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【初めての】練習場【バトロワ】
48
:
英雄の決断 7/10
:2007/08/30(木) 14:42:18
ベッドに腰掛けた姿勢のままヒーローは仮眠を取った。寝そべったら、そのまま何時間も寝続けてしまいそうな
気がした。これほどに疲れたことはなかった。高校の部活動でも、金剛神界でも、カテドラルでの激戦でも、これ
以上はないと思えるほどの疲労を覚えたものだったが、そのいずれも今回に比べればオママゴトみたいなものだ。
(また将来、もっとすごいことに巻き込まれて、そのときも同じようなことを思うのかもな)
ふと皮肉な考えが思いついた。面白いが、笑えなかった。冗談じゃない。殺し合いとか、戦争とか、そんなのは
もうウンザリだった。ほんの少し前までは普通の高校生だったのに、いつの間にかどんなイカれた世界にも簡単に
順応できるようになっている、そのこと自体がたまらなくイヤだった。
(だが、イヤでもやらざるを得ない)
と頭の中で自分が自分にツッコミを入れる。ああ、くそ、確かにそうだ。それは分かっている。死ぬのはもっと
イヤだった。ならば、戦うしかないのだ。
(なら余計なこと考えてないで、しっかり頭と身体を休めたらどうだ?)
確かにそれも道理だ。しかし考えを止めることはできなかった。考えてしまう性分なのだ。それに…考えるのを
止めるわけにはいかないような気もした。考えるのを止めるのは、自分が壊してきたものを信じていた人たちへの
裏切りのような気がする。法に準じた友も、混沌に興じた友も、この手で殺めてきたのだ。いまさら思考停止する
なんて、彼らへの裏切り以外の何者でもないではないか。
(彼らもなぜか生き返ってこのゲームとやらに参加してるけどな)
また頭の中で皮肉な声が響いた。これまた笑えない話だ。悪魔を殺すのだってあまり平気ではないというのに、
人を殺さなければならないのは、とてもつらい。しかも相手がかつては背中を任せ合った仲間だった元・友人――
それも2人も同時にとくれば、なおさらだ。
彼らの顔を思い浮かべ、ふと、とある違和感に気付いた。
(『彼』が、Chaosの手駒を蘇らせたのは、まだ理解できる。…なぜ、Lawの使徒まで復活させたんだ?)
あの最初の教室で、そして今日の日の出のとき、頭に直接響くように語り掛けてきた、魅惑的な低音の声。姿は
見えなかったが、ヒーローにははっきりと一人の男の姿が思い出せた。中性的な顔立ち、透き通るような白い肌、
ブロンドのロングオールバック、趣味のよいブラックのスーツ。声の主は『彼』で間違いないだろう。だがしかし、
『彼』にとってすれば、メシアに転生したロウ・ヒーローなど、不倶戴天の敵ではないのか。
(いったい、なにが目的なんだ?)
ぱっと思いつくところでは、ロウ・ヒーローをChaosの手駒に引き込もうとしていた可能性がある。が、それは
どう考えてもできるはずもないことだった。百歩譲ってできたとしても、それが有効な手だとはとても思えない。
ロウ・ヒーローが使えなくなったら、Lawの神たちは容赦なく彼を切り捨てるだろうから。それはかつて至上なる
存在でありながら切り捨てられた『彼』本人が一番知っていることだろう。
とするならば、あとは現時点で考えられる理由はひとつしかない。法に逆らい混沌を求める『彼』らしい理由。
『彼』は、『彼』の管理するこの閉鎖空間にすら混沌を求めたのだろう。真の混沌には、敵が、味方が、強者が、
弱者が、善が、悪が、光が、闇が、法が、混沌が――あらゆる存在がいなくてはならないと考えたのではないか。
(…平たく言えば、ゲームを盛り上げたかった、ってことだよな…相変わらず細かいところで勤勉だなァ)
ヒーローは軽く苦笑する。今回の皮肉は、ほんの少しだけ笑えた。が、それより燃え上がる怒りのほうが大きい。
一方的な思惑で他人の命を取捨選択し操作する傲慢に、許しがたい怒りを覚えた。同じようなことをしておいて、
法の神を批判する資格などがあるとは思えない。法も、混沌も、相変わらずどっちもどっちだ。
――君がどちらに傾くか… 期待しているよ、ザ・ヒーロー…
あのとき、最後にかすかに聞こえた声を、ヒーローははっきりと思い出した。あの、見惚れるような品のよさと
背筋も凍る邪悪さが同居した微笑みが否応なく目に浮かぶ、忘れられない魔力を持ったささやき声。
「…期待に沿えるかどうか、お約束はできかねるよ、魔王サマ…」
目を閉じてうつむいたままつぶやく。そのまま、ヒーローの思考は散漫になり、眠りの底へ散らばっていった。
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