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放課後デイズ

1かもめJP@:2013/05/25(土) 23:44:05 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 はじめまして、かもめJP@@ですっ!

 呼び方は好きな呼び方で。変な縮め方でも構いませんよ! たとえば『もめ』とか『アット』とか。あだ名で読んでくれるだけで嬉しいっすから!

 ↓はルールです。
・荒らしはやめてください。来ても無視します。
・パクリ、盗作などもお控えください。……私の駄作を真似する方はいないと思いますけど。
・私自身もパクリや盗作などはしていないつもりですが、気になる箇所があればお伝えください。
・コメント、アドバイスなど常時受け付けております! あ、でもあんま辛口なこと言われるとメンタルが豆腐よりもろいので……。なるべくお手柔らかに((

 それでは、次のレスからスタートですッ!!

2かもめJP@:2013/05/26(日) 00:16:21 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

序章 高校生活の幕開け

 一人の少女が、自分の部屋にある鏡で念入りに身だしなみをチェックしている。
 髪が跳ねていないか。寝癖はちゃんと直っているか。目の下にクマができていないか。初めて着る制服はきちんと着こなせているか。
 今日から高校生となる桜宮和乃(さくらみやかずの)は鏡の前でこれでもか、というほどチェックを重ねる。
 淡い桃色の髪を肩より少し伸ばしており、左耳の上辺りに五枚の花びらのある花の髪飾りをつけている。瞳は大きく、背丈は小柄。割とどこにでもいるような少女だ。
 彼女が通うのはここから徒歩十五分ほどで着く、割と近場にある高校だ。
 私立星河学園(しりつほしかわがくえん)。
 入学者はやむを得ない特別な条件が無い限り、一ヶ月以内に必ず部活に入部しなければならない、という校則がある高校である。
 星河学園は運動部は大会などでいい成績を残し、文化系の部活は数々の賞を受賞したりと中々レベルが高い高校だ。そんな高校にぜひとも入学したい、と思う生徒も少なくない。逆に、単に制服が可愛いから、という安直な理由で入学しようとした和乃の方がイレギュラーといえるだろう。
 彼女は小学生から中学生まで部活動は一切行っていないし、塾や習い事があったというわけでもない。しかし、星河学園ならば。数多の部活が存在するこの学校でならば、自分のやりたい部活もあるのではないか! と思ったのも彼女が受験する一つの理由となったのだ。
「……よし!」
 彼女は胸の前で小さく拳を作り、身だしなみに納得がいったように声を上げた。
 新しい学生鞄を両手で持ち、二階の自分の部屋から一階の玄関まで駆け足で降っていく。新しい高校生活への期待が高まり、うずうずしてじっとしていられないのだ。本来ならば走らなくても十分間に合う時間から始業式は行われるのだが、今の彼女は走らずにはいられなかった。
 友達が出来るかな。思い出を作れるかな。恋とかしちゃうかな。彼氏とかできるかな。などと色んな思いを胸に抱きながら、彼女は『いってきます!』と大きく言ってから扉を開けて走っていく。
 
 走って数分、ようやく学校までの道の半分辺りに達した。
 本来ならば休みなしで走り続けるとへばってしまうような体力が並より少し下の和乃であるが、不思議と今日はそうはならなかった。そこまで高校生活が自分を掻き立てているのか。息は切れているものの、疲れは襲っては来なかった。
 しかしそこへ、右側の一本道から人影が出てくるのが目に映った。その人物との距離は既に目と鼻の先。今からスピードを緩めても、衝突は避けられない。
 想像通り、ドンッ、と人影とぶつかり二人の短い悲鳴が重なる。反動で和乃の身体が大きく後方へと傾いた。これは転ぶ、と確信した瞬間――、
 がっ、と。彼女の腕が不意に掴まれた。和乃は驚いて数秒きょとんとした。
 自分の腕を掴んでいたのが目の前にいる人物、つまりは和乃とぶつかった人なのだから。
「大丈夫?」
 目の前の人は和乃にそう問いかけた。
 長い黒髪を持つ美少女だった。その髪は腰より長く、目はやや鋭いながらも、彼女の雰囲気によく似合っていた。恐らくは同じ高校生だろう――同じ制服を着ている。が、彼女の持つ大人びた雰囲気と妖艶な容姿からとても同い年には思えなかった。胸も貧相な和乃に比べ結構ある。確実に先輩だと和乃は確信した。
 和乃は体勢を立て直し、ぺこりと頭を下げた。
 黒髪の少女は安堵したように息を吐いた。表情は一切崩れず、笑みは一瞬も見せない。だが、冷たいイメージはない。どう表現すればいいのか、和乃の乏しい語彙では適切な言葉が浮かばなかった。
「……気をつけてね。それと……あなたも星河学園の生徒なの? 新入生?」
「え、あ、はいっ! 今日から星河学園に通うことにあんります、桜宮和乃ですっ! よ、よろしくお願いします!」
 黒髪の少女は、和乃が何故ここまでかしこまっているのか分からない、といった様子で首を傾げていた。
 しかしやがて、そう、と短く返事を返すと身を翻して学園の方へと歩いていった。
「ここからならよっぽど遅く歩かない限り遅刻はしないわ。周りをよく見て、気を配りながら歩きなさい」
 言いながら黒髪の少女は去っていった。
 その背中を見つめながら、和乃は羨望の眼差しを向けながら吐息を漏らしていた。
「……美人だなぁ。三年生かな? あんな人が生徒会長だったらいいなぁ。あの人が生徒会の人なら、わたし生徒会に入ろう! お近づきになりたい! ついでに美人になる方法も……!」
 そこで和乃はハッとして学園を目指す。
 十分間に合う距離と時間ではあるが、彼女は再び走り出したい衝動に駆られてしまう。が、

 黒髪少女の忠告を思い出し、早歩きではなく普通に歩きながら、周りに気を配りつつ学園へと向かっていった。

3水無月:2013/05/26(日) 01:19:01 HOST:pw126205002207.3.panda-world.ne.jp
読まさせていただきました。
まだ始まったばかりなのですが、今後の展開を楽しみにしております。
これからも頑張ってください。

4立夏:2013/05/26(日) 06:47:43 HOST:om126192007175.1.openmobile.ne.jp
面白いです!
更新頑張ってください♪

5かもめJP@:2013/05/26(日) 11:05:34 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 >水無月さん

 コメントありがとうございます。
 始まったばかりで多分序章が三レスくらい続くと思いますが……、ご了承くださいw
 はい、頑張らせていただきますっ!


 >立夏さん

 コメントありがとうございます。
 面白いと言っていただけてうれしいです! 自分自身あまり自信がなかったものでw
 更新頑張らせていただきます!

6かもめJP@:2013/05/26(日) 11:26:32 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

「着いたー!」
 謎の黒髪少女と出会い、さらに歩くこと数分。和乃は星河学園の正門に到着した。
 正門から校舎までは長い一本道になっており、左右は大きな気が一列に並んでいる。そして、その一本道には今たくさんの人がいた。
 チラシを持っている生徒や、ユニフォームを着た生徒、更にはコスプレまでしている生徒までいた。彼らの目的は恐らく部活勧誘だろう。部活動が多い、ということは始業式にこうやって勧誘する人物も多いということになる。
 真ん中を歩いていくしかないのだが、生徒がひしめき合っているせいで歩きにくい。しかもこんな勢いで部活を勧められたらきっとテンパってしまう。
 どうしよっかなー、と和乃が悩んでいるとふと後ろから声を掛けられた。
「今年もやってるねー! 皆目が怖いけど、頑張ってるね」
 和乃が振り返ると一人の少女が立っていた。
 同じ制服を着た少女だが、口ぶりからして新入生ではないようだ。黒ぶちの眼鏡をかけており、深い紫色の髪を後ろで一つにくくっている。にも関わらず、髪は腰まで伸びていた。
 彼女の声は聞き取りやすく、目の前で部活勧誘が盛り上がっているにも関わらず、彼女の声はすぅっと耳に入っていった。
 和乃がどう反応すればいいのか困っていると、ポニーテールの少女は和乃の手を取り一本道の中を歩いていく。
「え、ちょ……!?」
「一本道の前で立ち止まる生徒を見ると可愛くってねー! ついつい手助けしたくなっちゃうのさー!」
 ポニーテールの少女は左右から配られるチラシや勧誘の言葉に、和乃が反応するより早く通り過ぎていく。一本道の途中から部活の勧誘の列はなくなっていた。校舎まで約五十メートルといった距離だ。
 あのまま一人であの道をくぐっていたらどうなっていただろうか、と考えるときっと全てチラシを受け取って流されるがままになっていたかもしれない。押しに弱いのが和乃の欠点である。
「ここまで来ればあとはもう大丈夫だね! クラスは入学式の時に知ってるでしょ? 行き方分かる? 一年生の階は三階だよ?」
「はい、大丈夫です……」
 ポニーテールの少女は和乃が心配でしょうがないのか、やたらと世話を焼いてくれる。こういう先輩がいてくれたら心強いなぁ、と思いながら彼女と同じ部活に入ろうかな、とほのかに思っていた。
 すると少女はポケットから一枚のチラシを取り出す。もしかして部活の勧誘か、と思いどきっとする和乃だったが、相手が渡してきたのは部活勧誘のチラシではなかった。
 紙の一番上には『部活動一覧』と書かれており、運動部と文化部が左右で分けられている。
「私は新入生にこういうのを配っているのさ。良かったら使ってよ! あ、私ちょっと部活に用事あるから行くねー」
 彼女はチラシを和乃に渡すと、手をひらひら振りながら去っていってしまった。
 和乃は彼女の背中を見送りながら、ポツリと呟いた。
「……あんな人の同じ部活だったら楽しいだろうなぁ……。さっきの黒髪美人とポニーテールの先輩、同じ部活だったりしないだろうか?」
 やはり黒髪少女のことは諦められないのか、一人でぶつぶつ呟きながら和乃は自分の教室、一年七組へと向かっていく。

7かもめJP@:2013/05/26(日) 13:32:39 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 和乃は教室の扉の前でゆっくり深呼吸をする。
 彼女の出身中学で星河学園を受けたのは彼女だけなので、知り合いも友達も一から作らないといけない状況なのだ。仲の良い友達を作って、学校生活を快適に過ごす。部活動よりもそっちを先に何とかしないといけない。
 和乃は意を決し、勢いよく扉を開ける。
 ――と見せかけて、やや遠慮がちにゆっくりと扉を開けていった。
 そろっと中を見回すと十人程度の生徒が既に自分の席に座り、本を読んだり、携帯電話をいじったり、クラスメートと話したりとそれぞれ始業式までの時間を過ごしている。
 和乃は黒板に貼られている座席表に目を通し、自分の席へと向かっていく。窓際の前から三番目の席。場所的には全然悪くない場所だ。欲を言えば一番後ろが望ましかったが。
 自分の席まで歩き、鞄を机の上において席に座って溜息をつく。すると、前の席の女子がこちらを向いて気さくに声を掛けてきてくる。
「おっはよ! 席前後だからよろしくね!」
 不意に声をかけられたため、和乃は思わずびくっとしてしまう。
 前の席の女子は肩くらいの金髪をした少女だ。髪の左側を耳の上にかけ、ヘアピンで留めている。一見して快活そうな少女であり、同性の和乃から見ても中々の美少女だ。
 少女の言葉に『どうも』と引きつった表情を浮かべながら、短く返事を返す。これは会話打ち切られそうだなー、などと思っているとその少女はくすっと笑って、
「どうもって……それじゃ会話打ち切られるよ?」
 まさか思ってたことを言われるとは思っていなかった。
 返しづらい返事をしたにも関わらず、それでも会話を続けてくれる彼女はきっと優しいのだろう。少女はにっこりと笑って自己紹介をする。
「あたしは小野塚玲花(おのづかれいか)。よろしく」
「あ……桜宮、和乃です……」
「桜宮さん、ね。あたしのことは玲花って呼んでいいから」
「じゃあ、わたしも和乃でいいよ」
 はにかみながら和乃はそう言う。玲花は小さく笑って、改めてよろしくと言った。
 すると玲花は頬杖をつきながら、教室中を見回して、
「いーなー、みんなは。中学の頃の友達とかと一緒でさー」
「玲花も同じ中学の子いないの?」
「そだよー。ってことは和乃も?」
 言葉で察したのか、僅かにきょとんとした表情で聞く玲花。和乃が頷くと玲花はにっと笑って、
「じゃあお互い友達第一号だね! 一応クラスの人ほとんどに声かけたけど、なっかなかなじめなくてさー」
 それを聞いた和乃は素直にすごいなー、と思ってしまう。
 自分だったらクラスの人に声を掛けるなんて絶対に出来ない。人見知りということもあって、相手から声を掛けてくれなきゃ自分から話すこともない。しかも一つのことに一つしか返さないので、会話も全く進展せず終わってしまうことがほとんどだ。
 和乃は教室を見回して、『ほとんどの人に声を掛けた』という玲花を改めてすごいと思った。
 十人程度しかおらず、数としてはそんなに多い方ではない。だが、廊下側の列の一番後ろの席に座っている人物が異様だったからだ。異様、というよりは雰囲気が明らかに違った。
 黒髪の少年だ。静かに本を読んでいて、綺麗な顔立ちをしている。一目見れば女子と間違えてしまいそうだが、今の彼を見てそう思う者は恐らくゼロだ。ただ本を読んでいるだけのなのに、目つきがかなり鋭い。目が合うと固まってしまいそうなくらいだ。
 和乃が少年を見て固まっていると、視線の先にいる少年に気付いたのか玲花が『あー』と疲れたような声を漏らした。
「……彼は無理だった。話しかけようとしたら睨まれたし」
「……名前とか、分かる?」
「……えーとたしか……鹿野忠次(かのただつぐ)くん、だったかな……」
 和乃は心で彼の名前を反芻し、じっと彼を見つめた。一瞬睨まれた気がしたので、すぐに目を逸らしてしまったが……。
 やがて教室にはクラスメートが全員集まり、教師も入ってくる。
 始業式が始まる放送が流れ、教師の先導にしたがい和乃たちは体育館へと向かっていった。

8たっくん:2013/05/27(月) 18:50:11 HOST:zaq31fa58c8.zaq.ne.jp
白人女性っていいですね〜
まあ、ピーチさんおよび、かもめさんには
到達できない領域ですが

まあいいでしょう。

9凜×3:2013/05/28(火) 20:43:42 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
かもめさん>

面白そうなんで、読んでみました。
とても、面白いと思います!
鹿野忠次気になりますね。
頑張ってください!
応援してまーす。

10かもめJP@:2013/05/29(水) 11:14:38 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 凛さん>
 コメントありがとうございますw
 面白いと言ってくださって嬉しいです^^
 鹿野くんは活躍してくれる……はずですw
 はい、応援を励みに頑張らせていただきますw

11かもめJP@:2013/05/29(水) 11:46:36 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 第一章 入部期間、一ヶ月

 1

 和乃たちが体育館に着くと、既に二、三年生の生徒たちが整列していた。
 和乃は周りをきょろきょろと見回し、黒髪美人とポニーテール先輩を探してみる。すると、二年生の列(何組かまでは分からない)にポニーテールの少女を発見した。向こうも和乃に気付いたようで、笑顔を向けながら小さく手を振ってくる。和乃もそれを手を振って返す。
 結局黒髪美女見つからずに、和乃は小さく溜息をついた。
 まだ自分の出席番号を完全に把握していないためか、列は番号順ではなく二列なら好きに並んでいいことになったので、和乃は玲花と並ぶことにした。
 壇上では校長先生が話している話していることの九割を聞き流していた和乃だが、
『えー、じゃあここで新入生代表から挨拶がある。本来は無いのだが、本人に強く熱望されてな』
 ほー、と和乃は心の中で感嘆の声を漏らした。
 若いのに大したもんだ、と妙に上から目線の感想を抱く。すると、隣の玲花が小声で耳打ちするように声をかけてくる。
「そーいや、新入生代表って受験で一番点数良かった人らしいよ」
「ってことは、今から上に上がる人は一年生で一番頭いい人?」
 こくりと玲花が頷く。
 すると和乃は『頭のいい人』を思い浮かべる。が、どうしても男の人で、細身の眼鏡をかけた根暗な感じの人しか思い浮かばなかった。女子も想像してみたのだが、ショートカットで眼鏡をかけており、校則や規律にうるさそうな委員長タイプの女子しか思い浮かばない。
 どんな人かな、というちょっとした期待を胸に抱き壇上を見上げる和乃。
 壇上に上がった新入生代表を見て和乃は絶句した。
 
 長い黒髪に端整な顔立ち。一年生とは思えないような雰囲気を纏う美少女だ。
 和乃は彼女を知っていた。いや、忘れるはずもない。彼女は登校中に和乃が出会い、ずっと探していた例の黒髪美女なのだから――。

 黒髪美女は壇上のマイクが置いてある机に両手をつき、マイクに口を近づけて力強く挨拶をする。
『新入生代表の一年四組、星河結(ほしかわゆい)です。この学園の理事長の孫にあたりますが、普通に接してくれて構いません。同級生ならばタメ口で話してくれて構いませんし、先輩ならば命令口調でも大丈夫です。この学園は部活動に特に力を入れていると祖父から聞きました。その数は少なくとも三十以上あるとか。そして生徒は一ヶ月以内に必ず何らかの部活に入部しなければならない』
 黒髪美女――星河結は一拍開けて、
『先輩方は大丈夫だと思いますが、一年生の皆さんも先輩たちに負けないように精進してください。以上です』
 言うと結は長い黒髪をなびかせるように身を翻して、壇上を下りる階段へと向かう。
 新入生は勿論、二、三年生も言葉を失っていた。
 彼女の言葉を聞いた和乃は絶句していた。隣では玲花が引きつった表情を浮かべている。
「……うわー、中々強烈な人だねー……」
「ねえ玲花。なんか男子数名は恍惚の表情を浮かべてるんだけど……」
「あー、そういう趣味の人なんでしょ。あんな美人にあんな風に言われたらそりゃあ……目覚めるでしょ」
 あえて『何に』目覚めるかは言わない玲花。言わなくても和乃もなんとなく分かった。
 しかし、和乃はああやって思っていることを素直に声に出せる彼女を少し羨ましく思った。
 ――星河……結――
 彼女の名前を口の中で小さく反芻した。
 それから始業式は終わり、生徒たちは三年生から順に体育館から退出していった。

12かもめJP@:2013/06/02(日) 00:50:38 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 2

 教室に戻り、教師から諸連絡を受けた生徒たちはそれぞれ帰り支度を始めていた。
 早々に帰る準備を済ませた玲花は一八〇度角度を変えて、和乃の方へと向く。
「和乃ー。帰りついでにどっかっでお昼食べない? 部活のこととか考えながらさー」
「いいね! それ乗った!」
 高校生活最初の友達からの誘いを受け、和乃は玲花と一緒に教室を出た。下駄箱で目つきが怖い鹿野忠次とすれ違ったが、目を合わせることも出来ずにそのまま通り過ぎていった。
 色々な店が立ち並ぶ一角に辿り着き、二人はチェーン店であるファーストフード店でお昼を食べることにした。
 それぞれ好みの品を選び、席に向かい合うように座ると玲花が大袈裟なテンションで口を開いた。
「じゃあ! 第一次部活選考会を始めたいと思います!」
「玲花、声大きいよ……」
 玲花が予想以上に大きな声で話し始めたため、店内にいる客のほとんどが和乃と玲花の方向を向いた。一気に注目を浴び、少し恥ずかしくなった和乃は人差し指を口元に当て、玲花に声のトーンを落とすように促す。
 玲花はやれやれ、といった調子で溜息をつくと頬杖をつきながら和乃に声をかけた。
「で、和乃はどんな部活に入りたいの?」
「うーん、まだ具体的には……そうだ! 登校中に会った先輩にこんなのもらったよ」
 すると、和乃は鞄の中から一枚の紙を取り出した。それをテーブルの上に広げる。
 彼女が取り出したのはポニーテールの先輩からもらった部活一覧表だ。運動部と文化部に分けられていてかなり見やすいものになっている。
 それを見た玲花がほう、と小さく声を漏らしてから、
「なんでもっと早く出さなかったの?」
「うぅ、忘れてたの」
「まあいいわ。ってか、これ見ても分かるけどやっぱ多いわね。新入生代表の星河さん、だっけ? あの人が言ったとおり本当に三十以上あるね」
 玲花は溜息混じりに紙を見つめて思わずそう呟いてしまった。
 和乃もこの紙を見た時は驚いた。しかも字体がどう見ても手書きの文字である。紙自体はコピーしたもののようだがこの数を全部手書きにしたというのならば相当な労力だったに違いない。
 じっと運動部の項目を見つめていた玲花が驚いたように『わっ』と声を上げた。
 和乃が首を傾げて玲花を見つめていると、視線に気付いた玲花が運動部の二つの項目を指差しながら言う。
「アメフト部とラグビー部だって。ちょっとした違いがあるんだろうけど……」
「ややっ? 同じような部活でもルールがちょっと違うと独立するんだねぇ」
「こりゃ部活数の多さも頷けるわ」
 運動が苦手で、文化系の部活に入部することを決めていた和乃は文化部の項目に目を通しながら、
「でもよく分からない部活もあるよ。占い部とか」
「活動目的が分かるようで分かんないわね。あと、なにこれ? ぬいぐるみ同好会……? 部活じゃないし」
 見てみたら正式に部活になっていないものも存在するようだ。現在存在する部活および同好会は星河結の発言より多い、四十七。その中で正式な部として認められていないのが十二。名前は同好会や愛好会といった形にされている。
 生徒手帳を見たら、新しく部活を作るには五人以上の部員が必要らしい。同好会や愛好会のところは、五人以上に満ちていないのだろう。
「そうだ、和乃。入りたいのがないなら、あたしたちで部活作らない?」
「……わたしたちで?」
 きょとんとした表情で聞き返す和乃。玲花は力強く頷いて、
「そう! 他に三人誘って、あたしたちのやりたいことだけを出来る部活! それなら楽しそうじゃない?」
 にこっと笑いながら玲花は言う。
 和乃はうーん、と小さく唸ってしばらく考え込むと、結論が出たのか小さく頷いてみせた。
「決まらなかった時の極論ね! 決まったらなしだよ?」
 答えを聞いた玲花は嬉しそうに表情を綻ばせると、
「わーお、和乃から『極論』って難しい言葉が出てきたよー。すごーい」
「ちょっと玲花、それってどういう意味かな!?」

13かもめJP@:2013/06/05(水) 14:23:55 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 3

 和乃と玲花は四時くらいに別れた。
 和乃としては時間的にまだまだ全然余裕があったが、玲花は高校では寮で生活をするらしく、そろそろ荷物が届くだろうから荷解きをしないといけないらしい。一人暮らしに若干の憧れがある和乃だが、両親から『お前じゃ無理だ』と言われ、大学を卒業するまでは一人暮らしは許されていない。
 このまま家に帰っても良かったのだが、家に帰ってもすることがない。彼女の家族構成は父、母、姉、弟の自分を含めて五人構成だが、姉は現在不在である。両親の帰りも遅いため、家事の全般をこなしている和乃だが、晩御飯の支度をするにもまだ早い。家に帰ってひとまず寝ようとしたら、そのままずっと寝てしまいそうな気もする。
 彼女は特に何かを買うわけでもないのだが本屋に立ち寄ることにした。彼女は、趣味でよく本屋へと足を運ぶことが多い。
 和乃はすぐに少年漫画のコーナーへと足を踏み入れる。個人的に少女漫画より少年漫画の方が、和乃の好みの作品が多い。
「ややっ?」
 和乃は見覚えのあるタイトルとキャラクターが描かれている漫画を手に取った。発売日はごく最近のものだ。週刊誌連載のその漫画は立ち読みをしていた作品で、最近は立ち読みすらもしていなかったので、話が全く分からなくなっていたのだが……。
「……もう最終巻かあ。結構好きだったのになあ、これ」
 三年目で連載終了。和乃としてはちょっと早い気もするが、打ち切りなのだろうか、と適当に解釈した。
 和乃は右側に移動し、本棚の上の方にある漫画を並べている。気になった作品を手に取って、内容と絵が気に入れば買おう、と思っていた。
 そして少し惹かれるタイトルが目に入った。和乃はその漫画へと手を伸ばしもうちょっとで掴みそうなところで、

 不意に、右側にいた他の客と手がぶつかった。

「あっ……」
 まずい、と思って和乃は右側を向くとほぼ同時、勢いよく頭を下げて謝罪した。
「すいません! 周りを見てなかったもの、で……」
 和乃は顔を上げる。
 そして戦慄した。
 手がぶつかった人物を、和乃は知っていた。よく知っていた、といえないほどだが、名前は知っている。今日の朝に玲花から名前を聞いていたから。
 黒髪の何処か女性的な顔立ちを思わせる美少年。だが、目つきは鋭く目さえ隠せば女性といわれても何の違和感も無い少年……鹿野忠次がそこにいた。
「……あ……」
 和乃は固まってしまった。表情が引きつる。どういう表情を浮かべれば正解かが全く分からない。
 一方で、相手の鹿野忠次はこちらをじっと見つめている。身長差のせいか、相手はただ見下ろしているだけなのだろうが、彼の目つきの鋭さから何処となく見下されている気がする和乃。
 とりあえずすぐにここから去ろうと思い、和乃はゆっくりと後ずさって行く。すると、
「――あの」
 彼から声を掛けられた。
 思いもよらない言葉だった。『おい』や『待て』とかじゃなく、『あの』というこれから敬語でも話しそうな呼びとめ方だった。
 和乃はぎくっとして動きを止める。すると、鹿野忠次は目つきを鋭いものから、優しさの宿るものへと変えて、
「……えっと、同じクラスの人……ですよね?」
 敬語で話しかけられた。
 彼への『怖い』というイメージが一瞬で消え去った。和乃も身体の緊張を解いて、戸惑いがちにこくりと頷く。
 すると、彼はホッとしたように息をついて、和乃の目の前まで歩み寄る。
「……時間、あります?」
「……少し、だけなら……」
「じゃあ、ちょっと話しませんか?」

 彼にしては、和乃が抱いていた鹿野忠次のイメージとはかけ離れた優しい口調だった。

14かもめJP@:2013/06/08(土) 08:37:28 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 4

 鹿野忠次と少し話すことになった和乃は、彼と一緒に公園のベンチまで歩いていった。すぐそこの自販機で飲み物を買ってくる、と言われたので現在ベンチに座っているのは和乃だけである。
 彼女はベンチにちょこん、という効果音が似合いそうな様子で座っている。
 それから彼女は小さく溜息をついた。
「……話したいって言ってたけど、何だろ? もしかして告白っ!?」
 周りの目も気にせず一人で妄想を膨らませる和乃。
 幸い周りにはほとんど人がいなかったため、気恥ずかしい気分になることはなかったが、聞かれていたらただの痛々しい女の子、という判定になっていただろう。
 少し忠次の話に密かな期待を寄せていたが、やがて我に帰り、先程よりも大きな溜息をついた。
「……さすがにないよね、それは。話し始めて一時間も経ってないし、一目惚れなんてしないよね。……そんな可愛い方じゃないって自覚済みだし……」
 最初は自嘲気味に言って寂しさを誤魔化したものの、そんなものでは拭えない。
 自分で言って哀しくなったのか、妙に泣きたい気分に駆られる和乃。そこへ、横合いから声を掛けられた。
「どうぞ」
 声は忠次のものだった。彼は片手に一個ずつ缶ジュースを持ており、片方の飲み物を和乃に渡す。
 和乃はそれを受け取ると小さくお礼をする。缶のふたを開けようとしたところで、隣座った忠次の持っているジュースをじっと眺める。
 その視線に気付いた忠次が困ったような表情を浮かべながら、
「……何か?」
「えっ!? あ、いや、別に……」
 聞かれた和乃は上擦った声をあげ、焦りながら目を逸らす。が、ちらっちらっと忠次の持っているジュースを眺めている。
 大体のことを察したのか、忠次は持っているジュースを和乃に差し出し、
「交換しますよ?」
「……ありがと」
 自分のジュースと和乃のジュースを交換する。
 和乃としては、普通のオレンジジュースよりも炭酸飲料の方が好みである。そのせいで身長が低かったり、(主に胸の)発育がよろしくなかったりと彼女にとっていいことはないのだが。
 和乃はふたを開けて一口ジュースを口に含むと、小首を傾げながら問いかける。
「で、話って何?」
「……ちょっと気になりましてね」
 彼のその言葉に和乃は少しドキッとする。
 この場合の『気になる』とはああいう意味だろうかいやしかしついさっきまで自分でそういうのはないだろうなと思っていてそんなことがあっていいのだろうかしかし気になると言ってきたからにはそういうのを期待しても罪じゃないよね、などと和のが考えていると、忠次がこちらを真っ直ぐ見つめていることに気付く。そこへ、彼の言葉の真意を探る思考が上乗せさせられ、妙に意識してしまう。
 忠次は口を開く。
「……桜宮さん、ですよね?」
「……は、はい……」
「桜宮さんは僕のこと――」
 どう思いますか? という質問が来ると和乃は確信していた。
 どう答えようかと迷っていた。まだ好きとも嫌いとも言えない。だが、嫌いではない。よく見れば彼もそれなりにカッコいいと思うし、始業式の日に彼氏が出来るのなら、それが彼ならいいだろうと思ってしまう。
 彼の質問への答えを決め、彼の質問を和乃は待っ――

「僕のこと、怖いですか?」

 …………………………………………………………。
 は い ?
 それが第一の答えになってしまった。それもそのはず、自分が思っていた質問と全く違ったのだから。ちっとも惜しくすらなかった。
「……え、えと……」
 思わず悩んでしまう和乃。さっきまで怖いと思っていたが、話してみるとそうでもないことが分かった。これは正直に答えるべきだろうか、と考える和乃に忠次は、
「いや、教室にいる時から何度か目が合ったんですけど、すぐに逸らされていたので怖いのかなー、と」
 最早苦笑いしか出来ない和乃。
 自分の妄想力に哀しさを覚え、和乃はそこから俯いてしまう。

15日陰:2013/06/08(土) 17:57:48 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 初めまして、日陰(ヒカゲ)です!

 題名の『放課後』と言うのと『デイズ』と言うのに惹かれてやって来ました!

 当初「カゲロウデイズみたいな話かにゃ〜?(´・ω・`)」と思って読んでみたら……

 お話が『放課後ストライド』と似ていてビックリ!

 何だ、この文才……何だ、この萌え要素……何だ、この負けた感がただものじゃないのは……

 とか、思いながら全てを読破いたしましたぁ(*°∀°)=3((ドヤッ

 とっても面白いです! 

 そして、和乃ちゃん……ドンマイ……←

 告白……っね……うん……

 私も途中まで期待してた……←

 今後、学園ラブストリー(??)に転がっていくのか、とっても気になります!

 頑張って、更新していってくださいね!

16かもめJP@:2013/06/08(土) 23:50:00 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 日陰さん>

 コメントありがとうございます!

 題名の全てに興味を持ってくださって嬉しいです! ぶっちゃけ題名はいいのが思いつかなかった苦肉の策です。個人的にはあんま好きじゃないのですが……。

 はい、放課後ストライドにすごく影響されまして、モチーフにはなっています。部活の入部までの期間は妥当なので一ヶ月に……。
 学園ものはほぼ初めてなので、暖かい目で見守ってください((

 文才はまだまだ及ばぬものがあります……。萌え要素、だと……? 私の作品に可愛いキャラなんていないはずなんだがっ!?
 強いて言えばまだ玲花ちゃんは可愛く書いているつもりです……。伝わりすらいでしょうけどw
 一気に読んでいただき嬉しいです^^

 和乃ちゃんは多分これからどんどん残念な子になっていきますw
 区切りが一つつくまではアホまっしぐらですからw

 ジャンル的には学園ラブコメディになりそうですねぇ……。
 ああ、今のところ出てきた女性キャラでまともな恋愛は望めない気がしてきた……。

 はい、期待に沿えるよう頑張らせていただきますっ!

17かもめJP@:2013/06/09(日) 00:07:44 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 和乃は忠次に言われて、自分が彼から目を逸らしていたことに気付く。
 ほぼ無意識ではあったものの、若干の意識はしていた。『目を合わせたくない』とか『目が合ったら何かされそう』と思ったからでもある。
 俯きながら悪いことしたなぁ、と思う和乃は少し顔を上げながら忠次に言う。
「……わたし、今は鹿野くんのこと怖いと思わないよ? 教室では目つきが怖かったから……」
 そこで和乃はっとする。
 何故今の忠次は怖いと感じないのか、という理由に気付いたのだ。
 教室の彼と今の彼とで圧倒的に違うところ……それは目つきだ。
 教室での彼は今にも射殺しそうな瞳をしていたが、今の彼は極めて穏やかな目つきだ。イメージ的には困ってる人は見捨てないような、横断歩道などで困っているおばあちゃんに手を貸しそうだ。
 和乃は忠次に問いかける。
「ねえ、教室ではなんであんな怖い顔してたの?」
 それが原因で目を逸らしてしまったのだが、どうしても気になった和乃は思い切って訊ねてみた。
 忠次は困ったような表情を浮かべながら、言葉を慎重に選びながら答える。
「……人付き合いが苦手なので……話しかけられないように……」
 そりゃあ誰も近づかんわ、と思ったがあえて口にはしなかった。
 だが、彼の気持ちが分からない和乃ではない。自分だって玲花に声を掛けられるまでは机に突っ伏して寝ているふりでもしようかな、と思っていたりしたのだ。
 和乃は彼の目つきの理由を知ると、にこっと笑って彼の肩に手を置いた。
「じゃあ、わたしが鹿野くんの友達一号になる! 明日、玲花も紹介してあげるね!」
「えっ……でも、僕と仲良くすると周りから……」
「いいの! わたしが好きでやってるんだから! 嫌って言っても強制だからね!」
 和乃は人差し指を立てながら、子供に注意するように言った。
「それと、わたしのことは和乃って呼んでね。苗字で呼ばれるのあんま好きじゃなからさ」
 それを言われた忠次は少しうろたえる。
 初めて知り合った女子を名前で呼ぶのは少し照れくさい。子供のときならまだしも、高校生にもなって異性を名前で呼ぶのは勇気がいるだろう。
 逡巡している忠次を見た和乃は、
「じゃあわたしも忠次くんって呼ぶからさ!」
 それが交換条件になっていると思っているのか、どこかしてやったような顔をする和乃。
 小さく溜息をついて、忠次は少し微笑みながら、
「分かったよ。慣れないけど頑張ってみる。ありがとう、和乃」
「うん! また明日学校でね、忠次くん!」
 二人は笑みを交わして、連絡先を交換してからそれぞれの帰路につくことにした。
 
 時刻は六時前。夕飯の準備に丁度いい時間帯である。

18日陰:2013/06/09(日) 08:37:43 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 かもめさん>>

 まさかの、和乃ちゃん残念な子へ?!

 が、頑張れ、和乃ちゃん……お、応援してるよ……っ

 
 あと、和乃ちゃん本当に優しいなぁ
 
 お友達かぁ 私も、和乃ちゃんや玲花ちゃんみたいな子達と仲良くなりたいなぁ

 (私の友達って、腐女子とアニオタと馬鹿しかいないから……)

19たっくん:2013/06/09(日) 11:56:31 HOST:zaq31fa529e.zaq.ne.jp
クソスレにしてはなかなかおもろい(笑)

20水無月:2013/06/09(日) 18:01:09 HOST:pw126253129033.6.panda-world.ne.jp
お久しぶりです!結構進んでいたので楽しく読まさせていただきました!登場キャラの個性がはっきりしておりそれぞれのキャラに楽しさを感じながら読む事が出来ました。文章も個人的には読みやすく、構成も好きな作品です。これからも楽しみにさせていただきます!頑張ってください!

21かもめJP@:2013/06/10(月) 01:24:57 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 日陰さん>

 いざというときしか頼れないキャラにするつもりです。普段が残念なだけに、時に見せる強いところがギャップになればいいと思っています。
 第一編ではそういう面は多分見られません((

 物語の構成としては和乃ともう一人、主人公の人がいるんですが……誰でしょう? あえて名前は伏せておきますねw
 和乃を中心として、物語が展開していきますので、ほとんど和乃目線です。第三者視点で書かせてもらってますがw
 彼女の交友関係も個性的にしていくつもりですw 私の周りもそれなりに変わってる人が多かったのでw


 水無月さん>

 お久しぶりですw コメントありがとうございます。

 キャラクターはもっと個性的な奴らがいっぱい出てきますw
 その大半がアホでできてますがw

 楽しみにしていただいてありがとうございます。頑張らせていただきます!

22かもめJP@:2013/06/11(火) 09:41:33 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 5

 翌日、小野塚玲花が学校へ来ると、驚くべきことが起こっていた。
 自分の後ろの席に座る女子――昨日親友となった桜宮和乃がすごい幸せそうな顔をして座っていた。意外といろんなことに対しての許容範囲が広い玲花だが、今回ばかりは流石に引いた。
 何か前に行きづらいなー、と苦笑いを浮かべながらもそーっと前の席に机を置き、椅子に座ろうとしたところで――
「あ、玲花!」
 急に名前を呼ばれ、身体全体を大きくびくっと震わせてしまう。
 振り返ると和乃が自分を待ちわびていたかのような表情を見せている。
 玲花は相手に気付かれないように溜息をついて、席に座ってから相手の方に向き直る。
 彼女は相変わらず楽しそうな笑みを浮かべている和乃にどう話しかけていいか分からず、散々悩みまくった挙句、とりあえず幸せの原因を探ることにした。
「……あー、和乃?」
「はいはい?」
「……アンタさ、今日テンション高くない? ってか、何でそんな上機嫌なの?」
「えっ? そーかなー? ぜーんぜんそんなことないっすよー♪」
 今絶対『♪』付いたろ、そんな喋り方しただろ、と言いたい気分を玲花は必死に抑え込む。
 わざとらしく咳払いした玲花は小さく息をついて、頬杖をつきながら和乃に問いかける。
「昨日なんかあったわけ?」
「えっへへー、分かる? 分かっちゃう? んもー、するどいなぁー♪」
 ごめん和乃。結構気持ち悪い。
 両手を両頬に当てたまま幸せそうな表情で身体をクネクネさせている。これは玲花の許容をはるかに超えていた。昨日別れた後に何かあったのだろうか。彼女が幸せそうにしているのは見ればすぐ分かるのだから。
 そこまで考えた玲花は、ハッとしてある一つのことを思いつく。
 和乃は高校生になったばかり。だが、見た目は女の玲花から見ても、そこそこ可愛いと思う。自分が男子だったら、すれ違うと二度見するだろう。
 玲花はもしかして、と思いながらも和乃に聞いてみる。
「……ねえ、和乃……」
「なーに、玲花?」
 すごい聞きづらいが、ここで聞かなければ何も始まらない。玲花は意を決して、
「……まさか……まさかだよ? たーぶん、ないと思うんだけど……和乃、さ……」
「うん?」
 玲花はきょとんとした顔で首を傾げる和乃に、

「彼氏とか出来たワケ!?」

 瞬間、二人の時間が止まる。
 和乃は硬直しており、玲花は真実を取調べをしている警察官のような目になっている。
 数秒後、沈黙を破ったのは和乃の元気な笑い声だった。
「あっはははははははは! 玲花ってば真剣な表情で何聞いてるのー? 違う違う。全然そんなのじゃないよー!」
 尚も笑い続ける和乃に、玲花は目を丸くしていた。
 大声で笑い続ける親友をよそに、玲花は彼女が上機嫌な理由を考えていた。恋をすれば女の子は変わる、というが恋とかではないということか。そもそも変わった、という類ではないような気がする。
 じゃあ何かなー、と考えていると、彼女の思考を教室のドアが開く音が断ち切った。
 視線を向けると入ってきたのは、例の怖い目つきの男子生徒、鹿野忠次である。
 玲花は、今日も目つき鋭いなー、などと思いながら彼から早々に目を離した。すると、目の前にいる和乃が声を掛けてくる。
「わたしさ、昨日玲花と別れてから友達が出来たの!」
「友達? なるほど……友達か」
 そこでようやく何で幸せそうな顔をしていたのか分かり、ホッと安心する玲花。すると和乃は急に立ち上がり、
「そうだ、玲花を紹介するって昨日言ったんだった! ちょっと来て!」
「へ!? ちょ、いきなり!?」
 玲花の腕を掴んで、和乃はずんずんと歩いていく。
 しかし、途中で玲花は戦慄した。このまま真っ直ぐ進まず教室のドアをくぐれば問題ないのだが、和乃にそんな気配はない。彼女はドアを全く見てなどいない。
 和乃が向かっているのは――、

 どう考えても、鹿野忠次の席だった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
 今回は玲花目線の話になりました。
 第三者視点で書いてるのは間違いないのに、視点キャラが定まらなi((
 そのうち忠次目線もあるかも……。

23たっくん:2013/06/11(火) 12:27:45 HOST:zaq31fa529e.zaq.ne.jp
【チチちょびれソング】

貴方のチンポは腐ってる♪
チンポがあるからチチちょびれ〜♪

チビ太の頭に毛が一本♪
チチパンのパンツから毛が4本♪


貴方はかもめ、チンポくさってる♪
パンパパンパン♪

24【下平】:2013/06/13(木) 05:46:57 HOST:ntfkok293007.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
【おい、モブガキ、荒らすなよ。】

25名無しさん:2013/06/19(水) 14:12:39 HOST:wb78proxy10.ezweb.ne.jp
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

26名無しさん:2013/06/20(木) 14:53:32 HOST:wb78proxy01.ezweb.ne.jp
ぶはwwwwww

27かもめJP@:2013/07/03(水) 11:09:37 HOST:zaqb4dd091a.zaq.ne.jp

「ちょ……」
 あまりに予想外すぎた玲花は、足に力を入れてその場に踏みとどまる。そのため、彼女を腕を引っ張りながら歩いていた和乃の身体は、一瞬後ろへと思い切り仰け反った。
 歩みを妨害された和乃は、頬を膨らませて玲花を恨みがましく睨みつける。
「何すんのさー」
「何すんのさー、じゃないわよ。つーかそれこっちの台詞」
 玲花は和乃の見事に膨らんだ頬を、両手で押して空気を吐かせる。そのため和乃の口がタコみたいになっているが、これはこれで面白いからよしとする。
 額に手を当てながら深い溜息をつく玲花。
 てっきり彼女はこのクラスの女子か、または同学年の人と友達になり、その子のクラスに行くものかと思っていたが、どうやらどちらでもなかったようだ。
「……アンタ、もしかして友達になったのって……鹿野くん?」
「ッ!? な、ななな……なんで分かったの!? 玲花すごい、エスパー?」
 いや、アンタの視線と歩く方向見てたら大体予想つくんだけど、という言葉を胸の奥にしまっておく玲花。
 にしても、和乃は目を大きく見開いてお化けでも見たような顔をしている。いくらなんでもkろえは失礼だ。あとでチョップをお見舞いしてやろう、と玲花は心に決めた。
「なんで鹿野くんと友達になれたわけ? アンタ怖がってなかった?」
「それは玲花じゃーん!」
「アンタもだろ」
 和乃の頭頂部に軽くチョップを食らわせる玲花。和乃は『あうっ』という小さい悲鳴を漏らした。
 しかし、玲花としては全く想像しなかったわけではない。
 和乃なら、この脳天気お馬鹿なら、あんな怖い鹿野忠次でも友達にしてしまいそうだと、和乃が彼を怖がっていた時から思っていた。話す機会があればだが、星河結ともあるいは……。
 玲花は溜息をつきながら、
「……アンタすごいわ……」
「何か言った?」
 なんでもない、と玲花は適当に誤魔化した。
「まあいいわ。……ぶっちゃけ、今でも怖いけど……ちゃんと紹介してほしいし、そしてあたしも紹介して」
 了解、と和乃が敬礼すると、再び玲花の腕を引いて忠次の席へと向かっていく。
「たっだつっぐくーん!」
 和乃が相手の名前を呼ぶ。
 瞬間、教室が戦慄した。
 誰も彼と仲良くなった者などいないだろう、と思っていたのだろう。女子は教室の隅に固まってしまい、他の生徒たちもなるべく目をそちらに向けないようにしている。中には『鹿野が女の子をパシリにしたのか?』『小野塚さんと……もう一人誰だっけ?』『ちくしょう、俺金髪の子狙ってたのに……!』という男子の声が聞こえる。名前を覚えていてもらえていない和乃はしょんぼり、と肩を落としたが、忠次の席に到着する。
 事前に名前を呼ばれていたためか、鋭い目つきではなく割りと優しい表情で、忠次は和乃と玲花を迎えた。
「おはよう。名前を覚えてもらえてないのは、仕方ないことだと思うけど?」
「……うぅ、でも玲花と忠次くんは知ってもらえてるし……」
 未だ元気がない和乃。玲花はそんな和乃の頭を撫でていると、不意に忠次と目が合う。
 すると思い出したように急に慌てだし、
「えっと、小野塚玲花です。ど、どうも……」
 ぺこりと頭を下げる。
 すると忠次は小さく笑って、
「そんなにかしこまらなくても。知ってると思うけど、鹿野忠次だ。こっちこそよろしく」
 二人は軽く握手を交わす。
 話してみると案外怖くない。それに安心し、玲花はホッと安堵の息を吐く。
 と、和乃が元気を取り戻したように、ぱっと明るい表情を作りながら二人に言う。
「それでわたし、今日は二人に相談があるの! もちろん、部活のことで!」
「……相談?」

 和乃の言葉に、玲花と忠次は眉をひそめた。

28たっくん:2013/07/03(水) 11:46:54 HOST:zaq31fa4c60.zaq.ne.jp
>>1の水筒および弁当箱に
ジャイアントババ&猪木のウンコを投入し
シェイクして小一時間寝かせます。



       【ピーチさんソング】 元祖おそ松くんOP替え歌

ピーチのアソコは腐ってる♪
周囲に充満し嫌われる♪

ピーチのアソコに毛が一本!
小さな小さなクリちゃん♪

チチパンのパンツからケガ2本!

29たっくん:2013/07/03(水) 11:47:46 HOST:zaq31fa4c60.zaq.ne.jp
私は常識を語っているだけです。

30【下平(シン)慎】:2013/07/08(月) 13:36:29 HOST:ntfkok293007.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
【丁寧語のセンス無いよ、おまえ(笑)。】

31かもめJP@:2013/07/28(日) 11:00:28 HOST:zaq3a55fbfd.zaq.ne.jp

 6

 和乃の相談は昼休みに話された。
 始業式の日に出会った先輩のお陰で、どんな部活動があるかは大体把握していた。しかし、部活名を見ただけでは詳しいことは分からないし、中には何をするか分からない部活までもが存在する。何に入ろうか未だ悩んでいる和乃は、同じくまだ部活に入っていない玲花、忠次を引き連れて、
「学校掲示板ねぇ」
 現在三人がいるのは一階の廊下である。
 校舎内にはいくかのコルクボードの掲示板が壁に立てかけられている。その中でも、一番大きいのが職員室の真正面にある通称『学園掲示板』だ。
 近々催される学校のイベントや、自由参加型の企画、体調管理に関するチラシまでもがそこには貼り付けられていた。四月から五月の最初くらいまでは部活に関するチラシもかなり貼られている。しかし、チラシの量が多く重なったりしているため、めくらないと見えないチラシも存在しているのだが。
「たしかに、これなら大体の活動内容は分かるわね」
 玲花がチラシを見ながらそう言った。
 彼女が今目を通しているのはテニス部だ。それに気付いた和乃は、玲花がテニスウェア着たら可愛いだろうな、などと考えている。
 一方で忠次は文芸部に目を通している。やはり本が好きらしい。
「和乃、アンタはこれ見たの? 何か入りたい部活あった?」
 玲花がそう質問しながら振り返る。それとほぼ同時に忠次も振り返り、視線で玲花と同じように問いかけてくる。
 和乃は小さく首を横に振った。
「……ううん、わたしが入りたいと思う部活はなかった。だから、作ろうと思うの。私たちの部活を!」
 びしっと指をさしながら、力強く宣言した。
 この話は、始業式の日に玲花と和乃が決めていたことだ。入りたい部活がなければ自分たちで作る、と。たしかに、玲花が今見たところでは入りたい部活はない。テニス部には、少しだけ興味があったが。
 忠次も構わない、といった風に頷いている。
「でも、部員ってあたしたち含めて五人必要なのよ? あと二人……あたし、他のクラスに知り合いなんていないけど?」
「僕もいないな。どうするんだ?」
 ふっふっふっ、と腕組みしながら楽しげに和乃は笑っている。
「いなければ部活動と同じように作ればいいのさ、部員&友達を!」
 たしかに和乃を嫌いになる人はいないだろう、と玲花と忠次は思っていた。
 しかし、忠次は友達を作るのが苦手だし、玲花も得意じゃない。和乃に話しかけていたのは、席が前後という関係があったからなのだ。多分後ろの席が男子だったら、自分は話しかけていないと思う。言いだしっぺの和乃も人見知りっぽいし、友達を作るどころか、勧誘も出来ないんじゃないだろうか、と思った玲花は、思い切って和乃に聞いてみた。
「出来るの? アンタ、人と話すの苦手じゃなかったっけ?」
「だからこその掲示板だよ! チラシ作ってここに貼る! それでいいじゃん」
 たしかにそれも可能ではあるだろう。
 しかし、こんな多くある部活の中に、ひとつだけ正式な部活動じゃないものを宣伝しても、入ってくれるとは思わない。
「あんまり現実的じゃないと思うんだけど……」
「だが、その方がいいんじゃないかな? 見たところ、正式な部じゃないものも宣伝してるみたいだし。方法はありだと思うが」
「そうね。それの方がやりやすいかな」
 忠次の言葉に、玲花は納得した。
 それを見た和乃はやる気の入った表情で、
「よっしゃ! じゃあ早速部活勧誘のチラシ作るぜ!」
 一人だけ乗り気の和乃に、玲花はふと疑問に思ったことを問いかける。
「ねえ、和乃」
「ん、どうしたの?」
「……結局さ、あたしたちってなんの部活作るの?」
 しばしの沈黙。
 和乃は照れたようにはにかみながら、

「……それを、今から考えよっか?」

 全くのノープランだった。

32かもめJP@:2013/07/30(火) 16:12:44 HOST:zaq3a55fbfd.zaq.ne.jp

 7

 放課後、星河結は職員室にやって来ていた。
 理由はごく単純なもの、入部届けを提出しに来ていたのだ。この学校の理事長の孫娘である彼女も、入学した以上学校のルールを守らなくてはならない。
 それが『一ヶ月以内に入部すること』だ。
 彼女は成績も優秀で運動神経もいい。だからどの部に入部しても彼女の力は遺憾なく発揮されるのだが……。
 入部届けを手にした担任の教師は顔を青くしたまま、彼女の入部する部活名を見ながら絶句していた。
「……!」
「……どうしました、先生? 早く手続きを済ませてください」
 この学校の入部手続きは一度担任の教師に見せなければならない。
 入部届けにある担任教師が、この生徒をその部に入部させることを認める、というはんこを押し、その後その部の顧問に提出する、というのが手続きだ。
 結が待っているのは、担任教師がはんこを押すことだ。
「……星河、考え直す気はないのか……?」
 担任教師は震える声で結に問いかける。
「考え直す、とは?」
「お前は成績も優秀でスポーツも申し分ない。だから、お前のような逸材はもっと然るべき部に入るべきだ。それをこんなワケの分からん異端児どもが集まるような部に入部させるわけには――」
 それこそが、彼の失態だった。
 自分の生き方に干渉されたくなかったのか、単に自分が入ろうとしている部活を蔑視されたことに腹を立てたのか、結は教師の言葉の途中で自分の手を机に叩きつけていた。
 バァン!! という思わず耳を塞ぎたくなるような大きな音が教室に響き、職員室内にいた数名の教師が全員結へと視線を向ける。
 結はその視線を気にする風もなく、冷たい瞳で教師を睨みつけ、
「早く、手続きを済ませてください」

 半ば強引に教師から入部を認めさせた結は入部届けを持って職員室を出た。
 それと同時に、一人の男性に声を掛けられる。
「随分と面白いマネをしたな。君があんなことをするとは思わなかったよ」
「見ていたんですか? 意地が悪いですね」
 結は言いながら声の方向へと視線を向けた。
 いたのは白衣を纏った黒髪に眼鏡をした三十代くらいの男だった。口ぶりからして、二人からは初対面ではないようだ。
 男は楽しそうににっと笑みを浮かべてから、
「しかし私も驚いているよ。君があの部に入部するとはね」
「まあ特にしたいこともないので、そういう人にはうってつけでしょう、あの部は」
 それもそうか、と男は納得したように頷いた。
 結はその男の方へと歩み寄り、彼の胸に押し付けるように入部届けを渡した。
「……本当に入部するのか、結?」
「聞き返さないでくれる? 私が決めたことよ、今更答えを変える気なんてないわ」
 結はそのまま彼の元から去っていく。
 男はその入部届けに目をやり、彼女の綺麗な筆跡で記された部活名を見つめた。そこにあったのは、彼が顧問を務める部活の名がきちんと記されていた。

 
 ――『多文化研究部』と。

33かもめJP@:2013/08/24(土) 08:43:48 HOST:zaq3a55fbfd.zaq.ne.jp

 第二章 多文化研究部

 1

 和乃たちが新たな部活の創設を決めてから一週間後。
 なんとかどういう部にするかが決まり、担任の教師からも部の設立を認められ、掲示板に貼り紙を貼ることが許可された。そろそろ入部期間である一ヶ月が過ぎようとしているのに、貼り紙の和は減ったとはいえない。なるべく目に付きそうな場所に貼って、入部希望者が来るのを待って一週間が過ぎた。
「……和乃。誰も来ないんだけど」
 三人は改めてチラシを貼った学園掲示板前に来ている。場所が変えられている、ということもないようだ。
 そもそも三人が作ろうとした部活は『万部(よろずぶ)』というもの(玲花命名)である。
 活動内容はいたってシンプルで具体性のない『何でもやる』で遊びから依頼までをこなす、という漫画とかでよくある部活だ。漫画脳の和乃が考えたものらしい。
 新しい部活の創設には最低五人、つまりあと二人は必要になってくるわけだ。
 忠次は困ったように溜息をつきながら、腕を組んで答える。
「……もう入学して二週間だ。一ヶ月まで一週間とちょっと。さすがに、ほとんどの人はもう入部しちゃってるんじゃないか?」
「なるほどね。だから部の貼り紙がある掲示板前も通らない。通っても素通りするだけ。そりゃ目に入らなくて当然だわ」
 どこかの部に入部していたら掲示板の前で部活を選ぶ必要がない。だから、和乃たちが何処にチラシを貼ろうが関係ないのだ。
 彼女たちの敗因は貼り紙の場所ではなく、単に時期の問題だった。
「うーん……やっぱり諦めて他の部に入部するしかないのかなぁ」
「そうした方が賢明ね。安心して。和乃と同じ部にするから」
「先生には悪いが、ちゃんと部の創設をやめることを言わないとな。職員室に行って、三人で話そう」
 忠次が言うと、三人は職員室へとチラシを剥がして向かっていく。
 和乃たちが職員室へ入るといきなり、

「えぇっ!? まだ一人しかいないの? 今年度の入部希望者一人だけ!?」

 入り口付近で、美人な女教師と話している少年の声が耳に入った。
 制服は着崩していて、カッターシャツの中に赤いTシャツを着ている。カッターシャツのボタンが全部開いているため、中が丸見えだ。頭にはニット帽を被っている。暑くないのだろうか。
 すこし軽薄でノリの良さそうな少年は、明らかにショック受けたような顔をしている。
 肩くらいまでの長さの黒髪を持った、クールな印象を与える女教師は溜息をついた。
「何でと聞かれても知らん。お前がちゃんと宣伝しないからだ。チラシは貼ったのか? 勧誘はしてるのか? まあ、入部届けを受け取る教師があんなのじゃなぁ」
 女教師は遠い目をしながら言った。
 ニット帽の少年(先輩らしき人)は肩を落としながら和乃たちに気付いたのか、そちらへとちらっと振り返ると、水を得た魚のように目に輝きを取り戻して三人に近寄っていく。
「な、なあ、君たち、今なんか部活入ってる!?」
「え、え、ええ?」
 言われた和乃は戸惑う。
 和乃は二人に助けを求めようとするが、玲花と忠次はチラシを和乃から攫っていって、創部取りやめの手続きを行っている。
 この裏切り者、と思わなくもないが、とりあえず目の前の人の質問に答える。
「え、えっと……創部しようとしてたんです、けど……今回取りやめの方向に……」
「じゃあさ!」
 ニット帽の先輩が和乃の肩を掴む。
 明らかに困ったような表情をしている和乃を見て、女教師はニット帽の先輩に落ち着くように促している。
 それを聞き入れたのか、少し冷静になって彼は口を開いた。

「うちの部活に、来ないか?」


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