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初婁
:2010/12/26(日) 15:31:14 HOST:baid201b4d0.bai.ne.jp
*
「あはは、やっぱり面白い!」
「……お前絶対狂ってるだろ」
「えーっ、女の子の身体を実験対象にするような人に言われたくないなー!」
「……それはお前もだろ」
薬師寺遠野、焔の兄妹は、有名な科学者の家に生を受けた。
両親共々科学者であり、並の科学者よりも様々な実績を積んでおり、科学者を志す者にとっては憧れの存在となっていた。
裕福な家庭、望めば何でも買ってくれた。
ただ―「買ってくれた」のだ。
遠野も焔も、幼い頃から両親の愛と言う物とは縁遠い生活を送っていた。
輝かしい名声などただの仮面。
父は、母親に暴力を振るっていたのだ。
そして、そんな中にいる兄妹に対して父親の反応は―ただ、彼等を満足させる為に、望む物をなるべく全て買い与えたのだ。
そこに「愛」はない。
彼、彼女等の退屈しのぎの為の玩具を、ただ買い与える。
しかし、兄妹は父親は恨んでいたが―母親は恨んでいなかった。
母親だけは。母親だけは、彼女等への愛を忘れずに与えていたからだった。
『お父さんも……昔は、あんな人じゃなかったのよ』
どこか寂しげな様子の母親は、それでも笑顔を絶やさず、二人に対して父親との思い出話を語り続けた。
いつしか、焔は母親の体の傷に気付き、触れた事がある。
今思えば、それはただ「傷の一部」だっただけなのかもしれないが―
触れた瞬間、母親はなんと慈愛に満ちた笑みを浮かべて――
『私は今でも、お父さんの事は好きよ』
――そういったのを、二人は今でもはっきり覚えている。
そして二人は、その日から疑問を持ち始めた。
―なんでママはあんなパパの事が今でも好きなの?
―なんで、なんで?
そして、ある日―彼女等はその解答に漕ぎ着ける。
合っているようで、しかしズレた答えを。
「お母さんは、お父さんに縛り付けられているから、逃げられないんだ」
そして幼い兄妹は、母親を自由にする事を心に誓った。
そして彼女等は歪んだ行動を起こす。
まず手始めに、父親の書斎や研究している部屋にこっそり忍び込み、そのデータや研究を一心不乱に見つめた。―全ては母親の為に。
その理由は―彼女等の手によって「異形」を作り上げる為だった。
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