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おもらし千夜一夜4

424追憶4「雛倉 綾菜」と手紙。7:2016/09/20(火) 00:53:16
『はぁ……トイレ行きたくなっちゃった……』

――っ! 紫萌ちゃんの『声』だ!

初めて聞く紫萌ちゃんの『声』に私は心を弾ませる。
だけど、彼女よりも私の方がずっと切羽詰っていて……この状況はどうにも覆りそうにない。

「えっと、ごめん、私ちょっと……」

紫萌ちゃんはそう言って寝台の脇に置かれた丸椅子から立ち上がる。
間違いなくトイレに行くつもりで席を立った。このチャンスを逃す手はない。

「あ、紫萌ちゃん、トイレ? 私も行くからちょっと待って!」

そう言って私は寝台から足を下ろし、松葉杖を使い立ち上がる。

――っ……あぅ…立ち上がると、思ってたより……んっ…はぁ……溜まってる……。

今までじっと寝ていたから気が付かなかったが、膀胱は想像よりもずっとパンパンになっていて
その存在感から自身が可也切迫した状況に置かれていることを自覚する。

「点滴してると、やっぱしたくなっちゃうね」

膀胱の庇うようにして歩く姿は多分、松葉杖を使っていることで誤魔化せていると思うが
何も喋らずにいるのは落ち着かなくて、誤魔化すようにして話しかけた。

「うんうん、点滴も水分だからね」

そう、水分……それを血中に直接流し込んでいる……。
流し込まれたものは腎臓で直ぐにろ過されて膀胱に溜められる。

わかってはいるけど、紫萌ちゃんの言葉に再度認識させられる。
松葉杖を前に出して必死に前に進む。
トイレが近づき、尿意はさらに膨れ上がる。

――……んっ……やばい…もうっ……だめ、もうちょっと我慢して……

自分でも信じられないくらいの勢いで限界へ向かう尿意に焦る。
今まで横になっていたから、均衡を保てていたのかもしれない。
もう直ぐトイレだから、気持ちが切れ掛かっているのかもしれない。
でも、理由なんて関係ない。
我慢しなきゃ……こんなところで――紫萌ちゃんの前で失敗なんてしたくない。


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