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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】
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:
煌月の鎮魂歌 prologue 1/2
:2015/02/25(水) 09:03:07
PROLOGUE 一九九九年 七月
白い部屋だった。
彼の目にはそれしか映っていなかった。白。ただ一色の白。
ときおり、影のように視界をよぎっていく何者かが見えたような気もしたが、
それらはみな、彼の意識にまでは入り込むことなく、ゆらゆらと揺れながら近づき、
遠ざかり、近づいてはまた離れていった。
自分は誰なのか、あるいは、何なのか。
生きているのか、死んでいるのか。
ベッドの上の「これ」が生物であるのか、そうでないのかすら、彼にはわから
なかった。呼吸をし、心臓は動き、血は音もなく血管をめぐっていたが、それらは
すべて彼の知らぬことであり、石が坂を転がるのと、木が風に揺れるのと、ほとんど
変わりのない単なる事実でしかなかった。
ただ白いだけの、水底のように音のない空間で、まばたきもせず空を見据えながら、
彼はときどき夢を見た。生物でないものが夢を見るならばだが。
そこで彼は長い鞭を持ち、影の中からわき出てくるさらに昏いものどもと戦い、
暗黒の中を駆け抜けていった。
そばにはいつも、地上に降りた月のような銀色の姿があった。それはときおり
哀しげな蒼い瞳で彼を見つめ、また、黙って視線を伏せた。
夢は、止まったままの彼の時間を奇妙に揺り動かし、見失った魂のどこかに、
小さなひっかき傷を残した。肉体はこわばったまま動かず、そもそも、存在するのか
どうかあやしかったが、この地上の月を見るたびに、彼の両手は痛みに疼いた。
何か言わなければならないことが、どうしても、この美しい銀の月に告げなくては
ならないことがあるような気がしたが、それが形を取ることはついになかった。彼は
ただ、無限の白い虚無に、形のない空白として漂っていた。
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