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1菜園音子@管理人★:2008/01/23(水) 18:16:40 ID:???0
需要があるようなので立ててみました。

182名も無きハイグレ人間:2009/04/12(日) 11:45:36 ID:h2XgAbSIO
頭が痛い。
視界は真っ赤で何も見えないし、何も聞こえない。
(ああ・・・ハイグレ人間になっちゃう・・・)
絶望し、肩を落としていると、いつの間にか目の前に誰かが立っていた。
「・・・嘘」
立っていたのは、魔王の仮面を着けた赤いハイグレ女。ショートカットで、体格がいい。
(まるで・・・)
「そう。私はあなた。あなたは私よ」
「どういう・・・こと?」
「ハイグレ光線を浴びると、まずハイグレ姿になる。でも、心はハイグレ化を拒む。
だから心の抵抗を無くす為に、私みたいなハイグレ人間の人格が、抵抗する人格を吸収して思考をハイグレ化させるのよ」
つまり、意識を乗っ取られる。
「ふざけるな!
そんなのに、私は乗っ取られない!」
「あら、そう?そのわりには、アナルほじられて気持ちよかったじゃん?
もっとほじられたいよねぇ」
「う・・・うん」
(あれ?)
「それに、ハイグレを初めて着た時も気持ちよかったでしょ?
初めてハイグレをした時も、ハイグレ姿で街を歩いてる時も、すごく気持ちよかったでしょ?」
「うん・・・いつもと違って・・・」
(私・・・何言ってるの?)
「今まで感じた事なかったでしょ?ハイグレ人間に転向すれば、それが毎日感じられるんだよ?」
「毎日・・・」
仮面静花の言葉に、静花は引き込まれていた。
この異世界での生活は、今までの人生以上に楽しいとも思った。
「私を・・・ハイグレ魔王様の祝福を受け入れるだけで、毎日気持ちよく生きられるのよ」
「・・・」
「あなたなら・・・私なら、答えは決まってるよね」
仮面静花は、期待を込めた視線を寄越してくる。
それに応えるかのように、静花は微笑んだ。
「うん。私は・・・」
「私は・・・?」
「徹底的に抗う!」
言うがいなや、仮面静花の首筋に回し蹴りを放つ静花。
(最高の角度・・・。もらった!)
しかし、当たる瞬間、仮面静花の姿が掻き消えた。
「!?」
辺りを急いで見回すが、赤一面で何もいない。
「もう・・・強情なんだから・・・」
「!!」
言葉と共に、尻に仮面静花の手が触れた。
「ここはハイグレ空間・・・。ハイグレじゃない者が敵うわけないの」
「くぅ・・・」
「こうなったら、私も強引にいくわ。あなたと同化するよ?」
仮面静花は、静花の尻の穴を指で広げながら言った。
「な、何を・・・」
「同化するなら、どこからでもいいけど・・・お尻から入って気持ちよくなりたいか・・・ら!」
「ひっ!」
仮面静花は、尻の穴からゆっくりと静花に同化し始めた。

183名も無きハイグレ人間:2009/04/12(日) 11:46:11 ID:h2XgAbSIO
「あっく・・・負ける・・・もんか!」
「何に?」
「は・・・ハイグレ魔王様の、祝福を拒む奴ら・・・!?」
「よく出来ましたー。あとは、すらすら言えるようになれば・・・」
「私から・・・出ていけ・・・!」
「自分の意思を否定しちゃ、息苦しい生き方しか出来ないよ?」
「う・・・く・・・魔王・・・様・・・」
仮面静花の体は、ほとんど静花と同化していた。
完全に同化し、静花のハイグレ化が完了するのも時間の問題だ。
「しかし・・・我ながら・・・拒むねぇ」
静花の抵抗に、仮面静花は舌を巻く。こちらにも我慢の限界がある。早くハイグレ化をすませて、思いきりハイグレをしたいのだ。
「は・・・ハ・・・したいぃ」
「ん?」
静花が小声で何か言った。
思わず聞き返したが、ほとんど同化しているので、聞かずとも頭に思考が入って来る。
「やっとハイグレ化を受け入れるの?」
「受け入れるから・・・受け入れるから、早くハイグレさせて!
美咲とハイグレして、ライシャにハイグレアナルほじってもらって、ハイグレ魔王様の為に働きたいのぉぉ!」
「ふふ・・・抵抗が無くなったから、すぐ同化出来るようになったよ!
じゃ、思いきりハイグレしよう!」
同時に仮面静花の体が静花と完全に同化した。
同時に静花の体が跳ね、うつぶせに倒れた。
大久保静花の転向は完了した。
 
「ん・・・」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!転向完了、おめでとうございます」
目を覚ますと、朝日を背にしたライシャが挨拶をした。
もそもそと立ち上がり、静花は思いきり腰を落とした。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ありがとう。おかげさまで、本当の自分になれた」
「うふふ・・・いいんですよ」
「それで、さ・・・。よかったら、さっきの続き・・・」
「ハイグレアナルほじくってほしいんですね?
仕方ありませんね・・・」
ライシャがペニスバンドを付け、静花がライシャに尻を突き出した時、いきなりモニターが起動した。
『転向してすぐに、だなんて。盛んなのね?』
「ペルトゥ様!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
モニターに映るペルトゥに、急いでハイグレをする二人。
『静花さん、転向おめでとう。これであなたも魔王様のしもべね』
「ハッ!これからは、身を粉にして働くつもりです!
それと、魔王様に盾突く様な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした!」
『ふふ・・・いいのよ。
許してあげる代わりに、美咲さんは私の専属ハイグレ便器にするわね?』
「ハッ!どうぞ、美咲をお使い下さい!」
(肉便器に人権無し、って感じね・・・)
二人の会話を聞き、ライシャはそんな事を思った。

184名も無きハイグレ人間:2009/04/12(日) 11:47:13 ID:h2XgAbSIO
『ところで・・・転向してすぐで悪いんだけど、早速あなたの星に行って、活動を開始してほしいんだけど・・・』
「ハッ!かしこまりました!・・・」
了解したものの、何か思い出した様に黙る静花。
『・・・。今日の昼過ぎからにしましょう。ご飯も食べたりしないとね?』
「あ、ありがとうございます、ペルトゥ様!!」
嬉しさのあまり、目に涙を浮かべる静花を見届けると、ペルトゥの姿は消えた。
「さて・・・昼までヤるわよ、ライシャ!」
「え?まず服を取りに行ったり・・・」
「時間が近くなったらでいいの!さ、早く!」
尻を突き出し、ふりふり振りながらペニスバンドの挿入を促す静花。
「そんなに欲しいんですね・・・。分かりました!じゃあ、ほじりまくりますね!」
言いきる前に、勢いよく擬似ペニスをぶち込むライシャ。
「やぁっ!いきなりぃ!」
ピストン運動が始まり、快感に喘ぐ静花。
先程と違い、苦痛などといった感情は無かった。
 
 
「ふぅ・・・。気持ちよかった!」
あれから数時間、二人はずっと繋がっていたのだ。
昼を回る頃までヤり、急いで支度をしてハイグレ人間製のゲートの前に二人はいた。
二人の他にも、静花の講演を基にして作った服を着たハイグレ人間達がいる。
皆着慣れないようで、動きがぎこちない。
「早く地球をハイグレ魔王様の物にしたいわぁ」
「初めての仕事だから、張り切ってますね」
「無礼をした分は、働いて償わなきゃ。
・・・そろそろ時間ね」
ゲートの隣に、開発チームのハイグレ男達がいて、起動させていた。
「わ!向こうに街が見えます!あれが静花さんの住む世界ですか?」
「そうよ、あれは私の国の新宿という街なの。
まずは新宿を占領するわよ!」
『ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!』
今回の作戦のリーダーの静花の号令に答えるハイグレ人間達。皆ハイグレ魔王の為に働けるとあって、目を輝かせていた。
「よぉし、行くよ!
全ての地球人共をハイグレ人間に転向させるよ!」
そう言う静花の目が、一番輝いていた。

185 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 04:22:50 ID:l9FCwwWk0
>>131からの続きです。


「みんなもう洗脳活動から帰ってきてるはずだよ」

ミサトが家の玄関のドアを開けながら言った。
玄関からほのかに漂う懐かしい匂い。マイにとっては久しぶりの我が家への帰宅だった。
ミサトは靴を脱ぐと跳ねるように廊下を走って行った。
「ただいま〜!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
ミサトはリビングルームの中へと向けてハイグレを行うと再び元気よく走り出し自分の部屋へと向かっていった。
マイも靴を脱ぐと温かい灯りがこぼれるリビングルームへと向かった。
部屋の中ではヒロコとゴロウがテレビのニュース番組を見ていた。マイがみんなを洗脳した部屋だ。
テレビはハイグレ人間にされた人々を映し出していた。洗脳活動の中心にいたマイには見慣れた光景だった。
ハイグレ人間なら喜ぶべき映像なのだが、今のマイには苦々しい気持ちしか生まれなかった。
しばらくして映像がスタジオに切り替わり、マイは少しほっとした気持ちになった。

ハイグレ人間になるのは私みたいに本当に心の底から願った人間だけで良い。
ハイグレ人間になりたい人たちだけがハイグレ人間なればいいんだ。
そうすれば人間もハイグレ人間も共存していけるはず―――。

そんなことを考えて画面から目を離していたマイは、再び飛び込んできた映像に更なるショックを受ける事になった。
テレビはアナウンサーやコメンテーターの女性達がハイグレ姿でニュースを伝えていく姿を映していた。

マイは彼女達に見覚えがあった。彼女達はマイが秘密施設で生活していたころに三姉妹たちがよく見ていたニュース番組を担当していたのだ。
数少ないハイグレ魔王の手に堕ちず抵抗を続ける貴重なテレビ局だと斎告が言っていた。
スタジオにはイスやテーブルなどは見当たらず、出演者は全員姿勢よく直立の状態で並んでいた。
マイは大がかりなセットをなぜ撤去したのか疑問を持ったが、それはすぐに解決されることになった。

「それではまた明日お会いしましょう。ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
番組の最後に出演者全員が同時にハイグレを行った。
なるほど。椅子とテーブルがあると上手くハイグレが出来ないからか。
マイが納得したように顎に手をやっていると、視線をテレビから部屋の入口へと向けた両親と目があった。

「マイ……?」
ゴロウはあまりの衝撃に言葉を失い手に持っていたリモコンを床に落としてしまった。

「無事だったのね……。あなたが連れ去られたって聞いた時はもう……」
ヒロコは娘の顔を数秒見ると、溢れる涙を右手で拭った。

「心配掛けてごめんさない」
マイは両親に向けてぺこっと頭を下げた。
どんな形であっても家族と再会できるのは嬉しい。
「いいのよ、マイが悪いわけじゃないわ。……おかえりなさい」
「ただいま―――」

186 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 04:26:06 ID:l9FCwwWk0
感動の再会は突如響き始めたチャイムにかき消された。
チャイムは激しく連打され悲鳴を上げるように部屋中に鳴り響いていた。

「誰だろう?私でるね!」

マイはリビングを出て玄関へと向かった。。

「はーい。どちらさ―――」

マイが言い終える前に玄関のドアが勢いよく開かれた。

「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ちょっと聞きたいんだけど、マイの居場所……って、あれ?」
勢いよくハイグレを決めた赤いハイグレ人間は、マイの姿を認めると目を丸くしたまま固まってしまった。
「あ、あなたは確か……」
マイも思わず固まってしまった。
マイはゆっくりと頭の引き出しを開け彼女に関する記憶を探した。
確かこの娘と初めて顔を合わせたのはチアキたちとの洗脳活動を妨害していた所を不意打ちした時。マイは隊長から矢の一撃を受け気絶してしまい、彼女に関する最初の引き出しは静かに閉じられてしまった。
次に出会った時、彼女は完全なるハイグレ人間となっていた。
未洗脳での帰還と嘘をつき油断した呪と斎告をハイグレ人間へと洗脳し、秘密施設を壊滅へと追い込むというハイグレ人間からすれば称賛に値する任務を成功して見せた。
名前はカナメ……。確か呪がそう呼んでいた。
マイは2度も会っているのにまともな会話をするのはこれが初めてだった。

「その格好……あんたハイグレ人間に戻れたのか?」

カナメがマイに聞いた。
「えっと……一応……」
マイが小さな声で答えた。
「てことは祝姉さんも?」
カナメは微かな希望の炎を目に宿しマイに聞いた。

「祝さんは……まだ人間だと思います……」
「そうか……。とりあえずあんただけでも来てもらうとするか」
そう言うとカナメはマイの右腕をぐいっと引いた。

「え、ちょっと……来てもらうってどこへですか!?」
マイは唐突に腕を引っ張られるのは今日だけで2度目だった。

「この街の地球防衛隊のアジトだよ。この街はほぼ制圧したから元防衛戦士のハイグレ人間の基地として使ってるんだ」

元防衛戦士……。……ッ!マイはハッとして自分の左手首に目をやった。
そこにはしっかりとリングがはめられていた。
マイは慌ててカナメの両手首を確認した。
どちらにもリングの姿はなかった。

「あの……」思い切ってマイは聞いてみることにした。
「このリングってハイグレ人間になっても外れないんですか……?」

187 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 04:27:12 ID:l9FCwwWk0
カナメはマイの突きだした左の手首に輝く腕輪を見てギョッとした。

「あ、あんた何でまだそれ付けてんだ?」

「好きで付けてるわけじゃありません。外したくても外せないだけです」
マイはピシャリと言った。

「いや、そうじゃなくて……。普通はハイグレ人間になれば外れるんだけどなぁ」
カナメが自分の左手首をマイに見せた。
「ここだけ日焼けしてないでしょ?ここにその忌々しいリングが付いてたんだよ。ハイグレ人間に完全に転向したら勝手に外れてどっかいっちまったけど」

マイはそれを聞いて心配そうに再び自分の手首を見た。

「まぁあんたはこの次元で一番強い力を持っているらしいし、ハイグレ魔王様への忠誠心があればいいんじゃないか?」

「そうなのかな……」

「そうと決まれば出発だ!」

カナメは今一度マイの腕を握り、踵を返そうとしたとき
「あの……」
マイが再び質問をしようとした。
「今度はなんだよ!」
カナメが逆に聞き返す。

「ハイグレの上に何も着なくていいんですか?」

「ああ。それなら心配いらないよ。この辺りの住人はみんなもうハイグレ人間さ。逆に普通の人間がいたほうが目立っちゃうくらいだよ」

「そうだったんですか」
ミサトと帰るときにも聞こうと思ったが、とうとう聞く事ができなかったので、マイは疑問が解決し満足そうに言った。

「よし今度こそ出発だ!」
カナメはマイの腕を握り直し踵を返した。



カナメの言ったとおり街はハイグレ人間で溢れていた。
2人は無言で基地へと続く大通りを歩いていた。
太陽は火照った顔を半分以上地中に隠していたが、それでも街中をオレンジ色の光で眩しく照らしていた。

マイは長く伸びた自分の影を見つめた。そして影の先でハイグレをする少女2人を見た。
洗脳されたばかりのようで、眩しい夕日に照らされた彼女達の顔にはまだ苦痛の色が残っていた。


―――マイちゃんのお母さんや妹さん、最初から喜んでハイグレ人間になったのかしら?

それは本人の本来の意思や感情を無視して、洗脳で強制的に感情を植えつけてるだけに過ぎないの―――


頭の奥の深いところで祝の声が響いた。

188 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 04:28:03 ID:l9FCwwWk0
元を辿ればこの子たちがハイグレ人間になるきっかけを作ったのはマイに他ならない。

少女達から目を逸らすようにマイは隣を歩くカナメを見た。
カナメだって防衛活動していたくらいだからハイグレ人間には強い抵抗があったはずだ。
マイは直接彼女が洗脳される所をみたわけではいので、彼女が洗脳にどれくらい抵抗したのかはわからない。
カナメも祝の言う通り洗脳によってハイグレ魔王に忠誠を誓っているだけなのだろうか。

「どうした?」
そんなことを考えていると、マイの視線を感じ取ったカナメが振り返った。

「いや、あの……あっそうだ、背中……大丈夫ですか?」
ハイグレする子供たちを見るのが辛かったなどと言えるはずもなく、マイは慌てて誤魔化すようにカナメに聞いた。

「あれは正直効いたよ。でも、あの一撃のおかげでハイグレ人間になれたようなもんだからな。今はあんたに感謝してるよ」

「それなら良かったです。ハハ……」

マイは乾いた笑みを浮かべると、そのまま再び自分の影を見つめた。
幼いころからハイグレが好きで、ハイグレ魔王に忠誠を誓うハイグレ人間に憧れていたマイにとってカナメの言葉が本心なのか判断することはできなかった。
そして心のどこかでカナメが自らの意思でハイグレの虜になりハイグレ魔王に忠誠を誓ったと信じたかった。

ハイグレ側と地球防衛側のどちらにも属したマイは、現在自分がどちらにも属さない第三者になったような感覚を味わっていた。
自分の存在を決めてくれているのは、このピンク色のハイレグとハイグレをした時に感じる昔と変わらぬ快感だけたっだ。
だが、左手の外れないリングと祝の言葉がマイが完全なハイグレ人間へと戻るのを静かに阻止していた。

太陽の姿は消え、残された淡い光が蒼い夕闇に呑み込まれようとしていた。
「あ、あのっ」

マイは夕闇と共に増していく沈黙を破るようにカナメに話しかけた。
「カナメさんは……」

「マイ!?」

マイが生唾を飲み込みカナメに切り出そうとした時、後ろからマイを呼ぶ声と中身の詰まったビニール買い物袋がグシャッっと地面に落ちる音が聞こえた。

「カ、カナ?!」

マイは街頭の灯りに照らされる少女を見て言った。
その少女がカナだと認識するのにマイは少し時間がかかった。
カナは服でもなく、変身したコスチュームでもなく、自分と同じハイグレ姿だったからだ。

189 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 04:28:58 ID:l9FCwwWk0

「マイ!会いたかったよ!」

カナは買い物袋をその場に放置したままマイのもとへと駆け寄って行った。

「私もだよカナ!」

幾度とないすれ違いの末、マイは親友に再開する事ができた。
マイは駆けてくるカナを受け止めようと両腕を開いた。
が、その必要はなかった。

「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
カナはマイの手前でピタっと止まり、ハイグレを決めた。

「あ……そ、そうだよね。ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」

マイは慌てて広げた両腕をハイグレのVラインへと持って行きハイグレして返した。

念願だったカナのハイグレ姿を見る事ができた。
あのカナがハイグレ魔王様の下僕としてハイグレ姿で自らの意思でハイグレをしている。
マイはそれを見るだけで心が躍った。

「カナもハイグレの素晴らしさに気付いてくれたんだね!」

「うん!」
カナは嬉しそうに大きく頷いた。

これからはカナとずっと一緒にいることができる。
ハイグレ人間として、ハイグレ魔王の忠実な下僕として楽しい日々を共に送る事が出来る。
想像するだけでマイの心は躍った。

「こんな素晴らしいものを拒否し続けてたなんて私はなんて愚かだったんだろう」
カナはしみじみと自問した。

「拒否……し続けてた……」
カナの深い意味のない何気ない言葉だった。
しかし、マイの高揚していた気持ちは、その言葉によって深い谷底へと撃ち落とされしまった。

カナも結局は洗脳により強制的にハイグレを好きになっているだけだ……。

マイはそっとカナを見た。カナも急に元気をなくしたマイを心配してかこちらを見ていた。

「マイ……どうかしたの?」

再び俯いてしまったマイにカナが聞いた。

マイはしばらく黙っていたが、やがて唇をキュッと噛んでから話し始めた。
「も、もしもの話なんだけどね」マイは喋り始めてから自分の声がかすかに震えている事に気付いた。「カナやカナメさんたちも洗脳が解けたらまたハイグレを嫌いになっちゃうのかなって考えちゃって……」

長く固い沈黙がやってきたのがわかった。

190 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 04:30:29 ID:l9FCwwWk0
「私は―――」
「なるほどな」
カナとカナメが同時に言葉を発した。
だが、声量と勢いでカナメがカナの声をのみこんだ。
「だからリングが外れてないんだな。マイは隊長達に洗脳されたんだよ。ハイグレ魔王様の侵略活動に疑問と嫌悪感を持つようにね」

「洗脳ってそんな……だって私、ハイグレ魔王様のことは……」

「マイがハイグレ魔王様に忠誠を誓っていることは私たちも疑うつもりはないさ。でも地球征服計画についてはどうかな」
カナメは笑顔を交えながらマイに言う。
「マイ、いくつか質問してもいいかい?」
一呼吸置くとカナメの表情から笑みは消えた。
マイは小さく頷いた。
「心のどこかで、ハイグレを拒否する人は無理にハイグレ人間にする必要はないと思ったりしていないか?」

重苦しい沈黙が流れた。
カナが首を横に振るのを期待するような目でこちらを見ていた。

マイは意を決して首を縦に振った。
振ったというよりも、俯いたという表現の方が正しいかもしれない。
マイが顔を上げるまでには数秒を要した。マイが再びカナを見ると今度はカナが地面を見つめていた。

「やっぱりそうか。確実に洗脳されちまってるな。その様子だと地球人とハイグレ人間の共存なんてバカな事を妄想してるんじゃないか?」

カナメの言葉にマイは心臓を射抜かれたくらいの衝撃を受けた。
妄想と言う言い方は失礼だと思うが、カナメの言った内容はほぼ的中していた。

「バカな事って……そんな言い方はないじゃないですか」
マイは否定することはしなかった。
自分が洗脳されていないと証明するには全ての質問に素直に答える必要があった。
とにかく今は自分の考えを、考えるきっかけをくれた祝の言葉を聞いてほしかった。

「地球征服計画は地球人全員がハイグレ人間になることで完了するんだ。共存なんて甘い考えは―――」

「ハイグレ魔王様に直接お願いすればもしかしたら……」

マイは最初からそのつもりでいた。次、夢を見た時に頼んでみようと。
ああ見えて意外と物分かりが良い面がある。

「ホーッホッホッホッホッホ。呼んだかしら?」

もうすっぽりと闇に包まれた空から聞き覚えるのある声が響いた。

191 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 04:31:47 ID:l9FCwwWk0
「ハ、ハイグレ魔王様!?」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
マイがハイグレ魔王を探そうと天を仰いでいると、カナメとカナは見えない魔王へ向けてハイグレを始めていた。
「あっ、ハッハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
それを見てマイも慌てて続いた。

自分の思いを伝えられるチャンスが突然やってきたとはいえ、ハイグレを忘れてしまった。
マイは穴があったら頭から飛び込んでしまいたい気持ちになった。

ハイグレ魔王はふわりとしなやかに3人の目の前に現れ、やわらかく地表に降り立った。

今、洗脳活動について意見するのはやめておこう。
マイはいつかやってくるであろうチャンスを辛抱強く待つことにした。

「話は全て聴かせてもらったわ。なかなか面白い事を考えるじゃない」

しかし、それを知ってか知らずか、ハイグレ魔王自らその話題に触れて来た。
これはカナメたちも予想していなかったようで、特にカナメは目を見開いて驚いていた。
マイも心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらいびっくりしたが、極力表情に出さないように頑張り、静かに次の言葉を待った。
「でも、残念だけど貴女の期待に応える事はできないわね」

覚悟はしていたが、マイの想像以上にその言葉は彼女の心に重くのしかかった。

「そこのハイグレ人間の娘が言った通りよ。私の計画に共存なんて中途半端なモノは存在しないわ」

カナメの口が溢れる喜びを抑えきれず、しまりのない弧を描いていた。

マイはできるだけカナメを見ないようにして、感情の暴走を抑えながらもハイグレ魔王に食い下がった。
「でも、私と違ってハイグレを嫌がってる人もいますし……」

せめて祝が自分の行いを考えるきっかけをくれたあの言葉を伝えたかった。

「そんな愚か者たちにハイグレの素晴らしさを教えてあげるのが貴女達の役目でしょう?」

「私には出来ません……」マイはハイグレ魔王を直視せず俯いた。言葉の内容が本能的ににそうさせた。
「洗脳してまで嫌いな人にハイグレを着せるなんて私には出来ません……ヒッ!」

恐る恐るマイが顔を上げると、ハイグレ魔王が小指を立て、そこに作り出したピンクの光を眩しく輝かせていた。

「怖がる必要はないわよ。これを浴びれば貴女はハイグレ人間としての正しい思考を取り戻せるわ」

「そうだ。洗脳によって植え付けられた感情を取り除いて頂くだけだ」

「私は洗脳なんかされてない!カナメさん達こそハイグレ光線で洗……キャアアアアア!!!」
マイは抵抗することも出来ず、ハイグレ魔王の作りだした光線へと包み込まれた。

2度も魔王直々に光線を撃ち込まれるなんて、もしかすると史上初なのではないか。
ふと、そんな考えが頭を過った。間もなく電気が走るような刺激が強くなりマイの意識は深い闇へと沈んでいった。

192 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 04:32:33 ID:l9FCwwWk0
(ああ……全身の力が抜けていく……ダメ……もう何も考えられない……私は……私はハイグレ人間……私はハイグレ魔王様の地球征服のための駒……私は魔王様の忠実な奴隷……)
そんなことは最初から知っている。十分理解してる。
重要なことは洗脳活動のやり方であって、そんな当たり前のことは問題ではない。
マイは頭に流れ込んでくる情報を一つ一つ復唱するように受け入れて行った。

(魔王様の仰ることは全て正しい……洗脳活動も私の考えが間違い……間違っていたのは私……でも大丈夫……魔王様のご命令に従っていればもう間違わない……)
マイは次第にその作業に快楽を感じるようになっていった。
私は余計な事を考える必要はない……。
余計なことを考えず命令に従っていれば常にハイグレ人間として正しい行動が出来る……。
ああ……なんて幸せなことなんだろう……。

(ハイグレ魔王様が全ての地球人をハイグレ人間にすること望まれるなら……ハイグレ人間である私はそれに従うだけ……全てはハイグレ魔王様の為に……)

閃光の点滅が落ち着き始め、マイの目が薄く開いた。

「私はハイグレ魔王様の忠実な下僕……地球人全員をハイグレ人間に……全てはハイグレ魔王様の為に……ハイグレ魔王様の命令には絶対服従……私はハイグレ魔王様の忠実な下僕―――」

目を半開きのまま、マイはぽかんと開けた口で、ハイグレ魔王へ忠誠を誓う言葉をうわ言のように復唱していた。

カラン……―――。

アスファルトに乾いた金属音が響いたのと同時に、マイの目がカッと開いた。
その瞳は輝きに満ちていた。

「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」

マイは勢いよくハイグレをすると、ゆっくりハイグレ魔王に跪いた。

「魔王様……さっきは生意気な口をきいてしまい申し訳ありませんでした。これからは心を入れ替え、全ての地球人にハイグレの素晴らしさを教えるため尽力致します!」

その様子からはもう迷いなどは感じられない。

「ホーッホッホッホ、それでいいのよ。今回は洗脳されてたこともあるし大目に見てあげるわ」

頭を垂れるマイを見てハイグレ魔王は気持ちよさそうに笑った。

「ありがとうございます!もうハイグレを拒む愚かな人間たちに惑わされるなんて過ちは犯しません!全てはハイグレ魔王様の為に!」

スッと立ち上がったマイは、ハイグレ魔王へ感謝の言葉を述べると、ガニ股を作り大きく息を吸い込んだ。
それを見たカナメとカナも同じ体勢になった。

「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」

3人はタイミングを合わせ、息の合ったハイグレを捧げた。

193 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 04:33:18 ID:l9FCwwWk0
「ホホホ、アンタたちには期待してるから頼んだわよ」

かつて防衛軍に属していた少女2人が、正気に戻りかけていた少女をハイグレ人間へと引きずり戻す。
ハイグレ魔王は、これ以上滑稽なものはないと心の中で嘲笑しつつも、ハイグレ人間を激励して姿を消した。

「さて、魔王様のお力でマイも正気に戻ったことだし、アジトに行こうか」
魔王を見送り、ハイグレを止めたカナメが言った。
「はい!」
「はい」

同じくハイグレを終えたマイの元気の良い返事に続き、カナが頷いた。。

「え、カナも?」
マイがカナに聞いた。

「言わなかったっけ?私もマイほどじゃないけど夢の力を持ってるみたいだから、カナメさんたちと一緒に活動してるんだよ」

「そうなんだ!じゃあこれからずっと一緒にいられるね!」

マイは顔を笑顔で満たすと、両手をピンと伸ばした。
今度はカナを抱きしめる為ではない。
ハイグレ人間は抱擁以外に喜びを伝え感じ合う素晴らしい方法が存在するのだ。

「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」
マイは下へ真っ直ぐ伸ばした腕を引き上げ、ハイグレを始めた。
もちろんカナもマイと同時にハイグレを開始した。
「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」

「お〜い、そろそろ行かないと本当にヤバいぞ。みんな夕食食べずに待ってるんだから」

その様子を見ながらカナメが半ば呆れ気味に言った。

「あっ!!」
カナは腕を胸元まで持ってきて、大きく体を反らせた状態で固まった。
力なくハイグレの体勢を解くと、カナはバツが悪そうに言った。

「私、晩御飯の材料買って帰る所だったんだ……」

194 ◆AH1BLHW1P6:2010/04/17(土) 05:09:10 ID:l9FCwwWk0
どうも、リレー小説の更新がしばらく滞っていたため、勝手ながら続きを書かせていただきました。誰でも早い者勝ちで書き込めるらしいので、気が向いた方は一緒に盛り上げて行きましょう。

195ラッコ聖:2010/07/28(水) 00:48:24 ID:kF5GMtM.0
カラン……―――。

という音と共にリングが旭山の前に現れ落ちた。

「っ………………!」

旭山には今のを合わせて4つのリングを所持してる事になる。
それは防衛軍の大半がやられたことを意味していた。
そして今落ちてきたリングはマイのものだった。

「…………どうやらまだ祝は無事のようだが、そろそろ危ないだろうな」
そして旭山は今している仕事を中断して祝との合流を優先する。
「クソッ、ハイグレ魔王め……………………」

196ラッコ聖:2010/08/20(金) 00:46:29 ID:FZ/Mn2mo0
一方その頃、祝は夕焼けの道なき道をただひたすらに走っていた。
「ハァ……ハァ……マイちゃん………」
私はマイちゃんを見捨てて逃げてしまった。いや、後で必ず助ける。
だけど……私達にはもうアジトは存在しない。
斎白、呪、カナメ、防衛軍の主力ともあろう者達が全員ハイグレ人間になってしまった。
自体は最悪。祝は旭山との合流を計ることにした。
防衛軍にはアジトの他にもう一つ、私たちの拠点としていた場所がある。
その場所は私と旭山さんしか知らない。
もしかしたらそこへ行けば、この戦いに終止符を打つことができるかもしれない。
私は希望をそこに賭け、向かう

197ラッコ聖:2010/08/21(土) 08:03:04 ID:Ni3NnJGA0
「皆ただいま〜、遅くなってごめんな〜」
カナメさんがそう言い、私たちは元地球防衛隊アジトへ入っていく。
「おかえりなさ〜い。随分遅かったわね。何かあったの?」
そう言って迎えてくれたのは純白のハイレグを身に付けた斎白だった。
「マイちゃん、貴方ハイグレ人間に戻れたのね」
「はい、まあ一時は斎白さんや呪さんや祝さんに洗脳されてましたけどちゃんと元に戻れました」
マイは一拍置いて
「ハイグレこそこの世で一番の存在。全てはハイグレ魔王様のために」
そして改めてマイはハイグレ魔王に忠誠を誓った。
「ま、まあこんなところで立ち話も何だ、中に入ってゆっくり話そう」
「そうですね。これからの洗脳活動方針についても詳しく話す必要がありますし」
カナメとカナはそうマイに促し、中へと入って行った。

198ラッコ聖:2010/08/21(土) 08:52:37 ID:Ni3NnJGA0
マイたちは中にいた元防衛隊の人たちと呪さんとの挨拶と食事を済ませ、
これからの洗脳活動方針について話しだした。

「えーっと、まずこの町の10分の9辺りの人間は全てハイグレ人間に転向してるから…」
「その点はもうはずしてもいいんじゃない?それよりも問題なのは………」
「旭山さんと祝さんですね」

そう、現状一番の敵はこの二人と言って良い。だからこの二人をハイグレ人間にすることができれば最早地球征服はできたと言っても良い。
だが逆に、あの二人にやられてしまえば私たちの戦力が危うくなり、ハイグレの世界が決壊するかもしれない。

「そこは私達の夢の力を使って洗脳すればいいんじゃないですか?」
カナはそう発言するが
「祝姉さんと旭山を舐めたら駄目だ。私達が束になっても洗脳するのは至極難しい」
カナメはこう返した。
「ここはもう知恵の勝負ね。ハッキリ言って知識もあの人たちには敵いそうもないけど、そこは数で補うわ」
「あの、それだったら私、良い考えがあるんですけど………」
マイは言い出した

199ラッコ聖:2010/08/26(木) 10:04:21 ID:Xj08hQLE0
「未洗脳者のふりをして近づくんです。そして祝さんと旭山さんを一つの場所に集める」
「…うーんマイ、それは少し無理があるんじゃないか?」
カナメが不満そうに言う。
「第一にハイグレ人間だらけの街に未洗脳者がいたらおかしい。そしてそんなんじゃどの道祝姉さんに気付かれる」
「待って下さいまだ続きがあります」
どうやらマイの作戦はまだ途中だったようだ。
「その未洗脳者変装者はいわば囮、時間稼ぎの駒です。隙を突き気付かれない程度後方から洗脳光線を出し洗脳」
マイの出した作戦は簡潔にまとめると、未洗脳者に化けたハイグレ人間を二人に近づかせる。
当然二人は警戒はするものの放っておくわけにはいかない。
二人の注意をそっちに向けている間に気付かれない程度の距離からハイグレ光線を撃つ。
考えたら確かに良い作戦だが当然疑問も沸く。そして誰しもが思う疑問をカナはぶつけた。
「あ、でもさそれって未洗脳者のくだりいる?それに撃つ時に一発で当てなきゃいけないよね?」
マイはその疑問を待っていたかのような表情を見せ言った。
「もしそれがなかったら光線の発射音だけで気付かれちゃうと思うよ。確かに狙撃は一発じゃなきゃ駄目だけど……」
「そこは私が先に言った通り数で補うって話ね」
一人で拳銃を撃って的に当たらなくとも100人、1000人が一斉射撃をして当たらないわけがないのだ。
例えるなら懐中電灯を持った100人、1000人の人達から懐中電灯の光を浴びずに逃げ続けろと
言ってるようなものだ。
それにマイたちのこの作戦はハイグレ人間だけではなくパンスト兵も使う。
例え空中から逃げるような行動があれば即座に洗脳できるように、だ。
「うっしゃあ、じゃあ作戦も決まったところだし、行動に移すかあ!」
カナメはやる気満々な目をして立ちあがった。
「じゃあ洗脳区域を分担して洗脳活動を開始しましょう」
斎白はそう言いメンバーを分割した。
「私とカナちゃんと呪のチーム、後はマイちゃんとカナメのチームに分けて洗脳活動しましょう」
「でも、あくまでも本当の目的は祝さん達の潜伏場所を見つけ洗脳だね!」
こうして、動き始めた。

200ラッコ聖:2010/08/30(月) 10:41:17 ID:gXzB.fSo0
『でも、あくまでも本当の目的は祝さん達の潜伏場所を見つけ洗脳だね!』
スピーカーからマイ達の声が聞こえてくる。

「………動いたか」
「はい」

祝と旭山は見事に合流を果たした。そしてその場所のモニターを二人は眺めている。
モニターに映されているのはマイ達だった。

「しかし何故こうも簡単にいくものか。いくら奴等とて監視カメラの存在に気付いていないわけがないだろうに」
「……泳がされている、ということでしょうか」
「だとしたら、あの策でくる可能性は少ないな。そして他の方法でくるのなら大きく2つ」
「全ハイグレ人間で攻撃を仕掛けて来る」

そう。あの策以外で攻撃してくるならば、一斉攻撃以外有り得ないのだ。
一人一人や一部体ずつ攻撃しても相手は無駄に戦力を減らすだけだ。
やるのならその人員の多さから一斉攻撃という最も強く、最も簡単な行動をしてくるだろう。
こういう行動をとってくるのなら、今の内に対抗する術を考えておけば大丈夫だ。
ただ一つ、可能性としてはほぼ0に近いが旭山が一番恐れている事があった。

「……ないとは思うが地球外からの攻撃、例えば人工衛星や宇宙船からの攻撃にも備えておくとしよう」
「地球外……ですか?」
「そうだ。念の為この周辺にも気を付けろ。洗脳効果のある地雷や格爆弾があるかもしれん」

今のトコ、分かっている洗脳方法は玩具型の光線銃からの洗脳。
しかし仮にも奴等はハイグレ人間だ。
分からない部分など幾らでも存在する。
我々はまだハイグレ人間の一部分しか知っていない。
そういう兵器を使った洗脳もあるかもしれない。充分注意しなくてはならない。

「さて、対抗策を練らなくてはな。一番の策はダミーを作っておくことか」
「マネキンでも充分騙せそうですよね」
「うむ。とにかく我々は時間を稼ぐだけで良い。アレを使えば一斉攻撃の方が好都合だ」

アレ…とは祝にも分からなかった。きっとハイグレ人間をまとめて倒す機械だろう。

「では協力者を集めますか」
「ああそうだな。それは俺がやろう」


こうして、二つの勢力の大戦争が始まることになる。

201名も無きハイグレ人間:2010/09/01(水) 19:48:27 ID:yOERXAOw0
GJ!
続き楽しみにしてます!

202コウ:2010/10/25(月) 01:02:36 ID:5S9dkGtc0
しばらく投稿がないようなので、勝手ながら投稿させてもらいます。

タイトルは考えてません。



日々つまらないと思いつつ毎日を過ごしてる人は大勢いると思う。
私、石田由希もその一人。平凡な女子高生で、毎日をただ退屈に過ごしていた。
私は母と二人暮らし、父は私が小さい頃に死んでしまった。
でも母は一流企業の社員だし、むしろ衣食住には恵まれている方だ。
それでも毎日は退屈で、もし居るんだったら宇宙人や未来人や超能力者でも出て来いなんて、どっかのアニメキャラみたいな妄想をしていた…。

203コウ:2010/10/25(月) 01:03:40 ID:5S9dkGtc0
「ゆ〜きちゃ〜ん、起きなさい。」
耳元で聞きなれた母の声がする。私はゆっくりと目を覚ました。
「うう…うわっ!?明るい!」
「当り前じゃない、朝なんだから。ほら、ご飯出来てますよ。」
そういうと母は私の部屋を出た。
私はぼーっとしながら居間に向かった。ふと時計に目をやると時間は午前9時。支度する時間を考えたら、学校には確実に遅刻だ。
「お母さん!なんでこんな時間に起こしたの!?完全に遅刻じゃん!」
キッチンに居た母はニコニコしながら私の方を見た。
「あらあら、さっき学校はお休みって連絡がきたわよ。」
カレンダーを見たら今日はただの月曜日。学校が休みになることに思い当たる節もない。混乱してる私に母は続けて言った。
「今、都心では大変な事件が起きてるでしょ?電車も高速道路も使えないし、だから私も今日はお仕事お休み。」
「はあ?なにそれ?そんな大事件なんかあったっけ?」
「あらあら、昨日の夜、新宿に宇宙船が着陸したじゃない?宇宙船から応答がないから、これから自衛隊が攻撃するそうよ。」
私は思わず笑ってしまった。母は普段から天然で時々何言い出すかわからないときがあるけど、今回はさすがに子供じみた冗談だ。
「お母さん、実は起きたばっかりで寝ぼけてるでしょ?」
「まあ、それはあなたじゃないの。」
母は微笑みながらテーブルに朝食を並べている。
「あなた、昨日は一日中ダラダラ寝てたから、ニュースなんて見てないんでしょ?」
私はすぐにテレビを点けた。ニュースでは確かに宇宙船の映像が映し出されている。しかも、ピカソの絵みたいなヘンテコな宇宙船だ。
子供番組かと思ってチャンネルを回してみてもその映像しか映らない。
「あれ?マジで?」
「ふふふ…でしょ?さあご飯にしましょ。」
母は呑気にしているが、これが本当のことならとんでもないことだ。
「ねえちょっと!逃げなくていいの!?」
私は母に詰め寄った。
「まあ、ここは都心からも離れてるしね。まだ避難命令みたいなのも出てないから、いいんじゃないかしら?」
母はトーストをかじりながら答えた。

204コウ:2010/10/25(月) 01:04:36 ID:5S9dkGtc0
しかし、夜中には事態は変わっていた。自衛隊の攻撃は宇宙船に傷一つつけられないまま終わり、撤退したらしい。
そして次の日の朝…。
「由希ちゃん!大変よ!宇宙人が攻撃してきたみたいなの。早く逃げなくちゃ!」
母が珍しく大声で私を起こす。
「え〜?自衛隊がなんとかしたんじゃなかったの〜?」
私は目を擦りながら母の顔をみた。
「なんとかならなかったらしいのよ。今テレビでニュースやってるわ。」
私は急いでテレビを点けた。リポーターが慌ただしく事の様子を伝えている。
しかし、どうもおかしい。映っているのはなぜかハイレグのワンピース水着を来ている人達ばかり。
「ちょ…。何これ!?」
「あらあら、これはハイレグっていってね、私があなたくらいの頃なんか女の子がこぞって着てたのよ。懐かしいわ。」
「知ってるし!っていうかそこじゃなくて!何これ〜!」
「これはコマネチっていって、あの有名な大物芸人の…。」
「そこじゃないでしょ!もうわざと言ってるでしょ!」
テレビに映し出されていたのはそのハイレグの水着を着ている人達が大声で『ハイグレ』と叫びながら。あの大物芸人のギャグのポーズをとっている映像だった。
「新宿はもはや大混乱です!我々はなんとか攻撃をかわしつつ…キャー!…ハイグレ!ハイグレ!」
普段は可愛すぎる美女レポーターと評判の看板レポーターも、あっという間にヘンテコ集団の一人になってしまった。
「どうも宇宙人の攻撃を受けるとそうなっちゃうらしいのよ。困るわね。」
「マジで?ずいぶん悪趣味な宇宙人だこと。」
私が想像していた宇宙人は、人間を骨に変えちゃうような恐ろしい宇宙人。こんなバブル全盛期みたいな宇宙人じゃなかった。
「じゃあバイクで空飛んでる、ボディコン着た映画のアバターみたいな青い女の人たちが宇宙人!?」
「そうね、話が合いそうだわ。」
母はほほほと笑っている。つくづく緊張感がないと思う。
「逃げなきゃ!お母さん!早く逃げないと!」
「あらら…だけど私が起きた頃にはもう避難誘導の自衛隊が居なくなっていたわよ。」
「ちょーっと!!」
時計を見たら、すでに昼の12時。母は寝坊したらしい。
「逃げなきゃ、ねえ逃げなきゃ!」
「あら、でも宇宙人さんがもうそこに…。」
窓から外を見ると、テレビに映っていた宇宙人が数人、こちらに銃を向けている。
「あ〜…。終わったなあ。」
私がそう言った瞬間、外からものすごい音がした。車のエンジン音らしい。
急いでその方向の窓へ向かうと、スポーツカータイプの車の窓からサングラスをした女の人が手招きしている。
「お母さん!行こう!あの人が助けてくれるみたい!」
私と母は急いで玄関を飛び出し、その車に飛び乗った。途中宇宙人の光線が当たりそうになるも、間一髪でかわした。

205コウ:2010/10/25(月) 01:07:22 ID:5S9dkGtc0
車はすごいスピードで走り抜け、あっという間に宇宙人をまいてしまった。
「あの…ありがとうございます。」
私がそういうと、運転席の女の人はサングラスを外し微笑んだ。ロングヘアが似合う綺麗な人だ。
「あら、加賀見ちゃん!」
母が突然声を出した。
「え?お母さん知り合い?」
「この人は私と同じ京極グループの秘書課の一人。というか課長だから私の上司。」
「ええっ!?若い!」
私の母も実際の歳より若く見えるが、この女の人はどう見ても母より若い。
「ちょっと先輩。上司っていっても私はあくまでも後輩なんですから。」
加賀見さんは慌てて母の方を見る。察するに母は出世が遅れているらしい、まああの性格からすれば、クビにならないだけ恵まれている。
「先輩に娘さんが居たのは知ってたけど、あんまり先輩みたいにぽわぽわしてないわね。顔はそっくりだけど。」
「よく言われます…。というかこの母ですから私がしっかりしないと。」
「ちょっと二人して私をバカにして〜。」
母が泣きそうな顔でいじけている。
「というかなんで助けに?…お母さんを心配して?」
「私個人としてはそれもあるけど、社長の命令でもあるのよ。」
「社長さんがお母さんを?あれ?意外と重要人物だったり!?」
「うーん、話すと長くなるから、目的地についたら話すわ。」
「え?どこに行くんですか?まさか、京極グループだし核シェルターでもあるとか?」
「鋭いわね、まあちょっと違うけど。」
そういうと加賀見さんはさらにスピードを上げた。

206コウ:2010/10/25(月) 01:47:20 ID:5S9dkGtc0
車は都心から少し離れた港で停車した。
「この倉庫がシェルター?確かに京極グループって書いてあるけど…。」
私の目の前にあるのは、港にはよくありそうなただの倉庫だった。
「私もはじめて見たわねえ。」
母も不思議そうにしている。
「先輩は普段、会社のデスクに掛かりきりですから知りませんよ。」
加賀見さんはそういうとリモコンを取り出し、ボタンを押した。
すると倉庫の扉が開き、その奥に地下道への入り口のようなものが現れた。
「すっごーい。」
私が驚いている間に、車は猛スピードで入口へ入っていった。
車が停車したその先は、いかにも戦隊モノに出てきそうな秘密基地!…という外観ではないが、どうやら何かの研究所ではあるらしい。やはり、妄想と現実には多少のギャップがあるみたい。
「へえ…意外とこじんまりしてるんですね。」
「あら?戦車や戦闘機がずらーっと並んでるとでも思った?あ、でも作ってるものはそれに近いかもね。」
加賀見さんはクスクスと笑いながら、サラリと爆弾発言をした。
「加賀見ちゃん…私、会社がこんなことしてたなんて知らないわよ?」
母が戸惑いつつ加賀見さんの方を見た。
「まあまあ先輩、社長の気持ちも察してあげて下さい。」
加賀見さんは頬をかきながら困った顔をしている。
「加賀見さん!御苦労さまでした。」
奥の扉が開くと、そこからこれまたバリバリのキャリアウーマンって感じの女性が出てきた。見た目は母と同じくらいの年齢に見える。
「はい、社長!」
加賀見さんが姿勢を正して答える。
「社長さん!?…にしては若いですね!この会社って若い女の人ばっかりなんですね。」
私が思わずそういうと、社長さんはこちらを向いた。
「響子って呼んでいいわよ。若いって言っても私の周りだけよ。それに私も若いっていう年齢じゃないし。ね、由里。」
響子さんは母に向かってウインクした。由里っていうのは母の名前…。
「あらあら、響子。女性はいつまでも若さを保たなきゃダメなのよ。」
母が笑いながら答える。何かがおかしい、社長と部下の関係じゃないのか?
「先輩と社長は大学の同級生で親友同士なのよ。」
加賀見さんが私に耳打ちしてきた。ますます母と会社の関係がわからなくなってきた。
「それと響子、ちょっと話があるんだけど…。」
母がいままで見せたことのない真剣な表情でいう。
「わかってるわ。…加賀見さん、ちょっと由里と話してきますから、由希ちゃんを別室に連れて行って、色々話してあげて。」
そういうと響子さんは母をつれて先にエレベーターに乗り込んで行った。

207コウ:2010/10/25(月) 02:06:05 ID:5S9dkGtc0
私は加賀見さんと一緒に応接室に入った。加賀見さんは両手に紅茶を持っていて。その一つを私に渡した。
「あ…ありがとうございます。」
私はソファーに座ると紅茶をすすった。
「あなたはお母さんのことを頼りないと思ってるみたいだけど、先輩はああ見えてすごいのよ?」
加賀見さんが唐突に切り出した。
「さっきも言った通り、社長と先輩は大学の親友。社長は京極グループの跡取り娘だったんだけど、先輩は陰でそれを支え続けた。」
「へえ…。」
「ほんとなら私の部下ってポジションもおかしいし、副社長になってもおかしくないのよ。」
母がそんなにすごい人物だとは、生まれてこのかた全く知らなかった。
「でも先輩はね、由希ちゃん。あなたとの時間を大切にしたいからって、出世を自分から拒否したの。」
母は自分の話をあまりしない。特に会社の話は全く。母がどんな仕事をしていて、私のために何をしてくれていたのか改めて知り、私は少し泣きそうになった。
「なるほど、響子さんとあなたがお母さんを助けたかった気持ちがよくわかりました。」
「そうね。でもそれと同時に社長や私にはあなたが必要だった。」
「私…ですか?」
加賀見さんの意外な言葉に少し戸惑った。
すると、それと同じくして響子さんと母が応接室に入ってきた。

208コウ:2010/10/25(月) 02:30:49 ID:5S9dkGtc0
「ゴメンね、由希ちゃん。由希ちゃんがもう少し大人になったら話そうと思ってたことだったんだけど。」
母が申し訳なさそうに私に言った。
「いいよ。っていうかお母さん、私もう十分大人なつもりなんだけど。」
「あらあら、まあまあ。」
私と母とのやりとりを見て、響子さんと加賀見さんが笑っていた。
すると響子さんがソファーに座り話し始めた。
「この研究所は私の祖父の代からあってね。太平洋戦争時代から最先端の兵器を開発するために作られたの。危険な仕事だし、由里には最後まで黙ってるつもりだったけど、こんな事態になっちゃったし…まあ仕方がないわね。」
母も困った顔で頷いている。
「もともと日本政府はアメリカからの情報で宇宙人が居ることは知っていた。そして、私たちは秘密裏に政府から、悪しき宇宙人ともし交戦状態になったときに、それに対抗出来る兵器を研究するように言われてきた。」
全くもってSFだ。宇宙人はいるだろうとは考えてたけど、まさか実際にSF小説みたいな展開に出会えるとは思ってなかった。
「でもなんでそんな話を私に?私がお母さんの娘だから?」
私がそういうと響子さんはリモコンを取り出し。壁に掛けてある大きな絵に向けた。
そしてその瞬間、大きな絵が真横に開き、その奥にガラスケースにはいったボディースーツのようなものが見えた。
「これが私たちの研究の成果。そして、地球と友好を持つ宇宙人から提供された技術で作った、対宇宙人用の強化スーツよ。」
「かっこいい!」
私は率直に思ったことを言った。
「これには対宇宙人用のあらゆる装備が施されてる。さらに本来人間が持つ力を遥かに凌ぐ運動能力を得ることが出来る。由希ちゃん…あなたが着るのよ?」
一瞬時が止まった気がした…。
「えええええ!!!」

209コウ:2010/10/25(月) 03:08:06 ID:5S9dkGtc0
「ちょっと何で?ええ!?ありえない!私があのエ○ァのプラグスーツみたいの着て宇宙人と戦うわけ!?」
「ああ、あのアニメ見てたの?あれ実はうちの元研究員が原作者なのよ。」
加賀見さんが冷静にいう。
「マジで!?ちょ…情報漏洩じゃん!ってそんなことより…。」
「まあ落ち着きなさい。シュミレーションした結果、地球上であれを身につけることが出来るのがあなたしかいないことがわかったのよ。何の因果か…。」
響子さんはいつのまにか紅茶を手に持っている。
「無理無理無理!あ、お母さんなんとか言って!」
「大丈夫よ、由希。響子が絶対に安全は保障するっていってくれてるから。」
「ちょ親!軽いな!お母さんはやっぱり私の知ってるお母さんだ〜!」
出来ることなら逃げ出したい。
すると響子さんがいう。
「そのスーツは核爆発にも耐えるわ。よって安全性は保障するわ。それに、あの宇宙人は殺戮が目的ではないようだし。かと言って、人類が屈してもいい問題ではないわ。」
「でも…。」
私が迷っていると、母が私の方に手を置いた。
「私が響子を信じてる以上に、あなたを信じてる。大丈夫よ、私の娘だもの。すぐに終わらせて帰ってきてくれるわよね。」
「わ…わかったよ…。」
私はとうとう頷いてしまった。
「なら明日にテストして、明後日に出撃とします。ごめんなさい、時間がないの。」
加賀見さんが申し訳なさそうにいう。
「今日お母さんと一緒にゆっくり休みなさい。」
私は母と一緒に部屋を出た。
「社長、先輩…本当は最後まで反対だったんですよね…。」
「仕方がないわ…由里も分かってくれているはずよ。」

210コウ:2010/10/26(火) 02:44:23 ID:6G8wQ.5I0
翌朝、スーツのテストを受けることになった。
スーツ自体は、私のために作られたかのように、私の体にピッタリとフィットしている。
私はガラスケースの中に入り、外には加賀見さんを含む大勢の研究員たちがこちらを見ている。マネキンの気持ちが少しわかったような気がする。
「主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート!」
オペレーターの一人がいう。その瞬間私の身体に電気のようなものがはしる。
正直ちょっと気持ちがいい気もする。
「神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題なし、双方向回線開きます!」
「どう?由希ちゃん。変な感じする?」
加賀見さんがガラス越しに言う。
「大丈夫です、問題ありません。」
私は笑顔で答えた。
「しかし、すごいわね。シンクロ率の誤差が0.3%以内よ?」
少し頬が引きつった。なんかどっかで聞いたことある台詞…。
「ちょっと加賀見さ〜ん。ひょっとして…逃げちゃダメだって言わなきゃダメ?」
「言いたいことはわかるわ。でも気にしないで。」
加賀見さんもわかってるといった感じで微笑んだ。
「これなら問題なく動くことが出来ると思います。」
オペレータが立ち上がって加賀見さんと話している。
私は何も感じない、特にパワーアップしたって感じもないし。
「あなたはいま、何でも出来るようになったのよ?高速で走れるし、飛べるし、どんなに重いものでも持てるし、鉄板も粉々。スーツがあなたの脳とシンクロしてる。まさにスーパーガールなのよ?」
加賀見さんが私の表情を察したのか、ガラスに手を置きながらいう。
「そんなこと言われても実感ないですけど。」
「後で動作テストに移るから、一旦休憩しましょ。時間的にもお昼だし。」
加賀見さんがそういうと、ガラスケースが開いた。

211コウ:2010/10/26(火) 03:14:23 ID:6G8wQ.5I0
私は普段着に着替え、加賀見さんと昨日の応接室に向かった。
扉を開くと、すでに母と響子さんが昼食をとっていた。
「あら由希ちゃん、お帰り。楽しかった?」
母が口元に手をあてながらいう。
「まあね。こんな経験絶対出来ないと思うし。」
「動作テストになればもっと楽しくなると思うわ。」
響子さんがクスクスと笑いながらいう。
「でも言ってることが本当なら、こんなスーツが世の中に出たら、世界がとんでもないことになっちゃいません?これを持ってる国が世界を征服する…みたいな。」
私はテーブルに置いてあるサンドイッチに手を伸ばす。
「だってあなたにしか使えないんだもの、あなたにそういう意思がなければ大丈夫よ。もっとも、私がそんなことに使わせないけどね。」
響子さんも一緒にサンドイッチに手を伸ばす。
「でも、宇宙人が来たら私が戦わないといけないってことなのね。」
「まあ滅多にあることじゃないわ。」
加賀見さんが後ろから私の肩に手を置く。
「こんなことたびたびあっちゃ困りますよ。私は出来れば普通の女の子でいたいし…。」
「あら?あなたいつも毎日退屈で仕方がないって言ってるじゃない?ちょうどいいんじゃないの?」
母がそう言いながら笑っている。確かに私はそう言ってたけど、改めてこうなるとたまったものではない。
「そうそう。宇宙人は、もう既に東京を支配下に置いているみたいね。思ったより早くて困るわ。」
響子さんが唐突に言う。その顔は少しけわしくなっている。
「しかし社長。この施設を知っているのは政府のなかでもごくわずか。そういった要人は避難しましたし、敵に知られるのは当分先の話ではないでしょうか。」
加賀見さんが響子さんのカップにコーヒーを注ぎながらいう。
私は嫌な予感がした。こういう話をしていると、案外敵にすぐ見つかるってフラグが立ちやすい。
「あっ!ダメだ!考えると余計にフラグが…。」
私は思わずつぶやいた。みんなが不思議そうに私を見ている。
しかし次の瞬間、予感は見事に的中する。
場内にサイレンの音が鳴り響き、壁にかかってる赤いランプが点滅している。
「緊急事態!研究所上空に敵多数出現!」
館内放送が響き渡る。
「あーっ!やっぱりー!」

212コウ:2010/10/26(火) 03:48:32 ID:6G8wQ.5I0
私たちは急いで研究所のメインフロアに向かった。中では大勢のオペレーターたちがコンピューターに向かっている。
中央にあるモニターを見ると、空には大勢の宇宙人がひしめき合っている。
「なんでこの場所がわかったの!情報が漏れるわけないのに!」
普段はクールな響子さんが青ざめている。
「でもあれですよね?こういう地下施設って、防御態勢とかしっかりしてるから、なかなか入ってこれないもんじゃないですか?」
私の問いに誰も答えない。すると響子さんがおもむろに口を開いた。
「政府公認とはいえ、一企業の施設だし…まず見つかることを想定してなかったから…。」
「あっちゃー…。」
追い打ちをかけるように、宇宙人は巨大なドリルを取り出して、研究所入口に撃ち込んできた。場内が大地震のように揺れる。
「急いで避難します!全館放送を!加賀見さんは由希ちゃんにあのスーツを!」
「わかりました、由希ちゃん、先輩、急いでこっちに!」
「あ、はい!ほら、お母さん!…ってうわっ!」
私と母が急いで加賀見さんの後についていこうとした瞬間、出入り口が吹き飛んだ。
「大人しくしろ!私はイリアス=アストレイ将軍だ。ここは我々が制圧した!」
奥から出てきたのはイリアスと名乗る宇宙人。しかし、他の宇宙人とは服装が違って、ビキニにTバックなんか身に着けていたりして、いかにもお色気担当って感じの女性だった。
「なぜこんな早くここが?」
響子さんが後ろに下がる。
「ふん!ハイグレ魔王様の力をもってすれば、お前ら地球人の浅知恵などすぐに見抜けるのだ。」
ハイグレ魔王…。それがどうやら敵のボスの名前らしい。魔王ってくらいだからさぞ恐ろしいんだろうなと、意外と冷静に考えてしまった。
イリアスの後に続き、銃を持ったボディコン宇宙人たちが一斉になだれ込み、こちらに銃を向けた。

213コウ:2010/10/26(火) 04:08:16 ID:6G8wQ.5I0
場内に悲鳴が上がる。オペレーター達もどうしていいかわからないようだ。
「あらあら、まあまあ。」
母は相変わらず表情を崩さない。私も意外と冷静なことを考えると、やっぱり親子なんだなって思う。
「さあ、話はこれまで。撃て!」
イリアスがこちらに向けて腕を振り下ろすと、宇宙人たちは一斉に赤いレーザー光線を放ち始めた。
宇宙人の近くにいたオペレーターの何人かに当たる。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
テレビで見たときと同じように、次々にハイレグの水着姿に変えられていく。
私たちのいる方向にも光線が飛んでくる。当たったらひとたまりもない。
「ハイグレ!ハイグレ!」
光線が私のそばにいたオペレーターに当たった。
「まずいわ!みんな急いで非常口の方へ!」
響子さんが私たちに指示を出す。しかし、無情にも銃は響子さんの方向へ向けられる。
「社長!」
響子さんが振り返る間もなく、光線が響子さんに命中する。
「響子!」
さすがの母も叫び声を上げる。
「ハイ…グレ…ハイグレ!ハイグレ!」
あっという間に響子さんは深紅のハイレグ水着姿になってしまった。
「くっ!早く行きましょう!」
加賀見さんが非常口の方へ走りだす。
「お母さん!ほら、早く!」
私が母の手を引こうとした瞬間、今度は光線が母に命中する。
「お母さん!」
私は声にならない叫び声を上げてしまった。
「ハイグレ〜、ハイグレ〜。」
母は紫色のハイレグ水着姿になってしまった。私はその場でへたり込んでしまった。
「あなたが敵を倒せば全て元に戻るわ!ほら、立って!」
加賀見さんが戻ってきて、私の手を強引に引っ張るとそのまま非常口まで走った。

214コウ:2010/10/26(火) 04:24:57 ID:6G8wQ.5I0
私と加賀見さんは宇宙人の攻撃をなんとかかわし、宇宙人がひしめくフロアからは逃げることが出来た。でも、母が敵に撃たれてハイレグ姿になってしまったことを考えると涙が止まらなかった。
「気持ちはわかるわ。でもこうなってしまったら私はあなたに頼るしかない。ほら、これを着て。」
加賀見さんはガラスケースからあのスーツを取り出すと、私に向かって投げた。
「加賀見さん…。すごいですね、あんなことあった後に…。」
「あなたを信じているから。」
加賀見さんは優しく微笑んだ。
私は涙を拭いてスーツに袖を通した。
「さあ、行きましょう!」
加賀見さんが駐車場のある出口の方向へ向かう。
「でもどこへ?」
「新宿よ。」
「えっ!?」
新宿といえば敵の本拠地。こんなことになったとはいえ、それはあまりにも危険な気がした。
「追われるとは思うけど、私のドライビングテクニック知ってるでしょ?」
加賀見さんは微笑むと親指をグッと立てた。

215コウ:2010/10/26(火) 04:52:04 ID:6G8wQ.5I0
私たちは車で研究所を出ると、封鎖されている高速道路へと進んだ。
しかし、敵もやはり私たちが逃げ出したことに気づき、大勢で後を追ってくる。
「やっぱり早いわね!道を変更するわ!」
加賀見さんは建物がひしめく小道に車の方向を変えた。
前と同じように、宇宙人は私たちを見失ったようで、しばらくすると宇宙人の姿は見えなくなっていた。
「やっぱりすごいですね、加賀見さん!」
「でしょ?あなたが免許取ったらいろいろ教えてあげるわよ。」
加賀見さんはウインクするとサングラスをかける。
「でもどうするんですか?新宿まで行けたとして、宇宙船の中にどうやって入るんですか?」
「それはあなたの仕事になるわ。大丈夫、私は見つからないところからあなたに指示を出すから。」
加賀見さんは車に備え付けてある無線機をトントンと指差す。
「実は…ノープランだったりしません?」
「あ…えーと…。」
加賀見さんは少し照れながら頬をかく。
「あはは。大丈夫!私はあなたを信じてるから。」
「…もうそれさっき聞きましたよ?というか最初から私に丸投げだったんですか?もう、頼りになるんだかならないんだか。」
私は目を細めて加賀見さんを見る。
「そこの車!今すぐ停車しろ!私の目をごまかせるとでも思ったか!」
ふと空から声が聞こえて、サンルーフを開けると。飛行バイクにまたがるイリアスがいた。
「やばいわね…。見つかった!」
加賀見さんがアクセルを踏む。
「停車しなければ、これをおみまいすることになるぞ!」
そう言ってイリアスが構えたものはロケット砲。あんなものが当たったら木端微塵だ。
「加賀見さん、これさすがにやばいんじゃないですか!?…そうだ!私は今スーパーガールなんですよね?空も飛べちゃうんですよね?どうすればいいんですか?」
「あなたが普段考えてるようにするだけよ。自分がどうしたいかってことをスーツが脳から読み取ってくれるから。」
「加賀見さん、私…やってみます!」
私はサンルーフから上半身を乗り出した。
「頼んだわよ!」
私が飛べと念じた瞬間、私は勢いよく空へと飛び出した。

216コウ:2010/10/26(火) 05:10:16 ID:6G8wQ.5I0
私が飛び出してきたことに驚いたイリアスはバイクを停車させた。
「ほう、それがお前たちがつくったこざかしい兵器とやらか。ずいぶん頼りなさそうに見えるな。」
「おあいにく様。あんたの持ってるそんなちゃっちいロケット砲なんて、私には通用しないんだから!」
私は自信をもって答えた。
「でも当たるとちょっと痛いかもしれないわ。」
耳元から加賀見さんの声が聞こえる。初通信からとんでもないことを言ってくれた気がした。
「ちょ!核兵器にも耐えるんじゃなかったの?」
「設計上は耐えられるわ。さすがに試したことないけど…。完全に痛みを緩和出来るかはさっきテストするつもりだったから。」
「うわっ!騙されたー!」
京極グループという会社は、やはり母がいるだけあって、もしかしたらちょっとどこか抜けてる会社なのかもしれない。
「ごちゃごちゃ何を話している!くらえ!」
イリアスが何のためらいもなくロケット砲を発射した。

217コウ:2010/10/26(火) 05:33:24 ID:6G8wQ.5I0
私はロケットを間一髪でかわすも、ロケットは方向を変えて私に向かってきた。
「追跡タイプなのね。ウザったいなあ!」
私はあちこちへ飛びまわるも、ロケットは一向についてくる。
その様子を見ながらイリアスはビルの屋上に着地してクスクスと笑っている。
「そのロケットに少しでも触れたら、お前は終わりだ!」
高らかに笑うイリアスを見て、私は少しカチンと来たので、あることを思いつき、進行方向をイリアスへと変えた。
「な…なにをするつもりだ…。まさか貴様!」
私はイリアスのそばギリギリで方向転換をして、ロケットをそのままイリアスに突っ込ませた。
巨大な爆発とともにイリアスの姿は見えなくなった。少し罪悪感を感じる。
「貴様…許さんぞ…この私を侮辱しおって!」
なんとイリアスはあの爆発にも関わらず生きていた。さすがに服は燃えたらしく、あられもない姿ではあるけど、さすが宇宙人、タフだ。
「こんなもの使うあなたが悪いでしょ!ロケットなんてこうなることも考えた上で使わなきゃ。」
「黙れ!今度のはただの弾じゃないぞ!」
そういうとイリアスはどこから出したかわからないが、またロケット砲を構えた。
「この弾は地球でいう核兵器並みの威力をもっている。さすがにお前にも歯が立つまい!」
「ちょ待って!そんなことしたらせっかくあんた達が手に入れた東京がとんでもないことになっちゃうでしょうが!」
私は慌ててイリアスに近づいた。
「そんなことはどうでもいい!私を侮辱した罪は償ってもらうぞ!」
イリアスは完全に頭に血が上っているといった様子で、こちらの話を聞こうともしない。
「さあ、これで本当におしまいだ!」
「ちょっと!ちょっと!」
イリアスが引き金に指をかけた瞬間にどこからか声が聞こえた。
「待てイリアス!誰がそのような無粋なものを使っていいと許可したのじゃ?」
「ハイグレ魔王様…。」
イリアスの動きが止まった。どうやら声の主は敵のボス、ハイグレ魔王であるらしい。

218コウ:2010/10/26(火) 05:50:13 ID:6G8wQ.5I0
声から察するにハイグレ魔王は女性だ。しかしずいぶん古風なしゃべり方をする。
「ハイグレ魔王様!これはその…。」
イリアスはさっきとは打って変わって狼狽しているように見える。
「イリアス、貴様はもうよい。わらわはそこにいる娘と話をしたくなった。…おいそこの娘!わらわに会いたくばこの城まで来い!」
そういうと声は消えた。城というのはどうやら宇宙船のことらしい。
「ハイグレ魔王様の慈悲深い心に助けられたようだな。さあ、さっさと行け!」
イリアスが悔しそうにこちらを睨む。
「あなたもさっさと服でも着たら?まあもともと裸みたいなものだけどさ。」
悔しそうにするイリアスを後目に、私は宇宙船の方向へ飛び立った。
「驚いたわね、敵のボス自らあなたを招くなんて。」
加賀見さんの声が聞こえる。
「話をしたいっていってたけど、どうしよう…。私交渉なんてできないよ?」
「心配ないわ、隙をみて倒しちゃいなさい。」
加賀見さんは笑いながらいう。
「随分さっぱりしてますね。意外と向こうのが本当に慈悲深かったり?」
少したつと私は宇宙船の入り口までたどり着いた。
どうやら人型になってる宇宙船の口の部分が、入口になっているようだ。
「さあ、早くわらわのもとへ来るのじゃ。」
入口の奥からさっきのようにハイグレ魔王の声が聞こえる。
私は入口の奥へと足を進めた。

219コウ:2010/10/26(火) 05:57:25 ID:6G8wQ.5I0
続きはまた後日上げます。見てくれてる人がいたら
感想くださいねヽ(*´∀`)ノ

220コウ:2010/10/26(火) 10:20:53 ID:6l3WjVLg0
声のする方へしばらく歩くと、大広間のような場所にたどり着いた。
辺りは薄暗くてよく見えない。
「よう来たな、わらわが今後この地球を支配するハイグレ魔王じゃ。お前たちがいままで何をしていたのか、わらわには全て見えていたぞ。」
そこにハイグレ魔王がいることはわかるが、薄暗くて姿が確認出来ない。
「千里眼ってやつ?っていうかあなたが街のみんなをヘンテコな姿に変えちゃった張本人ね!姿をみせたらどうなの?」
「ヘンテコなどではない。我が星ではハイグレは正装、由緒正しき装束なのじゃ。」
辺りが少しずつ明るくなり始め、ハイグレ魔王の姿が少しずつ見えてきた。
完全に明るくなり、ハイグレ魔王の方を改めて見ると驚いた。そこに立っていたのは私だった。
髪の色は銀髪で、肌の色こそ他の宇宙人と同じく青いものの、その姿はまるで鏡を見ているかのような気分だった。
「そなたの姿を見たとき、わらわと全く同じ美しい容姿をもった者がおると感動したぞ。」
ハイグレ魔王は二コリと微笑む。
「ありがとう。でも自分がナルシストみたいに見えるからやめて。あとそのハイレグも!」
ハイグレ魔王は純白のハイレグ水着を着ている。
「これのどこが気に入らん?そなたも着ればよかろう。」
「丁重にお断りします!異文化の違いってやつ?…他の人も元に戻して!」
ハイグレ魔王はため息をつき、少しずつこちらに進んだ。
「聞くところこの地球という星で人間は、同じ星の仲間なのにもかかわらず互いに争っているような種族らしいな。そこで、皆がわらわのしもべとなり平等に生きる。それにより真の平和が生まれるとは思わぬか?」
「そういう考え方もあるけどさ、私は今まで通りお母さんと普通に暮らしたいのよ。普通の格好でね!」
「これの良さがわからぬとは、同じ容姿を持つ者として情けない。やはり争うしかないのかそなたらは。」
ハイグレ魔王はこれから戦うというような構えをとった。

221コウ:2010/10/26(火) 10:47:05 ID:6l3WjVLg0
「えっと…何か武器は無いですか?」
私は通信で加賀見さんに伝えた。
「あなたの腰にあるスティックがあるでしょ。それを手にとって真ん中にあるボタンを押してちょうだい。」
加賀見さんの言うとおりに、私はスティックを手に取りボタンを押した。
するとスティックの先から光る刃のようなものが現れ、剣へと変わった。
「…もはやツッコむ気も起きないなあ。」
私が肩を落としていると。ハイグレ魔王も同じようなスティックを取り出した。
「そなたもそれを持っているのか、わらわもじゃ!」
ハイグレ魔王も私と同じように光る刃を出現させた。
「宇宙人のくせに地球のことよく知ってるじゃない。やるしかないってことね!」
私が剣を構えると同時に、ハイグレ魔王はこちらに向けて走り出した。
ハイグレ魔王は自由自在に飛び回り、全方位から私に向かって攻撃してくる。
しかし、スーツのおかげで私も相手の攻撃を読み取り、それに対抗することが出来た。
「なるほど、あの映画の戦いってこんな感じなんだ。」
「何を言っておるのじゃ!」
ハイグレ魔王の攻撃をまた撥ね返す。そうしてしばらく打ち合いが続くも、ハイグレ魔王は一向に隙を見せない。
「そなたもそろそろ疲れてきたであろう。そろそろ終わりにしようぞ!」
ハイグレ魔王が飛びあがって私の頭上を通過し、背後から攻撃を仕掛けようとする。
しかし、ハイグレ魔王が頭上を通過する瞬間、振り向いた私はたまたま相手の服を掴んでしまった。
「あぁん…」
衣服を引っ張られ、ハイグレ魔王が悩ましげな声を上げた瞬間、一瞬の隙が生まれた。
私はその隙を逃さず、ハイグレ魔王の剣を弾き飛ばした。

222コウ:2010/10/26(火) 11:11:57 ID:6l3WjVLg0
ハイグレ魔王は恥じらいの表情でこちらを見ている。
「なんと破廉恥なことをする娘じゃ…。」
「でもその結果がこれだし。」
私はハイグレ魔王の喉元に刃を突き付けた。しかし、ハイグレ魔王に同様する様子が見られない。
「ふっ、魔王たるもの…奥の手は最後までとっておくものじゃ!」
そう言った瞬間ハイグレ魔王の指先から電撃が走り、私の剣を弾き飛ばした。
そしてそのまま、私は全身に電撃を受けた。
「ううっ、これは魔王じゃなくて銀河帝国皇帝の奥の手じゃない!」
「さっきからそなたは何をわけのわからないことを言っている。」
「ううっ…。」
ハイグレ魔王の電撃は、スーツを着ているにも関わらず私の全身を痺れさせる。私は思わず声を上げてしまう。
「ほら…苦しかろう。楽になりたくばわらわのしもべとなるのじゃ!」
ハイグレ魔王が私の傍まで近づいてくる。
私は苦しさから逃れたい一心で、ハイグレ魔王の胸元にある、大きな赤い石がついたネックレスを掴む。
「なっ!それに触るな!」
ハイグレ魔王がそういうと、一瞬電撃が収まった。
私は勘付いてそのネックレスをそのまま引きちぎった。
「返せ!それにわらわ以外の者が触れたら…。」
ハイグレ魔王が初めて同様した。
「これに触ったらどうなるのよ?」
私はネックレスについた石を掴んだ。すると石の輝きは失われ、私の手の中で砂に変わってしまった。
「そんな…わらわの力が…砂に変わる…。」
ハイグレ魔王はその場にへなへなと崩れ落ちてしまった。
「はっは〜ん、なるほどね。あんたの不思議な力は全部この石の力だったってことね。私のスーツと同じじゃん。」
すると加賀見さんから通信が入る。
「ハイレグ姿に変えられた人が元にもどってるわ!今確認した!」
どうやら石の力が消えて、おかしくなった人たちは元に戻ったらしい。これで母や響子さんも元に戻ると思うと、全身の力が抜けて、その場にへたりこんでしまった。

223コウ:2010/10/26(火) 11:31:18 ID:6l3WjVLg0
その後宇宙人と宇宙船は地球から去り、私たちは再び平穏な日々を取り戻した。
そんな平和が一週間続いたある日…。
「ゆ〜きちゃん、起きなさい。今日はあなたに紹介したい人がいるのよ。」
私はいつものように母に起こされる。母はとても上機嫌な顔をしているように見える。
「おはよ…何?紹介って…。」
母が私の部屋のドアを開けるとその先には私が立っていた。寝ぼけてると思って目を擦ってみても、やっぱり目の前には私が立っている。
「まさか…魔王!?」
目の前にいるのはハイグレ魔王だった。しかし、髪の色は銀髪なものの、肌の色は私たちと同じでどうみても人間だった。服も私たちと同じものを着ている。
「今日から私たちと一緒に暮らすことになりました。仲良くしてあげてね。」
母がとんでもないことを言う。開いた口が塞がらない。
「石の力を失い、地球侵略にも失敗したいま…おめおめと我が星に帰るわけにもいかなくなってな、この星に残ることにした。しばらくは京極とやらのもとにおったのじゃが…母上がどうしてもと言うのでな。」
「ん?…母上?」
「ハイグレ魔王って名前は地球じゃおかしいでしょ?だから、私の養子ってことにして新しい名前をあげることにしたの、今日からこの子は石田由美ちゃんよ。ほら、あなたと全く同じ姿だし、妹が出来たと思って…ね。」
母が笑顔でトドメを刺す。
「ええええええ!?」
「母上から聞いたぞ!この日本というところでは皆がこぞってハイグレを着ていた時代があるそうではないか。わらわはその時代を取り戻し、この星を変えてやろうと思ってな!服装の乱れは心の乱れ。まずは意識改革じゃ!」
「勘弁してくださーい!」

224コウ:2010/10/26(火) 11:55:35 ID:6l3WjVLg0
こうして私と母とヘンテコ宇宙人の奇妙な三人暮らしが始まった。
宇宙人襲来事件以後、何故か日本のファッション業界ではハイレグを再評価する声が高まり、なおかつ京極グループの協力もあったりして、日本では再びハイレグブームが巻き起こり、ハイグレ魔王の野望は着々と進行しつつあった。
そして私は…。

「はい、こっちに目線ちょうだーい。もっとセクシーにね。」
私はカメラの前で悩ましげなポーズをとっている。あれほど着るもんかと心に誓ったハイレグ水着を身につけて…。そしてその隣には…。
「姉上!やる気を出さねばダメだぞ!ハイグレを世の中にもっと浸透させるためには、わらわ達が進んで広告塔に立たねばならんのじゃ!」
「待ってよ!私は全然関係ないじゃないの!」
そういいつつも、カメラのフラッシュが光ると反射的にポーズをとってしまう自分が情けなくなってくる。
「あらあら、二人とも可愛らしいわねえ。私の若い頃を思い出すわあ。ねえ響子。」
「そうねえ、あの頃が懐かしいわ。」
「二人ともまだまだ若いですよ。あっ、由希ちゃんと由美ちゃん!双子の美人モデルってことで評判なんだから、もっと自信持ってー!」
母、響子さん、加賀見さんの三人が、他人事だと思って言いたい放題言っている。
「姉上、これでわらわ達の夢が達成される日も近いぞ!スローガンは、普段着にハイグレを…じゃ!」
「何してるんだろ…私…。」

確かに私は前みたいに退屈な日々を過ごすことはなくなった。だが、こんなヘンテコな毎日が来ようとは思ってもみなかった。
これから大丈夫なのだろうか…私…。

                   終

225:2011/04/23(土) 13:32:21 ID:QAUhYwfA0
>>200の続き

ハイグレ魔王はこの星の中心に在る城で現在の侵略状況を確認していた。

「オホホホホ、やっぱりアイツがいないと侵略も順調に進むわ〜」

まだ一都市でしかないものの、確実にハイグレ人間に転向していっている。
この速度でいくならば、近いうちに全ての人間が洗脳されるであろう。
だが―――――

「……でも、このまま何も起こらないなんて考えにくいわねぇ。危険因子は早めに潰しておいた方が無難ね。Tバック!」

Tバックと呼ばれた男は、暗闇から姿を現した。

「お呼びでしょうかハイグレ魔王様」
「ええ、前にアタシだけで地球に攻め込むって行ったでしょう?だけど、今状況が変わりつつあるの」

そう言ってハイグレ魔王は空中に手をかざす。
するとブゥンという音と共にモニターが現れた。
そのモニターには日本地図と、現在残っている地球防衛軍の人間の資料が映し出されていた。

「準備が整い次第、地球防衛軍との戦いに入るわ。数も戦力も此方が圧倒的有利。でも……」
「でも……?それなら確実に勝てるじゃあありませんか」
「そうね。でも、万が一という場合もあり得るわ。本当はハラマキレディーを使いたいところだけど、別の星の侵略に行ってるしね。ここは貴方に任せるわTバック男爵」
「……お任せ下さいハイグレ魔王様」

Tバック男爵はそのまま暗闇の中へと消えていった。
その中で、一人残ったハイグレ魔王は

「恐らく、これが最後の戦い。そこでハイグレ人間が勝てば、地球はアタシのもの」

ハイグレ魔王は静かに、そして不気味に笑い続けた。
そして―――全てが決まる戦争の日がやってくる。

226:2011/04/23(土) 14:21:25 ID:QAUhYwfA0
「マイ、祝姉さんは本当にここにいるのか?」

深紅のハイグレを着た少女、カナメは確認を取る。

「あっはい。近所のハイグレ人間が何人かここで消息してるって情報があって。多分そうです」

マイはカナメの方を見て答える。ここ最近、何人かのハイグレ人間が行方不明になっている。
場所は色々で、固定するのが難しかったが、唯一この山奥の倉庫の様な場所が一番多かった。
旭山達はハイグレ人間を真人間に戻せる力を持っている。
それは、自分たちの基地が発見されても真人間に戻してしまえばバレずにすむということだ。
だが、結果的にはこうデータとして残るのでバレてしまうが。ということで、とりあえずこの場所へ来てみた。

「まあ、あながち間違ってないんじゃないか。ここだと人目につきにくいし、こんなボロいトコに人がいるとは思えねえからな」
「とにかく入らない事には何も始まらないわ。もたもたしてると、こちらの作戦もバレます」

呪と斎告も話に入ってくる。
この戦いに参加するハイグレ人間は1000人弱。
街のハイグレ人間の全員が、この戦いに参加するという事だ。
そして、祝と旭山を洗脳する作戦は当初の予定通り、未洗脳者に化けたハイグレ人間を潜り込ませる。
そういうことで、マイ達は離れた木々の間にいた。
マイ、カナ、ミサト、ヒロコ、ゴロウ、カナメ、呪、斎告など、全ての重要人物が集結した。
そして、作戦は開始される。

「これで、地球はハイグレ魔王様の物に……」

マイは、もうすぐ地球防衛軍の敗北と共に、地球がハイグレ魔王の物となることを想像していた。
だが、少しおかしなことが起こる。

「……?おい、なんか遅くないか?」

しびれを切らしたカナメがつぶやいた。
囮のハイグレ人間が倉庫内に入って5分、合図もないし、出て来る気配もない。
何かあれば、悲鳴の様なものも聞こえてくるはずだが、それすらない。

「……ひょっとして、ここにはいないんじゃないんですか?」

すると、後ろから大勢の悲鳴があがった。
「っ……!!まさか!」

227:2011/04/23(土) 14:45:45 ID:QAUhYwfA0
マイ達が後方へ向かうと、そこにいたのは、

「な、何アレ!?」

人間には変わりない。だが、鏡みたいな鎧を着て、巨大なハリセンを持っていた。
そのハリセンで叩かれたらしく、数人のハイグレ人間は気絶している。

「くっ……とりあえず撃って!」

そう聞いて全員がハイグレ銃で光線を撃つ。その光線量は凄く、周りが全て照らされる。
だが、鏡の鎧という事は、その光線すらも全て跳ね返す。

「きゃああああああああああああ!」

その跳ね返った光線は、ハイグレ人間へと当たる。
元々ハイグレ人間なので、それといって効果はなく目がくらむ程度ですむ。
しかし、その目のくらむ瞬間が命取りだ。
目がくらんでいる間に、鏡人間(仮称)はハリセンで次々と気絶させていく。
どうやらその場で戻すようなことはしないようだ。
ハイグレ人間の数が多すぎる以上、戻す速さよりも再洗脳の方が圧倒的に速いからだ。
それよりは全員を気絶させた後に、まとめてやったほうが効率がいいということか。

「くぅぅぅ!旭山のヤロー!こんな姑息な手でくるとは思わなかったぜ!」
「とりあえずあの鎧をはずそう!そうすればこっちも攻撃できる!」

ハイグレ人間達は光線を撃つのをやめ、鎧を脱がしにいく。
だが、無闇に近づいてもハリセンで張り倒されるだけだ。
全方向から行けば、流石に旭山とて対応しきれないハズ。

「さあ、これでおしまいだああああああ!」





「それはこちらのセリフだな。ラグド・アフェタ!」

228:2011/04/23(土) 15:22:41 ID:QAUhYwfA0
「えっ……」

鏡人間の方を向いていたので、その攻撃は不意に撃たれた。
光の矢は、真っすぐと飛び、呪の背中を貫いた。

「あああああっ!!」

矢は背中からへそのあたりを貫通して、呪を動けなくする。
全員が声のした方向を見ている。その場には旭山がいた。
予想外の展開に、全員がポカーンと唖然していた。

「何で、旭山さんがそこに……って、じゃああの鏡人間は…っ!」

そう言ってマイは鏡人間の方を向くと、大多数がもうやられていた。
どうやら、あの鏡人間は祝だったらしい。
こちらの戦力は数えて600人ほど。400人がこの鏡の鎧による仕掛けにやられたのだ。
加えて、全員がハイグレ人間ではあるが、このまま全滅すれば危うい。

「だ、だけどまだこっちの方が優勢!本物が出てきたのならやりやすいよ!」

そう言ってカナは旭山の方に走る。
他のハイグレ人間達も旭山の方へ光線銃を向ける。
鏡張りの人間でなければ光線は有効。当たれば洗脳出来るのだ。
だが、彼女たちは旭山の出現により焦っていた。
だから冷静な判断など出来はしないのだ。

「ごめんなさい、ダイアモンドシュトロウム!」

そう声がしたかと思うと、空から氷の槍が一斉に降ってきたのだ。
それらは何人かのハイグレ人間を突き刺した。
ハイレグ水着が砕けるようにバラバラになる。そしてそのまま全裸で倒れ込んだ。

「祝……姉さん…ッ!」

祝は後ろの鏡人間でもなく、空からゆっくりと降ってきた。
全員の注意が旭山や鏡人間の方へ向いているときに不意打ちを食らわせたのだ。
あの鏡人間は、どうやら行方不明となった元ハイグレ人間のようだ。

「さて、主要人物は全員そろったようだな」
「……待ってて皆。すぐに元の姿に戻してあげるから」

こうして防衛軍の人間が姿を現した。それまでに出たハイグレ側の被害約500人。
旭山は手に2mを超す巨大な弓を、祝は細長い蒼く輝く槍を持っている。

「面白いです。私達は絶対に負けない。ハイグレ魔王様の祝福を受けない奴なんかに絶対に負けない!」
「祝姉さん……アンタにも、ハイグレの素晴らしさを分からせてやるからな」

戦争はさらに、激しいものとなっていく。

229:2012/11/23(金) 10:31:50 ID:vTT3hKBg0
a

230名も無きハイグレ人間:2013/08/14(水) 19:44:14 ID:8T2SRf1Y0
挙げです

231ハイグレ人間禪院真希:2022/02/09(水) 12:48:17 ID:Ioia2rhg0
ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!


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