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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】
154
:
煌月の鎮魂歌8 20/29
:2016/01/16(土) 18:44:36
思っただけで、声にはなっていなかったかもしれない。一瞬あたりの音が消え、稲光
や炎のすさまじい乱舞も消え、手の中にある鞭の感触だけが鋭利な剃刀のように感じ
られた。
そしてアルカード。
けがらわしい女妖に抱きすくめられてがっくりと仰のいた、アルカードの白い横顔。
懐に固いものがある。聖水の入ったアンプル。
ほとんどなにも考えず、ユリウスは残った四本のアンプルをまとめてつかみ出し、
力をこめた。ガラスのアンプルは拳の中で砕け、破片が深々と手のひらに食い込む。
血と聖水の混じったうす赤い液体が流れ、たらたらと鞭の柄に、身に滴った。
急速に世界に音が戻ってきた。ようやくユリウスは自分の発している咆吼を聴くこと
ができた。嵐のように打つ心臓も、ぎりぎりときしむ骨も筋肉も、すべてが限界まで
引き絞られる。
聖水とベルモンドの血に濡れた鞭が、聖者の大剣のようにまっすぐに振りおろされた。
首のないカメレオンの身体はあっさりと二つに裂けた。蠍の尾がひきつり、割れた切断
面にぞっとするような内臓と漿液のつまった袋が見えたが、それもたちまち塵となり、
あっけなく崩れて形をなくしていく。
妖女の顔が引きつった。アルカードの喉にへばりつきかけていた蛭めいた舌は垂れ下
がり、死んだ蚯蚓のように垂れ下がった。おぞましい抱擁がとけ、アルカードは地面に
転がって倒れた。
『おのれ……ベルモンドの男……またしても──』
しゃべった妖女の口から、ちぎれて落ちた蛭の舌が灰になって散った。
『呪わしきはベルモンド……だが魔王様のご復活は必ず……必ず──』
ひとつの頭が内破するように潰れ、もう一つもあとを追った。腐った肉の悪臭が瞬間
あたりに漂い、夜風に吹き散らされた。わずかに紫色の塵が執念のようにアルカードに
まつわりつこうとしたが、すぐにそれも崇光の鋭い気合いひとつに吹き払われた。
ユリウスは凝固したように立ちつくしていた。たった今、全身を駆け抜けた蒼白い炎、
これまで経験したどのようなエクスタシーよりも強烈なパワーの渦に文字通り金縛りに
なっていた。
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