したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【初めての】練習場【バトロワ】

1名無しさん@マッカいっぱい:2006/06/27(火) 11:26:24
書いてみたいけど、本スレに晒すにはまだ勇気がない。
ネタ思いついたんだけど、ちゃんと書けるか自信ない。

そんなあなたのために、ご用意しました。
立派な職人になるための、後一歩の勇気をここでどうぞ。
みんな始めは初心者さ。
『 コ ン ゴ ト モ ヨ ロ シ ク …』

4名無しさん@マッカいっぱい:2006/06/28(水) 17:36:53
いい感じに他の人と繋がりそうだね
そのネックレスが今後どうなるのかが楽しみだ
続きが気になる…

5名無しさん@マッカいっぱい:2006/06/28(水) 22:05:40
いい感じだと思う。南条君が冷静なのがいい。
本スレに出しても十分遜色が無いと思うのだが…。

6南条編 ◆EODEMiHzlE:2006/06/28(水) 23:46:55
急にバイト入った・・・('A`)ってか感想、嬉しいっす
SSって書いたけど・・・かなり長くなりました。文章まとめられない
>>4
自分の構想では、明後日までにこのエピソードは終えるつもりです
もちろん、他の書き手さんが不必要な部分を削り、加筆するのは大歓迎です
特にネックレスとか使えないですし、この稚拙な文章じゃ読みにくいですし
>>5
そんな言葉頂けるとは、光栄です
ただ、何よりも心配なのがこの後の展開
一日目、正午〜午後2時までに、未プレイのくせしてif.ハザマを拝借して絡ませるつもりです
キャラをしっかり立てられるかどうか・・
ハザマの心理描写等は抑えるつもりです

あくまでテストなので気楽にやっています
どなたか他の書き手の方の役に立てれば、
ついでに練習場の繁栄にも繋がればな〜と、思いつつ書いてます。

では、続き投下してみます。

7南条編1/3 ◆EODEMiHzlE:2006/06/28(水) 23:49:43
物事は非情な程に唐突だ。未知との遭遇、それ以上の事態。
園村 麻紀・・・名詞が単語となり、それは生を持ち、体内を飛び回る。
極度の麻薬中毒者は、幻覚で虫を見たり感じたりする様だが、それと似ていた。
彼の頭に出現し、それは体内を恐ろしいスピードで駆け巡った。
やがて、その蟲が胸部に達し、針を刺す。心臓に痛みを感じる。

「バっ・・・バカな・・・園・・村・・・が?」
「そ・・そんな・・・あっ・・あっけなさ・・・過ぎる・・・」

南条は肩を落とし、畳に潰れる様に倒れ込む。身体に力が入らない。

「う・・嘘だ・・・嘘を・・つくな・・・」

誰も答えてはくれない。


・・・・・・

南条は、今後の活動方針を決めた後シルバーマン宅内の捜索をした。
どうやら家主は武芸に富んだ者らしく、いくつかの武具を発見した。
その中でも最大の収穫は刀身74cm程の日本刀だろう。
細部に亘り手入れされており、魔物はともかく、対人戦闘なら十分過ぎる戦力となる。
柄は付いておらず、中心(握る部分)に職人と思われる名前が彫ってある。
【アサノタクミ】。名前に聞き覚えは無い。
戦国時代には活躍していなかった職人、もしくは名前を変えたのかもしれない。
どちらにしろ、強力な戦力を手に入れた。
付属されていた木の柄を刀身に付け、構え、そして鞘に収める。
他に鎖帷子(くさりかたびら)も発見した。
銃弾は分からないが、刃物ならある程度は防げるだろう。
後は収穫と呼べるものは、食料くらいしか無い。

南条は最も見晴らしが良く、人の侵入も察知しやすい玄関付近の居間で休息を取る事にした。
壁を背にし入り口の方を向き腰を下ろした。睡眠、とまでは行かないが、
体と脳を休ませる為にしばらく思考回路を停止させた。

・・・・・・


<やぁ諸君・・・がんばっているようだね・・・では死亡者を読み上げるよ・・・まず・・・>



「(落ち着け・・・落ち着くんだ・・・)」

呼吸が落ち着いてきた。南条は無意識に、ゆっくりと身体を起こし刀を鞘から出し身構えた。

「(・・・冷静になれ・・・生き延びる・・・生き延びるのだ・・・)」

8南条編2/3 ◆EODEMiHzlE:2006/06/28(水) 23:50:55
南条にとって、大切な人間との死別は、これで二度目。
一度目は南条家執事との別れ。
他の誰よりも、共有した時間が長く、【セベクスキャンダル】以前の南条の思い出と呼べる記憶の九割、
つまりほぼ全てが彼と過ごした日々だった。血の繋がりは無い。
しかしそれ以上の繋がりが、そこにはあった。

今回の園村 麻紀の死。あの事件に共に立ち向かった仲間。
お互いがお互いを助け合い、共に成長していく。黄金の日々。
ただの友人、同級生では無い。仲間。そして親友では無く、信友。
園村 麻紀の死。それは、南条にとってあまりにも残酷過ぎた。
初めて感じた、他者の温もり。
そして、初めて他者に与える、いや、純粋思惟から他者の役に立ちたいと感じた、初めての対象が園村 麻紀だった。

歪んだ帝王教育により、南条は人の上に立つべくして育てられた。
他者は、自分の土台となるべく存在する。
事実、学園での成績も南条の下に、南条以外の人達が居た。
それは生身の人達だが、それ以上でもそれ以下でも無い、ただの人。
南条にとっては、それは当然の事だった。

【セベクスキャンダル】は、彼に教えてくれた。
森羅万象、例え神だろうと人を操る権利など持たない。
他者を認める事が出来、初めて他者に認められる。操るのでは無い。協力。
そして、何よりも人は、南条に成長を与える。光、光を持っていた。
太陽が消えた。しかし星は生き続けた。新たな星達に支えられる。

しかし、その星の一つが堕ちた。最期の発光すらできずに。

9南条編3/3 ◆EODEMiHzlE:2006/06/28(水) 23:52:20
友の死による喪失感。そして、深淵へと叩き落とされる絶望。
しかし、それとはまた違う感情が、南条には芽生えていた。
今回の馬鹿げた殺戮ゲーム、そして仲間、園村 麻紀の死。
その二つを重ね合わせると、一度目に経験した生命の消失とは、性質が全く異なる。
例え、少女とは言え一緒に強大な敵と戦った、同じペルソナ使い。
そのペルソナ使いが、たったの開始3時間以内に殺害された。
事態は彼が考えている程、甘くは無かった。死と隣り合わせ。

「(すぐにこの場所を離れるんだ・・・早く・・この民家から出て行かなくてわ・・・)」
「(・・・ッ!何を考えているんだ!?この民家以上に立地を理解している場所など他に無いだろう!?
  落ち着け!ここは安全だ・・・。ここは安全だ・・・。)」

南条は冷静だった。すぐにこの場所を離れる。
本来の状態ならば、彼はそう考える以前にこの場所を離れていた。
禍福無門、藤堂、桐島、彼等にも平等に危機が訪れている。
彼等の元に向かい、彼等と共存する為、南条は我が身を省みずこの民家から飛び出していただろう。

しかし、今まで経験した事の無い恐怖と絶望により阻まれる。


「(・・・とりあえず・・・正午まではここに潜んで・・・様子を見よう・・・)」


凍り付いていた心は、最愛の人との別れ、仲間との冒険により溶けて熱を持った。


「(生き延びるのだ・・・死?馬鹿な。この僕が死ぬ訳無いだろ・・・クソッ・・・)」


凍っていた心は急激に熱を帯び、壊れ易く、もろくなった。


「(・・・どうして・・・どうして君が居てくれないんだ・・・どうしてだ・・・山岡・・・)」

誰も居なかった。南条は独りだ。


 【南条 圭(女神異聞録ペルソナ)】
 状態:園村の死により、軽度のPANIC状態
 武器:アサノタクミの一口(対人戦闘なら威力はある)
   :鎖帷子(刃物、銃器なら多少はダメージ軽減可)
 道具:ネックレス(効果不明):快速の匂玉
 降魔ペルソナ:アイゼンミョウオウ
 現在地:シルバーマン宅/蓮華台
 現在時刻:午前6時頃
 行動方針:生存

10南条編 ◆EODEMiHzlE:2006/06/29(木) 00:07:55
あれだけ読み返したのに
投下すると書き直したくなる無限ループ

ってかライドウVSハザマ午前7時に変更か
じゃあ9時〜10時頃にハザマと絡ませて頂きます
・・・練習だし、許可取らなくても良いのかな・・・
都合悪ければこっち即削除の方向で

11名無しさん@マッカいっぱい:2006/06/29(木) 00:14:35
南条君の話、是非本スレに投下していただきたい。
他作品が解らないのなら、解る人にバトンタッチするのも手だと思う。

12名無しさん@マッカいっぱい:2006/06/29(木) 00:58:11
南条君乙です!
同じく本スレに投下キボンヌ。
わからない作品のキャラの口調はファンサイトとか巡ると参考になるかも?

13南条編 ◆EODEMiHzlE:2006/06/29(木) 04:55:14
一応こっちにレス
>>11
そう言って頂けると本当に嬉しいです
>>6と本スレに書いた様に都合の良い所からバトンタッチ、
他の書き手さんが一部削除、加筆を加えても良いと考えています
他キャラクターの重要な道具(comp等)持たせるのも面白いかもしれませんね
>>12
感想とアドバイス、本当にありがとうございます
ファンサイト巡り!是非とも参考にさせて頂きます!

一応三人称視点(フラットでは無いが)なんですが、完璧に南条寄りの三人称視点して
ハザマはセリフ行動描写のみも面白いかなーと思います。
後にハザマサイドから見た〜みたいの書いてくださる書き手さんが居たら更に面白いかと
ともかく、今日中に半分は投下するつもりです

14 ◆XBbnJyWeC.:2006/06/29(木) 19:48:50
バレスレを下げるためにageがてら作品投下。
続き書くかもしれんけど、本スレに投下するのはオソロシス。

うっすらと差し込んでいた日の光は今ではもう部屋を照らすまでになっている。
死亡者報告が開始された時には日が昇り始めていたことを確認してから人修羅はしばらく眠っていた。
左肩の銃創はまだ癒えてはいない。しかし気にする必要もないだろう。
再び身体を壁に預け、白い壁へ溶け込む背景のようにかかった時計に目をやる。
「1時間程眠ったのか」
時を刻み続けるそれの音だけが、静かに教室内を響かせ、
ぼんやりとする意識の中で彼は今後の行動について考えをめぐらせた。

ここはボルテクス界ではない。
ましてやアマラ深界ですらない。
悪魔ではない、人が歩き回れる世界のはずだ。
少なくとも彼が立っているこの学園を見るかぎり、東京受胎前の世界に近いと考えて問題ないだろう。
だが、結論を出すにはまだ早すぎる。
この世界がどんな場所なのかまだ完全には把握しきれていないのだ。
そうなると、流石にこの格好で歩くのは目立つ。
参加者以外に人は居ないとはいえ、頸の刻印を見せながら歩くことは、
自ら獲物をおびき寄せているようなものだ。

――わざわざ狩る必要もないだろう。そこまで僕は血に飢えてはいない。

彼は立ち上がり、薄いカーテンを引きちぎり、頭からすっぽりとかぶった。
暗がりを移動するならこれで目立つことはないだろう。
だが、どこへ行く?
この学校に掲示されているものが全て日本語であり、
午前6時に日の出、午後6時に日の入りということは、太陽が正確な方位を示すのは知っている。
日の出の方角はほぼ真東。
現在の場所は、学校から太陽を背に右手、北に山、正面、西に公園があるということは、
ルールブックに挟まれていた地図によれば、おそらく蓮華台。
七姉妹学園と呼ばれる場所なのだろう。
スマル市全体の中心に放り出されてしまったことになる。
誰がどこへ向かうにしても、この場所は通ろうとするだろう。
中心部で留まるということは、人に出会う確立が高くなる。
わざわざ主催者が喜ぶことをしてやる必要は無い。
ましてや誰かと共に行動するなど今の彼には難しいことだ。
仲魔の集うだろう場所へ行こう。
好き好んで悪魔の出る場所に来るヤツなんて、悪魔を使役するヤツくらいだろう。
もしも出会ってしまったら――殺ればいい。仲魔に血を見せてやるのも悪くない。

15 ◆XBbnJyWeC.:2006/06/29(木) 19:49:47
「先生、そろそろお別れです。」
床で横たわる女に向かって凍りつくような視線を投げかけそう告げると、彼の手から光が迸った。
光は闇を呼び、稲妻が落ちたかのような轟音と共に実体化する。
「オ呼ビ デスカ」
声を発するその闇は、床から巨大な頭を突き出した状態で目をぎょろりと人修羅へと向けた。
「アバドン、これを始末しろ。」
少年は顎で祐子を示した。
「喰ッテモイイノカ?」
「ああ。かまわない。ただし骨一本、血の一滴も残すなよ。」
形跡を残すということは、ここで起こった証拠にもなりうる。
できるかぎり己の存在を消していたい。
これ以上人との接触は避けたかった。
「…御意。」
悪魔は祐子の白い頸に喰らいかかった。
全てを飲み込むほどの口を開け、バキバキという音を立てながら人の形を崩していった。

「儚いな」
原型がなくなったその肉片を見下ろしながら、少年はポツリとつぶやいた。
人は全て滅んだ。もうそれでいいじゃないか。
  (初期の原因は違っても結果引き起こしたのは自分じゃないか。)

思考に何かが挟まってくる。悪意のない純粋な答えだろう。
だが決して肯定などしたくはなかった。

何故今さら思い起こさせるんだ。
  (ずっと考え続けていたはずだろ?何故逃げようとする?)

僕は悪魔として生きていたかったはずだ。
  (本当か?答えが欲しかったから先生に声をかけたんだろ?人でありたいのだろ?)

違う!僕はもう、人じゃない。

16 ◆XBbnJyWeC.:2006/06/29(木) 19:50:21
――オマエハ、元々人間ダゾ…
心の奥底で邪な笑みが聞こえてくる。
「…またか」
迷彩服を着た男と戦った時に聞こえた声と同じだ。
だが聞いたことがある声。どこで聞いたのか思い出せなかった。

――本意ハ 人トノ 関ワリヲ 絶チタクハ無イノダロウ? ククク…
「さあ、どうだろうな。」
知ったことじゃない。今さらどうだっていい。
関わったところで現状を変えられるわけでもない。

――ダガ オマエハ 恐レテイル。裏切ラレルコトヲ 人ガ己独リニナルコトヲ
   孤独ヲ誤魔化スタメニ 仲魔ト離レラレナイデ イルノダロウ?
「さあ、どうだろうな。」
煩い。

――逃ゲルカ。悪魔ニナロウトモ 所詮人ノ子ヨ ククククク…
「黙れ!」
腹の底から沸き起こる憎悪。
ふいに全てを滅ぼしてしまいたくなる感覚。
焼け付くように全身を駆け巡る悪魔の血。
感情に呼応したように赤く鋭く光る瞳。
背後から聞こえる歓声。
人を喰わせろ、血を見せろ、欲望を満たさせろ。

「――少し、黙っていろ。」
狂喜を見せる気配に少年は一喝を加えた。
ざわめきが嘘のような沈黙。
足元にはもう祐子を喰らい尽くしたのだろう、巨大な頭が少年をぎょろりと凝視していた。
「終わったのなら還れ。おまえへの用はもうない。」
言い終わるが早いか、少年は手を横へと払った。
悪魔はその姿をすっと消した。

さっき山の方角から声が聞こえた。
このまま留まっていてはまた面倒に巻き込まれる可能性がある。
兎に角この街の情報を得よう。
参加者たちをどうするか、考えるのはそれからでも遅くない。
少年は狂喜と静寂という相反する感情を抱えたまま、日の光が入り込む窓からその身を躍らせ、
フードを目深にかぶり、すっかり明るくなった外へと繰り出した。

時間:7時半ごろ
【人修羅(主人公)(真・女神転生Ⅲ-nocturne)】
状態:軽症(左肩銃創)
武器:素手(右ストレート:但し各スキル運用が想定される)
道具:煙幕弾(9個)
仲魔:アバドン(他色々)
現在位置:七姉妹学園より青葉区方面へ移動開始
行動指針:最終的には元の世界へ帰る

17セーブ機能 ◆XBbnJyWeC.:2006/07/04(火) 12:23:54
バレスレ下げるためage

18名無しさん@マッカいっぱい:2006/07/05(水) 05:12:04
思いつきで書いたくだらない文章、投下します。
*本作品はフィクションです。実在のバトロワスレ・今後の展開・黒幕とは一切関係ありません。多分。*

19主催者の一人・鈴木:2006/07/05(水) 05:13:28
いくつもの巨大なモニターが壁一面に並んでる薄暗い部屋で、一人の男が時を待っていた。
その部屋にはまるで空港の管制室のように壁一面に画面が並んでいる。それは「参加者」を映し出していた。
所々、何も映っていない箇所があるが、それはきちんと機能している。映し出すべき対象がもう存在しないだけで。

男はグラスに並々と注がれたワインを少し口に含むと、鮮やかな装飾が施された腕時計に目をやった。
そろそろだ、と 誰かが見ているわけでもないのに襟を整える姿はどこか滑稽である。

「時間ですな・・・」
男は何度か喉を鳴らすと、マイクのスイッチを入れた。

「諸君、夜の闇は去った。定刻である。」
時折、手元にあるA4サイズ程の原稿を見ながら、威圧感のある口調で「参加者」に語りかける

―我が元へ参った魂の名を告げる。 名は一度しか言わぬ。心して聴くがよい。―

少し間を置いてから赤字で書かれた人物名と思われる箇所を読み出した。
一人一人、ゆっくり丁寧に、しかしながら凍りつく程冷酷な印象を与えるような声で読み上げていく。

全ての事項を放送した事を確認すると、最後にこう付け加え、マイクのスイッチを切った。
「迷える魂たちよ。生への執着が御主らを追い詰めるであろう。
死者の数はまだ少ない。精々殺しあうがいい―――。」

ふう、と男は浅いため息をつくと、再びピルスナーグラスを口に向けた。

男は薄笑いを浮かべながら、空いたグラスにワインを注ぐと、「Zayin」と表示されている画面に目を向けた。
「我が半身よ・・・そして大いなる主よ、今しばしの辛抱ですッ」

一人呟くと、男は注いだワインを一気に飲み干した。

20名無しさん@マッカいっぱい:2006/07/05(水) 05:17:36
なんつうか・・・いや多分無いと思いますけど、もしもこの人が裏方っていうのを
構想していた作者の方がいたらごめんなさいっ!いや、無いよね。投票でも一票も入ってなかったもんね!

お粗末な文章でした。回線切って首吊ってきます。

21名無しさん@マッカいっぱい:2006/07/05(水) 23:33:35
乙です!

裏方ってのも渋くていいですね。私は鈴木がいてもいいと思いますよ。

22名無しさん@マッカいっぱい:2006/07/06(木) 00:10:30
鈴木って何に出てたっけ?真2?

23名無しさん@マッカいっぱい:2006/07/07(金) 14:03:43
旧女神Ⅱに出てきたサタ○の仮の姿
「鈴木の名刺」ってアイテムを持ってないと会う事が出来なかった気がする

24名無しさん@マッカいっぱい:2006/07/07(金) 20:03:05
総合雑談>101で、三人娘書いてみましたと言ってた者です。
この子達はガンガン戦うタイプではないので、
心理描写を多めにしてみたら、とんでもなく長くなってしまいました…orz
なのでテストとして一部投下します…。

ちなみに舞耶は罰ED直後という気持ちで書いています。

25誰も傷つけない戦い:2006/07/07(金) 20:06:39
「我が元へ参った魂の名を告げる」
朝六時、たったそれだけの簡潔な前置きで、死という非日常が告げられる。
三人はその最初の死の宣告を、スマイル平坂の倉庫――フロアと違って悪魔が出ず、
休憩できる椅子がある場所で聞いていた。
厳かだが感情のこもらない声が、死人の名前を口にしているとは思えない調子で、淡々と名を読み上げてゆく。
その朝報告された死者は、全部で十一名。
タヱとネミッサは、たった数時間でもうこんなにと、恐怖と嫌悪、緊張に顔をしかめたが、
知った名前がなかったことに罪悪感を抱きながらも肩を下ろした。
しかし、舞耶は違った。
口元を両手で押さえ、肩を震わせている。窓から差し込む朝陽でうすく橙に染まる部屋の中、
舞耶の顔だけが異様に白い。

あまりに多い知った名前に、舞耶は耳を疑った。
とりわけ舞耶の心を揺さぶったのは、園村麻希、そして、リサの名。
体の力が抜ける。名を呼ばれた人の面影が、ブーツのつま先を見ているはずの視界を埋め尽くしていく。
全身に、氷水を浴びせかけられたような気がした。背筋が凍りつき、体が震える。
どんなに強い氷結魔法を浴びたって、こんな悪寒は感じなかった。
これが、絶望の恐怖――。
信じられない。信じたくない。もう二度と、会うことが出来ないなんて…!
麻希。自分と同じ能力を持って、事件解決に助力してくれた。
いつも穏やかな表情に、心の強さを垣間見せる真っ直ぐな視線を、舞耶は忘れられない。
リサ。もといた世界では、守れた人だった。もう一つの世界では、共に戦った大事な仲間。
そしてそれ以上に、幼かった昔を分け合った、大切な友人だった。
それが今、出会うことすら出来ず、こんなにもあっけなく――。

26誰も傷つけない戦い:2006/07/07(金) 20:09:43
誰かが死ぬ。これはそういうゲームだ。
今こうやっている間にも、誰かと誰かが殺しあっているかもしれない。
現に、名を呼ばれたうちの一人は、このスマイル平坂で死んだ。
事故のようなものだったが、それでも上田知香はタヱが殺したのだ。
殺しあうことがルールだと頭で分かっていても、見知った人間が自分の全くあずかり知らぬところで
殺されるのは、衝撃と言わずしてなんと言えばいいのか。
ましてやそれが、心を通わせた友人や、大切な人であったら――。
様子を見れば、名を呼ばれたのが舞耶の知った人、それも近しい人だったろうことが手にとるように分かる。
タヱはたまらず声をこぼした。
「舞耶さん…」
その呟きに、舞耶の途切れそうになった思考がよみがえった。
だめだ。私がここで現実に負けてしまっては、この二人もきっと不安になる。
自分はタヱに何と言っただろう。
こういうときこそ、ポジティブ・シンキング!なのだと。
(でも、一体どうやって?)
出来ることをやらねば、と。
(なにが出来るの、こんな気持ちで?)
そう言ったのではなかったか。
「…ごめんなさい、泣いてる場合じゃないわよね」
舞耶は、涙のあふれるまなじりを、袖で乱暴にこすって笑って見せた。
ふらつく足で椅子から立ち上がり、百七捨八式鉄耳をかぶると、
おどけた口調でタヱとネミッサに向き直る。
「多分ね、これね、こんな耳なんか付いちゃってるけど、実はちゃんとした防具だと思うのよ。かぶってれば、頭部は安心よね!しかも素敵な癒し効果つき!…さて、と。これから、どうしようか?」
「…舞耶ちゃん、無理しなくていいよ」
窓辺に立っていたネミッサが静かに近寄り、舞耶の頭から、本当に防御力があるのか疑わしいヘルメットをそっと外した。
「アタシ、さっき言ったよね。泣きたいときに泣けばいーんだって。
舞耶ちゃんの悲しみをメチャクチャにするやつは、ネミッサがぶっとばしてあげる。だから大丈夫だよ」
ついさっき、それから初めて出会ったとき。
舞耶がそうしてくれたように、今度はタヱがそっと彼女を抱きしめる。
朗らかに前向きに自分を励ましてくれた舞耶が、無理に明るく振舞うのを見るのは、とても辛かった。
「私たち、こんなところに連れてこられて、死ぬとか、…殺すとか…」
なんて、残酷なのだろう。タヱがぽつんと呟く。
それから少しあって、今度はいくぶん強い口調で、誓うように言った。
「けれど、それでも…信じましょう。生きていたら、きっと大丈夫だって。
精一杯、出来ることをすれば、必ず道は開けるんだって」
子供のような必死さでタヱにしがみつき、舞耶は堰を切ったようにしゃくりだす。
タヱの温もりがあまりに優しく、そして哀しかった。
名前を呼ばれた十一人も、ある一瞬までは、こんなふうに暖かかったはずなのに――。

抱き合う二人の頭をそっと両手でかかえると、ネミッサは胸元にしまいこんだサングラスに目を落とした。
こんなものがあったって、どうしようもない。ネミッサは呟いた。
失った後で泣いても、もう大切なものは戻ってこないのだ。
アタシはこんなものに頼ったりなんかしない。
信じるのは、自分。それから、仲間だ。
――今度は、誰も死なせない。ネミッサが、守ってみせる。
――舞耶ちゃん、タヱちゃん、新、瞳ちゃん、そして…そしてリーダーだって。
色素の薄いネミッサの目が、強い誓いに燃え輝いた。
アタシの大切な人を傷つける奴らは、何があっても、許さない。

27誰も傷つけない戦い:2006/07/07(金) 20:12:45
改行少なくて、大変読みづらい…。
し、失礼いたしました…!

28名無しさん@マッカいっぱい:2006/07/07(金) 22:31:51
GJ!あたたかくていい話……優しい子たちや。・゚・(ノД`)・゚・。
本スレへの投下もお待ちしております。

29名無しさん@マッカいっぱい:2006/07/07(金) 23:28:40
あげ

30誰も傷つけない戦い:2006/07/08(土) 06:23:33
>28
感想ありがとうございます…!
場所的にじっとしているわけにもいかないと思うので、彼女たちには
これから行動するための最後の決意と指針を固めてもらおうと思い書きました。
拙いですが、本スレ投下版も頑張ります。

31遭遇 ◆C43RpzfeC6:2006/07/13(木) 00:13:12
平坂区、カメヤ横丁。
ラーメン屋や居酒屋、カイロプラティックが立ち並ぶ様子は一昔前の下町情緒溢れる通りと言ったところか。
多くの店がシャッターも下ろしておらず、ついさっきまで営業を行っていたかのように見える。
ただ人々だけが突然消え失せたかのような生活感の残る町並みはどこか不気味にも感じられた。
何か役に立ちそうな店はないかと周りを見ながら歩いていると、店と店との間の横道に何かが見えた。
ベルトに差したレイピアに軽く手を掛けつつ、覗き込む。
見えていたのは一人の男の足だった。いや、正確には「かつて男だった」死体の。
頭部はぐしゃぐしゃにつぶれて脳が零れ出ており、
大量の黒蝿がブンブンと音を立ててその周りを飛び回っている。近くの地面には血の付着した石が落ちていた。
中島は蝿を払いつつ死体の持ち物を漁るが、特に役立ちそうな物はない。
(殺し方も同じならその後の行為も同じ…か)
自分の所業を思い出し、内心苦笑する。
そしてその醜い死体への嫌悪感を一瞬だけ表情に浮かべると、それを置いて立ち去った。
やはり、ゲームに乗っている人間がいる。自分に襲い掛かる分には一向に構わないが、弓子の身が心配だ。
焦りが出て、自然と足が早まる。
しばらく歩いていくと、また何かが見えた。今度は女。そしてこれは先程とは違い、生きている人間。
「…君は?」
不意を突いて殺害しようかとも思ったが、話しかけてみる。もしかしたら弓子と会っているかもしれない。
飲食店の前、段になっている所に座っていた彼女は中島の言葉にハッとしたように振り向く。茶色がかった短い髪と、青い学生服。
その制服に見覚えはないが確かに現代日本の人間だろう。

32遭遇 ◆C43RpzfeC6:2006/07/13(木) 00:20:50
内田たまきは戸惑っていた。
先程自分を襲おうとしていた男を殺し、武器を奪った。これは自衛の為には仕方なかったことだし、特に罪悪感も湧かなかった。
しかし彼女の心を揺さぶったのは、その後何をするでもなくこの辺を歩いていて聞こえてきた放送である。
死亡者の中の一人の名前が、たまきを驚かせた。
白川由美
同じ軽子坂高校の生徒であり、魔神皇によって学校が異界に飲み込まれた時には学校を元にもどそうと頑張っていた少女。
「そんな…」
驚いたし、悲しかった。彼女が死ぬなんて思っていなかったから。
そして、あの放送によって深い悲しみと同時に思い知らされた。
―自分の身は自分で守るしかない。
放送での死者の数は先程殺した男と同様、殺す気になっている連中が少なからずいることを示していた。
「どうすればいいのかな…」歩みを止めて通りの端に座り、ため息をつく。
脱出するにしても、方法が分からない。かといって他の参加者を殺し尽くして優勝するというのもいまいちピンと来ない。
武器は先程奪ったデザートイーグル、おまけにガーディアンの加護を持つたまきは参加者の中でもかなり条件がよいように思える。
それでも、アームターミナルが無いのは辛かった。由美が殺されていることからガーディアンを持つ者以上の実力を持つ者がいるということが分かる。
仲魔がいれば戦闘に関しては問題ないし、相談にも乗ってくれただろう。
「相談…か」
そこでようやく思い当たる。他の参加者、軽子坂高校の生徒。
根拠はないが、狭間以外ならば協力してくれるような気がする。
「うん…よし!」
彼らを探す。とりあえず方向性が見えて立ち上がろうとしたとき、声をかけられた。

33 ◆C43RpzfeC6:2006/07/13(木) 00:26:24
真っ黒な学生服。かつて戦った魔神皇狭間の真っ白なそれとは対照的な姿。
(…なんか、女の子みたい)端整な顔立ちだが、どこか冷たさを感じさせる雰囲気。
「…僕は中島朱実。十聖学園の3年だ。僕と同様にこの下らないゲームに巻き込まれた友人を探している。」
無言のままのたまきに業を煮やしたのか、そのまま話を続ける。
(十聖学園…知らないなぁ)
「えっと…あ、私は内田たまき。軽子坂高校の2年生で…」
「内田さんか。髪の長い、セーラー服を着た女の子を見なかったか?」
「いや…ここに来てから一人も女の子は見てないよ」
特に興味なさそうに自己紹介を打ち切られ、少しムッとして答える。
さすがに「男には会ったけど頭を潰して殺しました」とは言えない。
「そうか…」中島は落胆して軽く目を伏せる。
この女、嘘を付いているようには見えない。
となると、弓子はこの辺りにはいないのだろうか?
(まあいい、ある程度情報を引き出したら、隙を見てこの女を殺そう。)
そう思い中島が顔を上げた、その瞬間だった。
何かが飛んできた。急いで身をかわしたが、頬をかすめたそれは一筋の傷を刻みこむ。
飛んできたのはおそらくこの女の支給武器だろう。中島の背後の地面に落ちて金属音が鳴る。
それは、明らかに顔面を狙った攻撃だった。
「…いきなり、何をするんだ?」頬の血を拭い、相手を軽く睨み付ける。
「よく言うよ。これだけの殺気、感じられないと思ったの?」
そう、始めからこの男にはよからぬ気配を感じていた。先手必勝、と思いアイスピックを投げ付けたが運悪くかわされてしまった。
支給品の武器で反撃をしてくるか‥と覚悟していたが、目の前の相手はノートパソコンを開く。
自分を殺そうとする相手を前にして、パソコンを開いてデータ管理、もしくはゲーム。それは有りえない。
(そんなこと、電算部の佐藤君や八幡先生でもしないわ…)
となると、あのパソコンには…
(悪魔召喚プログラム…!)
戦慄する。支給されているような気はしていたが、まさかそれを持つ相手と対峙することになろうとは。
相手に見えないよう銃をザックから取り出す。今後の為に弾丸を節約しておこうと思って使わないでたが、この際そんな悠長なことは言ってられない。
5、6m程離れた相手に、じりじりと近寄る。
銃の扱いに慣れていないたまきには正確に狙いを定めなくてもいい距離まで近寄る必要があった。

34遭遇 ◆C43RpzfeC6:2006/07/13(木) 00:31:09
召喚前に攻撃すればいい。キーボードを叩いている間に、殺してしまえば…
さっと後ろ手に隠してあった銃を両手で握り、相手に向ける。

カチリ、と撃鉄を起こす音を中島は聞き逃さなかった。背に回した手には銃を隠し持っているのだろう。
急いで召喚のコマンドを変更する。
これが大きな危険を生んだ―コマンド入力の終わらない内に相手が銃を向けてきたのだ。
もう少し余裕を持つと思っていたが、この素早い攻撃はパソコンの意味、悪魔召喚を知っているのだろうか?
(急ぐんだ…!)それを思ったのは両者。
そして、引き金が引かれる。
「グアアアアァッ!」
数回の銃声と悲鳴。真っ赤な血が大量に飛び散る。
中島とたまきの間に出現したそれは、熊程の大きさだった。
太い四肢は獣、しかしその顔は人間に近い。長い毛髪が顔全体にかかり、その隙間からギラギラと輝く一対の眼が見える。
胴体に刻まれた数個の弾痕からおびただしい程の血液が流れだし、苦悶の唸り声をあげていた。
「ヌエ!大丈夫か?すまない、まさか相手が銃を持っているなんて…」
獣の背後から中島が心配そうに声を掛ける。しかし、その顔には不気味な微笑を浮かべていた。
(違う…)
悪魔の扱いに長けたたまきには一瞬で分かった。
たまきが銃を持っているのに気付き、盾にするために悪魔を召喚したのだ。
その仲魔をないがしろにする様は、かつて従えていたアモンを封印した狭間に重なって見えた。
「大丈夫ダ…コノ程度…。コノ女ヲ殺セバイイノカ?」
「ああ…頼む。」

35遭遇 ◆C43RpzfeC6:2006/07/13(木) 00:35:28
(………!)
太く大きな前脚が振り下ろされ、たまきは急いで後ろに飛び退く。それまで立っていたアスファルトの地面が大きくへこむ。
左、右、左、右と畳み掛けるように追撃が行われるが、少しの差で空を切る。
「まずいな…」
傷のせいかずいぶん鈍くなってはいるものの、巨体に似合わぬ素早い動き。何よりその威力は大きく、一発でも当たればアウトだろう。
(でも、あの傷ではそう長くは持たないはず…)
しかし、そうなると次の悪魔が召喚されるかもしれない。
召喚者は先程の場所から動かず今は見物を決め込んでいるが、一体殺られればさすがに本気になるだろう。
「グオオオォ!」
ちょこまかと回避を続ける相手に苛立ったのか、鋭い咆咬が上がる。
四つ足で駆け、素早くたまきの背後に回り込んだ。
後ろ足だけで仁王立ちになり、鋭い爪の生えた両の前脚をたまきに向かって振り下ろす。
「…ジオダイン!」
素早く振り向いたたまきの掌から魔力が発せられ、強烈な電撃がヌエの全身に襲い掛かる。

「ほう…」
中島は少し離れたところから戦闘を眺めていた。
魔法が使われたのを見て驚きの声が上がる。(それもなかなかの使い手…か)
弱小の悪魔とはいえ、こうも簡単にやられるとは。
ヌエが手負いだったこともあり、ヌエの攻撃を幾度も避けられたのは単に運動神経がいいだけだと思っていた。
獣は、たまきに襲い掛かったそのままの体勢で停止している。
電撃によって身体が痺れ、動けないようだ。流れる血液と弾丸の為通電性が高くなっており、内蔵への負担は大きい。
感電による停止。その隙だけで十分だった。
たまきは獣の肩を踏み越え、逃走する。振り向きもせず一目散に横丁から離れた学校らしき建物が見える方向に走る。

36遭遇 ◆C43RpzfeC6:2006/07/13(木) 00:40:14
中島は舌打ちをしてさらなる悪魔を召喚をしようとしたが、逃走するたまきを見て追撃をあきらめた。
「あの早さ…背後に見えるのは悪魔か?魔法を使えるとはいえ、弓子の持つ力とも違う…」
たまきの走るスピードは常人のそれを遥かに凌駕していた。
そしてその背後には、ぼんやりと人ならざる者の姿が見える。
その能力がどんなものかは分からないが、魔法が使えたのはそのためだろう。
「グ…ゥ。スマン、ナカジマ…ガ…グブ…!」
体内に残る弾丸の影響か、大きく開いた口から血を吐き出す。気管に血が入ったらしく、声色が濁っている。
「ヌエ…無理をさせたな」
そう言いつつも、パソコンは開かない。出血の量から言って助からないのは撃たれた時から分かっていたことだ。
「…ナカジマ、生キ残レ…オマエナラバキット…ソシテ我ラガ母神ヲ…弓子ヲ…守ルノダゾ…」
「…………」
蝸牛山でもヌエは自分から話し掛けてきた。日本古来の妖怪であることから、イザナギ神の転生体である中島にシンパシーを感じたのかもしれない。
(あるいは単純なだけ…か)
「…サラバ…ダ」
麻痺が解ける。しかし、ヌエはそのまま前に倒れ、動かなくなった。
「…役立たずが。小娘一人片付けられないとはな」
消えていくヌエを眺め、呟く。その顔にはヌエの言葉に対する嫌悪が浮かんでいた。
(汚らわしい獣風情が弓子の名前を口にするなど…)
仲魔を一体失ったことになるが、特に問題はない。相手の銃を確認した時点で、盾にしてもいい悪魔に変更したのだから。

37遭遇 ◆C43RpzfeC6:2006/07/13(木) 00:55:26
(まだロキからの連絡はない。それの待機も兼ねてもう少しここを探索するべきか。だが、あの女が弓子を見ていないことを考えると、次の区へ急いだ方がいいのかもしれないな…)
気を取り直して横丁を進んでいく。さすがに戦闘の跡が残るこの位置からは離れなければ。
【中島朱実(旧女神転生)】
状態 正常(頬に軽い傷)
仲魔 ロキ、他3体
所持品 レイピア 封魔の鈴 COMP
行動方針 白鷺弓子との合流 弓子以外の殺害
現在地 平坂区カメヤ横丁
【内田たまき(真女神転生If…)】
状態 正常
所持品 デザートイーグル 管
行動方針 とりあえず身を守る 
現在地 平坂区春日山高校付近

38暁天の星、再び輝く(第2版):2007/02/06(火) 21:42:51
 真っ白な世界に、まず温度が戻ってきた。
 失神するのは初めてではない。葛葉の里での修行時代に、いやというほど味わってきた。あらゆる感覚の中で
一番最初に目覚めるのは痛覚であると、体が覚えている。ライドウは半ば無意識に、痛みに対する覚悟を決めた。
 が、痛みはいつまでたっても襲ってこなかった。肩から胸にかけて一直線に熱が走る。それはかゆみにも似た、
快ちよいような感覚。何度も味わったことのある、そう、この感覚、たしかこれは――。
「…………………………」
 半ば眠った脳が、ふたたび現状を認識しはじめる。蘇りはじめた視覚が真っ先に捉えたのは、覆いかぶさる
ようにライドウを覗き込む、フードの帽子をかぶり、厚着をした長髪の少女だった。
「あ、気がついた! よかったよぉ〜、マッサオな顔して、このまま死んじゃうかと思った」
 少女の髪の毛が揺れる。翼と化した先端がライドウの頬をくすぐった。その感触が五感を刺激し、ライドウの
記憶が次第に蘇ってくる。
 そうだ。たしか、泣き声が聞こえて、そこにこのモー・ショボーがいて、シキミの影を壊して、ついでにこの
機械の使い方を聞こうとして――。
「――そうだ、鳴海さん!」
 がばっ、と後先考えず起き上がって、ライドウは肩の傷口のことを思い出し痛みに身構える。が、わずかに
突っ張るような違和感と、貧血による軽いめまいを覚えただけで、痛みはほとんどなくなっていた。
「んもう、無理しちゃだめだよう、ニンゲン! ホントにすごい傷だったんだから!」
 跳ねのけられて床にしりもちをついたモー・ショボーが不機嫌そうに言う。髪の毛を羽撃かせるが、体を浮き
上がらせるほどの浮力は得られない。疲労が力を奪っているのだ。
 その様子を見て、ライドウの頭に先ほど気絶しながら感じていた感覚が蘇る。肩口の傷に沿うように走った、
熱のような感覚。いま思い返してみればはっきりと分かる。あれは、回復魔法による治癒効果の感覚だ。
 そっと手を伸ばして傷に触れてみた。もうほとんど傷は残っていない。鳴海が乱暴に縫い合わせた糸が残って
いて、どうにも突っ張るような違和感を与えてはいるが、ほとんど完治したと言ってもいいぐらいのものだ。
「この傷は、君が?」
 ライドウはしりもちをついたままへばっている悪魔に向かって質問した。えへへ、と照れたように笑ったのは、
肯定の返事だろう。
「――ありがとう」
 自然と感謝の言葉が口から出て、ライドウは自分でも驚いた。いままで、仲魔から忠誠を得ることこそあった
が、こういう類の信頼を得たことなどなかったような気がする。モー・ショボーはディアを所持する悪魔である
が、それほどに魔力が高いわけでもない。あれだけの傷をここまでふさぐには、自分が気絶している間じゅう、
ひたすらディアをかけ続けていてくれたのだろう。
 いままでライドウにとっての仲魔とは、自らの術により押さえ込み、自らの力を見せることで忠誠を得るもの
だった。つまりは、力による信用関係を築く存在であったと言っていい。しかし、このモー・ショボーはそれと
まったく違う形での信頼を見せている。
「えへへ…、お礼もうれしいけど、できれば手を貸してよね」
 モー・ショボーが照れたようにうつむきながら答える。仲魔からこういう反応を返されることも初めてだった。
まったく皮肉な話だが、いま自分は悪魔召喚師としてさらに成長しているらしい。こみあげてくる皮肉な笑いを、
学帽を深くかぶりなおす動作で隠した。何人も死んでるというのに、これから何人死ぬか分からないというのに、
そういうことを考える自分が、浅ましく思えてならなかった。

39暁天の星、再び輝く(第2版):2007/02/06(火) 21:43:22
 モー・ショボーを助け起こして、壁に寄りかかって並んで座った。COMPとやらの使い方を聞く。
「で、ここを押して、『OK』を押せば、おしまい。簡単でしょ?」
 と、さも当たり前のように説明されたことのほとんどが、ライドウにはいまいちピンとこなかった。基本的な
操作はちゃんと理解はできたのだが、葛葉の里で剣や銃や術の修行に明け暮れてきた彼には、どうにも、機械と
いうやつが馴染まないのである。タイプライターでの捜査資料作成もゴウトに任せてきたのに、いきなりこんな
複雑な操作が求められるものを使いこなせるわけがない。こういう落ち着いた状態でならともかく、瞬時の判断
が求められる戦闘時に操作ミスでもしたらたまらない。
 こういうものは、使い慣れているものが一番いいのだ。管があれば、とライドウは思った。そうそう都合よく
誰かに支給されているか疑問ではあるが、可能性としては低くないと思う。ダメでも、ある程度の条件が整えば
自作することも可能だろう。封魔は無理でも、COMPを通じて得た仲魔を移しておくことぐらいはできる。
「でね、ここにねー、んーと…あれー? …おかしーなー?」
 ライドウの気持ちを知ってか知らずか、次の説明に移ろうとして、モー・ショボーが首をひねった。
「おかしいなー…ここにねー、『UNITE』っていうのが出るはずなんだけど、あれー?」
 彼女によると、このCOMPがあれば専用の施設がなくとも悪魔合体が出来るはずなのだが、このメリケンサック型
COMPにはなぜかその機能がないのだそうだ。あの爆音を響かせるDr.ヴィルトルの巨大な悪魔合体装置が、こんな
小さな機械に入ってしまうとは、まったく驚きだ、とライドウは思った。彼にこの機械を見せたら、どんな顔を
するだろう。考えるまでもなく、両手をせわしなく動かしながら興奮する様がありありと思い浮かんで、ライドウは
思わず吹き出してしまう。モー・ショボーが怪訝な表情を浮かべた。
「そういえば、イッポンダタラはどうした?」
 ふと思い出して、見当たらないもう1体の仲魔のことを訪ねると、モー・ショボーは露骨にイヤな顔をした。
「知らなーい。うるさいから出てけって言ったら、どっか行っちゃった」
 ぷいっと横を向いてスネたように答える。心底嫌っているらしい。
「アイツ、ホントにバカだよ。あんな大声で騒いでたら、ここにいるって知らせてるようなものだよね」
「…ぉぉぉぉん…」
「大ケガしてる人がいるのに敵が寄ってきちゃったらゼッタイゼツメイでしょ、それが分からないのかな?」
「…るぜぇぇぇぇぇ…」
「なに言ってもヘンな言葉しか返ってこないし。あーあ、二度と戻ってこなければいいのになあ」
「パッショォォォォォォン!!」
 ばがっ、と大きな音を立て、すぐそばの壁が壊れた。その穴から、ぬっ、と鉄仮面の悪魔が顔を出す。
「サ、サマナァァァァァ!! 起きたのかァァァァ!! いい夢見られたかァァァァァ!!」
 言うまでもなく、イッポンダタラだった。両手いっぱいに、なにやらいろいろ抱えている。
「コレだァァ! コレの角でグリグリやってみろォォォォ!」
 どさどさと、戦利品を床にぶちまける。食料品やら、本やら、消火器やら、とにかく目についた物をなんでも
かんでも拾い集めてきたのだろう。『ヒロ右衛門』の本領発揮と言ったところか。

40暁天の星、再び輝く(第2版):2007/02/06(火) 21:43:57
「サマナァァァ!! なんじゃこりゃあァァァァ!! COMPじゃねェかァァァァァァ!!」
 イッポンダタラが、ライドウの右手にはまったメリケンサックを指差して叫ぶ。隣の「今頃気づいたのかよ」
と言わんばかりの表情でむくれたモー・ショボーを完全に無視して、イッポンダタラは跳ね回りながら続けた。
「うぉれ、このCOMP知ってるぞォォォ! 入ってたことがあるぞォォォ! 懐かしいじゃねェかァァァ!!」
 と言ってCOMPを覗きこむと、数秒間黙って凝視したあと、ぶるぶると震え始めた。 
「懐かしくねえ方のCOMPだったァァァ! こっちじゃねェェェェ!! もう1個あるはずだァァァァァ!!」
「もう1個?」
「そうだァァァ! 右手用と左手用と2個で1セットォォォォォ!! つまり1個だと半分だァァァァ!!」
 イッポンダタラの無意味にハイテンションな説明を要約すると、このメリケンサック型COMPは2個で1セット
であり、片方だけでは不完全なのだそうだ。召喚プログラムは両方に入っているが、悪魔メモリーは半分の6体
分ずつしかなく、また合体プログラムとインストールソフトはそれぞれ片方にしか入っていない。
「こっちはインストールソフト用ゥゥゥ! 合体はできねぇ相談ってもんだァァァァ!!」 
「召喚ぷろぐらむ、合体ぷろぐらむに、いんすとーるそふと、ね」
 大正生まれのライドウには聞きなれない単語ばかりだったが、回転の速いライドウの頭はそれに混乱すること
なく情報を分析していく。剣術や召喚術だけでなく、知性と判断力にも長けているからこそ、十代後半という
若さで伝統ある葛葉ライドウの名を継ぐことができたのだ。
「…思っていたより、状況はずっと悪いな…」
「え? なになに、どーいうこと?」
 ライドウの深刻なつぶやきを聞きつけ、モー・ショボーが疑問をはさむ。ちなみにイッポンダタラはなにやら
叫びながら楽しそうに周囲を跳ね回っては、目に付くものを拾い集めている。
「このCOMPの悪魔召喚ぷろぐらむがあれば、誰でも悪魔を召喚できるようになる、ってこと」
 とライドウは答える。モー・ショボーはなにをいまさら、というような表情をしているが、しかしライドウに
とってこれは衝撃的なことだった。悪魔召喚術を身に着けるまでの血みどろの修行を思い出す。あれだけ修行を
積んだような、特別な人間だけが悪魔召喚師になれるのだ、と彼は決めてかかっていた。そんな人間は、ほんの
一握りしかいない。だからこのゲーム(くそッ、嫌な呼び方だ、だが他に適切な呼称もない)の参加者のなかに
悪魔召喚師がいたとしても、せいぜい1人か2人ぐらいだろう、と思っていた。
 だが、このCOMPの存在。実際には誰でも使えるわけではなく多少の霊的な才能が必要なのだが、魔神皇といい
レイコといい耳飾りの少年といい、このゲームの参加者にはそういう才能を持つ者がやたらと多い。おそらく
意図的にそういう人間ばかりが集められているだろうと予測できた。そうなると、参加者なら誰でも使える、と
思っておいたほうがいい。
「まあ、参加者の中に悪魔召喚師がいることは予想していたけどね」
 予想と言うより、覚悟かな、とライドウは心の中で付け足す。悪魔召喚師との戦いは、上級悪魔との戦いより
はるかに厄介だ。悪魔は弱点を理解していればどうにでも戦いようがある。それは悪魔召喚師としての常識だ。
それを理解している者同士の戦いとなると、裏を読みあい、互いの秘術をすべて尽くしての死闘となることは
避けられない。
「味方だったらこれほど心強いことはない。でも敵だったら、と考えると」
 実際、その可能性は極めて高かった。ゲームが始まってからライドウが直接顔を合わせた参加者は5人。その
うち2人までもが、ライドウに対し問答無用とばかりに攻撃を仕掛けてきたのである。その確率、なんと四割。
さすがにこの比率がそのまま全体に当てはまるわけではないだろうが、しかし楽観視も出来ない。

41暁天の星、再び輝く(第2版):2007/02/06(火) 21:44:44
「万端の準備を整えることができるなら、僕はどんな相手にだって負けない。たとえ、巨大戦艦が相手だろうと
勝ってみせる。十四代目葛葉ライドウの名に懸けて、ね」
 迷いも気負いもなく、ライドウは言い切った。実際、その自信はある。過信ではなく、確固たる自信だ。
「同じように考えている召喚師はたくさんいるだろうね。実際、召喚師同士の戦いは、準備の段階から始まって
いると言っていいんだ。多くの時間を費やして、より確実に準備をしたほうが勝つ」
「…準備ってつまり、ガッタイ、のこと?」
 モー・ショボーはおそるおそる尋ねた。さっきから、ライドウが自分が負ける前提で喋っているような気が
したのだ。彼女も悪魔だから、悪魔召喚師が負けるということはどういうことか、ちゃんと分かっていた。
「それもあるし、武器や道具をそろえるってこともある。ま、それに関してはこっちには心強い仲魔がいるけど」
 ライドウは茶目っ気のある笑いを浮かべた。イッポンダタラが、また両手いっぱいに物を抱えて戻ってきて、
「オリムピック級の活躍だァァァァァ!!」
 と荷物をあたりにぶちまける。大半はガラクタながら、どこから見つけたのか、傷薬やら缶詰やら、なかなか
使える物もある。ライドウは手早く選別し、ザックに荷物を入れて立ち上がった。
「さて、そろそろ移動しよう。モー・ショボー、飛べるかい?」
「え、う、うん。もう大丈夫」
「よし。探してほしい人がいるんだ。山から下りたら偵察を頼むよ。じゃあ2人とも、帰還してくれ」
 言いながら、右手につけたCOMPを操作する。慣れない手つきで、『RETURN』コマンドを入力した。
「おととい来てやるぜェェェェェ!!」
 イッポンダタラが緑の光となり、COMPに吸い込まれていく。ライドウはCOMPをモー・ショボーへと向けた。
「あ、あのね、ニンゲン」
 モー・ショボーの体が緑の光に包まれ、足の先から光と化していく。
「ニンゲンがそういうならね、アタシをガッタイさせてもいいから…だからね…」
 言葉は光の波に飲まれ、途中で消えた。ライドウは帰還したことを確認するとCOMPを切り、ザックを背負った。
重みが肩にずしりとかかり、膝をつきそうになったが、こらえた。膝を屈してはいけないような気がしたのだ。
鳴海の安否、レイコとピアスの少年、魔神皇をはじめとした未知の強敵たち、ゲームの脱出。やらねばならない
ことはあまりに多かったし、それになにより。
「…なんたって僕は、王子様らしいからな」
 ぽつりとつぶやく。ライドウは学帽をまたかぶりなおすと、しっかりとした足取りで歩き出した。


<時刻:午後0時頃>
【葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 貧血気味(肩の傷は手術と回復魔法でほぼ完治)
武器 脇差(ひどい刃こぼれ) メリケンサック型COMP(合体機能なし、インストールソフトあり)
道具 レイコの荷物(マハラギストーン マハジオストーン マハガルストーン) MAG3000
   病院で拾った物いくつか(食料、消火器、傷薬少々)
仲魔 モー・ショボー(疲労) イッポンダタラ
現在地 蝸牛山、下山中

42分岐、選択、決断 改め 『英雄の決断』1/10:2007/08/30(木) 14:37:19
 天野舞耶の知り合いらしき少年を送り出したあとは、正直なところ、もうやることはなかった。ビル内の探索も
すでに十分やったし、周囲を見張るだけなら二人でやる必要はない。となればここで取るべき最善の手は、休息を
取ることだろう。できるだけ慎重に言葉を選んで、ザ・ヒーローは大道寺伽耶に仮眠を取るよう促した。人格こそ
熟練の悪魔召喚師のものとはいえ、その身体は素人の女の子だ。本人は上手く隠しているつもりだろうが、疲労が
かなり溜まっていることは明らかだった。
「…私はいい。それよりお前こそ休んだらどうだ?」
 案の定、拒絶された。ヒーローは小さくため息をついて、テーブルの上のGUMPを手に取った。
「僕のほうこそ大丈夫さ。これにはなかなか便利な機能があってね、今、僕の回復力はかなり高まってる。だから
こうして座ってるだけでも十分休息になってるんだ」
 GUMPを見せ付けるように振りながら、にこやかな表情を作って言った。嘘だ。『ガリバーマジック』は治癒力を
高め、傷などのダメージを癒してくれるが、疲労までは回復してはくれない。ほぼ休みなしで暴れまわって疲れて
いるのは、ヒーローも同じだった。とはいえ、女の子より先に休憩を取るわけにはいかないだろう。中身の年齢や
性別は知らないが、少なくとも外観は女の子だ。
「…ならば私も同じ条件でいい。呼吸さえ整えられれば、気を練って回復力を高めることはできる」
 伽耶はぷいと横を向いた。妙齢の美少女が顔を背ける様子を見て、ザ・ヒーローはどきっとする。白いうなじに
くっきりついたアザが痛々しいが、逆にそれが彼女の肌の白さを際立たせていた。
 ふと我に返って、ヒーローは頭を振った。今はそんな状況ではなかった。交渉の基本は、はぐらかされないよう
常に本題を意識し続けることだ。自分から本題を見失っているようじゃ世話がない。
「それじゃ困るんだよ。こっちの脱出の頼りは君の術なんだから、そのときのために万全の状態でいてくれなきゃ」
「それを言うなら、今優先すべきは即戦力のお前の体力のほうだろう。私が術を使う状況はまだずっと先だ」
 取り付く島もない、とはこのことだ。ヒーローはやれやれ、と首を振る。それを見て伽耶も、この話は終わりだ、
といわんばかりに後ろを向いた。
「…妖鳥ハーピー、Go!」
 ヒーローは迷わずGUMPのトリガーを引いた。激しい光の渦が巻き起こる。
「!? いきなりなにを…」
「ドルミナー!」
 とっさのことで反応が遅れた伽耶に、召喚されたハーピーが素早く催眠魔法を浴びせる。少女がカクンと膝から
落ちる。ヒーローは素早く近寄って、倒れないよう身体を支えた。
「…ごくろうさん、ハーピー。もういいよ」
 ヒーローは仲魔に声をかけながら、伽耶の身体を両手で抱き上げた。意外に思うほど、軽い身体だった。いや、
16歳の少女ならこれぐらいが普通なのだ。骨格も細いし、筋肉もほとんどついていない。酷使されることに慣れて
いるとは到底思えない身体だ。無茶をさせるわけにはいかない、とヒーローは改めて思う。この相棒のためにも、
そしてこの体の本来の持ち主である少女のためにも。
「お安い御用ですわ…しかし、ヒーロー様…」
「…?」
「…眠らせて無理矢理というのは…同じ女として感心しませんわ…」
「…! そ、そうじゃないよ! もういいから、戻れ」
 下卑た笑いを残して、仲魔は光となってGUMPへ戻った。契約したとはいえ、そのへんの性格の悪さはやはり悪魔。
笑えない冗談に胸糞が悪くなり、思わず舌打ちをした。
「…ま、感心できない手だってところは、同感ではあるけど」
 誰に聞かせるでもなくぽつりとつぶやいて、ヒーローは伽耶を上階の仮眠室へと運びこんだ。

43英雄の決断 2/10:2007/08/30(木) 14:38:02
 戻ってきて一人になると、ヒーローはカバンの中身をデスクに広げた。見れば見るほど貧弱な装備だ。まともな
「武器」はスタンガンのみ、あとはそのへんの日用品を応用しているだけという有様だった。鉄パイプでも、まあ
確かに悪魔を(そしてもちろん人間を)撲殺することはできるといえばできるが、所詮は単なる金属棒だ。相手が
剣を、槍を、あるいは銃を持っている場合には、はなはだ心もとないものであることは明らかだった。
 やはり現状、自分たちの装備で最大の武器は、このGUMPだということになる。ヒーローは自分の腰に巻いてある
空のホルスターを外した。今まで幾多の困難を共に乗り越えてきた道具で、新しい銃に装備を変えるたび、それに
あわせて丁寧に少しずつ改造を加えてきたものだ。愛着はあるが、仕方がない。道具と時間さえあるならばGUMPに
フィットするようにカスタムするところだが、あいにくどちらも十分とはいえない。泣く泣く、大きく切り落とす
ような改造を施した。入れる、というより、引っ掛ける、という形になるが、これでGUMPを腰に下げて持ち歩ける。
そこらを漁っていて出てきた千枚通しと裁縫セットを使ってちくちくと縫っていく。少々激しいアクション程度で
千切れてしまってはお話にならない。そうならないよう、丹念に丹念に、何度も何度も縫っていく。
 ふと、時計を見た。午前10時を少し過ぎたところだった。いつの間にか1時間以上も経っている。ホルスターを
腰に巻き、GUMPを入れる。西部劇の早撃ちよろしく、素早く抜いて構えた。なかなか悪くない仕上がりだ。
「なかなか器用なんだな」
「…まあね、もともとこういう細かい作業は得意なんだ」
 GUMPをホルスターに仕舞いつつ、ヒーローはかけられた声に答えた。伽耶が、いつの間にか降りてきていた。
「さっきはすまなかったね。ああでもしないと休んでくれないと思って」
 精一杯明るく声をかける。卑屈にならないように、かといって開き直っているようにならないように。気紛れな
悪魔たちと交渉しているうちに、瞬時に相手の感情を読み、刺激しないよう適切な声色を作れるようになっている。
あまり褒められた特技ではないが、生き延びるために必要だった以上仕方がないことだと思う。
「…いや、構わない。むしろ、助かった」
 伽耶が答える。意外な反応にヒーローは少し驚いた。
「…どうにも私は…他人を信用することができなくてな。センターへ反逆すると決めた時から、心休まるときなど
ないと思い定めてきた…だから、なんていうか、その…わかるだろう?」
 伽耶がとつとつと語る。もちろん、わかった。センターとやらがどういう施設かは、伽耶からの多少偏った説明
でしか知らないが、しかし支配者がLawの神々であるというだけでその基本的な理念はヒーローには十分すぎるほど
理解できた。そのような世の中になってはならぬとセラフたちを叩き斬ったのは、ほかならぬヒーロー自身なのだ。
彼らは狡猾で、機械的とさえ言えるほどに冷徹だ。秩序の維持のためならば個々の命には鼻ッ紙ほどの価値もない
と本気で考えている。そんな連中が作った世の中で反逆を企む異端分子がどのような生活を強いられているのかは
容易に想像がついた。うっかり眠れば寝首を掻かれるような、安らぎのない生活を、いったいどれほど続けてきた
というのだろうか。身体がどれだけ限界でも、人前でうとうとと眠ることさえできない。その習いが骨身に染みて
しまうほどの年月。考えただけで気が遠くなりそうだ。
 いろいろな感情が心をよぎる。感嘆、尊敬、同情…しかしヒーローはそのすべてを忘れて、一言だけ言った。
「…よく眠れたかい?」

44英雄の決断 3/10:2007/08/30(木) 14:38:49
「ああ、久しぶりにぐっすりと。…まあドルミナー自体は、実は10秒ぐらいで切れたんだがな」
「…え?」
「まあ、その、なんだ…あんな"お姫様抱っこ"までされたら、さすがに言い出せなくてな」
「…お気遣い、どうも」
「お互い様だ」
 ふっ、と伽耶が笑う。その顔からは、常に付きまとっていた暗い影が薄れたように見えた。
「まあおかげで体調は大分よくなった…次はお前が休め」
「ああ、そうさせて…」
「あ、いや、ちょっと待て。そのまま動くな」
 階段へ向かいかけたところを引き止められて、ヒーローは首だけを伽耶のいる後ろに向けた。
「なんだよ?」
「いや、大したことじゃない。すぐ取るから動くな」
 伽耶がヒーローの背中に手を伸ばし、撫でるようにしてからひょいと何かをつまんだ。イトミミズのような物が
背中からスルスルと引き出される。
「…なんだい、そりゃ」
「夢魔のなりそこないの類だ。疳の虫、ってやつだな。人間に取り憑くが、感情に刺激を与える程度の力しかない。
まあこの程度なら、取り付いたままでもお前ほどの強さなら影響はないんだが、一応な。…あ、もう動いていいぞ」
「へえ…初めて見るなあ」
「実体化し続けるほどの力もないからな。実はどこの世界でも空気中にたくさん漂ってるんだ…見えてないだけで。
…なぜかこの街にはやたらと多いが…ま、理由は言わずもがなだろうな」
 ヒーローも同意するようにうなずく。回復抑制効果といい、ずいぶんと小細工が好きな主催者だ。精神に影響を
与える低級悪魔を使って、殺し合いを加速させようというのだろう。
「まあ、この程度のやつらなら、普通の人間でもそう簡単には憑かれたりはしない。赤ん坊なら別だが…あとは、
よほど疲れてたりとか、心にそうとう深い傷でもない限りは大丈夫だろう」
 言いながら伽耶はくるくるとミミズを巻き取って両の掌で潰した。両手を打った乾いた音が響く。
「…心に、傷?」
 ふと引っかかるものがあり、ヒーローは思わず尋ね返した。
「ああ…ひどいトラウマがあるとか、あとは以前に精神的な攻撃を受けたことがあるとか」
 ぴくりとヒーローの表情が動いたのを、伽耶は目ざとく見つけた。センターで何度もヒーローの活躍は聞かされ
続けてきたため、すぐにピンと来た。ヒーローの宿命の伴侶は、かつて強力な精神攻撃を受けていたはずだ。
「そいつに大量に憑かれると、どうなる?」
「人間不信とか、攻撃性増大とか、まあいろいろだが…大抵はマイナス方面の変化だな。私が見た中で一番悪質な
例では、善人だった男が完全に殺人狂に変化していたが…」
「もし大量に憑かれていた場合、さっきみたいに簡単に治せるのか?」

45英雄の決断 4/10:2007/08/30(木) 14:39:29
「おい、少し落ち着け。仮定ばかりで話を進めても仕方がないだろう」
 肩を掴んできたヒーローの両手を振り払いながら、伽耶は強く言った。これまでどんな状況でも常に冷静だった
ヒーローの狼狽ぶりに驚きはしたが、しかし無理もないとも思う。彼には仲間がたくさんいたが、最後の最後まで
本当に信頼できた仲間はたった一人だけだったのだろう。伽耶の心に、共感と羨望と嫉妬が入り混じった、なんと
形容してよいか分からぬ感情がふとよぎる。自分にはその一人すらいない、という寂しさが一番強い気がした。
「私が言ってるのは、最悪の可能性の話だ。なにも起こってない可能性のほうがむしろ高い」
「…あ、ああ、そうだな…済まない、少し…取り乱した」
 ヒーローは視線を落とした。冷静になれ、と自分に言い聞かせる。彼女のことはとても心配だが、現状、打てる
手はなにひとつないのだ。放送で名が呼ばれていなかった、というだけしか手がかりはない。どこにいるのかさえ
分からない。闇雲に探し回るなどという危険な真似は、とてもじゃないができない。仲間もいるし、拠点もある。
行動方針も固まっているし、展望もある。これに沿って行動していくことが第一、彼女のことは第二に回すべきだ。
 それでいいのか? と心のどこかで声がした。冷静になって、小利口に立ち回って、失うものは少ないだろう…
だがそんなものに価値はあるのか? 何もかも捨ててでも、守るべきものがあるんじゃないのか?
 ヒーローは自分の掌を見つめた。千手観音はその手であらゆる衆生を救うというが、自分には腕は2本しかない。
どちらか片方しか取れないのだとしたら…どちらを取ればいいのだろうか? どちらを取るべきなのだろうか?
「迷うな」
 伽耶が言った。
「ここで、決めろ。私はそれに従おう」
「それは…」
「いいから、決めろ。行くな、などと野暮なことは、部外者の私には言えん。かといって、ここで袂を分かつなど
できるはずもない、そうだろう? ならば私はお前の決定に従うだけだ」
 伽耶が、まっすぐにヒーローを見つめる。
「どちらか選び、決めろ。いままでそうしてきたように」
 まっすぐ見つめながら発せられる力強い言葉。ヒーローは思わず視線を落とし、また、掌を見つめた。剣と銃を
握り続けたせいで、ごつごつとしたタコがある。わずかに力を籠めて拳を作り、また開いた。
 どうすべきかは、ほとんど心の中で決まっていた。それでもまだ迷うのは、自分の心に偽善にも似た甘えがある
からだろう。できることなどなにもないことを、認めたくないのだ。無為だと分かっている行為に没頭し、そして
なにかをした気に浸り、免罪符を得たいのだ。彼女を求め危険を顧みず動き回るという英雄的行動に酔い、彼女を
救えなかったとしてもやるだけやったと諦めがつく。それは彼女のためではなく、己のためではないのか。
 ヒーローはきつく拳を作る。ありったけの力を籠めて、迷いを、握り潰した。顔を上げる。
「…情報がなさすぎる。探しには行けない…ここで、待とう」
「…いいんだな?」
「ああ。決めた。…もう、迷わない」
 心の中で、この街のどこかにいる彼女に、小さく謝った。握りつぶしきれなかった偽善と、押さえきれない不安
と、傍らに彼女がいないことに対する寂しさと狂おしいほどの切なさと、そして押さえきれないほどの後悔の念と。
ヒーローは三たび拳を作り、それらの気持ちを押し込めた。迷わないと決めたばかりではないか。

46英雄の決断 5/10:2007/08/30(木) 14:40:13
 ビィーッ! ビィーッ!

 耳をつんざくような、不快な電子音が響いた。GUMPからの通信だ。慌ててホルスターから引き抜き、モニターを
開く。別行動をしているピクシーからの連絡だった。
「なんだ、何があったピクシー!」
 呼びかけつつ、GUMPを操作し、ピクシーのSTATUSを確認した。魔法を短時間に複数回使用したらしい。つまり…
戦闘があったということか?
「大変だよぉ、大変、大変なのぉ!」
「大変なのは分かってる! 何があったんだ!」
「女の子が男の死体を! それでマヤさん撃たれて、ネミッサさん魔法撃って、銃がバンッて、それで、ネミッサ
さんがぁ!」
 さっぱり分からない。が、ほぼ確実に戦闘行為(もしくはそれに類するもの)があったことは明確だ。ネミッサ
という名前は知らないが、おそらく天野舞耶と同一行動を取っている仲魔あたりだろう。
「ピクシー、聞こえてるか?」
「聞こえてるよぉ、ねえ、どうしよう、どうしよう?」
「いいから落ち着け。今、どこにいる?」
「どこぉ? どこって言われてもぉ〜、分かんないよぉ!」
 ピクシーが金切り声を上げた。もともと知恵のある悪魔ではないし、パニック状態も重なっている。
「落ち着くんだ。目印になる店とかでもいいし、どこに行く途中だったかでもいい、なにかないか?」
「あ、ええ〜と、ええ〜と…お、おすし! おすし食べようって言ってた!」
「…お寿司?」
 伽耶が素早く地図を広げ、一点を指差した。平坂区、がってん寿司。カメヤ横丁にある店だ。まさかこんな状況で
営業しているとは思えないが、まあとにかくそういう会話の流れがあったのだろう。
「よし、いいぞ、分かった。よく覚えていたな、偉いぞピクシー」
「え、あ、ありがと、でもそれより、あたし、どうすれば…」
 おろおろとした様子でピクシーが尋ねてくる。自分自身がほとんど役立たずであることを自覚しているのだろう。
確かに、戦力としては役立たずだ。しかし、悪魔と鋏は使いようだ。歴戦の悪魔召喚師の仲魔である以上は、必ず
なんらかの方法で役に立つ。立たせるのが、こっちの腕の見せ所なのだ。
「いいか、ピクシー。1時間ぐらい前に、僕のいるところからそっちに向かった男がいる。そいつは、味方だ」
「え、え、どういうこと?」
「男を捜すんだ。向こうもそっちを探している。もう平坂区の中には入っているはずだ」
「わ、わかった、味方の男を探せばいいんだね?」
「そうだ。真っ赤な服に妙ちきりんな髪型で目立つ男だから、すぐ分かるだろう」
「わ、わかった! ちょっと行ってくる!」
 ぷつり、と通信が切れる。ヒーローはGUMPを閉じた。また一瞬、イヤな考えが頭をよぎる。もし、ほんの些細な
行き違いが原因で起きた闘争だったとしたら? 周防達也をそこに合流させるのは、火種を投げ込むようなマネに
なってしまうかも知れない。
 本当にこれでよかったのか? 目を閉じて考えた。思えばあの日以降、何かを決めては、考え込んでばかりいる
ような気がする。己の決断を後悔したことはないが、しかし違う道もあったような不安さは消しきれない。

47英雄の決断 6/10:2007/08/30(木) 14:41:35
「悩むな」
 伽耶が、ヒーローの肩に手を置いて言った。
「悩んで答えが出るなら悩むのもいい。だがそうでないなら、悩むだけ無駄だ。百害あって一利もない」
「でも」
 顔を上げて反論しようとしたヒーローの顔の前に、伽耶は人差し指を立てた右手を突き立てて制止する。
「我々に出来るのは、道を決めて進むことだけだ。道の先になにがあるのかまで気に病んでも仕方ないだろう」
 互いの目を見詰め合う。数秒の沈黙。先に耐え切れなくなって目を伏せたのはヒーローだった。後ろ手に椅子を
掴むと、力をなくしたように腰を落とした。
「…確かに、そうだね。そのとおりだ」
「そうだとも。何もかも背負い込む必要などない」
「…それは分かってるんだけど、僕には割り切れないよ、君みたいには」
 うずくまるように両手で顔を隠すヒーロー。伽耶が話に聞いていた"伝説の英雄"とは似ても似つかない姿だった。
先ほどまでの自信に満ち溢れた姿に比べ、ずっと小さく見える。神をも越える超大な力を持ち、過酷な運命を乗り
越えた存在であっても、中身はどこにでもいるただの少年なのだ。
「…君は、強いんだね」
「いや、弱いのさ」
 ヒーローの言葉に、伽耶は自嘲気味に答えた。本心だった。ヒーローのように、あらゆるすべての責任を背負い
続けて生きることなどできそうになかった。すべてを捨てて反逆者となると決めたのも、重圧に耐え続けて生きる
ことに疲れ、逃げ出したかったからかもしれない、と今は思える。自分が無意識に諦めたその道を、目の前にいる
少年はしっかりと歩き続けている。そのことは、伽耶の心のどこかに、大きな衝撃を与えた。
 だが、自分がヒーローに完全に劣るとは思わない。そう思うのは四十代目葛葉ライドウの沽券に関わる。だから
伽耶はニヤリと笑って付け足した。
「だが、弱いほうが生き延びることもある」
「…覚えておくよ」
 ヒーローが弱弱しく笑う。しかし目には失われることなく強い光があった。
「…少し、休む。なんだかどっと疲れた」
「ああ。見張りは任せておけ」
「GUMP、置いていこうか?」
 提案に、伽耶は首を横に振った。ホウオウの入った手製の封魔管を軽く振って不敵に笑う。
「君が味方でよかった。本当にそう思うよ」
 ヒーローはぽつりと言葉をかけて、返事を待たずに階段を上がっていく。
「…お互い様だ」
 ヒーローの背中が見えなくなったことを確認してから、伽耶は小声でつぶやいた。

48英雄の決断 7/10:2007/08/30(木) 14:42:18
 ベッドに腰掛けた姿勢のままヒーローは仮眠を取った。寝そべったら、そのまま何時間も寝続けてしまいそうな
気がした。これほどに疲れたことはなかった。高校の部活動でも、金剛神界でも、カテドラルでの激戦でも、これ
以上はないと思えるほどの疲労を覚えたものだったが、そのいずれも今回に比べればオママゴトみたいなものだ。
(また将来、もっとすごいことに巻き込まれて、そのときも同じようなことを思うのかもな)
 ふと皮肉な考えが思いついた。面白いが、笑えなかった。冗談じゃない。殺し合いとか、戦争とか、そんなのは
もうウンザリだった。ほんの少し前までは普通の高校生だったのに、いつの間にかどんなイカれた世界にも簡単に
順応できるようになっている、そのこと自体がたまらなくイヤだった。
(だが、イヤでもやらざるを得ない)
 と頭の中で自分が自分にツッコミを入れる。ああ、くそ、確かにそうだ。それは分かっている。死ぬのはもっと
イヤだった。ならば、戦うしかないのだ。
(なら余計なこと考えてないで、しっかり頭と身体を休めたらどうだ?)
 確かにそれも道理だ。しかし考えを止めることはできなかった。考えてしまう性分なのだ。それに…考えるのを
止めるわけにはいかないような気もした。考えるのを止めるのは、自分が壊してきたものを信じていた人たちへの
裏切りのような気がする。法に準じた友も、混沌に興じた友も、この手で殺めてきたのだ。いまさら思考停止する
なんて、彼らへの裏切り以外の何者でもないではないか。
(彼らもなぜか生き返ってこのゲームとやらに参加してるけどな)
 また頭の中で皮肉な声が響いた。これまた笑えない話だ。悪魔を殺すのだってあまり平気ではないというのに、
人を殺さなければならないのは、とてもつらい。しかも相手がかつては背中を任せ合った仲間だった元・友人――
それも2人も同時にとくれば、なおさらだ。
 彼らの顔を思い浮かべ、ふと、とある違和感に気付いた。
(『彼』が、Chaosの手駒を蘇らせたのは、まだ理解できる。…なぜ、Lawの使徒まで復活させたんだ?)
 あの最初の教室で、そして今日の日の出のとき、頭に直接響くように語り掛けてきた、魅惑的な低音の声。姿は
見えなかったが、ヒーローにははっきりと一人の男の姿が思い出せた。中性的な顔立ち、透き通るような白い肌、
ブロンドのロングオールバック、趣味のよいブラックのスーツ。声の主は『彼』で間違いないだろう。だがしかし、
『彼』にとってすれば、メシアに転生したロウ・ヒーローなど、不倶戴天の敵ではないのか。
(いったい、なにが目的なんだ?)
 ぱっと思いつくところでは、ロウ・ヒーローをChaosの手駒に引き込もうとしていた可能性がある。が、それは
どう考えてもできるはずもないことだった。百歩譲ってできたとしても、それが有効な手だとはとても思えない。
ロウ・ヒーローが使えなくなったら、Lawの神たちは容赦なく彼を切り捨てるだろうから。それはかつて至上なる
存在でありながら切り捨てられた『彼』本人が一番知っていることだろう。
 とするならば、あとは現時点で考えられる理由はひとつしかない。法に逆らい混沌を求める『彼』らしい理由。
『彼』は、『彼』の管理するこの閉鎖空間にすら混沌を求めたのだろう。真の混沌には、敵が、味方が、強者が、
弱者が、善が、悪が、光が、闇が、法が、混沌が――あらゆる存在がいなくてはならないと考えたのではないか。
(…平たく言えば、ゲームを盛り上げたかった、ってことだよな…相変わらず細かいところで勤勉だなァ)
 ヒーローは軽く苦笑する。今回の皮肉は、ほんの少しだけ笑えた。が、それより燃え上がる怒りのほうが大きい。
一方的な思惑で他人の命を取捨選択し操作する傲慢に、許しがたい怒りを覚えた。同じようなことをしておいて、
法の神を批判する資格などがあるとは思えない。法も、混沌も、相変わらずどっちもどっちだ。
 ――君がどちらに傾くか… 期待しているよ、ザ・ヒーロー…
 あのとき、最後にかすかに聞こえた声を、ヒーローははっきりと思い出した。あの、見惚れるような品のよさと
背筋も凍る邪悪さが同居した微笑みが否応なく目に浮かぶ、忘れられない魔力を持ったささやき声。
「…期待に沿えるかどうか、お約束はできかねるよ、魔王サマ…」
 目を閉じてうつむいたままつぶやく。そのまま、ヒーローの思考は散漫になり、眠りの底へ散らばっていった。

49英雄の決断 8/10:2007/08/30(木) 14:43:01
 ピピッ… ピピッ… ピピッ…

 どこからか聞こえる電子音が、ヒーローを眠りの闇から引きずり出した。ほんの数秒だけ眼を閉じたような記憶
しかなかったが、時計を見るともう11時を過ぎている。1時間ほど寝たということか。
 毛布で汗を拭った。それほど暑くはないのに、ずいぶんびっしょり寝汗をかいている。覚えていないが、なにか
イヤな夢でも見たのかもしれない。ありえなくはなかった。小細工が好きな魔王サマのことだ、安眠を妨げる夢魔
たちを街中にばら撒いていたっておかしくはない。
「やれやれ、閣下ともあろうお方が、ずいぶんセコい真似をなさるもんだね」
 つぶやいた。今度の皮肉は、かなり笑える。仮定の話から決め付けての人格攻撃は少し卑怯かな、と思ったが、
別に気にしないことにした。罪もない人々を、いや、罪があろうがなかろうが、こんな風にかき集めて閉じ込めて
殺し合いを強制すること以上に卑怯なことなどありはしない。誹謗中傷のひとつやふたつぐらいで文句を言われる
筋合いなどないだろう。ヒーローは笑いを押し殺しながら、外しておいた武器を装着した。
 身支度を整えて、仮眠室を出て階段を下りた。ドアの開く音を聞きつけて顔を上げた伽耶に、ヒーローは挨拶の
代わりに片手を挙げた。
「眠れたか?」
 椅子に腰掛けた伽耶が、手元に視線を戻しながら言った。カッターナイフで鉛筆の表面を削る作業をしている。
精巧な文様が刻まれた鉛筆が、机の上に何本か転がっていた。この1時間、ずっとこの作業をしていたのだろう。
「それなりにね。けっこう休めたよ、ま、さすが万全とはいえないけど」
「夜まで寝ててもらったって構わないぞ、私は」
「はは、そうは行かないよ… ところで、それ、なに?」
 鉛筆を指差して尋ねたヒーローを、伽耶は意味ありげな微笑を浮かべて無視した。
「それより、何か鳴ってるぞ。GUMPじゃないのか?」
「え? あぁ、そうか、そういやなんか鳴ってた」
「…おいおい、寝惚けてるのか? しっかりしてくれ」
 伽耶が呆れたように言う。ヒーローは苦笑してGUMPを開いた。こんな大きな音を聞き逃すなんて、寝惚けている
と思われても仕方ない。
「…HYAKUTAROH?」
 画面に点滅している文字を読んだ。ひゃくたろう、だろうか。そういえば、インストールソフトの中にそういう
名前のものがあったことを思い出す。確か、機能は…
「…伽耶」
「分かってる、かなり近いな」
 伽耶はいつの間にかデスクの上の荷物を片付け、鉄パイプとスタンガンを手に視線を窓の外へ向けている。数秒
遅れて、ヒーローも窓の外に蠢く害意を感じ取る。荷物を背負い、鉄パイプを構え、GUMPのグリップを握った。

50英雄の決断 9/10:2007/08/30(木) 14:43:35
 窓の外に人影が見えた。濁った臭気と殺気を漂わせつつ、散漫な動きで周囲を探っている様子が伺える。ゾンビ
に代表される、屍鬼の類の悪魔だろう。ヒーローは軽く舌打ちした。知能が低く邪悪なため仲魔にしづらいうえ、
戦力としても合体材料としてもあまり魅力的な種族ではない。
「面倒だな、どうする?」
 ヒーローは伽耶に話しかける。やりすごすか、倒すか。どちらにせよ大した敵ではない、と思っていた。しかし
伽耶は真剣な表情を少しも緩めず、窓の外を凝視したまま動かない。
「どうもこうもない、隙を見て逃げるぞ」
「…え?」
「分からないのか、あれはゾンビなんて甘いものじゃない」
 言われて初めて、ヒーローは自分の考え違いに気付く。周囲に悪魔の気配がないことはさきほど何度も確かめた。
ゾンビの習性から考えて、縄張りから離れて単独でふらふら歩いてくることは考えにくい。とするならば。
「…くそッ、またネクロマの術か」
 ヒーローは毒づいた。屍体をゾンビとして操る呪術、ネクロマ。それにより蘇った屍体と、既に一度やりあって
いる。あのときは逃げることしかできなかった。今も、戦力的にはあのときと大差はない。
(…どうする…?)
 考えた。圧倒的に不利であったとしても、やり方ひとつで逆転できるということは、ヒーローが今まで経験して
きた戦闘から明らかなのだ。現にこの街に来てからも、諦めずに考え抜くことで、何度も危機を免れてきたのだ。
 考えた。手持ちの武器。仲魔のメンツ。自分たちの体調。部屋の構造。部屋の中にある物。この状況を打破する
ために、どうするのが最善か。疲れの抜け切らぬ寝起きの頭を、強引にフル回転させて、考えた。
 考えをまとめる時間は、なかった。窓の外の人影がこちらを向いた。部屋の中にいる新鮮な肉に気が付いたのだ。
力の加減ができなくなったような激しい動きで、手に持った何かを振り上げ、投げつける。窓が割れた。がちゃん、
と機械特有の音を立て、四角い物体が床で跳ねた。
(…電動ドリル?)
 窓を破り侵入してきた物体を、ヒーローはつい反射的に眼で追ってしまう。
「余所見するな、来るぞッ!」
 伽耶が叫ぶ。慌ててヒーローは正面を向いて、GUMPをホルスターから引き抜いた。

51英雄の決断 10/10:2007/08/30(木) 14:44:11
【時間:午前11時半】


【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:全身に軽症(ほぼ回復) 疲労(仮眠により大分回復)
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み) 虫のようなもの
道具:マグネタイト7700(ハーピー召喚で消費) 舞耶のノートパソコン 予備バッテリー×3 双眼鏡
仲魔:魔獣ケルベロスを始め7匹(ピクシーを召喚中)
現在地:青葉区オフィス街
行動方針:伽耶の術を利用し脱出 現状打破

【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:四十代目葛葉ライドウの人格、疲労(仮眠により大分回復)
武器:スタンガン 包丁 手製の簡易封魔用管(但しまともに封魔するのは不可能、量産も無理)
道具:マグネタイト4500 イン・ラケチ  文様を刻んだ鉛筆×5 カッターナイフ
仲魔:霊鳥ホウオウ
現在地:同上
行動方針:ザ・ヒーローと共に脱出 現状打破

【反谷孝志(ハンニャ)@ペルソナ2】
状態:ネクロマ状態、記憶が曖昧、シドの服を着ている
武器:電動ドリル(壊れている)
道具:盗聴器(存在には気付いていない)
現在地:同上
行動方針:とにかく殺す


【ピクシー(ザ・ヒーローの仲魔)】
状態 魔法使用により少し疲労
現在地 平坂区カメヤ横丁近辺
行動指針 ヒーローの命令遂行(周防達也を探して天野舞耶たちの元へ連れてくる)

52 ◆Woz8bGGVKg:2015/11/10(火) 23:51:16
test

53 ◆WWE.FIHli.:2015/11/10(火) 23:52:00
test


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板