【事例】
I XとAは、資産家として知られるBの家にへ強盗に入ることを2人で計画し(以下、この計画を「犯行計画」という)、2人でB宅に赴いた。XとAは、犯行計画に基づき、宅配便の配達を装ってBに玄関扉を開けさせると、無理やり上がりこんだ。
II XとAは、犯行計画に基づき、それぞれBにナイフを突きつけ、「おとなしくしないと殺すぞ」「金はどこだ。教えないと殺す」などと申し向けた。Bは、一人暮らしであり、当時は、XとAを除くと、B宅にはBしかいなかった。また、Xが用いたナイフは刃体の長さが15cm、Aが用いたナイフの刃体の長さが12cmあり、生命の危険を感じたBは、2人に逆らわず、従うことにした。XとAは、Bにそれぞれ前記ナイフを突きつけて、金庫の前まで案内させ、さらに解錠方法を聞きだした。XとAは、「殺されたくなければ、黙ってそこに立っていろ」というと、Bを立たせたまま、Bが教えた解錠方法にしたがって解錠し、金庫の扉を開けた。すると、そこには、現金1億円が入っていた。XとAは、大喜びで現金をXが持参したかばんに詰め込もうとしたが、ここで、2人は、この現金の取り分をめぐって口論になった。
III XとAの口論は、当初、取り分をめぐるものであったが、すぐに脱線して、AはXの性格を非難し始めた。これに激高したXは、前記ナイフを構え直すと、扉を開けた金庫の前で、Aに襲いかかった。次の瞬間、Xは、殺意を持ってAの腹を前記ナイフで突き刺し、Aはこれにより死亡した。その直後、われに返ったXは、金庫にあった現金をあわてて自己のかばんに詰め込むと、依然として生命の危険を感じ、動けないでいるBを残したまま、逃げ去った。
【事例】
I Pは、商談で使用する書類や、5万円相当のタブレットパソコンが入ったかばん(長さ40cm、高さ30cm、幅5cm、重量は内容物を含めて約3kg。内容物、かばんともにPの所有物である)を持って、駅の待合室にあるかばんに腰掛けていたが、会社の上司から電話がかかってきたので、上着のポケットから電話を取り出した。Pは、数分の間、そのまま話していたが、伝オアの状態が悪く、何度か電話が切れてしまったため、待合室から出ようと考えた。その際、Pは、防寒のためにオーバーコートを手にしたが、電話とオーバーコートで両手がふさがってしまったことから、前記かばんは置いていくこととし、ベンチの上に残して待合室をあとにした。待合室を出ると、電波の状態はよくなったが、今度は、電車の音や駅のアナウンスで上司の声が聞き取れなかったため、電話をしながら静かなところを探し、約200m歩いて、コンコースに出た。Yは、待合室の中でそのPの行動を見ていて、Pが前記かばんを忘れて言ったのではなく、一時的において電話をかけに言っていることを認識しており、また、待合室の壁面ガラス越しに、Pがコンコースで電話をしている姿を確認していたが、しばらくして意を決すると、前記かばんに向かって歩き出した。そして、Yは、前記かばんやその内容物を領得する意思を持って前記かばんを手に取ると、そのまま待合室を出た。Pが待合室を出てから、Yが前記かばんを手に取るまで、約15分経過していた。Pha,その5分後、電話を終えて待合室に戻ってきたが、そこで、前記かばんがなくなっているのを発見した。
II Yは、自宅に帰って前記かばんの内容物を確認したが、タブレットパソコンはすでに1台所有していたことから、Pのタブレットパソコンは、友人であるQに2万円で売却した。Qは、Yが前記Iの敬意でそのタブレットパソコンを入手した事実をYから打ち明けられたが、その事実を認識しながらあえて買取に応じ、2万円を支払ってPのタブレットパソコンの引渡しを受けた。その後、Qは、Pのタブレットパソコンを保管するようZに依頼した。Zは、そのタブレットパソコンについて、自分とは面識のないQの知り合いが前記Iの経緯で入手したという事実や、Qが買い取ったときその事情を知っていたという事実をQから聞かされていたが、それを認識しながらあえてQの依頼に応じ、引渡しを受けて、Pのタブレットパソコンを保管した。なお、P、Y、Q、Zのうち、QとZは直系血族の関係にあるが、それ以外のものの間に、親族関係はない。