を立てて、より多く回り続ける。
今までにない、今目の前にいる人間の女を理解しようと、ライセンス切れのプログラムを起動したが、当然、エラーが出力された。
だから、在るのは、頬を摘ままれる感触、それだけ。

「……偉そうなこと、言って。」

摘ままれた頬に手を重ね合わせた。人間の身体は、相手の体温を確かに感じ取れている。
リトライ、システム・チェック。特別に作られた論理プロトコルは、常に自分自身のコードを書き換え続けた。
整合性を取得し、繰り返しトライアンドエラーを試行し、日々死んでいくプログラムたちの墓場を築き上げる。
ただの戦闘機械に過ぎないユニットは、深層学習を通して、人間を理解していき、そして、遂に人肌を記憶した。

「あなたは、いいでしょうね。そういう、お上品な心を持てて。」

自らの背中に生えた白金色の翼を広げると、流線型のフレームに月光が反射した。それは、湖のように。
小さな噴出孔が並んだ其れは、歪なワームのようでもあるし、地獄に転がる骸のようでもある。
つまり人間の身体と同じだ。無駄がない、効率的で、部品的で、気持ちが悪い。
作られたユニット、作られたココロ、そしてそれを使う人間の身体。

「あなたのものとは、違うのよ。
 私のココロを保持するには、方法は一つしかないのよ。一つしか。」

立ち上がり、服に付いた草を手で払った。
プライオリティは機械にとって、重大な意思決定に最も関係する。
そして何事にも想定外は発生するものだ。そして彼女がこうして自由に飛び回っていること自体が、そうだ。

「私が退く事にする。
 もう、ここにもいられない。優しさなんか、何の助けにもならないのよ。
 命なんか、意味が無い。

 私にはどっちもないのよ。」

だから奪った。そして、持て余した。

「さようなら。もう会わない。」

兵器に感受性プログラムはなかったし、対話をする為のプログラムはライセンスが切れていた。
戦車に優しくする人間はいない。戦闘機に優しくする人間はいない。
それどころから、それらは普通、忌むべきもの。理由は単純だ ―― どう取り繕うと、それは人間を殺す為の道具。

標的がいない場所に長くいる必要はないと、論理プロトコルの索敵サブルーチンが無意識に働いた。
引き留めないなら、少女はその場を立ち去ろうとするだろう。いや、引き留めても、兵器は、その暗示のままに。


588 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/15(土) 13:43:02 mL0Fi7hc
>>586

激昂────己の中の蜘蛛が、狩れと叫ぶが
少女自身は、どうしたいのか、分からない
比較したこともなかった。己の生き方は、捕らえて、啜って、捨てる
不意打ちと異能をもってのみ、出来た生き方。そして、そのために造られて、整えられた心と身体

何故だろうか

こころが、われそうに、なる

「知るわけないでしょクソバカ!良いから捕まりなさいよ!」

今度は両手から合わせて、人が二人纏めて捕まえられる様な大きさの網を発射する。粘着性のそれは、ある程度切ったとしても、足元の動きを制限するか、或いは保革することができるだろうか

狩人の動きで。少女の心で。本能のまま、情動のまま

どうしようもなく────人であって、化物なのだろうか


589 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 14:01:32 mL0Fi7hc
>>587

「待ちなさい」

声を掛ける。
上品な心、と言われ、過去にあった女の呪詛をおもう

違う。違うの、と。ただ、私は、そうであろうとしているだけで
何も守れず、何も救えなかった────ただの、非力な女だ

機械翼の言葉。払われた草。それらは、まるで
何か大切な物を、仕方無いと自ら捨てている様に見えた

だから。

「なら、勝手に私は貴女を助けます。」

こうしてみよう、と、思った

「貴女の持ち主に、私がなります。そして、私が貴女を、使います」

もし、彼女が自分に移れるのならば。彼女を受け入れる事で、彼女を助ける事ができるのなら

「貴女の中で、貴女を助ける事も、できるかもしれません」

彼女は身体の声を聞いていた。それならば、自分が導けるかもしれないと考えて
そして

「それでも不満なら────無理矢理、貴女を従えましょう」

弱々しかった先ほどとは比べ物にならない程、凛と立ち上がる
光翼が蒼い光を増す。意思の強さを示す様に、水面を照らす

それが自分にできることと、思うから
それしか自分には、出来ないから


590 : 【逸界斬檄】 :2017/07/15(土) 14:14:29 uKFjKXpw
>>588

大きな糸網を斬り払うも粘着質の其れは足元の動きを奪う。

【消去(アンインストール)。】

糸の纏わりついた剣は消滅させて。

【ブロードソード。カットラス。投影(ダウンロード)。】

新たに二刀を生み出し構える。

「捕まえて、どうする?」

退路は断たれた。――それはどちらの?

人と化物を揺れ動く少女の動向を見極めるべく男は、少年は睨みつける。

それは憂いを湛えた狩人の眼だった。


591 : 【天械御子】 :2017/07/15(土) 15:09:29 77PZ3CpI
>>589

「私を使う、だと ――― 

 なに、それ。」

 ―― 売り言葉に買い言葉、眉間に深いしわを刻んで振り返ったが、その光景に思わず目を丸くしてしまった。
背中から蒼い光を帯びた翼を持つ、それを精霊と呼ぶべきか、適切な言葉を記憶していなかったが、神秘的な形が在った。
戦いの意思を湛えた視線に気が付き、論理プロトコルは戦闘システムへと引継ぎをする。パッシブな状況は初めてだった。

何より驚きが強かった。なるほど、なるほど、機械は学習を深めていく。

「……確かにこのままだと、胸がむかむかして、最悪な気分で夜を過ごす事になる。
 いいわよ、いいわ。イレギュラーは排除するのが、一番いいわね。」

彼女が学習してきたのは、人間の心の事だけではない。度重なる戦闘は、少しずつ戦術の改良に繋がっていく。
サブルーチンは複雑に絡み合い、アーキテクチャレベルで自らを改造し、進化を続けた。

「二度と私の前に立てないようにしてやる。」

 ―― 機械翼から極彩色の眩いきらめきが噴出し、けたたましい轟音を立て、地面の草を焼き焦がす。
歩兵戦の極めてクローズドなCQBレベルで、効率的に航空支援をする為の翼は、特に1対1を想定して作られている。
暗殺、破壊工作、強行偵察、クリティカルな任務の為にチューンナップされ尽した機械は、今も昔もそれだけは変わらない。

一際強くエネルギーを噴出して後方に下がり、一瞬の内に相手と5m程の距離を取る。
姿勢を低くして、いつでもどこへでも飛べるように構えた。機械にとって、これほどの距離ですら"手の届く距離"の範疇だ。

「戦いを始めたら、後戻りできないわよ。
 私はあなたみたいに優しくはないの。命乞いしたって、必ず仕留めるわ。必ずね。」

わざわざ警告をした。それの意味するところは、機械自身もよくわかっていなかった。
なにせ自己診断プログラムは、いつだって正常を通知する役立たずだから。


592 : 【形意神拳】 :2017/07/15(土) 16:37:40 piJiP2vY
>>565

それは唐突に訪れた。
足音一つで現れる炎の壁は、たちどころに手負いの女の退路を阻む。
揺れる視界ではろくに運足もままならず。
その体はたちどころに火の海に飲まれた。

その瞬間――――周りから音が消える。
いや、身の外でごうごう肌が燃え盛る音と、身の内でぐつぐつと血液が沸騰する音。キャパシティをオーバーした耳が苦痛のあまりそれ以上の仕事を放棄しただけ。

火の海の中棒立ちの女は九穴を締めて動きを止め呼吸を止め、鼓動すらも抑えながら思考だけを最大限回す。
結論はすぐに出た。
食らったふりをして油断を誘う術は出来ない。達人レベルの目を眩ます事は出来ないし、下手に受ければ不利ではなく本当に致死のダメージを受けてしまう。

なら
結局
ここで終わらせる
全て――……受けるしかないのだ。

衝突音――――――――余波で飛び散った小火が周囲に飛び火する。
肉体の最も“鋭さ”に優れた部分――動かないと思われた左肘が、男の蹴りと真っ向から衝突した音だ。
四股立ちで重心を安定させ、言うことを聞かない左手首を右手で支える。
外門頂肘に似るが所詮これは積極的防御――どれだけ筋骨を固めてようとも防御は守りに過ぎず。
コンクリの塊をぶつけられたような衝撃に、站椿功で練り上げた筈の体幹が、下肢が頼り無げに軋む。
高熱、火傷、酸素不足、出血。およそヒトの生存してはいけない領域での闘いは、女の身体から予想以上の速度で体力を奪っていた。

「うぅ……ぐぁ、っ……!!」

みちみち、ぐちぐち。腕の中から怖気立つ音が肉を介し耳に届く。それより遥かに先んじて神経は速やかに、身体の異常を痛みと言う形で沸騰寸前の脳に伝達する。
そしてそれは更なる災厄の案内人となり、女に襲い掛かった。

最も鋭さに優れた部分――――即ちその効用は突く、打つよりも“切る”に近いもので。言い変えれば作用点は非常に狭いもの。
痛みによる僅かな体軸のズレ。本来些細な筈のそれは拮抗していた力のベクトルを傾けるには充分で、せめぎ合いに勝利した男の蹴りは肘を滑り降り、その先の脇腹に突き刺さった。
打撃対打撃、この間刹那にも満たない砂粒のごとき時間である。



――――ぇあ゛ッ、……」

枯れ枝が弾けるような小気味良い音。
あばらの左側が纏めてへし折れた。肺から絞り出される鉄錆臭い空気。
それまでとは比較にならない量の血反吐が、空色の衣服をどす黒く染め、遂にがくりと片膝を突く。


受けきれなかった――――?
否、否、受け入れた。誘い込んだ。

(この距離なら。どう?)

痛みは感じているだろうに、それはこの上なく流麗に行われた。
女にとって武術は死なずに、殺さずに、互いに生き残るもの。『二つの』『矛を』『止める』術は物心ついた頃より痛みと共にあり。活人拳は生と死の狭間で見出だすべし。死が迫る程奮い起ってこそ武術家の矜持なりと。
ついたのは右膝、左膝は立てて半立ちの状態から女の反撃は始まる。
蹴りが刺さると同時、左の膝と肘で蹴り足を挟み殺そうと。上下の顎(あぎと)は鰐の噛みつきのように、男の足首を破壊せしめんと。
唯一空いた右手は男の下腹部――――腰帯辺りを掴み引き寄せほぼ零だった距離を完全な零にしようとする。

そこから始まるのは最終奥義。
地面についた膝は、普段足裏だけでは感じにくい床という反発面から存分の
手応えを以て。
筋肉をバネに変えて、床から得た反発力を脚、腰、背骨へと伝達する。


「絶招――――


頭突き、右肩打(※ショルダータックル)、右肘打の三連撃。
全て胴体の中心を狙った渾身。猛虎硬爬山に似るが、髪の毛1本入る隙が無くとも放てる発勁は水面から跳ね上がる鯱、或いはその連続した突貫は後退を知らぬ犀の突撃のように。
一連の動作は一切の無駄を省き血を削って行われた。肉体が燃焼する恐怖に抗い捩じ伏せ、脱力までして力学のままに動いたのだ。
だが、どれだけ無駄を省こうと結局は重傷人の放つ打撃は、本調子とは程遠く。
男の技術と観察眼があれば、どれも悉く躱される可能性すら十分。そして技の成否に関わらず、全ての力を出し切った女は、これを最後に倒れる事となる。


593 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/15(土) 16:58:00 viG4G626
>>590

脚を取った。ならば、あとは繰り返すだけ
本能のまま、狩の動きを取ろう

捕まえた後?────そんなのきまっている

「オマエ の コダネをもラウ。つヨイこどモ、ウむ」

教育された戦闘技能
植え付けらてた因子

その二つに呑まれるように。
蜘蛛の食欲と繁殖欲。人のそれと混じり、見るに耐えないバケモノの欲に変質していく

「────それしか、出来ないもん」

幼い声。少女の本音はどちらだろうか。それとも、どちらもだろうか

左手首から糸を、そちらから見て右後方の建物の外壁上部へ射出。そして、屋根から跳ぶ
そちらの頭上1メートルほどを通り、背後の壁に着地出来たのなら、先程のように、巨大な網を右手首から投射し、さらに絡め取る範囲を広げようとするだろう


594 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 17:22:10 mL0Fi7hc
>>591

「≪蒼鷹の、証よ≫」

己の翼を実体化するための、精神的なトリガー
光翼は、実体を持った蒼鷹の大翼の実体を得る

「後戻りは、しません。きっと、したら後悔すると、思うので」

震える手足。女には圧倒的に実践経験が無さすぎた
だけれど、それを理由に引くのは、違うと思ったから

「行きます!」

翼から3本、羽根を抜いて
そちらへ向け、投擲。意識を乗せたそれは、技術は要らず
弾丸のように飛ぶそれは、所詮羽根とはいえ、鋭さを持ち
機械翼に傷一つつけられるかは分からないが、そちらの右肩を掠めながら、右翼へ迫る筈だ


595 : 【逸界斬檄】 :2017/07/15(土) 17:30:15 uKFjKXpw
>>593
交錯する人と化物の本質。

脚を取られ動けない少年の頭上から更なる網が降る。

「すまねえな、リオ。ここまでのようだ。」

其れは今際の言葉だろうか?
――否。

【聖剣、抜錨】

先程まで握っていた二刀は光の粒子に消え。
少年の右手に顕れたのは煌めく白銀の剣。

刀身から噴き出す様に光の本流が迸り、一閃。
数mはあるだろう光の斬撃となって、真上から来る蜘蛛網を一刀の下に消し飛ばす。
この斬撃は少女本人には当たらない様に加減をした。

その後、聖剣の魔力によって足元の糸束を焼き切る。

「嬢ちゃんにとっちゃあ、ここで死んでおくのもある種救いかもしれんな。」

生憎と此方には時間が無い。

「次は当てる。」
「どうするかは嬢ちゃんが選べ。」

逃げるのか、向かって来るのか。

あの機動力で逃げられたなら追うすべは無い。

男にとって悪を討つことは二の次であり、
本質的には目の前の、手の届く限りの人間を救おうとする。
或いはその"人間"にまだ少女も含まれているのかもしれない。

だから追い打ちを掛ける様な事はしないだろう。

だが、向かって来るのであれば話は別だ。
その時は彼女を化物とみなし、躊躇いなく刃を振るうだろう。


596 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/15(土) 17:47:46 mL0Fi7hc
>>595

────聖剣の輝き、その魔力
切り払われる己の糸束。この相手は、勝てない。本能が悟る

「ウ、グ……」

迷う。

上等な雄。それを求める蜘蛛の声と、生きねばならないと言う、本能。

壁に張り付いたまま、顔を伏せて、少し間を置き

「……るさい」

溢れるように

「うる、さい」

クエ。ニゲロ。ハラメ。イキロ。
グルグルと己の中を巡る声。そして、男の選択を迫る言葉

わたしは、あたしは、何をして、どうやって
生きたら良いの?

「ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

跳ぶ。子供の癇癪に異能が同調して
出鱈目に糸を吐き、麻痺毒を撒き散らしながら、男へ向かって

逃げたら、死ぬより苦しい気がして
でも死にたくなくて。纏められない気持ちを、纏めて男に叩きつけようと、無軌道に体当たりを仕掛けるだろうか


597 : 【電脳髄液】 :2017/07/15(土) 18:00:42 eXVwexWw
>>560

これだから肉達磨は困る。想像の斜め上を行く事ばかりで筋書き通りに行かない。
内心毒づく彼からは穏やかな笑みは消え去り、険しい顔つきへと変わっていく。

「生憎だが僕は手品師じゃない。手品の種ぐらい明かした所で不利なことはない。
 それに僕は脚本家だと、演出家だと言ったろうに。物語を作る者として頭の螺子は外しておく必要がある。」

それに本当に愚かなのはどちらか。愚か者に愚かと言われるのは滑稽だ、女。
険しい表情に言外の侮蔑を色濃く滲ませながら、次の一手を思案する彼は――

「仕事。そうか、仕事か。護る事も、捕らえる事も仕事か。それは実に熱心だ。
 君の何がそうさせる。何が君をそこまで突き動かすか。
 興味深い。傀儡廻として、僕個人としても。君という駒を知る必要がある。」

「先に、君は僕の事を愚かと詰った。裏方は表舞台に出るべきではない。その通りだ。
 だがね先人は言った。"僅かの愚かさを思慮に混ぜよ、時に理性を失うことも好ましい"と。
 だから裏方が直接話の筋書きを、役者の役割を滅茶苦茶に"直して"やろうと思う。」

彼が演説懸かった口調で言葉にしたのは弁明でも命乞いでも動揺でもない。
依然としてラテン語の諺を引用した反論と警察としての彼女に対する興味。

彼女の背後でナイフの抜き差しに手間取っている駒は、繰り出された裏拳により遠く吹き飛び呻き声を挙げて蹲る。
そして、背後の脅威を排除した剛拳は止まる事を知らず、勢いを増して彼の胴体へと襲い掛かる。

襲い掛かる裏拳。それを前に、彼は一度駒と自身に対する能力発動を止めた。
それと同時に、胴体を腕でガードしながら後方へ飛び退き回避しようとするが。
避けきれず彼女の剛拳は彼の右腕に大きなダメージを刻む。だがこれで良い。

曲りなりに、彼女の拳は彼に触れた。その瞬間彼の能力は彼女に牙を剥く。
彼女の脳に向かってに生体電流が流れ出す。これほどのぶれない我を持つ彼女を操るのは容易くない。
しかし、多かれ少なかれ感情や思考、正義感を暴走させることは出来るはずだと考えた。

//お待たせしました。昨日は寝落ちしてしまい申し訳ございません。
//あと次にレスを返せるのは今日の22時過ぎになりそうです。


598 : 【電脳髄液】 :2017/07/15(土) 18:02:31 eXVwexWw
>>597
訂正です。

× 彼が演説懸かった口調で言葉にしたのは弁明でも命乞いでも動揺でもない。
依然としてラテン語の諺を引用した反論と警察としての彼女に対する興味。


彼が演説懸かった口調で言葉にしたのは弁明でも命乞いでも動揺でもない。
ラテン語の諺を引用した反論と警察としての彼女に対する興味であった。


599 : 【逸界斬檄】 :2017/07/15(土) 18:22:27 uKFjKXpw
>>596
心の迷いが、苦しみが表情から聞こえてくる様だった。

――故にこそ。

結局の所、こんな薄汚れた賞金稼ぎに出来る事なんて一つしかないのだ。

――あの時と同じで。

その刃に宿すのは怒りでも憎しみでもなく、銀色の憂い。

断罪などと高を括るつもりは無い。
救済などと付けあがるつもりも無い。

男に出来る唯一の手段で、少女を苦しみから解放する。
そしてその業は自分一人が負えば良い。

「すまねえな。こんな事しかしてやれなくて。」

剣を腰に付ける様に構える。
其れは"居合"の様にも見えた。

出鱈目に乱軌道に突っ込んでくる少女へ、
只一点のみに集中をし、一心に刃を解き放つ。

其れは十数メートルにも及ぶ光の斬撃。

躱すことが出来なければ間違いなく致命の一撃だろう。

必殺などという慢心も無い。仕留めきれなければ待つのは永劫の狂気のみ故に。
躱しさらに飛び込んでくるのであればさらなる一撃を見舞う構えだ。


600 : 【重層剛筋】 :2017/07/15(土) 18:44:53 piJiP2vY
>>597-598


「はっ、御大層によ。 よく回んのは口だけか!」

肉が肉を強かに叩く感触。
ジャストミートではないが、今度はきちんと身体に当たった。
にっと狂暴な笑みが溢れる。それは市民の味方たる警察と呼ぶにはいささか凶相だろうか。
いける。相手の速度は決して追えないものではない。これが様子見の可能性もあるが、自分とてまだ本気ではない。
今日こそ凶悪犯、傀儡廻を捕らえられる。

全て女の計画通りだった。
ここまでは。

(………ッ、何だ)



“私の力で殴ってしまった警護対象が心配だ。一刻も早くこの男を捕まえねば”

“いいや、目の前の奴は紛れもない悪人だ。殴り殺した方が早い”



「――――テメエ、私に何しやがった……!?」

頭の中で相反する二つの言葉が強くこだます。
それを、うざったい蝿を払うように首を振って、女は声を荒げた。

使命と感情、理性と本能。時に矛盾する二つをコントロールするよう、女は永年世界警察で訓練を積んできた。
それはヒトならざる力を奮う喪のとして当然の義務。結果その肉体にも劣らぬ強靭な精神を宿した心は、しかし今の変化を敏感に感じ取り、警告を促す。
固い土と思い踏んだ先が泥沼だったような、得体の知れない感覚がある。
それを人が不安と呼ぶ感覚――――拳を振り抜いた姿勢のまま自ずと肉体は硬直し、少なからず隙が生じていた。



/了解しました。精神系の能力ということでこのような表現になりましたが大丈夫でしょうか? 想像で書いている部分が多いので
/何処か不味い所があればご遠慮なく。また
/>しかし、多かれ少なかれ感情や思考、正義感を暴走させることは出来るはずだと考えた
/の、暴走のくだりの詳細、方向性を教えて頂けると助かります。


601 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/15(土) 18:46:18 151pImXE
>>599

「ギッ────」

先の斬撃。見ていた故の回避を試みる。
地面方向への糸の射出、それによる強引な軌道

無理な姿勢で地面に叩きつけられる少女
床に広がる衝撃音は、二階程から落ちたのと同じ強さで。ゴロゴロと、衝撃のままに転がる

「ッッッ!」

そして、静寂
床に伏す少女は、うつ伏せに。しかし意識は辛うじてある様で
震える手で────腰のポシェット。注射器に、手を伸ばす

憐れな死にかけの蜘蛛は、痛み止めの代わりに、薬を使おうとしている


602 : 【逸界斬檄】 :2017/07/15(土) 19:20:15 uKFjKXpw
>>601
躱された、ならば其れもまた運命なのだろう。

衝撃音と共に地面に転がる少女を見やり。

【消去(アンインストール)。】

聖剣を還元する。

元々と言えばあの劇薬で錯乱状態になった少女を病院へ届けようとしていた筈だった。

「嬢ちゃん。生きたいか?」
「生きてたいのなら、それは使わん方がいい。」
「病院にだったら連れてってやる。」

転がる少女に手を差し伸べる。

「化け物になるのは簡単だ。」
「おいさんだってきっと、もうとっくの昔に"化け物"になっちまってる。」

相手が人外だろうと悪人だろうと、
殺してしまった時点でそいつは既に同じ化け物だ。

「だが化け物だったら化け物なりに。」
「苦悩してそれでも生きるならそいつは"人間"なんだと思うぜ、俺は。」

そして、ふとある日迷い込んだ"化け物屋敷"の事を思い出す。

「それでも駄目ってなら化け物として生きれる場所もあるかもしれん。」

「どうあれ、嬢ちゃんが生きてたいってんなら。」
「俺はもう手を出さない。」

男は、少年は少女の返答を待つだろう。


603 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/15(土) 20:54:21 mL0Fi7hc
>>602

「いき、たい、よぉ」

ぐす、ぐす、と。年相応の、泣きながらの、声
ポーチに伸びた手は、注射器を引き出す直前で止まっていた

「でも」

ぽろぽろと。
涙が溢れてくる。演技ではない本物のそれ

「おにっ、お兄ちゃん、を、食べたい、けど、たべ、れない、し」

消えぬ本能。能力とともに付与された呪い
それは絶えず襲ってくる波のようで、常に、溺れている

「いばしょ、わかん、ないし、もう、やだぁ」

顔をクシャクシャにして。
演技抜きで、見た目より幼い表情で、我儘を、泣く

一時の混乱。しかし失せぬ欲と本能。殺意ですらないそれは、こんな状態になっても残っていて
きっと変えられない生き方にすらなっているのかもしれない

色んな男に、大人に、慰められたし、慰めた
見た目も中身も不相応な行為と言葉で、何かを埋めるように、乾きを癒すように
少女であると同時に、どうしようもなく化物だから
生き汚く。欲深く。ある意味、ヒトよりも、ヒトらしいのかも知れなかった


604 : 【天械御子】 :2017/07/15(土) 21:16:05 77PZ3CpI
>>594

実戦経験は、単独での継戦能力の低さを"節制"という概念で克服しようとしつつある。
高機動、高火力、柔軟性に優れたミルスペックユニットは、後先考えずに戦いをすれば直ぐにエネルギー切れを起こしてきた。
回避と攻撃の一体化、最小限のエネルギー管理、戦術的立ち位置の研究。

 ―― 得体の知れない羽根が3枚投擲されたのを視て、あえて前方へと前進した。
低空を真っすぐに飛行し、3枚の羽根とすれ違おうとするつもりだったが、正確に投擲された攻撃を捉えきれなかった。
その内の一枚が肩を掠めて切り裂き、白金色のフレームと擦れて甲高い金属音を鳴らす。
だがそれは、その攻撃が肌を切り裂く程度の威力であって、硬質なフレームを傷つける程のものではないことを理解させた。

「殺人機械を倒そうって割には、優しすぎるようね。」

ジェット噴射で急接近を試みた機械は、可能ならば相手の腹部目掛けて、飛翔の速度が乗った回し蹴りを放つだろう。


605 : 【騎士三誓】 :2017/07/15(土) 21:24:23 5cDSH1lg
>>554

「まあ、これだけの威力があるものですしね」

左腕に嵌めた塔楯は無残な姿を残していた。
二箇所もクレーターのような窪みを作られ、表面に無数の罅が入っている。
彼がそれをハンデとして受け入れるということは、それだけ自信があるのだろう。


「……貴方の義肢を作られた方ですか」

探しているのは、彼の義肢を作った人間だという。
それがどのような物なのかは想像もつかないが、“破壊を齎す”という一点だけは確かだ。
それなら、能力が人工的であるということも頷ける。アネットは彼の言い分を信じた。

「わかりました。私の方で探してみましょう」

アルバート=ウィーアード。彼が探す人物の名前。
それを思い出し、記憶しておく。どのような人物かは想像できない。
彼の義肢を作ったほどの人物であるとすれば、恐らく――。


「連絡はどのように行えばよろしいですか?」

もし見つけたとすれば、どこに連絡すれば良いのか。
それだけは彼から聞いておくことにした。


606 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 21:31:11 mL0Fi7hc
>>604

相手の突進。自らの羽根は戦闘用ではなく、ただ鋭いだけのもの。当たり前だが、兵器を自称する程の相手にはやはり効果は薄かった
自らは素人である。それは重々承知―――だからこそ、全ての行動に全力をつくすべきだと考えて

「はッ!」

上方向への加速。羽撃きを利用した2メートル程の大跳躍
相手も翼を持つ相手。だからこそ、生体に見えるこの翼での不自然な加速を感じるだろうか

普通、一度の羽撃きで此処までの跳躍は難しいだろう。だが、女は上に釣られるように跳んだのだ
故に、不意を狙う。己の翼が獣のそれでもないと知っているからこその、動き

そして回し蹴りを回避。これならば、と

「はぁぁあッ!」

下方向へ、翼から直接5連続の羽根の射出。それらは帯のように束ねて放つことで、威力を底上げする
狙いは相手の左翼から足にかけて。機動力を削ぐのが狙いだ

そしてこの攻撃が当たるか当たらないかは兎も角、着地の直前にもう一度羽ばたいて、そちらを向きながら着地するだろう
戦闘慣れのない証拠―――着地の隙きを広げる行動だが


607 : 【天械御子】 :2017/07/15(土) 22:01:44 77PZ3CpI
>>606

「……っ!」

一度の羽ばたきでそんな風に機動出来るとは想定外。回し蹴りは空振り、風を切る音が響く。
重心制御を失ってよろめきながら地面に片足を付いたところで、5枚の羽が左半身の肌を切り裂いた。
堪らずそのまま地面に転倒しそうになるが、翼で重心をずらして両足で地面に食らい付いた。

切り裂かれたブラウスの隙間から、血が流れ落ち、白い布地に濃い染みを広る。
ふくらはぎにできた傷にずきりとした鈍い痛みを覚え、機械の眉間に深いしわを刻ませた。

舌打ちの音。

光の翼と形容する他ない極彩色のジェット噴射を羽ばたかせ、再度地面から浮き上がる。
彼女が低空で飛行した地面の草は黒く焼け焦げ、ちりちりと小さな火を灯す。
月光が差し込む湖の傍にて、青と白の輝きが相対し合い、視線を交わす。

「次で殺す ――― 」

再び急接近をする為に後方へジェット噴射を吹かす ―― 今度は全速全開の速度、アフターバーナーだ。
この距離では最高速になるまでの距離が足りないが、それでも大量のパワーは戦闘機然とした加速を生み出す。
光の粒子が暗闇に舞って、それが木の葉に触れると、ちり、と黒い穴を開けて焼いた。

相手に急接近が出来たならば、今度はその衣服の胸倉を掴み押し倒そうとするだろう。

---------------------------------------------------------------------------------

押し倒されてしまうと、かなり致命的な事になるかもしれない。
そのジェット噴射している翼を、そのまま相手の顔へと向けようとするのだ。
人間の体を動かして空を巡行させる程のエネルギーを放つジェットの熱は、細胞を焼くのに十分すぎる火力を持っている。


608 : 【逸界斬檄】 :2017/07/15(土) 22:03:31 uKFjKXpw
>>603

「食われてやる気は無いんだがな。」

やや呆れ笑いを返しつつ、頬を掻く。

「一度は殺そうとした俺が何を言っても仕方がない。」

そう言って少年は適当な紙に何かをメモする。

それはいつの日だったか少年が迷い込んだ洋館。
【人外屋敷】の大雑把な位置を示すものだ。

あの場所には別人と割り切ってはいるが、――娘がいる。

厄介事の種になりかねない者に其れを教えるのに少し躊躇うが、
あの場所にも頼りになる仲間がいるらしい。

それにこの少女には居るべき場所が必要だ。

そう判断をし、それを手渡した。

「本当にどうしようもなくなった時。」
「"化け物"として生きようと思った時には其処に行けばいいやもしれん。」

「ま、後はお前さん次第か。」

「病院は、やめといた方が良さそうだな。」

苦笑いをしながら少女に背を向ける、手を振りながら少年は去ろうとするだろう。

「俺はダイスケ。賞金稼ぎだ。」
「次会うことが無いのを祈ってるぜ。」

次に会うということは、彼女が賞金首となったことを意味するから。


//結構ぐだぐだしちゃいましたがこの辺で〆でよいでしょうか?


609 : 【殴蹴壊則】 :2017/07/15(土) 22:08:55 3Ia9Ya0I
>>605

「一応鉄クズにするつもりで…… 3%くらいの力は出したつもりなんだがなぁ……」

人を殴る時は2%。武器破壊なら3〜5%。強化系でも10%未満。
それでもほぼ一撃必殺の威力なのだが、上手く受け流されてしまった。
ちなみに20%以上の出力を出すと反動だけで義肢が壊れる恐れがあり、25%で体に流れてくる反動で自分の命が危ない。

「……俺は自分以外を巻き込むのが嫌いだ 義肢(これ)の事も知ってる奴はいない」
「だが、アンタの腕を見込んで、依頼する」

あくまで慣れあいや、善意、哀れみなどで動いて貰うのではない。
仕事のようなドライな関係でなくてはならない。自分は、一度死んだような物なのだから。

「だから、もしアルバートにアンタに倒せない実力の仲間がいたら、この依頼は反故にして逃げろ、それだけ守ってくれ」

一度死んだ自分のために、今生きる者が死ぬ事があってはならない。

「連絡は……えぇい ちょっと待ってろ」

神父服の中に入っていた「ルーク」のペンダントを取り出し、彼女に投げ渡す。
底面を捻るとライトになる仕組みで壁面に向けると文字が浮かぶ仕様になっている。

LITTLE・ROOK
Elysium
×××-〇〇〇〇

連絡先のような文字が書かれている。
上二行は名前か何かだろうか。先ほど名乗った名前とは別物な事を不思議に思うかもしれない。


610 : 【騎士三誓】 :2017/07/15(土) 22:29:13 5cDSH1lg
>>609

「これでも鉄くずみたいなものですけどね」

苦笑いしながら、左腕の塔楯を見る。
見事に表層は割れており、恐らく修理どころか買い替えが必要だろうが。


「ええ、信用して頂きありがたく存じます」

とにかく、彼からの依頼は“奉仕”とは言い難いものだろう。
だが相手が自らの腕を信頼して頼むのだから、聞かないわけがない。
彼の目的が達成できれば、それでいいのだから。

彼の言ったことに頷き、了解の意を示す。
そして投げられたルークのペンダントを受け取ると、それを観察した。
底をひねるとライトになっているようで、壁面に映し出してみる。


「ん?先ほどお聞きした名前と違う気が」

連絡先は把握したが、気になったのは名前の方。
上二行が多分それなのだろうが、先程聞いたものとは違ったものだった。


611 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 22:30:26 mL0Fi7hc
>>607

着地と同時に振り返えれば、既に相手は眼前に有った
しまった―――そう思うには、少し遅く

「速―――ッ」

胸倉をつかもうとする相手。戦闘慣れしていたり、身体能力が高ければ反応もできただろうが
生憎、女にはどちらもなく。押し倒される

何を、と思えば、相手の次の手はその翼の動きで判断できた
あれをまともに受ければ、本当に死にかねない

死ぬわけには、いかない

「うぅう……あああああ!!!」

両手が一瞬、焼ける範囲を通過――熱いが、堪えるしか無い――し、その翼の外側、エネルギーを放出するフレームを
エネルギー波に触れないように、こちらに放射が届かないように抑えようとする

そして、もしそれが成功したならば。己の左翼を、僅かに動かし、その推力を利用してマウントを取り返そうと試みるだろう
しかし、所詮は女の力。戦闘のために作られ、鍛えられているであろう相手に、成功する確率は低いだろうか


612 : 【暗厄毒蟲】 :2017/07/15(土) 22:39:19 mL0Fi7hc
>>608

「わた、し、」

化物なの?

生じた疑問。暗殺し、脱出する時など。呼ばれたことは有ったが
逆恨みのようなそれと捉えていた。しかし、改めて己を見ると、確かに、化物で
わからない。わかりたくない。無理矢理に思考を断ち切る

「だい、すけ」

手渡されたそれを、改めて見て。
己の居場所になり得るかはわからないし、そもそも行くかも分からないが

それでも、決めていることは、一つだけ

「つぎ、は、たべる、から。たべ、るから、ね」

それだけ。消え入るような声で、しかし男へ宣言すると
ふっ、と崩れ落ちた。少なくとも今殺されることはなかったということに、緊張が解けたのか
気絶して、眠った顔は、年相応の、幼い顔

去る男を見送ることは、なかった


数時間後。路地裏で気絶していた少女がどうなったかは、言うまでもない
また、少女が少女自身の業を果たして、夜の闇に消えるのも。言うまでもなかった

/ではこれにて〆とさせていただきます!
/どうしてこうなった感が申し訳ありませぬ……でも楽しかったです。ありがとうございました!


613 : 重心 :2017/07/15(土) 22:43:49 uKFjKXpw
>>612
//お相手ありがとうございました!
//最初は本当に雑談から始まったのに何故死合い寸前に?
//いえ、こちらこそ楽しませて頂きました


614 : 【殴蹴壊則】 :2017/07/15(土) 22:48:12 3Ia9Ya0I
>>610
『ん?先ほどお聞きした名前と違う気が――』

「コレ、前金」

相手の言葉を寸断するように、懐からポンと札束を地面に置く。
相手が受け取ろうと拒もうと、拾う気はない。
意外と思われるかもしれないが、使いもしないのに金だけは持っていた。

「俺も自力で探す もし俺が先に見つけた時には…… 悪いけど適当なトコで切り上げてくれ」

話を転換する。
名前の事も、過去の事も、聞いても語っても楽しい事ではない。
そういった話は、アルバートを見つけ全てを清算して死ぬまで語るつもりはない。
今のところ。

「じゃあな、真面目な騎士サマ」

やる事を全て終えたように、その場を後にする。
闇と光の混じる未明の刻。赤い腕だけを残して神父は消えてい


615 : 【騎士三誓】 :2017/07/15(土) 22:58:08 5cDSH1lg
>>614

「――受け取っておきます」

懐から出された金額はそれなりに太いものだった。
アネットもこれには驚いたが、貰い受けることにしたようだ。
……無論、寄付をするつもりで。

                 ご武運を
「ええ、了解しました。“Belli fortunae tuae”」

彼からの依頼は男を見つけて居場所を知らせること。
当面は奉仕活動をしながら探していくということになるだろう。
果たして彼は男と会えるのだろうか。それだけを考え、アネットも明ける空の方へ歩み去った。


616 : 【天械御子】 :2017/07/15(土) 23:01:42 77PZ3CpI
>>611


ギリギリギリ。相手の両手で押さえ付けられ、翼の根元が軋み、バーナーめいたエネルギー流を放出する翼は動きを止める。
所詮は小さなモーターで駆動している関節部分は、戦闘用に頑丈で力強いトルクを生む設計にはなっているが、ここが限界だった。
機械は歯を食い縛りながら全力で翼を動かそうとするが、モーターが空回りするばかりで、翼は前へと進まない。
当然、外的な圧力で押さえつけられる想定などされていなかった。

「その偉そうな口も溶接してやる。
 優しい眼差しを向ける瞼も、綺麗な形の鼻も、全部。」

機械から視て右側から出所不明な力によって押し上げられるが、両手で地面の草を掴み押し返して、ここも拮抗した。
力比べでは異能の力がやや有利か、かなり険しい表情になってしまうが、それでも直ぐに変化は起きない。
月明りの下で青と白の輝きが衝突し合い、きらめきを振りまきながら、夜風が流れていく。

「私が怖いか。怖いでしょう、怖いと言え。
 もう優しくしませんと言え。間違っていたと認めろ。」

大きく口を開けて、ギラリと鋭く光る犬歯を見せつけた。尋常ではない事だが ―― 噛み付こうとする意志を見せた。
恐らくは喉に。手も使えない、翼も使えない、ならば噛み付けばいい、などと、原始的な発想。
それほどまでに機械は、戦いに貪欲だった。それは、機械が故に。恥も常識もない、取れる手段を全て尽くす。
流石に今までに一度も生き血を啜った事なんてないが、必要ならば、怪物になったとしても標的を殺さなくてはならない。

そう、できている。

「早く涙を流せ、よだれを垂らして、ガタガタ震えて、命乞いをしろ。

 早く、早くッ、 早 く 早 く 早 く ッ ! ! ! 」

 ―― 相手のマウントを取り返そうという試みは徐々に優勢になっていくだろうが、機械はその前に喉に噛み付こうとするだろう。
もちろん顎の力は普通の少女然としたもので、食い千切る力なんて全くないが、隙が生まれればジェットで焼けてしまう。

もしもより強い力で押し返したならば、機械は相手に押し倒されてしまうだろう。体は軽い。


617 : 【不撓鋼心】 :2017/07/15(土) 23:03:36 ZGe/SikQ
>>592

複雑怪奇な技術は不要。人間を仕留めるには指一本ほどの技があればそれでよい。
東雲が体得したのは紛うことなき殺人拳。人体を破壊する事のみに重きを置いて、まっとうな武術家が掲げる活人の理念など彼方へ置き去った闇の術理だ。
目指すのは人体の破壊のみ。徹底的な蹂躙を現すために、血反吐を吐きながらその身に刻んだ拳の数々は異能などなくとも数々の勝利を重ねてきた。

命を奪い、数多の血を流させ、屍の山を築きあげながら穢れた栄冠を掴み続ける。
そう……すべては生存、生きるためだけに。そのために他者を犠牲にすること、後ろめたい気持ちが無いと言えば嘘になる。
だが仕方ない、そう仕方ないのだ。しょせん自分など首輪に繋がれた飼い犬なのだから、主に逆らえるはずもない。
他者を喰らってでも、誰かを踏みつけてでも生きたがるのが人間の性というもの。許してくれよ、俺は生きたい。本当なら戦うことだって嫌なんだ。

それに……ああ。
こんな俺にも、死ねない理由ができたから。守らなきゃならないヤツができたから――。

「だからッ」

衝突する人体武器……その瞬間に、少しだけ軸をずらす。
それはほんの些細なもの。しかしこの練度に至る武人同士の戦いにおいては致命的すぎる際となって現れる。
読み通り。こいつは絶対、対応してくると踏んでいた。ゆえにすべては織り込み済み……事前に思い描いていた絵図通り、蛇のように捻じ込んだ。

脾腹に突き刺さる炎の蹴撃。
骨を砕いた感触……今まで幾つも聞いてきた、人間の体が壊れる音を確かに耳にした。
“発動に際して体細胞を燃料とする発火能力”の激痛に耐えながら繰り出した最大最高の一撃。これこそ正真正銘、男にとっての必殺だ。
これを受けて死ななかった者など一人もいない。それどころかこの技を使わせた相手すら稀である。
ぶちまけられた血反吐、もしかしたら臓器も傷ついているかもしれない。この状態ではどう見ても戦闘続行など不可能だろう。

だから、今度こそ――。
今度こそ、今度こそ、決着がついたと思った、だがしかし。

「――――」

噛み砕かれる己の足首。認識が遅れ、自覚と同時に骨を粉砕された痛みが襲い掛かる。
寸でのところで絶叫を噛み殺すのが精一杯、すぐさま行動には移れない。
もはや東雲も限界が近かった。大技に次ぐ大技、酸素は根こそぎ奪われて、身体が燃えてゆく痛みに耐えながら、それでも動いた代償行動不能の形をとって現れる。

引き寄せられる身体――跳ね上がってゆく人体の形をした凶器――。
色と速度を失った視界の中で、ゆっくりと死神の断頭台が迫ってくる。物理的な生死は分からないものの、ここで負ければもはや自分は死んだも同然だ。
もはや駄目だ……躱せない。回避するには両者の距離はあまりにも近すぎた。秒と経たないうちに、今度は自分が血の海に沈むだろう。
ゆえにもう、ここで終わり。自分は死ぬ。確実に終わる。そして“あいつ”も、きっと同じように――。

「ま、だ……だッッ!」

――それだけは、絶対に駄目だ。
負けられない。負けられない。自分よりも何よりも、あいつを死なせたくはなかったから。
奮起する、その精神に応じるように萎えた筋肉に力が宿る。武術も理合いも振り捨てて、力づくで絶対的な死の未来を回避しようとした――。

「――――クリス」

その、刹那。
壁をぶち破って現れた相棒(まもりたいひと)が――光り輝く鋼の刃に喉を貫かれている姿が見えたから。
思考停止。機能不全。覚醒しかけていた心が一瞬、完全に忘我へ至る。
だからもう……今度こそ、打てる手立ては何もなく。

奥義、炸裂。
三連撃のすべてをまともに喰らい、血反吐をぶちまけながら崩れ落ちる男の姿が、煉獄の戦いの決着を告げたのだった。


618 : 【形意神拳】 :2017/07/15(土) 23:29:40 piJiP2vY
>>617

何度目の床の接近だろう。
三度目のそれは痛みの為気絶も出来ず、明確な意識のまま前のめりに崩れて。
体が床に跳ねるだけでも、命に関わるダメージ。
苦鳴が漏れる。
駄目だ、立て、追撃が来る――――
必死に上げた視界に映ったのは、倒れた男の姿だった。

ほぅ、と長い溜め息が漏れる。
同時に部屋に人の気配が増えたのが、霞がかる意識で何とか察知した。


「ハゲタカく゛ん……やり゛す、ぎ」

最後の決着の瞬間は必死だった女の視界に映っていたらしい。
程々にの約束はどうした、と言おうとして。
口から漏れたのは激しい咳き込みと血の泡だった。

「ッ、ッー……!」

折れたあばらが内臓にただならぬ傷を与えたらしい。
朝食の残滓が真っ赤に彩られて床に溢れ、自らの吐瀉物に倒れ伏す始末。
本当にまずい。これではビルを降りるどころか、火の海を抜けることすらままならないかもしれない。

だがそれでも。手足の感覚が失せ、芋虫のようになった女は、右手一本で倒れた東雲の元へ身を這い寄せる。
生きている、生きている筈だ、生きているに違いない。死ぬ気で殴蹴はしたが、殺意は一片足りとも込めていないのだから。
あの日を境に誓ったのだ。この手は活人拳に生きると。

「ちと、手。貸し゛てく゛れない」

金髪の男がまだ五体満足なら、顔だけ動かして、しゃがれた喉から声と血を絞り出すだろう。
その意味を、果たして彼は汲んでくれるか。


619 : 【不煌翼使】 :2017/07/15(土) 23:30:21 mL0Fi7hc
>>616

「間違いなんて―――絶対に、言いませんッ」

大きく口を開ける相手。子供の喧嘩しかしたことなかった故にわかった、噛みつきという発送
噛みつかれて、そのダメージに耐えられる自信は、ない

ならば、奥の手を出すしか、無い

「《蒼鷹たれ我が翼》ッッ!!!」

全能力の開放。実態の翼がさらに光を放つ

「《空へッ》!!!!」

奥の手である精神体と実体の同期調律―――精神体の指向加速能力を翼が短い間、得る
噛みつかれる直前、お互い掴み合ったまま、5メートルほど上空へ急加速するだろう。錐揉み状に

それでも相手が喉笛に食らいつくのなら、きっと、女は相手の翼から手を離してしまう
しかし相手の翼が放射を続けるならば、相手だけが下に落ちていくだろうという、狙いで


620 : 【電脳髄液】 :2017/07/15(土) 23:36:07 eXVwexWw
>>600

「っつう…直撃はしていないのにここまでの威力とは中々に辛いな。」

右腕に走る痛みに顔を歪ませながら、右腕を押さえつつ体制を整え。
再び自身に生体電流を流し、擬似的な身体能力の向上を行った。

口にした言葉は自身の事のみ。彼女の質問には答えない。
彼女は何かされたと確信しているが、それに対しての種明かしはしない。
精々悩め。精々苦しめ。脚本家としての本懐を果たしたその時に答えてやると言わんばかりに。

「―――シぃっ!!」

彼は硬直して隙の生まれた彼女の正面に向かってダッ、と駆け出す。
その際に生体電流の影響が及んでいるであろう彼女が素早く攻勢に回らぬよう動きを阻害しつつ。
ある程度接近したら左手の指先の力を抜いて、指の手の甲側で彼女の両目を掃くように打つ。

超人的な身体能力を持つ敵に対して有効だと思えたのは、一時的であれど目潰しである。
そう判断しての一撃であり、彼女の背後に居る駒を再び動かすための時間稼ぎでもあった。

故に、時間稼ぎが成ったのであれば彼は駒たる男のもとへと駆け寄り、身体の何処かに触れるだろう。

//お待たせしてすみません。

//>しかし、多かれ少なかれ感情や思考、正義感を暴走させることは出来るはずだと考えた。
//のくだりですが、方向性としては"護ったり、捕まえたり"するのではなく
//"敵を殺す"という様な方向性にもっていこうとした次第です。
//解りにくい描写で申し訳ございません…。また描写に不都合がありましたらその時はお手数ですが遠慮なくお願いします。


621 : 【重層剛筋】 :2017/07/16(日) 00:02:13 4eWFaEM2
>>620

身の内で沸々とわき上がるものがある。
背中から流れる熱い血潮とは別に、気を抜けばその傷から漏れだしそうな、黒い感情。
精神訓練を受けた女でも、“それ”に抗うには数瞬の時を要した。
それは思わず構えを解いてしまうほどに。

男の判断は正しい。どれだけ肉体を鍛えようと防御力の変わらないものが二種類。五感と内臓だ。


「な、がっ、 」

羽箒でも叩くような柔らかさで、それより柔い眼球が優しく打たれる。
それを嫌ってぶん、と腕を払った時には既に前には敵は居らず。

咄嗟に背に刺さったままのナイフを引き抜き、力任せに地面へ叩き付ける。
女の手に掛かれば、ナイフは硝子より脆く砕けるだろう。
少なくとも武器を奪われる心配はない。
目は潰されたわけではないが、完全に視力が戻るまであと少しかかる。

足音で男が自分の後ろに向かったのを感じ――――直ぐ様その目的に思い当たる。
拙い足で慌てて追うが、伸ばしたその手は恐らくどちらにも届かないだろう。


/補足、ありがとうございます。
/おおよそ私の考えていたのと差異がないようで安心しました


622 : 【天械御子】 :2017/07/16(日) 00:23:12 .EhUdwqA
>>619

食らい付こうとしたその瞬間 ―― 2人は飛翔し、宙へと舞い上がり、視界はグルグルと目まぐるしく回転する。
強引に飛行制御を奪おうとジェットを何度か噴かそうとしたが、手で掴まれた翼ではコントロール不可能だった。
相手の上昇に合わせて自分もジェットを噴出したものだから、勢いは更に増して、高度はもう5m高い10mまで上昇するだろう。
暗黒の森の上に輝きが迸り、真っ黒な夜空のキャンバスの上では特に、星のようにきらめいく。

だが、この程度で怯む機械ではなかった。戦闘本能は、戦闘プロトコルは、明白に明示している。
眼前の標的を撃滅せよと。それは敵だ。それは敵でしかない。破壊し、破砕し、撃破する目標。
狂える論理プロトコルは湧き上がる高プライオリティのコードに突き動かされるまま、相手の喉笛に喰らい付いた。

そして、少女の全てが止まった。エネルギーユニットの全てのエネルギーを使い果たした。

噛み付いたといっても、少女の小さな犬歯では大きな出血に繋がる事は無いだろう。ましてや、食らい続ける事などできない。
痛みで反射的に翼から手を離した相手の眼前から、少女は零れ落ちた。

「緊急バッテリーをッ……。」

空から落ちていく少女の呟きは、虚しさを纏っている。10mの高さから地面に落ちるまで数秒とない。間に合う訳がない。
骨のような翼では空気抵抗を作る事すらできず、血に濡れた唇から赤い滴を宙に残しながら、落ちていく ―――― 。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

命運は、翼を持つもう1人、幻獣の王女の選択に依る事となった。
機械は機械故に、改善の余地はない。人殺しの兵器は、決して美しくなれない。
カッコイイ銃も綺麗な戦闘機も、何処までいっても、誰が何と言おうと。

助けたとして、あなたのものになるとは限らない。少なくとも……『最終標的プロトコル』はあなたを覚えた。
一度交戦した敵を徹底的に追いかける暗示。

国防人民委員令第227号"一歩も下がるな"に基づく強力な暗示は、彼女に後退を、そして彼女自身を赦さない。


623 : 【二心掛力】 :2017/07/16(日) 00:24:54 q6BjDJ0Q
>>583


白い少女は異能の発動を感知し、同時にその認識を赤い少女へと伝達する。
此処から離脱する算段と、目撃者を潰す算段、二つを同時に為す段取りを考えながら、すぐさま行動に移していく。
とは言っても思考は真白の役割。小難しいことは全てを押し付け、紅音は前にガンガン進んでいく。
そして真白も思考を整理しながら、照準を絞りつつある。降り注ぐガラス片は、散漫としたものである以上は今は気にせず。

ナイフを握った拳を更に固く握り締め、勢いのままに真正面へと叩きつける。
即ち自らに向かって放たれた竜巻に向けて。触れれば切り刻まれるであろう現象に対して、然し全く躊躇うことなく。
但し、無謀という訳ではない。何故なら彼女の拳にもまた、一つの異能が宿っているのだから。


「ファイト一発!!とりゃあああ────!!!!」

其れは異能を弾く異能。非実態である現象に対しても干渉を可能とする、紅音の性格には相応しい力。
竜巻に触れた瞬間、その効力は作用し────強引に殴り、弾き飛ばすようにその軌道を捻じ曲げる。
直撃コースだった風の刃はその干渉によって軌道が横に逸れ、同時に彼女は更に前へと間合いを詰めて。


「今」

左手のナイフによる刺突が相手の顔面に向けて放たれる────と同時。
風の隙間を縫うように銃弾が三つ、相手の扇を手にした腕に向けて正確に放たれる。
この場合ナイフはブラフ、近距離に接近することで相手の視界を塞ぎ、銃弾の到来を意識から外させようとする連携。
考えなしのようであっても、二人の思考は常に同期し、"息のあった"範疇さえも逸脱したコンビネーションを繰り広げる。


624 : 【電脳髄液】 :2017/07/16(日) 00:34:04 op7oTLAw
>>621

時間稼ぎは成り、彼の背後から伸びる手さえを振り切った。
駒に駆け寄った彼は、駒の腹部に蹴りを入れて無理矢理意識を覚醒させた。
そうして駒を手に入れた彼は、駒の頭に手を触れ、記憶の書き換えを行う。

(お前を陥れたのは目の前の女だ。お前に悲劇を齎したのも同じだ。
 僕は君の味方だ。君の無念を晴らす協力者だ。殺せ、壊せ。それだけが)

人の警戒心を解くような笑みを浮かべながらの書き換えは。
あろう事か彼の都合の良い内容であり。駒を駒としか見なさない非道であった。

記憶の書き換えに要する時間は一瞬であり、彼女の視力が完全回復する前の出来事である。
故に彼は、彼"ら"は十分に体勢を整える事が出来た。数という意味で優位に立ち――

『ぉぁああああああああああ!!!貴様が!貴様が!私をこのような目に貶めたかあッ!
 許さぬ!許さぬ!何もかも許さぬぞォ!殺す!殺してやる!』

駒が吼え、血走る。植え付けられた殺意をむき出しにして、駒は彼女へと襲い掛かる。
彼は、嗤う。意のままに操られる駒の滑稽さとこれから起きるであろう展開に。

(――駒が血走る程度では、つまらない。さぁ、新たなる役者よ!
 更なる悲劇の為に、その正義を、暴力を振るえ!)

程度に差はあれど、駒だけでなく彼女も生体電流の影響下にある。
不完全だがある方向へ思考を向けさせることは出来る。もしかしたら記憶の誤認さえ出来るかもしれない。

そう踏んだ彼は彼女の思考を"護る・逮捕する"から"殺害する"へ傾くように能力を行使し。
彼女に襲い掛かる駒こそ、彼女の追う罪人・傀儡廻であると誤認させようと試みるが、これは失敗する可能性も多分にあるだろう。


625 : 【不煌翼使】 :2017/07/16(日) 00:55:41 AIRAJtFw
>>622

迷うことなど、なかった。翼と、全ての羽根に急降下を命ずる―――勿論、救うため

「間に合っ――て!」

加速。加速。加速。

己の首から垂れる血が、後ろに回っていって
血のネックレスのように流れていく

女は命を奪うことを、否定しているわけではないのだ
本当に忌むべきは、無意味な命の終わりを迎えることで、銃の機能、剣の技、どれも、「そうあるべき」として生まれて
そのように振るわれ、もし命を喰らう時があるとしても。お互いに意義があるのなら、それも必要なことだと、知っている

だから、兵器だとしても、それだけを理由に見捨てることなんて、出来ず
ゆえに、己の命を危機に晒してでも、行う理由があると見つけたのだ

――――落下、着地の直前。ギリギリでそちらの襟を掴めたのなら、落下エネルギーを殺すために、そのまま方向を変えて、地スレスレを飛び
二人揃って、湖の月の中へ。着水する

立ち上がる水柱が、この湖の深さを示している
だが、浅瀬まではそう遠くはない。衝撃を受けて浮かんでくる間に、どちらが先に地に足をつけても、可笑しくはない

鷹翼が機械翼よりも水面に浮くことがあれば、きっと
そのまま、月の中に浮かんでいるのだろう


626 : 【操威駆風】 カウント5 :2017/07/16(日) 00:58:25 jHpf8nn.
>>623

衝撃波の渦程度ではナイフ使いの少女は止められない。振るわれた拳が摂理を捻じ曲げ殴り曲げ
空へと弾かれたその渦は、僅かの後に老朽化が進むビルの屋上にある、貯水タンクを破壊したが──そんなことはいざ知れず

また、ドレスの女も驚いている暇などは無かった。少女の動きが止まらないという事は、そのナイフはいつでも
彼女自身を切り殺せるからだ、だがその動きはよく見れば女にとっては躱せないものではない。
動きに邪魔なヒールを脱ぎ捨て、彼女は、ナイフの動きに合わせて残った自由空間を消費する事を決意する。

残り5歩も無いうち2歩を使い、後方に下がりつつも首を捻り、顔面を狙ったナイフをスレスレで回避した。
非常に高い集中力とある程度の武術の心得が無ければできない行為、できない発想。だが彼女はそれ故に”気が付かなかった”

向けらえていた銃のトリガーを指が押し込んでいたことを

カウンターばかりと振り上げられたその手が弾かれると同時に、腕を襲った熱した鉄の棒を押し付けたような痛みが彼女を襲う。
一瞬で脳へ駆けあがり、思考回路と視界の一部をぐちゃぐちゃにしたそれの正体は、腕を2発の銃弾が貫通した事による衝撃だ。

吐き気を堪えるようなうめき声が洩れ、瞳は一瞬見開いた。その原因である、奥の少女の銃から漂う硝煙に気が付いたからだ。

「くぅ──、ですが、まだ、まだ、お、終わりませんわよ!!!」

3発ならば手は破壊されていた、だが1発は腕に展開されていた風に巻き込まれ僅かに逸れた為に、外していた。
故に彼女の手は動く。振り上げたまま強引にも扇を指に挟みこみ、左斜めに振り下ろすと同時に、風の刃を生み出す。
扇の軌道上に展開され放たれる、一振りの真空波。それは例えるならば名刀による袈裟斬り、抜群の切り味の一撃だ。


627 : 【諸塁槍拳】【土傭戦士】 :2017/07/16(日) 01:01:42 jHpf8nn.
>>626
あ、訂正です。

扇の軌道上に展開され放たれる、一振りの真空波。僅かに近づくサイレンの音色が漂う大気を進む
────それは例えるならば名刀による袈裟斬り、抜群の切り味の一撃だ。

/に訂正でお願いシャッス


628 : 【天械御子】 :2017/07/16(日) 01:32:41 .EhUdwqA
>>625

カーテンコールは夢みたいに。
自分を追いかける相手の姿を、少女は視た。
また誰かに助けられる。

正直、理解不能だ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
―――――――――


少しして、水面に浮かぶ青白い月の上に、翼をもった2人が浮かぶ。
視線の先には、今夜見たかった光景が映っていた。満天の星空だ。
そして気分は、はあ ―― 溜息を吐いた。おかしなことに、ムカムカはしていない。

「……従う。」

疲れ切った体を動かす気にならず、この心地よい水温の湖に、暫く浮かんでいたい気分。
そして、零れ落ちるように言葉を、出していく。

「あなたなら、間違いないと、信じる。」

空に佇む月に手をかざすと、ぽたぽたと滴が滴り落ちた。

「それに、実力行使ってのも、嫌いじゃない。」

胸に手をあてる。

「嫌いじゃない。」

眼を閉じて、穏やかな声で語った。

「あなたの名前は?」

"生憎、私には名乗れるような名前はないけど、ね"とも続けて付け加えて。


629 : 【二心掛力】 :2017/07/16(日) 01:43:17 q6BjDJ0Q
>>626

ここで彼女を仕留めなければ、後々面倒なことになる。
けれどもサイレンの音から察するに、ここに留まり続ける方がもっと面倒なことになる。
二つのリスクを天秤にかけて、結論はすぐに出た。そのことを紅音とも共有したならば。


「え────それ多分私キツくない?めっちゃキツくない?」

「うるさい黙ってやりなさい。上手くやったら今晩は好きなもの食べていいから」

「よし!!!それじゃあ牛丼特盛りでッッッ!!!オラァッッッ!!!!」


真白は後方に飛び退いて視界を確保し、紅音はやはり前に出る。どんどん進む。
相手の攻撃を臆することなく、寧ろどんとこいとでも言わんばかりの勢いで、二つのナイフを構えて突貫する。

「座標計算、上手くやりなさい」

「いやあ、それでも結構厳しいような────でも頑張るッッッ!!!」

そう言いながら紅音は両方の刃を交差させ、更に異能を宿す右手に力を込めて。
放たれた風の刃を受け止める。幾ら異能を弾けるといっても、その威力の全てを押し流せる訳ではない。
風が紅音の頬を、胴を、そして右腕を切り裂いた。潜血が風に乗って、一斉に飛散する。

鋭い痛みが紅音の身体を貫くが、食い縛って耐える。そして右手に力を込めて、風の刃を強引でも弾き飛ばす。
その風は彼女の横に流れ、命中した電柱を根元から叩き折る────が、結果として受け流しには成功した。


「……────ついでに、もういっぱ────っつ!!!!」

「それからオマケ、持っていきなさい」

ナイフで再び切り返す。深く傷つけるよりも手数で切り刻むことを目的とした立ち回り。
そして援護とばかりに放たれた銃弾は二発、それらは紅音の動作に合わせて、その死角を補うようにして放たれる。


630 : 【重層剛筋】 :2017/07/16(日) 01:55:26 bh5GCZ4Q
>>624

復活を果たした男が襲い来る。それを霞む視界で見とめる。抵抗はできない彼は味方――――本当に?

「うるさい!!」

叫んで耳を塞ぐ。彼が女の胴体を狙うなら、そのシャツにじわりと赤が滲むことになるだろう。
勿論男の攻撃や刃物傷ではない。そう、女は怪我を抱えてこの現場に駆けつけていたのだ。

その痛みは火のように、ぽつぽつと身体に熱を灯していく。
殺すべし、逮捕すべし。
理性と本能の均衡が徐々に傾きを増していく。
積み上げた記憶(モノ)がガラガラと、積木よりも呆気なく崩れていく。その理不尽さに、ミシミシと肉が軋んだ。

「っの、いい加減に――――!」

言葉を、怒りをいっしょくたに呑み込んで歯噛みする。
気づくと伸びている腕を、反対の手で押さえて、必死に抱え込む。
化物染みた腕力を押さえるには、同等の腕力が必要。
期せずして女は、自身という最大の壁に直面した。

こいつは誰だ。アイツは誰だ。
コイツは悪くない。私も悪くない。
では誰が悪い――――?


「 傀 儡 廻 」

殴りたい、殴れない。
声にならない咆哮が喉から絞り出る、
自己矛盾に陥り、血管の浮き出る腕を指でかきむしる。
それこそ血が滲み滴る程に。


自己を守るように抱き抱え、子供のように震える女は、最早警察の体を為していなかった。


631 : 【電脳髄液】 :2017/07/16(日) 02:03:13 op7oTLAw
>>630
//すみません。今日はここで凍結でお願いしたいのですがよろしいですか?


632 : 【重層剛筋】 :2017/07/16(日) 02:05:03 bh5GCZ4Q
>>631
/遅レス申し訳ありません、凍結了解しました。また明日お願いします


633 : 【不煌翼使】 :2017/07/16(日) 02:05:16 AIRAJtFw
>>628

「ふふっ」

嗚呼

「私は―――私にも、名前が、ありません。ただ、蒼鷹の女王と、呼ばれていました」

王を戴く運命になった時から、その幻獣人は名前を捨てる
公平である為に個人を捨てるという宣言だ

「呼ぶのに不都合なら、蒼鷹の、とでも呼んでください」

水に浮いて、大の字に
子供の時以来だ。このように、体を伸ばして湖に浸かるのは

それと同時に、水に溶けていく様に翼が消えていく
月の中で羽根が光に散っていくのは、どこか幻想的で。そこには、元の光翼のみが残っていた

「私に従うのなら、貴女は、今から私の友人として、従ってくださいね」

対等に、謙ったりはして欲しくないのです。と、続けて

「貴女の名前、私が考えても?」

水に浮かぶ光翼は、同じく浮かぶ機械翼の方を向いて
最初に笑いかけた時のように。穏やかな微笑み


634 : 【不撓鋼心】 :2017/07/16(日) 02:09:08 TUwsCQtw
>>618

……粘性の音を伴って、光の剣が引き抜かれる。
仰向けに倒れゆく少女の華奢な体躯からは生命力が欠片も感じられない。
涙と涎を流しながら、苦悶の表情のまま動かない、かつてクリスティーナと呼ばれた娘……風刃の異能力者は、議論の余地なく絶命していた。
砕けた床を身体が打ち据えた。その拍子に舞い上がる火の粉はまるで葬送の歌を奏でているようで……。

炎に巻かれて燃えてゆく骸を見据えた後に、彼は視線を移した。

「もちろんだ。今すぐここから撤退しよう」

言葉はどこまでも力強く、当初の威勢を失っていない。
だがその身に刻まれた傷の深さは、彼女と比しても劣らぬほど甚大だった。
全身至るところを切り刻まれ、自らの血に染まっていない箇所の方が少ない。
出血量を考えれば浅い切傷だけでも重大なダメージだったが、いくつか信じられないほど深いものも見受けられた。

特にひどいのは腹部のそれだ。
斜めに裂けた傷は腸から腎臓まで完全に至っていて、現在進行形で血が吹きこぼれているどころか内臓まで見えている。
正直な話、“こぼれて”いないのが不思議なくらいだ。立っていることさえすでに奇跡。
このうえ何らかの行動を起こすことなどできないほど、激痛なんて言葉じゃ言い表せないほどの痛みが走っているはずなのだが……。

歩く靴音は油断なく。
見据える眼差しは強い意志を湛えたままで……。
彼女の、いいや“彼”の元まで接近して、剣を突きつけた。

「――だが、最後にやっておかねばならんことがある」

切っ先の向かう先は倒れ伏す東雲海堂――動きはないものの、微かに上下する身体が生存を示している。
……だから、と。鷹のように射抜くその眼光が、これから彼が何をするのか。
そんなもの……聞くまでもなく、分かり切っているだろう。


//すみません遅れました……!


635 : 【天械御子】 :2017/07/16(日) 02:27:47 .EhUdwqA
>>633

「友人?」

考えた事もない言葉。誰かと友人になるなどと、考える訳がなかった。
必要としていなかったし、必要ないと思っていた。

なのに、思わず、機械も笑ってしまった。なるほど、なるほど、なるほど。

友人とはこういうものか、と。

論理プロトコルは改竄されていき、瞬く間に崩壊と再構築が起こり、そしてコードは出来上がる。
深層学習の最も重要な部分は、繰り返し同じことを経験させる必要がある事。
毎回の微妙な差異を機械は感じ取り、0と1では割り切れない小数点の神秘を垣間見る。
重大な改竄にプロセッサは熱を発するが、幸いにも、今は水冷式だ。

そして、名前を付けていいかと問われれば、答えは決まっている。

「どうぞ、ご自由に。」

"蒼鷹の、友人"


636 : 【形意神拳】 :2017/07/16(日) 02:37:51 bh5GCZ4Q
>>634

目を見ずとも分かる。剣の音を聞かずとも感じる。
全身傷だらけでも、彼の怒気が、殺意が微塵も萎えていないことが。


「殺し、ちゃ。だめ……だめ。だから」


だからこそ女もまた、必死に立ち上がる。

同情? 憐憫?
青臭い傷の舐め合いとは違う。
女はただの無能力者である。
頼るべき異能も、護るべき恋人も居ない。
握り締めた拳は、ただ信念を貫くためだけに。


がくがくと膝は折れそうに、どころか炭化した身体ごと今にも全身が崩れそうな。
それでも女は拳を握り、右手を真っ直ぐ突き出した。

「だ
め、ぇ……」

避けなければ、壁を割り、骨を砕くその剛拳は――――――――赤子よりも弱い力で。ぺたんと男の頬を叩くだろう。

重症を負って死なない人間などいないように、二つの固い信念がぶつかれば片方が砕けること必至。

まもなく失血で意識を手放してしまう身体。
しかし、その直前、女は確かに男に逆らった。血と吐瀉物にまみれ汚れ切った顔に涙さえ浮かべ、最後迄必死に敵対した。
恐らく三度打つだろう床の感触を女は知らない。彼の構えた剣が女に向かうなら、痛みすらなく地獄の焔に焼かれるだろう。


/これだけ返して落ちますね。お疲れ様でした


637 : 【操威駆風】 カウント4 :2017/07/16(日) 02:39:14 jHpf8nn.
>>629

止まらない、この程度の攻撃ではナイフの少女は止める事は出来ない。
あれ程余っていた空間も、突撃に合わせ残り3歩の距離すらも、後ろに下がるために使いあと一歩

踵が、行き止まりの薄汚れた壁を叩いた。来る風の嵐と刃を乗り越えて、全身から血をたれ流そうが
ナイフの少女を突き動かすのは気合という不明要素と、後ろの少女を守る気持ちを糧に、女を殺そうとナイフが来る

そう”来てしまったのだ” 路地裏の最果てに──銃を使う少女から走っても直ぐには届かない程、離れた位置に

ナイフが振るわれた瞬間、そして銃弾を放つ為にトリガーが絞られた瞬間、ドレスの女の姿は”消えた”
いや、違う。ぽたりぽたりと、血が滴る”上からだ”突き当りの壁、数M上だ。彼女は”宙を舞っていた”
その目は、いたずらが成功したように爛々と輝き見下していた、唇が紡ぐ。あぁ!見事に、本当に見事に

「────────掛かりましたわね!!」

彼女が立っていた地面には、らせん状の深い傷が刻まれその衝撃を物語っていた。つまり彼女は
”足から真空波をまるでロケットの炎の様に噴射出来るのだ”そして今から行うのは本来ならば空を飛ぶ要素であるが、その応用

彼女は直ぐ真後ろの壁を蹴ると同時に、真空波を噴出しその体を加速させる。
足で、手で、袋小路の空間を右へ左へ、上へ下へ、銃の少女を目指して”飛び回る” スーパーボールの様に!!

空を舞い、ロケットの様に推力を生み出す彼女に、銃使いの少女への距離など縮めるのに数秒しか掛からない。
あっと言う間に到達した銃の少女の真上10M、月をバックに自然重力に身を任せた彼女が両手から放つのは、刃の渦。

「クスィフォス──アネモストロヴィロス!!」

それは先程、ナイフ使いの少女が殴り飛ばしたものより大きい。人3人分程度の範囲を纏めて切り払う斬風の竜巻だ。


638 : 【不煌翼使】 :2017/07/16(日) 02:43:45 AIRAJtFw
>>635

「では────光燕(コウエン)、と」

私は親しみを込めて、コウ、と呼びますけどね

なんて。愛称も着けた

「コウ」

右手を、延ばす
繋いでください。目で訴えて

「大事な、私の友人」

目を細めて、また笑う

いつか、彼女がその身体を離れる時が来たら
私が器になるか、若しくは、貴女だけの身体を持てると、良いですね

流星が一筋、流れた


639 : 【天械御子】 :2017/07/16(日) 03:02:06 .EhUdwqA
>>638

「コウエン、そう、私はこれから、光燕ね。」

名前を付けられた ―― 不思議な感覚だ。
まるで今までの自分とは違うものになったかのような、気持ち。
機械に名前を付けるとは、おかしいな、と思った。だが、嬉しい。
そうか、そうか、これが嬉しいと、そうか。
いや、想えば、今までも何度も感じてきたではないか。主記憶装置は出力した。

そして、

差し出された手を視て、ためらいがちに、手を伸ばし、
あと少しで触れるというところで、怖気づいたように一度手を引いて、

「……ちょっと、私のキャラじゃないわ、ね。」

照れくさそうに、その手を握った。






/この辺で〆という感じでどうでしょうかッ。
/数日に渡ってお相手してくださって、ありがとうございました。戦闘ロルまでしてもらって、楽しかったです!


640 : 【不煌翼使】 :2017/07/16(日) 03:17:00 AIRAJtFw
>>639
/それではお疲れ様でした!
/この後は、また会う事を約束して、朝には別れたと言うことでお願いします
/此方こそ返レスもゆっくり目でお待たせすることが多かったのに、丁寧な文書で帰して頂いて、とても楽しかったです。ありがとうございました!


641 : 【不撓鋼心】 :2017/07/16(日) 03:33:42 TUwsCQtw
>>636

重い、拳だった。
物理的に込められている力は蚊ほどもない。必死の抵抗はなんら損傷を与えず、男は実際小動もしない。
しかし……そこにある万感の思いを、彼は確かに感じ取る。彼女がどれほどの信念をもって殴ったのか、他ならぬカーツワイルだからこそ読み取れた。

なぜなら自分とて、そうしたもので動いているから。
特殊能力もなければ達人に至る技術も持ち合わせない、そんな小物がなぜこれまで猛悪なる奴輩と対峙し、勝利を重ねてこれたのか。
それは心の力に他ならないだろう。むろんそれだけがすべてを決めるというような甘い考えは持っていないが、最終的に勝敗を分けるのは、やはり精神力だと思っている。

だから崩れゆく彼女を見つめる眼差しには敵意も侮蔑も、ましてや憐憫などは欠片もなかった。
あるのはただ、敬意の念。傷と損壊に塗れ、立つことすらままならないだろう身体でそれでも立ち塞がってきたその姿に尊敬しか沸いてこない。

「……その信念に、最大限の賛辞を」

彼女は強い。自分や“この者”などよりも、泊梁山をこそ真の強者と呼ぶのだろう。
単純な戦闘力ばかりではない。罪を憎んで人を憎まず、殺生をよしとせず人を活かすことをこそ重視するその心意気は清く正しく高潔だ。
そこには正の輝きがある。いったい誰が、彼女に間違っていると言えるというのか。
後の脅威となるだろうだから今のうちに殺しておくべきだろうと、自分は何もしないのに安全圏から声高々に語る連中こそ醜悪というもの。
そんなことを言える権利は誰にも無い。光に属するカーツワイルだからこそ、その清らかさを寿いだ。

「――だが」

しかし、それでも、彼女の意志を認めたうえでなお、止まらない。
同じく信念に拠って立つ人間として。たった一つを武器に戦ってきたから、それだけは誰にも負けられない。
なぜならそうと決めたから。その在り方を是として今まで前進してきたゆえに、もはや今さら足を止めるわけにはいかないのだ。
命は重く、犠牲は尊く、踏み躙ってきた願いの上に今の自分が立っているから断じて譲るわけにはいかなかった。
誰かのために。皆のために。名前も知らない他人のために……弱き民のために闇を斬り裂く刃たれと、固く固く誓ったから。

「罪は承知だ。罰は受ける。俺は必ず、地獄へ往こう」

だが、それでも――。
黄金に輝く剣を構える。その切っ先は言うまでもなく、彼が裁くと決めた悪、その心臓へと向けられていて。
これから己が為すことの重さをしかと自覚しながら、だからこそ一層、覚悟を強固なものへと変化させて……。

――決意と共に振り下ろされた鋼の刃が、一つの命を断ち切った。

…………………………。
………………。
……。

……瞳に映るのは白の色彩。
葉が擦れ合うさざめきだけが、世界を満たす音のすべて。
嗅ぎ慣れない臭いが鼻腔を通り、奇妙な感覚を脳へと伝えてくる。

「目覚めたか」

唐突に響いた低い声の発生源に目を向ければ、そこには金髪の男がいた。
顔や腕に包帯を巻きながら、しかし背筋を張って椅子に腰かけ、ベッドに横たわる彼女を見下ろしている。


//勝手に場面転換をしてしまいました、もしアレでしたら書き直します……!
//そして了解です、いったん乙でした!


642 : 【不撓鋼心】 :2017/07/16(日) 03:38:25 TUwsCQtw
>>636
//状況説明が不十分だったので加筆させていただきました……連投すみません

重い、拳だった。
物理的に込められている力は蚊ほどもない。必死の抵抗はなんら損傷を与えず、男は実際小動もしない。
しかし……そこにある万感の思いを、彼は確かに感じ取る。彼女がどれほどの信念をもって殴ったのか、他ならぬカーツワイルだからこそ読み取れた。

なぜなら自分とて、そうしたもので動いているから。
特殊能力もなければ達人に至る技術も持ち合わせない、そんな小物がなぜこれまで猛悪なる奴輩と対峙し、勝利を重ねてこれたのか。
それは心の力に他ならないだろう。むろんそれだけがすべてを決めるというような甘い考えは持っていないが、最終的に勝敗を分けるのは、やはり精神力だと思っている。

だから崩れゆく彼女を見つめる眼差しには敵意も侮蔑も、ましてや憐憫などは欠片もなかった。
あるのはただ、敬意の念。傷と損壊に塗れ、立つことすらままならないだろう身体でそれでも立ち塞がってきたその姿に尊敬しか沸いてこない。

「……その信念に、最大限の賛辞を」

彼女は強い。自分や“この者”などよりも、泊梁山をこそ真の強者と呼ぶのだろう。
単純な戦闘力ばかりではない。罪を憎んで人を憎まず、殺生をよしとせず人を活かすことをこそ重視するその心意気は清く正しく高潔だ。
そこには正の輝きがある。いったい誰が、彼女に間違っていると言えるというのか。
後の脅威となるだろうだから今のうちに殺しておくべきだろうと、自分は何もしないのに安全圏から声高々に語る連中こそ醜悪というもの。
そんなことを言える権利は誰にも無い。光に属するカーツワイルだからこそ、その清らかさを寿いだ。

「――だが」

しかし、それでも、彼女の意志を認めたうえでなお、止まらない。
同じく信念に拠って立つ人間として。たった一つを武器に戦ってきたから、それだけは誰にも負けられない。
なぜならそうと決めたから。その在り方を是として今まで前進してきたゆえに、もはや今さら足を止めるわけにはいかないのだ。
命は重く、犠牲は尊く、踏み躙ってきた願いの上に今の自分が立っているから断じて譲るわけにはいかなかった。
誰かのために。皆のために。名前も知らない他人のために……弱き民のために闇を斬り裂く刃たれと、固く固く誓ったから。

「罪は承知だ。罰は受ける。俺は必ず、地獄へ往こう」

だが、それでも――。
黄金に輝く剣を構える。その切っ先は言うまでもなく、彼が裁くと決めた悪、その心臓へと向けられていて。
これから己が為すことの重さをしかと自覚しながら、だからこそ一層、覚悟を強固なものへと変化させて……。

――決意と共に振り下ろされた鋼の刃が、一つの命を断ち切った。

…………………………。
………………。
……。

……瞳に映るのは白の色彩。
葉が擦れ合うさざめきだけが、世界を満たす音のすべて。
嗅ぎ慣れない臭いが鼻腔を通り、奇妙な感覚を脳へと伝えてくる。

「目覚めたか」

唐突に響いた低い声の発生源に目を向ければ、そこには金髪の男がいた。
顔や腕に包帯を巻きながら、しかし背筋を張って椅子に腰かけ、ベッドに横たわる彼女を見下ろしている。
ここはとある市営病院、その個室。傷ついた戦士を癒すかのように、辺りは驚くほど静かだった。


643 : 【形意神拳】 :2017/07/16(日) 13:37:35 4eWFaEM2
>>642

うつうつと、意識という海の表層を漂う。
そこは広大で、何処までも游いでいけそうで。
誰かの声が聞こえる――――
徐々に熱を帯びてくる身体。
そこで漸く現実との焦点が合った。


「はげたか、くん。」

意識を取り戻し、ベッドから身を起こした時点で病院であることは理解していた。

休息から覚醒した身体を動かすと鋭い痛みに顔をしかめる。全身包帯でぐるぐる巻きはまるでミイラだ。
特に顎と、左脇腹の痛みが酷い。麻酔が切れて目覚めたのだろう、呼吸をするだけで刺すような痛みが脳天を貫く。
包帯の下の顔だって、恐らく倍に腫れ上がってぶさいくなのだろう。

何度も打撲脱臼骨折を繰り返してきた女だけに、自身の状態把握は慣れたもの。
しかし全身に及ぶ疼痛というか痺れは、およそ未経験。
無論其れは炎の壁に挟まれるという稀な体験によるに他ならない。

腕に覚えのある異能使いや格闘家とはこれまで何度も戦って勝利してきた。
だが、異能を宿したうえで達人級の腕前の暗殺拳を使う――東雲という男。
異能という才能に驕ることなく、たゆまぬ鍛錬を経て得た力は間違いなく本物だった。
だからこそ女もここまでの重症を負い、生命を賭して立ち向かわざるを得なかった――――


「負けちゃった。かぁ」


そこまで記憶を辿って、漸く女の顔に感情の色が戻る。
死合は制する事が出来たが、護るべき想いは砕かれた。
肩を震わせ、胸元のシーツを引き寄せる。
顔の前まで持ち上げた白布からは、鼻をすする音も聞こえるだろう。
それらを隠すには、病室の其れはあまりに薄く。二人の距離は近すぎた。


644 : 【二心掛力】 :2017/07/16(日) 19:09:28 GJUlrO8Y
>>637


異能の発動、その予兆の感知。言うまでもなくそれは即ち死の予感に他ならない。
真白の異能は異能を察知する。確かに便利な力ではあるが、飽くまで認識の拡張に過ぎない。
故に異能による攻撃に対して初期対応のみが全てを決すると言っても過言ではなく、そもそも風の異能なんて真っ当に耐えられる筈がないから。


「……────ッ」

真白は相手の異能が放たれるよりも先に、回避運動を開始していた。
範囲攻撃の予兆、ならばダッシュでその射程範囲から逃れるだけ。どの道この攻防で最後のつもりだったから。
地面を蹴って、歯を食いしばると同時に────風の刃が放たれる。身を捩って回避しようとするものの、些か間に合わない。

致命傷と成り得るものは銃身を盾に凌ぐ。然しその面攻撃の全てを防げる訳ではない。
腕に、頰に、足に、次々と裂傷が刻まれる。痛みに一瞬顔を歪ませるが、命があるだけ儲けもの。
然しこのまま、戦い続けるのは難しいだろう────サイレンの音も近く、つまりは潮時。諦め時。


「……………────紅音、今」

「あらほっさっさいッッッ!!!」

念話を飛ばすと同時、吹き飛ばされていた真白の首根っこを紅音がキャッチ。
そして風の勢いのままにダッシュすれば、先ほど根元を破壊され、斜めに傾いている電柱へと一気に跳躍。
そのまま一気に上まで駆け登って、もう一度跳躍したなら────袋小路を構成するビルの一角、その屋上へと軽やかに飛び移るのだった。



「…………────ついでに、これは置き土産」

屋上から相手に向けて、引き金を絞れば弾倉に残った弾丸が全て吐き出される。
其れ等は雨のように降り注ぐだろうが、決して精密な狙いを定めた訳でもなく、回避防御は不可能ではないだろう。
それも真白は承知の上、結局は離脱のための一瞬の隙を作る為の威嚇射撃なのだから。


そして二人は──元気な一人とそれに首根っこを掴まれた一人は、屋上を超えて夜の街の何処かへと逃げていくことだろう。
相変わらずの軽口を交わしながら────けれどもすぐに、それは闇の中に消えてしまう筈だ。


645 : 【不撓鋼心】 :2017/07/16(日) 22:01:16 TUwsCQtw
>>643

……声を殺してすすり泣く彼女の姿は、ひどく小さく見えた。
その涙を止められる言葉を、剣士は持ち合わせてはいなかった。
元来、口の上手い方ではないと思っている。それでも伝えるべき思いがあるのなら言葉を尽くすが、ならばいま何を言えという?

彼女を泣かせているのは他ならぬ自分。その胸に悲哀を去来させたのは己の犯した所業なのだ。
殺したくなかったのだろう。死なせたくなかったのだろう。たとえ敵であろうと命までは奪わないという美徳を、自分はこの手で無駄にした。
何を言ったところでそれは出来の悪い弁明にしかならない。そんなものはすべきでないと思うから……。

「……言い訳はしない」

出てくるのはそんな言葉だけ。
慰めることすらできない自分に辟易しながら、それでも言えるとしたらこれしかないだろうと。

「気の済むまで罵ってくれて構わない。貴女には、その権利がある」

どんな罵倒でも受け止めると、気概をあらわにした。

そうだとも、これは最初から予想できていたことだ。
あらゆる思いを踏み躙りながら突き進んでいく鋼鉄の信念。それは多くの悪を轢殺するが、同時に嘆きも生んでゆく。
悪党だけを成敗して万事解決、とはいかないのが虚しいこの世の摂理だ。中には仕方がなく、闇に手を染めていた人間だって存在する。
そんな哀しい人間を助けたいと思う優しい願いさえも……。悪に加担した人間はどんな形であれ絶対に外道なのか? 違うだろう。

そして彼女のようにまったき善なる想いであっても、立ち塞がるなら打ち倒さねばならない場面は必ずある。
正義の反対は、また別の正義であるように。双方に理がありつつも、譲れない一線ゆえに衝突して……どちらかが、砕け散る。

これはそういう理だ。自分はその意志を貫き通すために、彼女の願いを粉砕した。
その咎を、その涙を、余さず受け止め背負わねばならない。逃げ出すなど断じて否である。
そんな無様を晒すくらいなら、最初からこの道を歩んではいないのだと雄弁に語るように……熱く雄々しい双眸が、泣き伏せる彼女の姿を映していた。


646 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/16(日) 22:03:09 mtYhv7pU
べしっ。
間の抜けた音は終わりの合図であった。
気を失った男たちの束を見降ろし、その狼は満足げに短く唸り声をあげる。――三日月の浮かぶ、夜の日のこと。
倒れ伏している彼らはこの近辺を根城にして違法行為を働き続けていた犯罪集団である。
そんな奴らがいるかと突っ込みたくなる向きもあるだろうが、実際に居たのだから仕方がない。

「うっし、まだまだ……いけるな」

狼こと彼がこの状況を生み出すに至った理由は決して正義感などではない。依頼を受けたからというわけでもない。
「人外に姿を変える」という自己同一性を揺るがしかねない能力の手綱を握るべく行った、いわば自己研鑽の一環であった。
それに付き合わされる犯罪者たちは溜まったものではないかもしれないが――、


「さあ、次はどいつだ?」

いつしか狼のしなやかな体躯は路地裏の闇から消え失せて、代わりに其処に立っているのはガラの悪そうな青年。
それがどうした? なんて有無を言わせぬ理不尽な物言いの似合う目つきの悪さと、服装のセンス。
首筋の傷から流れ出る血にも、部分的に破けた黒いシャツにも拘らず――じっと一点を睨み付けている。

誰かがそこからやってくることに期待しているかのように。その風貌は少しだけ、野性的にも見えた。

/例によって置きレスになるかと思われますがっ


647 : 【電脳髄液】 :2017/07/16(日) 22:44:09 op7oTLAw
>>630

悲劇という脚本を着々と作り上げ、その場に居ながら場を俯瞰さえしている彼と
植えつけられた記憶と感情に踊らされ、役割を果たす事だけに腐心する駒。

一方、自己矛盾に陥り、震える幼子のごとく震える彼女。
その姿に思わず傀儡廻は目を細め、拍手と賞賛を送りたくなる衝動に駆られそうになった。

傀儡廻に操られた駒は、次第に彼女の胴体、赤く滲んだ負傷部分に狙いを定め
聞くに堪えない雄叫びを上げながら力の限り殴ったり蹴ったりを繰り返す。
その頃には駒の身体は、悲鳴をあげて壊れる寸前であるが意に介さず繰り返すのだ。

「さて、はて。自己矛盾に苦しむか。何ゆえ苦しむ。
 君は護ると言う責務を果たせぬ事に苦しむのか?それとも、心の赴く儘に暴を震えぬ事か?」

台本に記された台詞を諳んじるような口調で紡ぐのは。
毒蛇のようにねっとりと絡む悪意と、諭す様な甘言であった。

「僕は君の背中を押しただけだ。君の本質。君の本懐。
 正義という名の大義名分に隠した暗く、血生臭い感情や衝動を刺激しただけの事。
 それで震えて蹲るのは、君の大義名分は君の本心から来るものではないという証左だとは思わないか」

「僕が思うに――人にとって尤も不幸な事。それは自分らしく生きられない事だ。
 今の君を見ていて切にそう思う。殴りたいだろう。殺したいだろう。下らない柵が疎ましかろう。
 自傷する姿に哀れみさえ覚えるよ。故に、もう苦しまなくても良い。」


――君は、もう我慢しなくていい。心の赴く儘に、獣の様な本能の赴く儘に暴を振い、殺せ――


甘言と詭弁を弄びながら傀儡廻たる彼は、歩くような速さで彼女の背後に忍び込もうとする。
もし、無事に彼が彼女の背後に立つことが出来たのであれば。

彼の手は彼女を諭すように、頭を撫でるように触れ、先程よりも強く生体電流を流すだろう。

それは彼女の理性と本能の均衡を更に崩すだけでなく。
今現在彼女に襲い掛かる駒こそが傀儡廻であるという認識を強めるであろう。
その狙いは唯一つ。護る人間の手で護るべき人間の命を奪うというシチュエーションを作る事である。

/お待たせいたしました。


648 : 【形意神拳】 :2017/07/16(日) 22:48:23 4eWFaEM2
>>645

男の言葉にぴくんとその身が震える。
気の重い沈黙が部屋を支配するなか、聞こえるのは女の嗚咽だけ。
しかしその肩の震えほ収まっていく。鼻をすする音も、徐々に小さくなるだろう。
訪れた静寂の中、ふーっ、と大きなため息をひとつ。
賢い忠犬の如く神妙な面持ちで言葉を待つ男へ、顔を隠して問いかける。


「病院(ここ)まで。どうやって来たの」

――――お分かりだろうか。
タクシーで、などと言うテンプレ回答を求めているのではない。
もじもじと何故か居心地悪そうな様子は、場に相応しからぬながらも、どうやら冷静ではあるようで。
女が気にしているのは最後の気絶のあとのこと。意識の無い自分を彼がどうしたかという問いかけだ。

……確証はないが、意識の狭間、彼の腕か背に居た気もして。


何故突拍子もないことを言うかとくれば、それは自分が病院服を着ているからだ。
部屋のなかを見ても、元着ていたアオザイやパンツは見当たら無い。平均より豊かな胸を固定していたサラシはもとより、ショーツでさえも病院のものとおぼしき質素な其れに変わっていた。
当然だ。衣服はあの時『全て燃えてしまった』のだから。

つまり彼は丸裸の自分を――――――――……!




「……へんたい。」

シーツの向こうから口元を隠しじとりと睨む。
長かった髪は殆ど焼け落ちて、煤の残る顔にはショートカットくらいにしか掛かっておらず表情を隠せない。
その目はまだ潤んでいるものの、新たな滲みはもう無いようだ。

武術家にとって己の感情とは最も厄介な敵。これをコントロールし味方につけるべく、幼少より精神の修養に多くの時間を充ててきた。
誰が、男の言う通りに感情のまま責めてやるものか。断じて贖罪の場など設けてやるものか。


649 : 【不撓鋼心】 :2017/07/16(日) 23:15:54 TUwsCQtw
>>648

「…………。……あの後の顛末を話そう」

……かけられた言葉は些かばかり予想を外れていたが、それはそれとして彼女の聞きたがっているであろう回答を話し出す。

あの後、男がその手で彼女を炎上するビルから運び出したのは事実だ。
ただ当然の措置として上着くらいは掛けていた。彼の少女の操る異能の性質上、彼女よりは炎の影響も少なく済んだ。
もっともそのぶん直接的な傷は多かったが……。ともかく、カーツワイルの場合はそれほどひどい火傷も負わなかったし、衣服についてもそこは同じ。

そして降りている途中からは消防隊が駆けつけて消火を行っていた。
幸いというべきか他の建物に火が燃え移ることはなく、延焼した家屋などはなかったという。
……あのビルの中にいた人々は……やはり、誰一人として生き残ってはいなかったが。

炎と煙を掻い潜り、カーツワイルが彼女を外に運び出したあとについては、もはや語るまでもないだろう。
両名共に仲良く病院送り。救急車の担架で運び込まれて集中治療を受け、自覚はないかもしれないがあの日から今日までに三日が経過していた。
三日で済んだのは、さすが武芸に生きる者の生命力というべきか。彼女の受けたダメージはそれほど深かったのだ。

「そして、慰めにもならんとは思うが」

言いながら、横に置いてあった紙袋を手に取り差し出した。
重い……手に持つとずしりと重量感を主張してくるその中身を見たならば。

「連中の首にかかっていた賞金だ。取り分は半々とさせてもらったが、治療費はこちらで負担しよう」

ぎっしりと詰まった札束――どう考えても数百万は下るまい。
あの二人の犯した所業を考えればもっと高額でもおかしくはない……いいや少なすぎるくらいであるが。
そこは、“後ろ盾”の力があったのだろう。歯がゆい話だが、こうした事例はさほど珍しくない。


650 : 【重層剛筋】 :2017/07/16(日) 23:20:57 4eWFaEM2
>>647

頭にぽんと手が置かれる。
諭すような優しい口調のそれは、遠い昔の父親の其れを想起させ、するりと耳朶に入り込む。

――――そうか。
もう、我慢しなくて良いのか。


「分かったよ、オヤジィ……」

本当に父親と話している幻覚でも見ているのか、鬱々とした口調に微かな笑みさえ浮かべ、顔を伏せた女は呟いた。
肉体という土台こそ微動だにしないが、何度も傷口を抉られたシャツは最早血塗れ。其の分の怒りを込めて、両腕を高く構える。
顔の前には太い筋肉の走る腕、かきむしった血が流れる腕。
一瞬目を見開き、そして細める。
ぎゅう、と右の拳を握りしめて。

「がああぁぁぁぉぉぁぁぁああッッ!!」






渾身の右ストレートは、“背後の男の顔へ”振るわれた。

――――――――


「なあ」


彼にそれが命中する如何によらず、女は即座、未だに自分を殴る男へ、その首に手刀を落とす。上手く行けば今度こそ傷付けず、意識だけを刈り取れるだろう。
ついでに立てないよう、無慈悲に両足をへし折るおまけもつけるかもしれない。
そして立ち上がった女は、彼にあるものを見せつける。

それは、自身の左腕。
月明かりの下で目を凝らしてみれば、その歪さが見えるだろう。















「これ、テメエだよなあ?」


腕に乱雑に『爪で』刻まれた、深い傷。
それは忘れぬよう、埋もれぬよう、最後の理性で記した誓い。
暗示は間違いなく掛かっている。全身から揺らぎ上らせる殺気が何よりの証拠。
期待通り、女は暴走するだろう。最後に自身が記した対象に向けて、最後に彼が望んだ威力でもって。
颶風を巻いて、またも右拳が襲いかかる――――


651 : 【電脳髄液】 :2017/07/16(日) 23:55:58 op7oTLAw
>>650


幻覚に魘されたかのような、朦朧とした言葉とこの場に似つかわしくない彼女の表情と。
偽りなき悪意と偽りの善意を滲ませた彼の手は、この上ない愉悦を与えてくれた。
ああ、脚本家冥利に尽きる。後はその手で悲劇を完成させてくれと言わんばかりに。

だが、脚本家気取りの在り方が彼の犯した致命的な失敗であるとは思いもよらなかった。
傀儡廻は己の能力を過信していた。故に、己の描く脚本に無い展開に目を見開き、動揺を隠せなかった。

不意に振るわれる暴力的な右ストレート。
咄嗟に生体電流を自身に流し身体能力を強化してしゃがんで回避したが、依然として動揺したまま。

「―――ッ!そんな小細工を…実に涙ぐましいな」
(…おのれ。何故だ?…これだから思い通りにならない駒は嫌いだ。
 筋書きから外れて好き勝手やってくれる。実に腹立たしい事この上ない!)

彼女の腕に乱雑に刻まれた爪痕を前に、言葉は依然として彼女を愚弄するが
内心はその逆でそれは彼の顔にも出ていた。彼の顔色も怒気と動揺を色濃く滲ませている。
しかも、自身の言葉は彼女の問いを肯定してしまっている事にも気づかなかった。

傀儡廻の操る駒は、彼女の攻撃により意識を失ったばかりか両足まで折られて使い物にならない。

追い打ちを掛けるように、三度襲い掛かる右ストレートを前に彼は決断を迫られる。
身体強化の生体電流を解除して、彼女に再度生体電流を流して極力無力化させるという決断を。

決断しながら彼は後方へ飛びのきながら、彼女の豪拳を両腕で防御してなお威力は殺せず。
両腕の骨は軋み、激痛に表情を歪ませる。腕を失った錯覚さえ覚える一撃と引き換えに。
彼女の動きと荒ぶる感情を沈めることに専心すれど、果たしてどのような結果になるのか。


652 : 【形意神拳】 :2017/07/17(月) 00:00:00 nYZ5xzcE
>>649

差し出された袋が、力なく払われる。
勢いこそ無いものの、衰弱した腕には様々な感情が込められているのだが。
はらはらと紙幣の吹雪の舞うなか、漸く顔を見せた女と彼の視線が絡まる。

「言い訳しないって。さっき言った」

客観的な事実だけを並べ、あとは金で解決か。
彼の懇切丁寧な説明は、折角コントロールしかけた女の感情をそっくり逆撫でしたらしく。聞きたかったのはそんな言葉ではない。
彼に自分はそんな女に見えるのか。それとも、本当に分からないのか、と。
赤く腫れた目の奥に、失望に近い哀しみの色がある。
つくづく面倒な女。そんな言葉が似合うだろう。
――そう。ひとたび道着を脱ぎ拳を解けば、結局女とてこんなものだ。


「めるびん。嘘ついたの?」

初めて呼ぶ彼の名前。
ここで男に出来る、最も簡単な処置は――沈黙。
そうすれば女は、『そう。』と呟いて。彼から目を反らすだろう。それで終わり。
女の目から感情の弛みは消え失せ、最初出会った黒曜石のような瞳の、元通りの泊 梁山に戻るはずである。


653 : 【形意神拳】 :2017/07/17(月) 00:18:26 nYZ5xzcE
>>651

「アハッ! やべー、まだ壊れねえ!」

権力の鎖から解き放たれた女、もとい獣は愉しげに嗤う。
全力で殴って壊れない獲物など滅多にお目にかかれない。
流れる血に委細構わず、暫しの愉悦。

「アー……?」

しかし三度目の右ストレートを最後に、その両腕がだらりと垂れる。
どれだけ力を込めても持ち上がらない、指一本動かない。
いやそもそも、筋肉に力が入らないというのが正しいか。
彼の苦肉の策は、しっかりと女の腕を封じていた。


「しょーがねーなァ、ッ!」


だが理性を失った獣はそんなこと気にも留めない。
警戒心ゼロでずかずかと男へ近づいていく。その姿は馬鹿みたいに無防備で。
そして間合いに入ればすかさず。前蹴り。
特別速くもない、武術の理合もない、しかし威力だけは一級品。
無造作なケンカキックがフェイントもなしにガードごとぶち抜く勢いで、どストレートに振るわれた。


654 : 【重層剛筋】 :2017/07/17(月) 00:20:05 nYZ5xzcE
>>653
/すみません、名前ミスです


655 : 【不撓鋼心】 :2017/07/17(月) 00:22:53 04CRK1WU
>>652

「…………」

そこで初めて、男は言葉に詰まる。
彼女の言っていることの意味が分からなかった。まさか説明に不足があったのか?
知る限りのすべてを話したつもりだった。何一つ隠した事実はないはずなのだ。
その後の自分のことなど関係ないはず。ここで論じられているのはあの日のことで、それも彼女自身にまつわること。

つまり問題は、彼女の――。

「……いや、そうか。そうだな」

そこでようやく思い至った。
犯した罪があるならば、それに相応しい賠償を。そのことばかりに気が行って、何よりもまず求められるものを失念していた。
こんな言葉、彼女という被害者からしてみれば何の足しにもならないだろうと勝手に決めつけて怠った。

まったくなんという愚か者……これでは確かに、すべてが言い訳だ。
知らず重ねてしまった罪を恥じ、自戒する。二度と繰り返すまいと肝に銘じる。

そうして深く、深く頭を下げて――。

「すまなかった、泊殿。如何様にも罰は受けよう」

すべてに先立ち言うべきだった謝罪の言葉を真摯に紡ぐ。
乙女の柔肌に気安くも触れた罪、あの状況では仕方なかったとはいえ感情が許すまい。
理屈だけでは解決できないこともある。これはそうしたものの一つなのだろう。

深く詫びる姿と心に嘘はなく、ゆえにその姿にもその心情は反映されていた。


656 : 【紡風慧峯】 :2017/07/17(月) 00:28:16 uJLriHBM
――綺麗な三日月の出た夜だった。
艶のある黒髪のポニーテールを振り乱し、白いシャツの上の黒いジャンパースカートが揺れる。
其の後ろからは数人の男が負ってきているようだった。


「あー、もしもし!こっちで自警団引きつけてるから落ち着いてやっていいよ!」

右の口角をあげてしたり顔をしながら、スマートフォンの受話口へ向かって話す。
――どうやら、何らかの犯罪でも行っているかのようだった。
追い風が吹いている訳でもないのに、少女の足取りはかなり早い。

自警団員は全力で走っているようだが、一人たりとも追いつけていない。
それほどに少女は早く走っており、またどんどんと離れていっているようだった。
だが、入り込んだ一本の路地は袋小路になっており。戻ろうとすると途端に出口を封じられてしまった。


『貴様、何を企んでいるのか話しておらおうか』
「ふうん、そんな口の利き方するんだー」

一人の男がそう言うと、少女の表情はつまらなそうになった。
少女の腕が横へ振るわれた刹那、一帯に突風が吹き荒れる。
特に、口を開いた男へは酷い風が当てられた。背を強く打ち付けてしまい、ぐったりとうなだれる。

「邪魔されちゃ困るんだよね」

数人の自警団員をなぎ倒した少女は、ゆっくりと袋小路から出る。
そして再びスマートフォンを手にして、何か話しだしたようだ。
――爆弾は設置できた?其のような内容だった。さて、静かに進む企みを止める者は現れるか。


657 : 【電脳髄液】 :2017/07/17(月) 00:46:24 TZE0Ieok
>>653

「…がはぁッ!」

右ストレートのみならず、無造作の蹴りは彼の胴体、正しくは腹部にめり込み吹き飛ばされる。
肋骨が折れるのが解る。血液が奔流し逆流するのが解る。意識が朦朧とする。

(―――所詮は、獣。言葉も解さない、か)

手を塞ぐ程度では不十分か、ならばと蹴りが彼の身体に触れた瞬間にも生体電流を流す。
不確かな意識の下で、今度は手だけでなく、足も動かさぬように念じて。

ここまで追い込まれ脚本を滅茶苦茶で無軌道無修正に荒らされるのは業腹だったらしく。
彼はふらふらと立ち上がり、血液を飛び散らせながら。彼女の風下には立たぬといわんばかりの顔で。

「…ごぷっ、……たのし、そうだな。護るより、 …こわ、す方が、…楽し、かろう
 し、所詮。お前は、…獣だ。護るなぞ、…そんな事思ってもないだろう。
 ケダモノ風情が…。お前に、出来るのは、…ガラクタを積み上げる事だけだ」

脚本家はこの僕だ。そう言わんばかりの強がり。真正面から獣と対峙するなど元より無謀に過ぎた。
が、蹂躙されたままではいかず。じりじりと彼女と距離を離しながら、彼女の内に潜む矛盾に爪を立て、引っかく。

自身の落ち度である。自身の過信による劣勢である。
脚本家気取りにとっては屈辱でさえあるこの状況を今は受け入れる。肝心なのはどう切り抜け、
できるだけ彼女に傷痕を残せるかであった。


658 : 【形意神拳】 :2017/07/17(月) 01:39:31 4bPJ0s9Q
>>655



「――――、」


女の態度は、黙殺。謝罪すら受け入れられないということか。
否、目線の熱があるなら火が着きそうなほど、彼にはつむじに視線を感じる筈だ。


「……ばか。」


ぽんぽん、と。男の頭に、包帯まみれの手が置かれるだろう。
それで仕舞い。不器用なのだ。
感情をコントロールする事を課してきたがために、いざ発露のさせ方が分からない。
取り敢えず罰という言質は大事に胸の奥にしまっておく。貸し一つ。


「そこ。傷に障るでしょ」

次にぽんぽんと叩かれるのは、自身の横たわるベッド。
彼の座るのはよりによって固いパイプ椅子。自分とて重傷人だろうに、なんとも堅物な男だ。
こっちに座れ、と促す瞳は、可笑しげに細められている。
抵抗しても半ば無理矢理連れ込むだろう、彼ではなく自分のために。

「でもこれで。私もめでたくキズモノ」

修業や路地裏格闘でついた傷が皆無とは口が裂けても言えないが。
今回の怪我はそれらをダントツで引き離しての全身大火傷である。
傷は勲章などと言う武士的な思考は、武術家のなかでも意見が分かれるところだが。顔などのデリケートな部分に残る事を思うと、これから先少し憂鬱だった。

「貰い手が。ますます遠のく」


/すみません、遅れました……


659 : 【重層剛筋】 :2017/07/17(月) 01:52:49 4bPJ0s9Q
>>657

「ギャハ!」

ケンカキックが炸裂。
弾ける血反吐に高笑いをあげる。

だが、それが限界。
脳からの回線を断たれ立つことすら出来なくなった女は俯せに倒れる。
そこに投げつけられる罵倒の雨。
芋虫のようにみじろぐ身体に容赦なく降り注ぐ。


「………
、………」


「うる、せえ」


女の目に光が戻る。理性という名の正義の、秩序という名のどす黒い輝き。


「テメエは私が、絶対。捕まえて、ブチ込んでやる」

食い縛った歯の隙間から精一杯の負け惜しみ。
その間も動け、うごけと手足に命じる。それでも人外の膂力を発揮する身体はピクリとも動かない。
無事なのは元の粗雑さを取り戻した口だけ。
俎上の鯉のごとき無防備を晒す。


/こちらもすみません、遅くなりました


660 : 【不撓鋼心】 :2017/07/17(月) 02:34:52 04CRK1WU
>>658

しばしの沈黙……。
これも当然の報いかと思い始めたその頭に乗せられた手、次いでかけられた言葉に頭を上げる。
許されたとは思っていない。だがひとまずこの場においては流すというその様子にまた目礼をした。

こっちに来い――つまりそういうことなのだろうか、その仕草は。
固辞しかけたがどうにも無理矢理連れ込もうとしてくる。
怪我人に、それも彼女ほどの重体の身に動かせるのは忍びない……仕方なくも、横へ移動する。

そして世間話めいた彼女の言葉に、またもなんと返そうか逡巡した。
それもそのはず、カーツワイルはこの手の話題にとんと縁がない。
鍛えて、鍛えて、鍛えて、戦って、また鍛えて……そんな日常生活だから女性の影などあるはずもなく、またそうした相談を受けたこともない。

「……たとえ外見がどうであろうと、その尊い心意気を分かってくれる男は現れるはずだ」

だからこんな月並みな返答しかできなかったが、決して答えに窮した末の適当な返事ではない。
それは間違いなく本心だった。人間の価値は見た目に非ず、中身こそが真価を決める。
その意味で、彼女が醜いとはまったく思わなかった。むしろ人間として礼賛されるべき信念を秘めていると思う。

「どれだけ傷を負わされようとも不殺を貫こうとする意志は素晴らしいものだ。俺はその姿を尊敬している」

ゆえに悲観することはない、貴女は必ず報われるだろうと……。
語る言葉と瞳は決して空虚なものではなく、どころか熱い本心が宿っていたからこそ、思うかもしれない。

この男はもっとこう、艶っぽいことはいえないのかと。
口を開けば人間としてどうこう、武人としてどうこう、男女とかそういうものは関係なくあなたは善い人だから云々と。
女性としての魅力なんてものは考え付いてもいないように、しかし心から誉めそやす彼はどこかずれていると言わざるを得ない。

そしてもう一つ……あまりに自然体だったものだから今の今まで違和感すらなかったが、着ている服装が病院着ではなかった。
白いワイシャツ、黒いスラックス。飾り気のないそれらはしかし、どう考えても入院患者のそれじゃない。
指摘するだろうか、だがその前に……病室のドアが三度ノックされる。

「――カーツワイルさん?」

現れたのは一人の看護婦。勤めの長そうな落ち着いた様子で、しかし携えた黒い上着と、布に包まれた何か長いものが異彩を放っていた。
それを認めた彼は一言礼を言って受け取る。看護婦はすぐに去って、カーツワイルはまず渡された上着を着た。
そして次に包みを解き……そこにあったのは一振りの長剣。そして腰に装着するための剣帯。
鞘から少しだけ刀身を覗かせ……小さく頷いた後、手際よく帯を通して剣を吊った。

――まさか。もう退院するつもりなのか、この男は?


661 : 【龍神変化】 :2017/07/17(月) 03:17:22 NFDYCth6

邪教徒。悪魔、邪神、別次元のもの。そういった邪な上位者に心酔し、奉仕し、企みを立てるもの。
こののどかな田園風景の広がる地域では、行方不明者がが続出していた。未だに誰一人、帰ってはこない。
道で、公園で、駐車場で、山で。奇妙な事に、消えるのは毎回若い生娘のみ。
犯行現場には謎の紋章 ―― 呪術に知見のあるものならば、それがある邪教の派生であることがわかるだろう。

何、明白な事だ。そしてこんなに派手に活動をすれば、ああ、正義のヒーローがやってきてしまう。

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

それは彼女の日常。繰り返される、血濡れの光景。この世に神が存在しない事の証明。
5.45x39mm弾の炸薬が炸裂し、心臓を揺さぶる銃撃音が鳴る度、血は赤に染まり、風は黒に成る。
自動小銃を持った覆面の狂人が弾丸をばら撒く先には、冒涜的な紋章や儀式道具、そして黒いローブを身に包んだ人間たちの群れ。
邪悪な目的を達成しようという集会は、その超越的精神主義は、極めて物質的な方法で粉砕されつつある。
ボルトが後退し、薬莢が排出される事がひたすらに繰り返される。引き金を適切な感覚で引き絞り、一発一発、丁寧に射撃されていく。
血潮が噴出され、暗闇に飛び散り、ずらりと床に並べられた蝋燭の灯を次々と消していった。
悲鳴。この惨状の下手人の鼓膜を引っ掻き、せめても記憶を傷つけんとばかりに、悲鳴が狭い空間に反響した。

救いはない。神はいない。そのはずだ。俺もお前も、惨たらしく死ぬに決まっている。
それが今、お前に来ただけだ。


上空で蠢く黒雲は雷鳴を光らし、轟音を響き渡らせた。邪教の洞窟から外の森へと出てきた奇妙な服装の人物は、またもやずぶ濡れとなる。
外で雨が降っていることを失念していた為、洞窟内で煙草に火を付けてしまい、此れの火も瞬く間に雨に消されてしまった。
頭全体に乱雑に巻かれた黒い包帯に水がずっしりと染み込み、髪の毛の重さと相まって、不愉快に思う。
弾丸を撃ち尽くした自動小銃を脇に投げ捨て、深いため息を吐き出す。早くシャワーを浴びたい気分だった。
返り血が全身にべっとりとへばり付き、これほどの豪雨でさえも、洗い流すのには全く意味が無いことを知っている。

しかしその時、近くの茂みから走り出した何者かの影を捉える。黒いローブを着た人影は、恐らくは偶然外に出かけていた邪教徒だろう。
考えるまでもない。そして45口径のリボルバー拳銃をホルスターから抜いて、引き金を引くまで、何の躊躇いもない。
慌てて逃げ出す黒ローブの足元に着弾すると、それは火炎の玉のように爆発し、右足を吹き飛ばす。人が地面に倒れる音。

「……煙草が吸えて、ないんだ。」

異形の風貌の女(声色から何とかわかるだろうか)は、激痛に悶え苦しむ邪教徒の元へと近づいていく。
胴体に爆発する弾丸を当てれば、それだけで即死させる事も出来ただろう。しかし、そうしなかった。
無論、この悪天候では弾丸で狙いを付ける事は困難を伴う。銃の腕前が達者だろうと、ペナルティは避けられない。
しかし ―― とにかく今は、イライラしていた。少し、付き合ってもらわないと、いけない。


片手で髪の毛を掴み上げ、悲鳴が漏れるのを気にも留めず、ずるりずるりと引き摺る。
邪教徒は近くの街の若い男だ。まだ10代後半と言った金髪の青年で、青い瞳をしている。
恐怖で歪んだ表情からは涙が零れ落ちていたが、この大雨ではどれがどれだか、誰にも分らない。
どうか助けてください、私が間違っていました、彼は言う。命乞いをする。助けてくれ、助けてくれ、まだ僕にはしたいことがたくさんある。

洞窟の入口へと引き摺って行くと、ポケットから取り出したウォッカ入りのスキットルを取り出した。
中身はまだ液体に満ちていて、しっかりとした重さを感じる。そしてそれは、倒れ伏す青年に全てを今掛けたので、軽くなった。

「今お前に出来る事は、ただ一つ。」

アルコール度数の高い酒を全身に浴びた青年を見下ろしながら、彼女は、ライターを取り出す。
親指でホイールを擦りあげると、音を立てて火が灯された。

「黙る事だ。」

彼をわざわざ燃やさなくてはいけない理由とは、何だろうか。いや、理由は、無い。
トレス発散? それも、違う。こんな事をしたところで、ぐしゃぐしゃになった煙草は戻らない。
強いて言うならば、答えは、彼女はそれができるからだ。

彼女は狂っていた。


/深夜テンションで絡み待ちです。置きレス前提になると思います……すみません。
/線より下のどのタイミングで絡んで頂いても、大丈夫です。癖強い待ちで、時間も時間なので、気に留まらなかったら全然スルーしてください……
/キャラとかシチュ、展開の希望がもしもあったら、お気軽にっ。


662 : 【操威駆風】 :2017/07/17(月) 06:27:46 rVbzubfM
>>644
ふわり、と地面に降り立った女は、置き土産と降り注ぐ銃弾を風の渦で”他愛も無し”と全弾捉え無効化した。
彼女に対し飛び道具は意味を為さない。もし当てようと思うのであればあの二人の様な組み合わせな必要だ。

そもそも怪我を負うこと自体珍しいのだが……閑話休題。慌てる子鼠の様に闇へと消えていく二人を彼女は”見送った”

「まぁ、鼠に噛まれたと考えるととしましょう」

未だに焼かれる様な痛みを訴える右手を抑えながら、女は疲れたと言わんばかりに溜息をついた。……彼女は見逃した。

地を這い走る二人なら、応用とは言え空を翔けれる彼女は追いつき、その背中に攻撃を打ち込む事が出来た。だが
”彼女は人殺しでは無く、トレジャーハンターだ”別に好き好んで子供を殺す様な趣味は無かった……あぁ、そうだ

この街でも1、2を争う美術館から今しがた歴史的に非常に価値が高いネックレスを盗み出し、今夜のサイレンの原因である女は

「このままだと、犬にも噛まれかねませんしね」

そのまま路地裏へと歩んでいき、派手な姿を都会の影の中に溶かしていくだろう。しばらくするとサイレンの音が高まり
ガラスが一気に割れる騒ぎや、屋上での貯水タンクの破損事故、折れた電柱による停電騒ぎなど諸々の事情から
この場所で騒ぎがあったと感づいた警察組織が乗り込み、転がる死体と側のメモを発見する。それは女が残したものだ。
内容は”この死体の犯人と、あの二人の特徴”だ。まぁいきなり襲われた事への仕返しだ。これ位はしないとやられ損だ

この事で色々厳しくなるかもしれないしならないかもしれない。それは神のみぞ知る事だ

/絡み、ありがとうございます。

/少し気になったのですが、能力が放たれる瞬間を察知して回避行動を取る。のは能力の記述通りとして
放たれる能力による攻撃が範囲攻撃だ。また、走ったら避けれるぞ。までは察知するのは能力の適応範囲外ではないかなと?

/今回の場合は、風(真空波だとそもそも現象的によく分からないで能力の記載に一番近い風と表記)
での攻撃で、一度同じ様な攻撃をしたのでそこから予測した予測したとして予兆と描写をした。
のかもしれませんが……その場合は申し訳ありません。


663 : 【二心掛力】 :2017/07/17(月) 08:56:25 QyXJ0XTc
>>662
//いえ、実際には全然避けきれてないですしそもそも防御の手段がない以上この場面では回避判断しかしようのないキャラなのですが…
//絡み、ありがとうごさまいました


664 : 【諸塁槍拳】【操威駆風】【土傭戦士】 :2017/07/17(月) 09:00:20 rVbzubfM
>>663
/あ、いや、別に今回のロールに関しては別にどうとも思ってませんが
/避けた避けないの問題では無く、今後大丈夫かな?と指摘した次第です。余計なお世話でしたね、失礼しました。

改めてお疲れ様でした。


665 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/17(月) 10:20:20 ZMIDqcwo

>>656

「君たちのヤンチャにも、困っている人はいるんだ」

少女の電話にノイズが走り、呆れたような声と小さなうめき声が割り込む。

電話を掛けていた少女の前にビルの壁を背にした女性。
胸元をわずかに開けたシャツにデニム地のジーンズ。
僅かにまくり上げた袖口には赤黒い染みが二、三。

「電話中邪魔して悪いね」

地面に伏した……おそらく男の頭を足で弄びながら少女に言葉を向ける。

「鳥を割くに焉んぞ牛刀を、って言ってもあれだけど、
 さて、これからどうしようか」

頭を勢いよく蹴り上げ、女は向き直る。
その顔は明らかな軽蔑のそれ。


666 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/17(月) 20:09:01 j59M.60g
>>646
/これで再募集して見ますっ


667 : 【形意神拳】 :2017/07/17(月) 20:31:19 GI5IVYU2
>>660

「それ絶対。分かって言ってるよね」

そういう台詞をさらりと言ってしまえるのはずるいと思う。
というより確信犯でなかったらとんでもなくたちが悪いと口を尖らせ。頭を彼の肩に凭せかけるだろう。
包帯の下の頬が熱を持っている。
うん、感情はコントロール出来ている。火傷のせいだろう。きっと。

「じゃなかったら。次からずっとハゲタカ君って呼ぶから」

熱を冷ますように少し早口で言葉を紡ぐ。
しかし――――尊敬、か。もう少し違うフレーズでも良かったのだが。
いくつか浮かぶ単語を頭に浮かべては消していると、扉に人の気配。
最初は自分に用かと思い、戸惑いながらも、身支度を整える男に目を奪われる。

なんと、もうお別れか。


「幾らなんでも。早すぎない?」

はらわた剥き出しで平然と立っていた事といい、どうやらこの男の身体は特別製らしい。
驚きを通り越して呆れ返るような眼差し。
気味悪い等とは思わない。頑丈な身体というのは其れだけで一つの財産だ。
女の耐久力は所詮気の練功によって賄われる程度だけに、少し羨望を覚えるのは武人としての軽い嫉妬みたいなものだろう。
彼は才能を羨み、女は素質を羨む。
お互いに、隣の芝生は青い訳だ。

――――
そう。
思えばあの時彼について行ったのも、それが切っ掛けだったのだ。
雑誌で彼の記事を読んでいて。急に目の前に現れて。
まるで物語に出てくる騎士みたいな人だと思った。
実際はそこまで格好いい人ではなかったけれど。とんでもなく面倒臭い人だったけれど。それについてはお互い様だ。
そう。
最初から私は彼の生きざまに憧れたのだ。
――――

ぼんやりと見ていた視界にふと既視感。中でも彼を訪ねてきた看護婦に見覚えがあった。
ここはもしかして――――――――

「うち。この近くだから。」
「治ったら来てくれても。良いよ」

たまに通りかかる、近所の病院ではないか。健康優良児ゆえお世話になるのは初めてだが、薄々立てていた推測に確信を深める。
ここが南向きなら窓から見えるかもしれない。道場とはなれの付いた、古びた和風家屋が。
そう思って、今にも出ていきそうな彼に呼び掛ける。
とはいえ報償金も断った手前、彼が自分に会う理由はもうない。
幾ばくかの後悔が胸を渦巻く。それが何にたいしてかは分からないが。


668 : 【紡風慧峯】 :2017/07/17(月) 20:41:09 uJLriHBM
>>665

「ん、別にいいよ」

呆れたような声―ついでに呻き声もあったか―の方へ向く。
すでに相手との通話は切れており、あとは彼女が爆弾を設置するまで待つだけだった。
暇潰しついでに、とでも思ったのだろう。


「これからどうしようか、って言われてもねー」
「私はもうお役御免だし、暫くは自警団の奴らも来ないでしょ」

軽蔑の目線を特に気にすることなく、少女は少し背伸びをする。
やれ、“追い風”のお陰で早く走れるとは言え疲れるものだ。
あとは待つだけであるということだけを彼女に伝えて、壁に背を凭れた。

「所で、貴女は何でここにいるの?」

ふとした疑問。彼女はなぜこんな路地裏に居るのだろうか。
別に疑ってかかっているわけではないが、また暇潰し程度に。


669 : 【電脳髄液】 :2017/07/17(月) 21:24:47 TZE0Ieok
>>659

彼は慢心創痍。彼女は身動きが取れない。
お互いに交せるのは、言葉による応酬である。

「…ごほっ、僕を、捕まえるか。はははっ、取り繕うのはよしなよ。
 "捕まえたい"のではなく、それは破壊の次いででしかなかろう。」

軋む身体。息をする度痛みを訴える身体。
彼女の剛拳によって齎された痛みは、刻一刻と心と身体を蝕み続ける。
それが証拠に息も荒く、今にも倒れそうであった。その為、彼は離脱を最優先に動く。

「――…ならば、僕は。君に悲劇を齎してやろう。
 傀儡廻の名に掛けて。そして、今宵受けた以上の屈辱と絶望をね。」

言葉に滲むのは、脚本家の余裕ではなく一個人の純粋な怒りと屈辱感。
彼女に向ける鋭く、黒くぎらついた目付きは言葉に絡む感情を裏づけする。

動けぬ彼女と対照的に緩慢であるが確実に距離を離しつつある彼。
状況だけで言えば彼は優位である。だが彼はそう思っていない。
思い描く筋書きを滅茶苦茶にされ、脚本を完遂すること無く撤退する故に。

「精々、記憶に苛まれるがいい。嬉々として護るべき者に手をかけたのだからね。」

負け惜しみを吐き出すのは彼女だけでなく、彼もまた同じであった。


670 : 【重層剛筋】 :2017/07/17(月) 21:48:59 GI5IVYU2
>>669

「テメ、待ち、やがれ!」
「逃げんな、やってみろコラぁ!」

姿はほとんど見えない。
それでも靴が踵を返し遠ざかるので、相手が逃走に移行したのだと分かる。
男は手負い、絶好の機会が遠退いて行く。
ここで捕まえなければ。逸る気持ちを裏切って、身体はひたすらに沈黙を貫く。出来るのはチンピラのように吠えるだけ。
冷えかけた心に飛んでくる、だめ押しの捨て台詞。

トラックが衝突したような音が響く。
振り返れば、煙をあげる地面。倒れたままの右拳が地に打ち付けられていた。直接何度も生体電流を受けたぶんだけ耐性がついたのか。

「違うっ……っ
違う……! 私は……――!」

だがそれだけ。回復しつつあるのもまた右手一本のみ。
顔を持ち上げ獣のように唸る姿と、地の凹みは、女の怒りと悔しさの大きさを体現しているかのごとく深く深く、拳の形を刻んで。
それは思わず動けてしまうほどに、彼の言葉が酷く突き刺さった事の現れでもあり。


「くそおぉッ……ッ!
、…………」


やがて、声を発する者が消えた公園に、一つ、透明な雫が落ちた。



/この辺で〆、でしょうか。長期の絡みお疲れ様でした
/能力の件で、私の勘違いで不自由を掛けていたら、申し訳ないです
/お付きあいくださりありがとうございました


671 : 【電脳髄液】 :2017/07/17(月) 22:07:34 TZE0Ieok
>>670
/そうですね、ここで〆ましょう。
/長時間のロールに付き合っていただき感謝です。
/不自由に関してですが、特にはございませんのでお気になさらず
/むしろこちらの描写不足でご迷惑をおかけして申し訳ございません。


672 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/17(月) 22:09:16 ZMIDqcwo
>>668

「自警団みたいなのとは別口でね」

小遣い稼ぎだよ、と続けた。
そこには気楽な声色が乗る。

「それに、バカ共が怯える顔ってのは、面白いものだし」

にまあと顔を崩す彼女の右手には、王の黒駒。
流れるような動作で、少女の頭上に放り上げる。

駒は空中で巨大化。少女の頭上に巨大な質量として落下する。
何もなければ軽々と人が死ぬ代物。

「ああ、爆弾の始末つきそうだ。ご破算みたいで……」

スマートホンの画面をちらりとみて、彼女は笑う。


673 : 【紡風慧峯】 :2017/07/17(月) 22:30:26 uJLriHBM
>>672

「べ、別口って――」

少女は勘からか、それとも経験則からか。嫌な予感はした。
――頭上に浮かぶ巨大な駒、そして鳴り響く着信音。下唇を噛んだ。
両腕を前方へ差し出すと、前方へ風を押し出す力で後方へ下がり駒を避ける。


「上手くやってくれるもんだねえ」

止んだ着信音、ご破算だと話す彼女の口元に浮かぶ笑み。
どう見ても、もう一方は“消された”のであろう。眉間に皺が寄った。
失敗したとなれば、後は逃げるだけ。この状況からして、命があるだけマシだろう。

「全く、恐ろしいね」

腰に差した刀の鯉口を切り、いつでも抜けるようにしておく。
彼女の異能の一部は把握できた。増援もない今は、逃げに徹するべきだ。


674 : 【不撓鋼心】 :2017/07/17(月) 22:46:58 04CRK1WU
>>667

……自分でも、青い台詞を言っているとは自覚している。
しかし他にどうしようもないのだ。人と人は対等であればこそ、偽ることなく本音で向き合うことこそ誠意だと思っている。
美辞麗句にて己の言葉を飾り立てることも元来苦手な性分だ。心の内をそのままに吐き出すことしか、生憎知らない。
それがどれだけ歯の浮くようなものだとしても、嘘を吐くよりはよほどマシだろうから。

「…………。そうだな」

そして肩越しに振り向いて……その視線が下に向いたかと思えば、身を屈めて散らばった紙幣を拾い始めた。

「確かに傷は未だ完治には程遠い。激しく動けば簡単に開くだろうが、逆に言えばそれくらいには治ったということだ」

その最中、語って聞かせるのは自分の身体の状況だ。
曰く、切断面が著しく鋭利だった。だから手術は簡単に成功し、術後の経過も見てのとおり。
ならばあとは時間が傷を癒すのを待つだけ……ならばあえて病院に留まる必要もない、そういって“またもや”強引に退院手続きを済ませたのだと。

その言葉が示しているのは彼女の想像を否定するものだ。
これは単に損傷の状態と執刀医の腕が良かったから、とりあえず出血しない程度に傷が縫い合わされたというだけの話。
並み外れて治癒が早いわけでも、傷を推して動ける異能力があるわけでもない。
彼女の思う特別性など何もなく、本当に人並み程度の肉体機能しかないのなら、仮に動けるのだとしてもこうして立っているだけで激しい痛みが伴っているはずなのだが……。

「この身は未熟、一秒たりとも立ち止まっている時間はない。肉体を痛めつける鍛え方は控える必要があるが、だからこそできる修練もある」

――果たして彼女は想像できるだろうか?
ただの凡夫にすぎないこの男がこうして無茶を通せている理由が、ただ気合と根性であるということを。
湧きあがる痛みを毛ほども表に出さず真実、平常通りに動いているのは……単純に我慢しているだけなのだ、などと。

「それにワイルドハントの事もある。俺が居なければ回らんなどと己惚れたことを吐かす気は一切ないが、やはり当事者でなければならんことはあるのだ」

……今回の件を聞きつけて、取材の申し込みがまたもやあったらしい。
メディアというものは話題に貪欲だ。これほど派手な事件があって、その主犯を討伐したのが最近話に登っていた人物となれば飛びつかないはずがない。
申し込んできた雑誌社の数は前回よりも増えていて……彼はそれにすべて応じると答え、すでに予定を組んでいた。

「この組織は未だ黎明期、発足したばかりの小さい集まりだ。だからこそ広報活動を含め、俺にできることは全力で取り組もうと思う。――ゆえに」

落ちた紙幣を集めて束ね、それを仕舞った紙袋を再び差し出した。
それは当然、彼女に向けて。見つめる視線はまっすぐに、やはりというべきか熱い情熱に満ちていて……。

「泊梁山殿。貴女の力と、そして何よりその精神に、俺は真なる強さを見た。――ワイルドハントに来ないか?」

気概と気迫が声となって現れたような言葉が紡ぎ出された。
その目は偽りない尊敬の念で彼女を映し込んでいる。あなたならばと、見込む心に偽りはなかった。


675 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/17(月) 23:10:22 ZMIDqcwo
>>673

「私たちは、私たちに礼を取らない新参者を容赦しない」

定型文のように、無感情なセリフを投げつける

「む、避けるか。じゃあこうだ」

彼女が次に用意した駒は白の女王。
手元へ零して大砲を手にした駒を用意する。

「足で避けているなら、邪魔してやろう」

路地のビルの屋上付近めがけて大砲を放つ。
砲弾は人がいるであろうビルの一画を吹き飛ばし、
路地に大小の瓦礫を雨あられと降らせる。

さらに巨大な王駒も、大股で距離を詰め始める。

「人を詰めるのは、いつだって楽しいと思わない?」

高笑いとともに、彼女もゆっくりと進む。


676 : 【形意神拳】 :2017/07/17(月) 23:22:02 GI5IVYU2
>>674

そんな理屈で傷が塞がるならば、世界から外科医の半分は用済みとなるだろう。
理屈はともかく、やはりただの人間ではない。顔色一つ変えずにそんな話が出来るのは、ある種トんだ精神の持ち主だからか。つくづく化け物だ。
独りくすくすと笑うが、だが最後の言葉にそんな冗談も忘れて見つめ合う。


「…………。」
「お金には。困ってないから」



そっと男の手は押し戻される。
払い除けた時とは違い、瞳に申し訳なさげな色があるのは、話すうち芽生えた別の気持ちからだろう。

押しとどまる理由はやはり考え方、目指すべき目標、そして信念の違い。

まず一つ、女は決して戦闘狂ではない。
度を超えた負けず嫌いではあるが、自分が闘いたいと思う強さの相手と相対して初めて闘志を燃やすのだ。

彼の生きざまには憧れるが、その仕事についてはと聞かれると、首を傾げざるをえない。
賞金稼ぎというからには悪人を捕らえるのが仕事で、中には血生臭い案件も有るのだろう。
その悪人自体に嫌悪するのではない、彼らを正義の名のもとに誅殺を下さねばならぬという未来に怖気を覚える。彼がそうしたように。

何より、『仕事』でよく知らぬ相手と『闘わされる』のは嫌だった。



「ハゲタカ君がうちに来るなら。考えなくもないけど」

うちに来る。さっき言ったのとはまた趣を異にする含み。
女の家は表向き武州拳法の道場を開いている。だが実際は道場生など長らく皆無であり、父と祖父の三人で修練に励む日々。
金銭は祖父の持っている不動産から発生しているため、生活には然程不自由していない。先程お金に困っていないと言ったのはそのためだ。
つまり有り体に言えばニートである。

気まずさからそんな誤魔化しに逃げたが。口調はともかくあながち冗談とも言いがたい。
彼のポテンシャルは相当のものだ。逆スカウトに走ってしまった自分の選択眼も間違いでないと思いたい。


677 : 【紡風慧峯】 :2017/07/17(月) 23:25:22 uJLriHBM
>>675

「あーあ、私たちより酷いや」

女が大砲を手にした駒を出したと思えば、ビルの一画へそれが打ち込まれる。
苦笑いしながらその様子を見ると、瓦礫が上空から降り注ぐ。
追い風の恩恵を受けスピードを上げて回避を図るが、降りしきる瓦礫は少女へ襲いかかった。

無論無傷では済まなかった。腕や脇腹には大小の瓦礫がぶち当たった。
特に右腕の上腕部は酷く腫れていた。動かせるだけマシと言ったところだろうか。
当たるたびに小さく呻き声を上げていたが、瓦礫の雨が収まると少女は女の方へ向き直った。


「――うん、私も人を詰めるのは楽しいかな」

<野分>。つぶやいた詞は、女にも聞こえただろうか。
その刹那、風は少女を中心として渦巻き始め、徐々に雨粒が垂れてくる。
一つの瓦礫が少女を押しつぶさんとしたその時――。

「ふふん、私の奥義だよっ」

豪風豪雨が、一帯を引き摺り込んだ。
まさに嵐といっても過言ではない環境を作り出してしまった。
瓦礫は風の流れに乗ってビルへ食い込み、穴を開けるほどであった。

其の中で、この少女は何も影響を受けずに立っていた。
立つことも難しいこの嵐の中で、女はどう動くのであろうか。


678 : 【超参彗拳】 :2017/07/18(火) 00:02:15 EWPoVwnA
街の真ん中にある、大きな公園
豊かさの象徴のような街の中心にあるにも関わらず、ダンボールやブルーシートで出来た家ばかりの、いわばホームレス街
そんな公園にあるベンチで1人の青年が、ビールを飲みながら、顔を赤くしている

「馬もパチンコも負け、バイトも見つからねーし…これからどうすればいいんだよ…」

ジャージを着て長い髪を引っ詰め後ろで縛り、ヒゲは無精髭が伸び、それなりの顔立ちであるにも関わらず、見る者に小汚い印象しか与えなかった
まるでホームレスの一員であるかのように、1人でクダを巻いている

いわゆる社会不適合者である青年は、小銭を握りしめて、近くの酒が売っている自動販売機へと歩いていく

/こっちのスレは初めてです
/拙い文章ですが、もし宜しければお願いします


679 : 【不撓鋼心】 :2017/07/18(火) 00:06:37 mVkdDZ1.
>>676

その返答は――否。
それを前に怒りも失望も見せることなく、ただ厳粛に受け止める。
考え方は人の数だけ存在する。だから断られたとしても、それは本人の意志。あえてそれ以上の追及を行うことはない。

「……ワイルドハントは組織というより組合に近い」

しかし彼女が自分の行いを目の当たりにして誤解している可能性も、また捨てきれず。
だとすればそれを解かなければならないと思ったから、言葉を尽くす。

「対外的な問題で代表は存在するが、本質は賞金稼ぎたちの寄り合いだ。実質的に序列は存在せず、ゆえに行動を強制されるということはない」

一人ひとりが自由意思のもとに動き、ときに協力し合って依頼にあたることもこの先あるだろうが、それも“要請”の形をとって行われるだろう。
つまり要するに、受けたくない仕事は受けなくても構わないということ。誰も個々人の行動を縛る権利はないのだ。

「それに一概に賞金首といっても殺すだけがすべてではない。むしろ生かして捕らえねばならん場合も多々あり――いや、これ以上は無用というものか」

語るべきことはまだまだある、しかし彼はそこで言葉を切った。
結局のところ、何を言おうと彼女は血に塗れた自分の姿を見ている。何を言ったところで信じられるわけはないだろうと思い至ったから。
ならば行動で示すのみ。これより先、ワイルドハントの勇躍を知れ渡った暁には、自然とその性質は耳に届くことだろう。
決めるのはその後でも構わない。可能性は低いだろうがひょっとすると、ギルドは形を変えていくかもしれないのだから。

……窓の外に目を向ける。
先ほど彼女が示した生家。そこは道場の趣があり、おそらくそれは何らかの拳法を伝えているのだろう。
うちに来るなら、その意味を正確に読み取って……その上で向き直り、こう答える。

「――許されるのなら、こちらの方から頼みたいくらいだ」

彼女にとっては意外だろうか、それは前向きなものだったが……。
しかし、と翻した言葉の後にはただ申し出を受け入れられない理由が綴られる。

「我が身は非才、あまつさえ剣を手放すつもりもない。無論やるとなれば生半に鍛えはしないが、必然的に二足の草鞋を履くことになる」

より強くなれる路があるのなら躊躇う理由はどこにもない。
しかし一人の武人として、その在り方をあなたは許容できるのかと問いかけていた。
それは武に対する侮辱と成り得るのではないかと、そういう考え方もまた一面的には理があると考えたために。


680 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/18(火) 00:07:41 pdjyaup6
>>677

「地上げ予定だから問題ない!」

理不尽な理由を投げつけて、自分を正当化する。
始末をつけるのはどうせ自分ではないのだから。

それに、あれを始末すれば、なんとでもなる。

「でも、そっちの方だったかぁ。
 壊し損だったなあ。そらいけ」

嵐の中を質量の暴力で踏み込んでゆく。
踏み込んだならば、嵐の中央へ手を伸ばす。


「わたしが踏み込んだら死んじゃうし……どうしたもんかね」


横殴りの雨に打たれながら、さらに騎士の白駒を横に並べて飛ばないように、
ゆっくりと距離を取り始める。

「……詰め切れない、かも」

にわかに狼狽の表情が差す。


681 : 【紡風慧峯】 :2017/07/18(火) 00:19:00 BGC69Ixs
>>680

ずん、ずんと何かが迫ってきている地鳴りのような音が聞こえる。
此方から見れば視界は開けているため、それが駒によるものだと分かった。
質量の暴力、それにどう対処するか。相手から此方が見えていないのであれば、楽なのだが。


「随分大きいチェス駒だねー」

にひひ、と意地悪そうな笑いを添えて女の方へ言った。
果たしてこの嵐の中で聞こえるかは分からないが、彼女を煽るつもりだった。
なんせこの嵐、先程の大砲自体も命中するとは思っていなかった。

嵐の中央へ編隊を組んだ騎士は進軍してくる。
だが、少女はすでに嵐の中央からは離れ外縁の方へ来ていた。
盲目の中で人っ子一人探すのはかなりの労力が必要だろう。


「ねえ、今日はお互い様ってことでどうよ」

此方としても負傷は負いたくないし、女にとっても危険な状況だろう。
だが、今の状況は此方が有利だと踏み、彼女にドローでどうかと提案した。
彼女がそれを受け入れるかどうかは分からない。提案するだけしてみた、といったところ。


682 : 【形意神拳】 :2017/07/18(火) 00:52:59 RUlgm4hw
>>679

彼の釈明を特に止めるでもなく、口を挟むでもなく。
無言の女の困り顔に男は気づけるだろうか。

仕事を断る自由があるなら、それは今と変わらない。
自分の時間を拘束されるなら、女は躊躇いなく全ての依頼を却下するだろう。
それなら友人の「お願い」でただ働きする方が気持ちの面でずっと楽だ。
友人が少ないのでその辺はよくわからないけど。

雑誌で読んだ彼は、自らの居場所を守るために立ち向かっていた。
ビルに向かう彼は、弱者の盾となるべく奔走していた。
金銭は結果つきまとう報酬でしかなく。
腹が減っては戦はできぬを否定するわけではないが。武に生きるか武で生きるかは、天地の隔たりがあるのだと。
今回の“社会勉強”で分かったが、やはり憧れは憧れのうちに留めておくのが無難なようだ。
『銭のための闘争』は、自分の性に合わない。いや素直に言おう、社会不適合者(むしょく)には荷が重すぎる。


「強さを強制するのは。邪道」
「――君はもっと。弱くなった方がいいから」

何も道場で教わるのは人間の殴り方だけではない。
彼が賞金稼ぎとしてのスカウトを諦めていないのと同じく、女もまた活人拳としての説得を諦めていないのだ。
武術家としての精神的支柱。これをいつか教えられたら等と身勝手に思う。
無論肉体的な言語は言うに及ばずだが……
この言葉を聞いて彼が考えを翻そうとも最早止めはしない。
話し疲れたのか、ベッドに身を横たえて窓の外を見る。どこまでも勝手な性格をしている以上、見放されても仕方ないことだ。
早く退院したいものだ。日に照らされる我が家を眼下に、ふぁとあくびを漏らした。


/これで〆たいと思いますが、次がお返しできなさそうなのでお先に
/長期の絡みお疲れ様でした。戦闘もワクワクし通しの、とても楽しくさせて頂きました
/もしかしたらいずれワイルドハントスレにお邪魔させてもらうかもしれません。その時はよしなに
/最後まで丁寧にお付きあいくださり、ありがとうございました!


683 : 【不撓鋼心】 :2017/07/18(火) 02:15:24 mVkdDZ1.
>>682

「……そうか」

言葉を受けて、しばし瞑目する。
少なくともここで考えを覆させることは不可能だろうと悟ったから。もはやこれ以上の言葉は紡がない。
自分にとって正しいことが、彼女にとってもそうであるとは言えないのだから……それが負担になるだけというのなら、無理にそうさせてはならない。
その意志を尊重しよう。彼女の人生は彼女のものだ、血縁でもない自分が過度の干渉を行うなど否。

……自分にとっても、それは同じだったから。

弱くなった方がいい、など――絶対に、受け入れられない。
なぜなら弱さとは乗り越えるもの。鍛え、練磨し、削り失くしていくべき不純物。
己の弱きを認めることに厭はない。まず自分の弱点を正面から直視しなければ、改善点すら洗い出せない。

だが力の無さを受け入れ、惰弱にもそれに甘んじて何になるというのだ。
自分には才能がないから諦めろと? 器が足りんから誰かに託して途中で辞めろと? 仕方がなかったと妥協して膝を折れというのか――ふざけるな。
弱さとはいずれ踏破し、強きへ至るための道筋だ。その歩みを放り出し、投げ出してしまっていったいどうする?

強さを他人に強制するのは邪道だ。その意見に異存はない。
そして殺すことが強いというつもりも当然ない。むしろ彼女の掲げる活人にこそ、本当の強さがあると思う。
しかしその上で自分は往くのだ。己こそが真の邪悪と自覚しながら、それでもいずれすべてに報いるために。
奪ってしまった輝きを、より大きな光にして返すこと――それが、こんな自分にできる唯一のことだから。

「ならばもはや何も言うまい。貴女の往く道に祝福があらんことを、せめて願わせてくれ」

彼女と自分が道を同じくすることは、きっと永遠にないだろうから。
輝く正道を歩む者……すれ違ったその高潔さにほんの少しでも触れられたことに最大限の感謝を贈ろう。

――最後にもう一度だけ、心を込めた目礼を。

身を翻して去ってゆく。振り返ることも、歩調が淀むことさえ一切なく……。
前へ、ただ前へと、脇目も振らず進んでいった。

……それから少し経ったあと。
とある雑誌の紙面を、またも一人の男が飾ることとなる。
彼の名はメルヴィン・カーツワイル……罪なき市民を虐殺した恐るべき犯罪者を討ち果たした立役者。
自分だけの手柄ではないと語る謙虚な受け答えと写真からも滲み出る誠意と実直さは、その勇名を広めると共にギルド・ワイルドハントの知名度を更に獲得する結果となったのだった。


//お疲れ様でしたー!こちらも本当に楽しかったです、お付き合いいただきありがとうございました!


684 : 【凍魔纏狼】 :2017/07/18(火) 03:14:52 AujuQnzs
>>678

「――よう、ちょっといいか?」

自販機へと吸い寄せられる青年の肩を遠慮なく叩く、誰かの手があった。
それに伴って投げ掛けられた声は不機嫌そうで愛想が無く、ぶっきらぼうな印象を聞く者に与えるかもしれない。
もしも彼が振り向いたならば、そこには目つきの悪い男が憮然とした表情を浮かべて立っていることだろう。

「訊きたいことがあるんだけどよ」

歳は二十前後だろうか。ワックスで無造作に整えられた黒髪に濃紺を基調に鮫をあしらった意匠のシャツ。
青年に問いかける男の風貌はいかにも粗野で、ただあるだけで威圧感を与えかねないようなものであった。

本人にその意識があるのか、それともないのか。男の表情からはいまいち読み取れない。
不良然としたそいつの態度から何か汲み取れるものがあるとしたら――それはきっと、疑念であろう。

/日をまたいでますが、それでも宜しければ……!


685 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/07/18(火) 08:07:51 pdjyaup6
>>681

嵐の影響を受けつつ、追いかけるのは無理筋にみえる。
このまま追いかけても別のエリアに抜けられて別の縄張りに行かれるわけで、

「サイズだけが取り柄だからなあ」

困ったように声を上げる。差し切れないことが自明。
追跡を初めていた巨大な王駒は両手を上げて、180度回転。

「退こうか。役割は果たした。能力もちの情報だけでも意味はあるし」
全ての駒を消去し、雑踏に消える。
髪をくしゃり、とやって不愉快な気分をごまかす。

「次は、もう少しうまくやるよ。何も知らないわけでもから……」

//回答遅れて申し訳ない、私からはこれで締めとさせてください


686 : 【紡風慧峯】 :2017/07/18(火) 21:44:47 BGC69Ixs
>>685

王駒は両手を上げると、くるりと踵を返した。
ふむ、相手が撤退していくという理解でいいのだろう。
少女はくっと背伸びをすると、嵐は自然と形を崩していった。


「あーらら、これは酷いや」

本当に嵐が過ぎ去ってしまったかのように、ビルは穴だらけになっていた。
恐らく瓦礫が突き刺さったのだろう、二人合わせてとんでもないことをやらかした。
だが、一周回って破壊という目的は果たせた、ありがたいことだ。

「あの人、面白そうだね」

口元に笑みを浮かべ、上昇気流に乗ってビルの屋上へ飛ぶ。
ビルの間を縫うようにして、少女は夜闇の中アジトへと撤退していく。
――またあの人と会いたい、という思いだけをともにして。


687 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/18(火) 22:01:04 rxDqejl.
滝のようだ。

雨は極めて平等だ。誰の頭でも均等に濡らす。
それが王侯貴族でも、殺人者でも。

たらいをひっくり返したようだ。

蔭にもまた、雨は降る。蔭を行く者の頭もまた濡れる。
名前を忘れながらも、悠久を生きる女は雨の中を歩く。

異常気象だ。

着ている衣服は肌に張り付いた。髪もまた白い肌に白く張り付く。
あてなどはない。どこへ行けば終えられるかなど知りはしない。ただ、歩く。

大雨だ。

刀を片手に、雨の中を歩く。
今日は寒い、などと思いながら。


688 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/19(水) 09:57:05 NH./IZK.
>>687
/まだいらっしゃいますか?


689 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/19(水) 17:58:27 YwVYgR2c
>>688
//その時間はいませんでしたが今はいます!


690 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/19(水) 19:03:25 NH./IZK.
>>687

大雨は一瞬だけ。刀を持つ者に降り注ぐのを止めるだろう
頭上を通る巨大な影。やがてそちらの背後から正面に向かって、5メートルほどの場所に「それ」は勢い良く落ちる

「っぶなーい!!!!!!!セーフ!!!!!!!!!!」


背後から声がする
どうやら「それ」―――蝸牛の殻を背負ったゴリラのような化物―――を飛ばした張本人らしい
走っているようで、両手で持った直刀を右斜下に構えるのは炎を纏う直刀。そちらを追い抜きざまに

「ちょっとごめんね!」

一言。

そのまま駆けていき、飛び上がると、上段に構えた直刀を真下に、伸びてる「それ」に向かって振り下ろす
そして爆発―――爆風と砂埃が舞うだろう。だが、怪我をするほどではなく、ビル風のような強さで

「……ふぅ」

砂埃が雨に流され、視界を晴らすと
そこには、すれ違った男が無手の状態で立っていて。「それ」は消滅していた

もし「それ」について、何かを感じられるなら、それが「怪異」と呼ばれるものであったと気づくだろうか


691 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/19(水) 19:03:53 NH./IZK.
>>689
/それでは絡ませていただきます!


692 : 【土傭戦士】 :2017/07/19(水) 20:23:45 EbaukEZc
>>697
────巨大な質量が、ほぼ全てを押しつぶした。

【木刀統一】が巨大木刀を振りかざし、校舎を半壊させた後に残るのはただただ、瓦礫の山であった。

年月が経過した建築物は脆く、予想外に崩れ積み上がるそれに、一人を殺し、更に彼女を狙った男は呑まれたか
圧倒的な破壊音が世界を揺らした後に、あの妙に脳裏にこびり付く叫び声と呼吸音を聞き取る事は出来ないだろう。

【土傭戦士】死bo………














何処かで、微かだが、何かを殴る音がした。
耳を澄ませば瓦礫の山の中からだが、君一人では、その山を取り除く事は出来ない。

狂った男の、獣狩りの夜は終わらない。


【土傭戦士】to be continued


693 : 【土傭戦士】 :2017/07/19(水) 20:24:16 EbaukEZc
/誤爆しました!


694 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/19(水) 20:47:15 YwVYgR2c
>>690
雨が止んで、降り始めた。

何事か、と思う間もなく声が届く。それが見える。
声を出す間もなく、「妖刀使い」が状況を進め行く。

止まった躰を雨が打つ。

置き去りにされた言葉。感じる懐かしい違和の気配。
これは、――。昔はありふれていた、人外。

雨は乱される。

終焉の暴風に乗せられた雨から顔を守るべく、腕は掲げられる。腕の隙間から見る。目で、記録する。
既に違和は終わっていた。男しかない。あるのは胸に残ったズレのみ。

雨は言葉を消しにかかる。

届くように、声をあげる。
聞こえるように、大きな声で問いかける。

「さっきの、なに?」



問いかけるソレは、或いは人間と断定できないかもしれない。

ソラからの来訪者と共存するモノ。
歪な永遠を掴まされた元人間。
過去を見歩いただけの壊れた観測装置。

何とでも言い表せよう。観測者の数だけ形容はできるだろう。
だが、確かにこれは言える。

アレは、人間というには生き過ぎた。

と―――




//PCのトラブルなどあって遅くなりました……ごめんなさい!よろしくおねがいします!


695 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/19(水) 21:59:25 NH./IZK.
>>694

「いやー……ごめんね!アレは怪異っていう存在で、人間を食……」

人懐こそうな雰囲気の青年。友好的な雰囲気で改めて謝罪するが
有害な怪異を倒して回る祓魔局の戦闘職―――祓魔官である青年
その"勘/感"は、何かを悟った

「うん、まあ、そういう感じのモノなんだよ。びっくりしたよね?怪我はない?」

一瞬詰まってしまったが、改めて平静を装って
利き腕は力を込めたままに。不意打ちに備え、動けるようにと、敵意は見せないが警戒をする

「君は……どうしたの?風邪引くよ?」

立て続けに問う。目の前の存在が、己の討伐対象でないことを祈りながら
しかし、ヒトとは微妙に違う雰囲気を、確かに感じていた

/いえいえ〜


696 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/19(水) 22:21:54 YwVYgR2c
>>695
ああ、それはきっと知っていた存在だ。殺していた存在だ。
空白が訴える。それがなんとなく人に害をもたらす、私を殺しかねない存在なのは知っていたはずだ。

「けがは、ないけど……」

なぜ言葉に詰まったのだろう?彼は何を感じたのだろう?
分からないが、警戒はしておこう。彼にはこの身を切り裂くだけの力があるのだ。

「道に迷っちゃって……」

どうしたのか、問われてもある意味では答えようがない。だから、もっと広い意味で答えてみた。狭い意味でもそれほど間違ってはいない。
肌に張り付く服がうっとうしい。だけど、苦笑してみせる。

腰には帯刀。身じろきした時に発したのであろう固い音でそれに気づく。
これでは、平穏にすべてを隠すことはできなそうだ。


697 : 【重層剛筋】 :2017/07/20(木) 00:10:14 SCK7xGrk
よう。
私の名前は●●●●。
突然だが、仕事が事前の内容と変わってることってあるよな?
受け取ったときは楽勝な案件だと思ってたのが、実はとんでもなく複雑な内容だったり。納期までまだ余裕があると思ってたら、ある日突然期限の前倒しを宣言されたり。
大概そういうのは、上のやつの尻拭いで下のもんが東奔西走させられるってもんだ……中には例外もあるがな。
今回はまあ、そんな話だ。




「クッソ、寒いな…………!」

閑話休題。
私は今見渡す限り真っ白な平地の中の線路の上にいて、凍えそうになっている。横には凍結したまま止まった列車。
事の起こりはいつものようにクソ上司から呼び出されて、書類を一束突き付けられ。何も聞かず一番最後の頁の場所に行けときた。
取り敢えず駅に行って、書類に挟まってた切符を使って列車に乗った訳だ。聞かない土地だったんで、長旅とみてらしくもなく浮かれてたんだろう。わざわざ駅弁一式まで買い込んでな。

今思えばこのとき目的地の場所を、ネットでもなんでも調べておくべきだった。


「世界有数の寒冷湖に置き去りって、そんなんアリかよ……!」


弁当食って居眠りして、起きた時は辺り一面銀世界。慌てて書類を見返せば要人警護の任務だとおもいきや、行方不明者の捜索だ? そんなのは一課のお役目だろうが!
おまけに駅名で検索したら世界有数の云々が出たが、そもそもここはどこの国なんだ! 怒りを込めて更に携帯を操作する。

「嘘……だろ」

祖国の国境付近の小さな街。GPS画面にそれだけを示して、次の瞬間画面から光が消えた。
なんの事はない、寒冷地仕様でないリチウムイオン電池様が寒さと戦った末めでたくお亡くなりになられただけだ。
手の中でがらくたになった携帯を握り潰そうとして危うく思いとどまる。街まで行けば雑貨屋くらいあるはずだ。今どきガス灯を灯すようなド田舎でも、電池か代えの携帯くらいはあるだろう。
そう思って歩き始めたのがたぶん1時間前。

完全に凍結して動かなくなった列車を降りて、脇の道路沿いに足跡を標していく。
それから5ヴィエルスタだか2000サージェンだか分からん看板を何度か通り過ぎたが、一向に距離が縮まらん。その間も雪国仕様のタイヤのでかいトラックが何度も通っては、凍りかけの雪をこちらの顔面に飛ばしてくる。
頭にきたから手を振ってヒッチハイクの真似事をしてみるんだが、奴らはお構い無し。余計に腹が立つだけだ。いっそ車の前にとび出てやろうか――――

うんそうしよう。歩きながら雪を蹴立てて道路の真ん中に躍り出る。これで次きた奴は私の背を見て止まらざるをえない。最悪なのは気付かず轢き逃げされる事だが……まあ4トン車迄なら走って追いかけられるだろう。
つーかマジで洒落にならん寒さだ。早く乗り物を捕まえんと死ぬ。何せ今の私は、夏物のスーツ一着しか身につけてないんだからな。


/季節外れの意味深な街文です
/時間も時間なので置きになってしまいますが
/良ければ相談したりして進められたらなと
/あと無駄に長いですが最初だけです。こんな長いの何度も続けられません


698 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/20(木) 00:11:10 0ci1LxUY
>>696

「そっか。じゃあ、近くにオススメの飯屋あるけど、雨宿りついでに来ないか?【幾重万神領出雲大社】にあるんだけど」

青年は笑う
敵意は本心からなく、それが伝わるような、無害を伝えるような笑顔で

「あー……ナンパみたいかな?でも、そういうのじゃないから安心して」

懐から名刺を取り出し、渡すだろう。祓魔官であるという肩書
ちらり、と刀に視線をやる―――が、特に何かを見破れるスキルがあるわけではない
しかし、青年は決めている。明らかに人外であろうと、なんであろうと。先ずは、

「俺はミツバ。とりあえず、行くか!」

そう名乗ると、近くのタクシーの待合所まで、手を引いていこうとする


699 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/20(木) 00:27:05 ICqdN9YE
>>698
目を丸くして驚く。ご飯に誘われるなんていつ以来だろう。
そうでもあるし、そうでもない。こんなにも敵意を感じないのに、驚いている。

「えっ、と……」

だから、戸惑っている。一線を保つことはできてもその線を飛び越えてきたものへの対処法は忘れてしまったのだ。
刀があるのも見られている。なのに、である。

名詞を受け取り、といっても前進びしょぬれで仕舞う場所もないのだが、青年の身分を知る。自分のことを警戒してもおかしくない職、なのにどうして。
混乱のまま、手を引かれて歩き出す。ヤケクソだが、覚悟はできた。

「私、青星。じゃあ、雨宿りとかさせてもらおうかな
あ、あと、速い速い!」


700 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/20(木) 00:57:11 0ci1LxUY
>>699

青年が急ぐのには訳があった
理由は2つ――ひとつは、雨の中に居た相手が「この状況下で強い怪異である可能性」
当然、怪異の中には雨の時のみ出現し、雨を利用するタイプもいる。強引に動かすことで、反応を見ようとしていた

そしてもう一つは―――単純に。「まだご飯を食べていないし、一人で食べるのも寂しい」という、至極私的な理由だった

―――――――

なんとかタクシーを捕まえ。二人で後部座席に乗り込もうとするだろうか
相手が席を選んだのなら、それを優先するだろう

運転手に己の名刺を見せ、【幾重万神領出雲大社】に向かうよう伝え

「いやー、お互いびしょ濡れだね」

あはは、とそちらに笑いかける。先の行動といい、青年はマイペースな人物のようで
友人に話しかけるかのような、気軽な様子で接する


701 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/20(木) 01:18:31 ICqdN9YE
>>700
これを仮に怪異と定義するならば、青年の予想の一つは外れだ。
コレは雨だろうがなんだろうが生き続ける。宿主を生かし続け、吸い上げ続けるのだ。

席の指定などもなく、手を引かれるままに青年の隣に座る。
幾重万神領出雲大社、確か近くにある神社だ。そのはずだ。

「今更だけどさ、ナンパじゃなかったらなに?」

タクシーに乗って揺られて落ち着いた頃。ソレは問いかける。青年の行動の意図を。

タクシーの窓を雨が叩く。どこまで逃げても雨の中。
どう取り繕っても、疑問は消えない。


//明日のためにもそろそろ眠りたいので次の返信は明日にしたいです……お昼すぎには返せます!


702 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/20(木) 01:33:27 0ci1LxUY
>>701

当然の疑問。青年にとって、他人との食事は少し特別な意味を持っていて
ただ、それを直ぐに答えるのは、少し勿体無いような気もする
だから、素直にもう一つの理由を言う

「いやあ、お仕事の所為でまだ晩ご飯食べてなくてさ。どうせなら、一人で食べるより誘ってみても良いかなって」


タクシーは緩やかな速度で走る。どうやらベテランの運転手のようで
揺れを感じさせない。アタリだな、なんて思いつつ


「ある意味ナンパかも知れないけど……ま、雨が止むまでで良いからさ」

雨の中、じっとりとした空気とは真逆の、明るいカラッとした様子で笑う。人懐こい犬のように。

何食べたい?中華?洋食?なんて、聞くだろうか

/分かりました!お休みなさいませ!


703 : 【一刃潜瞬】 :2017/07/20(木) 01:59:51 uRF2hdC.
>>697

――珍しく、極東から依頼が飛んできた。
金は出すからと言われ、指定された場所まで移動する。
移動先はよっぽどの僻地みたいであるから、近くの都市で車を借りてきた訳だが……


「全く、殺しの依頼だって聞いてきた筈なんだが」
「遺失物探しって、馬鹿なこと言うなよ……」

そう、彼女は暗殺者として有名なトレンチコート・ガール。
依頼内容が暗殺から遺失物探しにすり替わっており、呆れた様子でいる。
まだ金が出るからいいものの、下手すれば大損になりかねない。

呆れからか、それとも怒りからか運転は自然に荒くなる。
速度は三桁にもなり、トラックを次々と追い越していく。
女は寒冷地出身であるから、運転に慣れていたのも一因だが。


「……遺失物って金塊か何かかってうわアッ!?」

依頼された遺失物とはなにか、そう思っていた刹那。
このクソ寒い中、袖の短いのスーツを着て道路のど真ん中に立つ女がいた。
急ブレーキを掛けて一気に減速する。雪のせいで滑り、なかなか止まらない。

――ようやく動きを止めたのは、女の眼前だった。
流石の暗殺者も、事故でしょっ引かれたら馬鹿としか言いようがない。
なんとか事故を回避し、冷や汗を額に滴らせる。

「おい、お前道路のど真ん中でなにやってんだ」

――第一声は、それだった。

//まだいらっしゃいますかね……?


704 : 【眷属猟主】 :2017/07/20(木) 03:07:38 nJ7j2WBw
眼下に広がる夏祭りの煌めきと喧噪に、少年は思わず舌打ちをする。
彼は今、死体が埋まっている――ともっぱらの噂の小高い丘に陣取って、いまも行われている祭りの様子を見下ろしていた。

鬱陶しくない程度の長さに保たれた茶髪にイヤーカフス、いかにも安物の甚平。
どこか軽薄そうな見た目の彼は、足元に一匹の犬を連れ、じっと茂みの中に隠れている。

「……」

この少年とて、さっきまでは普通に祭りを楽しんでいた。焼きトウモロコシを齧り、金魚を手狭なプールから救い出し……
それがいまやこのような状態に陥っている理由は至極単純で、つまり彼は独りぼっちなのであった。
祭りの活気に吸い寄せられてはみたものの、カップルだらけの内情を知ってしまってついには耐え切れなくなってしまったのだ。

胡散臭い怪談の舞台にもなっている此処なら肝試しでもと考えたカップルがそのうち迷い込んでくるに決まっている。
そうしたら思いっきり――生まれてきたことを後悔するくらい――能力を使ってでも、驚かせてやろう。
胸に秘めた暗い情熱の赴くままに、少年は茂みの中で、ひたすら息を殺す。
やぶ蚊が多くて死にそうだった。

/今日はもうお返しできなさそうですが、置きとかでもよろしければ!


705 : 【双刻天剣】 :2017/07/20(木) 03:56:20 pN/moFBs
>>704

祭囃子と喧騒から少し離れて、繁みの先にある小さな丘。
そこが人混みを避けて休憩するにはうってつけの場所であると、彼女は事前調査によって把握していた。

雛月シオンは報酬さえあればどのような依頼であろうとも受ける人間である。
例えそれが祭りの警備という学生レベルの給金しかでないアルバイトであったとしても、彼女にとっては働くに値する仕事だった。
これはその束の間の自主的な休憩時間。折角の祭りなのだから、ずっと働き詰めというのも味気ない。


「綿飴、林檎飴、チョコバナナ、唐揚げ、焼きそば……これで定番は大体制覇しましたね
 なんせ祭りですよMA・TSU・RI、これはもうただ働くだけというのは勿体ない、非常に勿体ありません」


鼻歌交じりで歩むその姿はきっちりと浴衣姿。両手に抱えているのは焼きそば唐揚げ串焼エトセトラ……祭りの屋台を象徴する品々。
警備の休憩時間という名目で、彼女は彼女なりに祭りをしっかりと満喫していた。屋台を巡り、適度に散財し、祭りの空気感を楽しんでいた。
そして人混みの中で歩き疲れが溜まってきた頃、休憩場所としてあらかじめ目星をつけていた丘に訪れたのがつい数分前の話である。


「さ、て、と……座れそうな場所はありませんかねー
 早くしないと焼きそばが冷めてしまいますから」


繁みを避けるようにしながら、彼女は悠々と丘を進んでいく。
当然、その背中は隙だらけであるだろうし……その姿は狩人からすれば格好の的だろう。


706 : 【眷属猟主】 :2017/07/20(木) 14:50:54 nJ7j2WBw
>>705

……来た。
ちょうど月の光に翳りが差してそのシルエットを確認するに留まったものの、ようやく見えたターゲット。
そろそろ意気の挫けかけていた少年は気を取り直して、ごくりと喉を鳴らす。――声から察するに女性だろうか。
人影は一つにも見えたが、まあ、話し声とかも聴こえるし、近くに彼氏が居るんだろう。

「いくぞ、カナエ……ッ」

薔薇色の熱気に中てられ荒んだ少年に、もはや見境は無い。
傍らに控えるビーグル犬に囁くと、さっき買ったムンクの『叫び』みたいなお面を被り。

「グオオオオオオオオッッ!!!」

去りゆく無防備な背中をめがけ全速力で駆け抜ける。
キャンキャンと鳴きながら忠義に篤い犬が続く。
何をやっているのかと我に返ったら取り返しがつかなくなってしまうから、頭が真っ白になるくらい速く、速く。

もしも彼女が振り返ったならば、不気味なお面を被った痩せぎすな人間がひとりと犬がひとり、
暗がりのなかから猛然と迫ってくるのが認められるだろう。
それはひょっとしたら心霊とは種類の異なる恐怖を齎すことになるかもしれない。
適当に恐怖におののく姿を見たらそのまま脇を通り過ぎて逃げ出そうかという心算だったが――はたして。


707 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/20(木) 16:02:38 ICqdN9YE
>>702
「……?ふぅん……?」

どうやらこれは、正しいらしい。正しいが、正しいだけらしい。
ナニカ隠してはいそうだ。だが、それも自ずと知れよう。

詮索することを諦めて外を眺める。不思議と揺れは感じない。外の景色は雨で歪んでる。
どんよりとした、灰色。どこまでも不鮮明。

対する此処はどうだろう?違う、もっと明るくて乾いている。
何でもいい、と返して顔をそむける。笑顔に焼かれないように。


//お返ししました!よろしくお願いしますー


708 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/20(木) 17:28:12 0ci1LxUY
>>707

じゃあ和食で!なんて。面白くもない冗談を飛ばして
顔を背けた相手。喋りすぎたかなー、とも思うが

(まあ、取り敢えず敵意はなさそうだね)

内心、安心した

―――――

十五分程経過しただろうか。やはり丁寧にタクシーが停車すると、青年は財布からお金を払い、降りるだろう
目の前には出雲大社の中の繁華街。賑やかな雰囲気は、まるで祭りの縁日のようで

「それじゃ、着いて来て」

人混みはさほど酷くなく、もし相手が着いてきたのなら、「中華 絶品街道」という若干センスに欠ける看板の店へ案内するだろうか

/お願いします〜


709 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/20(木) 18:22:26 ICqdN9YE
>>708
中華か洋食って言ってたじゃないか。
なんて突っ込みは、誰にも届かず何処にも発せられずにソレの中で発生して、消えた。

―――――――

青年と共にタクシーを降りる。そこは、異界だった。
雨のセカイ、灰色のセカイ、だがここには彩がある。活気に満ちている。

「ここは、活きているんだね」

物珍しく辺りを見渡しながら青年に着いて行く。
しかし、開かれた口は再び閉ざされる。センスにかける看板を見たから?ついに店の中へと入るから?


710 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/20(木) 19:43:57 0ci1LxUY
>>709

「そうだな―――街自体っていうか、ここは、本当に活きているって感じするね」

『おう、兄ちゃん!今混んでるから、奥の個室使ってくれ!』

言いながら戸を開け、中から店主の声がする
ちらりとそちらを見て、直ぐに声の方を向くと

「ありがと!それとタオルお願い!2枚!」

『持って行かせるからさっさと上がんな!』

取り敢えず、濡れた身体をどうにかしようと
店の奥、個室に慣れた様子で案内しようとするだろう。どうやらかなり通っているらしい

個室にはそれぞれ椅子と机。また、座ってすぐに白いタオルが店員から渡されるだろう
何らかの加護がかかったそれは、服の上からでも、拭いただけで乾くはずだ


711 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/20(木) 20:33:34 ICqdN9YE
>>710
彼はきっと常連なのだろう。店主もミツバも慣れているように感じる。
何故だか、中華料理店に男と入るのはこれが初めてではない気がする。だが、あのときは――――。
既視感と、記憶の欠損。同時に襲い掛かられると不愉快極まりない。少し顔を顰める。

現実の足はキチンと動いていたらしい。青年が案内した部屋に入ったところで戻ってくる。
受け取ったタオルで体を拭いてみる。――タオルにしては乾きすぎる。なにか細工が施されているのだろう。
だが、有害なものでもなさそうだ。服も拭いて乾かす。

一通り拭き終えれば席に着く。
で、何のためにここまで連れてきたの?
目が問いかける。


712 : 【鍾愛の不死鳥】 :2017/07/20(木) 21:49:02 HFz7pXxk
『本当にありがとうございます……まさか娘が怪我をした所にお医者様が居合わせるなんて……』

「いいんですよ、私は少しでも苦しむ顔を減らしたくて、医者になっただけなのですから」

子供を抱えた母親が、神父服の男に頭を下げていた。
昼過ぎの公園。遊具から落ちて足を折る大怪我をしていた筈の少年は、快復し何事も無かったかのように元気に走り回っている。

「それでは、私は午後の患者が待っていますので」

そう言い残し、神父は公園を後にした。
彼の名はアルバート=ウィーアード。一介の町医者でありながら、治せぬ物なしの名医と謳われる男。

神父は携帯電話を取り出し、電話をかける。

「私だ、無能力者の子供がいた…… そうだ、やっといて貰えるかな? 桃辻くん」

やる、とは何の事だろうか?
その言葉の意味を知る者、ましてや評判のいい名医が人攫いのような真似をしている事を知る者はいない。

/なんでもいいです
/置きで絡み待ちします


713 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/20(木) 22:04:18 0ci1LxUY
>>711

「さて……いきなりなんだけど、さ」

促すような視線を感じて、青年は口を開く
なんて繰り出そうか。取り敢えず

「もしかして、君は……普通の人じゃない、よね?」

もしかして、と言う割には断定的な口調で問う
だが責めているわけでもなさそうで、ただ、それを確認することだけが目的のようだ

「ここ、人間じゃない方が多いから、安心していいよ」

出雲大社に連れてきたのもそれが理由。ここならば、そういった事情も明かせるだろうと考えて
メニューをそちらに差し出しながら、言う


714 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/20(木) 23:24:54 ICqdN9YE
>>713
普通の人ではないのか。たしかに、そうだ。原理は不明だが私は普通ではなくなってしまっている。
だが、放していいものか。話しても安全なのだろうか。

メニュー表を受け取って、考える。
何を食べたいか。自分のことを話そうか。

しばらくためらい、迷って、決めた。
注文が決まったこと、そして。

「私……長く生き過ぎてるんです。それこそ、昔のことが分からないくらいに」

青星は怪異ではない。
『青星』も怪異ではない。
だが、怪異と言っても差し支えのない異常であった。

それを告白するのは、これが初めてであった。


715 : 【携行賦金】 :2017/07/21(金) 00:13:34 hPqlegF2
喧騒止まぬ夜の居酒屋――であったその場所は静寂に制圧されていた。
止まぬのは、血の匂いと止まぬ殺意と悪意の奔流。止んだのは一つの命。その鼓動。

「おーい、変態野郎さんよー。頑張ってくださーい。折角小生がこんな時間まで残業してるんだ
 せめてもう一分。いいや、もう二分。もっと生きの良い反応を頼みます、よッと!」

客の居ない居酒屋に居たのは二人の人間と一つの死体。

一人は特別強襲部隊DOTA所属の隊員で、喪服のような黒スーツが特徴的な男。
彼は、もの言わぬ死体に馬乗りになりナイフのような凶器で、死体を励ましながら滅多刺し。

一人はこの居酒屋でバイトをしている大学生ぐらいの茶髪の女性。
殺害現場たるホールの角っこで声を殺しながらガクガク震えることしかできなかった。

一つはこの居酒屋の店長だった男。裏の顔で監禁や誘拐からの殺人を犯していた男。
それはとうに息絶えており、それでも尚刺され続け徐々に原型を崩し始めていた。

一見すれば、DOTA所属の男が無実の男を滅多刺しにして殺しているとしか見えない。
そしてそれはぶち破られた玄関からは鮮明に見える。この場に来るのは果たして何者か――

/置きレスぎみになりますがよろしければ


716 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/21(金) 00:41:47 lJJNOw..
>>714

「長生き、か。成る程ね……」

長寿族のような、その長さを生きるための余裕や雰囲気は感じられず
どちらかと言えば、思っていたよりも長く生きてしまっている。そういった印象

少し考えて。テーブルのチャイムを押すと

「人とか食べてない?後、何か生きるのに必要なもの、とか。ある?」

こうして飲食店についてきたということは、普通の食事もできるのだろう
しかし手慣れた様子の質問。どうやら、青年は人ではない存在になりきっていて
逸脱した生態だったとしても、そういうものなのだと納得しそうな雰囲気がある

青年が問うた直後、店員が注文を取りに来て
ジンジャーエールと、青菜炒め、唐揚げ、酢豚のセットを注文するだろうか


717 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/21(金) 09:16:56 s1gqKVtg
>>716
思ってたよりも反応が薄い。淡々と質問が続いている。どうやら本当に人外に慣れているようだ。
だからだろう、意外と話せてしまう。

「ひ、人なんて食べないよ!
何か特別なものは必要とはしてないけど……」

けど、生きてしまう。生きながらえてしまう。
だから、生きるのが/死ぬのが怖い。
生き過ぎてしまって、今更死ぬのが怖い。


青星は何も覚えていない。
如何にして不死を体得したのかを。
如何なる原理で死なずにいるのかを。
だから、今はこれくらいの情報しか話せない。

青年に続いて青星も注文をする。
烏龍茶、麻婆豆腐、八宝菜、唐揚げ、小籠包等々。
一人で食べるにしては、やや量が多すぎではあった。

//次の返信遅くなります……


718 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/21(金) 16:30:50 lJJNOw..
>>717

水をそれぞれに出すと、注文をメモした店員が一礼して去っていく

「なら、よかった。ウチで代用品準備する必要あるかな、って」

少し歯切れの悪そうな回答。何か思うところがあるのだろう、とは思うが
直ぐに聞くべきか。ちょっと迷って、後にしようと考える

「俺、悪い怪異っていうか、そういうのを退治したりしてるんだけど」

祓魔官ってわかるかな?なんて言いながら、名刺を差し出す
名刺には祓魔官であること、名前、携帯電話の連絡先などが記してあった

「君がもし、人を食べて永遠の命を維持してるとかなら、君を無害化―――倒すなり、代わりの食べ物を探すなりするのが仕事なんだ」

堂々と。もしかしたら、そちらに害する可能性もあったことを言う
だが、こうやって明かすと言う事は、青年はそちらを信用したと言う事でもあるが


719 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/21(金) 17:58:14 s1gqKVtg
>>718
話を聞き終て、安心した。とても安心した。
この青年には自分を殺す理由がない。この場で殺されることはなさそうである。

「安心はした、けど私が分かってる私のことはさっき言ったきりだよ」

だが、安心をしたところで何も話せないのも変わりない。
なぜなら、

「だって、全部忘れちゃったから。覚えられないから」

あまりに長く生き過ぎて、脳が限界を迎えているのだ。
だから、整理をするために忘れる。どんなことでも関係なしに。
だから自分のこの力の源も分からない。話せない。

自分が本当に人間なのかも分からない。

だが、それを確かめることも望まない。怖いから。


//遅れましたがお返ししました!


720 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/21(金) 18:26:55 lJJNOw..
>>719

「覚えられない……か。幽霊ってわけでもなさそうだし、なあ……」

確かに先程触ることはできたのだ。そして注文も取られたと言う事は自分にしか見えていないわけでもないだろう
うーん、と少し考えるが

「まあそれならそれで仕方ないな!メモ帳でも使ってみる?」

暗い雰囲気になるのも、考え込むのも、相手に失礼な気がして
冗談交じりに提案していると

「お」

『ご注文のお品デス』

無表情な中華服のウェイトレスが料理を手早く並べていく
料理は高級感よりもコストパフォーマンスを重視しているようなものだったが、それ故に庶民的な美味しさがある
それぞれ大量に盛られているのは、中華の文化からくるものか。ともあれ、ホカホカの湯気と食欲をそそる香りは
青年の腹を鳴らすのには十分だった。最後にドリンクをそれぞれにサーブすると、ウェイトレスは下がっていくだろう


721 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/21(金) 18:45:33 s1gqKVtg
>>720
青星の正体を考察するのは難しいだろう。それはあまりに荒唐無稽な存在だから。
だが、青年の冗談はある意味で的を射ていたアドバイスだった。

「……なるほど」

真剣にメモ帳を使うことを考えだす。
書籍は残り続ける。記憶とは違って、いつまでもそこにあるのだから。

そうこうしている間に料理が運ばれてきた。
青星の前に運ばれた料理の量は明らかに多すぎる。ウェイトレスもやや躊躇いながら料理を運んでいた。
ウェイトレスが下がれば徐に箸を取り、食べ始める。
青星は、残念ながら、本気であった。


722 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/21(金) 19:05:22 lJJNOw..
>>721

どうやらメモ帳案はまんざらでもなかったらしい
あとで文具屋に案内しよう。なんて思いながら

「いっただきまーす!」

心底嬉しそうに食前の礼を済ますと、箸を取って、酢豚を一口

「やっぱウマい!」

確りと素揚げしたから作られた酢豚は、甘酸っぱいソースに絡んで、極上の味
ちら、とそっちを確認―――やはり量が多い。不慣れなのか、それとも、体質上の問題なのか

「コレ美味しいからさ、食べてみてよ」

唐揚げを勧める。あまり大きくはないが、それゆえに味がきっちりと染み渡っていて
家庭で再現するのは難しいが、しかし「唐揚げ」といったらこの味、と言うような、香ばしい味

―――そんな風に、美味しい時間は過ぎていくだろうか


723 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/21(金) 21:26:07 s1gqKVtg
>>722
「……いただきます」

こちらは物静かに、しかし喜びを滲ませながらに手を合わせる。
先ずは八宝菜を一口。

「おいしい……」

なるほど、慣れ親しんだような味だ。
高級感こそないが、だからこそといえる味。特別ではないが、だからこそ安心感がある。

「えっと、じゃあ……」

勧められるがままに唐揚げを頬張る。これもおいしい。

あれも、これも、どれも。

そうして幸福を噛み締める。そんな時間は短く、濃い。

結局頼んだものを全て食べ、さらに追加もいくつかしたのち一言。

「ごちそうさまでした。あ……」

再び手を合わせる。
そして、体を探って青ざめる。……どこかで、落としたのだろうか。


724 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/21(金) 23:26:29 lJJNOw..
>>723

「ふー、食べたなあ……御馳走様でしたっ!」

変わらぬ味、とは言うが、本当に変わらないのではなく、徐々に時代や客に合わせて変化する味
それを上手く整えてこその変わらぬ変化、変わらぬ味と言うやつだ。だからこそ、安心して来れる
店に、食材に感謝しながら手を合わせて

「どうかした―――あ、」

青ざめた相手。何かを思い出したかのような―――ああ、もしかして

「何か失くした?」

動作からして、失せ物か、と察した


725 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/21(金) 23:36:26 s1gqKVtg
>>724
「お、お財布……」

サーっと、血が引く音が聞こえる。
どうしよう、もう食べてしまった。払う能力はない。
ああ、どうしたらいいのだろう。このままだとどうされるか分からない。

―――コロサレルカモシレナイ

頭を抱えて、悩む。
だが悩んでも思考はループして、沼の中へと落ちてゆく。

どうしたら、どうしたら、どうしたら


726 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/22(土) 00:17:20 jCvhBaS6
>>725

「ああ、俺が誘ったんだし、此処の支払いはいいよ。財布、大切なものとか入ってた?」

心配そうに。支払いについては、そこそこ高給取りなので自分は気にしていないが、どちらかというと、財布が特別大切なものだったのか、と
携帯を取り出し、出雲内の遺失物管理をしている事務所の番号を表示すると

「特徴、分かるかな?入ってたものとか……。で遺失物受付に電話してみるけど」

なんなら自分で聞いてみる?と続け、肯定したなら、携帯を渡そうとするだろう


727 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/22(土) 00:55:22 MUHEDq3s
>>726
「……別に、大切なものとかはないから大丈夫だよ」

支払いについて悩んでいたとは察せられなかったようだ。だが、それでも悩みは解決できた。
……何か、恩返しがしたい。
なにもできないけれど。
彼からは受け取ってばかりだ。なのに長く生きているだけの自分は……

「い、いいよ……あまり覚えてないし」

そんな暗い思いが電話を持つことを断らせた。
まあ、なくてもそこまで困ることもない。
死にはしない。

「今日は、いろいろと……ありがとね」

本当に何から何まで助けられてばかりだ。
ナニカを返したい。だからせめて、感謝を言葉にしてみることにした。


728 : 【双刻天剣】 :2017/07/22(土) 01:02:08 5Hd/LP5I
>>706

何かが動く気配を肌で感じる。繁みの中に野犬でも隠れていたのだろうかと想像する。
しかしその直後に聞こえてきた叫び声が、気配の正体がただの野犬ではないと告げていた。

シオンは条件反射的に背後に視線を向けた。その視界に映ったものは不気味な仮面を装着した何者かと、それに追随する犬が一匹。
暗闇の中から忽然と姿を現し、雄叫びのようなものを上げながら接近するその姿は、恐怖ないし驚愕をもたらすには十分なインパクトがあった。
ビクリとシオンの肩が震える。その拍子に彼女が屋台で購入した食品の数々が腕の中からこぼれ落ちて、地面へと叩きつけられた。


さっきまで美味しそうな食べ物だったものが、あたり一面に散らばる。


「…………あああああああああっっ!?!?!?!?!」


少女の悲鳴が丘に鳴り響いた。
楽しみにしていたものを目の前で潰された絶望が彼女の胸を衝く。

祭りの屋台で食べ物を購入するものは、割高だと言う者もいるかもしれない。
しかしその価値は屋台であるから、ちょっとお高い値段であることにこそ意味がある。
祭りという非日常空間で買うという行為、それ自体がプレミアムなのだから。
その楽しみを奪われた慟哭は……計り知れないほどに壮絶で凄惨なものだった。


「私の買った食べ物をよくも……あんなに美味しそうだったのに……っ!!!」


怒りの衝動に身を任せ、彼女は真正面に向けて駆け出した。
同時に右拳を硬く握りしめ、腰を落とす。そして距離がゼロになった瞬間に渾身の右ストレートを仮面のど真ん中に向けて解き放つだろう。

//先日返信できず申し訳なかったです


729 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/22(土) 01:18:20 jCvhBaS6
>>727

礼を言われ、どういたしまして。と微笑んで返す
……少し、どきりとしたのも事実

「そっか。でも手持ちがないなら……そうだ」

暗い気持ちを薄っすらと感じるが、大事なものを無くしたなら当然かとも思う
しかし、実際問題どうしたものかと考え、一つの考えを導き出す

「君、祓魔局に来ない?給料も悪く無いし、住処もあるよ」

雨の中の彼女は、何処か迷子のようで
ならば、と。提案をした


730 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/22(土) 01:36:30 MUHEDq3s
>>729
「え……?」

こんな、こんな私でいいの?

まさか誘われるなんて思わなかった。
きっと迷惑をかける。怖くて逃げだしてしまうかもしれない。自身がない。自分には……
だけど、

「私……戦うのがすごく怖いんです」

愛刀『青星』が妙に重い。
絞り出すように言葉を紡ぐ。きっとこれは、大事なこと。

「そんな私でも大丈夫でしたら……よろしくお願いします」

だけど、そんな自分を変えたい。今更でも、変われると信じたい。


――――もしかしたら、永遠を手に入れられるかもしれないし。


731 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/22(土) 01:54:33 jCvhBaS6
>>730

「非戦闘員としての仕事もあるから、戦わなくても大丈夫だと思うよ」

詳しい事は向こうで聞いたらいいよ、と続け、名刺の裏に地図がある事も伝える
素直な人だ。きっと、馴染む事もできるだろう

「改めて、よろしく!青星」

そう笑い掛けて、右手を差し出すだろう
からん、と。氷が溶けて音を鳴らした


732 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/22(土) 01:59:39 MUHEDq3s
>>731
ホッと一安心。
最初の関門は突破できたみたいだ。
だけど、これからだ。

「……うん。よろしくね」

差し出された右手を握る。
初めてかもしれない感触。その心地よさで固まっていた何かが解け始めた。まだ誰も知らないところで。


彼女の道は、始まったばかり。



//ここらで〆というのが綺麗かと思いまして―


733 : 【華編武機】 =Trident Weapons= :2017/07/22(土) 07:43:32 jCvhBaS6
>>732
/すいません!!!!寝落ちてました!!!!!!!!!
/絡みありがとうございました!


734 : 【啜命刀蟲】 :2017/07/22(土) 09:04:57 MUHEDq3s
>>733
//こちらこそありがとうございました!


735 : 【眷属猟主】 :2017/07/22(土) 14:39:25 /oH6kA6g
>>728
お面に空いた小さな穴からでは相手の様子はいまいち分からない。
加熱した頭に飛び込んでくるのは悲鳴だ。どうやら怖がっているらしいと、束の間の充足感を得る。
それが台無しになった食べ物によるものであり、ひどく的外れな推察だったなんて気づかないまま。

「――――へ?」

だから最後まで気づけなかった。
少女が逃げ出すどころか怒りを籠めた一撃を見舞おうと、待ち構えていたということに。
それはスローモーションのように少年の眼前に再生される。
すっと整えられた態勢から、固められた拳が徐々に視界のなかで大きくなって、――

「ぐべっ、」

蹴とばされた小石のように痩せた身体は宙を舞い、痛いなどと感ずる猶予もない。
少年は近くの木の幹に叩きつけられくらくらと目を回した。
四散した意識を手繰るにはまだ時間がかかりそうで、うーん、などと曖昧な呻き声が漏れている。

そんな少年の”頬”を彼の愛犬がぺろぺろと舐めていて……そう、
先ほどの鉄拳により、面はぱっくりと二つに割れ地に落ちていた。
悪戯の犯人が茶髪のちんけな少年であることは、もはや瞭然の事実となっている。

/置きレスですから、気になさらず……!


736 : 【狩人機装】 :2017/07/22(土) 19:06:38 MUHEDq3s
「あー、パパー?」

道の真ん中で電話をかけるのは危険です。
周囲をよく見ましょう。

「はい。お仕事終わりました。……えへへ」

弾んだ声で少女は話す。
大好きな人との暖かなひと時。平和な時間だ。

「あー、大丈夫です。きれいなまま終わったのでシャワーは必要ないです」

嬉々として話す少女の肌は白い。髪もまた白い。
透き通る瞳もガラス玉かなにかのよう。

「だから、後のことはお願いしますね。じゃあ、ばいばいです」

スマホを切る。通話は終わったようだ。


「さて……じゃあ、行きますか」

落ちていた塊を一瞥し、ソレに背を向け歩き出す。
黒いバッグを片腕にかけ、タバコとライターを取り出す。
火が付いたタバコを口にくわえたころには彼女は角を曲がっていた。

あとに残されたのは、肉塊。
死した能力者だけであった。


737 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/22(土) 19:58:30 jCvhBaS6
>>736

「んしょ、んしょ、ですよ」

通り掛かるのは小柄な少女。身の丈ほどもある籠に、梨をたくさん詰めて歩いていた
ちょうど女の前を過ぎた辺り、街の角に着くと、荷をおろして

「梨、要りませんかーですよ。今朝採れたての、甘くて水々しい梨ですよ〜」

『梨 一個100円 試食可能』

手書きで書いたであろう看板を置くと、御座を敷いて
一つ梨を剥きながら、声を掛け始めた

そちらに気がつくと

「おねーさんも、梨の試食いかがですよ?」

一切れ、爪楊枝を刺して
そちらに差し出すだろうか


738 : 【狩人機装】 :2017/07/22(土) 20:07:42 MUHEDq3s
>>737
梨売りの少女を見て、怪訝な表情となる。
こんな人が死ぬようなところまでよく来るものだ。ひょっとして、貧乏なのだろうか?
……小遣いはある。使ってもいいだろう。

「……いただくわ」

黒コートのポケットから小銭を取り出し、それが何かも確認せずに少女に投げてよこす。
100円にしてはやや大きいそれは500円玉。受け取るも受け取らぬも自由だ。


ところで、何か変なにおいがしないだろうか?
黒づくめの女が出てきたところから、
鉄のようなかおりが、しないだろうか?


739 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/22(土) 20:17:58 jCvhBaS6
>>738

結論から言うと。この少女は世間に疎く、こんな場所まで梨売りに来たのもの、「来たことがなかったから」というだけの理由だ
差し出された硬貨を受け取り、

「毎度ありですよ!いっk――5個ですよ!ご家族さんに、お持ち帰りです?」

受け取った500円玉。一瞬100円と勘違いしたが、さも間違いなどなかったふうに、5つの梨を紙袋に入れて差し出すだろう
オマケですよ、とついでにもう一個紙袋に入れる。売れなかったら帰りが重たいですよ。

「このあたり、お刺身の匂いがすると思ったんですが……なんか、ちょっと違う匂い……です?」

血の匂いが日常に遠い少女。多分、お魚ですよ。と思っていて
ならば!人が!居るはずですよー!!!と気合を入れてこっちまで来たのだが
近くまで来て落ち着くと、はて、刺し身とは違う、血の匂い。まるで、大きな動物が死んだかのような

「……?」

通りを曲がった先の惨事にはまだ気付かず。遠目で見れば、社会風刺の光景のようだった


740 : 【狩人機装】 :2017/07/22(土) 20:49:21 MUHEDq3s
>>739
「……?ああ、五百円だったのね」

まあ、いいか。
6つの梨が入った袋を受け取る。そしてそれを黒い鞄につめる。
ガチャガチャと金属音。だが、どうせ分からないだろう。

これには銃が入っているなんて。

「……?さあ?」

彼女は鼻がきくのだろうか?
なんにせよ、気付かれたら始末をする。


一般人を手にかけることはなれている。なんてことはない。

微笑み、同時に冷徹に計算をしながら少女と会話を続ける。
なんて暢気なものか、と内心呆れながら。


741 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/22(土) 21:15:01 jCvhBaS6
>>740

「―――ん」

少女の職業の一つは加工屋でもある。何か聞き覚えのある音。
何かしらの、武器、だろうか。

「……お姉さん、警備員さんなんです?」

遠回しに。何かしら職業上の都合で武器を持っているのだろうか、と考えて
まだ、匂いと結びつけるほど、思考は届いていなかったが

「まま、どうぞうどうぞなのです。甘いですよ?」

切った梨をそちらに一つ差し出しながら
自分もシャクシャクと食べるだろうか


742 : 【狩人機装】 :2017/07/22(土) 21:44:46 MUHEDq3s
>>741
「まあ、そんなところね」

流石にナニカをもっていることは悟られたらしい。
まあ適当に言っておけば辿り着くことはないだろう
――悟られても、鈍そうだから問題はなさげだが

「じゃあ一つ、いただこうかしら」

くわえていたタバコを一度口から離し、切った梨を受け取る。
しゃくしゃくしゃく、と食べてからまたタバコを咥える。

このあたりの地図を検索しながら、梨売りをいちおう右目で見ておく。
能力者であったときのために。


743 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/22(土) 22:59:02 jCvhBaS6
>>742

「いーっぱい日光を浴びて育てた梨ですからね。甘くなって水も沢山含んでいるのですよ」

えへん。と生産者たる少女は無い胸を張る
その様子はまるで、自身の美味しさを狼に伝える羊のようだった

「お仕事お疲れ様なのですよ――あ、」

なんの拍子か。コロコロと梨が転がって
―――路地裏側に。それを少女は追って。目にしたのは

「危ない危ない……で…・す……」

惨劇の後だった


744 : 【狩人機装】 :2017/07/22(土) 23:18:49 MUHEDq3s
>>743
「Да……たしかに、おいしい」

五つ買ってよかったかもしれない。
そう思える味だった。この瞬間までは。

少女が固まったのを見て、どこにいて何を見ているのかを見て表情が変わる。

「………チッ」

タバコとつまようじを地面に落とす。タバコをすりつぶすのは忘れない。
バッグを開け、ソレを取り出す。
そして、少女のところに近づきながら

「動くな」

「アルナスル」――パルスアサルトライフルの銃口を向け、一言警告。
右目にはまだ赤い光は宿していない。撃てはしない。

だが、冷たさは本物であった。
先程までとは別人が、そこにいた。


745 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/23(日) 00:05:21 AXSLHYSM
>>744

「ヒィイイイ!?ですよ!??!???!!!」

音で持っていることは分かっていたが、正直、警備員的な職業だと信じていて
ゾッとするような声に、両手を上げて硬直する

「命だけはですよ〜!!!!何も見てないですよ〜!!!!!!」

情けなさ120%の命乞いをする
戦闘技能は自分にはなく。右手に持った梨の震えが、その本気さを物語っていた
勿論涙目で、縁起でもないことは分かるだろう


746 : 【狩人機装】 :2017/07/23(日) 00:32:37 O/1quP0M
>>745
少女の必死さ、賢明さは氷には通じない。
極めて特殊な訓練を受けた自分ならあれは演じられると思えてしまったからだ。

一梨の縁、で見逃せはしない。

「命乞いで通じるような案件じゃない。死ぬか、命に順ずる何かを差し出せ」

アーシャ――レラジェにとってはこの少女よりも大切な縁がある。
だからこんなにも残酷になれる。

解析は半分ほど終わったところだがまだわからない。
本当に何もないならそのように出るはずだ。そうなら、その様に扱おう。
だが、違うなら。
容赦はできない。


747 : 【飛燕二式】 :2017/07/23(日) 00:53:21 IIsl9iog
『リオお兄ちゃん! また来週ね!』
「おう! しっかり練習しとけよ!」

巳桐不動流は居合術の流派だが、児童向けに剣道の教室を開いている。
もともと居合を戦闘手段として習う者は大概剣道も納めているため、子供に教えるくらいの人材には事欠かないのだ。
門下生がローテーションを組んで指導員を決めているが、その中でもリオ=レナードが指導する日は特に児童たちに人気だった。
彼の得意な足捌きを中心に教えているのだが、竹刀を持たない鬼ごっこのようなワークショップが大半を占める遊びのような感覚が、児童に評判らしい。
外国人である事を言われる事も無く児童たちに馴染んでいった。

「そんじゃ、子供達も帰ったしちょっと走ってきます」

児童が全員出たのを見計らって、自分の鍛錬に移る。
最近は基本に立ち戻り、基礎体力や初歩技術を中心に鍛錬メニューを組んでいる。

紺色の道着姿の金髪の少年が、河原をひた走る。
少しでも強くなり、今まで勝てなかった相手に勝つために……

/置きになりますが、なんでも募集


748 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/23(日) 00:56:37 AXSLHYSM
>>746

「うええ……死ぬのは嫌ですよう……」

とは言え。自分に出せるようなものは特に無く
能力と言えるモノも特にはない。強いていうならば

「れ、レゥリは、か、加工とか、できるですよう!!!!」

これくらいだ。しかしこれは、ウンディーネの血筋による種族特性だ
自分からすると、異能力と言うのは少し疑問に思うが、"歌"がそれに当たるのだろうか

「見逃してくださいですよう……レゥリは半分人間だから死んじゃうですよう……」

うぅ……と恐怖のあまりボロボロ涙を流すが、きっと相手には通じない
どうしようか、どうしたらいいのかと考えるが、答えは結局のところ相手が握っているのだ


749 : 【狩人機装】 :2017/07/23(日) 01:14:35 O/1quP0M
>>748
少女の発言を拾い集めて整理をする。
名前はレゥリ。半分人間“ではない”。加工ができる。
いくら涙を流そうと、震えようとも銃口は下がらない。

むしろ、半分人間ではないと言ったのが不味かった。

「つまり、半分は人外……」

解析は待たず、発砲してもいいのではないか。
と一瞬思った。
「GOETIA」を起動しかける、が踏みとどまる。

解析は待とう。せめてもの情けか、そうでないのか。


750 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/23(日) 01:36:03 AXSLHYSM
>>749

「うう、何かマズいこと言ったですよぅ……」

唸るが事態は好転しない。できることはただただ祈るだけで
余計に背後の銃口が存在感をまして

「助けてくださいですよう、なんでこんなことするですよ……?」

何か自分が悪いことをしたのかと
女に、問うた


751 : 【狩人機装】 :2017/07/23(日) 01:54:36 O/1quP0M
>>750
解析の結果が出た。
彼女は何かしらの異能を有している。それも、手を用いるものを。

それだけで、十分だった。

「それは―――――」

―――アーシャではなく、レラジェは嗤っていた。

「―――あなたが、私の“仇”だから」

少女の価値観は狂わされてしまった。
何処までも鋭く、鋭利な一矢。異能を滅ぼす冷たい狩人。
そして、異能を憎む復讐鬼。

右目に紅く、紅い光が宿る。
どす黒い血の池、今日の一人目の血液がその紅を反射させていた。


次の瞬間、暗い路地に銃声が響いた。


貫くのではなく、砕くような潰すような。
衝撃に特化した弾丸が、牙を剥く。


752 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/23(日) 01:59:43 AXSLHYSM
>>751
/あ、このキャラの能力媒介は「歌」になってますので、喉に変換をお願いします!!

「仇って、初対面で―――」

言葉は最後まで形になりきらなかった
頭部への衝撃。無防備な所へ叩き込まれたそれに、少女は宙に押し出され

どさり。と

「……ぅ」

辛うじて意識はあるが、どうにも立てず
朦朧として、力が入らない


753 : 【狩人機装】 :2017/07/23(日) 02:19:57 O/1quP0M
>>752
/了解です。以後気を付けますね!

レラジェは狂っている。
だが、狂人ではない。狂人とは呼べない。
なぜなら、
なぜならこの女は、人から外された狩りをするものだから。

「……まだか」

右目を赤く輝かせながら、戦闘態勢に移行したレラジェは倒れたソレを見下ろす。
まだ息がある。動いている。
なら、なら、

「コロサナイト」

もう一回、引き金を引く。
動いているなら、もう一回。
動いているなら、もう一回。
動いているなら、もう一回。

最大10回、同じ動作を繰り返そうとする。
10回繰り返したなら、弾切れを起こすだろう。

だが、それが何だと言うのだ。
弾が切れれば補充をすればいい。
予備がなければ銃で殴ればいい。

殺し方など、いくらでもある。要は結果が一緒なら、なんだっていい。





//殺意しかありませんが、気絶などで処理してもらえばそこで攻撃は打ち止めにします。その場合は何発目で動かなくなったのかを明記してもらえると助かります
銃撃の間の時間については自由に処理してもらって大丈夫なので反抗等大歓迎です……!


754 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/23(日) 02:46:01 AXSLHYSM
>>753

「ぎっ!?あっ!がっ!うっ!」

連打。連打。連打。
トリガーが引かれ続け、無抵抗に少女は宙に舞い

5回目。ついに声すら出せず、完全な気絶に至る

ボロボロの少女。最後まで涙を流しながら、憐れな人形のように
どさり。と地面に転がる

何かを訴えるように。梨が少女の手を離れ、そちらの足に転がった

/いえいえ!
/ではこういう感じで……!


755 : 【狩人機装】 :2017/07/23(日) 02:58:22 O/1quP0M
>>754
無感動に、ただただ淡々と引き金を絞る。
悲鳴の連続、四度。五度目でついに声さえもあげなくなった。
これでレラジェがやることは済んだ。
また少し、世界は住みやすくなった。

「ふぅ……」

右目の紅い光が消える。少々消耗した。溜息。
そして、銃器を片手にスマホを取り出す。そして、電話を始める。

「あー、パパ?ごめんなさい、まだ帰ってないです……」

時ににこやかに、時にしょんぼりと。
感情豊かに、楽し気にアーシャの会話が始まる。

―――斃れた少女に背を向け、落ちていた梨を無意識に踏みつぶしながら

そして、置いていたバッグの元へと戻りそれを目にする。

「あー……梨?」

何故か入っていた、5個の梨を。
首を傾げながらも銃を仕舞い、梨を一口。――――美味しいが、なぜだか嫌な味だ。
食べかけの一個は食べて、あとの四個はその場に残してアーシャはその場から立ち去る。

ちょっと梨があるだけの、表向き平穏ないつもが戻った。

//眠気も限界、キリもいいのでこれでおしまいで。ロールありがとうございました!キャラの初ロールから酷いことしてなんかすみませんでした!!


756 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/23(日) 03:06:44 AXSLHYSM
>>755
/お疲れ様でした!
/ある意味次回以降ネタにしやすい展開だったのでぜんぜんOKですよ!!!ありがとうございました!!!!


757 : 【飛燕二式】 :2017/07/23(日) 20:01:32 IIsl9iog
/>>747で再度待ちます


758 : 【紡風慧峯】 :2017/07/23(日) 21:50:14 gO8cHMfM
――何もない、ただの昼下がり。
学生達は夏休みに入り、各々の生活を過ごしていた。
茶をベースとした『学園』の制服を羽織った少女も、その一人。
右手には有名なアパレルの服が数着入った袋を提げて。


「やれやれ、この前はひっどい目に遭ったなあ」

チェスの駒を操る女。腕に未だ残る包帯は彼女によるもの。
久しぶりに全力を出してしまった挙句、一帯を崩壊させてしまった。
新聞に大きく載ったものの、犯人は未だ見つからないままで。

「ま、今日はゆっくりできそうだね」

口元に小さな笑みを浮かべ、広場のベンチに腰掛けようとする。
特に何事もないだろうと、少女は無防備なままでいた。
――少女以外誰もいない広場。何が起こるか分かったものではない。

//是非とも犯罪ロールで……!


759 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/07/23(日) 22:14:31 O/1quP0M
>>758
今日はいったいどうしよう。
どんな風にやってみよう。

黒いコートを羽織った女、遠山万里江は欲求不満であった。
なんでもいいから、やってしまいたい。誰でもいいから、やりたい。

だから、学園の制服を着た少女を見たときの彼女の内面は既に教師ではなかった。


「あら?こんなところでどうしたの?……それは、怪我?」

だが、教師を装いながら偶然通りかかった万里江は生徒に声を掛ける。
優しい顔をして、裏側で悪意の糸を張り巡らせて。


たった今少女の座ろうとしているベンチ、その下に「トリック」が仕掛けられる。
金属の小さな塊。それは―――金属ナトリウムであった。



//当方学園の先生でもあるのでこういう方向性で行かせてもらいますね、こちらの名前は把握していてもらって構いません!よろしくおねがいしますー


760 : 【紡風慧峯】 :2017/07/23(日) 22:34:49 gO8cHMfM
>>759

少女―成瀬真帆―は、ベンチに腰掛けようとしたその時、黒いコートを羽織った教師を見かけた。
その教師は遠山先生であった。国語の教師であり、成瀬の教科担任でもある。
故に、腰掛けるのをやめ右手に提げた袋をベンチに置く。


「遠山先生じゃないですか、こんにちはー。
いや、服でも買いに行こうかな……ってこの傷ですか?
あはは、この前無理しすぎちゃいましてね」

苦笑しながら、彼女の質問にそう返答する。
取り敢えずといった他愛もない会話をし、彼女に座ってくださいと言う。
そうして、成瀬は彼女の笑顔の裏に隠された“悪意”に気づくことはなかった。

そのまま、成瀬はベンチに腰掛けようとした。
――その下に、何が“仕込まれているか”に気づかぬまま。


761 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/07/23(日) 22:56:44 O/1quP0M
>>760
優しい、善良、生徒思い。遠山万里江。
犯罪者、破綻、悪の蜘蛛。遠山万里江。

どちらも紛れもなく遠山万里江であった。
他者からどう思われていようとも。


「こんにちは。
服を買いに行くのはいいけど、ダメよ成瀬さん。
怪我をしたら報告をしないと……」

ちょっと説教モード。本心だ。
心の底から生徒のことを心配している。

「ちょっと用事があるから、大丈夫。
それじゃあ」

さようなら

帆―が座っているベンチの下で、水音。
犯罪者の第二の「トリック」だ。
といっても、ただの水であるのだが―――ここでは凶悪な仕掛けとなる。

次の瞬間、ベンチの下で爆音が響く。
爆発だ、ベンチを壊しつくす破壊だ。


爆発が起きたとき、万里江は驚いたような目をベンチに向ける。
驚いた“ような”、目を。


762 : 【紡風慧峯】 :2017/07/23(日) 23:08:07 gO8cHMfM
>>761
「ええ、ごめんなさい先生」

舌を出してから反省の言葉を口にする。
心配してくれているから説教のような口調になるのだろう、それは分かっていた。
次は失敗しないと心に誓い、成瀬も別れの言葉を口にした。


――その刹那、水音が真下から聞こえた。
僅かな水音であったが、何故かその音は耳に残った。
そして、成瀬を襲うのは――膨大なほどの“破壊力”だった。

「っぐ――――!?」

女子高生の身体は、至って簡単に宙に浮いた。
何が起こったか理解はできないが、とにかく体勢を戻さねばならない。
地面から強烈な上昇気流を発生させ、ふわりと地面に直立した。


「……だ、誰がやったんだコレ」

成瀬は目をまんまるにして――だが落ち着いた口調で――そう言った。
普段やっている行為をやられる側になるとビビるものだ。
驚いた表情で固まったまま、ベンチが“存在していた”場所を見つめていた。


763 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/07/23(日) 23:49:37 O/1quP0M
>>762
ベンチが存在していた場所をみても、そこには火薬の仕掛けの痕跡すらないだろう。
―――異能が蔓延る世界において、これの正体に気付ける者がどれだけいるのか。

遠山万里江は心配な顔つきで慌てて駆け寄る。――本心だ。
突然起きた爆発に驚き、生徒が巻き込まれたから気が気でないのだ。

「だ、大丈夫!?怪我とか……してない?」

成瀬の体をいろいろ見る。
怪我がないか、大丈夫そうか。――何かを仕込めるだけの隙がないか。

「しかしいったいどうしてこんなことを……」

呆然と、呟く。
これは作っている。

同時に、辺りを見渡して先ほど成瀬がベンチに置いて爆発に巻き込まれて中身が散乱した袋を見つける。
――これは使える。
三つ目の「トリック」を仕込むことにした。

「あ……袋が……取りに行きますね」

と言って散らばった袋の中身を回収すべく成瀬から離れる。
かろうじで無事な袋に無事なものを入れたりしながら、同時に中に「トリック」を入れる。

火薬である、黒い粉が入った袋を。

攻撃に直接使うのではない。もう少し狡猾な用途が脳裏にひらめていて――


764 : 【紡風慧峯】 :2017/07/23(日) 23:57:16 gO8cHMfM
>>763

異能が蔓延るこの世界では、何事でもありえる。
それは成瀬も重々承知をしていたが、たった今起きたことは非常に不可解であった。
単なるテロ目的にしては火力が小さく、一人を狙うにしては外れやすい。

そして遠山先生が近づいてくると、成瀬は大丈夫だと返す。
苦笑いしているようだが、その表情は未だに硬いまま。
アパレルで買ってきた服も吹き飛び、破けていることだろう。


さて、遠山先生が服を取りに行っている最中、成瀬は犯人を探していた。
正直遠山先生は疑わしかったが、普段から優しい先生がこんなことをするはずも無く。
故に、特定して犯人として認定することは全くできない状況下にあった。

そして、彼女がアパレルの袋に無事“仕掛け”を終え、それを持ってきたならば。
疑うことなく、成瀬はそれを受け取るだろう。
いや、疑う余地もないのだ。彼女は普段から接している、信頼のある“教師”なのだから。


765 : 【罪の蜘蛛糸】 :2017/07/24(月) 00:16:01 zXEJPhz6
>>764
信頼という要素もまた、作られた糸の一本。
「本気で心配をする先生」もまた演技ではないが、糸として使えるから使っている。
狡猾に、利用できるすべてを用いて遠山万里江という犯罪者は犯罪を執り行う。

奪うだけが、犯罪ではない。

驚いてはいるようだが、身体は大丈夫そうだ。
そのことが分かればホッと胸をなでおろす。
よかった、大切な生徒は無事だ。

「一応集められるだけ集めましたけど……ほとんどダメみたいです」

無事なものと、そうでないものを二つの袋に分けて成瀬に渡す。
―――仕込んだのは無事なものが入った袋だ。

優しい先生は、優しい先生のまま仕込みを起動させる一言を発する。
悪意が考えた一言だが、純粋な善意が話させる。

「ナニカ無くなってたりしちゃいけませんし……一応中身は確認してみてくださいね」


766 : 【紡風慧峯】 :2017/07/24(月) 00:28:08 0t.2081o
>>765

今の成瀬を形容するならば、蜘蛛の巣に絡み取られた獲物というべきか。
巧妙に張り詰められた糸に気づかず、自ら蜘蛛の方へ寄っていく。
それに気づかせないというのも、彼女の巧妙なところだろう。

「わざわざありがとうございます」

無事な服と、駄目っぽい服。
わざわざ彼女は分けて袋に入れてくれていたようだ。
小さくお辞儀をしてそれを受け取る。
やはりあれだけの爆発があったのだから、成瀬は服が無事なのか気になっており――――。


「えーっと…………」

袋の中を覗き見ると、やはり無事だった服が二着しっかりと入っていた。
この瞬間に、成瀬の彼女に対する疑いが晴れたのである。
ほら、やっぱり先生は優しい先生だ。酷いことはするはずもない、と。
――その期待が、次に破られることも知らずに。


767 : 【重層剛筋】 :2017/07/24(月) 23:49:37 F8kf4Tp.
>>703
/気付けず反応遅れて大変すみません……
/時間掛かったりと、少し思うところあり、勝手ながらこの度の待ち文は破棄、させて貰っても宜しいでしょうか……?
/お待たせしたうえに本当に申し訳ありません


768 : 【一刃潜瞬】 :2017/07/24(月) 23:51:28 mBySt0SA
>>767
//了解致しました!
//またの機会に絡んでいただければ!


769 : 【双刻天剣】 :2017/07/26(水) 01:56:08 pCFELV.c
>>735

拳に伝わる確かな手応え。仮面を叩き割り、更にその先にある顔面を打ち抜いた鈍い感覚。
殴り倒すまでは全く意識していなかったが、こうして物理攻撃が通用するということは即ち相手は幽霊の類ではないらしい。
ここが心霊スポットである以上、その可能性は脳裏にちらついていたものの、こうして人間であると判明すれば怖いものはない。

だって、幽霊は斬れないが、人間なら斬れるのだから。
浴衣の下に隠した剣を何時でも抜けるようにしながら、シオンは憎き怨敵へとずんずん近寄るが。


「……ああ、これは拍子抜けですね」


悪戯の犯人が小柄な少年で、目を回している姿を確認すれば怒りを鎮めざるを得ないというもの。
きっと、細やかな悪戯心だったのだろう。心霊スポットを訪れた人間を驚かせたいだけで、そこまで悪気があった訳ではないのではないか。
だとすれば、全力の拳を叩き込んだのは少々度が過ぎたかもしれない。咄嗟の判断などできなかった状況とはいえ。


「いや、私も物的損害を被った訳ですし?自業自得だと思いますけど?」


言い訳するように呟きながら少年の側で前かがみになると、その朴をぺちぺちと叩いて意識を戻そうとするだろう。
もしその視界が明瞭になった時、少年が最初に目にするのは不機嫌そうなシオンの仏頂面ということになる。

//置きとはいえ連絡なしに長い間隔が空いてしまい申し訳ありません
もし思うところがおありでしたら、このロールは破棄としてくださっても構いません…


770 : 【隸属兇鞭】 :2017/07/28(金) 20:01:35 Ijr7NBcc
パー速スレ>>104、【龍神変化】様宛

「嗚呼、ああ!」

わたくしが間違っていたのかも知れません――
生き方レベルで、殺意を振り撒く姿。向けられた銃口を見て、身震いする身体を抱き締める。
この震えは感動だ、美しい芸術を前にしたときの下腹が熱くなる其れと同じ。

「ではお話ししましょう。組織の事を」

女がしていたのは押しても引いても開かぬ扉を懸命にこじ開けようとするに等しい愚行、なのかもしれない。何故ならドアノブはとうの昔に壊されて、扉の向こうは既に踏み荒らされた空き家なのだから。

「わたくしたちの目的は――――」

そんな歪な存在だからこそ、手を伸ばしたのだと。彼女なら最高のプレイヤーの一人になれる。
これから話すのは知力体力能力を駆使した暇潰し。きらきらした眼差しで語る。

「能力者の楽園を築くことですわ!」

――――――――


「……こほん。倶楽部=ウゴーノは、能力を用いた点取りゲームを行う集いですわ。」

ややあって、落ち着きを取り戻した女からその全貌が明かされる。

「ゲームを取り仕切るのは二人以上の会員(プレイヤー)同士。或いは第零号会員。
参加資格はただひとつ、能力者であること。
御屋形様――零号会員から召集が掛かりますと、それぞれ一対一で分かれ、狩りを、或いは殺戮を競うのですわ」

要するに、どれだけ非道なことをしたか競う、悪辣な遊戯。
それは殺した者の数だったり、沈めた街の広さだったり、狩尽くした異形の強さだったり。
ただ徒に大小を競うだけでは芸がないので、それぞれ制約や誓約を用いるのだと。

例えば女。掲げる理念は徹底した弱肉強食。
強者――能力者を避け、弱者――無能力者を狩る。
強きを求める求道者的精神はそこにはない。リスクを前に緊張感を高める自己満足だけがある。

広告も掲げない、戦争も仕掛けない。只管内輪で楽しみ、勝率を高め、号数を奪いゼロに近付けるを目指す不毛。
支配、戦争、正義、聖戦。競争を仕掛ける時の謳い文句は不問。ただひとつ悦楽という共通認識のために。飢えて痩せこけた野良犬も食わないような、下種な理由だけが転がっていればいい。

踏み外した人生。クソっ垂れな倫理観、胡散臭い組織構造。
相手の言い分は全て当てはまる。
認めざるを得ない。馬鹿で、狂っていると。これは社会を憎みせせら笑うための、刃物を持たされた気違いによる、馬鹿騒ぎの宴。

「そしてわたくしはあちこちを回り、有望なプレイヤーをスカウトしているのですわ」

彼女を見て憎悪、戦闘技術、なによりその徹底ぶりに水準以上を見た。

とはいえ水準値の高さは攻略難易度の高さにも繋がる。相手のように独自のルールで動く人種には、特に受け入れ難い世界観なだけに。
故に何処まで言葉を尽くしても、所詮女は道案内に過ぎない。“こういう道も御座いますよ”と標を立てるのが限界なのだ。
飢えを満たす御馳走か、死に至る劇薬かはその時まで分からない細い小道への標識を。
――――

「お分かりいただけたかしら」

舌は尽くした。
あとは向けられた銃口から死の導きという答えが返されるのを待つばかり。
うっとり目を閉じて、訪れるであろうその音に耳をすませる。

/お待たせしました、本日も宜しくお願いします


771 : 【龍神変化】 :2017/07/28(金) 22:20:42 Hy1fALQE
>>770

 ―― ゲーム。

彼女の眉が一瞬、ひくりと引き攣った。堪った水滴が目じりに垂れ落ち、頬を伝った。
音を立てて大粒の雨が降り注ぎ、びちゃびちゃと銀色の重心に何発も叩き付けられた。
その拳銃の引き金が通常のものより軽い事を、当然持ち主は知っている。そう調整した。
より人を殺しやすく、より命を軽く、塵芥に過ぎないものを、塵芥に帰す為に。

遠くにある街灯のひとつが、ばちりと音を立てて灯を失う。
微かに聞こえるちりちりという焼けた音は、雨音の中で響き、潜在意識を刺激するサブリミナルのよう。
雨に濡れた不快感か、コイルの焼けた音か、それとも倶楽部の使者の口上か、
どれが原因で"そうなった"かは、当の本人も細かくは感じ取れない。

「……よく分かった。」

瞼を閉じ、音に集中する相手。一方で双眼を見開き、力強く拳銃のグリップを握り締める己。
戦いでも、殺し合いでも、ましてや虐殺でもない。奇妙な、強い嫌悪感を覚える、軸の狂った時計のような光景。
しかしそれでも、精神的に衰弱したのは龍の鱗を持つ女の方だった。

己の弱さを嫌悪した。胸が焼けそうな感覚が湧き上がり、もっと意志薄弱ならば自らの顎を凶弾で打ち砕いただろう。
では何故そうしないのか。他のモノが更に憎いからだ。この45口径弾を喰らわせるまでは、死ぬに死ねない。
そんな相手が大勢いるものだから、彼女はいつまで経っても自死に至れない。

「俺もまだ少しは人間の心が残っていたようだ。
 おだてられ、贈り物、喫煙の感触、悪くなかった。」

眼球の黒は微塵も揺れず、機械めいて真っすぐに標的に狙いを定め、撃鉄をゆっくりと親指で引き倒す。
シリンダーが静かに回転する音。最後の1発が発射位置にはまる、乾いた心地の良い音。
ちりちりちり、ショートした街灯が焼ける音。全ての音が煩わしいと思った。集中させてくれ。

「だが、俺はお前が思うよりももっと、人間ではない。」

彼女の理念をあえて記号化するなら、同族嫌悪。殺人鬼狩りの殺人鬼。
ミイラ取りがミイラになったとて、ミイラ取りには代わりはない。怪物が怪物を喰ったところで、神話にはよくあることだ。
目には目を、歯には歯を。よく知っているからこそ、嫌いな己に似ているからこそ、激しく嫌悪する。
楽しみや笑い、愉悦、そんなものは無い。無いはずだ。無いとしたからには、無い。

「お前は相手を間違えた。」

 ―― 相手の上腿に銃口を向け、引き金を引く。発砲音と風切り音が鳴り響くだろう。

-------------------------------------------------------------------------------
眼を閉じている相手には回避もままならないかもしれないが(回避する気があるかはさておき)、
幾ら射撃に慣れている彼女といっても、上腿の動脈を正確に撃ち抜くまではいかない。
それにとても至近距離。弾丸は女性の細い四肢を容易く貫通するが故に、最大限の破壊を及ぼさないかもしれない。
"つまりそれが致命傷となるかは誰もわからない。ゲームのようなもの。"



/遅くなりました…ッこちらこそよろしくお願いします。
/撃っちゃってますがダメージについて、完全にお任せします。


772 : 【龍神変化】 :2017/07/28(金) 22:21:35 Hy1fALQE
>>771
/弾丸は爆発させずに普通の弾丸として発射させています、ので……っ


773 : 【隸属兇鞭】 :2017/07/29(土) 04:36:06 pTFAPCEQ
>>771-772

破裂音が耳朶を打つ。
腿の外側をやけつくような痛みが走り、衝撃で尻餅をついた。水溜まりにドレスが染み込み、みるみる暗く染まる。
ややあって二人の間に、支配を失った傘が力なく墜落した。

「……お優しいんですのね、ズメイ様」

皮肉ったように捉えられるかもしれない。
だが女にとってはそれを弱さ、呵責だとか、人間味だとかは嫌悪や嘲笑の対象にはなり得ないのだ。
ズメイ、ゴリニチ、ワイバーン。いずれも竜を呼称することば。
神話の中の彼らは時に無慈悲な虐殺者で、時に秩序の破壊者ともなる。
女は先に、相手の放つ火の玉と化した弾丸を見ている。それが掠っただけで只ではすまないことも。
――――
この時無意識に女が能力を発動していた可能性は否めない。無機物を支配する力が働き、操られた衣服が弾丸の軌道をごく僅かに反らせたのかもしれないのだ。
故に殺意の否定は誰にも出来ない。否定だけは。
――――
まだ遊ばせてくれることへの感謝と、彼女の暴挙を浴びれなかった事を残念がるような複雑な色の瞳。
伏した眼差しは雨の向こうからも垣間見れるだろう。それを強く持ち上げて。

「わたくし、諦めませんわよ。本日はお暇させていただきますけれど」

「……次に会う迄に、少ない方が勝ち。
どちらが能力者を

“殺さないでいられるか”。

較(コンペティション)――――しましょう?」

相手が生き方を変えず、または女がゲームに興じる以上、怪物或いは強きものとの邂逅は必然。
そのとき弾丸と鞭、どちらの引き金がより軽いかの我慢比べ。
益はない。もとより反故にしたとて罰もない。一方的な取りつけ。

どのような馬鹿でも、その一発が拒絶と捉えるのは容易である。撃たれてなお擦り寄るのは自らを売るのと変わらない。
あくまでも対等で、互いに望んでいなければ遊戯は成立しないがために。

閉じられた傘がまたひとりでに浮き、相手の手元に差し出される。
要らないと言われた、故に受け取らないだろうことは承知しているが。
もてなしと感じてくれた以上、終いまで礼儀を尽くす。奇妙な言葉遣いはその上流の育ちにも起因していた。

身に受けた弾丸は一発。恐らくこのまま彼女は立ち去るのだろう。
背を向けられたならごきげんよう、と呟いて。
足を崩して(というより立てない)、女は夏の豪雨で顔を洗う。
火照りを帯びた脚に、その冷たさは少し心地好かった。

/お言葉に甘えて、掠める形にさせて頂きました


774 : 【龍神変化】 :2017/07/29(土) 16:33:35 GAwcI9f6
>>773

「優しい訳じゃない、怯えてるんだ。」

人間を殺す事が怖くない訳がない。狂える魂の情熱に身を焦がし、脳神経を麻痺させなければ、人を殺せない。
理性で抑え付け、本能で昂らせ、自我を保っていられるとても曖昧な場所に立ってようやく、人を殺せる。
世には生まれながらの快楽殺人者というものがいるが、彼女はそうではない。
かつては、ただの人間だった。そしていつかは、ただの人間になる。

「俺は、相手を殺すか殺さないか決めれるほど強くない。」

銃口から白い煙を吐き出す拳銃のシリンダーを横に開き、空薬莢を地面に落とした。
これまた心地の良い金属音が響いた。雨粒が震えて、とてもいい音になった。

そして、目の前に差し出された傘を手に取る。一先ずは雨は避けていき、冷え切った体に僅かな安らぎを覚える。
龍の因子に侵された体は比較的体温が高い為か、雨に濡れて風邪を引いた事は無いが、今晩は珍しくふらつきを感じた。
慣れない葉巻を吸ったのがいけなかったのか、それとも遂にはただの人間になってしまったのか。
大きな水たまりの道を音を立てて踏みしめながら ―― 少女へ近寄っていく。

「俺はそんな上等なタイプじゃない。こういう扱いは、身に余る。
 お前は相手を間違えた。」

傘を相手の傍に立てかけようとした。傍に何も物がないなら、相手の肩に立てかけてでも、手に持たせてでも。
何にせよ"傘を受け取り、それを相手に差し出す"。結果如何は気にしていない。

「とはいえ、お前に相応しい苦痛を与えるには、お前の口から罪を自白させる必要がある。
 常習犯なんだろう。お前はそういったゲームの為に、何度も手を血に染めた。

 ノーリスクでは済まさない。俺が乗る以上は、ただの遊びでは済まさない。」

傘を置けたならば、踵を返し、ずぶ濡れのジャケットの背を見せて、歩き出すだろう。
暗闇の果てまで街灯が並ぶアスファルトの道を、雨に濡れ、鱗から水滴を落としながら、ゆっくりと。
ホルスターには銀色に鈍く輝く古ぼけたリボルバー拳銃。胸にはくすみ汚れた何処かの国の勲章。
死にかけの獣めいた足取りで、しかしながら最後に見せた眼球は何かを真っすぐに見据えて。

「そのゲーム、乗ってやる。これが最初で最後だ。」

弾丸の空薬莢は、僅かに傾斜のかかった道路を転がっていった。



/特に引き留めないようであれば、これで〆というところでどうでしょうかッ


775 : 【隸属兇鞭】 :2017/07/29(土) 19:42:20 oPxm2W9s
>>774

天を見ていた視線は、相手の独白により徐々に高度を下げるだろう。
軋るような声を耳に貰い受けながら。期待の花が、興奮とともに目の前で開いていく。
一貫して否定的な言動も、女の狂った思考回路の前には正しい意味をなさない。
胸の高鳴りを押さえ、両指を胸元で絡めるようにして頼りなげな足取りをまつ。
手元に差し出された傘は、相手の手を離れた後ひとりでにぱっと開かれ。既に濡れ鼠となっていた女を再び降雨から守り始めた。

しかし女がそれを見ることはない。濡れて額に張り付く髪を掻き分け。
ただぼう、と熱に浮かされた目は、坂を転がる薬莢を追っている。
彼女が立ち去って行く。その背へ視線が動いた矢先――――

ぴしゃんと鋭い擦過音が鼓膜を打つ。しなやかな革紐を、高速で何かに叩きつけた音。
もし其れに振り向いたなら。最後にまた女と視線が絡むだろう。

「――――本当に、お優しいこと」

目を細めて相手を指し示す、その右手には自動拳銃が一丁握られていた。
たぁん、と発砲音。
――――

……大袈裟に避けずとも、それこそ微動だにさえせずとも、弾丸はあさっての方向へ飛んでいく。

だが決意とともに放たれた意思と眼差しは、真っ直ぐに相手へ向いていて。

「喜んで。全力でお願い致しますわ」

彼女が見ていようがいまいが、漸くパートナーを見つけたピストルの手でドレスの端をつまみ上げ、にこり微笑む。
いくら礼儀をもってしても、喜色にまみれたウィンクは、罪人に相応しく醜悪極まりなかろうに。

全力で殺さない、という矛盾を、この先彼女はどう捉えるだろう。
苦しむか愉しむか、元より口先だけの歯痒い結果に終るか。
互いに一発ずつ弾丸を交換して、その日の邂逅は幕を引いた。
――――
やがて相手が女から離れ、10歩ほど歩いた先で、女の放った空薬莢が足元に転がっているだろう。
いまだ熱を帯びた9mmパラベラム弾の成れの果ては、雨に濡れ薄く湯気を放っていた。


/最後薬莢は能力で手前に落とした感じで……私からはこれにて〆させていただきます
/絡み、ありがとうございました! 遅レスと、不具合でお騒がせしたりして申し訳ありませんでした


776 : 【龍神変化】 :2017/07/29(土) 20:39:02 GAwcI9f6
>>775

9mm弾の乾いた発砲音が鼓膜をつんざいた。

「そうかい。」

彼女の返事は素っ気なかったが、今の2人にはこれ以上の言葉は不要に思われた。
リボルバー拳銃をホルスターに収め、再び歩き出す。
過去が未来へ。先行きの分からない暗闇へ着実に歩を進ませ、
いつ訪れる事になるかわからない、どちらかの終焉になるかもしれない日を垣間見る。

弾丸が何処に着弾するかなど、どれ程の腕利きですら、着弾するまでは分からない。



/お疲れさまでしたッ。こちらこそありがとうございました。
/すごい楽しくやれましたので、全然問題に思ってませんです!またロールして頂ければ嬉しいです。


777 : 【形意神拳】 :2017/07/30(日) 19:07:31 M5p3D7m6
パー速スレ>>157 【唯包効索】様宛

少女の声をBGMに、ぼんやりと日溜まりに居座り続ける。
暑さはあまり感じない。序でに食欲も全く感じない。
あれほど食べたかった瑞々しい果物も、今は何処か色褪せて見える。無言で首を横に振り、差し出されたそれを否定した。

――――そっか、仕事か。
でもそれってきっと彼の方から依頼したんだろうな。
小さいのに信頼されてて凄いな偉いな。
私なんか無理矢理首突っ込んで大怪我して挙げ句の果てに八つ当たりだもん。器からして違う。
まずいな、これじゃあどっちが子供か分かったもんじゃない。
まさかお客様と店員、その関係にもやもやする日が来るとは思わなかった。
ぎゅ、と膝を抱える手に力がこもる。
――――

ご実家からお届け物ですよ。

無言の空気にどんよりと暗雲たちこめだした所へ、第三者の声が水を差す。
そういって看護師は長財布より二回りほど大きな茶色い包みを女に渡して去っていった。
家が病院の近くで助かった。礼を言い包みを開けると、中からは封筒と木箱が1つずつ。
封筒の厚さを確認しつつ、改めて少女に向き直る。
考えが纏まり、始めに会ったときよりも落ち着いた声音。
彼女が出したままだろう、例の物を指差して。

「その西瓜。届けて貰えるかな」

お中元――は少し時季が過ぎてしまったか。うん、この場合は、

「ワイルドハントに。暑中見舞い……で」

彼と少女の両方への迷惑代。そんな思いから唇を引き結ぶ。
これしきでチャラにしてもらうには些か早計だが、一先ずの自分の中のけじめとして。
中身の詰まった封筒を、少女の手に半ば強引に押し付けようとする。
開ければ中にはクール便の輸送費も含めた数枚の紙幣が入っているだろう。
適当に季節の果物を幾つか見繕って贈ってくれ、と。勝手ながらそれで話は一区切り。
――――


「あとこれ。」

少し前に話題に挙がった不思議なモノ。
女は無能力者であるが女なりに見当をつけて、実家から送ってもらったもう一つの品。
かび臭い木箱を開けると、ふわりと時代の香とともに、月光のような薄明かりが漏れ出る。
過去自分が闘った能力者の遺品とも言うべき其れは、白銀に輝く一紡ぎの糸。
訳あって全部はあげられないけど、少しなら。
そう言って申し訳なさそうに眦を下げた。


778 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/30(日) 20:23:11 cbek7Ffw
>>777

少女は困惑していた。
女の変化は間違いなく自分が起こしたことだ。少なくとも、その責任は感じている
故に、これ以上関わるよりも、時間をあける―――この場を立ち去ったほうがいいのだろうと考えていた

そう思った矢先に、注文と封筒を預けられる。
……ええと
今は切り替えねば。そう考えて

「これは、決まったお代だけいただくですよ。注文、承ったですよ」

封筒から、数枚の紙幣だけを貰う。実質問屋のようなものなので、市価よりは随分安いだろうか
それ以上は絶対に受け取らない。このような状態でもらっても、それは対価とは言えないと考えているからだ
無理矢理にでも、女の元に返す

「―――これは」

糸に触れる―――瞬間、溢れる光。糸自体はぼんやりとした光だが、少女との接点から激しく発光していた
少女は湖の精、ウンディーネの血を引く存在である。それが月の光、魔力と反応しているのだ

今までの事が少し吹き飛んで。驚いた表情で、そちらの答えを待つだろうか


779 : 【形意神拳】 :2017/07/30(日) 20:35:57 xUrulTZU
>>778

「美味しい梨。食べさせてくれたお礼。だから」

馬鹿で愚かな女にも、いや女だからこそ、一片のプライドというものがある。
何かと自分に甘い祖父にすら訝しがられたのを説得してまで届けて貰ったのに、受け取ってもらえませんでしたでは恥ずかしいじゃないか。
吐いた唾は呑めぬとばかりの頑なさで
拒むが、相手もさるもの。
一頻り押し問答が繰り広げられたあと、それでも少女が退かなければ、女の方が渋々折れる結果となろう。


「ん――――。 戦友の。置き土産。的な……?」

呪術師の武神 怜――――【征月偽煌】の能力で生み出された白銀糸。
無能力者で一介の武術家に過ぎない女にはその価値は判然としない。困り顔でただ知っている事実を暈して述べるだけ。
長さはどれくらいあるのか、計ろうと思ったことがない程には長く。
生半可な刀や鋏では切れないほど強靭なそれは、ちょっとやそっと引っ張った位ではびくともしない。
自棄っぱちで両手で握り、馬鹿みたいに力を込めると。ぷちりと小気味良い音をたてて呆気なく切れた。まるで女の意思を汲んだかのように。

「これくらいで。足りるかな」

絹のような手触りのそれを風になびかせて相手へ渡す。
切り離した糸は全体からすればほんの僅かだが、それでも、今の髪型になる前の女の豊かだった黒髪――――それこそ上に掲げればゆうに腰か膝まで届くくらいはある。
もっと欲しい、と乞われれば再び渡すのも吝かでない様子だが。


780 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/30(日) 21:01:23 cbek7Ffw
>>779

結果として、少女は退かなかった。それについては、自分の店に来た時に使ってくれと締めるだろう

糸を裁ち、渡そうとしてくれる相手。少し、考えて

「……もう半分にわけれるですよ?」

一度受け取ったが、その性質を確認し、自分には裁てない事を悟り、お願いするだろう
こうなったら―――と、ある考えを、胸にいだきながら


781 : 【形意神拳】 :2017/07/30(日) 21:12:09 xUrulTZU
>>780

月光と反応してその身に光を帯びる少女を見つめる眼差しは眩しそう。いや実際に眩しく思っている。
メルヴィンしかりレゥリしかり、人の役に立つ人生を送る人は、すべからく女にとって憧れの存在であった。


「ん。多分」

一瞬だけ面倒げな色を浮かべながらも、頼みとあらばやってみる。
簡単に千切ったようにみえて、結構握力がいるのだ。指先を鍛えてなければあるいは血が出たかもしれない。

ぷちん。さっきよりも時間は掛かったものの、似たような音をたてて糸は二つに別れた。
それを渡して相手に背を向け、痺れた指先をふうふうと吐息でこっそり労る。
もう一回やれ、と言われたら、少し休憩が欲しいかもしれない。意地があるので、そんな雰囲気はおくびにも出そうとしないだろうが。


782 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/30(日) 22:58:30 cbek7Ffw
>>781

光糸を右手で受け取り、

「ありがとうですよ」

そう言うと、空いた左手でそちらの右手を握ろうとする

「ちょっと、びっくりするかもですよ―――」

もし、触れられたなら
そう言って、己の能力を開放する

   遠く在る我らが故郷よ
「《仮想霊泉展開 妖精郷接続》」

そう唱えると、少女の足元から光が溢れる
光が収まれば、そちらは湖の縁に移動しているだろう


そして、その正面には、湖面に一人の女が立っている

若草色の緩いウェーブのかかった髪。同じ色の瞳。
肩を出したデザインの、何処か民族衣装的な印象を受ける白いドレスを着た女であった
背は女にしては高く、曲線が大きな女性的な身体つき
先程まで居た少女の、年の離れた姉と言われても違和感のないくらい、面影を残した女が、微笑んで。


783 : 【形意神拳】 :2017/07/30(日) 23:26:19 aczZOWJI
>>782

肉体派とて無尽蔵の体力を有するとは限らない。
色々話して少しだけ疲労を感じていたその時。
まさに意識の不意を打つように手首を引かれ、瞼が驚きで持ち上がる。

「ちょ」

瞬間移動――能力に縁がない女にはその驚きは大きく。
光が収まったとき、そこは文字通り別世界。
少女がいなくなった衝撃もあり、その分警戒も大きく。微笑む女性に対していまだ身構えていた。


784 : 【白黒戦争】 :2017/07/30(日) 23:48:11 e95wK84I
生きる価値のない人間など存在するのだろうか。
いや、ない。全ての人間は此の世に生まれ落ちた瞬間に、何らかの意味を伴って存在を確立するのだから。
例え救いようのない極悪人であろうとも、例え性根の腐った外道であろうとも、命の価値は等しく尊いもの。

───────そう思えてしまうのは、中途半端に殺し切れない良心の呵責なのか。
ならばその思いは嚙み殺そう。其れは彼女にとって、欠伸を噛み殺すように簡単なことだった。
そして何時ものように、淡々と指揮をふるう。喚き散らす命乞いを聞き流し、感情の籠らぬ冷ややかな瞳で駒を進め、そして。
断末魔の叫びと、ぐちゃりという肉が潰れる音を以って、路地裏に再び静寂が訪れた。全てを見届けたのは、雲の隙間から覗く三日月のみ。


「……────はあ、これで終わりましたわ。後片付けは宜しく頼みますわよ」

「後、入金も指定の口座にお忘れなきように。もし反故にするのであれば、今度は貴方の首を頂きますわよ?」

スマートフォン越しの依頼人との通話を終え、少女は疲労感から溜息を零す。
路地裏には似つかわしくない、黒のドレスに身を包んだ可憐な少女。彼女は所謂殺し屋でありだった今宵も一仕事終えたばかりだった。
たった今、彼女に"処分"されたばかりの男の亡骸は、無残に破壊された状態で無造作に放置されていた。
斬り裂かれ、貫かれ、押し潰され、まるで数人がかりで暴行されたような酷い有様。然しこのように凄惨な光景は少女にとって慣れたものだった。

少女は殺し屋だった。誰かを殺して、その命を踏み躙って、金という生きる糧にするロクデナシ。
彼女はまだ若く、殺し屋としての経歴も浅い────にも関わらず、既にそのロクデナシな在り方に順応していた。


「……さて、早い所私も退散してしまいましょう」

「この血の匂いに引き寄せられて、ハイエナが姿を現す前に」

死体の臭いは防げない。幾ら此処が死角の多い路地裏であったとしても、決して誰も辿り着けないという訳ではない。
偶然か、必然か、引き寄せられる者は存在する。其れが正義か、或いは悪かなんて些細な問題に過ぎず。
けれども────時として、出逢いは必然的に生じる。果たして其れが、望んだものであるかどうかは不明だが。

踵を返し、この場から立ち去ろうとする少女の姿は丁度月の光に照らし出されて。

//置きになりますが、絡み待ちです


785 : 【白黒戦争】 :2017/07/30(日) 23:55:19 e95wK84I
>>784
//すいません、これは取り消しで…


786 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/31(月) 00:23:47 1NxyTQGc
>>783

「そう構えないでくださいな。私はレゥリ―――レゥリ・テルル・ミルシャ・コピカルデ。半分ですが、ウンディーネ……泉の精霊です」

ふふ、と笑う。女の構えを見て、まあ、そうですよね。という感想を抱いていた。
腰まで伸びている髪は水面のようにゆらゆらと揺れていて

本来のウンディーネは、愛されるまで魂を持つことができない。半ウンディーネである少女には魂があるが、その成長が遅い
ゆえに普段は魂の年齢に近しい少女の姿をしていた。だが、ウンディーネとして振る舞う間のみ、こうして「己の一番美しい姿」になるのだった

「貴女に贈り物をしたいのです。この、御礼を」

2つにわけられた月糸を、掌に乗せて。そちらに見せるだろうか
泉の精霊。聖剣の伝説。相手の女は――知っているだろうか?


787 : 【形意神拳】 :2017/07/31(月) 00:39:07 oPJ7WhTw
>>786

どうしてこうなった。
私はただ、彼と笑い合える未来を幻視しただけなのに。
少しだけ、似合わない事をやってみただけなのに。
最近は行動が悉く裏目に出ている気がしてならない。
器の差、という言葉が再び重苦しくのし掛かる。
負けず嫌いの自覚はあるが、これではまともな勝負にすらなってないじゃないか。
なんでこう、上手くいかないんだ。


「……いらない。」


同じ糸(もの)は持っている。
暑中見舞いの注文も受けてもらえた。
これ以上望むものがあろうかと素っ気ない態度。いっそ迷惑げですらある。
少女(今は妙齢の女性だが)の異能の力が尋常でないのは、ただなす術無く連れてこられただけのど素人な女にも分かる。もしかしたら自分より遥か高位の存在なのかもしれない。

だが、それがなんだ。
自分が身に付けているのは拳法の知識と人体の壊し方だけ。
生まれてこのかた武術一筋に打ち込んできた身分に、贈り物のセンスや耳触りのいい誉め言葉など求められても困る。
今まで以上にぶっきらぼうに言い返すだろう。
何なら湖面から爪先を退けるくらいに。

「なら。

めるびんに何かあげたら。 その方が彼喜ぶんじゃない」

沸き上がる汚ならしい感情。胸の内に封をして、抑え込んだ筈の黒い気持ちが漏れ出している。
ついでとばかり憎々しさから付け加え。
あの生真面目の鉄面皮が低俗な感情ごときで揺れ動く所なんか、ついぞ想像つかないけれど。知ったこっちゃない。

背を向けて歩き出す。
ここが何処かなんてどうでもよかった。
ただ、これ以上惨めな思いはしたくなかっただけ。
きっと止められても振り向かないだろう。


788 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/31(月) 01:21:53 1NxyTQGc
>>787

先祖が聖剣を与えた王。それは最後、人の心が解らないと、崩れていった。
ならば、そんな王を選んだ精霊も―――きっと。

「……分かりました」

固有結界のように展開されていた景色は、外側から内側へ
少女の足元へ、収束していく

「……」

完全に景色が現実に戻った頃。きっと女は、荷物のもとに戻っているだろう。
違いは、敷かれていたシートと、籠、少女が消えていたことだ
ただ、何かを訴えるように、荷物とともに、先程の切られたメロンが残っている

少し離れて、病院の外。全身からしょんぼりしたオーラを放つ少女は、とぼとぼと家路に向かっていた
半分であれど人外は人外。その落差は絶対であり―――でも。それを理由に、或いは一つの要因として
起きた出来事は、ちくりと、棘のように少女の心に残るのだった


789 : 【形意神拳】 :2017/07/31(月) 01:40:25 oPJ7WhTw
>>788

彼も彼女も何も悪くない。間違ってすらない。
間違っているのは自分だけ。
彼らの綺麗な心、高潔な精神を目の当たりにするたび、自分の薄汚さに耐えられなくなるから。

歩く毎に足の裏に石ころや枝が刺さる。
スリッパは湖か病院で脱げてしまったのか。どうでもいい。
この道なき道が何処か遠くへ繋がっているなら、もうそれ以外何も求めない。

黙っていることすら辛くて視線を上げたとき。女は夢から現実に戻っていた。

最初にいた木陰。辺りはもう夕暮れ刻。


「――――、

なに。それ」


緩慢な動作で財布と飲物、御菓子を拾っていると、裸足の爪先にかさりとなにかが当たる。
それは読みかけの雑誌。
表紙の曲がったそれを、ろくに見もせず屑籠へ放り込む。
もう一つは、汁気が失せたメロン。流石に無下に捨てることはできなかったので、個室へ戻るすがらその辺を走っていた見知らぬ見舞い客の子供に押し付けて了とする。


ベッドに倒れ込むと、漸く腹の傷がずきり痛んで。皮肉にもやっとこさ己の己たるを自覚できる。
――当分、果物は見たくなかった。


/私からはこれで〆とさせて頂きます。絡みお疲れ様でした
/アイテムの方すみません、自己完結的なレスが多くて申し訳なかったです……
/果物配達の件、お手間でしたら私の方からソロールで済ませておきますので、ご遠慮なく仰ってください。私としてはどちらでも構いませんので
/長くお付き合いくださりありがとうございました!


790 : 【唯包効索】=Create Juggler= :2017/07/31(月) 01:50:25 1NxyTQGc
>>789
/いえいえー!ちょっと落差みたいなのがあって、それはそれ楽しかったです!
/果物配達などのロールはまたこちらでやりますので大丈夫ですよ、ありがとうございました!


791 : 【硬傑侠雄】 :2017/08/02(水) 00:53:51 7zzWbdgo
「なあ、もう一回言ってみてくれや…俺がなんだって…?」

街の繁華街にある雑居ビルの間に存在する空き地で、4人のチンピラに囲まれた少年が、そう呟いた。
学園の制服を着崩し、恵まれてるとはいえない体格で、ぱっと見はただの学生にしか見えないが。

彼はここ最近怪しげな繁華街に現れた、一種の辻斬りのような存在で、見た目以上に腕が立つと、チンピラや不良グループからは格好の「獲物」として狙われていた。
しかし、襲ってきた彼らを叩きのめし、結果として少年の名声がみるみる上がっていった。


ナイフを取り出したチンピラ達は、彼との間合いを詰めながら、1人が闇雲に突っ込んで来る。

少年は、ナイフを持った両手を脇で挟み、グッと力を入れて、いとも簡単にいなした。

「てめーらごときにやられてたまるかよ!こっちはてめーらよりももっとデカい所を見てんだ!邪魔すんな!」

そう叫んで、倒れ込んだチンピラを脇に抱え、執拗なまでに力づくでビルの壁に叩きつける。叩きのめされたチンピラは、力なく虫の息で仰向けに倒れた。
恐れをなした3人のチンピラ達は、武器を捨てて仲間を見捨てて逃げ出した。


返り血を浴びた少年は、手で血を拭いながら、夜の繁華街へと再び繰り出した。


/こっちのスレは久しぶりですが、よろしくお願いします
/拙い文章ですが、ぜひ絡んで頂ければ…


792 : 【尽臓機鬼】 :2017/08/02(水) 01:38:03 4LRciaGo
>>791
//今日は一度くらいしかレスできないのですが、それでもよろしいでしょうか……?


793 : 【硬傑侠雄】 :2017/08/02(水) 07:18:35 7zzWbdgo
>>792
/大丈夫ですよ!


794 : 【尽臓機鬼】 :2017/08/02(水) 18:59:10 4LRciaGo
>>791

その噂はとうぜん男の耳にも届いていた。
こいつは誰に憚ることもない筋金入りのろくでなし。社会の裏に頭まで浸かり、血と暴力の臭いが立ち込める暗闇を住処とする暗黒街の住人だ。
裏社会と言っても、いわゆる“表”と共通している点もある。それは暗黙の了解のもとにではあるが、一定の秩序が築かれているということ。
悪には悪なりの義理がある――なんて前時代的に綺麗気な概念など今や絶滅寸前だが、自らの塒と立場を守るためにはそう自由闊達には振る舞えないのが現実である。

そんな中において、何事か目立つことを起こした輩がいれば話に登るのは当たり前のこと。
混沌が支配する退廃と不健全が蔓延する都において、知らない人間はいるのだろうが知っている者は当然のように知っている。
この男もその一人だった。どだい情報など、大抵のものは酒場に入り浸って耳を澄ませていれば入ってこようというもの。

……今回の件は、この街においてそう珍しくもないものだ。
血気に沸いた若者か、あるいはどこぞの地から流れてきた正義感ぶった連中か、あるいは力試しをしたいのか……。
理由は種々様々だが、こういった話はしばらく経つととんと聞かなくなる。出る杭は打たれるのだというように、強い力は更なる力によって淘汰されるのだ。
ゆえにさほど気にする話でもない。この手のものはよくあることだ、いちいち注目するほどの価値があるわけではなかった。

――しかし男は、この一件がなぜだか妙に気になっていた。
確たる理由があるわけではない。何か違和感を見出したわけでない。
特に根拠はないのだが、彼の直感が言っているのだ。すなわち、こいつは面白そうだと。

だからこそ……偶然がもたらしたこの邂逅に、笑みをこぼさずにはいられなかったのだ。

「よう兄ちゃん。ずいぶんとまあ景気がよさそうじゃねぇかよ」

百九十を越す長身を包むのは黒いスーツ、紫のシャツ。ネクタイはなく着崩している。
白い蓬髪、真紅に濡れる両の瞳。体格はさほど良いというほどでもなかったが、総身に纏う暴力的な気配は明らかに“そちら側”の人間の証左である。
つまりはこの街にいて何の違和感もない男ということ。極彩色のネオン群、けばけばしく着飾った雑踏、路地裏から覗く人間の体、すべてがこの男のために誂えられた舞台のようにも思えてしまうほど似合っていた。

「どうだい奢るぜ、どこがいい? 綺麗どころの揃った店がいいか? それとも高い酒(やつ)が飲みてぇか? 血が見たいならそういう場所も知ってるぜ」

正面から歩いてくるなり馴れ馴れしく話しかけてくる顔には愉快気な笑みが浮かんでいる。
まるでたまたま出会った友人と世間話をしているとでもいうような。一杯やりに行こうと誘う言葉はどこまでも気軽で、それ以上の意図は感じない。
少なくともどこかのアジトなりに誘い込んで袋叩きにしてやろうと罠を張っている……そういう悪意は、今のところ見えなかった。


//遅くなりましたが、よろしくおねがいします!
//それと特に不都合がなければなのですが、パー速の方に返していただけないでしょうか……?


795 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2017/08/04(金) 01:04:07 tcOEaHX.


>>795
「なんだよあんた…急に声掛けて来やがってよ…俺みたいな奴が言うのもなんだけどよ、正直怪しすぎるぜ」

自分を軽々と越す身長の男にも怖じけず、淡々と言い返す少年。
その一方で、自分に対して寄ってくるくだらない人間とは違う、「本物」の雰囲気を肌で感じていた。

彼自身、血を見たくて戦っている訳ではなく、結果としてその状況に引きずり込まれていて、ほぼ毎日、先程のように自分を倒して名を上げようとする者たちに追われていた。

「別に俺は血を見る為に戦ってんじゃねーんだ。悪かったな、他を当たってくれよ、じゃあな」

「本物」の雰囲気を全身で感じ、刺々しく言い返す。心中ではやっと巡り合えた相手ではあるが、気分が乗らないのか、足早にそこから去ろうとしていた。


//遅くなってしまって申し訳ないです!
//パー速に書き込んだのですが、レスが吸い込まれてしまったのでこちらで…


796 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2017/08/04(金) 01:05:03 tcOEaHX.
>>795
「なんだよあんた…急に声掛けて来やがってよ…俺みたいな奴が言うのもなんだけどよ、正直怪しすぎるぜ」

自分を軽々と越す身長の男にも怖じけず、淡々と言い返す少年。
その一方で、自分に対して寄ってくるくだらない人間とは違う、「本物」の雰囲気を肌で感じていた。

彼自身、血を見たくて戦っている訳ではなく、結果としてその状況に引きずり込まれていて、ほぼ毎日、先程のように自分を倒して名を上げようとする者たちに追われていた。

「別に俺は血を見る為に戦ってんじゃねーんだ。悪かったな、他を当たってくれよ、じゃあな」

「本物」の雰囲気を全身で感じ、刺々しく言い返す。心中ではやっと巡り合えた相手ではあるが、気分が乗らないのか、足早にそこから去ろうとしていた。

//返信が遅くなってしまって申し訳ないです!
//パー速に書き込んだのですが、レスが吸い込まれてしまったのでこちらで…


797 : 【硬傑侠雄】 :2017/08/04(金) 01:06:44 tcOEaHX.
>>796
//すいません、名前欄が消えていました…


798 : 【尽臓機鬼】 :2017/08/04(金) 01:29:40 DFsdVx/Y
>>796

少年の直感は正しいものだ。
なにせこの男は掛け値なしの本物である。表社会に出ていけない連中がうじゃうじゃしているこの街で、特級に“やばい”やつと言っていい。
そんな人間がこの街中においては特に違和感なく溶け込んでいるというのか何より恐ろしい事実であるが、そこに気付けた彼はまこと素晴らしい嗅覚の持ち主だ。

「まぁそんなに邪険にするなよ、何も殺りあおうって言ってるわけじゃないさ。それともアレか、声掛け事案が云々ってやつか? 近頃の世間もなかなか面白くなってきたよなぁ」

気ままに社会の在り方を揶揄するような発言をかます男はひたすら気安い。
その態度は友好的と言うべきだろう。彼が日ごろ相対している連中のように、あわよくば利用して甘い蜜を啜ってやろうというような……透けて見える悪意がないのは変わらない。
ただそれがどこまで続くか分からないのが怖いのだが……。この男の性格を知っている人間はごく少数。なぜならだいたい、彼に関わった者は死ぬかそれ以上の目に遭うからだ。

「俺は単に将来有望な若人へ、その輝かしい前途を祝してなにか御馳走してやりたくなっただけさ」

あと一緒に呑む相手を探してたってのもあるがなと、立ち去る少年の背を追って歩きながら言葉を投げかける。
ポケットに手を突っ込んで、ネオンにその身を照らされながら……その顔にはにやにやと笑顔が浮かんでいる。

「少年に優しくしてやるのは年長者の義務というだろう? 育ち盛りなら腹も減ってるんじゃねぇか? 今夜は財布を気にせず食えるぜ、どうだ嬉しくないか?」

自由勝手に話しかけるその口調はただただ面白がっているようにしか見えないし、事実その通りなのだろう。
身長に差があれば一歩の歩幅にも開きがある。ゆえに追いかけるその様子は余裕そのものであった。
本気で逃げ出すなら分からないが、少なくともこのままではこいつを引き離すことはできないだろうと思われる。


//大丈夫ですよー、そして了解しました!


799 : 【飛燕二式】 :2017/08/06(日) 01:14:30 OasNj7r6
パー速>>223
彼女が掴んだ足をすぐに返せなかった最大の理由は、構えの向き。
剣道の構えは必ず右足が前になる。この立ち方が染みついた右利きのリオが格闘勝負をしようとすると、どうしても左構えになる。
いわゆるコンバーデッドサウスポーという状態。この珍しいファイトスタイルが、格闘のプロから一瞬の困惑を勝ち取ったのだ。

正直言って、上半身の力では勝てるとは思ってなかった。
腕力だけなら道場の中だけでも自分より優れた剣士は数多くいた。
だが、だからこそ鍔競り合いの距離を技で制する心得も持てた。縮地による押し込みも初めての試みだったが脚力を鍛える自身の疑似能力ならば出来ると思い決行した。
肉を切らせて骨を断つ。居合の前提を無視し能動的に攻める以上リスクは付き物だ。

掴んでいた足を離すと彼女の顔の横に自身の足を置いて立ち膝の体勢になる。
寝技になれば返される。徒手空拳はあくまでも意表を突く策でありいつまでも通用すると思っていなかった。

此処からの戦闘は未知に近い。剣道にも居合道にも寝ている相手を斬るという状況想定は存在しないからだ。
しかし、無いからという理由で手心を加える余裕もない。こちらは3回縮地を使っている。いちいち仕切り直しをしていたらそのうち対策を取られる事は明白だ。
今現在自分が優位な事に違いなく、流れが来ている時には限界まで乗るのも戦いにおいて重要だと理解している。

「マウントとってもヒョードルみたいに寝たまま避けて殴ってくるかもしれねぇし、ファイターの土俵で戦う気はねぇぞ」

抜いた刀の柄と刃の中ほどの場所を持ち、彼女の首元にギロチンのように押し込もうとする。
それは最早居合ではなく、刀を用い実戦を突き詰めた制圧術だった。

相手が背中をバシバシと蹴り上げて来るが、自身も彼女の横に膝をつき両足と片膝の三点で支え、なおかつ重心が低い体勢である為、簡単には攻撃を中止するほど弾かれる事はない。何より寝たままでは威力が十分に伝わってこない。
いくら腕力で勝っていても刃を食い込ませて刀を止め続けるのは限界があろう。一瞬でも刃が触れれば、この試合はそこで終了である。

「これがアイツの師匠 ワイルドハントの実力ってな!」

手加減せず、敵の埒外かつ非情な選択を取り、ラフファイトを制す。これがリオ=レナードの、賞金稼ぎの戦い方だった。


800 : 【形意神拳】 :2017/08/06(日) 01:52:44 18N8YIQk
>>799

転がされると立ち技使いは脆い。
凡そ打撃技の9割9分は、片足或いは両足が地面に着いている事が前提で始まる。
例外に思える飛び蹴りなども、地を蹴って放つ前準備があるので御多分に漏れず。
おまけに体軸の要たる背骨を膝で制せられれば、身をうねらせて逃げることも出来ない。
何度背を蹴りあげても、磐石たる重心配置の前には悪足掻きてしかなく。
咄嗟に相手の手首を握って刃を遠ざけるが、じわじわと降ろされるそれはやがて迫り来る処刑器具の如し。
どれだけ腕力に自信があろうと、自分は文字通り腕だけの力、反面相手は体重を乗せるだけで幾らでも上から力を込められる。圧倒的不利。
まして万全でない左手をもおしての精一杯の抵抗は、最早健気を通り越して滑稽なほど。
歯を食いしばる目の前に男の膝、そして股下がある。

����急所を潰してやろうか。
荒い呼吸だけが耳に響く刹那、陰鬱な思考が脳裡を過る。
そう、正直なところここから切り返す術は決して皆無ではない。
だがそれは拳士のプライド以上に大事なもの����家族や恋人などを守るための闘い����よって死合い、戦争レベルの技術解禁を求められるもの。
則ち土俵が違う、約定を反故にすることになってしまう。故に、これ以上は削り合い。それこそ無為であり。

「��������……降参。」

悔しいが、本当に悔しいが。
拮抗しかけた腕から遂に力が抜け、冷たい刀身が首筋に触れる。
そして女の口から試合の終りが告げられた��������


801 : 【形意神拳】 :2017/08/06(日) 01:54:33 18N8YIQk
>>800
/すみません、非表示の部分は“ーーーー(ダッシュ)”です、念のため


802 : 【飛燕二式】 :2017/08/07(月) 22:03:13 g8iAGPC.
>>800
降参の声を聴いたなら、侍は黙って力を抜き納刀する。
先ほどまでの荒い攻撃性、普段の明るさとは裏腹に、勝っても喜ぶ所作を見せないのは道場という場所、試合という名目が、剣士が学んだ礼節を守らせていたからか。
態度には出さないが、勝利自体は喜ばしい物の筈。しかしその顔は、何処か物憂げである。

(見逃された……? いや、そうじゃない)
(仮にあの状態から何かしてこようとも…… 金的くらいなら当たってもどうにか逃れて戦況はイーブンだった……)

相手を倒してからの、初めての局面以前の問題。
そもそも、蹴りを掴んだ辺りから状態はおかしかった。
初めて実践した縮地を用いた寄り切り。前にも強化した脚力での格闘戦自体はした事はあるがそれは相手も剣士だった。
素手での格闘戦のエキスパートである彼女を相手に、『あまりに上手く決まりすぎている』。
彼女が、能力らしい能力を一つも使っていない事。それがどうも侍の中で引っ掛かっていた。

自分の「気」による縮地や居合のように、無窮の鍛錬が無能力者の武芸を能力と呼べる代物にまで昇華させる事はある。
彼女がその領域に至っているとするなら、その神髄を見ていない。
今のままでは技量、筋量ともに高い事は相違無いが本気になった能力者や自分には一歩劣ると判断せざるを得なかった。
時間にして非常に短い間に起きた制圧劇。はたから見れば侍の圧勝だが、能力の有無以前に負傷しいては当然の結果。

「……次はこうはいかない、だろ?」

一しきり考え終われば、いつもの顔に戻る。
自分の強さを証明し終えた彼は、退けた挑戦者に不適に笑ってみせた。

/大変遅くなりました! 申し訳ありません……


803 : 【形意神拳】 :2017/08/07(月) 22:37:54 9s4n8dMU
>>802

泊 梁山は無能力者である。
人間の限界まで鍛えた身体能力こそ持つものの、超常の異能を始め魔法、科学などにはヒトとして遠く及ばない。
身体操作法において、レナードの用いる氣とは相通じるところがあるが、彼のレベルのような縮地を再現するのは先ずもって難しいだろう。

今の試合ーー傷をおして無茶をすればもう少し食い下がれたかもしれない、だがその場合は手足の一、二本もがれる覚悟が必要だったろう。
またここが板張りでなくアスファルトの道路だったなら。彼が自分を持ち上げ叩きつけた時点で、もっと深刻なダメージを負っていた筈だ。
或いは、剣の間合いを阻害するような路地裏だったら。得物をもたない自分が有利だったかもしれない。
全てたらればの話だ。此処を試合場に選んだのは自分であり、全力を尽くして負けた。残るもの、遺恨はなにもない。けれども

「次は。負けない」

此方を見据える男の眼。半身を起こし、下からじっくり見詰め合う。
彼の買い被りもあるとしても、負けたままでは終わらないと。
立ち上がれば顎から透明な雫が伝い落ちる。
夏場の道場に冷房といった気の利いた装置はなく、半月ぶりに動き回った身体はじっとりと熱を帯びていた。
攻防を切り取って見れば、女の方は有効打は2発しか放っておらず、うち1つは空振りでもう1つは浅い当たり。にもかかわらず額や包帯、道着まで汗みずくだった。

口元を拭うと袖口に赤い染みが残る。彼の忠言も空しく、以前の戦いによる口内の傷が開いたらしい。うちつけた脇腹もずくりずくりとした熱い鈍痛に戻っている。
そうした痛みの分も勿論あろうが、たったそれだけの攻防に、女がどれだけの意思を込めていたか。或いは汗の量で感じ取れるだろう。
しかしてそれは決して不快ではなく、逆に一種の爽やかさを齎していた。久方ぶりに味わう全力で身体を動かす快感は、痛みや疲労を差し引いても何物にも代えがたい。

とはいえ今日はもう満ち足りた気分だ。
ふぅ、と吐息混じりに、壁際にあったタオル一組、その片方を彼に差し出す。
清潔に保たれたそれでうなじを拭いながら一言

「まだ。結構余裕そう、だね」

皮肉ではない、男は終始ゆとりをもって闘っていた。
見た目での判断になるが、この歳でこの精神力は道場の稽古だけで培われた物ではないだろう。
そこでふと、口元に手をやる。何かを思いついたというように。
彼の、その強さ或いは役割に関わる物事のようであるがーー

/いえいえ、お気になさらず


804 : 【殴蹴壊則】【飛燕二式】【鐵蠍尾獣】 :2017/08/07(月) 23:24:42 g8iAGPC.
>>803
「賞金稼ぎは体力勝負だからな」

そうは言っても、リオ=レナードはスプリンター寄りのスタイルだ。
縮地も最高速度を維持するには限界があり、長期戦をするには気の源である呼吸を整える時間を挟む必要がある。
一撃でも攻撃を受ければ、耐える事は出来ても呼吸を乱され縮地の試行回数に影響してしまう。
故に慎重に、後の先を取り続ける必要がある。
第二ラウンドが出来る余裕がある訳ではない。

「猪やら熊やら、俺もメルヴィンも最近はそんなのばっか山で相手してるからな」
「山じゃ移動にも結構体力使うし」

タオルを受け取る。しかしあまり汗はかいていなかった。短期決戦だったのが最大の理由だが他にもある。
ワイルドハントの本拠地は自然の多い別荘地から少し外れた山の上にある。
原始的だが、相手には不足しない山という環境。道場、市街地よりも厳しい其処での鍛錬は少しだが役に立っている。

「次は俺ももっと強くなってるけどな」

例え腕が治っても。本気を出されても。能力の領域に到達しようとも。
負けるつもりは一切ない。
手負いでこれだけやれるなら戦うのはいいが、殺すのは流石に惜しい。居合の速度を殺さない木刀でも探してみようか……
タオルで顔を軽くふき終えると、彼女が何かを考えこんでいる事に気づいた。

「どした? リョーザン」


805 : 【形意神拳】 :2017/08/07(月) 23:42:06 9s4n8dMU
>>804

「うん。 れなーども、賞金稼ぎのひと。なんだよね」

確認というより前置きの言葉。
彼自身が述べたところによりそれは間違いない。
すなわちそれは腕っぷしで金を集める骨太な稼業。
山、という単語も出てきた。ならば山歩きにも慣れているだろう。
これはーーーー適任かもしれない。
促されて目線を持ち上げる。


「……お願いがある。んだけど」

仕事ーーーーと呼べるのか甚だ怪しいが。彼の腕を見込んでの依頼。
闘いの場でもないのに真剣な眼差しは、つまりはそれに準ずる内容であるのか。
やや緊張の色があるのは、断られたときの想像をしているからだろう。
とはいえこのようにぶしつけな話では拒否されても何ら不思議ではないが。
胸に手をあて相手の言葉を待つ。


/メタな話をすれば、了承を貰った場合プチイベント的な内容に持ち込もうと考えているのですが
/もういいや……、と思われたら、キャラかこちらで断ってもらえれば、適当に話を転換します


806 : 【飛燕二式】 :2017/08/08(火) 00:04:12 xlxtm9uQ
>>805
仕事。そう言われれば断る理由が無い。
ワイルドハントは絶賛売り出し中。実績を重ねたい時期である。

「言ってみな」

困っている人を見過ごさない。誰かの為ではない。
こんな時代、こんな場所で「強くなる」という錯誤した目標を掲げる以上、それは還元されるべきだからだ。
自分はまだ、何かを捨てる選択が出来るほど強くない。
自分が信じた物の為に世界を敵に回すには、自分は未熟過ぎる。

「メルヴィンはキレるかもしれねぇが、俺達は警察じゃない」
「多少なら汚い事でもやる、だが一つだけ聞きたい」

「それは? 自分じゃ出来ない事なのか?」

手負いのリョーザンを能力者に劣ると評価したが、それでも一般人よりは強いだろう。
標的がいるなら、不意打ち、服毒、禁じ手など手段を選ばなければどうにかなるくらいには地力もある。

ともあれ、聞かない事には始まらなかった。

/構いませんよー


807 : 【形意神拳】 :2017/08/08(火) 18:59:04 19ezTFt6
>>806

「れなーどなら、そう言ってくれると思った。ただーー
期待されるようなものじゃ。ないと思う……」

ありがと、と呟きながら言いにくげな牽制。眉毛が八の字に垂れる。
と言うのも、男の顔を見るに大方物騒な思考を巡らせているようだが(とそれより彼の中での梁山の人物像が非常に気になる所だ)。
彼が気負うような、遣り甲斐のある仕事かと訊かれれば、首をかしげざるをえない内容ゆえに。

「もうすぐお盆。でしょ。
その時。お墓参りについてきて、ほしい」

言葉だけ聞けば何て事はない話。だが場所が問題で。
曰く、険しい山崖を切り拓いた地点にその墓地はあるのだという。
この案件においては賞金首が対象でも、強さ弱さだけが問題でもない。実力と経験、山での活動に慣れている人材で他に心当りが浮かばなかったのだ。
元来友人の少ない女にとってこの巡り合わせは、絶好の機会と感じられたのだが。

「獣とか、山賊とか。たまに出るから……」

武術家にとって己の実力を正確に推し測る事は重要だ。
普段ならその程度、幾ら来ようがものの数ではないのだけれど。情けない話だが、客観的に見て現段階の回復率では道中心許ないと感じた。
他に、まだ言葉にこそしないが通常の墓参り以外の目的もあるがゆえに。つまらないプライドより実をとらんと云う結論。
しかし全ては彼次第である。さっきは二つ返事だったが、話を聞いたら改めて断られるかも、と恐々首をすくめる。


808 : 【飛燕二式】 :2017/08/08(火) 21:20:11 xlxtm9uQ
>>807
「……え?」

賞金稼ぎに依頼となれば、荒事ないし仕事人が持つ情報網を利用する仕事と思うのが当然。
そういう仕事を呼び込む為に賞金稼ぎになった訳で、少々拍子抜けする依頼だった。

「盆か…… もうそんな時期だったな、いいぜ、任された」

盆休みという風習が無い合衆国出身だが、帝國暮らしが長いため当然知っている。
自分達の先祖の墓は無いので何もしないが、「故人を偲ぶ」という風習は理解できる。
いや、精神的な物の在り方は完全に理解していないかもしれないが家族を大切にするというのは世界共通の考え方の筈だ。

専門的な山の知識がある訳ではないが、日頃から山で過ごす事もあるため感覚的に理解している事もある。
仕事と呼ぶには物足りないし気乗りする類ではないが、梁山が手負いのまま賊に捕まるというのは面白くない。
彼女には次に万全の状態で挑んできてもらうつもりなのだから。

「こんな仕事じゃ宣伝にもならねぇし、この道場じゃあ大した金にもならなそうだしな」
「初回サービスって事で、無料(ロハ)でいいぜ」

ワイルドハントは金欠ギルドだが、つい先日スポンサーというか纏まった活動資金を手に入れたばかりであった。
仲間に還元するためお金は必要なのだが、レナード自身は金の為にしている仕事ではない。
格好つけて言ったが、元から受けるかどうかは気分次第だったのである。


809 : 【形意神拳】 :2017/08/08(火) 21:53:34 os8DB34Q
>>808

今にも断られるのではと内心冷や汗ものだったが、その憂いは呆気なく解消された。
見るからに表情が明るくなる女。

「……助かる。ありがと」

金銭の話については少し躊躇った結果、素直に頷いておく。
彼の言い分に納得したわけではないが、向こうから引いてくれたのだから此方の無駄な拘りで、何も波風を立たせる事もあるまいと。

「んーー、5日後に駅前で。
細かい話は、後でいいかな」

もっと色々話したいし訊きたかったが、壁の時計を見るとお昼も大分過ぎている。
無断で抜け出してきた常習犯の自分はともかく、彼も何らかの用事であの場に居たのだろうし。
仮退院などの手続き等も考慮して、一先ず手近なメモ用紙にこの家の番号を渡し。2、3日後にでも掛けてほしい、打合せはその時にと。
そう宣言しこの場は一旦お開きとすることで、一応の決着を得るだろう。


ーーーーーーーー

5日後、駅前。
辺りがうっすら白みはじめ、始発列車が位置につく頃。
病衣でも道着でもなく、厚手のジーパンにチェックの長袖シャツ、革の軍用ブーツに野球帽といった男性チックな格好。
背中に膨らんだリュックを背負っていることから、きちんと準備を整えて来たのが分かるが、これでは色気も何もあったものではない。
包帯も一時に比べれば大分減ったが完全にではなく。
携帯電話を持たないので暇潰しや連絡もできない。
手持ち無沙汰に、待ち合わせ場所の辺りをうろうろぶらつく。
さて待ち人は現れるのか。


810 : 【飛燕二式】 :2017/08/08(火) 22:52:21 xlxtm9uQ
>>809
「OK、一応連絡先……」

連絡先を聞こうと思い携帯を取り出したら、非通知の着信が複数件来ている。
自分が本屋で約束をしていた相手の事を思い出し、顔面蒼白。

「悪い! 人待たせてたの忘れてた!! じゃあまた!!」

急いで道場を出て、来た道を戻っていく。

――――――――――――――――――

「待たせた」

五日後、少し遅れて侍が到着した。
いつもと服装は変わらないが、リュックサックを背負っている。
武道家の墓参りと聞いて滝行なんかが出来そうな山の深い森をイメージした為、ちゃんとした荷物を持つことにした。
もともと山荘を改築したワイルドハントのように、途中まで舗装された道路があればバイクを使うのだが、手を怪我している梁山は後ろでしがみ付くのも長く持たないと考え駅に置いていく事にした。

「ボディーガードって意味なら、多分ワイルドハントで一番俺が向いてるから任しときな」
「じゃあ案内頼む」


811 : 【形意神拳】 :2017/08/08(火) 23:31:43 os8DB34Q
>>810

彼が無事現れたことに安堵する。
服装や荷物を見るに、目的も過たず伝わったようだ。
バイクがあるとは知らなかったが、どのみちあまり行程は変わらないだろう。
行き先は遥か遠く、近くまでは公共交通機関で行けるが、麓からは完全に徒歩。
申し訳程度の石段が時折あるだけで、殆どが未舗装の獣道。つまりレナードの想像は悪い方で的中していた。
要らぬところで時間を食うと帰りが暗くなりかねない、だからこそ夜も開けきらぬうちからの出発となったのだ。

「しくよ……よろしく」

案内を促す彼に顎を引いて頷き、切符を差し出す。
見ての通り最初の移動は電車の予定。
駅に入れば、おりしもホームに滑り込んできたそれの先頭車両に二人で乗り込むだろう。

「仲間……? どんな人がいるの」

窓際の棚にはお茶のボトルが2本とコンビニのサンドイッチが二袋。
目的が違えばさながら小旅行じみた光景だが。
窓枠に頬杖ついて、ガラスに映る男の顔を眺める。

仕事を受ける際の効率化を図るために同好の士が集まってできた、というような話は前にメルヴィンから聞いたが、いまいち想像がつかない。
というより賞金稼ぎという人種がみな彼らのような輩なのか(良い意味で真面目さが際立つが)。
今の言葉のように、ボディガード役などそれぞれ専任の役割に特化しているのか。等々。気になることは山積み。
道中は長いが、梁山の普段の性格はお世辞にも会話向きとは言えず。折角なので興味がある方に水を向けてみる。


/すみません、今日はここで落ちます
/移動行程要らなければ、キンクリで飛ばしますので、ご遠慮なく


812 : 【飛燕二式】 :2017/08/09(水) 01:27:16 i2MkEfLY
>>811
お互い武の鍛錬に人生の大部分を捧げた身。世間とは何処かズレていて少々残念なご様子。
武術の話をすればいいものの、畑が違うのでそうもいかない。
電車の中では互いに車窓を眺めて(少なくともレナードは窓の奥の景色を見て)過ごしていた。
静寂を破ったのは、梁山の一声。

「んー… 大体が剣士だけど最近強化系の格闘家も加わったな… 電気の力で人間の限界くらいまで引き上げるヤツ」
「殆ど近接での身体使った切った張ったに主軸を置いた奴ばかりで普通の能力メインのタイプは一人しかいねぇ」

似た物同士だから、似たような事しか出来ない生粋の戦士が多いからこそ、負けず嫌いに拍車がかかる。
特に自分が気になっているのが格闘家。縮地以外の地の速度で上回られたのは彼が初めてで、彼との闘いは自分を成長させてくれる予感をしている。
その膂力は恐らくかなりの長い年月を鍛錬で費やした梁山に匹敵するだろう。なんとも能力とは理不尽な物である。

「アイツからどう聞いてるか知らねぇけど、そこまで高尚なモンでも無いしな…」

ワイルドハント自体がそもそも、リオ=レナードがより強い戦士になる為に、より大きく多くの敵と戦う為に作った寄り合い。
その強さは、義侠・武侠の為に振るうつもりでいる。必ずしも秩序の守り手であるとは言い切れない。

「そうだ、リョーザンはその…… 俺の縮地みたいな、疑似能力とかないのか?」

無窮の鍛錬によって開花する能力に劣らぬ奥義。それを自分は疑似能力と呼んでいる。
先の試合で梁山からそれらを見せなかったのは怪我故か、単純にそこに至らない格闘家なのか。
それを以前から考えていた。

/大丈夫ですよー 行程はお任せします―


813 : 【形意神拳】 :2017/08/09(水) 20:02:33 SvcESyAk
>>812

「うん。結構、淡白な組織だよね」

賞金稼ぎという仕事だけあって、文字通りの腕白揃いの曲者ばかりのよう。しかし仕事はきちんとこなしているのは昨今の記事を読めばおのずとうかがい知れる。
それを纏めるリーダーはさぞや心労が大変だろうと。この前の話と併せて、対岸の火事とばかりの適当な品評。やっぱり働くって大変なんだなあーーなんて。
目の前の男がその代表とは露知らず部外者且つ社会不適合者ならではの感想に内心を浸し、肩の力を抜くと聞き慣れない言葉が。

「縮地?」

なんのことかと、背凭れに身体を沈めつつ頭を捻る。
脳内で武芸に関する情報の引き出しを漁れば、先日試合で見た、彼の操る不可思議な歩法の事だと推測できた。
翻って己の術技を省みると、腕を組んで首を傾げる女。

「んー。ない、よ?」

武人強度としては弟子〜妙手の段階を超え、達者と呼ばれる領域に漸く足を踏み入れた梁山である。
形意拳を習い修め現在は独自の技を開発しているが、いまだ経験の不足からおいそれと実戦で使えるものではないために、世に名高い達人連中と比べると一歩二歩劣るのは否めない。
無我、トランス、返本還源。
流派や宗派により様々な言い方があるが、絶招使用に必須なその精神を戦闘中に構築出来るだけの修練は、未だ不完全だった。
才能の面でいえば、良くも悪くも並という結論故に先は長い。ーーーー才能と言えばだ。


「れなーどは、どうして剣を始めたの」

口下手でコミュ障、つっかえながら喋るのが常の梁山も、この手の武術話には食い付きが良く。彼の性格や口振りの気安さもあって話を聞いているだけでも十分楽しい。言葉遣いも当初よりは砕けてきたような気配もある。
自分より年下(こう見えて女は成人している)の彼がその若さで能力者に匹敵する腕前を誇るーー無論才能が必要不可欠というのを踏まえてーーそこに至る努力を支える“芯”は何なのか。
電車が幾度目かのトンネルに入る。暗がりを増した車内で、黒曜石のごとき眼が彼の方に動いたような気配がした。

窓の外は都会の見慣れた景色から、農村の田畑を越え、徐々に木々の繁りが増えていく。
トンネルを抜ければ、外は夏の日差しが眩しい朝晴れ。ブラインドを半分下ろし、彼にサンドイッチと飲み物を差し出す。
そろそろ朝飯の時間。目の前には緑茶か紅茶、タマゴサラダかハムチーズの二種類。どちらか選べということらしい。


814 : 【飛燕二式】 :2017/08/09(水) 22:26:34 i2MkEfLY
>>813
「まだ大勢でやるような仕事もきてねぇからな」

仕事があったら教えてくれ、それくらいにしか考えていないメンバーもいる。
確かにドライかもしれない。仲間同士の親睦会も企画しているのでもう少し改善できればいいと思う。

(確かに、そういう技が無くても一応どうにかなるのか……? いや、だが……)

易々と今の領域に到達した訳では無いが、縮地自体は半年で扱えた自分の感覚では、ただ達人というだけでは能力者に劣る。
達人且つ能力を持つ者もいる。彼ら人の域を超えた存在に勝つ為に無能力者は人間を極める他無い。

「到達のヒントになるか解らねぇけど、縮地教えてやろうか?」

メルヴィンと比べれば、才は間違いなく彼女が上。
縮地を教えればメルヴィン以上の距離、五歩か六歩なら使えそうなセンスを放っておくのは勿体ないと感じる。
彼女が形意拳という個性の持ち主だとは知る由も無く、強い意思を持つ人にお節介を焼く癖があった。

こんな感じに戦う相手にばかり興味が先行するので、梁山に自分の事を聞かれると一瞬止まり、少々考え込む。
前にも聞かれた事があったが、その時にも説明すると長くなったのを覚えている。

「Uh… 剣を始めたのは8歳の頃だったな…」

最初は嫌々やっていた。父の趣味に同行した時に偉そうな道場主に勝負を挑んだらボコボコにされて、根性を叩き直すという理由で稽古に付き合わされたのが初めて剣を握った瞬間。
それでも性根は治らず。リベンジマッチを所望してボコボコにされて、稽古に連行される繰り返し。
続ける事ひと月。相変わらずボコボコにされるものの一撃は当てられるようになった。それに手応えを感じ、また道場の他の人間が絶賛してくれた事が気持ちよく、流れで続ける事になり現在に至る。
特に宿命や家業、羨望などのない特別な事もない話である。

「リョーザンは、やっぱり家がそういうのだからか?」

自分の通う道場もそうだが、流派を後世に残すという使命の前には、性別など関係無いようだ。
ハムチーズと緑茶を有難く頂き、彼女の答えを待つ。


815 : 【形意神拳】 :2017/08/09(水) 23:28:15 Xewqmvdk
>>814

確かに、無能力者は異能という個性がない分能力者に劣るのは紛れもない事実。
だが、なまじ頼るべき個性がないだけに、ヒトという存在の可能性をひたすらにじっくり追究し続ける事が出来るのは、また別の個性とも言えはしないだろうか。
どこまで登れるかは自分次第、そしてそれを望む女の前に、探究への鍵が一つ差し出される。

「ん、お願いします」

ならばその提案には一も二もなく頭を下げる他ない。
表情こそ引き結んだ口のまま眉を上げた位だが内心では、背凭れから身を起こし腰を浮かせる程には驚き、いや喜んでいた。照れや羞恥心の少ない子供の頃ならば彼に抱きついていたかもしれない。
勝ち負けに拘る以上強さには貪欲である。剣と拳、使う得物は異なろうともそこはレナードと共通する性質だった。
もう一つ彼の性質ーーそこに思いを馳せて、ふと目を閉じる。

楽しむ事が出来る人間は強い。
武道に限らずスポーツや勉学でも、遣らされるより自ら親しんでいく者の向上が著しいのは世に周知の事実だ。その身近な最たる例が、目の前で座ってハムチーズサンドを噛んでいる。
その彼に水を向けられ幼少の記憶を遡れば、うっすら口元に笑みが零れた。

「一人っ子。だったから……」

しようがないと言うような口調でタマゴサンドを齧る。しかしそこに忌避や嫌悪感というマイナスの色はなく。
言葉こそアレだが、考えてみれば修行を強要された記憶は無いように思う。
ヨチヨチ歩きの頃、父と祖父が大粒の汗をかきながら苦しげに、しかし何処か楽しげに鍛練を積んでいるのを見、傍で見よう見まねの型打ちを始めたのが最も古い記憶。
母の温もりを知らぬ女にとって家族との団欒は站椿であり、会話は推手であった。
以来それを二十余年繰り返し、ふと気が付くと。
家を継ぐーーーーその小さくとも固い意志が、当然のようにころりと胸の中で転がっていた。

まあ、引き換えに友人ほぼ絶無、人好きのしない、社会不適合者(ニート)の烙印をも背負うことになったが。
それは只々己の認識不足。家柄には関係なく。
その関係、家系、系譜。
自らに流れる血の興りを、今年もまた確かめにいく。


「ーーーーあ。あの山だよ」

急角度に伸び上がる山嶺。
窓越しに弾みを押さえきれない声で指差すのは、深緑生い茂る千年変わらぬ太古の霊峰である。
断崖にへばりつくようにして建つ寺を尻目に、電車は徐々に速度を落とし始めたよう。
胃の中へサンドイッチの残りを紅茶で流し込みながら、ぼちぼち降車準備を促すだろう。
前置きが長いが、ここから二人の長い一日が始まるのだ。


816 : 【形意神拳】 :2017/08/10(木) 00:16:55 B6NOKiHs
>>814
/すみません、今日はこれで落ちます
/また明日、よろしくお願いします


817 : 【飛燕二式】 :2017/08/10(木) 01:27:33 NCsmCibg
>>815
「じゃ、今度な」

道場に通う児童にも剣を教える事があるので、参考用に携帯に足元の動画を撮っているのだが梁山が携帯を持って無さそうなのでそれは中止。
今度ワイルドハントに来てもらうか道場に出向いて教える事にしよう。
自分より距離で劣るだろうが瞬間的に歩を詰めるというのは能力者相手にも有用だろう。特に梁山の格闘技術があれば上手く使ってくれると思う。

「ドージョーを守るって言うの、大変なのは少し解るぜ」

学んだ巳桐不動流を使い賞金稼ぎになった。その時は何も感じなかったが、初めて敗北を経験して、流派を背負い戦うという意味を少し学んだ気がする。
勝てぬ流派は、その価値を地に落とす。自分はまだ門下生という立場だから責任も重大では無かったが、実子である梁山には相応に責任もあっただろう。
しかし、それが悪い事だとは思わない。夢中になれたからこそだから、それは梁山もそう思っているだろう。

生意気で不遜。帝國文化を全面的に見下していた合衆国人の少年。そんな当時のリオ少年は幸運にも兄弟子に恵まれていた。
厳しい人、優しい人、あっさり追い抜いてしまった剣の先輩である父、道場主の孫娘で共に錬磨した好敵手。思春期を剣に費やした結果、少年から青年になる過程を十分に経られず子供らしい単純さが残ってしまった。

「―――デケェな」

ワイルドハントの本拠地がある山は、なんだかんだ言って避暑地の近辺なので人の手が途中まで行き届いていた。
だが目に見えるのはとてもそんな様子ではない。オフロードバイクではない愛車を置いて行ったのは正解だったようだ。
本拠地の山で奥に入り過ぎて帰り道が解らなくなった時は最後の手段として『その辺の木ぶった切って年輪見れば方角が解る』というかなり乱暴なやり方で帰り道を探っているがそれが躊躇われるような立派な自然だった。

/わかりました、お休みなさいです


818 : 【形意神拳】 :2017/08/10(木) 20:16:53 SVCZfzOY
>>817

「ん。
まずは私が、強くならないと。ね」

慰めのような言葉に、感謝の意味で右の拳を作ってみせる。眼差しはやや陰りがあるか。
仮であろうと、当主の負ける流派に人気など求められるものではない。
この数年道場は常に家族三人きり。内弟子外弟子皆無の現状を見ればその未来は容易に判断がつく。
外を歩けばナイフが奔り、路地を往けばギャングが撃ち合う安易で物騒なご時世に、身一つでの護身など人気がないのも頷けるが。
女の対人スキルの低さも不景気に拍車を掛けている一因だろう。
継承は出来ても系譜の断絶、梁山を最期に泊流の消滅はそう遠くなさそうである。

ーーーー等という暗い思考はここで捨ていこう。暗い顔で御先祖様にお伺いするなど言語道断。
頭を切り替えて、停止した扉の前に立ち男を呼ぶ。

「降りよっか。」

冷房の利いた車内から一足踏み出せば、日の出とともに上がり始めた気温がむわと肌にまとわり付く。
目前に広がるのは背の高い、密林と称してもよい森林群。
ここを抜けるのは骨が折れると、素人目にも用意に判断出来よう。

「だいじょうぶーー。 毎年使ってる道が。ある」

だが無問題、びしとサムズアップ。
人気の絶えた古い駅舎を横目に、女は迂回するかの如く駅から大きく逸れて歩いていく。
線路脇の草原で腿を取られること十数分。

「ここから、登るよ」

こっちこっちと手招きする傍は、よりによって、最も急角度な斜面であった。
落石注意の看板に過たず、大小の岩がごろごろと散見される一帯。
見上げる壁面はオーバーハングと見まごう程の、首が痛くなる聳えかただ。
ブーツの底の固さを確かめ、とんとんと爪先て地を叩く。平たい石が多い場所を選び、ひょいひょいと斜面を踏み始めた。
いきなり面食らうかもしれないが、山登りに慣れた、まして足腰を鍛えている武芸者ならまだ低難易度といえよう。
足を滑らせさえなければ、それこそ飛び石のように女のあとをついていくことも容易いはずである。


/すみません、お盆の帰省の仕度がありまして、今夜はこれしかお返しできなさそうです……
/お盆休み中は不規則な返信になってしまいます、重ねて申し訳ありません


819 : 【飛燕二式】 :2017/08/10(木) 23:51:54 NCsmCibg
>>818
「そっか、それなら大丈――」

獣道ですらない。
彼女が利用したという去年から誰も利用していない為真っすぐちゃんと草が伸びている道
(?)を進んでいく。
そこを抜けると付いた先は――行き止まりだった。

「おいおい…… こっからどうやって…… Oh my god…」

急な斜面、というより壁と表現した方が適切な岩肌。
それを登り始める梁山。
市街地を狩場にする賞金稼ぎには当然無縁のため、やった事は無い。
流石に反り立っていたら挑戦する気も起きなかっただろう。

気を脚部に集中させる。
縮地に利用する以外にも常時軽度の強化状態を維持するという利用法もある。
縮地無しのこの状態で総合的に見て達人相当の身体能力というのがレナードのスペック。
気の操作でそれ以上のパフォーマンス発揮するとは言っても、素の筋肉量では梁山やメルヴィンに及ばない。
時折呼吸を整える為に止まりながら、後を付いていく。

(このルートで賊は遭わねぇだろ……)

未経験だが元々器用で運動神経は恵まれていたレナードは動きこそ止まりながらだが足を踏み外すような事もなく安定して登れている。
何か騙されたような……他事を考える余裕も出てきた。

/わかりました。お気になさらず


820 : 【天械御子】 :2017/08/14(月) 23:16:36 KcSCNnK.

「友の信念に免じて、見逃してやるわ、人間。」

青白く変色した男に向かって、白金色の翼を持った少女は言い放った。
遠くに見える教会の鐘楼から、鐘の音が鳴り響いていた。
少女の言葉に共鳴して強く響き渡った鐘の音は、とても弱っていた男を屈服させるのには十分だった。
噴水のある公園から男は、ぼろぼろに焼け焦げた背広を羽織り直してよろよろと逃げていった。

事の発端は、些細な事だ。しかし少女にとっては、とても大きな事だった。
 ―― 野良の黒猫の尻尾を、男は誤って踏みつけてしまった。
それを少女は見ていた。そして詰め寄り、叱責を浴びせ、男は反論をし脅かそうと腕を振り上げたものだから、
かえって逆に彼女の逆鱗に触れた。

結果はこの有様。彼女にとってはよくある事だったが、最近変わったのは、相手の心臓が動いているということ。

さて、ともあれこれで黒猫は解放された。少女は黒猫にこの場から去るように手で示して促した。
だが黒猫は、むしろ少女の足元に擦り寄って、離れなくなってしまった。
彼女は困った表情を浮かべる。

「ちょっと……いつまでも構ってあげられないのよ。」

とはいえ、猫に擦り寄られるというのは、思わず口元が緩んでしまうのだった。


821 : 【天械御子】 :2017/08/14(月) 23:17:08 KcSCNnK.
>>820
/ひとまちです


822 : 【霧吹乃面】 :2017/08/14(月) 23:26:28 zdrtPazU
>>820
鐘の音に紛れ、音も無く。
舞い降りるのは何も天使だけの特権では無い。

其れは気付かなければ背後にそっと現れる。

「随分ト懐カレテイルナ。」

男とも女とも取れない無機質な声。
中折れ帽とロングコートを纏った其れは笑い顔にも似た紋様の鉄仮面を覗かせる。

敵意や害意は放っていないが、どう取るのかは相手次第。

だがどちらにしようともこの仮面は笑って言うだろう。

――愉快だと。


823 : 【天械御子】 :2017/08/14(月) 23:44:41 KcSCNnK.
>>822

何時の間にか ―― 本当に気が付かなかった ―― そこに立っていたもの。
突然何もないはずの空間から声が聞こえたと思って、肩を跳ねて驚き、ゆっくりと視線を向ける。
奇妙な仮面を付けた相手の姿を見て、不気味だと思った。

「なに?
 何か用かしら?」

睨み付けるような鋭い視線を差し向けた。
彼女にも猫のような毛があれば、逆立てていたに違いない。

「言っておくけど、私は人間に優しくしないわよ。」


824 : 【霧吹乃面】 :2017/08/15(火) 00:02:47 P7VSwC1E
>>823
不気味、そう不気味なのだ。
音も無く現れる仮面の人影など。

意図したものだ、そうでなくては困る。

「何用カカ、ソウダナ。」
「我モ故アッテ猫ガ好キナノデナ。」

其れはくつくつと笑っている様だ。

「先程カラノ其方ノ行動ヲ眺メテイテ。」
「チョッカイヲ掛ケタクナッタ。」

「其レダケダ。」

笑っている。
逆にそれ以外の感情を読みづらい、読めない。

酷く不気味な仮面の影。

「アア、其レナラバ問題無イナ。」
「我ハ人ニハ非ザルモノ故。」

幾何学の曲線は笑みにも似ているが、鉄の仮面は何の表情も映さない。
そして其れは人には非じと嘯くのであった


825 : 【天械御子】 :2017/08/15(火) 00:10:13 MVMYvEjI
>>824

相手の意図が読めない、というのが率直な感想だった。
ちょっかいを掛けたくなっただけ。訝し気に睨む眉間に、余計にしわが深く刻まれる。

「わかった、狂ったロボットね。」

深く考え込むわけでもなく、思いついたままを言った。
黒猫が自分に飽きてこの場から離れるまでは付き合うが、それまでだと考えていた。
猫がいなければ直ぐにでも空に飛び立っていたかもしれない。

「じゃあ私の方が先輩よ、そして先輩命令よ、気味が悪いから黙りなさい。」

黒猫が少女の足の入り、鉄仮面を見上げた。
その黒猫もまた、好奇心のままに、じっと、視ている。


826 : 【霧吹乃面】 :2017/08/15(火) 00:21:20 P7VSwC1E
>>825

――狂ったロボットね。

「機械人形ノ事ヲ指シテ居ルノナラ、違ウト答エヨウ。」

口調は相変わらずで、少女や猫の警戒も気にしていない様子。

「ソシテ在ッタ年月ヲ問ウノデアラバ恐ラク我ノ方ガ先輩ダ。」

それこそ揶揄う様な調子で語る。

「気味ガ悪イノハ当然ノ事。」
「云ワバ我ハ"化ケ物"ナノデナ。」

ふわりと首が胴を離れて宙に浮く。

其れは薄朱色の煙を吐き出しながら一回転をし、
元の場所へと戻った。

元より驚かすのが主体の化け物だ。
或いは猫も驚いて逃げてしまうだろうか。


827 : 【天械御子】 :2017/08/15(火) 00:43:40 MVMYvEjI
>>826

相手の首が離れた瞬間、片足を後ろに引き、細い白金色の骨のような翼を広げる。
猫は驚いて逃げてしまった。鳴き声だけを残して、暗闇の向こう側へ。
翼からは極彩色の如き眩い光のエネルギー流が迸る。
にゃあ、にゃあ。声だけが鳴っている。仮面と天使が向き合う。

そして相手の仮面がもとに戻ったのを見ても、その視線を崩さない。

「私を驚かして、楽しむのが、趣味なわけ?」

猫はいない。闇だけがある。そしてあなたと私。
邪魔なものを焼き尽くしてきた光は、それらを呑み込む事ができると信じている。
問題は、今それを使うべきか否かということ、だけ。

「ふざけるのも大概にしないと、痛い目を見させるわよ。
 目的を吐きなさい。さもないと、その仮面を焼いてやる。」


828 : 【霧吹乃面】 :2017/08/15(火) 01:01:00 P7VSwC1E
>>827
天使は白金の翼を広げ、光の羽を迸らせる。

猫は闇に去り、残った影は二つきり。

「驚カスノガ趣味カト言ワレレバソウダト答エルノダガ。」
「聞キタイノハソウ云ウ事デハナカロウ?」

或いは鉄の仮面も焼き切る事が出来るであろう光の翼を見ても、
其れの調子は相変わらずの様で。

「目的ナ、我ハ仲間ヲ探シテイルノダヨ。」
「人非ザルモノノ仲間ヲ。」

笑っていない、仮面もそれなりに真面目な問い掛けなのだろう。

「故ニ問ウノダ銀ノ翼ヲ持ツ者ヨ。」
「オ主ハ人間カ、其レニ非ジカ。」

人間が嫌いだと少女は言っていた。
機械ならば自分が先輩だとも。

だから仮面は問い掛ける。
彼女は人かそうでは無いかを。

仮面が問うのは実体としての種族では無い。
精神の、心の在り方の話だ。

まあ、それが伝わるかどうかは別として。


829 : 【霧吹乃面】 :2017/08/15(火) 01:27:25 P7VSwC1E
>>828
/すみません、今日はおちます
/明日昼頃にお返しできると思います


830 : 【天械御子】 :2017/08/15(火) 01:28:55 MVMYvEjI
>>828

「仲間、だと。」

その言葉は今までに何度かの機会に聞いたことがある。自分の心を揺さぶる、鋭利な言葉だ。
彼女は今までずっと独りだった ―― だが、何度も、何度も、彼女に手を差し伸べる影があった。
なるほど、なるほど、深層学習はこのようにして成る。

「私は人間ではない。
 わかるかしら、だけどそれは、人間が決めた事なのよ。」

造物主は何をもってそれを作るだろうか。
人間を作る目的で作られていたならば、このような姿にはならなかっただろう。

「この体は人間よ。この髪の毛、この瞳、この歯、これは人間よ。
 でもこの"私"は、"私"。」

このような、寄生虫のような。

「……言っておくけど、こう見えて私には持ち主がいるのよ。
 最近、力づくで、という経緯だけれど。」

そういう割には、憎く思うような口ぶりではない。

「私は仲間なんて言葉、嫌いよ。だから今は、今は、ノーと言うわ。」


831 : 【天械御子】 :2017/08/15(火) 01:29:21 MVMYvEjI
>>829
/了解ですっ。おやすみなさい。ご都合のいいときに


832 : 【霧吹乃面】 :2017/08/15(火) 13:52:48 P7VSwC1E
>>830

「随分ト難儀ナ在リヨウヨナ。」
「オ主ガ"オ主"デアルナラ其レデ良イダロウニ。」

そして少女に持ち主が居ることと問いに対する答えを聞き。

「ソウカ、マア仕方アルマイ。」
「トモアレ帰ル場所ガ在ルナラ良イ事ダ。」

「モウ我カラ言ウ事ハ何モナイ。」
「シカト驚カセル事モ出来タノデナ。」

くつくつと笑い仮面の影はふわりと宙に浮かぶ。

「銀翼ノ者ヨ。其方カラハ何カアルカ?」

特に呼び止める事もなければこの場から消えようという意思表示。


833 : 【天械御子】 :2017/08/15(火) 15:06:48 MVMYvEjI
>>832

「結局、驚かせたいだけじゃない。」

翼からは光が失せ、綺麗に背中の影に折り畳まれた。
風に揺れる髪の毛は、抵抗の様子を見せなかった。

「別に、何も。」

噴水のふちに腰を下ろして、欠伸をする。

「ただ、次は驚かさないでよね。
 反射的に焼いちゃっても私は責任取らないから。」

勢い余って焼き殺したことがあるのか ―― それは聞かない方がいいだろう。
何せ彼女は人間ではないのだから、人間のようにはいかないのだからだ。
そういう時もある。
こういう時もある。


834 : 【霧吹乃面】 :2017/08/15(火) 15:25:28 P7VSwC1E
>>833
彼女が過去に人を焼き殺したかなど仮面は問うまい。
人に非ざればある種当然の摂理だ。

「フム、ソウスルトシヨウ。」

いよいよ上昇する速度も上がっていき。
ふと、ぴたと止まり。

「最後ニ名乗リデモ上ゲテオコウカ。」

「我ガ名ハ"キリコ"。」
「【人外屋敷】ノ仮面、"キリコ"ダ。」
「覚エテオクガヨイ。」

帽子を取って空中で一礼。

相手も名乗る様であれば暫しその場に残るだろうし、
そうで無いならそのまま闇空へと消え去っていくだろう。


835 : 【天械御子】 :2017/08/15(火) 17:00:53 MVMYvEjI
>>834

「前だったら、名乗るなんて気取った真似、しなかったんだけど。」

前髪を顔の前に下ろして、両手で何度も梳かしながら、彼女はこう名乗る。
 コウエン
「"光燕"、それが名前よ。」

誰かに名前を名乗るのは実際初めてだった。
なるほど、なるほど、これも学習。
しかし奇妙な仮面の人外にすら、名乗る時の表情を見られたくなかったのか、
その顔は自分の髪の毛で隠れてしまっていた。

「一応、覚えておいてあげる。
 じゃあね、キリコ。」

 ―― 教会の鐘の音が、また鳴った。そのような晩。


/ここで〆って感じでしょうかっ。
/ありがとうございました。無愛想ちゃんですみません…。私は次が楽しみな感じになれたので、またよければお願いします。


836 : 【霧吹乃面】 :2017/08/15(火) 17:17:57 P7VSwC1E
>>835

「ヲホホ。デハナ光燕殿ヨ。」
「汝トソノ主ニ幸アランコトヲ。」

なんて怪異は鐘の音に引きずられたのかまるで牧師の様に。
不気味な姿にまったく似合ってなどいないのだが。

白金翼の天使の行く末にささやかに幸福あれと。

不気味にも子気味の良い笑い声を木霊させて闇空へと消えて行った。


/お相手ありがとうございました&乙でした
/はい、また機会があればお願いします


837 : 【形意神拳】 :2017/08/22(火) 00:55:31 sfjkCiPM
>>819

梁山の肉体は凡人の其れとは一線を画す
外観の器こそ平凡な人間ながら、人生の大半を注ぎ込んで鍛えた身体は野生に近く。
戦闘だけでなく、山籠りを始めとした日々の鍛練の負荷を受け止めてきた筋骨。それの鈍磨/損傷具合を、レーサーがスーパーマシンのエンジンを試すが如く、調子を確かめていく。
軽くアクセルを吹かし、徐々にギアを高スロットルへ。

登りながら次第に勢いを増す跫。
た、たた、がと、とと、になり
かん、かんっと見るまに軽快さが伸び上がっていく。
斜面を昇降する羚羊の如く、爪先で削った丸い足跡を残して。
一跳びで垂直に2m跳躍したと思えば
平坦な場所を見つけ、くるり片手倒立。

「おっと。危ない」

シャツから捲れそうなおヘソを左手で押さえ清廉を保つ。
足を岩肌に戻し、4呼吸ほど息を整える間、眼下の男を待つことにする。
いつもこういう挙動が叶う訳ではないが。スロースターターな梁山にとって、落ち着いていかにペースを崩さず踏破するかという登山は、実のところ性に合っていた。
気功の恩恵か、傷の治りは中々に順。ゆっくり寝込んだ後に、適度に運動ーー彼との試合を含めてーーをしたのがこの回復に繋がったようだ。

「休憩、いる?」

男の登るスピードに合わせ、追い付くのを待ちながら時折そんな声を掛ける。
男が否定したとしても、やがて山の中腹に差し掛かれば、日影のある平地を見つけ腰を下ろし、休息を促すだろう。


/休み中も休み明けもお返し出来ず申し訳ありません……置いておきますが、
/もしご都合悪ければ撤回してもらって構いませんので


838 : 【飛燕二式】 :2017/08/22(火) 20:38:44 OTHbZleY
>>837
(この辺りは…… こうやって登ってたな)

思い荷物を背負っているが、それでもレナードは軽やかなフットワーク、テクニックを持ち味とするアスリート。
しっかりと踏ん張るよりも勢いや流れで一気に上り詰める方が性に合う。
垂直跳びのような動きは剣道、居合道に馴染みが無いのでやったことが無いだけで、脚部の強化が十分な今なら不可能な事ではない。

元々体のコーディネーション能力に優れ要領の良いレナードは登りながら梁山の動きをしっかり見て、頭の中で動きのイメージが出来上がっている。
そして、全く同じ動きで平たい部分まで一気に登り詰める。

「悪い、待たせた!」

荷物からペットボトルを取り出して一口飲む。
体力的には余裕はまだあったが随時休憩を挟む事が山では大切な事を知っている。
ここは有難く休憩を頂こう。
日陰まで歩く。

「腕の調子も良さそうだし、俺の出る幕は無さそうだな」

/いえいえ、自分も日曜日まで不在だったのでお気になさらず


839 : 【形意神拳】 :2017/08/22(火) 21:19:01 bqol1Le2
>>838

女が額の汗を拭っていれば、ほどなくして男もまた同じ高度に辿り着く。

「れなーど、やっぱり巧いね」

途中から男が自分の動きをトレースしているのを、女もまた気づいていた。
やはり一流と言うべきか、彼には類稀な身体操作の才能がある。それは素直に賞賛されるべきものだ。
向かい合って腰を下ろし、手足を軽くストレッチ。まだ疲労というほどの重さだるさは感じない。
嬉しさに思わず薄く笑みが浮かぶ。

「ん。思ってたより治りが良いみたい」

彼の言う通り、この分なら遠からず全快に近いところまで至るだろう。
数日前は嫌な予感がしたのだが、あのときの心配は杞憂だったか����などと。
頭を掻きながらリュックからおにぎりを取り出し二人で分けあう。
二人分とはいえ、まさか荷物の大部分が食料なのか……そんな声なき声を聞きながら、鮭にぎりへ齧りつこうとした所で、不意に梁山の動きが止まった。


「…………」

しっ、と口元に立てた人差し指を置く。
見据える視線の先はなにもない空間。遠くの方に山脈の稜線に雲が掛かっている。
目に見えるのはそのくらい。だが、その鼻には��������
漂ってくる、鉄錆と脂を混ぜたような饐えた臭い。梁山には嗅ぎ覚えがあった、それもつい最近。
恐らくは男も。

指を手に当てたまま、握り飯を置く。
姿勢を低くして、張り出した陰から位置を移動し始めた。今いるのが西側、太陽も高く登り始めた陽向の南より、その臭風は吹いてくる。
ついてくるかは彼次第。女の五感には直ちに危険なという信号はまだ出ていない。それでも、不穏な空気なのは否定出来なかった。


840 : 【形意神拳】 :2017/08/22(火) 21:28:45 bqol1Le2
>>839
/非表示部分はーーーー(ダッシュ)です、失礼しました……


841 : 【飛燕二式】 :2017/08/22(火) 22:23:45 OTHbZleY
>>839
(食料はあるに越した事ねぇけど……)

美味しいし持ち歩くには限界があるし山なら現地調達こそ理想、というのが彼の考え方。
特に身体能力が強さにそのまま反映されるようなファイトスタイルを使うなら野生動物のタンパク質は筋肉をつけるのに最適である。
熊肉や猪肉が拠点にゴロゴロあるのでワイルドハントの懇親会には彼女も招待しよう。

そんな事を考えていたら、梁山の動きが止まる。
恥ずかしい話、耳や目による観測には一家言あるが匂いというのはあまり気にする事が無かったので気づくのに遅れてしまった。
言われてみれば、確かに匂う。

腰に佩くと邪魔になるのでリュックに括り付けていた愛刀を解かずに抜くと、音を立てないように梁山の後を付いていく。
何があるか解らないが、護衛を頼まれているのだからいざと言う時の為に最低限の準備である。

(……何か見えるか?)

ジェスチャーで前にいる梁山に尋ねる。


842 : 【形意神拳】 :2017/08/22(火) 22:49:54 bqol1Le2
>>841

岩肌に隠れて気配を探る女の眉の皺が次第に深くなる。
ーーーー居る。この向こうに。
やがて、屈めていた姿勢から、すくと立ち上がった。

「……大丈夫。」

今までの慎重さを捨て、すたすたと影から出ていく。しかし何事も起こらない。
それを確かめて後ろ手に手招き。その横顔は青く。
手招きに応じるなら、彼にもその理由が分かるだろう。

ある意味、レナードの予感(?)は的中していた。
こんもりと盛り上がった丸い体躯に、針金のようなごわごわした体毛。
二人の目に飛び込んでくるのは、野生の猪が一頭。それも普通のイノシシではない、反り返った牙を2対、4本持つ、小山のような大猪だ。
だがその大太刀を思わせる牙は悉く折れ、分厚い毛皮は張り艶を失い。
ーーーー絶命している。尖った岩に蹲り、あふれでる濃血の死臭がそれを如実に物語っていた。


「ーーあれを」

男よりも先に近付いていた女が、集る蝿を避けつつ何かに気付く。
指差したのは猪の眉間。鼻先五寸上の目と目の間が、不自然に大きく窪んでいた。その圧で片方の眼球が飛び出てしまっている。
上を見上げると、二人が休憩していたような平たい傾斜が、10m程上にせり出していた。死骸はちょうど真下に当たる。
だが実際は暴れた形跡もなく、綺麗な横這いで死んでいる。
どう思う? と横目で意見を男の伺う。


843 : 【飛燕二式】 :2017/08/22(火) 23:30:00 OTHbZleY
>>842
「……上で能力者かその領域に居る奴が猪を殺して、そのまま落ちてきた……とか?」

明確な殺意を持って殺されたのだとしたら。
猪の牙を折るだけの能力、技量があるならわざわざ眉間の狭い部位を狙う必要が無い。
逆に眉間のピンポイントを狙って攻撃する能力ではあんな力任せな断面で牙を折る事が出来るとは思えない。
ゆえに落下の衝撃で牙が折れたと考える。

しかしそれも何時の事かは解らないし、単独で猪を倒したとも言い切れない。
脂の匂いは猪からだろうが、鉄錆の匂いの元も判明していない。
つまり何も解らない。あくまでワトソン役の的外れな推理の一例である。
上に人が居るかも自分の位置からでは見えない。

「不可解な死に方には違いねぇけど、進路を変えるのか?」

猪が他殺だとしても、相手が自分達と敵対するかも解らない。
能力が解らない以上対策を立てる事も出来ない。
こういう場合は「さっさと目的を終えて早々に立ち去る」か「引き返す」くらいしか確実に効果のある対策は思いつかない。
この登山の目的は霊山の墓参りなのだから、方針は彼女に任せる。


844 : 【形意神拳】 :2017/08/23(水) 00:12:34 3jKdU6uY
>>843

彼の推察に、女もおおよそ同意の顔で首肯する。

「うん。上から落ちた……ううん。落とされたで間違いないと思う」

抵抗による傷、いわゆる防御創に当たる傷が少ないのは、猪が落とされる前に既に死んでいたからだと思われる。
つまり上で撲殺されている。いかな眉間は急所とはいえ、人間の優に3倍は厚みがあろう頭骨を陥没させるなど生半な事ではない。能力という線も濃厚だが。
進退を求められ、考えた末に、荷物を取りに戻る。


「ちょっち遠回りだけど。迂回して森の中を通る。ついてきて」


ーーーーーーーー
東側の森は木々の隙間から木漏れ日が射し込むくらいで、お世辞にも明るいとは言えない。
そんな中でも梁山は、邪魔になりそうな枝や木の根を避けつつ、男の前を歩いていた。
道のり的にはあと3合と言うところか。傾斜はきつく、空気も始めに比べ薄いが、雲の向こうに古びた寺院が見え隠れするようになる。
獣道のような隙間を選んだり避けたり、蛇のように蛇行しながら、言葉少なに呼び掛ける。

「多分ね、あれ。拳だと思う」

あれとは言うまでもなく先程の惨状。
それをもたらした、致命の一撃。眉間の其れに話が飛ぶと、女の表情が険しくなる。

「それか、熊手。眉間に、指の跡が残ってた」

熊手とは開掌による打突の意味である。
骸を調べているとき、毛皮に残る跡に既視感を覚え手を添えてみた。
大きさは梁山のより二回りは大きかったがあれは紛れもなくーーーー
だが、頭骨を砕き頸椎を折るのは女の一撃でも全く以て容易くはない。
あの大きさの獣ならば、今の体調では不可能と断じても良いくらいだ。
そんなことが出来る者がこの山に潜むとは考えにくいのだが。

荒くれの山賊でもあんな一撃で殺す真似は出来ないし、仮に仕留めたとして獲物を放置するとは考えにくい。
だとしてもこの険しい山中には、梁山も知る限りあとは墓守の老人一人しかいないはずなのである。
毎年訪れる自分ら泊家の代わりに山頂の山小屋で、日頃墓の世話をしてくれている老人は、関係者とはいえ当然こんな所業は不可能。
今更ながら、いや今だからこそ
登るすがらそんな話をぽつりぽつり語っていく筈だ。


/今日はこれで落ちます、また明日お願いします


845 : 【飛燕二式】 :2017/08/23(水) 19:11:01 QUZCb21g
>>844
正直、彼女の推測はあまり役に立たないな。と思った。
手の開閉程度の事では力量を測る材料として些か頼りない。手の大きさも本人が直接攻撃したか解らないのでは体格を想像する目安になるかは解らない。気を遠くに飛ばす遠当てのような能力かもしれない。

「んー… そのクマデっていうのがスタンダードになってる流派で絞れたりしないか?」

ただ、普通殴るなら拳骨だと、素人ながら思う。
わざわざ熊手にしたのは癖や信条、習得した流派の基本の打撃が熊手だから染みついていた等、何かしら理由があるのだと思った。
色んな相手を見てきたが徒手空拳をメインにした戦士、それも強化能力に感けた喧嘩殺法ではない達人クラスの実力者はそう多くない。
寧ろネームドなら梁山の方が詳しいと思った。

「まぁ、能力だとしたら制約や限界ってのがどこかにある」
「あれを撃ち抜けるパワーなら手数や射程を犠牲にしてるのがフツーだ」

身を守るくらいなら、専守防衛の術である居合の使い手として簡単に負けるつもりはない。
直接の攻撃のみならず、落石のような事態にも刀さえあればどうにか出来る自身がある。
梁山の後を追い、山を登っていく。


846 : 【狩人機装】 :2017/08/26(土) 22:19:07 hQkhBda6
路地裏には麻婆豆腐が美味しい中華料理店がある。
だが、立地条件が悪くてなかなかたどり着けない。
これは表ではそこそこ有名な話だ。

同時に、こちらもまたそこそこ有名な話だ。
路地裏には麻婆豆腐が美味しい中華料理店がある。
そこは、しばしば『取引』の場に指定される――

アーシャは席で頬杖をついて待っていた/店を見渡していた。
彼女はここの常連でも何でもない。今回が初の来店だ。

白く短い髪。身を包む漆黒のスーツ。
対照的な二色が異国の少女を際立たせていた。

しかし、彼女は表の住民ではない。そのバッグの中には凶器がある。
そして、彼女の目的は――麻薬の密売現場を押さえること。

彼女の隣に、カウンター席とはいえ座ろうとする者は未だいない。
メニューを開きながら、用心深く視線を巡らせる。
さあ、『敵』はどこだ。


847 : 【白黒聖戦】チェス駒の女王様 ◆rpJigmhfjQ :2017/09/04(月) 01:19:30 YlXkSpzI
>>846

名物があることはよいことだ。

偶の休みに、ここぞという美食は憂さやらなんやらを晴らしてくれる。
そんな盛り場に踏み込んだのは、これまたパンツスーツをまとった女性。
ジャケットのボタンを留め、セミロングの髪を涼やかに流して店の中に溶け込む。

「先客がいるんだ、ああそこ」

早く座りたいなと、銀色のトランクをちらちら。
この店の品は理解しているのか、席への案内はいいからと手早く注文を先に済ませてしまう。

そして、彼女は銀髪の彼女へと無理に相席する。

「そんなに気を張っていると、おいしいものも美味しくなくなるよ?
 命短し、食せよ乙女だ」

いつのまにかもらっていたおしぼりで、軽く手を拭うと、にわかに微笑んだ。
それは、全方位にアンテナを張り巡らせていた相手とは、正反対のようで。


848 : 【形意神拳】 :2017/09/08(金) 20:17:03 2ARCaV72
>>845
/何度もすみません……不定期ながらお返しさせていただきます


レナードと梁山には温度差がある。
賞金稼ぎとして素人玄人や異能無能問わず狩ってきた彼に対し、女が過ごしてきた武術一本という時間は余りにも狭窄的且つ濃密。
人体が為し得る可能性を、それだけをつぶさに観察し推測する。
思考の偏りは深く偏執的とまで言えよう。
それに加えて、直感もあった。

「ただ殺すなら、もっと色々やる。それに
能力者が腕試しするなら。街中、行くと思う……」

ここにはコンビニはおろか灯り一つすらない。
能力を得て浮かれている連中が来るには、ただただ単純に、遠い。
能力ではなく、もっと単純な力。
身一つで生存する為の、噎せ返るほど純度の高い暴力を、死骸の痕から感じていた。
彼の疑問に言葉を切り頷く。

「知る限りじゃ。獣を狩れる腕前が居そうなのは3つ。
うち掌底を使うのはーーーー」

曰く、女が語るのは過去それなりに交流があって息の長い他流の武門。
梁山が修める泊(とまり)流の他にあと3つ、武術の御家元があるという。
各流派との係わりを説明するのは煩わしい、かといって特徴だけを抽出し語れるほど舌が回ってくれず。
言葉を紡ごうとした矢先、物理的に壁が立ち塞がる。
ーーーーそれは古びた門。
風雨に晒され、木々の風景に遮られつつも、辛うじて人間の痕跡を残す寺の入り口。
唐突に現れた、現世と隠り世とを分ける筈の其れ。
観音開きの継ぎ目にそっと梁山は触れる。


「開いてるーーーー。」


849 : 【飛燕二式】 :2017/09/09(土) 14:55:59 y76B1CCc
>>848
「同感だ コイツは恐らく理屈とか理由とか深く考えない方がいいかもしれない」

能力者の腕試しじゃない。それでは武道家の山籠もりだろうか?
前時代的とは思うが、山籠もりは集中力の向上や決意表明などの意味を持つ。
自分も何度か行った事もあるがやはり道場の稽古とは違う、死と隣合わせという緊張感があり鍛錬にも普段以上に身が入る。
そういった線で考えるなら彼女のネットワークが必要になる。

「山籠もり中の同業者…… だと思うか?」

自分の推測にも、今一つ引っ掛かる事があった。
その正体が何なのかは解らなかったが、対策が出来ないという点では変わりない。
刀は何時でも抜けるようにしたまま梁山の後を付いていく。
護衛対象を常に視界に捉えられる後方を歩くのが護衛対象1、護衛役1の時のセオリーである。

「中に誰かいるかもな」

だが、門などで視界が通らなければその限りではない。こういう場合は護衛役が先を通る。
護衛対象から離れるのは危険だが、梁山の実力なら一瞬目を離してもどうにかなるだろう。
というのが普通のボディーガードの思考。
リオ=レナードは居合による防衛を得意とするが、その性格は攻撃にかなり寄っている。

(待ち伏せされても面倒だ ぶった斬っていいか?)

ハンドサインで、門の壁面を斬る素振りをする。どこぞの斬鉄剣では無いが壁に大穴を開けるくらいなら出来る。
壁に穴を開けてそこから侵入できれば、中で待ち伏せする人間の虚を突ける。
建物に勝手に穴を立てるのは気が退けるので梁山の意見を聞いてからだが。


850 : 【形意神拳】 :2017/09/12(火) 22:47:34 PToKY2ao
>>849

「分からない。こんなのは初めてだから……」

下手人の手口の推察はできても、その背後は想像しか出来ず。
只々きな臭さを感じているのは女も同じ。
勝手知ったる山だからといって気を抜いた覚えはないが、既に日頃の墓参りとは様相を異にしている。
しかし隙間を開けた門からは血生臭い風は吹いてこない。
寂れていても武林に通ずる寺、流れの武術家風情に墜ちる程易くはないと確信していた。

レナードの無言の提案には難色を示す。
用心深い武人ならではの発想だが、梁山にすれば恩のある寺。門を壊すなどで縁故の繋がりを乱すのは躊躇われ。
無言で首を横に振り、意を決して掌で突けば、門は重苦しい軋みと共に内部を晒す。

それがーーーー失策であった。


『 然 り 』


極太の闘気が境内に満ちる。生物の本能に訴える寒気を伴うそれ。
女も、恐らく男も反応するだろう。
まさに反射。門を開いた梁山が地を蹴り、体躯が宙を走る。
その影はもう一つの影と交差しーーーー。一瞬のち門壁へ叩き付けられたのは梁山であった。

『然り、だ。 貴様の判断は悉く過ちであったな』

左掌払い突き。
文字通り熊のごとき手を梁山の肝臓にぶちこみ、一撃で地に伏した背を見下ろすのは、総髪髭面の大男であった。


851 : 【飛燕二式】 :2017/09/13(水) 00:27:15 njUvOCl2
>>850
「!?」

梁山に剛腕が触れ、吹き飛ばされるコンマ数秒。元々警戒していたレナードなら手を出すのに十分な時間である。
しかし、刀の軌道上に梁山が居たため、対処に回れなかった。

人が吹き飛ばされる程の、純粋な暴力。
それが能力や兵器による物では無い事は、気の使い手である彼には十分理解できた。
そんな怪物に先手を取らせた事は、男の言う通り失策に違いなかった。

「Frieze! (動くな!)」

居合に構えたまま、男を見据えていた。
男に対してだけではなく梁山に対してもだった。

「テメ―、何者だ? 狙いは?」

動けば斬る。無言の圧である。
しかし、相手の実力も未知数。それでいて恐ろしく強い事だけは先の一撃で十分解る。
梁山との試合では隠していた奥の手。気を込めた一閃の準備に入っている。


852 : 【形意神拳】 :2017/09/13(水) 01:08:58 76H0y/A2
>>851

もとの色が褪せ、代わりに何度も染みた汚れに没した黒い道着。
背丈は平均より頭一つ高く、身幅や厚みは常人の倍はあろうか。
それが重さも感じさせず動き、あまつさえ女を容易く打ち負かした。
掌の構えを解いてなお、闘気は微塵も緩むことなく、しかしそれ以上追撃する気配もなし。
傲慢かーーいや、一撃で戦闘不能にさせられたという、磐石の自負。
それが、無構えでレナードに向き直る男の瞳に深く根差していて。

『貴様こそ誰だろうな。 ここは我ら一門の管理する神聖な場なのだが。
まあおおかた想像はつく。この女が連れて来たのだろう。
誇りを忘れた、愚物めが』

野太い声はレナード同様警戒しながらもその圧を平然と受け止めて。
丸太のような裸足で女を粗雑に蹴り転がす。
仰向けにされ、くの字に腹を曲げ苦悶する梁山。
それを茫洋として眺める男の目には、言葉通り冷たい侮蔑に満ちていた。

『異国の男よ、なぜわしに殺気を向ける。こやつとわしは拳士(これ)で、貴様は剣士(そっち)じゃろうが』

右手で拳を握り、左手で彼の刀を示す。
その両手は分厚く毛深く、獣でも一撃で屠れそうな程大きい。
言葉通り彼もまた、女と同じく無手であった。


853 : 【飛燕二式】 :2017/09/13(水) 02:31:53 njUvOCl2
>>852
レナードの居合は間合いの中に限り、絶対の速度と切れ味を誇る。
多くの敵を打ち倒した敗れ無き剣の間合いに今、悪漢を捉えている。
かつて戦った事のある最強の能力者にも、最速の能力者にもこの一閃が通用しなかった事は無い。
梁山がやられた事で狼狽したが、強気な姿勢は崩さない。

「動くんじゃねぇって言ってんだろ!!」
「俺のダチ侮辱しやがって 愚物ってぇのは一体どういう意味だ?」

梁山が蹴られたのを見て、激昂する。
一方でまだ息がある事にも安堵していた。

「武器に頼らない自分の方が偉いつもりか? Akumaの偽物みてーなナリしやがって」
「拳士だか何だか知らねぇが、テメ―も俺みたいに一刀流になってみるか?」
「こっちの国のマナーに習って、もう一回名乗らせてやる」

しかし、この男の正体は一体?
見たところ梁山の事を知っているようだが、梁山はこの男を斬る事を良しとするだろうか?


854 : 【形意神拳】 :2017/09/14(木) 20:53:20 dFB0HLwo
>>853

『西の田舎騎士にも満たぬ若造が、流儀を語るか。
まあいい、わしは那覇 鳴海(なは なるみ)ーー。』

『那覇八卦掌の正当後継者が一人よ』

激高するレナードとは対照的に、冷静そのものの男。肩をすくめて呆れたように二歩下がった。
それは則ち居合の間合いから逃れたということ。
鞘の内にあっても、この男には刀の射程圏が感知できたらしい。
初太刀の届かぬ位置で腕を組んで、傲岸に顎をそらす。

「やは、りっ、那覇の門人ーーっ。」

やっとのことで上体を地から持ち上げた女が、息も絶え絶えに言葉を紡ぐ。
強かに打たれた体を苛んでいたのは痛みのみならず、男の持つ闘気という名の圧力。距離が開いた事で多少身体に自由が戻ったらしく。
互いの口調からして知り合い以上の関係なのは明らかでーー男の、なはをナーファと呼ぶ言葉からは、梁山とよく似た大陸訛りがあった。

那覇 鳴海ーーーーナーファ ミンハイ。
岩の拳、真円の破掌などという二つ名を持つ男は、下からの声に、何処かに懐かしげに目を細め
女の顔にあった驚愕と困惑ーーその内に理解を見て口角を持ち上げる。
岩のような顔に罅が入ったような笑み。

『衰えたな泊の。余所者に負け生死の淵をさ迷ったと聞いたが。
やはり牝(おんな)では流派の礎にすらなれんか。
あまつさえ余所者をこの霊山に招き入れようとは、親父殿もさぞ泣いておるじゃろう』

気さくに呼び掛けるそれは梁山に向けて、しかし口調とは裏腹に言葉は辛辣に。
そこには敗者を許さぬ頑然たる鉄の意思が見てとれた。
それっきり興味を無くしたように視線は次の獲物を見据える。

『西の剣士か。泊の連れ合いというのが気に入らんが、多少は“使える”かーー』

自問のような言葉を呟くのを最後に男が動く。直線ではなく、弧を描くようにレナードの左斜めから距離を縮め始めた。
その歩法は付かず離れず、地と踵がひっついたかの如し。
重い体重を感じさせることなく、するすると接近していく。


855 : 【飛燕二式】 :2017/09/14(木) 22:14:32 vi57SPN2
>>894
名前を聞いても、心当たりはない。
市街地ではなく山奥に活動拠点にする男。初めて遭遇する人物。
この移動法は摺り足の上等な技だろうか? 理屈は想像に及ぶが此処まで精錬された物は中々出来るものではない。

「俺が勝ったのは怪我があったからだ」
「メルヴィンは…… 爺、アンタでも勝てねぇよ」

庇う訳では無いが、自分達を簡単な相手と思われるのは気に入らない。
目を反らさず睨み返す。
彼の獲物は今、自分である。

「巳桐不動流居合術、リオ=レナード」
「俺の刀は、岩でも斬るぜ!」

この名が、この流派がどこまで伝わっているか知らないが名乗る。
さて、話は大凡見えてきた。この大男は梁山ないし死んだ彼女の父親と知り合いで、彼女が流派の看板背負って負けたのが気に入らないらしい。
当人はどう思っているか解らないが、このまま居れば梁山が殺されそうな凄味である。

「こんな風に…… なッ!!」

彼女の判断を待たず、袈裟切りを一閃。
弐式屠龍。全気力の8割を一振りに込めるこの大技は達人と呼ばれる使い手でも見切るのも防ぐのも困難な速度に達した。
一撃必殺こそが剣の基本。ジャブの差し合いや無駄な一撃は基本的に打たないも


856 : 【龍神変化】 :2017/09/17(日) 00:00:54 xGkTrYwE
それは突然起きた。前触れもなく人が爆発に巻き込まれ、大勢の怪我人が診療所へ運び込まれていった。
事の発端は此処南極にある祖国の観測基地、その正面から堂々と引き起こされた。

観測基地というのはカモフラージュで、実際には公に出来ないような非合法・非人道的な研究が行われている研究所が地下に広がっている。
故にセキュリティは通常の観測基地の常識を遥かに超えるもので、専門の防衛部隊によって警戒が敷かれていた。
大量の対空ミサイルと防空レーダー、監視所が至る所に設置され、祖国の警察・軍事両方から選抜された精鋭部隊。
そして南極という極限的な環境が攻撃者の意思に止めを刺し、その秘密が万が一に漏れた時ですら、誰も侵入しようとは尾も無かった。

にも関わらず ―― 今の状況は悲惨極まりない。
研究所の廊下には人間の死体がゴロゴロ転がり、清潔感のある白い床と壁にはベットリと血潮がこびりつき、呻き声が延々と響いている。
火事があちこちで起こり、スプリンクラーがシンナーでも吸ったかのように狂って水を撒き散らした。
これを引き起こした攻撃者は、防衛部隊が状況を把握する前にあっという間に地上を制圧してしまうと、
大量の梱包爆薬を積んだトラックを地下へ移動する為の搬送用エレベータに乗せた。

爆発 ―― 爆発と火炎が何度も引き起こされ、何度も訓練を重ねた兵士ですら震え上がってしまっていた。
まるで第一次世界大戦の塹壕の中ならばこのような恐怖感を覚えたかもしれないとしか、感想を持てなかった。

そしてその……女は、たった1人の攻撃者は、僕が隠れているトイレの前の廊下を通ろうとしている。
殆どの人間を殺したか、逃げ出したのを確信した後、搬送用エレベータの方へ戻っていたようだった。
ズリズリと大きなカバンを片手で引きずりながら、血まみれの廊下を進むのを、僕は扉の隙間から見ている。
僕は両手で警備部隊用のポンプアクション式散弾銃を持っている。戦う気だった。

もうすぐ扉の前を通る。そこでこのプラスチック製の扉ごと散弾を浴びせて、この悪夢に終止符を打つ。
ただの研究員である僕は銃を撃つことすら初めてだったし、テレビゲームも殆ど遊んだことがない。
それでもやらなければならないと思った ―― 同僚を殺したこの女に復讐しなければ、この初めて味わう激情をどう処理すればいい。
僕の瞳には闇の炎が宿り、黒い包帯をめちゃくちゃに頭に巻いた狂った女への復讐心を表している。

……時が来た。目の前で足が止まった。彼女もコチラに気が付いてたようだ。しかしそれは遅い。引き金を引く ―――

----------------------------------------------------------------------------------------------------------

「お前が何をしたのかは知らない。だが死ななければならない。
 俺もお前もむごたらしく死ななければならない。」

爬虫類めいた奇怪な瞳の細めながら、吹き飛んだ扉の下で呻き声をあげる男に向かって言った。
彼女はしきりに開いたり閉じたりを繰り返す扉の存在に遠くから気が付いていた。
扉の前に立たず、遠くから手榴弾を投げただけ ―― 足音のような音は、手榴弾が転がる音だった。

「死ぬんだ。」

男を吹き飛ばした扉の上から45口径のリボルバー拳銃で何発も弾丸を撃ち込む。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------

そして彼女は大きなバッグを引き摺りながら、遂に最深部へと辿り着いた。
奪い取ったセキュリティカードをスキャンして厳重な鋼鉄製の扉が少しずつ開いていくのを眺めて待った。

何か月も前に彼女は、ある噂を聞きつけた ―― ある研究所で極秘の研究、それはスーパーソルジャーを作るものらしい。
とはいえそれ自体は驚くほどの事でもない。人工能力者を作る研究施設や邪神降臨を企む魔術結社の存在は、知っている。
しかし今回は彼女にとって少しだけ特別だった。

彼女に僅かにだけ残っている人間の部分、それが彼女に不要な感情を、確かに起こしている。


857 : 【龍神変化】 :2017/09/17(日) 00:02:11 xGkTrYwE
>>856
/人待ちです!


858 : 【英雄譚】波動を操って戦う。人々の信頼を得るほど強くなる。 :2018/07/06(金) 13:20:26 G7lQBo.Q

……長雨か。
当分、やみそうにないな

【大木の下で、白髪の青年が雨宿りをしている】
【光を通さない黒の瞳。使い込まれた鎖帷子を着込んでおり、濡れた外套を、両手で絞っていた】


/置き+週末凍結でも良ければお願いします。
/過去の感覚で行くので、中〜短文くらいになります。


859 : 【不撓鋼心】 :2018/07/17(火) 02:19:30 6Adq9oQk
>>858

目の前から人影が近づいてきた。
長身の男。雨よけの黒い外套を着こんではいるが、雨脚は強い。金色の前髪から水が滴っている。
外套の下には金属防具などはなさそうだが……腰に長剣を吊っている。歩き方から判ずるに飾りというわけではないだろう。

「……失礼する」

二人は同じ境遇だった。すなわち急な雨に降られた男同士。
何しろこの雨だ。距離が縮まって初めてお互いの顔がはっきりと見える。
彼の顔つきは厳めしかった。おそらくは二十代の入り、と思しき北欧系の顔に刻み込まれた眉間の皺。青い両目は底知れない意志の光を秘めている。

少し離れた位置に落ち着くと外套を脱ぎ、同じように水気を絞り始めた。


/まだ大丈夫でしたら、宜しくお願いします


860 : 【英雄譚】波動を操って戦う。人々の信頼を得るほど強くなる。 :2018/07/17(火) 10:04:49 muHxePX.
【相手を視界に留めると、まず装備の確認から始める。】
【長剣が一つ。抜く様子がないと分かれば、柔らかく笑み返す。】

君も降られたのか。
お互い運がないな。

【相手がもう少し中に入れるようにと、一歩ずれて場所を開けた。】

火を起こしたいが、濡れた枝葉ばかりだ。
体が冷えないよう気を付けないとな。

【水気を吸って重くなった外套を外した。】
【この青年が、武器を一つも持っていないことが分かるだろう。】


/間に合いますよ!よろしくお願いします!


861 : 【不撓鋼心】 :2018/07/17(火) 20:46:27 6Adq9oQk
>>860

視界に収めた相手の武装を探るのは戦闘者にとって反射に近い行動だ。
互いが武器の有無を確認し、その視線によって互いを戦う者だと認識した。

だが敵意はない。少なくとも今は。
であれば現状、得物を抜く理由は――戦う手段と言い換えるべきか――ないのだった。

「予報がさして当てにできんのは、どこに行っても同じらしい」

絞った外套を手近な枝に掛けた。
次に長剣を鞘ごと外し――美しい装飾の施された鞘だった――手入れを行うためか剣をおもむろに抜いた。

その瞬間に、かすかに匂ってくるだろうか。
無骨な鋼の刃。もとから有しているであろう鉄の臭いが僅かに濃い。そしてほんの少しだけ、生臭い香り……。
血の臭いだ。


862 : 【英雄譚】波動を操って戦う。人々の信頼を得るほど強くなる。 :2018/07/17(火) 21:23:35 muHxePX.
【血の匂い】
【この英雄にとって嗅ぎ慣れたものだった。木を背もたれにして腰掛ける。】

……雨がやむまで、話でもしないか?

俺の名はリレイト・N・ガラハド。
異界を渡り歩き、英雄と呼ばれたこともある。

【人の名を聞くなら、まずは自分から。作法にのっとり、相手を一瞥する。】

これも何かの縁だ。君のことを知りたい。


863 : 【不撓鋼心】 :2018/07/17(火) 21:44:07 6Adq9oQk
>>862

……刀身の水滴を拭き取る手を止め、男は視線をそちらに向ける。見定めるような深い眼差し。
おおよそ拭き終わった水気の少ない布をまた絞って枝にかけた。

「メルヴィン・カーツワイル。賞金稼ぎだ」

粗野で短気で暴力的、賞金稼ぎにそんなイメージを抱いていたならば乖離しているだろうか。
座りこそしないものの、英雄と名乗った彼と同じく木に背をもたれかけた。

「異界か、あえて否定はすまい。この世には常識では計れんこともある」


864 : 【英雄譚】波動を操って戦う。人々の信頼を得るほど強くなる。 :2018/07/18(水) 15:05:01 8DJDbHt.
>>633

【異界渡りを聞いても、相手はさして顔色を変えない】
【有難かった。身の上を打ち明けると、嘘か冗談かと思われることが多かったから】

へぇ、賞金稼ぎか。
久しぶりに見たな。

【相手の両眼の蒼を覗きこもうと、首を傾ける】
【自称英雄は、膝を立てて座り、脚の間で手を組んでいた】

仕事帰り……だったりするのか?

【光りを通さない漆黒の瞳が、鋭くなる】
【刃に染みついた血の香りを、暗に指摘していた】


865 : 【不撓鋼心】 :2018/07/18(水) 17:29:09 nZRjgIDs
>>864

問われ、改めて視線をそちらに向けた。
それは確かにその通り。男は今しがた賞金首と対峙し、討ち獲りった帰り道だ。
そしてそれは、ちょっと切ったというレベルではない。夥しい量の血液の香り……端的に言えば、その者を刃でもって殺している。

だが鈍い輝きを放つ鋼を見れば分かる通り、血は完全に拭き取っていた。そのままにしておけば錆になるのだから汚れを残されないのは当然のこと……。
なのに嗅ぎ分けられたという事実。単に彼が鼻の効く人間だというだけか、あるいは場慣れした人種という証左であるのか。
直感は後者であると告げていた。

「……そうだ。五十七人の婦女に対して暴行し、あるいは殺害した輩だった」

だから己は正義であると、酔いしれる色はなかった。同時に後悔も。
そして物騒な稼業に慣れた者特有の冷徹さにも似た無機質な色もまた同時に、見られなかった。


866 : 【英雄譚】波動を操って戦う。人々の信頼を得るほど強くなる。 :2018/07/18(水) 19:16:51 8DJDbHt.
>>865
【青年は、途端に痛ましそうな顔をする。被害者女性達を想っての事だった】
【義憤を鎮めんと、組んだ手に力を入れる】
【長く息を吐いてから、言葉を紡いだ】

……そうか。お疲れ様だ。
君のおかげで、新たな犠牲者が増えずに済んだのだろう。

【顔を俯ければ、ぱた、と白い前髪から雫が落ちる】

雨が止んだら、どうする?
宿でも探すか?

【雨足は段々と弱まっていた】


867 : 【不撓鋼心】 :2018/07/18(水) 19:58:59 nZRjgIDs
>>866
他者を悼むその表情を見逃す道理はない。なぜなら男もまた、光の側に立つ者だからだ。
その身を突き動かすのは金銭欲でも名誉に対する渇望でもなく、悪を赦せぬその怒り。
罪なき人々を守らんとする人間だからこそ、目の前の青年は善良な人だと理解した。

「いいや――」

答えた意味は二重。一つは労いに対する、当然のことをしたまでというもの。
そしてもう一つは未だ自分に休息は訪れないということを意味していた。

「この近辺にもう一人、罪人が潜伏しているという情報があった。村一つを生ける屍に変えたという凶悪な魔術師だ。放置することは出来ん」

雨のカーテンが薄くなるにつれて着々と出立の準備を始めていた。


868 : 【英雄譚】波動を操って戦う。人々の信頼を得るほど強くなる。 :2018/07/18(水) 20:40:23 8DJDbHt.
>>867

ふふ、働き者だな。
いや、のさばる悪が絶えないだけか…。

【「時には休め」とも言いたくなる背中だった】
【何時だったか、己にもこんな時期があった】
【平和の為と、休まず悪を屠りつづけた時期があった】
【懐かしむような眼を向けて】

……なぁ、一つ頼みを聞いてくれないか?
勿論、君の用事を優先してくれても構わない。

君と剣を交えたくなった。
おれが、また他の世を渡った時に、君との手合せが、経験として活かされるかもしれない。
君も強さを求めるとすれば、悪い話ではないだろう。
……どうかな?

【自称英雄は、真摯な目を向ける】
【英雄にしては、後ろ向きな提案だ。悪を放置し、模擬戦に興じよと頼むのだから】
【目の前の人間に興味が沸いた。彼は、どのように悪と戦うのだろうか】


869 : 【不撓鋼心】 :2018/07/18(水) 21:33:53 nZRjgIDs
>>868
剣を交える。手合わせの提案。
今しがた語った言葉に嘘はない。周辺に捨て置けぬ悪党が存在する情報は確かな筋からもたらされたものであり、一秒たりとも時間を無駄にするつもりはない。
ないが、だからとて緊急の事態ではない。あまり時間をかけるわけにはいかないが、少なくともあと三日程度は事を起こすまいという予想が立っていた。

そこに急襲をかけようとしていたわけだが……しかし。
強者との手合わせが得難い経験であるというのも、また事実。

「そういうことであれば、こちらからも頼もう」

地力を鍛える必要があるのは常に感じていることだ。
鍛錬はいくら時間をとっても足りず、ならばこそこういった機会を無駄にしてはならない。

「未熟者ゆえ無様を晒すかもしれんが、だからこその手合わせだ。全力を尽くすことを約束しよう」

そういった観点から見れば、英雄を名乗るこの青年は手合わせの相手として極上の部類だろう。
得物は不明。防具からしておそらく機動力に重きを置いた戦闘スタイルと予測はできるが、異能が蔓延るこの世では大して当てにはできない。
しかし、強い。それだけは分かっていた。己が全霊で臨んでも勝つことは難しいだろうと、常の如くに感じていた。


870 : 【英雄譚】波動を操って戦う。人々の信頼を得るほど強くなる。 :2018/07/18(水) 22:30:27 8DJDbHt.
>>869

有難い。
なに、おれの方も実は腕が鈍っていてな。
先刻まで訪れていた世界は、争いごとが少ないところだったんだ。

【立ちあがって、空を見る。霧雨。動きに支障はないか。】
【ズボンを腿から足首へと、両手で扱くようにして水気を絞る。重い服のままでは機動に支障がでる】

【歩いて木陰から出る。不意に相手の方を振り返り、右手をかざす】
【その手に白い光があふれでて】

――波動よ
其は、我と彼の修練の為、剣と成りてともに戦え

【急激に光が収束し、剣の形となる】
【刃も柄も真白の剣。英雄のオーラが武器の形に変化していた】

先手は譲る
降参するか、気絶するまで、戦うということで、どうだろうか?

【相手との距離は、10歩ほど】
【剣を両手で握り、剣先が相手の喉に向くように構えた】


871 : 【不撓鋼心】 :2018/07/18(水) 22:48:48 nZRjgIDs
>>870
今は枝で休んでいる外套の功か、その下の衣服はさして濡れてはいなかった。
少なくとも戦闘に支障をきたすものではない。黒を基調としたフォーマルな出で立ち、どこか軍人を想起させるのは本人の硬質な雰囲気が多くを占める要因だろう。

……形成される光の剣。
驚きは無かった。おそらくはそう――異能者あるいは魔術使用者――だろうと、なんとはなしに思っていたのだ。
相手にとって不足はなし。ひりつくような練達の気配、異能に頼った三下では断じてなかろう。

「異論はない。よろしく頼む」

抜いた得物は鋼の刃。鈍く無骨な輝き以上のものは――少なくとも今は――ない、変哲もない一振りの剣。
だが手入れが行き届いている。ないがしろにされている部分は一つもない。使い手に対する武器への姿勢が誰にでもわかる鉄の輝き。
長い刃渡りのロングソードを男もまた両手で構えた。じりと一瞬、空気がざわめいた次の瞬間、戦端は開かれた。

短い呼気と共に距離を詰め、繰り出されるのは衒いのない振り下ろし。刀身の長さを生かしたリーチによる、命中射程すれすれを攻める一撃。


872 : 【英雄譚】波動を操って戦う。人々の信頼を得るほど強くなる。 :2018/07/18(水) 23:50:37 8DJDbHt.
>>871

【向かってくる相手を見据え、一歩踏み込む】
【自分からも近づくことで、間合いを調節】
【振り下ろされる刃を、下方から自分の剣を打ち付けることで防ぎ】

折角だ。会話も楽しもう。
メルヴィン。君の戦う理由を聞かせてくれないか?

【柄を握る手に力がこもる】
【しかし、蒼を見つめる漆黒は、どこか穏やかささえある】

【膠着状態のまま、右足を浮かせれば、相手の左脇腹めがけて膝蹴りを繰り出そうとする】
【相手の隙をつくることを狙った一撃だ】


873 : 【不撓鋼心】 :2018/07/19(木) 18:44:03 8zng.go6
>>872
/すみません剣の外見に誤りがありました。刀身の真ん中に通っている溝(樋)に黄金色のラインが走っているということでお願いします


「戦う理由、か」

上方からの切下しを下方からの逆流れが迎え撃つ。
噛み合う刃と刃、拮抗はしかし長くは続かなかった。
膠着を破るために放たれた膝蹴りを食らう、瞬間に後方へ跳んで衝撃を逃がす。ダメージは最小限に抑えられた。

「そう変わったものではないさ。人々の笑顔を守るため、奪われる希望を少しでも減らすため……言葉にすれば月並みだがな」

月並みとは言うもののまるで物語のような、現実に存在する人間が口にするには綺麗すぎて違和感のある台詞。
だが不思議と飾っている雰囲気というか、嘘を吐いているような空気は無かった。まっすぐに射抜く双眸が証明しているかのような光を放つ。

しかし、他ならぬその瞳が……。
果たしてそれだけなのだろうかと、思わせないではないのだ。鋼鉄の理性に彩られた蒼鋼色の眼の奥で、激しい炎が燃えているような気配がした。

「そちらはどうだ? 異界を渡り歩くのならば、ここではない他の世界に何かを求めているのか」


874 : 【英雄譚】 :2018/07/19(木) 22:15:08 num6dQoE
>>873
/剣の表記了解です!補完しときます!

【衝撃を逃しつつ相手は後退する】
【なるほど、戦い慣れている】
【美辞麗句にも似た、相手の返答に、英雄は笑みを浮かべる】

賞金稼ぎの割に、確固たる志を持っているんだな
……実に英雄的だ

【と、問いが投げかけられる】
【剣を左手に持ち替え前進。追撃がてら、右肘で相手の胸部を打とうとする】

……何かを? 考えたこともなかったな。
俺は目の前の平和が守れればそれでいい。

【果たして本当にそうなのだろうか】
【漆黒の瞳は、どこか虚ろに閃いていた】


875 : 【不撓鋼心】 :2018/07/20(金) 17:55:30 28xgQZEQ
>>874

「そうか、いや、それで十分だろう。平穏無事でありたいと願うのは誰だとて同じこと」

後退すれば追撃が来ると読んでいた。立場が逆ならば自分もそうしたはず。
重い長剣を右手で保持。鷹の眼光で肘鉄の軌道を予測、残る片手で受け流しつつ衝撃と勢いを利用して半回転の回し蹴りを繰り出す。

「皆がそのように願って努力するからこそ、尊い日常が続くのだ。誰に恥じることもない立派な理由だとも」

笑みを浮かべる青年と対照的に、男の顔は巌のように厳めしい。
しかし彼の思想を非難するような色は一切なかった。むしろ良いものだと認め尊重する光が宿っている。


876 : 【英雄譚】 :2018/07/20(金) 20:45:59 c4Zf76Jg
>>875

…っ!
【回し蹴りを右半身に受ける】
【一瞬よろめくが、踏みとどまり、相手を一瞥して】
【その眼の光に、射抜かれたかのように、一寸身を震わせて】

ああ、もしかすると、
【たん、と地面を蹴って相手から離れる】

俺は探し続けているんだ。
【剣がただの光に戻る】
【黒い眼が、虚を見つめていて】

護りたいものが無くなってしまうその時を恐れて、
俺は異界を渡り歩いているんだ。
ずっと護るべきものを探し続けている。
――英雄は、独りでは存在できない。

【右腕をかざせば、新たに光が集まりはじめて】

――波動よ
其は、我が手にした解の証明の為、槍と成りて、我を導け

【収束する光は、白銀の槍と変化する】
【手首を返して槍を半回転させ、柄を相手に向けたまま、その胴を突こうと駆出そうとする】


877 : 【不撓鋼心】 :2018/07/20(金) 21:43:59 28xgQZEQ
>>876

「護りたいものを……か」

白い剣が光と消え、再び集まって槍の形を成す。
光を任意の武器に変える能力――一瞬だけ目を見開き、しかし次の瞬間には再び射抜くように眇める。

「探しているというなら、ああ、俺も同じだよ。罪なき人々を守らんと願い、そのために悪を斬ると誓ったが、それを成し遂げるだけの力が圧倒的に不足している」

突進――槍の穂先をこちらに向けぬ意図はいくつか考えられるが、向けられているのが殺傷能力に劣る柄頭という事実は好機である。
突っ込んでくる青年に対し、躱すでも受けるでもなく逆にこちらも踏み込んだ。

「全霊を振り絞ってことに当たってきた。だが多くの尊い命がこの手から零れ落ちていった。そのたびに我が身の至らなさを痛感し、次こそはと力を求めて今も足掻いている」

胴に受ける――いいや受けない、挟み込んだのは空いている左手。
刃のない柄といえど鋭い打突を受ければ損傷必至、まともに食らった掌には青痣が浮かび上がっているが頓着しない。
なぜなら狙いは単なる防御にあらず、受けると同時に槍の柄を握り込んでいた。

「……きっと誰もが、何かを求めて歩んでいるのだろう。自分だけの勝利を、その手に掴み取るために」

そして掴んだ槍を後方へ引いて体勢を崩しにかかると同時に、振り上げていた剣の、こちらも同じく柄頭を利用して遠慮無用の柄打ちを繰り出した。


878 : 【英雄譚】 :2018/07/20(金) 22:26:17 c4Zf76Jg
>>877
【手ごたえはある】
【だが、胴ではなく左腕で受けられた】
【柄を掴まれて引かれれば、相手も柄打ちを狙ってきた】
【左腕を前に、両手で槍を握っていたので、左肩を前に出して、相手の柄打ちを受ける】

……づゥっ…!

【激痛に顔が歪む。骨まで損傷は至っていないが、左腕の力がしばらく半減するだろう】

そうか…、君も…

【と、槍の柄の中心に亀裂が入る。】
【否、亀裂というには綺麗すぎる切断面を伴い、槍が半分に折れた】
【波動で構成された武器は、意のままに形を変えられる】
【柄で攻め入ったのは、刃を奥の手として残す為】

君も平和の為に、悩む者だったのか

【穂先側を握る右手を振り上げ、刃を相手の額めがけて振り下ろそうとした】


879 : 【不撓鋼心】カウント5 :2018/07/21(土) 19:49:29 iyqKR0Pw
>>878
額狙いの柄打ちは、しかし相手もさるもの、とっさの判断で左肩を盾にされた。
ダメージは与えたが……決め手には程遠い。これしきの痛みで戦うことをやめるような手合いではなかろう。
ゆえに掴んだ槍を放さぬまま更なる打撃を加えんとした、そのとき。

「……!」

折れる――いいや、光の槍が二つに割れる。
光を武器に変えることは承知していた。だが成形した後に形状変化させるとは――。
思考が及ばなかった、しかし後悔は不要。いま対処すべきは対敵の手に刃が握られているということ。そしてそれが今にも振り下ろされんとしているということだ。
回避は間に合わない――。

「――考えることを止めれば、そこで歩みは止まる」

ゆえにこちらも刃にて迎え撃つ。
上方からの切り下しを下方からの逆流れにて応撃する。初撃と同じ、だが今度は役者を入れ替えた構図の再演。

「自分の行いが正しいか否か。己の進むべき道はどこにあるか。悩み、苦悩し、常に考えながら生きるからこそ人は成長できるのだ」

拮抗、しかしこれは長く続かないことが予想された。
なぜなら対する青年にもわかるだろう、打ち合った感触からしてこの男の筋力はそう高くない。
いいや筋力だけでなく瞬発力、動体視力など……あらゆる身体能力が並の域を出ない。男の見せる厳めしさに反して、剣士としてはどこまでも平凡だった。

「時に惑い、時に躊躇い……しかしそれでも足を止めることだけはしてはならん。してはならんと、俺は思う。なぜならそれは今までの自分と、自分に関わってきた者すべてを裏切る行為だからだ」

上から押し込む方と、下から持ち上げる方。どちらが有利でどちらが不利かは素人でも分かるほど明白だ。
これを覆すには後者に前者を上回る筋力が必要不可欠だが、肝心のそれは前述の通り。
両者のパワーは同じ……いいやはっきり言うならあちらが上回っている。ならばなおさらこの状況を真っ向から打ち破る方法などない。

ない、はずなのだが……。

「家族のために罪を犯した者がいた。親友のために他者の命を奪った者がいた。彼らが許されぬことをしたのは確かな事実だが、だからといってその志まで劣っていたと誰が言えよう」

均衡はいつまでたっても破られない。
どころかこれは、いかなる道理か……膂力が上昇し始めている。拮抗を破り、押し返しつつあるのだ。

「俺はそれを踏みつけてきた。己の信念を貫くために、彼らの想いを粉砕して歩んできた。勝利とは自分以外の誰かの願いを挫くということ、ならばこそ報いるためにも進み続けねばならない」

いつの間にか上下の絵図は逆転しているだろう。
重い。あたかもこの男が、自らが打ち砕いてきた者たちの想いを背負っているとでも言うかのごとく。
普通に考えれば筋力増加の能力者というだけの話なのだろうが……。


880 : 【念理動力】 :2018/07/21(土) 22:21:40 ZKcxHMj6
何か面白そうなことでも転がってないッスかねー。

【度の入っていないレンズ越しに周囲を窺いながら】
【『学園』のブレザー姿の少女は通りを行く】

/人待ちです

/ロケーションはわざと曖昧にしました
/キャラによって出しやすい場面がありましたら転換してしまって大丈夫です


881 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/21(土) 22:46:53 iyqKR0Pw
>>860
向かいから一人の男が歩いてきた。
わざわざ言わなければならないのはそいつがあまりにも特徴的な人間だったからだ。

派手な柄のアロハシャツ。血のように赤い短パン。
夏の服装としてまあなくはない格好だがそれを着ている人間がダメすぎた。
まず背が高い。百九十を越す長身はなかなか見ないだろう。そしてニヤついた口元。サングラス。これだけでも十分にアレだが伸びに伸びた真っ白な蓬髪がその印象に拍車をかけた。

今はアロハシャツだが、あれでスーツに柄物のシャツを合わせてみろ。どう見てもヤク……まあ、関わってはならない人種だということが分かる。
関わってはならない人間。実際通りの人々も心なしか距離が長い。本人はというとなにやら探しているのかキョロキョロと辺りを見回している。
そして少女と目が合った。

――その瞬間、何を思ったのかニヤついた笑みを深くして一直線に迫ってくる!

「よお嬢ちゃん! ちょっと俺と遊んでみないかい!」

ヤバい――。


882 : 【念理動力】 :2018/07/21(土) 22:57:02 ZKcxHMj6
>>881
【そんな中向かいに見えまするは】
【自らの背丈を優に40cmは超えるであろう大男】
【派手な格好や何処からか滲み出る雰囲気からはヤバそうな気配を感じさせるに十分だった】

「よお嬢ちゃん! ちょっと俺と遊んでみないかい!」

えっとなんスか、ナンパッスか? 私お誘い受けてるッスか?

【ぎこちなく笑みを返しつつ、軽いノリで返事を返す】
【が、心中では】

(そりゃ面白いこと探してたッスけど、我が身に危険が迫りそうなのは勘弁ッス!)

【既に逃亡を視野に作戦を立て始めていた】


883 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/21(土) 23:09:25 iyqKR0Pw
>>882
なぜわざわざ彼女のところに向かっていったのかは分からない。
彼なりの理由があるのかもしれないがどうせろくなものでもないだろう。
こんなとき下手に刺激してはたいへんなことになるので何とか穏便に逃げるのが吉。だから少女の思考は実にまっとうなものなのだが……。

「おうともそうさその通り! 分かりやすいだろう? 古典的な文句ってのは通りが良くていいよなぁ!」

果たしてこいつに逃がす気があるのかないのか。
初対面の人間が話す距離感よりも半歩、そしてさらに半歩近い。ナンパするにもこれはよくない。他に目的があるのか? 分からない!
その状態からさらにずいっと、凶悪な顔を近づけて呟いた。

「わかるぜ嬢ちゃん、面白いことが好きなんだろう? いつもと変わらん日常ばかりじゃつまらんよな。俺もそうだぜ、退屈はまっぴらごめんだ。だからいろいろ知っている」

サングラス越しに覗き込む瞳は紅く、危険な、しかしだからこそだろうか、どこか引き込まれるような光を放っていた。

「非日常を歩いてみないかい? なあに悪いようにはしないさ、約束は守るとも。こっち側、ちょっと興味があるだろう?」

嘘か真か、定かならぬ言葉でこの男を信用してしまうのは愚の骨頂だ。それくらい誰でも判断できるだろう。
しかし、さて……この男、単純な詐欺師か否か。


884 : 【念理動力】 :2018/07/21(土) 23:19:20 ZKcxHMj6
>>883
【先方は逃がす気は更々ないのか】
【パーソナルスペースよりも半歩、おまけにもう半歩】
【普通に考えて警戒すべき距離まで近づいてきた】

そりゃ面白そうなことは大好きッスけど……

【引き込まれる様な紅い瞳からそろそろと目をそらす】

危なそうなのはちょっと、私まだ学生ッスし

【ほら『学園』生徒様だぞと言わんばかりに平坦な胸を張ってブレザー姿見せつける】


885 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/21(土) 23:30:21 iyqKR0Pw
>>884
胸を張る仕草に初めて気づいたのか少女の服装に目を向けた。
この制服はたしかどこぞの――ああ学園。……学園?
学園といえばそういえば、確か前に面白いやつがいたなと思い出す。チェス駒で戦うあの女、あいつは今頃どうしているかと思い至り……。

悲しいかな男を止める理由にはまったくなっていなかった。どころかむしろ興味を加速させた感さえあった。紅い光が増し始める。

「なぁに気にするこたァねぇさ何事も経験だ! 若いうちから見聞を広めるのは大事なことだぜ少女よ!」

ケラケラと、実に楽しそうに笑う姿に気後れなんぞは欠片もない。
実に楽しそうに、どこまでも愉快に、一人の少女を悪い遊びに誘っていた。

「それに危ないことじゃあないともさ、ただちょおっと……そう、子供の身空じゃいけないような遊び場にいってみるだけだよ、少なくとも――」

――『当事者』になることはないだろうぜと含み笑う。
この男、いったい何を企んでいるのだろうか? まず健全なものではなかろうが……。
まあ今のところは、腕を引っ張って強引に連れて行こうという気配は無かった。今のところは、だが。


886 : 【念理動力】 :2018/07/21(土) 23:39:34 ZKcxHMj6
>>885
【そんな主張も相手は意に介さぬ様子で】

何事も経験ッスかぁ……

【半ば勢いに丸め込まれる様形で話に乗せられそうになる】
【しかしそこで少女の好奇心をやや頼りない理性が引き留める】

【彼女は無能力者でこそないが】
【しかし出来るのは両の手で持てる位の物を浮かべさせるか】
【自身の身体能力を多少底上げするか程度】

【仮に本当にヤバい場所に連れ込まれれば、詰む】

先に何処に行くのか聞いといてもいいッスか?


887 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/22(日) 19:21:48 x0yi1VN2
>>886
食いついた――!
脈アリと見た男はニヤリと笑みを深める。本当にダメそうなら行先を聞いてなどこないものだ、ひたすら逃げようとする。
興味があるな……? この年頃の少年少女は誰であれ程度の差はあれど非日常と言うヤツに興味があるものだ、しかしどこかそれだけじゃないものを感じたからこそ声をかけた自分の直感は間違っていなかったらしい。

「カジノさ――まあ、いわゆるカジノホテルってやつだな。レストランもあればバーもあるし、もちろんカジノはメインで賑わってる」

それが本当ならば確かに、学生の娘ひとりでは入れぬ場所だろう。
名家の生まれだとか、そうでなくても何かのきっかけなくしては十代の少女には縁遠かろうもの。

「美味に舌鼓を打つも良し、大人の味に手を出してみるも良し、もちろんスリリングなギャンブルだってお咎めなしさ。どうだい、面白そうだろう? そうそう行けるもんじゃあないぜ」

最初以外は学生に許されることではないのだが、そこを見て見ぬふりできる場所柄なのだろう。
もし何らかの火種があったとしてもこの男が横に居れば大抵は回避できることが予想される……逆にトラブルを呼び寄せそうな感も否めないが。


888 : 【念理動力】 :2018/07/22(日) 19:40:26 ySfB6ljk
>>887

カジノ…ッスか

【危険な雰囲気は未だ拭いきれぬものの】
【好奇心の火が再び熾りはじめる】

【そもそも見分を広める為に物事に首を突っ込むというのは】
【この少女の根本的な性質でもある】

じゃあ、…ちょっとだけ、付き合わないこともないッス

【ある種なるようになれの精神で】
【激流に身を任せてみる事にした】


889 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/22(日) 19:57:50 x0yi1VN2
>>888
返答を聞いて亀裂のような笑顔が深まった。
見る者を怯え竦ませ戦慄させる凶相以外の何者でもないが誓って悪意はなく、その胸にあるのは歓喜のみ。
いいぞ素晴らしい、やったじゃないかそれでこそ。俺の見る目は曇っていなかった、こいつは自分と少し似ているぞ!

「よぉし――よぉし! いい好奇心だ若者はそうでなくちゃなァ! 若者の手は未来を掴むためにあるんだ、保守的になるのは歳食ってからで十分間に合うさァ!」

安心しろよ代金はこの俺がぜんぶ持ってやる、と上機嫌に言い放ちながら小躍りするように踵を返す。

「となればまずは着替えだな、最低限のドレスコードはあるしそうでなくても制服ってのはうまくなかろうよ! 好きに選ぶがいいぜ、女の服選びに付き合うのも紳士の嗜みってヤツさ! クヒヒ、こういう言葉も昨今は問題かね?」

何しろ時間はたっぷりあるのだから。
そう、今は日中。カジノが賑わうのはすべからく夜だ。最高潮を期すならそれまで時間を潰さねばならない。
せっかくの機会なのだ、男としても半端は避けたい。“とっておき”も実のところ用意している。そのためにも時間帯を夜に絞るのは絶対だった。

そうして意気揚々と街へ繰り出していく――。


890 : 【念理動力】 :2018/07/22(日) 20:09:40 ySfB6ljk
>>889
【返答後の男の恐ろしい凶相を見て】

(あ、やっぱマズったかもしれないッス)

【と内心思いながらも】

(代金全部持ってくれるってのは有難いッスね)
(パパって読んであげた方がいいかもしれないッス)

【とも考えている少女】
【色々と危ないんじゃないかという点は一先ず保留する事にしたようだ】

私この制服結構気に入ってるんスけどねー。
ドレスコードがあるならしょうがないッス。

【カジノに行くのはそれこそ初なので】
【どんな服装が正しいのかはわからなかったが】
【とりあえず余り派手すぎない程度のドレスを選んでおいた】


891 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/22(日) 20:26:40 x0yi1VN2
>>890
そして夜――。

善男善女の時間は終わった。今よりはそこを少し踏み越えた人々の遊戯場となる。
繁華街の中心にそびえ立つホテル。噴水と光、石畳と雑踏、これなる摩天楼が世界の中心であるかのように錯覚させられる豪奢の限りを尽くす外観。
しかして内部は踏みしめる絨毯から階段の手すりに至るまで最高品質をより集めていることが一目で分かりはするものの、下品までの派手さとは無縁だった。

さり気なく気分を高揚させ――。
さり気なく普段の感覚を狂わせる――。
どこまでも自然に日常世界から隔離された、ここは一種の異世界と呼んで差支えないだろう。気を抜けば自分が自分じゃなくなっていくような錯覚を覚える。現実感を、喪失する。

そこに足を踏み入れたのは一組の男女。片方は背の低い、派手すぎないドレスの少女。
もう一方はダークスーツに紫色のシャツ。ノーネクタイ。サングラス。紳士帽。分かりやすく言ってマフィアのそれだった。
まあそういう人種も集まる場所だ。さして問題ではないがやはり白い蓬髪が人目を引く。だがさしたる問題ではないのだろうすぐに視線は外れて各々興じ始める。

「さてどうだい第一印象は、なかなか洒落たもんだろう? 俺としてはまずカジノを勧めるが、やりたいことがあるなら付き合うぜ。ここの料理はなかなか旨い」

二人の眼前に広がっているのはまずカジノだ。紳士淑女が集ってギャンブルに興じている。そう、とりあえず見かけの上は紳士淑女たちが。
ホテルであるためフロントもあるが奥の方だ。その更に奥の方に行くとステージがありバーが併設されている。今いる広間から右手に逸れる道がおそらくレストランに続いているのだろう。


892 : 【念理動力】 :2018/07/22(日) 20:39:54 ySfB6ljk
>>891
【そしてやってきたのは豪奢、絢爛その限りを尽くす遊戯場】
【そこら辺のゲーセンなどとは一線を画す】
【十そこらの少女にとっては正しく異世界、非日常】

ほあー、凄いッスねー。

【なんて間の抜けた感想を零していた】

先ずは何か食べてみたいッス!

【思いっきり色気より食い気に指針が触れる】
【しかしギャンブル会場の雰囲気なんかも折角だから味わっておきたい】

【バーは…お酒にやられていざ危機に陥った時】
【思考が働かないというパターンだけは避けたい所】


893 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/22(日) 20:55:14 x0yi1VN2
>>892
「いいとも、まずは腹ごしらえってところか。腹が減ってちゃ楽しめるものも楽しめんしなァ」

颯爽と歩き出す足取りに迷いはなく、しかし彼女の歩幅に合わせているのだろうついていけない速さではなかった。
人を気遣う行動。この男には甚だ不似合だが……これもおそらく"本業”の方の手管なのだろう。
本業が何かは分からない。分からない方がきっといい。

カジノを横目に見ながら移動する。
ブラックジャックやポーカーなどのカードゲームからルーレット、スロット台まで。
単なるゲーム以上のものと考えていない人間もいれば眼光をぎらつかせている者も混じっている。
一見すれば優雅で豪奢だ。しかし皮一枚剥げばそこには目も眩む欲望の黄金が渦巻いているのだろう。

水に遊ぶ魚のように心地よく歩いて、ほどなくレストランに辿り着くだろう。品のいい内装、談笑する客の姿も相応に。
ロココ調の椅子に座ればウェイターがやってきてメニューを手渡した。いかにも高級料理店然とした、よくわからない長ったらしい料理の名前だけがずらっと並んでいる……なんてことはなく。
ちゃんと写真も載っている。値段も書いてある。価格設定はまあすごいが、とてもすごいが、男は特に顔色を変えていないから問題ないのだろう。好きなものを遠慮なく頼んでいいんだぜと笑っている。


894 : 【念理動力】 :2018/07/23(月) 17:28:57 PqpLIDbw
>>893
【カジノを横目にレストランに到着】
【メニューの到底学生風情が支払えない様な価格帯に驚きつつ】
【男の顔色から好きなものを頼んで良いのだと判断】

じゃあコレとコレとコレ、お願いするッス

【選んだのは俗物的にキャビアだのトリュフだの高級食材を銘打った品ばかり】
【一切の遠慮が見えない辺り大物なのかもしれない】
【若しくは単純に思慮が足りてないだけか】


/置いておきます


895 : 【英雄譚】 :2018/07/23(月) 19:21:40 rOYfRKoA
>>879
【刃先は受けられた】
【これで相手が「まいった」とでも言おうものなら、寸止めにするつもりだった】
【彼をみくびっていたようだ。口には出さないが、心中で非礼を詫びた】

悩みながらも進む。
それが君の答えであり、決意か。
――なんだ、おれよりも英雄的だな。

【いつの間にか逆転する姿勢に、戸惑いを覚える】
【馬鹿な。並の筋力で出来る芸当ではない。能力か…?】
【槍の柄も消し、両手で穂先を握って、対抗しようとするが、こちらが押されている】

……おれの、本当の姿を教えよう。

おれは英雄などと呼ばれたが、そんな大層なものじゃない。
仲間を失いたくないから戦った。
大事な人が傷つけられないよう、立ち向かった。
おれが盾となり剣となれば、大好きな人達を守りつづけられると思った。

おれは英雄なんかじゃない。
ただの 寂しがり屋 だ。

【自嘲の笑み。なぜ彼にこんなことを打ち明けたのだろうか。】
【両腕に白い光が帯び始める。両腕に波動を纏わせ、筋力を増強させた。】
【逆転された姿勢から、お互いの眼前でつばぜり合う体勢まで持ち直して】

だからこそ、全てを失った時、おれが何になるか、
分からないんだ。
それが、なによりも恐ろしい。


896 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/23(月) 20:09:14 fbovPHdg
>>894
少女の選んだメニューを確認して男はニッコリと――いやニヤリと笑った。
実に遠慮がない。素晴らしい。選んだ品も分かりやすく高級なものばかり! 彼はこういう直截なのが好きな人間だった。

自分はもう決まっていたのだろう、すぐに片手を上げて店員を呼んだ。……しばらくして運ばれてきたのは料理ではなく食前酒だった。
男のぶんのグラスには赤ワインが。少女のグラスには、誰かが気を利かせたのだろう、透き通った水が注がれている。しかし単なる水と侮ってはならない。八百円くらいしそうなおいしい水だった。

……それからほどなくして料理が運ばれてきた。

「久しぶりだが味が落ちていないようで何よりだなァ」

血の滴るようなステーキを一切れ口に運んでワインを飲んだ。ちゃっかりボトルで注文している。
テーブルにはもちろん少女の料理も並んでいる。写っていた写真の通りの豪勢な御馳走、普段は口にできないものが夢のようにずらりと。
一般市民だと緊張で味が分からないということもあるが……まあ彼女ならば大丈夫なのではなかろうか。

「……? あぁしまったこりゃいかん、俺としたことがすっかり忘れていたぜ! まだお互いの名前も知らないんじゃねぇか!」

何かを、おそらく彼女を呼ぼうとしたのだろう口を開いて、しかし肝心の名前も聞いていないことにようやく気付いた。
ここまで来ておいてなんとも間の抜けた話だが……事実だからしょうがない。タイミングがなかったとも言える。


897 : 【不撓鋼心】カウント4 :2018/07/23(月) 20:38:23 fbovPHdg
>>895
そのまま押し込まんとした刃はしかし、彼の両腕が白い光を宿したことを皮切りに押し戻され始める。
だがこちらもされるがままではない……力の限りを振り絞り対抗し、互角の状態に両者の刃が留まった。

「――ならばこそ、ただひたすらに進み続けるのみだろう」

だが――その均衡に甘んじるつもりは男にはなく。
小細工無用、邪道に逸れず、どこまでも真っ向勝負でねじ伏せにかかった。

「勝利は次の難敵を呼び込むものだ。敵を一人打ち倒せばその者よりも強い敵が、それを倒せば今度は数が、撃滅すれば数と質を揃えて……」

次の敵が、次の敵が、次の次の次の……終わらない戦い。
ひとたび勝てば栄光と共に重圧がのしかかってくる。それは勝者の責務とも言うべきもの。
勝ては勝つほど局面は重大さを増していき、気付けば既に絶対に負けられない状況に追い込まれていく。

「道は険しく、責務は重い。だがそれを前に心折れ、足を止めてなんとする?」

膂力が、再び、増していく。
増大する力と力、男の両腕から発生するパワーは既に人類最高峰のものへと指をかけている。
加減していたのか? 余力を残していた? いいや否、そうとは感じられなかった。まるで限界を突破しつづけているような感覚、威勢、しかしそんな絵空事がありえるのだろうか。

「守ると誓ったのならば、胸に秘めた決意があるのならば、それで十分。その想いを決して無にしないため、永劫駆け抜けるのみだ!」

鋼の剣が黄金の光を纏いだす。
青い瞳の奥で永遠に火勢の衰えぬ炎が燃え盛る。
彼の言葉は雄々しく強く、そこに嘘や翳りの類など一片もなかったことがありありと感じられたゆえに――。
どこか常人離れしていると……もしかしたら人間離れしているとさえ、感じられたかもしれない。


898 : 【念理動力】 :2018/07/24(火) 18:28:35 r4nBusX.
>>896
【やがて頼んだ料理が到着】
【男が頼んだのはステーキとワインか】

頂きますッス。

【と一言のち】
【もぐもぐと料理を頂く】
【暫し味わった後】

いやあ、お値段するだけあって美味しいッスね。

【なんてのたまうが、内心】

(美味しいッス。…美味しいッスけど、個人的にマ〇クのハンバーガーとかのが性に合うッス。)

【緊張で味が分からないのではない】
【単純に貧乏舌なのだ】


【と、名を尋ねられて】
【この男に本名を教えるのはマズいのではないだろうかとコンマ数秒程悩み】
【即座に思考停止的にまあなんとかなるッスと結論を導き出し】

私は六堂ねむって言うッス。


899 : 【英雄譚】 :2018/07/24(火) 18:42:16 Fkq69nDs
>>897
【彼の言葉を最後まで聞き、くつくつと英雄が笑い始める】

真っ直ぐだなぁ。
メルヴィン。

【羨望の眼差しを向けた】
【圧されている。剣を受けながら、踵が土を盛り上げながら、後方へと下がっていて】

すまないなメルヴィン。英雄の愚痴などを聞かせてしまった。
おれは酒は呑めないクチだが、君と呑めたら楽しいのでは、と思ったよ。
英雄は――おれは独りでは存在できないので、
どうか君を、友の一人と数えさせてくれ。

【瞬間、槍の穂先が発光しはじめて、】

波動よ――
其は、我が友と強さを掴む為、刀と成りて、彼に挑め!

【槍の穂先は刀へと変貌した】
【刀の峰に左手を添えて、刃の向きを外側へと傾け、彼の剣を受け流そうとする】
【受け流しに成功すれば、刀の柄尻で、相手の顎を下方から打とうとするだろう】


900 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/24(火) 19:41:34 U7iZ0R2Y
>>898
ニヤリと、本当にそのような擬音が聞こえてきそうな笑顔で笑った。
本名を名乗ったことは間違いだったろうかと瞬時に後悔させるような顔、しかしまだ希望は失われていないとあなたは感じた。
とりあえず今のところ実害はないからだ。ここまではいたいけな少女をカジノに連れてきただけ――それでもだいぶアレだが――だ。

「六堂ねむ、ねぇ……いい名じゃねぇか。俺はゲアハルト・グラオザームって言うんだ」

単なる人名だ。だからとやかくいうべきことではないが、なんだか響きからしてゴツくていかつい。
こう、いかにも悪人風の――これ以上は考えるべきではないかもしれない。

「順序がおかしくなっちまったがこれでチャラだ。今宵は楽しくいこうや六堂の嬢ちゃん――」

……それからは特に語るべきこともないだろう。
頼んだ料理はつつがなく運ばれてくる。食事の時間は実に優雅なものだ、さしたる問題もなく時が流れていく。
しばらくすれば二人とも食べ終わっているだろうか。ゲアハルトの方は食後酒のブランデーを転がしている。


901 : 【不撓鋼心】カウント3 :2018/07/24(火) 19:54:28 U7iZ0R2Y
>>899
メルヴィン・カーツワイルは真っ直ぐな男だ。
なぜなら彼自身が、己に曲がることを許さないゆえに。こうと決めたら一直線、あらゆる障害を粉砕してでも突き進むと決めてそこから決して揺るがない。
何があっても。たとえ何が立ち塞がったとしてもだ。その有様は一条の閃光のように人々を魅了しながらどこまでも突き抜けていく。

そう、どこまでも独りきりで突き進んでいくのだ。

「気にすることはない、人は強さと同時に弱さをも併せ持つ生き物だ。むしろ貴殿ほどの男が初対面の俺にそこまで打ち明けてくれたことを嬉しく思う」

それと酒が呑めんのは未成年の俺も同じことだと、地味に衝撃的な発言を落として。
発光し、槍から刀へ姿を変える英雄の得物。行動を起こす前に押し切らんと更に力を込めて、しかし……。
巧みな剣技、受け流される刃。崩れかける体勢。下方から迫り来る柄尻を捉え身を捻って躱さんとするが遅い。

確かな手ごたえ――喰らったカーツワイルは大きくのけぞる、クリーンヒット。
揺さぶられる脳。彼方へ消えようとする意識。勝負ありかと思われた、しかし――。

「――まだだ!」

これほどの男に対してこの程度で終わるわけにはいかないと、消えかかる意識を気合で繋ぎとめて反撃に移る。
大地を揺らすかのような錯覚を覚えるほどの踏み込み。のけぞった衝撃を横への推進力に変換し、渾身の回転斬りにつなげた。


902 : 【念理動力】 :2018/07/24(火) 20:25:40 r4nBusX.
>>900
【ニヤリと、本当に聞こえると錯覚させるような悪い笑みに】
【内心ひっ、とやや怯えながら】
【しかし現状カジノに誘われて奢って貰っているだけなので】
【気のせい気のせいと表情に出さない様にそれは意識の外へと放っておく】

じゃあ私もグラオザームさん、って呼ばせて貰うッス。

【姓の方で呼ばれたのでこちらもラストネームだろう方の名で呼ぶことにする】

そッスね。楽しくいくッス!

【食事の時間は過ぎてゆき】
【頼んだ料理も全部食べ切り、自分のグラスの水を仰ぐ】
【心なしか水も普段飲んでいるものより高級な味がした気がした】

(…嘘ついたッス。私水の味なんて分かる訳がないッス。)

【密かに心の中でそんなツッコミをしておく】

【もしかしたらこの話題には触れない方が良いのではないかと思いつつも】
【現在の率直な質問を投げてみる】

グラオザームさんって何者ッスか?

【このレストランでも顔が知れていて、こんな値段の料理を頼んでも平然としている】

…それとも聞かない方がいいッス?

【なんとなくは予想がつく気がするのでそうも言っておく】


903 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/24(火) 21:18:41 U7iZ0R2Y
>>902
……グラスの中で淡いルビーのように煌めくブランデーを呷る。
これで三杯目だ。言うまでもなくブランデーのアルコール度数はかなり高い。しかもここに至るまでに彼はワインをボトル一本空けていた。
そうとうに酔いが回っていて然るべきなのだが……かなり強いのか顔色ひとつ変わっていない。もちろん言動や態度も変わらぬままだ。
そしていま四杯目を雪ぎながら、質問してきた少女に悪そうな笑顔を向けた。

「クヒ、知りたいかい――?」

……聞かない方が良かったかもしれない。
この手の後悔は本日何度目だろうか……だが過ぎ去った時間は戻っては来ない。

「つってもまあ大したモンじゃあないさ、単なる流れ者だよ俺は。実際この街に来てから二月も経ってないからなァ」

まあ……あまり信用しない方がよいのだろうが、嘘を言っている雰囲気ではなかった。
もしもこの男が彼女の思っている通りの職業だったのなら、人をだますことを得意としていても何ら不思議はないのだが……。

「そんでまあ一文無しってわけにはいかんから、いろいろとな? 前にいたところのツテやらなにやら使ったりして、いろいろとな? 稼がせてもらっているのさ」

きっとその、いろいろという部分を具体的に突っ込んではいけないのだろう。
そこをほじくるとあまりよくないことが起こる気がする。ここらでよすべきだと思う。l彼女の好奇心がそれを許せばの話だが。

「――さて、終わったのならそろそろ行くかい? 今度はどうするよ、これで終わりにしましょうってのはちと勿体なかろう? カジノもステージもバーもあるぜ。今日の催し物はなんだったかなァ、ノンアルコールのカクテルでも試してみるかい」

ウェイターを呼んで支払いを済ませつつ、少女を更なる愉しみへと誘うその顔は実に楽しそうに輝いていた。


904 : 【念理動力】 :2018/07/24(火) 21:32:28 r4nBusX.
>>903

流れ者ッスか…。

【ずばり嘘を見抜ける程心理学に明るくないが】
【嘘は言っていない…ような気がする】

『いろいろとな?』

【の部分にもっと突っ込もうかと思ったが】
【ここ一線でなけなしの理性か野生の勘かがそれを踏み留める】
【――――これ以上はいけない】
【少女の好奇心を超えてそんな予感がしたのだ】

了解ッス!

【深追いはやめることにした】
【今度はどうするとの問いに対しては】

流石に人様のお金でギャンブルしたいなんて言うほど私も落ちぶれちゃあいないッスが。
カジノの雰囲気ってやつはちょっと味わってみたいッス。見て回るだけでもいいんで、どうッスか?


905 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/24(火) 21:58:55 U7iZ0R2Y
>>904
人の金でギャンブルはいけないこと。
それは当たり前の感性で、しかしこの現実感を狂わせるような場にあってもその当たり前を保持できるというのは褒められるべきことに違いない。
だがそのような常識を鼻で笑って投げてるのがゲアハルトという男だった。

「おいおい見て回るだけなんてケチなこと言うなよ! 遠慮なんて必要ないんだぜ、一丁パーッと遊んでみようじゃねぇか!」

なぁに俺もやるから心配無用さと笑いながらキャッシャーに移動してチップを購入。
どさっとねむに押し付けた。たぶん、どうも、見えた限りでは六桁額を換金していたように思う。

「さあてそんじゃあ楽しい博打の時間といこうや、各々楽しく遊ぶとしようぜ! それとも一緒に回るかい?」

だいぶ溜め込んでいるのだろう――資金の出所は知るべきではないが――それだけぽんと払って痛くもかゆくもない顔をしている。
というか、そういう人間しか来ないような場所なのだろう、ここは。おそらくではあるがこれだけ出しても飽きるほど遊べる、ということではあるまい。


906 : 【念理動力】 :2018/07/24(火) 22:06:36 r4nBusX.
>>905
【こうもどさっとチップを押し付けられては】
【固辞するのも相手の気分を害するだろうか】
【勢いに乗せらるるがままにそれを受け取った】

といっても何をしたらいいのかもよく分からないので。
一緒に回らせて貰ってもいいッスか?

【受け取ってしまったとはいえ】
【相手の居ないところでそれを勝手に使ってしまうのも少し憚られた】


907 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/24(火) 22:24:56 U7iZ0R2Y
>>906
「そうかい? つっても単純なカードやらルーレットやらなんだがなァ」

言いつつ特に気分を害した様子はなく、揚々と少女をそれぞれのゲームの卓に連れ回し始める。
流れとしてはゲアハルトが賑わっているテーブルのところに行って、近すぎず、しかしうまいことゲームの内容が確認できる位置でルールを説明する。
ポーカーはテキサスホールデム。このチップは一枚いくらでこのテーブルの賭け金上限はいくら……というふうに。

そして最後にデモンストレーションという形で彼本人が加わってプレイする。このときは説明とかぶん投げて普通に楽しんでいた。
というか後半は単純にプレイしたくてうずうずしていた。それでも説明はきっちりこなしていたが……。

……ひととおり回り終え、ルールと共にゲアハルトのプレイスタイルというか、打ち方もだいたいわかっただろう。
それというのもこいつのスタイルが素人にも分かるほど超強気一辺倒だったから。たとえ揃っている役がブタに近い雑魚であろうと自信満々を貫いていた。
それが一種のブラフになって成果を挙げていたのもあるが……敗北を顧みない豪快な打ち方に運命の女神が目を止めたのだろうか、特にカード勝負でやたらと豪運を発揮していた。

「――と、まあこんな具合だが、どうだい面白そうだろう? 何か気になったヤツはあったかい?」

終わるころには彼のチップは倍くらいになっていた。


908 : 【念理動力】 :2018/07/24(火) 22:43:04 r4nBusX.
>>907

『何か気になったヤツはあったかい?』

【その問いに一番最初に思い浮かんだのはルーレットだった】
【これ自分の能力を使えば狙った場所に球を着地させられるのでは?】
【しかし直ぐにそんな安直なイカサマはやめるべきだと思い至る】

【ここは能力者の跋扈する街の一角なのだ】
【当然異能の類にも対策が取られているはずだ】
【下手な事をして問題になるのは避けたかった】

ポーカーやってみるッス。

【そこまでポーカーフェイスや心理戦に自信がある訳でもないが】
【ルールをある程度知っていて、且つシンプルなゲームということでそれにした】
【多分ルーレットの方が単純明解だが】
【万が一、無意識にでも能力発動したらマズいなと思ってでもある】


909 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/24(火) 22:57:44 U7iZ0R2Y
>>908
「ポーカーか、なるほどいいねえ面白いゲームだ。心理戦の醍醐味が味わえるぜ、楽しんでみるといいい」

心理戦――そういいながらも先ほどの彼は心理戦のしの字もなかったように思えるが。
各ゲーム数回程度しかしていないものの常に自信に満ちあふれた様子で上限額いっぱいまでベットして他プレイヤーの眼を釘付けにしつつ、なんだかんだで役の強さでごり押し勝ってきたようにしか見えなかった。

まあそれはいい。
カジノでポーカーといえば一般的にはテキサス・ホールデムだ。プレイヤーでテーブルを囲み、各二枚ずつカードを引いた状態でまずベットする。ここで降りるか勝負するかを決めるのだ。
そこから全プレイヤー共通のカードをまずは三枚、次にもう一枚、最後にもう一枚……計五枚、開いた状態で置かれるカードと自身の二枚を組み合わせて強い役を作り、最後に勝負するという流れ。

さて、彼女は首尾よくテーブルに着くだろう。ちなみにゲアハルトはねむの後ろでニヤニヤしながら勝負の行方を見守っている。


910 : 【念理動力】 :2018/07/24(火) 23:14:00 r4nBusX.
>>909
【首尾よくテーブルに着き、いざ!】

…………

【結論から言おう、彼女は惨敗した】
【元々直情的な性格の上に参考にした人物がいけなかった】
【即ち強気でドカンとベットしたはいいが】
【手札は揮わずジリ貧になってあえなく散財というもの】

…折角分けてもらったのに申し訳ないッス。
でも、雰囲気はちゃんと楽しめたッスよ。
欲を言えば勝ちたかったッスけど、多分こういうのは自分のお金でやらないと駄目なんスね。きっと。


/すみません。ゲーム中の描写が難しいのでキンクリさせて頂きました


911 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/24(火) 23:28:22 U7iZ0R2Y
>>910
………ゲームの始めも、中途も、負けが込んできた最後の方も、男は一貫して楽しそうだった。
別に彼女が負けるのが面白かったということではない。いやそれもあるのだろうが、しかし男は仮にねむが勝ったとしても笑顔だっただろう。
勝ち負けにこだわらずギャンブルそのものを楽しんでいるというか……それこそ彼女と同じく、雰囲気を楽しんでいるというのでも違和感はなかった。

「気にするこたァねェよ。勝ちは勝ち、負けは負け、それぞれ楽しめたのなら上等さ。金持ち連中にいわせりゃ博打なんてモンは散財を楽しむことだそうだからな」

言いつつ、彼女がゲームに興じている間にボーイから受け取っていたのだろう、さっぱりめのノンアルコールカクテルを差し出した。
熱中していて気づかなかったかもしれない。自分はゲームを肴にちゃっかりバーボンなんぞ飲んでいた。今も片手にグラスを持っている。

「さてさてどうする嬢ちゃん、まだまだゲームはあるぜ。他にも楽しみたいってんなら当然付き合うし――」

そこでいったん言葉を切って周囲をぐるりと見渡した。
音と光が溢れている。紳士淑女が財を溶かす夜の遊技場は今日も問題なく運営している。
煌びやかな場所だ――改めてそう思う。人の業と欲が、ここには存分に渦巻いている。……実に心地のいい場所だ。

「少々疲れたってんなら、ここらを散歩してみるってのはどうだい? 御覧の通りの賑やかさだ、ゆっくり歩いてみるだけでもそれなりに楽しいもんだぜ」


//いえいえ、自分としても助かりました(笑)


912 : 【念理動力】 :2018/07/24(火) 23:38:39 r4nBusX.
>>911

ノンアルッスか。それなら頂くッス。

【差し出されたカクテルを受け取る】
【ノンアルコールとは言えど普段は口にしない味は特殊な場所柄も相まって格別な気がした】

そうッスね、ちょっと疲れたッス。散歩しましょう。

【彼女にしては目まぐるしいまでの非日常を体験したのだ】
【ここは少しばかり休憩とした方がよいだろう】


913 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/24(火) 23:57:19 U7iZ0R2Y
>>912
そうかい、と機嫌よさそうにひとつ頷くと、言葉通りゆったりとした足取りで先導し始めた。

……仕立ての良い紳士がブラックジャックに興じている。詰めを大きく読み違えて大敗を喫した。彼はそれでも笑っていた。
……四人のギャンブラーがテーブルを囲んでいた。配られたカードを確認した。彼らは一様に顔色を変えなかったが、そのうち一人は微かに眉が動いた。残りの三人はそれを見逃さなかった。
……よれたスーツの男がスロットの前に座っている。彼は血走った瞳で回るリールを見つめていた。やがて白目を剥いた。

六堂ねむ、ゲアハルト。整えられた空気の無臭に混じって僅かに金の臭いの混じるなかを、彼らは回遊魚のように歩いていた。
男は笑っている。ここに足を踏み入れた時から些かも変わらず。楽以外の感情を知らぬとでもいうかのように。少女は……どうだろうか。

やがて彼はホールの両翼から伸びる階段を登り始めた。この施設はホテルでもある。登った先は通路になっていて、客室なのだろう豪奢な扉が横にいくつも並んでいた。
奥まで辿り着くとそこで足を止め、装飾の施された手すりに肘をついて階下を眺めた。……先ほどまで二人がいた場所……多くの人間が集うカジノホールの輝きがそこにはある。
左手に持ったグラスから他に何も混じらぬ琥珀色の液体を一口含んで、呵々と笑いながら問いかけた。

「どうだい嬢ちゃん、ここまでの感想を聞こうじゃないか。楽しめたかい? 素晴らしい非日常は感じられたかな?」

彼の瞳は真っ黒なサングラスに隠れて見えなかった。


914 : 【念理動力】 :2018/07/25(水) 17:34:02 tnsexAUs
>>913
【ブラックジャックに興じる紳士】
【テーブルを囲むギャンブラー達】
【スロットの前で白目を剥くよれたスーツの男】

【それらの光景は再度言うが少女にとっては紛うことなき異世界、非日常】
【正しく彼女が求めていた 面白そうなこと の一端である】

【だからここまでの感想を問われて】

大満足ッス。これでまた一つ自分の知らなかった世界を垣間見る事ができたんスから。

【にしっと笑い返した】


/置いておきます


915 : 【英雄譚】 :2018/07/25(水) 19:29:53 h76ptMh6
>>901
【顎へは命中した。だが相手は倒れなかった】

……!

【なんという男だ。まさかカウンターにまで転じてくるとは】
【予想していなかったわけではない。だが、実際に目にしてしまうと面を喰らい】
【咄嗟に、左手を相手の刃の前へとかざして】

       キメントバリ
波動――「奇綿帷」!

【直径50センチ程の円形バリアを展開する】
【しかし、咄嗟の防御ゆえ、充分な強度には構築できず】

ぅ゛ぐぁッ……!

【回転切りを喰らったバリアは、ガラスの如く砕け、衝撃で英雄の体が吹き飛んだ】
【受け身を取り損ない、横向きの姿勢で砂埃を立てて倒れる】
【その手に握った刀が、形を保てず、ただの光に戻っていった】
【……エネルギー切れだろうか?】

君の一撃は一撃は、とても重たいな。
君の信念が丸ごと伝わるようだ……。

【数度咳き込むが、英雄の目はまだ戦意が失せていない】
【もし、追撃に向かわなければ、英雄は体を起こそうとするだろう】


916 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/25(水) 19:45:16 g1s1.ghI
>>914

「――本当に?」

男が口角を吊り上げた。
向き直るその表情は逆光でよく見えない。豪奢極まるシャンデリアと華美なカジノフロアの輝きを背に受けたその姿は、まるで極彩色の後光が差しているかのようにも見えた。
深度を増したその笑顔は先ほどとさして変わりはしない。だが気のせいだろうか何かが違って見える気がするような。

「嬢ちゃん、楽しんでくれて嬉しいが満足するにはだいぶ早いぜ。こんなものはほんの入り口にすぎないんだからなァ」

黒いレンズの奥から少女を見つめる目が、その赤い双眸が爛々と輝いていた。
まるで劇の開演を心待ちにする子供のように……あるいは楽しく踊る瞬間を舞台袖で待っているピエロのように。

「とっておきのアトラクションを用意しているんだよ。とびっきり楽しい演目さ、ここにいる連中だってそうそうお目にはかかれない最高のショーだ。嬢ちゃんさえよければすぐにでも始められる。どうだい?」

一緒にそれを見てみないかと誘う様子はまさしく彼女をここに連れてきたときと同じもの。
その結果として六道ねむはここにきた。十代の少女が滅多に足を踏み入れられない大人の遊技場で遊ぶことができた。
だから理屈で考えるなら今回もきっとそうなるだろう。危なげなのは見た目だけで蓋を開けてみればちょっとした火遊びくらいで済むだろうと、そう考えても不思議はない。

だが……ああしかし何故だろう?
この男の表情に、たとえようもなく不吉なものが混じっているような気がしたのだ。


917 : 【不撓鋼心】カウント3 :2018/07/25(水) 20:23:04 g1s1.ghI
>>915
根性論によって成し遂げられた反撃が功を奏した。
かの白い光を練り上げて構築された防御の盾を黄金の光が砕き散らす。
衝撃のままに後方へと弾き飛ばされた相手、決定的なその隙を逃すまいとしたが、しかし……。

こちらとて脳への衝撃は確かに通っていたのだ。我慢は出来ても補填はできない。
ぐらつく視界――ゆえに踏み止まって頭を振り回復に努める。絶好の隙を見逃すことにはなったがこれにより完全復帰を果たす。

「いいや、足りんさ――技も力も未だ未熟。極みの領域には程遠い」

再び青年を見据えた眼光は、やはり些かも衰えてはおらず。
気炎万丈、どんな痛みもこの足を止める理由にはならぬとばかりに、鋼鉄の理性によって制御された戦意の炎はひたすら高く舞い上がる。
だが戦意を失っていないのはあちらも同じ。カーツワイルは当然のようにそれを分かっていた。

「だがしかし、いいやだからこそ、心の力では断じて譲らない。たとえ技体で著しく劣ろうとも、負けるつもりは微塵も持たん。俺は勝つ」

負けて当然、勝てるわけがない……そうした心の弱さを切り捨てて、あるいは始めから持っていないかのように、光り輝く魂が壮絶な覚悟を垣間見せる。
倒れ、せき込む青年を、立って見下ろすカーツワイルは油断の欠片もない眼差しで見据えていた。
相手の能力によって形成された獲物が形を失おうとも燃料切れとは思っていない。たとえそうだったとしても必ず戦う手段を残しているはずだと輝く剣を構え直す。


918 : 【英雄譚】 :2018/07/26(木) 08:45:11 x1S1f18A
>>917
……貪欲だな。勝利と、強さに対して、

【膝を立て、体を起こす】
【よろけながらも、顔の泥を手の甲で拭い、相手が姿勢を正すのを待った】

【――おそらくこれが最後の一撃になる】
【波動の強さは、人々から得た「信頼」と比例する】
【この世界では、すでに英雄を知る者が失せて、全盛期ほどの力は出せない】

【だが、目の前の人物、「メルヴィン・カーツワイル」は、】
【少なくともこの英雄を、信頼に足る人物と見てくれている】

英雄は――、独りでは存在できない。

【小さく呟いた】
【彼がいなければ、波動の武器化さえも儘ならなかったろう】


メルヴィン、いつか君にも分かる。
英雄は――、人に守られながら、人を守るんだ。


【右手の四指をそろえて、相手に向ける。】
【五歩ほど離れた相手に向けて、最後の波動を――】

     ハクオウダン
波動――「白鴎弾」!

【50センチ大の鳥の形をした波動弾を、放つ】
【まともに当たれば、後方に吹き飛ぶほどの衝撃を受けるだろう】

【そして、一歩遅れて、英雄も駆けだす】
【波動が放つ光を隠れ蓑に、わが身を二の矢とする戦術だった】


919 : 【念理動力】 :2018/07/26(木) 18:01:44 a0jpywMM
>>916
【現状少女からのゲアハルトへの印象は】
【 色々と奢ってくれるいい人 である】
【しかしながら今にあって尚、最後の一歩の所で完全には心を許してはいなかった】

【何故なら彼が自分にここまでする理由が一切分からなかったから】

【故に極力顔には出さない様に】
【気取られない様に心の中でいざとなった時を想定しながら】
【不吉の気配の混じったその問いに返した】

とっておきのアトラクションッスか。もちろん気になるッス。

【少女の能力は 念動力 】
【不可視の力場を操る力はやろうと思えば予備動作を必要とせずに行動に移れる】
【最も相手の力量も分からぬ上、諸々の事情があり】
【行動に移すなら 逃げの一手 に限られるのではあるが】


920 : 【不撓鋼心】 :2018/07/26(木) 22:50:51 3JRtyIB.
>>918

「英雄、か」

感慨を噛みしめるかのように重々しく頷いた。
そうだ――英雄とは、いいや人間とは、独りではいられない。
たとえたった一人で生きているように思えても必ず誰かの、何かの影響を受けて生きているのだ。真に孤独になったとき、人の心は正常を保てない。

「そうだな、そう在るべきだと心から思う。我も人、彼も人……英雄もまた人間なのだと、忘れてはならん」

そう……だからこそ、自分は英雄とは程遠いモノだと強く自戒する。
正義? いいや否、そのようなものではない。自分を英雄と呼ぶ人々の期待に応えるべく全身全霊邁進するが、忘れてはならない。
それはとんでもない間違いで、過大というにもおこがましいくらい見当はずれの評価なのだということを。

「そうした輝きを護らんと願うからこそ俺は征こう。全霊で挑み乗り越えていくことこそ、尽くすべき礼であると信じるゆえに」

弱き人々を護りたい、本当だ。奪われる笑顔と希望を一つでも減らしたい、本当だ。
だがしかしそれ以上に、メルヴィン・カーツワイルという男の本質は……この胸の奥底で燃え上がり続ける炎の根源は……。
己の真実を、自身の歪みを、余さず自覚しそれでもまったく止まらず緩まずに……決意したから、ただそれだけの理由で決して停止を選ばないからこそ踏み出した。

担ぐようにして構えた剣から黄金の光が迸る。
それは火だった。持ち主の魂を具象化したかのように、煌びやかに輝きながら触れるものみな焼き尽くす炎として発現する。
選択したのは正面突破。奔る黄金光の刃と白光の鳥が激突し、衝撃を食らった剣は使い手ごと吹き飛ばされて――否。耐える! 両腕の筋肉と骨が軋む音を聞きながら、またも限界以上を振り絞って真っ向から斬り裂いた!

しかしそれでは終わらない。斬り裂いた鳥の背後、波動を放った英雄が迎え撃たんと迫っている。
――だが男の顔に驚きは無かった。読んでいたのだ。かの強い光は我が目をくらませ得ると見破っていた。
ゆえに切り下した剣をすぐさま跳ね上げ返しの太刀を放った。急制動からの攻撃に身体が耐えきれず両腕と脚の筋線維がいくらか断裂したが頓着しない。こんなもの、無理の内にも入らないとでも言うかのごとく。


921 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/26(木) 23:25:11 3JRtyIB.
>>919

「それでこそ――」

色づく光に照らされた彼の影が悪魔のように揺らめいた、気がした。

そうしておもむろに懐に手を突っ込むと、金属質の黒い何かを取り出した。
それは円筒形の棒のように見えるもの。ジッポライターにするのと同じように蓋を開けると、赤いものが露出した。
あれは――スイッチ、だろうか。

ゲアハルトはそれを躊躇なく押した。

このカジノホテルについての話をしよう。

場所柄ゆえに想像はついていただろうがここを運営しているのはマフィアだ。だが一枚岩というわけではなく、大きく分けて二つの派閥に分かれていた――先日までは。
現頭目の派閥と大幹部の派閥。血気盛んに頂点の座を狙う大幹部とそれを防がんとする頭目、および数名の幹部は表向き冷戦状態を保ちながら水面下では血なまぐさい暗闘を繰り広げていた。
しかしある日、ふらりと現れた流れ者の働きによって両陣営は和解することとなる。決して良好とはいえぬものの、これからは協力して組織を運営しようと約定が交わされる運びとなったのだ。

――和解の印として、頭目には流れ者も共同で用意した贈り物がなされたとか。

どこかで、何かが、爆発する音がした。

……階下が俄かに騒がしくなってきた。そう考えているうちにカジノフロアの一角で悲鳴があがった。
見れば憤怒に顔を染めた男が多数の黒服を従えて進んでいる――その手には銃が。むろん後ろの男たちが構えているものも。
彼らはフロアに留まり困惑した顔をしていた仕立ての良いスーツの男に向けて発砲を開始する。一瞬、驚愕に歪んだ男が弾雨に踊り首から上を吹き飛ばされて絶命する。
それを見た少し離れた場所にいた黒服がトランシーバーを取り出し、急いぎどこかに連絡した。ほどなくして別の一角からまた武装した集団が現れる。先の男たちへ先制攻撃、だが銃弾の雨を浴びせられても怯まず戦闘を開始した。
戦線が拡大していく。戦闘規模が膨れ上がっていく。もはや十や二十では到底きかない。ここだけでも百人近いマフィアたちの内部抗争が勃発している。
逃げ出す客にも構わない。流れ弾で紳士淑女が次々と倒れていくが関係ない。煌びやかな夜の遊技場は今や戦場と化していた。

「――どうだい六堂の嬢ちゃん。面白かろう?」

そんな中にあって、流れ者は今宵最高の笑顔に表情を歪ませながら階下の戦争を眺めていた。

「これが非日常だ。これが非常事態だ。カジノやギャンブル程度じゃあまったく味わえない、特別な瞬間がここにある」

心の底から愉快で堪らないというように笑い声を漏らしながらサングラスを外した。
真紅に輝く山羊のような瞳が血塗れの銃撃戦を映している。楽しげに歯をむき出しに笑う男の気配は、しかし先ほどとさしたる変わりはなくて……。
それが逆に異常を極めていた。つまりとつぜん別人格に入れ替わったとか、今まで本性を隠していたとかそういうことじゃなく、まったく素面のまま今まで少女と遊んでいた男が今度は何の気なしに何もかもぶち壊しにする戦争を引き起こしたということに違いないのだから……。


922 : 【英雄譚】 :2018/07/27(金) 08:23:52 eH5Sb69I
>>920

フフッ、自分のカラダくらい労わってやれ

【英雄もまた驚かなかった】
【彼は凄まじい男だから、自分の行動くらい読んでくるだろうと】
【しかし、筋線維等にダメージを受けながらの迎撃は思っても見なかったので、】
【苦言を囁きながら笑んだ】

【かくいう英雄はというと、】
【左肘を犠牲にして、彼の剣を止めたのだ】

【波動を皮膚下に満たして、骨の硬度を補強】
【だが、それでも刃が、くの字に曲げた肘に埋まりきってしまっている】
【縦に裂けた肘から、おびただしい血が、地面と英雄の靴先を汚した】

【肉も骨も斬らせてやった】
【真正面から、彼の両蒼を見据えて、明瞭な声で告げた】


  「君と出会えたことを、誇りに思う。」


【そして、右拳を握りしめて、彼の顔面を殴ろうとする】
【波動は左肘に集中しており、右手に波動は籠っていない】
【英雄本来の腕力による、最後の一撃であった】


923 : 【不撓鋼心】 :2018/07/27(金) 19:07:53 WBzAu5tY
>>922
命中――否! 止められた! 自らの左腕を盾にして決定的一打を避けたのだ!
凄まじい男だと思う。決定打を防ぐためとはいえこうも躊躇なく肉体の一部を差し出せるだろうか?
余人にはできぬ。効果的であると分かっていても、それでも痛いものは痛いのだ。損傷を避ける生物の本能が必ずストップをかける。それを振り切ってみせるとは……。

どこかが、ほんの少しであるが、自分と共通するところがあるのだなと思う。

刃は抜けない――彼の肉と骨に、深く食い込んだゆえに簡単には離れないと確信した。
それは確認するまでもなく、確かめてみるまでもなく承知済み。この男が半端な真似をするわけがないと信頼にも似た感情が既に芽生えている。
振り上げ、引き絞り、返しの拳打を放たんとする姿が、脳内麻薬の賜物かスローモーションで見えていた。

あれが自分にとっての決着になるだろうと奇妙な確信がある。
ただの拳。ただのパンチ。だがあれを受けることがすなわち自らの敗北を決定づけるのだと、男の魂が裁定していた。

――だがここにおける敗北とは、それほどまでに避けねばならない事態なのか?
見るがいいこの英雄を、彼は赦せぬ悪とは程遠い場所に立つ漢だ。尊重して然るべき人間、自分としてもそこに厭はない。
そもそもこれは単なる模擬戦……命の奪い合いなどでは端からない。だのに彼は左腕に深い傷を負った、他ならぬ自分の刃によってである。

ならばその詫びという意味も込めて、ここは大人しく敗北を受け入れるべきではないのか……?

「――貴殿に最大限の敬意を払おう」

――否! 否である! これだけ激しくぶつかり合ったからこそ、決着の瞬間に他意が混じってはならない!
全霊を尽くして、全力を振り絞って、その末に敗れたのならば潔く認めよう。だが今この瞬間、打てる手があるにもかかわらずそれをしないことは彼に対する侮辱に他ならないのだ!

ゆえにこそ男は動いた。食い込んで身動きが取れなくなった己が得物を、躊躇なく手放す。
そうして悲鳴を上げる体にまたも鞭打って繰り出したのはやはり拳だった。男が持っている最後の武器。限界の二文字を突破して突破して突破した一撃!

クロスカウンターの形を取って交差する二人の拳。英雄の一撃がカーツワイルの顔面に炸裂する。
と同時に、カーツワイルの拳が――。


924 : 【念理動力】 :2018/07/27(金) 21:08:17 Ud24xm7.
>>921
【そしてゲアハルトが取り出したのは】
【円筒形の何らかのスイッチらしきもの】
【それを押した直後、どこかで、何かが、爆発したようだ】

【やがて階下が騒がしくなり、次いで悲鳴があがりだす】
【銃で武装した何十人、百人にも届くだろうかの黒服の集団が現れ戦闘を開始した】

『――どうだい六堂の嬢ちゃん。面白かろう?』

思ってたよりずっと最悪の状況になったッス!
あの人数で銃で武装してるとなると私じゃどうにもならないッスね。
…逃げてもいいッスか?

【非日常は望んでいたが軽々に命を捨てられる程酔狂でもない】
【一先ずこの騒動の元凶であろう男に問うてみるが】


925 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/27(金) 22:38:14 WBzAu5tY
>>924
少女の様子を見たゲアハルトはちょっと驚いたようだった。
なんだこの娘、意外と肝が据わっているなと。突然こんな状況に放り込まれてもさして動揺していない。
錯乱まではないにしてもそれなりに慌てると思ったのだが……こいつは僥倖。思った以上の掘り出し物かもしれんと、更に笑みを深めた。

「まあ逃げたいってんなら止めはしないがよ、難しいと思うぜ? なんせあの通り入り口までガッツリ兵隊がいることだし――」

言われて、見ればその通り。両陣営のトップを逃がすまいとする黒服たちの集団は入り口付近で最も激しい銃火を交わしている。
考えてみれば当たり前だ、撤退するにしてもなんにしても出口こそが最重要地点。あそこを押さえた陣営は少なくともトップ死亡という致命的自体だけは避けられるのだから。

「それにいざとなったら守ってやるよ、言ったろう? 当事者にはならねぇってな。程よく渦中から離れた場所から楽しく見物しようじゃねぇか」

横に合った部屋の扉を接合する蝶番の部分、地面に近いその方を蹴り壊し、ドアノブを持って上の方にある蝶番からドア自体を文字通り引き千切って切り離した。
高級そうなドアが一瞬で巨大な木の盾に変わる。軽々と振り回したかと思うと少女の横に重い音を立てて置き……直後にそこへ流れ弾が命中した。彼女の身を守ったドアは抉れ、高級そうな模様が台無しになった。


926 : 【念理動力】 :2018/07/27(金) 23:00:51 Ud24xm7.
>>925
【少女は決して同様していないという訳ではない】
【口調からも焦りの様な部分が見て取れる】
【しかしそれでも余裕がある様に見えるのは】
【現段階で実現可能そうな逃走経路が存在するから、である】

【抗争を繰り広げる一団は階下を占拠している】
【が、今いる上階までは未だ到達していない】
【故に手頃な窓から飛び降りれば脱出が可能】
【というのが現在彼女が考えている段取りだ】

【無論只人ならば窓を飛び出した直後、万有引力の赴くままに地面へ落下し死亡するだろう】
【しかし一時的にであれば重力に逆らうことさえ可能な彼女の異能を以てすれば】
【闇夜を滑空するような形で建物と建物の屋上伝いに逃走する事が見込める】

【という様な事を掻い摘んだ能力の説明と共にゲアハルトに伝えるだろう】

どうッスか?

【この逃亡作戦にはゲアハルトの脱出方は含まれていないが】
【そもそも彼が引き起こした アトラクション なのだから】
【彼自身はどうにかなる術を持っているのだろう、多分】
【今しがた見せた怪力の様な挙動からも只者では無いことは窺える】


927 : 【念理動力】 :2018/07/27(金) 23:01:41 Ud24xm7.
/ageそこねました


928 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/27(金) 23:17:43 WBzAu5tY
>>926
なるほどねえと男は頷いた。
結論からいうとその方法ならば彼女がここから脱出することは十分に可能である。
というか簡単極まりない。なぜならいま二人が立っている通路の突き当りにすぐ窓が敷設されているから。
彼女がマフィアにとって部外者である以上は彼らも追ってはこない。ましてや窓からこっそりともなれば、少女が一人出ていったということにすら気付くことは難しいだろう。

だから今すぐにでもここを出ることができる。
さっきも言った通り男にそれを止める気はない、始めから彼女をどうこうしようという気はこれっぽっちもなかったのだから。
ないのだが、まあ……。

「しかし残念だなァ、もう帰っちまうのか。始まったばかりだっていうのに勿体ねェ、こんな祭りはそうそう見れんぜ?」

落胆したように言いながらステンドグラスのようなはめ殺しの窓を蹴り破り、サッシに残った破片を払ってきれいにする。
気を取り直したように向き直り、にやついた笑みを浮かべながら気取った礼と気取った言葉を吐き出した。

「ではお帰りはこちらになりますお嬢様、またのお越しを――ヒヒ、気が向いたらそのうちまた遊ぼうや」

……その言葉に嘘はなく、帰ろうとしたところを後ろから、なんて他意はないのだろう。
出会ったときと同じ表情で彼女を見送ろうとしている。


929 : 【念理動力】 :2018/07/27(金) 23:33:18 Ud24xm7.
>>928
【自分の考える方法で脱出は可能であるとお墨付きを貰う】
【ともすれば今すぐにでも逃げ出したい所であるが】

【退路が確保されたことで再び好奇心が顔を覗かせるだけの余裕が生まれた】

因みに一応聞いておきたいんスけど。
これってこの後どう収束する予定ッスか?
私、人死にを 面白いこと にカウントできる程まだ狂っちゃあいないッスが。
ちょっと気になってるッス。

【ゲアハルトのさも残念げな態度に後ろ髪を引かれたか】
【蹴り破られた窓の前で振り返り、そう聞いてみる】


930 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/27(金) 23:45:29 WBzAu5tY
>>929
人死にが面白くないか――。
ああ、まあ、そんなもんだろうなと思った。楽しいことを求めているといってもまだ学生、裏の世界なんぞにはまるで関わりのない小娘だ。
自分が見るに素質はありそうだが……芽吹いていない種を花じゃないからと嘆いていても仕方ない。

「ああ、そこに関してもちょっと面白いことを考えていてな。まあこっちの方角を見ていてくれよ」

詳しく教える気は無いのだろう。ヘラヘラと笑っている。
しかし脱出しても収束したことは分かる、というような口ぶりだ。ということは……?
……少なくともいい予感はしないが、さて。


931 : 【念理動力】 :2018/07/28(土) 00:08:31 hJhhRiks
>>930
【六堂ねむは 面白そうなこと が好き】
【だがそれは今のところは学生がちょっと背伸びをして見える範囲程度に留まっている】
【この街の闇に踏み込むには精神的にも実力的にも まだ 早い】
【今後の縁によっては、或いはそちらの世界に興味を示す事もあるやもしれない】

【ゲアハルトの芽吹いていない種という表現は実に正しい】
【彼女は種だ】
【今はまだ蕾でさえ無く】
【根を下ろす環境、与えられる外的要因によっては如何な存在にもなり得る可能性がある】
【今回の騒動もまたその内の一つになったと言えるだろう】

そうッスか。じゃあちょっと離れた辺りから眺めててみるッス。

【そしてこの場からさる事を決めて】

今日は本当にご馳走さまッス。色々な経験を積めたと思うッス。
グラオザームさんの居る世界は私にはまだ早そうッスけど。
もし何かの縁があったら宜しくッス。

【さて、窓の外へ一歩踏み出して】
【少女は音もなく夜の闇へと去ってゆく】



【何件か建物の屋上を経由してカジノの光が遠巻きに見える辺りに着いて】
【彼の言っていた ちょっと面白いこと を見届ける為にふり返るが、さて】


932 : 【尽臓機鬼】 :2018/07/28(土) 20:44:03 fBnZ0FRM
>>931

「またな六道の嬢ちゃん、次があったらもっと面白いものを見せてやるよ」

去ってゆく少女の背に辺獄から響くような声が追いついた。
振り向いても男は当然ながらそこにはいない。だが彼方に遠ざかってゆく戦火の光から、確かな視線が送られていた。

……そして、ここに”部外者”はいなくなった。
存在するのは“当事者”たちのみ……すなわち今まさに殺し合いを繰り広げているマフィアと、彼らの調停と騒乱を一手に担った流れ者。
そう、他ならぬゲアハルト・グラオザームこそがこの事態を招いた張本人。でかい祭りを起こすために、両陣営の仲直りを本心から楽しみつつ手伝いながらそれを一手でブチ壊せるスイッチを握り込んでいた愉快犯。

マフィアたちとて馬鹿ではない。頭に血が上っている連中が大半だが、一部の人間は事態の真相を見抜いていた。
窓枠の向こうの闇を眺めるゲアハルトの背後から階段を登って数人のマフィアが殺到する。
拳銃から、サブマシンガンから、雨あられと降り注ぐ銃弾は盾代わりの扉を次々抉っていき――次の瞬間に凄まじい勢いで垂直に飛んできた扉にまとめてなぎ倒された。
蹴り飛ばした格好のままけらけらと笑う白髪の享楽主義者。倒れ伏したうちの一人からリボルバーを奪い取るやいなや男たちに止めを刺し、弾切れを起こした銃を捨てながら呟く。

「そんじゃあ最後の花火を上げるとするかな。クヒヒ、嬢ちゃんのお気に召すかねぇ」

そうして悠々と歩を進める。
向かう先はホテル地下……用意しておいた仕込みの最後の鍵を回すため、硝煙と血の香りを心地よく思いながら歩いていった。


――そうしてほどなく、”それ”は起きた。
彼女のいる場所にも容易く響いた爆発音。それを合図としたかのように、今までいたカジノホテルが最上階まで一気に炎上した。
よく見れば一階部分は木っ端微塵になっている、爆音の正体はこれだろう……そしてビルの基柱も、支柱も例外ではなかったらしい。

巨大なビルが――夜空を衝かんばかりの摩天楼が――燃えながら崩れてゆく。
まさしく人の権勢など砂上の楼閣だというかのごとく。富と欲望の象徴であったバベルの塔が炎に包まれ壊れ去る。
中にいた人間は誰一人生きてはいないだろう。少なくとも数百人の人間が跡形もなく吹き飛ばされ……あるいは今まさに焼け落ちながら死んでゆく。
こうして事態は当事者たちの皆殺しをもって収束する。以後あの場所でマフィアたちの抗争など起こりはしないだろう――物理的になくなってしまったのだから。

……遠く、誰かの笑い声が聞こえたような気がした。


933 : 【念理動力】 :2018/07/28(土) 21:01:42 hJhhRiks
>>932
【暫しさっきまで自分が居た場所を眺めていると】
【夜闇に響き渡る爆音、轟音】
【絢爛豪華たる摩天楼を覆いつくす紅い炎】
【あれはあの場所に残った一体何人の生命が燃えていく光なのだろうか】
【嗚呼。とんでもない人物と関わってしまったと思いつつも】

ちょっと刺激的が過ぎるッスよ…。

【引き攣ったようににやけてしまっている自分を仄かに感じた】


934 : 【英雄譚】 :2018/07/30(月) 20:01:04 6/K65piU
>>923

【拳は――届いた】
【自分の拳が、彼の顔面に当たったのを感じた】

【同時に、彼の拳も、自身に到達した】
【彼を真正面から見据えていたから、鼻と唇に彼の拳がめりこんで】

――っぷァ゛!

【膝から崩れ落ちる】
【右手を地面について、しゃがみこんだ】
【口を切ったらしい。鉄サビの味がする。鼻血も酷いものだ】

【左肘に埋まりこんだ剣を、引き抜く】
【血は――止まっている】
【波動で血管を塞ぎ、即席の止血をしたのだ】

【全て出し切ったかと思われたはずの波動が、まだ体に満ちているのは】
【おそらくメルヴィンが、戦いながらも、おれに信頼を寄せてくれたからだろう】

【「驚かせてすまなかった」】
【「君も怪我はないか?」】
【「おれの傷は気にしないでくれ、波動で自己治癒力を上げれば治りは早い」】

【彼にかける言葉が、脳を巡っていくが、】
【血混じりの咳をしてから、声に出したのは―――】


……良い、戦いだったな。


【手の甲で、鼻の下と口元を拭って、彼に笑みかけた】


935 : 【不撓鋼心】 :2018/07/30(月) 22:58:57 odT2RC3k
>>934

カーツワイルの頭が身体ごと大きくのけぞる。
たかが拳……だがすでに無茶を重ねた身体、積み重なったダメージ。そこにイイのを一発もらえばこのように身体は大きく傾ぐ。
そのまま背後に倒れ――は、しなかった。寸前で踏み止まり跳ね返るように前へと頭が戻る。

前方に倒れ込むような前傾姿勢が一秒未満。
ゆっくりと、だが澱みなく通常の姿勢に戻っていく。すなわち一本の鉄筋が通っているかのような立ち姿。
そうして今しがた戦った相手を映す双眸は、常の通りの鋼を思わせる光を湛えていた。

……口元が切れている。内側の頬肉も。鼻腔も同じ状況だろう。
手で乱雑に血液を拭った。見れば彼は自らの肘に食い込んだ刃を抜き取っている。
ある種の栓が無くなったことで、より多くの血が噴出することが予想されたが――どうしたことか血は止まっていた。
おそらくあれも、能力の応用だろう。かの白い光は武器の形成、射出のみならず止血にも応用できるのか。

翻ってこちらには、その手の応急処置の手段はなかった。
むろん薬を使えば可能だがそういう意味ではない、要は能力による治療が可能か否か。
これに関しては明確に否を示さざるを得ない。そもそも自分は異能力者ですらないのだ、そんなことができるはずもない。
だが彼を羨ましいとは思わなかった、ましてや嫉妬など。ないものをねだったところで状況が改善されるはずもなく、自分にある手札で勝負しなければならないのが世の常。その内で悔いの残らぬよう全力を尽くすことこそ肝要だ。

それになにより、ああ……まったくもって同感だったから。

「ああ、そうだな。……良い戦いだった」

神明に頷きながら、膝をつく英雄に手を差し伸べた。


936 : 【英雄譚】 :2018/07/31(火) 19:44:29 zTHrEgdQ
>>935

【彼の手をとり、膝に手をついて立ちあがる。】

フフ、またいつかやりたいな。
こういうの。

【背中に手を回し、外套を横に裂く】
【その布の端を噛み、左肘の傷口を固定するように、包帯代わりに巻いていく】
【英雄の外套が、肩甲骨に届く長さしか無い理由が、これで分かるかもしれない】

……名残惜しいが、そろそろ時間だ。
異界に行ってくる。
だが、近いうちに、こちらに顔を出したいな。
この世界で、また君に会えたら幸いだ。

【と、彼の顔の血の汚れが取りきれてないのに気づく】
【こんなものしかないが、と前置きをして、外套をまた裂いて、彼に手渡す】
【手ぬぐい代わりにしてくれ、ということらしい】

有り難う。
我が友、メルヴィン・カーツワイル。

【背を向けて、旅路へと歩き出す】
【英雄は振り返らない】
【また、彼と出会えるだろうという確信があった】

【雨は上がり、雲間から陽が差しこんでいた】


937 : 【不撓鋼心】 :2018/07/31(火) 23:03:49 1DtDUPtQ
>>936

いかなる時間にも、いかなる人間とも、終わりと別れはやってくる。
それまでの時間が長いこともあれば、驚くほど短いときもある。
いつだってその瞬間は突然で……だがそれは永遠の別離を意味するものではない。またどこかで、いつの日か再び、と……。
分かっていれば悲しみはない。たとえこの出会いが一期一会でしかなかったとしても、だからこそ悔いの残らぬように全力で生きている。

きっとそれを彼の英雄も分かっている。
だからこそ輝く道を歩んでゆけるのだろう。彼は真実、大切な人を助けるために生きている。

改めて顔を拭い……そして剣についた彼の血を拭いて、鞘に納める。
血液に汚れた外套の切れ端を握りしめて顔を上げる。去りゆく男の背が見えた。分厚い雲を斬り裂いてその姿を照らす陽の光は、まるで彼の道行を天が祝福しているかのようだった。

「――さらばだ、リレイト・N・ガラハド」

そして見送る男にも、また。
暗雲が晴れていく。天蓋が割れるように、暗がりを蹴散らして太陽が再臨する。
地表に降り注ぐ陽光は強く、強く……大地に存在する闇のすべてを浄滅させるかのように、天上にて輝く光は熱かった。

「貴殿に友と呼ばれる資格など俺にはないが、その信頼に応えるべく俺もまた進み続けよう」

そうして彼も、自らの道を再び歩み出した。
男もまた振り返らない。目指すべきは過去にあらず、輝く未来を掴むために。

――その日、一人の死霊術師が地獄に墜ちた。


938 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/08/06(月) 02:05:00 k9HHtY2g
とある街の大通り、沢山の人々が歩いてるそんな場所で
一人、ふらふらと歩く少年がいた。

「あづい…あづすぎる……」

空は晴天、うんざりするほどのカンカン照りである。
それも一日二日ではなく、此の所ずっとである。
こうも猛暑が続けば誰だってげんなりする。

「げ、限界…」

近くの木陰に移動しようとした矢先、脚の力が抜け
その場に崩れ落ちてしまう。だが、それを見えてないのか
それとも見ないふりをしているのか。
誰も、少年を助けようとはしなかった。
ローブに身を包み、顔もすっぽり隠れたそれは他人から見たら
訝し気にしか映らないかもしれない。
それでも、倒れた人を見過ごすなんて…

「ほんと薄情…だよねぇ」

誰に言うでもなく一人ごちる。立ち上がろうとして
ふと体に力が入らないことに気づく、そういえば
この数日、まともに食事をしてない。水も摂取してない。
熱いはずなのに、体はどんどん寒気が襲う。手足はしびれ
息も徐々に苦しくなる。

「み、水…」

か細い声を上げながらわずかに動く右腕伸ばす。
だが虚空を掴みて地面に突っ伏す。視界はぼやけ
思考もあやふやになってきた。

「あぁ…このまま…死んじゃうのかなぁ?」

言ってから気づいた、あれ?僕まだ涙でるのか…
頬から一滴の涙が落ちて行った。


939 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/08/06(月) 15:31:17 Sccz2Lm2
>>938
人々は日差しの下、暑さを避けるように陰を歩く。
この女もその1人。
この時間歩くにしては服装もカジュアルで荷物も少ない。仕事の一環には見えづらいか。表情は薄くとも流石にここ数日の酷暑は堪えるとみえ、額には汗が一筋光る。
それでも周りの人間よりは遥かに軽い歩み。慣れた道なのだろう。足取りにも迷いがない。

布靴を履いた足が止まった。

「……大丈夫?」

地に倒れ伏す男。その姿を見とめ女の声がこぼれ落ちる。心配というよりはふと口をついて出たという感じ。
腰を屈めると紫陽花色の旗袍が翻り、涼しげなスリットから太股が露わになる。ぼやけた視界でも輪郭がはっきり見える程の距離にしゃがんで顔を寄せる。
拳大のシニヨンに纏めた黒髪に少し顰めた細い眉。その下には黒曜岩に似た色の瞳。
樹から落ちた蝉でも見るような眼差しが男を見つめていた。

/置き気味になりますが、よろしければ……


940 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/08/06(月) 17:44:10 k9HHtY2g
>>939
このまま朽ち果てるのか…そんな事を思っていれば
目の前から声が聞こえる。
ふと突っ伏した顔を上げてみれば、目の前には女性が1人
こちらを見つめている。まるで死んだ虫でも見るような目だ。
心配しているようには見えない、でも縋れるのは眼前の人だけなのだ。
選択肢などあろうはずがない。

「大丈夫…じゃ、ないですね」

あはは。なんて苦笑いしながら女性に答えるだろう。
濁った赤い瞳で女性を見上げ、少年は動く右腕を前に出し
片合掌して目を閉じる。

「お姉さん。もし、少しでも憐れんでいただけるなら、水と食料をいただけないでしょうか?」

顔は真っ青、腹鳴りもしだして、出した手もプルプル震えている。
祈る様に救いを求める様に女性に懇願するだろう

/こちらこそ、置き気味になりますので大丈夫です
/宜しくお願いします


941 : 【不撓鋼心】 :2018/08/06(月) 19:19:20 3YOc9GRU
猛暑の続く最近では珍しく曇天の空だった。
人気のない小高い丘に吹き抜ける風はしかし爽やかとは言い難い。
太陽が隠れているからとて体感的に涼しくはなく、蒸し暑く生温い空気がじっとりと肌に纏わりついていた。

だがそんなことをまるで気にしていないように、木陰から一人の男が廃棄されたゴーストタウンの一角を睨んでいる。
どこか軍服を思わせる意匠の服装はこの気候ではどうみても暑苦しそうだが当の本人に汗ひとつ浮かんでいないのは、青い双眸に宿る強い意志力の為せる業だろうか?
金髪に、白い肌。長身。どちらかといえば細身の身体は、しかし頼りなげな雰囲気とは無縁。精悍な顔立ちも相まって引き締まった印象を与えている。

そして硬質な気配は腰に吊った得物でまた印象を深める。
長剣だ。柄尻から鍔までは無骨なものの、鈍い銀色の鞘は水が伝うような装飾が施されており、それが端的に言えば不似合にも思えたのであった。


942 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/08/07(火) 12:59:45 LOVyR4Q6
>>941
隠すつもりのない足音が砂地を踏む。それに伴い、日射に伸びた影が地面に黒線の余韻を残した。
その人物ーー身丈は目立って大きくはない。長身の男性からすれば何ら脅威に思えない普遍さである。
外見の特徴を挙げるなら、立て襟の洋シャツに袷と袴に学制帽。俯いた顔を上げた帽子のひさしから、猫の目の様な瞳を覗かせ細める。
彼が許すなら丘を仰いで木陰に辿り着き、幹に持たれ。そこで初めて、男の存在に気づいた様に微笑んだ。

「やあ、今日もいやに暑いね。ぼくは人より我慢強い方だと思っているけど、こう毎日では流石にうんざりだ」

書生じみた格好が言葉ほど暑さを感じさせないのは白を基調とした紫陽花模様が涼し気な風合いだからだろう。「ぼく」という呼称ながら女性らしいハイトーンの声音もまたそれに一役買っている。

女ーーそう、男装の女であるーーは男から目を離し、ステッキを片手にくるくると弄ぶ。
持ち手の先には、掌に収まる程の頭骨の意匠。それ以外の装飾は取り払われているが、持ち主の肌と同じ抜けるような白さが際立った。

/まだよろしければ


943 : 【不撓鋼心】 :2018/08/07(火) 20:03:46 0Bp0eyZM
>>942
足音を微かに捉えた瞬間、そちらを素早く振り返った。
向ける眼光は鋭い。生来のものも確かにあるが、事ここにおいては視線に宿る光には少しく剣呑さがあった。

それは彼の生業と、いま立っているこの場所に由来する。
賞金稼ぎ、それが男の肩書だ。そして彼の耳に、廃墟と化した街の一角を根城とする賊の存在が入った。
その者たちは罪なき女子供を攫い、犯し、そして殺し……思うままの悪徳に溺れているという。ならばやるべきことは一つだった。

ゆえにこうして偵察も兼ねて地理を確認していたわけだが、この場所は奴らのねぐらからそう遠く離れてはいない。
事前調査によればこのあたりはテリトリーから外れているらしいが、何事にも予想外の事態はつきものだ。
だからこそ、人気のないこの場所にあらわれた人物にはまず警戒。賊の一味ではなさそうであると確認した後に危険度を引き下げる。

「……涼を求めてここに来たのなら、すぐに引き返すことを勧める」

涼し気な姿をメタルブルーの瞳に映したまま、外見どおりに巌のように低い声が彼女を迎えた。

「付近に賊の拠点がある、数十人規模の集団だ。うろついていては危害を加えられる可能性も低くない」

眉間に皺を刻んだまま――これは不機嫌だからではなく元からだ――警告する、しかし内心では別の考えがあった。
彼女の出で立ち、飄々とした気風。どうも普通のそれとは違って見える。少なくとも、単にふらりと迷い込んだ一般人とは異なるのではないかと感じ取っていた。

……無論、巧妙に殺気や害意を隠匿した賊の一人という線も、まったくないではないのだが。
案じる言葉は本心ながら、同時に最低限の精神的備えは捨ててはいなかった。


//よろしくおねがいします!


944 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/08/07(火) 20:41:05 pWpn5PnI
>>943
「なんとまぁ、そうなのかい?」

射抜くような鋭い目付きにはのんびり微笑んでいた女も、その口から齎される物騒な報せには目を丸くする。
しかし帽子の下の瞳は、彼の勧めに倣ったまともな怯えというよりーー寧ろ遊び場を見つけた子供のような目の色で、口を丸く開いた。

一頻り驚いたふうに頷いて、男から目を逸らし思索に耽る。眼下の廃墟が望める地点まで行ってみて
癖なのだろう、ステッキを1つ回しては左手に打ち付け、それを数度繰り返し沈黙を破って振り返る。

「いやなに、ここまで足を伸ばしたのはそんなつまらない理由じゃない。何を隠そう君(キミ)を見かけたからさ。
気のせいなら済まないけど、丘の麓から覗いた君の横顔が困っているように見えたものでね」

元より行きがけの涼みではなく彼こそが目的であると、ごくあっさり吐露した。
当然、男と女の間に面識はない。
つまり一目見ただけでそうと思い立ち態々登って来たということになるが。
根拠が善意かは兎も角まともな感性とは言い難い。

「もし君がこの状況を好転させたいと望むなら、ボクがーーいや“ボクら”が手を貸そうじゃないか。
だからここは1つ、お互いの話に耳を傾けてみないかい?」

それでも、仰々しくはあるが決して彼の邪魔をする内容ではなさそうで。
笑顔ではあるがこの急な場においては少々邪な気も否定出来ない。
ステッキを地に突いて右手を差し伸べた。


945 : 【不撓鋼心】 :2018/08/07(火) 22:37:16 0Bp0eyZM
>>944
目当ては涼を取ることになく、他ならぬここにいる男こそが目的であると。
言われ一瞬、身構えかける。つまりおまえを排除しに来たのだと続いてもおかしくはない言葉だったが、それは杞憂。

困っているように見えたから――特にそういうことはなかったが、彼は自分の顔の厳めしさは重々自覚するところ。
しかしそういうことならば助けにやってきたということかだろうか。見も知らぬ他人同士である彼を? しかも刃で武装した、一見して穏やかならぬ気配を放つこの男を……。
真意を測りかねていた。悪意は今のところ感じられないが……純粋に善意ばかりとも言い難い。黒白入り混じった灰色と評するのが妥当か?

さてならばどうするべきかと、差し出された右手を眺めつつ短い時間で男は思索を巡らせた。

――端的に言うなら怪しい。疑わしくはなくとも胡散臭すぎる。 
まず賊の存在を耳にしても怯えるどころか楽し気な様子である点で一般人とは言い難かろう。彼の直感は当たっていた。
そこから判断すべきは、書生姿のこの女が好ましい人物か好ましからざる人物か。すなわち善か、悪か。
むろんその両極ばかりではない。現時点での印象はその中間といったところだが……判断材料はあまりにも少ない。

「ひとつだけ聞いておきたい。俺を助けることで、そちらに何のメリットがある?」

手を取らぬまま、探りを入れるべく切り出したのは単純な損得勘定の話。
この世は金で動いている、とまでは言わないが優先されるのは利益だ。
困っている人を見かけたら助けてあげなさいとはよく言われる言葉だが、ことが重大なほど人はそこにメリットを求める。
それはリスクに対する正当な報酬の要求で、自分のようにそこを度外視して動く人間の方が異端である。

ならばいったい、わざわざ危険な仕事に手を出してまで彼女が求めるリターンとはいったいなんなのか?
それに対する答えによって、おおよその精神性を計ることができると判断した。


946 : 【燃鷲遣剣】 :2018/08/13(月) 21:32:56 uTJBtmo2
【夜の路地裏には良からぬものどもが跋扈する】
【此れもまたその一幕】

緋鳥よ。満たされたか?

【指先に小鳥を止め囁く男】
【などと言えば牧歌的な印象を抱くかもしれないが】

【男は夜闇に紛れる暗い色のローブを纏い】
【腰からは西洋剣を下げているのが確認できるだろうか】
【見るからに不振で物々しい雰囲気】

【なにより彼の指に止まる“小鳥”は炎に依って彩られていた】
【そして男の足元には所々の部位が切断された、黒ずんだ焼死体が転がっているのだ】

【小鳥は首を傾げるような仕草ののち、燃え盛る様にしてその場から消失した】


947 : 【幽明異郷】 :2018/08/20(月) 20:03:42 JlO2D5BI
>>946

「……嘘でしょ」

彼女がその場に出くわしたのはまったくの偶然だった。
普段通りの仕事をこなし、人目を避けるために薄暗い路地裏を帰路とする危険性は承知していた。
しかし危険性といえどもせいぜいがチンピラ程度、この近辺にことさら危険な者はいないことはリサーチ済だった。はずなのだが結果はこれだ。

全身を覆う暗色の長外套。すっぽりと顔を隠すフードから覗くくすんだ銀の長髪。そして携えている布に巻かれた大きな何か。
気配は不思議と希薄であるもののばったり遭遇したこの状況では互いに気付かないということはありえない。
両者を共に、確実に補足している。となればこの状況、よからぬ事態が発生する確率は極めて高く……。

(どうする)

闇色のローブの奥で焦りに表情を歪めていた。
戦闘は避けたい。メリットもないのに、いいやあっても遠慮したいが、戦うなどまっぴら御免だ。馬鹿げているにもほどがある、だが眼前のこの男……。
どこからどう見ても尋常な輩ではない。まともに話が通じれば御の字というところ、ただで帰れるとは思えなかった。


//よろしくお願いします!


948 : 【燃鷲遣剣】 :2018/08/20(月) 20:35:07 RI0xXFhw
>>947

『……嘘でしょ』

【ちらと見やると男と似たような服装の女の姿が】
【どこか陰鬱そうな気配もまた近しく思う】

【しかし男は視線を、女とは別の何もない宙に向けて語りだす】

緋鳥よ。また餌がやってきたぞ。どうする。

【抑揚の無い低音は宛ら呪唄の如く聞こえるだろうか】
【それは男の話す“緋鳥”とやらの匙加減によっては】
【既に一触即発の間合いに入ってしまっていることを悟るには充分だろう】


/宜しくお願いします!


949 : 【幽明異郷】 :2018/08/20(月) 21:24:05 JlO2D5BI
>>948
"緋鳥"と、聞こえた言葉にますます顔を顰めて決して男の姿を視界から外さぬよう周囲を探った。
だが目に入るのは夜の闇、打ち棄てられた瓶の欠片や紙屑、それに焼死体だけ。それらしい人物など何処にもいない……。

――彼女がやってきたのは不幸にも彼のいう"緋鳥"が消えた直後だった。
指先に止まっていたそれを目撃することができれば、あるいはそれの正体に目星をつけることもできていただろう。
だが仮定に意味はない。彼女は炎の小鳥の情報を得てはいない。炭と化した死体から察するに炎熱系の異能力者だと予想はできるがその程度だ。

(協力者? それとも……どれにせよ状況は不利)

背に負う"モノ"に注意深く手を掛けた。その中身は杳として知れない。巻き方の妙か、夜の闇も手伝って覆われている物の形状を掴ませなかった。

「……こっちに戦りあうつもりなんてないんだけど」

一縷の望みをかけて、交戦を避ける意志を口にした。
今しがた殺人を犯しただろうに一切動じていない佇まい。そしてあの目……。
言って素直に逃がしてくれる相手のわけがない。だがそれでもひょっとしたらと、欲をかかずにはいられなかった。どうにか楽をしてこの場を切り抜けたいという、生存の欲を。


950 : 【燃鷲遣剣】 :2018/08/21(火) 10:53:47 XIJXycUA
>>949
【女の非戦の主張も完全に無視し男は結論へ至る】

そうか。まだ足りぬか。よかろう。
刻もう。焼べよう。お前に捧ごう。

【男の顔から窺えるのは病的なまでの無表情】
【快楽殺人者の類ではなく、何か苦々し気な背景を負っている風でもなく】
【ごく当たり前の事の様に殺人を行おうとしているということ】

【鞘から長剣を引き抜き剣舞の如くに三度刃を振るうと】
【刃から炎が溢れ、其れは小さな鳥の形を成して舞い上がる】
【生まれ落ちた三羽の小鳥は男の頭上の高い位置を旋回して飛んでいる】

【そして男は剣を構え、女の方へと駆け出した】


951 : 【幽明異郷】 :2018/08/21(火) 19:27:35 vwyBvzL6
>>950

こちらに敵意が向いたと見るや苦々しげに舌打ちを漏らす。

(やっぱり……!)

どうもそんな気がしていたんだと胸中でひとりごちる。
言葉は通じる。言語は同じ。しかし根本の部分が完全に狂っているから会話が不可能。
狂人。気狂い。人の皮を被ったモンスター。彼女はこういう手合いがもっとも嫌いだった。話が通じないその有様を嫌悪しながら恐れている。

空を切り裂くその軌跡から生まれ出ずるは炎の小鳥。
闇夜を照らす緋色の光。なるほどあれこそ件の緋鳥、浮かぶ姿はどこか神々しくも見えるが本質はまるで正逆のものであろう。まして使い手がアレともなれば……。

話し合いで解決という穏当な展開など端からなかったのかもしれない。
いずれにせよこれで選択肢は消えた、残るは一つ、戦って血路を拓くしか自分が生き残る道はない。
フードの奥で灰色の瞳が眇められる――。

次の瞬間、男の視界には薄暗く広がった何かが飛び込んできたことだろう。
その正体は広がった布。女が所持していた推定得物、それを隠していた覆いが一瞬のうちに剥ぎ取られ、対敵の視界を塞ぐように投げつけられたのだ。
刹那、夜闇に染み入るは静かな風切り音。暗がりに溶け込むように、“肉厚な湾曲した刃”が“横合い”から来襲した。
一撃で首を刈り取ってしまえば緋鳥も何も関係なかろうと。


952 : 【燃鷲遣剣】 :2018/08/21(火) 19:49:59 XIJXycUA
>>951
【接近し斬りつける】
【緋鳥なるものの存在によって多少複雑化はしているが】
【剣士である以上はこの基本動作は変わらない】

【その最中にて】
【男の視界を覆った一枚の布】

目暗ましか。ふん。

【即座に横一線に切り払い】
【刹那。刃からは再び炎が生じ、一羽の鳥の形を成して飛び立つ】

【そして女の持っていた長物の存在】
【この機に乗じて攻め来るなら突きか薙ぎかの二択】
【僅かな風切り音とある種の勘から後者であることを瞬間的に察知】

【横への切り払いから流れる様に上へ向けての切り上げへ】
【それによる攻撃の受け流しへと転じる様は】
【少なくとも只の熟練者よりも更に上の技巧を持つ手合いであると感じるに充分か】


953 : 【幽明異郷】 :2018/08/21(火) 21:59:09 vwyBvzL6
>>952
羽撃たく緋色の鳥が薄暗い覆いを焼き払う。
露わになった女の武装は大鎌。薄黒く長い柄に輝かぬ分厚い刃、およそ戦闘には向かぬ農具の印象、しかして草木以外の何かを確実に刈り取るだろう凄みを感じる刃だった。

(防がれた――!?)

それを振るう使い手はしかし、攻撃がいなされたことに驚愕と焦りを禁じ得なかった。
なぜなら今のは様子見などでは断じてなかったのだから。彼女は対する相手を欠片も侮ってはいない、自らの命を脅かす脅威として認識している。
ゆえに手心無用、初手から全力。容赦も呵責なく目の前の人間を首ひとつと肉の袋に変えようと動いたものの結果はこれだ。
相手の視界を奪う布、そこから襲い掛かる"大鎌"という予想の難しい武器による一撃。これによって多くの敵を葬り去ってきた実績があるだけに、通じないという現実は少なからぬ衝撃を与えたのだ。

逃げ出したい――今すぐにでも。
背を向けて走り出そうとする衝動を必死に抑えて思考を切り替える。
しくじれば死ぬ。仕損じれば殺される。逃れられない死の気配が、女に巣食う恐怖をいっとき忘却させた。

上方へ流された大鎌、その勢いを利用し巧みな手さばきで得物自体を"ぐるり"と縦回転させる。
詰められた距離を離すべく自身は後方へ跳びながら、長物のリーチは敵手を刃圏に捉えていた。振り子のように迫る刃は股間から頭頂までを一直線に切断する軌跡を描いている。


954 : 【燃鷲遣剣】 :2018/08/22(水) 17:33:56 LLlgTIoc
>>953
【弾き受け流された刃をぐるりと反転させ、即座に次の攻撃へと移る様は】
【成程、相手方もなかなかの手練れの様で】

【大鎌という武器の性質上】
【間合いの内側の相手には刃を曳き付け攻撃する事が可能だが】
【外側への攻撃手段はそうそう無い】

【故に相手が空けた間合いを逆手に取り】
【こちらも後方へ飛び退き刃圏より数歩分逃れる】

歓べ緋鳥よ。此度の獲物は活きが良いぞ。

【表情を変える事無く宣う様は不気味そのもの】
【男はその場にて二度空を切り、新たに二羽の緋鳥を呼び出した】

【男の頭上を旋回する小鳥の数は現在合計で六つ】
【現状攻撃を仕掛けるでもなく空を舞うばかりで其れらの脅威度は不明】
【しかし地面に転がる炭化した死体を思えば到底無害な存在だとは言い切れないだろう】


955 : 【幽明異郷】 :2018/08/22(水) 19:22:57 uyas05cI
>>954
男が考察したとおり、大鎌という武器は内側に強いが外側には刃を届かせることができない。
ゆえに一たび外に逃げれば再び攻撃するためには接近せねばならず……それ自体は他の得物でも同じことだがここで問題が発生する。
それは大鎌自体のサイズ。そして路地裏という地形が理由。端的に言って、巨大なこの刃を振るうにはこの場所は少々狭いのだ。

横方向に広い攻撃範囲を有する鎌はそれゆえに十全な性能を発揮できない。だから振るうとしたら縦にだが、大きく重いこの刃は当然だが急制動が効かない。
つまりこうして躱された今、別角度から追撃を行うというのが難しいのだ。下から上へ、あるいは斜めからという切り返しができない。
必然、次の行動は絞られる。その場に留まり体勢を立て直すか、または前進して再び相手を間合いに収めながら再び下から切りつけるか。考えられるのはその二択だろうが……。

いかなる考えをもってか女は前進せぬまま鎌を振るった――そして先ほど逃れたはずの刃はなぜか男を再び刃圏に捉えていた!
まるで得物の長さが急激に変化したかのような錯覚。だが何のことはない、これは単なる技術の為せる業だ。
トリックは単純、武器を振るいながら手を滑らせて柄を保持する位置を変化させたというだけ。ついさっきまでは中ほどを持っていた手は、今は柄尻近くまで移動している。

さながら急降下した猛禽が再度高く飛翔するかのように、あるいは翼を得た蛇が獲物へ飛びかかるかのごとく。
死神の鎌からは誰も逃れられないというように、一撃必殺の重さと遠心力を味方につけて加速した刃が再び緋鳥の操り手に襲い掛かった。

(……あの、鳥)

そう、緋鳥。
未だ援護も何もせず回天するだけの……異能の産物。
動きは一向に見られないものの確実に数を増やすそれらを警戒しないはずはない。呼び出すだけ呼び出しておいて放置するだけ、なんてことはいくらなんでもないはずだ。
確実に何らかの意図がある……だがそれが何なのかは不透明で見えてこない。だからこそ……。

(何かする前に、始末する)

静かな殺意を湛えた瞳で剣士を睨んだ。
そう、自身の異能力を使うことは避けたい一心で――。


956 : 【燃鷲遣剣】 :2018/08/22(水) 19:57:10 LLlgTIoc
>>955
【確かに相手の間合いから外れた筈だった】
【しかしまるで得物の長さが急激に展張したかの様に大鎌は再び男を刃圏に捉える】
【――――が】

子供騙しだな。

【武器の持ち手を滑らせて攻撃範囲を拡張するという技術】
【だが必定、武器の柄尻を持って振るうならば其の安定性を欠くことになる】

【とはいえ遠心力と重力を乗せ加速する刃と正面から搗ち合うのは無謀】
【しかし狙いを逸らし、躱すのならばこの男の技巧を以てすれば可能な事】

【頭上に迫る刃を側面から打ち払う様に剣をぶつけ】
【更に刃が逸れる方向とは逆方向に身を躱す】
【振るわれた刃からは七羽めの緋鳥が生まれ、火の粉を散らしながら群れの下へと飛び立ってゆく】

【夜空を舞う火焔の小鳥達は群でありながらまるで一つの生き物であるかの様な錯覚を覚える程に】
【統率の取れた動きで悠然と戦場を見下ろしている】


957 : 【幽明異郷】 :2018/08/22(水) 21:25:52 uyas05cI
>>956

(くそ、こいつ……!)

大鎌の重撃が、剣一本に打ち払われる。
下方からの一撃は完全に意表を突く攻撃だった。なにせ一度は間合いから逃れているのだ、それなのに相手は動いていないはずなのになぜか攻撃の届く範囲に収められているという事実。
まさにそれこそが一連の流れの骨子、既に回避したという確かな現実が事実誤認を引き起こすのだ。届かないという思い込みに囚われた敵手は棒立ちのまま断ち切られて絶命する。

はずだった、しかしその二段構えの必殺は失敗に終わる。
これはかの剣士が確かな剣腕と尋常ならざる見切りの力を保有しているということに他ならない。
正面から、なれど敵手の不意を打つ奇襲がことごとく不発した事実……認めざるを得ない、早期決着は難しいのだということを。

それに炎の鳥がまた増えた。
今は浮遊しているだけだが、あれが異能者の意を受けて襲い掛かってくればどうなるか。高度な連携をもってかかられればどうなるか……結果は火を見るよりも明らかだ。
殺した恐怖が再び鎌首をもたげた。喉奥からせり上がる悲鳴を必死の思いで押しとどめる。そんなことをしても何にもならないと知っているから……だが根源的な感情を完全に抑えることなどできやしない。

――ならば、と。
逸らされ、しかし未だ勢いを失わぬ大鎌を、肩を支点に一回転するに任せ……突き立てるのは彼女の背後、薄汚れたコンクリートの地面。
腕と、それから脚に力を込め、そのまま棒高跳びの要領で後方へと大きく跳躍して離脱せんとした。狭い路地裏は不利、そして万が一、追ってこなければ儲けものと。


958 : 【燃鷲遣剣】 :2018/08/23(木) 05:45:07 HNPKqA3U
>>957
【男は二度に亘るの大鎌の奇襲を往なし】
【その果てに女の選んだ行動は逃走の様で】
【しかし】

逃げおおせるつもりか。だが時は満ちたり。

【男は∞の字を描く様に剣を二度振るい】
【最後の二羽となる緋鳥を呼び出した】
【空を旋回する緋鳥の数は九つ】

緋鳥、緋鳥よ。今こそ発ちぬ。

【男が呪文の様にそう呟くと】
【空を舞っていた九羽の小鳥達は火焔の旋風の如く素早く一つに集まってゆき】
【やがて其れは煌々たる業火を湛えた人よりも大きな巨鳥の姿と化した】

【巨鳥は近づくだけでも身を灼き焦がす様な炎熱を纏いながら空を駆る】
【そして距離を空け離脱せんとする女の頭上を飛び越えて】
【回り込む形で退路を塞ぐ様に地に降り立つ】

さあ緋鳥よ。存分に喰らうが良い。

【男もまた女を追い詰める様に剣を構えじりじりと距離を詰める】


959 : 【不撓鋼心】【穢濁菌糸】【代傷魔術】【尽臓機鬼】【幽明異郷】 :2018/08/23(木) 19:18:54 UR6N.rOs
>>958
跳躍――しようとした足を急停止させる。
それは理論立たぬ本能によるもの。何かよからぬことが起きると、直感が裁定したゆえに半ば本人の意志とは無関係に動きを止めて……。
結果的にはそれが正解だった。

「――――!!」

息を呑む。声にならない悲鳴を上げる。
おお見るがいい、かの威容を。掌ほどの小鳥が集い混じりて、錬成されるは炎の巨鳥。
太陽の化身。闇と命を焼き尽くす地獄の不死鳥。業火を纏いし大いなる翼、緋色の鳳凰。

彼女はそれを目にした瞬間に死を悟った。
そうだ、気付いて然るべきだった――足元に転がる焼死体。あれの"焼け方"は少しづつ焼かれたようなものじゃない。
まさしく巨大な炎で一気に焼かれたようなもので……つまり先ほどまでの鳥の姿では違和感を感じるべきだったがもはや遅すぎる。
自分は負ける。鎌の扱いに少しばかり長けているからどうにかなる相手ではない。あの緋鳥に内臓まで焼き焦がされて死ぬだろう。

だから……もう使いたくないとか体の負担とか、そんなことを四の五の吐かす場合じゃなくなった。

「――出てこい死神……!」

絞り出すような叫びと共に、地面に叩きつけた掌から沸きだす何か。
それは黒い、暗い、闇色の粒子。夜の帳よりもなお漆黒、光の一切を拒絶するような黒の波濤。
暗黒の津波めいた粒子群はまるで意志を持っているかのように蠢き、大いなる緋鳥とその操り手の元へ殺到した。


960 : 【幽明異郷】 :2018/08/23(木) 19:19:21 UR6N.rOs
>>959
/名前欄ミスしました


961 : 【燃鷲遣剣】 :2018/08/23(木) 20:10:31 HNPKqA3U
>>959
【真なる緋鳥の威容を前には手練れの大鎌使いとて全くの無力】
【しかし奥の手を持っていたのはどうやら相手も同じであった様で】

【女が掌を地面に叩きつけた地点から噴き出した“闇”】
【否。闇の様な色をした粒子状の何か】

【それを出現させる直前に叫んだ“死神”という語句から連想するに】
【明らかに命を脅かすナニカであろうというのは察しがつく】

【大いなる緋鳥は警戒した様子で再び宙へと舞い上がる】
【粒子群が簡単には到達出来ず、且つ急行落下で即座に攻撃できる位置をキープして空に待機する】

【或いはその姿に違和感を覚えるかもしれない】
【人一人を容易に焼き尽くせるだけの力を持ちながら未知の事象を警戒する様】
【それは即ちあの緋鳥にもまた失うべき生命があるという事の証左】

死神か。大層な力を隠していたな。

【男もまた殺到する闇から逃れる為に後方へ飛び退く】
【その際に“其れ”は実体を持つものなのかを確かむるべく剣にて一閃】
【この結果次第にその先の対応を任せる事にした】


962 : 【幽明異郷】 :2018/08/23(木) 21:53:33 UR6N.rOs
>>961
――かかった。
そして、ああ、見たぞ。見たぞ見たぞ狂った巨鳥!
かの緋鳥は逃げた。未知の攻撃を前にして警戒心を起こし、一時退く判断は生物として当然至極のそれ。
そう、"生物"として! 命なき幻や魔術の産物ならばそのまま突っ込ませていればいいものを! 熱と炎と光のみながら、それでもお前は生きているのだ!

「――飢餓害獣(フェンリル)ッ」

ならば委細問題なし。死神の鎌はかの緋鳥を射程内に収めている。
闇の粒子を再び解放する。度重なる全力解放は行使した彼女本人にさえ多大な負担となって牙を剥くが歯を食いしばって耐えるしかない。

出現した暗黒はもはや剣士に構うことなく、炎の巨鳥のもとへと向かった粒子群と合流。
泥のように蠢動し、形を変え、現れたのは黒い巨狼の首。それは狼が本来もっている勇壮さや優美さとは無縁の、見るも悍ましい魔物だった。
乱杭歯を軋らせながら唸りをあげて涎を垂らし、煌びやかなものに喰らい付いては引き摺り下ろす汚らわしい冥府の害獣。終末の獣。

高みに羽ばたく鳳凰を墜落させんと、地獄より這い出た魔獣が天を穢しながら飛びかかる。それと同時に緋鳥が塞いでいた方向へ向けて全力で離脱を開始した。
剣士へ向かった粒子は容易く打ち払われた。その際に飛散した残滓が微かに体力を奪ったかもしれないがもはや関係ない。警戒して飛び退いた彼では、もはや逃げる彼女に追いつけまい。
そう……ここまで出来ても、男を打ち倒してやろうという気概はなかった。その力と戦術眼はいま、この場から逃げることにだけ向けられていたのだ。


963 : 【燃鷲遣剣】 :2018/08/24(金) 10:37:52 496.OqJM
>>962
【緋鳥が退いたのを機に】
【全ての闇の粒子が悍ましい狼の頭を模して其方へと襲い掛かる】
【そうか、狙いは初めからそれか】

緋鳥!

【男は叫ぶがもう遅い】
【フェンリル。神話に曰く大神を喰らった終末の獣】
【闇夜に浮かぶ日輪の如き火焔の巨鳥を引き裂き喰らう姿は正しくその様で】

【纏う炎熱で喰いかかる獣を焼け爛らせながら】
【苦し気な甲高い鳴き声を上げて、大いなる巨鳥は地へと堕ちた】
【鳥としての形を失い、一塊の大火となって揺らめき、やがて消え去る】

【その間に女はこの場から逃げおおせた】
【丁度男の進路を遮る様に緋鳥の巨体が落ちてきた故に】

【男はゆらりと向きを変え】
【女が逃げた方向とは逆へと歩みだす】

緋鳥は滅びぬ。幾たび殺されようとも。何度剣を折られようとも。いずれ必ず蘇る。

【ぶつぶつと譫言の様に呟きながら路地の闇へと消えていった】


/これで〆でしょうか。お相手ありがとうございました!


964 : 【幽明異郷】 :2018/08/24(金) 19:06:50 or3CQ09c
>>963
暗く薄汚い路地を女はひた走る。
息を切らしながら、人目と光をどちらも避けて……身に纏っていたローブで得物を再び覆い隠しながら、闇から闇へと渡ってゆく。
やがてどことも知れぬ路地裏で遂に力尽きたように崩れ落ちた。薄汚れた壁に背を凭れかけ、隠された大鎌を抱えながら乱れた呼吸を整える。

どれくらいそうしていたのか……いつしか空は曇り、分厚い雲から雨が降り始めた。
洗い流すかのような雨水はもとから希薄な気配をいっそう消した。呆けたように見上げる双眸に生気はない。
そうして濡れるに任せていた白いかんばせが突如、苦痛に染まる。呻き声を漏らしながら頭を抱え、華奢な身体を縮こまらせる。

……長い柄を杖の代わりにして、亡霊(レイス)のようにゆらりと立ちあがった。
くすんだ銀の長髪は雨に濡れて重く垂れ、俯いた表情は伺いしれない。

「……逃げよう。どこか遠いところに」

誰にともなく呟くと、こめかみを押さえながらふらりふらりと力ない足取りで歩き出した。
幽鬼のようなその姿は雨粒のカーテンに覆われてすぐに見えなくなった。彼女がそこにいた痕跡さえも。
彼女は消える。いなくなる。自身の命を脅かす者に立ち向かう気概も、排除したいと願う悪意も持てず。どこまでも中途半端な境界線上に留まるしかないから、燃え尽きた灰のように消え去っていくのだ。

一人の傭兵が、この街から消えた。


//お疲れ様でしたー!ありがとうございました、楽しかったです!


965 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/08/26(日) 20:19:11 YJ1kX6dc
曇りなく、月の光がよく照らす、そんな夜。
路地裏の奥へ奥へと駆けていく白髪の少年が一人。
茶ローブに身を包み、鋼の左手で右腕を抑えながら
足を動かすそれの右袖からはポタリポタリと黒い液体が
垂れ落ちており、焦りからかその口は苦虫を噛み潰したかの様に
ギリッと歯を噛み締めている。

走ってから数分してふと少年は足を止める。
目の前には壁、行き止まりである。
一瞬、顔を青ざめるが首を横に振り、壁を背にして
ズルズルと縋る様にして屁たれ込んだ。

「ここまで離れたんだ…もう大丈夫なはず」

そんな淡い希望も束の間、前から足音が
路地裏をこだまする。
ハッとして顔を上げたその視線の先には…


966 : 【気贄仙狐】 :2018/08/28(火) 19:28:05 qHByfs6c
>>965
【狐は特に理由もなく夜道を散歩していた】
【ある種の怪異でもある狐にとって夜は左程恐れるものでもなかった】
【そんなこんなで裏路地を歩いていると】

はて、なんじゃ? 人間の子供か? 何をしておるのじゃ?

【路地の壁にへたれこむ少年の姿を見つけたのだった】


/まだ宜しければ
/それと可能ならで良いのですがwikiに登録してある能力名を教えて下さらないでしょうか?
/ロールの参考にしますので


967 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/08/29(水) 20:08:55 oSAlFWVQ
気配は無かった。否、単純に油断していただけか…
こうまで接近を許すとは己がどれだけ平和ボケしていたか自覚してしまう。
積もり積もるは後悔ばかり、だが今更してもどうしようもない
歯を食いしばり、右手に力を込める。相手も油断しているのか
何も仕掛けて来ない。ヤルならば…今か!
そうして前を見ようとすれば…

「…へ?」

自分でも間の抜けた声だと思う。しかし、目の前の現実に思考が追いつかない。
前に目を見やれば狐が居たのだ。そう、狐。更に人語を解す獣となれば
常人の頭をフリーズさせるには十分であった。

「え?あっ…何をしてるか…でしたっけ?」

間の抜けた声を出してから幾ばくか経ち、そういえば相手に問われていたと
思い出し、先ほどの事を語りだす。

「いやぁ〜、散歩していたんですけどね?いきなり襲われたんですよ」
「びっくりですよね〜、慌てて逃げたんですけど行き止まりで肝を冷やしましたよ」

あはは〜なんて良いながら苦笑いをして捲し立てる。まるでそれ自体には何の恐怖も無い様に…

「それにしても、狐さんで本当に良かったよ」

少年は心底安堵したかの様にほっと胸を撫で下ろす。そして狐を見ながらにんまりと笑顔を浮かべた。

「もし来たのが人間だったら…僕はその人を傷つけていたから」

狐は気づいているだろうか?狐の後ろから近づく、黒い液体に…
音も無く、近づく幾数ものそれは半円を描きながら徐々に狐を取り囲もうとするだろう。


968 : 【気贄仙狐】 :2018/08/29(水) 20:39:08 6aTFZ.Y.
>>967

『いきなり襲われたんですよ』

ほほう、なんぞ人の世もほとほと物騒じゃのう。

【ぱっと見狐耳と尻尾を生やしただけの人間の子供にしかみえない狐だが】
【年寄臭い語調でふむふむと頷く】

『…僕はその人を傷つけていたから』

【続く少年の言葉に狐耳をピンと立て少々身構える】
【狐は狐である】
【だが相手が何をもって“人間”であると決めつけるのか分からない以上は】
【油断はしないに越したことはないだろう】
【狐は夜闇を無暗やたらに恐れぬが】
【伊達に長生きはしておらず、警戒すべきものは警戒する術をもっている】

そういえばお主、人間にしては少々変わった気配もするのう。

【音も立てずに背後から近づくものにはまだ気づききってはいない様子】


969 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/08/29(水) 23:27:53 58aKgyJU
>>968
「そう…ですね。物騒なもんですよ」

特に路地裏は殺伐とした場所である。
散歩にしては危険だが…目の前の狐はなぜこんな所にいるのか…?
ふと思案を巡らしていると、少年の言葉に身構えられた。
慌てて、両手を前に出し左右に揺らす。

「そんな警戒しないで下さい。言葉通りの意味だから…
狐さんは大丈夫ですよ?」

ニコニコしながらそういう少年の言葉には嘘が一つあった。
対象は人、ではなく人型。つまり狐も対象に入っており
もし戦闘になれば容赦なく殺そうとするだろう。しかし―――

(あくまで、もう一つのトリガーを引いた場合ですし、狐さんに限っては大丈夫でしょう)

現状、右腕はおとなしくしてくれている。このまま事なきを得れば無事に帰れるはずだ。

「……変わった気配…ね」

まだ右腕は袖の中、見つかっても包帯がぐるぐる巻きとなっているので
初見ならば気づかないはずだ。なのにそれに感づいているというのは

(流石狐さん、って事なのかねぇ?)

笑顔を浮かべながら額からは汗がじんわり垂れ落ちる。出来れば争いごとは避けたいが…
ふと、狐の周りにいる物に気づく。撒いていた粘液達だ。万が一のために用意した
それは何を思ってか狐を取り囲もうとしていた。半円から円の状態になろうとしており
目の前にまで出てくる粘液は警戒していなくても認識できるレベルだろう。


970 : 【気贄仙狐】 :2018/08/30(木) 16:53:01 jFRUbmuY
>>969
【狐は万物の“気”を喰らうという能力の特質上】
【何かしらの気配に対して敏感に反応する】
【尤も厳密にそういった能力を持っているのではなく】
【飽く迄、なんとなく、直観で感じる程度のものなのだが】

【故に少年の右腕の秘密に完全に気づいている訳ではない】

【と、円形に自らを取り囲む黒い粘液にようやく気付く】
【なんとなくだが良からぬものの気配を感じる】

これらはお主を襲ったものと関係があるのかの?

【気配は感じるが未だ正体は不明】
【一先ず目の前の少年に心当たりはないか聞いてみる】


971 : 【風伯雷公】 :2018/08/30(木) 22:09:19 xxJI2CJA

「――――むぐ」

日中とは打って変わり、人気のなくなった夜の公園に少年は居た。
彼は砂場の縁で、ガサガサとビニール袋を漁っていた。

風貌は詰襟の学生服に将校用のマントであり、夜の公園には全く似つかわしくないだろう。
黒い短髪が袋を漁る度、少し跳ねた毛先が柔く揺れている。

「……うーん? これは……ハズレかあ」

先ほどから少年は、ビニール袋を漁っているわけだが。
その中身は―――駄菓子の山である。先ほどから少年は駄菓子を剥いては頬張り、

「当たんないじゃんか。コンビニは嘘つきだあ……」

空袋を月夜に透かせては、”ハズレ”を引きまくっていた。

「ちぇー……お小遣い貯めないとなあ」


もぐもぐ、とドーナツ型の駄菓子(5つ入り)を口に放り込み、
”ハズレ”に肩を落とす少年のマントからは、ちらりと刀鞘が見え隠れしていた――。


972 : 【尽臓機鬼】 :2018/08/30(木) 23:48:28 7plnsQP2
>>971
公園自体に人はもちろん少ないが、敷地に面している道路や歩道にはまだ車や歩行者が歩いている。
とても広いということでもない公園だ。歩道に立った場合、公園内部にいる人間の声はとても小さく聞こえるものの、優れた聴覚を有していれば聞き取ることはまったく不可能なわけではない。

だから、きっと少年の呟きが聞こえたのだろう。歩道を歩いていた気配のうち一つが、唐突に"ぐりん"と向きを変える。

「よう少年、夜分遅くにすまんなぁ! いきなり声を掛けられて警戒するのもわかるがぜんぜん怪しくない者だから安心してくれ!」

夜の静けさを遠慮無用に斬り裂きながら、何が面白いのか笑顔を浮かべながら近づいてくる男が一人。
百九十を越す長身。着崩したスーツに紫のシャツ、ノーネクタイ。夜だというのにサングラスをかけており、奥からは真っ赤な瞳が覗いている。特に目を引くのは真っ白な蓬髪だった。

何より異様だったのはその手に持っているもの。それは紛うことなき、スーパービッグチョコバー。
いい歳した男、しかも明らかにそっち系の職業であろう人間が、なぜか駄菓子を齧りながら楽しげに笑いつつ近づいてくる。
はっきり言って異常な状況だった。

「小遣いが欲しいんだって? そりゃちょうどいい! 人手が欲しかったところなんだよ、付き合ってくれりゃあイイ給料だすぜ?」

制止されなければそのまま接近するだろう。
フリーズの声があってもある程度の距離で停止し、特に気にもせずに言葉を並べ立てる。


973 : 【風伯雷公】 :2018/08/31(金) 00:15:17 7lb3bqjc
>>972

この夜の公園を少年は好き好んでいた。
特に広すぎず、狭すぎず、それでいて公園の外とは程よく隔離されていた。
公園の外へ一歩足を踏み出せば雑踏があっても、内部は夜の静寂が占有しているのだ。

――だというのに。

「!? …………うぇ」

御本人のお言葉通り、夜分遅くに大きな声で呼びかけられたのだ。
びくん、と驚くあまりに手に持ったドーナツを落とし掛けつつ……振り向き、少年は口の端を歪ませた。

ずんがずんがと、自己紹介(?)をしながら、無遠慮に接近する男を特に止める素振りはない。
というか変なモノを見て驚き固まっているという状態だろうか。

「……えーっと。知らないオジさんの話を聞いてはいけませんって、両親から言われているので結構です」

そしてすかさず、齢十四にしては確りとしたハキハキした口調で、お断りを入れた。
完全に不審者を見る目だった。生意気な瞳で”オジさん”を見ているが、少年もまたこの時間帯に公園+帯刀なので不審者なのだが。

/失礼しました。気づいておりませんでした……。


974 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/08/31(金) 00:22:22 DR3tzXP6
>>970
夜の路地裏、ただでさえ不気味な場所で
正体不明の存在に囲まれている。常人ならばパニックを起こしても
不思議ではない現状。目の前の狐は冷静に少年に問うていた。
肝っ玉が据わっているのか、それともただの阿呆か…どちらにしても―――

(一触即発の事態は避けれたか…)

少年は一旦立ち上がる。膝を折って前に屈み、包帯が巻かれた右手をそっと地面につけた。

「この子たちは関係ないですよ。ただの涎みたいなものですから…おいで」

少年が呼びかけると、黒い粘液は脱兎のごとく這いずり右手に殺到する。
やがて粘液は吸収されるかの如く小さくなり次第に消えてなくなるだろう。
全部無くなったのを確認し、居住まいを正す。そこで、ふと先ほど思っていた事を
思い出す。

「そういえば狐さん、今更だけどなんでこんな場所へ来たの?」


975 : 【尽臓機鬼】 :2018/08/31(金) 00:33:21 n3qQDAvo
>>973
確かにこんな夜中だ、出歩いている少年の側も良い子とは見られはしないだろう。
しないだろうがしかしそれは対する相手がこの男でなければの話。マントを羽織ってはいるが学生服。帯刀してはいるが夜の闇に紛れて見えやすくはない。
それに比べてこいつはどうだ。一目で分かる、怪しさ満点。怪しさというよりはより直接的な脅威を感じる、この出で立ち。多分にお近づきになりたくない。
それが証拠にわずかながらも公園に残っていた人々はぎょっとした顔でこちらを見るやそそくさと立ち去っていった。

「いやはやこいつは失礼、どうやら親御さんはいい教育をなさったようで嬉しいぜ! 俺はゲアハルト・グラオザームってんだ、これで知らないオジさんじゃあないな!」

そういう問題ではない。
ゲラゲラと笑うこの男とてそんなことは分かっているのだろう、要するに単なるおふざけだ。
男の見た目は二十代の半ば。オジさんと呼ぶには少々若いがそんなことを気にした様子は無かった。

そして馴れ馴れしくも砂場の縁に、つまり少年の隣に腰を下ろした。

「まぁ実際、少年の言い分が全面的に正しいわけだが、そこをおしてちょっと話を聞いてくれはしないかね? こいつは偶然じゃないと思うんだよ」

ほれ、と掲げてみせたのはもう片方の手に持っていたもの……白いビニール袋。
外から見ても分かるくらい、何かがぎっちり詰まっている。中身を見てみれば……。

「お近づきの印に、それやるよ。いつでも持ち歩くほど好きってわけじゃあないんだぜ? たまたま買おうと思ったのさ、食うのは何年ぶりかねぇ」

冗談みたいに無数の駄菓子。
きなこ飴、あんころ餅、コーラサワーに五円チョコ……。
昔懐かしのラインナップがこの一袋にすべて詰まっているのではないかと思えるほど大量の駄菓子がそこにはあった。


//大丈夫ですよ!


976 : 【風伯雷公】 :2018/08/31(金) 00:48:15 7lb3bqjc
>>975

ふと、周囲を見渡す。ちらほら、と公園に居た人達が一様に立ち去って行く。
その誰もが怪訝な顔と、少年に対して心配げな顔ではあるが……我関せずと公園をあとにする。

(……普通、子どもがガラの悪い大人に、絡まれてたら――――まあ、いいや)

むすっ、と不満気である。少年は”少年”であることを自覚している。
故に、目の前に迫る大男が如何に自分に、”害”であるかも想定する。少年的にアウトだろう、この絡まれ方は――。

「はあ……ゲアハルトさん、ですね。残念ですが、不審者に名乗る名はありません」

超理論で縁を結ばされた少年は、つんとした態度である。
隣に腰掛けられ、さも不愉快だと言わんばかりに少年は立ち上がり、立ち去ろうとする。

――――が。

「オジさんが幼気な少年を、拐そうとするのはどうかと」

十つ以上、歳の離れているであろう。身長は30cm以上離れているであろう。
まさに幼気な少年である彼は、そんな風体の彼に気を許すわけがない。そういった”教育”を受けている。

「……まあ、お話くらいは聞きます。僕は風間 誠士郎と言います。ところで僕は、よっちゃんイカが一番好きなんですよね」

男の手から差し出されたビニール袋を、その中身を覗き見て、少年はすとんと再度着席する。
確りと名乗り、お話も受け入れ体制万全。先ほどのつんけんした態度はどこへやら……駄菓子の山を見て、そわそわしていた。ちょろい。


977 : 【気贄仙狐】 :2018/08/31(金) 03:09:10 Or1476Hs
>>974
【外見は本当に狐耳があるだけの只の子供の様ではあるが】
【伊達に200年強の時を生きてはいない】
【故に只人であらば恐慌状態に陥りそうなこの状況でも極めて冷静だった】

『おいで』

【少年が呼びかけ、黒い粘液は彼の下へ集まり消えていく】

なんじゃ、これはお主の異能の産物か。

【妙な気配の正体は恐らくこれかと心中で納得しつつ】
【少年に投げ掛けられた問いに答える】

こんな場所? 妾は単に散歩をしていて偶然ここを通り掛かっただけじゃが?
一応、妖ものである妾にとっては夜は恐れるものではないしの。

【後はただ単に夜の路地裏に潜む本当の危険を知らないだけかもしれないが】


978 : 【尽臓機鬼】 :2018/08/31(金) 18:39:34 n3qQDAvo
>>976
素直は美徳だいいことだと笑いながら袋を少年の胸に押し付けるように渡した。

「おーアレか、中々旨いよな俺も好きだぜよっちゃんイカ。風間少年にはまだ分からんかもしれんがけっこう酒に合うんだよ」

あとタラタラしてんじゃね〜よもいいよなと答えつつ、スーパービッグチョコの最後のひとかけらを口に放り込んだ。
空になった袋を丸めてポイ捨てする……と思いきや、放り投げられたそれは放物線を描いてそこそこ離れていたゴミ箱にみごと落ちていった。

「――でまぁ、話ってのはそう難しいもんじゃないんだよ。これから俺はある場所に出向くんだが、そこについてきてくれりゃいい」

言いながら懐から取り出したるはビッグカツ。
懐かしい包装をぴりと破って、ソースの香るカツ(衣だけみたいな)をまたかじる。

「それで終わりさ。特に何かしてくれとは言わねぇ、……ああいや、何か気付いたことがあったなら教えてくれればそれで十分だ」

実に軽い口調には隠した悪意などは感じられない。
そう、少なくとも今のところは……。こんな見た目の男だ、信用するのは愚の骨頂だと誰でも分かること。

「その、ある場所、ってのも別に危ない場所じゃない。たぶん少年なら知ってるかねぇ、――っていう会社だよ。あの駄菓子の」

それは男の語るとおりとある駄菓子メーカーの名前だった。
大手ではなく駄菓子以外の商品もないため先細っていく一方だったが、ついひと月ほど前から劇的に味が向上したと一部でもっぱらの噂となっていた。


979 : 【風伯雷公】 :2018/08/31(金) 23:14:06 7lb3bqjc
>>978

「……ありがとう……ございます」

胸に押し付けられたビニール袋を手に、爛々とした瞳で頭を下げる。
すぐにでもガサガサと袋を漁り、次から次へと駄菓子を頬張る。

よっちゃんイカを頬張りつつ、酒のアテと聞いてなんとも複雑な表情を浮かべる。
飲んだことはないが、自分の周りの大人たちが酒で豹変する様を見てきたからだった。
喜怒哀楽が激しくなって、前後不覚のちんとんしゃん……ああはなりたくないものだ、と訝しげだ。

「はあ……? ついていけばいい? おじさん、青少年をどこに連れて行こうってのさ」

疑り深い眼差しをむけつつも、警戒心はほぐれてきているようだ。
コーヒーシガレットをぽきぽき前歯で折りつつ、首を傾げる。

どうだろうか。見た目は少なくとも、ガラの悪い大人だ。
どう考えても胡散臭い――が、悪意を感じることはできないのも事実ではあった。

少年は人一倍、悪意には敏感だった。それは”疑う”ということが物心つく頃から、当然の感情だったから。
だから”嘘”と”真実”も人並み以上には見分けられる人間だ――――と、冷静に自分を分析しつつ。

「―――――駄菓子の!? 早く行こうよ! おじさん!!」

まあ、想像通りの反応ではなかっただろうか。
この少年、駄菓子が絡むと途端にちょろくなるのではないだろうか。
日常的に口にする駄菓子を作っている会社ともなれば、それはテンションも上がるというもの。
少年からすれば、TVに映ったスターに会えるよりも興奮する場所である。駄菓子にぞっこんとはこのコトか。

/帰宅が遅くなりまして申し訳ない!


980 : 【尽臓機鬼】 :2018/08/31(金) 23:52:14 n3qQDAvo
>>979

「おう……クヒヒ、喜んでくれたようでなによりだ」

まあ想像してはいた、想像してはいたものの、これはなんというか……容易いというか。ちょろいというか。
最近の子供相応に警戒心はある――もしくはそれ以上――のに、駄菓子の名前を出せば途端にこの通り。
それほど駄菓子が好きなのだろうか……。いや目の前に大好物を吊り下げられた子供なんてこんなものなのかもしれないが。

ちなみに給料はこれくらいを予定しているぜと指を五つ立てた。仕事の内容からして五千円くらいだろうか……?

「確か自社工場も兼ねてたはずだからなァ、クヒ、社会見学としてもちょうどいいんじゃねぇか」

ビッグカツを食べ終わり、袋をゴミ箱に投げ入れる。
最後にと懐から出したのは件のメーカーのチョコレート菓子だった。
ポップだがどこかノスタルジックなパッケージ。裏返して眺めたあと少しだけ笑みを深くして、それを食べずに再び懐にしまった。
……ちなみにそのメーカーの駄菓子はビニール袋にごまんと詰まっている中にもいくつか紛れ込んでいる。

「――さて! そんじゃあいこうか少年、お菓子の城にいざ出発だ! そいつは食べながらで構わんぜ!」

ちと行儀が悪いがなと笑いつつ意気揚々と歩き出す。
少年の感覚に間違いは一切なく、ここに至っても男に隠した害意などは感じられない。ならば風体はともかく、危険性はさほどではないのだろうか。
……これから先の展開を楽しみにしたように、男の凶相(えがお)がにやりと深まった。

//大丈夫ですよー!


981 : 【    】 ――その名も名もなき者―― :2018/09/01(土) 00:12:00 RajWhBJU
>>977
「まぁ…そんなもんかな?」

あははーなんて笑いながら話を流そうとする辺り
少年は能力についてあまり聞かれたくないのかもしれない。
だが、その笑いも狐の言葉に陰りを見せる。
数秒の静寂の後、少年はやや顔を伏せ、哀し気にぽつりぽつりと
言葉を紡ぐ。

「………この場所はね、毎日のように人が死ぬんだ」

人気は少なく、暗く目立たず、叫んだところで助けはほぼない。
特に奥地ならば猶更である。少年は両手をぎゅっと握りしめながら続ける。

「まだ僕はこの世界にきて浅い、そんな僕が言うのもなんだけど、ここは危険な場所なんだよ」

現に襲われたばかりだしね、なんて苦笑いしながら話してはいるがその目は
酷く淀んでいた。まるで日常茶飯事の如く…

「狐さん、あなたが如何ほどの妖だろうと己を過信してはいけないよ」
「過信は油断を生み、油断は隙を作る。そしてその一瞬の隙が生死を分かつんだ」

少年は空を見上げる。瞬きと同時に一筋の涙が頬伝ってやがて落ちた。

「僕と出会う人って大体短命なんだ…出来れば狐さんには長生きしてほしいな」

/毎日遅れて申し訳ないのです


982 : 【風伯雷公】 :2018/09/01(土) 00:14:35 BS.5Cl2o
>>980

「そうか……あの会社なら、これも……あれも……やっべえ」

どうやら随分と駄菓子にお熱の様子である。
袋の中身の駄菓子を手にしては、今から向かう先が作っているものだと確認する。

「ごっ――――……500円……結構、買えるなあ……」

男の指を500円と認識する少年。どうやら、札には縁がないようだ。
とはいえそれに落胆している様子もなく、妥当だと納得している模様。

「これもか……ふーん?」

男が取り出した件のメーカーのチョコ菓子を見て、同じように袋を漁り取り出す。
確かに最近、格段に味が良くなったし、少年もよく好んで食べるチョコだ。

「……まあ、騙されたと思って行ってあげるさ」

しっぽがあれば大いに振りまくっていただろう。小生意気にも少し、上から目線だが。
歩きだす男の追うように、将校マントを翻して少年も歩きだす――歩き駄菓子もなんのそのだ。

(――――……とはいえ、十全の構えだ)

かちゃり、と忍者刀が鳴る。確かめるように、柄を撫ぜる。
男と少年、二人の足音に紛れマントの中から、金属音が微かに響く――用心深さと、幼気が混じるお年頃か。


983 : 【尽臓機鬼】 :2018/09/01(土) 00:49:23 peCC6iw2
>>982
……そうして二人は件の会社への道を歩き出す。
そこまでの道筋を知っているのはゲアハルトの方だから当然そちらが前を歩いて。
繁華街や大通りを迷いない足取りで進む……その最中に、少年ならば必然的に気付くだろう。この男は、武器をもってはいないのだと。

まず第一に金属音がない。刀やナイフを持っているなら衣服の奥からでも微かに聞こえてくるものがあるはず。
鍔とハバキが擦れる音……金属同士が触れ合わない構造だとしても、刃が硬質な鞘に接触する音は聞こえてくる。それがない。
そして第二に歩き方が無手の人間のそれだった。たとえば懐に拳銃を隠しているなら僅かな重心のズレが歩き方に現れるもの。
視線の配り方にも独特の特徴などは見られなかった。サングラス越し、しかもゲアハルトは彼の前に立っているから直接は確認しようもないが、無意識的に照星を合わせるような動きはなかった。

やはり危険はないのだろうか? こういう人種がいわゆる殴り込みをかける場合、"ドス"や"チャカ"の一つは持っていなければおかしいだろう。
そういうものが存在しない。つまりはこいつの職業がなんであろうと、少なくとも今は荒事を想定していないということで。

「――着いたぜ、ここだ。さてと……」

歩きはじめて二十分を切るくらいだろうか。
以外に早く到着したその場所は、変哲もない建物だった。そこそこ大きな門に、真新しくおしゃれな会社の表札。
工場とオフィスが一体となったような様相は多少珍しくはあるもののそのくらいだ。取り立てて変という箇所はない。
横に立っていた警備員の一人にゲアハルトが近づいていくと彼は身構えたが、二三言葉を交わすと二人を通す姿勢を見せた。白髪の長身が手招きする。

入り口をくぐるとすぐに担当者と思しき男が出迎えた。眼鏡をかけた人のよさそうな顔立ちをしているが、どことなく気弱そうでもあった。

「ときにお前さん、作ってるところを見たくないかい? この会社は社会見学やらツアーも考えてるらしくてなァ、よければ案内してくれるそうだぜ?」

俺は肝心かなめの仕事にかかる前にもうちょっと話すことがあるんでな、と手前の方の階段を指した。
タイミングよく誰かが降りてくる……こちらは歳のいった、いかにも偉い人といった風体だ。


984 : 【気贄仙狐】 :2018/09/01(土) 15:43:15 QBuPn4QY
>>981

『…この場所はね、毎日のように人が死ぬんだ』

ほとほと物騒だとは言ったがの、それ程とは…

【少年の話を聞いた狐も表情を曇らせる】
【真っ直ぐに立っていた狐耳も今はしょんぼりとへたりこんでいる】

【そして少年の、出会う者が大体短命であるという告白に対しては】

まあ妾はもうにひゃ…300年以上は生きておるからのう。
今更死んだところで短命だとは言わんじゃろ?
とはいえ軽々に死んでやるつもりも無いからの。
お主の警告、確と受け取っておくのじゃ。

【涙を零す少年を励ますように】
【努めて明るく笑顔を見せてそう返す狐だった】


985 : 【風伯雷公】 :2018/09/02(日) 01:53:09 eRSJBOEY
>>983

駄菓子を片手に少年は男の後ろをついていく。
再度注意深く、念入りに男を観察するも――やはりどうにも腑に落ちない。
悪意はなく、とはいえ善意も本質的にはいまいち理解ができないところだ。

(武器……なさそう。重心もブレていない……が、油断は禁物か)

男の後ろ姿から得られる情報では、やはり武器はない。
とはいえ、この世界は”能力”が蔓延っている。いざとなればなんとでもなるはずだ。
これで無能力者なら……相当、運が良い傾奇者だろうか。


二十分のうちに駄菓子は全て平らげた。少年は駄菓子であれば無尽蔵に食すことができる(らしい)。
近くにあったゴミ箱にまとめて空き袋を放り込みつつ、到着した建物を少年は見上げる。
本当に先ほどまで口にしていた駄菓子を作っている会社だ―――しかし、何が起こるのか。

(……? 護衛とかか? まあ、このおじさんなら、わからなくもないけど)

入り口を入って直ぐ、担当者と何やら会話をしているのを遠巻きに眺めながら思料する。
先ほどまでついテンションがあがってしまっていたが、何やらやはりきな臭い気もすると思い始めてたところ。
確りと適宜冷静に判断はした(つもり)ではあるが―――と、考えているともうひとり、この場に人が現れ。

「マジか……。ぜひ、ぜひお願いします!!」

行く行く、と浮き足立つ少年。よっしゃー、と握りこぶしを作る少年。非常に微笑ましい光景ではないだろうか。

「ていうか、おじさんは何するのさ。まさか、おじさんも駄菓子に心血注いでる類の人間じゃないでしょう」

心血注いでいるらしい。
兎にも角にも、ついてくるだけで良いとは言われたが、ただ単に制作過程見学ツアーに二人で来たわけじゃないだろ、と言いたいらしいが。


986 : 【尽臓機鬼】 :2018/09/02(日) 19:40:50 wTF7AMxI
>>983
少年の様子を見て微笑ましげな表情になる眼鏡の男。
降りてきたほうは特に気にした様子もなくゲアハルトと何事か話していた。問われた張本人がそちらに目をやる。

「俺か? 俺は単にお仕事だよ、社長さんと話し合わなきゃならねぇことがあってなァ。この人は仲介役みたいなもんさ」

その時まで俺といても構わんがつまらねぇと思うぜと話す男は相変らずにやにやと嫌な笑みを刻んでいる。
……どう考えてもその話し合いとやら、健全なものとは思えない。ともすれば件の社長がこの男の所属する組織に脅されているのではないのか?
そんな想像が容易につくものの、しかし一貫して彼から悪意は感じ取れなかった。本当に単なる話し合いなのだろうか……?
あるいは見た目がすこぶる悪いだけであって、そこまで悪い人間ではないのだろうか。まさかそんなことはないと思うが……。

ともかく。

「なぁに心配せんでも社長さんと話すときには来てもらうさ、その時まで楽しんでこいよ」

なかなか貴重な機会だぜと言って、先導する眼鏡の男についていくならその背を見送ってぷらぷらと手を振っていた。
そのまま重役風の男と連れ立って応接室と思しき部屋に入っていき、姿が見えなくなった。

……こぎれいな通路。大きなガラスの向こうで、今まさに多種多様な駄菓子が作られている。
その多くは従業員の、つまりは人の手で作られているようだった。大まかな作業は機械に任せられているが、多くの作業は人間によって行われていた。

「これでも昔に比べれば機械化が進んだほうなんですけどね」

案内する男が苦笑しながら説明した。
ここで作っているのは五円チョコで、これは平たいカステラで……など、その合間に神経質なのかそうでないのか、頻繁に眼鏡をはずして作業服の裾で拭いていた。


987 : 【風伯雷公】 :2018/09/03(月) 21:05:36 CY9mxxAk
>>986

「そっか。それなら、お言葉に甘えるとするよ」

疑惑の眼差しというか、信じられないなあという目つきで少年は答える。
どう考えても強請ってそう見えるんだけどなあ、なんて小声で独白しつつ。

「じゃあ、何かあったら呼んでくださいね―――直ぐ行くよ」

背を向けて手を振る男に、少年は声をかける。
否、男に対してだけではなく、重役風の男にも声をかけていたのだろう。
別にどちらの味方でもないが、揉め事があったらいつでも介入しますよ、という意思表示らしい。


ともすれば、少年は眼鏡の男に付き従う。
制作過程をガラス越しにみて、ひとつ見れば足を止めて、感嘆の声を漏らしていた。

「……駄菓子ってさ、こういう手作業が大事なんだと思いますよ」
「自動化に反対してるわけじゃないけど、そういうのはスナック菓子で良いんだ」
「お爺ちゃん、お婆ちゃんが作ってくれる……そういう、身近な感覚が好きだなあ……」

などと、少年はまるでトランペットが欲しくてガラスケースに張り付いているのではないか、と言わんばかりに
ガラスケースに張り付いて、そう答えた。駄菓子が好きな理由は、お爺ちゃんお婆ちゃん子が起因してるのだろうか。


988 : 【尽臓機鬼】 :2018/09/03(月) 22:13:07 IE14y/52
>>987
少年の言葉に男はちょっと驚いたような表情を浮かべ、次いで嬉しそうにほほ笑んだ。

「ですよね。もちろんスナック菓子がどうこうと言うわけじゃないんですが、駄菓子にはなんというか……温かみが必要なんだと思います」

たとえば口にいれたとき、ふと少年時代を思い出させてくれるような。
決して繊細な味ではない。今の進んだ菓子に比べれば、そこまで美味しいものというわけではないのかもしれない。
だがそれでも、現代では遠くなってしまったかつての人情、素朴さ、優しさ……そういうものがほろほろとこぼれてくるようなお菓子が、この時代にも残っていていいのではないかと……。

「……すみません。要らないことまで喋ってしまいましたね」

はっと気づいたように話をやめて、気まずそうに視線を逸らした。

……きっと彼も駄菓子というものが好きなのだろう。
男の言葉は十分に理解できるだろう内容だったが……ここであなたは一抹の違和感を抱くかもしれない。

最近このメーカーの作る駄菓子は劇的に味が向上した。それはあなた自身も確認しているだろう。
それゆえ話題に上り、今ではふだん駄菓子を食べない層も購入しているという話だが……さて。

――件の駄菓子は、今しがた男が語った話の内容に沿う味だっただろうか? 
美味しい、それは間違いない。だがどちらかといえば現代の進化した菓子に近いものではなかっただろうか?
以前のこのメーカーの味を知っているならば、むしろ前の方がそういう、昔ながらの懐かしい味わいではなかっただろうか……?

「――それで、これはあんこ玉を作っているところです。あんこ玉おいしいですよね。あの外側のちょっとかたいところが特に」

思考を打ち切るように再び男が解説を始めた。
その表情は先ほどよりも若干柔らかくなっている。


989 : 【風伯雷公】 :2018/09/03(月) 22:48:15 CY9mxxAk
>>988

「いえ、流石の駄菓子メーカーの方だと思います」

にっこり、と少年は大好きな駄菓子のことを語る男に笑いかける。
彼の言葉は実に少年の心に響く言葉だった。スナック菓子に押され気味とはいえ、
まだまだこの駄菓子業界も心配は要らないなあ、と自分のことのように嬉しく思う。

最近では、駄菓子業界も盛り返しており、購入層も多様化しているとニュースで見た。
幼い少年には経済や市場だとはわからないが、その先導を切っているのがこの企業だというのはわかる。

(やっぱり、口に入れた味が――――……あれ?)

味が劇的に向上した。それ故、最近のスナック菓子と張り合うほどになったのがこの企業の駄菓子だ。
それは素朴で優しさを感じるものではないが、それでも”駄菓子”だ。
この企業のおかげで、他の駄菓子が注目されているから、駄菓子業界はまた盛り上がりつつある。

だが、男の語る言葉とは裏腹に、以前と現在では味の有り様、駄菓子としての影響が違いすぎる。
それを嗜めることも、批判することもしない。ただ、男の言葉との矛盾に少年は首をかしげる。

「ええ、あのあんこ玉……そうですね……」

どこか心ここにあらずといった風体で、言葉を返す少年。
取るに足らない疑問だった。味が現代のお菓子に近づいた駄菓子。それは悪いものではないはずだが、
男の言葉と乖離した部分が腑に落ちなかった。男の理想とは、逆行したものが出来上がってるのではないだろうか。

「そういえば、味が最近になって結構、変わりましたよね。何か、作り方とか変わったんですか?」

少年は興味本位でその質問を投げかける。
ガラスの向こうでは機械作業はそれほどなく、手作業で作られる駄菓子たちが目に映る。
少年は言い様もない違和感に、少しモヤモヤした感情を懐きつつ……。


990 : 【尽臓機鬼】 :2018/09/03(月) 23:25:32 IE14y/52
>>989

「――――、」

ひくりと、喉が動いた。

「……ええ、仕入先が変わったんですよ。"ちょっとした材料"を加えるようになったんです」

美味しくなったでしょうとは、口にしなかった。
振り向いたその表情にどこか陰が差していた。眼鏡の奥で細められた瞳が何を映しているかは見えない。

――あなたはこの噂を知っているかもしれないし、知らないかもしれない。
なんでも最近、普通のスーパーには売っていない――おそらく地域限定販売のような形だろう――幻の菓子が出回っているとか。
それはまさしく魅惑の味わいであり、"麻薬的な旨さ"で食べた人間を魅了してしまうのだと。
そして一たび口にしたのならあまりの美味に虜となってしまい、その菓子をまた求めずにはいられなくなるのだ、と……。

……少しばかり、口数が減っただろうか。説明する言葉にあった熱も、心なしか冷めている。

それでも解説を続けて歩いているうちに、観察眼に優れたあなたは気付くだろう。この通路、作り自体は新しくないがほとんど使った形跡がないと。
毎日きれいに掃除しているとかそういうレベルの話じゃない。おそらく見学に来る子供たちのことを考えて造られただろう専用のこの通路は、そもそも人が通っていた気配があまりに少なすぎるのだ。
まるで造ったはいいが使う機会がまったくなかったかのように……それでも細部に埃などはなく、管理自体は行き届いているが。

ほどなくして見学ツアーは終わった。
駄菓子を好きな子が来てくれて嬉しい、職員たちも喜んでいる、と語る眼鏡の男はニコニコと微笑んでいる。
二人と分かれた場所に戻るとちょうどあちらも終わった頃合いだったのか扉から出てくる。サングラスの長身は相も変わらずにやにや笑いだった。

「楽しかったかい? そりゃよかった。――さて、じゃあお仕事の時間といこうか、社長さん」

言うと、実に気安い様子で眼鏡の男の肩にぽん、と手を乗せた。
……薄々は気付いていたかもしれないが、よれた作業着を纏ったしがない現場主任風のこの男こそ、駄菓子会社の社長だったのだ。


991 : 【風伯雷公】 :2018/09/03(月) 23:45:15 CY9mxxAk
>>990

男が振り向き、先ほどとは打って変わった影のある表情で答える。
その面持ちはどこか陰があり、言い様もない不安を煽られるものを感じた。

「―――――そうですか」

少年は彼の表情を見て、表情を崩さずに笑顔で答える。
その表情は屈託ない少年そのものではあるが、実際のところは全く違っていた。

(……断定はしないが、否定もしない)

心なしか冷めた口調で説明をしてくれる男に続き、少年は先ほどと微塵も変わらず受け答えする。
少年は少年らしく”演じる”――その裏で、思考を張り巡らせていく。

(今の所は勘に寄りすぎてるな。味……表情、あのオジサン……”何か気づいたら、教えてくれればいい”だっけ?)

点と点を結び、ひとつの仮定を紡ぐ。だが未だ情報は足りず、”疑惑”が深まるばかり。

だが、ふと見渡した風景に、引っかかるものを感じる。

(いやに綺麗。清掃が行き届いてる……って、感じでもないね。生活感というか、使用感がない)

見学ツアーと言うからには、自分以外にもこういった社会見学は何度も行われているはずではないだろうか。
それこそ、小学生たちの課外授業には最適ではないだろうか。そう考えると、使用感はあまりにもなさすぎる。

(考え始めると……怪しいことばかりだね)

ぐっ、とマントの中のクナイを握りしめつつ――少年は、男の後を追う。


見学ツアーから帰ってくる頃には、眼鏡の男の表情も”もとに戻った”ように思える。
そして、ちょうど良い頃合いで現れたあの男の顔を見て、なんだか胡散臭さを感じるばかりだった。

「楽しかったよ。いろいろ、勉強になったけど……って、社長さんでしたか」

隣に立つ、先ほどまで案内してくれていた男が社長だったのかと、少年は気づいていなかったようだ。
まあ、あの熱意が一端の社員に出せるものではない気もするな、と少年は思いつつ。

「……………」

眼の前の大男に、疑りと不満と苛立ちの目を向けていた。そろそろ勘ぐりも疲れたと言わんばかりの顔だ。
少年は男が思うよりも、用心深く、疑り深く、それ故に怪しい事には敏感だった。
一応、バイトと言われた手前、男の指示なしには何もアクションは起こさない様だが―――……果たして。


992 : 【尽臓機鬼】 :2018/09/04(火) 00:04:43 cTO5GsPs
>>991

疑惑の視線を受けてもゲアハルトの様子は変わらなかった。
むしろいっそう楽し気に口角を歪めて含み笑いを漏らす。
それが何を意味するのかは現状はっきりしないが、少なくともこの会社に潜む何かを、この男も知覚しているのだろうと予想ができる。

「じゃあ、ありがとう。あとはこっちに任せてくれていいよ」

言われた重役風の男は会釈して帰っていった。彼もまた、重要な立ち位置にいることには違いないのだろう。

残ったのは三人。眼鏡の男、ゲアハルト、そして風間少年。
当然というべきか社長が先導して歩きはじめた。そのうしろのゲアハルト、またその後ろだろうか、あるいは並んで少年は歩くことになる。
事務仕事に残っている人間はいない。いてもかなり少ないだろう、時間帯を考えればおおむね健全な企業体勢と言える。

薄明るい通路を、固い靴音を鳴らしながら歩いていく。階段を登っている間も社長は無言だ。
まあ無理もないだろう、先ほどとは状況が違う。大好きな駄菓子の説明と比すれば単なる移動になんの熱を込められるはずがない。
ましてや同行している人間が人間だ。この、明らかに危険な男に後ろを歩かれては誰だって言葉少なになるというもの。こころなしか歩く姿にも緊張が窺える。

だがそんな時間も長くは続かなかった。
ほどなく到着したのはおそらく社長室。とくに豪華な装いはしていないものの、扉の上にちいさく「社長室」と書かれたプレートがあるからそうだろう。

「……どうぞ」

先導していた社長が脇に避け、ドアノブを握り、開けようとする。

――だがその瞬間、あなたは気付くだろう。
厚くはない鉄扉の向こう、一枚隔てたあちら側に、巧妙に気配を隠した存在がある。
それは害意だった。それは敵意だった。はっきり言えば、――殺気だった。

"あなた"でもこの距離に至るまで気付けなかった、何か。
透明な殺意はすぐそこで待ち構えていて……そこに至るための扉は今まさに開かれようとしている!


993 : 【風伯雷公】 :2018/09/04(火) 00:18:39 7BpG.LOE
>>992

(喰えないオジサンだなあ……)

多分、断片的に感じているこの違和感の正体を目の前の大男は知っている。
少なくとも自分以上には……それでいて、こちらの考えている事も”分かっている”だろうに。

だが男は何も告げず、楽しげに笑うばかりだ。
やっぱり知らないオジサンに付いていくのは、”少々危険”だと反省した。


「……………」

何処へ連れて行かれるのか、事前説明もないまま少年はゲアハルトと共に社長についていく。
どうやら社内に人は残っていないらしい。ホワイト企業で何よりだ――だが、目の前の社長はどうだろう。

―――そして、社長室に到着し、扉に社長が手をかけた所で少年は明確に”知覚”した。

紛うことなき敵意。得体の知れない何かが、その扉の向こうから自分たちに悪意を向けていた。
だが少年は狼狽える事はなく、声を押し殺して、その扉の向こうを注視する。

「――――――オジサン、とんでもないとこに連れてきてくれたね」

男の隣に立つ少年は、先ほどとは打って変わり、何処か冷徹な表情をしていた。
殺気を受けて、疑惑が確立されたからか、まるで殺気を跳ね返す様に不敵な笑みを浮かべていた。

超常現象、超能力、などとそういった類を知覚できるのであれば、少年の体内を巡る”練気”が感じられるのだろうか。
それは例え知覚できなくても、肌を軽く撫ぜるほどの微風は感じられるのではないだろうか。
少年の体内では今、正しく”風”が練られているのだから――――つまり、既に臨戦態勢だ。

【風遁練度:1レス】


994 : 【空想の繭糸】 :2018/09/04(火) 07:44:01 52RtZdcU
 朝露で裾も濡れそぼつ、木漏れ日柔らかな雑木林。
 仄暗い藪の向こう、そこには予期せぬ者さえ跫を殺して潜んでいる。
 ……かもしれな「ふぇっっっくし!!」

 くしゃみに驚いて、梢に集う小鳥の群が空へと舞う。
 するとどうだろう、梢から滴る滴が一斉に降り注ぐ。
 朝から騒音の元凶(もと)となった絹さんへと。

あー、油断しまし

 絹さん、鍵括弧わすれてるぞ。

「あー、油断しました……最近巷で流行りの……バードウォッチに朝から来たものの、見とれてうっかり……小鳥さんごめんねー」

 絹さん身体を冷やすまいと、用意していたと思しきケープを一振り。
 瞬く間に、梢や滴、土が一瞬にして消えるのだった。
 消えた……否、落ちたと言うべきか。

「さて、どうしましょうか……ごはん食べに街へ行きますか……」

 絹さんが向く雑木林の先には。
 図書館のある街が見えるのだった。

- * - * - お昼11時頃まで待ってみます。


995 : 【操吊機鬼】 :2018/09/04(火) 10:45:27 12Yh9OpE
>>994
「………」

雑木林の、ちょうど少女が向いていた木の反対側に横たわるように、
不法投棄、というのだろうか。それは其処に在った。
青いドレスシャツを着た人形。人の様に大きいがマネキンと言うにはあまりに精巧に作られたそれは、瞼も可動するようで眠るように閉じていた。
白木か白磁か解らないその体には土や苔が蒸しており、球体関節の隙間にからは植物が芽を出している。何日もこの場に打ち捨てられていた事が伺える。

「………」

シャツがはだけて顕になった腹部に、縦長の小さな穴が開いているのが見える。
ちょうど鍵穴のようなそれに、これまた丁度差し込めそうな鍵を、首から鎖で提げている。

/ いらしたら


996 : 【空想の繭糸】 :2018/09/04(火) 11:23:41 YpdSLq0o
>>995

「今日は、ほうれん草の気分です! ほうれん草……位置について、よーい、どんっ!」

 ほうれん……走?
 いや、まさかそんなことはあるまい、しかし真相は絹さんの中にある。
 街に向かって走り出したと思いきや、ふと。

「!?」

 一本の木の真横に差し掛かろうとしたとき。
 何か、見えた。
 それは、苔の乗った白地の何かで、もっと言うと。

(人!?)

 〝何者か〟に見えた。
 そういうこともあって、絹さんまずは腕を踏むまいと腕を飛び越すジャンプ。
 をするが、

「  」

 正面の枝に顔面から突っ込む。
 痛そう。

……。

 三分間待ってくれてありがとう、時間だ、答えを聞こう絹さん。

「ふぇ……」

 もう少し待つ?

「何でこんな所で寝て……んん……」

 絹さん何者かを観察すると、何というか。

(死んで……んー? お人形?)

 目の前で手のひらを振ったり。
 ほっぺをぷにぷにしたり。
 耳のそばで手をたたいてみる。

「はぁ」

 まずは安心。
 だって、顔面枝と葉っぱまみれなのを見られずに済んだのだから。

「それにしても、こんなところに不法投棄とは、えっと……風光明媚? 夏炉冬扇?」

 どっちも絶対違う。

「……せめて街の方へ行きましょうね」

 そう言うと、まずは担いでみる。
 人と想定すれば、やや軽い……くらいだろう。

「ちゃんとご飯食べてますかー?」

 ※人形です。

「ちゃんと運動しないとだめですよー?」

 ※間接球体見えるでしょ?

「お風呂もしっかり入って、  」

 ※わかんないかー、残念!

「休憩……」

 人想定39Kg駄目でした、木を三本越えられずに人形をもたれかける。
 運動しないとだめですよ?

「……」

 鍵と、
 鍵穴。

「……」

 鍵と、
 鍵穴。

「おお!」

 いやいやいや、こんな簡単に巻くはず

「こういうことですね?」

 巻きました。
 こういうことですね?

- * - * - いくつか確定描写すみません。こんな感じでいけますかー?


997 : 【操吊機鬼】 :2018/09/04(火) 11:38:14 12Yh9OpE
>>996
鍵を差し込み、発条仕掛けが動き出す。
ピクリとも動かなかったただの人形の肩が僅かに上下する。

「………ん」

そして、目を開いた。
この世に二つとない、生きる人形は体を起こし、辺りを見渡す。

「………二年ぶりくらいかな? 今度はどんな理由で起こされたのやら……」

体が動かしにくい。関節に入り込んでしまった土を払い。少女と目を合わせる。
朽ちかけの身体、刺さったままの鍵、目の前の少女。大凡の事情は把握した。

「……ようやく、本分を果たせそうだ」

創造主に与えられた使命。玩具は子供の友として遊び、守ること。
今までは珍奇さや美術品としての価値に目のくらんだ下衆どもに保管され不愉快極まりなかったが、ようやく金銭の流れでない縁で少女の手元に流れ着いた。
その事を喜ぶようにはにかむ。

「初めまして。 貴方の親しき隣人、人形に御座います。 御用があれば何なりと申しつけ下さいませ」

片膝をつき、手の甲に口づけをする。
少女からしたら、訳の分からない話だろう。


998 : 【空想の繭糸】 :2018/09/04(火) 11:55:55 YpdSLq0o
>>997

「あ、あの雲チーズみたいです」

 あの、絹さん。
 後ろですごいこと起こってるよ。

「お昼は大判焼き食べたいですね!」

 え。チーズは?
 あと、後ろ。

「ふぇ?」

『初めまして。 貴方の親しき隣人、人形に御座います。 御用があれば何なりと申しつけ下さいませ』

 。

「。」

 あれ、人形どっか行っちゃった、と思うと同時に、絹さんの思考もどっか行っちゃった、どうしようこれ。
 ずいぶんとご丁寧な方である。
見た目人形だが。

「あー、これはご丁寧に、私は隣人(隣人って何だろー)  カテキンみたいな?」

 カロテンのことなら人参のことだよ。



「人形が喋った!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?」

 そう叫ぶと、すぐに木を三本  越える前に絹さん右足で自身の左足を踏みつける。
 と同時に、トリプルアクセルを決  めることなく前のめりで倒れる。
 それから、顔を押さえて木の裏へと避難、涙目で恨むように人形を睨んでいる。
 アテレコするなら、「がるるるる」といったところか。


999 : 【操吊機鬼】 :2018/09/04(火) 12:21:24 12Yh9OpE
>>998

「危ない!」

転んだが衝撃は意外と少ない筈だ。
指から延びた極細の糸が少女の服に癒着し、背中から吊るすように転倒をすんでに止める。

「お怪我はありませんか? お嬢様」

基本的にこの人形は子供、とりわけ少女には紳士的だ。
自分に警戒を抱いている少女に対しても、どうしたらいいかを常に考えている。
ドレスシャツの袖を引き裂いて折りたたむ。

「お顔が汚れていてはいけません。 これでお顔を拭いて下さい」

警戒されているなど関係ない。
心優しい子供であれば無条件に紳士で、自身の鍵を回した者はご主人様。前の仕事を辞めてからはそうあろうと決めていた。
それに、少女の姿をかつてのご主人と重ねていたのかもしれない。


1000 : 【空想の繭糸】 :2018/09/04(火) 12:30:31 YpdSLq0o
>>999

「……」

「……?」

「……!」

 浮いている。
 いや、周りから絹さんの行動が浮いているという意味ではなくて。
 いや、間違ってはいないが。

「……」

 足をぶらぶらしない。
 絹さん、ゆっくり地面に降りると、ぽんぽんと各裾をぽんぽんと払う。
 ところで、仮にも仕立て屋、どんな理由があっても、衣服を傷つけるという行為には少し、気になるところがあった様子。

「めっ、ですよー?」

 警戒心、よりも何か、勝る気持ちが絹さんを制する。
 それは一体、

続きをこちらで。
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/sports/41685/1535568537/l30


■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■