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Awake

175Awake 15話(2/14):2013/12/20(金) 23:12:15
「親父。より強い力を求めて何が悪い。俺は親父のように仲間を己の力不足で死なせたく
は無い!」

力……退魔の能力は遥かにグレーブスが儂より上回っていた。そして、ヒューより高い矜持を有
し他者を見下すことにかけては、ヒューなど足元にも及ばないほど苛烈だった。
その彼が魔に堕した時、儂に吐いた言葉は未だに忘れる事は出来ない。

「グレーブス! 止めてくれ! お前……何という事を! 彼女はお前のために、お前の事を
常に思ってどれだけその身を焦がしていたと思っている!? その彼女をお前は……グァ
ッ!俺にまで剣を向けるのか!?」
「……ボールドウィン。貴様はその惰弱な憐憫の情を以って、どうやって幾人の者達を心から救
えることが出来た? 俺は力を誇示して言葉を尽くしても大勢の人間を助けても誰も……
俺に心を許してくれなかった!」
 残忍な目付きでグレーブスは無残な姿で息絶えている夫人を一瞥し、まなじりに憎悪を醸し
出した皺を作りその視線をモーリスに向け微かに笑いながら言葉を続けた。
「……そこに転がっているその女も同様だ。俺の妻で俺の血を継ぐ息子もあるのに……そ
の女が貴様にだけは心から微笑んで俺を嘲笑う。だから消してやった!」

「誰もが貴様に対して心からの賞賛を与える。じゃあ俺は、俺は一体何のために無力な衆
愚共を救い続けているんだ!?」

――衆愚!? そんな事を思っていたら心を開く者も開く訳が無い。
当たり前じゃないか、同じ人間同士言葉を尽くさずとも感覚で判る。
「グレーブス……お前のその高すぎる矜持が己の身を焼き、己の心を自分自身の狂った陥穽に
嵌めて汚している事さえ気付かないのか……? 人の夫、人の父となっても己の事しか考
えられぬ者に真の賞賛を求める資格は無い!」
「言ったな貴様ぁああぁ――!!」
――実際、真の賞賛などというものは存在し得ない。それすらも感じる事が出来ないほど
不自由な心で生きていたのか……グレーブス……。


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