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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】
162
:
煌月の鎮魂歌8 28/29
:2016/01/16(土) 18:49:54
くしゃくしゃになったシーツを押しやり、身を起こす。サイドテーブルの引き出しを
あけて、中をさぐった。鎖のついた重い金属に指が触れる。つまんで、引き出した。
すり減って傷だらけの古びた金の指輪が、なにかの死骸のように重く手の上に転がった。
橙色のランプの光がその表面に揺れた。一瞬、頭の奥でこぼれる赤い涙と眠る男の姿
がフラッシュした。衝動的に立ち上がり、窓を開けると、外の真っ暗な夜に向かって、
指輪を投げつけようとした。
だが、できなかった。片手を振りあげた姿勢のままユリウスはしばらく硬直し、身を
震わせていたが、やがて疲れ果ててベッドに崩れるように腰を落とした。開いた窓から
夜の風と気配が流れ込んでくる。
「……嫌だ」
ユリウスは呟いた。それはアルカードが彼に向かって呟いたものと同じだった。嫌だ。
嫌。絶対的な拒否の言葉。いまだかつてアルカードが口にしたことのなかった言葉。
「嫌だ。放してなんてやるもんか。絶対に放しゃしない。あいつは俺のものだ。俺の
ものなんだ。何百年も前に死んだ男のものなんかじゃない。あいつは俺のだ。俺の、
ものなんだ……」
握りしめた拳に力をこめる。赤い髪が垂れ、血の出るほどに唇をかみしめるユリウス
の若い顔を隠した。わななく手の中で、金の古い指輪が人肌に温められ、ゆっくりと
ぬくもっていった。
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