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☆投稿 小説 スレ ☆
107
:
pppp
:2013/10/13(日) 09:56:26
後輩おもらし大作戦
一瞬の沈黙が教室に谺したあと、静かに立ち上がったその男に、教室中の目が注がれた。
その男は、これまで会議を静観していたサッカー部部長、拓也であった。
「義岡せんせー、つまり結局んとこ、問題を起こすなってことっすよね?」
両手をズボンのポケットに突っこんだまま立ち上がる拓也を、鋭い眼で睨みつけながら義岡がそれに答える。
「・・・ああ、そうだが」
「あー、じゃああれっすわ。もういいや。責任とって俺部長やめますよ。てか、サッカー部辞めますわ。高橋が次期部長ってことで。これでいいっしょ?」
拓也の言葉に部員たちは驚愕し、騒ぎだしたい。
しかし、この空間の威圧感がそれを抑え込む。
目を見開く雄大と、怒りに燃える義岡、そして自暴自棄ながら不敵な笑みを浮かべる拓也。
「ちょ、まじかよあいつ!」教室の外で大樹が声を上げる。
「大樹、声大きいって。もうちょいトーン落とせ」たしなめる亮太。
舐めた態度に拳をわなわなと震わせる義岡に代わって口を開いたのは、渡辺であった。
「拓也、そういう問題じゃない。お前は昨日暴行に遭ったばかりだから、理性的な判断は難しいかもしれない。お前とあの3年の間に何があったかは、今後話を聞いて行くが、それとこれは話が別だ。辞めることは責任を取ることなんかじゃない、最も真逆に位置する行為なんだ。しっかりと向き合わないといけない。もちろん、一番責任を取るべきなのは俺だし、お前たちを傷つけてしまったことは本当に申し訳なく思っている。色んな事の真相が分からない以上、お前たちを糾弾するのはおかしいし、真相がわかったとしてもそういうことをしたいわけじゃない。学校は授業を受けるだけの場所じゃない、規律を学ぶための場、人格形成のための場でもあるんだ。このサッカー部は決して他校に比べて強いわけじゃない。でも、サッカーの技術だけのために部活動があるわけじゃない。今回の様々な問題に対して、お前たち一人ひとりがどう考えるのか、何をすべきなのか、どう変わっていくべきなのか、しっかりと考えて欲しい。もちろん、俺も、他の先生も、お前たちのことを見離さないし、全力でサポートしていく。だから、今の現状を主体的に考えて欲しいし、お前たちがどういう風に考えているのかが知りたかったんだ。翔太、雄大、拓也。お前たちの考えはよくわかった。立派に発言してくれてありがとう。そして、拓也。お前が今何をすべきなのかをもう一度よく考えてくれ」
珍しく熱く語る渡辺の話を、一同は真剣に聞いていた。そしてまた、暫しの沈黙が訪れる。
「義岡先生、ひとまずはこれでいいんじゃないですか」
「・・・わかりました。お前たち、渡辺先生の言ったことをよく考えておくこと。いいな」
そう言うと、義岡は教室を後にし、緊張の解けた教室に喧騒が広がっていった。
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