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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

148煌月の鎮魂歌8 14/29:2016/01/16(土) 18:40:37
「その声は、ムタルマ女伯爵か」
 低い声がして、身構えるユリウスのそばをゆらりと黒いマントが揺れて過ぎた。
なびく銀髪をあとにひいて、剣の柄に手を置いたアルカードがゆっくりと前に進み出る。
瞳はいまだにさえざえとした蒼色を保ち、ユリウスにはそれがまだアルカードが戦う意志
を表に出していないせいか、それとも新月のために魔力を解放するのを邪魔されているた
めか、判断できなかった。
『ああ、公子様、いと貴なる闇のお世継ぎ様』
 ムタルマ女伯爵と呼ばれた魔物はあえぐように言い、懇願のしぐさで白い両腕を前に
差しだした。黒い瞳が情欲めいたものでぬれぬれと光っている。ユリウスはぎょっとして
アルカードの優美な後ろ姿を見つめた。
 公子? 魔王の世継ぎ?
 ドラキュラの、魔王の息子ということか──こいつが?
『なぜそんなところにいらっしゃるのです? なぜ人間などといっしょに? あなた様
こそわたくしどもの先頭に立って、お父君の復活に力を尽くすべきお方ではありません
か。どうぞ剣などお納めになって、父君のもとにお戻りください。いまわたくしが、
あなた様にたかるこの不快な虫けらどもを駆除してごらんにいれますから、どうぞ、
あるべき地位にお戻りになって。闇の臣民たちはみな、この数百年のあいだずっと、
あなた様のお帰りをお待ち申し上げているのでございますよ』
「私に帰るところなどない」
 短く言い切って、アルカードはすらりと剣を引き抜いた。細い刀身が闇の中でそれ自体
白い光を放つように輝線を描く。
「私の望みは魔王ドラキュラの完全なる覆滅、それだけだ。あの男は地上にあっては
ならぬ者だ。私はただそれだけのために存在し、ここに立つ。闇の呼び声に耳など
貸さぬ」
『やはり応じてはいただけぬのですね、高貴なるお方』


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