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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】
152
:
煌月の鎮魂歌8 18/29
:2016/01/16(土) 18:43:11
たちまち地震は静まり、代わりに獣の眼前に轟音をたてて岩と土の衝立がせり上がる。
ポシェットから首を出している黒い亀を片手で押さえて、イリーナは肩で息をしていた。
「イリーナ、無理をしてはいけません。あなたは体力が──」
「ここでこいつを止められなかったら体力なんて意味ないわ。バーディー! ニニー!
ティガー!」
肩をつかもうとした崇光を乱暴に振り払い、かすれた声をイリーナは振り絞った。岩を
踏み砕き、土を突き崩して怪物の醜怪な頭が迫ってくる。
無我夢中でユリウスは動いた。頭上で竜がとどろく雷鳴とともに稲妻を降らせ、白い
巨虎が爪と牙をむき出しにして隣を走る。
闇を裂いて烈しい炎が筋を引き、目まぐるしく色を変えるカメレオンの片目を
焦がした。電光のまといついたユリウスの鞭がその傷をえぐり、虎の牙と爪が生き物で
あれば脳髄に達するほどに深々と突き刺さる。
黒いマントが翻り、月光の髪が頭上をこえていった。片目を潰されてもがく怪物の鱗
におおわれた首に剣がひらめき、直線を描いた。前進しようとする怪物の身体が一瞬
ずるりとずれ、醜怪な頭部とのたうつ紫の舌が地面に転がり落ちた。
『お恨みいたしますわ、公子様──』
ひくつく舌の先で女の頭が嘲笑のようにささやいたかと思うと、いきなり舌だけが蛇
のように伸び上がった。
溶けて消えていくトカゲの頭をあとに残して襲いかかる。ゆく先はアルカードだった。
蛾の女の頭は多面体のガラスめいた複眼に情欲の緋色を走らせ、牙だらけの口を悪夢の
ような微笑にゆがめていた。
アルカードは真っ向からひと太刀で真二つに切り払ったが、切られて左右に分かれた
怪物は、そのまま二つのまったく同じ頭になり、あっという間にアルカードの全身を
からめとった。
「アルカード!」イリーナが悲鳴をあげ、崇光が低い罵りめいた言葉を呟く。アルカード
はもがいたが紫色の肉の蛇はゆるまず、剣をにぎった腕は身体の横に縛りつけられて
動かせない。じりじりと脚が地面を離れ、アルカードの身体は宙に浮いた。
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