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【神々の】幾重万神領出雲大社【集う場所】 一社目

1【    】 ――その名も名もなき者――:2014/06/01(日) 00:37:03 ID:aZFJ8ioA
幾つにも重なる万の神の領を集めた――出雲の大社
そこには沢山の神が居て、それぞれの社を持ち、日々神格を得るために努力していると言う
完全中立の出雲大社は土地や物資をそれぞれの神に与え、運営しているらしい

巨大な鳥居をくぐればそこにはお祭り騒ぎが常の多くの神社
それぞれが収める土地毎に海が山が雪があり、怪異も湧いたりする不思議な光景をきっと見せてくれる
広すぎて各地にワープポータルじみた物もマップも表示させられるぞ!

なにか困ったり怪異の情報が知りたかったら鳥居に入って直ぐの社務所に聞いてみたりするといいかも知れない
神様グッズを売って姑息にもとい賢くお金を稼ぐ出雲の巫女さん達が答えてくれるよ!

前置きはここまでに、「一生に一度は出雲参り」と呼ばれる此処へ――ようこそ!

*wikiのURL
http://www26.atwiki.jp/vipdetyuuni/pages/2751.html

277【創符帖録】:2019/12/10(火) 23:50:15 ID:C00PDI9c
そう言えば、ご近所(神社)さんに挨拶に行った事がなかったなと。
それならば有名所な鍛冶神さんの所からかなと。
────何故に其処が有名なのかは余り考えないままに。
普段良く食べる美味しいお饅頭の箱を手に呑気に六千階段を昇る御札の巫女。
自分の神社の本殿も似たような立地の為、
おっとりとした見かけに依らず息切れもせずに昇りきる。

そして神社の誰かを見掛けたならば。

「こんにちはー。私は御札神社の巫女、御札礼花と申します。
 もう直ぐ年の瀬ですし。遅ればせながらご挨拶に伺いました。」

ぺこりとお辞儀をして饅頭を手渡そうとするだろう。


//こちら現在進行中の【尽臓機鬼】さんとのロールを優先の亀進行となりますが
//もし本当に宜しければっ
//勿論【屍霊編制】とのロールを優先でお願いします!

278【創符帖録】:2019/12/11(水) 00:06:46 ID:JOfxOcog
//訂正です! 【屍霊編制】"さん" でしたごめんなさい!!

279【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2019/12/11(水) 00:12:16 ID:5gKR2liU
>>277

「おや、これは珍しい」

 階段を昇ってくる足音が聞こえた。
 参拝客かと近づくと、そこには息切れを起こすことなく、
 六千階段を登り切ってきた別の神社の巫女がいた。

「これはご丁寧にありがとうございます。
 私は高天火男神社の巫女長 日野 鈴理と申します」

 饅頭を受け取り、こちらもお辞儀を返す。
 鈴理は青と赤のオッドアイの巫女。
 首に掛けた日緋色に輝く石と胸元の神の炎を象ったチャームが白の巫女服によく映えている。

「御札 礼花さんですね。よくいらっしゃられました。
 大したおもてなしはできませんが、お茶をお淹れしますので社務所の縁側でお待ちください」

 あちらになります。と案内する。
 入口から入ってすぐ右に社務所兼家の武家屋敷風の家が建っている。

 何もせずに待っていれば、湯呑と急須、お茶請けの切った桃をお盆に載せた鈴理が姿を現す。

「お待たせしました。
 こちら、お饅頭のお礼とはなんですが裏山で育てた桃になります」

280【創符帖録】:2019/12/11(水) 00:33:40 ID:JOfxOcog
>>279
互いに挨拶を交わし名乗りを終えると。
巫女長の日野さんは丁寧な対応で礼花を社務所の縁側へ促した。
青と赤のオッドアイに煌びやかな装飾品。其れらを常態とする佇まい。
やっぱり大きな社の巫女長ともなればこうも違うのかと。
ぽけー、と感心しながら言われるままに移動。

案内された社務所は武家屋敷風の家だった。
待ち時間は特に何するでもなく辺りの景色なんかを眺めていた。

────お待たせしました。

暫ししてお茶と切った桃をお盆に載せた日野さんが現れる。

「まあ。ありがとうございます。私、桃好きなんです。」

恐らく嫌いな物の方が片手で数えられる位に少ない彼女であるが、
そんな感じの反応で喜びを表現する。

其れらから御札礼花という巫女の気質はありありと窺えるだろう。
基本的にはこれが彼女の常である。

281【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2019/12/11(水) 00:49:44 ID:5gKR2liU
>>280

「それは良かったです。
 味には自信がありますのでご賞味ください」

 そう言って竹の鉄砲串が刺さった桃をお皿にのせ、御札に差し出す。
 裏山で栽培していた桃。実際には仙桃と呼ばれるものだ。
 食べれば不老長寿、となる代物ではない。
 健康食品の究極に近い体の保温や体調を整えるものである。

 まだその効能は低いが、味自体の改良は済んでいる。
 触感は採れたてのカリッと固め。
 だが瑞々しさも多分にあり、口の中で果汁が溢れる。
 味は甘めだが甘すぎるのではなく少し薄い。
 後味と桃の香りが口の中にしばらく残り、
 次の一口の時にはそれはなくなり、二口目を食べる頃には新鮮な気持ちで味わえる。

 そして、全て食べ終わってお茶をすするとお茶の渋みがちょうどよく口を落ち着けられるだろう。

282【創符帖録】:2019/12/11(水) 01:05:26 ID:JOfxOcog
>>281

「はい。では、頂きます。」

そっと手を合わせ串の先に刺さった桃をぱくり。
触感はカリッとして、尚且つ瑞々しく。
甘すぎず、かといって飽きが無く、香り高い。
一流の美食家が食べたなら流麗な言葉で褒め称えられただろう其れは。

「んんー。美味しいです。」

そんな有り触れた一言にて返された。

「これってお高かったのですか?」

それでも一応、"特別なもの"という事だけは伝わったらしい。
らしいが、其れが仙桃なる代物だとは露程にも思ってはいなさげでもある。

そんな礼花は満足気な表情でお茶をすすっている。

283【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2019/12/11(水) 01:20:33 ID:5gKR2liU
>>282

「時間は掛かっていますが特に高くはありません」

 その言葉に嘘はない。
 材料となる種は文献を漁り、研究し、改良を施した。
 できるだけ原種に近い桃の木を探し、それとなる桃を採取した。
 土も鉱山や海、森と鈴理がアイテムの作成に必要な材料を探すのと変わらない。
 探して改良し、失敗を重ねて作り直す。
 それ繰り返して今に至る。
 未だに完成とは程遠いが、

「美味しかったならよかったです」

 何も知らない人の一言。満足な顔で頬張る。
 それに鈴理は顔を綻ばせる。
 ただ、美味しいと。
 その一言は何よりも努力した者にとっての最高の言葉である。

「さて、今日のご用件ですが、この一年お疲れ様でした。
 といっても、交流はこれが初めてですが」

 お茶を飲み終わると居住まいを正し、頭を下げる。

284【創符帖録】:2019/12/11(水) 02:39:39 ID:JOfxOcog
>>283

「そうなのですか。
 やっぱり手間暇掛けて育てた物は美味しくなるのですね。」

彼女は知らない。
その桃を育て上げるのに彼の巫女がどれ程の研鑽を重ねたのかを。
だが、それ故に其れは嘘偽りのない言葉として伝わるのかもしれない。

と、日野さんから出た言葉に。

「ああ! そうです。忘れちゃっておりました。
 私がご挨拶に来ていたのでしたね。
 この度はお伺いするのが遅れに遅れてしまい申し訳ありません。
 こう。何処か抜けてるってよく言われるのです、私。
 ともあれこちらこそ。一年お疲れ様でした。
 お初にお目にかかりますが。以後よろしくお願い致します。」

釣られて居住まいを正し、礼を返し応える。
そもそもが年末に当たりお互いに忙しくなるだろうから頑張りましょう、と。
朧気にそんな話をしようと思っていた様な事を思い出した。

285【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2019/12/11(水) 21:02:29 ID:5gKR2liU
>>284

「はい、今後ともよろしくお願いします」

 御札神社。確かそれは護符や呪符などの『札』を司る神だったか。
 家屋で神を祭る神棚と一緒によく置かれる札。
 つまりはお守りの最も古い形として存在するものの起源となる神だ。
 『者』ではなく『物』の神といってもいい。
 その巫女である彼女は鈴理の娘である三人の末っ子、チャーム作りを得意とする子の同類だ。
 チャームは今でこそアクセサリーとして親しまれているが、その起源もまた魔除け。
 形は違えど同じである。

「高位の神々である弥御札様の巫女様が来られるとは思ってもいませんでした。
 来られると察していれば準備をしていましたが、このような即席で申し訳ございません」

 東洋の地では老若男女、新旧の建物までがその恩恵を与える札の神。
 間違いなく高位の存在であり、鈴理が仕えている鍛冶の神よりもその力は上なのは確実だ。
 なにせ不眠不休でその力を発揮できているのだ。神としての位はあの稲荷神にも勝るとも劣らないだろう。

 そんな相手なのだから鈴理もさすがに畏まった。

286【創符帖録】:2019/12/12(木) 18:50:21 ID:jGxGaMsY
>>285

「高位……?」

その言葉に対してきょとんとした反応が返ってくる。
しかしながら己が仕える神性を謙遜したり卑下したりといった様子ではない。
これは寧ろ其れを考えた事が無かった、とでも言うべき反応だ。

礼花は弥御札様の存在に一切の疑念を抱いていない。
現に今以て帳面を通じて自身に力を貸し与えて下さっているのを実感できている。
しかし今言われてみるまで彼の神がどれ程高次の存在かを考えた事が無かったのだ。
何故ならその神に"一度として面会した事が無いから"。

其れに関しては弥御札という神の特異性が関連する。

『者』ならぬ『物』の神である弥御札神は凡そ神格としての自我を持たない。
これは恐らくこの出雲の地に集う神々に於いて異質な事だろう。
言うなれば『札』の概念に連なる奇蹟を齎す純粋なる力の塊なのである。
それ自体は指向性を持たず人々の祈りのままに奇蹟を振るう。そんな"現象"。
不眠不休で力を発揮し続けられているのにはそんな理由が存在する。
故に其れを奉る人々は【創符帖録】を。延いては"御札の巫女と云うもの"を作り上げた。

────今はここまで語るに留めよう。

「申し訳ありません。弥御札様はとても慈悲深く寛容な方なのですが。
 何と言いましょう。寡黙……と表現しましょうか?
 巫女たる私も今までお会いした事が無いもので。
 どの位偉い御方なのだとかはお聞きした事がありませんでした。
 ですから、あまりお気になさらないで下さい。」

意外の言葉に戸惑いながらもその様に答えるだろう。

287【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2019/12/16(月) 22:39:49 ID:zddtHpHQ
>>286

「おや、そうだったのですね」

 その反応に鈴理は訝る。
 今まで会ったことのない神を信仰している。
 それは不思議なことではない。
 声、つまりは信託を授かった者が後に信仰するのは普通のことだ。
 出雲の地では直接神と触れ合い、語ることができるが、
 出雲以外の地では神が直接赴かない限り信託を授ける。
 そう、会ったことがない神を信仰しているのは不思議ではない。

 鈴理は、彼女が『弥御札』という神が高位の存在であることを知らないことに疑問を持っていた。
 直接の関係ではない鈴理がその神格を知っているのに対し、
 信仰者であり巫女である『御札 礼花』という女性が、知らないのは異質だ。
 神の格とは信仰され、その存在を認められるほどに増していく。
 その総本山が小さな祠であろうとも世界に知れ渡り、その力が伝わる限り薄れはしない。
 巫女であるならばその力の凄まじさが伝わるはずだが、

「……わかりました。気にしないようにします」

 神からの干渉がないはずがない。
 だが、神から意思の疎通がない。
 ただその力を世界に送っているだけなのだろうか。

 今それを聞くのはやめておこう。
 せっかくの交流なのだからと、鈴理は思考を区切る。

「せっかくですので、初詣を開くときにお互いの宣伝を行いませんか。
 なんでも御札神社では日頃の安全を願うのだとか、こちらは鍛冶や修練の向上を願っています。
 ですので、足りない部分や鍛えたい場合は訪ねてくださいと一言宣伝を行うというのは。
 こちらでは厄払いや守護といった宣伝を行ってみたいと思います」

 商売仲間であり商売敵のような面はあるが、競合できる部分や不足となる部分は補える。
 元は訪れる者の助けとなるのが主なので適材適所だ。
 彼女の性格からしてみても断られることはないとは思うが、はたして。

288【創符帖録】御札を司る神社の巫女さん:2019/12/16(月) 23:15:00 ID:lOtfUcGE
>>287
礼花が弥御札神の格について知らなかった事に対しては。
先に述べた特異な理由の他に、
根本的に彼女がうっかりしているという点もまた大きく関連するだろう。

そもそもが今の今まで自身の社以外の出雲の神社に赴いた事が無い。
信仰による神の格付けという重大要素を知らぬままに日々をのほほんと過ごしていた。
一応この地には一等偉い神様が御座すという事だけは聞いていたが、
それぞれの神にもまた位階が存在する事など想像すらしていなかったのだ。

当然。古えより脈々と『札』への信仰を集めてきた弥御札神の格そのものは高いのだろう。
だが"比較する相手がいなかった"。結局はその一点に尽きるのだ。
とまあ、彼方が詮索しない以上この話はここまで。


────せっかくですので、────。


初詣で互いの宣伝を行わないか、と言う日野さんからの提案に。

「はい。喜んでお受けします。
 一つの社だけでは手が回らないという時もあるでしょうし。
 お互い助け合えるのなら。それはとても素晴らしい事だと思いますから。」

と、快く返事を返すのだった。

289【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2019/12/16(月) 23:48:41 ID:zddtHpHQ
>>288

「それはよかった」

 提案を快諾してくれたことに小さく笑みを浮かべる。
 出雲では広く知られていることかは不明だが、
 この鍛冶の神が奉られる高天火男神社は悪名で知られている。
 曰く、修行しているだけで裏山を噴火させる。
 曰く、試練をしている最中に本殿が消し飛ぶ。
 曰く、祭事を催せば怪異を溢れさせる。
 曰く、その度に鍛冶の神が他の神と戦いを繰り広げる等々。

 一緒に何かしないかと言っても断られることも少なくない。
 なので何も知らない彼女には悪いが、話さないでおこうと思う鈴理であった。
 今回はただ宣伝をする程度なので、なにか問題が起こるとは思えないのも理由の一つだ。

「では、当日はよろしくお願いします」

 そう言って頭を深く下げる。

290【創符帖録】御札を司る神社の巫女さん:2019/12/17(火) 00:11:13 ID:0kcgsBmM
>>289
高天火男神社の悪名は露知らず。
恐らくは知らぬままでも問題は無いであろう故に。
礼花から能動的にその評判を調べたりなんかはしない事だろう。

「ええ。宜しくお願いします。」

こちらもまた深々とお辞儀を返す。

「ええと。ご挨拶の用件はすみましたので。
 もう御暇した方がよろしいでしょうか?」

お饅頭渡して、美味しい桃を頂いて、お話してさようなら。
だと、少し素っ気が無さ過ぎないだろうか。
なんて多少後ろめたくは思うものの。

特に用事も無く他の神社の巫女が居座るのも悪いかな……と。
そんな感じのニュアンスを込めてそう問い掛ける。

291【絵空が彩る真偽の導き】ゼオルマ:嗤い歩く狂喜の聖人:2019/12/17(火) 00:20:01 ID:U8rPimDM
>>290

「……こういった機会は少なかったので世間話などどうでしょうか?」

 他の神社に行かないことは大きくはないが少なくもない。
 ただ交流という面で見れば最近多くなった程度だ。
 もう少し連携を取れたら、出雲全体で何か催しができないか。
 そういったことを考える日が多くなってきた。
 悪名は多いがこれでも出雲のことを考えてはいる。
 第一は高天火男神社と鍛冶の神、そして家族ではあるが。

「もちろん、礼花さんが良ければですが」

 無理強いはしない。
 話すのであれば神社に訪れた人や街で出張所を開いていたこと。
 あとは家族や鍛冶の神についてだろうか。
 話題はあるので世間話には花が咲くだろう。

 もちろん、それは相手次第である。


//と、談笑しましたで終了、でしょうか?

292【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2019/12/17(火) 00:20:27 ID:U8rPimDM
>>291
//ナマーエ

293【創符帖録】御札を司る神社の巫女さん:2019/12/17(火) 00:49:09 ID:0kcgsBmM
>>291

「そうですね。
 他の神社に務める方とお話する機会もありませんでしたので。
 私からのお話はちょっと退屈になってしまうかもしれませんけれど……。」

礼花には当然、外出の自由があり。事実度々外を出歩いてはいる。
しかし根底の部分で彼女は御札神社に囚われているのだ。
其れは彼女が"御札の巫女"であるが故に。

世間話をするならば礼花が上手い事聞き手に回りつつ穏やかに時間が経って行くだろう。
合間合間に聞ける彼女の日常は概ね神社で愛猫とのんびり過ごす、といった様なもの。
まだ年若い彼女の年齢を鑑みるならば。
"余りに達観し過ぎてている"という違和感を感じるかもしれないし。
そもそものおおらかな気質に紛れ気付かないのかもしれない。
尤も其れも今回追求するべき事ではないのだろう。

終始平穏な時が流れ、別れの場面。礼花は鳥居の前で今一度礼をし、帰っていく。

「それではお邪魔いたしました。」

何より其れらの違和感を当の本人が感じていない。
其れこそが真の異常であるという事実を残して。


//それではこれで〆としましょう
//お相手ありがとうございました。お疲れ様でしたっ

294【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2019/12/17(火) 00:57:23 ID:U8rPimDM
>>293
//こちらこそ絡みありがとうございました!

295【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/01/02(木) 00:03:40 ID:0CS8rO.I

「はい、今年も『出雲』と『高天火男神社』をよろしくお願いします」

 初詣に訪れた参拝客に向け、頭を下げる。
 手には神楽鈴を持ち、しゃらりと鳴らして祝福する。
 今年初日ともあって少しばかりの列が並んでいる。
 そのひとりひとりに向け、鈴理は喉を鳴らす。

「武芸の精進と日々の健康への祈りなら、再びの訪れをお待ちしています。
 交通安全や大願成就の祈りであれば、『御札神社』に参拝することをお勧めします」

 自身が祭る神が掲げるものを挙げ、違う領分のものは別の神社を勧める。
 掲げるものが違うことを話さなくとも知っているという輩はいるだろうが、
 近くの神社だからという理由で初詣に来る者が少なからずいる。
 だからといって領分の違う願いを投げかけられるのは神にとっても困るものだ。

 なので、最近お近づきになった神社に客を流すことにした。

「ええ、家内安全や無病息災のお守りも販売されています。
 身体を鍛えて病魔に耐性をということでしたら我が神社で加護を。
 予期せぬ事故などの災害なら御札様の加護を頂くとよろしいでしょう」

 できることとできないことを分け、できる限りわかりやすく説明をしていく。

(さて、こちらでやれる勧誘はこれぐらいでしょう。
 礼花さんの方はどんな塩梅でしょうかね)

 同じく忙しないだろう相手をぼんやりと頭の片隅で考えながら神楽鈴を鳴らす鈴理であった。

296【創符帖録】幾千幾万の札を司る神の巫女さん:2020/01/04(土) 21:42:06 ID:bqqDGJV.
始めに御札神社の構造というものを説明しよう。
小高い山の麓に一般客が訪れる為の拝殿がある。
通常、家内安全や無病息災などの護符を求めたり。
単純に祈りを捧げるのみであれば此処で事足りる。

しかし例えば特別弥御札神への信仰の厚い者や、
或いは其の神性の司る異能の力を求める者であれば更に奥部へと進む必要がある。
そうするならば鍛冶神の六千階段には及ばずも、
千は優に超える急な石段がその者達を迎えるだろう。

その頂上に弥御札神の神体と御札の巫女が待つ本殿が在る。


一般客らに鍛冶、鍛錬を求めて此処を訪れる者はいないだろう、と。
拝殿の神主達に割と切羽詰まった様子で説得された御札礼花。
(彼らは当然、鍛冶神らの普段の所業に関して思い知っており。
しかしながら"御札の巫女"たる礼花の言を無下にも出来ない為必死であった。)

結果、本殿に訪れた者に対し礼花本人から其れを伝えるに落ち着いた。

普段は立地上滅多に人の訪れない本殿だが。
年始とあっては其れなりに訪れる者も多い。

「ようこそお越しになられました。
 万(よろず)の札を奉りし社。御札神社へ。
 私(わたくし)、御札の巫女が御用件を伺いましょう。」

普段はぽやんとしているがこの時期くらいは弥御札神の代弁者然とした、凛とした態度を見る事ができる。

「武具や鍛錬の祈願をされる方には一度『高天火男神社』への参拝もお勧め致します。」

敬虔な者、特別な札を求めて訪れた者。
それぞれに約束通り鍛冶神の元への参拝を勧めてはみるが。
概ねの反応は苦々し気な笑み、といった様子だ。

内心その表情にハテナを浮かべつつも粛々と祭事を進めていく礼花なのだった。

297【進節剛棍】:2020/02/01(土) 02:21:55 ID:B9IhjhiI
「へぇ〜 余所に本殿を構えてる神社の分社も結構あるのね」
「マイナー神を祀ってるのもあるし、こりゃ完全に桃源とは別物だわ」
「あそこは神と妖怪が武仏の修業する隔絶地だもんな…… たまにインスタ映えするとか言って崑崙まで行こうとする若い子が来るくらいで」
「信仰を集めるとかそういう外部からの人間を歓迎する体勢は1ミリもないから、こういうの珍しいぜ」

【山の麓までハーレーで送迎され、グラサンに加え煙草】
【黒地に黄土色の袈裟という仏僧姿ではなく、白で統一された法衣を着た若い男】
【大股で一歩一歩踏み占めるその姿は、僧侶のコスプレをしたようにも見えるが本職である】

「さって…… 日本の神社の巫女さんっつーのは何でこう…… エッチじゃん?」
「用事が終わったら何人か連絡先聞いてからホテル戻って温泉入るか!」

【不敬不遜無礼な事を考えているがこの男。正真正銘の僧侶である】
【くどいようだがコスプレではない】

【観光客や巫女さんに道を尋ねた結果。恐らくここだろうという所までたどり着いた】
【鍛冶を司る神社。高天火男神社。】
【活火山の麓に構えるその神社を見てふと思う事がある】

「なんつーか暑苦しさっつーか…… 戦って勝ってみろとか言い出しそうな顕示欲を感じるっつーか……」
「神様って何処の国も面倒くさい奴しかいねぇのかなー……」

【神に対して快くないイメージを歯に衣着せず呟く】
【これでも正真正銘の僧侶。それも三蔵の称号を持つ高僧である】

/おいておきます

298【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/01(土) 19:18:49 ID:p7r7cJrs
>>297

 火山の麓、六千階段と呼ばれる長い階段の上った先にある神社『高天火男神社』。
 主に『鍛冶』を司り、職人たちの聖地であるその神社は異能を宿すアイテムを創ることで有名だ。
 一方で先代の神が原因で武芸を志す者たちの登竜門としての側面も持っている。
 神社側はこれを足蹴にすることなく、参拝の一種として迎え撃っている。
 その度に神社が壊れたり、流れ弾が他の神の領域にぶつかって破壊痕を残すなど問題となっていたりする。

 そんな色々とアレな神社ではあるが階段をきちんと上ってくる参拝客は割と多い。

「こんにちわ、ようこそ『高天火男神社』へ。
 私は『鍛冶の神 カグツチ』の巫女を務めている日野 鈴理(ひの りり)と申します」

 そして、参拝客のほとんどが最初に遭遇するのが宮司と共に巫女の長を務める彼女。
 紅を主体とした純巫女服と言える着こなし、
 首に掛けた日緋色に輝く石のペンダントと胸元に着けた炎を象ったチャームが目を引く、
 赤と青のオッドアイを持つ黒髪の巫女。
 先代鍛冶の神の代から巫女として仕える女性であり、アイテムの創り手だ。

「今日はどのようなご用件でしょうか。参拝でしょうか」

 巫女は白い法衣を着た男を奇妙な目で見ることなく、淡々と聞いた。

 その左手の薬指には指輪がはめてある。
 そう、既婚者である。更に言えば三児の母である。産んでいないが三人の娘がいるのである。


//お待たせしました。

299【進節剛棍】:2020/02/01(土) 21:38:32 ID:B9IhjhiI
>>296
「うひょっ これはなんつー激マブ…… ゴホン、失礼」

【全身を見るのは戦闘屋の癖というより、女性を愛する男の癖】
【下手に人妻に手を出して面倒な事にならない為の防衛手段だ】
【ましてやこの地では「私は神様にこの身を捧げています」なんて事もあるのかもしれない】
【そういうのに下手な真似をしたら大概ろくな事にならないのは神秘、神話世界の一端を知る者とって常識である】

「拙僧は東海竜王敖広の弟子、榊春幸。 法名を玄春三蔵。 桃源郷に属する僧の一人であります」

【グラサンを取ってご挨拶】
【こういう畏まった話方も出来る。 向いてないけど】

「先日出会った玉紅という魔女から出雲の地には冶金の神がいるという話を聞き、是非挨拶に参ったのともう一つ。仏問答をしに」
「桃源の宝貝と出雲の武具。果たしてどちらが強いのかと」

【宝貝なんて持ってない。如意棒Mk-のベースはⅡはもともと祖父が武器と勘違いして持っていった海の測り。所謂ものさしに過ぎない】
【神の道具に違いはないが宝貝の代表として差し出すには本来の用途が違う】

「……なんて、用は武器の一つでも頂ければ嬉しい程度に参拝した僧兵っす」
「聞いた話じゃここはそういう求道者がお眼鏡に叶わずよく返り討ちにされたりしているそうで」
「一応神や仏に教えを請う同士。あまり無益な事はしたくないんだけど…… 俺だけどうにかスルーパスって訳にはいかないかね?」

【神の試練なんてろくなもんじゃない。こちとら何でもバッチコイの英雄でもないのだ】
【出自も所属も誰の紹介かも明かしたし、怪しい者ではないと解って貰えた…… と思いたい】
【どうか竜王の敖広の旦那が鍛冶の神とやらとマブダチでありますよーに……】

300【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/01(土) 22:21:17 ID:p7r7cJrs
>>299

「榊、春幸さん、ですね」

 その名前を聞いて目を細める。
 今ほど男がやったように頭頂から爪先までを見て「ふむ」と一言。
 『ギョクレン』という魔女は知らないが、それに字を当てたならば、
 少し前にメッセージカードを手紙代わりに送ってきた『玉紅』と名乗る者がそうなのだろう。
 榊という苗字も件のカードに書かれていた人物と同じと見て良いだろう。

「申し訳ございませんが位が高い相手であろうと、低かろうと、
 どこの誰であっても平等に試し、実力を目で知ることで与える習わしになっております」

 百聞は一見に如かず。そのことわざは彼の母国であろう大陸のものだ。
 口にはせず、その言葉の意味だけを返答とした。
 言葉で伝わったものよりも実際に見たものを信じる。それは何よりも真実に近いものだからだ。

「ですので、最初にこちらの実力を榊様に見てもらった方が良いでしょうか。
 あなた様が手にしたいと思える物を創れるのかどうか。あなた様自身が実際に触れる。
 それから改めて判断してもらう」

 そう言って、巫女は一枚の用紙とペンを男に差し出す。
 それには幾つか項目が書かれている。


――――――――――――――――――――――――

・欲するアイテムの種類

・アイテムに異能を求めるかどうか

・すでにアイテムを持っている場合、それを不足と思うか

・なぜ欲するのか

――――――――――――――――――――――――


 ようはアンケートのようなもの。
 答え方によってアイテムを与えるかどうかには影響しない。
 基本的に試練の成果次第なのだ。

 アイテムを渡す鍛冶師には相手に自身の創ったものを与えるかどうか判断する権利がある。
 所詮はアイテム、使用するためにあるものだ。
 だが、より良き相手にできれば渡ってもらいたい。
 それはアイテムを使う者にも同じことが言える。
 より良いアイテムを使いたい。ならば相手にも鍛冶師を選ぶ権利がある。
 この腕に振るってもらいたいと思うならば、

「どうでしょうか」

 そして、この者に使ってもらいたいと思ったならば、巫女は全力で腕を振るだろう。
 そうなるかどうかは、先ず男の返答次第だ。

301【進節剛棍】:2020/02/01(土) 23:19:19 ID:B9IhjhiI
「ぁ〜、駄目か。 まぁ最初から期待はしてないけどよ」

【試練のスルーパス叶わず。】
【何させられるんだろーな…… 面倒くさい。】
【そんな事考えていたら、何やら神を渡される】

「へぇ…… これ書いて納得してもらえたら多少手加減して貰えたり……ってのは無さそうだな」

【相手の真面目な雰囲気から察するにそんなうまい話もないんだろうな……】
【どうせ神様のご機嫌伺うために思っても無い事を書き連ねるつもりもないけど】
【何々…? 武器の要望を聞いてくれるなんて話の分かる神様じゃないか】

――――――――――――――――――――――――

・欲するアイテムの種類
 武器。剣か槍
・アイテムに異能を求めるかどうか
 絶対欲しい。道士たちの持つ宝貝に匹敵する物を所望
・すでにアイテムを持っている場合、それを不足と思うか
 不足とは思わないが、切り札としてもう一つくらい武器が欲しいところ
・なぜ欲するのか
 斉天大聖の名から脱却するため

「こんな所かな?」
「しかし意地の悪い質問だぜ。不足があるかどうかなんて」
「戦う人間が武器沢山欲しくて何がいけないってんだよ」
「哪吒太子なんて6つも宝貝持ってるってのに。 1つくらいくれてもいいじゃねーか」

【おのれ太乙真人。自分の弟子には激甘のくせに外様には厳しいあの武器庫男め】
【ここで武器手に入れたら奴だけは絶対にシバく】

「それで、次は何をするんだ?」

302【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/02(日) 00:18:38 ID:jvuGN1rE
>>301

「武器をたくさん持っていてもそれを操れなければ宝の持ち腐れですよ」

 返された用紙を読みながら言葉を返す。
 本来、人がそのアイテムを使いこなすのには長い時間の修練が必要だ。
 同じ種類のアイテムであっても、本当の意味で同じ武器でなければ慣れるのに時間を必要とする。
 違う素材、違う感触、違う能力。それらが一つでも違えば同じ種類のアイテムでも馴染ませなければならない。
 その点で言えば彼の言う有名な??太子は化物も良いところだろう。
 六つの違うアイテムを使いこなす彼はどれほどの時間を費やしたのだろうか。

 そして、アイテムを使いこなす上で重要とするものはまだある。
 それは既に持っているアイテムに満足しているかどうかだ。
 違う言葉を使うならば、執着しているかどうか。
 このアイテムでは駄目だ等と思っているならば、それは使いこなせていないのだと巫女は考えている。
 満足している、だがこれとは別の使い方ができるアイテムを探している。
 そう考えられる、そう思えている者は好ましい。

 そのような相手であれば使いこなし、壊れるまで長く使ってもらえるだろう。

「では、これを使ってみてください。
 量産品のものですが良い性能はしています」

 懐からいち枚の札を取り出し、それを男の手前で落とす。
 落ちたそれは一本の槍となって地面に突き刺さる。

「持っている異能は風です。
 そして、私はこれを使います」

 そう言って裏手で叩いたのは、
 いつの間にか巫女の後ろに突き刺さっていた2mほどもある、身の丈を超えた機械剣。
 巫女が自分用に創った『天赤野時斬』と呼ばれるアイテムである。
 コンコンと叩くと剣が割れて中の構造が音を立てて動き出し、剣身が短くなり、柄が伸び、
 割れて短くなった剣身が閉じる瞬間にペンダントにしている日緋色の輝石を投げ入れる。それは淡く輝いていた。
 そうして長柄武器、3m程の槍へと変貌を遂げる。

「こちらの準備は良いですよ」

 その柄を両手で持ち、穂先を男へと向ける。


――――

『普風 -槍- 』

 鋼を主な材料とし、風の属性を宿す合金を素材に打たれた槍。銘は『アマネカゼ』。
 穂先から柄頭まで薄い緑色をしており、能力発動中はそよ風を発生させる特徴を持ち、弱点に雷属性を持つ。
 貫通力は中の中と特別高くも低くもない。使い手によっては分厚い鉄壁を貫くことも決して不可能ではないだろう。
 頑丈さも特別堅いわけではないが、通常の戦闘で穂先が潰れたり、攻撃を受けて折れたりすることはない。
 ただし、相手の高い破壊力のある攻撃(本気の攻撃等)を食らい続ければその限りではない。
 特別に『不変』の性質を付与されており、弱点とする攻撃以外では『不壊』と同性能であるほか、どのような能力であっても能力付与や造形の変化はされない絶対不変のルールを持つ。

 有する能力は【風】
 文字通り風を操作する能力。
 風を圧縮させての攻撃や強風を起こすことができる。
 この能力単体による攻撃性能は高くない。風を圧縮した攻撃でもバットで軽く殴る程度に留まる。
 その代わりに汎用性が高く、応用として飛翔・飛行・滑空等が行えるほか、風による壁で相手の飛び道具を抑えることも可能。

 ただし1レスでの使用回数は1回までであり連発ができない。


種類:槍
区分:影打(普)
等級:宝具(神具)

・不変付与による性能強化によって異能が強化、等級が神具となっている。

303【進節剛棍】:2020/02/02(日) 01:06:46 ID:WipRaRK.
「……あいつらの武器には及ばんが、素直でいい武器だ」

【量産品でこれなら、まぁ文句はない性能だろう。】
【もう少し大火力でぶっぱなし甲斐のある武器なら良かったが、まず振ってみた感じも問題ない】

「それに、合格が貰えれば鍛冶神とやらに一点ものを打って貰えるって考えていいんだよな?」

【左手で柄を持ち脇で挟む。片手をフリーにしつつ相手の攻撃を捌くのに重きを置いたスタイル。】
【殆ど普段使っている武器と同じように使えるのも良い。 一通りの修業はしているので剣でも特に問題は無いが一番の得意は長物である。】

「それじゃ…… 可愛い巫女さんとやるのは気が引けるから、納得したら早めに言ってくれよ!」
「っしゃぁいぃ!」

【威勢のいい掛け声と共に槍を振るい、圧縮した風の弾を飛ばす。】
【何かに着弾すると押し固めた空気が弾け、周りに爆風を起こす小さな塊だ】

304【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/02(日) 01:36:02 ID:jvuGN1rE
>>303

「ええ、一点物です」

 創るのは巫女なのだが、鍛冶の神の神格が宿る輝石を使って創るためあながち間違いでもない。
 そのためある種肯定とも否定とも取れる言い方となる。

 そして、男は途中で止めるつもりだが、巫女は相手を殺すまで続けるつもりであった。

 形成途中で機械剣――今は槍の姿を取っているため機械槍――に入れた輝石が槍に姿を変える。
 機械槍の中では槍となったそれを阻害しないようにスペースを確保し、それがかちりと噛み合う。
 同時に巫女の身体能力が変化する。
 輝石が姿を変えている間、変化したアイテムと同種のものを十全に扱える技術を獲得する。
 そして、達人と言われる者たちと同じだけの身体能力に変化するのだ。

「ふっ!」

 機械槍の柄を握る指の力を微細に変えていく。
 それは機械槍の内部を操作する命令。幾つもの不変を付与されたパーツが内部で動き続け、各々が受け持つ力を開放していく。
 そうして機械槍が発動したのは焔の属性付与。
 槍へと変じた輝石が持つ属性を槍の穂に表面化させ、巫女は腰を深く落として槍を横薙ぎに振るった。
 それは迫る風の弾とぶつかり、弾け爆風を起こすそれごと払い除ける。

 そのまま振るった槍の穂を後ろに前傾姿勢を取り、男に向かって走り出しそのまま石突による打突を腹部に叩きこもうとする。

305【進節剛棍】:2020/02/02(日) 12:35:31 ID:WipRaRK.
「くっそ! どう見てもソッチの方がつえーじゃねぇか!」

【技量の言い訳ではない。寧ろ見た限りでは自分の技量なら覆せる範疇だ】
【これはあくまで彼我の得物を見比べた客観的な分析】
【相手の突進に突進で合わせるように槍先を後方に向け、風の爆発で身体を前へと吹き飛ばす】

「悪いけど、マトモな武芸者相手の技で俺に勝てると思わねぇ事だな」

【風を打ち出すさなか、槍先を横に振って直進ではなくカーブを描くように細工していた。】
【相手の突きを身体を反らすように躱し、フリーにしていた右手から伸ばした鎖で相手の槍の柄を絡めとる】

「問答しにきたって言ったろ? 俺は武器全部使わせて貰うぜ」

【鎖で相手の武器を奪えるとは思っていない。これはあくまで振らせないための動き】
【巻き付いた鎖を短くする事で相手に肉薄し、槍の柄に足を立て鎖を右手と口で咥えしっかりとホールドする事で、相手の槍の上に乗り振らせない事に専念する】
【この体勢なら自分の体重が槍に上乗せされ単純に満足に振る事は出来ず、仮に振れたとしても槍と一体化して動く自分に槍は当たらない】
【つまり、手放すしかない】

「ふぉふふぇんふぁふふぁんふぁふぇふぁふふぁっふぇ。ふぉうふふぁふふぁふふぁふふぁ!」

【訳:桃源じゃ手段は選ぶなって言われたからな!】
【人と言うより獣、物の怪の類を思わせる我流の戦闘術。果たして神の前でどれだけ迫れるものか】

306【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/02(日) 15:06:25 ID:jvuGN1rE
>>305

「マトモではない」

 鎖が機械槍の柄に纏わりつく。男が所有するアイテムだろう。
 これがカードに書かれていた『物干し竿』というやつか?
 鎖では竿にするのは難しく感じられる。ならまだ何か隠している物があるだろう。
 相手の武器は宝貝。様々な異能を宿す超常のアイテムだ。
 であれば用心に用心を重ねても足りないだろう。

 だが、男もまだ巫女の技量を測り切れていないようだ。

「お構いなく。あなた様の持ちうる全てを見てアイテムを創るので」

 柄から両手を離す。その時点で機械槍への命令は全て入力済みだ。
 機械槍の穂が僅かに開き、そこから槍の姿をした輝石と機械槍の内部パーツで作り上げられたトンファーが排出される。
 槍とトンファーを素早く手に取ると、

【 『槍』 → 『マチェット』:0レス形成 】

 輝石を核に神の焔が象る形を、瞬間的に槍からマチェット(山刀)へと変える。
 素人でも殺人が可能なほどの殺傷能力の高いナイフ。
 半面、壊れやすく耐久力が低いという特徴も持つが、巫女の不変付与によってカバーされた凶器となっている。
 さらには神の焔がその刃を創っているため炎属性も持つ。
 マチェットという代物の形をした別物のそれを右手に持ち、
 巫女は機械槍に絡まった鎖ごと、槍の穂に乗っている男の両足もまとめて薙ぎ払わんと勢いよく振るった。

 今の巫女の膂力は普通の女のそれではなく、人の中でも突出した鍛え抜かれた者のものと同等。
 そしてマチェット特有の殺傷能力も相まり鋼鉄製であろうと切り裂ける威力を持つ。
 ただの防御では防げないだろう一撃である。

307【進節剛棍】:2020/02/02(日) 16:21:17 ID:WipRaRK.
「そりゃ結構! 断然!楽しみになってきたね!」

【全てを見て武器を作る。そう言った。】
【ならば出し惜しみなどする必要はない。全力を出してこの試練を突破するのみ】
【マチェットの一撃を槍柄で受け止める。】

「なるほど、確かに壊れない」

【ニィッ……と笑いながら得物の特性を実感】
【とは言え、相手の得物が可変する一つではなく二つと分離する事が解った今、長物二つで戦う自分がこの距離に長居するのは悪手である】

「伸びろ! 如意棒!」

【相手の槍を絡めていた鎖を一本の棒に戻し、地面に突き立て支点にして飛び乗ると、そこから雑技団のように体を回して少女に蹴りを放つ】
【防がれたマチェットと先ほどまで足場にされていた槍では間に合わないと思いたいが、当たっても防がれても当然棒は後方へと傾くのでその際に棒を伸ばして一気に距離を稼ぐ作戦だ】

「しっかし、バカみたいに速くビュンビュン飛ぶわけでも山動かすみたいな怪力もねぇのに…… 普通に強いってのは厄介だな……」

【右手に如意棒、左手に槍を構え、相手の出方を伺う】

308【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/02(日) 17:47:26 ID:jvuGN1rE
>>307

 男が繰り出した蹴りを左手のトンファーで受け止める。
 如意棒と男はそう言った。あれが本当に如意棒であるならば、
 なるほど、伸びる性質は確かにあの有名な如意棒と一致する。
 物干し竿と書かれていたのも頷ける。

 だが、如意棒が多節根のように節が分かれるものだったなどと聞いたことがない。
 多くの技術を習得し、医学にも手を出し数多の戦士を見たことで培った巫女の眼には、
 男の肉体があの如意棒を扱えるほどの力を秘めているとは思えない。
 力を制御しているのか。
 あの大陸の者であれば、三蔵の名を継ぐ者ならばできても不思議ではない。
 まだ断ずるには早計か。

「まだまだ、こんなものではありませんよ」

【 『マチェット』 → 『鎖鎌』:0レス形成 】

 輝石を鎖鎌へと再形成し、トンファーの長棒部分を握る。ちょうど鎌を持ったような状態だ。
 トンファーの先端部分を機械槍の石突に当て、押し込む。
 機械槍の穂に吸い込まれるように柄が短くなっていき、見た目が小剣程度まで縮まる。
 そして、押し込んだトンファーを勢いよく引くと、石突から鎖が引き出される。鎖付きの剣である。
 左手にもったトンファーを操り、空中へと翻る機械小剣。左手を横に薙いでそれは弧を描いて男の左から迫る。
 質量的に片手で扱うのは無理のある代物だが、それは数年も前に既に軽量化の異能で対策が済んでいる。
 身体能力の上昇している今であれば片手で振るうことが可能なほどには重量が抑えられているのだ。

 だが攻撃はそれだけではない。右手に持った焔の鎖鎌もまた、その分銅が真正面から剛速球で迫る。
 横の刃と正面の分銅。2つの脅威を男はどう凌ぐか。

309【進節剛棍】:2020/02/02(日) 18:24:53 ID:WipRaRK.
>>308
【防がれたが距離は稼げた。】
【20メートル前後。マウンドからホームベースまでの距離と大体同じ】
【これが戦闘において最も得意とする。余裕をもって相手を迎撃しつつこちらからも積極的攻められる自分の間合いである】

「ようやくあったまってきてんだ!」
「長くやられても困るけど今すぐ終わるのもつまんねぇんだよ!」

【榊春幸は祖父のように完成された英雄ではない】
【単純な武術にしても彼より優れた者はいるし、如意棒も真の力を開放できている訳ではない】
【ただ一つ、彼が如意棒の持ち主として誰にも劣らぬ適性があるとしたら】

「やっぱいきなし触った武器であれをどうにかするのはちと辛いか」
「……4番セカンド榊選手。1アウトで得点圏にランナーを置いて……」

【槍を天高く投げ、落ちて来るまでの間に如意棒を両手で握る】
【如意棒を長く、10メートルを超す振るう武器としてはあまりに大きいサイズにまで伸ばし】

「エースの一振りで試合を…… 変えたぁっしゃあ!」

【一振りで分銅を少女の顔面へと打ち返し、そのまま横薙ぎのフルスイングを如意棒を叩きこむ】
【武の頂に達した訳でもない彼が如意棒の持ち主として誰にも劣らぬ適性があるとしたら、技量に釣り合わない程に卓越した天性の当て勘】
【距離に余裕があり打ち返せる類の飛び道具ならほぼ確実に如意棒の長さを調節しジャストミートさせられる。弾道もある程度コントロールして狙った所に返せる】
【そして単純だが伸ばせば伸ばす程ヘッドスピードは速くなり、打撃は重くなる。】
【トンファーで受けようにも体ごと吹き飛ばすには十分な一撃だ】

310【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/02(日) 19:36:59 ID:jvuGN1rE
>>309

「ッ!」

【 『鎖鎌』 → 『日緋色の輝石』:形成解除 】

 腰を落としながら打ち返された分銅、いや鎖鎌の形成を素早く解除する。
 それによって分銅は焔に崩れ、巫女の身体を傷付けることなく通り抜ける。
 本来は輝石の内側に宿るカグツチの焔。
 それが妻である巫女の身体を傷付けることはないが、形成した刃まではそうはいかない。

「僧兵かと思っていませしたが」

 屈むと右手で地面に触り、土を素材に斜面となるように巨大な壁を形成する。
 不変を付与されたそれは炎属性でなければ崩れることはない。

「スラッガーでしたか」

 トンファーを操り、機械剣を手元に戻す。
 如意棒であることに疑問があったが、相手の武器がそれに連なるアイテムであることは確かなようだ。
 重量もいくら伸ばしても変化がないらしい。
 あそこまで長くしてフルスイングできるほど、増幅した重量を振るえる怪力は男にはない。
 別のアイテムや彼自身の異能があるなら話は変わってくるが、
 形成した壁にぶつかった振動から計算しても、彼に怪力が備わっているほどの攻撃には達していないとわかる。
 なら、彼の如意棒は長さを変えられても重量に変化はないのだろう。
 その性質はなるほど、如意棒の別名、如意棒の素材となった『神珍鉄』の特性と合致する。

「しかし、三蔵の名を持つ如意棒の持ち主とはまた、面白いものですね」

【 『日緋色の輝石』 → 『マスケット銃』:1レス(次レス形成完了) 】

 トンファーを機械剣に組み込み、形成を始めている日緋色の輝石を再び機械剣へと投入する。
 そして、その形態を変更させる。刃、穂となっていた刀身はフレームの内側に折りたたまれ、柄もまた折りたたまれグリップとなる。
 切っ先は丸く、口を開いたマズルへと変わる。それは大きな機械銃へと形態だ。
 残念ながらこのままでは撃つことはできない。張りぼてのようなもので中身の輝石が銃に形成を終えなければ撃てない代物。
 機械銃は中身までパーツで再現することができず、
 銃となった輝石とデカい機械剣では小回りが難しいためこうなったのだ。
 だが、この状態でのメリットも一応あったりする。

 先ほど地面に触れた時に手のひらに付着した砂粒から弾丸に形成する。
 それを機械銃のフレームに押し当て、リロードする。
 そう、弾倉へと運ぶ投入口を任意の場所に作れる。投入すれば後は機械銃の内部で輝石まで運ばれる。
 不変付与による頑丈さで成り立つ機構である。

311【進節剛棍】:2020/02/02(日) 20:27:36 ID:WipRaRK.
「硬ぇな! オイ! だけどまだ!」

【如意棒Mk-Ⅱは単に鎖に代わる如意棒ではない】
【節目を無限に作れる。10センチ区切りで節目を作った計100節棍に形を変え、壁の横を通って巫女を追撃する。】

「フン、ガキの頃の話だよ」

【落ちてきた槍を片手で拾い、風を穂先に溜め始める】
【先ほどまで打ち出していた大きさまで風を集めてから、ふと気になった事が一つ】
【これ限界まで溜めたらどうなるんだろう】

「そちらさんも銃で来るみたいだし、どっちが早いか勝負ってかぁ!」
「アマ… なんつったっけ? 忘れた!」
「まぁいい。 アマなんとか改め芭蕉尖! フルパワーで打ち込んでやらぁ!」

【相手の発砲を待つように風の充填を続ける】
【既に先ほど放った風弾の倍ほどの直径の弾が槍先に完成しつつあった】

312【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/02(日) 21:15:32 ID:jvuGN1rE
>>311

 追撃が来るのと機械銃の中で形成が完了するのは同時だった。
 形成したマスケット銃に装填された焔弾を、如意棒の節目に当たるように撃つ。
 弾丸がなくなると機械銃が駆動し、オートリロードをする。そして再び節目に向けてトリガーを引く。
 それを計5回繰り返すがそれは2秒にも満たない程の時間だ。
 そして、手のひらの砂粒を弾丸に形成、機械銃に装填しながら壁から飛び出す。

「勝手に名前を……構いませんが」

 あげたわけではない、ただ試しに渡しただけだ。
 彼の物になったわけでない。名前を付けられると後で少々面倒が起こるかもしれない。
 気分でつけているだけなのかもしれないが……。

「フルパワーですか。
 なら、この子のフルパワーを耐えられるか、試してみますか」

 機械銃の手を当て命令を送る。銃身が伸び、3mほどまでの砲塔となる。
 この機構は使ったが最後、『天赤野時斬』の機構が全て停止してしまうため、使いどころが限られる。
 余程のことがない限り使えない。ましてや人間に使うような代物ではない。

「本来はこのランクでは使えませんが、
 『時斬』を停止させるほどの力を使えば一回だけなら」

 ガチリと機械銃が音を立てる。
 駆動音が辺りに響き渡り、各パーツに宿る異能がフル稼働する。
 不変の性質を持つ弾丸、同じくフレームを持つから耐えられるストレスがパーツに発生する。
 銃口から稲光が見えるほどのエネルギー。

「死んでも出雲なら生き返ります。存分に、死んでください」

 照準はバカ正直に真正面から狙いを定めて、トリガーを引く。

 銃身内部に磁場が発生し、弾丸を挟む。
 弾丸の発射に伴い発生するプラズマにストレスを全て『天赤野時斬』のフレームが負担を受け、制御される。
 真っ直ぐに発射された弾丸は僅か3mほどしかない銃身内部で加速を続け、刹那の瞬間で駆け抜ける。
 EML。レールガン。本来は日緋色の輝石の形成によって作られる兵器によって使われる機能。
 だが、『天赤野時斬』の機能停止という代償付きで一度限りの使用を可能にする。

 個人に使用される兵器ではないそれは圧倒的な破壊の余波、辺りの地面を結晶化させ、空気を引き裂いて通過する。
 防御など意味を成さない絶対破壊。防御できたとしてもその代償は四肢の破壊だけには留まらないだろう一撃。

 EMLによる弾丸を放ったのち、最後の役目としてマスケット銃が排出され、巫女はそれを手に取る。

313【進節剛棍】:2020/02/02(日) 22:01:14 ID:WipRaRK.
「……あ、こりゃ死ぬな」

【真正面からぶつければ確実に力負けする。量産品と真作の差とでも言うべき性能差を漂う風格、死の匂いの濃さで解らせてくる。】
【如意棒を弾くのに一発使わせたが第二の弾を止める手段はこちらにはない。】

「でも、こっちが真っ向勝負誘ったら乗るわな」
「自分で作った武器だし性能は自分が一番良く解ってる筈だし」
「ただ、俺の武器を知らな過ぎたな。 伸びて鎖になるって、解ってても使い方の発想まで考えるのはいきなりじゃ無理だろ」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「伸びるのは、相手に向かってだけじゃないんだぜ」

【大量に節を作った棍の一番端、持ち手になっている部分を地面と垂直に向け】
【一気に伸ばすと棒高跳びの要領で上へと大きく飛び退く】
【先ほど蹴りの際に見せた動きと仕組みは同じだが、要は先端と後端を同時に伸ばせば退きながら攻撃が出来るというもの】
【多節棍と化した新たな如意棒だから出来るようになった技である】

「チャージ完了だ、ぶっぱなすぜ!」

【10メートル伸ばしていた余りを全て使い、真上に高速の90メートル跳躍】
【その途中で最大まで溜めた風弾を放つ。余波で自分まで被爆するのを避け、相手の照準を向けさせないためだ】
【最高高度に達したならば、落下速度を上乗せした如意棒による脳天割りをしようとそのまま落ちてくるだろう】
【簡単なガードなら潜り抜けられるように、相手を見て多節化する事を忘れない】
【忘れているのは、落下した際の自分への衝撃だけである】
【まぁ、槍があるになんとかなるっしょ! くらいにしか考えていない】

314【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/02(日) 22:25:58 ID:jvuGN1rE
>>313
//すみません、『如意棒を弾くのに一発使わせた』と書かれていますが、これはEMLの弾丸についてでしょうか?
//だとしたらすみません、こちらの描写不足でした。
//EML自体は【進節剛棍】さん本人に向けて発射したものです……。

315【進節剛棍】:2020/02/02(日) 22:46:45 ID:WipRaRK.
//失礼しました
//>形成したマスケット銃に装填された焔弾を、如意棒の節目に当たるように撃つ。
//この部分の事です

316【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/02(日) 23:19:09 ID:jvuGN1rE
>>313

「やはり真っ向勝負は避けましたか」

 真上へ跳躍されたことでEMLの弾丸は明後日の方向へ破壊を進めていく。
 役目を終えた機械銃は剣に形態を変えることもできない。

「さて、参りますか」

【 『マスケット銃』 → 『槍』:0レス形成 】

 マスケット銃から槍に再形成を瞬時に済ませ、地面に手を当てる。

「確かに如意棒については考えは至りませんが、
 その子の特性ならわかり切っていますよ」

 土を素材に柱を形成、盛り上がって形成されていく頂上に立つ。
 その一本の柱は空にいる男へと真っ直ぐ進む。それはまるで冠位的な自動エレベーターのようだ。
 そうなれば必然、男の発射する風弾が目の前に。

「その子は殺傷性が低い」

 自らが作ったものなのだからその性能は把握している。
 汎用性が高いのが売りの風の槍だが、風の刃等の攻撃性能は高くない。
 立ち回りに用いてこそ真価を発揮させる異能だ。

 それをわかっている巫女は、何もしなかった。
 その風弾を真っ向から身体で受け止め、何食わぬ顔で風圧による衝撃に耐える。

 巫女の体力と精神は人のそれではない。
 栄養さえ摂取できていれば何か月も不眠不休で動き続けられる化物のそれだ。
 どのような痛み、それこそ死に直結する痛みであっても精神だけで踏み越えられる。
 だから今も、薄らとした微笑みを男へ向け、

「さあ、次はどのような手を?」

 相手にいる場所まで柱が建つと剣を逆袈裟掛けに振るう。

>>315
//こちらこそ勘違い失礼しました!

317【進節剛棍】:2020/02/02(日) 23:54:01 ID:WipRaRK.
「ありゃ? 全開でぶっぱなせば行けると思ったんだけど」

【そうはいいつつも後は自由落下するしか出来ない】
【風を操るなら飛べるかもしれんが細かい調節を覚えるには時間がかかるだろう。】
【そんな悠長な事を言える状況ではない】
【高度を活かした攻撃も相手が上ってきた事で優位性が潰される】

「……こういう自爆覚悟って言うのは正直、痛いからやりたくないんだけど。」
「まぁしゃーなしか。 男として、簡単に参ったは言えないよな」

「こっちの攻撃をモロに受けた巫女様に敬意を表し」
「同時に、アンタ以上のコッチのイカれた覚悟を見せつけてやりますか!」

【多節化した如意棒を振り下ろす。しかし剣と打ち合うつもりは無い】
【巫女の身体を雁字搦めに巻き取る為の物、そして、剣は敢えて防がず体をねじって急所だけ回避して肩で受ける】
【敢えて肩に深々と差し込まれるように体を押し込み武器と体、両方を固定して動きを止めるため】

「どーよ、痛いけどコッチも受ける覚悟くらい標準搭載だっつーの」
「もう逃がさないぜ」
「それにその土を盛り上げて壁やら足場にする能力。手で触らないと使えないんだろ?」
「芭蕉尖!! 最期に気合入れろ!」

【槍の風で飛翔する事は出来ない。繊細なコントロールで高度を調整できる程器用でないから】
【つまり、ジェット噴射のように単純な推力としてなら問題なく使える】
【自分の身体を、絡めとった巫女を、体で受けた刃ごと自分の槍の風の推力で足場から吹き飛ばし身投げする】
【土を操る能力の考察に違いが無ければお互いに地面に打ち付けられる】

318【進節剛棍】:2020/02/02(日) 23:55:47 ID:WipRaRK.
/すいません。次の変身は明日になりそうです!

319【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/03(月) 00:56:37 ID:yYvpUWQ2
>>317

「身投げ覚悟ですか……!」

 袈裟掛けに振るわれた剣は深々と埋まる。
 だが、それは相手の捨て身の覚悟故の敢えての受けだ。
 そして、如意棒の鎖で巻き取られた状態では身動きもほとんど取れない。

「戦いを渋ってはいましたが覚悟を決める判断は早いのですね。
 それは素晴らしい。命を懸けるべき場面を見誤ることがない」

 しかし巫女の表情は曇らず、相手を称賛する。
 重力に引かれて落下する中でも余裕を保つ。

「で、あればこちらも見せましょう、『空理』」

 娘の名前を呼び、彼女からの贈り物の力を発動させる。
 彼の行動は奇しくもそれを発動させるため条件を作っていた。

【 神炎のチャームEX 】
【 特殊効果:炎に関する異能の出力を、限界を越えて上昇させる 】
【 限定条件:一切の攻撃行動の禁止 CLEAR 】

【 『日緋色の輝石:剣形成』:超人化、神焔操作の限定解除 】

 胸元に着けられた炎を象ったチャームが仄かな輝きを放つ。
 同時に剣となっている日緋色の輝石が新たな焔を噴出させる。
 焔は周りの物質を溶かしながら巫女と男の真下で膜を張る。

 本来は多少の時間(6レス以上)の形成が必要だが、
 愛娘のチャームはそれ相応の代償を払うことでその時間を必要とせずに使える。
 行っているのは防衛、攻撃の意思は皆無の行動だ。

 そして、その防衛によって行われた真下に膜を張るというものだが、
 この状態の焔は自由自在に操ることができ、疑似的な物質化、つまりは『触れることのできる焔』となる。
 今回行ったのは空中でのトランポリンの形成である。
 四隅の支柱はないが、自由に動かせるのであればシートとなる膜だけで事足りる。
 結果、男の飛び降り心中は失敗に終わることだろう。

「今のはなかなか悪くありませんでした」

 焔で創った簡易トランポリン。先ほど周りの物を溶かしていた焔と同じものである。
 不安に思うだろうが問題はない。温度も自由に変えられる。
 今は人肌程度の優しいぬくもりである。

「見られるものは全て見れましたかね。
 覚悟もアイテムの活用も文句なし。試練は合格です」

 巫女は雁字搦め状態から如意棒の鎖を引き千切り、講評を始めるだろう。
 人を超えた膂力で、それでなくても神の焔が焼き溶かして拘束を解くだろう。
 本当はどちらかが死ぬまで戦うつもりであったが、見れるものは見れたので終わりとした。
 彼的にはもしかしたらあのままダブルKOを狙っていたかもしれないが、どちらにしても試練は合格だ。

「こちらはアイテムを創るのに不足はございませんが、
 榊さんは私共の神器を使うにあたって不満はありますか?」

 彼に一度アイテムを与え、判断してもらうという話だった。
 試練を突破したため巫女は彼のためのアイテムを創っても問題ないと判断したが、
 男がこちらの創るアイテムに不満と感じたならば前提が消える。

 与えた量産品ひとつで判断しろというのは酷かもしれないが、
 こちらとしては悪くない性能のアイテムを渡したつもりである。
 だが、切り札が欲しいと用紙に書かれていた通り、
 彼には決定打となるアイテムを渡した方が良かっただろうか。
 今更ながらそう思う巫女であった。

>>318
//了解です。一旦お疲れ様です。

320【進節剛棍】:2020/02/03(月) 22:31:34 ID:sOz4SacA
「いだだだだだ! 血ぃ! 血が止まんねぇし!」
「くっそぉー…… 相打ちなら殺せると思ったんだけどなぁ!」
「あーこりゃ今晩は安静だ」

【骨まで達する刀傷。常人なら切除が視野に入る大怪我だが一晩で峠は越すという。】
【常人離れした身体能力、自然治癒力は親譲りだ。】

「いくら鎖の部分が他より脆いっても、それ神の道具なんだけど!?」

【最長で100メートル伸ばした状態でのフルスイングでコンクリートに打ち付けても壊れない程度には強度があるそれを、素手でいきますか】
【こりゃ武器云々じゃなくてバケモノですわ。連絡先聞いたら神が出て来る前に彼女にやられそう】

「ま、合格なら文句は言わないけどよ。 どうせ後4999km以上あるし」
「本気でやって負けたのは爺と……竜王の旦那と哪吒太子と……覚えて無いけど女媧様に一瞬で20000回くらい殺されたんだっけ」
「クッソ、結構多いな」

【本物よりも少ないリソースで機能を拡張させた如意棒Mk-Ⅱは自己修復機能が不完全という欠点がある】
【ヒビや欠けには対応しているが、長さを直す機能は無い。】
【今の榊が100mまでしか伸ばさないので問題は無いが、最長で5000kmまで伸びるそれは折られるたびに長さを失っている。】
【今回の戦闘で凡そ15m程削られただろうか。誤差の範囲で実感は全くない】

「……不満なんか無い。くれるってんなら病気と借金以外は何でも欲しいからな」
「ただリクエストに応えて貰えるなら……」

「女媧様……いや。 神を殺せるくらい大火力な武器が欲しい」

【あそこは伏魔殿だ】
【彼等と殺し合うつもりは一切無いが、何かあった時に抑止力になり得るだけの力はあるに越した事はない】
【それなら一番強い相手に目標を定めておけばそれより弱い奴はなんとかなる】

321【進節剛棍】:2020/02/03(月) 22:34:22 ID:sOz4SacA
「あと、コレもオマケして欲しい。 飛翔の術の才能が全く無いもんで」
【槍先を彼女の方に向ける。強欲で厚かましいのも親譲りである】

//すいません途切れてました
//あと文字化けしてる部分は女カ様です

322【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/03(月) 23:18:40 ID:yYvpUWQ2
>>320-321

「思ったよりも死を重ねているのですね。
 であれば、思い切りの良さも納得できます」

 相手の武器を壊していることに悪びれる様子もなく巫女は頷く。
 焔のトランポリンの高度を徐々に落としながら、懐から三枚の札を取り出す。
 それをそれぞれ軟膏壺、ガーゼ、テーピングテープに変えると、それを男へ手渡す。

「元々が売り物ですからオマケするのは構いません。
 ですが、多少なりの調整をします。試練を超えた方にはそれ相応の状態で渡す決まりですから。
 あと、これで応急処置してください。その程度であれば一刻(約30分)程度で完治します」

 その分疲労が溜まると付け加える。
 それぞれが使った個所へ重点的に傷の修復を行う効果を持つ。
 軟膏だけ体内のエネルギーを無理やり修復に回すアイテムであるため、急激に疲労とお腹が空く。
 だが尋常でない回復速度の折り紙付きである。
 使用すればあっという間に完全回復するだろう。

 『普風』、いや今はもう『芭蕉尖』と呼ぶべき緑槍を男から回収する。
 巫女が言った通り、これも調整する必要がある。今の状態は彼に相応しくはないからだ。

「一応、用紙とリクエストに合うよう創るつもりですが、本当に剣か槍で良いのですか。
 榊さんの力は見させていただきましたが、貴方の技術は棒術と多節根辺りのそれでしょう。
 剣や槍を十分に扱える程ではありません」

 棒術。その基礎的な技術は確かに剣や槍に通ずるものがある。
 その基礎が男の戦いを見てできていることはわかった。剣と槍は最低限使えるだろう。
 だが、どこまで行っても棒を扱う技術。刃の付いた槍や剣を十分に扱うまではいかない。

「使っても精々が護身術程度に収まるでしょう」

 そもそもの重心が棒のそれとは違う。
 彼のそれは本来の刀剣術や槍術の類を使用できるものではない。
 そも彼の得意とする戦闘スタイルはその程度のレンジではない。
 先ほどの戦いも基本は如意棒での槍の『範囲外』での戦いだ。
 槍で使用したのは異能だけで、槍という武器本来の使い方は終始していない。
 切り札としての使い方というならば、隠匿性の高い別の形の方が彼には合っているだろう。

「無理に剣や槍でなくてよいのではありませんか」

 相手に合ったアイテムを創ると巫女は言った。
 だからこその質問であった。

323【進節剛棍】:2020/02/04(火) 00:00:15 ID:6d2kb9Nw
「まぁ殆どは殺し合いじゃない訓練だけどな」
「本当に死んだのはジョカ様にやられた時くらいだな。瞬きする間の出来事で何にも覚えてないけど」
「普通に負けたのは爺の分身殺法で5000回くらいタップしてるから…諸々合わせて5100ちょいだな」

「どーも、でもあんまり魔除けとかついてると俺の場合逆効果なんだよ」
「加護とか御利益がついてるだけならともかく魔を祓うぞーって感じの意味合いついてない? コレ」

【体の二割程度が妖怪の自分は清浄な物を受け付けにくい】
【八割人間なので基本問題ないのだが、対魔特攻とかそういう類の攻撃が微妙に効きやすい程度に耐性が薄かったりする】
【まぁ軟膏の効能を聞く前から使い始めているのだが、基本適当に生きているので】

「槍は応用すれば問題なく使えるし……棒が二本も要らないからな」
「ぶっちゃけ、要望通りの威力が出せりゃ剣でもバズーカでもファンネルでも金属バットでも何でもいいんだ。アンタが使ったデッカいビーム砲みたいなのも良かったな。」
「節棍やヌンチャクの使い方覚えたのも二十歳過ぎてからだし」
「鎧や冠の類はダメだ、爺と被る。 俺は斉天大聖の孫って括りを抜けてぇんだ」

【それだけが理由では無いが、如意棒はあくまで斉天大聖の武器。】
【榊春幸の武器と呼ばれる日は永久に来ない。桃源郷で過ごしたからこそ祖父の偉大さという物を誰よりも理解している】

「それに、切り札っていうのはコソコソ隠してじゃなきゃ使えないような物じゃダメだ」
「実際そう使う事の方が多くなるし強い敵が相手の時こそ温存するべきってのはよく解るが、そうでないと使えないような切り札ならアイツらには通用しない。使う前に殺されるのがオチだ」

【相手の心を読んだわけでは無いが、隠匿性については真向から否定する持論を語る】

324【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/04(火) 00:45:48 ID:g8fiMeiw
>>323

「ただの回復アイテムなのでお気になさらず」

 すでに使っているので意味はないが、問題がないことを伝える。
 あの悟空の孫であるならばなるほど、そう言ったものへの効果は確かにあるのだろう。
 だが基本アンデッドでない限りは使える代物だ。問題はない。

「ふむ、そうであればこちらとしても何も言うことはありません。
 貴方に合った物を創るまでです。ご注文は神殺しが可能なものですね」

 無論、殺せるかの最終課題は男の腕次第なのは言うまでもない。
 道具は道具。どこまで行っても使い手でその力は変わるものだ。
 伝説に名立たる龍殺しの剣であっても龍を殺せるかは使い手で変わる。
 それと同じだ。神を殺せる道具は創ってもそれを可とするかは男次第だ。

「さて、では今から創りますので■ヶ月後にまた訪れてください」

 スマホを取り出し、指定した日時を見せると巫女はそう言った。
 今回創るものは並の調整では壊れる。一ヶ月程度では決して終わらない。
 だが、指定した日までには必ず創る。それは鍛冶師であり技術者である巫女なりのプライドだ。
 一瞬で指定したものを創造する本当の意味での神の代物の方が良いのだろうが、
 残念ながら今代のカグツチはそう簡単には力を使わない。
 男には我慢してもらうしかない。


//すみませんが凍結をお願いします!
//それと作成自体はキンクリしますので、このまま続けてになります。

325【進節剛棍】:2020/02/04(火) 23:18:58 ID:6d2kb9Nw
【これは、新しい武器が出来る数週間前の出来事】
【普段は全く客足の無い中華屋に珍しい客が来ていた】

『これは、叛逆行為では?』
「ちげーよ馬鹿。 ったく…どこで嗅ぎ付けてきたんだか」
『仏の道を行く者が神仏仙を死に至らしめる武器を内密に作るなど、叛逆行為としか取れないのでは?』
「どんな武器があったってコッチから喧嘩売れるような連中じゃないだろ。 抑止力だ」
『抑止力?』
「アイツらの力…… 特にフギさんとジョカ様は本気でやりゃこの星くらい簡単に破壊できるマジの神だ。人の側に立つなら、せめてそれだけの用意はいるだろ」
『仮に神と人が対立したら、貴方は人の側に立つのですね。』
「魔猿ってのはそういうもんだ」
『……まぁあの人達は気まぐれだけど善なる神ですから、そんな心配はいらないと思いますよ。結局、アナタの趣味でしょ?』
「うっせ!」
『……どうせアナタに強くなられて困る事は無いので、いちいち太乙様に報告したりはしませんけど』

【こんな感じで、桃源郷の使者が来たり来なかったりしながら月日は過ぎていった】
【約束の日になったが特に代わり映えのしない。特別見違えたかという事も無い僧侶が新幹線とタクシーと徒歩で半日かけて出雲に降りたった】
【前と変わった所があるなら季節が変わったので法衣の上からベンチコートを羽織ったくらいだろうか】
【あとグラサン取った】

「どんな武器かまではあのハゲも知らねぇみたいだったし、ネタバレされなくて良かったぜ」
「さぁーてどんなのでぶっ殺してやろうかな〜っと」

【誰を、という話ではない。言ってみただけである】
【例えるなら、中学生の時初めてギターを買った日に似た心境だった】

「りーりーさーん! 榊が受け取りにきましたー!」

【境内の前で如意棒をコンコン叩きながら、大きな声で巫女を読んだ】


//すいません一日1レスくらいの置き頻度になりそうです

326【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/05(水) 22:45:14 ID:hnlLDQXM
>>325

「桃源郷の場所を聞くのを忘れていましたね。
 教えて頂けるか不明ですが」

 男が去ったあと独り言ちる。
 場所を教えてもらったなら、いざ乗り込んで宝貝の技術やらを頂くつもりだ。
 仙人たちが快く教えるとは思えないが。

 まあ、数か月後には機会がまた来る。
 その時に忘れてなければ聞くとしよう。

「目下のところは……さて、どうやって神を殺しましょうか」

 様々なパターンで思考を巡らせながら小槌片手に素材を吟味するのだった。



――――

 そして、約束の日。
 境内に男の声が響き渡るのを階段を上りながら聞く。
 その右手には黒い布で包まれた筒状のもの。背には白い布で包まれた棒状のものを担いでいる。

「お久しぶりです。忘れずに来られたようですね」

 男を見ると左手を振って階段を上り切るだろう。

「さて、お渡しする前におそらくは悪いお話、そして嬉しいお話があります。
 どちらからお聞きしたいですか?」


//了解です。

327【進節剛棍】:2020/02/06(木) 22:20:29 ID:rx12GWuQ
「こちとらコレばっかり楽しみで毎日ヒマでヒマで……」

【法衣に袖を通したのも依然訪れた時以来である】
【動きにくいしまた何かあった時のために私服で来ようかとも考えたが、一応楽しみにしていた日だし】
【斉天大聖の武器ではなく、自分の武器】
【全てを見て作ると言われた自分の武器を頂ける日。それなりに気負いというか特別な物を感じている】
【三蔵の地位を貰った時…… いや違う。あれは祝典が面倒臭かった覚えしかない】

「……?」

【武器は二つある。片方がこないだ見た普なんとか……もとい芭蕉尖だとしてもう一つが本命だろうか】

「まっさか、洋画でしか聞かないようなセリフを言われる日が来るなんてな」

【作れなかった。という事は無いようだが、一番に思いつくのが要望通りのスペックに至らなかったという辺り】
【まぁ仮想標的は並の神じゃなくて道教の最高神だし、無茶な要求だったかもしれない】

「とりあえず、良い方から聞こうか」

328【進節剛棍】:2020/02/06(木) 22:20:55 ID:rx12GWuQ
「こちとらコレばっかり楽しみで毎日ヒマでヒマで……」

【法衣に袖を通したのも依然訪れた時以来である】
【動きにくいしまた何かあった時のために私服で来ようかとも考えたが、一応楽しみにしていた日だし】
【斉天大聖の武器ではなく、自分の武器】
【全てを見て作ると言われた自分の武器を頂ける日。それなりに気負いというか特別な物を感じている】
【三蔵の地位を貰った時…… いや違う。あれは祝典が面倒臭かった覚えしかない】

「……?」

【武器は二つある。片方がこないだ見た普なんとか……もとい芭蕉尖だとしてもう一つが本命だろうか】

「まっさか、洋画でしか聞かないようなセリフを言われる日が来るなんてな」

【作れなかった。という事は無いようだが、一番に思いつくのが要望通りのスペックに至らなかったという辺り】
【まぁ仮想標的は並の神じゃなくて道教の最高神だし、無茶な要求だったかもしれない】

「とりあえず、良い方から聞こうか」

329【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/06(木) 22:53:05 ID:rM8EFGqk
>>328

「では良い方から話しましょう」

 背負っていた布に包まれた棒状のそれを左手で持ち、回転させて器用に布を解く。
 そうして現れたのは白銀の棒、のように見えるが僅かに先端が鋭利であることがわかる。
 装飾は一切なく、引っ掛けられるような溝もない綺麗な棒に近いが、それは槍である。
 その形状は杭や丸串のそれに近い。

「こちらが榊さん専用に創ったものです。
 性能はそうですね、簡単に説明するなら『理論上、物理的に殺せる相手なら絶対に殺せます』」

 そう前置きするとその槍、ジャベリンの説明を始めるだろう。
 そして一通り説明を終えたなら、

「そして肝心のその子の銘ですが、もう聞こえていますかね」

 男の脳内に中性的な、男性のようにも女性のもののようにも感じられる声が聞こえるだろう。
 それが目の前のジャベリンの声であることが不思議と男にはわかるだろう。
 そして、ジャベリンの名前が何であるかも、はっきりと。


――――

陽光鋼の槍『名称不明』

 陽の光を宿すとされる鋼とプラチナを素材に創られた、
 柄と穂の境目や継ぎ目、接合部がない一体成型で創られた全長1mの白銀のジャベリン。
 ランス(馬上槍)のように刃が付いておらず、穂先が尖った刺突専用の形状をしている。
 投擲に特化させるため装飾や溝等の無駄を削いだ洗練された形は杭や弾丸のようになっている。
 この形状と作りの関係上、戦闘で用いられる技術は槍術ではなく棒術になる。
 穂先は鋭利で刺突による貫通力は最上(上の上)のもの。硬度も不懐に迫る程(ただし不懐ではない)である。
 戦闘ロール以外では時々、『チリン』という鈴の音がジャベリンから鳴ることがある。

 有する能力は【極光】
 一人以上の相手と自分が戦闘態勢に入っているとき、
 榊春幸が目標と定めたものへ『名称不明』を投擲することで発動する能力。
 ジャベリンが激しく輝く光となって目標地点に向かって直進、飛んでいき、目標地点通過後に実体化する物理型ビーム兵器。
 光は物理属性(貫通属性)であり、光属性等は持っていない。完全な物理攻撃判定である。
 飛行速度は光速ではないが凄まじい速さで飛ぶとする。ようは匙加減。
 発動条件の関係上、目標を肉眼で視認して投げる必要がある。
 光となったジャベリンは目標へ障害物を破壊しながら直進する。
 追尾するわけではなく投げた時点での目標がいる場所に直進する。
 また、光ではあるが属性が物理ですり抜けていくわけではない、この性質上、相手は防御も回避も可能である。
 光は飛距離が伸びれば伸びるほど威力が上昇し、判定に飛距離が短いと上昇値は低い。
 最小威力は榊春幸の「通常」の本気の一撃。最大威力は未知数とする。

 真の能力は【■■】
 条件1:『名称不明』の精神世界へ入る。
 条件2:条件1を満たした後に提示される試練を達成する。
 【■■】の使用条件を満たすと【極光】は自動的に消滅する。

種類:ジャベリン
区分:神槍
等級:神具

330【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/06(木) 23:00:40 ID:rM8EFGqk
>>329
//一部誤字!
//『【判定】に飛距離が短いと〜』 → 『【反対】に飛距離が短いと〜』です!

331【進節剛棍】:2020/02/08(土) 12:04:41 ID:ukaXmHoY
【理論上、神を殺せる武器】
【彼女はそう言ったし頷ける性能はしている。比べて言うなら、必中必殺ではないが拾い直せば回数制限の無い打神鞭といった性能だろうか】

「……専門は打つ方だけど外せない勝負ってのは得意でね」
「一撃で倒せるかはわかんないけどせいぜい致命傷くらいは与えられるでしょ」

「それじゃ、有難く頂いていきますよ。」
「宜しくな、抗神錫(こうしんしゃく)」

【ちりん、と鈴の鳴るような音が聞こえる。】
【錫杖の一種ですと言えば自然に桃源郷で持ち歩けるかもな。Mk-Ⅱよりかはいくらか気品もあるし】

「……悪い、今はパス。ダルいし大概入手する時の試練よりハードなのは相場が決まってるし」
「本当にヤバい事になったら解放してやるから」

【独り言のように呟く。武器の声と会話しているのだ。今すぐ試練に挑戦するかと言った内容だ】
【声が聞こえる武器というのは初めてだ。宝貝でもかなり希少、というか見た事が無い】
【武器が人を選ぶなんて話は聞かないでもないし珍しくも無いのかもしれない。愛想つかれない程度に使いこなしてやるか】

「それで、悪い話っていうのは…… そっちの槍の方か?」

【量産品をチューンアップすると言っていた気がするが、そのままでも素直で扱いやすい武器だったと記憶している】
【悪い話など検討もつかない】

/遅れてしまい申しわけありません

332【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/08(土) 14:29:54 ID:94Kf77Ec
>>331

 仲良くやっていけそうだ。
 ジャベリンの声は巫女には届かない。
 だから男とジャベリンの会話は巫女にはわからない。
 だが悪いものにはならないだろうと暫定しておく。

「はい、私は『芭蕉尖』を調整しました。 
 こちらとしては悪くないものに仕上がったと考えていますが、以前のような使い方ができません。
 見方によっては劣化したと思われるでしょう」

 右手に持っている『筒状のそれ』を包む黒い布を解いていく。
 そうして現れるのは『薄緑色の籠手』だ。そう、『槍』ではない。

「この子が今の『芭蕉尖』です」

 はっきりと告げ、こうなった経緯を説明していく。
 男の獲物は先に渡したジャベリンも加えると長物が2本となる。
 元々所持していた如意棒は多節根の性質を利用すれば、
 男がいつもそうしているのだろう、身体に巻き付けて持つスペースを空けられる。
 だがジャベリンはそういった変形機構はない。
 長物としては比較的短い獲物だが、背負うなり持つなりしていなければならない。
 そして3本目となる『芭蕉尖』。
 槍としての本来の形であり、3本とも用途が違い普段使いになるだろうと思われる槍だった。
 巫女の創る『普』という種類のアイテムは普段使いとして重宝できるものとして創っている。
 なのでそういった形に収まるのが本来であった。

 しかし、戦闘の時に問題が起きた。
 そう、男が名付けてしまったのだ。『芭蕉尖』と。

 巫女は言葉遊びが好きだ。それぞれの種類としてのアイテムに意味を込めている。
 力は弱く鈍くとも堅くあることを意味する『鈍(なまり)』。
 鋭く断ち穿つことを意味する『鋭(さとり)』。
 全ての力を壊れても出し尽くすことを意味する『壊仝(かいえ)』。
 元の力のままで形作られた姿通りに尽くすことを意味する『元(げん)』。
 内に秘めた己という遍く世界を出すことを意味する『普(あまね)』。
 そしてと意思と世界を持ち自らの名と共に使い手を選ぶ『字名』。
 『字名』を除く全てのアイテムには共通した名前がある。
 それは属性を意味するものであったりするが、個としての名前ではない。.jpgや.gifのファイル形式と同じだ。
 共通化することで有する力を一律にさせていた。

 だが、今回の槍は男が名付けたことで変わった。
 不変を宿していたが、名前というものをそもそもつけていなかった変更の利くものだ。
 いうなれば『新しいアイテム.普風』で止まっていたものが『芭蕉尖.普風』になったということだ。
 いづれは使い続けて愛着の湧いた獲物を新しい形で打ち直し、専用のアイテムにするつもりのカテゴリでもあるが、
 その一連の作業が一瞬で終わったようなものだ。

「ですがまあ、素直で良い物であることには変わりはありません。
 どうぞ使ってあげてください」

――――

『芭蕉尖』

 馬革を主な材料とし、風の属性を宿す合金を素材に打たれた手首から肘までを覆う薄緑色の籠手。
 装備範囲の関係上、手の平で剣などを受け止めることはできない。
 性能が様変わりした結果、弱点属性はないが籠手本体としての防御性能は高くない。
 籠手で相手の攻撃を防御しても装備者にダメージが通る場合もあるだろう。
 能力発動中はそよ風を発生させる特徴を持っている。

有する能力は【風 -飛空制御- 】
 風を発生・制御し、装備者を飛翔・飛行・滑空させる能力。
 能力の操作は装備者の脳内で行われるため、ただ立っているだけでも能力を発動させて飛ぶことが可能。
 本来は風を操作する汎用性の高いものだが、これは安定して空を飛ぶことにのみ特化させた制御型。
 制御を安定化させるため、飛行速度は最速で大体時速40kmほど。
 最速を出すには前提条件として籠手の能力を使用して空に浮かんでいる状態でなければならない。
 また能力発動中は風で装備者を守っているわけではない。飛行中、装備者は防御しなければ攻撃を直接受けることになる。
 風の制御・持続は1レスに1度までしか行えず同レスでの連発はできない。

種類:籠手
区分:影打(普)
等級:宝具

333【進節剛棍】:2020/02/08(土) 23:44:12 ID:ukaXmHoY
【聞いても理屈はイマイチ理解できない。とりあえず自分に原因があるっぽい】
【名前一つでそこまで変わるとは、意外とままならない物だ】

「……もう尖じゃなくなっちまったなぁ」
「まぁ、身に着ける物でも金の輪っかとかじゃないだけマシか」

【火尖槍、あの目下の目標である哪吒太子の主力武器の一つにあやかって、ついでに羅刹女様の芭蕉扇にもちなんで付けたつもりであったが槍でも扇でもなくなってしまった。】
【そうは言っても長物3本ではさすがに使いまわせない気もするので、これはこれでいい気もする】
【念願の飛翔の術も得られた訳だし】

「こちらとしては作って貰えるだけ有難いし? 最初は1つ貰えれば上々と思ってたしそれは構わねぇや」
「ただ、一個確認しなきゃなんない事があるのを忘れてた」
「気を悪くしたら謝るから教えてくれ」

「この武器たち、例えば此処の神を殺そうとした時や、此処の神が何らかの形で死んだりした後も使えるのか?」

【宝貝と他の武器の決定的な差を取り上げるとしたら、出自の違いだ】
【神が作った武器ではなく、神農と伏義の神の能力を千や万に分割した物、それに所有者が勝手に改造や複製して作った物が宝貝である】
【一部例外やルールの抜け道をついた裏技を使用した場合を除けば基本的に、大本の権能の所有者たる神農か伏義のどちらかに対しての攻撃力を持たない】
【榊の持つ如意棒Mk-Ⅱ、正式名称を太上意節鞭と呼ぶのだがそれはどちらの能力も与えられていない武器であるため神に対して有効な武器の一つだ。】
【彼が真の力を開放できれば、必殺とはいかなくても傷を付けられるだけの性能は発揮できる】
【この武器の所有者である事が、若輩の榊が桃源郷である程度の地位まで就く事が出来た理由の一つでもある】

「恩義は感じてるし試したくは無いが、そっちの神に死なれて使えなくなりましたってのは困るからな」
「ホンットーにすいません…でもこれ聞いとかないせいで後で他の奴に攻略されても困るからさ!」

334【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/09(日) 00:16:47 ID:FN3ZRgUo
>>333

 (ある一点に)尖った性能になったので間違いでもなかったりする。
 名付けを重要視する巫女発案のシステム。いつかはこうなるだろうとは思っていた。
 変更するつもりはないのでこのままで行くつもりだ。

「もちろん使えますよ」

 特に不機嫌になることもなく巫女は答える。

「私もカグツチ様とは何度も殺し殺されていますし、滅する気持ちで与えられたアイテムを使っています。
 例え自分の創ったアイテムを振るわれようとも、二度と生き返ることがなかろうとも真っ向から受けて立ちます。
 ええ、もちろん私でその子達を試していただいても構いませんよ」

 男の確認に巫女は挑発的な笑みで返す。
 自らが創ったアイテムで殺しに来る? それは面白そうだ。
 以前にも自らが所属する組織の敵対組織の人間に、それこそ組織の任務として戦いに赴いた地で、
 巫女は敵のために槌を振るい、その敵である人間のためのアイテムを2本も渡している。
 その後にもアイテムの強化でその地に赴いている。

「その時は、遠慮なく潰させていただきます。その子たちも、例外なく」

 その時にも巫女はこう返した。
 誰であろうとも変わらずに、敵として対峙するのなら殺す。
 むしろ攻略大歓迎とばかりに両手を広げるのがこの巫女だ。

「ですのでその時は安心して、存分に使ってくださいな。
 その後に私共が消えているとしても、その子達は榊さんと共にいるでしょうから。
 むしろ、私や神様を倒せて嬉しがるでしょうね」

 鍛冶の神家は好戦的だ。
 ジャベリンも籠手も喜んで戦おうとするだろうし、勝ったなら嬉しがる。
 そして誰かが鍛冶の神家を滅ぼした時は、きっと怒りを持ってその敵に食らいつかんとするだろう。

335【進節剛棍】:2020/02/09(日) 01:17:04 ID:za4PMD32
「いや、いい…… 女の子に殺す気でやるのとかあんまり好きじゃないし」
「神様ってのは何でこうバチバチやり合うのが好きかね……」

【本気で言っているのが、そして結果として殺す事になったり殺された事を何とも思ってないのが逆に怖い】
【巫女の人となりからして自分から積極的に戦う事は少なくとも、売られた喧嘩や必要に迫られて戦う事はありそうだし、それで人殺しても全く引きずらないのが人より神の域に近い事を感じさせる】
【必要と思った時や昂った時に戦う事は自分も好きな方だと思うが、結果として誰かを殺めてしまった事を全く引きずらない程の胆力は無い】

【ちなみに抗神錫に聞いても必要とあらば躊躇なくやる気はあるらしい。好戦的な事自体は行き過ぎなければ寧ろ好ましいが性質的に切り札としての運用がメインなのであんまり喧嘩っ早いのもどうかと思う。】

「とりあえず世話になった。また何かあったらよろしく頼む」
「逆に助力が要る時は頼ってくれ。桃源郷としては無理だが個人としてなら幾らか助けになろうと思う」

【巫女の強さはよく解っているので彼女が困るような相手に何が出来るか正直解らないが】
【生臭坊主にしか出来ない汚い仕事や卑怯な作戦というのもので多少なら力になれると思いたい】
【右手に装着した芭蕉尖を使って10m程浮かんでみせる】
【当分は新しい武器や術の収集よりも得た武器を十分に使うための鍛錬が主になるだろう】
【せめて相手の飛び道具を掻い潜って飛び回れる程度には使えるようにならないと】

「これ、俺の連絡先。 要らないなら破ってくれて構わないから」

【そう言って飛び立つ直前に投げ渡したのは、出雲からは大分離れた距離にある。所謂能力者の街と呼ばれる場所の住所が書かれた手書き風の飲食店のチラシ】
【端に切り取り線のついた100円引き券が二枚ついたシンプルな物】

「こっちの神って肉食べるんだっけ? まぁ連絡先だけのつもりだし別にいいけど……」

【独り言をつぶやきながら、初めての空を満喫する】
【長い階段や周辺の森。出雲を出てからも交通規制に引っかからないのは便利だと思った。思わず某魔女の宅急便の挿入歌を口ずさんだりしながら、街へといけるだけ空で行ってみようと挑戦するのだった】

/こんな感じで良いでしょうか…?

336【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2020/02/09(日) 01:58:15 ID:FN3ZRgUo
>>335

「おや、ありがとうございます。
 ご助力願いたいときは遠慮なく連絡させていただきますね」

 チラシを見て連絡先を確認する。
 能力者の街は巫女の故郷でもある。
 男の店の住所とは違うようだが、知らぬ場所ではない。
 飛び立つ男を見えなくなるまで見送ると、社務所へと入っていく。

「一仕事終えましたし、時斬のパーツを交換しないと悪いですね。
 この際ですからオーバーホールではなく新しく作り直すのも良いかもしれません」

 何ヶ月も放置したままの愛器について思考を巡らせる。
 今の状態でも問題はないが、大型な分小回りは効かない。
 だが、小さくすると使えなくなってしまう機能もある。
 作り直す場合、仕方ない割り切るしかない部分だ。

「あ、桃源郷の場所を聞き忘れていましたね」

 今更ながらに思い出す聞きたかったこと。
 機会が永久に失われたわけではないが、二度も聞きそびれたことにため息をついた巫女であった。


//乙でした!
//アイテムについての質問などありましたら議論スレでお答えしますので!
//2キャラに渡っての絡み、ありがとうございました!

337【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2021/09/16(木) 20:24:10 ID:qb00E2mg

ここは幾重万神領出雲大社。
その巨大な鳥居をくぐったところに、男は立っていた。

「ふむ」

いつ来ても賑やかな所だ、と思う。
おそらくここはどの神社の境内にも当たらないとは思うが、既に騒がしい声がどこからか聞こえてきている。
そもそも神社というものは厳粛に振舞うべきが常で、もちろんお祭りのときはどんちゃん騒ぎもあろうが、いつもこうであるというのはいかがなものか。
と思うがしかし、常識の通じない場所だということは知っている。死んだ人間がすぐさま蘇生するのだ、一種の異界と考えた方がいい。

まあ、それはともかくとして……。

「……行くか」

歩き出す、目指す先は高天火男神社。
かの六千階段を踏破した先にある神社、その巫女に用事があって男はここへやってきたのだ。

しかし……本当に無数の神社があるものだ。
それだけではない。それぞれ治める神社によって、土地そのものが異なる様相を見せている。
右を向けば海が。左を向けば山が。北を見やれば雪が降り、南を返ればかんかん照りが……。
前言撤回、ここはまさしく異界である。異世界と呼んでもいいかもしれない。とてもじゃないがこの地の全容を把握することなど不可能だろう。

高天火男神社しか行ったことはないが、他にもきっと新たな発見があるのだろうな……。
などと思いつつ、脚はまっすぐ目的地へ。
何かがない限り、やがてはかの神社に到着するだろう。


/どなたでもオーケーです、ぜひー

338【絵空に彩る真偽の導き】ゼオルマ:神変出没なマッドジョーカー:2021/11/06(土) 20:46:30 ID:QBA5w6Ns
>>337

 男が歩き出して少しすると、遠くの方で狼煙が上がる。
 ヒュルルーという鋭い音と共に上がった狼煙は最高潮まで達するとパン!と弾け大きな大きな大輪の花を咲かせた。花火である。
 その一際大きな花が咲くとそれを待っていたとばかりに様々な場所で花火が打ち上げられる。その打上場のひとつひとつが神社であり、祭りを祝し神(神の代わりに宮司や巫女が取り仕切っているところもある)が創り出した火を打ち上げているのだ。

 夜だというのにまるで昼間のように眩い花が空に咲き乱れる。
 その中を歩く男の横をどこかの国か街か、とにかく他所から来たであろう出で立ちの少年少女がどこに行こうかと話し合いながら横切っていく。


『なぁどこ行くよ?』
『どこだって良いさ!
 出雲にはいっぱい見所がある。行く先々で色んな祭りをしてて同じものがないって父ちゃんが言ってた!』
『あそこの神社に負けるものか! って神様同士が競い合ってるんだっけ?』
『対抗意識って奴ね。一番目立ってるのは……インドの神様かな』
『やることなすことスケールがでかいって話だよね』
『北欧の神様も結構すごいって。なんでも虹の空に神様自身が滑り台になってるとか』
『ずいぶん思い切ってるわね……プライド高そうなイメージだけどそうでもないのかな?』
『一番種類が多いのは日本の神様だったよね』
『八百万っていうくらいだからね。この花火も確か取り仕切っているのは日本の神様のはずだよ』
『えーとたしか花火は厄除けと商売繁盛の力があるんだっけ』
『そうそう、飲んで騒いで厄を払う。歌って踊って福を呼ぶ。だからいつも賑やかなんだよ』
『楽しいと笑顔になるもんね! まあいっつもそうだから疲れないのかなーって思うけど』


 そんな少年少女達は楽しそうに、心の底からこの地を楽しむように男の前を走っていく。
 やがてその足音も聞こえなくなると、また別の気配が足元に近づいてくる。
 売り子らしき等身大の狸が風車の入った小さな箱を背負っていた。

『(お一つどうぞ)』

 器用に背中の箱から風車を取り出すとそう言っているように男に差し出す。
 これを受け取るか受け取らないのは自由。どんな対応をしても狸はペコリと頭を下げて走り去っていくことだろう。
 そんな出雲らしい不思議な出会いが、男が目指す高天火男神社までの道中で何度も起こったことだろう。

 そして、六千階段を登り神社の前に辿り着いた男は、

 1.黒い霧が空気を裂くのを見た
 2.稲妻が横を駆け抜けるのを見た

339【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2021/11/06(土) 20:48:08 ID:QBA5w6Ns
ナマーエ

340【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2021/11/07(日) 22:10:15 ID:HAMZITgU
>>338

音につられて見上げれば、空に花火が上がっていた。
星空に次々と咲き誇る大輪の花々が闇夜を照らしている。
長く滞在したことはないが、ひょっとすると毎夜のごとくこうして花火が上がっているのだろうか?
足を運んだことはないものの、そのようなテーマパークもあるという。だからというわけではないが、毎日がお祭り騒ぎのこの地では何らおかしなことはないと思えた。

……盗み聞きというほどのこともないだろうが、近くを通って行った子供たちの会話が耳に入った。
やはりというべきか種種様々な神が集っているようで……しかしながら、神という言葉のイメージとは、どうも少々離れた実状であるようで。
神と言えば手の届かない存在、時に実在すら疑われる文字通り住む世界の違うモノというのが一般的だが、ここではその距離はひどく近いものであるようだ。
特によその神に対抗して鎬を削っているところなど……実は人と神にそう違いなどないのかもしれないという考えは、さすがに穿ち過ぎだろうか。

「む」

ふと、狸がやってきていた。
小さな箱を背負ってこちらを見上げている。野生動物でもないのだろうが、はて何の用向きだろうかと思っているうちに箱から風車を取り出して差し出してくる。
喜ぶ歳でもないが……無碍にするのも気が引けたので礼を言って受け取り、去ってゆく姿を見送った。
受け取ったはいいがどうしたものか……と、手の中の風車を眺めつつ目的地へ脚を進め。

やがて辿り着いた高天火男神社の前で──。

「────」

男は“横を稲妻が駆け抜けていく”のを見た。
──なんだ? この神社に縁のある何か……という漠然とした予想しかできない。
おそらく……神の気配が濃いこの場所だ、魔性の存在ではないのだろうが……?


/よろしくお願いします!

341【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2021/11/09(火) 21:34:07 ID:EMIruX4Y
>>340

────少し前のこと

 六千ある階段を踏破した先、神社の門、鳥居を抜けた境内の中では二人の女性が縦横無尽に地を、そして空を駆け抜けていた。

 その内の一人、男がよく知る巫女服に身を包んだ女性「日野 鈴理(ひの りり)」は余裕の表情で不変の壁を創り出す。
 その壁に阻まれ攻撃を届けられず苦戦を強いられるもう一人の女性。黄金色のショートヘアが特徴的なカーディガンの上に長袖を着た女性は、周囲に『翡翠色の燐光』を纏わせ高速で動く。
 燐光纏う女性のその速度は達人と呼ばれる人間の中でも屈指の身体能力を持つ者よりも疾く、鈴理も目で追うのには限界があると察してか直感を頼りに交戦していた。

『く……一歩及ばない』

 速度では勝っている燐光纏う女性だが、だからといって実力で勝っているわけではなかった。
 『翡翠色の燐光』は周囲に稲妻を走らせ巫女の行動を制限させようとするが、巫女はその雷撃を何食わぬ顔で受け止め走り抜ける。
 本来であれば揺動や受けることで発生する衝撃で相手の行動を抑制する雷撃だが、人の領域を超えた精神の前では意味を成さないらしい。
 黄金髪の女性が巫女に苦戦している要因のひとつである。

「そこです」
『ぐっ!』

 加えて巫女の創り出す壁は女性の攻撃を尽く防ぐ鉄壁だった。不変の性質を持ったそれを破れる力がなかったのだ。
 唯一勝っている点、それが普段の巫女との身体能力の差。だがそれも一定の条件を満たせば同等かそれ以上まで及ぶ。
 短期決戦、それしかないと判断した燐光纏う女性。切り札を使うために『翡翠色の燐光』を一気に爆発させ稲妻を迸らせる。
 解放された稲妻は周囲を駆け抜け神社の外にまで及んだ。
 男の横を駆け抜けた稲妻。それは幾本も枝分かれした彼女の異能の一部だった。

 放出された稲妻は徐々に規模を縮小させ、女性の細胞ひとつひとつに浸透する。
 全ての雷が体内の中に満ち、全身を活性化させる。黄金の髪から僅かに漏れ出る燐光が彼女の髪を更に長く、腰に届くほどまでに長くなっていると錯覚させるほどに尾を引く。

『では、m』
「一旦休憩にしましょうか」
『…………は…?』

 ここからが本番だとばかりに戦闘形態を移行させた女性に対し、巫女は壁から出てくると柏手を打った。

『……あの、じょ』
「飲み物は何が良いですか?」
『…………スポーツドリンクで』
「はい、では少々お待ち下さいな。
 メルヴィンさんは何になさいますか?」

 少し不機嫌に眉を顰めたが、巫女の言葉にようやく訪問者の気配に気が付き女性は鳥居に目を向ける。
 そこには今しがた階段を上がりきったばかりなのだろう男の姿があった。

『……はあ』

 巫女が戦闘をやめた理由がわかり、ようやく全身に走らせた雷を解除する。
 満ちていた雷が周囲にまた放出され『翡翠色の燐光』となって女性の周囲を漂う。
 気が削がれたのか女性は少し肩を落とし、賽銭箱前まで行くと腰掛けて落ち着かせるのだった。

342【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2021/11/09(火) 23:27:27 ID:0HeZxhAM
>>341

「水で構わない。すまんな、訪問の連絡くらい入れるべきだったのだが」

六千階段……万里の長城を思わせる、それ自体が一種の試練なのではないかとも囁かれる長大無比な大階段を息一つ乱さぬまま登りきった男はそのままふたりの元へ。

「ご無沙汰している。今日は“元木”のことで用事があって伺った。
 とある戦闘で著しく損傷してしまい、修繕をお願いしたいのだが……」
 
と、そこで言葉を切り。
木剣を巫女に渡す前に果たすべき義理があるだろうと、視線を動かした。
その先にいるのは──金髪をショートヘアにした女性。

「申し訳ない。そんなつもりはなかったのだが、邪魔をしてしまったことを詫びさせてほしい」

自分がやってきたことで戦闘を中断されてしまった彼女へ謝罪する。
見ればこれから、という場面だった様子……そんなところで一時止めとなれば、それは気も削がれるだろう。

──得物は無し。
異能を主体に戦うか、もしくは素手での格闘を用いる戦士。
あいにく一目で練度を見抜ける境地にはないが、拳を見ればそれくらいは判断できるだろうか。
雷に関連する異能。外界に放出させることもできるだろうが、先ほどの姿を見るに自己強化にも用いることの可能なマルチタイプか。

──そのように分析するのも、一種の職業病ということになるのだろうか?
ともあれ姿は見えずとも戦闘音は神社に近づいたあたりから聞こえていた。強いという一点に関しては議論の必要はあるまい。

「かなりの使い手とお見受けする。ここへは鍛錬目的で? この土地の特性は自らの力量を高めるにはこの上ないからな」

戦いの技術を最も効率的に伸ばす方法とは何か?
……それはやはり、互いの命をかけた死闘以外になかろう。生死の狭間において人は多くの成長を得られるものだ。
だが鍛錬で人死にを厭わぬなど言語道断。ゆえ通常の訓練ではできるだけ殺傷力を落とす形での模擬戦がせいぜいだが……ここではその心配は無用。
なにせ死した者がその場ですぐさま蘇るのだ、生死の縛りは取り払われている。互いを殺めてしまうことを気にすることなく、最後の最後まで戦いを続行できるということ。

まあ……もっとも、“絶対に死ぬわけにはいかない”から死闘という極限状態において成長が促されるわけであって。
“死んでも復活できる”状態で、果たして通常の死闘ほどの成長が見込めるかは疑問だが……そこはそれ。普通の模擬戦より密度の高い戦闘経験が積めることには違いがなかろう。

343【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2021/11/15(月) 02:40:47 ID:owpYIdQ2
>>342

『……はっ、狂ったヤツか(ボソ)』

 男に謝罪された女性は男を一瞥すると吐き捨てるように呟いた。
 その呟きが男の耳に届いたのかは不明だが、その言葉は女性が男に抱いた印象であった。


「失礼ですよ」
『……』

 巫女の耳には届いていたらしく、静かに諭される。
 如何様な理由かは不明だが戦闘を行っていた両者の邪魔をしたと考えた男がこうやって謝っている。
 その男を一瞥だけして『狂人』判定を下したのだから失礼だと諭されもするだろう。
 互いに知らない相手ならなおさらだ。

 女性の周囲に浮かんでいる『翡翠色の燐光』が少しだけ光を弱める。

『……ふぅ……ここに来たのは仕事。
 だけど戦ってたのは鍛錬をつけられてたから』

 息を吐き、男の質問に答える。
 その言葉の節々に巫女に対しての怒気が含められており、感情を全く隠さず、むしろ巫女に視線すら向けて話す。
 言葉に合わせて『翡翠色の燐光』がパチリと音を立てて刺々しさを表現する。

「はい、鍛錬をつけていました」

 どこ吹く風か、女性の言葉をそのまま続ける巫女。
 巫女は彼女を怒らせたいわけではない。ただ物事の考え方、相性が悪いのだ。

『別に強くなりいわけじゃないんですけど』
「しかし強くなることが貴方の目的達成に一番貢献すると思うのですが」
『強くなるっていうのにも種類があるってこと。
 精神的なものとか、科学的にとか。鈴理隊長ん家のそれはかなりアレ』

 戦闘技術が貢献しないとは言わない。だが消費するものがあり、何かを得るためには対価が必要になる。
 それは労働であったり物々交換であったり、それに相応したものを消費する。
 これは技術を高めるのも一緒で、アスリートと呼ばれる彼らは肉体の寿命を削って極限まで肉体を仕上げる。
 その肉体を形作るのに日々の食事や運動を『適度』を度外視して摂取、強くなるために最適な選択をする。
 彼らの中の多くが晩年でその度外視した鍛錬のツケとして早死したり肉体を劣化させている。
 中には晩年でも体を鍛え続け維持し続けている者もいるが、これは例外的な存在、天才と呼べるもの。
 アスリートの行う鍛錬でも過度なもので、これは未来から前借りしていると言っていい。
 では、巫女や男の行うような『鍛錬』は何を代償に、何を消費しているのだろうか。

「ではやめますか?
 返しませんけど」
『返してください。
 戻ってきたらやめます』
「では返しません。
 休憩後に再開です」
『……頼みますからもうちょっと会話して』

 社務所へと消えていく巫女に縋る藁もない雰囲気を感じながらもそれでもその背中に向けて訴えかける女性。
 『翡翠色の燐光』は明滅しながらも周囲に電気を飛ばし続けているのだった。

344【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2021/11/15(月) 22:29:34 ID:ZZA51Kok
>>343

社務所へ消えていく後ろ姿を見送りながら相変わらずのようだと思う。

しかし……この女性には少々驚いた、と。
さすがに開口一番に狂人と言われるとは思っていなかったのか、そのときは常日頃から鋭く眇められている蒼い眼光を僅かだが丸くしていた。
戦いの場、今まさに斬り伏せんとする相手に罵られるなら分かる。そういう経験は何度もある。
しかし曲がりなりにも日常と評せる場面でいきなり言われたことは男もそうそう無い。

自分の行いを知っていても……いや、むしろ知っている人々ほど。
メルヴィン・カーツワイルという人間に向ける感情と眼差しは“プラス”におおむね傾いていく。
なぜならこの男の道程は光り輝いている。罪なき人々のために、穏やかな日常を護るためにと叫び、己が身を賭して悪に挑んでは勝利を積み重ねていく。
そのような英雄的な素振りが功名心や名誉欲ゆえのポーズ……であると、そのような粗が現状どれだけ探しても一片すら見当たらない完璧ぶりがそこに拍車をかけていた。

ゆえにこの女性から投げつけられた言葉に対して抱くのは不愉快──。
ではなく。むしろ、その逆であった。

「……先ほど、日野殿がこぼしていたことだが」

好意的な感情は持たれていまいと分かっていつつも、かける声に委縮はなかった。

「興味本位と言ってしまえばそうなるゆえ、無理にとは言わないが。
 貴殿の目的というものを、差し支えなければ聞かせてくれないか? 何か手伝えることがあるかもしれん」
 
仕事……そして鈴理“隊長”と、気になることはいくつかあったものの。
最も聞きたいことをひとつと問われれば、やはりこれだろうか。

わざわざ問い掛けた理由は……本人の言うとおり、興味というのも確かにあったが。
もうひとつ、元木の修繕以外に巫女へ相談しようと思っていた目的が、男には存在していた。
そこに繋がる何かを感じ取っていた。むろん根拠などあるはずもない直感でしかないが……まずは聞かねば始まらないと、言葉にするのに躊躇いはなかった。

345【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2021/11/21(日) 15:45:29 ID:6oBa/wbY
>>344

『……その素直なさは好感が持てる。
 だからこっちもはっきり伝えるけど、お前みたいなヤツは気持ち悪くて嫌いだ』

 自分の目的を聞く理由が興味本位だからとハッキリと口にした男に、女性も嫌悪感を隠さずに言った。
 好感が持てるが嫌い。一見すると矛盾がある言い回しだが、短所と長所のように表裏一体、素直なのは良いことだが男のそれは行き過ぎているということだ。
 人には踏み込まれたくないパーソナルスペースがあり、男はそれを安々と踏み越えていた。

『聞き耳を立ててること、聞くのは別に責めやしない。こっちも周りに気を配ってたわけでもなし。
 けど聞くか聞かないか、相手にとってソレは聞いても大丈夫なのか駄目なのかくらいは一考してくれ。
 考えた上での今の質問だったのなら今回はマイナス百点満点でBAD』

 事細かに指摘してはダメ出しをする。それは忠告と言っても良い。

『ここに限らず世界じゃ善も悪も跋扈してて物事の判断は難しい。
 はじめましてだから聞かなかったことにするけど、今回はバッドコミュニケーション。
 名前も知らぬ存ぜぬの相手に協力しようとするのは美点に映るかもしれないけど』

 良かれと思っての行動は悪くはない。だが今回のソレは下心あり。
 興味本位。人間、誰しもが持つ興味に惹かれたからというものが男が女性の目的を聞いた理由。


 神と渡り合える巫女と戦いたくもないのに無理やり戦わされ、仕方なく本気を出して挑もうとした矢先に一方的に中断され、
 その戦いが中断された理由の男が興味があるから目的を聞かせてと言ってきた。
 まあそれはそうだろうとも、自分には関係のない他人事なのだからそこまで気は回らないだろうさ。
 いや巫山戯るな。聞いてただろう、聞き耳立ててただろう、戦いたくもないのに戦ってたって聞いてただろう、マジになって戦おうとしてた姿も見てるだろう。


 ギリギリと音を鳴らして犬歯同士を擦り合わせる。
 感情は外に出ているが行動には移さないのはそれでも怒りをぶつけるのはお門違いだと自分に言い聞かせているからだ。
 しかし代わりに女性の周りで浮遊する『翡翠色の燐光』から雷が迸り、辺りに雷鳴と微弱な電気を発散させている。

『うん、今回はタイミングが悪いから一昨日来やがれ酔狂野郎』

 青筋を立て、できる限りの丁寧さと侮蔑を込めて言い残すと、女性は境内の隅にフラフラと歩いていった。
 その間も『翡翠色の燐光』からは雷が迸り、神社の中を荒らしていっている。

「嫌われてしまいましたね」

 その様子をお盆に水の入ったコップとカラメル色の液体で満たされたコップを載せた巫女が、いつの間にか男の隣に立って見送っていた。

346【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2021/11/21(日) 18:17:26 ID:4kR/YOIU
>>345

……どうやら、やってしまったようだ。

「ああ……無神経なことを言ってしまった」

彼女の残した言葉は厳しいものだが、ぐうの音も出ない。正論である。
まずは話を聞いてみる、そうでなければ始まらない……それでは駄目なのだと、それくらい分かっているつもりだったがそうではなかったらしい。
……どうにも、自分は人の感情の機微に疎いところがあるらしい。それとも単に考え足らずなのか。
あるいはその両方なのかもしれない……彼女にはいずれ謝罪せねばならないだろう。謝らせてもらえればいいのだが。

しかしともあれ、済んでしまったことは仕方がない。
過去を振り返っていつまでも後悔し続けるのは性に合わないから、自分の目的を話すことにした。

「こちらの用件は、先ほども言ったが元木の修繕だ。
 とある戦闘でひどく損傷してしまってな。もし直せないというのであれば、新しい一振りを用立ててもらいたい」
 
欠け、削れ、辛うじて剣としての体裁を保っている、というのが現状。
元木の強度をもってすればこの状態でも戦えないことはないが、やはり万全ではない以上できるだけ早く直すべきだろう。

「それと、これは依頼というより相談なのだが……。
 ──力が要る。何か手段に心当たりはないだろうか?」
 
そう、これがこの地を訪れた二つ目の理由。
戦力の増強……件の一戦を経て、己には未だ力が足りていないということを痛感させられていたのだった。

347【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2021/11/29(月) 14:58:15 ID:DOohfIiA
>>346

「ふむふむ……これはこれは、随分とまあ手酷くやられたようですね」

 男の言葉を最後まで聞いた巫女は男に、ではなく元木に近づくとノックをするように数回叩いた。
 周囲に響いた音は枯れ木を叩いたようなそれだが、巫女はそれだけで元木の今の状態を把握する。

「通常の戦闘であれば問題はありませんね。
 この子には不変は与えていませんので最後はポッキリと折れてしまうでしょうが、
 それでもこの子の基となる素材は良いものを使用していますので特別頑丈です。
 しかし、貴方の望む戦いでは心許ないのでしょうね」

 いつ折れるかはわからない。その不確定要素はできるだけ払拭したいのが男の望むものだろう。
 巫女の言ったとおり男の持つ木剣は特別に拵えた代物。彼の持つペンダントと巫女の力は相性が悪く、そのため作ったものだ。
 通常作っているものと遜色ない頑丈さは持たせているのだ、折れるにしてもまだ時間は掛かるだろう。
 しかし、かなり消耗しているというのも事実。同じ相手、男の言葉を聞く限り倒しきれていないのだろうその相手と戦えば……折れると見て良い。

「わかりました、そちらは何か考えましょう」

 頑丈さに自信のあった手前、こうも早く折れるのはクリエイターの端くれとして黙っていることはできない。
 このまま元木を交換するわけには行かないと頭の片隅で構想を練り、図を引いていく。
 それとは別に、

「しかしですが……もう一つの相談については素直に乗ることはできかねます」

 男のもう一つの目的、力の増強。これには苦言を呈した。

「貴方は既に神器を2つ所有しています。
 言わせていただきますが、人が持ってよい範疇を超えたアイテムを所持している状態です。
 それを理解した上での言葉と考えて良いですか?」

 巫女の言葉は冷たく、今まで男が見たことのない鋭い目をしている。

 2つの神器。それは男が首から下げているペンダントと今しがた修繕を頼んだ木剣のことだ。
 等級としては木剣は最低に近いものだが、それでもれっきとした鍛冶の神の加護を持ったアイテムである。
 ペンダントに関しては説明する意味はないだろう。その恩恵を男は何度も受けており、その能力があるからこその戦いを幾度も繰り返している。
 これらの有る無しで取れる選択肢の幅はかなり違うだろう。
 男は格段に強くなっている。それは間違いない。

「使いこなせていないのではないですか」

 巫女からすれば「鍛冶の神から賜った今までのアイテムでは厳しい局面になったから更に強力なアイテムが欲しい」と言われている状況である。
 創ったのは巫女だが、巫女の創るものには鍛冶の神の加護が与えられる。
 巫女にとって自分の手で創ったものは2つの意味で特別で大事な宝物なのだ。
 男にそんな気はないだろうことは巫女もわかっているが、その言葉はそれらを否定し、侮辱するに等しい扱いをしているのだ。

 どこかで『だから言ったろ……今、さっきさ』という呟きが漏れた。

348【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2021/12/01(水) 22:30:18 ID:A3c3ClHo
>>347

神格にすら匹敵する龍の加護を与えるペンダント。
不壊でこそないものの高い物理耐性を有する木剣。
これら二つのアイテムは文句なく強力で、充分に駆使すれば勝利を掴めぬ相手の方が少ないだろう。
それでも足りぬと、もっと強い装備品が必要だと言っているなら、確かにそれは強欲と言うより他はない。

「──その通りだ」

しかし男の返答は、肯定。
使いこなせていないのではないか……その指摘に対し、言い訳のしようもないという風に頷いて見せた。

「俺は授かった力を使いこなせていない。
 発想力、応用力……それのみならず基礎的な肉体能力、戦闘技術、それらどれもが、これほどの神器を振うには不適格にすぎる」
 
仮にこの二つを授けられたのが自分でなかったなら。
もっと強い、戦闘者として完成された……あるいは才能あふれる若者だったなら。
きっとあの男を取り逃がすことなどなかっただろうと確信している。世に騒乱と破滅を巻き起こさんとする災厄の種子を、むざむざ撤退させることなどしなかった。

「貴殿から与えられた装備に不満などあろうはずもない。文句があるのは、使い手自身にだよ。
 俺は強くなってなどいない。強いのはアイテムだ。奪われてしまえばそこには未熟な戦士が一人いるだけ、それでは意味がない」
 
入念な調査を経て装備品の存在を知られ、どうにかしてその身から引き剥がされればそこで失われる脆い強さ。
道具の力を軽んじるのではない。使えるものは余さず有効活用するが、自力以外の力を強さの拠り所にしては駄目だろうと男は考えている。
強い異能を使うのは構わない。だが武術を振う者である以上、いずれはそれを越える磨き抜かれた自分の力を身につけていかねばなるまい。
そのように志し、今は弱くとも成長していけていたなら、まだよかったのだが……。

「成長していない。“彼”と出会い、その加護を得、いずれ相応しい戦士になってみせると宣したあの日から……否。
 この街に訪れ、強敵たちとの死闘を潜り抜け、数多く戦闘経験を積んでなお、メルヴィン・カーツワイルという男は大した成長を見せてはいないのだ。
 俺にはそれが、何より許せん」
 
技を幾つか身に付けた。
戦闘者として男が成した成長はそれくらいで、その技すら、曰くリミッター解除に頼らなければ行使すらままならないのだから厳密に言えば身に付けたとすら言い難い。
実際の成長は見切りの技術が伸びたくらいだろう。積み上げた経験からすればごくごく微々たるもの、これでは一流にはいつまで経っても届くまい。

「いずれ必ず強くなる、と言った。だがそれでは、もはや駄目だ。そんな悠長なことを言っていられる余裕など俺にはないと自覚した。
 早急に、今すぐ、地力を伸ばさなければならない。それほどの覚悟をもって臨まなければ高みには永遠に辿りつけん。たとえどんな代償を支払うとしても……」
 
蒼い両眼に業火が宿っていた。
怒っている。憎悪している。自分と、自分の弱さに対して。
殺すことしかできないくせに、肝心なところでそれをしくじった自分に……男は憤怒を滾らせていた。

「誤解させてしまったことは謝罪する、言葉が足りなかった。
 だがどれほどの鍛錬も死闘も我が身の研鑽に不足となれば、おそらくは尋常ならざる方法に通じる貴殿に頼るしか思い付かん。
 力が要るのだ──神の御業ならざる俺自身の力が。どうか、知恵を貸してはもらえないだろうか」
 
そう言って男は深く頭を下げた。
込められた意味は謝罪と誓願、その二つ。
どうか力を与えてほしい、ではなく……どうか力を磨かせてほしい、という願い。
自分自身の力を伸ばすことすら他者を頼らねばままならない情けなさを呑み込んで……男はひとえに、力を求めていた。

349【宝神焔器】鈴理:不変なる鍛冶の巫女:2021/12/06(月) 22:05:57 ID:WUvfAW3A
>>348

 アイテムにではなく自身の未熟さに不満を感じている。
 男の言葉は巫女の予想していたものだった。
 言葉が不足がちだということはこれまでの男との交流や先ほどの女性とのやり取りで予想できる。

「ふぅ……こちらこそすみません。
 貴方が悩んでいることは知っていますが、それでもそうと受け取れる言い回しを聞き逃すことができませんでした」

 互いに謝罪し、改めて彼の言葉を読む。
 強くなりたい。アイテムによる強化ではなく、自分の力を伸ばしたい。
 彼はそれを願っていた。いや、最初に街で店の前を横切ろうとした彼に剣を投げた呼び止めたあの時から、彼はそれを願っていた。

「メルヴィンさん、以前にも言いましたが貴方自身の力は上がりません」

 双子神からも彼に能力が限界点に達していると告げたことは知っている。
 多くのものを見てきた自身の目でも、彼の研鑽が著しいことはわかっている。
 これ以上、彼が強くなれる見込みはゼロなのだ。
 それは最初から、彼と出逢ったときから既にわかりきっていたこと。
 だから力となるアイテムを与えるために試練として戦い、その結果にかの龍が彼を見出した。
 そう、前提としてメルヴィン・カーツワイルの肉体が極まっているからこそのアイテムだった。

「アイテムの使い方は個人ごとに変わります。それは使い方は自由ということです。
 力を引き出せばそれに頼った戦い方になる。失えば途端に瓦解し、最悪は奪われ逆に使われる。
 そんなものはただの言い訳に過ぎません」

 男はひどく悲観的である。それも最初からだ。
 前のめりで深く考える思考の持ち主であるが、希望的な言葉があまりに少なく基本的に受け身とも考えられる。

 男の考え方が間違っているというわけではない。どちらかといえば正しいのだ。
 アイテムは所詮アイテム。外付けの装置、奪われれば使われるのは当然だ。

「使ってもいないのに負け、目的を達成できず、自分の力がないばかりに、失策だと断じる。
 次に聞くのはあの時に使っていればこんなことにはのタラレバでしょうか。
 アイテムは使ってこその消耗品。その力に甘んじることこそ未熟、扱いきれていないことの証拠です。
 力を全く使えない戦い方も力を存分に使える戦い方も使い分けられてこそでしょう」

 彼は戦士だ。戦う人間だ。
 剣を持てばそれを振るい、剣を失えば手と足で戦う。
 状況に応じて戦い分けることこそが最大の武器である。
 だというのに彼はそれをしてこなかった。戦士として失格の行為だ。
 それはあまりにも強大な力を手にしてしまったがゆえだろうか。
 だが、それを巫女は咎める。アイテムを創った本人だからではない。

「自分が非力だと嘆いて力を求めるより、今ある力の活かし方を考えた方がよほど強くなれます。
 それともなんでしょうか、このペンダントの石を失えば身体能力も戦闘技術も劣る私はメルヴィンさんから見れば赤子とおっしゃいますか」

 男と同じく基本的に戦闘力の低い自分を、男とは違いアイテムで大幅に強化して戦っているのが巫女だ。
 戦い方も苦痛を物ともせずの無鉄砲さだが、男とは違い巫女はアイテムの力をフルに使っている。
 この違いは男だから、巫女だからではこの話は片付けられない。

「……いい加減、自分を卑下するのを止めてください。
 アイテムを授かったのが自分ではなかったらなどと、授かったのだからと重荷を一人で背負おうとするのも。
 それ以上は、メルヴィンさんと共に歩もうと決めたあの子に対する侮辱とします」

 巫女は咎める。アイテムを創った本人だからではなく、彼が、アイテムが寄る辺と決めた者であるため。

350【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2021/12/07(火) 19:41:51 ID:q1XQRAho
>>349

巫女の返答は、否。

おまえはもう限界点に達していてこれ以上の成長は見込めない、だからアイテムの力を生かすことに注力するべき。
その言葉には理があった。筋が通っていた。理屈としてとても正しいから納得するし反論の言葉もない。

──だが到底、承服はしかねる。断じてこれを受け入れるわけにはいかなかった。
当然だろう、何を言われようともメルヴィン・カーツワイルという男の地力が著しく低いのは動かせない事実なのだ。
その弱さを受け入れることなど断じて否。弱さとはすべからく乗り越えるべきものなのだから、これをそのままにしておくことなどできるわけがない。
強くならねばならない。成長を続けなければならない。道具や他人の力に頼ることなく、単身ですべてを上回ることを志せ。限界があるなら打ち砕いて進むのみだろうが。

……彼女はいいのだ。
神器の恩恵を活用し、それがなければ素の実力は劣ると言うが、そもそも彼女の役目は戦いによって何かを成すことではない。
奉じるものの性質から戦闘に触れる機会は多く、試練という意味で戦いも役目の一環なのかもしれないが、それが本質かと言われれば違うだろう。
彼女は巫女。巫女の役目とは神を祀ること。それこそが核の部分であり、たまたま彼女の場合はそこに戦いが付随しているというだけだ。

日野鈴理……彼女は創りだす者。そして導く者。
人間として尊敬できる人物だと思っているし、今こうして自分に真剣に向き合ってくれていることも感謝に堪えない。
仮に戦うことができなくなったとして、それで存在意義が失われるなんてことは断じてあり得ないのだ。

──では自分は?

戦い以外に何かあるか? 否。
壊す以外に何かあるか? 否。
殺す以外に何かあるか? 否──!

何かを創ることも、誰かを導くことも……。
パンを焼くことも、花を育てることも、誰かを愛することさえできやしない大馬鹿者ではないか!
“そんなこと”より鍛えていろ。“そんなこと”より悪を倒せと自我の命ずるままに戦いを選ぶ破綻者、それが己だ。
それがどれだけ異常なことかと、分かっていながら止められない。すべて無駄な寄り道だと思ってしまう。
その寄り道(にちじょう)の中に生きる人々をこそ尊いと、その営みを護りたいと心の底から願っているにも関わらずだ。狂っているにも程がある!

だから自分は強くならねばならない。
より多くの悪を殺せるように。より多くの闇を滅ぼせるように。そうして切り拓き続けた血道の先に、少しでも多くの笑顔が訪れると信じて。
戦えない自分に意味はない。悪を倒せない自分に意義はない。……そんな自分に存在価値がなくなる瞬間こそ、真に望むべき笑顔に溢れた世界なのだと分かっている。

「…………。……そうだな」

だが男が何かを言い募ることはもうなかった。
人間と人間、考え方に違いがあるのは当然のこと。地力を伸ばすべきという自分の考えに変わりはないが、ここから先は押し付けになってしまう。
そんな水掛け論に意味はないし、大恩ある巫女をこれ以上、煩わせたくはなかった。
強くなることに他者を頼るな、道は自分で切り開け……彼女がそのように言っているわけではないが、きっとそういうことなのだろうと呑み込んで再び向き合う。

「いま手の中にある力を活かしきることを考えるべき……その通りだ。
 手間をかけさせてしまい、申し訳なかった。……時間があるときで構わないので、稽古に付き合ってくれるか?
 神器の扱いの他にも習熟しておきたい技術があってな。貴殿が見せてくれた……波動拳、で間違いないだろうか」
 
それと元木の修繕にはどれくらいかかるだろうか、と問う男の瞳にはもう先ほどの業火は見えなくなっていた。
言葉に嘘はありはしない。それもまた一理あると認めているから、神器の力をより使いこなすべく訓練したいというのは確かな事実だ。

だがあの炎のように燃え盛るものが、彼の剥き出しの本心であるのなら……。
……あれほどの感情を完全に制御できてしまうのは果たして幸なのか、不幸なのか。

351【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/25(月) 17:58:14 ID:WJ1GBTUU
御札神社────。山の麓に一般客用の拝殿が設けられ。
霊験あらたかな一般的護符の類いは其処で購入が出来る。
其れより奥部へ続くのが本殿への参道。
かの高天火男神社が六千階段には及ばずも、
千は優に超える曲がりくねった果ての見えない階段が山中に続く。
あちらは鍛錬を主目的とした物なのだろうが、
こちらの階段から受ける印象は。俗世との断絶、或いは隔離。
尤も巫女本人はこれを物ともせずに定期的に外出しているのを鑑みるに。
山頂に座する神体から"俗世の側"を遠ざけている。
そんな風に感じる事が出来るかもしれない。

そのある種の結界を抜け、山頂へと到ったならば。
此処なれこそが御札神社、本殿。
弥御札神の神体を奉る社にして、当代【創符帖録】が住まう場所。
呪符・護符を司る現人神が座する地なり。


と、言えばとんでもなく神聖な場所の様に思えるが。
実態としては神社の縁側で猫を膝に乗せ、
日向ぼっこをしながら巫女さんがお茶を飲んでいる。そんな所である。


//人待ちです。置き進行ですが宜しくお願いします。

352【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/25(月) 19:51:40 ID:6hLr91Uk
//>>337-350のロールについて
//おそらく「元木」の状態に矛盾が発生することになると思われるので、それ関連をなかったことにしていただけると幸いです

353【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/25(月) 19:52:25 ID:6hLr91Uk
>>351

──社に続く階段を、登ってくる者がある。
あるいは姿を目にする前に、その足音が来訪を報せただろうか。

大階段を登り切ってなお乱れのない硬質な靴音。
現れた男の纏う気配はなお硬く。鋼を思わせる姿に、周囲の雰囲気さえ張りつめていくようだ。
長身を包むのは軍服のような意匠の衣服で、防具の類こそ装備していない軽装であるものの頑丈そうな造りをしている。
腰には二振りの長剣が。刀身を覆う鞘の片方は表面に水が伝うような装飾がなされている、赤い縁取りの銀の鞘だった。

彼は山頂に辿りつくや否や周囲を見渡し、神社の縁側で日向ぼっこしている人物を発見すると一直線にそこへ向かっていった。
巫女の姿を映す青の双眸。鷹のような眼光はともすれば睨んでいるのではないかと思われるほど鋭く、胆力の弱い者ならこれだけで射竦められかねない迫力がある。
まして帯剣しているとなれば警戒しないほうが難しいというものだ。身構えられても何も文句は言えないが、構わず男は接近していく。

「失礼する。ここが御札神社、そして貴殿がその巫女で間違いないだろうか」

引き止められなければ近くへ。
そして神社という場所にあまり似つかわしくない男が、問いかける言葉を口にする。


//よろしくお願いします!

354【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/26(火) 18:56:39 ID:n.n3JjQ2
>>353
些かに物々しい様相だが引き止める様子はない。
警戒心に欠けているかと言えばそうでもなく、
其方にこの場を乱そうとする意図は無いと察した上での自然体。

「はい。私が当代の御札の巫女を務めます。
 御札 礼花と申します。
 貴方は、どういったご用件でいらっしゃったのでしょうか?」

茶飲みを盆へ置き、猫の背を撫でながら問いを返す。
この最奥までやって来る程の者は、
皆何がしかの悩みや相談事を持って此処を訪れるものだ。
ごく一部、心底からの信心のみで参拝する者も居たりはするが。
基本的には山奥故に来客も少なく、
境内の掃除やら神事やらしながらのんびりとした時間が静かに流れる。
此処はそういう場所であり、
その事は巫女当人の佇まいからも察し取れて余りあるだろう。
貴方の果てや威圧的とも取れる風体はさして気に留めず。
この地を訪れた一人の客人として何用であるのかと訊ねている。

355【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/26(火) 19:52:03 ID:.Nten9vc
>>354

自分の容貌が厳めしいことは承知している。
声をかけるだけで怯えられることもしばしば。そうでなくとも女子供が相手なら大小なりと怯まれるのが大抵。
が、女性と言うにはまだ幼さの残るこの巫女に怯えはなく。かの高天火男神社の巫女といい、神職にある者は高い胆力を有していなければならないのだろうかとも思った。

「メルヴィン・カーツワイルという。呪符や護符を司るとの話を聞いてきた」

ともあれ話が早いのはありがたい。
簡単に名乗りを返し、剣帯から片方の得物を鞘ごと外して差し出した。

「この木剣を修復してもらいたいのだが、可能だろうか?
 無論、何か素材の類が必要ならば協力は惜しまない」
 
鞘から抜いて刀身を見れば、なるほど確かにボロボロだ。
言葉のとおり木製の剣は元は直剣の形をしていたのだろうが、樋や切っ先、刃にあたる部分が欠け、削れ、もはや直剣の体を成していない。
辛うじて剣としての用途が果たせる程度には原型をとどめているが、これではいつ折れてしまってもおかしくない……。

のだが、しかし。見ればこうなってからもなかなかの酷使がなされた形跡があり。
驚くべきことにこれほど損傷してなお、まだまだ頑強と言うべき耐久力を残していることが、鑑識眼があるなら見て取れる。
ただの木剣ではないということだろう。もっとも実戦で使用するというなら、そもそもただの木剣を持ち出すことは考えづらいのだが……。

356【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/26(火) 20:32:58 ID:n.n3JjQ2
>>355

────この木剣を修復してもらいたいのだが、可能だろうか?

「可能です。素材も必要ありません。
 お時間さえ頂けるならば今、この場ででも。」

即答だった。或いは木剣の特異性を確認するよりも速かったやもしれない。
其れはまるで凡その不可能は先ず無いとでも言っているかの様でさえあった。

「本来であれば。
 鍛錬や武具に関する事は高天火男神社さんを紹介する様にと、
 日野さんに頼まれているのですが……。
 最近はあちらもお忙しい様子ではありますし、
 それも踏まえてこちらへいらっしゃったのでしょうね。」

これには皮肉の様な意味合いは感じ取れず。
お互いに助け合える部分は協力をしようという、
そんな何時かに交わした口約束を想っての発言だ。

「メルヴィンさん。これは。
 日野さんの神社(ところ)の神器。そうですね?」

ここから少しだけ声色が険を帯びた様に感じるかもしれない。
其れは他社の神威を己が奉ずる神の領域へ持ち込まれた事への忌避なのだろうかだとか、
正確に何に対して若干ながらに威圧の気配が生まれたのかまでは量れない。
ただその襤褸襤褸でありながら神秘を帯びた木剣の所在に対する、
半ば確信の元での儀礼めいた問いを投げかける。

357【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/27(水) 19:39:18 ID:KZKjU5Bs
>>356

返ってきたのはわずかな間も置かぬ即答。
頼もしい限りだと頷き、木剣の由来を説明しようとして……。
その必要もなく、言い当てられた答えに開きかけていた口を閉じた。

「……その通りだ。やはり、分かるものなのだな。
 隠すつもりはなかったが、最初に話しておくべきだったのかもしれん。気に障ったのなら謝罪しよう」

神域に関するあれやそれ、生まれも育ちも教養などというものとはほとんど無縁な男にはとんとわからない物事だ。
だから巫女の声色に混じった険を、ただ木剣の由来を説明しなかったことに対するものだと解釈した。

「そちらの言う通り、本来であれば木剣──元木というのだが、この製作者たる日野殿に修復を頼むのが筋ではある。
 実際、高天火男神社には幾度となく足を運んだが……一向に姿が見あたらないうえ、連絡も取れずにいてな」

ただでさえ武具の製作者はごく希少な世の中だ。別の誰かの頼むというのも簡単ではないし、ましてやこれはただの木剣じゃない。
創造系能力者──ないしそれに匹敵する腕前の鍛冶師あたりの力がどうしても必要だったが、まあ見つからない。
僅かな心当たりにも、やはり連絡は取れないまま。正直なところ、ここが最後の砦であった。

「その代わり、という言い方をすれば失礼になるが、実際ここしか当てがない。
 可能であるというなら是非、今すぐにでも頼みたい。……どうだろう、引き受けてはくれるか?」
 
〝できる〟ことと〝やる〟ことは全く違うことだ。
もし断られれば……いや、そうなったとしてもこちらにできることは、うんと言ってくれるまで頭を下げるしかない。
形を損なったことで重心その他は狂いに狂い、たとえ耐久性がどうであろうとこのまま使い続けるのはあり得ないというところまで損壊が進んでいるのだ。
修復の必要性は絶対的……さて、返答やいかに。

358【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/27(水) 20:38:38 ID:/sZHRybE
>>357

「木剣の修理。それは引き受けます。
 ですが……。」

そして彼女の態度の理由が明かされる。

【それは貴方が剪定された過去にてかの巫女に言われた言葉に他ならない】


「貴方からはこれ以外にも幾つもの。
 神秘の気配を感じます。一つ一つが強力な。
 それは或いは人が持っていて良い限界を超えてしまっているかもしれません。
 何しろ本来あるべき力を逸脱している状態。ですので。」

呪符・護符という形代を得た数々の"異能"。
それらに触れ、生み出す才の一角がその異様さを感じとらせたのだろうか。

「ゆえに。"験し"を受けて頂かなくてはなりません。
 打ち克つ"強さ"を示すためにでは無く、
 それらを振るうに相応しい"正しさ"を示すが為に。」

柔和な雰囲気は空気と共に張り詰め。
神の代言者と呼ぶに相応しい風格を纏う。

「宜しいのでしたら。そちらの境内の広場へ。
 木剣は此処に置いて、それ以外の装備で挑んで下さい。
 直すべき物をこれ以上壊してしまっては意味がありませんから。」

闘いの被害が及ばぬ様にと、
猫を膝から降ろし社務所の奥へと避難させている。

【どうするだろうか】
【答えは決まっている様なものだが】

359【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/27(水) 21:15:33 ID:KZKjU5Bs
>>358

───まさか、そこまで言い当てられるとは。

僅かな瞠目。だがどこか納得の色があった。

御札礼花、日野鈴理。二人の巫女がまったく同一でないのは当たり前のことだが、しかし同種の気配は感じていたのだ。
人ではあるのだろう。しかし纏う空気には、単なる人間とも言い難い何かがあった。
それは神秘……あるいは神威と呼ぶべきなのか。峻厳たる山麓や霧深き森を前にしたとき、ふと感じる感覚に似たものがある。

余人なら圧倒されてしかるべき、上位にあるものの気配。
しかし男は怯まない。

「───了解した」

迷わず返したのは了承の意。
そう、半ば決まり切っていた答えを、カーツワイルは口にした。

「むしろ願ってもないことだ。察しのとおり、俺は強力な異能を蔵する道具をいくつか保有している。
 それらを与え、また出会わせてくれた人々には感謝しかないが……肝心の使い手が粗末なままでは申し訳が立たんというもの」
 
成長しなければならない。他の誰でもない、自分自身が。
だから試練の類は大歓迎。それを突破するときにこそ、前へと進む機会もあるだろうと。
困難、我を珠にせよ。磨いて磨いて磨きぬいて、練磨の果てに必ず高みへ至って見せると意気軒高。

木剣と鞘を置き、広場へ足を進める。
場に充溢するのは闘いの空気か。しかし強さではなく正しさを示すがため……その言葉が、これから巻き起こるのが単なる戦闘ではない可能性をもたらしていた。

360【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/28(木) 16:33:55 ID:SRg13rJ6
>>359
天に程近く澄み切った静謐な空気を。

【覚醒────。創符帖録・参神白札】

柏手がひとつ。張り裂く様に何処までも響き。
一帯の空間それ自体に、名も無き力の重圧が普く注ぐ。
其れは嘗て貴方が古き龍に相対した時のものに似ているやもしれない。
異能の更に根源たる純然なる力の塊を前にした時の感覚。
紛れも無く、今。眼前に"神"が降り立ったという事象の証左。

「それでは。御札の験しを始めましょう。」

神を降ろし、神懸りとなりし者。
白き御札(みふだ)に人に在りし全てを創る"権能"を宿すもの。

【白札ノ壱。『操』符・終式────残り99枚】

「この札は貼り付けたものを自在に操る為のものです。これをこう。」

言うが早いか己が額に其れを貼る。

「己が魂をこの札へと移し。
 自身の身体を己が意思のみで自在に動かせるようにします。
 如何な手段でもこの札を破れれば貴方の勝利。」

炎であれ刃であれ。札を失えばその能力は失われる、と。

【白札ノ弐。『業』符・終式・刀ノ型────残り98枚】

「そしてこの札は私自身に。
 剣術の達人としての技量を授けるものです。」

そう言ってそれを右腕に張り付けた。
そうしてから胸元から小さな札が貼られた、深紅の首飾りをそっと取り出し。

「この様な場でしか。
 あなたに本当の輝きを発揮させれなくてごめんなさい。
 どうか。力を貸して下さいね。」

小さな札を剥すと共に美しいまでに余りに鋭い其れを右手で強く握りしめた。
痛みに眉をひそめるも苦痛は一つも漏らさず。
流れ落ちる筈の鮮血は一振りの紅色の太刀へと姿を変える。
見目明らかな程に巫女の身体は血を失い、青ざめてゆく。
全身の半分。通常、失血死に至る程の血液を代償に生まれた刃は。
鉄をも斬る極上の切れ味とこの世の金属を凌駕する高硬度を備える。

外部から身体を操る性質上。
例え身体が失血死を迎えようとしていたとて、
何一つ不便なく十全な戦闘行動が可能である。

最後に腰に下げた帳面から左手で三枚札を千切り構える。
その姿は宛ら剣術を修めた退魔術師の様相で。

「こちらの準備は整いました。
 ここは出雲。死さえも覆る神の庭。
 どうか殺すつもりで挑んで下さい。
 こちらも。殺すつもりで行きますから。」

開示された情報。見て識り得る情報。
そしてそれらを鑑みた上で未だ知り得ぬ不確定要素。
どれもが口を揃えて貴方に語る。
眼前に在るは幼げを残す只の女には非ず。
世界へと差し迫る明確なる脅威。"指揮官"。
それに勝るとも劣る事なき強者である、と。

361【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/28(木) 20:06:03 ID:Eoh3WyTE
>>360

構えた巫女を鷹の眼光が観察する。
比類なき強者の気配。格上との闘いが常のカーツワイルではあるが、これほどの水準はさすがに稀である。
全ての戦力を確認できたわけではないものの、予測される脅威度はかの指揮官……そして同じく神職を務める、かの日野鈴理とも比肩しうる。

ならば如何にして勝利を掴むか。

与えられた情報が真実であると仮定して考察するなら──勝利条件は額の札の破壊、ないし奪取。
あれなる札によって己が身体を意思と直結させているらしい。
すなわち肉体的損耗は無意味……少なくとも四肢の欠損レベルのダメージでなければ、いかな打撃も明確な損傷にはなりえないということ。

(どこかで聞いた話だ)

ならば狙うべきは意識を直接刈り取る攻撃。
すなわち斬撃というよりは打撃を急所へ打ち込むべきか。痛み程度で手放すほど柔な気合はしていないと考えるが吉。
無論、剣のほうでも手段はある。だがしかし……あれしきの精神攻撃ではせいぜい一秒未満、意識を揺さぶるのが関の山だろうという確信があった。
だが近接戦闘においてはその一秒未満が値千金、決して無意味なものではない。まして急所がはっきりしている今回の相手なら。

しかしそう簡単にはいくまい。
首飾りと巫女の血を媒介として出現した紅色の太刀はこちらのリーチを上回っており、一目でわかるほど凄絶な切れ味を誇っている。
強度については、わからないが……仮に脆かったのだとしても、そこを補うのが曰く達人の技量。

元の彼女が剣術にどれだけの腕前を有していたかはわからない。
けれどまったくの素人がいきなり達人の技量を有したところで、はたして十全に振るい続けられるだろうか?
答えは否だ。なぜなら剣を振るうたびに熟達したその技が、他ならぬ使い手本人の身体を痛めていくから。
優れた技とは優れた肉体を前提としているもの……身体能力の高低ではなく、日頃から剣を振り慣れていなければ体がついていかないのだ。

が、それゆえ、前述の札の効果が効いてくる。
筋が傷んだ、筋肉が伸びた……その程度、意志を止めるにまったく能わない。
よほど無茶な振り方をさせれば話は別だろうが、基本的に技に振り回されて身体を痛めたゆえの鈍りは期待できないと考えるべきか。

(ともかく……肝は札か)

御札の巫女の名の通り、彼女の力の起点は札にある。
額の札もそうだが、おそらく右腕のそれも狙う価値はあるだろう。それを破壊できれば技量が失われる可能性は高い。
未知数なのは左手に構えた三枚の札だが……あれも強い力を有しているはず。それも自身ではなく外部に作用するもの、つまりは攻撃的な力。
焔が、氷が、雷が……襲い掛かったとしてもまったく驚くべきではない。彼女が有するまさしく手札は多岐に渡る。

だが、決して勝ち目がないわけではない。

「承知した。では──往くぞ」

携えた鋼の剣に蒼い光が収束した。
世界へ還った地母神そのものである膨大な魔力を纏った刃の切れ味は最上まで強化完了。決して敵手の得物に劣るものではない。
駆けだす剣士──遠距離からの迎撃がないのなら、巫女の間合いまであと七歩、六、五。

「───シッ」

四歩目と同時、逆袈裟に振りぬかれた剣から射出されるのは蒼い光の斬撃。
三日月のような形を取る光の刃は高速で巫女へと迫る。右手にある剣から放たれたため、それは若干右側にずれており、そちらへの回避を封じていて……。

「────」

ゆえに左へ避けたなら、三歩の距離を一息にて詰めた剣士の左手が額の札を剥がしにかかるだろう。
光波は囮。本命は回避を狩って御札を狙い、一瞬で勝負を決めること。
様子見や、戦いを楽しもうという気配など一切なかった。初手から仕留めにかかっている剣士の得物には、抜け目なく再び蒼光が集い始めている。

362【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/28(木) 20:31:54 ID:SRg13rJ6
>>361

【1溜め×3】

四歩の間合いで蒼き三日月の斬撃が空を裂き。
その躱した先を狙う様に男の左手が額の札を狙う。
様子見も遊びも無い。一手目からの攻めの姿勢。
其れはこの試練にあって重要な事だ。しかし────。
其れを以て尚、届く事は無い。

蒼色の斬撃を迎え撃つは紅蓮の三日月。
深紅のチャームが宿すは刀を作る異能では無く"刃"を作る異能。
即ち光波と真反対からの形に血を消費して刃を形成して、
勢いのままに其れを飛ばした。それだけの事。故に。

「そんな簡単に済むとは。思わないで下さい。」

巫女は回避行動の最中ではない。
其処は十全に達人の刃を振るう事が出来る刃圏の渦中。

みしり、と音がする。地面が窪む音。刃が軋る音。
そして他ならぬ貴方が一番に聞きなれた音。
筋骨の軋む音。限界を超えた人の身体が崩れる音。

神懸りの真髄。それは。
無意識にでも相手が乗り越えなければならない試練の相手を選び取る知覚。
達人の技の冴えに、人類の限界級の膂力を乗せた。
到底、縁側で日向ぼっこをしている女が放つべきでは無い威力の。
真紅の一閃が。貴方を足元から頭へ両断せんと迫る。

幻影。それは鏡写しの様に。
貴方の似姿を無垢なる白に描き上げ、問う。
汝の正しさを証明せよ、と。

363【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/28(木) 21:07:33 ID:Eoh3WyTE
>>362

回避の気配はない。
迎撃かと睨み据えれば、その手の太刀を振るうことなく発生した刃。
深蒼と対極であるかのような紅蓮の三日月……双方は激突し、相殺され虚空へ消える。

ならば次の一手は太刀によるものか。
集中力を研ぎ澄ませ、その予備動作から刃の軌道を読み切らんとした刹那──。

「───!」

聞き慣れた音。
それは限界以上を振り絞られた肉体が上げる悲鳴の声。己の戦い、常に侍っているもの。
ゆえ、咄嗟に踏みとどまり、上段にあがった剣を振り下ろした。

衝突。刃と刃が噛み合う音。恐るべきは対敵の剣に込められた威力だった。
上から下へ。重力に逆らい、人体の構造上力を入れにくい振り方。
なのにも関わらずこの手に伝わる圧力は絶大の一言だ。まるで地獄の番犬が唸りをあげながら喰らいついているかのよう。
一瞬のうちにこちらも限界以上を引き出さなければ打ち負けていたに違いない。間違いなく、人類の限界域にある膂力──。

厄介なのは太刀を振るうことなく斬撃を発生させる力だ。こうして刃を抑えていても、次の瞬間には首を狙った攻撃が飛んでくるだろう。
鍔迫り合いは一方的な危険を招く。安全を取るなら今すぐ離脱すべきだが、男に後方へ退く様子はない。
なぜなら下がれば再び無動作の斬撃を搔い潜る必要があるから。こちらの遠距離攻撃手段が乱発できない以上、懐に潜り込んだ好機を逃すことなく──今は攻めるべし。

「なるほど、強いな。だがしかしッ」

抑えた太刀を踏みつけ抑えにかかり、そのまま猛然と迫らんとする。
動作のない刃? 急所以外ならくれてやればいい、腕の一本くらいなら勝利の代価としては安い。
勝つためには攻めなければならぬ。太刀を抑えられたのならばその踏み足を起点に、振るう剣が血刃よりも速く仕留めんと額の札を狙いに行く。

364【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/28(木) 21:28:59 ID:SRg13rJ6
>>363
蒼と紅の衝突。果ては山体をも揺るがしたかの様な錯覚さえ覚える。
刃を飛ばす業は血液の消費を伴う。
札が傀儡たる肉体に不要の物とは言え血もまた限りのあるリソース。
加え、最接近距離での戦闘。その優は。
流石に長く修羅場を潜り抜けた男の側にあった様で。

「決して。どうにもならない訳ではありませんが。
 今は。こう、しましょう。」

先刻、男が三歩の距離を一瞬に詰め寄る姿を見た。
今がこの身は札が思う儘。どんな不条理もしてのける。なれば。

骨の砕ける音がする。肉の裂ける音がする。
男が使う不完全な"縮地"を元に。
本来の。"十歩の距離を一息に駆ける"それを再現し行使する。
己が身を削りながら。圧し潰しながら。

刹那。気付けば巫女が居るのは貴方の数メートル手前。

【2溜め×3】

紅の刀身を大きく後方まで反らし構える。
後の先狙い。居合抜刀の型である。
光波で遠隔攻撃を狙うのも手であるが。
何故か。それを赦さぬであろう不穏さが漂う。

365【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/29(金) 19:55:11 ID:1a44JIDw
>>364

縮地──自らにその業を伝授した先達と同等の距離──を用いて距離を空けられた。
〝気〟を用いないそれは己と同じく脚部に絶大な負担をかけている。移動距離が伸びただけ、かかるダメージもなお深刻。
一度の行使で脚が砕けたことを確かに確認したが、対敵の立ち姿に陰り無し。驚くにも値しない。

次いで目に映ったのは、居合の型。
これまた縮地の使い手が得意とするものと同じ業だ……鞘から解き放たれた剣閃がどれだけ恐ろしいかなど、身に染みて承知している。
迅く、鋭く、そして重い。並の鉄では剣でも盾でも鎧でも、等しく斬り裂き命へ届かせると見て間違いない。

そう、並の鉄ならば。

「逃がさん──!」

蒼光は剣に収束し、すでに再強化は完了している。
ならば光波による遠距離攻撃が最善に思えたが、剣士が選択したのは吶喊だった。
半端な威力のそれでは居合抜刀による迎撃であえなく叩き落されるだけだという理屈もあるが、それ以前に……巫女の構える姿から漂う不穏さが安易な攻めを避けさせた。

ならばこの突撃は安易ではないのか、むしろ悪手ではないかと問われれば……否。目論見は、ある。

間合いまであと五、四……近づきつつも、だがカーツワイルに斬撃を放とうとする気配はない。
しかし太刀の刃圏まであと一歩というところで──巫女が構える太刀が右側ならそのまま、左側なら反対の手に、瞬時に剣を持ち換えて太刀と身体の間に剣を差し込んだ。
それが意図するところは明白だ。すなわち輝く剣による防御──おそらく絶大な威力をもって放たれる太刀を刃一本で受け止めんとしている。

通常の刀剣ならば何の意味も持たないだろう。斬鉄を成す達人の一閃を前に、ただの鋼はあまりに脆い。
しかしこの剣は。カーツワイルの手に常にあった、黄金の光を放つ刃は……彼の意志が折れない限り、何物にも脅かされぬ不壊の剣であり続ける。
血刃による迎撃はとうぜん考慮したうえで容認、急所を逸らせればそれで構わないというスタンスに変わりはない。

そうして再び肉薄したなら、空いた片手が伸びるのは今回も額の札──。
ではなく。おそらく額の一点狙いは回避されるだろうと考え、白衣の袂を。あるいは掛襟を。
どこでもいい、掴める部分を掴み、力任せに引き倒すことによって体勢を崩しにかかる。
そうして下方へ流れた額へ頭なり膝なりを全力で叩きつけて御札の破損、または流血による汚損を狙っていた。
正統派剣術とは言い難い……実戦によって培われた喧嘩殺法とも言うべき荒々しい技である。

366【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/29(金) 20:44:15 ID:3vlvdyYQ
>>365

【溜め3×2】
【『強』符、作成────残り97】

渾身の抜刀術に身体能力を更に一段階上昇させる護符を追加。
人類の限界値を超え。人外、超人の領域に踏み込んだ圧倒的力。
その凄絶なる破壊力を生み出すだろう一閃を。
真正面から受け止めなおも進もうとする貴女に。
どこか哀し気な視線をくべて。解き放────。

/* 【一度時を止めるとしよう】
  【別段これは上位からの干渉だとかそういうのではない】
  【当たり前に神の座するこの地にて】
  【貴方の意識が極限まで研ぎ澄まされたが故の】
  【ある種の第六感の様なものと思ってほしい】

  【あるいは】
  【勝利条件と達成条件を誤認させたままというのも】
  【平等(イーブン)では無いと思うのでね】

  【今一度巫女の言葉を思い出して頂きたい】
  【額の札を剥せば"この戦い"は貴女の勝利だと言った】
  【して】
  【此度の験しに置いて証明すべきは】
  【何だったであろうか?】

  【まあ詰まる所がこれは】
  【ADVゲームに於ける選択肢の様なものだ】

  【このまま想定通りに巫女へ向かって突撃するのか】
  【それとも】
  【何らかの理由をつけて一度距離を離してみるのか】
  【この距離というのには思考の冷静さの様なものも含まれるとする】

*/

運命を分かつ刹那の判断。如何に。

367【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/29(金) 21:22:40 ID:1a44JIDw
>>366

───正しさを示せ。

今回、御札の巫女が口にした言葉だ。
その真意は測りかねるものの、当然それを忘れてはいない。

だが、ならば正しさとはいったい何なのか?
戦闘において最適解を選び続けろという意味なのか? しかし、ならばあえなく敗北するだろう。
なぜなら彼我の戦力の差は大きく……最適な行動を取り続けていたなら、つまり常識の範疇を逸脱しない行動を選び続けていたのなら。
順当に、己は敗ける。そんな戦いがいくつもあった。今回もそうだ。

正しさとは、勝利の上にあるものだ。
別に勝てば官軍とか、勝った者が全面的に正しいとか、そういうことを言いたいわけじゃない。
ただ勝利なき正しさなど空しいだけだと思っている。世の無慈悲さを、残酷さを、この目で数多と見てきたゆえにその事実を痛感している。

正義を志した警官が路上のならず者たちに袋叩きにされていた。
小銭の恵みを施した青年がその乞食に背中から刺されて身包みを剥がされていた。
孫の暮らしを豊かにしてやりたいと貯めていた資産を舌先三寸で掠め取られる老人がいた。

善は弱く、正しさは脆い。
暖かい光が醜き悪に容易く蹂躙されてしまうのがこの世の真実だ。
それを許せんと思ったからこそ、男は剣を取ったのだ。怒りと共に。あまねく闇を消し去るために。

──それを成すには、何が必要か?
──決まっている。勝利だ。

勝つ。勝つ。勝つ。勝つ。
我が道に立ちはだかる困難、試練、その数々に対して、目指すべきものは勝利ただひとつのみ。
勝ってこそ。勝ってこそなのだ。正しさを示すためには、まず勝たねば始まらない。完膚なきまでの勝利こそ、求めるべき真実なのだと。


───メルヴィン・カーツワイルは〝勝利〟に憑かれている。


ゆえに止まらない。
一条の閃光のように、突き進むだけだ。

368【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/29(金) 22:01:09 ID:3vlvdyYQ
>>367
男の選択は────。
巫女は差し迫る鬼気とした猛勇を目にして。
諦めた様に目を閉じた。
放たれた剣撃は恐らく貴方が想定していたよりも遥かに"軽い"。
故にあっけなく巫女の掛襟を掴み引き倒す事に成功するし。
頭を狙った全力での叩きつけも上手く行く。
その様にして、見事。此度の"戦い"にも勝利を収めるだろう!

【白札ノ参。『鏡』符・終式・閻魔────残り96】

其れなるは己が死後に発動する呪符。
巨大な鏡が貴方の目の前に顕れ。今の貴方の姿を映す。

正しさ。その真意を鑑みる事もなく。
喧嘩殺法。路地の破落戸共がそうする様に。
罪も無い、ただ"力があるだけ"の女を。
強引に引き倒し、組み敷き。
躊躇いも無く殴り殺した、只の殺人者の姿を。

殺す気で来いとは言っていたとも。
全力で挑めとも。だが今のその姿が正しさに対する回答で間違い無いのか。
死が覆る地であったから? 女が圧倒的なまでの強者だったから?
だから。善良な彼女がこれ程無惨に殺されなければならなかった?

『今一度。心に刻め。汝は悪。咎人なり。』

鏡の向こうから地の底からの様な厳めしい声が響いた。
直後。絶対不可避の審判が無数の刃となって貴方の全身を貫いていた。
まるで。今まで貴方が手に掛けた全ての命。
全ての罪をその身へ刻み付けるかの様に。

【『正当』の試練────失敗】

やがて夢でも見ていたかのように。
神社の広場に倒れた状態で目を覚ますだろう。
だが、地面や木々に残された戦闘痕が其れが現実であった事を備に語る。

巫女は試練の始まるより以前。
元通りの姿で社を背に立ち貴方を見つめているだろう。

369【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/07/30(土) 20:54:10 ID:jptgGLjM
>>368

受け止めた太刀の感触は──軽い?
罠か? 刹那の間隙に全集中力を持って至近距離にある対敵の動きから兆候を探るものの、そのような気配はない。
ならば構わない。いいやここまできて止まるつもりなどあり得ないと、一切躊躇なく攻撃を実行。

掛襟を掴み──体勢を崩し──その頭部へ膝を打ち込んだ。
容赦も呵責も、そこにはなかった。ただ勝利を求めて行われた殺法はかよわい婦女子の額を砕きにかかっている。
果たしてその目論見は最大限の効果を挙げたのか。額にあった御札の破壊に成功する。

(獲ったか──)

勝利条件、これにて達成。
地へ崩れ落ちる巫女の姿を油断なく睨みながら警戒する男の前に現れたのは……巨大な鏡。
これはと思った矢先に、声が響いた。己を──メルヴィン・カーツワイルを断罪する、裁きの宣告が。

次の瞬間、カーツワイルは針鼠と化していた。
驚愕。次いで困惑。いったい何が、どこからこれが──おそらくはこの鏡から。
見えなかった。攻撃か? 勝利条件は達したはず、しかしこれも試練の内だというならば。

「打ち砕くのみ──!」

終わってない。負けていない。
たかだか全身を貫かれた程度で膝をつくわけにはいかないと、不屈の男が刃を軋らせながら……動く。
異様な光景だった。肉体へ突き刺さった無数の刃が放つ鈍い光、それよりもなお煌々と輝く青い両眼が滅ぼすべき対象を見据えて意志を業火と燃やしている。
関節も主要臓器も根こそぎ穿たれ、どう考えても動けるはずがないのに……それがどうした、まだだとばかりに、肉体が限界を超えて駆動していた。

そうして振り上げた剣を、鏡を粉砕せんと振り下ろして──。


倒れ伏している自分に気が付いた。
立ち上がる。周囲に目をやれば、戦闘の跡が今までの記憶が夢ではなかったことを物語っている。
眼前には巫女。こちらを見つめる彼女に、訊ねるべきはひとつ。

「失敗か?」

確証はない。
あの鏡に……いいやその向こうから告げられた言葉は彼にとって当然すぎることで、何かを思うようなことではないのだ。
自分は悪だ。咎人だとも。だがそれでも光を掴むべく歩んでいるという矛盾を常日頃から自覚しているため、今更というもの。

初めから分かり切っていることを言われた程度であるがゆえ、それが失敗の宣告だと認識できていない。
だが……なんとなく、越えられなかったという感覚はあった。勘、と言い換えてもいいかもしれないが。

370【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/07/31(日) 12:46:47 ID:ky1PmMas
>>369
己は悪だ。咎人だと。"自覚している"。
自分が塵屑であると。そう言い訳をして。
最早、剣を収めるべき場面というものを省みる事すらしていない。

────失敗か?

「ええ。率直に申しまして。
 貴方には失望しました。」

死を経験した直後などというのは今は関係なく。
神託を。試練の顛末を語るべく、粛々とした態度で答える。

「己が情動の儘に。或いは他者に乞われる儘に。
 止まる事も無く。殺し尽くす事しかできないのであれば。
 貴方はこれ以上何も求めるべきではありません。
 今ある力でさえも過ぎたる代物です。」

怒りはない。偏に憂いと嘆きだけが声色と表情から伝わってくる。

「貴方の問題は技量が未熟な所でも。身体が凡庸な所でもありません。
 他ならぬ精神が未熟過ぎるのです。硬き鋼の様に不変であるが故に、
 何一つとして他者から学び成長する事が出来ていない。」

心が揺るがない。誰が何を訴えても響かない。変わる事が無い。
ならば今まで彼が紡いだ交流さえも只々無為に終わっていたのかもしれない。

「なので貴方の裡に"正しさ"はありません。
 受けた依頼ですので木剣は修理致しますが、
 それが済んだのならばこの地より立ち去って下さい。」

371【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/08/01(月) 20:25:16 ID:JK8oz0yU
>>370

憂いと共に、嘆きと共に。
お前はここが駄目なのだ、こうだから問題なのだと指摘する言葉に……。
男は重々しく頷きを返した。

「そうだな。返す言葉もない」

一切の反論もなく認める様子に動揺はない。
そして反感も。むしろよく見抜いてくれた、まったくその通りだと、目には賞賛と敬意の色すら宿っている。

「殺すことしかできない、壊すことしかできない。そんな者は塵屑以外の何物でもない。
 走り出したら止まれんのだよ。駆け抜けた先に人々へ捧ぐべき栄光があると思えばこそ……。
 いや、仮に無いのかもしれないとしても。そのうえで必ず掴むと、貫くことしか俺にはできん」
 
人は人と関わることでその心を成長させていくものだ。変化と言い換えてもよいかもしれない。
善き出会いは善き影響を。悪しき出会いは悪しき影響を……なんて、単純なものではないけれど。それでも、いずれに形にせよ、人は変わっていくもの。

──この男は一切、まったく、何も変わっていない。

今までいくつもの出会いがあった。
特にこの街に足を踏み入れてからは数多く。暖かき光とも、唾棄すべき闇とも、そのどちらでもないものとも……。
それらは彼の技を、力を、磨いてきたかもしれない。だがその心に対しては、寸毫の影響も与えられてはいなかった。

心が揺るがない。誰が何を訴えても響かない。変わる事が無い。──断言しよう、これからも。
誰かが反対意見を唱えたとしよう。それは違うぞ、お前は間違っているぞと叫んだとしよう。彼はその言葉に真摯に耳を傾けるのは間違いない。

──傾けるだけだ。それがどれだけ切実で、どれだけ道理が通っていたとしても、男はそれを聞き入れて己の在り方を曲げることはない。
そのうえで、立ち塞がるなら排除する。憎むべき悪でなかったとしても、対等な相手として。認めるからこそ全力で……殺す。
それが自分が護りたいと願った穏やかな光だったとしても……断腸の想いを噛み締めながら、けれど少しの躊躇もなく。躊躇いが生む成果の取りこぼしを許さないがゆえ。

未熟というよりは、完成。
完成というよりは、完結。

自分がこうと決めたから。こう進むと定めたから。それだけでもう、彼の中では終わっているのだ。ただそれだけで、あらゆる障害を粉砕しながら突き進む。
そこに他者が介在する余地は一切ない。ただ独りで駆け抜ける一本道に彼を止める味方は存在せず、目に映るのは立ち塞がるモノだけ。打ち倒すべき敵のみ。

「何度でも言おう、俺は塵屑だ。人として致命的に壊れている破綻者だとも。
 言われるまでもない。誰より俺自身が、メルヴィン・カーツワイルに絶望している」
 
すべて承知している。
いずれ必ず大きな光にして返すからと、そう言いながら無数の屍を積み上げ続ける自分がどれだけ醜い存在か。どれだけ罪深いのか。
そんなものは言い訳にならないと分かっていながらそう叫ぶしかない己が、どんなに邪悪な男であるのか。

誰かのために。未来のために。そのために悪を、敵を、立ち塞がるものを討ち果たす……それらは間違いなく彼の本心だ。
誰に言われたわけでもなく、自分自身の意志で、自分がそうしたいからやっている。けれどそのために他のあらゆるものを踏みつぶすというなら、それはエゴだろう。

……結局、この男が英雄と呼ばれるのは、彼のエゴが大衆の英雄像に合致しているからにすぎないのだ。
何かが一つ掛け違えば見るもおぞましき殺戮者と恐れられていた未来もきっと存在するのかもしれない。

「だがそれでも足を止めるわけにはいかん。なぜなら戦い続けることこそ、こんな俺にできるたったひとつのことだと信じているからだ。
 何も求めるべきではない、今の力すら過ぎた代物……その通りだ。そのうえで断固進むと決めている」
 
だから感謝する、こんな俺の頼みを引き受けてくれて……と。
頭を下げる男の姿にはやはり、先ほどから変わったところなど何一つありはせず。
彼女の死をもって抉り出したカーツワイルの歪みを突き付けられたことすら、前へと進む燃料以外になりえなかったことを前にして……巫女は何を思うだろう。
あるいはそれは、こうではないか?

───こいつは、駄目だ。

372【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/08/01(月) 21:29:10 ID:piL1CCdY
>>371
掛け損じ、傷つき。鈍らの儘変わる事の無い。剣。
時折、輝き。人々の目を眩ませる。
光り輝いて見える。見えるだけ。
決して光ってなどいない。欠片としても光の属性を有していない。
其れは眩いだけの虚ろであった。
光も。闇も。何一つ其れに触れ合う事もなく。只消えていた。

「今の貴方に辿り着くべき未来の姿が無いならば。
 それは永劫見出せる日は来ませんよ。
 貴方が立ち塞がる全てを潰して目指す先は無明の闇しかありません。」

この言葉さえ。虚空へ消える。
奈落へ身を焦がしながら一直線に落ちる一条の星屑。
その軌跡を歪める事は何人とて許されぬなら。

【『修』符、作成。】

一枚の護符を男に手渡す。

「それは貼り付けた物を在るべき形に封印(もど)す札です。
 札(それ)が燃えたり完全に破りさられるまでは効果も持つでしょう。
 水などには耐性があるので其処にだけ注意して下さい。」

イデアやエイドスの次元で物体を修復するその符は、
重心の傾きすらも完璧に整えるだろう。

「仮に全ての悪を絶やす事が出来たとして。
 その時貴方の前にいるのは誰なのでしょうね。
 或いは目に映るこの世全てを滅ぼさねば止まれぬ、と言うのでしたら。」

男は現段階に於いては多くの人々にとって有益な存在なのだろう。
根本が歪みきり精神が人外の其れへと果てていようと体裁上は。
それでも殺した数が増える度に彼を必要とする者は絶対的に減ってゆく。
本当に酷な話である。毒には毒を。
悪性の根絶の為にはより悍ましき悪を。それが人の世の常なれば。

「いずれまた会う日が来るでしょう。
 その時に在る地は出雲ではありません。
 私としては。そうならない事を祈ります。」

死で以てでしか、安らぎを得られぬ者だと云うならば。
その役目を担うべき者はきっと他にも居並ぶ事だろうが。
それでも関わった者の一人として責任を全うするのならば。

次、会った時に命は無いものと思うようにと。言外に告げて。
此度の験しで彼女の見せた全ては、ただ貴方を試すが為だけのもの。
出雲の地に非ずとも、死地にあれば"神"は降りる。
その全てを只一人を殺める事だけに使うのだとしたら────。

【これ以上は語るだけ野暮と言うものだろう】


このまま去り行くならばその背をずっと眺めているだろう。

373【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/08/02(火) 20:48:50 ID:7J.gka2A
>>372

ならば彼は、光ではないのだろうか?

──否。彼は常に誰かのために戦っている。
栄誉も報酬も感謝の声さえも真実、一度として望んだことはなく。
善なる者たちの涙を一滴でも多く払うため、その身を死闘に投じ続けるというのなら……それは間違いなく、光であろう。

結局のところ戦いにおいて、迷いや躊躇といったものは弱さである。ひとたび戦端が開かれたのならそんなものは邪魔にしかならない。
戦い以外でもこれは同じ。自分がこうだと決めたことに対して一直線な者はとても強い。
けれどそれは人が持ちえない強さだ。どんなに泰然とした人間でも、自己の正しさが揺らげば歩む足取りを鈍らせるもの。
迷い、躊躇……弱さ、すなわち闇。人は光と闇を両方もっている生き物だから、どちらか片方だけなんてことはあり得ない。

だが彼は迷わない。躊躇しない。ひとたびこうだと決めたのなら、たとえ途中で何があっても道を変えない。
それは強さだ。人が持っていてはいけない輝きだ。人であるなら持っていなければならない闇が根こそぎ欠落している、強すぎる光だ。

ならば彼は、正しくないのだろうか?
──否。そもそも正しさなどというものは見る角度によって如何様にも変化するもの。
此度の試練、彼は悪ならざる者を殺めたがため正しからざると判じられた。
それ自体に反論はない。善悪問わず殺人は殺人、殺人はどんな理由があっても正しいと言えるものじゃないからだ。

ではならば、戦う意志を持って戦場に立った者へ対し、全力をもって相対するのは間違ったことなのか?
それは違うだろう。相手が弱者であれ強者であれ、確固たる意志を備えて目の前に立ち塞がったならそれは打ち倒すべき相手。
まして殺す気で、とまで言っているならそれに対して加減を加える方が無礼というものだ。率直に言って、舐めている。

今回、判を下すのは御札の神──弥御札神であった。
だがこれがもっと別の、たとえば戦を司る戦士たちの神であったならばどうだったか?
おそらく、カーツワイルに正しさ有りと判断されただろう。その可能性は決して低くない。向かい合った敵とは全力で戦うことこそ、戦場の礼なのだから。

優しくはない。
しかし間違いなく、正しくはあった。苛烈な正しさだ。正しい方向に振り切れ過ぎていると言ってもいい。

彼は正しい。彼は光に属する者だ。
しかしその光はあまりに強すぎ、そして本来、人が持っているべき弱さや闇が無いために、こうまでおぞましく壊れていた。
絵物語の英雄譚の主役が現実世界にいるような違和感。物語と現実で発生した齟齬がそのまま歪みとなって現れているかのような……。

男は不動。
その精神に一切の揺らぎを生まぬまま、渡された符を木剣の柄に巻き付けるように貼った。
修復する得物を確認し、鞘へ納めて剣帯へ吊る。依頼が果たされた今、約束の通りにすぐさま立ち去る……間際に。

「俺もそうならなことを願う。
 だがこれだけは言っておこう。たとえ、その瞬間が来たとしても」
 
燃え盛る太陽のように、轟き煌めく意志の力を宿した青い両眼が正面から巫女を見据えた。

「───勝つのは、俺だと」

何度となく唱えてきた踏破の宣言を残し、一礼して踵を返す。
来た道を戻る──いいや、新たな目的地へ向けて歩き出すその足取りに淀みはなく。
振り返らない。立ち止まらない。英雄/怪物 はただひたすらに、前へ前へと進んでゆく。


//これにて終了でしょうか?
//ありがとうございましたー!めっっちゃくちゃ楽しかったです!

374【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/08/02(火) 20:57:05 ID:7J.gka2A
>>373
//それとひとつ質問なのですが、お札が無事なうちは再び木剣が破損してもすぐさま元に戻るという認識でよろしいでしょうか?

375【創符帖録】呪符護符司る神の巫女@wiki:2022/08/02(火) 21:42:50 ID:DnvFLXQI
>>373
他が為に振るう刃であれば其れ全てが正当か?
勝利なき正しさなど空しいだけだと言っていたが。
力ばかりで盲目に振るわれる"正しさ"程に悍ましい悪は、
或いは存在しないのではないかと、そう考える事もできる。
まあ、真の正しさの問答など。正しく人の身に余る。
悟りの境地にでも立たなければその回答は堂々を巡るだけだろう。
男の歩みは偏に戦いばかりに傾きすぎていた。

故に戦神ならざるものが彼の人の心の有無を試さんと、
此度の邂逅を取り合わせたのやもしれない。
と、あるならば此度。判を下したのは弥御札神だったのだろうか。
────人格を有さぬ筈の"現象"がそうしたのか。

/* 【いいや。神である筈があるものか】
  【これを手引きしたのはもっと俗念に満ちた愚物だとも】
  【けれど、面白い物が見れた】
  【これだけの成果があるならば】
  【傷つき塞ぎ込んでしまった"彼女"も】
  【多少の自信は取り戻すんじゃないだろうかな】
  【まだまだ、この位で壊れられても困るものでね】
  【"我々"一同。感謝を述べよう】

*/

────勝つのは、俺だと。

男は勇猛の士らしく、踏破の宣言を残す。
対する此方が司るは武にも戦にも非ず。
原則として"守護"の神であるが巫女はその挑戦に乗るでもなく礼に礼だけ返して見送る。

「お願いですから。道を過たないで下さいね。」

完全に男が立ち去ってからぽそりと零し。
神妙なる佇まいを保ったままに社務所の下へ。
そして緊張の糸が千切れ落ちる様に倒れ込む。
奥から鈴を鳴らして猫が駆け寄って倒れた巫女の頬に頭を寄せる。

「ありがとう。少し……お願い。」

そう言って束の間意識を手放した。


//こちらこそ長らくのお相手感謝。感謝でございます!
//>>374の質問に関してですが
//はい。ですが本来木剣が損傷を起こすレベルの攻撃を受ける度に
//お札自体も酷く損耗していくものとさせて頂きます

376【不撓鋼心】何度でも立ちあがる剣士@wiki:2022/08/02(火) 22:06:55 ID:7J.gka2A
>>375
//了解しました、ありがとうございます!


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