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( ^ω^)戦国を歩くギタリストのようです

1 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:10:49 ID:xjlGxIHwO
***
 
この作品はフィクションです
作品の団体名、人名、地名などは一切関係ございません
 
***

2 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:12:24 ID:xjlGxIHwO
 
 
 アルバイトから帰宅すると、ブーンはいつものように自室でギターを弾き始めた。
 一枚のルーズリーフとボールペンを用意し、頭の中に浮かぶイメージを音として感覚的に作り上げ、楽譜として具現化していく。
 
 
 内藤ホライゾン、通称ブーン。現在20歳のフリーター。
 将来の夢は「音楽界で生きていくこと」だ。
 
 
 
( ^ω^)「♪ふふんふんふん…」

( ^ω^)「…やっぱりこのAメロはC7からのがしっくりくるお」
 
 
 ピックを一旦手放し、ペンを握ってすらすらと音を綴る。
 そしてまたピックを取って、今綴ったイメージを再確認する。

3 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:13:36 ID:xjlGxIHwO
 
 ブーンはこの調子で作曲するのが趣味であり、生きがいであった。

 音楽というものはいつも純粋に、しかし厭らしく、全てを表現することができる。
 20年間生きてきて、ブーンが心から信じているのはただ一つ、「音楽」──ギターだけだった。
 
 
( ^ω^)「もっと優しくならないもんかお…ちょっとテンポ落としてみるかお」
 
 
 だから、自分の持つ夢には確信があった。
 音楽を信じているからこそ、音楽界ではやっていける。
 少なくとも今は、このギターが楽しくて愛しくて仕方がない。

4 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:14:00 ID:xjlGxIHwO
 
( ^ω^)「…お、良い感じだお!最初から流してみるお!」

( ^ω^)「♪ふふんふんふんふんふふーん」ジャンジャラランジャンジャラン
 
 
(*^ω^)「こいつぁ…来てるで…ワシの時代や……!」

(*^ω^)「…ん?」
 
 
 ふと、足元に目が行った。
 自分の足の裏が、小さい何かに触れた感覚がしたからだ。
 ブーンはそれを拾い上げ、まじまじと見つめた。
 
 
( ^ω^)「…なんだこれ」

 ギターのピックを大きくしたような、何やら変な物体だ。
 しかし、見覚えが無いわけではない…気がする。

5 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:15:38 ID:xjlGxIHwO
 
( ^ω^)「見たことあるようなないような…」

 何だかよくわからないが、とりあえずギターのピックに形は近い。
 なんとなく、ただなんとなく、ブーンはそれでギターを鳴らしてみた。

 その直後。
 
 
 
( ゚ω゚)
 
 
 
 世界が、変わった。

6 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:15:53 ID:xjlGxIHwO
 
 
 
 
( ^ω^)戦国を歩くギタリストのようです

7 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:18:21 ID:xjlGxIHwO
***
第一話 「時間越え」

***
 
 
( ゚ω゚)
 
 
 気がつくと、ブーンは青空の下、森の中に腰を下ろしていた。
 積もった枯れ葉の上には先ほどのルーズリーフとペン、膝の上にはギター、そしてピックと先ほどの変な物体。

 涼しい風が微かに流れ、木々の間から見える空はとても綺麗だ。

 …いや、そんなことより。
 
 
 
( ゚ω゚)
 
 
( ゚ω゚)「……………え」
 
 
(;゚ω゚)「えええええええええええ!!???」

(;゚ω゚)「えええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!??????」

(;゚ω゚)「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!????」

8 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:19:45 ID:xjlGxIHwO
 
(;゚ω゚)「いやいやいやいや!!!え、え!?え???」

(;゚ω゚)「え!ちょ、え、は!!?マジねーから!!ねーからこれマジでちょっと!!!!」

(´・ω・`)「おい、煩わしいぞ。何を喚いているのだ」

(;゚ω゚)「いやだって考えてみてくださいよ!!さっき私はバイト上がって夜に帰って自室でギター弾いてました!!!それが何!?何この青空!!わあ綺麗!!ここどこ!?」

(;゚ω゚)「てかお前誰!!!??何だよその剣豪みたいな格好!!今時アキバにもいねーよ!!」
 
 
(´・ω・`)(こいつ何を言ってるんだ?南蛮の言葉では無さそうだが…いや南蛮人がこんな所にいるはずないか…)

(´・ω・`)「まあ、俺の言葉がわかるのであれば、まず落ち着いて話し合おうではないか」

(;゚ω゚)「これが落ち着いていられますか奥さん!!!ああ待ってマジ頭が──」
(´・ω・`)「おい」
 
 
 
 シャリン、とテレビでしか聞いたことの無い音が聞こえた。
 ブーンの目の前に現れた、少しだけ年上に見える若い男は、素早く刀を抜いてブーンの喉元に突きつけた。

9 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:20:58 ID:xjlGxIHwO
 
(;゚ω゚)「…………!!」

(´・ω・`)「首が愛おしければ、まずはその煩い口を閉じろ」

(;゚ω゚)「……は、ははは、は、は、はい」
 
 
 なんだこれは。本物か?本物なのか?
 外国人達が大好きな、本物の、日本刀というやつですか?

(;゚ω゚)「あ、ああ、あの…」

(´・ω・`)「なんだ」

(;゚ω゚)「これ、本物ですか?」

(´・ω・`)「本物?この虎恍丸のことか?…こいつの贋があるなんて話は聞いたことないぞ」

(;゚ω゚)「えっと、じゃあやっぱりそれって人を斬れるんですか」

(´・ω・`)「さっきから何を言っているんだ、名刀虎恍丸を馬鹿にしているのか」

(;゚ω゚)「いいいやいやいや滅相もないです!」

(´・ω・`)「ふむ…」

10 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:22:14 ID:xjlGxIHwO
 
 ブーンに敵意が無いことを察し、男は刀を戻した。
 涙目のブーンに少し笑いかけながら「悪かったな」と呟く。
 
 
(´・ω・`)「幾らか聞きたいことがある。答えられるな?」
 
 顔を真っ青にしたまま、ブーンがコクコクと頷いた。
 その様子を確認し、男が続ける。

(´・ω・`)「うむ。では、お前の名前はなんだ」

(;゚ω゚)「内藤…内藤ホライゾンですお。ブーンと呼んでくださいお、へへへ」

(´・ω・`)「内藤ホライゾンブーン?変わった名だな」

(´・ω・`)「それでブーン、お前のその持ち物はなんだ。武器にしてはいびつだな…あとその変な衣は南蛮のものなのか?」

11 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:23:41 ID:xjlGxIHwO
 
 まったく状況が読めていないのは確かだが、とりあえずこの男の質問に正直に答えようと、まずは頭を落ち着かせた。
 何か変なことをすると、今度こそ殺される気がしたからだ。
 
 
(;^ω^)「えっと、このデカいのはギターという楽器です。このピックで弾くんですお」

(´・ω・`)「楽器?…やはりただの農民では無さそうだな。お前ほどの身分の奴が、どうして刀も持たずにこんなところを出歩いてるんだ」

(;^ω^)「へ、身分?」

(´・ω・`)「信じられんほどの無知無学だな…この時代にそこらの農民が琴を弾いてみろ、即晒し首だ」

(;^ω^)「な、なんでですかお!?そんな話どこの世界でも聞いたことないお!」

(´・ω・`)「芸能を嗜むというのは高貴なことなんだ。俺もこの制度には少し疑問があるが…少なくともこれは常識だ」

(;^ω^)「そんな…」
 
 
 そんなふざけた話があるだろうか。
 何の冗談か知らないが、この話にはちっとも納得いかない。
 ブーンは初めてこの男に対してまともに話しだした。

12 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:24:56 ID:xjlGxIHwO
 
(;^ω^)「そんなの絶対に間違ってますお!音楽や芸能というものは人間すべてが楽しめるもので、愛すべきものなんですお!その自由が身分ごときに縛られるなんて意味がわかりませんお!」

(´・ω・`)「ふむ…」
 
 
 この男からみれば、わけのわからない格好をした男が自分に対してまくし立てているような状態だ。
 しかし男は嫌な顔一つせず、ブーンの話を最後まで静かに聞いた。
 
 
(;^ω^)「はぁ…はぁ…」

(´・ω・`)「まあ、お前の言いたいことはわからんでもない」

(;^ω^)「だ、だお?」

(´・ω・`)「しかし自由と幸福は違う。仮に農民に音楽が許されたとして、農民は幸福を得られるのだろうか」

(;^ω^)「あ…」

(´・ω・`)「一つ二つの自由が許されたところで、彼らが農作業を強いられる現状は変わらない。そりゃ気は楽になるかもしれんがね」

(´・ω・`)「ところで、お前は音楽に相当惚れ込んでいるようだな。どれ、その"ぎたー"とやらを弾いてみてはくれないか」

13 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:26:01 ID:xjlGxIHwO
 
(;^ω^)「えっ…」

 
 男の提案は、あれほど熱弁したブーンの楽器の腕前を確かめたかったのもあるが、まずはブーンの愛する音楽で本人に落ち着いてもらおうと思ったからだ。
 ブーンの真正面にしゃがみこんで、男は完全に聴き手の側に回った。
 
 
(;^ω^)「えっと、何を弾けばいいのかな…」

(´・ω・`)「お前の好きにしてくれ」

(;^ω^)「わ、わかりましたお。じゃあさっき作曲したやつを」

(´・ω・`)「作曲?ほう、曲作りを手掛けるということか。聴かせてくれ」

(;^ω^)「わかりました…いきますお」
 
 
 ライブハウスでのライブよりも妙に緊張したが、ピックを摘むと自然に落ち着いていった。
 先ほど楽譜を書いていたルーズリーフを見ながら、ブーンは演奏を始めた。

14 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:27:09 ID:xjlGxIHwO
 
( ^ω^)♪〜♪♪〜

(´・ω・`)「……」
 
 
 落ち着いたテンポの、優しい音色が森中に響いていく。
 今回作った曲のイメージはこうだ。孤独な男が街の中をひたすら歩いている。その景色の一つ一つの優しさと、孤独な自分への嫌悪感で、男は悲しいような切ないような、胸が締め付けられるような想いに駆られていく。

 孤独で、優しくて、切ない音色が、森の中に鳴り響いていく。
 最後のゆっくりとしたF♯のアルペジオで、曲は終わった。
 
 
(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「…終わりですお」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「あのー…」

(´゚ω゚`)「素晴らしいッ!!!」

(;^ω^)「うおっ!?」

15 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:28:38 ID:xjlGxIHwO
 
 男は勢いよく立ち上がり、ブーン背中や肩をバシバシと叩いた。

(;^ω^)「ちょww痛いですお!」

(´゚ω゚`)「素晴らしい!素晴らしいじゃないかブーン!!まさか曲一つにここまで聴き入るとは…!」

(´゚ω゚`)「おい、今日は同じ宿に泊まってくれ!お前の演奏をもっと聴きたい!!」

(*^ω^)「えへへ、恐縮ですお…」

( ^ω^)「あ、でもブーンは家に帰らなければならないんですお…夕方からバイト入ってるし」

(´・ω・`)「そうか、残念だな…家はどこだ?送ってやるぞ」

( ^ω^)「僕の家は赤坂ですお。でもこんな森あったっけな…」

(´・ω・`)「赤坂?なんだそれは」

( ^ω^)「え?赤坂は東京の…」

(´・ω・`)「トーキョー?」

( ^ω^)「えっ」

(´・ω・`)「えっ」

16 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:29:57 ID:xjlGxIHwO
 
 二人の間に、妙な空気が流れる。
 
 
( ^ω^)「えっ、と…ここは日本ですおね」

(´・ω・`)「もちろんだ」

( ^ω^)「…この森はどこですかお?」

(´・ω・`)「どこって、二子堂城近郊の弧面十山だ」

( ^ω^)「二子堂城…」
 
 
 聞き覚えはある。二子堂城といえば、大戦前まで家の近くにあったらしい、元指定文化財の小さな城だ。
 ということは、この山を下れば家の近くにつくはずだ。
 
 
( ^ω^)「…あ、じゃあ家の近くですお。この山を下ったら街がありますかお?」

(´・ω・`)「ああ、静かな町があるぞ。ちょうど俺もそこに行くところだ、共に行こうじゃないか」

( ^ω^)「はいですお」

17 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:30:52 ID:xjlGxIHwO
 
 ブーンは紙とペンをジーンズのポケットにしまい、先ほどの変な物体とピックをギターに挟んだ。
 ギターのストラップを肩にかけていざ立ち上がろうと前を見ると、男が手を差し伸ばしていた。
 
 
(´・ω・`)「俺は太田渚本介(しょぼんのすけ)だ。宜しくな」

( ^ω^)「…よろしくですお」
 
 
 手を握り返し、勢いよく立ち上がる。

 渚本介はブーンのギターに興味津々で、歩きながらギターについての質問ばかりをブーンにぶつけた。
 何故か会話が噛み合わない時がいくつかあったが、それでもブーンは悪い気はせず、生き生きと答えていった。

18 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:32:13 ID:xjlGxIHwO
 
 そして、歩くこと約30分。
 森がだいぶ開けてきた頃、渚本介が前を指差した。
 
 
(´・ω・`)「見えてきたぞ、あれが二子堂城の城下町だ」

( ^ω^)「へーあれが……」

( ^ω^)「……え?」
 
 
 二人の目の前に広がっているのは、静かな城下町だった。
 ブーンにとってはテレビでしか見たことないような、何百年か前の日本の木造の家や店が並んでいる。
 そして道行く人々の格好。まさに大河ドラマで何度も見たそれだ。
 
 
(´・ω・`)「ふむ、思っていたよりは賑わいのある町だな」

( ゚ω゚)

19 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:34:06 ID:xjlGxIHwO
 
 ここが赤坂?いやいやいやそんなわけがない。
 ほら、だってこの町の向こうにはビルが……
 
( ゚ω゚)「無い」

(´・ω・`)「え?」
 
 無い。何も無い。
 見渡す限り、森と山しかない。

 
( ゚ω゚)
 
 まさかとは思っていた。しかしそんなはずが無いから何度も払拭していた。
 しかし、もはやそれ以外に考えられない。
 
 内藤ホライゾン、20歳、フリーター。
 彼は突然。
 

(;゚ω゚)「……過去の日本にきちゃったああああああ!!!???」

(;´・ω・`)「!?」
 
 タイムスリップしてしまったようだ。
 明応五年。1496年の日本へと。
 
 
第一話 終

20 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:36:51 ID:xjlGxIHwO
***
第二話 「二子厨の庄と銭」

***
 
 
 またも取り乱し始めたブーンを、渚本介が落ち着かせた。

 とりあえずは宿だ、宿を探して話を整理しよう。ということで、二人は城下町に降りた。
 渚本介の話によると、この町は二子厨の庄と呼ばれており、二子堂城にはその二子厨一族の頭(かしら)が住んでいるらしい。
 小さな庄で人は少ないが、景気のいい町としてこの近辺では有名な土地らしい。
 
 
(;^ω^)「……」

<南蛮人かしら… ヒソヒソ

<きっとそうよ…あんな妙な衣は見たことないわ… ヒソヒソ

(;^ω^)「……」

<なんだぁ?あいつが持ってるあの道具は

<シッ!声がでけぇよ!ありゃ南蛮の農具だろうよ… ヒソヒソ

21 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:37:43 ID:xjlGxIHwO
 
 ずんずんと進んでいく渚本介と、その後ろをコソコソ歩くブーン。
 しかし、町の人間は皆ブーンという奇妙な人間に注目していた。
 それが恥ずかしいやら腹立たしいやらで、ブーンは顔を下に向けながら歩き続けた。
 
 
(;^ω^)(ギターを農具だと…包茎共め)

(´・ω・`)「どうした?」

(;^ω^)「い、いえ何も」

(´・ω・`)「ふむ、着いたぞ。ここが宿場だな」

( ^ω^)「お?」
 
 
 渚本介が向いている先を見上げると、そこには周りに比べて少し大きな、二階建ての家があった。
 入り口には三十路に達したばかりのような、若い男が座っている。

22 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:39:10 ID:xjlGxIHwO
 
(´・ω・`)「ご主人、一部屋貸してくれんかね」

( ゚∀゚)「あいよ。そっちの南蛮人は…まいいや、一部屋五百文で」

(´・ω・`)「おいおい、高すぎやしないか」

( ゚∀゚)「わりぃが旦那、ここは宿場町ではないんでね。実のところこれでもウチは危ねぇんだ」
 
 
 まいったな、と渚本介が呟き、懐から小銭入れを取り出す。
 すると、何かに気付くように顔を上げ、突然ブーンの方を向いた。
 
 
(´・ω・`)「そういえばブーン、お前は銭を持ってるのか」

(;^ω^)「え?ああはい…」
 
 
 間違いなくブーンのいた時代とは違うお金が流通している。しかしブーンは反射的にジーンズから財布を取り出した。
 財布の中身を確かめるブーンを、渚本介と宿屋の主人が不思議そうに見つめる。
 
 
(;^ω^)(マジかよ…469円て……)

(;^ω^)(…あ、そうだ)

(;^ω^)「ご主人、五百文は無いけど、変わりにいいものがあるお」

( ゚∀゚)「あん?」

23 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:40:21 ID:xjlGxIHwO
 
(;^ω^)「これだお」
 
 ブーンは財布の中から五円玉を1枚取り出し、主人に渡した。
 
 
(;^ω^)「これは金を細かく加工したものだお」

(;゚∀゚)「き、金!?」

(;´・ω・`)「なんと…」

(;^ω^)「こいつ一枚で二貫文の価値があるお。どうかこれで泊めてほしいお」
 
 
 高校のときの日本史の授業で、お金に関する勉強を少しだけやった覚えがあった。
 確か、一貫文が1000文で、一両は四貫文だったか。

 つまり、ブーンは五円玉で四部屋分の価値があることにしようとしているのだ。
 心臓が激しく動くブーンの目の前で、主人が目を輝かせて五円玉を見つめている。

24 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:41:26 ID:xjlGxIHwO
 
 もともと嘘をつくのが大の苦手だったブーン。
 上手くいってくれ、と心の中で手を合わせる。
 
 
(;゚∀゚)「………おい…」

(;^ω^)「はい…」

(;゚∀゚)「おい、おま、これ」

(;^ω^)「……はい…」

(*゚∀゚)「ほ、本当に貰っていいのか!?」

(;^ω^)「!」

( ^ω^)「もちろんですお!」

(*゚∀゚)「いやっほぅ!!好きな部屋に泊まってくれ!酒もつけてやる!!」

( ^ω^)「ありがとうございますお!」

(;´・ω・`)「ブーン…お前は何者なんだ……」

(*゚∀゚)「ささ、部屋は二階だ!上がってくれ!」
 
 
 
──

25 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:44:14 ID:xjlGxIHwO
──
 
 上手くいくもんだな、という感想と、主人への罪悪感とで、ブーンは複雑な表情を浮かべていた。
 部屋を選び、ようやく腰を下ろしたというところで、まずは渚本介が口を開いた。
 
 
(´・ω・`)「ブーン、改めて聞きたいんだが」

( ^ω^)「なんですかお?」

(´・ω・`)「お前は一体、何者なんだ?どこから来た?」
 
 真っ直ぐにブーンの目を見つめる渚本介。
 先程よりは随分と落ち着いたブーンが、それに答えた。
 
( ^ω^)「とりあえず僕が今わかってることをお話しますお…信じてくれますかお?」

(´・ω・`)「ああ、言ってくれ」
 
 
 空気が張り詰めていく。
 渚本介が唾を飲み込み、ブーンが話し始めた。
 
( ^ω^)「僕は…未来の日本から来たんですお」

(´・ω・`)「………」

(;´・ω・`)「…えっ」

( ^ω^)「たぶん、四百年か五百年くらい先の日本からですお」

26 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:45:43 ID:xjlGxIHwO
 
(;´・ω・`)「…本当か?」

( ^ω^)「僕も未だに信じられませんお…でも確かなんですお」

(;´・ω・`)「ううむ…」
 
 
 事実を知って、今度は渚本介の方が狼狽する番だった。
 渚本介は暫く考えるように黙りこむと、ブーンの格好や持ち物をまじまじと見始めた。
 
 
(;´・ω・`)「…お前は、何か目的があってこの時代に来たのか?」

(;^ω^)「い、いや何もないですお。ギター弾いてたら突然、こんなところに飛ばされたんですお」

(´・ω・`)「………」

(´・ω・`)「…わかった、信じよう」

( ^ω^)「!」

27 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:46:15 ID:xjlGxIHwO
 
( ^ω^)「本当ですかお!?」

(´・ω・`)「ああ、お前の目を見ればわかる。さっきみたいに嘘をつく時の目じゃない」

(;^ω^)「あ…バレてたんですかお」

(´・ω・`)「当たり前だ。お前は嘘をつくのが苦手なようだな。思わず驚いたフリをしてしまった」

( ^ω^)「へへ、ありがとうございますお」

(´・ω・`)「ははは、もう少し嘘をつくのを上手にしろよ」

( ^ω^)「ごもっともですお」
 
 
 二人が出会って数時間。
 ようやく、心から打ち解けて、笑い合えた。
 ブーンにとっては、これ以上ないくらい幸せな出来事だった。

28 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:48:10 ID:xjlGxIHwO
 
(´・ω・`)「ところでブーン」

( ^ω^)「なんですかお?」

(´・ω・`)「ぎたーに挟んでるそれ…一体なんだ?」
 
 渚本介が指したのは、この時代に飛ばされる前に自室で拾った変な物体だった。

( ^ω^)「ああこれ……」

( ゚ω゚)「ああああ!!」

(;´・ω・`)「うわっ、今度はなんだ」
 
 
 なんということだ、すっかり忘れていた。
 何も焦ることはないじゃないか。どうして、今まで考えつかなかったのだろう。
 
 
( ^ω^)「思い出しましたお!!僕はこれでギターを鳴らしたら、この時代に飛ばされたんですお!」

(´・ω・`)「おお、ということは」

( ^ω^)「もっかい鳴らせば、元の時代に帰れるかも!」

29 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:50:10 ID:xjlGxIHwO
 
 そう、ブーンがタイムスリップした原因は、紛れもなくこの物体のせいだ。
 これでギターを鳴らした途端、ブーンはこの時代に飛ばされたのだ。
 ブーンは急いでギターを手に取り、膝の上に構えた。

( ^ω^)「それでは渚本介さん、短い間だったけど楽しかったですお。ありがとうございました」

(´・ω・`)「ああ、達者でな…」

( ^ω^)「ていっ!」
 
 ブーンは渚本介に挨拶を済ませ、躊躇いなくギターを鳴らした。
 
 
( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「……」
 
 
 不細工な音が、部屋の中に鳴り響いた。
 
 
(;´・ω・`)「……達者に生きような」

(;^ω^)「…そうですね……ハハ…」

( ;ω;)「僕はどうすりゃいいんだおおおおお!!!」

(;´・ω・`)「な、泣くな!必ず何か方法はあるはずだ!」

30 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:51:33 ID:xjlGxIHwO
 
( ゚∀゚)「旦那方、夕飯でっせ!酒も…」

(;゚∀゚)「…ってどうしたんだ」

(;´・ω・`)「あ、いや気にするな…飯はそこに置いてくれ」

( ;ω;)「おーんおーん」

(;゚∀゚)「ああ、まあ酒飲んで元気になってくれよな」
 
 
 主人は部屋の入り口に膳と酒を置くと、そそくさと帰っていった。
 ブーンが号泣する理由に首を突っ込まないでいてくれたのはありがたいが、これはしばらく収まりそうにない。
 
 
(;´・ω・`)「まいったな…とりあえず飯を食おう。腹が空いてるから涙も出るもんだ」

( ;ω;)「わ、わかったお…いただきますお…」
 
 
 主人が用意してくれた夕飯に、ブーンが手をつけ始めた。
 しかし、渚本介は箸を取って膳を見つめたまま動かない。

31 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:53:03 ID:xjlGxIHwO
 
 まるで、何か深いところにあるものを探すような。
 重く澄んだ目で夕飯を見つめる。
 
 
( ;ω;)「渚本介さん…?」

(´・ω・`)「…ん?」

 ハッと我に帰る。
 目の前には、涙と鼻水を流しながら夕飯を頬張るブーンが、不思議そうにこっちを見ていた。
 
 
(´・ω・`)「…ああ、じゃあ俺も頂こうかな」

( ;ω;)「お、美味しいですおこれうふぐうっ」

(;´・ω・`)「無理に喋らなくていいぞ」
 
 
 
──

32 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:54:21 ID:xjlGxIHwO
──
 
 
 夜。
 酒も飲み干し、主人が膳を片付けたところで、渚本介はブーンに話しかけた。
 
 
(´・ω・`)「なあ、さっきお前がぎたーを鳴らしたあの物体、もう一度見せてはくれないか」

(*^ω^)「うーい…はいですお〜」
 
 
 顔を赤くしてニヤニヤしているブーンは、その物体を渚本介に手渡した。
 
 
(´・ω・`)「これは…琴爪か?」

(*^ω^)「なんですかお〜?」

(´・ω・`)「ブーン、これは琴爪だ。琴を弾く際に指に付けるものだ」

(*^ω^)「え〜?僕は琴を弾いたことないのに、なんで部屋にあったんですかお〜」

(´・ω・`)「随分と酒が弱いんだな…ん?」

33 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:55:35 ID:xjlGxIHwO
 
 よく見ると、琴爪には小さく文字が刻まれていた。
 目を細めながら、渚本介がそれを読み上げる。
 
 
(´・ω・`)「ええと…"尾付家出麗琴爪"…」

(;´・ω・`)「な…じゃああの琴の名手、尾付の出麗のものなのか?」

(;´・ω・`)「おいブーン、大変なことに…」

(*ーωー)スピー

(´・ω・`)「……まあいいか」
 
 
 渚本介はギターに琴爪を挟むと、今度は自らの刀を手にした。

 静かな夜の町、物音一つしないこの宿屋。
 寝息を立てるブーンを見下ろし、刀の柄に触れた。

(´・ω・`)「…そろそろだな」
 
 
 
──

34 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:57:13 ID:xjlGxIHwO
──
 
 
 月が上ってどれだけの時間が経っただろうか。
 今は、この町にいる人間は全て眠りについている頃だろう。
 ただ一人、この男を除いて。
 
 
( ゚∀゚)「……」
 
 
 一切の物音も立てず、一切の気配も見せず、宿屋の主人は階段を上っていく。
 目指すは、ブーンと渚本介の寝ている部屋。

 静かに、ゆっくりと襖を開ける。
 部屋の中に入ると、そこは予想通りの光景だった。二人の客人が、酒の臭いを散らしながら寝ている姿がある。

35 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:58:22 ID:xjlGxIHwO
 
 主人はブーンのもとへ忍び寄ると、懐から包丁を取り出した。
 
 
( ゚∀゚)「……わりぃね旦那…死んでもらうぜ」

(´・ω・`)「そうはいかん」

(;゚∀゚)「──!?」
(´・ω・`)「ふんっ!!」
 
 
 突如、主人は寝ていたはずの渚本介に脇腹を蹴られた。
 壁まで吹っ飛ばされ、鈍い音が辺りに響く。

(;゚∀゚)「かはっ…」

( ^ωー)「うーんあと5分…」

(;^ω^)「ってあれ?何!?なんだお!?」

(´・ω・`)「ブーン、下がってろ」
 
 
 刀を構え、落ち着いた目で主人を見つめる渚本介。
 わけのわからないまま、ブーンは這うように渚本介の後ろへ隠れた。

36 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 20:59:48 ID:xjlGxIHwO
 
 渚本介の目線の先で、主人がよろけながら立ち上がった。
 
 
(;゚∀゚)「き、貴様…何故……」

(´・ω・`)「最初からわかってた。お前がブーンの銭を偽物だと判断していたのもな」

(;^ω^)「!!」

(;゚∀゚)「……」

(´・ω・`)「お前はあれが偽物だと判断した上で、騙された振りをしていた。何故ならブーンを殺し、珍しい持ち物を全て奪い取る為だ」

(´・ω・`)「だからわざわざ酒も付けたのだろう?俺達を深く眠りにつかせておく為に」

(;^ω^)「ま、マジかお…」
 
 
 信じられなかった。
 人の良いこの主人が、まさか自分を殺そうとしていたのか。

 冗談であってほしい。しかし、主人は二人から目を逸らしたまま、冷や汗をかいている。

37 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 21:01:10 ID:xjlGxIHwO
 
(;゚∀゚)「う、うるせェ!!銭が欲しくて何がわりぃんだ!」

(;^ω^)「……」

(´・ω・`)「一体何のわけがあって、お前はこんなことをしようと思ったんだ」
 
 
 刀を向けながらも、優しい声で尋ねる渚本介。
 その口調に流されたのか。主人は、無気力な口で語り始めた。
 
 
(;゚∀゚)「…俺、小っせえ頃におっ母が死んじまって、ずっとおっ父とこの宿屋で食っていたんだ」

(; ∀ )「でも…そのうちおっ父が病気で倒れちまって…」

(  ∀ )「貧乏だったからさ…薬師に見せるどころか、薬を買う銭すら無くて……そのまま…」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「……」

38 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 21:02:26 ID:xjlGxIHwO
 
(  ∀ )「…後になって向かいの婆さんから聞いたんだ。おっ母が死んだ時も、おっ父が少ない銭持ってそこら中の薬師の家を回って、バカみたいに頭下げて…でも、やっぱり薬すら買えなくて…」

( ;∀;)「…俺、気付いたんだ。世の中銭だ。相当の銭さえ持ってりゃ何でも買えるし、何も無くさねぇで済む」

( ;∀;)「だから…だから……」
 
 
 ぼろぼろと涙を流し、崩れる主人。
 二人は口を開かないまま、泣き崩れる目の前の男を見ていた。

 しかし、それは思いのほか長くは続かなかった。
 渚本介が、刀を向けたまま主人へと歩き出したのだ。

39 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 21:05:15 ID:xjlGxIHwO
 
 ブーンが慌てて渚本介の前に割って入る。

(;^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくださいお渚本介さん!何する気ですかお!!」

(´・ω・`)「こいつは人に刃を向けた、立派な罪人だ。同情してはいけない」

(  ∀ )「……」

(;^ω^)「だ、だからって殺すことないですお!結局この人は何もしてないんだから!」

(´・ω・`)「何言ってるんだ。お前は自分を殺しかけた男に何も感じないのか」

(;^ω^)「そりゃ感じますお!でも…」
 
 目を合わせて固まる、ブーンと渚本介。
 渚本介はため息を一つつくと、観念したように刀を鞘に戻した。
 

(;^ω^)「良かった……ありがとうございますお」

(´・ω・`)「まあいいだろう。しかしブーン、頼みがあるんだ」

( ^ω^)「なんですかお?」
 
 主人とは少し離れた位置に座り、ブーンを見据える渚本介。
 渚本介の意思が、何となくブーンに伝わった。
 
 
(´・ω・`)「ぎたーを弾いてくれ。曲は任せる」

40 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 21:06:46 ID:xjlGxIHwO
 
( ^ω^)「わかりましたお」

(  ∀ )「……?」
 
 
 ギターを取り、二人の前に座り込むブーン。
 何が始まるんだ、という顔を向ける主人の方を向き、ブーンはギターを構えた。
 
 
( ^ω^)「では行きますお」
 
 
 ピックを持たず、指を弦に置く。
 そのままゆっくりと演奏が始まった。

 曲はアンドレ・ギャニオンの「愛につつまれて」をギターアレンジしたもの。
 優しく、しかし気高い曲調が、部屋の中を流れる。
 
 
(´・ω・`)「……」

( ;∀;)「あ…あぁ……」
 
 
 静かな夜の町に、ギターの音色と主人の嗚咽が、小さく響いた。
 
 
 
──

41 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 21:08:21 ID:xjlGxIHwO
──
 
 
 明くる朝。
 主人が二人の部屋のもとに、朝食を持って上がってきた。
 
 
(;゚∀゚)「旦那方、朝食でございやす……それと、昨晩はたいへん申し訳ございませんでした」

 来て早々、深く土下座をする主人。
 そんな主人に、ブーンは笑いかけた。
 
 
( ^ω^)「おっお、顔を上げてくれお。もう気にしてないお。ねえ渚本介さん」

(´・ω・`)「ああ。昨日のことは忘れよう」

(;゚∀゚)「本当に申し訳ない…失礼いたしやす」
 
 
 主人はまた深々と頭を下げると、小さく階段を下りていった。

 随分と気持ちのいい朝だ。
 既に町は賑わいを見せている。

42 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 21:09:49 ID:xjlGxIHwO
 
(´・ω・`)「さ、飯を食おう。準備が出来たら行くぞ」

( ^ω^)「え?どこにですかお?」

(´・ω・`)「二子堂城さ。俺はそこに用がある。お前もここに止まるだけじゃ、元の時代に帰る手掛かりは見つからないと思うぞ」
 
 
 確かに、ここにとどまっていても何も進歩はない。
 ブーンは少し考えると、渚本介の方に顔を向け、笑顔を見せた。
 
 
( ^ω^)「お供しますお。渚本介さん」

(´・ω・`)「はは、よろしくな」
 
 
 渚本介と旅をしながら、元の時代に戻る方法を探す。
 悪くないな、と心の中で呟いた。
 窓から見える空は、昨日よりも青く澄んでいた。
 
 
 
──

43 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 21:10:58 ID:xjlGxIHwO
 
──
 
 
( ゚∀゚)「お代のほうは入りません。どうも、ありがとうございました」
 
 
 宿屋の入り口で、深く頭を下げる主人。
 道行く人々がブーンと主人を怪訝な顔で見ているが、もう気にならなかった。
 
 
( ^ω^)「あ、そうだご主人。これをあげるお」

( ゚∀゚)「?」
 
 
 ブーンはジーンズのポケットを漁ると、ボールペンを取り出した。
 困惑する主人に、それを手渡す。
 
 
(;゚∀゚)「旦那様、これは…?」

( ^ω^)「これはペンといって、南蛮の筆みたいなもんだお」

( ^ω^)「売りに出したら高くつくはずだお。だから…」

44 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 21:12:23 ID:xjlGxIHwO
 
 ブーンの後ろで、渚本介が小さく笑った。
 
 
( ^ω^)「…だから、誰か大切な人を助けたいとき、これを売るといいお。もう後悔なんてしないでくれお」

(;゚∀゚)「そ、そんな!こんな大事なもの…」

( ^ω^)「いいんだお、受け取ってくれお。じゃあご主人、お元気で」

(;゚∀゚)「あ…」
 
 
 返す間もなく、渚本介と去っていくブーン。
 ぎこちなくボールペンを握りしめ、主人はその後ろ姿にもう一度頭を下げた。
 
 
(  ∀ )「ありがとうございます……ありがとうございます…」

(  ∀ )「………」
 
 
 二人の姿が見えなくなると、主人はようやく顔をあげ、入り口へと戻った。

 いくら袖で拭いても、頬を流れる涙は、一向に止まろうとしなかった。
 
 
 
第二話 終

45 ◆vVv3HGufzo :2011/02/20(日) 21:14:24 ID:xjlGxIHwO
今回の投下はこれで終わりです
音楽祭投稿作品ではないのですが、せっかくなのでこのタイミングで投下させていただきました
てへ☆

46 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/20(日) 21:26:27 ID:V9wvEjDs0
乙乙 続きを期待している兄弟

47 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/20(日) 21:51:33 ID:JFi0YMIY0

次回に期待

48 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/20(日) 22:21:38 ID:ihJ43xzM0

なかなか新しいな

49 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/20(日) 22:58:26 ID:QbyKnqW60
ボキャ貧なので面白いとしか言えないのが残念んんん

50 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/21(月) 05:28:49 ID:CVu/iq0w0
乙だが、弦が切れたりしたらどうするの

51 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/21(月) 10:59:24 ID:vnzidJTs0
>>50
鯨のヒゲとか使うんじゃあないのか

52 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/21(月) 11:02:03 ID:ugINp2FI0
戦国エアギターのはじまりである

53 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 01:55:35 ID:a4mOl5pAO
皆さんありがとうございます!
やはりレスがあると嬉しいですな

>>50
弦が切れる?
ハハ、僕のギターは今んとこ3ヶ月くらい持ってますよ
だから大丈夫でしょう
ハハ…


…それでは投下します

54 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 01:58:40 ID:a4mOl5pAO
***
第三話 「歴史は何も裏切らない」

***
 

( ^ω^)「尾付の出麗?」

(´・ω・`)「ああ、その琴爪にはそう書いてある。当人に会えば元の時代へ戻る方法がわかるかもな」

( ^ω^)「なるほど…ちなみにこの人はどこにいるんですかお?」

(´・ω・`)「尾付家は代々、二茶根瑠一族の近習を務めている。根十城にいるはずだ」

( ^ω^)「あ、聞いたことあるかも二茶根瑠」 
 
 二子厨の庄から離れ、山道を上っている二人。

 渚本介が昨晩見つけた琴爪の名前の話をすると、ブーン水を得た魚のようにその話に飛びついてきた。
 しかし。
 
 
(;^ω^)「渚本介さん、嫌な予感がするんですけど」

(´・ω・`)「なんだ」

(;^ω^)「根十城って…めちゃくちゃ遠くないですかお…」

55 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 01:59:34 ID:a4mOl5pAO
 
 これでも日本史は得意だったので、何となく頭の中には入っている。
 根十城は、現在の静岡県と愛知県の間あたりにある大きな城だ。
 現代でもその形は残されており、指定文化財として観光名所となっている。
 
 
(´・ω・`)「そうだな。かなり時間はかかるぞ」

( ´ω`)「こりゃ無いお…」

(´・ω・`)「ははは、元気出せ。ほら、二子堂城が見えてきたぞ」

( ^ω^)「おっ?」
 
 
 山道の先に見えてきたのは、復興修理がなされた現代の城とは違い、かなり威圧感のあるものだった。
 歴史があるものなのに歴史を感じない。
 言葉でどう表現すればいいのかわからないほど、その城は威風堂々としていた。

56 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:00:36 ID:a4mOl5pAO
 
( ^ω^)「すげえお…」

(´・ω・`)「さ、行くぞ」

( ^ω^)「はいお。てゆうか渚本介さんはこの城に何の用があるんですかお?」

(´・ω・`)「ん、ちょっとした小用だ。すぐに終わるさ」

( ^ω^)「なるへそ…」
 
 
 城の目の前まで歩くと、城を囲むように流れる川と大きな架け橋が目に止まった。

 簡単に攻め入られないように、城の周りには堀を作ることが多い。
 この戦術的な建築アイディアは意外と世界共通で、外国の城にもこういった堀のあるものは数多く存在している。

57 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:01:08 ID:a4mOl5pAO
 
 教科書の中身だけであった「歴史」が目の前にあることに感動し、ブーンは暫し見とれていた。

(´・ω・`)「おい、いつまで見とれてるんだ。未来の日本に城はないのか?」

( ^ω^)「いやあるっちゃありますけど、今やただの見せ物ですお」

(´・ω・`)「そうなのか…悲しいもんだな」
 
 
 目に見えるもの全てにいちいち感動するブーンと、何食わぬ顔で歩く渚本介。
 架け橋を渡り、さらに城へ近付くと、立派な門の前に歩き着いた。
 途端、門番らしき二人の男が、ブーンと渚本介に近づいてきた。
 
 
("`Д´)「止まれ。何だお前、南蛮人か?」

(`∞´/)「入城許可証を見せろ」

( ^ω^)(どう見ても日本人だろjk…)

(´・ω・`)「ほら、確認してくれ」

58 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:02:16 ID:a4mOl5pAO
 
 渚本介は懐から綺麗に畳まれた文書を出し、門番に見せた。
 直後、門番の二人は驚いた顔で文書と渚本介を交互に見始めた。
 
 
(";`Д´)「太田渚本介…!?」

(`∞´;/)「お前、死んだはずじゃ…」

(´・ω・`)「もういいだろ?長話はしたくない」

(;^ω^)「……」
 
 
 死んだはず、なんて言葉が聞こえた気がしないでもないが、とりあえずブーンは黙っておくことにした。
 渚本介は門番から文書を取り上げると、ブーンに声をかけて門をくぐった。
 慌ててブーンも渚本介の後に続く。
 
 
(";`Д´)「なんてこった…奴は生きてたのか」

(`∞´;/)「野郎、まさかこの城を…」

(";`Д´)「そんなはずが無いだろう!…一応、隊長に言っておくか」
 
 
 
──

59 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:03:43 ID:a4mOl5pAO
──
 
 
(*^ω^)「おお…!」

 初めて体感する、"本物"の城。
 ブーンは興奮のあまり鼻息が荒くなった。ちょっと鼻水が出た。

(;´・ω・`)「落ち着けブーン。奇妙な顔になってるぞ」

(;^ω^)「あ、すいませんお…」
 
 
 何度も折り返されている階段を上り、二人は最上階に着いた。

 最上階は、階段から少し廊下が続き、その先に大きな襖の扉が一つあるだけだった。
 運動が続いたせいで呼吸が整わないブーン。その目の前で、涼しい顔の渚本介が扉へと進んでいく。
 ブーンはまたも慌ててその後を追った。

60 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:03:59 ID:a4mOl5pAO
 
(´・ω・`)「失礼致す」

(;^ω^)「あっ…僕も失礼しまーす…」
 
 
 一声かけて、渚本介は少し乱暴に扉を開けた。

 扉の向こうには、大きな和室が広がっていた。
 その奥に、何やら筆で字を書いている初老の男が一人。
 
 
ミ,,゚Д゚彡「…来たか」

 男は筆を止め、紙の傍に丁寧に置きながら、顔を上げた。
 威厳のある顔が、二人を向く。
 
 
ミ,,゚Д゚彡「いつかは来ると思っていた。久しいな、太田渚本介……して、その南蛮人は?」

( ^ω^)(もういいや南蛮人で…)

(´・ω・`)「こいつは俺の相棒だ。俺が何の用で此処まで来たのか、わかっているのか?」

61 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:05:12 ID:a4mOl5pAO
 
ミ,,゚Д゚彡「わかっておる。しかし、貴様の目的は儂ではない」

(´・ω・`)「なんだと?」

ミ,,゚Д゚彡「全ては儂の弟、天野擬古成(ぎこなり)の仕業だ」

(´・ω・`)「"剛拳の擬古"…」

(;^ω^)(え?何?何の話?)

(´・ω・`)「奴は今何処に?」

ミ,,゚Д゚彡「丹生捉城だ。しかし先日、妙な情報が届いた」

(´・ω・`)「妙な情報?」

ミ,,゚Д゚彡「擬古成の奴が、根十城攻めを企んでおる」

(´・ω・`)(;^ω^)「!!」

ミ,,゚Д゚彡「あの根十城が落とされては二子厨の庄の安全も危ない。奴はここら一帯を統治する気だ」
 
 
 一旦言葉を切ると、男は小姓を呼び、茶の用意を命じた。
 小姓が茶の用意に部屋を出ると、座ったらどうだ、と自ら座布団を用意してくれた。

62 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:06:33 ID:a4mOl5pAO
 
(´・ω・`)「お人好しは相変わらずか」

ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、そう言いなさんな」

(´・ω・`)「では言葉に甘えて」

( ^ω^)「失礼しますお」

ミ,,゚Д゚彡「ん?南蛮人なのに言葉が通じるのか」

( ^ω^)「はい、話す程度ならできますお(はっ倒すぞジジイ)」

( ��)「房擬古様、茶を持って参りました」

ミ,,゚Д゚彡「うむ、儂とこの二人の分を頼む」

( ��)「はっ」

( ^ω^)(すげえ…本当に"はっ"て言うんだ)
 
 
 小姓が慣れた手つきで茶を淹れると、わざわざ小さな膳を用意し、三人の前に置いた。
 その上に茶を置くと、小姓はそそくさと退いていった。

63 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:07:27 ID:a4mOl5pAO
 
 房擬古は少し茶をすすると、話を続けた。

ミ,,゚Д゚彡「して、渚本介。貴様はやはり擬古成を追うのか」

(´・ω・`)「当然」

ミ,,゚Д゚彡「…なれば、儂が力を貸そう」
 
 
 渚本介が少し驚いたような目で房擬古を見た。
 しかし、房擬古の表情は至って真剣だ。
 
 
(´・ω・`)「…何故に?」

ミ,,゚Д゚彡「奴は強引なまでに天下統一を進めておる。もはや奴は只の暴将、手に負えん」

ミ,,゚Д゚彡「奴を止めて欲しいのだ渚本介。これからの平和の為にも」

ミ,,゚Д゚彡「これはお前にしか頼めん事だ。お前の旅にもちょうど都合がいいだろう。どうか聞き入れてくれ、"戦魔"よ」

( ^ω^)(せんま?)

(´・ω・`)「…くだらん名を……わかった、助力を頼む」

64 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:08:37 ID:a4mOl5pAO
 
 房擬古は口の端で笑い、また茶をすすった。
 しかし、房擬古の穏やかな雰囲気とは違い、渚本介は張り詰めた顔で房擬古を見ている。
 ブーンはただ二人のやりとりを見ているしかなかった。
 
 
ミ,,゚Д゚彡「城の守衛以外の兵を全員出そう。と言っても、数にして二百ほどしかおらぬが…」

(´・ω・`)「兵は結構だ。俺は兵力戦がしたいわけではない」

(´・ω・`)「俺が力添え願いたいのは二つ。旅の間にも腐れぬ食料と…」

 渚本介はブーンの方をちらりと見て、小さく笑った。
 
 
(´・ω・`)「こいつのぎたーが収まる荷袋がほしい」

ミ,,゚Д゚彡「ぎたー?」
 
 
 
──

65 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:09:45 ID:a4mOl5pAO
──
 
 
(*^ω^)「ハフッ、ハフッ」

ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、ブーンは胃が大きいようだの」

(*^ω^)「だってすごく美味しいですお!城の料理わぅふぐっつ」

(;´・ω・`)「だからあまり無理に食うな」

ミ,,^Д^彡「ハッハッハ!」
 
 
 夜。
 大勢の小姓達が周りを囲むなか、三人は接客用の高級料理を食していた。
 擬古成の根十城攻めまではまだ時間がある。一晩泊まっていけという房擬古の好意に、二人は甘えることにした。

66 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:10:21 ID:a4mOl5pAO
 
( ��)「房擬古様。お二人方の旅の食料と、ぎ…ぎたー…?の荷袋の用意が済みました」

ミ,,゚Д゚彡「そうか、ご苦労だったな」

( ^ω^)「ありがとうございますお」

ミ,,゚Д゚彡「なーに、儂には何でも気軽に申してよい」

( ^ω^)「房擬古様は本当にお人好しなんですおね」

(´・ω・`)「一城の主がそんなんで大丈夫なのか」

ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、儂はこれくらいしか取り柄の無い人間での」

( ^ω^)「いやそんなことないですおマジで!」

ミ,,゚Д゚彡「マジ?なんだそれは」

(;^ω^)「あっ…僕の国の言葉ですお。すみませんお」

ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、そうかそうか」
 
 
 
──

67 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:11:31 ID:a4mOl5pAO
──
 
 
("`Д´)「あー…交代はまだかよチクショウ」

(`∞´/)「さっさと戻って晩酌でもしたいもんだぜ」

("`Д´)「まったくだ」
 
 
 ブーン達が料理を食べ終えた頃。
 門番の二人は、きちんと持ち場に立ったまま雑談をしていた。

 二人の立つ門を、月明かりが強く照らしている。
 門の前には架け橋、その向こうには暗い森。

 突然、その暗い森の中から、まるで浮き出てくるように一人の男が歩いてきた。
 
 
("`Д´)「おい…」

(`∞´/)「ああ。橋には近づけずにな」
 
 
 二人はそれぞれ槍を手にし、架け橋の向こうまで歩いた。
 歩いてくる男は動じる様子もなく、淡々と進んでくる。

68 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:12:40 ID:a4mOl5pAO
 
 二人が橋を渡りきったとき、ちょうど男が二人の目の前で止まった。
 
 
("`Д´)「おい、こんな夜分に何の用だ」

(`∞´/)「入城許可証を見せろ」

( ゚ ゚)「……」
 
 
 暗くてわからなかったが、よく見ると、男は顔を布で隠していた。
 返答も無い怪しい男に、二人は槍を向ける。
 
 
("`Д´)「入城許可証はどうした!さっさと出さないと引っ立てるぞ」

( ゚ ゚)「………だ」

(`∞´/)「あ?」
 
 
 顔を隠していた布を取り、冷たい目で二人を睨む。
 
 
(,,゚Д゚)「邪魔だっつってんだよ」

69 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:12:57 ID:a4mOl5pAO
 
 途端、男は向けられた二つの槍を、片手で一本ずつ掴んだ。

(`∞´;/)「!?…な、動かん…?」

(";`Д´)「クソ、離せ!」

(,,゚Д゚)「……」
 
 
 屈強な門番の持つ槍が、片手で封じられている。
 掴まれた槍は、いくら動かそうとしても微動だにしない。
 
 
(";`Д´)「貴様…まさか…!」

(`∞´;/)「"剛拳"…!?」

(,,゚Д゚)「ご名答だ」
 
 
 バキン、という鈍い音が辺りに響いた。
 男が掴んでいた槍の柄が折れてしまったのだ。
 男は折れた刃先を素早く指の間に挟み、門番の二人の喉を貫いた。

70 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:14:46 ID:a4mOl5pAO
 
 血を吹かせながら、静かに崩れ落ちる門番の二人。

(,,゚Д゚)「一城の門番がその程度とはな」

(,,゚Д゚)「全隊用意!!」
 
 
 "剛拳"が背後の暗い森に向かって声を上げた。
 直後、森からぞろぞろと兵が現れた。
 架け橋の前に並ぶ、鎧を纏った男達。
 その数、五百強。
 
 
(,,゚Д゚)「城内の兵は三百程度だ!すぐに終わらせる!」

(,,゚Д゚)「行くぞォォ!!!」

 地鳴りのような掛け声。
 五百強の兵は、雄叫びをあげながら城内へと突入した。
 
 
 
──

71 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:15:22 ID:a4mOl5pAO
──
 
 
 強く鐘を突く音が、城内に何度も鳴り響いた。
 途端、誰か大勢の怒号と悲鳴があがった。
 
 
(;^ω^)「え、何!?」

(;´・ω・`)「まさか…」

(;��)「敵襲です房擬古様!敵兵は五百程!」

ミ,,;゚Д゚彡「こんな時に敵襲だと!?どこの手の軍だ!!」

(;��)「旗印から見るに、天野の軍のようです!大将自ら率いているもよう!」

ミ,,;゚Д゚彡「なっ…擬古成自ら此処まで来たというのか!?一体何のつもりだ!」

(;´・ω・`)「そんなことより、あんた達は早く此処から逃げた方がいい!体制も整ってない状態で攻められたら此方は…」

(,,゚Д゚)「いや、もう遅せェ」

72 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:16:35 ID:a4mOl5pAO
 
ミ,,;゚Д゚彡(;´・ω・`)(;^ω^)「──!?」

( ��)「え」
 
 
 男の声が三人の耳に入った直後、今度は肉を綺麗に断つような音が聞こえた。
 見ると、房擬古の小姓は既に首を無くし、頭はブーンの足下を転がっていた。
 
 
 

( ^ω^)「あ…?」
 

 
 人が死んだ。自分の目の前で、人が首をはねられて死んだ。

 人が死ぬなんて、テレビの世界でしか存在しなかった。
 ましてや殺人なんて、恐らく一生体験しないものだと思っていた。

 なのに、これは何だ?
 人間の頭が、床を転がっている?
 
 
(;゚ω゚)「あ…あ…?」

(,,゚Д゚)「へっ、生首見んのは初めてかよ南蛮人」

73 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:18:08 ID:a4mOl5pAO
 
 体が固まったまま狼狽するブーンの横で、渚本介が前に出た。
 いつの間にか刀は鞘から抜かれ、右手に握られている。
 

(,,゚Д゚)「しかし驚いたぜ…まさかこんなチンケな城に、貴様がいるとは」

(,,゚Д゚)「まだ復讐の炎は貴様に残っていたのか。"戦魔"、太田渚本介よ」

(#´・ω・`)「……」
 
 
 冷たい目で真っ直ぐに擬古成を睨み、刀を抜いたまま動かない渚本介。
 その少し後ろで、今度は房擬古が声を上げた。

ミ,,;゚Д゚彡「擬古成…貴様一体どういうつもりだ」

(,,゚Д゚)「愚問。二子厨一族が滅びれば、根十城攻めが楽になる。武力は無くとも親しい交易のある二子厨は、先に潰すべきと判断した」

ミ,,;゚Д゚彡「貴様、生みの一族を裏切るつもりか!」

(,,゚Д゚)「裏切る?戯れ言を、天下統一に血の縛りは邪魔なものだ」

74 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:19:12 ID:a4mOl5pAO
 
(,,゚Д゚)「んなことより、さっさと逃げたらどうだ?さもなくば、俺は城と貴様の首を頂いてしまうぞ」

ミ,,;゚Д゚彡「下衆が…」

(#´・ω・`)「待て」
 
 
 右手を伸ばし、房擬古がこれ以上熱くなるのを止める渚本介。
 そして、渚本介はようやく刀を両手で握った。

 対する擬古成も、右肩の後ろから左膝の裏あたりまで伸びる巨大な鞘から、分厚い刀を抜いた。
 渚本介の構える日本刀、虎恍丸とは比べものにならない大きさだ。
 それを両手で持ち、ずっしりと構える。
 
 
(#´・ω・`)「"剛拳"の名は相変わらずか」

(,,゚Д゚)「この斬馬刀は一薙ぎで人間を甲冑ごと真っ二つにしちまう威力だ。貴様の復讐の魂ごと、この刃で潰してやる」

(#´・ω・`)「来い。貴様の野望は此処で潰えることとなろう」

(,,゚Д゚)「ハッ、威勢だけは強いもんだな」

75 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:20:05 ID:a4mOl5pAO
 
 次の瞬間。
 数十歩と離れていた互いの距離が、一瞬にして詰められた。
 虎恍丸は上から、斬馬刀は横から、それぞれの刃の軌道が重なる。
 途端、とても刀同士がぶつかったとは思えない轟音が辺りに響いた。

(;´・ω・`)「くっ……!」

(,,#゚Д゚)「ゴルァッ!!」

 斬馬刀の攻撃の重さに、体ごと弾かれた渚本介。
 その隙だらけの首に、斬馬刀の返すような横払いの攻撃が迫る。
 それを低い姿勢でかわすも、今度は突然、遠く離れた壁まで吹き飛ばされた。
 擬古成が渚本介の腹に拳を突き出したのだ。

ミ,,;゚Д゚彡「渚本介!」

(;´・ω・`)「かはッ…!」

(;゚ω゚)「あ…あう…」
 
 
 "剛拳"の拳をまともに喰らい、なかなか起き上がれない渚本介。
 その渚本介を横目に、擬古成がゆっくりと歩き出した。
 実兄、房擬古の元へと。

76 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:20:53 ID:a4mOl5pAO
 
ミ,,;゚Д゚彡「くっ…」

(,,゚Д゚)「悲しいもんだな、二子厨房擬古。まさかこの手で兄を殺める日が来るとは」

(;゚ω゚)「……」

(;´・ω・`)「や…やめ……」
 
 
 とうとう房擬古の目の前まで着いた擬古成。
 逃げも反撃もしようとしない相手に、斬馬刀を振り上げる。

(;´・ω・`)「やめ……」

(,,゚Д゚)「言い残す事は?」
 
 
 最後の情けをかけられる房擬古。
 その場にあぐらで座り、動けない渚本介と固まっているブーンを見据える。
 
 
ミ,,゚Д゚彡「…野心も夢も、魂を荒ぶらせる手の欠片に過ぎぬ」

(,,゚Д゚)「……」

ミ,,゚Д゚彡「強く生きろ。渚本介、ブーン」

(,,゚Д゚)「…さらばだ」

77 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:22:14 ID:a4mOl5pAO
 
 鈍い音が鳴り、赤黒い何かが飛び散った。
 二子堂城城主、二子厨房擬古。城を攻めてきた実の弟に斬られ、その生涯は幕を閉じた。
 
 
(#´・ω・`)「き…貴様ァァ!!」

(;゚ω゚)「うわ、ああああああああああ!!」
 
 
 恐怖と衝撃でただ叫び続けブーン。
 その横を、虎恍丸を持った渚本介が、物凄い速さで駆け抜けた。

(,,゚Д゚)「ムッ…!」

(#´・ω・`)「うおおおお!!!」

 渚本介が全体重をかけて振り下ろした虎恍丸の刃は、擬古成の斬馬刀に軽くあしらわれた。

 途端、今の一合だけで、大きく距離を取った渚本介。
 二人の重い睨み合いが、その場の空気を凍らせていく。

78 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:22:58 ID:a4mOl5pAO
 
 しかし、その均衡はすぐに終わった。
 渚本介が虎恍丸を鞘に戻したのだ。
 
 
(,,゚Д゚)「腰抜けが、逃げるつもりか」

(#´・ω・`)「何とでも言え。覚えていろ。貴様の首は、必ずこの太田渚本介が取って見せる」

(,,゚Д゚)「ふん」
 
 
 ブーンの手を無理やり引き、小姓が用意してくれた荷物を取り、渚本介は走り出した。
 すぐに見えなくなった二人の背中に、口の端を歪める擬古成。

 月明かり以上に辺りを強く照らす、二子堂城から上がる炎。
 すぐ下の二子厨の庄を焼き討ちで沈めるのには、何の時間もかからなかった。
 
 
 明応五年。
 二子堂城、二子厨の庄が、天野勢の手により陥落した。
 
 
 
第三話 終

79 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/23(水) 02:23:33 ID:PIrYs4lcO
俺の目を盗んで投下出来ると思ったか?

支援

80 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:25:04 ID:a4mOl5pAO
今回の投下はこれで終わりです!

それと音楽祭お疲れ様でした!
本当に楽しかったです!!

さてベース弾いて寝るか

81 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/23(水) 02:25:32 ID:PIrYs4lcO
5秒遅かったか………恥ずかしい///



82 ◆vVv3HGufzo :2011/02/23(水) 02:25:59 ID:a4mOl5pAO
>>79
なんという素早い手際…ッ!?
ありがとうございます

83 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/23(水) 08:13:17 ID:0P6NlnKIO
おらワクワクすっぞ!

84 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/23(水) 10:14:05 ID:Rar5LVWI0
はぁはぁ
ずっと待ってたんだよぉ///

85 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/23(水) 16:31:28 ID:/Vxmyu5w0
これは良作

86 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/24(木) 11:26:33 ID:NoaO4L5Q0
続きが気になるうううう

87 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/26(土) 22:58:37 ID:trn6Ybk60
そろそろじゃないかね

88 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:06:23 ID:IO2UyPh6O
皆さんありがとうございます!
第四話いくぞえ!

89 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:09:44 ID:IO2UyPh6O
***
第四話 「貧しくとも人」

***
 

( ;ω;)「オ゙ゥエッ!!ゲホッ!」

(´・ω・`)「しっかりするんだ、もう奴らも追っては来ない」

( ;ω;)「ハ、ハイ……」
 
 
 夜襲に遭った二子堂城を逃げ切り、暗い山の中を、二子厨の庄の反対側に駆け下りた二人。

 その山道の途中で、二人は少し休憩を取ることにした。
 そこでブーンは強烈な嘔吐感にみまわれた。先ほど見た光景が、あまりにも衝撃的だったのだ。
 道の傍らで胃の中味を戻すと、一気に鼻水と涙も流れてきた。

90 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:10:04 ID:IO2UyPh6O
 
 何もかもが、強烈な出来事だった。
 赤黒い人間の中味。強く籠もる鉄の臭い。
 そして、いとも簡単に失われる命と、いとも簡単に出来上がる人間の死体。

 平和な時代の平和な国で育ったブーンには、とても耐えられない体験だった。

 
( ;ω;)「けふっ、ヒック…」

(´・ω・`)「…悪かったなブーン」
 
 
 ブーンの背中をさする渚本介が、ぽつりと呟いた。
 予想外の台詞に、ブーンは思わず振り返った。
 

( ;ω;)「渚本介さん…?」

(´・ω・`)「その様子じゃ、人間が斬られるサマを見るのは初めてなのだろう?」

( ;ω;)「は、はい…」

(´・ω・`)「奴が現れた時に逃げるべきだった。しかし俺は至らん欲にかられて、あろうことか奴に刃向かってしまった」

91 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:11:28 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「その結に、お前に嫌なものを見せてしまった。申し訳ない」

 
 そこまで言うと、渚本介はブーンに頭を下げた。
 ブーンが慌てて顔を拭き、渚本介に声をかける。

(;^ω^)「ちょ、顔を上げてくださいお渚本介さん!渚本介さんは何も悪くないですお」

(´・ω・`)「申し訳ない…」

(;^ω^)「……」
 
 
 ブーンは渚本介が悪いなどとは全く思っていなかった。むしろ情けない姿を見せた自分を恥じていた。

 しかし、確かに渚本介に対して様々な疑問はあった。
 渚本介が"戦魔"と呼ばれていること。復讐の為に旅をしていること。そして何より、先程の天野擬古成に対する怒りのような憎しみのような顔。

92 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/26(土) 23:13:15 ID:trn6Ybk60
支援ぞ

93 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:13:31 ID:IO2UyPh6O
 
 だから、躊躇いなくこんなことが言えたのかもしれない。
 
 
( ^ω^)「僕、実は天野擬古成という名前には聞き覚えがあるんですお」

(´・ω・`)「?」

( ^ω^)「日本史で習ったんですお。確か、天下統一を目指して数々の国を攻め落としていた…って」

(´・ω・`)「ああ、その通りだ」

( ^ω^)「渚本介さん、聞かせてくださいお。渚本介さんは、もしかしてあの擬古成に何かされたんですかお?だから復讐に走っているのでは?」

(´・ω・`)「……」
 
 
 渚本介が擬古成に対する復讐心で旅をしている。
 ここまで想像するのは容易かった。

 だから、真実を知りたかった。
 渚本介に何があったのか、ということを。

94 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:14:36 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「…それを聞いてどうするつもりだ?」

 
 無表情で渚本介が尋ねる。
 ブーンは溢れ出てくる本心を渚本介に伝えた。
 
 
( ^ω^)「僕は渚本介ともっと仲良くなりたいんですお。でも、僕はまだ渚本介さんのことを何も知らないんですお」

( ^ω^)「絆を深めるには、やっぱり互いを知ることなんですお」

( ^ω^)「だから、聞かせて欲しいんですお。渚本介の過去を」

(´・ω・`)「……」
 

 相変わらず無表情を続ける渚本介。
 しばらくブーンの表情を見つめると、小さく笑った。

 
(´・ω・`)「お前は優しい人間なんだな」

( ^ω^)「…え?」

95 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:15:32 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「お前の言う通りさ。互いを知ることが、絆を深める初手だ」

(´・ω・`)「でも、世の中にはわからなくていいこともある。わからないほうがいいことがある。そうだろ?」
 
 
 上手くはぐらかされたな、と思った。
 しかし、ブーンは何の不快感も、疑念も起こらなかった。

 それは、過去を教えてくれない渚本介を無意識に受け入れてしまったせいか。
 それとも。
 
 
( ^ω^)「…その通りですお渚本介さん」

(´・ω・`)「ははは、すまないな。ほら、お前の荷物だ」

 
 この屈託のない優しい笑顔を見てしまったからか。
 ギターを背負い、食料の半分を持ち、ブーンは渚本介と共に歩き出した。
 
 
 
──

96 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:16:37 ID:IO2UyPh6O
──
 

 島川領三久紫井(みくしい)。
 二子堂城を挟んで、二子厨の庄とは反対側に位置する大きな国である。

 島川荒巻が治めるこの国では、交易面が弱腰であった分、貧困に悩まされている。
 その為、民衆の荒巻に対する態度は冷たくなっているのが現状だ。
 
 
 民の心が廃れてきている三久紫井に、ブーンと渚本介はたどり着いた。
 まだ昼を回った頃だ。陽気が包んでいるはずなのに、その町は目に見えてわかるほど白けていた。
 
 
(;^ω^)「…こんなことってあるんですかお」

(´・ω・`)「ん?」

(;^ω^)「だって島川荒巻と言えば、おおらかな人間で人々に好かれていて、治めた国は賑やかだったって…」

(´・ω・`)「…人は変わるもんさ。行こう」

97 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:17:57 ID:IO2UyPh6O
 
 人は変わる。良くも悪くも、一つのきっかけで人は変わっていく。

 三久紫井の町は、実に凄惨なものだった。
 活気のない店が並ぶ表通り。何か諦めきっているような、失望に満ちた人々の顔。ずっと遠くに見える、威厳の無い城。

 二人は前のように宿屋を探すことにした。
 案外すぐに宿屋は見つかったが、二子厨の庄にいたあの主人のような明るさも人の良さもなく、二人はぶっきらぼうに部屋に通された。
 
 
( ^ω^)「…酷いとこですお」

(´・ω・`)「はは、未来の日本はよっぽど平和なんだな。このくらい陰気な地なんて腐るほどあるぞ」

( ^ω^)「同じ日本に住んでるのに、どうしてこうなるんですかお」

(´・ω・`)「大地を同じくしても、国が違えば人が違う。人が違えば食う飯の味が違う」

98 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:19:26 ID:IO2UyPh6O
 
 つまり、と渚本介が続ける。

(´・ω・`)「人によって物の価値が違うもんなんだ。だから仲良くもなるし、争いもする」

(´・ω・`)「島川荒巻は他の領主と仲良くもなれず争いもできなかった。それが民衆の心を廃らす理由となったんだ」

( ^ω^)「そうなんですかお…」
 
 
 現代の日本と何も変わらない、とブーンは感じた。
 仲良くなる国もあれば、争いを起こす国もある。

 渚本介が未来の日本をどう想像しているかは知らないが、間違いなく渚本介は真実を知れば落胆するだろう。
 そして悟るはずだ。平和な時代なんて無いのだ、と。

 それならば、こうやって平和な未来を描きながら、争いの中を生きるほうが幸せなのかもしれない。
 ブーンはため息と共に窓の外に目をやった。

99 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/26(土) 23:19:53 ID:trn6Ybk60
ほう

100 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:20:47 ID:IO2UyPh6O
 
 その時だった。

(#・∀・)「ふざけんなコラァ!!」

(;´・_ゝ・`)「うっ…!」
 
 
 途端、向かいの酒屋から一人の若い男が転げ出てきた。
 その後から、鬼のような形相をした男がずんずんと姿を現した。
 喧嘩だ、喧嘩だぞ。と周りが騒ぎ立てる。

 少し歳のいった、怒っている方の男が声を上げた。
 
 
(#・∀・)「てめえ今何て言いやがった!?俺らを馬鹿にしてんのか!!」

(;´・_ゝ・`)「馬鹿になどしておりません!でも、こんなことは絶対間違ってる!」

(#・∀・)「てめえ!いい加減にしやがれ!!」
 
 
 若い男の方も負けじと声を張る。
 しかし、怒り狂った男に問答無用に殴られてしまった。

101 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:21:51 ID:IO2UyPh6O
 
(;^ω^)「あわ、わわわ、喧嘩ですお渚本介さん!」

(´・ω・`)「そうか」

(;^ω^)「そうかって…」
 
 
 他人の争いごとには興味を持たない性格なのか。
 とにかく、ブーンは窓枠にしがみついて喧嘩の様子をもう一度見た。

 怒り狂った男は既に殴るのを止めさせられていた。周りの屈強な男達に抑えられていたのだ。
 体にしがみつかれながらも、這いつくばる若い男を睨みつける。
 
 
(#・∀・)「今度あんなこと言ってみやがれ、次はぶっ殺してやらぁ!」

 怒りに満ちた言葉を吐き捨てると、男は周りの手を乱暴にほどき、店の中に戻っていった。
 野次馬達はあっという間に去り、膝をつきながら顔をさする男が、一人取り残された。

102 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:23:16 ID:IO2UyPh6O
 
(;^ω^)「…ちょっとあの人連れてきますお!」

(´・ω・`)「えっ」

(;^ω^)「渚本介さんは待っててくださいお」
 
 
 渚本介が反応する前に、ブーンは部屋を飛び出した。
 ちょうど入り口の辺りにいた男に、慌てながら話しかける。
 
 
(;^ω^)「大丈夫ですかお!?」

(メ´・_ゝ・`)「ありがとうございます。俺は無事……って南蛮人か?」

(;^ω^)「違いますけど、とにかく部屋に上がってくださいお!手当てしなきゃ!」

(メ´・_ゝ・`)「俺の心配なら無用ですよ」

(;^ω^)「いいから来てくださいお!」

(メ´・_ゝ・`)「強引なお方だ…では御言葉に甘えさせていただきます」
 
 
 
──

103 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:24:24 ID:IO2UyPh6O
──
 

 傷の治療をするつもりで部屋に上がらせたが、ブーンは手当てのできるものを持っていないことに気づいた。
 しかし、財布の中に絆創膏を入れていたのを思い出し、それを男の顔に貼った。

 男は何やら不思議そうに顔に貼られた絆創膏を触ったが、すぐに目の前のブーンと渚本介に頭を下げた。
 
 
(´・_ゝ・`)「御世話頂きありがとうございます、ブーン殿、渚本介殿」

(´・_ゝ・`)「俺は出見足(でみたす)といいます。よろしくお願い致します」

( ^ω^)「よろしくだお出見足。そう堅くならなくてもいいお」

(´・ω・`)「ふむ」
 
 
 改めて出見足の顔を見ると、随分と若い青年であることに気付いた。
 ブーンよりも年下に見えるが、性格はかなりしっかりとしている。

104 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:25:53 ID:IO2UyPh6O
 
 堅くならなくてもいいと言ったのにも関わらず、出見足は姿勢を崩そうとしない。
 そんな出見足に、ブーンは喧嘩の原因を尋ねてみた。
 出見足はバツが悪そうに目を背け、少し置いて語り出した。
 
 
(´・_ゝ・`)「ブーン殿は、この国が荒巻様のせいで貧しくなっているのは御存知でしょうか」

( ^ω^)「知ってるお。それがどうかしたのかお?」

(´・_ゝ・`)「……明日の朝なんです」

( ^ω^)「え?」

(´・ω・`)「……」
 
 
 何のことかさっぱりわからないブーン。その後ろで、渚本介が頭を掻いた。
 
 
(´・_ゝ・`)「今夜にも三久紫井中から農民らがここに集まって、明日の朝、向こうに見える枚未九城を攻めるつもりなんです」

105 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:27:01 ID:IO2UyPh6O
 
(;^ω^)「……まじかお…」

 枚未九城といえば、三久紫井を治めた島川荒巻の居城だ。
 ということは。
 
 
(;^ω^)「…一揆を起こすつもりなのかお!」

(´・_ゝ・`)「そういうことです」

(´・ω・`)「やはりな」

 渚本介がようやく声を出した。
 何がやはりなのか、とブーンが振り向く。
 
 
(´・ω・`)「民衆が妙に気が立っている様子だったから、まさかとは思っていた。恐らくお前に殴りかかったあの男が民衆をまとめ、一揆の案を出したのだろう」

(´・_ゝ・`)「…はい、その通りでございます」

106 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:28:47 ID:IO2UyPh6O
 
 少し意表を突かれたような顔で、丁寧に答える出見足。
 渚本介は更に続けた。
 
 
(´・ω・`)「お前は一揆を止めさせるべく、酒屋にいたあの男に話をしに行った。その結果がこれなんだな」

(´・_ゝ・`)「はい…」

(´・ω・`)「いいか、この乱世に国一揆の一つや二つは珍しくない。一揆というのは絶対無二の民意だ。止める必要はない」

(;^ω^)「渚本介さん…!」
 
 
 渚本介が一揆を肯定したのは意外だった。
 しかし、ブーンは何も反論の言葉が出てこなかった。

 日本史で習った限り、渚本介の言う通りなのだ。
 一揆は唯一の行動的な民意であり、良くも悪くも、必ず現状を変えることができる。

 ブーンが口を結んでいると、今度は出見足が口を開いた。

107 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/26(土) 23:29:07 ID:8Sih.ddc0
さるは居なくとも支援はしたい

108 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:29:57 ID:IO2UyPh6O
 
(´・_ゝ・`)「…俺は、そうは思いません」

( ^ω^)「!」

(´・ω・`)「……」

(´・_ゝ・`)「一揆なんて、人が死ぬだけです。泣きを見る人が増えるだけです。こんなのが民意だなんて、思いたくもありません」

(´・_ゝ・`)「それと…荒巻様は心優しいお方です。この国が貧しくなったのは、他に何か原因があるはずなのです」

(´・_ゝ・`)「荒巻様には御健在でいらして欲しい。荒巻様の治めるこの三久紫井で、争いなど見たくない」
 
 
 出見足の拳はいつの間にか握り締められ、少し震えていた。
 三人を包む空気が、着実に重くなっていく。

109 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/26(土) 23:32:04 ID:trn6Ybk60
死亡フラグ?

110 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:32:54 ID:IO2UyPh6O
 
(´・_ゝ・`)「今回の一揆の長…あの男、名を茂羅(もら)といいます」

(´・_ゝ・`)「茂羅殿は昔、幼き息子を山賊に殺されているのです」

(;^ω^)「……」

(´・_ゝ・`)「それなのに、争い事をやめようとしないのです。結局はまた誰かが泣くだけなのに」
 
 
 意外だった。
 一揆というものは民衆全員の意志であるというイメージを、ブーンは持っていたからだ。

 しかし、この戦国の世に、争い事を嫌う青年がいる。
 一揆を止めようとする男がいる。

 どう反応していいのかわからず固まるブーンの後ろで、渚本介が立ち上がった。
 
 
(´・ω・`)「お前の気持ちはわかる。しかし一揆というものは激情の塊だ。容易く止められるものじゃない」

(´・_ゝ・`)「……」

111 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:35:13 ID:IO2UyPh6O
 
 渚本介の台詞に、ブーンは少し違和感を覚えた。
 しかし、そんなことはお構いなしに渚本介が続ける。

(´・ω・`)「だが、島川荒巻は確かに心優しい領主だ。戦乱を好まない交易なら得意であるはずなのだが……何か引っかかるものがあるな」

(´・ω・`)「おい、今晩に一揆の面々が集まると言ったな。場所はどこだ」

(´・_ゝ・`)「はい。場所は山のふもとにある枚里州寺でございます」

(´・ω・`)「…わかった。ブーン、今晩には宿を出るぞ」

( ^ω^)「え?いいですけど…」

(´・ω・`)「それでは出見足。今晩枚里州寺にて会おう」

(´・_ゝ・`)「?…わかりました。失礼致しました」

112 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:36:16 ID:IO2UyPh6O
 
 丁寧に頭を下げ、部屋を出ていく出見足。
 その背中を見送ったあと、ブーンは渚本介に向き直った。
 
 
( ^ω^)「渚本介さん、一体どうしたんですかお?」

(´・ω・`)「何がだ」

( ^ω^)「この一揆や出見足のことなんてまるで興味ない様子だったのに、いきなり一揆を止めようと動くなんて」
 
 
 ブーンが渚本介の話に違和感を覚えたのは、まさにそこだった。
 喧嘩の時も、他人の争いに興味を持たずといった様子だった。

 しかし、渚本介と何の関係もないこの国一揆の話には、妙に積極的だ。
 渚本介は少しだけ声のトーンを落とし、話し出した。
 
 
(´・ω・`)「実は、茂羅という名には聞き覚えがあるのだ」

113 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:37:56 ID:IO2UyPh6O
 
 目を丸くするブーンに、渚本介は更に話を進める。

(´・ω・`)「俺の記憶が正しければ、あの擬古成の家臣の一人に、腕っぷしの強い茂羅という男がいた」

(´・ω・`)「出見足が茂羅の名を口にしたとき、俺はある疑念を浮かべた。もしやこの三久紫井の地は、あの擬古成が奪い取らんとしているのではないかと。それも、直接手を下さず、戦略的にな」

(;^ω^)「ど、どういうことですかお?」

(´・ω・`)「まず擬古成が何らかの圧力をかけて、三久紫井の交易を鈍らせて国を貧しくさせる。次に家臣の擬古成を町に繰り出し、民衆に対して一揆を企てる」

(´・ω・`)「するとどうだ。広大な土地を誇る国は廃れ、城は図らずも城主のいない状態になる。その城に天野勢が立ち入れば、三久紫井は天野領となる」
 
 
 つまり、擬古成が圧力をかけてある三久紫井にスパイを送り、国内で争わせ、後から擬古成が知らん顔で国の統率を図る。という筋書きだ。
 そのスパイが先ほど出見足と喧嘩をしていた男、茂羅であるというのだ。

114 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:38:55 ID:IO2UyPh6O
 
 完璧な戦略だ。擬古成も渚本介も、相当頭が切れるらしい。
 ブーンがやけに納得していると、渚本介は一息ついて話を続けた。
 
 
(´・ω・`)「だから、この一揆は阻止するべきだ。今晩にどうにかしないと、擬古成は天下統一をまた進めてしまうはめになる」

( ^ω^)「…わかりましたお。僕もできることは協力しますお」

(´・ω・`)「うむ」
 
 
 固い顔をしていた渚本介が、軽く笑った。
 
(´・ω・`)「ま、昼寝でもするか。あまり寝てないからな」

( ^ω^)「はいですお」
 
 
 
──

115 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/26(土) 23:39:24 ID:7lvVt10gO
支援

116 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:39:48 ID:IO2UyPh6O
──
 
 
 夜。
 月が雲間に見え隠れする夜空の下、渚本介は窓の外を眺めていた。
 
 
(´・ω・`)(そろそろだな)

 町の遠くで、何やらざわめきが聞こえる。
 一揆に備えた男達が、続々と集まってきているのだろう。
 
 
(´・ω・`)「ブーン起きろ。そろそろ行くぞ」

( ^ωー)「うーんあと5マイル…」

(;´・ω・`)「何を言ってるんだ。さあ荷物を持つんだ」

( ^ω^)「……あ、了解ですお」
 
 
 眠い目をこすり、ブーンは荷物を持った。
 宿屋にはもう誰も残っている様子はなく、町の中もやけに静かだった。

117 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:41:59 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「もう集まってるらしいな」

( ^ω^)「僕らも遅れちゃいけませんお」

(´・_ゝ・`)「ブーン殿、渚本介殿!」

( ^ω^)「おっ?」
 
 
 急に声をかけられ、後ろを振り向く。
 そこには、何やら複雑そうな顔する出見足が走ってくる姿があった。

 
(´・_ゝ・`)「お二方は、枚里州寺に行くつもりですか?」

(´・ω・`)「ああ」

( ^ω^)「その通りだお」

(´・_ゝ・`)「…俺もお供させてください。この一揆は、あってはならないことです」

( ^ω^)「もちろんだお。一緒に行くお!」

(´・_ゝ・`)「ありがとうございます」

118 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:43:11 ID:IO2UyPh6O
 
 枚未九城が佇む山のふもとに、その枚里州寺はある。
 境内はかなり広く、大人数が集まるには都合のいい場所だ。

 寺の前まで着くと、三人の目に飛び込んできたのは、想像していたそれよりも大人数の民衆。
 数にして五百ほどが、既に集まっていた。
 

(;´・_ゝ・`)「こんなにいるのか…」

(;^ω^)「……」

(´・ω・`)「茂羅が出てきたぞ。裏へ回ろう」
 
 
 広場に集まった民衆の前に、茂羅が現れた。
 本堂の少し高い位置にいるため、その姿はやけに目立っている。
 自然と、民衆が静まり返った。
 
 
( ・∀・)「…よくぞ集まってくれた。三久紫井の強き魂が、今、この目の前に広がっとる」

119 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:44:10 ID:IO2UyPh6O
 
 民衆は静かに、しかし力強く、茂羅を見つめる。
 
 
( ・∀・)「今回、我々が起こすのは戦ではない。伝言だ。至らん政を続けた、島川荒巻に対する伝言なのだ」

( ・∀・)「国の在り方を決めるのは上の連中じゃねえ、俺ら民衆だってな」

( ・∀・)「三久紫井の強き魂をもつ同志達よ、今こそ立ち上がるときだ!これ以上、あの腑抜けの荒巻に国を任せるわけにはいかん!」

(´・_ゝ・`)「やめるんだ茂羅殿!!」
 
 
 茂羅が、民衆が、一気に固まった。
 その視線の先には、本堂の裏からでてきた一人の若い男、出見足が立っていた。

120 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:45:01 ID:IO2UyPh6O
 
 唖然としていた茂羅。
 しかし、すぐにその額に青筋が浮かび上がってきた。
 
 
(#・∀・)「てめえ…殺されにきたのか?」

(´・_ゝ・`)「皆の衆、聞くがいい!!荒巻様は心優しい領主!国が貧しくなっていったのには、何かわけがあるのだ!!」

(#・∀・)「いい加減にしやがれ!」
 
 
 途端、茂羅は刀を抜いて出見足の首にあてがった。
 出見足は固まり、民衆が少しだけざわめき始める。
 
 
(#・∀・)「どうやら本当に殺されてェらしいな。童が、根も葉もないことを!」

(´・ω・`)「待て」

121 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:46:35 ID:IO2UyPh6O
 
 本堂の裏から、今度は二人の男が現れた。
 渚本介とブーンが民衆の前に出てきたのだ。
 混乱がますます大きくなった。
 
 
(#・∀・)「誰だてめえら!!」

(´・ω・`)「何故貴様に名乗る必要がある?民衆にずっと正体を隠していた貴様に」

(#・∀・)「んだと…!?」

(´・ω・`)「とぼけなくてもいい。思い出したよ。貴様の顔と名は覚えている」

(#・∀・)「何言ってやがる!!」

(´・ω・`)「久しいな。天野家家臣、柴原茂羅よ」
 
 
 ざわめいていた民衆が、一気に静まり返った。
 信じられない言葉が、急に耳に飛び込んできたからだ。

122 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:47:32 ID:IO2UyPh6O
 
(;・∀・)「な、何言ってやがる!俺は…」

(´・ω・`)「貴様は三久紫井の民などではない。恐らく擬古成の命で、町人になりすましていたのだろう?」

(;・∀・)「うるせェ!!クソッ!」
 
 
 明らかに狼狽した茂羅。突然、茂羅は刀を振りかざして渚本介に向かってきた。
 しかし渚本介は刀を軽くかわし、茂羅を床に押さえつけた。
 
 
(;・∀・)「クソったれ!!離しやがれ!!」

(;・∀・)「なんで…なんでこうなるんだよ畜生!!」

(´・ω・`)「言え。貴様はなぜ、三久紫井に来たのだ」

123 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:48:57 ID:IO2UyPh6O
 
 茂羅は暫く口をつぐんでいたが、やがて観念したかのようにポツポツと語り出した。
 
 
(; ∀ )「…復讐さ」

(´・ω・`)「復讐?」
 
 
 渚本介が聞き返すと、茂羅は小さく頷いた。
 ブーンも出見足も、大勢の民意も、静かに茂羅の声に耳を傾けた。
 
 
(; ∀ )「俺ぁ昔、一人息子を殺されてるんだ。俺がまだ擬古成様の家臣として丹生捉城にいた頃の話だ」

(; ∀ )「その日、俺は擬古成様の命で町を回っていたんだ。せっかくだから擬古成に頼んで、息子も一緒に町を歩き回った」

(; ∀ )「楽しかったさ。息子は町に下りるのは初めてで、ずっとはしゃぎ回っていた。ところが家臣である俺の息子に目をつけた山賊が、息子をさらって…」

(´・_ゝ・`)「……」

124 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:50:06 ID:IO2UyPh6O
 
(; ∀ )「……冷たくなった息子の横には、山賊の荷袋が忘れてあった。それに縫われていた印が、この三久紫井のものだったんだ」

(; ∀ )「当時から擬古成様はこの三久紫井を取るつもりで、島川荒巻に圧力をかけていた。だから俺は協力させてくれと頼み込んだ」

(; ∀ )「……息子を殺したこの国に、復讐を果たす為にな」

 
 
 静まり返る境内。
 抵抗もせず、押さえつけられたままの茂羅に、出見足が歩み寄った。

 
(´・_ゝ・`)「茂羅殿…」

(  ∀ )「……息子が生きてりゃ、てめえくらいの歳だった」

 顔を伏せたまま茂羅が口を開く。
 心なしか、茂羅は震えているようだった。
 

(  ∀ )「…だから、てめえくらいの若僧が憎たらしかったんだ」

(´・_ゝ・`)「……」

125 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:51:21 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「…それで」

 押さえつけたまま、渚本介が声をかける。

(´・ω・`)「お前はこれからどうしたいんだ」

(  ∀ )「殺してくれ。一揆は失敗だ。なれば俺に生きる道はない」

( ^ω^)「それは違いますお!」
 
 
 今まで黙っていたブーンが、声を上げた。
 その奇妙な人間に、全員の注目が集まる。
 
 
( ^ω^)「復讐なんかやめて、茂羅さんはこれから真っ当に生きるべきですお!息子さんの分も!」

(  ∀ )「……」

( ^ω^)「死んだ人間の為だけに生きるなんて、そんなの間違ってますお!茂羅さんは自分の為に、真っ当に生きるべきなんですお」

(´・_ゝ・`)「ブーン殿…」

(  ∀ )「………」

(´・ω・`)「……」

126 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:52:26 ID:IO2UyPh6O
 
( ^ω^)「親の復讐を望む子が、一体どの世界にいるんですかお。わかってくださいお」
 
 
 相変わらず静寂が続く。
 しかし、茂羅の体は目に見えてわかるほどに震えていた。
 
 
( ;∀;)「…ああ、わかってる」

( ;∀;)「わかってるよ……畜生…」

(´・_ゝ・`)「……」

(´・ω・`)「…ブーンの言う通りだ。好きにしろ」

( ;∀;)「ああ…」
 

 渚本介が茂羅の体を離した。
 しかし、茂羅はその場に倒れたまま動こうとしなかった。

127 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:53:31 ID:IO2UyPh6O
 
 誰もが声を出さずに茂羅を見つめるなか、渚本介はブーンにギターを渡した。
 少し驚いたが、ブーンは素直に受け取った。
 
 
(´・ω・`)「ブーン、ぎたーを弾いてくれ。曲は任せる」

( ^ω^)「はいですお」

(´・_ゝ・`)「ぎたー?」

 
 何が起こるんだ。と民衆が見つめるなか、ブーンはギターを構え、演奏を始めた。

 曲はエリック・クラプトンの「Tears in Heaven」のソロギターバージョン。
 悲しみ。愛しさ。後悔。哀願。全ての感情を、優しい音色に乗せて、境内に響かせていく。
 
 
(´・_ゝ・`)「……」

( ;∀;)「……」

(´・ω・`)「……」
 
 
 誰一人、一切の声も出さないまま、ブーンの奏でるギターを聞いていた。
 その日の夜はやけに静かで、やけに悲しかった。
 
 
──

128 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:54:50 ID:IO2UyPh6O
──
 

 翌朝。
 一揆の話なんてまるで無かったかのように、いつもの朝が三久紫井を迎えた。
 昨日までと違うのは、なんとなく町の人達の顔が、少し落ち着いたことくらいか。
 
 
 結局、昨日はそのまま解散となり、茂羅は一人一人に頭を下げて回った。
 後悔しながら、反省しながら、涙を流しながら。
 
 
 人は変わる。良くも悪くも、一つのきっかけで人は変わってしまう。
 

 旅の支度を終えたブーンと渚本介は、最後に出見足と会って話をした。

129 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/26(土) 23:55:20 ID:8Sih.ddc0
http://www.youtube.com/watch?v=ry23Xm1WNH4
良い曲だな

130 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:56:06 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「…これでこの町は暫く安泰だろう。一揆が失敗したと聞けば、擬古成の圧力もそのうち無くなる」

(´・_ゝ・`)「お二方には何と感謝すればいいのやら…本当にありがとうございました」

( ^ω^)「いいんだお、用事のついでなんだから。ねえ渚本介さん」

(´・ω・`)「はは、そうだな」
 
 
 相変わらず丁寧に頭を下げる出見足に、笑顔を送る二人。
 出見足はふと何かに気付くように顔を上げると、手に下げていた小さな荷物を二人に手渡した。
 
 
( ^ω^)「これは…?」

(´・_ゝ・`)「ウチで作ったおにぎりと漬け物です。これくらいしかお礼ができなくて…」

(´・ω・`)「はは、いいじゃないか。ちょうど腹が減ってたんだ」

( ^ω^)「ありがとう出見足。また会えるといいお」

(´・_ゝ・`)「はい!」

131 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:57:22 ID:IO2UyPh6O
 
 ブーンと渚本介は出見足に背を向け、町を後にした。
 出見足がくれたおにぎりは、コンビニで買っていたそれよりも、格段に美味しかった。
 
 
 
 人は変わる。
 良くも悪くも、一つのきっかけで人はこれまでの自分を忘れることができる。

 一揆に失敗した茂羅が擬古成の使いに殺されたことを二人が知るのは、それから少し後の話になる。
 
 
 
第四話 終

132 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/26(土) 23:57:56 ID:trn6Ybk60
おにぎりと漬け物くいたくなった…

133 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/26(土) 23:58:47 ID:trn6Ybk60
乙乙

134 ◆vVv3HGufzo :2011/02/26(土) 23:59:00 ID:IO2UyPh6O
今回の投下はこれで終わりです!
数々の支援、>>129さんの曲紹介、ありがとうございました!

135 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 00:10:00 ID:tOOynGvA0
乙ー
音楽に時代の壁は関係ねぇ!

136 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 14:56:19 ID:5A/dFtA.0
乙でした
擬古成容赦ねえな

137 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 23:46:49 ID:N62PBn4A0
擬古成ェ

138 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/28(月) 21:30:42 ID:y5gEE83cO
面白い、避難所で予告してた作品ですね 
次の投下前に予告スレか総合で 
告知してくれると嬉しいお

139 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/02(水) 00:14:22 ID:032O9yh.0
選曲に泣いた…

140 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 11:57:28 ID:Vx0gVzAYO
皆さんありがとうございます!
そうさ、音楽に時代の壁なんて関係ねえ!

それでは続きを投下します

141 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 11:59:53 ID:Vx0gVzAYO
***
第五話 「愛と幸福は大きく違う」

***
 

(;´∀`)「…こ、ここまで来れば大丈夫だモナ」

(゚、゚;トソン「本当ですか?」

(;´∀`)「とにかく中に入るモナ」
 
 
 白昼にも関わらず、森の中は異様に薄暗かった。
 森には古い廃寺があり、薄暗い森の陰気な空気を更に助長している。

 その廃寺に、武士の格好をした男と、遊女のような格好をした女が駆け込んできた。
 

(;´∀`)「追っ手は…見当たらないモナ」

(゚、゚;トソン「良かった…」

142 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:00:44 ID:Vx0gVzAYO
 
 武士の格好をした男、模那(もな)が本堂の扉を閉めた。

( ´∀`)「これで暫くは安心できるモナ」

(゚、゚トソン「……」
 

 笑顔をこぼす模那に対し、遊女の格好をした女──十遜(とそん)は、暗い顔を下に向けたままだ。

 どうした?と聞くまでも無かった。
 十遜が心配していることなど、模那はとっくにわかっているからだ。
 
 
( ´∀`)「…拙者は、何も後悔しておらんモナ」

(゚、゚トソン「私もです」

( ´∀`)「なれば顔を上げるモナ。他に何の心配があるんだモナ」

(゚、゚トソン「……怖いのです」

143 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:01:35 ID:Vx0gVzAYO
 
 顔を下に向けたまま、十遜がぽつぽつと呟いた。
 

(゚、゚トソン「これからの生活が、果たしてまともにいくのか…貴方様が無事に生きていけるか」

(゚、゚トソン「そう考えると、怖くなってしまうのです」

( ´∀`)「……」
 

 なんて優しい、なんて人思いな女なんだ。
 そうとわかっているのに、何も答えられない。口が開かない。

 模那は十遜のもとに歩み寄り、そっと抱き締めた。
 

(゚、゚トソン「……」

( ´∀`)「お前が心配することなんて何もないモナ。拙者の傍らで、今を生きていてほしいモナ」

(゚、゚*トソン「…はい」

 
 甘い空気が二人を包む。
 このまま時間が止まればいい。甘美な時を二人だけで味わえていれば、それでいい。
 そう感じていた矢先、本堂の外から何か音が聞こえた。

144 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:02:38 ID:Vx0gVzAYO
 
( ´∀`)(゚、゚トソン「!」
 

 一気に体を離し、刀に手をかける模那。
 その後ろで、怯えた目を音の方に向ける十遜。

 音の正体は、人間の話し声であることがわかった。
 男の声だ。恐らく二人の男が此方に向かってきている。
 

(;´∀`)「……」

(゚、゚;トソン「……」
 
 
 刀を握る手に力が入る。
 模那の真剣な眼差しの先で、本堂の扉が勢いよく開いた。
 
 
( ^ω^)「でも渚本介さん、こんな廃寺も意外と未来には残っているもんですお。復興修r」

(;´∀`)「でやァァァ!!」

(;^ω^)「うおおおお!!?」

145 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:03:31 ID:Vx0gVzAYO
 
 扉が開いた途端、模那は刀を振り上げてきた。
 腰を抜かすブーンの横で、渚本介が素早く虎恍丸を抜き、模那の刀を止めた。

 力を込めて刃で押し合いを続けるなか、模那が口を開く。
 

(;´∀`)「き、貴様ら誰だモナ!!」

(´・ω・`)「こっちの台詞だ。見たところ武士のようだが、何故このような廃寺にいるのだ」

(;´∀`)「うるさいモナ!さっさと立ち去れモナ!!」

(´・ω・`)「…まあ、それは構わぬが」
 
 
 突然、渚本介が体を上手く使いながら刀を持つ手の力を極端に緩めた。
 刀に体重をかけていた模那が、一気に前へよろける。

146 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:04:35 ID:Vx0gVzAYO
 
 その後ろ首に、渚本介が虎恍丸の刃を当てた。
 

(゚、゚;トソン「模那様!!」

(;^ω^)(女…?)

(´・ω・`)「その前にわけを聞かせてくれないか。…と言っても、あの遊女を見れば大方想像はつくがな」

(;´∀`)「……」
 

 観念したかのように、模那が刀を鞘にしまった。
 渚本介も虎恍丸をしまい、ブーンと渚本介は模那に付いて本堂の中へと入っていった。
 
 
 
──

147 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:05:32 ID:Vx0gVzAYO
──
 

( ^ω^)「駆け落ち、ですかお」

( ´∀`)「……」

(゚、゚トソン「……」

(´・ω・`)「武士と遊女…どちらも厳しい世界だ。覚悟はあるのか」

( ´∀`)「覚悟なしに、此処まで逃げはせんモナ」

(´・ω・`)「それもそうだな」
 
 
 模那と十遜の二人がこの廃寺まで逃げてきた経緯はこうだ。

 模那が何気なしに寄った夜の店に、十遜が遊女として働いていた。
 模那は十遜に惚れたが、互いに身分が大きく違う。
 そこで模那は十遜に相談し、この駆け落ちを決行したというのだ。

148 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:06:35 ID:Vx0gVzAYO
 
( ´∀`)「……仕方無かったんだモナ」
 
 
 武士らしく姿勢良く座っているものの、模那の顔は下を向いていた。
 隣で心配そうに十遜が見つめるなか、模那は続けた。
 

( ´∀`)「十遜には一目で惚れたモナ。その途端、今まで拙者や先代らが築いてきた地位や栄光なんてどうでもよくなったんだモナ」

( ´∀`)「武家の魂と血を引き換えにしても、この女が欲しかったモナ。それほどまでに、拙者はこの女に惚れたモナ」

(゚、゚トソン「模那様……」
 
 
 人は、どうしようもないほどに人を愛してしまう時がある。
 何もかもを捨ててでも、愛した人だけを求めてしまう時がある。

 愛の亡者だ。愛してしまったばかりに、盲目になってしまった男が、目の前にいる。
 ブーンはこの二人がかなり哀れに思えた。

149 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:08:04 ID:Vx0gVzAYO
 
 自由にできず、幸せになれない恋愛なんて、ただ虚しいだけだ。
 この二人は愛し合っている。しかし、身分という理由だけで、幸せとは言えない愛を育んでいる。
 
 
(´・ω・`)「…ブーン、一つ聞いてみたいのだが」

(;^ω^)「あ、はい」

 急に話しかけられ、少し驚いたブーン。
 渚本介は気にすることなくブーンに尋ねてみた。

 
(´・ω・`)「お前のいた時代に、身分による結婚の禁止はあるのか」

( ´∀`)(゚、゚トソン「?」

( ^ω^)「…たぶん無いですお。基本的に、誰でも自由に恋愛ができますお」

(´・ω・`)「ならば、お前はこの二人をどう思う」

(;^ω^)「!」

150 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:09:00 ID:Vx0gVzAYO
 
 珍しく、やけに答えづらい質問をする渚本介。

 はっきり言って、哀れな二人だと思う。
 しかし、恋愛とはそう簡単に崩れるものではないと信じている。
 だって。


( ^ω^)「僕童貞だし…」

(´・ω・`)「え?」

(;^ω^)「いや何でもないです…とりあえず、僕は二人にはこのまま愛し合っていてほしいですお」

(゚、゚トソン「……」

( ´∀`)「何故?」
 

 今の言葉が嬉しかったのか。
 十遜は少し顔を上げ、模那は身を乗り出した。

151 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:09:57 ID:Vx0gVzAYO
 
( ^ω^)「愛というものはどこにでも生まれ、何にでも育てられるもんですお。たとえ武士と遊女の間でも」

( ^ω^)「だから二人には頑張ってほしいんですお。社会に打ち勝つ愛の形を示してほしいんですお!」

(#^ω^)「駆け落ちだってきっと上手くいきますお!!だから頑張って愛し合っていてくださいお!!」

(#^ω^)「かくいう私は童貞ですけどね!!!」

(;´・ω・`)「おい落ち着け、何を怒ってるんだ」

(;^ω^)「あ、すみませんお…」

(゚、゚トソン「……プッ」

( ´∀`)「アッハハ!そうかそうか、ありがとうブーン殿!」

(;^ω^)「え、はい、どうも…」

152 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:11:18 ID:Vx0gVzAYO
 
 十遜が可愛らしく小さく笑い、模那が大きく笑った。
 思えば、この二人は暫く笑っていないのかもしれない。
 心なしか、二人の顔が少し明るくなった気がする。

 
(´・ω・`)「まあ、俺も駆け落ち自体は否定しない」

 
 今度は渚本介が二人に意見し始めた。
 先ほどとは随分違った、軽い雰囲気が4人の間を流れていく。

(´・ω・`)「しかしお前ら二人が世から追い出されるべき状況にあるのも確かだ」

(´・ω・`)「だから二人は──」
 

 途端、渚本介は話を切り、本堂の壁をキョロキョロと見渡し始めた。

( ^ω^)「?」

( ´∀`)「どうなされた?」

153 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:11:59 ID:Vx0gVzAYO
 
 そのうち、渚本介はある一点を見つめて動かなくなった。
 その視線の先には、本堂の入り口が佇んでいる。
 渚本介が小さく呟いた。
 
 
(´・ω・`)「…誰か来る」

(;´∀`)(゚、゚;トソン「!?」

(;^ω^)「なんでわかるんですかお?」

(´・ω・`)「殺気だ。お前ら、ずっと追っ手に追われていたのか」

(;´∀`)「ああ…」

 
 渚本介が静かに立ち上がり、虎恍丸に手をかけた。
 その後ろで、三人が小さく固まる。

(´・ω・`)「………」

154 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/02(水) 12:12:12 ID:yqss.NVY0
俺も童貞だから支援

155 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:13:10 ID:Vx0gVzAYO
 
 向こうもこの廃寺の本堂に人がいるのはわかったようだ。
 扉の向こうで、明らかに気配が変わった。

 
(´・ω・`)(……来る!)

(#∂A∂)「行けい!!」
(<#`θ´)「おおおおお!!」
 
 
 大柄な二人の男が、本堂の扉を蹴破ってきた。
 あっという間に中に入り、虎恍丸を抜いた渚本介と対峙する。
 しかし、二人の視線は別の人間を捕らえていた。
 

(#∂A∂)「やはりここに居たか…濱田模那よ」

(<#`θ´)「武士の心を排し、遊女なんかと駆け落ちするなど、大層な御身分だな!」

(;´∀`)「う、うるさいモナ!貴様らには関係ないモナ!」

156 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:13:57 ID:Vx0gVzAYO
 
(#∂A∂)「その上、見知らぬ刀持ちに用心棒をさせるのか?つくづく武士の恥曝しだな」

(<#`θ´)「…なれば、この用心棒を斬るのみ」

 二人の目が、渚本介を向いた。
 既に刀は渚本介の方に構えられている。
 

(´・ω・`)「…やってみろ」

 
 渚本介が挑発をかけた途端。
 二人が、動いた。
 

(#∂A∂)「ハァッ!」
(<#`θ´)「オラァッ!」

 一人の男が斜めから小さく刀を振り下ろし、そのまま渚本介の胸を目掛けて突いてきた。
 それを紙一重でかわし、そのまま虎恍丸を払う。
 しかし、その払いの一手はもう一方の男の刀に阻まれた。

157 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:18:53 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)(チッ…)

 仕方なく、渚本介は阻んできた男の手首を蹴り上げた。
 隙のできた男の腹に虎恍丸を伸ばす。
 しかし、今度はもう一方の刀に弾かれた。
 そのまま刀の届かない所に回りこみ、渚本介は二人と距離を取った。

 息の荒くなった二人と、涼しい顔の渚本介が、静かに睨み合う。

 
(<;`θ´)「我ら二人を相手にここまでとは…」

(;∂A∂)「お主、何奴」

 
 予想外の強さに焦る二人。
 虎恍丸をゆっくりと構え直しながら、渚本介が答える。

 
(´・ω・`)「…太田渚本介」

(;∂A∂)「!!貴様、あの"戦魔"か!?」

(<;`θ´)「死んだはずでは…」

158 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:19:54 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「そう簡単に死ねるものではない。さあ、行くぞ」

(;∂A∂)(<;`θ´)「っ…!」

 
 渚本介の名を聞いて、明らかに動揺した二人。
 集中力の欠けた二人に、渚本介が一気に攻めこむ。

 
(;∂A∂)「く…うおおおお!!」

 真正面から踏み込んできた渚本介に、刀を横に薙ぎ払う。
 しかし、渚本介は瞬時に膝を90度近くまで曲げて上体を逸らし、刀をかわした。
 渚本介のあまりにも無茶な体制に、一瞬の隙が生まれた男。
 その喉を、虎恍丸が貫いた。
 

(<;`θ´)「クソッ…死ねェ!!」

 もう一方の男が、渚本介の正中線を目掛けて小刻みに突いてきた。
 かわしにくく、殺傷力の高いその攻撃を、回るように避ける。
 そのまま渚本介は男の首を斬った。

159 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:20:54 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「ふん」

 大きく痙攣しながら、ゆっくりと崩れ落ちる二人。
 渚本介は虎恍丸を鞘に戻し、三人の方を向いた。
 

(;^ω^)(つ、強ぇぇぇ!!)

(;´∀`)「なんとお礼を申し上げたらいいのやら…面目ない」

(゚、゚;トソン「……」

(´・ω・`)「おい」

 
 安堵の声を上げる模那に、渚本介は早足で近づいた。
 その表情は少しだけ怒りに染まっている。
 渚本介は模那の目の前まで来ると、胸元を掴んで持ち上げた。
 

(;^ω^)「ちょ、何してんすか渚本介さん!」

(゚、゚;トソン「や…やめてください!」

(;´∀`)「何するんだ…離せモナ!」

(´・ω・`)「……」

160 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:21:57 ID:Vx0gVzAYO
 
 ブーンと十遜の制止を聞かず、模那を締め上げ続ける渚本介。
 渚本介にしては少し大きな声が、本堂に響いた。

 
(´・ω・`)「武士の心を拝するも結構。武家の血を切ってでも女を愛するも結構」

(´・ω・`)「だがな、その愛した女を守ろうとせず、刀を抜くこともしないとは何事だ。最初にブーンを斬ろうとした威勢と覚悟はどうした!」

(;´∀`)「……」

(´・ω・`)「駆け落ちなんてそんなものだ。愛に溺れてしまえば、人は野兎の如く落ちぶれる。半端な覚悟ならやめてしまえ」
 

 締め上げていた手を離し、模那を落とした渚本介。
 尻餅をついて咳き込む模那に、まるで関係ないかのように背を向ける。

161 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:23:06 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「ブーン、行くぞ」

(;^ω^)「は、はい…」
 

 背を向けて普通に歩き行く渚本介と、何度か振り返ってぺこぺこと頭を下げるブーン。
 渚本介が本堂の扉に手をかけた途端、廃寺が揺れそうなほどの怒声が本堂に響いた。

 
(#´∀`)「太田渚本介ェェェ!!!!」

(;^ω^)「うおっ!?」

(゚、゚;トソン「!?」

(´・ω・`)「……」
 
 
 声の方を振り向く。
 そこには、刀を抜いた模那が此方を睨んでいる姿があった。

162 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:24:21 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「なんだ」

 あくまで冷静にいる渚本介。
 しかし、心なしかその目は少し嬉しそうだった。

 
(#´∀`)「貴様の言う通りだ!!拙者は心の弱い、もとより武士失格の男!!」

(#´∀`)「だからこそ強くなる!十遜を守れる男になってみせん!!」

(#´∀`)「勝負だ渚本介!!刀を抜け!」

(´・ω・`)「…いいだろう」

 
 刀を向ける模那。
 その模那を見つめながら、虎恍丸を抜いて歩み寄る渚本介。

 止めることはできなかった。
 いや、止めてはいけないと感じた。

163 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:25:23 ID:Vx0gVzAYO
 
 愛した女を守る為に、強くなると決心した男。そして、それに応える男。
 刀を構え、静かに睨み合う。
 
 
(#´∀`)「う…」

(´・ω・`)「……」

(#´∀`)「うわあああああ!!」
 

 勝負が始まった。

 刀を振り上げて走ってくる模那と、攻撃を待つ渚本介。
 決着は、一瞬で決まった。
 

 
(;´∀`)「がはっ…!」

(´・ω・`)「……」
 
 
 渚本介の峰打ちが、模那の腹を捕らえたのだ。

 片膝をつき、腹を押さえる模那。
 両手を添えながら、その様子を心配そうに見つめる十遜。

164 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:26:52 ID:Vx0gVzAYO
 
 虎恍丸を鞘にしまい、渚本介は模那の前に行ってしゃがみこんだ。
 その目は、先程とは違って優しさに染まっている。
 

(´・ω・`)「確かに、お前は刀術に優れているわけではない。しかし、その精神と愛さえあれば、女一人は守りきれる」

( ´∀`)「……」

(´・ω・`)「いい攻撃だった」

( ´∀`)「…感謝致す…渚本介殿……」

(゚、゚トソン「……」

 
 愛する女を守るのに、喧嘩の強さなんて要らない。
 愛する女を幸せにするのに、刀術なんて必要ない。
 気持ち次第で、男は女を幸せにできるものだ。

 渚本介はそのまま座り込むと、今度はブーンの方を向いた。

165 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/02(水) 12:27:30 ID:/TIyQXggO
平日のこんな時間に…お察しします。
支援

166 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:27:58 ID:Vx0gVzAYO
 
(´・ω・`)「ブーン、ぎたーを弾いてくれ。曲は任せる」

( ^ω^)「了解ですお」
 
 
 背負っていた荷袋からギターを取り出し、三人の前に座って構えるブーン。
 模那と十遜が不思議そうに見つめるなか、ブーンは演奏を始めた。

 曲は福山雅治の「you」のソロギター。
 純情な愛の旋律が、廃寺の本堂に響き渡る。
 
 
( ´∀`)「……」

(゚、゚トソン「……」
 

 愛してしまったのなら、その愛に従えばいい。
 身分の差なんて、二人の生活の中で忘れてしまえばいい。

 ブーンのギターの音色を、二人はずっと、静かに聴き入っていた。
 
 
 
──

167 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:29:16 ID:Vx0gVzAYO
──
 

 模那と十遜がいつまでも手を振るのを背に、ブーンと渚本介は廃寺から歩き出した。

 駆け落ちの現場を見ること自体ブーンは初めてだったが、そういう愛も悪くないな、と思った。
 あの二人には幸せになってほしい。
 いつまでも一緒にいてほしい。
 ブーンは久しぶりに清々しい気持ちになっていた。
 
 
(´・ω・`)「なんだ、妙に清々しい顔だな」

( ^ω^)「だって久々に良いものが見れたんですお」

(´・ω・`)「はは、そうだな」
 

 良い二人だったな、と渚本介が呟いた。

 十遜を守り、幸せにする為に頑張っていた模那。
 しかし、この二人が今でも充分幸せそうに見えたのは、果たしてブーンの勘違いなのか。
 
 
 
第五話 終

168 ◆vVv3HGufzo :2011/03/02(水) 12:31:12 ID:Vx0gVzAYO
今回の投下は以上で終わりです!
ご支援ありがとうございました!

それにしても、人を愛するというのは本当に素晴らしいことですよね
かくいう私は2ヶ月ほど前に彼女に振られましたけどね!!!

169 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/02(水) 12:34:02 ID:yqss.NVY0
http://www.youtube.com/watch?v=_n5dOysaKuQ
ボーカル付いてるけどこちらになります。

170 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/02(水) 13:22:54 ID:llNShr0E0
乙だが

先代からの地位を金に変えて身請けすればよかったんじゃね?

171 ◆vVv3HGufzo :2011/03/04(金) 00:17:31 ID:R3HxZqWwO
>>169曲紹介ありがとうございます!

>>170
いやその…なんというか……僕の勉強不足ですごめんなさい足の指舐めさせてください


暇なのでなんとなく描いてみました
僕のイメージです
http://l.pic.to/12zp93

172 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 18:16:18 ID:RfCKJHzw0
うめぇwwwwwww

173 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/05(土) 11:16:40 ID:h6vXpy6s0
服装が無双っぽいな

174 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/05(土) 16:00:08 ID:jcrNOu.20
>>171
かっこよすぎワロタwww

175 ◆vVv3HGufzo :2011/03/05(土) 23:58:22 ID:VEAuWDPEO
絵のほうもコメントありがとうございます!
太田が大田になってる気がしないでもないですが…いや気のせいだ

>>173
無双ってゲームのですよね?
僕はメタルギア信者なので他のゲームよくわからないんです…すまんこ

それでは、そろそろ本編の続きを投下します
長い投下になると思いますが、ちらちら覗いていただければ幸いです!

176 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/05(土) 23:59:41 ID:Zljvw2jU0
さぁこい!

177 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:01:39 ID:IMU23ugAO
***
第六話 「人の子は人」

***

 
 もう随分と根十城へと歩いていたが、ブーンはまったく進んでいる気がしなかった。
 理由はわかっている。歩けど歩けど森や山が広がっているばかりで、変わらない景色の中を延々と進んでいるからだ。
 渚本介曰く、根十城はもう少し歩けば着くそうだが、その「もう少し」が遠い。

 しかし、山を降りて久しぶりに町が見えた頃、ブーンの疲れきった気持ちは一気吹っ飛んだ。
 何故ならそこは。
 

(*^ω^)「海だお!!」

(´・ω・`)「ああ。ここは村田領の港町だ」

178 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:01:58 ID:IMU23ugAO
 
 村田領須貝付(すかいふ)。
 それほど大きくはない国だが、漁業の発達した景気の良い地域だ。
 その漁業の中心となる地が、今回ブーン達が訪れた須貝付という港町である。

 
(*^ω^)「海!海だお!!」

(;´・ω・`)「魚かお前は…」

 
 町に降りるなり、ブーンは浜辺に向かった。
 久しぶりの海。ブーンは荷物を置き、パンツ一枚の姿になって狂ったように海に飛び込んだ。
 近くにいた町の人達は、海で泳ぎ回る奇妙な人間に見入っていた。
 

(;´・ω・`)「おいブーン、頭がおかしくなったのか」

(*^ω^)「あっすいません、久しぶりの海なもんで!テンション上昇!今夜はパーリナィッ!」

(;´・ω・`)(ダメだこいつ…)

179 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:03:19 ID:IMU23ugAO
 
 ブーンが泳ぎ回り、渚本介が見守る。
 その後ろで、ブーンの荷物にコソコソと近づく少年が二人。

 
( ´_ゝ`)(行くぞ弟者)

(´<_` )(ああ)

 
 渚本介はまだこっちに気づいていない。
 少年はゆっくりとブーンのギターを掴むと、一目散に走り出した。

(;´・ω・`)「!!」

(;^ω^)「あっ!?」

(*´_ゝ`)「よっしゃあ走れ!!」
(´<_`* )「流石だよな俺ら!ひゃっほう!」

(;´・ω・`)「おい待t(#^ω^)「待ちやがれごらあああああ!!!!」

180 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:03:34 ID:IMU23ugAO
 
(;´_ゝ`)「うわ、なんか来るぞ!」

(´<_`; )「走れ兄者!!」

(#^ω^)「待てやクソガキ共ォォォォ!!!!」

 すばしっこい二人の少年と、必死に追いかけるパンツ一枚のブーン。
 重いギターを担いでいるのにも関わらず、少年達はとんでもない速さでブーンとの距離を離していく。

 家や店の間。魚の干乾し場の柵。それらをスイスイと飛び越えていく二人。

 
(;^ω^)「待てや!!」

(;^ω^)「待……ハァ…!!」

 
 やがて、少年二人の姿は完全に見えなくなった。

 

──

181 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:05:00 ID:IMU23ugAO
──
 

( ;ω;)「どうずりゃいいんだお゙お゙おおおじょぼんのずげざああああん゙!!!」

(;´・ω・`)「落ちつけ、とりあえず一緒に探しに行くぞ」

( ;ω;)「は、はいですお…」

 
 ギターが盗まれた。ギターが友達と言っても過言ではないブーンにとって、これは大事件であった。

 しかし、犯人がはっきりとわかっているのが不幸中の幸いだ。
 薄い顔の、双子のようによく似た二人。恐らくまだ十歳を過ぎた辺りでは無いだろうか。
 近くにいた町の漁師に聞くと、その二人はいとも簡単に特定できた。

182 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/06(日) 00:05:22 ID:40N/9IxAO
支援

183 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:05:22 ID:IMU23ugAO
 
 話によると、二人はやはり双子であり、町では有名ないたずらっ子ということだった。
 互いを兄者弟者と呼び合い、完璧なコンビプレイでいたずらを遂行する、町では完全にブラックリスト入りの二人であるらしい。
 町の人間にはよくいたずらをするが、人の物を盗むのは何故か今回が初めてかもしれない、とその漁師は話してくれた。

 ついでに二人の家の場所を聞くと、あっさりと答えてくれた。
 しかし、一つ問題があった。

 
(=`Δ´)「あんたら、あの家族に会いに行くつもりか」

(´・ω・`)「そうだが、何かあるのか?」

(=`Δ´)「そうか…いや、何でもない」

 
 言いづらそうに顔を伏せる漁師。
 気になったので別の人間にも聞き回ってみたが、皆同じように口を閉ざす状態だった。

184 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:06:41 ID:IMU23ugAO
 
(´・ω・`)(何か変だな…)

( ;ω;)「しょ、渚本介さん、どうしたんでずがお?」

(;´・ω・`)「いや、例の二人のことが…ってまだ泣いてたのか」

( ;ω;)「すんませんそろそろ泣き止むので…」

 
 何か変だ。
 町の人間が、まるであの二人を、というよりあの二人の家族を極端に避けている様子だ。
 いたずら好きな少年ならどこにでもいる。忌み嫌ったり、避けてしまう理由になんてなるはずがない。
 なのに、この町の人間達の態度はどこかおかしい。

185 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:07:23 ID:IMU23ugAO
 
 とにかく、まずは例の二人の家に行ってみるべきかもしれない。
 先ほどの漁師が教えてくれた場所は、この町から少し離れた山の中だった。
 

(´・ω・`)「ブーン、あの二人の家に行こう。きっとそこにぎたーもあるはずだ」

( ^ω;)「はいですお!」

(;´・ω・`)「なんだその妙な顔は」
 
 
 念のために町の商人達に話しかけて、ギターが売られていないかの確認をしながら、渚本介とブーンは双子の家に向かった。
 
 

──

186 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:08:07 ID:IMU23ugAO
──
 

 夕方。
 この場所から須貝付を見下ろすと、夕陽に照らされた町並みが綺麗に映えていた。
 きっと、海側から上る朝陽に照らされた光景は、もっと美しいのだろう。

 ブーンと渚本介の二人は少し傾斜の強い山を登り、例の双子の家に辿り着いた。
 
 
(;^ω^)「ああ疲れた…こんなところに家建てるとかドMだろ…」

(´・ω・`)「どえむ?」

(;^ω^)「あっ、いや何でもないですお」

(´・ω・`)「そうか、とにかく入るぞ」
 

 その家はかなり老朽化した状態で佇んでいた。
 家を支える木柱はところどころ虫に食われ、建築物としてはかなり危ない状態だ。

 渚本介もそれを察してか、玄関の戸を優しく叩いた。

187 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:09:31 ID:IMU23ugAO
 
 途端、家の中から二人分の足音が聞こえてきた。
 こんな夕方の来客に何も怪しむことなく、相手は勢いよく戸を開けた。
 

(;´_ゝ`)「はい!……ってうわああああ!!」

(´<_`; )「ぎゃあああ!!さっきのキチガイ南蛮人だ!」

 戸を開けるなり、何やら叫んで家の中へ駆け戻った双子。
 ブーンの顔に再び怒りが浮き出る。

 
( ^ω^)「……誰が…」

(#^ω^)「誰がチキン南蛮じゃごらあああ!!」

(;´・ω・`)「待てブーン。お前今何か変なこと言ってたぞ」

(#^ω^)「渚本介さん!早くあいつら追いましょう!!急がないと逃げられて──」
('、`*川「あの…」

188 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:10:47 ID:IMU23ugAO
 
 突然の女性の声に、暴れる寸前だったブーンはピタリと止まった。
 見ると、玄関のすぐ手前にか細い女性が一人立っている。
 歳は30代の半ばくらいだろうか。あの双子の母親だと予想できるその女性は、玄関先まで苦しそうに歩きつくと、ゆっくりと両膝をついた。
 

('、`*川「先ほどの楽器の持ち主でしょうか…息子達が迷惑をかけてしまい、申し訳ございませんでした」

(;^ω^)「あ、ハイ…」

('、`*川「どうぞお上がりください。私、あの双子の母親で、辺尼指(ペニサス)と申します」

(;^ω^)「あっ…その…」

(´・ω・`)「失礼致す」
 

 あまりにも礼儀正しい辺尼指に、逆に申し訳なさを感じてしまったブーン。
 しかし、渚本介が遠慮することなく家に上がったので、ブーンもその後に続いた。

189 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:12:00 ID:IMU23ugAO
 
 囲炉裏のある部屋に通されると、すぐに辺尼指が茶を持ってきた。
 足が悪いのか、その丁寧な仕草の一つ一つが危なっかしい。
 辺尼指は二人に茶を淹れると、改めて深く頭を下げた。
 

('、`*川「息子達が盗みという悪行を働いたことを、まことに反省しております」

('、`*川「例の品は無事に預かっております。ですから、願わくば命だけはお許しを…」

(;^ω^)「いやいや命なんか取りませんお!僕はギターさえ無事に戻ってきてくれれば、それで良いんですお」

('、`*川「有り難き幸せ…感謝致します」

(´・ω・`)「……」

('、`*川「あんた達、アレを返しなさい」

( ´_ゝ`)(´<_` )「……はーい」


 いつの間にいたのか。例の双子が此方を覗いたまま、元気の無い返事をした。
 双子はすぐにギターを持って、ブーン達のもとに帰ってきた。

190 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:13:10 ID:IMU23ugAO
 
 双子が持ってきたそれは、間違いなくブーンのギターだった。
 無事でいたことにホッと息をつく。
 辺尼指が双子を連れて奥で説教を始めたので、ブーンはギターを抱えながら渚本介に尋ねた。

 
( ^ω^)「それにしても、さっきの"命だけは"ってどういうことですかお?」

(´・ω・`)「え?」

( ^ω^)「さっき辺尼指さんが言ったことですお。盗んだくらいで命乞いなんて、昔よっぽど酷い経験でもしたんですかおね」

(´・ω・`)「何言ってるんだ。普通、盗っ人は即晒し首だぞ」

( ^ω^)「へえー……」

(;^ω^)「…え!?なんで?」

(´・ω・`)「なんでって、罪に罰を与えて公然に晒すのは当然だろう。これは平和というものに必要な、ある意味正当な犠牲だ」

191 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:14:39 ID:IMU23ugAO
 
(´・ω・`)「それが新しい罪への抑止になる。未来の日本にはこの制度はないのか?」

(;^ω^)「いやありますけど、死刑なんてよっぽどの罪じゃないとならないですお!盗みくらいじゃ、せいぜい罰金か短い懲役…幽閉ですお」

(´・ω・`)「何故だ?罪人は生きてる限り新たな罪を起こしやすいもんだろう」

(;^ω^)「そりゃそうですけど…」

 
 この時代に飛ばされて、ブーンは現代とのギャップに度肝を抜かされることがしばしばあった。
 今回もそうだ。現代との秩序観、罰則の違いに、ブーンは驚かされていた。

 
( ^ω^)「…こんな話がありますお。人々を殺していた悪魔を、罰として神様が殺した。では神様はその殺した罪に問われないのか。ってやつですお」

(´・ω・`)「ふむ…」

192 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:16:00 ID:IMU23ugAO
 
( ^ω^)「その神様が殺しの罪を働いたとなると、その神様も罰として殺されてしまうんですお」

( ^ω^)「つまり、罪を殺しで解決していくと、延々と殺しの螺旋が続いてくだけなんですお。盗っ人を罰として殺したとしても、殺したほうが間違いなく罪が重いんですお」

( ^ω^)「だから、日常的な晒し首とか死刑なんて、それこそ罪なんですお。罪には殺し以外の相応の罰があるんですお」

 
 罪人を平気で消していくのは、正当な罰とは言えない。正しい秩序ではない。
 もちろん、命を以て償われるべき罪もある。しかし、それは頻繁に起こり得る罪ではない。

 いくら罪人と言えど、その命を無駄に切っていくべきではない。
 それが秩序であり、命の在り方なのだ。
 

(´・ω・`)「……なるほどな」

193 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:17:12 ID:IMU23ugAO
 
(´・ω・`)「かなり勉強になったよ。そうか、未来とはやはり考え方が違うもんだな…」

 
 渚本介はやけに納得した様子で、何度も頷いている。
 奥でもちょうど説教が終わったらしく、双子がしょんぼりと部屋を出て行くところだった。

 辺尼指はブーンと渚本介の所に戻ると、またも深々と頭を下げた。
 

('、`*川「いくらお二方がお許しになられても、此方は罪を働いた身。食事と寝床の用意をさせていただけますでしょうか」

( ^ω^)「おっ、それなら遠慮なく泊まっていきたいお。大丈夫ですおね渚本介さん」

(´・ω・`)「ああ。宿屋代が浮くと思えばありがたいものだ」

('、`*川「わかりました。どうぞおくつろぎ下さい。食事が済んでから、風呂と寝床の案内をさせていただきます」

 

──

194 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:18:23 ID:IMU23ugAO
──
 

 あまり豪華とは言えない食事をたいらげ、風呂を上がったところで、ブーンと渚本介は先ほどの囲炉裏のある部屋でコソコソと話をしていた。
 須貝付の人間達がこの家族を避けている様子だったのを、渚本介が話題に出してみたからだ。

 正直、この家族を避ける理由など全く思い当たらない。
 むしろヘタな町人よりも礼儀正しく、好感の持てる女性が一家を担っているのだ。

 不可解な状況下にあるこの家族に興味を持ったのか、渚本介はいつも以上に真剣に考えていた。

 
(´・ω・`)「ブーン、何かこの家族に違和感はあるか?」

( ^ω^)「…僕は無いと思いますお。どこにでもいる普通の家族だとしか…」

(´・ω・`)「ううむ…」

195 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:19:23 ID:IMU23ugAO
 
 二人が黙って考えているところに、寝床の準備を終えた辺尼指が戻ってきた。
 やはり本人に聞くしかない。あまり大きな声で言えない事かもと考えた渚本介が、少し身を乗り出した。

 
(´・ω・`)「少し答え難いことかもしれぬが…」

('、`*川「なんでしょう」

(´・ω・`)「須貝付の人間はこの家族に対して妙な態度をとっていたのだが、理由を教えてくれないか」

('、`;川「!……」

 
 顔を伏せて黙り込む辺尼指。
 マズい質問だったか、と少し後悔していると、辺尼指はぽつぽつと語り出した。

 
('、`*川「……私のせいなのです」

196 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:21:26 ID:IMU23ugAO
 
('、`*川「畜生腹、というものを御存知でしょうか」

(´・ω・`)「!」

(;^ω^)「あっ…」


 聞いたことはあった。
 昔の日本では、双子を産んだ女性のことを「畜生腹」と称し、忌み嫌う風習があったのだ。
 それを避ける為に、双子の一方を捨てていた、なんて話も珍しくない。
 「畜生腹」の風習は現代でも一部で存在しているらしい。

 となると、辺尼指に何が起こったのかはある程度想像できる。

 
('、`*川「私はお産で足を悪くし、町の人間からはその畜生腹が原因で蔑まされてきました」

('、`*川「しかし、私の夫はそんな町の人間達にいつも反発しておりました。子を二人産んだくらいで何が悪いんだ、と」

197 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:22:50 ID:IMU23ugAO
 
('、`*川「しかし、夫が海難事故で死んでから、私達に対する町の人間達の扱いは更に酷くなっていきました。畜生の夫だから、海にも飲まれるんだ、って…」

('、`*川「それから私達家族は村八分にあいました。須貝付を追い出され、行くあてのなかった私達は、この廃屋に住まうことにしたのです」

 
(;^ω^)「……」

(´・ω・`)「……」

 
 かける言葉が見つからなかった。
 町の人間達は間違っている。いや、この習わし自体が間違っている。

 しかし、どうすればいいのだろうか。
 間違っているとしても、これからも町の人間達のこの家族に対する態度は、きっと変わりない。

 二人が黙りこくっていると、辺尼指は笑顔を残して去っていった。

 
( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「……」
 

 これほどまでに寂しい笑顔を、ブーンは見たことがなかった。
 

 
──

198 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:24:25 ID:IMU23ugAO
──
 

 夜も更けた頃。ブーンと渚本介は寝室にいながら、眠れない夜を過ごしていた。
 二人共起きているのに、特に話をするわけでもない。
 ただ眠れずに、この家族に起こっていることをひたすら考えていた。

 この家族の為に、自分に何かできないことはないのか。
 ただ天井をぼーっと眺めていると、その視界に急に双子が現れた。
 

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「…おい南蛮人、起きてるか?」

(;^ω^)「うわっ、なんだお急に」

(´・ω・`)「こんな夜中にまだ起きていたのか…」

( ´_ゝ`)「武士様も起きてたのか、ちょうどいいや」

(´<_` )「なあ、頼みがあるんだ」

199 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:25:34 ID:IMU23ugAO
 
 突然現れたかと思うと、何やら頼み事を言おうとする双子。
 とりあえず、黙って聞いてみることにした。
 

( ´_ゝ`)「南蛮人の持ってるそれ、琴っていう楽器なんだろ?琴を母ちゃんの前で弾いてほしいんだよ」

(´<_` )「母ちゃんは俺らが生まれる前から琴に憧れてたらしいんだ。だから是非弾いてくれよ」

( ^ω^)「……」

 
 心優しい少年達だ、とブーンは思った。
 ということは、昼間の双子の行動は、母親の為に刑を受ける覚悟で盗みを働いたのだろう。
 疲れきった母親に、琴を聞いて元気になってもらう為に。

 ただのいたずらっ子なんかじゃない。本当は、常に母親を想っている優しい子供達なのだ。
 しかし、彼らは一つ大きな間違いをおかしていた。

( ^ω^)「これ琴じゃねーお」

200 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:26:53 ID:IMU23ugAO
 
( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「……」

(;´_ゝ`)「……えっ」

(´<_`; )「なん…だと…?」

 
 そう、これは琴ではなく、ギターなのだ。
 琴を見たことのない双子にとっては当たり前の間違いかもしれないが、それにしても痛い。これは痛い。
 

(;´_ゝ`)「…じゃ、じゃあさ、これを琴だと言って母ちゃんに聴かせてやってくれよ!」

(´<_`; )「そうだよ!嘘でもいいから弾いてくれ!」

(;^ω^)「うんまあ…いいけど…」

('、`*川「こんな夜中にどうしたんだい」

(;´_ゝ`)(´<_`; )「!!」

('、`;川「…ってあんた達何してるの!!申し訳ございません、息子がまたも非礼を…」

(;^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくださいお!」

201 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:28:16 ID:IMU23ugAO
 
 急いで双子を連れ戻そうとする辺尼指を、ブーンが呼び止める。
 少し驚いたように辺尼指が振り向いた。

 
( ^ω^)「僕は子供達に頼まれたんですお。僕の持ってるギ…琴を、辺尼指さんに聴かせてやってくれって」

('、`*川「!」

 
 目を丸くした辺尼指が、双子の方を向いた。
 双子は嬉しそうにニヤニヤしている。

 
('、`*川「あんた達…」

( ^ω^)「ではいきますお」

 
 いつものように渚本介がブーンの見える位置に座り、ブーンがギターを構える。
 相変わらず目を丸くしている辺尼指と、わくわくした顔を向ける双子。その真正面で、ブーンは演奏を始めた。

 曲は久石譲の「summer」のギターアレンジバージョン。
 ゆったりと流れる時間や思い出、そして人の優しい感情を、ギターの音色に乗せて響かせていく。

202 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:29:03 ID:IMU23ugAO
 
('、`*川「……」

( ´_ゝ`)(´<_` )「……」

 
 うっすらと涙を浮かべる辺尼指。
 その両手には、双子の手がしっかりと握られていた。

 子が何人いようと、子供達は間違いなく親を愛している。
 それさえ親がわかれば、これ以上の幸せなんてないものだ。

 
 町の人間にいくら蔑まれようと、忌み嫌われようとも構わない。
 自分にはこの子達さえいればいい。
 と、そう思っているに違いない。
 辺尼指の頬をつたう雫が、それの何よりの証明になっていた。

 

──

203 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:30:34 ID:IMU23ugAO
──
 

 翌朝。
 ブーンと渚本介が寝床を出ると、既に朝食の用意ができていた。
 辺尼指が腫れた目で挨拶をし、そのまま三人で食事を始めた。

 
(´・ω・`)「ん?子供達はどうなされた?」

('、`*川「まだ寝ております。あんな夜中まで起きるもんだから…」

 そう言うと、辺尼指は小さく笑った。
 ブーンと渚本介にも、自然と笑顔がこぼれる。
 

('、`*川「…昨晩は本当にありがとうございました。息子達の嘘にも付き合ってくれて」

(;^ω^)「あれっ、バレてたんですかお?」

('、`*川「ええ。実は、私の父が琴作りの職人だったのです」

204 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:31:48 ID:IMU23ugAO
 
 ほう、と呟く渚本介。
 辺尼指は笑顔のまま続けた。

('、`*川「幼子の頃から、私は父の作る琴に強い興味がありました。しかし、これは偉い人が使うものだから、と絶対に触らせてくれなかったのです」

('、`*川「ですから私は琴に憧れのようなものを抱いておりました。それを息子達に話したのは随分前の事ですが…まさか覚えていたとは」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「本当に優しい息子達ですお」

 
 気分の良くなる、爽やかな朝。
 三人は温かい雰囲気の中、朝食を食べ終えた。

 しばらくすると、廊下の方から二人分の騒がしい足音が聞こえてきた。

205 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/06(日) 00:32:20 ID:DNPBHqZE0
http://www.youtube.com/watch?v=rqURgEh9jDM
今日の一曲、波の音も丁度よく

206 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:33:02 ID:IMU23ugAO
 
( ´_ゝ`)「おはよう母ちゃん!!見て見て、弟者とこれ作ったんだ!」

(´<_` )「名付けて"木の実鉄砲"!!兄者!狙いはあのキチガイ南蛮人だ!」

('、`;川「こ、こら…」

( ´_ゝ`)「バアアアン!!」

(;゚ω゚)「ぎゃあああああ!!」

 朝早くにも関わらずテンションの高い双子。
 いつの間に作ったのか。双子は自ら編み出した武器「木の実鉄砲」を構え、たくさんの木の実を放出させた。
 直後、その全てがブーンの顔面に命中した。
 

( ´_ゝ`)「やりい!!」

(´<_` )「流石だよな俺ら!!」

('、`;川「あ、あんた達何やってんの!」

207 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:34:08 ID:IMU23ugAO
 
( ^ω^)「……」
 
 前言撤回。こいつらを優しい子だなんて言った自分がバカだった。
 この双子はまごうことなくクソガキです。本当にありがとうございました。

 
( ^ω^)「てめえら……」

(#゚ω゚)「ちょっとそこ座れやあああああ!!」

(;´_ゝ`)「うわっ!逃げるぞ弟者!!」

(´<_`; )「おう!!」

(#゚ω゚)「待てやごらあああああああ!!!」

('、`;川「ああ、もうあんた達!」

(´・ω・`)「ははは」
 

 爽やかな朝は、一変して騒がしい朝になった。
 小さな双子を追いかけるブーン。オロオロする辺尼指。それを見て楽しそうに笑う渚本介。

 そこは、須貝付の町よりも賑やかな場所だった。
 
 
 
──

208 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:35:53 ID:IMU23ugAO
──

 
(´・ω・`)「随分と世話になった」

('、`*川「いいえ、こちらこそ。またお越しください」

( ´_ゝ`)「じゃあね武士様!あとキチガイ!」

(´<_` )「また来…いやなんでもない」

(#^ω^)「クソガキが…」

('、`;川「ああもう!…申し訳ございません」

(´・ω・`)「ははは、もう行くぞ」

( ^ω^)「わかりましたお。…覚えてろよ」

 
 三人の親子が見送るなか、ブーンと渚本介は歩き出した。
 須貝付の町とは反対側に、山を登っていく。
 ふと振り向くと、水平線から上る朝日に照らされた須貝付の町が、ブーンの目に飛び込んできた。

209 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:37:48 ID:IMU23ugAO
 
( ^ω^)「……」

 
 綺麗な港町だ。町は賑わい、人々は元気に行き交っている。
 しかし、すぐそこに見える辺尼指とその息子達が住むボロボロな家のほうが明るく見えるのは、果たして気のせいなのか。
 

(´・ω・`)「?どうしたブーン」

( ^ω^)「…なんでもないですお。行きましょうお」
 

 活気のある港町だろうと、陰気な山の中だろうと、人が住めば明るくなるものだ。
 そう、「人」が住むのだから。

 相変わらず傾斜の強い山道だったが、ブーンは昨日ほど苦しくなかった。
 白い朝の光が、なんだかやけに眩しかった。

 

第六話 終

210 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:39:43 ID:IMU23ugAO
今回の投下はこれにて。
ご支援、>>205の曲紹介、本当にありがとうございます!
毎回の曲紹介が何気にめちゃくちゃ嬉しいという

211 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/06(日) 00:40:40 ID:40N/9IxAO


ギターとか触ったことないから分からないけどこのブーン結構ハイスペック?

212 ◆vVv3HGufzo :2011/03/06(日) 00:45:44 ID:IMU23ugAO
>>211
ありがとうございます

このブーンはギターではかなりハイスペックな方です
今回のsummerもアコギではかなり難しい曲ですし…
てゆうか、ぶっちゃけ今まで物語の中で出してきた曲に、僕が弾けるのは一曲もありません
本当にありがとうございました

213 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/06(日) 00:46:49 ID:DNPBHqZE0
余計なことしてやしないかと思いつつTears in Heavenから曲紹介してたけど
喜んでもらえてるようで何よりです。
次回も楽しみにしてますお

214 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/06(日) 00:50:04 ID:40N/9IxAO
>>212
そうなのか、ありがとう。次も期待してる

215 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/06(日) 01:30:52 ID:K59Hr1z20
乙ャァァ!
ギター関連除いてもブーンは中々ハイスペック

216 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/06(日) 08:45:56 ID:CFKuqkT.O
乙です

>>177 第6話

217 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/13(日) 18:32:45 ID:M48noiUw0
ブーン系有名作者は地震と津波で死ね。ブーン系有名作者は地震と津波で死ね。ブーン系有名作者は地震と津波で死ね。
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218 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/13(日) 18:32:57 ID:M48noiUw0
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219 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/13(日) 18:33:07 ID:M48noiUw0
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220 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/13(日) 18:33:33 ID:M48noiUw0
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221 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 00:52:46 ID:VlUe/HtcO
コメントありがとうございます!

さあ第七話いきまっせ!ほれいきまっせ!

222 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/19(土) 00:54:33 ID:HemFoSno0
ジャーンジャーン

223 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 00:55:02 ID:VlUe/HtcO
***
第七話 「語るも友、黙るも友」

***

 
(´・ω・`)「村田領を出たら、すぐ二茶根瑠領だ。二茶根瑠領に入れば根十城は近いぞ」

( ^ω^)「もうそんなに進んだんですかお」

(´・ω・`)「ああ。しかし二茶根瑠領に入る前に寄っておきたい場所があるのだが、行っても構わぬか?」

( ^ω^)「?構いませんお」

 
 須貝付を出て、海沿いを歩いている二人。
 大平洋から吹いてくる潮風を浴びながら、ブーンと渚本介は二茶根瑠領に向かってひたすら進んでいた。

224 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 00:56:33 ID:VlUe/HtcO
 
 しかし、渚本介が珍しく寄り道の提案をしてきた。
 用件を聞くと「昔の馴染みの家に行く」そうだ。

 やがて二人は海沿いから逸れ、山道へと入っていった。

 
( ^ω^)「それにしても、地図もないのによく場所がわかりますおね」

(´・ω・`)「一度来た場所に地図は要らないだろう」

(;^ω^)「あそっか…」

 
 山道をずっと歩くと、今度は小さな川に着いた。

 潮風でベタついた体を少し洗い流し、水分をとったところで、二人は川沿いに歩き出した。
 渚本介曰わく、目的の家はこの川の上流あたりにあるらしい。

225 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 00:58:41 ID:VlUe/HtcO
 
 川沿いを上流に向かって歩きながら、ブーンが尋ねる。
 

( ^ω^)「てゆうか渚本介さん、一体何の用でその人の家に行くんですかお?」

(´・ω・`)「ああ…そいつは名を渋沢といって、腕の良い鍛冶職人として有名なのだ」

( ^ω^)「鍛冶屋ですかお」

(´・ω・`)「ああ。この虎恍丸も渋沢の作だ。あいつの造る武器は本当に質がいい」

( ^ω^)「じゃあ、渚本介さんは渋沢さんに虎恍丸を見せに行くんですかお?」

(´・ω・`)「まあそんなとこだな」

 
 鍛冶屋、鍛冶職人などといった言葉はよく聞くが、ブーンは実際の鍛冶屋というものがあまりイメージできていなかった。
 それにこれから会えるというのだから、自然に足取りも軽くなる。

 歩くこと一時間。二人は小さな建物の前に着いた。

226 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:00:04 ID:VlUe/HtcO
 
(´・ω・`)「ここだ」

(;^ω^)「…え?これ鍛冶屋?」

(´・ω・`)「なんだ不満か?」

(;^ω^)「いえ、そういうわけじゃ…」

 
 不満というより、拍子抜けだった。
 プレハブ小屋をそのまま木造にしたかのような外装。ブーンのイメージと重なっていたのは、屋根に煙突があることくらいか。
 工場のようなものを想像してたブーンにとっては、かなり意外な外観だった。

 
(´・ω・`)「行くぞブーン」

( ^ω^)「あ、はいですお」

 
 渚本介は小屋の前に立つと、大きく扉を叩いた。
 直後、「うっせえぞ!」というドスの効いた大きな返事が返ってきた。
 それを聞いて、遠慮なく扉を開けて中に入る渚本介。ブーンも速やかにその後に続いた。

227 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:01:58 ID:VlUe/HtcO
  _、_
( ,_ノ`)「なんだぁこんな昼間に……って渚本介じゃねえか!」
 

 中に居たのは、椅子に座っている初老の男性のみだった。
 ボロボロの扇子をたたみ、二人に豪快な笑顔を向ける。
 

(´・ω・`)「久しいな渋沢」
  _、_
( ,_ノ`)「ヒヒ、おめぇが刀を血錆だらけにしてきた以来だな!ところで、その南蛮人は何なんだ?」

( ^ω^)「ブーンといいますお、よろしくですお」
  _、_
( ,_ノ`)「南蛮人なのに言葉が通じるのか!ヒッヒッヒ!こりゃいいや!」

 
 癖のある笑い声でまたも豪快に笑い飛ばすと、渋沢は二人に座るよう促した。

 よく笑い、よく喋る、とても明朗な人間だとブーンは思った。
 バイト先や親戚にもよくいる普通のオッサンだ。こんなオッサンが鍛冶職人だなんて、あまり想像がつかなかった。

228 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:04:22 ID:VlUe/HtcO
  _、_
( ,_ノ`)「そんでェ渚本介!今日は何の用だい」

(´・ω・`)「虎恍丸を見てほしい」


 鞘から虎恍丸を抜き、渋沢に差し出す渚本介。
 それを受け取った直後、渋沢は明らかに難しい顔になった。
 その表情を見れば、虎恍丸の状態が良くないということがハッキリと伝わってくる。

 虎恍丸をじっくりと見ながら、渋沢は独り言のように呟き始めた。
 
  _、_
( ,_ノ`)「…おめぇにしちゃ、血錆は少ねえ方だ。こいつぁ問題ねェ」
  _、_
( ,_ノ`)「問題は刃こぼれだな。鋭い鉄板でも斬ろうとしたのかぃ?それとも──」

229 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:05:07 ID:VlUe/HtcO
 
 渋沢がゆっくりと顔を上げ、渚本介に目を合わせた。
 険しい視線が渚本介と重なる。

  _、_
( ,_ノ`)「斬馬刀…天野擬古成と合わせたのか」

(´・ω・`)「……」

 
 何も言わず、じっと渋沢を見つめる渚本介。
 その態度が渋沢の問いに対する肯定か否定かなど、聞き直すまでもなかった。

 視線を虎恍丸に戻し、刃を優しく撫でながら、渋沢が溜め息混じりに口を開いた。

  _、_
( ,_ノ`)「…刀ってェのは、人斬りの道具だ。その理由が護身や復讐でも、人さえ斬ってりゃ刀は生きる」

230 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:06:41 ID:VlUe/HtcO
  _、_
( ,_ノ`)「でもよ、人の魂までは絶対に斬れねえ。絶対にだ」

(´・ω・`)「……」
  _、_
( ,_ノ`)「考え直せ渚本介。おめぇが擬古成を斬ろうと、擬古成の天下統一の精神までは斬れねえ。刀っつーのは、所詮刀なんだ」
  _、_
( ,_ノ`)「おめぇか擬古成のどっちかが犬死にするだけさ。考え直すんだ」

 
 渋沢が話し終えると、その場に重い沈黙が生まれた。
 誰も何も言わないまま、ただ時間だけが流れていく。

 やがて、渚本介が口を開いた。

 
(´・ω・`)「……虎恍丸を鍛え直してくれ」

231 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:07:43 ID:VlUe/HtcO
 
( ^ω^)「!」
  _、_
( ,_ノ`)「……」

 
 渋沢の「考え直せ」という台詞を無視するかのように、虎恍丸の鍛え直しを依頼した渚本介。
 半ば諦めたように、渋沢も頷いた。

  _、_
( ,_ノ`)「ま、俺ぁこういうのが仕事だからよ!依頼がねえと飯も食えねえや!ヒッヒッヒ!」

(´・ω・`)「…すまない」
  _、_
( ,_ノ`)「とにかく、状態が悪ぃから時間はかかるぜ。表の川で釣りでもしてな!」

(´・ω・`)「それでは頼む」
  _、_
( ,_ノ`)「あいよ!」

 
 虎恍丸を預け、小屋を出た二人。
 刀が無いと落ち着かないな、と渚本介が笑う。

232 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:08:50 ID:VlUe/HtcO
 
 表にかけてあったいくつかの釣り具を勝手に取り、二人は川辺に立った。

(´・ω・`)「ブーン、川釣りの経験はあるか」

( ^ω^)「一応ありますお」

(´・ω・`)「ようし、勝負をしようではないか」

(;^ω^)「…はい?」

(´・ω・`)「俺は幼子の頃から釣りが好きでな。昼間は複数人で釣りをするのがいいってものだ」
 

 その気持ちはわからなくもない。
 しかし、渚本介が釣り好きとはまったくの予想外だった。
 ブーンの顔に、笑みが浮かぶ。

 
( ^ω^)「受けて立ちますお」

(´・ω・`)「ははは、上等じゃないか」

233 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:10:09 ID:VlUe/HtcO
 
 木の枝をそのまま削ったような竿に糸を通し、その先に針と餌をつけ、川に垂らす。
 ブーンと渚本介は、少し距離を取って釣りに臨んだ。

 暫くも待たないうちに、ブーンの竿に何やら手応えが来た。

 
(*^ω^)「おっ…?」

(´・ω・`)「む、もう来たのか」

 
 ブーンの糸の先に、何やら大きな影が見える。
 渚本介が横で見つめるなか、ブーンは竿を上げ始めた。

 
(*^ω^)「でかい!幸先いいですお!」

(;^ω^)「ってあれ?上がんね…うおっ…」

234 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:10:26 ID:VlUe/HtcO
 
 途端、ブーンの手応えは一気に軽くなった。
 尻餅をつきそうになりながらも、どうにか持ちこたえる。

 水面から跳ね上がった糸の先は、針が虚しく揺れていた。
 

( ´ω`)「逃げられちゃったお…」

(´・ω・`)「ははは、まだまだだなブーン…おっ」

( ^ω^)「お、今度は渚本介さんに!」
 

 今度は渚本介の竿がしなりだした。
 自分の針に餌を付けるのも忘れ、渚本介の様子を見守るブーン。
 直後、ブーンの時と同じような大きさの獲物を、渚本介はいとも簡単に釣り上げた。

235 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:11:40 ID:VlUe/HtcO
 
 釣り上げた魚を、水の貯まった桶に放り込む。

(´・ω・`)「川魚にしては大きいほうだな」

(;^ω^)(……すげえ…)

(´・ω・`)「さ、勝負はまだ始まったばかりだぞ」

(;^ω^)「おっお。わかってますお」

 
 流石は、自称釣り好き。
 今の一手だけで、ブーンはまったく勝てる気がなくなった。
 しかし、それでも諦めまいと糸を垂らし続ける。

 穏やかな時間が、二人を包んでいった。


 
──

236 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:13:26 ID:VlUe/HtcO
──

 
 結局、釣り勝負は夕暮れまで続いた。

 結果は、ブーンが2匹、渚本介が11匹。
 渚本介の圧勝で、勝負は決まった。

 
゙(ii´ω`)'「惨敗ですおー…」

(;´・ω・`)「いや落ち込みすぎだろ…夕飯は焼き魚だな」

( ^ω^)「お、了解ですお」
 

 夕飯に備え、慣れた手つきで火を起こす渚本介。
 少しばかりの沈黙が、その場に流れる。

237 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:14:35 ID:VlUe/HtcO
 
(´・ω・`)「ブーン…」

 
 ブーンの向かいで火を起こしながら、渚本介が不意に話しかけた。
 返事をする間もなく、続きの言葉がこぼれてくる。

 
(´・ω・`)「…俺をうつけ者だと思うか」
 

 火種を探す渚本介の顔は、薄暗くてよく見えない。
 しかし、先ほどまで釣りを楽しんでいた者とは思えないような重い口調が、今の渚本介の表情を容易に想像させた。

 
( ^ω^)「え…」

(´・ω・`)「本当はわかってるのだ。俺の復讐なんて、極まりなく無駄なものなのだと」

238 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:15:32 ID:VlUe/HtcO
 
(´・ω・`)「それでも、擬古成が来るであろう根十城への足は止まらぬ。擬古成を討たんが為の、虎恍丸を振るう腕は止まらぬ」

(´・ω・`)「幼子の我が儘さ。こんな俺を、うつけ者だと思うか」

( ^ω^)「渚本介さん……」
 

 言葉が出てこなかった。
 昼間の渋沢の短い説得に、多少なりとも心を揺らされたのだろう。

 煙の上がってきた枯れ枝を見つめながら、渚本介が続ける。

 
(´・ω・`)「釣りで重要な事は、魚との駆け引きだ。駆け引き次第で容易く釣り上げることができる」

( ^ω^)「……」

239 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:16:49 ID:VlUe/HtcO
 
(´・ω・`)「俺は復讐に身を走らせたいが為に、虎恍丸を鍛え直しに来た。あまつさえ、古き友の渋沢をも駆け引きの相手にしてしまったのだ」

(´・ω・`)「誰も俺を許さないだろうな…俺はただのうつけ者だ」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「…悪かったなブーン。さ、魚を焼くぞ。渋沢を呼んできてくれ」

( ^ω^)「…はいですお」

 
 渚本介に背を向け、小屋へと向かうブーン。
 先ほどの渚本介の台詞を反芻させながら、ゆっくりと歩き進む。

 あんなにも落ち込んだ渚本介を、ブーンは見たことがなかった。
 恐らく、後悔しているのであろう。
 そして自分を責めているのだ。

 復讐を止めようとしてくれた友に、復讐を手伝わせてしまっている事に。

240 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:18:14 ID:VlUe/HtcO
 
 小屋の扉を小さく叩き、中に入る。
 そこには、真っ赤になった虎恍丸をさらに火に入れる渋沢の姿があった。

  _、_
( ,_ノ`)「おうブーン!扉を開ける前に合図くらいしろや!」

(;^ω^)「え、あれ…しましたお」

( ^ω^)「……あっ」

 途端、ブーンは気付いた。
 渋沢は少し耳が遠いのだ。
 此処を訪れたときの渚本介の大きなノックは、それを気遣ってのものだったのだろう。

 二人の友情が垣間見えた気がして、ブーンは少し嬉しくなった。

 
( ^ω^)「渋沢さん、外で夕飯を用意してますお」
  _、_
( ,_ノ`)「おうそうか!客に飯を用意させるたァ、俺も偉くなったもんだぜ!ヒッヒッヒ!」
  _、_
( ,_ノ`)「おうし待ってろ!こいつをもう一回り叩いたら飯だ!」

241 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:19:32 ID:VlUe/HtcO
 
 そういうと、渋沢は分厚い鎚を手に取った。
 これから始まる刀の鍛え直しに、急に興味が湧いてくる。
 

(*^ω^)「渋沢さん、ちょっと見ててもいいですかお?」
  _、_
( ,_ノ`)「なんでェ、鍛冶屋が珍しいのかい?ヒッヒ、そういや南蛮人は飛び道具しか使わねえって話だな!」
  _、_
( ,_ノ`)「よーしそこに座ってろい!火花が飛ぶと危ねェからな!」

(*^ω^)「ありがとうございますお!」

 
 渋沢はもう一度此方を向いてニヤリとすると、火の中から刀を戻した。

 左手に持った大きなペンチのようなもので取っ手を押さえ、右手の鎚を赤い刃に振り下ろす。
 直後、金属的な乾いた音と共に、綺麗な火花が辺りに散った。

242 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:21:05 ID:VlUe/HtcO
 
(*^ω^)「おお…」

 
 カン、カン、と音は響き続ける。
 その度に火花が散り、薄暗い小屋を明るく照らす。

 暫くその作業に見入ってると、渋沢が手を休めぬまま話しかけてきた。

  _、_
( ,_ノ`)「なァ、渚本介の野郎、何か言ってたか?」

( ^ω^)「え?」
  _、_
( ,_ノ`)「いや、まさかと思ってんだがよ!まさかあいつ、俺に虎恍丸を鍛え直させてるのを後悔してんじゃねェのか?」

(;^ω^)「ど、どうしてわかったんですかお?」

 
 隠したつもりはないが、まさかバレているとは思わなかった。
 渋沢の横顔を見ると、作業に歯を食いしばりながら、少しだけニヤリとしていた。

243 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:23:01 ID:VlUe/HtcO
  _、_
( ,_ノ`)「ヒッヒ、やっぱりそうか!あいつは昔からそういう奴さ!何かある度に自分を責めやがる!」
  _、_
( ,_ノ`)「いつもに何かに後悔しながら、復讐の旅をしてんだぜ…お笑い草さ!んな人生なら捨てちまえって話なんだよ!」

 
 ふと手を止め、腰を逸らす渋沢。
 横にあった布で顔を拭くと、そのまま布で刀を煽り、ゆっくりとかぶせた。

  _、_
( ,_ノ`)「あいつはやっぱり、復讐を続ける気なのか?」

( ^ω^)「…そうですお」
  _、_
( ,_ノ`)「死なねェとわかんねえらしいなあの阿呆は。復讐なんて誰かが死ぬだけだってのによ」

 
 さあ飯だ。と先に小屋を出る渋沢。
 すれ違う瞬間、ブーンは見た。

 渋沢の顔が、悲しみに染まっていたのを。
 


──

244 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:24:20 ID:VlUe/HtcO
──

 
 空はすっかりと暮れ、魚を焼くための火が辺りを強く照らしている。
 その火を、既に渚本介と渋沢が囲んでいた。

 
(´・ω・`)「ん?ブーンはどうした」
  _、_
( ,_ノ`)「あぁん?あんやろ、まだ中にいんのか」

 
 少し気になって、小屋の方へと目を向ける二人。
 その視線の先で、ちょうどいいタイミングで扉が開いた。

 そこには、少し張り詰めた顔のブーンが立っていた。
 その肩にはギターが掛かっている。

 
(´・ω・`)「…ブーン?」
  _、_
( ,_ノ`)「んだァありゃ?南蛮の武器か?」

245 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:25:42 ID:VlUe/HtcO
 
 火を囲う形でどっしりと座り込むブーン。
 少し混乱したような二人に、ブーンが口を開く。
 

( ^ω^)「渚本介さん、心配はご無用ですお。渋沢さんは確かに渚本介さんを心配してるけど、それでも背中を押してくれる友なんですお」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「渋沢さん、渚本介さんは強いんですお。簡単には死にはしませんお。それに…」
  _、_
( ,_ノ`)「……」

 
 二人の顔をもう一度見て、表情を崩すブーン。
 

( ^ω^)「渚本介さんは、なにも復讐しか見えてないような人間じゃないですお」

246 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:27:01 ID:VlUe/HtcO
 
 少し恥ずかしそうに、一瞬だけ、渚本介と渋沢は目を合わせた。
 途端、二人は目を逸らしながら苦笑いを浮かべた。

 
( ^ω^)「…それが友情ってやつですお」

 
 柔らかな雰囲気のなか、ブーンはギターを構え、ゆっくりと演奏を始めた。

 曲はKiroroの「best friend」のソロギター。
 人を思う気持ちが、朗らかな旋律に乗って、その場に流れていく。

 
(´・ω・`)「……」
  _、_
( ,_ノ`)「……」

 
 友を気遣うこと。心配すること。引き留めることも、背中を押すことも。
 すべてが友情であり、友の証なのだ。

 物静かな渚本介も、口うるさい渋沢も、ブーンの演奏に静かに聴き入っていた。

 ひどく心地の良い、暖かい夜だった。
 そう思えたのは、果たしてこの三人の囲う小さな火のおかげなのか。

 

──

247 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:28:02 ID:VlUe/HtcO
──

 
 翌朝。
 陽の光が眩しい川辺で、渚本介は渋沢から新しくなった虎恍丸を受け取った。

  _、_
( ,_ノ`)「おめぇの刃を合わせる戦い方を考えて、耐久性を考えて鍛えた。少し重くなってるが問題ねェか?」

(´・ω・`)「ああ」

 
 渚本介は近くの木を軽く蹴り、落ちてきた葉に居合いを合わせた。
 数秒遅れて、葉は二つに分かれた。
 

(´・ω・`)「相変わらず質の良い上がりだ」
  _、_
( ,_ノ`)「ヒッヒ!そりゃどーも!」

248 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:29:16 ID:VlUe/HtcO
 
 虎恍丸を鞘にしまい、懐から小銭入れを取り出した渚本介を、渋沢は慌てて制した。

  _、_
( ,_ノ`)「ああ代はいらねェよ!こっちも暇つぶしに刀叩いたようなもんだ!」

(´・ω・`)「しかし…」
  _、_
( ,_ノ`)「代はいらねェけどよ、一つ約束してくれよ」
 

 小さく首をかしげる渚本介。
 後ろで荷物を用意していたブーンが、少し笑った。
 
  _、_
( ,_ノ`)「絶対に死ぬんじゃねェぞ!擬古成を斬ったあとは、またうちに寄ってくれや!そん時は酒出してやらァ!」

(´・ω・`)「ははは、わかった、約束しよう」

249 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:30:13 ID:VlUe/HtcO
  _、_
( ,_ノ`)「おめぇもだブーン!またそのぎたーとやらを弾いてみせろよな!」

( ^ω^)「了解ですお!」

 
 荷物を持ち、ブーンと渚本介は渋沢を背に歩き出した。

 何度も振り向いて手を振るブーン。その横で、渚本介は前を向いたまま歩き続ける。
 しかし、渚本介の顔はこれまでに無いほど明るいものだった。

 渋沢の癖のある笑い声が、二人のずっと後ろから聞こえてきた。
 


第七話 終

250 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/19(土) 01:31:49 ID:HemFoSno0
http://www.youtube.com/watch?v=u8bUzMJtCRM
今回はこちら様

251 ◆vVv3HGufzo :2011/03/19(土) 01:33:58 ID:VlUe/HtcO
今回の投下はこれにて。
>>250さん、曲紹介ありがとうございます!
ヒッヒッヒ!

252 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/19(土) 01:39:05 ID:HemFoSno0
そして乙ー
いい感じで和めました

253 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/19(土) 01:43:12 ID:65u996QE0
乙です! 毎度わくわくします。

254 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/19(土) 02:25:00 ID:ZKOT5IPkO
乙乙!

255 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/19(土) 22:26:44 ID:rq8XMcl.0

やっぱり友情っていいな

256 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:26:14 ID:VuIUXoJAO
コメントありがとうございます!
なんて温かいんだここは…まるで膣のようだ

そろそろ行きますぜ第八話!カモン!

257 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:30:02 ID:VuIUXoJAO
***
第八話 「如何なる音も、闇を照らす」

***

 
 二茶根瑠領、根十城。

 領土自体はさほど大きくはないが、どの国にも引けを取らない武力を誇る国だ。
 その軍隊の中心指揮地であり、二茶根瑠一族の居城が、この根十城なのだ。

 小高い丘の上に位置する根十城からは、二茶根瑠領をある程度見渡すことができる。
 その景色の美しさは、ブーンのいた五百年後には観光名所や絶景スポットとして知られるほどだ。

258 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:30:40 ID:VuIUXoJAO
 
(*^ω^)「すげえお…」


 その景色に見とれながら、ブーンは渚本介に付いて丘を登っていた。

 疲れが吹き飛ぶほどの景観だ。
 緑が茂る山に、遠くに浮かぶ水平線。
 そして、二人が歩く先にそびえる大きな城。

 夕暮れの近い時刻ということもあって、そこはとても心地良い場所だった。
 涼しい風が、二人の体を撫でていく。

 
(*^ω^)「すごく良いところですお…こんなところに城を建てるなんて、二茶根瑠家も贅沢なもんですお」

(´・ω・`)「ははは、そうだな」

259 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:31:29 ID:VuIUXoJAO
 
 その心地良さに半ば酔っていたブーン。
 しかし、根十城のすぐ手前まで来ると、その軽々しい気分は一気に重く落ちた。

 かつて訪れたことのある二子堂城とは比べものにならないほど、根十城の威圧感はとてつもなかったのた。
 その巨大さだけじゃない。何か重苦しい空気のようなものを、ブーンは感じていた。

 
(´・ω・`)「…どうした?」

(;^ω^)「あ、いえ、何でもないですお」

 
 門の辺りまで来ると門番が詰め寄ってきたが、前回のように渚本介が軽くあしらい、二人は根十城の中へと入っていった。

 

──

260 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:32:45 ID:VuIUXoJAO
──

 
( ゚д゚ )「……真か?」

(ー_ー)「はい、まごうことなく太田渚本介本人でございます。それに、妙な南蛮人を引き連れておりました」

( ゚д゚ )「用は?」

(ー_ー)「それが、二人はそれぞれ別の目的があるようで。太田渚本介は“来る天野勢に対する戦力になりたい”と。南蛮人の方は、“二茶根瑠家近習の尾付出麗に会いたい”とのことです」

( ゚д゚ )「ふむ…」

 
 二茶根瑠領領主、二茶根瑠巳留那(みるな)。

 その鋭い目を近習頭の尾付比岐(ひき)に合わせ、空気が張るほどの重く低い声を向ける。
 立派な椅子に腰を下ろし、体を大きく広げるその姿は、流石は一国一城の主だと思ってしまうほどのものだ。
 齢は既に初老と呼べるもだが、その風貌からみえる威圧感からは、年齢以上のものを感じさせられる。

 
 巳留那は、渚本介とブーンが自ら居城する根十城を訪れたことを、比岐から告げられていた。
 とりあえず二人に此方まで来るように指示し、小さな椅子に座る。

261 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:33:51 ID:VuIUXoJAO
 
 待つこと数分。
 巳留那の前に現れたのは、確かに“戦魔”と唱われた太田渚本介と、妙な衣を着て妙な道具を持った南蛮人、ブーンだった。
 渚本介は巳留那の目の前で礼儀正しく座り、ブーンはその横でぎこちなく座りこんだ。

 
(;^ω^)(すっげえ威圧感だお…)

( ゚д゚ )「珍しい顔が来たものよ…戦魔、太田渚本介よ。お前の用はなんだ」

(´・ω・`)「はっ。某(それがし)、彼の天野擬古成が、近いうちに根十城に攻めるとの話を耳にしております」

(´・ω・`)「擬古成には私怨が存ずる故、某が貴勢に加わり、擬古成を討たんと考えております」

( ゚д゚ )「フ…正直な口よの」

262 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:34:50 ID:VuIUXoJAO
 
 太田渚本介の話は聞いたことがあった。
 天野擬古成に強い復讐心を抱き、その首を取る為に旅を続ける武者。

 この話が本当なら、今回の渚本介の依頼も合点がいく。
 巳留那は暫く黙り込んだ後、小さく頷いた。
 

( ゚д゚ )「余は戦功や武勲など欲さぬ。特にこの戦、天野勢に城を落とされさえなければ、それで良いと思っておる」

(´・ω・`)「……」

( ゚д゚ )「擬古成のことは好きにしろ。但し我軍を惑わすようなことは決して許さぬ」

(´・ω・`)「はっ。有り難うございます」

( ゚д゚ )「…して、そこの南蛮人」

263 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:36:02 ID:VuIUXoJAO
 
(;^ω^)「え、はお、は、はいお」

 
 巳留那と渚本介のやりとりを生唾を飲んで見ていたブーンは、急に呼ばれたことに大きく驚いた。
 そんなブーンの様子を気にかけることなく、巳留那が続ける。
 

( ゚д゚ )「余の近習、尾付家の者に会いたいとな?」

(;^ω^)「は、はっ、そうでごぜえます」

(;´・ω・`)(ごぜえますってお前…)

( ゚д゚ )「ふむ、理由は何だ」

(;^ω^)「は、えと、こないだ尾付出麗さんの、こ、琴爪を拾ったんですお。そそそれを渡そうと思って」

( ゚д゚ )「琴爪か…」

264 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:37:32 ID:VuIUXoJAO
 
 ブーンの言っていることに嘘は無い。
 拾った琴爪を出麗に渡し、元の時代へ帰るヒントが欲しい、というのがブーンの本音だった。

 たかが近習を務める娘に会うだけだ。簡単に許可は下るはず。
 しかし、巳留那の発した言葉は、ブーンにも渚本介にも予想外なものだった。

 
( ゚д゚ )「……比岐よ」

(ー_ー)「はっ」

( ゚д゚ )「この南蛮人を捕らえよ」

(ー_ー)「御意」

(;´・ω・`)「!!」
 

 巳留那の命で、比岐が屈強な男二人を呼んだ。
 その二人がブーンの後ろに回り、腕を胴ごと縛り始める。

 
(;^ω^)「えっ?え?」

(;´・ω・`)「なっ、待たれよ巳留那殿!何故に!」

265 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:38:40 ID:VuIUXoJAO
 
 室外に連れていかれそうになるブーンを見て、思わず立ち上がって声を張り上げる渚本介。
 それを見ながら、巳留那が落ち着いた様子で口を開く。

 
( ゚д゚ )「我が二茶根瑠家近習、尾付の者は滅多に城外に出ぬ。ましてやその娘の出麗は琴を嗜む女子故、全く外に出ぬのだ」

( ゚д゚ )「その娘の琴爪を持っているなど、盗人でもない限り考えられぬ」

(;´・ω・`)「なれば盗人が立ち入ることも出来ぬはず!どうかお考え直しを!」

( ゚д゚ )「ふん、もうよい。行け」

(ー_ー)「はっ」

(;´・ω・`)「巳留那殿…!!」

(;^ω^)「えっ、嘘、嫌だお、死にたくないお!!渚本介さん!」

266 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:39:58 ID:VuIUXoJAO
 
 二人の男に腕を抱えられ、引きずられるように遠ざかるブーン。
 助けてくれ、という強い思いだけを込めて、渚本介の名を何度も呼び続ける。
 

(;´・ω・`)「ブーン!……ッ!」

 しかし、ブーンにあまり構っていると、自分も疑われかねない。

 ブーンの姿が見えなくなるのを、渚本介は黙って見ている他なかった。
 

(;´・ω・`)「……」

( ゚д゚ )「本当はお前も疑い、引っ立てるべきだ。しかし戦が近い。そのような暇があれば、兵どもの士気を上げるよう努めよう」

 
 吐き捨てるように言うと、巳留那はおもむろに立ち上がって客間を出た。

 全くの予想外の出来事に、途方に暮れる渚本介。
 外界は夜を迎えようとしていた。
 


──

267 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:41:26 ID:VuIUXoJAO
──

 
( ;ω;)「し、死にたくな、ないお、渚本介さん…」

 
 根十城地下牢。
 窓も灯りもなく、布団の代わりだとでも言わんばかりに積み重なる藁があるだけの部屋。
 人生で一度も入ることはないだろうと思っていた牢屋に、ブーンは放り込まれていた。


 ギターなどの荷物を没収されたブーンは、その暗い部屋で恐怖のあまりに涙を流してした。
 盗みの罪が疑われているのだ。下手をすれば死んでしまう。

 それだけは何が何でも嫌だった。
 この時代に飛ばされて何日何ヶ月が経ったのかは知らないが、必ず生きて元の時代に戻ることを夢見ていたのだ。
 それが今、ブーンは元の時代に戻るどころか、この時代で死刑を受けそうになっている。

 涙も、全身の震えも、一向に止まろうとしなかった。
 現状を考える度に、気が変になりそうだった。

268 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:42:23 ID:VuIUXoJAO
 
 不安なのは、それだけじゃなかった。

 この時代に飛ばされてから、いつも側に居てくれた男が、そこにいない。

 
( ;ω;)「ヒック…お腹、空いたお…」

( ;ω;)「しょ、渚本介さん……」

 
 お腹が空いたと漏らす度に、笑って飯の時間だと言ってくれた渚本介。

 まさかこんな別れ方をするとは思っていなかった。
 ブーンを相棒と呼んでくれた彼の男は、もう、仲間ではないのだ。

 盗人と兵が、共存していいはずがないのだから。

 

──

269 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:44:15 ID:VuIUXoJAO
──
 

 根十城内部に小さく設けられた兵士宿舎。
 大勢の兵が火を囲んで談笑する広間で、渚本介は一人、寝転びながら夜空を眺めていた。

 
(´・ω・`)「……」

 
 眠れるものなら今すぐにでも眠ってしまいたいが、目を閉じる度に色々な考えが脳裏をよぎる。

 再びまみえることになる天野擬古成のこと。この戦が終わってから、その後のこと。
 そして、幽閉されているブーンのこと。

 
(´・ω・`)(戦が終わるまで、死刑を執行するはずが無いか…)

 ブーンを助けるのは、戦が終わってからでも大丈夫だろう。
 巳留那とうまく掛け合えば、釈放も充分有り得るはずだ。

270 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:45:16 ID:VuIUXoJAO
 
 気がかりなのは、この戦だ。
 天野勢は必ず近いうちに城を攻めてくる。
 下手をすれば今すぐにでもだ。

 擬古成はそういった夜襲、奇襲を好む。
 スムーズに戦を運び、時間をかけることなく勝利を収める男である。

 もっと警戒するべきだ。
 しかし、兵士達はすっかり日常の気分に入っている。今から士気を上げようなんて無理な話だ。

 
(´・ω・`)「……」

 
 よく考えてみると、やっぱり今日はそこまで警戒する必要は無いのかもしれない。
 昼間に根十城を訪れたとき、一軍がやってくる気配はまるで無かったからだ。

 今晩くらいは、重い警戒はしなくていいのかもしれない。
 渚本介は一つ深呼吸すると、再び夜空を眺め始めた。

 

──

271 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:46:19 ID:VuIUXoJAO
──
 

 夜もすっかり更けた頃。
 時間の感覚を感じられない地下牢では、ブーンが一人、藁の上に横たわっていた。
 

( ´ω`)「…マジでお腹空いてきたお……」

 
 どちらかと言えばよく食べる方だったブーン。
 昼から何も食べていないことを思い出し、腹の虫が鳴くのを聞きながら、ブーンはただ横たわっていた。


 暫くそのまま横になっていると、地下牢の奥から、何やら話し声が聞こえてきた。
 一組の男女が言い争っているようだ。

 急に好奇心が湧いてきたブーン。
 牢屋の入り口に近づき、耳を傾ける。

272 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:47:40 ID:VuIUXoJAO
 
「出麗様!ああ、もはや何と申し上げれば良いのやら…」

「いいじゃないの顔見るくらい!ほら通しなさい!」

( ^ω^)(出麗様…?)

 
 かなり聞き覚えのある名前が、ブーンの耳に飛び込んできた。
 そう、ブーンが何故か琴爪を持ち、探していた女性、尾付出麗。
 どうやら、その出麗が看守の男と揉めているようだ。それも、恐らくブーンに会う為に。

 
(*^ω^)(こりゃラッキーだお!)

 元の時代に戻るヒントを得る為の、願ってもないチャンスだ。
 どうにかして此処まで来れないか。ブーンは心の中で祈りながら、再びその押し問答に耳を傾けた。

273 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:48:56 ID:VuIUXoJAO
 
「いいから通しなさいよ!」

「なりません!ほら、もうお戻りになってください!比岐様に察されたら、何を言われるやら」

「…仕方ないわね」

(;^ω^)(おいおいおいもっと頑張ってくれお!)

「ふう…さ、私も付いて行きますから。もう戻りましょう」

「そうね……」
 

 ブーンの祈りも虚しく、二人の声は遠ざかっていく。
 ブーンは思わず格子にしがみついた。

 
(;^ω^)(おーい!行くなお!おーい!!)

「…って行くわけねーだろハゲ!!」

「うごっ!?」

(;^ω^)「えっ」


 途端、何やら布を思いきり蹴り上げるような音が、ブーンの耳に聞こえてきた。
 恐らく、いや間違いなく蹴り上げたのだろう。看守の声はもはや聞こえない。ご愁傷様です。

274 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:49:55 ID:VuIUXoJAO
 
(;^ω^)(うんまあ…結果オーライだお)

 
 心の中で手を合わせ、ブーンは格子から手を離した。
 その直後、ブーンの目の前に、先ほどの声の主──出麗が現れた。

 
ζ(゚ー゚*ζ

 それはまるで人形のような、綺麗な少女だった。
 背は低いが体の線が細く、何より肌の色が透き通るように白い。

 出麗はブーンを見て、その整った目を丸めると、吐き出すように呟いた。

 
ζ(゚ー゚*ζ「ブスね」


( ^ω^)

275 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:50:53 ID:VuIUXoJAO
 
ζ(゚ー゚*ζ「何?南蛮の男は皆たくましいって聞いたわよ?何お前そのブッサイクな面」

( ^ω^)

ζ(゚ー゚*ζ「なんか力無さそうだし頭悪そう、マヌケ面」

ζ(゚ー゚*ζ「てゆうかお前何の武器も持ってなかったらしいじゃない。男失格ねこのクズ」

ζ(゚ー゚*ζ「せめて筋肉くらい…」
( ^ω^)「すみませんもうやめてください。僕泣きそうなんで。割とマジで」

ζ(゚ー゚*ζ「あっそ」

 
 久しぶりに浴びた女子の罵声。
 心の弱いブーンは何もかもが嫌になった。何故かお母さんに会いたくなった。


ζ(゚ー゚*ζ「それで、アンタが私の琴爪を拾ったんだって?」

(;^ω^)「あ…そうですお、決して盗んではないですお!」

276 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:51:59 ID:VuIUXoJAO
 
 盗人の疑いがかけられていたことを、急に思い出したブーン。
 慌てふためくブーンに、出麗が見下した目を向ける。

 
ζ(゚ー゚*ζ「うるさいわよ。アンタが盗んでないことくらいわかってる。アンタみたいなブス見たことないし」

(;^ω^)「あ、良かった…」
 

 どうやら死刑は免れたようだ。
 無意識に胸を撫で下ろし、安堵のため息をついた。

 
ζ(゚ー゚*ζ「そんなことより、アンタ琴爪をどこで拾ったの?」

(;^ω^)「へ?あ、えと…す、須貝付の町で商人が落としたのを拾ったんですお」

277 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:54:20 ID:VuIUXoJAO
 
 嘘をつくのが苦手なブーン。
 出麗が疑うように見てきたが「ま、いいわ」と流してくれた。
 

ζ(゚ー゚*ζ「あ、そうだ。今ちょっと鍵を開けるわね」

(;^ω^)「え?なんでですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「勘違いしないでよね。アンタに渡したいものがあるだけなんだから」

( ^ω^)「渡したいもの?」

ζ(゚ー゚*ζ「私もね、琴を嗜む身だからわかるの」

 
 呟くように話しながら、鍵を開ける出麗。
 開いた扉の中に躊躇いなく入りこみ、ブーンに大きな荷袋を渡した。
 中には、ブーンのギターが綺麗に収まっていた。

 
(*^ω^)「ギターだお!」

ζ(゚ー゚*ζ「ふーん、ぎたーっていうんだそれ」

(*^ω^)「はいですお、ありがとうございますお!」

278 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:55:13 ID:VuIUXoJAO
 
ζ(゚ー゚*ζ「見たことない形だけど、楽器だというのはわかった。それに、随分とそれを愛しているのもね」

(*^ω^)「そうですかお…」

 
 ギターが戻ってきた喜びに、嬉しさを隠せないブーン。
 よく見ると、きちんとピックも挟まっている。

 何度も感謝の言葉を伝えながら小さくはしゃぐブーンに、出麗が微笑みながら口を開いた。

 
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、そのぎたー、弾いてみてよ」

(;^ω^)「…え?」

ζ(゚ー゚*ζ「だーかーらっ、弾いてみなさいって言ってるの、それ」
 

 まるで最初に渚本介と会ったときのような状況に、少し戸惑ったブーン。
 しかし、すぐに冷静になってギターを構えた。

279 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:56:12 ID:VuIUXoJAO
 
( ^ω^)「行きますお」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

 
 ブーンの前に立ったまま、黙って頷く出麗。
 暗く静かな空間に、ギターの音色が響き始めた。

 曲はリーチェの「ogiyodiora」のソロギター。
 不安を煽る暗い空間に、優しく光る旋律が響いていく。

 
ζ(゚ー゚*ζ「……」

 
 先程とは打って変わって、何も声を出さない出麗。
 ブーンの演奏を、ただ静かに聴き続ける。

 やがて、ブーンの演奏が、ゆっくりと終わっていった。

280 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:57:20 ID:VuIUXoJAO
 
( ^ω^)「……終わりですお」

 
 ギターから手を離し、出麗の方に目を向ける。
 そこには、ぽかんと口を開いたままの出麗の顔があった。

 
ζ(゚ー゚;ζ「…ちょっとアンタ」

(;^ω^)「何ですかお」

ζ(゚ー゚;ζ「アンタ凄いじゃない…他人の演奏にこんなに聴き入ったのは初めてよ」

(;^ω^)「あ、はい…恐縮ですお」

 
 出麗はブーンの演奏を聴いて、感動のような驚きのようなものを受けたらしかった。
 また何やら感想を言おうと口を開く。

 しかし、その声はすぐに掻き消された。
 城内に大きく鳴り響く、鐘の音によって。

281 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:58:47 ID:VuIUXoJAO
 
 カン、カン、と音は大きく鳴り続ける。
 暫くもしない内に、城内がやけに騒がしくなった。

 
ζ(゚ー゚;ζ「え!?何これ!?」

(;^ω^)「ヤバいですお出麗さん!早く逃げなきゃ!」

 この音には覚えがあった。
 そう、かつて二子堂城が落とされた時。
 夜襲を知らせる合図として、城内を鐘の音が鳴り響いたのだ。

 今もこの根十城に鐘が鳴り響いている。
 そこから導き出せる答えは一つ。

 
(;^ω^)「夜襲ですお!!天野勢が攻めてきたんですお!」

ζ(゚ー゚;ζ「そんな…!」

(;^ω^)「いいから早く逃げますお!」

 
 ギターを背負い、出麗の手首を掴んで牢屋を飛び出したブーン。
 城内は鐘以上に大勢の怒号が響き渡っていた。

 

──

282 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 01:59:49 ID:VuIUXoJAO
──

 
(;´・ω・`)「やはり夜襲か…擬古成め」

 
 最悪の事態が起きた。
 根十城に集まった約五千の二茶根瑠勢は、全くと言っていいほど戦の心準備ができていなかったのだ。
 混乱状態の中、なんとか城内上部に弓隊が、城外にまずは一番槍隊が着いた。

 城内合戦に備え、城内で待機する渚本介と兵達。
 やがて、城の向こうから、大勢が地面を踏み走ってくる音が聞こえてきた。

 
(;´・ω・`)(大軍か…)

 
 地鳴りのようなその音に、二茶根瑠勢の兵達は身を固める。

283 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 02:01:40 ID:VuIUXoJAO
 
 月明かりに照らされる、小高い丘の下。
 弓隊と一番槍隊の視界に、大軍の天野勢が映ってきた。

 大軍が来たぞ、と誰かが叫ぶ。
 兵達の身が、緊張で更に引き締まる。

 
 根十城に、約五千の兵を持つ二茶根瑠勢。
 それを攻めるは、天野勢、全隊にして約一万五千。

 後の歴史を揺るがす城攻めの戦が、今、始まろうとしていた。

 

第八話 終

284 ◆vVv3HGufzo :2011/03/23(水) 02:03:47 ID:VuIUXoJAO
今回の投下は以上です。
次からは投下の時間帯に気をつけます…あと投下予告もw

285 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/23(水) 06:04:27 ID:bWCcjkbkO
乙乙
面白い

286 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/23(水) 07:49:30 ID:SZYpBPvg0

ギコェ……

287 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/23(水) 08:37:01 ID:V9qrWYxg0

すげぇワクワクする

288 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/23(水) 14:16:45 ID:0jWVAm.kO
勝手に代理
http://www.youtube.com/watch?v=QnVMB_oQSHY
これで良いのかな

289 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/23(水) 20:30:30 ID:tAgIqnUI0
デレの性格…wwwww

いや、ご褒美か

290 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/24(木) 13:13:38 ID:BeYQqW8k0

続き気になる

291 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:13:05 ID:MY5i2l3gO
皆さんコメントありがとうございます!
そして曲紹介ありがとうございます!

つい今、続きが出来上がって、早く投下したいので
今回は予告なしで投下させてください、フヒヒ

292 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:14:39 ID:MY5i2l3gO
***
第九話 「戦には獣」

***

 
 徐々に近づいてくる地鳴り、怒号。
 そして殺気。

 何の準備も出来なかった二茶根瑠勢に、天野勢が獣の如く向かってくる。

 
(;`゚∽゚)「臆するでない!一番槍隊、密集せよ!!盾の用意だ!」

 浮き足立つ兵達に、何とか統率を計る将。

 この男の信頼がよほど高いのか。兵達の目が、ようやく戦のそれに変わった。

 
(#`゚∽゚)「我ら泉槍衆は最強の前衛部隊!!天野のうつけ共を、いざ蹴散らさん!!」

293 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:15:53 ID:MY5i2l3gO
 
 根十城の前で構える泉槍衆を統率する男──泉は、自らは一番隊の後ろに付き、前方を睨みながら叫び続けた。

 その視線の先には、鬼の如く駈けてくる天野勢の槍騎兵隊、およそ千。
 

(#`゚∽゚)「蛮族よ!前方を揃えただけの陣で、我らにかかる気か!」

 
 兵力戦では、兵の数が勝敗を決定的にしてしまう。
 泉が見る限り、天野の軍は特にこれといった陣形はとっておらず、兵の数で押してくるようだった。

 しかし、泉率いる槍隊はこういった兵数の差には慣れていた。
 というのも、もともと百人程度の槍隊を更に五番隊まで分けていたので、常に少人数で戦ってきた経験があるのだ。

 今回も相手が兵数で押してくるに違いない。泉槍衆が最も得意とする形だ。
 敵の槍騎兵隊は、真っ直ぐ此方に向かって突進してきた。

 
(#`゚∽゚)「──え?」

 
 はずだった。

294 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:16:44 ID:MY5i2l3gO
 
「分かれェェェイ!!!」

(;`゚∽゚)「!?」

 
 途端、目の前で天野勢の槍騎兵隊が二方向に分かれた。
 挟み撃ちをするわけでもなく、分かれた部隊はそのまま城を回るように、見当違いの方へ駈けていく。
 上の弓隊もこれは予想外だったらしく、第一射だけで攻撃を一旦止めた。

 
(;`゚∽゚)「どういうつもりだ…!?」

 
 目の前の敵が取る不可解な行動に、暫し困惑する泉。

 しかし、天野勢の取るその行動の意味を理解するのに、さほど時間はかからなかった。

 
(;`゚∽゚)「しまった……弓隊下がれェェ!!!」

295 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:17:55 ID:MY5i2l3gO
 
 しかし、もう手遅れだった。

 天野の槍騎兵隊が二手に分かれ、その後方が完全に見えたその時。
 耳をつんざくような爆音が、辺りに響いた。

 
(;`゚∽゚)「クソったれ!!鉄砲隊か!」

 そう、その後ろに構えていたのは、強大な攻撃力を誇る天野の鉄砲軍団。
 この鉄砲隊をなるべく城に近付ける為に、天野勢は槍騎兵隊でフェイクをかけたのだ。

 そして、その鉄砲隊が弾を放った先は、城内上部の弓隊。
 城に敵を近寄らせない為の弓隊は、いとも簡単に壊滅した。

296 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:18:52 ID:MY5i2l3gO
 
 そして、更なる悲劇が泉槍衆を襲う。
 

(;`゚∽゚)「泉槍衆全隊!一番槍隊の周りにつけ!!」

 
 敵の策略がわかってしまった泉は、焦りに焦った。
 時間がない。早く陣形を整えなければ──

 
(;`゚∽゚)「我ら泉槍衆が…こんな…」

 否、もう体勢を立て直すまでもなかった。

 泉槍衆の全隊、百人の兵達は、あっという間に天野の槍騎兵隊に吹き飛ばされていった。

 
 そう、最初に槍騎兵隊を二手に分かれさせたのは、単なるフェイクではなかった。
 二手に分かれた後は、鉄砲隊が弓隊を撃墜している間に城を外周し、今度はそのまま泉槍衆を挟み撃ちに行ったのだ。

 合戦開始、僅か数十分。
 根十城の外守りは、いともあっさり破られた。

 

──

297 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:20:11 ID:MY5i2l3gO
──
 

 二茶根瑠勢が信頼を置いていた泉槍衆が、粘る間もなく全滅してしまった。それも弓隊ごとだ。
 他の隊を出そうにも、もう遅い。
 すぐに根十城内部に天野勢が進入し、乱戦が巻き起こった。
 

(;´・ω・`)「くっ…!」

 根十城内部に待機していた渚本介も、乱戦に巻き込まれた一人だった。
 襲ってくる槍や刀をかわし、止め、反撃を繰り返す。

 
(;´・ω・`)(キリがない…)

 
 正直なことを言うと、もう根十城は陥落すると見ていた。
 大した策も出来ないうちに、ただ大軍に押し寄せられる。
 それだけでも、勝敗はもう決まったようなものだった。

298 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:21:29 ID:MY5i2l3gO
 
(;´・ω・`)(…仕方ない)

 途端、渚本介は踵を返し、馬小屋の方へと走り出した。
 渚本介と刃を合わせていた何人かが追いかけてきたが、すぐに乱戦に巻き込まれていった。

 
 途中で敵を何度も斬り伏せながら、全力で走り続ける渚本介。
 暫く走ると、ようやく兵士宿舎に辿り着いた。
 このあたりには誰もいないようだ。

 宿舎から長刀を取り、隣接する馬小屋で適当な馬に跨る。
 馬に乗った渚本介は、そのまま元来た道を戻るように走り出した。

 狙いは、城外に待機しているであろう天野勢の本隊。

299 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:22:24 ID:MY5i2l3gO
 
(´・ω・`)「ハッ!」

 
 虎恍丸を鞘に戻し、長刀を構えながら、城内を馬で駈けていく。

 渚本介の姿を見た味方は驚いて身を引き、敵は刃を向けてきた。
 長刀を両手に構え、まずは数の多い槍を払う。

 
(#´・ω・`)「ふんッ!!」

 渚本介の払った一刀は、槍を向けていた五人の敵兵を一気に吹き飛ばした。

 渚本介の存在と、馬上刀の予想外の力に、思わず固まる敵兵達。
 恐怖の色が見えた天野勢を、渚本介が止まることなく長刀で斬り倒していく。

 その姿に勇気付けられたのか。
 乱戦に疲れ始めていた二茶根瑠勢の兵達は、新たに雄叫びを上げながら、渚本介の後に続くように敵軍に攻めていった。

 

──

300 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:23:49 ID:MY5i2l3gO
──
 

 城外に待機する天野軍本隊。
 そこに、一人の伝令が慌てた様子で走り込んできた。
 

(;・*・)「も、申し上げます!!」


 伝令が膝を付いた先、そこには天野勢の大将が落ち着いた様子で馬に跨っている。
 

(,,゚Д゚)「…何だ」
 

 "剛拳"こと、天野擬古成。
 斬馬刀を背負い、足下の伝令を睨む姿は、周りの兵達も息を飲むほどだ。

 伝令は顔を伏せたまま、大声で用件を言い始めた。

301 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:25:01 ID:MY5i2l3gO
 
(;・*・)「はっ!根十城内部、我が軍は未だ一階に留まり候!」

(,,゚Д゚)「…なんだと?」

(;・*・)「乱戦の中、一騎の兵が我が軍を混乱に陥れている様子!」

(,,゚Д゚)「一騎?一体誰だそいつは」

(;・*・)「はっ!恐らくは、彼の太田渚本介でございます!」

(,,゚Д゚)「!!」

 
 伝令の話が終わり、重苦しい空気が流れる。
 擬古成は少し考えるように地面を睨むと、そのまま口を開いた。

 
(,,゚Д゚)「…奴は恐らく本隊を目掛けている。乱戦を突破するくらい、奴には容易いはずだ」

(,,゚Д゚)「奴が本隊にやってくる前に、俺らは城内に入ったほうがいいな。その方が簡単に二茶根瑠巳留那の首も取れよう」

302 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:25:54 ID:MY5i2l3gO
 
 擬古成は一旦話を止めると、横に並ぶ大男に目を向けた。

 
(,,゚Д゚)「狗久流(くくる)よ。俺らが根十城に入る為に、彼の"戦魔"の足止めを頼みたい」

( ゚∋゚)「御意に」

 
 狗久流と呼ばれた大男は、低く唸るような声で擬古成に返した。

 狗久流は他の兵達よりも頭二つ分ほど背が高く、その体躯は野獣のように大きい。
 巨大な甲冑を身につけるその姿は、まさに"鬼"の様である。

 
 擬古成が狗久流に頷き、いざ走り出そうとした途端。
 何やら、城門のほうが騒がしくなってきた。

303 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:27:11 ID:MY5i2l3gO
 
 何事だ、と聞くまでもなかった。
 城門のあたりを騒がせている原因は、すぐに擬古成の視界に飛び込んできたからだ。

 
(#´・ω・`)「ハァッ!!」

(,,゚Д゚)「戦魔…!」

 
 馬上にて長刀を振り回し、天野勢をことごとく蹴散らしている。
 まさに魔物のような戦いぶり。"戦魔"の名に相応しく、渚本介が本隊を目掛けながら天野の兵を斬り伏せていく。
 

(#´・ω・`)「擬古成!!」

(,,゚Д゚)「ムッ…!」

 
 とうとう城門の包囲網を切り抜け、本隊に一気に向かってきた渚本介。
 その中心にいる擬古成を睨みながら、更に怒号を上げる。

304 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:29:34 ID:MY5i2l3gO
 
(#´・ω・`)「出あえッ!!この太田渚本介、今度こそ貴様の首を頂戴する!」

( ゚∋゚)「そうはいかぬ」

(#´・ω・`)「!!」

 
 本隊に切り込む直前。
 渚本介と本隊の間に、見覚えのある大男が入り込んできた。

 
(;´・ω・`)(アイツは…)

(#゚∋゚)「せいやァッ!!」
 

 渚本介の前に立ちはだかった大男、狗久流。
 両手に握った武器を、渚本介の乗る馬を目掛けて薙ぎ払う。

305 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:30:23 ID:MY5i2l3gO
 
(;´・ω・`)「!?」

 何の武器かはよく見えなかった。
 しかし、危険を察知した渚本介は、狗久流の攻撃が馬を捕らえる前に飛び降りた。

 直後、渚本介の乗っていた馬が、十メートル近く吹き飛ばされた。
 

(;´・ω・`)「なっ…!」

( ゚∋゚)「ふん、勘は鋭いようだな」
 

 信じられない光景だった。
 人間五人分の重さと言われる馬を、たった一撃で軽々しく吹き飛ばしたのだ。

 何が起こったんだ、と相手の武器を見る。
 大男の握る武器は、長槍の柄に斧を引っ付けたような、巨大な戦斧だった。

306 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:31:48 ID:MY5i2l3gO
 
(´・ω・`)「…そうか、思い出したぞ」

( ゚∋゚)「……」
 

 見覚えのある姿に、見覚えのある特殊な戦斧。
 渚本介は記憶を辿りながら、話を続けた。

 
(´・ω・`)「天野家家臣、堂土狗久流。未だ擬古成の腰巾着を務めているとはな」

( ゚∋゚)「ぬかせ。貴様のような不浄者、我が戦斧の餌食にしてくれん」

( ゚∋゚)「擬古成様!今のうちに根十城へ!」

(,,゚Д゚)「ああ」

(;´・ω・`)「!!」

 
 しまった、と狗久流から目を離す。
 しかし、擬古成率いる本隊は、既に根十城へと走り出していた。

307 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:32:52 ID:MY5i2l3gO
 
(´・ω・`)「チッ……」

 どうやら、擬古成を討つにはまず狗久流を倒さねばならないようだ。

 長刀を投げ捨て、虎恍丸をゆっくりと抜く。
 対する狗久流も、両手に構えた戦斧を渚本介に向ける。

 
( ゚∋゚)「これも武功の為。擬古成様を喜ばせる為……堂土狗久流、参る!」

(#゚∋゚)「せいッ!!」

(´・ω・`)「!!」

 
 腰を低く落とし、戦斧を横に払う狗久流。
 あまりにもリーチの長いその攻撃を、更に低い姿勢でかわす。

(´・ω・`)(…今だ!)

 長い武器を振った後は、必ず大きな隙ができる。
 それを狙って一気に飛び込む渚本介。
 しかしその攻撃を読んでいたかのように、狗久流が戦斧を短く持ち、柄の部分を振り回してきた。

308 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:33:57 ID:MY5i2l3gO
 
(;´・ω・`)「くっ…」

 その攻撃を虎恍丸の刃で止める渚本介。
 しかし、その一撃のあまりの強さに、バランスを崩してしまった。

 
(#゚∋゚)「でいっ!!」

(;´・ω・`)「!!」

 この好機を見逃すまいと、戦斧の返し手が渚本介に迫る。
 咄嗟に飛び上がり、その一振りを避ける。
 そのまま上段から虎恍丸を振り下ろすも、戦斧の柄に防御されてしまった。

 
(´・ω・`)(クソっ…)

(#゚∋゚)「隙ありィッ!!」

(;´・ω・`)「!?」

 速い。
 あまりにも速い狗久流の四振目が、渚本介の胴に迫る。

309 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:35:03 ID:MY5i2l3gO
 
 なんとか虎恍丸をその攻撃に合わせ、防御することができた。
 しかし。
 

(;´・ω・`)「がはッ…!!」

( ゚∋゚)「フン」

 
 虎恍丸越しとはいえ、馬を吹き飛ばす程の攻撃を受けてしまった渚本介。
 体は勢い良く弾かれ、先程の馬以上に飛ばされてしまった。

 よろよろと立ち上がり、涼しい顔で近づいてくる狗久流を睨みながら、虎恍丸を構え直す。

 
(;´・ω・`)(堂土狗久流…まさかここまでとは…)

( ゚∋゚)「どうした"戦魔"。口ほどにもなし」

(;´・ω・`)「……」

 
 あれほど柄の長い戦斧を簡単に操り、近付きすらさせない技術。
 どうすれば勝てるのか、とにかく思案を巡らせる。

310 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:36:30 ID:MY5i2l3gO
 
 ふと、渚本介は自らの足元に何か武器が落ちていることに気付いた。
 長刀だ。先程渚本介が投げ捨てた長刀が転がっている。

 
(´・ω・`)(…なるほどな)

 一つ不敵な笑みを見せ、その長刀を拾い上げる。
 虎恍丸をしまって長刀を構えると、渚本介は自信の籠もった声を狗久流に向けた。

 
(´・ω・`)「わかったぞ、貴様を倒す術が」

( ゚∋゚)「ふん、刀が長刀になったくらいで何が変わるというのだ。…さあ、行くぞ!」

311 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:37:38 ID:MY5i2l3gO
 
 先程と同じように、まずは狗久流がそのリーチを生かして戦斧を降ってきた。
 渚本介もまたも低い姿勢でかわし、同じように狗久流に飛び込んでいく。
 

(#゚∋゚)「何度同じ手を使おうと、俺には効かぬ!」

 今度はすぐに狗久流が返し手の攻撃を向ける。
 渚本介は、またもその攻撃を飛び越え、上段から長刀を振り下ろしてきた。

 
(#゚∋゚)「効かぬと言っとろうが!!」

 先程と同じように、柄を上に向けて防ごうとする狗久流。

 しかし、そこに渚本介の姿は無かった。

 持ち主のいなくなった長刀だけが、落ち際にコツンと戦斧の柄に触れた。

312 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:39:34 ID:MY5i2l3gO
 
(;゚∋゚)「──え?」

(´・ω・`)「手強かったぞ、堂土狗久流」

 
 狗久流の理解が追いつかないうちに、低い位置にいた渚本介の虎恍丸が、狗久流の腹を切り裂いた。

 膝をつき、戦斧を落とし、震える声で狗久流が尋ねる。

 
(;゚∋゚)「な…何をした…貴様……」

(´・ω・`)「"形"が欲しかったのだ。その戦斧が追いつかないほどの、絶対的な隙の形が」

(;゚∋゚)「…形……?」

(; ∋ )「……そうか…そういうことか…」

313 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:41:11 ID:MY5i2l3gO
 
 その場に崩れ落ちながら、狗久流はようやく理解できた。
 

 渚本介の言う"形"とは、狗久流の戦斧の"位置"のことなのだ。
 長い戦斧を操るのが人一倍上手い狗久流だ。360度、ほぼどの位置にいても攻撃を喰らってしまう。

 しかし、一瞬だけなら、全く攻撃を喰らうことのない条件があった。
 それは、「戦斧の位置が横向きに、かつ上段にある場合」だ。
 これならばたとえ狗久流でさえも素早い攻撃が出来ない。
 これが渚本介の言う"形"の正体なのだ。

 渚本介はこの"形"を作らせる為に、狗久流に飛び込み、上段から長刀で攻撃すると見せかけた。
 その防御の為に、狗久流は前述した"形"を作らざるを得ない。
 狗久流が戦斧をその"形"に構えた時点で、渚本介は長刀を手放し、懐に飛び込み、虎恍丸の居合いを合わせたというわけだ。

314 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:42:06 ID:MY5i2l3gO
 
(; ∋ )「…フ……戦魔の名の通りの実力よ……俺の負けだ…」

(´・ω・`)「……」

(; ∋ )「さあ行け……俺に勝っ…た……から……に…は………」

(´・ω・`)「…ああ、わかってる」

 
 虎恍丸を鞘に戻し、冷たくなった狗久流に背を向け、渚本介は根十城へと走り出した。

 もう体は疲れきっているが、それでも走らなければならない。
 擬古成を討つ為に。そして、ブーンを救う為に。

 

──

315 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:43:33 ID:MY5i2l3gO
──

 
(;^ω^)「早く上るお!」

ζ(゚ー゚;ζ「ま、待ってよ、ハァ、ハァ…」

 
 根十城最上階、大広間。
 長い階段を上りきり、ブーンと出麗の二人は巳留那のもとへ向かっていた。

 脱出する前に既に天野勢が来ていたので、脱出は諦め、まずは城主の安全を確保しようと考えたのだ。

 大広間の奥に玉座がある。
 この緊急事態に巳留那が玉座にいるとは思わなかったが、とにかく冷静な思考が出来ないので、ブーンは出麗の手首を引っ張りながら走っていた。

316 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:44:42 ID:MY5i2l3gO
 
 乱暴に玉座への襖を開ける。
 そこには、意外にも巳留那が落ち着いた様子で座っていた。

 
( ゚д゚ )「…無礼者が、何しに来た」

(;^ω^)「巳留那様を連れて逃げる為ですお!てか何で悠々と座ってるんですかお!!」

( ゚д゚ )「勝てぬ戦に慌てる必要などない」

ζ(゚ー゚;ζ「……」

(;^ω^)「勝つか負けるかなんて終わってみなければわからないですお!」

 
 ブーンの剣幕に、全く引く様子のない巳留那。
 暫くブーンの方を見ると、目を伏せながら、溜め息を一つ吐いた。

 
( ゚д゚ )「残念だが、結果がわかってる場合というのもある」

(;^ω^)「ああもう!だから…」

( ゚д゚ )「なれば」

317 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:47:25 ID:MY5i2l3gO
 
 少し声を上げ、ブーンを差し止める。
 巳留那は視線をブーンの少し後ろに向け、顎で指した。

( ゚д゚ )「なれば、アレをどう説明する」

( ^ω^)「アレ?」
 

 ゆっくりと振り返る。
 途端、ブーンは危うく腰を抜かしそうになった。

 
(,,゚Д゚)「そいつの言う通りだ南蛮人。抗えない勝敗というのは、確かに在る」

 天野擬古成。ブーンにとっては悪魔のような男が、そこにいた。

 
(;^ω^)「う、嘘だお…こんなに早く…」

(,,゚Д゚)「悪ぃが、俺はせっかちでね」

 背中に掛かる大きな鞘から、斬馬刀を抜く擬古成。
 その口元が、不気味に歪んだ。

 
(,,゚Д゚)「全員、死んでもらうぜ」
 

第九話 終

318 ◆vVv3HGufzo :2011/03/24(木) 22:48:35 ID:MY5i2l3gO
今回の投下は以上です!
はい!

319 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/24(木) 22:48:48 ID:Xk8ITH9s0
乙ぅ
やばいな、ギターで解決できるのか

320 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/24(木) 23:37:11 ID:aGrAAR1I0
きてたー、乙! 続きが気になりすぎる

321 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/25(金) 13:08:27 ID:QN0gIVa20

思わず手に汗握った

322 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:04:37 ID:vluT4a/oO
コメントありがとうございます!

それでは第十話を投下しますん

323 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:06:50 ID:vluT4a/oO
***
第十話 「戦の道は死境の道」

***

 
 根十城城門付近。
 天野勢はもう全隊が根十城に進入してしまった為、ここには無数の死体が転がっているのみだ。

 しかし、その奥からは大勢の怒号と刃を交える音が聞こえる。
 内部がやけに明るく見えるのは、城内の所々に火の手が上がっている為だろう。

 
 堂土狗久流を倒し、城門まで走り戻った渚本介。
 馬でもあれば、と辺りを見渡すが、生きてる者の姿は無い。

 
(;´・ω・`)(地下牢か…)
 

 とりあえず、ブーンがいる可能性が高いのは地下牢だ。
 天野勢に捕まる前に、地下牢からブーンを助け出す必要がある。

324 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:08:11 ID:vluT4a/oO
 
 地下牢の場所はあやふやだが、とりあえず建物内にあるのは確かだ。
 誰か味方に遭遇すれば、そいつに聞けばいい。

 渚本介は疲れを訴える足に鞭を打ち、根十城内部へと走り出した。

 
(;´・ω・`)(待ってろブーン…)

 ブーンを必ず助け出す。願わくば、ブーンが元の時代へ戻る為、尾付出麗と共に。

 擬古成を逃してしまった先程の失態を、悔やんでいないわけではない。
 しかし、擬古成を討つのは後でもいい。

 肺が痛い。足が重い。
 それでも渚本介は走り続ける。

 乱戦となった、根十城の中心へと。
 

 
──

325 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:10:04 ID:vluT4a/oO
──
 

(;^ω^)「出麗さん、僕の後ろに隠れるお!」

ζ(゚ー゚;ζ「は、はい!」

( ゚д゚ )「……」

 
 根十城大広間。
 ブーンは絶望感に浸りそうになるのを堪え、出麗を庇うように立ちはだかった。
 そのすぐ傍らで、既に負けを覚悟している男、城主の巳留那がじっと座っている。

 あっさりと彼らを追い詰めた擬古成は、三人に向かって悠々と歩き出した。
 三人が三人とも無力だと確信したからか。斬馬刀の峰を肩に乗せ、余裕を見せながら近付いてくる。

326 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:12:04 ID:vluT4a/oO
 
(,,゚Д゚)「二茶根瑠領領主、二茶根瑠巳留那よ。俺は今よりお前を殺し、この城と領をまるまる頂く」

(,,゚Д゚)「だから最後に聞かせてくれ。この二茶根瑠領、お前にとってどういう国なんだ」

(;^ω^)「……」

ζ(゚ー゚;ζ「……」
 

 巳留那には悪いが、ブーンはほんの少しだけ安堵感を得た。
 恐らく、擬古成は最初に巳留那を討ち、そのついでに自分達を殺すつもりなのだろう。
 上手く行けば、隙を見て逃げ出すこともできるかもしれない。

 擬古成の問いに、少し考えるように黙る巳留那。
 暫く黙ると、威厳の保った低い声で、ゆっくりと返した。
 

( ゚д゚ )「…この国は余の全て、そのものだ。貴様如きに渡すのが惜しいほどに、余はこの国を愛しておる」

(,,゚Д゚)「ハッ、言うじゃねえか」

327 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:13:18 ID:vluT4a/oO
 
(,,゚Д゚)「なれば、俺は貴様の全てを剥ぎ取り、蹴落とし、この国を奪う」

 
 巳留那のすぐ手前まで歩み寄った擬古成が、斬馬刀を構える。
 それでも巳留那は動じる事なく、じっと擬古成を見据える。

 近くに居てはいけないと感じたブーンが、出麗と共に後退った。

 
(,,゚Д゚)「二茶根瑠巳留那。その首、頂戴致す」

(#ー_ー)「させるかァ!!」

(,,゚Д゚)「!」
 

 斬馬刀を振り下ろそうとする擬古成の腕が止まった。
 その一瞬後、擬古成が振り向くと同時に、小さな懐刀がその胸部目掛けて飛んできた。
 反射的に斬馬刀を下向きに構え、盾のようにその懐刀を防ぐ。

328 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:14:08 ID:vluT4a/oO
 
 一つ舌打ちをし、懐刀を投げてきたその男を睨む。

 
(,,゚Д゚)「…貴様、誰だ」

(ー_ー)「二茶根瑠家近習頭、尾付比岐」

 
 鞘から刀を抜き、擬古成を睨み返す。
 途端、ブーンの後ろで、出麗が声をあげた。
 

ζ(゚ー゚;ζ「父上!」

(;^ω^)「!?」

(;ー_ー)「なっ…!?」
 

 重くなりつつあった空気が、一気に別の緊迫へと変わった。

 尾付家は二茶根瑠家の近習を務めている。
 出麗も尾付家の一員であり、近習頭の比岐の実の娘なのだ。

 何故お前が此処にいる。そう言いたげに出麗を見るが、すぐに別の言葉を投げた。

329 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:15:09 ID:vluT4a/oO
 
(;ー_ー)「早く此処から去ね!そこの南蛮人は出麗と共に殿をお守りしろ!」

ζ(゚ー゚;ζ「で、できません!父上を見捨てるなど、私にはとても…」

(#ー_ー)「去ねと言っているのが聞こえぬか!!」

 
 比岐の怒声が大広間に響く。
 押し黙った出麗に、更に続ける。
 

(#ー_ー)「殿をお守りするのが、我ら近習の定め!命などとうに捨て置いている!!」

(#ー_ー)「お前は女子だ!戦に慣れぬ、琴を嗜む女子!しかし、まごうことなく近習一族!」

(#ー_ー)「殿を連れ、守り抜いてみせよ!早く此処から去ね!!」

ζ(゚ー゚;ζ「……」

 
 擬古成に刀を向けながら、巳留那を連れて逃げるよう出麗に命じる。
 目に涙を浮かべながら、出麗が小さく頷いた。

330 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:16:51 ID:vluT4a/oO
 
 巳留那を立ち上がらせ、ブーンに託し、自らは先導の位置に着いた出麗。
 擬古成に背を向け、比岐が入ってきた入り口とは反対側の外回路へと進み出す。

 外に出る間際、出麗が少しだけ振り向いた。
 

ζ(゚ー゚*ζ「御達者で、父上」

(ー_ー)「……」

 
 恐らくはこれが今生の別れとなる。
 しかし、その別れを惜しむ間など在りはしない。

 比岐は改めて擬古成に目を向けた。

 
(,,゚Д゚)「ハッ、良いじゃねえか。涙のお別れってか」

(ー_ー)「ぬかせ」

331 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:18:02 ID:vluT4a/oO
 
 刀を握る手に力が入る。

 巳留那を一時的に逃がすことに成功した。娘と顔を合わせて別れることも出来た。
 もう、怖いものは何もない。
 

(ー_ー)「天野擬古成。根十城に気安く攻め入った下賤者を、いざ討たん」

(,,゚Д゚)「…やってみろ」

 
 静かに睨み合っていた状態が、一瞬で変わった。
 刀を構えた比岐が、一気に擬古成に飛び込んだのだ。
 思わず防御の姿勢をとった擬古成に、小刻みな突きの攻撃を繰り返す。
 

(,,゚Д゚)(チッ…)

332 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:20:11 ID:vluT4a/oO
 
 あまりにも小刻みに、正確に繰り出される突きに、擬古成は反撃の手が出ない。

 実は、これこそが斬馬刀の弱点だった。
 刃同士を合わせる攻防なら、間違いなく厚みも重みも格段に違う斬馬刀の勝利だ。相手の体ごと刀を弾き飛ばし、その隙に斬り伏せることも出来る。
 しかし、相手の攻撃が小刻みな突きだったら、反撃する隙がない。
 一度防御に入ってしまえば、相手の攻撃を喰らい続ける他無いのだ。
 

(#ー_ー)「ハッ!!」

(,;゚Д゚)「クソッ…」

 
 頭、手、足。
 斬馬刀では隠せきれない箇所を、徹底的に突いてくる。

333 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:21:36 ID:vluT4a/oO
 
(,#゚Д゚)「…図に乗んじゃねえ!!」

(;ー_ー)「!!」

 
 慣れない防御戦に痺れを切らし、擬古成が斬馬刀ごと比岐に飛び込んだ。
 タックルのような攻撃を受け、比岐の体が倒される。

 
(,#゚Д゚)「ゴルァッ!!」

 その体に、斬馬刀の上段からの一撃が迫る。
 咄嗟に体を回し、斬馬刀を避けながら立ち上がる。

 
(;ー_ー)「ハァ…ハァ……ッ」

 危ないところだった。
 擬古成と距離を取り、刀を構え直す。

 しかし、何故か刀をうまく構えられない。
 不思議に思いながら、比岐は自らの腕へと視線を落とした。

334 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:22:59 ID:vluT4a/oO
 
(ー_ー)「あ……?」

 
 比岐が刀を構えられないのは当然だった。
 視線を擬古成へ戻すことも忘れ、比岐はそのまま固まった。

 比岐が目にして、思わず固まってしまうほどの光景。

 自らの左肘から先が、無くなっていた。

 
(;ー_ー)「う、あ、あ゙あ゙あ゙あ゙ああああ!!」

(,,゚Д゚)「一介の近習にしては、なかなかの腕前だったぞ」

(;ー_ー)「腕が!!ああああ!畜生!畜生!」
 

 片膝をつき、左腕を押さえて悶える比岐。
 もはや反撃の兆しすら感じられないその姿に、擬古成が迫る。

335 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:24:07 ID:vluT4a/oO
 
(;ー_ー)「ああ、ハァ、ハァ…!!」

 目の前の擬古成が斬馬刀を振り上げる。
 途端、比岐は時間が止まったかのように感じた。

 もはや擬古成を倒すことはほとんど叶わない。
 しかし比岐は考える。
 娘の出麗と例の南蛮人は、巳留那を連れてまだそう遠くまで逃げきれていないはず。
 ここで自分があっさりと負けてしまえば、すぐに擬古成は三人を追い、捕まえてしまうだろう。

 それだけは何としても避けたい。
 無事に逃がす為には、まだ時間を稼ぐ必要がある。

 
 此方を見据え、斬馬刀を振り上げている擬古成。
 世界が、動き出した。
 

(,,゚Д゚)「楽に送ってやる。尾付比岐よ」

336 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:25:50 ID:vluT4a/oO
 
 足に力を入れ、笑う膝を抑える。
 擬古成が斬馬刀を振り下ろそうとした瞬間、比岐は擬古成に飛びかかった。
 
(,;゚Д゚)「なっ…!?」

(#ー_ー)「うおおおおお!!」

 
 強引に肩から懐に飛び込み、擬古成を仰向けに倒した。
 そのまま馬乗りの体制で擬古成を押さえ、顔面に向かって何度も拳を打ち込む。

 あまりにも想定外な反撃に、為す術無く殴られる擬古成。
 その顔面が、赤く染まっていく。
 
(#ー_ー)「おおおおおおおおお!!!」

337 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:27:07 ID:vluT4a/oO
 
 激しい運動を続けているせいで、おびただしく出血する左腕。
 必死に殴り続けるも、やがて力が入らなくなってきた。

 
(;ー_ー)「ハァ…クソ……クソッ…」

 
 血が足りないせいで、筋肉が言うことを聞いてくれない。
 比岐の最後の一発。渾身の拳は、ぺちんという音を擬古成の頬に鳴らしただけだった。

 
(;ー_ー)「ハァ……ハァ……」

(; _ )「ハ………」

 
 もう、全身に力が入らない。
 思考すら叶わない。

 擬古成の横に転がるように、比岐は倒れ込んだ。

 暗くなる視界で、ゆっくりと起き上がる擬古成の姿が、最後に映った。

 

──

338 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:28:08 ID:vluT4a/oO
──
 

(;^ω^)「ま、まだ下につかないのかお…」

ζ(゚ー゚;ζ「そろそろ次の階段に着くわ!そこから下に降りられる!」

( ゚д゚ )「……」

 
 大広間から外回路へと抜け、そのまま下へと進んでいく三人。

 既に多くの天野の兵が建物内へ進入したのだろう。
 城内のあちこちから、大勢の怒号が聞こえる。

 
(;^ω^)「それにしても、敵兵に見つかりはしないかお?」

ζ(゚ー゚;ζ「わからないわ。なるべく難しい道を使ってるけど…運次第ね」

339 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:29:17 ID:vluT4a/oO
 
 ブーンが最も懸念し、恐れていること。
 それは、今のこの状況で敵に出くわしてしまえば、あっさりやられてしまうだろうということだ。
 ブーンも出麗も武器を持っていないし、巳留那は刀を持っているものの、何か不安だった。

 
ζ(゚ー゚;ζ「よし、もうすぐ階段よ!」

(;^ω^)「了解だお!さ、急ぎますお」

( ゚д゚ )「ああ」

 
 先導する出麗の背中を追い、巳留那を連れて走り続けるブーン。

 広い廊下の奥に、とうとう下へと続く階段が見えてきた。
 足を速め、階段へと急ぐ三人。

 しかし、その足はすぐに止まった。

340 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:30:25 ID:vluT4a/oO
 
ζ(゚ー゚;ζ「あ……」

(;^ω^)「……」

 
 足を止め、肩で息をしながら、前方に視線を向ける。

 三人が目を向ける先。
 廊下の奥の階段から、十数人の敵兵達が現れた。

 
ζ(゚ー゚;ζ「そんな…」

(;^ω^)「…最悪だお……」

 
 恐れていた事態になってしまった。
 どうする。引き返して逃げるか。
 いや、それでは体力が持たない。

 冷静に回らない頭で、必死に考えるブーン。
 敵兵達が、三人に気付いた。

341 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:31:44 ID:vluT4a/oO
 
 何かを叫びながら、三人へと迫る敵兵達。

 もう考える暇などない。
 ブーンは出麗の腕を掴み、巳留那を庇いながら、元来た道を走り出そうと振り返った。

 しかし、その敵兵から聞こえてきたある言葉に、ブーンは思わず足を止めた。

 
「旦那様…?」


(;^ω^)「……え?」
 
 聞き覚えのある声。聞き覚えのある呼び名。

 ブーンはゆっくりと振り向き、目を見開いた。

 
(;゚∀゚)「旦那様…ですよね…?どうして…」

342 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:33:38 ID:vluT4a/oO
 
(;^ω^)「ご、ご主人!?」

 
 敵兵の格好をした男は、紛れもなくブーンの知り合いだった。
 天野勢に焼き討ちをされた二子厨の庄、そこで宿屋を営んでいた男。

 かつてブーンを殺そうとし、改心した男が、そこにいた。
 

(;^ω^)「ど、どうして天野勢の格好なんかしてるんだお!」

(;゚∀゚)「旦那様こそ、どうして根十城なんかにいるんですかい!?」

 
 根十城の城主を連れて逃げているブーン、根十城を攻める天野勢の一員になっている宿屋の主人。
 理由はわからないが、間違いなく二人は敵対する立場にあった。

 あってはならない形で、二人は再会してしまった。

343 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:34:42 ID:vluT4a/oO
 
 実のところ、天野勢が二子厨の庄を襲った際、宿屋の主人は捕虜として天野勢に捕まっていたのだ。

 すぐに処刑はせず、捕虜は戦力にしてしまうのが擬古成のやり方だ。
 主人も天野勢に加わらされ、訓練を受けさせられ、この根十城攻めに参戦させられていた。

 
(;゚∀゚)「……」

(;^ω^)「……」

 
 ブーンも、主人も、兵達ですら、この奇妙な状況に固まっていた。

 しかし、この均衡は長くは続かなかった。
 構うことない、殺せ、といきり立った兵が、刀を抜いて走り出したのだ。

 その直後。
 構えていた槍で、主人がその兵の背中を貫いた。

344 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:35:37 ID:vluT4a/oO
 
 走り出していた兵が、静かに崩れ落ちた。

 
(;^ω^)「ご主人!?」

(;゚∀゚)「あ……」

 
 やってしまった、という顔を自らの槍に向ける。
 その後ろで、十人ほどの兵が一気に騒ぎ出した。

 
(;゚∀゚)「う、うおおっ!!」

 その兵達に向かって、今度は槍を横に払った。
 数人の兵が倒れ込み、それに押されて更に何人かが転ぶ。

 
(;゚∀゚)「旦那様!!今のうちに降りてくだせェ!」

(;^ω^)「な、何言ってんだお!」

(;゚∀゚)「いいから早く!!」

345 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:37:13 ID:vluT4a/oO
 
(;^ω^)「ご主人…」

(;゚∀゚)「…あん時、旦那様はもう後悔はしないでくれって言ってくれやした」

(;゚∀゚)「約束通り、俺ぁ後悔なんてしません!これが俺の選んだ道なんだ!さあ、早く逃げてくだせェ!!」

(;^ω^)「…わかったお!」
 

 主人が槍で兵達をどかした隙間を、出麗て巳留那を連れて走り行くブーン。
 三人の姿が見えなくなると同時に、主人の横腹を、槍が貫いた。

 「謀反者を殺せ」という誰かの掛け声と共に、兵達が刃を向けてきたのだ。

 腹に、胸に、肩に、容赦なく槍が突き刺さっていく。

346 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:38:08 ID:vluT4a/oO
 
(; ∀ )「う……あ…」

(; ∀ )「…だ、旦那…様……」

 
 力無く倒れ込みながら、主人は力を振り絞って手を動かした。

 右手を懐に入れ、中をまさぐる。

 …良かった。無事だったか。
 言葉にならない言葉を吐き、主人は目を閉じた。
 その右手には、かつてブーンから貰った品、ボールペンが握られていた。

 無二の宝物が無事だったことに、安堵の表情を浮かべる主人。
 直後、その首と胴が、兵が振り下ろした刀によって分かれていった。

 

──

347 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:39:10 ID:vluT4a/oO
──

 
(;^ω^)「ようやく下に着いたお…」

ζ(゚ー゚;ζ「あとは馬を取って逃げるだけね」

 
 近くに人の気の無い、根十城大手門付近。
 この大手門を抜けると兵士宿舎がある。そこに隣接する馬小屋に行けば、逃げきる為の馬も確保できるはずだ。

 いざ門を抜けようと三人が進み出す。
 途端、何やら鉄同士がぶつかるような、重い轟音が門の向こうから聞こえてきた。

 
(;^ω^)「この音は…?」

 
 まさかの事態が脳裏をよぎる。
 音のした方、大手門の向こうへと、ブーンは急に走り出した。

348 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:40:30 ID:vluT4a/oO
 
ζ(゚ー゚;ζ「あ、ちょ、待ちなさいよ!」

 
 出麗の制止も聞かず、ブーンは躊躇いなく門をくぐっていく。

 門を抜け、目前に広がる光景に、ブーンは思わず立ち尽くした。

 結論から言うと、例の音の正体は、ブーンの予想通りだった。
 鉄同士がぶつかるような轟音の正体は、かつてブーンが二子堂城で聞いた、虎恍丸と斬馬刀が刃を合わせる音。
 そして、その音から連想できる通り、そこには渚本介と擬古成の姿があった。

 
(;゚ω゚)「え…あ……?」

(,,゚Д゚)「ハッ、生きていたか南蛮人」

 
 擬古成が静かにブーンに目を向ける。
 しかし、ブーンの視線は別のものを捕らえていた。

349 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:41:21 ID:vluT4a/oO
 
(;゚ω゚)「そんな……嘘だお…」

 
 信じられない光景だった。
 冷や汗が全身を流れ、気が遠くなるのを弱々しく堪えながら、ブーンは小さく声を洩らした。
 

(;゚ω゚)「…渚本介さん……?」

(;´メω `)「……」

 
 震えた声が辺りに響く。

 ブーンの目線の先で、頭部から血を流した渚本介が、ゆっくりと膝をついた。

 

第十話 終

350 ◆vVv3HGufzo :2011/03/27(日) 23:42:57 ID:vluT4a/oO
今回の投下は以上です!

…はい!

351 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/27(日) 23:49:41 ID:aZNpbJaQ0
きてたーと思ったら終わってた

352 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/28(月) 00:05:17 ID:KmjcXySUO
乙乙!

353 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/28(月) 13:35:23 ID:PrtONK/E0
うわあああああああああああああああ!
絶望した

354 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/28(月) 14:44:11 ID:RZfCk.Yo0
おっつ

355 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/28(月) 15:15:32 ID:tv8EY642O

比岐に宿屋の主人…あれぞ漢の生き様だな

356 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/28(月) 16:09:23 ID:7KuKwvDw0

ショボンさああああああん

357 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/29(火) 01:00:36 ID:yruBIS2c0
投下が待ち遠しい

358 以下、名無しにかわりましてフーンがお送りします :2011/04/01(金) 22:15:40 ID:HB0sEhw20
もららー…(ω;`

359 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:29:31 ID:.21OI1/oO
レスありがとうございます!

早速続きを投下しまっせ!カモン!

360 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:30:11 ID:.21OI1/oO
***
第十一話 「復讐と野望の果て」

***
 

 時は少し前後する。

 ブーン達が宿屋の主人と出くわした頃。
 渚本介は地下牢から上がり、搦手門のあたりに居た。

 搦手門とは、簡単に言えば城の裏口のようなものだ。
 地下牢にブーンがいなかった為、もう逃げるのに成功したか、もしくは敵に捕まったかの二択しかない。
 まずは前者であることを考え、一旦は正門を見て、それからの搦手門を確認に来た。
 しかし、搦手門は厳重に鍵が閉められていた。

 
(;´・ω・`)(城外にいることは考えにくいな…)

 となると、ブーンは城内を隠れるか逃げ回っている、もしくは既に捕まっているかだ。

361 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:31:13 ID:.21OI1/oO
 
 いずれにしても、このままだと最悪な結末をブーンは迎えることになる。

 
(;´・ω・`)(休む暇は無いな)
 

 乱れた息を整え、疲労を訴える足を押さえる。
 早く行かなければ、と力無く走り出す渚本介。

 その直後だった。

 
(;´・ω・`)(擬古成か…?)

 
 渚本介の位置から五十メートルほど離れた、大手門近くの天守の下。
 あの擬古成が、フラフラと歩いているのが見えた。

362 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:32:12 ID:.21OI1/oO
 
 遠くてよく見えないが、何やら顔から血を流しているようだ。

 無二の好機だ、と虎恍丸を抜く。
 鞘から刀を抜く音が聞こえたのか、それともその殺気に感づいたのか。
 擬古成が、此方に気付いた。
 

(,;゚Д゚)「戦魔…!」

 擬古成が大手門近くまで降りていた理由。
 それは、比岐と戦っている間に逃げていった巳留那達を追う為だった。

 ところが下に巳留那達の姿は無い。
 代わりに、あの太田渚本介の姿がそこに在った。

 
(,;゚Д゚)「フ……」

363 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:33:20 ID:.21OI1/oO
 
 思わず、口元が緩んだ。

 面白いじゃないか、この巡り合わせ。
 これが、この天野擬古成と太田渚本介の、恐らく最後の戦いになるのだろう。

 ふらつく頭を押さえ、虎恍丸を構える渚本介を睨みながら、斬馬刀を抜いた。

 
(´・ω・`)「……」

 
 その擬古成に向かって、虎恍丸を手にしたまま歩き出す渚本介。
 二人の間の距離が、着実に縮まっていく。

 
(,,゚Д゚)「戦魔よ!」

(´・ω・`)「!」

 
 その距離が十メートル程に狭まった頃。
 突如、擬古成が口を開いた。

364 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:33:37 ID:.21OI1/oO
 
 突然の事に、渚本介の足が止まった。

 根十城にて漸く、落ち着いて対峙する二人。
 斬馬刀を持ったまま、擬古成が続ける。

 
(,,゚Д゚)「お前との長き戦いも、恐らくこれが最後。お前は今容易く逃げられる立場に無いからだ。勿論、それは俺もなのだが」

(´・ω・`)「……」

(,,゚Д゚)「故に、俺とお前は今より命の決着をつける。こうしてまともに話すのも、恐らく何れかの今生の最後だ」

(´・ω・`)「…そうだな」

(,,゚Д゚)「言い残すことは?」

 
 情けや慈悲ではなく、純粋に渚本介の言葉を聞こうとする擬古成。
 それを察し、渚本介も素直に言葉を並べていく。

365 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:34:38 ID:.21OI1/oO
 
(´・ω・`)「今の俺は復讐心のみで生きていると言っても過言ではない。貴様の顔を見る度、声を聞く度、憎悪と殺意が我が体躯を啄む」

(´・ω・`)「そして、今ここで貴様の首を取ったとして、その後の俺は生きていけまい」

(,,゚Д゚)「……」

(´・ω・`)「どうせ死に行くなら、貴様を地獄に送ってからだ。…最後に、貴様に率直な心の内を述べよう」

 
 虎恍丸を構え直し、一呼吸置いた渚本介。
 対する擬古成も、斬馬刀を静かに構えた。

 
(´・ω・`)「……殺してやる」

366 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:35:37 ID:.21OI1/oO
 
 一瞬後。二つの刃が、轟音をあげて交わった。

(#´・ω・`)「ハァッ!!」

(,#゚Д゚)「ゴルァッ!!」

 斬馬刀の重みに勝てず、虎恍丸はやはり弾かれた。
 そこに擬古成の素早い返し手が迫るが、渚本介はそれを潜り込んで避ける。
 がら空きの腹に虎恍丸を伸ばすも、擬古成がそれを飛び上がってかわした。

(;´・ω・`)「!?」

(,#゚Д゚)「フンッ!!」

 そのまま空中で回転しながら斬馬刀を払う。
 その攻撃をなんとか虎恍丸で受け流し、擬古成の首へと刃を伸ばす。
 しかし、今度は擬古成がそれを潜り込んでかわした。

367 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:36:45 ID:.21OI1/oO
 
 地面についた斬馬刀を、持ち上げるように渚本介に向ける。
 途端、渚本介がその刃に足を乗せた。

(,;゚Д゚)「ム…!?」

(#´・ω・`)「ハッ!!」

 予想外だった渚本介の動きに反応できず、そのまま斬馬刀を振り上げた擬古成。
 斬馬刀の刃に乗った渚本介が、その頭上を越え、擬古成の背後に着地した。

 勝ちを確信し、その背中に虎恍丸を突き伸ばす。
 しかし、その視界から擬古成が消えた。
 渚本介の攻撃が当たる前に、地面スレスレまで一瞬で伏せたのだ。

 そのまま仰向けになりながら、渚本介の脇腹に蹴りを喰らわす。
 それをまともに受け、渚本介は数メートル吹っ飛ばされた。

368 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:37:46 ID:.21OI1/oO
 
(;´・ω・`)「く…はっ……!」

(,;゚Д゚)「ハァ…ハァ…ッ」

 
 脇腹を押さえて立ち上がる渚本介。呼吸を整えながら起き上がる擬古成。
 睨み合いながら、再度武器を構え直す。

 二人の力は、確実に拮抗していた。

 
(;´・ω・`)「……」

(,;゚Д゚)「……」

 
 長くは戦えないと悟った二人。
 短時間で勝負をつける為、次の動きを目で探り合う。

 いざかかろうと渚本介が一歩踏み出した。
 その途端、渚本介のすぐ横に兵が落ちてきた。

(;´・ω・`)「!」

 その兵に一瞬気を取られ、動きを止めてしまった渚本介。
 その首に、斬馬刀が勢い良く迫る。

369 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:38:39 ID:.21OI1/oO
 
(;´・ω・`)(しまっ…!!)

 咄嗟に虎恍丸を向け、直撃を避ける。
 しかし、斬馬刀の力に押され、そのまま体ごと飛ばされた。

 大手門の方に飛ばされ、運良く壁にぶつかることなく門をくぐり抜けた渚本介。
 どうにか体を起こし、顔を上げる。
 

(;´・ω・`)「くっ…」

(,#゚Д゚)「ゴルァッッ!!」

(;´・ω・`)「!!」

 擬古成も門を抜け、そのまま飛び込むように斬馬刀を振り下ろす。
 今度はまともに虎恍丸で攻撃を止めるも、渚本介の体はそのまま後ろへ流れた。

 休む暇なく、またも渚本介に斬馬刀が横から迫る。

370 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:39:50 ID:.21OI1/oO
 
(;´・ω・`)(間に合わない…)

 流れた体のバランスを保つのに必死で、手が空いていた渚本介。

 体を反らしてその攻撃を避けようとするも、斬馬刀は渚本介の顔面を捕らえた。
 

(,,゚Д゚)「…勝負あった」

(;´メω `)「……」


 渚本介の右頬から額に向けて、斬馬刀は深い爪痕を刻み込んだ。

 右目を失い、顔から大量の血を流しながら、よろよろと数歩歩み。
 渚本介はゆっくりと膝をついた。
 

 ブーン達が大手門の方へ飛び出してきたのは、ちょうどその時だった。
 

 
──

371 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:40:11 ID:.21OI1/oO
──
 

(;゚ω゚)「…渚本介さん……?」

 
 何が起こったのか、すぐには理解出来なかった。
 ただ目の前の現実に、ブーンは固まるしかなかった。

 
(;´メω `)「……」

(;゚ω゚)「そ…んな…」

(,,゚Д゚)「哀れな男よ」

 
 斬馬刀の峰を肩に乗せながら、擬古成が口を開く。
 膝をついた渚本介の背中を見下ろすその目は、異様なほどに冷たい。

372 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:41:25 ID:.21OI1/oO
 
(,,゚Д゚)「たかが復讐の為だけに、俺を追う為だけに、当て所ない旅を続けてきた」

(,,゚Д゚)「それがこのザマだ。殺す為だけに刀を振り回し、闇雲に走り回り、この男は生涯を終える」

(;´メω `)「……」

 
 擬古成の言葉に、渚本介は何の反応も示さない。

 攻撃の兆しのないその後ろ姿へと近付き、擬古成は斬馬刀を振り上げた。
 

(;゚ω゚)「……やめろお…」

(,,゚Д゚)「さらばだ。太田渚本介」

(;゚ω゚)「やめ………!」


 ブーンにはその瞬間が異様なほどゆっくりと見えた。

 斬馬刀が、渚本介の首を目掛けて振り下ろされた。

 

──

373 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:44:18 ID:.21OI1/oO
──
 

 
 応仁元年。
 十一年もの間継続し、その規模は全国にまで広がった、所謂応仁の乱の始まった年。
 戦国時代と呼ばれる始まりの年に、太田渚本介は武家として生を受けた。

 応仁の内戦が広がっていくなか、渚本介の住む国も、否が応に争いに巻き込まれた。

 

 これは、渚本介が十歳になった時のことだ。

 
(`・ω・´)「渚本介、もう日が暮れるぞ。稽古ならまた明日にしろ」

(´・ω・`)「待ってください兄上、もう少し…」

374 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:45:17 ID:.21OI1/oO
 
 幼くして、刀に強い興味を持っていた渚本介。
 武家に生まれたことに感謝しながら、家の庭で刀を振る。それが日課であり、幼心なりの生きがいであった。

 
 渚本介より六つ離れた兄の紗衿丈(しゃきんのじょう)はそんな渚本介を微笑ましく眺めていた。

 その剣術が讃えられ、若くして仕官の職が決まった紗衿丈。
 愛しい弟が一生懸命に刀を振る姿も、もう沢山は見れない。
 そう踏んでいた紗衿丈は、なるべく渚本介の傍にいるよう努めた。

 戦に出向かった父親の代わりになれればと、紗衿丈なりの配慮であった。

 
(`・ω・´)「うむ、振りが鋭くなったな」

(*´・ω・`)「本当ですか!?」

(`・ω・´)「ああ、しかし体の回転が遅いな。回転が遅いと刀が速く届かない上に、視界も格段に狭くなる」

(`・ω・´)「もっと腰を落として、足を速く動かせるようにしろ。そうすれば自然と腰が回り、体も速く回る」

(´・ω・`)「なるほど…ありがとうございます」

375 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:46:05 ID:.21OI1/oO
 
(`・ω・´)「さ、今日はもう終わりだ。飯が待ってるぞ」

(*´・ω・`)「はい!」

 
 男子は剣の達人に育つと言われるほど、太田家は武家として達者な存在だった。

 父親が特別席で戦場に出向くのも当然であり、長男の紗衿丈が仕官に決まるのも当然。

 そして。

 
(´・ω・`)「?」

(`・ω・´)「この音は…」

 
 他勢に狙われるのも、当然であった。

 
(;`・ω・´)「……逃げろ渚本介!!」

376 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:47:06 ID:.21OI1/oO
 
 空気を裂く音が二人を振り向かせ、その正体が二人の背筋を凍らせた。

 夕焼けに染まる空には、数えられぬ程の赤い流星。

 火矢が、此方に向かってきていた。
 

(;´・ω・`)「あ、兄上!」

(;`・ω・´)「フンッ!!」

 歯を食いしばり、家の中へと渚本介を突き飛ばす。
 そのまま紗衿丈も屋根の下へと飛び込んだ。

 直後、屋根と庭が勢いよく燃え上がった。

 
(;´・ω・`)「あ、兄上…」

(;`・ω・´)「いいから隠れるんだ!!」

 
 紗衿丈が声をあげた。
 一瞬体をビクッと浮かし、渚本介は奥の棚の中に転がり込んだ。

377 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:48:14 ID:.21OI1/oO
 
 先程渚本介が振っていた刀を拾い、庭の柵の向こうを睨む。
 その目線の先で、鎧を纏った兵達が、柵を破壊しながら庭に飛び込んできた。
 

(;`・ω・´)(多いな…)

 
 何が起こっているかなど、すぐに理解できた。
 この太田家を、何者かが急襲してきたのだ。


 戦の為、家には紗衿丈と渚本介、そして母親と何人かの召使がいるだけだ。

 相手にできるのは自分しかいない。
 刀を構え、庭とその向こうにいる兵達を睨む。

 その数、およそ百人強。

378 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:49:21 ID:.21OI1/oO
 
 敵からしてみれば、相手はまだ十代の子供一人だ。
 様子見の必要もない、と前列の兵が縁側に乗り込んできた。

 
(´・ω・`)「ハッ!」

 向かってきた刀をかわし、その腹部に蹴りを喰らわす。
 蹴られた兵はそのまま庭へと飛ばされ、何人かの兵を巻き添えに転んだ。

 今だ、と刀を持って飛びかかろうとする紗衿丈。
 その動きが、突如、ピタリと止まった。

 それは、ある男の声が紗衿丈の耳に届いたからだ。

 

「待て」

(;`・ω・´)「!!」

379 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:50:04 ID:.21OI1/oO
 
 その声に聞き覚えがあるわけではない。
 ただ、その声の冷たさに体が固まってしまったのだ。

 兵達の間から、声の主である一人の男が姿を現した。

 
(,,゚Д゚)「太田紗衿丈。今日は貴様に用があって来た」

 
 この戦乱にあやかって、戦を続ける武将。
 天野擬古成の姿が、そこにあった
 

(;`・ω・´)「……用とは?」

 何故か、自らの声が震えてしまう。
 それほどまでに、目の前の男の威圧感は凄まじかった。


(,,゚Д゚)「簡単だ。我が配下に加われ」

380 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:51:18 ID:.21OI1/oO
 
(;`・ω・´)「!?」

 
 予想外の台詞だった。
 しかし、擬古成が無言の条件を出していることはすぐにわかった。

 まずはこの家に火矢を浴びせたのがその証拠だ。
 恐らく擬古成はこういう条件を出している。

 「断るなら、太田家を潰してやる」と。

 
(,,゚Д゚)「太田家の実力には一目置いている。我が臣下に考えてもいいほどにな」

(,,゚Д゚)「大人しく加わるがいい。さもなくば、貴様ら太田家を壊滅させん」

(;`・ω・´)「……」

 
 どうする。どうすればいい。
 天野は太田家とは敵対の仲。天野に寝返ることは死んでもしたくない。
 しかし、そうしなければ太田家は滅んでしまうかもしれない。

381 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:52:09 ID:.21OI1/oO
 
(;`・ω・´)「……」

(,,゚Д゚)「…答えよ」

 
 少し苛立った様子で、擬古成が返事を促す。
 紗衿丈が、ゆっくりと顔を上げた。

 なんだ、考えるまでもないじゃないか。
 紗衿丈は口角を上げ、刀を逆手に持った。

 
(,,゚Д゚)「!?」

(`・ω・´)「貴様ら下賤共に、太田家が惑わされることはない!他をあたれ!!」

 怒声とともに、刀を振り上げる。
 途端、紗衿丈は擬古成に向かって刀を投げた。
 

(,;゚Д゚)「く……」

 紙一重でその攻撃をよけ、少しよろけた擬古成。
 その額に、青筋が浮かぶ。

382 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:53:18 ID:.21OI1/oO
 
(,#゚Д゚)「……」

 そのまま振り返り、兵達の後ろへと戻り出す擬古成。
 その去り際、小さく呟くように、兵達に命令を下した。
 

(,#゚Д゚)「……殺せ」

 

 怒号。刀を振る音。刀を合わせる音。
 それらが一気に、まるで爆音のように、辺りに鳴り響いた。

 

(;´・ω・`)(兄上……)

 じっと棚の中に隠れているのに耐えられず、渚本介は棚の扉に手をかけた。

 しかし、勇気が出ない。
 もし敵に見つかってしまえば命はない。
 それでも兄の様子が気になって仕方がない。

 ゆっくりと、ほんの少し、渚本介は扉を開けた。

383 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:54:30 ID:.21OI1/oO
 
 これほど現実味の無い光景を、渚本介は見たことがなかった。
 扉の隙間から、はっきりと見えたその瞬間。

 
(;` ω ´)「───!!」

 
 血まみれの兄の紗衿丈。
 その首が、あっけなく落ちる瞬間だった。

 

(;´・ω・`)「…あ…?」

 自らが隠れていることも忘れ、渚本介は声を洩らした。

 有り得ない光景だったのだ。
 強く、たくましく、面倒見のいい兄の紗衿丈が、命を失うなど。

 
 現実を理解するのに、かなりの時間がかかった。
 兄が殺された。その現実が理解できた途端、渚本介は棚を飛び出していた。

384 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:55:57 ID:.21OI1/oO
 
(#´;ω;`)「うわあああああああ!!!」


 棚を飛び出し、落ちていた刀を拾い、渚本介は撤退しかけていた兵達に向かって走り出した。

 驚いて振り向いた手前の兵に、まずは刀を刺し込んだ。

 
(#´;ω;`)「うわあああああ!!!ああああああああ!!」

 
 すぐに状況を理解し、刀を持って暴れまわる子供を押さえようと兵達が飛びかかる。
 しかしその兵達は、次々と渚本介に斬り伏せられていく。

 
(,,゚Д゚)「あれは…」

 事態を察し、擬古成は目を細めてその姿を視認しようとした。

 しかし、その幼い姿に見覚えはない。
 強いて言うなら、紗衿丈に似たその容姿に、恐らく当てはまる名前があった。

385 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:57:15 ID:.21OI1/oO
 
 太田紗衿丈の弟、太田渚本介。
 まだ十に達したかどうかの子供が、この太田家にいるはずだった。

 もし、今暴れまわっているあの子供がそうだとしたら。
 兄を殺された天野に対する復讐に燃え、そのまま剣豪として成長してしまうならば。
 間違いなく、太田渚本介は天野家の驚異となってしまうだろう。

 出る杭は打たねばならない。
 擬古成は慌てふためく兵達に向かって声を上げた。

 
(,,゚Д゚)「その童を殺せ!!首を取り、丹生捉城へ持ってくるのだ!!」

 そう言い放つと、擬古成は数人の家臣と共に、自らが居城する丹生捉へと馬で駈けていった。

 残るは、まだ幼き太田渚本介。
 そして、対する天野勢百弱。

 結果は明らかに目に見えていた。

386 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:58:21 ID:.21OI1/oO
 
 …はずだった。

 
(#´;ω;`)「うわああああああああああ!!!!」

 怒り狂った渚本介が、大勢の兵に対し、臆することなく刀を振るう。

 我を忘れながらも、全身に刀傷を負いながらも、渚本介は兵達を問答無用に襲い続けた。

 
(#´;ω;`)「ああああああ!!!うわあああああああああああああ!!」

 
 対する兵達も、この小さな相手の恐ろしさに、ようやく気づき始めた。
 大の男よりも速く、低く、鋭く、刀が繰り出されていく。

 引け、引くんだ、という誰かの怒号が辺りに響いた。
 それでも、逃げようとする兵達を更に襲い、渚本介は暴れ続ける。

 天野勢が渚本介から逃げ切った頃には、兵の数は五十ほどにまで減っていた。

387 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 22:59:17 ID:.21OI1/oO
 
(#´;ω;`)「殺してやる…殺してやる……」

 兵達の背中が見えなくなるまで、渚本介は刀を離さなかった。
 今生の全て賭しても構わないほどの復讐心。ただそれだけを胸に、渚本介は意識を失った。

 
 百人の兵を、十歳にして追い返した渚本介。
 この事件こそ、彼が「戦魔」と唱われるきっかけであり、天野家に対する復讐を誓った由縁でもある。

 

──

388 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 23:00:12 ID:.21OI1/oO
──

 
 根十城大手門付近。

 背を向けて膝をつく渚本介と、斬馬刀を振り上げた擬古成。
 

(;゚ω゚)「やめ……」

 
 やめろ。やめてくれ。
 掠れた声が、ブーンの意志の一部だけを拾い、擬古成に浴びせようとする。

 しかし、擬古成はブーンの訴えに耳を傾けず、無表情で渚本介を見下ろしている。

 
 長い戦いだった、と擬古成は思いふけていた。

 幼き渚本介に目をつけられてから、もう二十年弱。
 擬古成の予想通り、渚本介は天野家の驚異となり、天下統一への道を何度も防いできた。

389 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 23:01:08 ID:.21OI1/oO
 
 その戦いも、これで終わる。
 ようやく天下統一へ大きく踏み出せる。
 

(,,゚Д゚)「さらばだ、太田渚本介」

 
 敵ながら見事な男だった。
 だからこそ、一刀のもとに終わらせてやる。

 上段に構えた斬馬刀を、渚本介の首を目掛けて、一気に振り下ろした。

 

(;゚ω゚)「──!!」

 
 ざくり。

 斬馬刀から、物を斬る音が鳴った。

390 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 23:02:06 ID:.21OI1/oO
 
(,,゚Д゚)「……」

(;゚ω゚)「渚本介…さ……」


 斬馬刀が斬ったのは、固く踏みならされた地面──


(´メω・`)「心配は無用だ」

 
 ──それだけだった。

 
( ;ω;)「渚本介ざぁん……」

 渚本介が無事であることに安堵し、へなへなと座り込むブーン。

 その先で、今度は擬古成が膝をついた。

391 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 23:03:13 ID:.21OI1/oO
 
(,;゚Д゚)「きさ…ま……!」

(´メω・`)「長きに渡ったこの戦いも、これで終わりだ」
 

 擬古成が斬馬刀を振り下ろす瞬間、渚本介は横に回るように避け、そのまま擬古成の腹に虎恍丸を刺したのだ。

 腹から血を流し、膝をつく擬古成。
 その目の前に立ち、虎恍丸を上段に構えながら、渚本介が静かに言葉を向ける。
 

(´メω・`)「貴様の首を取る為だけに今日まで生き長らえてきた。貴様の野望も、その魂も、これで終わりだ」

(,; Д )「く……は…」

392 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 23:06:09 ID:.21OI1/oO
 
 本丸の建物のほうから、何やら大声が聞こえてきた。
 見ると、兵達が此方を指差しながら、慌てふためいている様だった。

 渚本介はそこには目を触れず、躊躇いなく虎恍丸を振り下ろした。

(´メω・`)「──さらばだ」

 この瞬間を、どれほど待ちわびただろうか。
 生きる上での最大の目的を、渚本介は確かに果たした。

 胴から離れた擬古成の首を掲げ、本丸を向く。
 肺いっぱいに空気をため、渾身の大声を、本丸の兵達に向けた。

 
(#´メω・`)「天野擬古成が首!!ここにィッッ!!!」

 この瞬間を、どれほど夢見ただろうか。

 渚本介の声は、根十城中に鳴り響いた。

 
(#´メω・`)「取ったぞォォォォッッ!!!!」

 
 明応五年。
 天野擬古成、根十城にて散る。

 
第十一話 終

393 ◆vVv3HGufzo :2011/04/04(月) 23:08:02 ID:.21OI1/oO
今回の投下は以上です!
そろそろ忙しくなってきたので、次回の投下は遅くなるかもしれません

394 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/04(月) 23:08:04 ID:Gy00vhmg0
おおお…!乙!

395 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/04(月) 23:15:00 ID:2//4ARl60
乙ー。

それにしてもすっかりショボンが主人公になってきているwww

396 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/05(火) 09:29:07 ID:5GbpevVw0
ショボンさんカッコよすぎる
そろそろブーンもギター弾かないとなwwwww

397 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/05(火) 10:36:38 ID:puRvrTzgO
乙!
流石ショボン
しかしこの後大丈夫だろうか

398 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/05(火) 12:15:24 ID:uvwCDGsI0

よっしゃあああああああ勝ったああああああ

399 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/05(火) 12:33:35 ID:E2mCPw0QO
ギター……

400 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/05(火) 12:55:22 ID:4NYhaxPsO
城内戦が始まったあたりからショボン編で
今からブーン編じゃねーの
しらんけどw

とにかく乙!

401 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/06(水) 09:03:43 ID:kZacTIkc0

もう終わりそうだな

402 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:13:35 ID:bIWJ.cLkO
お待たせしてしまって申し訳ないです!

第十二話いきます!

403 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:13:57 ID:bIWJ.cLkO
***
第十二話 「螺旋人生」

***


 それからの展開は早かった。

 総大将が敗れたことで、根十城の乗っとりにほとんど成功していたはずの天野勢が混乱。
 その背中を僅かな二茶根瑠勢の兵が襲いかかり、天野勢は完全に腰が引け、撤退を余儀無くされた。

 半ば強引な形で、天野勢から根十城を守ることに成功した二茶根瑠勢。
 数では負けたが戦に勝った。
 勝ち鬨の雄叫びが、根十城中に響いていく。


 根十城大手門付近では、四人の人影が、緊張のほぐれた様子で集まっていた。

404 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:14:23 ID:bIWJ.cLkO
 
( ^ω^)「渚本介さん、大丈夫ですかお」

(´メω・`)「ああ、片目があれば刀は振れる」

ζ(゚ー゚*ζ「これで天野勢はもう問題ないわね。擬古成がいなければ、戦の理由もなくなる」

(´メω・`)「逆に天野に攻めいる軍が増えるだろうな。奴はそれだけの恨みと領土を奪い取っていた」

( ゚д゚ )「……とにかく」

 
 巳留那の威厳のある声が、その場を静かにさせる。
 渚本介のほうを向き、頭を下げながら、巳留那は言葉を並べた。


( ゚д゚ )「此度の戦、貴殿の御陰で勝利に傾いた。感謝致す」

(´メω・`)「御面をお上げください。この勝利は二茶根瑠の兵の強き精神があってこその勝利。感謝なら兵士達にお伝えしてください」

( ゚д゚ )「フ……」

405 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:15:41 ID:bIWJ.cLkO
 
( ^ω^)(´メω・`)「!」

ζ(゚ー゚;ζ「えっ!?」

 常に気難しい顔で、感情を表に出さなかった巳留那が、小さく笑った。

 三人が驚き、巳留那の顔を見る。
 特に出麗は大きな目を更に丸くして、軽く飛び上がるほど驚いた。


( ゚д゚ )「む…なんだその顔は」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、いえ…」

 
 城はボロボロにされ、所々に火の手が上がっているというのに。
 自身達はもう満身創痍だというのに。

406 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:15:54 ID:bIWJ.cLkO
 
(´メω・`)「…はは」

( ^ω^)「フヒヒww」

ζ(゚ー゚*ζ「きめえ」

( ^ω^)

( ゚д゚ )「フ…」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、また笑った!」

( ゚д゚ )「…なんだ、余が笑うのは禁じられているのか」

ζ(゚ー゚;ζ「いえ、決してそうでは…」


 それ以上の喜びが彼らを包む。
 天野に対して勝利をおさめたことに。
 今、生きていることに。


 城はいつの間にか消火が進められ、遺体も片付けられ始めていた。

 東の空が、少しだけ青に染まってきた。

 

──

407 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:16:51 ID:bIWJ.cLkO
──
 

 多くの犠牲を出した悲しみや、勝利の余韻。
 それらが城内を包む中、巳留那が全兵を集めたのは、その翌日の夜のことだった。

 本丸天守前の広場。巳留那が示したその場所に集められたのは、天野勢に対して勇敢に戦った、二茶根瑠勢の生き残り約九百人。
 臨時に設置された台に上り、かなり少なくなった兵達を見渡し、巳留那が重く響く声を出した。

 
( ゚д゚ )「死を恐れず、迫りくる刃に身構え、勝利を連れ出でた勇猛な兵士達よ。此度の戦、お前達の闘心あってこその勝利。誠に感謝する」

 
 兵達の顔がほころんだ。
 満面の笑みを向けるもの、涙を浮かべるもの。

 それほどまでに、巳留那の言葉は、彼らの胸に響くものだった。

408 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:17:50 ID:bIWJ.cLkO
 
( ゚д゚ )「これで我が二茶根瑠領も安泰。平和という時代は、もはや目の前にあり」

( ゚д゚ )「この平和はお前達が掴み取ったものだ。体を休め、心を休め、死に行くまでそれを誇るがいい」

 
 二茶根瑠勢にしてみれば、ひどく長い緊迫だった。

 武力のある二茶根瑠領を天野が狙っていると知ったのは数年前。
 それからというもの、この戦に向けて二茶根瑠は身構えてきた。
 何年も、いつ来るかわからない敵に怯えながら、時には奮い立ちながら。

 しかし、その緊迫ももう終わった。
 随分と仲間が死んでしまったが、それでも終わったのだ。

 奇跡に近い、勝利という形に収めながら。

 

──

409 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:19:19 ID:bIWJ.cLkO
 
──


( ^ω^)(どうするかお…)

 
 巳留那の演説が終わった数時間後。
 ブーンは物見台に座りながら星空を眺めていた。

 これからどうするか。これがブーンの悩みだった。
 ブーンがこの根十城に来た目的は、尾付出麗に会って元の時代に戻る手がかりを掴むことだ。
 天野を待ち構えるために来た渚本介とは違う。

 しかし、当の出麗はブーンがタイムスリップしてきたことすら知らないようだ。
 何故かブーンの部屋にあった、タイムスリップのきっかけである出麗の琴爪も、普通に返してしまった。

410 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:19:41 ID:bIWJ.cLkO
 
 もはや、自分に起こったことのすべてを出麗に打ち明けてみるしかないのか。
 そうでもしなければ、一生この時代に留まってしまいそうで怖い。

 
( ^ω^)「……」


 姿勢を崩し、そのまま寝転んで夜空を見る。

 ブーンがいた時代の東京では絶対に見られないほどの、満天の星空。
 これを眺めていると、元の時代に戻らなくてもいい気がしてきて、ブーンは目を閉じた。

 優しい風が、ブーンの体を撫でていった。

 
──

411 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:20:58 ID:bIWJ.cLkO
 
──

 

(´メω・`)(これからどうするか…)

 
 随分と人のいない兵士宿舎の治療室に、渚本介は寝転んでいた。
 包帯をぐるぐる巻かれた体を寝かせ、汚れた天井を見つめる渚本介。

 その考え事は、ブーンとまったく同じものだった。

 
(´メω・`)(…もはや俺の生きる意味はなくなってしまった)

 今日まで、渚本介は擬古成への復讐心のみで生きてきた。
 擬古成を討ち、それを達成させてしまった今、渚本介は何を目的に生きていけばいいのか解らなくなってしまったのだ。

412 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:21:15 ID:bIWJ.cLkO
 
 もともと、生きていても仕様がない人生だったと思う。
 生きる理由は絶対の復讐心のみだった。人並みの人生は、とうの昔に捨てていた。

 それなりの覚悟を持って、渚本介は復讐に没頭していたのだ。
 だからこそ、今の渚本介は抜け殻に近い状態だった。

 
(´メω・`)「……」


 旅に付き合ってきてくれたブーンに遺書でも残して、いっそ死んでしまおうか。
 いや、はっきりとした死ぬ理由があるわけではない。
 しかし、これ以上生きる動機も見つからない。

413 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:22:10 ID:bIWJ.cLkO
 
(´メωー`)「……」


 目を閉じて、考えることを一時的に止めてみる。
 脳裏によぎったのは、ブーンと過ごした旅路の記憶。
 そして。


(´メω・`)「……!」


 一つの、大きな閃きだった。


 
──

414 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:22:24 ID:bIWJ.cLkO
──

 
 翌日。
 ブーンは出麗に頼み込んで、琴の演奏を見せてもらうことになった。

 出麗の琴が聴きたいというのは表向きの理由で、実際は出麗に自分の正体を話してみることが目的なのだが。


(;^ω^)「し、失礼しますお…」
 
 静かな広間に通され、ブーンは用意された座布団によそよそしく座った。
 その先には、琴を構える出麗の姿。

 共に根十城を逃げ回ったとは思えないほど、その姿は美麗なものだった。


(*^ω^)(綺麗だお…)

ζ(゚ー゚*ζ「遅いわよブス」

( ^ω^)

415 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:23:44 ID:bIWJ.cLkO
 
ζ(゚ー゚*ζ「始めるわよ」

 
 二人きりの、広い空間。

 静かに張る空気を、出麗の奏でる琴の音が、滑らかに咲き渡った。

 
( ^ω^)「……」

 
 曲名の無い音楽。それでも、ブーンには曲のイメージが伝わった。
 青く広がる草原のような悠々しさ。それらをなびかせる風のような淑やかさ。
 「自然」そのものを表しているような、雄大な曲。
 琴の繊細な旋律で、こうも雄大さを奏でられるのかと驚くほど、それは綺麗な曲だった。

416 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:24:06 ID:bIWJ.cLkO
 
 ハーモニックスに近い奏法で音を響かせ、曲はゆっくりと終わった。

 
(*^ω^)「…すごいですお!」

 間違いなく、素晴らしい演奏だった。
 少し顔を赤らめた出麗に対し、ブーンは拍手を送る。

 そして、ブーンはそのまま自らのギターを取り出した。

 
ζ(゚ー゚*ζ「別に嬉しくなんか…ってどうしたの?」

(*^ω^)「セッションに決まってますお!」

ζ(゚ー゚;ζ「殺生…?」


 出麗の演奏で、すっかりテンションの上がったブーン。
 久しぶりにギターを構え、その感触を確かめた後に、出麗に演奏を促した。

417 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:25:17 ID:bIWJ.cLkO
 
 訝しげに頷き、出麗が琴を弾き始める。
 その曲のリズムに乗りながら、ブーンがギターを鳴らし始めた。

ζ(゚ー゚*ζ「!」

( ^ω^)「…」


 驚いて顔を上げる出麗に、にやけ面を向けるブーン。
 理解した出麗は、笑顔を見せながら曲調を変えた。

( ^ω^)(おっ?)

 優しい旋律が、弾け飛ぶような明るい旋律へ。
 はしゃぎまわるように琴を奏でる出麗に、ブーンはギターで乗りかかっていく。

418 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:25:39 ID:bIWJ.cLkO
 
( ^ω^)(それなら…これはどうだお!)

 これではまるで、セッションではなくギターバトルだ。
 それでもブーンは負けじと曲を仕掛けてみた。

 曲は押尾コータローの「Big Blue Ocean」。
 素早くチューニングをずらし、リズムの主導権を握る。

 ところが、出麗は臆することなく曲に乗ってきた。

 
ζ(゚ー゚*ζ(凄い弾き方ね…)

( ^ω^)(よく琴でついてこれるお…)

 
 心の奥で、互いの実力を認めながら。
 そして、闘争心を表に出しながら。

 二人のセッションは、日が暮れるまで続いた。


──

419 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:26:59 ID:bIWJ.cLkO
 
──


ζ(゚ー゚*ζ「せっしょんってなかなか楽しいのね!」

( ^ω^)「だお?音楽はこういう楽しみ方もあるんですお」

 
 夕暮れ。演奏の手が自然に止まり、二人のセッションは幕を閉じた。

 自然と笑顔になっていた二人。
 しかし、すぐに出麗の笑顔がゆっくりと落ちていった。

 
( ^ω^)「…どうしたんですかお?」

ζ(゚ー゚;ζ「あっ、ううん、なんでもないわよブス!」

 
 慌てて琴の手入れを始める出麗。
 それを見て、ブーンは出麗を訪ねた本当の目的をようやく思い出した。

420 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:27:22 ID:bIWJ.cLkO
 
(;^ω^)「……」

 
 カミングアウトの覚悟を決めるために、暫く時間をとる。
 琴の手入れの様子をぼーっと眺め、ブーンは突然口を開いた。

 
(;^ω^)「で、出麗さん!」

ζ(゚ー゚;ζ「うわっ、何よ急に」

(;^ω^)「あの、話したいことがあるんですお…」


 それから、ブーンは話を始めた。
 自分は未来から来たこと。その原因は出麗の琴爪にあること。ブーンのタイムスリップに、何か心当たりはないか。

 話を終える頃には、外は暗くなりつつあった。

421 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:29:21 ID:bIWJ.cLkO
 

ζ(゚ー゚;ζ「五百年先の未来から…」

( ^ω^)「…そうですお」

 
 信じてもらえるわけがない。
 しかし、出麗は必死のブーンの言葉の意味を理解しようとしている様子だった。

 
ζ(゚ー゚;ζ「…それで、私の琴爪がアンタを此処に連れてきたっていうの?」

(;^ω^)「そ、そうですお」

 
 そう言われてみると、なんとも現実味の無い馬鹿げた話だ。

 それでも、出麗は考えるように顔をしかめた。
 しかし、今度はブーンの話を理解しようという顔ではない。

 何か心当たりがあるような、気難しい顔だった。

422 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:29:47 ID:bIWJ.cLkO
 
 やがて、出麗のほうがポツポツと語り始めた。
 

ζ(゚ー゚;ζ「…馬鹿げた話に聞こえるかもしれないけど」

(;^ω^)「なんですかお?」

 
 少し身を乗り出し、話を促すブーン。

 出麗の口から出てきた言葉は、ブーンにとってはかなりの衝撃だった。

 
ζ( ー ;ζ「私、実は…」


 聞いてしまったことを、後悔するほどに。

 

──

423 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:31:22 ID:bIWJ.cLkO
 
──

 
(´メω・`)「探したぞブーン」

( ^ω^)「…お、渚本介さん」

 
 先日のように、ブーンは物見台で寝転んでいた。

 出麗と話をした数時間後。
 何もする気になれず、ただ夜空を眺めていたところを、渚本介が見つけたのだ。

 
(´メω・`)「一体何をしてるんだ。そろそろ飯の時間だぞ」

( ^ω^)「すみませんお…」

424 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:31:38 ID:bIWJ.cLkO
 
 何やら落ち込んでいる様子のブーン。
 気だるそうに立ち上がるその姿に、渚本介は口を開いた。

 
(´メω・`)「…実はブーン、頼みがあるんだ」

( ^ω^)「お?」


 予想外の言葉に、きょとんとした顔を向ける。

 そう、渚本介は別に飯を食わせるためにブーンを探していたわけではない。
 自らの人生の続き。その決心を告げるために、そしてその手伝いを頼むために、渚本介はブーンのもとに来たのだ。

 
(´メω・`)「俺は復讐を遂げ、人生に意味を無くしてしまった。だから、新しい道を歩むつもりだ」

425 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/27(水) 23:33:09 ID:5DmBbR1c0
平和や……

426 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:33:12 ID:bIWJ.cLkO
 
(´メω・`)「新たな人生、そのためにはお前の力が必要なのだ」

( ^ω^)「?」

(´メω・`)「お前が元の時代に帰るまでの間でいい。どうか頼まれてくれ」

 
 それだけ言い切ると、渚本介はブーンに頭を下げた。
 慌てて顔を上げさせ、ブーンは渚本介の頼みというものを聞くことにした。

 その言葉は、またもブーンに衝撃を与えるものだった。

 

(´メω・`)「俺にぎたーを教えてくれ」


( ^ω^)



( ^ω^)「……………え」


(;゚ω゚)「えええええええええええええええ!!!!!???」
 

 
第十二話 終

427 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/27(水) 23:33:43 ID:fAiB.Yyw0
最速の乙

428 ◆vVv3HGufzo :2011/04/27(水) 23:34:48 ID:bIWJ.cLkO
今回の投下は以上です!
もっと早く書けるよう頑張ります…

429 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/27(水) 23:36:31 ID:5DmBbR1c0
おっと乙でした
出麗の秘密が気になるね

430 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/27(水) 23:38:09 ID:jqiBM2x6O
そうきたかwwww乙!
なんにせよ切腹するとか言い出さなくてよかった

431 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/28(木) 00:00:38 ID:Xn5FNHFc0
これがホントのギター侍か・・・

432 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/28(木) 00:36:20 ID:RQb9g5zQ0
ttp://www.youtube.com/watch?v=VI9yhXjhcu4
今日はこちら、これ弾けるだなんて逆に嫉妬するよ!

433 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/28(木) 01:06:48 ID:KCIXNTDEO
>>432
すげええええ
バラードの伴奏ってイメージしかなかったけど
ギターってこんな軽快に色んな表現できんのか

435 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/05/07(土) 13:03:01 ID:Kf4L2yRU0


436 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/05/30(月) 23:20:48 ID:J31lAkK60
マダー?

437 ◆vVv3HGufzo :2011/06/05(日) 21:33:10 ID:RFo6yRncO
作者です!
私生活が忙しすぎて、書き溜めが進まない状況にあります
申し訳ないです…

逃亡はしませんので、もう暫く、もう暫く待ってください
お願いします

438 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/06/05(日) 21:40:05 ID:vAxh/ytY0
俺達が待たないとでも思っているのか?

439 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/06/09(木) 17:01:28 ID:R8HxHdIQo
勝手に待つからのんびりやって

440 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/06/25(土) 19:16:34 ID:dYsl2gps0
そうして作者は戦国時代へとタイムスリップしたのであった

441 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:11:56 ID:Pl3lvnnkO
お待たせしてしまって申し訳ございません
続きを投下します

442 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:13:38 ID:Pl3lvnnkO
***
第十三話 「在るべき運命と、抗えぬ運命」

***


 そもそも人にギターを教えたことが無いこと。相手がギターを持っていないこと。
 ブーンが狼狽した理由は多々あるが、何より気になる点が一つ。


(;^ω^)「えっ、と…何故ですかお…?」


 ギターを教えてくれと頼んできた、渚本介の意図だ。

 侍がギターを弾く。ブーンのいた時代にはちょうどそんな芸人がいたが、渚本介は至って真面目のようだった。

443 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:15:36 ID:Pl3lvnnkO
 
(´メω・`)「これからの人生に意味が欲しかったのだ」


 ブーンの目を、まっすぐ見据える渚本介。
 それだけで、ブーンにはすべて伝わった。
 渚本介がどれだけ考えたのか、どれだけ悩んでの結論なのか。

 満天の星空の下、渚本介の声が静かに響いていく。


(´メω・`)「幾日もの間お前と旅を続け、俺は羨望を抱くようになった。音楽に夢を持ち、その夢に生きるお前が羨ましかったのだ」

( ^ω^)「……」

(´メω・`)「俺はお前のように音楽に熱狂できないかもしれぬ。しかし、お前が歩んでいた道を、お前の人生の意味を、俺も少しは味わってみたい」

444 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:16:49 ID:Pl3lvnnkO
 
(´メω・`)「…それが理由だ」


 決意の籠もった声で、最後まで話しきった渚本介。
 ブーンは呆然としたまま渚本介の顔を眺め、その言葉を頭の中で反芻させた。


 渚本介は音楽に夢中なブーンがただ羨ましかったのだ。
 夢を持ち、生きる理由を持ち、人生に意味を持っていたブーンが眩しかった。
 復讐の心しか持っていなかった渚本介にとっては、それは余計に際立っていた。

 だからこそ、ブーンの追いかける夢に、ブーンの人生に触れてみたい。
 それこそが、渚本介自身にとっての人生の意味に成りかねないのだから。

445 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:17:01 ID:Pl3lvnnkO
 
( ^ω^)「…僕のギターで、渚本介さんの人生に意味を与えてやれるなら」


 考えるより先に、口が動き出した。
 純粋に心の内を放っていくブーン。

 それは、満面の笑みと共に。


( ^ω^)「僕は一向に構いませんお!」

(´メω・`)「!」


 音楽は人を救える。

 これは、それを証明する絶好の機会なのかもしれない。
 それならば喜んで受けようじゃないか。

 ブーンは早速その場に座り、ギターを構えた。

446 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:18:24 ID:Pl3lvnnkO
 
(´メω・`)「はは、よろしく頼む」

 一礼の後、渚本介はブーンの向かいに座った。

 横で聴くだけだったブーンの演奏を、久々に真正面から眺める。

 久々に。
 そう、初めてブーンと渚本介が出会った、あの時以来。


( ^ω^)「ではまずギターの説明からいきますお」

(´メω・`)「ふむ」

( ^ω^)「ギターで大事なのはチューニングですお。ヘッドのこの部分で…」

(;´メω・`)「ちゅうにん…へっど?すまない、もう少し丁寧に頼む」

(;^ω^)「あ、すみませんお…」


 武士にギターを教える。
 なんとも奇妙なブーンの日課が、その日から始まった。

 そして。

447 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:19:30 ID:Pl3lvnnkO
 

ζ( ー *ζ「……」


 琴の弦を撫でながら、ひとり座る出麗。

 ゆっくりと、優しく、その手は琴を落ち着かせるように。


ζ(;ー;*ζ「…なんで……」

 自らの心をなだめるように。

 静かに泣き崩れる出麗に、絶望感がじわじわと迫る。


ζ(;ー;*ζ「なんで…私なのよ……」


 苦悩に満ちた出麗の日々も、その日から始まることになる。


──

448 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:19:45 ID:Pl3lvnnkO
 
──

 それから数日間、ブーンのギターレッスンが始まった。

 渚本介は驚くほどに覚えが良く、音感もリズム感も非常に良いものをもっていた。
 もともと手先が器用だったこともあり、ある程度の奏法はすぐに身につけてしまった。


(;^ω^)(この人音楽の才能ありすぎだろ…)

(´メω・`)「指で弾くほうが面白いな…ところで、ふれっとを勢いよく押さえると音が出るんだが、これも奏法なのか?」

(;^ω^)「そうですお。タッピングといいますお(メタルかよ…)」

449 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:20:40 ID:Pl3lvnnkO
 
 技術に関して言えば、もう問題はなくなった。
 そろそろ曲を教えてもいい頃だ。ブーンは書道道具で楽譜を書き出した。


(´メω・`)「む、楽譜か」

( ^ω^)「読み方はこないだ教えた通りですお。まずは僕が手本として弾きますお」


 渚本介からギターを受け取り、譜面に記した曲をゆっくりと弾き始める。

 曲はRed Hot Chili Peppersの「under the bridge」を多少短縮させたもの。
 歌が無くとも雰囲気の出る曲だ。

 間違いなく初心者にはお薦めしないレベルの曲だが、渚本介なら可能かもしれない。
 渚本介は食い入るようにブーンの演奏を見つめ、必死に覚えようとしているようだった。

450 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:21:41 ID:Pl3lvnnkO
 
 とはいえ、聴いたことのない曲をいきなり覚えるのはほとんど不可能だ。
 曲が終わり、もう一度弾こうとしたところで、ブーンは渚本介に演奏を遮られた。


(´メω・`)「ちょっと貸してくれ」

(;^ω^)「え?まだ弾けないと思いますお…」

(´メω・`)「ああ。だが確かめてみたい」


 一度聴いただけの曲を弾く。そんなのはほぼ不可能だ。
 しかし、渚本介はギターを構え、ゆっくりと演奏を始めた。


(´メω・`)♪〜♪♪〜

(;^ω^)(…まじかお…)

 前奏こそままならないが、それ以外はほとんど形になっている。
 渚本介の中の音楽の才能が、目覚めようとしていた。


──

451 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:23:20 ID:Pl3lvnnkO
 
──



 最初はね、私も反対したの。

 拒んで拒んで、泣いて、喚いて。
 でもね、もう遅いの。駄目なの。


 ねえブーン、アンタならどう思う?

 私はね、これを受け入れるくらいなら、身を投げてしまいたいくらいなの。
 だって、



  は、私の全てだから。



──

452 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:23:39 ID:Pl3lvnnkO
 
──


 その日のレッスンを終え、布団に寝転がりながら、ブーンはひたすら考えていた。


 あと二週間。
 それが、出麗に残された時間。

 渚本介へのギターレッスンに充実感を覚える反面、ブーンの中を葛藤がうろつく。


 出麗にはもう二週間しかない。
 しかし、この二週間で何ができる?
 誰かの前で演奏会でもすればいいのか。いや、それほど事は軽くない。


ζ(゚ー゚*ζ


 ふと脳裏に浮かぶ、出麗の楽しそうに琴を弾く姿。
 それも、もう終わりだ。

453 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:24:41 ID:Pl3lvnnkO
 
 なら、何ができるというのだろう。

 渚本介は恐らくこの事態を把握している。
 それでも、彼は気にすることなくギターレッスンを頼んできた。

 当然なのだ。
 この時代では、至って当然のこと。

 しかし、出麗にとっては、それは酷な現実である。
 だからこそ、何かしてやらねば。

 例えば、人生の意味を見出すために、ギターを始めた渚本介のように。


( ^ω^)(…渚本介さんに相談するしかないお)

 体を起こし、隣の部屋にいる渚本介のもとへと足を運ぶ。
 囁くように部屋に呼びかけると、渚本介はまだ起きていたようで、怪訝な声を返してきた。

( ^ω^)「失礼しますお」

(´メω・`)「ああ」

454 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:26:42 ID:Pl3lvnnkO
 
 渚本介は何やら書物を読んでいたようで、小さな灯火の下にいくつかの紙を広げていた。
 いつもの優しい顔がブーンを向く。


( ^ω^)「実は、渚本介さんに相談があるんですお」

(´メω・`)「相談?」

( ^ω^)「出麗さんのことですお」


 ごうごうと吹く強い風が、二人の耳に飛び込んできた。
 言うべきことなのかはわからない。
 しかし、一人ではどうしようもできない。


( ^ω^)「…出麗さんのこと、渚本介さんも知ってますおね?」

(´メω・`)「ああ…結婚の件か」

455 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:27:14 ID:Pl3lvnnkO
 
 政略結婚。
 出麗が直面している現実は、まさにこれだった。

 この時代、政治や争い上で、事を進めやすくするために「結婚させられる」のが常識に近い。
 出麗の結婚が決まった相手は、隣国の家臣の一人。
 二茶根瑠家と深い関わりを持ちたかった隣国が、近習の出麗と結ぶことで、まずはその糸口を作るつもりなのだ。

 二茶根瑠にとっては武力支援の拡大になる話。
 根十城戦で戦力を失っていたタイミングであり、この話を断る道理はなかった。

456 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:28:17 ID:Pl3lvnnkO
 
 問題は相手の家柄にある。
 ひどく厳格な家庭環境で、音楽等の芸能が一切禁じられているのだ。
 琴を嗜み、心から愛している出麗にとっては、どうしても避けたい話だった。

 しかし、現実は上手く行かない。
 出麗の知らないところで拍子良く話が決まり、一週間後には相手方が根十城を訪れて出麗を引き取ることになっていた。


 これが出麗を苦しめている現状であり、ブーンに打ち明けた話である。
 この話から、ブーンと出麗は同じ仮説を想像していた。
 ブーンが出麗の琴爪でタイムスリップしてしまったのは、同じ音楽を愛するブーンへの出麗のSOSなのではないかと。

457 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:30:05 ID:Pl3lvnnkO
 
 しかし、問題はもっと大きなところにあった。

 歴史を、未来を巻き込むほどの、大きな問題が。


(;^ω^)「…渚本介さん」

(´メω・`)「ん?」


 言いたくない。言ってしまえば、何か取り返しのつかないことになる気がする。


(;^ω^)「僕はこの結婚を止めたいんですお」

(´メω・`)「!…何を言ってるんだ。いくら相手の家柄が…」

(;^ω^)「このままだと!」


 ブーンの大声が、全ての音を掻き消した。
 渚本介の顔を見れず、思わず俯く。

 そして、出麗本人にすら打ち明けていない、自らが知る現実の全てを、吐き出すように呟いた。


(; ω )「出麗さんは…二茶根瑠家は殺されてしまいますお」

458 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:32:00 ID:Pl3lvnnkO
 

(;´メω・`)「……え?」


 それは、あまりにも酷で、信じがたい未来だった。

 固まる渚本介に、ブーンは話を続ける。


(; ω )「日本史の授業で習ったことがあるんですお。出麗さんの結婚相手となる吹連家は、実は二茶根瑠家が滅ぶことを望んでいたんですお」

(;´メω・`)「……」

(; ω )「でも二茶根瑠は天野を打ち破りましたお。だから二茶根瑠を完全に潰すために、近習である出麗さんとうまく結婚に持ち込み、内部から二茶根瑠を滅ぼしたんですお」

459 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:33:13 ID:Pl3lvnnkO
 
(; ω )「この時代に来てから、僕が知る限り、日本史で学んだ通りの歴史を歩んでいるんですお。だから…」

(´メω・`)「……だから、結婚してしまえば出麗も死ぬ。そういうことか?」

(; ω )「…そうですお」

(´メω・`)「だから、お前は歴史を…未来を変えるつもりなのか」


 予想もしなかったほどの冷たい声が、ブーンにのしかかった。
 顔を上げられない。低く透き通る渚本介の声が、続いてブーンを押しつぶしていく。


(´メω・`)「お前にとって、此処は過去の世界だ。お前がやろうとしていることは、即ち過去を変え、未来を変えること。今回ばかりはお前の味方になれぬ」

(;^ω^)「!……」

460 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:34:40 ID:Pl3lvnnkO
 
 思わず顔を上げる。
 そこにはブーンを冷たく見下ろす、初めて見る渚本介の姿があった。


(;^ω^)「渚本介さん…」

(´メω・`)「なれば聞こう。何故お前は出麗を助ける」

(;^ω^)「そ、それは決まってますお!これ以上誰にも死んでほしくないから…」

(´メω・`)「出麗が助かれば、誰も死なずに済むのか?その先をお前は知っているのか?」

(;^ω^)「それは…わからないですお、でも…」

(´メω・`)「それはただの甘えだ。命が尽きることも、既にお前が理解している歴史も、全て運命のようなもの。人間死ぬときは死ぬものだ」


 渚本介の言うことは全くの正論だ。返す言葉はどこにもない。

 それでも、ブーンは初めて、渚本介に怒りを覚えた。
 思わず立ち上がり、渚本介に向かって声を張り上げる。

461 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:35:57 ID:Pl3lvnnkO
 
(#^ω^)「だったら出麗さんを見殺しにしろと言うんですかお!!死ぬとわかっている人間を、救える人間を、放っておけと!?」

(#´メω・`)「それが甘えだと言ってるのだ!!」

 渚本介も立ち上がり、真っ向から声を上げる。

(#´メω・`)「例え救える相手だろうと、もはや死を定められた人間!その歴史を曲げて、未来が大きく変わったとして、お前は責任を取れるのか!!」

(#^ω^)「未来を作ってきた人達は、未来への責任なんぞ考えませんお!!人の死は悲しみを生むだけですお!!」

(#´メω・`)「だが正しい未来も生まれる!!お前はただ、人が死ぬのを見たくないだけだ!!」

(#^ω^)「ッ…!!」


 肩で息をしながら睨み合う二人。
 暫くすると、渚本介が静かに口を開いた。

462 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:37:08 ID:Pl3lvnnkO
 
(#´メω・`)「…それでも、どうしても出麗を救いたいのなら」


 ブーンに背を向け、再び書物を手に取り座る渚本介。
 最後に少しだけ横顔を向けながら、吐き捨てるように言い放った。


(#´メω・`)「…好きにしろ」

(#^ω^)「……」


 一睨みした後、無言で部屋を出て、ブーンは乱暴に扉を閉めた。

 そのまま自らの部屋に戻り、考える前にギターを手に取り、指を置く。
 しかし、何の旋律も浮かんでこない。

463 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:37:22 ID:Pl3lvnnkO
 
(  ω )「……」


 仕方なく、ブーンはギターを握ったまま、倒れるように布団に転がった。
 遠くのものを眺めるようにギターを見つめ、弦を撫でながら、小さく呟く。


( ;ω;)「どうして…」


 ごうごうと鳴る風がうるさい。
 できるなら、このまま自分を吹き飛ばしてほしい。


( ;ω;)「どうしてこうなるんだお……」


 それから暫く、ブーンと渚本介が顔を合わせることは無かった。


──

464 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:38:25 ID:Pl3lvnnkO
──


 二週間後。

 晴天の空の下、根十城から少し離れた、大きな遊歩道。
 一つの行列が、根十城へと向かっていた。

 その列の中心付近で、馬に跨って進む男が一人。


(‘_L’)(あれが根十城か…)

 吹連久斗尚(ふいれん くとたか)。

 端正な顔立ちに、華奢な体つき。
 しかし、その姿勢は男らしく堂々としている。

 そして彼こそ、今回出麗が結婚させられる相手である。

 久斗尚は周りの歩調に合わせて馬を歩かせながら、遠くに見える根十城を眺めていた。

465 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:39:20 ID:Pl3lvnnkO
 
 近隣で大きく騒がれた根十城戦から、まだ僅か数週間。
 その外観は火の跡がかなり目立つが、それでも城は確かに威厳を保っていた。


(‘_L’)(彼処で天野が敗れたのか…)


 根十城戦の話は、久斗尚の周りでもかなり話題になった。

 数も揃わず、準備も整わなかった二茶根瑠勢に対し、天野勢は一万五千もの兵を動員したこと。
 しかし、激戦の末に二茶根瑠勢は天野勢を追い返したこと。

 そして何より、"剛拳"天野擬古成が討たれたこと。
 それを果たしたのは、復讐に生きた"戦魔"、太田渚本介であること。

 あまりに衝撃が重なったこの戦の話は、たちまち近隣諸国へと広まっていた。

466 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:40:39 ID:Pl3lvnnkO
 
(‘_L’)(まさか、天野を打ち破るとはな)


 だからこそ、近習如きの出麗と結婚するはめになったのだが。

 小さく、妖しく笑いながら、久斗尚は根十城を見据えた。
 もうすぐあの城が手に入るのかと思うと、自然と顔がにやけてくる。


(‘_L’)(二茶根瑠家はこれで終わり…天野が消えた今、天下を統べるのはこの俺だ)


 入城の手続きを難なく済まし、根十城へと進入した吹連一行。

 城門をくぐり、その城内を進んでいく。


 気を緩ませてはいけない。
 そう考えながらも、久斗尚は込み上げてくる高揚を抑えきれなかった。
 小さく笑みを浮かべ、自らの計画を、頭の中で再確認する。


 ──今晩にも、根十城中の人間を殺す。



 第十三話 終

467 ◆vVv3HGufzo :2011/07/03(日) 00:42:57 ID:Pl3lvnnkO
今回の投下はこれにて。
遅れてしまって本当に申し訳ないです

次の投下で最終回となる予定ですので、どうか最後までお付き合いください。

てか今回初めて自分が弾ける曲使った…ようやく…

468 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 01:09:13 ID:LWGa1CyY0
乙だ
懐かしい曲だぜ

469 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 15:31:34 ID:yaJk0B2Eo

待ってるのが来ると嬉しいぜ

470 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 20:54:41 ID:QdJU8tE20

もう終わりか…

471 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 21:13:18 ID:n434VZ/A0

弾けるのかすげーな

472 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/06(水) 20:02:06 ID:RcVRTNKoO

歴史はどこまで変えられるんだろう

473 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 14:30:53 ID:ei.HbcMs0

       ト、
 ':,      '「::::\┐___,,.. -‐ ''"´ ̄ ̄`"''ヽ、           /
  ':,   r-‐'へ::::::::!_'´ __,,,,......,,,,,__   ζ;;;;゚゚;;。  .     / み゙ み
   ':,  >:、:;::::::>''"´        "'ζ; ;゚゚∴,--'""ヽ   .,'  ょ  ょ
    ':,└─ァ''"'   /   ,'´    ../゚/二二ノ""^ソ   i.   ぁ  ん
. \    ,' /   /  ,'  !     ζヘ`\┼┼┼ ,!ヽ   |   ん゙  み
   \  / ,'   ,'!  /!  !   ;  /゚゚;\"ヽ-;:,,,,,,ノ/   . !   ぁ  ょ
     ∠__,!   / !メ、」_,,./|   /! /∵;;◎\,,,,,__,,,ノ;;    |   ぁ゛ ん゛
`"''  、..,,_  !  / ,ァ,ィ≠ミ、| / |/∴゚゚゚゚。゚;゚;;゚ ∴;゚;゚;;   ..|.  ぁ゛
       i,/レイ i, ●l .レ゚゚゚∴゚゚◎゚゚;∴゚゚゚゚。゚;;゚;゚;;;゚  ..∠   
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474 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 14:31:05 ID:ei.HbcMs0

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475 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 14:31:17 ID:ei.HbcMs0

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476 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 14:31:27 ID:ei.HbcMs0

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477 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 14:31:37 ID:ei.HbcMs0

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478 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 14:32:33 ID:ei.HbcMs0

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479 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 14:33:16 ID:ei.HbcMs0

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480 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 14:33:34 ID:ei.HbcMs0

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481 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/10(日) 16:46:16 ID:jW0hK8nE0
だからお前は誰なんだよ

482 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:04:12 ID:qOmpmvKcO
こんばんは!
これより最終話投下します!
ほれ!

483 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:04:43 ID:qOmpmvKcO
***
最終話 「思いは静夜に」

***


 巳留那への謁見も、出麗との対面も済んだ夜。
 久斗尚は天守の外廊下から外を眺めていた。


(‘_L’)(…そろそろだな)

 つまらない謁見を過ごし、僅かな間だけ妻となる女に会い、何一つ心を動かされない儀礼を過ごした。
 もう耐えられない。我慢の限界だ。


 人を殺したい。
 皮膚から舞う血潮が、飛び散る脳漿が、垂れ流れる臓が、見たい。


(‘_L’)(まずはあの小娘から殺すか)


 それこそ、今すぐに。


──

484 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:06:17 ID:qOmpmvKcO
 
──


(;^ω^)(どうするかお……)


 もう出麗の結婚相手は根十城内にいる。
 時間がない。助けに行くなら今のうちだ。


(;^ω^)(でも…)


 出麗を助けにいかなければ。
 しかし、渚本介の言った通り、出麗を助けてしまえば未来が変わるかもしれない。歴史を曲げてしまうかもしれない。


  (#´メω・`)『お前はただ、人が死ぬのを見たくないだけだ!!』


 頭にちらつくのは、歴史を曲げるのを止めるためにブーンに怒鳴る渚本介の姿。

 どう考えたって、渚本介の言い分のが正しい。
 人が死ぬのを見たくないだけだというのも、恐らく正しい。

 でも。

485 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:06:52 ID:qOmpmvKcO
 
(; ω )(でも……)

 助けたい。死んでほしくない。
 でも、歴史を変えてしまうという現実が、怖い。

(;^ω^)(…行くしかないお!)

 渚本介の言う通りだ。自分は人の死が怖いだけの、この時代に「向いていない」人間。

 でも、だからこそ、この時代に飛ばされたのかもしれない。
 出麗が生き延びることこそが、正しい未来なのかもしれない。

 もう、迷いはない。


( `ω´)「おおおおおっ!!」

 雄叫びと共に部屋を飛び出したブーン。
 目指すは出麗の寝室──


(‘_L’)

( ^ω^)

486 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:08:19 ID:qOmpmvKcO
 
(‘_L’)

( ^ω^)

(‘_L’)

( ^ω^)

(‘_L’)「…お前からでもよいかな」

( ^ω^)「何が?」


 人間、焦りを通り越すと逆に冷静になってしまうものだ。

 ブーンは一呼吸置いて今の状況を考えた。
 扉を開けると、出麗の結婚相手と思われる男が、刀を持って歩いていた。

 男が進んでいるこの先には、出麗の寝室しかない。
 それを目指して、刀を持って歩いていた。
 そして、偶然出会ったブーンに向けた言葉が、「お前から」。

 ……ああ、大体読めてきた。


(;゚ω゚)「いやいやいやいや無理無理無理無理!!!」

(‘_L’)「参る」

(;゚ω゚)「おおおお!!」

487 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:09:35 ID:qOmpmvKcO
 
 反射的に自分の部屋へ転がり戻ったブーン。
 その体の数センチ前を、久斗尚が抜いた刀の切っ先が通り過ぎる。


(;゚ω゚)「お、おわ、あわ」

(‘_L’)「ふん」

 狭い部屋に駆け込み、どうにか刀の攻撃を防げそうなものを探す。
 しかし、時を待たずにその背中に刃が降りる。

(;゚ω゚)「ヒイッ!!」

(‘_L’)「…チッ」


 しかし、その攻撃はまたもブーンに届かなかった。
 ブーンが盾のように繰り出した毛布を、刀が切断できなかったのだ。


(;゚ω゚)「はっ、はっ、」

(‘_L’)「しぶといぞ南蛮人。貴様と遊んでいる暇はない」

(;゚ω゚)「あ、あ、あぅ…」

488 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:09:58 ID:qOmpmvKcO
 
 毛布を持ったまま、部屋の隅に追いやられていく。
 もはや逃げ場はない。

(;゚ω゚)(ぼ、僕は死ぬのかお…?)

(‘_L’)「つまらない殺しは避けたかったが…まあいい、喜べ。お前が我が野望の最初の糧だ」

(;゚ω゚)(い、やだお、死にたくな……)


(´メω・`)「…何を言っている。お前こそ、ブーンが元の時代に戻る為の糧だ」

(;‘_L’)「──!?」

(´メω・`)「フンッ!!」


 何が起こったのか、ブーンは理解が追いつかなかった。

 自分に振り下ろされる直前の刀が、突如後ろへと流れた。
 その刀と交わるのは、ブーンが既に見慣れた刀、虎恍丸。

 そして、二週間ぶりに姿を見る、渚本介の姿があった。

489 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:11:11 ID:qOmpmvKcO
 
(;゚ω゚)「しょ、渚本介、さん…!?」

(´メω・`)「久しぶりだなブーン」

(;‘_L’)「渚本介…?」

 ブーンの方を見て、ちらりと笑う渚本介。
 対する久斗尚は、渚本介の名前を聞いた途端、明らかに狼狽しはじめた。


(;‘_L’)「貴様…まさか、戦魔か!」

(´メω・`)「もう捨てた名だ」


 直後、渚本介は久斗尚の刀を大きく弾き、その体を上手く床に押さえつけた。
 久斗尚の手から刀を取り上げ、そのまま刃を後ろ首に当てる。


(´メω・`)「次にその名を口にしてみろ。その首、直ちに叩き落とす」

(; _L )「……!」


 この瞬間、久斗尚の野望は呆気なく、静かに崩れ落ちた。

490 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:13:24 ID:qOmpmvKcO
 
 助かった。
 安堵がブーンを包み、同時に先ほどとは違った汗が肌を伝う。


(;^ω^)「渚本介さん…どうして……」


 未来を変えてはいけない。そう主張した渚本介自身が、歴史を塗り替えてしまった。
 死ぬはずだった出麗も、二茶根瑠家も、すべて助かったのだ。

 不安な目を向けるブーンに対し、渚本介はもう一度小さく笑った。


(´メω・`)「未来のことなど知ったものではない。そう考えただけだ」

( ^ω^)「……」

( ^ω^)「…へへ、渚本介さんらしくないですお」

(´メω・`)「はは、そうかもな」


 久しぶりに、面と向かって笑い合った二人。

 奇妙な状況ではあるが、渚本介と仲直りできたことで、ブーンは何やら心が軽くなった気がした。

491 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:13:45 ID:qOmpmvKcO
 
(´メω・`)「……で」

 渚本介が久斗尚の後頭部へと視線を落とした。


(´メω・`)「お前のような男は、本来ならば今この場で殺さねばならないが」

(; _L )「…なれば殺せ」

(´メω・`)「甘えるな。貴様の命は彼の世に持っていくほどの価値もない」

(´メω・`)「そうだろう?ブーン」

( ^ω^)「…その通りですお」


 またしても笑顔を見せる渚本介。

 ブーンは、そこで渚本介の新たな意志が見えた。


(´メω・`)「人の死が見たくないのは、人間ならば当然の気持ちだ」

( ^ω^)「渚本介さん…」

(´メω・`)「吹連久斗尚。今日のところが逃してやる。ただし、再び貴様が此処に攻め入ろうものなら、今度は総力を挙げて貴様を潰す」

492 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:15:12 ID:qOmpmvKcO
 
 人の死を嫌い、人の死を悲しむ。
 ブーンのように、この時代に「向いていない」男として、渚本介は変わりつつあった。


(´メω・`)「去ね。貴様の手下も既に押さえている。そして二度とこの城に近づくな」

(; _L )「…わかった……」


 久斗尚を起こし、部屋の外で待機していた二茶根瑠の兵に身柄を引き渡し、吹連家の策略は幕を閉じた。


 これで出麗は死なずに済んだ。
 出麗が死ぬほど嫌がった結婚の話も、これを機に無くなるだろう。

 未来を変えてしまったな、と笑いながら、渚本介は虎恍丸を鞘に戻した。


(´メω・`)「ふぅ…」

( ^ω^)「……」

493 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:16:36 ID:qOmpmvKcO
 
 二人の間を、静寂が流れる。
 暫くの後、優しい顔を向ける渚本介が、静かに口を開いた。


(´メω・`)「これで、お前は元の時代に戻れるのか?」

( ^ω^)「…だと思いますお」


 いや、もういつでもあの時代に戻ることができる。ブーンはそう確信していた。

 その理由はブーンの足元に転がっていた。
 それはひどく見覚えのある、この時代に飛ばされるきっかけとなった、出麗の琴爪。


 然るべき時が来た。だからこそ琴爪がここにあるのだ。

 あの時、ブーンの自室に、それがあったように。


( ^ω^)「……」

494 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:16:56 ID:qOmpmvKcO
 
 琴爪を拾おうと手を伸ばした途端、渚本介がそれを制した。

(´メω・`)「待ってくれブーン」

( ^ω^)「なんですかお?」


 深夜の静けさが、部屋の中を漂う。


(´メω・`)「最後の頼みだ」

( ^ω^)「……」


 ギターを取り、ブーンに手渡す渚本介。

 この台詞を聞くのは、いつ以来だろうか。
 今までと変わりのない優しい顔で、渚本介が口を開いた。


(´メω・`)「ぎたーを弾いてくれ。曲は任せる」

495 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:18:08 ID:qOmpmvKcO
 
( ^ω^)「はいですお」


 笑顔を返し、ギターを構えるブーン。

 これが、渚本介の前での最後の演奏になる。
 ブーンはジーンズのポケットからルーズリーフを取り出し、それをギターの前に広げた。

 曲名はまだない。
 この時代に来る直前に作曲し、初めて渚本介に披露した曲。
 ブーンはルーズリーフの楽譜を見ながら、ゆっくりと演奏を始めた。


( ^ω^)「……」


 楽譜通りに曲を進めていくうちに、ブーンはこの曲のイメージを思い出していた。

 孤独な男が街の中をひたすら歩いている。
 その景色の一つ一つの優しさと、孤独な自分への嫌悪感で、男は悲しいような切ないような、胸が締め付けられるような想いに駆られていく。



 繊細な音色を出す右手に、ひとつ雫が落ちた。

496 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:19:15 ID:qOmpmvKcO
 
 何故。何故涙が溢れてくる。

 やっと元の時代に戻れるのに。生きて帰れるのに。
 嬉しいはずだろう。
 何故、自分は涙を流している。


( ;ω;)「……」


 演奏はスムーズに進む。
 しかし、ブーンの目から零れ落ちる涙は、ブーンの右手やギターを濡らしていく。

 そして、ゆっくりとしたF♯のアルペジオで、曲は終わった。



( ;ω;)「………」

(´メω・`)「…ありがとう、最後まで弾いてくれて」

( ;ω;)「渚本介さん……」


 涙を流し続けるブーンに対し、渚本介は優しい笑顔のままだ。

 いつもブーンに向けてくれた笑顔が、相変わらずに、そこに在る。

497 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:20:26 ID:qOmpmvKcO
 
(´メω・`)「…なんだ、最後の別れくらい涙は無しにしていこうじゃないか」

( ;ω;)「わかってますお…でも…」


 それでも、この涙は一向に止まらない。

 喉の奥からひねり出すように、ブーンは言葉を続けた。


( ;ω;)「……この曲は、自分だけが置いて行かれるような…孤独をイメージしたんですお」

( ;ω;)「でも、僕は…渚本介さんと居た間、孤独を感じたことなど、無いんですお」

( ;ω;)「だから、だから」


 離れたくない。別れたくない。
 この数ヶ月間、渚本介はブーンの憧れであり、相棒であり、何より最大の友であった。

 まだ別れたくない。
 もっと、一緒に旅をしていたい。

498 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:21:38 ID:qOmpmvKcO
 
 涙の止まらないブーンに、いつもの優しい口調が返ってくる。


(´メω・`)「しかし、お前は帰らなければならない」

( ;ω;)「……」

(´メω・`)「音楽で生きていくのが夢なんだろう?時代の違うこの地で、これ以上油を売る必要はないさ」

( ;ω;)「……はいですお」


 乱暴に涙を拭き、頬がヒリヒリと痛むのを感じながら、ブーンはギターを構え直した。

 今度こそ琴爪を拾い、それを右手に構える。


( ^ω^)「今までありがとうございました。お元気で、渚本介さん」

(´メω・`)「ああ、達者でな。ブーン」

499 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:21:52 ID:qOmpmvKcO
 

 後悔しないうちに。
 目の前の渚本介に、笑顔でいられるうちに。



 ブーンは、琴爪でギターを鳴らした。




──

500 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:23:18 ID:qOmpmvKcO
──


 


 





 



 

──

501 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:23:43 ID:qOmpmvKcO
 
──





 アルバイトから帰宅すると、ブーンはいつものように自室でギターを弾き始めた。
 一枚のルーズリーフとボールペンを用意し、頭の中に浮かぶイメージを音として感覚的に作り上げ、楽譜として具現化していく。


 内藤ホライゾン、通称ブーン。現在20歳のフリーター。
 将来の夢は「音楽界で生きていくこと」だ。



( ^ω^)「♪ふふんふんふん…」

( ^ω^)「…やっぱりこのAメロはC7からのがしっくりくるお」


 ピックを一旦手放し、ペンを握ってすらすらと音を綴る。
 そしてまたピックを取って、今綴ったイメージを再確認する。

502 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:24:23 ID:qOmpmvKcO
 
 ブーンはこの調子で作曲するのが趣味であり、生きがいであった。

 音楽というものはいつも純粋に、しかし厭らしく、全てを表現することができる。
 20年間生きてきて、ブーンが心から信じているのはただ一つ、「音楽」──ギターだけだった。


( ^ω^)「もっと優しくならないもんかお…ちょっとテンポ落としてみるかお」


 だから、自分の持つ夢には確信があった。
 音楽を信じているからこそ、音楽界ではやっていける。
 少なくとも今は、このギターが楽しくて愛しくて仕方がない。


( ^ω^)「…お、良い感じだお!最初から流してみるお!」

( ^ω^)「♪ふふんふんふんふんふふーん」ジャンジャラランジャンジャラン

(*^ω^)「こいつぁ…来てるで…ワシの時代や……!」

(*^ω^)「…ん?」

503 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:25:43 ID:qOmpmvKcO
 
 突如、ベッドに置いてあった携帯電話が光り始めた。
 Eメールを受信した時のパターンで光るそれを取り、相手を確認する。


( ^ω^)「あれ?知らない人だお」

( ^ω^)「…ああ、今日からバイト一緒の新人さんかお。そういや連絡先交換したお」

(*^ω^)「それにしても随分可愛い子だったおー…」


 そうだった。今日のバイトは新人と一緒で、とりあえず連絡先を交換したのだ。

 透き通るような白い肌が印象的な女の子。
 確か、まだ高校生だったはずだ。

 よろしくお願いします。と女の子にしては質素な文面を確認し、ブーンはその名前を小さく読み上げた。


( ^ω^)「…尾付ツン」


 もちろん聞いたことのない名前だ。
 しかし、なんとなく、ブーンはその名前に懐かしさを感じた。



 最終話 終

504 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:26:25 ID:qOmpmvKcO
***
エピローグ

***



 ああ、今日もバイトか。

 アルバイトとギターの繰り返し。
 夢の為に仕方ないとはいえ、もう少し刺激のある──例えば旅のようなことがしたい。

 そう思いながら、ブーンはベッドから転げ出た。


( ゚ω゚)「はおっ!!?」


 その勢いで、足を本棚にぶつけてしまった。
 暫く悶え、本棚を睨むうち、ブーンは一冊の本が落ちているのに気付いた。

 今の事故で落ちたのだろうか。
 なんとなく手にとって見ると、高校の時の日本史の資料冊子だった。

505 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:27:18 ID:qOmpmvKcO
 
( ^ω^)「懐かしいお…毎回これを忘れて先生に怒られてたお。どうせ使わないのに…」


 それほど使用感の無い本を、パラパラとめくっていく。

 最初の数十ページは人物紹介として設けられている。
 その4ページ目。少し気になる名前が、そこにあった。


( ^ω^)「太田渚本介…」


 聞いたことはあった。
 戦魔という異名を持ち、復讐の旅に明け暮れた剣豪。
 中学の時の男子の間では、歴史上で最も人気の高かった人物だ。

 資料を見ると、何やら復讐の旅は二人で行ったという。
 相方は南蛮人で、大きな楽器を背負い、太田渚本介の心を音楽で癒やしていたそうだ。

506 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:28:31 ID:qOmpmvKcO
 
 随分と箇条書きになっているが、最後の部分にはまた妙なことが書いてあった。


( ^ω^)「琴の名手と結婚し、自身も余生を琴に尽くした…ふーん」


 復讐に生きた男でも、音楽に惚れ込むことができるのだ。

 そう考えると、ブーンはまた少し、自分の持つ夢に自信が湧いてきた。


( ^ω^)「…ギターでも弾くかお」


 アルバイトまではまだまだ時間がある。
 それまで、少しでいいから夢に向かって歩いてみよう。

 音楽のみで生きるのは現実としては難しい。
 音楽の世界は、ただ夢だけで進めるほど甘くないのかもしれない。


 それでも、まるで戦国時代のような、その世界へと。

 ブーンはギタリストとして歩き続ける。



( ^ω^)戦国を歩くギタリストのようです 終

507 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 01:30:47 ID:qOmpmvKcO
 
以上で、( ^ω^)戦国を歩くギタリストのようです を完結とさせていただきます
長い間お付き合いいただき、本当にありがとうございました
皆さんのコメント一つ一つが大きな支えでした

何か作品に関する質問があれば受けつけます!

508 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/11(月) 01:53:47 ID:/9OMbkWc0
おつ! じーんときました。

509 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/11(月) 02:31:38 ID:77ba5HbMo

震えた

510 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/11(月) 05:29:44 ID:L6BVAIhk0
乙カレー
スレが立った頃からずっと見てたぜ

511 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/11(月) 07:50:13 ID:LLq.fiO.0

ラスト感動した

512 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/11(月) 10:22:02 ID:xWcghFM.O
最高に乙!
記憶が消えても刻まれた歴史は消えない、か

登場人物とかのモデルやイメージ元ってある?

513 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/11(月) 17:07:11 ID:pdzEZY260

楽しかった!!

514 ◆vVv3HGufzo :2011/07/11(月) 17:49:12 ID:qOmpmvKcO
皆さんありがとうございます(;_;)

>>512
登場人物にモデルは無いです
キャラは全て僕の勝手なイメージから出来ています

ぶっちゃけると、全体的な構想としては
ドラマの水戸黄門、ゲームの鬼武者を参考にしました
本当はストーリー的にはドラマのJINを参考にしたかったのですが、なにしろ観たことがないので…

515 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/11(月) 19:05:41 ID:Uxqp7hT6O
激しく乙!
ずっと最初からwktkして追ってきたから感慨深い
JINは原作の漫画もおもしろいので見てみるといいよ
次回作にも期待してるよ兄弟

516 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/11(月) 19:18:14 ID:Q2KjVAqk0
狂おしく乙

あのネタ被りから半年近くも経ったのか…なつかしい
またひとつ良作が終わってしまった

517 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/12(火) 18:08:41 ID:CVR9R7YQ0

おもしろかった

518 ◆vVv3HGufzo :2011/07/13(水) 23:24:55 ID:JRY5IgnsO
皆さんありがとうございます!
そして兄弟>>515ありがとう!ぜひ作品を教えてくれ!!

さて、本当はエピローグ終了時にやる予定だったものを今やらせて頂きます!
作中でブーンが演奏した曲のリストと、僕が勝手にチョイスしてみたエンディングテーマです



1.L'AMOUR REVE/Andre Gagnon  ‐第二話
2.Tears in Heaven/Eric Clapton  ‐第四話
3.you/福山雅治  ‐第五話
4.summer/久石譲  ‐第六話
5.best friend/Kiroro  ‐第七話
6.OGIYODIORA/LEEーTZSCHE  ‐第八話
7.BIG BLUE OCEAN/押尾コータロー  ‐第十二話
8.under the bridge/Red Hot Chili Peppers  ‐第十三話


エンディング
キンミライ。/ナイス橋本

519 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/14(木) 07:40:32 ID:7R/zWR5sO
乙乙
過去作とか次回作の構想あったら教えてほしい

520 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/15(金) 11:10:55 ID:LXQJ8p.k0
最高に乙

521 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/16(土) 22:44:10 ID:tO3Pws3Q0
これは「元々タイムスリップしていない」ことになった
でいいのかな

522 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/17(日) 11:46:28 ID:cSrd7buEO
難しいな
間違いなく過去は塗り替えられているから、過去からみれば「タイムスリップした」

でも帰ってきた現在からみれば、タイムスリップする直前の世界に戻ってきて、しかも記憶がないこと(てかそんなことは起こってない感じ)になってるから、「タイムスリップしてない」

うーんパラドックス

523 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/17(日) 12:50:47 ID:kSAVR9PQ0
タイムスリップしたけどスリップ中の記憶が無くなった
これでFAでは?

524 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/18(月) 01:52:18 ID:cKdCD7Sc0
としたら>>501が無くて琴爪で鳴らさなかった後の未来が
展開されるはずだとちらしずし

525 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/18(月) 01:53:31 ID:cKdCD7Sc0
>>502も当てはまるな

526 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/21(木) 01:44:05 ID:qTo411oM0


527 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/23(土) 11:08:50 ID:WFOCbeq60
素晴らしい作品だった。読後感か最高

528 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/23(土) 11:09:43 ID:WFOCbeq60
素晴らしい作品だった。読後感が最高

529 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/08/07(日) 16:33:52 ID:WEv6Cz6Y0
VIP投下短編から来た
今更だけどいい話だった
次も楽しみにしてる



530 ◆vVv3HGufzo :2011/08/12(金) 00:38:29 ID:pqHx1hGkO
ああ、皆さんありがとうございます…!


今日の集中講義の時間に、この戦国ギタリストのイメージ絵をちょこっと描いたので
それを貼りたいと思います!
後ろの人引いてただろうなあ…(*^ー^*)

http://q.pic.to/ap87


ではでは失礼しました!

531 ◆vVv3HGufzo :2011/08/12(金) 00:39:48 ID:pqHx1hGkO
あ、完全擬人化注意です

532 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/08/12(金) 00:44:49 ID:AeAg6ChQ0
おお、乙 

またなんか新作書いてくれよおお
いや無理はいわないけど

533 yuri :2011/08/28(日) 23:01:56 ID:9P2EfWEQ0
>>楽に稼げるアルバイトの件。情報載せておきます(*・ω・)!! http://tinyurl.k2i.me/eQAZ

534 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/12/18(日) 00:20:33 ID:1qK5yRgA0
◯◯◯◯

535 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2012/04/22(日) 19:24:49 ID:AkySlFQwO
あげ

536 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2012/05/23(水) 00:11:13 ID:2ksolHKMO
懐かしい

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