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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

123煌月の鎮魂歌7 6/17:2015/11/12(木) 20:46:01
 だが七歳の誕生日、黒ずくめの装束をまとい、緋裏の黒いマントをひるがえしながら
ゆっくりと歩いてきたそのひとを見たとき、少年は自らのどんな夢想も、現実には
とうてい及んでいなかったことを知った。
 やわらかくなびく銀髪をかきあげて、自分に向いた月の白い顔があのかすかな微笑を
浮かべたとき、あらゆる世界が少年のまわりで消え去った。
『また会ったな。ベルモンドの子供』
 極上のベルベットのような低い、やわらかな声が耳をそっと撫でた。
『私は、アルカード。人には、そう呼ばれている』
 ふわりと身をかがめて、子供の低い視線にあわせる。薔薇と、そして何か金属的な──
血、の匂いが漂い、くらくらと目が回った。どこまでも深く澄んだ蒼氷色の瞳が、
文字通り少年の魂を射抜いた。
 息が止まるような思いだった。ひょっとしたら、その場で倒れて死んでいたかもしれ
ない。それほどまでにきらめくその目の一瞥は強烈だった。彫像めいた手のひらが
そっと頬を包み、やさしくさすった時、ほとんどその場に卒倒してしまいそうだった。
『だからお前も、そう呼ぶがいい。私はベルモンドに従い、ベルモンドとともに、闇と
魔王の真なる打倒を目指すもの。いずれお前も、私の隣に立つようになる。ミカエルの
ように』
 黙して立つ父にも彼は目をやった。
 そのとたん、少年ははげしく胸を焦がす痛みを感じた。この麗人の瞳に見つめられる
のが、自分でないことに理不尽な怒りを抱いた。
 父はうなずき、笑みを返したが、その微笑がかすかにこわばっていることを少年は
見逃さなかった。自分の感じている痛みを、父もまた感じていることを、本能的に少年
は感じ取った。
 アルカードはなめらかに立ち上がり、緋裏のマントをさらさらと鳴らした。美しい剣
の柄が、細い腰に装飾品のようにきらめいていた。


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