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かもめJP@
:2013/05/29(水) 11:46:36 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第一章 入部期間、一ヶ月
1
和乃たちが体育館に着くと、既に二、三年生の生徒たちが整列していた。
和乃は周りをきょろきょろと見回し、黒髪美人とポニーテール先輩を探してみる。すると、二年生の列(何組かまでは分からない)にポニーテールの少女を発見した。向こうも和乃に気付いたようで、笑顔を向けながら小さく手を振ってくる。和乃もそれを手を振って返す。
結局黒髪美女見つからずに、和乃は小さく溜息をついた。
まだ自分の出席番号を完全に把握していないためか、列は番号順ではなく二列なら好きに並んでいいことになったので、和乃は玲花と並ぶことにした。
壇上では校長先生が話している話していることの九割を聞き流していた和乃だが、
『えー、じゃあここで新入生代表から挨拶がある。本来は無いのだが、本人に強く熱望されてな』
ほー、と和乃は心の中で感嘆の声を漏らした。
若いのに大したもんだ、と妙に上から目線の感想を抱く。すると、隣の玲花が小声で耳打ちするように声をかけてくる。
「そーいや、新入生代表って受験で一番点数良かった人らしいよ」
「ってことは、今から上に上がる人は一年生で一番頭いい人?」
こくりと玲花が頷く。
すると和乃は『頭のいい人』を思い浮かべる。が、どうしても男の人で、細身の眼鏡をかけた根暗な感じの人しか思い浮かばなかった。女子も想像してみたのだが、ショートカットで眼鏡をかけており、校則や規律にうるさそうな委員長タイプの女子しか思い浮かばない。
どんな人かな、というちょっとした期待を胸に抱き壇上を見上げる和乃。
壇上に上がった新入生代表を見て和乃は絶句した。
長い黒髪に端整な顔立ち。一年生とは思えないような雰囲気を纏う美少女だ。
和乃は彼女を知っていた。いや、忘れるはずもない。彼女は登校中に和乃が出会い、ずっと探していた例の黒髪美女なのだから――。
黒髪美女は壇上のマイクが置いてある机に両手をつき、マイクに口を近づけて力強く挨拶をする。
『新入生代表の一年四組、星河結(ほしかわゆい)です。この学園の理事長の孫にあたりますが、普通に接してくれて構いません。同級生ならばタメ口で話してくれて構いませんし、先輩ならば命令口調でも大丈夫です。この学園は部活動に特に力を入れていると祖父から聞きました。その数は少なくとも三十以上あるとか。そして生徒は一ヶ月以内に必ず何らかの部活に入部しなければならない』
黒髪美女――星河結は一拍開けて、
『先輩方は大丈夫だと思いますが、一年生の皆さんも先輩たちに負けないように精進してください。以上です』
言うと結は長い黒髪をなびかせるように身を翻して、壇上を下りる階段へと向かう。
新入生は勿論、二、三年生も言葉を失っていた。
彼女の言葉を聞いた和乃は絶句していた。隣では玲花が引きつった表情を浮かべている。
「……うわー、中々強烈な人だねー……」
「ねえ玲花。なんか男子数名は恍惚の表情を浮かべてるんだけど……」
「あー、そういう趣味の人なんでしょ。あんな美人にあんな風に言われたらそりゃあ……目覚めるでしょ」
あえて『何に』目覚めるかは言わない玲花。言わなくても和乃もなんとなく分かった。
しかし、和乃はああやって思っていることを素直に声に出せる彼女を少し羨ましく思った。
――星河……結――
彼女の名前を口の中で小さく反芻した。
それから始業式は終わり、生徒たちは三年生から順に体育館から退出していった。
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