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ギコ教授のなんでも講義・ギコ連合板

1名無しのAA書きさん:2011/05/19(木) 13:11:37
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 何かと制限の多いモナー板から脱して
| 長めの講義はここでやってみることにしました。
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      連投規制・忍法帖 逝ってよし
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     | だからって、スレまで立てるか?
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | スレ立て人しか書かない予感…
         \_____________________

本スレ:ギコ教授のなんでも講義72時限目(実質73時限目)
ttp://kamome.2ch.net/test/read.cgi/mona/1302256432/

337名無しのAA書きさん:2013/03/02(土) 00:31:03
17/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 意外にも「おおすみ」は長生き衛星でもあります。
| 電波が途絶えてからも、なんと33年に渡って地球を回り続け…
| 2003年に大気圏に再突入。その生涯を閉じました。
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  2003年8月2日 5時45分 「おおすみ」大気圏突入、消滅
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     | ああ、おおすみ…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 電池の切れた衛星を「生きている」と表現していいものか…
          | まあ、これ以上野暮なことは言うまいよ。
          \____________________

338名無しのAA書きさん:2013/03/02(土) 00:31:55
18/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、「ラムダロケット」はこれで終わりじゃありません。
| 「ラムダ」シリーズの最終バージョンがこの「L-4SC」。
| 一応「L-4S」と同じく人工衛星を打ち上げられる性能を持ちますが、
| 衛星打ち上げの実績は一度も無く終わった機体です。
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  L-4SCロケット
   東京大学宇宙航空研究所が開発した観測ロケット。
   先代の「L-4S」と同等の性能を持つが、
   人工衛星の打ち上げ実績は無い。

   1971年8月20日〜1979年9月20日、計5機打ち上げ。
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     | 一回も衛星乗せずに終わり?それって、もったいなくない?
    \____              ∧
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          | だって、その頃には衛星は「ラムダ」の後継機が
          | 打ち上げていたんだもん。
          | この「L-4SC」は観測ロケットであると同時に、
          | その後継機で使われる新技術をテストするための
          | 機体なんだよ。
          \____________________

339名無しのAA書きさん:2013/03/02(土) 00:32:59
19/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ラムダロケット」は観測用から衛星打ち上げ用へと続く流れの
| 過渡期に位置するロケットでした。
| 「不確実な方法で無理やり打ち上げた」───
| そんな批判的な見方もあるでしょうが、
| 今の日本が持つ衛星打ち上げ技術の基礎を作り上げたロケット…
| それは疑いようのないことなのですよ。
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      次回、もう一つの道
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | ここから本格的に人工衛星の打ち上げが始まるわけだな。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 「単に初の人工衛星を産んだということではなく、
          | 多くの貴重な知識と経験を残した実験として
          | 記憶されるべきものと思う」──
          | 「悲劇の実験主任」こと、野村民也教授の言葉だ。
          \____________________

糸売く

340名無しのAA書きさん:2013/03/03(日) 01:00:01

技術開発なんてどっかで急にうまくいかなくなって当然なんだよなぁ
それを解決してきたから今があるんだけども

341名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:36:48
1/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ロケット開発史」講義第9回。
| 今回は、今までの「ペンシル」から「ラムダ」までの一連の流れから離れます。
| いわゆる「NASDA」系の登場ですよ。
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      日本ロケット開発史・第9回
    〜以後予算が増えた鉄砲伝来〜
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     | いわゆる「NASDA」系なんて、すっかり忘れてた。
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          | たまには思い出してやってください。
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342名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:37:22
2/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 時は1960年代。
| アメリカとソ連が有人宇宙飛行だ、月探査だと壮絶な宇宙開発競争に
| 明け暮れていた時代です。
| 二大国がプライドをかけたドツキ漫才を演じる中、長距離通信なり
| 気象観測なり、人工衛星を地上で暮らす人たちの生活に役立てよう、
| という動きも出てきました。
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  実用衛星
   日常生活や産業に役立つことを目的とした人工衛星。
   通信衛星・気象衛星・地球観測衛星・放送衛星など。

   一般に、学術研究目的の衛星は「科学衛星」と呼ばれ区別される。
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     | ドツキ漫才って…
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          | 日本は「カッパ」や「ラムダ」といった観測ロケットを
          | せっせと打ち上げてた時期だな。
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343名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:37:54
3/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1960年代前半の主な実用衛星を挙げると、こんなところでしょうか。
| 「リレー1号」は日本のお茶の間に衝撃を与えた
| ケネディ大統領暗殺事件の中継報道で使われた衛星です。
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  タイロス1号(1960年)…史上初の気象衛星
  リレー1号(1962年)…通信衛星。日米間のテレビ中継に初めて成功
  シンコム3号(1964年)…通信衛星。東京大会にて史上初の
                     オリンピック衛星中継

  いずれも打ち上げ国はアメリカ。
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     | 日本も実用衛星を使うようになってきたのか。
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          | しかし、このときはアメリカの衛星を使わせてもらってる状態。
          | いつかは日本も独自で…という声が上がるのは当然の成り行き。
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344名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:38:29
4/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところで…実用衛星というのは通信やら気象観測やら、
| なんらかの「仕事」をしながら地球の周りをまわっているわけです。
| 当然、そのためのカメラや通信機などの機械を積むわけで、
| 仕事が増えたり仕事のレベルが上がったりすれば、
| 衛星が大きく、重くなるのは必然です。
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  例えば、「おおすみ」の24kgに比べて「タイロス1号」は122kg。
  ざっと5倍です。

  さらに気象衛星で比較すると、最新の「ひまわり7号」は4.7トン。
  「タイロス1号」の約38倍…
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | 衛星が大きくなれば、ロケットも大きくなるよな。
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          | もちろん。
          | 科学衛星だって、やりたい観測が増えればそれだけ大きくなる。
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345名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:39:02
5/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ここで、話はガラッと変わってロケットの推進剤の話。
| 打ち上げロケットは観測用にせよ衛星用にせよ、
| 推進剤によって大きく二種類に分けることができます。
| …まあ、読んで字のごとくですね。
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  固体燃料ロケット
   固体の燃料・酸化剤(の混合物)を使用するロケット。
   これまで登場した「ペンシル」〜「ラムダ」は全て固体ロケットである。

  液体燃料ロケット
   液体の燃料・酸化剤を使用するロケット。
   現役の「H-IIA」は液体ロケット。
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     | 本当、見たまんまだな。
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          | ロケットエンジンが宇宙でも燃料を燃やせるのは
          | 酸化剤も積んでるから。
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346名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:39:35
6/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それぞれの特徴を挙げておきましょう。
| 見事に長所と短所が表裏の関係…
| まあ、この手の比較では珍しいことじゃありませんが。
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  固体燃料ロケット
   構造が簡単で安価
   推進剤の管理が簡単
   比推力が小さい
   推力の制御が難しい

  液体燃料ロケット
   構造が複雑
   推進剤の管理が難しい
   比推力が大きい
   推力の制御が容易
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   | `つ  ∇         (゚Д゚,,)     (゚Д゚,,)
   |   | | ̄ ̄|     /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
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.   ∪∪ |    |   ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | 比推力って何?
    \____              ∧
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          | ロケットの「燃費」という認識で構わない。
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347名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:40:07
7/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 燃費がいい、というのは同じ量の推進剤でより長く加速できる
| ということです。
| これはつまり燃え尽きたあとのスピードを、より上げられる
| ということ。
| 言い換えれば、同じスピードならば液体ロケットのほうが
| より重いものを運べるということなんですよ。
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  このため、小型の観測ロケットやミサイルは固体ロケット、
  大型の衛星打ち上げロケットは液体ロケットが主に使われる。
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   | `つ  ∇         (゚Д゚,,)     (゚Д゚,,)
   |   | | ̄ ̄|     /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | じゃあ、宇宙航空研究所が固体ロケットで
     | 人工衛星打ち上げたのは無理やりだったってこと?
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 少なくとも、外国では無理だと考えられていた。
          \____________________

348名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:40:40
8/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さっき「液体燃料ロケット」は構造が複雑、と書きましたが
| 燃料ポンプなり、配管なり、固体ロケットとはまったく
| 別の技術が必要なんですよ。
| 予算も、資材も、人員も、経験も乏しい戦後間もない時代では
| 一研究機関が選べる選択肢は、「固体燃料」しか無かったんですよね。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━

  アメリカ・ソ連は「V2ロケット」の現物や技術者を入手できた。
  この差は大きい。
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | 「V2」は液体ロケットだったのか?
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | そういうこと。
          | ただ観測ロケットについては、外国でも液体から
          | 固体に移行した。
          | 一概に「液体>>>固体」と言える話じゃないんだよ。
          \____________________

349名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:41:13
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| いわゆる「NASDA」系を講義する前に、覚えて欲しい予備知識はここまで。
| ここからが本題です。
| 東京大学のAVSA研究班発足から遅れること6年。
| 国としても本格的に宇宙開発に取り組もう、という動きが出てきました。
| …前回も言いましたけどね。
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  1956年5月19日 科学技術庁発足
  1960年5月16日 科学技術庁、宇宙科学技術準備室を設置
  1964年7月1日   科学技術庁、宇宙開発推進本部を設置
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     | 科学技術庁って確か今は…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 2001年に文部科学省と統合して今は無い。
          \____________________

350名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:41:46
10/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 科学技術庁は1970年度までに「150kg級の実用衛星」を打ち上げる、
| という目標を立てました。
| 「おおすみ」の5倍はあろうかという衛星の打ち上げに必要なロケットとは…?
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  彼らが出した答えは「液体燃料ロケット」の開発だった。
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     | でも、日本では液体ロケットは未経験なんじゃ…?
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | いや、戦中のロケット戦闘機「秋水」という例があるし
          | 戦後は防衛庁(現・防衛省)が液体ロケットの研究をしていた。
          | ただ、衛星打ち上げとなると…
          \____________________

351名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:42:17
11/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 液体ロケット開発は1961年にスタート。
| 2段目の燃料にケロシン、酸化剤に硝酸を使った
| 「LS-A」というロケットを完成させました。
| 名目上は「高度100kmに到達できる観測ロケット」ですが、
| 実質は技術試験用です。
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  LS-Aロケット
   科学技術庁が開発した2段式の試作ロケット。
   第1段は固体ロケット、第2段はケロシンと硝酸を用いる
   液体ロケットからなる。

   1964年7月22日〜1965年11月22日、計3機打ち上げ。

   全長:7.6m 外径:350mm 重量:765kg 構成:2段式
   ペイロード:40kg 到達高度:150km
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     | 1段目は液体じゃないのか…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | この時期、さすがに2段とも液体というのは技術的に難しい。
          \____________________

352名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:42:50
12/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1段目は「カッパロケット」で実績のある東京大学で開発される
| 予定でした。
| ところが、この開発の交渉に手間取り「1段目マダー?」とせかしても
| ブツは届かず…
| 仕方がないので、科学技術庁は2段目を先に打ち上げることにしました。
\__  _________________
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  LS-Aサステーナ
   「LS-A」の第2段を流用して単段式ロケットとした機体。
   1963年8月10日、1機のみ打ち上げ。
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     | なんだか、無理やり感がただよってないか?
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 事実、これを科学技術庁の勇み足と批判する声もある。
          \____________________

353名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:43:29
13/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「LS-Aサステーナ」の打ち上げは伊豆諸島の新島にある
| 防衛庁(現・防衛省)の試験場で行われました。
| 12時17分、大空に向かって勇躍飛び立ったかと思われた
| 「LS-Aサステーナ」は数秒後に空中分解!
| 大・失・敗☆
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  1963年8月10日12時17分 「LS-Aサステーナ」打ち上げ失敗
   突風に煽られ、胴体部のひび割れが急速に成長、
   構造部が破断したものと考えられている。
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     | …ダメじゃん…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 科学技術庁は同じ日に「S-A」という小型ロケットを
          | 3機打ち上げた。こちらも技術試験用。
          \____________________

354名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:44:00
14/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| その後ようやく「東大印」の1段目が届き、
| 翌1964年、科学技術庁は「LS-A」を打ち上げました。
| こちらは3機打ち上げて、3機とも成功です。
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  1964年7月22日 「LS-A」1号機打ち上げ
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     | やれやれ…これで一安心?
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          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | まあ、基礎的なデータが取れたという意味では。
          | 実用衛星にはまだまだ遠い。
          \____________________

355名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:44:32
15/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| あと、新島試験場で打ち上げられたロケットと「LS-A」の発展型を
| 列挙しておきましょう。
| これらの小型ロケットを何機も打ち上げることで、
| 経験を積んでいったのですよ。
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  「S-B」…日本初の強化プラスチック製固体ロケット。
        1964年7月17日〜1965年6月16日、計5機。
  「HM-16」…飛翔性能確認用の小型固体ロケット。
        1965年6月17日・18日、計2機。
  「ST-I」…過塩素酸アンモニウム系推進剤の性能試験用ロケット。
        1965年11月16日、1機のみ
  「SB-II」…「S-B」の性能向上型。
        1965年11月18日・19日、計2機。
  「NAL-16TR」…飛翔性能確認用の小型固体ロケット。
        1965年11月17日、1機のみ

  「LS-B」…「LS-A」ロケットの大型化を目的として開発された機体。
        第2段のみが試作され、地上燃焼試験をもって開発終了。
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | なんだか、手当たり次第に打ち上げた印象だな…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 一応、気象観測をしたロケットもあったが
          | 基本的に、どれも実験用だったと考えていい。
          \____________________

356名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:45:02
16/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが、やがて新島では地元住民によるミサイル実験場反対運動が
| 高まります。
| さらには試験場の間借りについても、防衛庁からはいい顔されず…
| 科学技術庁は独自にロケットの発射場を作ることにしました。
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  そこで白羽の矢が立ったのが種子島である。

  1966年5月 種子島南東部への発射場設置を閣議決定
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | それで鹿児島の漁業組合と揉めたんだろ?前回聞いたぞ。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | ……
          \____________________

357名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:45:39
17/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 浅野君…鹿児島…?何それ?
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  もめたのは宮崎県の漁業組合とである。

  打ち上げるのは鹿児島県沖の海域といっても、そこで漁をするのは
  鹿児島の漁民だけではない。

  宮崎の漁民は鹿児島にしか交渉に来ない国に不信感を持ち始める。
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | あれ…?あ、そういえば前回は地元としか言ってなかったような…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 当時の科学技術庁長官が宮崎に行ったとき、
          | ロケットのロの字も言わなかった。
          | これでますます不信感が募ることに。
          \____________________

358名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:46:12
18/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 宮崎県漁業連合会の人たちは東京に陳情に訪れます。
| 「開所式やる前にウチの県に誠意を見せろ」とね。
| 科学技術庁の研究調整局長や政務次官といったお役人は
| 「考えましょう」と答え、
| 漁連の中の人は安心して宮崎に帰っていったのですが…
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━

  しかし、科学技術庁長官(前コマとは別人)がこれに激怒。
  「役人の分際で政治的判断をするのは、けしからん!」

  …やむをえず研究調整局長は「開所式やります」と宮崎に連絡した。
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     | うわぁ…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | これで火がついたのは、ご想像の通り。
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359名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:47:39
19/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 言うまでもなく、宮崎県漁連は大激怒。
| 地元で「絶対反対闘争」を展開します。
| この問題はもつれにもつれ、1966年11月に予定されていた
| 1回目のロケット発射実験は大幅に延期されることになりました。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━

  宮崎県漁連は科学技術庁だけでなく、東京大学のロケット打ち上げ中止も要求。
  1967年4月13日の「L-4Sロケット」3号機を最後に、内之浦発射場からの
  打ち上げ中止も余儀なくされる。

  さらに、この闘争はその海域で漁業権を持っていた
  大分県、高知県、愛媛県、広島県、そして鹿児島県にまで
  広がりを見せる。
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     | これって泥沼じゃん…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | なお、当の種子島住民は発射場誘致に賛成の人が
          | 多かったことを付け加えておく。
          \____________________

360名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:48:42
20/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| この混乱に終止符を打ったのが鹿児島出身の山中貞則代議士でした。
| 彼は何度も宮崎に出向き、精力的な説得活動を展開。
| 粘り強い交渉で「絶対反対闘争」は「条件闘争」に緩和され
| 種子島の発射場建設が決まってから2年後に、ようやく治まりました。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━

  1968年8月20日 文部省・科学技術庁・防衛庁と各県漁連との交渉妥結

  妥結条件:
   ・打ち上げ期間の制限(年間90日)
   ・打ち上げ機数の制限
   ・打ち上げ計画の事前協議
   ・国から漁業関係者への補償
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     | これが、前回言ってた「L-4S」3号機と4号機の打ち上げ日が
     | 開いた原因なんだな。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | しかし打ち上げ期間の制限は、この先の宇宙開発にとって
          | 大きな足かせになってしまう。
          | まあ、2011年4月にそれは解消されたが。
          \____________________

361名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:49:16
21/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 結局、全ては「最初のボタンの掛け違い」から始まったんですよ。
| 漁業権という地元の事情への無理解、事前交渉などの準備不足、
| 国の強権意識…
| まあ、ロケットに限らず、どこにでも転がってそうな話ですがね。
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  漁業権
   一定の水域において排他的に一定の漁業を営む権利。
   都道府県知事からの免許によって、この権利を得ることができる。
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | 当人たちは、ここまで問題がこじれるとは思ってなかっただろうな。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | おそらく…な。
          | 鹿児島に作るんだから鹿児島にだけ言えば
          | いいと思っていた…
          | それが、そもそも間違いだった。
          \____________________

362名無しのAA書きさん:2013/03/09(土) 13:49:53
22/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんな紆余曲折を経て、現在の「種子島宇宙センター」が
| 完成します。
| そしてようやく、ロケット打ち上げが再開されるのですが…
| 今回はここまで。
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      次回、白い翼つけて下さい
  ,__
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     | いつの間にか現実と戦ってた気がするぞ。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 種子島宇宙センターは「世界一美しいロケット基地」
          | とも呼ばれる。
          | だけど、その誕生にはこんなドロドロした話があった
          | …ということだよ。
          \____________________

糸売く

363名無しのAA書きさん:2013/03/12(火) 13:36:53
おつー
認識不足って怖いよね

364名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:29:47
1/22
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| 「ロケット開発史」講義第10回。
| 今回は宇宙開発事業団(NASDA)から宇宙航空研究所
| …略称「宇航研」に話が戻ります。
| 「ラムダロケット」に続くロケットについてですよ。
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      日本ロケット開発史・第10回
         〜夜明けのMEW〜
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     | 話があっちこっち行って、ややこしいな。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | てゆーか、前回はNASDAのナの字も出なかったような…
          \____________________

365名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:30:19
2/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| …と、その前に…第7回で「ヴァン・アレン帯」について
| ちょっと説明しましたが…覚えてますか?
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━

  ヴァン・アレン帯
   地球を取り巻く陽子・電子からなる放射線領域。
   高度2000〜5000kmと1万〜2万kmの二層構造を持つ。

   名前の由来は発見者のジェームズ・ヴァン・アレン博士から。
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     | で、高度1000kmまで飛べるロケットを作ろうって話になって…
     | それが「ラムダロケット」になったんだろ。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | そう。
          | ただ、「ラムダ」が目標にしてたのは「内側ヴァン・アレン帯」。
          | 高度1万kmに「外側ヴァン・アレン帯」があることに
          | 注目して欲しい。
          \____________________

366名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:30:52
3/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 実は「ラムダ計画」とほぼ同じ時期に、高度1万kmの観測を
| 見据えた「ミュー計画」という構想があったんですよ。
| これが後の「ミューロケット」になったというわけです。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━

  ミューロケット
   東京大学宇宙航空研究所が開発した人工衛星打ち上げ用ロケット。

   もともとは高度1万km以上の外側ヴァン・アレン帯観測用ロケット
   として計画されたものである。
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | なんと。最初から衛星用だったわけじゃなかったのか。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 「ラムダ」と同じく、途中から路線変更することになる。
          \____________________

367名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:31:25
4/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし、1962年のこと。
| 「日本ロケットの父」こと、糸川英夫教授から一つの課題が出されました。
| …これも前に言いましたね。
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  課題:
   5年後にペイロード30kgの人工衛星を打ち上げるための
   ロケットは如何に?
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   | `つ  ∇         (゚Д゚,,)     (;゚Д゚)
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | その答えとして「人工衛星計画試案」が作られた…だったよな。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | (嫌な記憶がよみがえる…)
          \____________________

368名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:31:58
5/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| その「試案」を叩き台にした人工衛星計画によって、
| 「ラムダ」と「ミュー」は開発目的が大きく変わった
| …というわけです。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━

  ・「カッパ」で球形ロケット、姿勢制御装置などの新技術をテスト

  ・「ラムダ」で総合的な衛星打上げ技術をテスト

  ・そして、「ミュー」で本格的な衛星打ち上げへ…
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | へぇ、「カッパロケット」も巻き込んだ計画だったのか。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 開発の効率を少しでも上げるために、
          | 手持ちのロケットも使おうってわけだ。
          | 「カッパ」と「ラムダ」で観測をやめたってわけじゃない。
          \____________________

369名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:32:31
6/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なお、「人工衛星計画試案」ではロケットの直径は
| 1.2mだったんですが、後に1.4mに拡大されました。
| これは糸川教授の鶴の一声によるものです。
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  今後10年は1.4m以上の大型化は無理ぽ…

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 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ヽ、_ノ
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | だから目一杯大きくしたってわけか…つーか、板書で遊ぶなって。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | この糸川教授の予言は、見事に的中することになる。
          | 別の意味で。
          \____________________

370名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:33:03
7/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| では、「ミューロケット」の開発経緯について。
| まずは、これらの予備試験機が打ち上げられました。
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  M-1ロケット
   第1段エンジンのテスト用に試作されたロケット。
   第2〜4段はダミーである。
   1966年10月31日打ち上げ。

   全長:21.9m 外径:1.41m 重量:40t
   構成:4段式 到達高度:50km

  M-3Dロケット
   第2段・第4段エンジンのテスト用に試作されたロケット。
   第3段はダミーである。
   1969年8月17日打ち上げ。

   全長:23.6m 外径:1.41m 重量:40t
   構成:4段式 到達高度:160km
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | 「ミューロケット」のプロトタイプか。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | これらの試験機は、1機ずつしか打ち上げられていない。
          \____________________

371名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:33:39
8/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そして完成したのが、この「M-4S」です。
| 日本初の「本格的な」人工衛星打ち上げロケットですね。
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  M-4Sロケット
   「ミュー」シリーズ第1世代の人工衛星打ち上げロケット。
   「L-4Sロケット」で培われた技術を元に、「M-1」、
   「M-3D」といった試験機を経て開発された。

   1970年9月25日〜1972年8月19日、計4機打ち上げ。

   全長:23.6m 外径:1.41m 重量:43.6t
   構成:4段式 軌道投入能力:180kg

   主な衛星:「たんせい」、「しんせい」、「でんぱ」
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | 「おおすみ」と同じ年に1号機を打ち上げたんだな。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 「L-4S」打ち上げながら、平行して「M-4S」を
          | 開発してたってことだよ。
          \____________________

372名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:35:38
9/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1970年9月25日。
| 「M-4S」1号機は「MS-F1」という科学衛星を積んで、
| 宇宙を目指して飛び立ちました。
| …が!なんと4段目に点火せずに、そのまま落下!
| 大・失・敗☆
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  1970年9月25日 「M-4S」1号機打ち上げ
   第4段の不点火により軌道投入失敗
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   |   | | ̄ ̄|     /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | 大・失・敗☆言うな!何かむかつく!!
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 原因は、姿勢制御装置の故障と考えられている。
          \____________________

373名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:36:10
10/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「M-4S」は「L-4S」と同じく「無誘導重力ターン方式」を採用した
| ロケットでした。
| 大型化により「L-4S」より性能が上がったとはいえ、
| 不確実な打ち上げ方式ってのは相変わらずだったんですよ。
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  打ち上げたが最後、風の吹くまま気の向くまま。
  これぞ漢のロケットよ!
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     | 漢のロケットって…絶対褒め言葉じゃないだろ、それ…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 「M-4S」や「L-4S」が別名「風まかせロケット」と
          | 呼ばれてたのは事実。
          | これのおかげで、衛星の軌道や重量が大きく制限されたんだ。
          \____________________

374名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:36:42
11/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「次失敗したらMOTTAINAI」…そう考えたのか、
| 宇航研は慎重を期すためにロケットと衛星の
| 性能試験機を打ち上げることにしました。
| それがこの「たんせい」です。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━

  たんせい(MS-T1)
   「M-4S」1号機の失敗を受けて、急遽開発された試験衛星。
   1971年2月16日、「M-4Sロケット」2号機にて打ち上げ。

   「MS-F1」の設計や試作部品を流用することで、わずか3ヶ月という
   短期間で製作された。

   打ち上げ・軌道投入とも成功し、地球周回中に得られたデータは
   その後の人工衛星の運用に大いに活用された。
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     | これが日本で2番目の人工衛星ってわけだ。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 「たんせい」は漢字で書くと「淡青」。
          | 東京大学のスクールカラーだ。
          \____________________

375名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:37:15
12/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「たんせい」の成功に続いて打ち上げられたのが、この「しんせい」。
| もともとは「MS-F1」に続く科学衛星として準備されていたものです。
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  しんせい(MS-F2)
   日本初の科学衛星。
   1971年9月28日、「M-4Sロケット」3号機にて打ち上げ。

   1973年6月の運用終了まで、主に宇宙線、太陽電波、
   電離層を観測した。
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     | だけど、「MS-F1」の失敗で予定が変わった、と。
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 衛星そのものの実験機だった「おおすみ」や「たんせい」と違って、
          | 「しんせい」は最初から科学観測を目的に開発された衛星だ。
          \____________________

376名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:37:48
13/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、宇航研では「M-4S」の性能をさらに向上させるべく
| 板書に書いた新型ロケットを計画します。
| ですが、これらの計画は実行されることなく、お蔵入りとなりました。
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  M-4SCロケット
   「M-4S」の第2段・第3段に誘導制御装置を搭載する計画。

  M-4SHロケット
   「M-4S」の第1〜3段に誘導制御装置を搭載する計画。

  M-4SSロケット
   「M-4S」、「M-4SH」をベースに各段を大型化する計画。
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     | いつぞやみたいに、誘導制御に待ったをかけた人がいたのか?
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | いや、これらの計画が無くなったのは
          | 「軍事がフンダララ」とは別の理由。
          \____________________

377名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:38:20
14/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「3段式で人工衛星を打ち上げられないだろうか?」…と考えた人が
| 宇航研にいたんですよ。
| その人の名は玉木章夫教授。
| そして誘導装置の簡素化、ロケットの軽量化、推進剤の進化などの
| 新技術を盛り込んで、この「M-3C」が完成しました。
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  M-3Cロケット
   「ミュー」シリーズ第2世代の人工衛星打ち上げロケット。

   第1・第3段は無誘導だが、第2段に誘導制御装置を搭載。

   推進剤の進化等もあいまって、段数が減ったにも関わらず
   打ち上げ能力は逆に向上した。

   1974年2月16日〜1979年2月21日、計4機打ち上げ。(3機成功)

   全長:20.2m 外径:1.41m 重量:41.8t 構成:3段式
   軌道投入能力:195kg

   主な衛星:「たんせい2号」、「たいよう」、「はくちょう」
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     | 段数が多いほうが有利って、前に言ってなかったか?
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          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 同じ能力を出せるなら、段数が少ないほうが経済的でいいだろ。
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378名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:38:52
15/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1974年2月16日。
| 「M-3Cロケット」1号機が宇宙に向かって飛び立ちました。
|
| …ですが、この1号機打ち上げを見守る関係者の中に
| 玉木教授の姿はありませんでした。
| 「3段式ロケットによる人工衛星打ち上げ」を提案した人は、
| この半年前の1973年9月7日、すでに帰らぬ人となっていたのです。
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  玉木章夫(1915〜1973)
   東京大学教授・工学博士。
   1972年3月〜1973年6月にかけて宇宙航空研究所所長を務める。

   観測ロケットの研究、衛星打ち上げシステムの確立、
   3段式衛星打ち上げロケット等、航空宇宙工学において
   多数の功績をあげた。
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     | ううっ…玉木教授…
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          | 「ペンシルロケット」の尾翼を設計したのは玉木教授。
          | 「おおすみ」「たんせい」の名付け親も玉木教授だ。
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379名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:39:26
16/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ここで、ちょっと時間をさかのぼって1960年代。
| この時代に「X線天文学」という新しい学問の分野が登場します。
| これは地上から天体望遠鏡で…という、従来からある観測方法では
| できない学問なんですよ。
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  X線天文学
   太陽などの天体から放出されるX線を観測、研究する
   天文学の一分野。

   1962年、アメリカの観測ロケットによって太陽からのX線が
   観測されたのが始まりとされる。

   1970年代、X線天文衛星の登場により観測が本格化した。
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     | ほほう、新しい学問か。
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          | そして、日本でも「自前のX線天文衛星を打ち上げよう!」
          | という声が上がり始める。
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380名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:39:59
17/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんな声を受け、宇航研はX線天文衛星「CORSA」を載せた
| 「M-3C」3号機を打ち上げました。
| 1段目は正常に燃焼、切り離しもうまくいきました。
| …が!2段目から上が、予定よりはるかに低い軌道を飛行。
| 泣く泣く3段目の点火を断念、ロケットは空しく海に落ちていきました。
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  1976年2月4日 「M-3Cロケット」3号機打ち上げ失敗
   打ち上げ時のショックで第2段と第3段の姿勢基準データが
   入れ替わったことが、異常飛翔の原因と考えられている。
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     | なんてこったい…
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          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | X線天文学者たちの落ち込みぶりは言葉にできないほどの
          | ものだった。
          | 「これで日本のX線天文学は、アメリカに10年遅れを
          | とってしまった──」
          | 日本X線天文学のパイオニア、小田稔教授は
          | 酒場でそうつぶやいたという。
          \____________________

381名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:40:32
18/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし、これでおめおめ引き下がらないのが宇航研の真骨頂。
| 失敗当日に衛星の製造メーカーから「もう一度やりましょう」との
| 励ましを受け、それから3年後に「M-3C」4号機の打ち上げに成功。
| 「CORSA」のリベンジを果たしたのです。
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  はくちょう(CORSA-b)
   日本初のX線天文衛星。
   1979年2月21日、「M-3Cロケット」4号機にて打ち上げ。

   X線源の新発見、ブラックホールの観測等の成果を上げた。
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     | さすが宇航研!そこにシビれる!あこがれるゥ!
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          | リベンジと言っても、簡単なことじゃない。
          | 政府への陳情、メーカーの協力、そして学者たちの情熱…
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382名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:41:07
19/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、そんなリベンジに燃えている間に宇航研では「M-3H」という
| 新しいロケットが誕生しました。
| 「M-3C」をベースに、1段目の長さを延長することで
| 打ち上げ能力を1.5倍に高めたパワフリャなヤツです。
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  M-3Hロケット
   「ミュー」シリーズ第2世代の人工衛星打ち上げロケット。
   第1段の大型化、推進剤の変更等、打ち上げ能力の向上が図られた。
   「M-3C」と共通部分が多いため、同世代のロケットとして扱われる。

   1977年2月19日〜1978年9月16日、計3機打ち上げ。(3機成功)

   全長:23.8m 外径:1.41m 重量:48.7t 構成:3段式
   軌道投入能力:300kg

   打ち上げた衛星:「たんせい3号」、「きょっこう」、「じきけん」
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     | 後発のロケットなのに「M-3C」より先に引退したのか?
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | そう。
          | 「CORSA」のリベンジのために「M-3C」の引退が延びたんだ。
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383名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:41:40
20/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そして、「ミュー計画」最後のロケットがこの「M-3S」です。
| サイズや打ち上げ能力こそ「M-3H」と変わらないものの、
| 1段目にも誘導制御装置を搭載して、飛行コースの精度を
| 一段と高めたタイプです。
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  M-3Sロケット
   「ミュー」シリーズ第3世代の人工衛星打ち上げロケット。
   「M-3H」をベースに第1段に誘導制御装置を搭載、
   軌道精度をさらに向上させた。

   1980年2月17日〜1984年2月14日、計4機打ち上げ。(4機成功)

   全長:23.8m 外径:1.41m 重量:48.7t 構成:3段式
   軌道投入能力:300kg

   打ち上げた衛星:「たんせい4号」、「ひのとり」、「てんま」、「おおぞら」
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     | これが「ミュー計画」最後…?ちょっと待った!
     | それなら「M-Vロケット」はどこに行ったんだ?
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          | 実はこの頃、別のロケット開発計画が進められていた。
          | 「M-V」は、その計画から生まれたロケットなんだよ。
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384名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:42:13
21/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| あと、誘導制御が付いたといっても「H-IIAロケット」みたいに
| 真上に打ち上げて、途中で方向を変えて…なんてことはしてませんよ。
| この時期の「ミューロケット」はせいぜい予定のコースを飛ぶように
| 微調整をしている…程度のものなんです。
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  斜め上方打ち上げ
   ↓
  放物線軌道の頂点近くで水平方向に姿勢変更
   ↓
  放物線の頂点で最上段に点火

  …という基本的な打ち上げ手順は「L-4Sロケット」と変わらない。
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     | え?飛ぶ向きを変えたわけじゃなかったの?
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          | それができるようになるのは、もっと後。
          | 微調整ができただけでも、すごい進歩なんだぞ。
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385名無しのAA書きさん:2013/03/14(木) 23:42:46
22/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうして「ミューロケット」は初期の段階を終了し、
| 次のステップへと進みます。
| いよいよ地球脱出への挑戦が始まるわけですが…
| これについては次回ということで。
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      次回、奴だ!奴が来たんだ!!
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     | 奴って誰?
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          | 76年に1回やってくる、アイツのこと。
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糸売く

386名無しのAA書きさん:2013/03/20(水) 03:21:12
のびたの先祖がゴム管買い集めてたアレか


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