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38
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/29(月) 21:33:55
深呼吸。
大丈夫、わたしならできる。
そう自分に言い聞かせて、第二音楽室の扉を開けた。
「失礼します」
しんと静まり返った音楽室。
中にいるのはゆりちゃんとれお先輩だけだった。
どうしてこの二人が?
そう思いながら、二人の視線がゆっくりこっちに向いたのに気づいてもう一度深呼吸する。
「その、ごめんなさ――」
「莉乃! よかった、戻ってきてくれて」
安心したれお先輩の笑顔。
きゅうっと胸が苦しくなった。
「れお先輩」
「ん?」
「ゆりちゃんと、二人にしてもらっていいですか?」
わたしはもう負けない。
欲しいものは素直に欲しいって言っていいんだ。
譲りたくないものは譲らなくていいんだ。
このバンドで、その大切さを教えてもらったの。
「ああ。俺は一応完全下校まで残るから、何かあったら呼んでくれよな」
わたしたちを安心させるようにれお先輩は微笑んで、音楽室を出た。
バタンと扉が閉まった。
勝負だ。
「――で? なんで退部した関係ない莉乃ちゃんが部室に入ってきたわけ?」
「用事があったからかな」
「ふうん……苦しい言い訳」
「あは、わたしも思った」
平然を保つんだ。
まだ怒っちゃいけない。
怒ったら負けだ。
そう自分に言い聞かせて、必死に立ち向かう。
「……今更なに? やっぱり退部しないとか言い出すの?」
「ううん、そんな卑怯なマネしないから安心して」
「ならよかった」
安心した様子をみせたゆりちゃんの隙をついて、わたしは微笑んで言った。
「わたし、れお先輩と付き合ってる」
「え……?」
ゆりちゃんはまだ知らなかったみたいで、呆然としていた。
「ゆん先輩とタケ先輩は知ってるよ」
「いつ……」
「ゆりちゃんが用事があるって帰っちゃったとき、みんなに言ったの」
「……また、わたしを仲間はずれにして」
「違う、ゆりちゃんにも言うつもりだった」
ゆりちゃんは辛そうに目に涙を溜めていた。
泣かないで。
なんて、優しい言葉かけられる立場じゃない。
「わたしは、ゆりちゃんと仲良くしたいよ……」
「でも性格が合わないもん」
「……分かり合えないのかな」
「わかりあえない、わかりあいたくない!」
ゆりちゃんは、本当にわたしが嫌いなのかな。
「わたし、ゆりちゃんが好き」
「え?」
「だから、お願いだから言い合いとかやめようよ……」
「……言い合いをやめたとして、莉乃ちゃんは退部しちゃったからここには戻れないんだよ?」
そんなの。
「そんなのどうでもいい。ゆりちゃんとケンカしたくない」
そう言った瞬間。
ゆりちゃんが、ぎゅっとわたしを抱きしめた。
「馬鹿! わたしも嫌いじゃないから……退部なんてしないでよ」
よかった。
やっと、分かり合えた。
仲直りしたわたしたちは手を繋いでれお先輩の元に行った。
れお先輩はわたしたちの頭をぽんぽんと撫でてくれて、ちょっと安心したのは秘密。
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