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イベント舞台スレ その1

832【尽臓機鬼】:2017/10/07(土) 19:14:24 ID:eoatuEDc
>>831

主眼に置いていたのは攻撃であり、その先にある殺害だった。
もちろん戦闘である以上は防御や回避を疎かにしてはならないことは分かっているし、そちらの方面に関して手を抜いているつもりはない。
要はスタイルの違いだ。攻めを重視するか守りを固めるかという話であり、根本的に間違ったことをやっていたわけでは決してないだろう。

しかしそれでも、いいや当たり前の事実として、攻撃に傾けばもう一方の比重が軽くなる。
攻めるか守るか、二つの選択肢が並べられた場合に取るのが前者であるなら我が身を護る機会はそのぶん減るということ。
むろん防御ばかりを選んでいては活路も見いだせないだろうが、攻撃という行為には常に反撃されるリスクがついて回る。

そうしたカウンターに際し、咄嗟に防御や回避を選択するのが通常の戦術というもの。
だがそこでなお追撃を選ぶような男だからこそ、この結果は必然といえるものだったのだろう。

「――――」

爆発――焼失――破壊。
レイヴンごと囲い込んだ光輪を、ゲアハルトは回避できなかった。
あるいは彼が回避に主軸を置いて戦っていた場合、もしかしたら辛くも回避が叶ったのかもしれない。
少なくとも今の極限以上まで高められた肉体能力をもってすれば、出現から爆破までの極小すぎる時間を見抜いて離脱できた可能性は決してゼロではないだろう。

だが所詮、そんなものはもしかしたらの話であり……そしてゲアハルトには不可能なことだったのだ。
なぜなら彼は誰に言われずとも察していたから。もはや結末は決まり切っていて、自分が何をどう足掻こうが覆せないのだということを。

どんな状況でも都合よく解釈して笑い続ける――それはつまり今が絶望的な状況だということで。
終わりが来るその瞬間まで愉しく踊ろうとする――それはつまり自身の死を受け入れてしまっているということで。
甚だ似つかわしくなく、この期に及んで楽しく歪んだ表情からは想像もつかないことだが。――つまり彼は、ゲアハルト・グラオザームはある種、諦めていたのだ。

そしてそんなとき、彼という人間は終点に向かって加速することしかできない人種であるから。
まだ死ねない、こんなところで終われないと……踏み止まれるだけの理由を何一つ持ち合わせてはいなかったから。

「ク、ヒ、ヒ……まだだ、まだ足りねえ……」

諸共吹っ飛んだ片方は、上半身と下半身が分かれていた。
もはや単なる肉塊へと成り果てようとしている男はそれでもなお天へ向かって手を伸ばす。

「もっと快楽を……もっと享楽を……まだ、まだ、もっと……」

血塗れた掌には何も残っていない。
掴んだものはすべて刹那の快楽へと溶け消えたから。飢狼のように次から次へと人界の楽を喰い散らかしてきた結果がここにある。
ああなるほどこれが死か、ならばあの世はどのくらい楽しいんだろうなと。満たぬ我欲を抱えたまま……最期まで嗤い続けながら、人の腹から生まれ落ちた魔獣は暗黒の底へと堕ちていった。


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