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おもらし千夜一夜4
20
:
事例6「紅瀬 椛」と夏祭り。-前編-⑤
:2014/04/17(木) 19:31:49
――
――
「いっぱい回ったねー」
弥生ちゃんがカキ氷を食べながら満面の笑みを見せる。
ちなみにこのカキ氷は2つ目、その前には喉が渇いたとかでラムネも……。
唯でさえトイレ近いのに大丈夫なのだろうか?
「ん……あ、ちょっと私お手洗い行ってきますね!」
……案の定大丈夫じゃなかった。
ただ、走っていった仮設のトイレが余り込んでいないのは残念。
まだ、祭りが賑わって来る時間帯では無いし、祭りに来てすぐトイレに駆け込む人も少ないのだろう。
「私も一応行って来るけど、あやりんはどうする?」
まゆが私にそう問い掛ける。
「……私はいいよ、家出る前に済ませたし」
それに、今してしまうとこの後『声』が聞けなくなる。
折角の祭りって言うイベント事だし、『声』を聞かずに普通に過ごすだけって言うのはちょっと勿体無く感じる。
……そういう発想になる私って……。
まゆは私の言葉を聞いて、「じゃあ、此処で待ってて」と言い残し弥生ちゃんの後を追った。
私はなんとなく視線を上に向けると、空が赤から黒に変わり始めていた。
「――綾菜さん?」
聞き覚えのある声がして、視線を空から声の聞こえたほうへ移す。
「……あ、皐先輩」
そこには綺麗な長い金髪で、ハーフアップの髪が上品な印象を与える生徒会長様がいた。
「やっぱり! ……えっと、御一人ですか?」
「……あ、いえ、友人と3人で来てます……皐先輩は一人なんですか?」
「いえ、後で椛さんと合流予定です」
――あぁ、なるほど、椛さんか。
それは聞き覚えのある名前。
生徒会副会長であり一応小学生の頃からの顔なじみ。
とはいえ、最近は疎遠気味だけど。
でも、まさか皐先輩と椛さんが祭りを二人で回るほど仲が良いとは思っていなかった。
――にしても……椛さん――か。
学年は違ったけど、昔は凄く仲良かった。雪姉を交えてよく3人で遊んでいた。
弥生ちゃんと同じく幼児体系だけど、クールで仕事とかの要領が凄く良くて、それでいて、気さくなところもあって、なんか色々と凄い人だった。
憧れ……って言うほどではなかったけど、尊敬できる人。
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