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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

14煌月の鎮魂歌 2 2/13:2015/03/11(水) 02:04:34
 今はユリウスに従っている男たちも、もしユリウスが絶対の強者ではないと知れば、
たちまち反抗の牙を研ぎ出すだろう。競合する別のギャング、ベンベヌート一味や
マカヴォイ兄弟のもとに走る者も出るかもしれない。ユリウスとしてはあくまで威厳を
保ったまま、手下どもに手当と後始末をしておくように言いつけ、相手を内に請じ
入れるしかなかった。
 煤色に染まったコンクリートの壁に背をもたせ、顎をしゃくって座るようにうながす。アルカードはなんでもなさそうに粗末な、クッション一つついていない堅い椅子を引き
寄せて、腰を下ろした。服が汚れることも気にしていないようだった。
 アルカードの言葉の意味は悟っていた。「こんなところ」とは見下して言ったわけ
ではなく、「こんなに寂しいところにひとり住んでいるのか」という問いかけを含んで
いたのだった。
 哀れみは〈赤い毒蛇〉のもっとも嫌うところだ。それらは人を甘くする。苛立ちに
歯を噛み鳴らしながら、ユリウスは顎を胸につけ、刺すような青い眼でじっと銀髪の
麗人を眺めた。
 ベルモンド。ベルモンドとその〈組織〉。
 裏社会のみならず、表社会の権力者たちの中でもその名前は一種の禁忌であり、畏怖
とある種の恐怖をもってささやかれる存在だった。
 力を持つ者ほど迷信にすがりたがるのは今も昔も同じことだ。ギャングの大ボスたち
はそれぞれの特別な護符や習慣を身を守るためのまじないとして手放さないし、まつげ
を動かすだけで人を殺せるマフィアのグランドファーザーでさえ、毎週の礼拝出席と
教会への巨額の献金はかかさない。現米国大統領がお抱えの占星術師を頼ってスケ
ジュールを決めていることは周知の事実だし、験力が強いと評判の祈祷師のもとに、
政治家ややくざの組長が門前列をなすのは公然の秘密だ。
 だが、ベルモンド一族とその〈組織〉は違う。
 彼らは闇に属しながら、その中でもさらに深い闇にまぎれ、どんな権力にも従う
ことなく、ことあらば不意に姿を現して去っていく。時に世間を騒がせることがある
謎の殺人や奇妙な出来事、表に出ることのない怪異、それらの近くでは必ずベルモンド
の名がささやかれる。
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