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NON-TSF「偶然が、あたしを。」※再掲、修正・加筆

14luci★:2016/10/27(木) 00:47:30 ID:???0
「みーちゃん、来たんだ。心配してたんだよー」
 教室の奥から声がかかると、それまで静まっていた教室がまたガヤガヤとし始めていた。
「ごめんね、ちょっといろいろあったから――」
「あーそっか、そうだよねぇ」
 あたしよりちょっとだけ背が低い紫帆ちゃんが、腕を絡めて席まで連れていってくれた。
「そうだ、メールありがとう。担任の先生も教室も時間割もわかんなかったから、助かったわ」
「いいっていいって――そんなことよりさ、大変だったよね。銀行強盗に巻き込まれるなんてさー」
 銀行、強盗? 紫帆ちゃん、なにいってるの――?
「え? あ、あたし、え? 紫帆ちゃん?」
 机に鞄を置いた手が震えてる。――違う、足も、身体も震えてる。あたしの前の席に足を組んで腰かけた紫帆ちゃんの姿が、すごく遠く感じる。
「いーからいーから。お昼、一緒に食べようね。そん時詳しく、ね」
「あ、の紫帆ちゃ――」
 それだけ言うと紫帆ちゃんは、廊下側の、多分自分の席に行ってしまった。あたしは足の力が抜けたみたいに椅子に腰かけた。
 本来その席に座るであろう男子が、口の端を上げてあたしを見てる。……ふと、周りを見渡すと、みんな、あたしを見て、る――。
 違う、きっと。みんな知らないから。あたしのこと、あのこと、知らないから。ただ、三日も休んだから、だから――見てるだけ。大丈夫、がんばれるよ。男子だって、怖くない。大丈夫。
 でも。なんであたしはこんなに不安なの? なんでこんなに、震えてるの? なんでこんなに、涙があふれそうになるの? なんでこんなに、叫びたいの?

***************

 授業は滞りなく過ぎていった。けど、あたしは授業に集中できなかった。男子の臭いがすると、あの味が、あの感触が蘇ってきて吐きそうになって――。がまんするのに必死だった。休み時間にはトイレに駆け込んで、胃液だけ吐いた。
 胃液の臭い、するかな――リステリン持ってきててよかった……。でも、のどが焼けるようにひりついて痛いよ……。
 ずっとそんな行動をとっていたからか、あたしに話しかける生徒はいなくて、紫帆ちゃんすら声をかけてくることはなかった。
 そして、昼休みになった。
「みーちゃん」
 紫帆ちゃんはいつもの笑顔のままあたしの席まできた。紫帆ちゃん、なんか遠い感じ……する。
 物理的というより心理的? 精神的? このまま遠いなら、何も聞かないでよ……。
「さーって、お昼う。ね、早く食べよ」
「う、うん」
 あれ? さっきのって聞き間違いだった? 詳しくなんていうから、あたし、あのことだと。
 お弁当を広げ、二人で一口、二口。二年生になったから理系文系に分かれて仲のいいことも離れちゃって寂しいね、なんて他愛ない話をした。


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