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Awake
197
:
Awake 16話(10/11)
:2013/12/21(土) 06:38:34
モーリスはヒューの相貌が徐々に青ざめ、自分から目線を逸らして口もとを震わせながら怯え
ている様に気づいたものの、念を押す心持で言葉を続けた。
「それにそんな事態になったらお前とて……分かるな?」
「ああ。奴と対峙した後に身体の機能が奪われた場合、身体が貪られようとする事態に陥
る前に、意識があるうちに……自裁する」
「そうだ。しかしキリスト者として自ら命を絶つ事は背徳者、排教者の汚名を着る事にな
る。お前の魂は煉獄に入る事も、人の世界に留まる事も許されない辺土の住人となる」
話をしている内に寂寥と悲しみが込み上げてきたヒューは、仰向けで空を見ながら生き延
びた息子と数刻後に起こる悲観的な予測を語る父親の胸に静かにうつ伏し、子供の様に滂
沱の涙を流しながら自分の途と宿命をこの時、初めて呪った。
「そんな事、死ぬほど聞かされたと言うのに……親父。俺、今死ぬ事とあんたやネイサンが居
なくなる話をしただけで震えているんだ。死んだらあんた達の魂と一緒に居る事は出来な
い。孤高ではない、一人ぼっちで存在と概念は永久に許されない者になってしまう恐怖に」
「泣け。今まで流せなかった涙を思う存分流せ。己の無力を自覚し改めて他者と交わり、
人間としての力を死ぬその時まで構築し続ける土壌と気概を心の中に準備出来るまで」
表情の見えない息子の涙を感じながら、モーリスは咽び泣く嗚咽が途切れるまで彼の頭を撫
で続けた。その仕草にヒューはただ「済まなかった」と何度も嗚咽の合間に漏らした。
己の不安定さゆえに、徒に死なせたくなかったモーリスの苦悩と決断を言葉ではなく肌で感
じ、余計な理屈や言い回しをされずとも、最も信頼している二人から愛されていた事に心
からの感謝と、謝罪をささげずには居られない心境になったからだ。
モーリスはふと、頭を撫でながら唐突にヒューに尋ねた。
「お前、他の世界を見る気はあるか?」
意外な言葉を投げかけられ、一瞬ヒューは戸惑って顔を上げると、己の立ち位置をもう一
度確認するかのように懐疑的な口調で聞き返した。
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