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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】
10
:
煌月の鎮魂歌 1 8/10
:2015/02/25(水) 09:19:23
ひび割れた戸がまちに肘をよせかけて、若い男がだらしない格好でよりかかっていた。
半裸で、ひきしまった上半身には何もまとっておらず、細いレザーパンツをはいているだけだった。ごついコンバット・ブーツを半分ずりさげるようにしてひっかけており、腰
の後ろに、たばねた縄のような輪が見えた。うんざりしたように髪をかきあげて、地面に
這った手下どもをあきれ果てた顔で見下した。
「せっかくいい気持ちで寝てたのに、バンバンドカドカ騒ぎ立てやがって。ぶちのめして
やろうと思ってたらこの始末だ。せめて俺が出てくるまで待てなかったのか、え、犬ども」
そげた頬ととがった顎をした、剃刀めいた印象の顔だった。高い鼻の両側の目は青く冷
たく、深く落ちくぼんで燐光を放つように見えた。長い髪は赤く、まっすぐで、寝ていた
ことを明かすようにばらばらに肩から腰へと乱れかかかっている。
やせていたが、むきだしの上半身は無駄のない筋肉にきっちりと覆われていた。穏やか
な表情であれば整った顔立ちといえただろうが、夜の中でも燃えているような、両目の冷
たい火がそれを裏切っていた。
「ご、ごめんよ、ジェイ、ごめんよ」
「さわるんじゃねえよ、クソ犬が」
足もとへ這っていって手を伸ばそうとした男を蹴り飛ばし、無造作にコンバットブーツ
を踏みおろした。枯れ木を砕くような音がして、男はかぼそい悲鳴をあげた。
踏み砕かれた手を抱えて苦悶する手下を見もせずに、ジェイと呼ばれた赤毛の男はさら
に一歩踏み出してすかすように前を見た。視線の先にはかわらず静かな、月色の銀髪の青
年が佇んでいた。
「ずいぶん毛艶のいいおぼっちゃんだな」
あざけるように彼は言った。
「その格好で誰にも身ぐるみはがされずにここまで来たとは見上げたもんだ。しかし、あ
んたみたいな細っこいのに足もとすくわれてちゃ、こいつらも大したことはねえな。まあ
いいさ、こいつら腰抜けのことはあとで始末する。で」
冷ややかな青い瞳がきつく細まった。
「あんた。何者だ」
「──おまえが、ユリウス・ベルモンドか」
問いには答えず、青年は静かに言った。
息のつまったような沈黙が落ちた。
強い恐怖があたりにみなぎり、倒れて傷の痛みに悶えていた男たちも、一瞬苦痛を忘れ
て動きをとめた。
赤毛の男はしばらく沈黙していた。垂れた前髪が表情を隠していた。薄い唇が笑みに似
てはいるが、それとはまったく違った何かを浮かべた。
「なあ、知ってるか、あんた」
陽気と言っていい声で彼は言った。
「俺の耳にはいるところでその名を口にした奴は死ぬんだ。俺が特別、機嫌のいいときに
はな」
「では、悪いときには?」
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