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尚六SS「仁重殿の夜」

1一人カウントダウン企画 ◆y8UWMRK39I:2019/08/18(日) 08:30:19
『一人カウントダウン企画』第五弾は、書き逃げスレの「玄武に乗って」の続編。
前作と同じく尚隆視点です。


(尚六)玄武に乗って
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/32/1099458470/370-374n
※完全に記憶だけに頼って書いてしまったせいで、玄君の言葉遣いが原作と異なっています。


この話では「麒麟は全員、性欲旺盛で絶倫」「玄武での王宮行は媚薬つき新婚旅行」とのふざけた設定。
(でも内容はシリアス)
その他にもいろいろ捏造設定があり、どの国も王と麒麟の肉体関係は当たり前という前提です。

2仁重殿の夜(1):新刊発売まであと55日:2019/08/18(日) 08:34:34
 登極して二月、忙しいといえば忙しいが、暇といえば暇というのが今の俺
の生活だ。何しろ弱味を握ろうとしているのか媚びようとしているのか、王
たる俺の一挙手一投足を見守る腐った官に四六時中取り囲まれているのだ。
 だが、おかげでこの国の抱える問題点はわかった。国政を立て直すには、
まず宮中の改革をせねばならんということも。
 しかし急いては事をし損じる。ちらほらと骨のありそうな官もいることだ
し、ここはじっくり腰を据えて、数十年単位で物事にかかることにしよう。
そんなにのんびりしていたら、蓬莱では爺になってくたばる年齢に達する頃
だが、何しろ神仙というやつには寿命がない。不老不死にはまだ当分慣れそ
うにないが、まあ、何とかなるだろう。
「――それで?」
 麒麟の主治医であるという黄医が夜間に正寝にやってきて、六太の様子が
おかしいと告げたので俺は眉をひそめた。神仙は基本的に病にかからないと
いう話ではなかったか? それも麒麟の場合、冒される病といえば、王が道
を失ったときにかかるあの死病しか……。
「あ、いいえ」外見だけはまだ三十代に見えるその男は、俺が連想したこと
を気取ったらしく慌てて言い添えた。「決して失道の病ではございません。
どうやら仁重殿の女官たちにはいまだおひとりも手をつけておられないよう
ですので、おそらくそのせいかと思われます。つまり性欲を発散できずに、
うちにこもっておられるせいかと」
「性欲?」
 俺はますます眉をひそめた。六太はまだ十三、子供ではないか。それがど
うして女官に手をつけるの何のという話になるのだ。
 黄医は、こほん、と咳払いをして先を続けた。
「主上は蓬莱からおいでになったこともあり、ご存じないでしょうが、麒麟
というものは性的な成熟が人より早く、また性欲も旺盛であるものなのです。
一説によると閨でも王にお仕えするためだとか。むろん欲求の強さに個人差
はありますが」
「ほう……」
 この話にはさすがの俺も驚いた。あの餓鬼がそんな欲求を持っておるとは
な。

3仁重殿の夜(2):新刊発売まであと54日:2019/08/19(月) 19:01:11
「しかし俺が見たところ、六太は清童だったぞ。男も女も知っているように
は見えなかったが」
「はい、台輔くらいのお歳になりますと、そろそろ欲望をもてあますように
なってはきますが、まだ王を選定しておられない場合はそういうこともある
ようです。麒麟によっては十歳くらいからお相手を必要とされることもある
のですが。しかしいずれにしろ玄武にて王と同衾なされて性を開花させられ
たあととなりますと、十に満たない幼い麒麟であってもお相手を欲するよう
になるものなのです」
 なるほど玄武でのことは周知の事実というわけか。確かにあのとき玄君は、
古来からのしきたりだというようなことを言っていた。
「特に麒の場合は麟より性欲が旺盛と言われておりますので、こたびの主上
の登極に当たり、台輔のために仁重殿に伽の女官を数名お世話させていただ
きました」
「その誰にも六太は手をつけておらんと?」
「さようで。さまざまな風情の美しく手管に長けた女官を手配させていただ
いたのですが。つきましては主上には、台輔のお好みのお心当たりがござい
ましたら、どうぞ拙めにお教えいただければ、と。あ、いえ」俺が眉をひそ
めたままなのが気になったのだろう、慌てて言い添える。「その、むろん主
上がお相手をなさる心づもりでおられるのならそれで良いのですが、台輔が
気鬱になっておられるように拝見しましたので、黄医といたしましては――」
「ああ、わかった。そう慌てるな」俺は苦笑した。「それなら本人に聞いて
みるのが手っ取り早い。俺があとで六太に聞いてこよう」
 黄医は驚いたようだったが、他に方法がないのがわかったのだろう、恐縮
しきりで平伏して「面目次第もございません」と言った。

 黄医を下がらせた俺はさっそく、内宮での護衛である大僕だけを連れて仁
重殿に赴いた。玄武から持ってきた媚薬入りの香と香油を懐に忍ばせたのは
――まあ、念のため、だ。備えあれば憂いなしと言うしな。それにそもそも
機会を窺っていたことではある。
 迎えに出てきた女官のひとりに言いつけて、既に臥室に下がっていた六太
に先触れに向かわせる。

4仁重殿の夜(3):新刊発売まであと53日:2019/08/20(火) 22:06:23
 こうしてあらためて見ると仁重殿の近習には、少女のように若く見える女
官が少なくないのがわかった。主が幼いので、それに合わせているのだろう
が、多分この中に伽の女官とやらもいるのだろう。
 そういえば長楽殿の女官のほうは妙に綺麗どころがそろっていたな、と思
い出す。あちらはおそらく俺に手をつけさせようとしているのだろうが、そ
うやってその女官の後ろ盾になっているだろうどこかの官に首根っこを押さ
えられるのはごめんだ。王の寵愛を受けて鼻高々で寵姫気取りになる女官も、
容易に想像できるだけにごめんこうむりたい。何しろこの宮城の官吏は腐り
きっている輩が多いから、どこで足をすくわれないとも限らんのだ。
 ふと、もしかしたら六太もそうなのだろうか、と考える。どこかの官のひ
もつきになるのを避けたいと。まだ幼いのに不憫なことだ……。
 先触れから戻ってきた女官が、六太がまだ起きていたことを告げた。既に
かなり遅い時刻だったので、何となくもう寝ているだろうと思っていた俺は
少し驚いた。餓鬼はもっと早く寝るものだぞ。
 俺は仁重殿の主殿の奥に向かった。

 臥室の扉の前で俺は立ち止まり、大僕に告げた。
「半刻経っても出てこなかったら、正寝に戻って良いぞ」
「いえ、主上をお守りするのが自分の役目ですから」
 まだ若く見えるその大僕は直立不動で答えるなり、扉の横に立って待ちの
姿勢を見せた。仁重殿の奥深くとはいえ何があるかわからんし、大僕の態度
自体は歓迎すべきものだ。妙に顔を赤らめているのが気になるが……。
 ――なるほど。
 俺は納得した。黄医の言葉からもわかるように、俺と六太が玄武の上で同
衾していたことは周知の事実なのだろう。つまりこいつも、そして俺を出迎
えた先ほどの女官たちも、おそらく俺が六太と寝るためにここを訪れたと
思っているのだ。
 俺の心づもりとしてはあながち間違いではないのだが、肝心の六太のほう
がどうだか……。
 大僕をそこに残して広い臥室に入ると、豪華な房室の奥で、被衫姿の六太
が玻璃の窓を開けて窓枠に肘をつき、夜空を眺めていた。「夜遅くにすまん
な」と声をかけたが、気のなさそうな「んー」という返事が返ってきただけ
だった。

5仁重殿の夜(4):新刊発売まであと52日:2019/08/21(水) 19:20:30
 俺は榻にゆったりと座ると、六太の後ろ姿に目をやった。長い金髪が腰ま
で流れ落ち、時折、わずかに毛先が夜風になびく。
「何しろ黄医が俺のところにやってきたものでな。あまり具合が良くないら
しいと聞いたのが」
 さすがに六太は振り向いた。
「別に失道じゃないから。心配しなくていいよ」
「それは聞いた。黄医からいろいろ説明を受けてな。おまえ、伽の女官に手
をつけていないそうだな」
 六太が露骨に顔をしかめた。軽蔑の表情で俺を見る。麒麟という生き物は
本能的に王を慕うと言われているそうだが、この六太の顔を見るかぎりはそ
うは思えんな。
「――で、おまえがどういう女を好みか聞いてくれと黄医に頼まれたんだが」
「必要ない」
「なぜだ?」
「おれは女はいらない」
「ほう。男がいいのか?」
 思わずにやついた俺がふざけて問うと、六太は本気で怒った顔になった。
「男も女もいらない。おれは誰もいらない」
 そう言ってまた外に目を戻す。俺はしばらくその姿を見守っていたが、ふ
と思い当たって声をかけた。
「眠れんのか……?」
 返事はない。表向きだけでも王を敬って見せる官たちとは大違いだ。もっ
とも無謀な官も中にはいて、なかなか気骨があるやつらだとおもしろく思っ
てもいるわけだが。
「なあ、六太。いくら神仙が病にかからんと言っても、さすがに眠らなけれ
ば体が参ってしまうぞ。黄医から聞いたが、麒麟は人より性欲が大きいそう
だな。そんなにつらいなら、女官を抱いてみたらどうだ」
 相変わらず答えはなかったが、黙って待っていると、やがて六太は低く吐
き捨てるように言った。
「……女官はそのために王宮に仕えているわけじゃないだろう」
「ん?」

6仁重殿の夜(5):新刊発売まであと51日:2019/08/22(木) 20:17:29
「男に体を好きにされるために、出仕したわけじゃないだろうっつってん
だ!」
 振り向いた六太が叫ぶように言った。それはまさしく女官への憐れみと、
彼女たちにそんな扱いをする宮中への嫌悪の表情だった。
「おれだって黄医に聞いたよ、麒麟はそういう欲求が大きい生き物だって。
でも、だからって物のように女を扱っていいわけがないだろう? それとも
尚隆は大人の男だから、そういうもんだと簡単に割り切れるのかよ。女なん
か物と同じだと思って納得すんのかよ」
「おまえ……」
 六太はさらに続けようとしたが、声が震えて言葉が出ず、泣き出しそうに
なってしまった顔を誤魔化すようにまた窓の外に目を向けた。
 女を物として扱えるかというのは痛い問いだった。俺はやはり女の肌が好
きだし、少なくとも商売女を抱くことについては何の躊躇もなかったからだ。
たとえその女が貧困のために親に売り飛ばされてきたとか、その日の飯にあ
りつくために体を売っているとしても、だ。
 何より雁は貧しい。田畑は荒れ、まっとうな職にありつける機会も少ない。
特に手に職もない女は身を売らねば生きていけないだろう。無体を強いると
か女が未成年であるというならまだしも、成人している商売女を普通に抱い
て金を支払うぶんには何の問題もなかろうというのが正直なところだ。
 また、伽の女官がどのような動機で宮中に仕えているのかは知らないもの
の、おそらく下界で何の希望もなくその日暮らしを続けるよりは、喜ばしく
思っているだろうという想像は容易につく。何しろ衣食住に不自由しないば
かりでなく、仙籍に入って不老不死になれたのだ。その輝かしい生活の前に、
閨で奉仕することに抵抗があるとは思えないし、しかも相手は王の次に身分
の高い宰輔だ。むしろ誇りにさえ思うのではないだろうか。特に単に手をつ
けられるだけでなく、もし宰輔の寵姫にでもなれたとしたら、その女官は鼻
高々だろう。見かけも実年齢も十三にしかならないうぶな六太には想像でき
ない世界かもしれんが。
 それに麒麟は普通、十代の半ばから二十代の半ばで成獣になるのだという。
王になった瞬間に外見が固定された俺と異なり、成獣するまで六太は成長し
つづけるわけだ。幼さのあまり中性的な今でさえ見目良いこいつのことだ、
十八くらいになった六太は、おそらく女たちが放っておかないほど麗しい若
者だろうし、寵を得られた女官はそれこそ有頂天になるだろう。寿命のない
神仙にとって数年待つ程度のことは何ほどでもない。伽の女官が、今のうち
に手をつけてもらって寵を受けておきたいと思ったとしても不思議はない。

7仁重殿の夜(6):新刊発売まであと50日:2019/08/23(金) 23:29:21
 俺のそんな想像をよそに、六太は鬱々として言葉を続けた。
「それに黄医は、やり方がわからないんだったら教えるって言ったんだ。何
だったら自分が相手になるって言って、おれの体に手をかけようとした」
 六太はぞくりと震えて、細い体を自分の両腕で抱きしめた。
「黄医が? それはまことか?」
 俺は驚いた。それはつまり、黄医がこいつを手込めにしようとしたという
ことではないか。
 むろん六太には使令がいるから、実際に無体なことができようはずもない
が、そのような話をもちかけられたこと自体が六太にはおぞましいことだっ
たのだろう。
「麒麟の欲求に応えるのも黄医の役目だからって、あの男……」
 背を向けて細い肩を震わせている頼りない様子を見ると、俺はあの黄医に
心底から憤りを感じた。仮に真実それも黄医の役目だとしても、こんな子供
に無理強いしようとは何事だ。話を持ちかけるにしても、もっと他に言いよ
うがあろうに。
 この宮城の官吏は問題のある輩が多いことではあるし、黄医にしても別の
者に代えたほうがいいのかもしれん。信頼できそうな下官に口止めした上で、
しばらく黄医を見張らせてみるか……。
「まあ、その、なんだ」俺は内心を押し隠し、なだめるように言った。「お
まえの気持ちはわかった。そういうことなら、無理に女を抱くこともなかろ
う。しかしだからと言って、毎日を悶々と過ごすのも感心せんな。そういえ
ばおまえ、最近少し顔色が悪いようだが、もしやほとんど眠れておらんので
はないか?」
 答えはなかった。そこまで苦しんで欲求を抑えることもなかろうにと、俺
はいっそう不憫になった。
 天勅を受けるまで蓬山に滞在していた短い間、幼い頃から六太を世話して
いたという女仙が、こっそり耳打ちしてくれた話を思いだす。
 蓬莱でさんざん為政者に苦しめられた六太は、王を選ぶ麒麟の使命を厭う
て蓬山を出奔したのだという。前代未聞の椿事。とてもじゃないが民には明
かせない出来事だったと、その女仙は悲しそうに言った。

8仁重殿の夜(7):新刊発売まであと49日:2019/08/24(土) 10:02:12
 それが六太が十歳のとき。出奔して故郷の蓬莱に戻り――生き別れた両親
を捜したようだが、見つからなかったらしい――行き倒れていた六太を俺が
拾ったのが三年後、十三歳のとき。これほどうぶな幼い少年が三年もの間、
当てもなく蓬莱をさまよっていたことを思うと、すれた俺でも哀れに思わざ
るを得ない。こいつは一見、生意気でいい加減だが、実際は何事も真面目で
考えすぎるのだ。
「おまえが女たちを憐れんでいることはわかった。黄医を好いていないこと
もな。しかし――そうだな、おまえ、俺とは寝たろうが。いったん情を交わ
した相手となら抵抗はないのではないか? ならば俺が相手をしてやるぞ」
 六太が驚いて振り返った。だが俺が榻から立ち上がると、おびえたように
後ずさる。玄武での艶めいた印象とは違って本当におびえて。予想していた
こととはいえ、俺は内心で少々落胆した。
 これではこいつを抱くのは無理か。いや、誤魔化して香炉を持ってこさせ、
媚薬入りのあの香を焚けば……。
「じょ、冗談、言うな」
「別に冗談など言ったつもりはないが」
「男同士だろうが」
「男同士でも契れただろう?」
 六太は言葉に詰まった。俺はこいつを安心させるために、また榻に座った。
 情交に対するかたくななまでの拒否感は、あるいは十三才という幼さゆえ
か。六太は確かに麒麟だが人でもある。情交自体は厭うものではなく、人と
しても当然の欲求であるというのに、あくまで嫌悪しているようだ。王の選
定を嫌がったことと言い、もしや麒麟としての本能に属することすべてを疎
んじているのではないだろうか。
 だが本能に逆らうことは苦悩に直結する。ここはやはり……。
 これから六太にすることを思い、俺は内心でこいつに詫びた。
「それにこのままでは官たちが不穏な噂を流さんともかぎらんぞ。何しろ麒
麟の不調と言えば、即座に失道を連想させるものらしいからな。登極したば
かりで失道の噂を流されては、俺が迷惑なんだが」
 六太はうつむいて唇をかんだ。想像したとおり、失道の二文字を出されて
はいかにこいつでも抗弁できないようだ。

9仁重殿の夜(8):新刊発売まであと48日:2019/08/25(日) 10:48:22
 俺はゆっくり立ち上がると、六太の側に歩み寄った。
「ということは、おまえがあくまで女を抱かんと言うなら、俺が相手をする
しかないではないか」
 そう告げることで六太の抵抗を封じてから、俺はその軽い体を抱き寄せる
と牀榻の内に連れ込んだ。

 とはいえ六太に無理強いするつもりはなかった。下手をすると、無体を働
こうとした黄医と同じことになってしまうからだ。麒麟は本能的に王を慕う
とされる存在だが、何事にも例外というものはある。乱暴なことをして嫌わ
れたくはない。
 これは別に六太に惚れているとか、そんな色めいた理由からではなかった。
登極して間もない俺にはまだ手駒がないに等しい。極端な話、場合によって
は宮城にいてさえ生命が危険にさらされる事態もありうる。そんな寒々しい
状況にある今、王の半身と言われる麒麟にまで俺をうとませたくはなかった。
少なくともこいつは官と異なり、無条件に信頼できる味方のはずなのだ。
 それに俺が無事、国を立て直せたら、数十年あるいは数百年をともにする
かもしれない相手だ。いわば実質的な伴侶と言えるこいつに、こんなことで
悪印象を与えて溝を作りたくはない。
 俺は動きの邪魔になる大げさな装束を脱いで簡単な単衫姿になったものの、
六太の被衫には手をかけず、臥牀の上で座ったままそっと抱きしめた。抵抗
こそされなかったが、こうして密着してみると、六太が体を固くして緊張し
ているのがわかる。俺は薄い被衫の上から、六太の体を優しくなでた。
「おまえが嫌なら、これ以上は何もせん。わかったか?」
 俺の腕の中で顔を伏せていた六太は、おずおずとうなずいた。男の手管と
いうものをまったくわかっていないのだろう、俺の下心に気づいていないあ
たりが不憫だが、素直なものだ。しかし暗い閨でこうして体をくっつけあっ
ていれば、それも体が情交に飢えているというなら、そういつまでも耐えら
れるものではない。肌を合わせること自体は別にうとましいことではないと
わからせてやれればいいのだが。
 腕の中の六太の髪に顔を埋めると、湯あみに使った花湯の残り香だろう、
甘い匂いが鼻孔いっぱいに広がった。俺はそうやって六太を全身で捉えたま
ま、肩や胸、腰や太腿をそっとなでていった。

10仁重殿の夜(9):新刊発売まであと47日:2019/08/26(月) 00:28:52
 最初のうちこそ六太はじっとしていたものの、そのうち妙にそわそわとし
はじめた。さりげなく俺の胸に手を置いて、密着した体を離そうとしている
が、こっちが相変わらず髪に顔を埋めて抱きしめたままなので無理というも
のだ。
 俺は何気なさを装って顔をずらし、六太の首筋にほんの軽く、かすめる程
度に唇をつけた。
「……!」
 びくっとした六太が俺の胸に置いた手に力を込めたが、俺は頓着しなかっ
た。首筋に軽く唇を這わせたまま、六太の腰から尻、太腿にかけて幾度も
そっとなでる。
「あ、あの、さ」
 六太がうろたえた声で言った。
「うん?」
「あの、おれ、もういいからさ、その」
「そうおびえるな。これ以上は何もせんと言ったろうが」
「で、でも、おれ」
 別に激しい行為は何もしていない。こいつの頬や首に、かする程度に幾度
も唇を触れ、背に回した腕で体のあちこちをそっとなでているだけだ。それ
も一番敏感な部分には手を近づけてもいない。
「花湯の甘い香りがするな。長楽殿の湯殿の香りとはまた違う。おまえの趣
味か?」
「いや、別に女官の誰かが適当にやってくれてるだけだと思うけど」
「そうか。なかなか良い匂いだ。俺は好みだな」
 そう言って、また首筋に顔を埋める。六太は本格的に耐えられなくなって
きたようで、そっと肌の上をさまよう唇の感触に、今にもあえぎそうになる
のを必死に抑えていた。
「どうした……?」
 そうささやきながら、今度は耳から頬にかけて唇の先を滑らせる。鼻の頭
に触れるついでに、小さな唇にかすめるように軽く接吻すると、六太は鼻に
抜ける色っぽい声でかすかにうめいた。俺の胸に置いた手が、いつのまにか
すがるように単衫をつかんでいる。

11仁重殿の夜(10):新刊発売まであと46日:2019/08/27(火) 19:41:48
 そろそろか、とは思ったが、もうしばらくこの感触を楽しむのも悪くない
と思い、俺は力の入れ具合を少し強めただけで、六太の顔や首筋に軽く唇を
触れつづけた。様子を見ながら、ちら、と鼻の頭をなめたり、口を開けて頬
をかじるように大きく唇をつけたりと、わずかずつ動きを大胆にしていく。
 そうして時間をかけてゆっくりと愛撫したおかげで、俺が本当に無体なこ
とをするつもりがないのがわかったのだろう。動揺のあまり形ばかりは抵抗
を示しているものの、すがるように俺の服をつかんだ手には、もうあらがう
ための力は入っていない。
 首元に唇を触れながら、六太の被衫の胸元をさりげなく少しだけゆるめて、
それまで隠れていた鎖骨の下にまで口をつけてみたが、拒まれることはな
かった。胸元がゆるんだことに気づいてすらいないのかもしれない。
 俺は六太を正面から抱えなおすと、顎に手を添えて、伏せていた顔を優し
く上げさせた。桜貝のような唇に軽く、だが先ほどかすめたよりは強く接吻
する。抵抗されないことを確かめてから、もう一度同じように唇に触れる。
そうして時間を置きながら、少しずつ触れかたを強めていく。いきなり乱暴
に接吻すれば拒まれても、こうして徐々に行為を深めていった場合は意外と
受け入れてもらえるものだ。
 やがて片手をこいつの頭の後ろにやって支えると、愛しげに軽い頬ずりと
接吻を繰り返した。うろたえた六太が俺の名を呼ぼうと口を少し開いたので、
俺はそこを自分の口で強くふさいだ。
「ん、ん……」
 六太の鼻からもれる甘いうめき。俺はやっと舌を入れて、こいつの口腔内
をなめまわした。俺の単衫を握りしめている六太の手に力が込められたが、
俺はそれを抵抗ではないと感じた。
 やがて口を離した俺が六太の喉元に顔を埋めたため、六太はのけぞるよう
な体勢になった。先ほどまでは腕を回して背を支えてやっていたが、俺は今
度はそのままゆっくり臥牀に押し倒した。
「しょ、尚隆……」
「ん? どうした?」
 押し倒されてうろたえる六太に、俺は何気ないふうを装って答えながら、
また六太の髪に顔を埋めた。俺が腰に腕を回しているのと覆い被さっている
のとで、六太は身動きが取れない。

12仁重殿の夜(11):新刊発売まであと45日:2019/08/28(水) 20:43:20
「ああ、良い香りだ……」
 そう言いながら、俺はさりげなく六太の膝を割って下肢を入れ、交わると
きのように腰を入れてゆっくりと動かし始めた。被衫ごしとはいえ、股間を
刺激された六太は、目をつむって「んっ」とうめいた。
「どうした……?」
 低くささやきながら、腰をゆるやかに動かしつづける。六太は握りしめた
拳を口元に当てて耐えようとしたが、俺がさらに腰を大きく動かして股間を
刺激してやると、六太の唇からなまめかしいあえぎがもれた。呼吸は早く、
頬はほんのりと上気している。
 もう抵抗はされないと見極めるところまでくると、俺は上体を起こして六
太の太腿を両腕で抱えて大きく股を開かせた。そうして今度は大胆に腰を入
れて容赦なく股間をこすりつける。
「あぁ、あっ!」
 耐えきれなくなった六太が体をくねらせ、うわずった声であえいだ。
「しょ、尚隆、だ、だめ、おれ、おれ――」
 六太が助けを求めるように俺の名を呼んだが、俺は答えず、自分の腰でこ
いつの敏感な部分を刺激しつづけた。なすすべもない六太は、愛撫されるま
まにのぼりつめ、やがてのけぞったかと思うと軽くうめき、その体から力が
抜けた。六太の股間に手を入れた俺は薄い被衫ごしに、放出したものでそこ
がじっとりと湿っているのを確かめた。
 俺はようやく自分の単衫を脱ぐと、脱力した六太の体をゆっくりなでまわ
しながら被衫を脱がせた。そうしてふたりとも全裸になってからふたたび六
太に覆い被さり、舌を入れて激しく接吻する。その合間にも手は休めず、両
手で胸全体をもんだり、つんと立っている乳首の先をつまんだりして幼い体
を愛撫した。一度達した六太は俺の手管にもう抵抗できなかった。
 俺は体をずらして小さな乳首の周囲をゆっくりなめた。乳首そのものには
触れずに周囲ばかり責めてさんざん焦らすと、六太は身もだえした。焦らし
に焦らしてから、やっと乳首を吸ってやる。それも素早くちろちろとなめた
り、じっくり舌を這わせたりと変化をつけると、六太は肢体を悩ましくくね
らせてはあえいだ。
 片方の乳首を口で愛撫している間、もう一方の乳首を手でいじる。そのま
まさらに体をずらしてへそに舌を這わせ、片手で相変わらず乳首をいじりな
がら、へそを大胆になめまわした。

13仁重殿の夜(12):新刊発売まであと44日:2019/08/29(木) 19:06:23
「ん、あん、ああぁ、ん――」
 のけぞった六太は、耐えきれずに嬌声を上げ始めていた。
 六太の胸からへそにかけてなめらかな肌を堪能した俺は、六太をひっくり
返してうつぶせにすると、しなやかな金の髪をかきわけてうなじを出した。
今度はそこから背骨にそって尻の割れ目の上あたりまでを丹念になめる。そ
の間、手は敏感な脇の下や脇腹をなでまわした。
 そうして心ゆくまで六太の背をなめたりなでたりした俺は、こいつの体を
起こすと、あぐらをかいた上に後ろ向きに座らせた。前に腕を回して抱きし
め、胸をもんだり乳首をいじったりしながら、後ろから頭を巡らせて首筋か
ら肩にかけて激しくなめまわす。俺は片手を乳首に残し、もう一方の手を一
物のあたりにも伸ばしたが、付近をなでただけで肝心の場所には触れずに焦
らした。だが首を巡らせて見るまでもなく、六太の可愛らしい一物が力強く
そそり立っているのがわかった。
「尚隆……お願いだから……」
 悩ましいあえぎと、哀願の声。素知らぬふりをして太腿の内側をなでると、
六太はいっそう身もだえした。自分から股間を俺の手に近づけようとしたが、
俺はわざとかわしてやった。そうしてまた、股間以外の六太の体のあちこち
をなでて愛撫する。
「ん、ん、あぁん、あん」
 体をくねらせて愛撫に応える六太。さんざん焦らしたあとで、俺はやっと
六太の一物に軽く触れた。その途端。
「んくっ……!」
 そっと触れただけなのに、六太は腰を震わせて射精した。飛び散った精液
が、こいつの太腿と褥を汚す。俺はやっと六太のものをつかみ、濡れて萎え
た一物をこすってやった。
「あんっ、んん、くっ……」
 快感にうめいた六太は、なまめかしく腰を振った。
 最初はそっと包むように、次第に竿をさするようにしながら先端をなでた
りつまんだりする。刺激された一物が固くなり、俺の手の中でびくんびくん
と脈動した。

14仁重殿の夜(13):新刊発売まであと43日:2019/08/30(金) 21:48:35
「はぁっ、あぁ、あ、はあぁ、ん」
 六太は顎をのけぞらせて金の髪を振り乱し、俺の掌に手を添えると、自分
から股間を俺の掌に押しつけて大胆に腰を動かした。
「あっ、あぁっ!」
 激しくあえぎながら腰を動かしていた六太は、俺の手の中で射精した。三
度目にしては量が多い。立派なものだ。なりは小さいが、もう大人の男と変
わらんな。俺は六太の一物をさらにしごくと、精液を最後までしぼるように
して出してやった。
 体から力が抜けた六太をあおむけにして臥牀に寝かせ、その小柄な体に覆
い被さって抱きしめる。先ほど押し倒したときのように太腿の間に腰を入れ、
普段のこいつなら抵抗するに違いないほど大きく股を開かせたが、六太はな
されるがままで、逆に俺の首にしがみついてきた。先ほどと違って服越しで
はない今は、腰を動かすと熱を帯びて濡れた六太の股間が直接俺の腹に当
たってこすれる。
「ん、あん、あぁん」
 俺の首にしがみついてあえぐ六太の色っぽい声に、俺の情欲も刺激された。
こんなに大胆に股を開いて俺の腰に脚をからめているくせに、こいつは今、
自分がどれほど卑猥な格好をさせられているのかわかっていないのだろうな、
とほくそえむ。
「気持ちいいだろう……?」
 俺自身もあえぎながら腕の中の六太に問うと、六太は俺に強くしがみつい
て、同じようにひっきりなしに腰を動かしながら「ん」とうなずいた。そう
してしばらく刺激しあったあとで、俺は後ろに手を伸ばしてこいつの尻をま
さぐった。小さな蕾を指先でさすり、さらに押し開くように愛撫する。六太
は激しく反応し、いっそう俺にしがみついてきた。
「俺はここに入れたいのだ。俺のものを、な」六太の耳の穴に舌を差し入れ
てなめつつ、わざと呼吸を荒げた声音で淫らにささやく。「わかるか? あ
のときのように根元まで入れて激しく出し入れしたいのだ……」
 その声だけで、六太は感じてしまっているらしい。俺が耳元でささやきつ
づけていると、可愛らしいあえぎを上げながら、俺の首に回した腕に力をこ
めた。

15仁重殿の夜(14):新刊発売まであと42日:2019/08/31(土) 09:46:43
「良いな……?」
 六太は何も答えなかったが、俺の首元に顔を埋めてかすかにうなずいた。
ここに至ってもまだ交わることに抵抗があるのか――あるいは単に恥ずかし
がっているだけなのか。
「いい思いをさせてやるぞ」
 俺はそうささやくなり体を起こすと、最初に脱いだ装束をさぐって、玄武
で使った残りの香油を移し替えた小瓶を取り出した。玄英宮に着いてからわ
かったのだが、香だけでなくどうやらこれも媚薬入りらしい。そのうち蓬山
に使いを出して、新しい品を手に入れることにしよう。
 俺はまず香油を自分の一物に塗った。ついで六太の秘所をまさぐり、なで
たりちょっと中に指の先を入れたりして愛撫がてら、たっぷりと香油を塗り
たくった。そうしてからやっと一物を六太のそこにあてがう。
 先端だけを少し挿入し、腰をぐるりと回して入口を刺激する。身もだえす
る六太にかまわずにしばらくもてあそんでから、ゆっくりと感触を楽しみつ
つ挿入した。
 玄武でのときのように、入口と中の肉襞が俺を絶妙な締めつけ具合で迎え
た。この快楽を知ってしまったら、正直、その辺の女では満足できんな……。
「はぁん、あん、ああぁん」
 快感にうわずってかすれた悩ましいあえぎ声が、六太の喉からひっきりな
しにもれる。
 半分以上挿入してから俺は六太の体を引いて起こし、自分の膝の上に座ら
せて対面座位になった。六太自身の重みのせいで、俺のものがこいつの中に
根元までずぶずぶと入っていく。
「あぁっ、あっ、あっ――」
 六太が金の髪を振り乱してもだえた。俺は六太の体を両側から強くつかん
で支えると、「動くぞ」とだけ言い置いて、いきなり腰を突き上げた。
「あう!」
 俺が唐突に与えた強い衝撃に、六太は大きく顎をのけぞらせて激しく反応
した。ただでさえ自分の体重で俺のものをのみこんでいるところだ、相当な
刺激なのだろう。

16仁重殿の夜(15/E):新刊発売まであと41日:2019/09/01(日) 10:23:09
 俺は構わず、幾度も幾度も深々と突き上げた。六太の欲求に応えるためと
いうのもあるが、既に俺のほうも、こいつと交わる悦楽にのめりこんでいた。
黄医が言っていた、麒麟の性欲の強さは閨でも王に仕えるためという説を思
い出す。どの麒麟もこれほどの快楽を主にもたらすのなら、その説もむべな
るかなというところだ。
 のけぞって白い喉を見せたままひっきりなしにあえぎつづけた六太は、快
楽に溺れるあまり、だんだんすすり泣きのような声になっていった。もう体
に力が入らないようで、完全に俺が支えてやらなければならなかった。
 脱力した六太の体が妙にくにゃくにゃとして扱いづらいのには閉口したも
のの、こいつが小柄で、かつ体重も軽いことが幸いした。両脇の下に手を入
れて支えてやりながら、荒々しく腰を入れつづける。
「どうだ、気持ちいいだろう? おまえの体はこれをずっと求めていたのだ
ぞ」
 そう言いながら俺は、ついに六太が絶頂に達して激しい快楽の叫びを上げ、
恍惚として失神寸前になるまで責めつづけたのだった。

 幾度か体位を変えて交わり、六太の中に三度射精して至極満足した俺は、
放心している六太の体を臥牀に横たえた。体力を使い果たしたのかぐったり
としている。媚薬入りの香油の効果もあるとはいえ、さすがにちょっと激し
すぎたかと思ったものの、少なくともこれならもう眠れないことはあるまい
と考え直す。
 俺はぼんやりしている六太を抱きしめて、そっとささやいた。
「眠れなくなる前に俺に言え。これで体力には自信があるからな、麒麟の欲
求がどれほどのものかは知らんが、おまえの相手ぐらい、いつでもたっぷり
としてやるぞ」
 六太は夢うつつといったふうで何も答えなかった。俺の声が聞こえていな
いのかもしれない。
 しかしほどなく俺の腕の中で静かな寝息を立て始めた。さすがに疲れた顔
をしていたものの、どこか安らいだ風情であるのを見て取って、俺のほうも
穏やかな気持ちになった。
 俺は乱れた髪をなでてやりながら、まあいいか、とひとりごち、六太を抱
きしめたまま眠りに落ちた。

17一人カウントダウン企画 ◆y8UWMRK39I:2019/09/01(日) 10:25:25
まだまだラブラブになるには時間がかかりそうな感じですが、
尚隆、登極したばかりだしねー。
これから時間をかけて、ゆっくり絆を深めていってくれることでしょう。

次は掌編を挟んで、この企画一番の長編&ラブラブな話です。
というか、残りは全部ラブラブだよん♥

18名無しさん:2019/09/01(日) 20:57:46
乙でした〜
うぶなのに性欲強いろくたんめちゃエロいですね…!
早く心もラブラブになってほしいものです\(//∇//)\

それにしても麒麟がみんな性欲強いという設定は結構すごいですよねw
この設定読んで最初に思ったのは、じゃあ景麒も強いのか…?そりゃあ、堯天に女はいらぬのですとか言いたくなるよね…って予王に同情してしまいました。すいません…

残りのラブラブな話も楽しみにしてます!

19一人カウントダウン企画 ◆y8UWMRK39I:2019/09/02(月) 00:10:04
はっはっ、実は昔、景麒についてはまさにそういう構図でエロパロ板のほうに出したことがあります。
多情な景麒が女官食いまくりで、普通に夫婦のつもりだった予王がどこまでも報われない感じの。
この設定、コメディでもシリアスでも、いくらでもネタにできそうなんですよねー。

20名無しさん:2019/09/02(月) 17:21:11
マジですかw 予王可哀想に…
まさかエロパロ板にも書いていたとは!
姐さんの引き出しの多さに驚嘆です。


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