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Awake

196Awake 16話(9/11):2013/12/21(土) 06:37:51
再度、生き延びられた喜びに目を潤ませながらヒューを抱きしめたモーリスだったが、安堵で半
分糸が切れたかのようにヒューの体から崩れ落ち、その場で腰を下ろした。ヒューもまた、つら
れて傾れ込むかのように一緒に座った。
「すまん、歩いているだけでも辛いらしい。横になってお前と話をしていいか?」
「ああ、それより目を閉じて寝ていたほうがいいぞ」
「それは出来ない、儂は見届けねばならんのだ。城が崩壊し、消滅する希望と恩寵を。だ
が陽光が時間になっても射さない時には希望は消え失せ、儂が命を賭してグレーブスの遺児
の骸を踏み越え力及ばずも戦うだろう」
「親父……言うな、それ以上言葉を続けないでくれ。それに何故俺を先兵として奴の元へ
向かわせない? 親子としての情で俺を見ているのならお門違いだ、それとも同業者とし
て俺はそんなに信用できないのか」
 数刻前に敵の術中に落ち、仲間に刃を向けた自分が言える筋合いではないと理解してい
たが、苦痛と疲労が見える年老いた父の姿を前にして、予測でも想像したくないと思い咄
嗟にヒューは口にした。
 モーリスはヒューが自分に言っている言葉と状況に矛盾を感じたのか段々顔を赤らめ、目を伏
せながら尻すぼみになって行くのを聞いて一瞬微かに笑ったものの、すぐに厳しい表情に
戻してから答えた。
「そうではない。少しでも力のある方に回復させる時間を持たせるのが優先だと思ったか
らだ。だが、儂やネイサンが力を与えるような事態になったらその時は……ヒュー、お前が我等を
彼奴に渡さぬよう生きていても聖剣で刺し貫け」
「……以前の俺なら『判っている』と躊躇なく受けただろう。だが人の情の温かさを思い
知った今の俺にその言質は酷過ぎる」
「だからこそ徒に軽々しく力に恃み、死に急ぐ言動を儂は忌避したのだ。己と他人の生命
を軽んずる事は力と自己の存続の諦念に他ならない」


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