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メルヘンに囁いて、

14ねここ ◆WuiwlRRul.:2013/01/08(火) 19:27:03







「ふう、ここで最後だね」





 教室に入って戸締りの確認をして、鍵を閉める。
 この作業を繰り返してずっとやってきた。




 職員室は一階にあって、一度三階まで登りきってから
 音楽室、家庭室、視聴覚室、金工室、木工室、第一理科室、調理室、第二理科室の順で鍵を閉めていく。




 そして今はちょうど、第二理科室の鍵を閉め終わったところだった。




「煌くん?」




 ぼーっとしていると、淡井先生が名前を呼んできた。
 俺らしくもなく、あわてて淡井先生の方を向く。





「なんですか?」

「なんかぼーっとしてたね、煌くんっぽくない」

「……そうですか?」

「うん……何かあったの?」

「……特に何も」





 理科室の机にもたれかかっていると、
 淡井先生が一歩一歩確実に歩み寄ってきてるのがわかった。






 そろそろだ。






 そう察知して、考えることはできたのに。
 携帯をこそっと取り出して録音するとか、写真の準備とかそういうことをする予定だったのに。






 楽しげに、キラキラとした瞳で夢を語る淡井先生の顔が思い浮かんで、なかなか動けなかった。






「ねえ、煌くん……あたし、」






 そっと、淡井先生の指が俺の頬に触れる。
 ぐい、と少し強引に机の上に押し倒された。








「あたしね、煌くんのこと好きになっちゃったみたい……」







 俺って馬鹿だ。
 ちょっとした感情の迷いに、こんなに優柔不断になるなんて。






 俺は黙り込んで、ただじっと淡井先生の顔を思い浮かべた。







 淡井先生の顔が近づく。
 キスされるんだって思って、でも今更逃げることもできなかった。






 唇が重なり合いそうになったその瞬間。








「煌くん!!!」







 沙月の声。




 ピタリと、淡井先生の体が止まった。





「煌くんのばか!! 煌くんは優しすぎなんだばか!!!」





 沙月の言葉に目が覚める。
 けどなぜか、淡井先生の夢を壊す気にはなれなくて。





「淡井先生」

「な、なあに?」




 動揺しまくりの淡井先生に作り笑顔を浮かべて言った。





「また明日」

「え、ええ……その、今のこと」

「わかってます……でも俺、」

「いいの! 言わないで……でもあたしの気持ちは変わらないし、今まで通りよろしくね!」




 良い人のふりを突き通したまま、沙月の元に駆け寄った。


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