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ソラの波紋

298心愛:2013/07/18(木) 19:31:24 HOST:proxyag049.docomo.ne.jp






「そして、何度も何度も自分の運命に絶望することを繰り返して―――やがて俺は、俺を呼び出した小さなお姫様の、気高く美しい魂に魅せられた」





“ぼくはシルヴィア。天より紅薔薇の紋章を戴く、誇り高きファローズ王家の末裔―――シルヴィア=ファローズ”





「……もう沢山だ。俺は自分の意志で、シィの命と引き換えに、俺の不死の身体を捨てることを選んだんだよ」





“―――仰せのままに、俺の姫君”





あのときと同じ、何処か含みのある微笑で、アレックスが告げる。





「これで、本当の意味で君の隣で生きられる」





―――“悪魔の命は永遠。その全てを、貴女の為に捧げよう”





「……そう、だったのか」



元から端正な顔立ちの男だ。
優しげな眼差しで微笑まれれば、胸の奥で変に気恥ずかしいような、いたたまれないような、じんわりとしたくすぐったいものが生まれる。



シルヴィアの為とはいえ勝手に命を捨てるような真似をしたのは許し難いが、それも当の本人が強く望んだ結果なら仕方ない、のかもしれない。


照れるべきか怒るべきか、それとも悲しむべきなのか、シルヴィアは真剣に迷った。


が、それを決める前にこれだけは確かめておこうと口を開く。



「……アレク」



「うん? 何、感動しちゃった?」



アレックスの混ぜっ返すような発言は無視することにする。
一旦思考を切り替え、シルヴィアは彼に疑いの目を向けて。



「ぼくの杞憂だと良いんだが……この話、偶然にしては出来すぎていないか?」



黙ったままにこりとする悪魔の笑み。

シルヴィアは自分の考えが正しかったことを確信した。


アレックスは今回の事件の流れのことをあらかじめ全部分かっていて、サミュエルの動きもリリスの決断も、全て最初から知っていて。
それでも敢えて手を出さず、自分の“利益”の為に事態を傍観していたのだ。

事前にシルヴィアに知らせていたなら、このような大事に発展する前に回避できたにもかかわらず。



「だから、ごめん、って言ったでしょう? 自分の欲の為に、シィに痛い思いさせたんだから」



……確かに負傷の点で見れば、今回の一番の被害者はシルヴィアだ。

シルヴィアはわなわなと震えた。



「優秀な指揮官のお陰で奇跡の犠牲者ゼロ。シィも復讐の機会を得られたし、あいつはこれで、地獄行きが決定されたし。何より、これが一番面白くて、最も盛り上がる展開だろう?」



「こ、の悪魔……っ! ミレーユたちに土下座して詫びてこい!」



やはり怒るべきだ。

シルヴィアはようやく決断すると、迷わず傍にあった枕を悪びれない眷属に叩きつけた。


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