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TSFのSS「白と黒の羽」※再掲、修正・加筆

6luci★:2015/09/05(土) 01:30:57 ID:???0
下着を付けずに着たせいか、あちこち擦れて痛かった。閉ざされた部屋の扉まで行き開けようとしたけれど、後ろからぞろぞろと三毛猫や他の生物どもがついてくる。俺の予想が正しいなら、こいつらはさっきの男達の筈。野放しにしたくなかった。この場所で野垂れ死ねばいい。

憎悪に燃え滾った心。俺以外を外に出さないように、蹴りつけながら扉を開け、外に出た。ビルの外へ出ようと暗い廊下を歩き始めた俺の耳に、扉を引っ掻く音と三毛猫の鳴き声。在りし日の、俺を追いかけていた頃の弟の姿が脳裏に浮かび俺の足を止めた。

扉を開けると、コウモリもトカゲも、全てが一斉に外へ出て闇の中に吸い込まれていった。ただ、三毛猫だけが扉の前で座って待っている。

……おいで。 自分でも驚く程可愛らしい声が室内に響く。猫は腰を下ろした俺の胸元に飛び込んでいた。

あの、天使のようなモノは、孤独を俺にくれると言ったけれど、そうはならなかったようだ。俺はこれからの生活をなるべく考えないように、痛みで歩きづらい身体を揺らしながら、ビルから出ていった。

アパートまでの道は街灯や自販機の明かりが灯り、所々を照らしていた。誰にも会わなかったにも関わらず、たとえ誰かに会ったとしても俺だと気づかれる筈もないのに、こそこそと隠れるように早足で歩いた。

部屋の前に着き、はたと気づいた。アパートの鍵は俺の服に入っていたんだ。無駄と判っていてもノブを回すと、軽い音が聞こえドアは開いた。訝しみながら漆黒の闇が出迎える室内に入った。しんと静まり返った室内には特に人の気配も無かった。抱いていた猫が胸から飛び降りた。

室内の明かりを点ける。目に映る見慣れた部屋。机の下から猫が顔を覗かせていた。鍵を閉めて出ていったのに、どうして開いたんだろう。疑問を抱きながらも、俺は弟の服を脱ぎユニットバスの扉を開いた。

あの似非天使が目の前にいる、そんな錯覚が生じて息苦しくなってくる。しかしそれは鏡に映った自分の姿。ビルの中でされた事も、人外のモノがいた事も事実以上でも以下でも無かった。頭では理解していたつもりだったのに、自分という存在が消え、違うモノになっていることに鏡の中の女は嗚咽を漏らし泣き始めていた。

あっち行け!  猫が一声鳴いて足下に擦り寄っていたけれど、それを蹴りつけ浴室から追い出した。そのまま足下がぐらぐらと揺れる気がしながら、床に座り込み一頻り泣いた。どうして俺が? なんで? 様々な感情と疑問が渦巻き、心から離れなかった。


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