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おもらし千夜一夜4
1
:
名無しさんのおもらし
:2014/03/10(月) 00:57:23
前スレ
おもらし千夜一夜3
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/sports/2469/1297693920/
777
:
事例18「篠坂 弥生」と我慢訓練。10
:2020/12/31(木) 20:59:25
――
――
「……なんで途中から私が真ん中で、両手の自由が奪われたの?」
「やっぱりお化け屋敷ですし、こう、誰かに摑まるのって醍醐味だと思うんです!」
「や、弥生がめっちゃ押してくるから、綾菜を盾にしてただけで怖かったんじゃないぞ!」
意外な弥生ちゃんの一面。完成度が高いわけではなかったが稚拙というほどでもなかったお化け屋敷を一切怖がりもせず全力で楽しんでいた。
小道具やセットなんかにも興味を示していたりと余裕たっぷりだった。
一方、雛乃のほうはびっくりするほどの怖がり。痛いくらいに腕をつかまれて跡が残りそう……だけど、不覚にもちょっとかわいいと思ってしまった。
「うぅ、弥生、もうすぐ15分だから全部飲み切るんだぞ……」
「あ、そうでした……そうだったんでした」
ズーンという文字が弥生ちゃんの周りに見えるくらい露骨に落胆する弥生ちゃん。
いつもより過剰に見せるリアクション――……無意識なんだろうけど、それだけ雛乃との時間を楽しんでいるってことだよね。
……。
弥生ちゃんと雛乃がいつから仲が良かったのか正確にはわからない。
だけど、雛乃は友達を作ることに関して妥協しない性格だったことから
比較的与し易いであろう弥生ちゃんを後回しにしてたとは考えにくいので、私よりも付き合いは長く深いと思う。
同学年なら出会う人すべてを友達にしようと目論み、ヒエラルキーの頂点を目指す……少なくとも小学生時代はそんな子だったから。
――……あれ? なんで雛乃は弥生ちゃんに会いに来たんだろう? 雛乃なら中学時代の友達よりも、今の友達を優先しそうなものなんだけど……。
友達を作ることは手段であり、目的はヒエラルキーの頂点のはず。
まぁ、仲が良かったわけではないのだから、雛乃の事を深く理解してるわけじゃない。
喉を鳴らして急いでトウモロコシのひげ茶を飲む弥生ちゃんを雛乃は楽しそうに見ている。
雛乃にとって、弥生ちゃんはその他大勢の友達とは違う特別なのかもしれない。
「はぁ、の、飲みました。間に合ってましたか?」
「大丈夫、今14分過ぎたとこだぞ」
どうにかトウモロコシのひげ茶を飲み切る。
弥生ちゃんは小さく嘆息してから私たち二人に視線を向ける。
「ま、まだ大丈夫なので、もう少し見て回りたいです」
少し顔を赤くして弥生ちゃんは言う。
「まだ大丈夫」と言われると既に尿意を感じているような気もするが『声』は聞こえないし、飲み始めて15分では早すぎる気がする。
この先、飲んだ水分に追い詰められることが容易に想像出来てしまったから出た言葉――ということなのだろう。
そして、その姿を私たちに見られることを意識して、顔を赤くして――凄く可愛い。
――……見て回るところか……弥生ちゃん自身特に案があるわけじゃないのかな? それなら、えっと――
……。
「……そういえば、二年生のどこかのクラスでバルーンアートを展示してるとこがあって、二日目は体験もできるって聞いたよ」
「っ! いいですね! 楽しそうです!」
何かを作ったり、芸術的なことを好む弥生ちゃんならそう言ってくれると思っていた。
私たちはさっそく、教室棟の二階へ向かう。
「(いやー綾菜は鬼だねぇ、体験とかしてる途中に催して困るやつだぞ?)」
道中、雛乃が近くまで来て小声で耳打ちする。
意図して言ったわけじゃない。弥生ちゃんが好きそうなものを選んだに過ぎない。
……だけど、言葉にする直前にはそういうことが起きるであろうことは頭をよぎった。
それでも口にするのを止めなかったのは、確かに打算が働いたから……。
弥生ちゃんには辛い試練となるとわかっていて提案、雛乃が言う鬼という指摘は概ね正しいのだと思う。
「(やっぱり綾菜って我慢してる子とか好きなの?)」
無言でやり過ごそうとすると、さらに無視し辛い内容で揺さぶってくる。
きっと確証があって言ってるわけじゃない。
778
:
事例18「篠坂 弥生」と我慢訓練。11
:2020/12/31(木) 21:00:15
「何を二人で話してるんですか?」
前を歩く弥生ちゃんが私たちの内緒話に気が付き振り向く。
内容が内容だけに、本当のことは言えないし、適当に誤魔化すと雛乃が引っかき回してきそうだし。
「かわいいよ弥生、かわいいよ、って話」
「え!? い、意味不明です!」
満更でもない様子を見せた後、慌てた様子で前を見て歩みを進める。
「(ちょろいよね)」
「(……今のは私もちょっと思っちゃったけど、口にはしないで)」
そしてバルーンアートをしてる教室に辿り着く。
三人で中を覗くと体験スペースと思われるところに空きがあった。
「……ほら、弥生ちゃん一つ空いてるから、私は展示とか弥生ちゃんの見てるし、雛乃もそんな感じでしょ?」
「うん、そんな感じー」
私たちの言葉に弥生ちゃんは若干人見知りの表情を発動しつつ、恐る恐る席に着く。
祭りでのかたぬきの時のように次第に興味を示す表情に変わっていくのを確認してから私は展示されてるものに目を向ける。
『ん…嘘、もうなの? ……このタイミングで来ちゃったよ……』
――っ!
弥生ちゃんの『声』。
展示物を見ながらさりげなく視線を弥生ちゃんに向けるが、まだ感じ始めたばかりの尿意、見た目には特に変化はない。
「(飲み始めてから25分経過か、そろそろ行きたくなってても不思議じゃないかな?)」
いつの間にか隣に来ていた雛乃が展示物に視線を向けながら小声で呟く。
「(……何、前回のテストの経験則?)」
「(ま、そんなとこー)」
ちょっと羨ましい。
今日こうして再度こういう事が出来たことから空気を悪くすることなく実施できたのだと思う。
私は呆れるように嘆息して、展示物に視線を移す。
そんな雛乃もしばらく私と並んで展示物を見る。
『ふぅ……うぅ、やっぱり早い…コーヒーの飲み比べしてた時みたいな感覚……』
急激に増してくる尿意に不安を感じている。
私は展示を見るのをやめて弥生ちゃんの隣でバルーンアート体験の様子を見る。
「……どう? 作り方教わった?」
「あっ、はい、風船の膨らまし方と簡単な動物を一つ教えてもらいました」
弥生ちゃんは一瞬私が来たことに驚いたがすぐに先輩の人と作ったキリンっぽいバルーンアートを嬉しそうに見せてくれる。
飲み始めてから30分ほど経つが、まだ強い尿意を感じているわけじゃない。
あと20分で目標の50分だと考えると割と余裕を持ってテストを終了できそうな気がするけど……。
「もう一つ、何か作ってみますね」『ふー、大丈夫、もう一つ作ったら音楽室戻ろうって言おう……』
弥生ちゃんはそう言うと、風船を膨らましながら机の上に置かれた小冊子を見る。
私としてはまだ余裕のある内に、音楽室へ戻ったほうが良いと思って声を掛けたのだけど
弥生ちゃん本人がもう一つと言ったのだから、無理強いはしない。
779
:
事例18「篠坂 弥生」と我慢訓練。12
:2020/12/31(木) 21:02:21
「(どう、可愛かった?)」
「(……なにその質問)」
弥生ちゃんが離れるとよくわからない雛乃の質問が私に投げかけられる。
私はそれに呆れたようにして答える。――……まぁ、当然可愛かったけど。
雛乃の視線が弥生ちゃんのほうへ向いたので、私もその視線を追うようにして弥生ちゃんを見る。
『うー、早く作らないと……身体が揺れちゃう……』
そう『声』にした弥生ちゃんの足は小さく揺れていて、尿意を無視できなくなってきているのがわかる。
「(ふむふむ、仕草にちょっと出てきたぞ、隠してるつもりであれなら前回より早いかもね)」
尿意の感じ始め、初期尿意からそれほど時間が経ったわけじゃない。
だけど、すでに仕草に表れる程度には切羽詰まってきてる。
それなりに我慢できる人の場合、容量的に尿意を感じてすぐに限界になるわけじゃないが
弥生ちゃんのように余り我慢できない人は比較的短い時間で急激に尿意が強くなる。
雪姉やまゆ、あと星野さんなんかは多分想像できないくらい。私でさえ、尿意を感じてから30分で限界なんて飲み過ぎていたとしても普段じゃありえない。
当然、限界まで我慢した翌日とかならあり得る話――――今日がまさにそうなんだけど――――ではあるけど、あの急に来る切迫感とはきっと違う気がする。
「っと、出来ました!」
弥生ちゃんがそう言いながら胴の長い何かのバルーンアート持ちながらこちらに視線を向ける。
そんな弥生ちゃんに二人で近づくと私に胴の長い何かの方を私に手渡す。
私はそれを反射的に受け取りお礼を言うが――……なんだろう、イタチとかフェレット?
「えっと、オコジョのつもりです」
弥生ちゃんは私の態度を見て何の動物か説明してくれた。
言われてみれば確かに白の風船だし、胴が長いし。
銀髪の私を意識して作ってくれたのかもしれない。
「それとこっちは……初めに作ったキリンです、イメージ的にネズミが良かったんですが難しそうだったので」
「私のイメージネズミなの!? なんかショック! あ、もしかして夢の国的なネズミ? まぁ、でも弥生の吐息入りだし嬉しいぞ」
「なんか嬉しいの要素が変質者的で怖いです、あとリアルネズミです」
雛乃の気持ち悪い冗談を弥生ちゃんは辛辣に返す。
だけど、その後弥生ちゃんは少し落ち着かない様子で短い沈黙を作る。当然理由はわかってる。
「あ、あの……そろそろ…戻りたい、です」『お手洗い……というか、言葉濁したけど、我慢できなくなってきたって言ってるようなものなんじゃ……』
弥生ちゃんは顔を赤くして座っている椅子でもじもじと身体を動かす。
そろそろ仕草を抑えるのは難しくなってきている。――……とても可愛い。
「まだ36分くらいだぞ? (もう、トイレ辛くなってきた?)」
雛乃が耳元に近づき、私にもギリギリ届く程度の声で弥生ちゃんに意地悪な質問を投げかける。
弥生ちゃんは一層顔を赤くして仕草を隠すためなのか身体の揺れを止める。
「い、いえ……だけど――」
「だったら、もうひとつ、弥生ちゃん自身のバルーンアートも作ろうよ?」
弥生ちゃんの否定に、恐らくわざと雛乃が言葉を挟み、更に意地悪な事を言い出す。
「……」『あと一つ? こんな勢いでしたくなってるのに……』
弥生ちゃんは雛乃の言ったことを真剣に考えて……。
まともに付き合う必要なんてないのに。
「……とりあえず、音楽室戻ろう。大丈夫だとは思うけど音楽室が誰かに取られていたら別の空き教室探さないとだし、バルーンアートなら後でも出来るし。
それに、空き教室が見つからないなんてことになって、最悪テスト中止っていうのは雛乃も望んでないでしょ?」
そう私が言うと弥生ちゃんは縦に首を振る。
雛乃もそこまで食い下がるつもりはなかったらしく、あっさり私の意見に同意する。
780
:
事例18「篠坂 弥生」と我慢訓練。13
:2020/12/31(木) 21:03:23
私たちは教室を出て音楽室へ向かう。
『はぁ…んっ……もう結構したい、50分までは絶対我慢しないといけないのに……』
『声』の大きさからみて7、8割くらい。
歩く見た目はそれほど変化がないように見えるが、ほかの生徒もいる中だし平静を装っているのだと思う。
沢山抱えて、平静を装って――だけどこれから向かう先はトイレじゃない。
音楽室、そこで私たちに見られながらの我慢が10分ほど続く。
弥生ちゃんにとっては恥ずかしい時間、私にとっては弥生ちゃんがとっても可愛い時間。
『やー、やっぱり我慢してる弥生は可愛いなぁー』
――っ!
隣の歩く雛乃から『声』が聞こえてくる。
視線だけ気が付かれないように向けると、斜め前を歩く弥生ちゃんを楽しそうに眺めていて――……自分で言うのもあれだけど椿家の血筋、変態多すぎない?
とりあえず雛乃は、揶揄うためにこういう行動をしたと言うより、我慢姿を見るためにしたと考えてよさそう――……両方って可能性もあるか……。
『ふぅ、ようやく音楽室……しっかり我慢して、はぁ…ちゃんとお手洗いに行かなきゃ……』
弥生ちゃんは一応ノックをして、返事がないのを確認してから音楽室の扉を開けた。
雛乃が弥生ちゃんに続いて音楽室に入り、最後に私が入り扉を閉める。
――……ついに、弥生ちゃん鑑賞会……今更だけど、何してるだろ私。
二人は少し前に来た時と同じ席に座り、私もそれに同調する。
「んっ……はぁ……」『これ、結構……厳しい? っ……』
「……」
「……」
「うぅ、な、なにか……喋ってください! む、無言で見られるのは、……んっ、流石に、耐えられません!」
――……うん、私もなんか気まずかった。
「えーこちら現場、只今41分が経過しました、前回記録43分の記録まで僅かなところまで来ていますが弥生選手は苦しい表情です」
雛乃は立ち上がり、エアマイクを携え実況しながら弥生ちゃんの周りをぐるぐると歩き出す――……ほんと楽しんでるな……。
「そ、そういうのもっ……んっやめ……はぁ、はぁ……」『だめ、本当にだめ、まだ41分、50分って自分で言ったのに……』
ほんの数分の間に弥生ちゃんは本当に切迫した尿意に襲われている。
大量に飲んだ水分が弥生ちゃんの小さな下腹部に今も流し込まれ、膨らましている。
「本当に辛そうだね、昔より今のがずっと我慢できるようになったって言ってたのになぁ。
まぁ一応あと80秒くらいで前回記録は更新だぞ、50分まではまだ遠いけどね」
雛乃はそう言って弥生ちゃんを覗き込む。
「っ……やめっ…、んっ……はぁ、ふうっ……っ」『な、なんでこんなに……やぁ、ほ、ほんとにこのままじゃ……』
今までは足がもじもじ落ち着かない、身体を無意味に揺らす程度の仕草に抑えていたが
次第に手を太腿と椅子の間に挟んだり、脹脛や太腿を無意味に摩ったり……
私たちの視線があるからなのか、まだ押さえはしないものの、その手は落ち着きがなくなってきている。
「っと43分、前回記録は越えたよ、あとは目標の50分までだぞ、がんばえー」『かわいいー』
雛乃は数歩下がりながら時間を確認して声を出した。
そしてその声を合図に弥生ちゃんは立ち上がる。
涙目で、スカートの前の生地を握りしめ、熱の籠った息遣いで――……可愛いけど、もう本当に限界…大丈夫なの?
見てるこっちがハラハラ、ドキドキする……。
【挿絵:
http://motenai.orz.hm/up/orz75424.jpg
】
「んっ…ぁ、あ、あのっ――」『ダメ、これ以上は、っ、もう限界、我慢できないっ』
弥生ちゃんは顔を上げて、真っ赤な顔を私たちに向ける。
781
:
事例18「篠坂 弥生」と我慢訓練。14
:2020/12/31(木) 21:04:36
「ご、ごめんなさい、もうっ……お、お手洗いにっ…あぁ、っ……」『無理、も、もう限界……50分なんて……』
本当に限界。今行かないと間に合わなくなる恐れがあるくらいに。
それは『声』の大きさから十分に伝わってくる。
「全く、何言ってるの? 今行ったら前回とほぼほぼ変わらない結果、つまりほぼほぼ成長してないってことだぞ?」
素直に言えば当然行かせてもらえるものと思っていた弥生ちゃんは驚いた様子で、でもすぐに成長していないという言葉に視線を下げる。
成長したところを見せるために、嫌だけど仕方がなくテストに付き合ったのに、結果がこれでは当然情けなく悔しい。
だけど、その気持ちだけで我慢できるものでもなく、すぐに涙を溜めた目で雛乃へ視線を向ける。
「っ、でも……もうほんとにっ…んっだめ、なんです……」『いや、失敗だけは……二人の前じゃ…おもらしなんてできない……』
おもらしが現実味を帯び始め、情けなさや悔しさを棚に上げる。
もう本当に猶予がない。我慢できるできないじゃなく、おもらしの心配を始めてるのだから。
「とりあえず座りなよ、落ち着かないだろうけど、立ってるほうが我慢って難しいらしいから」
雛乃が諭すように言う。言ってることは確かにその通りだと私も思う。
だけど、弥生ちゃんが立ち上がったのはきっと落ち着かないからではなく、トイレに行かなくちゃいけないから。
雛乃の声は弥生ちゃんに届いたのだろうけど、座ることは我慢を続ける選択をすることで、弥生ちゃんはその選択をできないでいる。
足踏みを繰り返し、荒い息遣いで……両手はついに前を押さえ、その手は何度も押さえなおされる。
「はぁ、いいよ、50分っていうのは私が言わせたんだし、弥生が初めに言った48分までで
でも、それまではダメ、示した覚悟をふいにするなんて許されないぞ?」
「ちょ、ちょっと雛乃、流石に――」「行かせるつもり? 綾菜がそんな甘いから、弥生が成長できないんじゃない?」
私の言葉にかぶせるようにして雛乃は言う。
そして私に少し呆れた顔した後、嘆息して弥生ちゃんに向き直る。
「前にギブアップした43分時点でもこんなにあからさまに我慢してなかったよね?
弥生は綾菜に甘やかされて、我慢できなくなってるんじゃないの? 違うんでしょ? 成長したんでしょ? だったらちゃんと証明しなきゃ
自分で示した48分くらい乗り越えなきゃ、認めてもらうには結果だぞ? じゃないと“また”失望されるぞ?
ほら今44分、あと4分だから……少しは楽になるから座りなさい」
弥生ちゃんは少し動揺した素振りを見せ、だけど覚悟を決めたらしくゆっくり席に着く。
そんな弥生ちゃんを見て雛乃は「よくできました」と言う。
雛乃が何を考えてるのかわからない。可愛いと思う『声』は時折聞こえるものの、雛乃がどうしたいのかわからない。
そして、「“また”失望されるぞ」という言葉――……一体弥生ちゃんは誰に……。
「はぁ…っ、ふぅーっ、んっ! ――あぁ、ふぅ…っ」『我慢、我慢、我慢、我慢……我慢しなきゃ…しなきゃ……』
荒い息遣いはより深く熱いものになり、椅子に座りながら足を浮かせたり、絡ませてたり、忙しない仕草を見せる。
48分まで、4分を切ってるみたいだけど……弥生ちゃんが我慢しきれるか本当に微妙なところ……。
「あと190秒ー、ほらほら、もう少しだぞー」
「も、もうすこ――っ、あ、あぁ、っ……や、ダメ、あのっ、私っ――ち、違う、っだめ、我慢しなきゃっ……しなきゃっ!」
『でちゃ――だめっ無理、お手洗いっ、お、おしっこ……』
恐らくギブアップしようと声を上げたが、すぐにそれを否定する。
既に限界なのは誰の目にも明らかで、それなのに弥生ちゃんは我慢を続ける選択をする。
その選択をしたのはさっき雛乃が言った言葉が絡んでいるのかもしれない。
……。
「はぁっ…っ! おしっ…あぅっ…我慢っ…はぁ…っ、あ、あぁ…くっ……っ」『無理…おしっこ、おしっこ…ほんとにダメ、ダメっ……』
椅子の上でじっとしていることができず、浅く座ってみたり斜めに身体を捻ってみたり、揺らしてみたり……。
なりふり構わない、少しでも限界を先送りにしようと必死に足掻いて――……可愛い、可愛いけど……。
もう何時始まってもおかしくない、『声』も声も仕草も全部限界だと告げている。
782
:
事例18「篠坂 弥生」と我慢訓練。15
:2020/12/31(木) 21:05:34
「っ、あ、あっ、ダメっ……あ、あぁっ……やっ!」『あ、出ちゃっ――だめ、まだ、だから、とめっ――もうちょっ…だからっ!』
――っ!
身体を震わせて、全身に力を入れて。
先ほどまでの落ち着きのない仕草ではなく、抑え込むことに全身全霊を籠めるような……。
それはきっと、始まってしまったものを止めるためだから……おもらしをおちびりで済ませるために。
「あぁっと!? ……大丈夫? 大丈夫そう? うん、まだ時間じゃないし、ここはトイレじゃないぞ?
時間はあと120秒だね、あと2分、本当にあとちょっとだからこれくらい我慢しないとね」
『うんうん、可愛いぞ……がんばれ! でも弥生、本当に我慢できる?』
雛乃が少し慌てたようにして言うが、おもらしには至っていないと見て、おもらしへのプレッシャーを掛ける。
時間まではトイレに行かせない、そういう意思を感じ取ることはできるが
結果としておもらしになることを強く望んでいるというわけでもないらしい。
控え目ではあるが聞こえてきた『声』からも応援してるのがちゃんとわかる。
だけど、このままじゃ……。
――……だったら、どうして私は止めない?
おもらしをおちびりで抑え込んだであろう、可愛い弥生ちゃんを見ながら自問する。
また雛乃に何か言われても、弥生ちゃんをトイレに行かせることはきっとできると思う。
今すぐそうしなければ、おもらしになる可能性は高い。目撃者が私たちだけならば――というのは、ただの私の都合。
弥生ちゃんに取ってはきっと私たちに見られることも凄く辛い……そう感じられる。
夏祭りの時のように気まずくなる可能性だってある。
弥生ちゃんはとても恥ずかしがり屋で、繊細で……おもらしすることに慣れたりしない――それなのに。
――……雛乃が我慢を強要してるから? 弥生ちゃんが我慢することを選択してるから? ……でもそんなのは――
きっと言い訳。理由をつけて言わないだけ。
私はずっとそうしてきた。
目の前の、可愛い、愛おしい……そんな姿を見たいがために。
自身の欲望を満たす為に。
そして、それはこれからも……。
――……ごめんね……だけど、助けを求めたときは、力になるから……。
「んっ…あぁ…」『だめ、本当にっ…やだ、おもらし…やなのにっ……無理、だれか……助けてっ、我慢させてっ!』
――っ……。
「……ひ、雛乃…もういいでしょ?」
私は弥生ちゃんに視線を向けながら小さく言った。
心の中で『助けて』と言っただけ、声に出して私に助けを求めたわけじゃない……だけど――
783
:
事例18「篠坂 弥生」と我慢訓練。16
:2020/12/31(木) 21:06:20
「……あと一分でしょ? 済ませる頃にはもう時間になってる……」
「違うよ、前回もそうだけど、トイレに立つ時間が48分、あと65秒はここで我慢しないと」
「でも、あと少しだからって、それが我慢できない時だってあるでしょ?」
「だから、気持ちを強く持って我慢させないと、今は行こうと思えば行けるよ? だけどそうじゃない時だってあるぞ?」
「だけどっ!」
「これはテスト、テストっていうのは社会に通用していくための予行演習の一つ、本番じゃない、これは訓練だぞ、我慢訓練っ!」
言いたいことはわかる、わかるけど……。
「ひ、雛さん、あっ……い、いいです、はぁ、時間まで……んっ我慢、しますから」『でる、でちゃうもれちゃ……、だめ、だめなの、だめなんだからっ!』
――っ……どうしてそんなに……。
「ほら、弥生もそう言ってるし。そういう優しさだけが、弥生のためになるとは限らない、あと25秒弥生の頑張りを見届けるぞ
これは訓練、ここには私たちだけ、“結果”なんて後で反省すればいいんだから……」
雛乃は口が上手い……。彼女の言うことはわかるし、ある意味では間違ってないとも思う。
それにあと20秒ほどで時間になる。私が食い下がったところで、きっとなんの助けにもならない。
驚いたことに弥生ちゃん本人も我慢する気でいる。
私は今も必死になって決壊を先送りにしている弥生ちゃんに視線を向けて雛乃が言うように頑張りを見届ける。
「っ……」『あ、あぁっ、無理っ……出ちゃ――だめ、だめっ!』
「はーい、カウントダウンだぞっ、8、7、6――」
――っ……あとちょっと、頑張って、もう少しだから……。
弥生ちゃんが身体を震わせて、息を詰めて、両手で何度も押さえて、目を力いっぱい瞑り……。
だけど、押さえる手の下――スカートの前にゆっくり広がって行く染み……。
もう抑えきれてない……。
「4、3――」『惜しかったね、弥生……』
「あ、あぁっ……っ、〜〜〜っ」『出て――とまっ…あぁ、やだ、ぬれて――おしっ…っ、おもらし…やなのにっ……』
スカートの染みは少しずつ広がり続ける。
それでも『声』の大きさからも必死に我慢を続けて、最後まで抗って……。
「――1、……はい 、おめでとーっ!」『我慢出来てない…可愛い、でも、時間までは我慢できたって認めてあげるぞ』
まるで新年の挨拶のように雛乃は言う。
彼女の言うおめでとうは『声』の感じからしても本心なのだろう。
そして――
<ぴちゃ…ぴちゃぴちゃ>
弥生ちゃんの椅子の下に出来始めていた水溜りに、雫が落ちる音が聞こえた。
「っはぁ、ふぅっ…あぁ…んっ、やぁ……」『出てる、出ちゃってる……だめ、もう、わかんない……我慢の仕方、止め方…しらない……』
スカートを押さえたまま、目を瞑ったまま、肩を震わし、弥生ちゃんは熱い息を零しながら水溜りを大きく拡げていく。
間に合わなかった。時間まではどうにか我慢できたと言ってしまっても良いとは思うけど……。
おもらし……絶対我慢しなきゃって思って、でも本当にほんのちょっとが無理で。
もしかしたらカウントダウンを聞いて、身体の方が先走り始めてしまったのかもしれない。
――……でも、可愛い……本当に可愛い……抱きしめたい、褒めてあげたい……凄く頑張ったよ弥生ちゃん。
『授業終了のチャイムと同時に漏らしちゃう子……みたいな?
もう全然止めれてない感じ? うーん、可哀そ可愛いぞっ』
そんな『声』が聞こえてきて、私自身、弥生ちゃんの恥ずかしい姿に見入っていることに気が付く。
聞こえるということは私も同様に可愛いと思っているわけなのだけど、それでも雛乃の『声』に私は苛立ちを感じてる。
それは多分、同族嫌悪だけじゃない。
784
:
事例18「篠坂 弥生」と我慢訓練。17
:2020/12/31(木) 21:06:56
「やよ――」「あーやっちゃったね弥生」
そんな気持ちを無視するように私は弥生ちゃんに声を掛けるつりだった。
だけど、雛乃は私の声に被せる様に声を上げる。
「ダメだぞ、我慢できないならちゃんと言わないと」
――っな!?
弥生ちゃんは言った、我慢できないから行かせてほしいと。
それなのに……その言葉は流石に理不尽――
「昔いたよー、授業中のトイレは許しません、って言う先生
それで、今の弥生のようにもうすぐ時間ってところでやっちゃった子がいた」
――……あの子のことだ……。
小学生時代に私が手を差し伸べた子。
「先生、その子になんて言ったと思う? ごめんね、でも本当に我慢できなかったらちゃんと言いなさい、だってさ。
私もひどい理不尽って思ったぞ、だけどその通りだとも思った、無理なら何度でも、わかってもらえるまで言わなきゃいけない、そうでしょ?」
弥生ちゃんは雛乃の言葉を黙って下を向いたまま聞いている。
そしてその隠れた顔から時折雫が落ちてスカートに別の染みを作る。
雛乃の言ってることは、確かにその通りなのだろう……。
取り返しが付かなくなって困るのは結局自分自身だから。
「弥生が反省すべき点は三点、限界になったのに言えなかったこと、利尿作用の高いお茶に気が付かなかった無知。
そして、水分を取った後の動き回る行動、適度な揺れは胃の水分を腸に届ける手助けになるし血行もよくなるぞ。
だけど……まぁ、我慢できる量や時間に関しては成長してるぞ、失敗しちゃったかもだけどちゃんと50分我慢できたんだから」
――……確かにその三点を考えれば、50分我慢できたのは――50分? え?
「本当に48分だったら間に合ったかもしれないね」
「雛乃、あなた……」
悪びれる様子もなく時間を偽り我慢させていたことを告げる。
弥生ちゃんはだた、自分の成長を見せたかっただけなのに。
「ぐす……だったら、訂正してください……」
その言葉に雛乃は弥生ちゃんに近づいて頭を撫でる。
「うん、ごめんね、反省点はあるけどちゃんと成長してた、ちゃんと証明できた認めてやるぞ」
「ち、違います!」
弥生ちゃんはすこし声を張る。
その態度に私も雛乃も驚く。
785
:
事例18「篠坂 弥生」と我慢訓練。18
:2020/12/31(木) 21:07:44
「ひ、雛さんは頼りになる人で優しい人で……だけど、変に甘やかしたりなんてしてないです
もしそう見える時があるのだとしたら、きっと私が甘えてるだけで……私が悪いんです」
――っ……なんで今、私の事……自分のことで精一杯でいいのに……。。
「あーそっち? うん、それも訂正するぞ、綾菜は弥生を必要以上には甘やかしたりしてない。全然ではないけどね。
それと、友達としてのスキンシップを除けば、弥生からの過剰な甘えはなかったと思うぞ」
そう言ってさっきよりも強く、弥生ちゃんの頭をわしゃわしゃと撫で回す。
弥生ちゃんはそれを不満そうな顔をしながら受け入れていて、いつの間にか涙は流れていない……。
――……結局私が心配するほど傷つくことにはならなかった? でも――
恥ずかしい失敗のはず。
それなのに、なぜか空気が悪くない……重くならない。
これはテストだと言って、訓練だと言って――……雛乃は最初からこういう流れが見えていた?
「あと……あのお茶に利尿作用って…ひどいです」
「あはは、勉強になったね」
……。
「……それよりそのままじゃ冷えるでしょ? タオルや着替えはあるからトイレで後始末とか済ませてきて、ここは雛乃が一人で片付けるから」
私はそう言って話に混ざる。
優しさ半分、二人のやり取りへの嫉妬半分と言ったところ。
でも、私の言い方にはフランクさが欠けていて、空気を悪くしないか内心ドキドキしてる。
最後のは若干冗談のつもりで言ったが、伝わってないかもしれない。
「あ、ありがとうです……」
弥生ちゃんはお礼を言ってタオルなどの入った袋を受け取る。
顔を真っ赤にして申し訳なさそうな表情をしているのは、後始末を雛乃がするからだろうか?
ちなみにその雛乃はというと、片付け役に指名されたことを不服に思ってるみたいだが――……いや、冗談で言ったけど、当たり前でもあるでしょ?
「うー、……っていうか、なんで着替えなんて持ち歩いてる?」
不服に思いながらも雛乃は反論する気はないらしく、私に質問を投げかける。
この手の質問、一体何度目だろう。
確かに不自然なのはご尤もだけど。
「……誤解があると困るから初めに言うけど、弥生ちゃんが切っ掛けというわけじゃないからね。
えっと、誰かが――あ、まぁ自分も含めてだけど、失敗しちゃったとき、こういうの持ってたら良かった、って思ってから持ち歩くようにしたの」
もっと言うなら、私自身の趣味趣向からの後ろめたさからというのと
もう一つ、多分、失敗した子を助けるのも含めて私の趣味趣向なのだと思う。
失敗した子を見て見ぬふりするのも気持ちが悪いし、助けることで私は満たされているのだと思う。
「雛さん……聖人です……」
「いやいや、変人でしょ? そんなの気にし始めたら、旅行鞄でも足りないぞ……」
その後、弥生ちゃんは廊下に人がいないのを確認してトイレへと向かった。
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