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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

146煌月の鎮魂歌8 12/29:2016/01/16(土) 18:39:25
 東洋の竜──西洋のドラゴンとは違う、それ自体が神である一族だ。長い髭と鹿のそれ
に似た角、黄金と青にきらめく鱗、短い前脚には真珠のように光る宝珠をつかみ、慈愛と
も諦観ともつかぬ金色の目で下界を見下ろしている。
「セイリュウ!」
 イリーナの声とともに、あたりが目もくらむほどの光と轟音に包まれた。
 しばらくはなにも見えず、聞こえなかった。くらんだ目がもどってみると、ゲンブと
スザクに焼き払われた残骸がすべて取り払われ、開いた空間のむこうに、白い人影のよう
なものがぼんやり浮かんでいるのが見えた。
『生意気なお嬢ちゃんだこと』
 毒のきいた蜜のような声が風にのって運ばれてきた。
『目上の者を出迎えるときは、それなりの礼儀を払うものよ』
「あんたなんかに払う礼儀なんてないわ、闇の者」
 イリーナの消耗が激しい。なんとか自分で立とうとしているが、脚を震わせて大きく
肩で息をしている。どうやら今の一撃は相手そのものを狙ったらしいが、すべてそら
されたというわけか。
「どうやってここに入ってきたわけ? 誰もあんたなんか招待してやしないわよ。いずれ
魔王といっしょに滅ぼされるのに、ずいぶんお急ぎね」
『あら、人間と遊ぶのはいつでも大好きよ』
 女は──少なくともその姿をした部分は──毒々しい色に塗られた長い爪を唇にあてて
妖艶に笑った。
『そちらが新しいベルモンドの男? そう。いくら潰しても次から次へと湧いてくる
のね。虫けらだけのことはある』
 ユリウスはイリーナを強引にコートの内側に押し込み、後ろに下がって鞭を握り
しめた。なぎ倒された樹木の中をゆっくりと進んでくるのは、まさに悪夢の生き物
だった。


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